本発明は、光照射により照射対象に関する情報を取得する装置に関する発明である。具体的に、本発明は、光照射により発生する光音響波に由来する光音響画像データを取得する装置に関する発明である。本発明に係る、光音響効果により発生する音響波は、典型的には超音波であり、音波、音響波、光音響波と呼ばれるものを含む。
本発明に係る光音響画像データは、光照射により発生した光音響波に由来するあらゆる画像データを含む概念である。例えば、光音響画像データは、光音響波の発生音圧(初期音圧)、光吸収エネルギー密度、及び光吸収係数、被検体を構成する物質の濃度(酸素飽和度など)などの少なくとも1つの被検体情報の空間分布を表す画像データである。なお、互いに異なる複数の波長の光照射により発生する光音響波に基づいて得られる被検体情報は、被検体を構成する物質の濃度などの分光情報である。分光情報は、酸素飽和度、酸素飽和度に吸収係数等の強度を重み付けした値、トータルヘモグロビン濃度、オキシヘモグロビン濃度、またはデオキシヘモグロビン濃度であってもよい。また、分光情報は、グルコース濃度、コラーゲン濃度、メラニン濃度、または脂肪や水の体積分率であってもよい。
一般に、照射光の光量が大きいほど大きな光音響波を発生させることができ、光音響波の受信信号のS/Nが向上する。その結果、表示させたときの画質の高い光音響画像データが得られる。
ところで、光音響装置のハンドヘルド型プローブにおいて、プローブ筺体内に光源を配置する構成が考えられる。このような構成においても、高画質な光音響画像を表示させるために、照射光の光量を高くすることが望ましい。ところが、光源に供給される電力の一部が熱に変換されることにより、光源は発熱する。典型的に照射光の光量を高くするためには、光源に大きな電力を供給する必要があり、その場合光源の発熱量も高くなる。ここで、照射光の光量(以降、照射光量とも記す)とは、1パルスの光エネルギーの総量(単位はJ(ジュール))で定義する。したがって、照射光量と1秒あたりの発光回数を乗算したものが照射光の平均パワー(単位はW(ワット))となる。例えば、光源としてレーザーダイオードを用いて、0.01[J]の照射光量で、0.1秒間隔で発光する場合(1秒間に10回発光する場合)、照射光の平均パワーは0.01[J]×10[回/s]=0.1[W]となる。ここで、供給電力に対する光変換効率を10[%]と仮定すれば、平均パワーを0.1[W]とする場合、供給電力を1[W]とし、光源の単位時間当たりの発熱量は0.9[W]となる。ここでは、光源への供給電力のうち、光に変換されなかった電力は全て熱に変換されると仮定する。なお、1パルスの光とは、光強度の時間変化が矩形波である光の他に、三角波、正弦波などのあらゆる波形の光を含む。
ハンドヘルド型プローブは、強制風冷や水冷等の冷却機構を備えることは困難である。そのため、ハウジング内部に設けられた光源の発熱量が小さい場合であったとしても、ハウジング内部に温度上昇が生じる可能性がある。この温度上昇により、ハウジング内部のデバイスの不具合を生じる可能性がある。また、ハウジングの温度上昇により、プローブのユーザーや被検体である患者等に接触する接触面も温度上昇する可能性がある。
そこで、本発明者は、ハンドヘルド型プローブの放熱能力を鑑みて、光源の発熱量を許容できる発熱量に抑えるように、光源への供給電力を制御することを見出した。すなわち、本発明者は、ハンドヘルド型プローブの放熱能力を鑑みて、光源の発熱量を許容できる発熱量に抑えるような照射光量と発光タイミングで発光するように光源への供給電力を制御することを見出した。典型的には、照射光量と繰り返し周波数とを乗算した値に比例する発熱量が許容範囲に収まるように、光源への供給電力を制御する。
さらに、被検体が人体の皮膚等の場合、最大許容露光量(MPE:Maximum Permissible Exposure)を守る必要がある。光源への供給電力については、単位時間当たりの発熱量を鑑みた制限に加え、照射光量がMPEを超えないように制限してもよい。
なお、本発明の適用対象は、以下の実施形態で説明する光音響装置に限られない。本発明は、ハンドヘルド型プローブに光源を内蔵した装置であれば適用可能である。例えば、本発明は、光源と、光源から発した光の反射光や透過光を受光する受光素子とを内蔵するハンドヘルド型プローブに適用してもよい。すなわち、本発明は、光源が内蔵されたハンドヘルド型プローブと、照射対象を伝播した光の受信信号に基づいて、照射対象に関する情報を取得する情報取得部を有する装置に適用してもよい。
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
<第1の実施形態>
(装置構成)
以下、図1を用いて本実施形態に係る光音響装置の構成を説明する。図1は、光音響装置全体の概略ブロック図である。本実施形態に係る光音響装置は、プローブ180(光照射部110及び受信部120)、信号収集部140、コンピュータ150、表示部160、入力部170、及び電源部190を有する。
光照射部110が光を被検体100に照射し、被検体100から音響波が発生する。光に起因して光音響効果により発生する音響波を光音響波とも呼ぶ。電源部190は、光照射部110の光源を駆動するための電力を供給する。受信部120は、光音響波を受信することによりアナログ信号としての電気信号(光音響信号)を出力する。
信号収集部140は、受信部120から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、コンピュータ150に出力する。コンピュータ150は、信号収集部140から出力されたデジタル信号を、光音響波に由来する信号データとして記憶する。
コンピュータ150は、記憶されたデジタル信号に対して後述する処理を行うことにより、画像データを生成する。また、コンピュータ150は、得られた画像データに対して表示のための画像処理を施した後に、画像データを表示部160に出力する。表示部160は、光音響画像を表示する。ユーザーとしての医師や技師等は、表示部160に表示された光音響画像を確認することにより、診断を行うことができる。表示画像は、ユーザーやコンピュータ150からの保存指示に基づいて、コンピュータ150内のメモリや、モダリティとネットワークで接続されたデータ管理システムなどに保存される。
信号データを3次元のボリュームデータに変換する再構成アルゴリズムとしては、タイムドメインでの逆投影法、フーリエドメインでの逆投影法、モデルベース法(繰り返し演算法)などのあらゆる手法を採用することができる。例えば、タイムドメインでの逆投影法として、Universal back−projection(UBP)、Filtered back−projection(FBP)、または整相加算(Delay−and−Sum)などが挙げられる。
また、コンピュータ150は、光音響装置に含まれる構成の駆動制御も行う。また、表示部160は、コンピュータ150で生成された画像の他にGUIなどを表示してもよい。入力部170は、ユーザーが情報を入力できるように構成されている。ユーザーは、入力部170を用いて測定開始や終了、作成画像の保存指示などの操作を行うことができる。
