JP2018070540A - 成人t細胞性白血病を含むhtlv−1ウイルス感染に対する腫瘍抗原特異的t細胞 - Google Patents

成人t細胞性白血病を含むhtlv−1ウイルス感染に対する腫瘍抗原特異的t細胞 Download PDF

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Abstract

【課題】成人T細胞性白血病・リンパ腫の新規の治療剤を提供すること。【解決手段】ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患の治療用医薬組成物であって、組換えT細胞レセプター(TCR)を発現する組換えリンパ球を含み、前記リンパ球がCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、前記組換えT細胞レセプター(TCR)が、HLA−A24拘束性であり、HTLV−IがコードするTaxタンパク質のTax301〜309に対する特異性を有し、配列番号1〜28からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域3(CDR3)を含むβ鎖タンパク質を含み、T細胞輸注療法において用いられる医薬組成物が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、特に成人T細胞性白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)に対する免疫療法に関する。従来、成人T細胞性白血病に対する治療は重篤な有害事象を伴う同種造血幹細胞移植療法のみであり、安全かつ有効な治療法はなかったが、腫瘍特異的に働く免疫療法を開発することにより、安全で有効な治療を可能にした。
ATLはヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−I)を原因とする難治性の造血器腫瘍である。特に白血病型・リンパ腫型の患者の予後はきわめて不良であり、多剤併用の化学療法を行っても長期生存者は10%未満である。近年、ATLに対して同種造血幹細胞移植が行われるようになり、一部の患者に根治が得られるようになった。
本願発明者は以前に、骨髄バンクを介した非血縁者間移植においても一部の患者に根治が得られることを報告した(非特許文献1、非特許文献2)。同種造血幹細胞移植の抗腫瘍効果は大量の抗がん剤や全身への放射線照射を用いた移植前処置の役割が大きいが、移植後にドナーの免疫担当細胞による抗腫瘍効果(GVL効果)が発揮されることも知られている。その根拠となっているのは、移植後に移植片対宿主病(GVHD、ドナー免疫細胞が患者臓器を攻撃する合併症)を発症した患者において白血病の再発率が低下するという事実、そして移植後にドナーリンパ球を輸注することによって腫瘍が縮小することがあるという事実である。特にATLはこのGVL効果が強く発揮される疾患であり、実際、本願発明者はATLに対する同種造血幹細胞移植後にGVHDを発症した患者はGVHDを発症しなかった患者と比較して最終的な生存率が優れているということを示した(非特許文献3)。
ATLに対して強力なGVL効果が発揮される理由の一つとして、ATLの腫瘍細胞はHTLV−Iに感染しているため、このウイルスに由来する抗原を標的とする免疫力が働いているということが推測される。しかし、GVHDとGVLは表裏一体の関係にあるため、単純に免疫抑制剤の減量などによってGVL効果の増強を図ると、GVHDの増悪のために臓器障害や感染症による死亡率が高くなってしまう。そこで、より腫瘍特異的に働く免疫療法の開発が熱望されている。
ATLの発症には、その原因ウイルスであるHTLV−Iの転写活性化因子Taxが重要であるとされているが、近年、このHLA−A24拘束性Tax301−309エピトープがワクチン抗原として有用であることが示されている(特許文献1)。本願発明者もこれまでにHLA−A24を有する4症例のATL患者において、同種造血幹細胞移植後のCTLの検討を行い、移植後にTax特異的CTLが増加することを確認した(非特許文献4)。さらに、本願発明者は、移植後のTax特異的CTLのTCRレパトアの多様性は制限されていること、移植後に特徴的なアミノ酸配列(「P−D/P−R」)を有するTCRレパトアを持つCTLが増加すること、この配列は全ての患者において、そして一人の患者においては移植前後の両方に認められたこと、このアミノ酸配列を有するCTLは患者HTLV−I感染細胞に対して強力な細胞傷害活性を有することを報告した(非特許文献4)。
非特許文献5には、患者由来のCTLが他の患者のHTLV−1感染細胞に対する細胞傷害性も示すことが開示されている。さらに、該CTLからクローニングしたTCR α/β遺伝子をT細胞に導入することによる細胞療法を計画していることがDiscussionに記載されている。
非特許文献6には、HLA−A2402陽性ATL癌患者の末梢血より得たhTERT461-469に特異的なT細胞レセプター(TCR)のα鎖およびβ鎖の遺伝子をsiTCRベクターにクローニングして、得られたhTERT-siTCR vector(特許文献2、タカラバイオ株式会社)をCD8T細胞に導入して得られた組換えCTLは、HTLV−I感染細胞に対してのみ傷害させることができたことが開示されている。非特許文献7には、組換えTCRの発現をさらに向上させる組換えベクターやこのベクターを用いた実験結果が示されている。
特許文献3には、遺伝子組換えを行ったT細胞レセプター(TCR)に関して、WT1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ領域中のCDR3をコードする特定のヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチド配列を含むT細胞レセプター遺伝子を導入したHLA−A2402陽性癌患者のリンパ球のセットが開示されている。
国際公開WO 2004/092373 パンフレット 国際公開WO 2008/153029 パンフレット 国際公開WO 2008/108257 パンフレット
Izutsuら、Blood 2004 103:1955-1960 Katoら、Biol Blood Marrow Transplant 2007;13:90-99 神田ら、Blood 2012 119: 2409-2416 Tanakaら、Cancer Research 70(15) August 1, 2010, p6181-6192 Tanakaら、Immunology Letters 158 (2014) p120-125 Miyazakiら、Blood 2013 121: 4894-4901 Okamotoら、Molecular Therapy-Nucleic Acids (2012) 1, e63; doi:10.1038/mtna.2012.52
したがって、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、特に成人T細胞性白血病に対する、安全かつ有効である新規の治療法、例えば免疫療法の開発が望まれている。
上記課題を解決するため、本願発明者らは鋭意研究を行った結果、特定のTCR遺伝子導入細胞がHLA-A24拘束性に、かつHTLV−1感染細胞特異的に強力な細胞傷害活性を示すことを見出し、さらに研究を進めて本願発明を完成させた。
本出願は、例えば以下の発明を提供するものである。
[1] ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患の治療用医薬組成物であって、
組換えT細胞レセプター(TCR)を発現する組換えリンパ球を含み、
前記リンパ球がCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、
前記組換えT細胞レセプター(TCR)タンパク質が、HLA−A24拘束性であり、HTLV−IがコードするTaxタンパク質のTax301〜309(配列番号15)に対する特異性を有し、配列番号3のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる相補性決定領域3(CDR3)を含むβ鎖タンパク質を含み、
T細胞輸注療法において用いられる、医薬組成物。