図2は、本実施形態に係るハンドヘルド型プローブ180の模式図を示す。プローブ180は、光照射部110、受信部120、及びハウジング181を含む。ハウジング181は、光照射部110及び受信部120を囲う筺体である。ユーザーは、ハウジング181を把持することにより、プローブ180をハンドヘルド型プローブとして用いることができる。光照射部110は、光源111、光源111から発生した光を伝搬させる光学系112、及び光源111を駆動させるドライバ回路114を含む。光照射部110の光学系112の射出端113から光が射出される。図2に示す光学系112は、LEDやLD等の光源111から発生するプローブ180は、ケーブル182を介して信号収集部140、コンピュータ150、及び電源部190と繋がっている。ケーブル182は、電源部190からドライバ回路114へ電力を供給する配線、制御部153からドライバ回路114へ照射光量や発光タイミング等を制御する制御信号を送る配線、受信部120の出力であるアナログ信号を信号収集部140に出力する配線を含む。ケーブル182にコネクタを設け、プローブ180と光音響装置のその他の構成とを分離できる構成としてもよい。本実施形態において、ドライバ回路114と電源部190とを合わせた構成が、光源111に電力を供給する駆動部に相当する。すなわち、本実施形態に係る駆動部は、ドライバ回路114と電源部190とを含む。
なお、本実施形態に係るプローブ180は、ケーブル182を排したワイヤレスのハンドヘルド型プローブ180であってもよい。この場合、電源部190をプローブ180に内蔵し、プローブ180とその他の構成との各種信号の送受信を無線で行ってもよい。ただし、電源部190をプローブ180に内蔵すると、電源部190での消費電力に起因して発生する熱により、ハウジング181内部での発熱量は増加する。そのため、ハウジング181内部の温度上昇を抑制するために、電源部190をハウジング181の外部に配置してもよい。さらに、ドライバ回路114のうち、消費電力が大きく、発熱量の大きい一部の構成をハウジング181の外部に配置してもよい。
以下、本実施形態に係る光音響装置の各構成の詳細を説明する。
(光照射部110)
光照射部110は、光源111、光学系112、ドライバ回路114を含む。
光源111は、レーザーダイオード(LD)及び発光ダイオード(LED)の少なくとも一方を含み構成してもよい。また、光源111は、波長の変更が可能な光源であってもよい。
光源111が発する光のパルス幅としては、1ns以上、1000ns以下のパルス幅であってもよい。また、光の波長として400nmから1600nm程度の範囲の波長であってもよい。血管を高解像度でイメージングする場合は、血管での吸収が大きい波長(400nm以上、700nm以下)を用いてもよい。生体の深部をイメージングする場合には、生体の背景組織(水や脂肪など)において典型的に吸収が少ない波長(700nm以上、1100nm以下)の光を用いてもよい。
光源111は、1MHz以上の鋸波状の駆動波形(駆動電流)に追随して光を発することのできるLDもしくはLEDを採用してもよい。
光学系112には、レンズ、ミラー、光ファイバ等の光学素子を用いることができる。乳房等を被検体100とする場合、パルス光のビーム径を広げて照射するために、光学系の光出射部は光を拡散させる拡散板等で構成されていてもよい。一方、光音響顕微鏡においては、解像度を上げるために、光学系112の射出端113をレンズ等で構成し、ビームをフォーカスして照射してもよい。なお、光照射部110が光学系112を備えずに、光源111から直接被検体100に光を照射してもよい。
ドライバ回路114は、電源部190からの電力を用いて、光源111を駆動する駆動電流を生成する回路である。
(受信部120)
受信部120は、音響波を受信することにより電気信号を出力するトランスデューサと、トランスデューサを支持する支持体とを含む。
トランスデューサを構成する部材としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック材料や、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電膜材料などを用いることができる。また、圧電素子以外の素子を用いてもよい。例えば、静電容量型トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micro−machined Ultrasonic Transducers)、ファブリペロー干渉計を用いたトランスデューサなどを用いることができる。なお、音響波を受信することにより電気信号を出力できる限り、いかなるトランスデューサを採用してもよい。また、トランスデューサにより得られる信号は時間分解信号である。つまり、トランスデューサにより得られる信号の振幅は、各時刻にトランスデューサで受信される音圧に基づく値(例えば、音圧に比例した値)を表したものである。
光音響波を構成する周波数成分は、典型的には100KHzから100MHzであり、トランスデューサとして、これらの周波数を検出することのできるものを採用することができる。
支持体は、1Dアレイ、1.5Dアレイ、1.75Dアレイ、2Dアレイと呼ばれるような平面又は曲面内に、複数のトランスデューサを並べて配置してもよい。
また、受信部120が、トランスデューサから出力される時系列のアナログ信号を増幅する増幅器を備えてもよい。また、受信部120が、トランスデューサから出力される時系列のアナログ信号を時系列のデジタル信号に変換するA/D変換器を備えてもよい。すなわち、受信部120が後述する信号収集部140を備えてもよい。
なお、音響波を様々な角度で検出できるようにするために、理想的には被検体100を全周囲から囲むようにトランスデューサを配置してもよい。ただし、被検体100が大きく全周囲を囲むようにトランスデューサを配置できない場合は、半球状の支持体上にトランスデューサを配置して全周囲を囲む状態に近づけてもよい。なお、トランスデューサの配置や数及び支持体の形状は被検体に応じて最適化すればよく、本発明に関してはあらゆる受信部120を採用することができる。
受信部120と被検体100との間の空間は、光音響波が伝搬することができる媒質で満たしてもよい。この媒質には、音響波が伝搬でき、被検体100やトランスデューサとの界面において音響特性が整合し、できるだけ光音響波の透過率が高い材料を採用する。例えば、この媒質には、水、超音波ジェルなどを採用することができる。
また、本実施形態に係る装置が、光音響画像に加えて、音響波の送受信により超音波画像も生成する場合、トランスデューサは、音響波を送信する送信手段として機能してもよい。受信手段としてのトランスデューサと送信手段としてのトランスデューサとは、単一(共通)のトランスデューサでもよいし、別々の構成であってもよい。
(信号収集部140)
信号収集部140は、受信部120から出力されたアナログ信号である電気信号を増幅するアンプと、アンプから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを含む。信号収集部140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどで構成されてもよい。信号収集部140から出力されるデジタル信号は、コンピュータ150内の記憶部152に記憶される。信号収集部140は、Data Acquisition System(DAS)とも呼ばれる。本明細書において電気信号は、アナログ信号もデジタル信号も含む概念である。なお、信号収集部140は、光照射部110の光射出部に取り付けられた光検出センサと接続されており、光が光照射部110から射出されたことをトリガーに、同期して処理を開始してもよい。また、信号収集部140は、フリーズボタンなどを用いてなされる指示をトリガーとして同期して、当該処理を開始してもよい。
なお、プローブ180が、増幅器とADC等から構成される信号収集部140を含んでいてもよい。すなわち、ハウジング181の内部に信号収集部140が配置されていてもよい。このような構成であれば、ハンドヘルド型プローブ180とコンピュータ150との間の情報をデジタル信号で伝搬できるため、耐ノイズ性を向上できる。また、アナログ信号を伝送する場合に比べ、高速デジタル信号を用いることによって、配線数を少なくすることが可能となり、ハンドヘルド型プローブ180の操作性が向上する。
(コンピュータ150)
情報処理部としてのコンピュータ150は、演算部151、記憶部152、制御部153を含む。各構成の機能については処理フローの説明の際に説明する。
演算部151としての演算機能を担うユニットは、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップ等の演算回路で構成されることができる。これらのユニットは、単一のプロセッサや演算回路から構成されるだけでなく、複数のプロセッサや演算回路から構成されていてもよい。演算部151は、入力部170から、被検体音速や保持部の構成などの各種パラメータを受けて、受信信号を処理してもよい。
記憶部152は、ROM(Read only memory)、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの非一時記憶媒体で構成することができる。また、記憶部152は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の媒体であってもよい。なお、プログラムが格納される記憶媒体は、非一時記憶媒体である。なお、記憶部152は、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。
記憶部152は、演算部151により生成される光音響画像データを保存することができる。また、記憶部152は、光音響画像データに基づいた表示画像を保存することもできる。
制御部153は、CPUなどの演算素子で構成される。制御部153は、光音響装置の各構成の動作を制御する。制御部153は、入力部170からの測定開始などの各種操作による指示信号を受けて、光音響装置の各構成を制御してもよい。また、制御部153は、記憶部152に格納されたプログラムコードを読み出し、光音響装置の各構成の作動を制御する。
コンピュータ150は専用に設計されたワークステーションであってもよい。また、コンピュータ150の各構成は異なるハードウェアによって構成されてもよい。また、コンピュータ150の少なくとも一部の構成は単一のハードウェアで構成されてもよい。
図3は、本実施形態に係るコンピュータ150の具体的な構成例を示す。本実施形態に係るコンピュータ150は、CPU154、GPU155、RAM156、ROM157、外部記憶装置158から構成される。また、コンピュータ150には、表示部160としての液晶ディスプレイ161、入力部170としてのマウス171、キーボード172が接続されている。
また、コンピュータ150および受信部120は、共通の筺体に収められた構成で提供されてもよい。また、筺体に収められたコンピュータで一部の信号処理を行い、残りの信号処理を筺体の外部に設けられたコンピュータで行ってもよい。この場合、筺体の内部および外部に設けられたコンピュータを総称して、本実施形態に係るコンピュータとすることができる。すなわち、コンピュータを構成するハードウェアが一つの筺体に収められていなくてもよい。
(表示部160)
表示部160は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)などのディスプレイである。コンピュータ150により得られた被検体情報等に基づく画像や特定位置の数値等を表示する装置である。表示部160は、画像や装置を操作するためのGUIを表示してもよい。なお、被検体情報の表示にあたっては、表示部160またはコンピュータ150において画像処理(輝度値の調整等)を行った上で表示することもできる。
(入力部170)
入力部170としては、ユーザーが操作可能な、マウスやキーボードなどで構成される操作コンソールを採用することができる。また、表示部160をタッチパネルで構成し、表示部160を入力部170として利用してもよい。
なお、光音響装置の各構成はそれぞれ別の装置として構成されてもよいし、一体となった1つの装置として構成されてもよい。また、光音響装置の少なくとも一部の構成が一体となった1つの装置として構成されてもよい。
(電源部190)
電源部190は、電力を発生する電源である。電源部190は、光照射部110のドライバ回路114に電力を供給する。電源部190から供給された電力は、ドライバ回路114及び光源111等で消費され、発光と共に熱が発生する。電源部190には、DC電源を用いることができる。また、電源部190は、一次電池や二次電池などあらゆる電池で構成されていてもよい。電源部190が電池で構成されることにより、プローブ180に電源部190を省スペースに収めることができる。なお、ドライバ回路114及び電源部190は、コンピュータ150内の制御部153により制御されてもよい。また、プローブ180が、電源部190及びドライバ回路114を制御する制御部を有していてもよい。
(被検体100)
被検体100は光音響装置を構成するものではないが、以下に説明する。本実施形態に係る光音響装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを目的として使用できる。よって、被検体100としては、生体、具体的には人体や動物の乳房や各臓器、血管網、頭部、頸部、腹部、手指および足指を含む四肢などの診断の対象部位が想定される。例えば、人体が測定対象であれば、オキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは腫瘍の近傍に形成される新生血管などを光吸収体の対象としてもよい。また、頸動脈壁のプラークなどを光吸収体の対象としてもよい。また、メチレンブルー(MB)、インドシニアングリーン(ICG)などの色素、金微粒子、またはそれらを集積あるいは化学的に修飾した外部から導入した物質を光吸収体としてもよい。また、穿刺針や穿刺針に付された光吸収体を観察対象としてもよい。
図4は、本実施形態に係る光源の照射光量の制御方法を説明するためのタイミングチャートである。図4は、照射光の発光、光音響波の受信、画像データの生成、及び画像データの表示の各タイミングを示す図である。発光のタイミングチャートにおける縦軸は照射光量を示す。なお、図4において照射光量は、光源111に供給される電力に比例した値を仮定している。
まず、ユーザーは入力部170を用いて、表示モードを指定する。例えば、図4(a)は「リアルタイムモード」が指定された場合のタイミングチャートを示す。「リアルタイムモード」における画像表示のリフレッシュ周波数は、ハンドヘルド型プローブの通常の動きに対して追従した表示が可能である10[Hz]である。図4(a)の「リアルタイムモード」においては、画像表示のリフレッシュ周波数と光照射の繰り返し周波数は一致している。