[2] 前記疾患が成人T細胞白血病・リンパ腫である、[1]に記載の医薬組成物。
[3] 前記リンパ球が前記疾患に罹患した患者に由来する、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4] 前記リンパ球が前記疾患に罹患した患者とは異なる供給源に由来する、[1]または[2に記載の医薬組成物。
[5] 前記HLA−A24拘束性がHLA−A2402拘束性である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[6] 前記β鎖タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[7] 前記β鎖タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2、および配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[8] 前記β鎖タンパク質が配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むβ鎖可変領域(Vβ領域)を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[9] 前記β鎖タンパク質が配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[10] 前記TCRが、配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3を含むα鎖タンパク質を含み、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[11] 前記α鎖タンパク質が、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むα鎖可変領域(Vα領域)を含み、前記組換えTCRが、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[10]に記載の医薬組成物。
[12] 前記α鎖タンパク質が、配列番号12のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含み、前記組換えTCRが、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[10]または[11]に記載の医薬組成物。
[13] 前記リンパ球が、HTLV−Iに感染しておりHLA−A2402を有する標的細胞と接触される場合に、該標的細胞の傷害を引き起こす作用、インターフェロン−γを産生する作用、およびIL−2を産生する作用のうちの少なくとも1つを示す、[1]〜[12]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[14] 前記組換えリンパ球が、造血幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞(BM)、リンパ球系共通前駆細胞、T細胞前駆細胞(ナイーブT細胞)、ナイーブCD8T細胞、または成熟CD8T細胞に由来する、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[15] ビヒクルを含む、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[16] 組換えT細胞レセプター(TCR)を発現する組換えリンパ球であって、
前記リンパ球はCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、
前記組換えT細胞レセプター(TCR)タンパク質は、HTLV−IがコードするTaxタンパク質のTax301〜309(配列番号15)に対する特異性を有し、HLA−A24拘束性であり、配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するβ鎖可変領域(Vβ領域)を含むβ鎖タンパク質を含む、組換えリンパ球。
[17] 前記TCRが、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するα鎖可変領域(Vα領域)を含むα鎖タンパク質を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含む組換えTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[16]に記載の組換えリンパ球。
[18] 組換えTCRを発現するリンパ球を取得する方法であって、
ヒトの造血幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞(BM)、リンパ球系共通前駆細胞、T細胞前駆細胞(ナイーブT細胞)、ナイーブCD8T細胞、または成熟CD8T細胞からなる群より選択される細胞に対して、組換えTCRα及びTCRβをコードするポリヌクレオチドを導入する工程、及び
組換えTCRαおよびTCRβを発現する細胞を単離する工程
を含み、
前記TCRαは配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するα鎖可変領域(Vα領域)を含み、前記TCRβは配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するβ鎖可変領域(Vβ領域)を含む、方法。
[19] 前記TCRが、配列番号12のアミノ酸配列を含むTCRαおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むTCRβを含む組換えTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、[18]に記載の方法。
[20] 上記リンパ球を患者に投与することを含む、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患(例えば、成人T細胞白血病)の治療方法。
[21] 配列番号14に記載されるポリペプチド。
[22] 配列番号14に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[23] 配列番号13に記載されるポリヌクレオチド。
本願発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、特に成人T細胞性白血病に対する、安全かつ有効である新規の治療法、例えば免疫療法を提供できる。ここで、HLA−A2402拘束性を有するATL患者は、日本では最もコモン(約60%)である。したがって、例えばHLA−A2402陽性の癌患者または健常人に由来するリンパ球を用いて本願発明に係るリンパ球を調製することによって、現在は有効な治療法が乏しいATL患者の多くにとって有用な腫瘍免疫治療を提供できることが期待される。
図1は、本発明に係るPDRCTLを用いた免疫療法のin vitro実験の結果を示す。図中、「A24+」及び「A24−」はそれぞれHLA−A2402陽性及び陰性であることを表す。また、X軸の「ET ratio」は、エフェクター細胞対標的細胞の比を表し、縦軸のCTL(%)は死滅した細胞率を表す。 図2は、本発明に係るPDRCTLを用いた免疫療法のin vivo実験の結果を示す。
本願発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、特に成人T細胞白血病・リンパ腫の治療用医薬組成物を提供するものである。
1.ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)について
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)は、ヒトの成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の原因として公知であるレトロウイルスである。ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患としては、ATLが代表的であるが、その他にHTLV−1関連ミエロパチー、HTVL−1ブドウ膜炎を引き起こす場合もある。HTLVには、HTLV−1、HTLV−2、HTLV−3などの複数の型が挙げられる。このうちHTLV−1は、長さ約9kbのプロウイルス遺伝子を有する。HTLV−1のプロウイルス遺伝子は、Tax、Rex、gag、pol、env等の種々のタンパク質をコードする。このうちTaxタンパク質は、完全長として約353アミノ酸残基を有し、宿主細胞内でNF−κB、SRF、CREBなどの宿主の転写因子の活性化、p53等のタンパク質の機能抑制など、多数の機能を有する。
HTLV−1の生体内の感染対象細胞として具体的には、CD4T細胞、CD8T細胞、単球、樹状細胞が挙げられる。これら細胞は、HTLV−1に感染すると、HTLV−1がコードするTax等のタンパク質の部分ペプチド(例えばTax部分ペプチド)を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を介して提示する。そこで、このHTLV−1特異的な部分ペプチドを提示する細胞(すなわちHTLV−1感染細胞)を標的とする細胞であって、生体内で免疫応答を惹起できるCD4T細胞、CD8T細胞(CD8細胞傷害性T細胞、CD8CTLともいう)を用いる免疫療法が、HTLV−1関連疾患、例えばATLの有用な免疫療法として報告されている(特開2008-22702、特開2014-133712、非特許文献6など)。本願発明において使用できるTaxタンパク質のエピトープの例は、Taxの任意の部分ペプチド、好ましくは、Tax301〜309のアミノ酸配列「SFHSLHLLF(配列番号15)」、Tax11〜19、Tax88〜96、Tax272〜280、Tax301〜315、Tax155〜167等の部分ペプチドが公知であるが、これらに限定されない。
2.本願発明の組換えTCR
本願発明は、一実施形態において、HLA−A拘束性であり、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−I)のTax301〜309に特異性を有する組換えT細胞レセプター(TCR)を提供する。本願発明に係るTCRは、好ましくはHLA−A24拘束性であり、さらに好ましくはHLA−A2402拘束性である。本願発明において、1種類以上の組換えTCRを用いることも可能である。
T細胞レセプター(TCR)は、T細胞の抗原認識機能を担うものであり、TCRは、α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖などのタンパク質から構成される。このうち、TCRα鎖タンパク質(TCRα)とTCRβ鎖タンパク質(TCRβ)とのヘテロ二量体、またはγ鎖とδ鎖とのヘテロ二量体が、補助分子としてのCD3複合体(γ、δ、ε、ζを含む)、CD4またはCD8などと一緒になってTCRを形成している。
TCRは、生体内において、標的とする細胞(食細胞、ウイルス感染細胞、癌細胞等)が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を介して提示するペプチド等の異種タンパク質(抗原エピトープ)に対して免疫応答を行う機能を担う。ヒトのMHCは、ヒト組織適合性白血球抗原(HLA)系とも称される。HLAはクラスI及びクラスIIに区分されており、クラスIにはHLA−A、B、C、E、F、G、H、Jが含まれ、クラスIIにはHLA−DR、DQ、DPが含まれる。HLAもまたTCRと同様にα鎖およびβ鎖の複合体によって形成されており、これら鎖を介して抗原エピトープをT細胞に提示する。HLAクラスIは、生体のほぼすべての細胞に存在し、約9アミノ酸残基の長さの抗原エピトープをCTLに提示する。例えば、ウイルス感染細胞がウイルス由来の抗原エピトープをHLAを介して提示すると、その抗原エピトープに特異的なTCRを有するT細胞(CTLなど)が活性化されて、その結果、生体の免疫応答(例えば、ウイルス感染細胞の細胞死)がもたらされて生体防御が行なわれている。
TCRは、通常は抗原エピトープ−HLA複合体との結合によってのみ免疫応答を行うことができる。この制限は「HLA拘束性」といわれる。本明細書においてHLA(またはMHC)拘束性の用語は、TCRに加えて、そのようなTCRを発現しているT細胞、または提示される抗原−HLA複合体を意味するために、各種のペプチド、細胞等と組み合せて使用され得る。TCRと抗原エピトープ−HLA複合体との結合によって免疫応答が生じるが、この免疫応答の例としては、CD8T細胞によるサイトカイン(インターフェロンγ、TNF−α、IL−2等)の分泌が挙げられる。TCRと抗原エピトープ−HLA複合体との結合は、上記サイトカインの分泌を測定することによって間接的に測定可能である。また、緑色蛍光タンパク質(GFP)等の標識を有するHLA(又はそのペプチド断片)と抗原エピトープとの複合体に対してTCRが結合することを検出することによって、TCRと抗原−HLAとの結合を直接的に測定可能である。あるいは、2分子以上の分子の近接によって発光・消光する作用を利用した公知の光学的な検出手段も利用できる。
本願発明に係る組換えT細胞レセプターは、好ましくはヒト白血球抗原A(HLA−A)拘束性である。HLAの種類に関して、例えば造血幹細胞移植の場合、HLA−A、B、C、DRの4つ(4座8抗原)の一致、および、各対立遺伝子(添え字*が付される)の数などが考慮される。よって、例えばこれらHLAの一致が認められると、自家移植のみならず他者への移植の可能性も存在する。日本のATL患者は、HLA−A2402拘束性を有する場合が一般的であり、約60%ともいわれる。特定のHLAに拘束性であるTCRは、例えば、HLA−A24またはHLA−A2402を示すヒト(健常人、患者を含む)由来のナイーブT細胞または末梢血単核細胞(PBMC)から、当該分野で公知の技法により単離することができる(例えば、下記のCurrent Protocol、Molecular Cloningなど)。本願明細書において、「HLA−A24」はHLA−A2402などのサブタイプを含むHLA−A24型を指す。よって、本願発明に係る組換えTCRは、好ましくはHLA−A拘束性でり、より好ましくはHLA−A24拘束性であり、さらに好ましくはHLA−A2402拘束性である。
本願発明の組換えTCRは、CD8T細胞において発現する場合、元のTCRと同等の能力を発揮する。このような機能の例としては、細胞膜上でCD3複合体(γ、δ、ε、ζを含む)およびCD8と一緒になって複合体を形成する能力が挙げられる。また、本願発明の組換えTCRは、好ましくは、TCRαおよびTCRβを含み、抗原エピトープ−HLA(α/β)の3量体複合体と結合する能力を有する。さらにまた、本願発明の組換えTCRは、CD8T細胞の細胞膜上に存在して、免疫応答を行う能力、例えば、抗原エピトープ−HLA複合体と結合する能力を有するものであり、さらにこの結合によって、抗原エピトープ−HLA依存性に抗原エピトープ提示細胞を傷害する能力、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α(TNFα)、サイトカインIL−2などのサイトカインの1つ以上を産生する能力など、上記の能力のうちの1つ以上を有する。本願明細書において、「TCR活性を有する」とは、上記TCRの各能力の1つ以上を有することを指す。
TCRαおよびTCRβは各々、可変領域(Vセグメント+(Dセグメント)+Jセグメント)、及び定常領域(C領域)を有しており、各V領域内には相補性決定領域1〜3(CDR1〜3)が存在する。TCRαおよびTCRβの各CDR1及びCDR2は、対象細胞のHLA(MHC)とTCRとの結合を担い、一方、各CDR3は抗原エピトープ−HLA(α鎖およびβ鎖を含む)の3量体複合体とTCRとの結合を担う領域であり、とりわけTCRβのCDR3は、TCRのCDRの中でも最も多様性に富む領域と考えられている。TCRのCDR3は、通常、10〜18個のアミノ酸残基を有する。本願発明において、各TCR中に含まれる各CDR1〜3の位置を特定するために、公知の解析手段((例えば、IMGT/V-QUEST Search page(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/vquest?livret=0&Option=humanTcR)、Brochet, X. et al., Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)、など。参考文献: Giudicelli, V., Brochet, X., Lefranc, M.-P., Cold Spring Harb Protoc. 2011 Jun 1;2011(6). pii: pdb.prot5633. doi: 10.1101/pdb.prot5633. PMID: 21632778))を利用できる。また、同様の結果が得られる限り当該分野で公知の任意の他の手段も利用できる。