図4(a)の「発光」に示すタイミングで、制御部153は、指定された表示モードに従い、光量設定値0.01[J]をドライバ回路114に設定し、かつ、0.1秒間隔でドライバ回路114に発光タイミング信号を出力する。制御部153からの発光タイミング信号と光量設定値の情報に従ってドライバ回路114は、光源111を駆動する。
そして、受信部120は、図4(a)の「受信」に示すタイミングで、光源111からの光に起因して生じる光音響波を受信する。演算部151は、図4(a)の「画像生成」に示すタイミングで、受信部120が出力した信号を基に再構成処理を行い、画像データを生成する。そして、制御部153は、表示部160に画像データを送信し、表示部160に画像データに基づいた画像を表示させる。表示部160は、図4(a)の「画像表示」に示す期間、画像データに基づいた画像を表示する。
図4(a)に示す「リアルタイムモード」においては、まず画像1を0.1秒間表示し、次に画像2を0.1秒表示している。以上の工程を繰り返し、0.1秒毎に新しい画像データに基づいた画像の表示を更新する。
前述したように、ハンドヘルド型プローブは単位時間当たりの発熱量の制限から許容できる光の照射光量と1秒あたりの発光回数(光照射の繰り返し周波数)が決定されている。本実施形態では、制御部153が、光源111の単位時間当たりの発熱量が1[W]より小さくなるように、光源111への供給電力を制御している。すなわち、制御部153が、光源111の単位時間当たりの発熱量が所定値(1[W])を超えないように、光源111への供給電力を制御している。供給電力に対する光の変換効率を10[%]と仮定した場合、光源111の単位時間当たりの発熱量を1[W]より小さくするためには、照射光の平均パワーを0.11[W]より小さくしなければならない。以下、供給電力に対する光の変換効率は10[%]と仮定して計算する。
本実施形態に係る「リアルタイムモード」では、繰り返し周波数10[Hz]、1パルスの光量を0.01[J]とすることにより、平均パワーを0.1[W]に制限することとした。これにより、発熱量を0.9[W]とすることができ、発光による発熱量を所定値(1W)よりも小さくすることができる。なお、発熱量を無視して最大許容露光量を超えないことを考慮すれば、所定値(0.11[W])を超える平均パワーとしてもよい。ただし、光源の発熱による不都合を考慮すると、MPEより大幅に小さい光照射を行う必要がある場合が想定される。なお、プローブの温度を把持できる程度に抑えるために、許容できる単位時間当たりの発熱量を5[W]より小さい値としてもよい。さらにプローブの温度上昇を抑制するために、許容できる単位時間当たりの発熱量を、3[W]より小さい値としてもよい。また、プローブの温度上昇を抑制するために、許容できる単位時間当たりの発熱量を、1[W]より小さい値としてもよい。
次に、ユーザーが入力部170を用いて「高速リアルタイムモード」を指定した場合のタイミングチャートを、図4(b)を用いて説明する。「高速リアルタイムモード」は、「リアルタイムモード」の10[Hz]のリフレッシュ周波数に対してより高速な30[Hz]のリフレッシュ周波数の表示モードである。この表示モードによれば、より早い動きを観察することができる。図4(b)の「高速リアルタイムモード」においては、画像表示のリフレッシュ周波数と光照射の繰り返し周波数は一致している。
リフレッシュ周波数に合わせて30[Hz]の繰り返し周波数で発光する場合に、「リアルタイムモード」と同様に0.01[J]の光量で発光すると、単位時間当たりの発熱量が2.7[W]となり、所定の許容値(1[W])を超えてしまう。そこで、制御部153は、図4(b)の「発光」で示すように、「高速リアルタイムモード」においては、「リアルタイムモード」の照射光量の1/3である0.0033[J]で発光するように、光源111への供給電力を制御する。このような供給電力の制御により、単位時間当たりの発熱量を「リアルタイムモード」と同様の0.9[W]に抑えることができる。
受信部120は、図4(b)の「受信」に示すタイミングで、光源111からの光に起因して生じる光音響波を受信する。演算部151は、図4(b)の「画像生成」に示すタイミングで、受信部120が出力した信号を基に再構成処理を行い、画像データを生成する。そして、制御部153は、表示部160に画像データを送信し、表示部160に画像データに基づいた画像を表示させる。表示部160は、図4(b)の「画像表示」に示す期間、画像データに基づいた画像を表示する。
図4(b)に示す「高速リアルタイムモード」においては、まず画像1を0.033秒間表示し、次に画像2を0.033秒表示している。同様に、画像3、画像4、画像5についても順番に0.033秒間ずつ表示する。以上の工程を繰り返し、0.033秒毎に新しい画像データに基づいた画像の表示を更新する。
なお、「高速リアルタイムモード」では、リフレッシュ周波数が高くなるので、再構成処理に要する時間を短くする必要がある。コンピュータ150の処理能力を単に向上したハードウェアを用いることも可能である。また、「高速リアルタイムモード」においては、再構成の計算量を減らすことにより、再構成処理に要する時間を減らしてもよい。例えば、再構成ボクセルのピッチを粗くしたり、アナログ−デジタル変換する階調数を少なくしたり、アナログ−デジタル変換する周波数を下げたりすることによりデータ量を少なくすることにより、計算量を減らしてもよい。
また、「高速リアルタイムモード」では照射光量が小さくなるので、被検体内部の深層部に光が届きにくくなる。すなわち、受信部120に到達する光音響波のうち、光照射から遅いタイミングに到達する光音響波の有用性は低くなる。そこで、制御部153は、アナログ−デジタル変換する時間(光音響波の受信時間)を短く設定し、アナログ−デジタル変換するデータ数すなわちデータ量を少なくし、計算量を少なくしてもよい。このとき、「リアルタイムモード」に比べて狭い領域(光が十分に到達した領域)を再構成してもよい。この場合、光音響波の受信時間(図4の「受信」に相当)と画像生成に要する時間(図4の「画像生成」に相当)の両方の時間を短縮できる。
「リアルタイムモード」と「高速リアルタイムモード」では照射光量が異なるそのため光音響波の発生音圧が変化し、受信信号の大きさが変化する。結果として、表示画像の明るさが変化することになる。このように再構成画像を表示した場合、ユーザーによる再構成画像の観察の妨げになる。
モードに応じて光量設定値が決定されるため、モード間で発生する光音響波の音圧の比は予めわかる。そこで、コンピュータ150は、光源111からの光の光量が変化した場合であっても、光量設定値に基づいて画像データの表示画像の明るさが変化しないように補正してもよい。補正対象は、受信信号、画像データ、または表示画像のいずれであってもよい。例えば、「リアルタイムモード」から「高速リアルタイムモード」に切り替えたときに照射光量が1/3になる場合を考える。この場合、受信信号は1/3倍になることが予測できる。そこで、制御部153が、受信部120のアナログ出力(光音響信号)を増幅する増幅度を3倍にしたり、ADCの変換する電圧範囲を1/3にしたり、ADCにより変換されたデジタル信号に3を乗算してもよい。これら処理のうちの少なくとも1つの処理を行い、設定された光量値によらずに、表示される画像の明るさが変わらないような処理を行ってもよい。