本願発明に用いるTCRは、β鎖タンパク質(TCRβ)が、配列番号1のアミノ酸配列と90%以上(95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号3のアミノ酸配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR3を含む。好ましくは、本願発明に用いるTCRは、TCRβが、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含む。より好ましくは、本願発明に用いるTCRは、TCRβが、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含む。ただし、これらTCRβはいずれも、TCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性(例えば、少なくとも50%以上、好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれ以上の比活性)を有する。本明細書中、β鎖のCDR1〜3はそれぞれCDR1β、CDR2β、CDR3βとも表される。
本願発明に用いるTCRβは、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR3を含み、より好ましくは配列番号3のアミノ酸配列と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR3を含み、最も好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含む。ただし、本願発明に用いるTCRβは、TCRα等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性(例えば、少なくとも50%以上、好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれ以上の比活性)を有するものである。
また、本願発明に用いるTCRβは、配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するβ鎖可変領域(Vβ領域)を含むものであり、より好ましくは、配列番号4のアミノ酸配列と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するVβ領域を含むものであり、最も好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列を含むVβ領域を含むものである。ただし、これらTCRβはいずれも、TCRα等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性(例えば、少なくとも50%以上、好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれ以上の比活性)を有する。なお、特に記載のない限り、Vβ領域はβ鎖のVセグメント、Dセグメント及びJセグメント、又はVセグメント及びJセグメントを含む。
さらにまた、本願発明に用いるTCRβは、配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むものであり、より好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するポリペプチドを含むものであり、最も好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むものである。ただし、これらTCRβはいずれも、TCRα等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する。
本願発明に用いるα鎖タンパク質(TCRα)は、配列番号7のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号9のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるCDR3を含む。好ましくは、本願発明に用いるTCRαは、配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3を含む。より好ましくは、本願発明に用いるTCRαは、配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2、および/または配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3を含む。ただし、これらTCRαはいずれも、TCRβ等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する。本明細書中、α鎖のCDR1〜3はそれぞれCDR1α、CDR2α、CDR3αとも表される。
また、本願発明に用いるTCRαは、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するα鎖可変領域(Vα領域)を含むものであり、より好ましくは、配列番号10のアミノ酸配列と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するVJセグメントを含み、最も好ましくは、配列番号10のアミノ酸配列を含むVJセグメントを含む。ただし、これらTCRαはいずれも、TCRβ等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRと実質的に同等のTCR活性を有するタンパク質である。なお、特に記載のない限り、Vα領域はTCRαのVセグメント及びJセグメントを含む。
さらにまた、本願発明に用いるTCRαは、配列番号12のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むものであり、より好ましくは、配列番号12のアミノ酸配列と95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を有するポリペプチドを含むものであり、最も好ましくは、配列番号12のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。ただし、これらTCRαはいずれも、TCRβ等と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRと実質的に同等のTCR活性を有するタンパク質である。
本願発明に用いるTCRは、上記のいずれかのTCRαとTCRβとを任意の組み合わせで用いることができる。例えば、上記のCDR1〜3αの少なくとも1つを有するVα領域と、上記のCDR1〜3βの少なくとも1つを有するVβ領域を組み合わせて含むことができる。ただし、これらTCRαおよびTCRβはいずれも、CD8等の他のTCR構成タンパク質と一緒になってTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαおよび配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβを含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する。
本願発明に係る組換えTCRが含み得る、上記の様々な相同性を有するアミノ酸配列は、TCR活性を実質的に有する限り、遺伝子組み換えなどの公知技術を利用して適宜作製できる。例えば、本願発明に用いるTCRβは、CDR1、CDR2またはCDR3の各アミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。好ましくは、本願発明に用いるTCRβは、CDR3以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。より好ましくは、本願発明に用いるTCRβは、CDR1〜3のアミノ酸配列以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。さらに好ましくは、本願発明に用いるTCRβは、Vβ領域のアミノ酸配列以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。上記のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加は、合計で、例えば1〜50個、1〜40個、1〜39個、1〜38個、1〜37個、1〜36個、1〜35個、1〜34個、1〜33個、1〜32個、1〜31個、1〜30個、1〜29個、1〜28個、1〜27個、1〜26個、1〜25個、1〜24個、1〜23個、1〜22個、1〜21個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個(1〜数個)、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個または1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列であり得る。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加の数は、一般的に小さい程好ましい。さらにまた、本願発明に用いるTCRαについても、上記と同様に1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。より具体的には、本願発明に用いるTCRαは、CDR3以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。より好ましくは、本願発明に用いるTCRαは、CDR1〜3以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。さらに好ましくは、本願発明に用いるTCRαは、Vα領域以外の位置において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加を含み得る。ただし、これら組換えTCRαおよびTCRβはいずれも、組み合せてTCRを形成する場合に、HLA−A24拘束性であり、配列番号6のアミノ酸配列を有するTCRβおよび配列番号12のアミノ酸配列を有するTCRαを含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する。好ましくは、本願発明に係るTCRは、配列番号3および配列番号9のアミノ酸配列を含むものであり、より好ましくは配列番号4及び配列番号10のアミノ酸配列を含むものであり、さらに好ましくは配列番号6及び配列番号12を含む。また、本願発明に係るTCRは、配列番号14に記載されるポリペプチドより生成され得る。
また、本願発明に係るTCRを形成するタンパク質は、上記の免疫応答能力を維持する限り、必要に応じてアミノ酸配列を適宜改変することも可能である。タグ等のタンパク質断片を、例えばN末端またはC末端に含み得る。このようなタグの例としては、His残基が4個〜8個、好ましくは6個連続すするHisタグ(USP 4,569,794など)、Flagタグ(Sigma-Aldrichなど)、HAタグ(Clontechなど)、c-mycタグ(Clontechなど)、GSTタグ(Clontechなど)などの公知のものが挙げられる。これらタグは、1〜15個のアミノ酸を含むリンカーを介して上記TCRα又はTCRβと連結することができる。さらに本願発明のTCRは、本願発明の目的である上記の免疫応答能力を維持する限り、公知のリンカーを用いてTCRαとTCRβとが連結された状態で発現されてもよい。このようなリンカーの例としては、2Aペプチドのような翻訳後に自己切断されるリンカー(Szymczakら、Nat Biotechnol 22:589-594, 2004、非特許文献7)、一本鎖抗体やCARTなどで用いられる非切断型のリンカーなどが挙げられる。2Aペプチドとしてはporcine teschovirus-1由来のP2Aペプチド、thosea asigna virus由来のT2Aペプチド、equine rhinitis A virus由来のE2Aペプチド等が例示される。例えば、本願発明に係る配列番号16に記載されるポリペプチドは、P2Aペプチドを含有しており、翻訳後に自己切断されてTCRαおよびTCRβを生成する。
本発明のタンパク質(ポリペプチド)において相互に置換可能なアミノ酸残基の例を以下に示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
また、本願発明において用いられる好ましいポリヌクレオチドとしては、上記の種々のアミノ酸配列を有するTCRαおよびTCRβをコードする種々のポリヌクレオチドが挙げられる。このようなTCRαおよびTCRβのポリヌクレオチドの最も好ましい例として、それぞれ配列番号5および11のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。例えば、本願発明の実施において、宿主細胞が保有するTCRをコードするポリヌクレオチドとの差別化等の理由により、本願発明に係るTCR(αおよびβ)をコードする各ヌクレオチド配列を改変できる。このようなポリヌクレオチドの例としては、例えば、配列番号5または11のポリヌクレオチド配列において、1個以上(例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜25個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個(1〜数個)、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個など)のヌクレオチドの欠失、置換、挿入および/または付加(またはこれらの組合せ)を有するポリヌクレオチドが挙げられる。ただし、これら改変したポリヌクレオチドは、好ましくは改変する前と実質的に同等のTCR活性を有するポリペプチドをコードするものであり、より好ましくは改変する前と同じポリペプチドをコードするものである。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、発現させる種におけるコドン優先度を考慮してヌクレオチドを適宜改変することもできる。
本願発明において適宜利用されるアミノ酸置換またはヌクレオチド置換は、当業者に公知である種々の遺伝子操作技術を用いて作製することができる。このような遺伝子操作手順については、例えば、Molecular Cloning 3rd Edition, J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press. 2001、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997などを参照することができる。
上記のアミノ酸配列やポリヌクレオチド配列の同一性または相同性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264-2268,1990; Proc. Natl. Acad. Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403,1990)。本願発明においてBLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターとしてscore=100、wordlength=12を用いるものとする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合、パラメーターとしてscore=50、wordlength=3を用いるものとする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