「高速リアルタイムモード」において設定された照射光量で「リアルタイムモード」でも発光すれば、単位時間当たりの発熱量は所定の値を下回り、モード間で照射光量を設定し直す手間もなくなる。ところが、このように設計すると、「リアルタイムモード」において光照射部110からの光の単位時間当たりの光量が少なくなり、「リアルタイムモード」での表示画像の画質が低下する。そのため、モード間で単位時間当たりの発熱量が所定値を下回り、かつ、単位時間当たりの光量の差が小さくなるように供給電力を制御することが好ましい。
図4に示す表示モードにおいては、コンピュータ150が1パルスの光照射毎に画像データを生成し、表示している。なお、コンピュータ150は、複数のパルスの光照射に起因する光音響波の受信信号を用いて、画像データを生成し、表示してもよい。すなわち、光源111の発光の繰り返し周波数と画像表示のリフレッシュ周波数が一致していなくてもよい。光源111の発光の繰り返し周波数よりも画像表示のリフレッシュ周波数は低くてもよい。また、1フレームの画像を生成する際に、他のフレームの画像を生成するときに使用した受信信号を使用してもよい。この場合、複数の受信信号を平均してもよいし、移動平均してもよい。
以上、本実施形態では、光照射の繰り返し周波数が10[Hz](第1の繰り返し周波数)である「リアルタイムモード」(第1のモード)を選択することができる。また、光照射の繰り返し周波数が10Hzよりも高い30[Hz](第2の繰り返し周波数)である「高速リアルタイムモード」(第2のモード)を選択することができる。また、「リアルタイムモード」と「高速リアルタイムモード」とを切り換えることができる。また、第1の繰り返し周波数(10[Hz])で、被検体に光を照射する場合には、第1の光量(0.01[J])で光源111から光が射出されるように光源111への供給電力を制御する。また、第2の繰り返し周波数(30[Hz])で、被検体に光を照射する場合には、第1の光量よりも小さな第2の光量(0.0033[J])で光源111から光が射出されるように光源111への供給電力を制御する。
なお、光照射部110が複数個の光源を有し、モードによって光源111を切り替えてもよい。例えば、光量の高い「リアルタイムモード」では、光源111としてLDを用いてもよい。一方、光量の低い「高速リアルタイムモード」では、光源111としてLEDを用いてもよい。このように各モードの光量を効率的に発生することのできる光源を切り替えて使用することにより、供給電力を効率的に利用することができ、発熱の抑制につながる。また、このようにモードによって光源を切り換えることにより、局所的に熱が集中することを避けることができる。
また、光照射部110は、光の照射エリアを、「高速リアルタイムモード」では広く、「リアルタイムモード」では狭くしてもよい。すなわち、光量が多く必要なモードの時に照射エリアを狭くすることによって、被検体に照射される光エネルギー密度を上げてもよい。結果として、「リアルタイムモード」において、光音響の発生音圧を大きくすることができるので、表示画像の画質をより良好にすることができる。また、モード間で画質を揃える場合、「リアルタイムモード」で光量を下げ、発熱を抑えてもよい。
また、本実施形態に係るプローブ180を用いて、超音波を送信し、反射する超音波を受信して画像化する表示モード(「USモード」)に切り替えてもよい。この場合、プローブ180の受信部120を超音波の送信手段として用いてもよいし、別のトランスデューサを送信手段として備えてもよい。また、プローブ180が、光音響波を受信する受信手段である受信部120とは別のトランスデューサを備え、このトランスデューサを用いて超音波の送受信を行ってもよい。以下の実施形態においても、同様にUSモードに切り替えることができる。
また、本実施形態のように発熱を抑制する供給電力の制御に加え、プローブ180が温度センサを備え、制御部153が温度センサの出力に基づいてプローブ180の温度情報を通知手段に通知させてもよい。例えば、制御部153は、温度センサからの出力に基づいてプローブ180の温度(例えばハウジング181内部の温度)が43℃以上となったと判断した場合に警告を通知手段に通知させてもよい。また、制御部153は、プローブ180の温度が43度より低い温度(例えば41℃)となったと判断した場合にも、警告を通知してもよい。このように、温度センサの出力から推定されるプローブ180の温度に対して多段階に通知を行ってもよい。例えば、通知手段としては、表示部160にプローブ180の温度情報を表示する手段の他、表示灯や音声等により通知する手段を採用してもよい。また、制御部153は、温度センサの出力に基づいて、プローブの温度が所定値より大きいと判断した場合、光源111への電力の供給を中止するように、電源部190及びドライバ回路114を制御してもよい。以下の実施形態でも同様に温度センサを利用した通知または制御を行ってもよい。
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態は指定された表示モードに応じて、光照射の繰り返し周波数を設定し、設定された光照射の繰り返し周波数であってもプローブの発熱を抑制できる照射光の光量を設定する実施形態である。第2の実施形態は、リフレッシュ周波数を直接指定し、指定されたリフレッシュ周波数に応じた繰り返し周波数及び照射光量に制御する実施形態である。本実施形態において、繰り返し周波数はリフレッシュ周波数に一致する例を説明するが、繰り返し周波数よりもリフレッシュ周波数が低くてもよい。
本実施形態に係る装置構成は、図1及び図2に示した第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
ユーザーは、まず入力部170を用いてリフレッシュ周波数を指定する。例えば、ユーザーは、入力部170を用いて、リフレッシュ周波数を10[Hz]に指定する。この場合、図4(a)に示すタイミングで、10[Hz]のリフレッシュ周波数で更新される画像を動画的に観察することができる。なお、光音響測定を開始する指示を行ったときに、リフレッシュ周波数を指定しない場合であっても、デフォルトのリフレッシュ周波数が設定されてもよい。
また、より早い動きを観察したい場合、ユーザーは、入力部170を用いて、より高いリフレッシュ周波数(例えば、30[Hz])を指定してもよい。この場合、図4(b)に示すタイミングで、30[Hz]のリフレッシュ周波数で更新される画像を動画的に観察することができる。
また、ユーザーは、より低いリフレッシュ周波数(例えば、5[Hz])を指定してもよい。この場合も、制御部153が、単位時間当たりの発熱量が所定値(1[W])より小さくなるように、光源111への供給電力を制御する。繰り返し周波数が5[Hz]の場合、1パルスの光量を0.022[J]よりも小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、リフレッシュ周波数が5[Hz]と設定された場合、制御部153は、繰り返し周波数5[Hz]、1パルスの光量を0.02[J]とするように、光源111への供給電力を制御する。これにより、単位時間当たりの発熱量を所定値より小さくすることができ、さらにリフレッシュ周波数を10[Hz]と指定した場合よりも高い照射光量で光パルスを発光することができる。その結果、リフレッシュ周波数が高い場合よりも、表示画像の画質を高くすることができる。
第2の実施形態では、リフレッシュ周波数として極端に小さな値を指定すると、照射光量として非常に大きな値を設定してしまう可能性がある。ところが、MPEの光量の制限値や、レーザーダイオードやLED等の光源には発光できる上限の光量(デバイス仕様による上限の光量)がある。そこで、制御部153は、光源から射出される光量がそれらの上限より小さくなるように光源に供給する電力を制御してもよい。
以上、ユーザーが入力部170を用いて直接リフレッシュ周波数を指定する実施形態について説明した。第2の実施形態の他の実施形態として、リフレッシュ周波数の指定を自動的に行う実施形態について説明する。この実施形態の場合も、リフレッシュ周波数に応じて発光の繰り返し周波数が決定されるものとして説明する。
この実施形態ではハンドヘルド型プローブが加速度センサやジャイロセンサなどのプローブの姿勢を検知するセンサを備える。コンピュータ150は、これらのセンサからの出力に基づいて、ハンドヘルド型プローブの移動速度を推定できる。そして推定された移動速度を基に制御部153は、後述するようにリフレッシュ周波数を決定する。そして制御部153は、前述したように、リフレッシュ周波数に応じて発光の繰り返し周波数及び照射光量を制御する。
ところで、ハンドヘルド型プローブの移動によって、表示画像に映る対象物の位置は変化する。さらに、ハンドヘルド型プローブの移動速度の大きさ(速さ)が大きい場合、表示画像に映る対象物の位置の変化も大きくなる。そして、ハンドヘルド型プローブの速さが大きいときに、リフレッシュ周波数が低いと、表示画像が更新されたときに表示画像に映る対象物が変わってしまい、診断の妨げとなる可能性がある。そこで、制御部153は、プローブの姿勢の検知結果に基づいて、ハンドヘルド型プローブの速さが大きい場合には、リフレッシュ周波数を高く設定する。一方、制御部153は、ハンドヘルド型プローブの速さが小さい場合には、リフレッシュ周波数を低く設定する。そして、制御部153は、プローブの速さに応じて設定されたリフレッシュ周波数に応じて、前述したように、発光の繰り返し周波数及び照射光量を決定する。ハンドヘルド型プローブの速さが極端に大きい場合であっても、人間の認知能力やコンピュータ150の信号処理能力を鑑みて、リフレッシュ周波数の上限を設けてもよい。例えば、リフレッシュ周波数の上限を240[Hz]としてもよい。このように、ハンドヘルド型プローブの速さが大きい場合、リフレッシュ周波数が高くなり、繰り返し周波数が高くなる一方で照射光量が小さくなる。その結果、再構成画像の画質が低下する。ところが、人間の視覚は速く動くものに関しては詳細部分の判別が難しく、ゆっくり動くものや静止したものを見る場合は詳細部分の判別が良好になる特性がある。そのため、ハンドヘルド型プローブの速さが大きい場合の再構成画像の画質低下は、ユーザーにとって妨害感は少ない。一方、再構成画像の詳細を見たい場合には、ユーザーはハンドヘルド型プローブの速さを遅くして観察するので、制御部153は照射光量の設定値を大きくするので、高い画質の表示画像を提供することができる。
なお、光照射部110が複数個の光源を有し、リフレッシュ周波数に応じて決定される発光の繰り返し周波数または照射光量によって光源111を切り替えてもよい。例えば、リフレッシュ周波数が所定値よりも小さく、照射光量が高くなる場合には、光源111としてLDを用いてもよい。一方、リフレッシュ周波数が所定値よりも大きく、照射光量が低くなる場合には、光源111としてLEDを用いてもよい。このようにリフレッシュ周波数に応じた照射光量を効率的に発生することのできる光源を切り替えて使用することにより、供給電力を効率的に利用することができ、発熱の抑制につながる。また、このようにリフレッシュ周波数によって光源を切り換えることにより、局所的に熱が集中することを避けることができる。
また、光照射部110は、光の照射エリアを、リフレッシュ周波数が高い場合には広く、リフレッシュ周波数が低い場合には狭くしてもよい。すなわち、照射光量が多く必要なリフレッシュ周波数の時に照射エリアを狭くすることによって、被検体に照射される光エネルギー密度を上げてもよい。結果として、リフレッシュ周波数が低い場合において、光音響の発生音圧を大きくすることができるので、表示画像の画質をより良好にすることができる。また、リフレッシュ周波数にかからず画質を揃える場合、リフレッシュ周波数が低い場合の照射光量を下げ、発熱を抑えてもよい。
<第3の実施形態>
次に本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、周期的に繰り返し光照射を行い、表示画像を更新する「リアルタイムモード」と、ユーザーの指示したタイミングに光照射し、画像データを生成・表示する「フリーズモード」とを切り換え可能な光音響装置を説明する。
本実施形態の装置構成は、図1及び図2に示した第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
本実施形態の「フリーズモード」はユーザーの指示(フリーズスイッチON)に同期して発光するモードであり、連続的に光照射を行う「リアルタイムモード」と比べて単位時間当たりの発光回数は小さくなる傾向がある。そのため、「フリーズモード」は、「リアルタイムモード」と比べて1パルスの光量を高くしても、単位時間当たりの発熱量を大きく増加しない傾向がある。そこで、本実施形態では、「リアルタイムモード」における照射光量に比べて、「フリーズモード」の場合には、照射光量を高くする。
例えば、図5(a)に示すタイミングチャートのように、各モードを切り替え、光照射を実行することができる。図5(a)は、第1の実施形態で説明した「高速リアルタイムモード」の間に、ユーザーが入力部170を用いて、フリーズの指示を行った場合を示す。図5(a)の「フリーズ」に示すタイミング(ユーザーによる指示のタイミング)に、制御部153は、入力部170からのユーザーの指示に基づく情報を受け取る。制御部153は、指示情報に基づいて、「フリーズモード」に対応する光照射の制御信号をドライバ回路114に送信する。ドライバ回路114は、光照射の制御信号に基づいて、「フリーズモード」に対応する電力を光源111に供給し、光源111は発光する(図5(a)の「発光」)。本実施形態に係る「フリーズモード」では、光源111は、照射光量が0.1[J]の光を発光する。例えば、1秒に1回フリーズボタンが押されたとするとの仮定と、「フリーズモード」では、平均パワーが0.1[W]であり、発熱量が0.9[W]である。このように、「フリーズモード」においては、「高速リアルタイムモード」に比べて照射光量を高くしても、単位時間当たりの発熱量は所定値より小さくすることができる。また、「フリーズモード」においては照射光量を高くしているため、「高速リアルタイムモード」に比べて表示画像の画質が向上する。
受信部120は、図5(a)の「受信」に示すタイミングで、光源111からの光に起因して生じる光音響波を受信する。演算部151は、図5(a)の「画像生成」に示すタイミングで、受信部120が出力した信号を基に再構成処理を行い、画像データを生成する。そして、制御部153は、表示部160に画像データを送信し、表示部160に画像データに基づいた画像を表示させる。表示部160は、図5(a)の「画像表示」に示す期間、画像データに基づいた画像を表示する。