本願発明に係る組換えTCRとして利用可能である、さらなるTCRのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、例えはATLに罹患した患者より採取したTCRを解析すること、又はTCRレパトア解析等の公知の方法によって取得することができる(特開2013-176373など)。TCRレパトア解析において、目的の抗原に応答するTCRを有する細胞集団から、各細胞のTCR(TCRα及びTCRβ)をコードするヌクレオチド配列(遺伝子上のV領域、D領域、J領域、C領域のヌクレオチド配列)の配列決定を網羅的に行って、体内における利用頻度、存在期間、抗原結合性等の各種パラメーターを考慮して、適切なTCRを選定して利用することが可能である。
3.本願発明の組換えリンパ球及びその調製方法
本願発明は、本願発明の上記の組換えT細胞レセプターを有するリンパ球に係るものである。好ましくは当該リンパ球はヒト由来のCD8T細胞であり、より好ましくはHLA−A24を有するCD8T細胞であり、さらに好ましくはHLA−A2402を有するヒトCD8T細胞である。このようなリンパ球は、例えば、T細胞に分化可能な細胞に対して、当該分野で公知の技法を用いて遺伝子組換えおよび分化誘導を行うことによって、単離して取得することができる(例えば、前出のCurrent Protocol、Molecular Cloningなど)。
本願発明は、一実施形態において組換えヒトリンパ球を提供する。本願発明において、1種類以上のTCRを用いるために、1種以上のリンパ球を組み合わせて用いることができる。本願発明に係るリンパ球を調製する方法は、例えば、上記の本願発明の組換えT細胞レセプターをコードするポリヌクレオチドを対象の細胞に導入する工程、目的のTCRを発現する細胞を選択する工程を含む。選択された細胞がTCR活性を備えることを確認する工程を含み得る。ここで、本願発明の組換えTCRαおよびTCRβをコードするポリヌクレオチドは、別々のプロモーター配列によって発現制御されてもよいし、IRESを用いるなどによって1種のプロモーター配列によって発現制御されてもよい。プロモーター配列は、前記のリンパ球において機能するものであれば特に限定はなく、哺乳動物由来のプロモーター(PGKプロモーター、EF1−αプロモーター、β−グロビンプロモーター等)やウイルス由来のプロモーター(CMVプロモーター、SV40プロモーター、MMLV−LTRプロモーター、HIV−LTRプロモーター等)が使用できる。本願発明の組換えTCRαおよびTCRβをコードするポリヌクレオチドは、種々の公知のベクター、例えばウイルスベクターに組み込むことができる。そのような公知のウイルスベクターとしては、レトロウイルス由来のベクター(例えば、レンチウイルス由来のベクター、具体例としてはHIV由来のベクター)、アデノウイルス由来のベクター、アデノ随伴ウイルス由来のベクターが挙げられるがこれらに限定されない。本願発明の組換えT細胞レセプターをコードするポリヌクレオチド(TCRαをコードするポリヌクレオチドおよび/またはTCRβをコードするポリヌクレオチド)、ならびに前記ポリヌクレオチドが組み込まれたベクターは、いずれも本発明の一実施形態である。
本願発明において、長期にわたって安定して導入遺伝子を発現するために、好ましくはレトロウイルスに由来するウイルスベクターを用いる。本願発明に用いるウイルスベクターは、具体的には、Clontech社から市販されるpMSCVneo(カタログ番号:631461)、siTCRベクター(WO 2008/153029、WO 2012/157742)などの公知のプラスミドベクターを用いて調製できる。siTCRベクターにはヒトTCRα鎖、β鎖の発現を抑制するsiRNA発現ユニットが搭載されている。このsiRNAはヒトTCRα鎖、β鎖のmRNAの、定常領域をコードする部分の塩基配列の一部を標的として認識する。本願発明の組換えT細胞レセプターをコードするポリヌクレオチドについて、コードされているアミノ酸配列を変えることなくsiRNAの標的となる塩基配列を変更したうえでsiTCRベクターに組み込むことができる。こうして作製されたウイルスベクターで遺伝子導入された細胞では、内在性のTCR発現は抑制され、本発明の組換えT細胞レセプターが優勢に発現される。これらプラスミドベクターから組換え遺伝子を収容したウイルスベクターを調製する方法もまた公知であり、例えばpMSCVneoの場合は、公知のパッケージング細胞PG13(ATCC:CRL-10686)を用いることができる。あるいは、例えば組換えウイルスの構造タンパク質を発現するためのパッケージングプラスミドと一緒に上記レトロウイルスベクターを培養細胞(293T細胞など)に導入して組換えウイルスを調製することもできる。得られた組換えウイルス粒子を、目的のT細胞に分化可能な細胞に感染させることによって、目的の組換えTCRαおよびTCRβを発現する組換えリンパ球が得られる。必要な場合、得られた組換えリンパ球を増殖させ分化せることによって、必要量のCD8CTLを得ることができる。
本願発明の組換えリンパ球は、不要な免疫応答(例えば移植拒絶)を避けるため、治療対象となる患者から採取した細胞に対して遺伝子組換えを行うことによって得ることも可能である。代替として、造血幹細胞の移植の場合と同様に、HLA−A、B、C、DRの4つ(4座8抗原)の一致、および各対立遺伝子(*を付される)の数などを考慮した上で、治療対象とは異なるヒト個体から採取したリンパ球を用いて得ることも可能である。
本願発明の一実施形態において、CD8CTLに分化可能な細胞を用いて本願発明に係るリンパ球を調製する方法が提供される。さらに本願発明に係る方法において、上記の細胞に対して、遺伝子導入操作を行って本願発明に係る組換えTCRを発現させる工程、組換えTCRを発現する成熟CD8CTLを得る工程を含む方法が提供される。必要な場合、組換えTCRを発現する成熟CD8T細胞を得るために、細胞を分化させる工程を含み得る。本願発明に用いるCD8CTLに分化可能な細胞の供給源は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり、好ましくはヒトであり、さらに好ましくはHLA−A24を有するヒトであり、さらにより好ましくはHLA−A2402を有するヒトであり、最も好ましくはHLA−A2402を有する治療対象であるヒト患者である。これら供給源のより具体的な細胞としては、造血幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞(BM)、リンパ球系共通前駆細胞、T細胞前駆細胞(ナイーブT細胞)、ナイーブCD8T細胞、および成熟CD8T細胞が挙げられるが、これらに限定されない。上記の各細胞に組換え遺伝子を導入して発現させる方法は公知であり、例えば、前出のCurrent Protocol、Molecular Cloning等に記載の方法が挙げられる。
CD8CTLに分化可能な細胞をインビトロでCD8CTLに分化させる方法もまた公知であり、例えば、特開平5-336960、特許文献2などに記載の方法が挙げられる。例えば、T細胞又はその前駆細胞に対して予備刺激を行うことができる。この予備刺激の具体的な通常の手順の例としては、CD3リガンドの存在下にT細胞又はその前駆細胞、あるいはこれらを含む細胞集団を培養する手順が挙げられる。CD3リガンドとしては、抗CD3抗体、PHA、PMA+イオノマイシンなどが公知である。刺激後の分化した細胞は、フローサイトメーター等の公知の細胞分離手段を用いて分離して、目的のリンパ球である組換えCTLを得ることができる。
4.本願発明の医薬組成物
本願発明は、一実施形態において、本願発明に係る組換えリンパ球を含む医薬組成物を提供する。本願発明の医薬組成物は、本願発明に用いることができる上記の組換えTCRを発現する、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である組換えリンパ球を含む。また、本願発明の医薬組成物は、本願発明に係る組換えリンパ球に加えて、ビヒクルを含み得る。ビヒクルは組換えリンパ球細胞に対して等張性であり薬学的に許容可能であることが好ましい。そのようなビヒクルの例として、生理食塩水、リンゲル液などが挙げられる。さらに本願発明の組成物は、必要に応じて、保存剤、着色剤などの公知の薬学的に許容可能な添加物を含むことができる。