すなわち、図5(a)に示すタイミングチャートでは、まず0.33秒毎に表示画像(画像1〜3)が更新され、動画像が表示されている間にユーザーがフリーズの指示を行う。そして、ユーザーによるフリーズ指示に基づいた光照射により得られたフリーズ画像(画像4)が指示の後に表示される。すなわち、動画像(画像1〜3)が表示された後に、ユーザーの指示に基づいた光照射に起因する静止画像としてのフリーズ画像(画像4)が表示される。制御部153は、フリーズ指示に基づいて得られた画像データや当該画像データに基づいた表示画像を記憶部152やPACSに転送し、記憶してもよい。
ところで、ユーザーがフリーズの指示を行うタイミングは任意であるため、十分な放熱が完了する前にフリーズ解除の指示がなされる可能性がある。このような場合、ハウジング181内部の温度上昇が顕著となってしまう可能性がある。
そこで、図5(b)に示すように、ユーザーによるフリーズの指示がなされてから時間T1を空けた後に、「フリーズモード」に対応する光照射を行ってもよい。この場合、制御部153は、ユーザーの指示に基づいた情報を受け取ってから時間T1後に「フリーズモード」に対応する電力を光源111に供給するようにドライバ回路114を制御する。このような制御を行うことにより、十分な放熱が完了する前にフリーズ指示がなされた場合であっても、放熱に要する時間を確保することができる。例えば、ユーザーがフリーズ指示を行ってからリアルタイムにフリーズ画像が表示されると感じることができるように、時間T1は0.1秒より短くしてもよい。さらに、放熱に十分な時間を確保するために、時間T1は1秒より短い時間であってもよい。
また、図5(b)に示すように、「フリーズモード」に対応する光照射を行った後に、十分な放熱が完了したところで、再び「リアルタイムモード」に移行してもよい。すなわち、制御部153は、「フリーズモード」に対応する光照射を行った後に、時間T2の期間を空けて「フリーズモード」を解除し、「リアルタイムモード」に移行するように制御してもよい。このモードの移行により表示部160の表示は、静止画像である画像4から、画像5から始まる動画像に切り替わる。例えば、ユーザーがフリーズ指示を行うときは、フリーズ画像を詳細に確認したい場合であるため、時間T2は5秒より長い時間であってもよい。また、放熱に十分な時間を確保するためであれば、時間T2は1秒より短い時間であってもよい。なお、制御部153は、「フリーズモード」から「リアルタイムモード」への移行を、ユーザーの指示に基づいて実行してもよい。
ところで、ユーザーが頻繁にフリーズ指示を行った場合は、単位時間当たりの発熱量が高くなってしまう可能性がある。そこで、制御部153は、単位時間当たりのフリーズ指示に基づいた発光回数に制限を行ってもよい。「フリーズモード」におけるT1、T2の時間は、「フリーズモード」で定められた照射光量と、(T1+T2)で決まる周期で発光した時の単位時間当たりの発熱量が、所定値(例えば1[W])より小さくなるように設定される。また、(T1+T2)時間内にフリーズ指示に基づいた発光回数を1回に制限してもよい。例えば、単位時間当たりのフリーズ指示が所定の回数を超えた場合、ユーザーによる指示を無視するようなファームウエアを用いて実現してもよい。また、ハードウェアによる方法で、フリーズ指示に基づいた発光の制限を実現してもよい。例えば、フリーズ指示の繰り返し周波数の上限値のクロック信号とユーザーによるフリーズスイッチの信号との論理ANDにより生成された信号を用いて発光を制限してもよい。また、フリーズスイッチの信号をアナログあるいはデジタル回路で実現したローパスフィルタで高い周波数成分を除去してもよい。
単位時間当たりのフリーズ指示の回数が所定値に達した場合に、制御部153は、表示部160等にフリーズ指示の制限を促す通知を行ってもよい。例えば、通知手段としては、表示部160にフリーズ指示の制限を促す表示を行う手段の他、表示灯や音声等により通知する手段を採用してもよい。
なお、図5においては、ユーザーによるフリーズ指示に基づいて1パルスの光照射が行われる例を説明した。ただし、本実施形態においては、「フリーズモード」として、ユーザーによるフリーズ指示に基づいて複数パルスの光照射が行われ、複数パルスの光照射により得られた信号データを用いて、フリーズ画像を生成してもよい。この場合も、1パルスあたりの照射光量を周期的な光照射を行う「リアルタイムモード」よりも大きくすることができる。
なお、光照射部110が複数個の光源を有し、モードによって光源111を切り替えてもよい。例えば、照射光量の高い「フリーズモード」では、光源111としてLDを用いてもよい。一方、照射光量の低い「高速リアルタイムモード」では、光源111としてLEDを用いてもよい。このように各モードの照射光量を効率的に発生することのできる光源を切り替えて使用することにより、供給電力を効率的に利用することができ、発熱の抑制につながる。また、このようにモードによって光源を切り換えることにより、局所的に熱が集中することを避けることができる。
また、光照射部110は、光の照射エリアを、「高速リアルタイムモード」では広く、「フリーズモード」では狭くしてもよい。すなわち、照射光量が多く必要なモードの時に照射エリアを狭くすることによって、被検体に照射される光エネルギー密度を上げてもよい。結果として、「フリーズモード」において、光音響の発生音圧を大きくすることができるので、表示画像の画質をより良好にすることができる。また、モード間で画質を揃える場合、「フリーズモード」で照射光量を下げ、発熱を抑えてもよい。
<第4の実施形態>
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、光源111としてLDやLED等を用い、1パルスの照射による光音響信号のS/Nが十分ではない場合に特に好適な実施形態である。1パルスの発光では光量が不足している場合、複数回パルス発光し、得られた各々の光音響信号を加算平均してS/Nを向上させ、加算平均した光音響信号を基に、光音響画像を生成する構成が考えられる。ここで加算平均としては、単純平均や移動平均や重み付け平均等の加算平均処理を採用することができる。
第4の実施形態は1つの再構成画像を得るために複数回パルス発光し、得られた光音響信号を加算平均する実施形態である。第4の実施形態では1つの再構成画像を得るための複数回パルス発光した合計の光量を、前述した照射光量と同等に扱うこととする。このように照射光を扱うことによって、前述した第1〜第3の実施形態に係る光照射条件を適用することができる。また、この場合は、光照射の繰り返し周波数は、加算平均するために多数回パルス発光する間隔から定義される周波数ではなく、再構成画像を取得する周期を基にした周波数(リフレッシュ周波数)に対応する。
図6は、第4の実施形態に係る光源111の制御方法と単位時間当たりの発熱量を説明するためのタイミングチャートである。図6のうち、図4と同様の部分については説明を省略する。
図6は、図4と同様に、照射光の発光、光音響波の受信、画像データの生成、及び画像データの表示の各タイミングを示している。「発光」のタイミングチャートにおける縦軸は、複数回のパルス発光における各々のパルス光の光量を示す。また、複数回のパルス発光による合計の光量(照射光量)も合わせ記した。
なお、図4との違いは、パルス発光を複数回行い、得られた光音響信号を加算平均し、加算平均した光音響信号を基に、画像再構成を行っている点である。このように複数回、パルス発光する場合、複数回のパルス発光における各々のパルス発光の光量自体を制御することは回路が複雑になる。そのため第4の実施形態では、複数回のパルス発光における各々のパルス発光の光量は固定とし、複数回のパルス発光における発光回数を制御して光量(照射光量)を制御する方式とした。
また、上記光量(照射光量)の制御によれば、複数回のパルス発光における各々のパルス発光の光量自体が固定であるため、複数回のパルス発光における各々のパルス発光に伴う被検体内部の光量分布(光量の強度)の変化は少ない。そのため、複数回のパルス発光に対応して、パルス光毎に信号収集部140によるアンプのゲインの制御等を行わなくてもよい。このように、上記の照射光量の制御により、ゲイン制御等の煩雑な制御を行う手間を省くこともできる。
図6(a)において、ハンドヘルド型プローブの通常の動きに対して追従した表示が可能である「リアルタイムモード」を示しており、画像表示のリフレッシュ周波数は、10[Hz]としている。
図6(a)の「発光」に示すタイミングで、制御部153は、光量設定値を0.01[J]をドライバ回路114に設定する。ドライバ回路は制御部153からの0.1秒毎の発光タイミング信号に基づいて、光量設定値に対応するパルス発光回数(たとえば、2[mSec]間隔で0.01/6[J]を6回パルス発光)でLDやLED等の光源111を発光させる。
そして、受信部120は、図6(a)の「受信」に示すタイミングで、光源111からの複数回のパルス発光に起因して生じる光音響波を各々受信し、加算平均する。
演算部151は、図6(a)の「画像生成」に示すタイミングで、受信部120が出力する加算平均した光音響信号を基に再構成処理を行い、画像データを生成する。そして、制御部153は、表示部160に画像データを送信し、表示部160に画像データに基づいた画像を表示させる。表示部160は、図6(a)の「画像表示」に示す期間、画像データに基づいた画像を表示する。
図6(a)に示すタイミングチャートにおいては、まず画像1を0.1秒間表示し、次に画像2を0.1秒表示している。以上の工程を繰り返し、0.1秒毎に新しい画像データに基づいた画像の表示を更新する。
前述したように、ハンドヘルド型プローブの単位時間当たりの発熱量は、照射光量(1つの再構成画像を得るための複数回のパルス発光による合計の光量)と光照射の繰り返し周波数(再構成画像を取得する周期を基にした周波数)で決定される。図6(a)の場合は、供給電力に対する光の変換効率を10[%]と仮定する。この場合、照射光量を0.01[J](1回のパルス発光の光量0.01/6[J]×6回)とすると、光源111の単位時間当たりの発熱量は、0.09/6[J]×6×(1/0.1)=0.9[W]となる。
図6(b)は、「高速リアルタイムモード」のタイミングチャートである。図6(a)と比較して、光照射の繰り返し周波数が3倍であり、照射光量(発光回数)が異なる。図6(b)の繰り返し周波数は図6(a)の3倍の30[Hz]であり、0.033秒周期毎に、光源111は2[mSec]間隔で2回パルス発光する。表示画像の更新は、0.033秒毎に行えるため、追従性も図6(a)に比べ向上している。一方、図6(b)における照射光量は、0.01/3[J](1回のパルス発光の光量0.01/6[J]×2回)、すなわち図15(a)の半分に設定されている。このような設定により、光源111の単位時間当たりの発熱量は、0.9[W]となる。
以上、第4の実施形態は、光照射の繰り返し周波数が10[Hz](第1の繰り返し周波数)である「リアルタイムモード」(第1のモード)を選択することができる。また、光照射の繰り返し周波数が10Hzよりも高い30[Hz](第2の繰り返し周波数)である「高速リアルタイムモード」(第2のモード)を選択することができる。また、「リアルタイムモード」と「高速リアルタイムモード」とを切り換えることができる。また、第1の繰り返し周波数(10[Hz])で、被検体に光を照射する場合には、第1の照射光量(1回のパルス発光の光量0.01/6[J]を6回)で光源111から光が射出されるように制御する。また、第2の繰り返し周波数(30[Hz])で、被検体に光を照射する場合には、第1の照射光量よりも小さな第2の光量(1回のパルス発光の光量0.01/6[J]×2回)、で光源111から光が射出されるように制御する。
以上説明したように、光源111の単位時間当たりの発熱量は、光照射の繰り返し周波数と照射光量により制御できることがわかる。ここで、光照射の繰り返し周波数は、再構成画像を取得する周期を基にした周波数に相当し、照射光量は、発光回数に比例した値(1つの再構成画像を得るための1回のパルス発光の光量×発光回数)に相当する。
上記の説明では、1つの再構成画像を得るための複数回のパルス発光の光量は各々同じ(固定値:0.01/6[J])である構成について説明した。本発明は、複数回のパルス発光の光量が異なっている構成であってもよい。この場合も同様に、1つの再構成画像を得るための複数回のパルス発光による合計の光量を、前述した照射光量と同等に扱うこととすればよい。
図6に示した光照射の繰り返し周波数と照射光量は、一例であり、システムに最適化した他の値であってもよい。
また、「高速リアルタイムモード」を実現するために、図6(c)に示したように、光照射の繰り返し周波数と、照射光量(発光回数)を制御してもよい。図6(b)と同様に図6(c)では、光照射の繰り返し周波数が図6(a)に示した「リアルタイムモード」に比べ3倍であり、発熱量を制御するために、光照射の繰り返し周波数の周期毎に照射光量を変更している。
具体的には、図6(c)に示したように、光照射の繰り返し周期は0.033[s]で、照射光量0.04/6[J](0.01/6[J]を4回パルス発光)と、照射光量0.01/6[J](0.01/6[J]を1回パルス発光)の照射を行う。
この場合は、照射光量に従って、あるフレームの再構成画像はS/Nが向上し、他のフレームの再構成画像はS/Nが低下する。このような制御を行うとリフレッシュ周波数の低下を抑制しつつ、S/Nの低下を抑えた再構成画像も得ることができる。そして、静止画として取得する場合、照射光量の多いフレームの画像を選択するようにすることができる。このような制御を行うことによって、リフレッシュ周波数を高くした「高速リアルタイムモード」であっても、再構成画像のS/Nの低下を押さえながら、プローブ180の昇温を抑制できる。
図6(c)に示した実施形態では複数回のパルス発光の各々の光量は一定である。前述したように、複数回のパルス発光における各々のパルス発光に伴う被検体内部の光量分布(光量の強度)の変化は少ない。そのため、複数回のパルス発光各々に対応して信号収集部140のアンプのゲインの等は固定にしてもよい。また、このような光照射によれば、複数回のパルス発光各々における光音響信号を加算平均する場合、複数回のパルス発光数によらず、同じ条件で再構成を行うことができる利点がある。
前述した第1から第3の実施形態のように、光照射の繰り返し周波数の周期(再構成画像を取得する周期)毎に、一回のパルス発光を行う構成に適用してもよい。この場合は、パルス発光の光量を変更し、信号収集部140のアンプのゲインの等を可変し、パルス発光の光量の変更による光音響信号の変化を補正することによって実現してもよい。
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。