本願発明の医薬組成物は、好ましくはT細胞輸注療法において用いられる。このT細胞輸注療法は、一般的には、(1)患者から血液や骨髄中に含まれるリンパ球(腫瘍浸潤リンパ球、末梢血リンパ球を含む)を採取する工程、(2)採取したリンパ球を体外で培養する工程(抗原、サイトカインで刺激する)、(3)腫瘍細胞特異的T細胞を増殖させる工程、(4)前処置として患者の体内リンパ球を除去する工程、(5)増殖した腫瘍細胞特異的T細胞を患者に輸注する工程、を含み得る。T細胞輸注療法の公知の例として、転移性悪性黒色腫瘍に関するMART-I、大腸がんに関するCEAまたはHer2/neu、転移性悪性黒色腫用等に関するMAGE-A3、慢性リンパ性白血病等に関するCD19、濾胞性リンパ腫等に関するCD20を標的としたT細胞輸注療法の臨床例が報告されている(実験医学2013年Vol.31、No.12(増刊)、179(2003)-184(2008)頁、実験医学 2015年Vol.33、No.14、2201〜2209頁)。
T細胞輸注療法における(1)患者から血液や骨髄中に含まれるリンパ球を採取する工程として、例えば、全血サンプルから末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cell; PBMC)を、Ficoll を用いた密度勾配遠心分離によって分離し取得する方法が挙げられる。およそ血液1mLから10個以上のPBMCを取得することが可能であり、操作の点から1×1010個を採取目標とする場合もあるが、これ以外の公知の数が用いられても。また、細胞表面マーカー(CD8など)に対する抗体および磁気ビーズを用いて、目的のリンパ球を単離する方法も公知である(STEMCELL TECHNOLOGIES社、カタログ番号ST-18000など)。
また、上記工程(4)の前処置は、T細胞輸注の効果を高めるために行われる。治療効果が向上する一例として、輸注療法単独によるレスポンスレートが約40%、骨髄非破壊的前処置を加えることによって約50%、全身照射を含めた骨髄破壊性前処置を加えることによって約70%に向上し得る。この前処置の程度は、本来の造血機能が低下することとのバランスが医師によって検討される必要がある。また、組換えTCRを用いる場合、体内でのネガティブセレクションを経ていない自己応答性のTCRが細胞表面に元から存在し得ること、抗原が自己のものと交差反応性を有することなどに起因して、副作用が生じ得ることが公知である。
T細胞輸注療法における代替の手順として、標的に特異的なリンパ球を遺伝子組み換えによって調製する方法も存在する(実験医学2013年Vol.31、No.12(増刊)、179(2003)-184(2008)頁、実験医学 2015年Vol.33、No.14、2201〜2209頁)。例えば、採取した血液中に目的の腫瘍細胞特異的リンパ球が存在しないか非常に少ないなどの場合に有用である。この手順の概要としては、例えば、上記工程(2)及び(3)の代替として、(2’)組換えTCRをコードする遺伝子を導入する工程、(3’)遺伝子組換えTCRを発現する腫瘍細胞特異的T細胞を増殖させる工程、を含み得る。本願発明の背景の項において説明したとおり、移植後に移植片対宿主病(GVHD、ドナー免疫細胞が患者臓器を攻撃する合併症)を発症する可能性を考慮して、好ましくは患者から採取した細胞を用いるのが最適であるが、場合によっては、HLA適合性の他人から採取した細胞を使うことも可能である。また、TCRをキメラ抗原受容体(CAR)に代替する方法も公知であり(Eshharら、Proc Natl Acad Sci USA 90: 720-724, 1993)、実際の治験に利用されている。
本発明の医薬組成物の投与量は特に限定されず、疾患の種類、患者の年齢や症状、投与経路、治療の目的、併用薬剤の有無等の種々の条件に応じて適切な投与量を選択することが可能である。本発明の医薬組成物の投与量は、例えば、成人(例えば、体重60kg)に対して、1回当たり10〜10個、好ましくは10〜10個、より好ましくは10個の本願発明に係る組換えリンパ球(すなわち、CD8CTL)を患者に注射することによって投与できる。投与頻度は、投与される患者の全体的な健康状態を考慮して担当の医師が適宜決定できる。具体的な投与頻度として、単回投与、1〜4週間間隔もしくは毎週1〜2回で合計2〜5回の反復投与などが挙げられる。また、ドナー・リンパ球(DLI)輸注療法に準じた公知の用量、投与頻度を用いることもできる。
5.本願発明のその他の用語について
本明細書中に用いられる各用語が示す意味は以下のとおりである。本明細書中、特には説明されない用語については、当業者が通常理解する用語が意味する範囲を指すことが意図される。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「核酸」、「遺伝子」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「ヌクレオチド配列」は、「核酸配列」または「塩基配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。例えば、「配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメント」とは、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列を含むポリヌクレオチドまたはその断片部分が意図される。
本発明に係る「ウイルスゲノム」および「ポリヌクレオチド」は各々、DNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得るが、場合によってはRNA(例えば、mRNA)の形態であってもよい。本明細書において使用されるウイルスゲノムおよびポリヌクレオチドは各々、二本鎖または一本鎖のDNAであり得る。一本鎖DNAまたはRNAの場合、コード鎖(センス鎖としても知られる)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であってもよい。
本明細書において、「タンパク質」と「ポリペプチド」とは相互に交換可能に用いられ、アミノ酸の重合体が意図される。本明細書において使用されるポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のポリペプチドの部分ペプチド(本明細書中、本発明の部分ペプチドと略記する場合がある)としては、前記した本発明のポリペプチドの部分ペプチドで、好ましくは、前記した本発明のポリペプチドと同様の性質を有するものである。また、本出願において、T細胞レセプター(TCR)タンパク質を表す場合にT細胞レセプター(TCR)とのみ記載することもある。
本明細書において、用語「プラスミド」は、種々の公知の遺伝子要素、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体等を意味する。プラスミドは特定の宿主において複製することができ、そして細胞間で遺伝子配列を輸送できる。本明細書において、プラスミドは、種々の公知のヌクレオチド(DNA、RNA、PNAおよびその混合物)を含み、一本鎖であっても二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖である。本発明において使用されるプラスミドは、直鎖状であっても環状であってもよい。
以下、本願発明に係る実験例及び実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実験例又は実施例に限定されるものではない。
(1)HTLV−1 Tax特異的CTLクローンPDRCTLの同定とそのT細胞レセプター(TCR)α鎖及びβ鎖の遺伝子配列の決定
同種造血幹細胞移植を施行したHLA−A2402を有する成人T細胞白血病(ATL)患者あるいはHTLV−1無症候性キャリア健常人(AC)から採取した末梢血サンプルから、HLA−A24拘束性Tax301−309ペプチド(SFHSLHLLF)/HLAテトラマー試薬を用いてHTLV−1 Tax特異的CD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)をフローサイトメトリーで同定した。
同定したTax特異的CTL(Tax−CTL)集団をセルソーター(FACS AriaII)で一細胞ずつPCRチューブ中に単離し、TCRβ鎖C領域特異的プライマー(BC−primer)(配列番号40)及びSuperScript III 逆転写酵素等を含む反応用緩衝液を用いて逆転写反応を行い、1細胞ごとにTCRβ鎖のcDNAを合成した。
次に、得られたcDNAを鋳型として、24種類のTCR−β鎖V遺伝子領域特異的プライマー群(配列番号16〜39)と3’BC−primer(配列番号41)、3’BC−primerより上流に設定したTCR−β鎖C領域特異的プライマー(5’BC−primer)(配列番号42)を用いて、合計75サイクルのPCR反応を行い、TCR−β鎖の相補性決定領域3(CDR3)の遺伝子を増幅させた。PCR反応は、95℃で2分間保持後に、94℃で45秒(変性)、57℃で45秒(アニーリング)、72℃で50秒(伸長)のサイクルで行った。その他の詳細な条件及び結果などについては、Yukie Tanaka-Harada et al.( Cancer Sci. 2010 Mar; 101(3):594-600. doi: 10.1111/j.1349-7006.2009.01453.x. Epub 2009 Dec 4)も参照のこと。
用いたプライマー群の各配列及び用いた5’側プライマー混合物(S1〜S8)を下記表1に示す。
PCR反応で増幅後のcDNAに特異的なV遺伝子プライマーを用いて、自動DNAシークエンサーでDNA遺伝子解析を行い、単細胞レベルでTCR−β鎖CDR3領域のアミノ酸配列を決定した。このような単細胞レベルでのTax301−309特異的CTLのTCRレパトア解析を、1サンプルにつき120細胞程度、ATL患者及びAC複数例で行った。
解析の結果、TCR−β鎖CDR3領域にP(プロリン)−D(アスパラギン酸)−R(アルギニン)という特徴的アミノ酸配列を持つTax−CTLが、Tax301−309特異的CTLのTCRβ鎖に含まれている事が判明した。
さらに、上記HT−9由来のTax−CTL(PDRCTL)クローンを細胞培養によって樹立した。樹立後のPDRCTLクローンからRNAを抽出後、5’RACE法にてTCRα及びβ鎖全長遺伝子をクローニングし、各48クローンずつシークエンス解析を行い、PDRCTLのTCRα鎖及びβ鎖の遺伝子配列を決定し(α鎖:配列番号11;β鎖:配列番号5)、TCRα鎖及びβ鎖のアミノ酸配列を決定した(α鎖:配列番号12;β鎖;配列番号6)。
(2)PDRCTLのTCR遺伝子導入細胞の作成
まず、非特許文献7(Okamotoら、2012)に記載されるpSplice-b2Aa-siTCRを使用して本願発明に係る組換えTCR発現レトロウイルスベクタープラスミドを以下の手順により構築した。構築に使用したpSplice-b2Aa-siTCRの概要は以下のとおりである(非特許文献7より)。
(Ψ:パッケージングシグナル、5’LTR:マウス白血病ウイルスMLV由来のもの、3’LTR:マウス幹細胞ウイルスMSCV由来のもの、SD:スプライシングドナー、SA:スプライシングアクセプター、siRNA:低分子干渉RNA、P2A:-SGSG-リンカーペプチド+T2Aペプチド、TCRα/β:TCRα/β鎖)

HT−9由来のTax−CTLクローン細胞(以下、PDRCTL)が発現するTCRα及びTCRβの全長cDNAを以下の手順でクローニングした。当該クローン細胞から全RNAを採取し、市販のキット(CapFishing Full-length cDNA Premix kit:SeeGeen社、K2000)及び逆転写酵素を用いて、当該キットに添付の手順書に従って、5’末端にアダプター配列を含むcDNAライブラリーを合成した。得られたcDNAライブラリーをテンプレートとして、5’末端のアダプター配列のプライマー(前記キットに添付のもの)と、TCRα/βのC末側と対応するプライマーである3−TRa−C、3−TRb−C1または3−TRb−C2(それぞれ配列番号43〜45)とを組み合わせてPCR反応を行い、TCRα及びTCRβC2のPCR産物をTAクローニングベクターにクローニングし、ヌクレオチド配列決定を行って、目的のTCRα鎖およびTCRβ鎖の全長cDNAを得た(それぞれ配列番号11および配列番号5)。
得られたcDNAの可変領域部分(V領域、すなわちV(D)JセグメントまたはVJセグメント)を、MAGE−A4特異的TCR遺伝子が搭載されたpSplice-b2Aa-siTCR(非特許文献7)の該当する部分に挿入し、さらに、pSplice-b2Aa-siTCRのT2Aペプチドをコードする配列をporcine teschovirus-1由来のP2Aペプチドをコードする配列に置換して本願発明のTCRα及びTCRβを発現するためのベクターpMu1-HTLV-Tax-siTCRを得た。

次に、得られたpMu1-HTLV-Tax-siTCRをPG13細胞に3回感染させてproducer細胞を作製し、このproducer細胞より取得した組換えGalvレトロウイルスを健常ドナー由来のPBMCに感染させ、本願発明に係るTax301-309特異的TCR遺伝子導入リンパ球(以下、PDRCTLともいう)を作成した。
(3)PDRCTLのTax認識能とHTLV−1 Tax特異的なサイトカイン産生能
TaxペプチドとHLA分子の複合体との4量体であるTaxテトラマーに対するCTLの結合反応を利用して、上記(2)から得られた本願発明に係るPDRCTLのTaxペプチド−HLA複合体の認識能を評価した。使用したテトラマーの構成は、Tax301〜309アミノ酸(SFHSLHLLF)を含むものである。2名の健常人ドナーから得られたPBMCより作成したPDRCTLについて、蛍光標識されたTaxテトラマー及び抗CD8抗体を使用したフローサイトメトリーによってテトラマー陽性細胞、CD8陽性細胞それぞれの存在率を測定した。その結果、両ドナー由来のPDRCTLにおける「テトラマー陽性かつCD8陽性」の細胞の存在比率はそれぞれ56.8%、70、9%であった。また、CD8陽性細胞画分におけるテトラマー陽性細胞の比率はそれぞれ75.3%、81.3%となった。陰性対照として測定に供した、ウイルスを感染させていないPBMCではテトラマーとの結合は認められなかった。この結果、PDRCTLがTax301−309ペプチドとHLA分子との複合体に結合可能なTCRを発現していることを確認した。

次に、Tax特異的なサイトカイン産生能を評価するために、HLA−A2402であるATL患者由来のHTLV−1感染細胞と、上記(2)で得たPDRCTLとを加えて、IFN−γの産生をELISAで評価した。
上記の評価実験の結果、本願発明に係るPDRCTLは、HTLV−1感染細胞の表面抗原複合体(すなわちTax301−309ペプチドとHLA分子との複合体)に結合する能力、この抗原複合体に依存してIFN−γを産生する能力を有することを確認した。
(4)Tax特異的TCR遺伝子導入細胞を用いた免疫療法のin vitro実験
標的細胞(MT−2(HTLV−1感染細胞株:A24+)、MT−4(HTLV−1感染細胞株:A24−)、患者細胞(A24+:2種、A24−:1種))をカルセイン染色した後、(2)で作成したTax特異的TCR遺伝子導入細胞(PDRCTL)、または陰性コントロール細胞を加えて6時間共培養した後、テラスキャンシステム(テラスキャンVPC2)で蛍光強度を自動測定し、標的細胞に対する細胞傷害性を評価した(図1)。
図1に示すとおり、本願発明に係るPDRCTLは、HLA−A2402陽性であるHTLV−1感染細胞MT−2、及びHLA−A2402陽性である患者細胞に特異的に細胞傷害性を示すことを確認した。
(5)Tax特異的TCR遺伝子導入細胞を用いた免疫療法のin vivo実験
6週齢のNOD/Shi−scid,IL−2RγKO(NOG)マウスにHLA−A2402陽性ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子導入HTLV−1感染細胞株(LUCMT2)1×10個を腹腔内注射する。その3週後、マウス体内でLUCMT2が増殖していることを確認した(図2:day0)。治療の開始を、上記(2)のPDRCTLあるいは陰性コントロール細胞を2×10個ずつ毎週1回繰り返し尾静脈から投与して行った(合計4回)。腫瘍浸潤の経過、あるいは投与されたPDRCTLによる抗腫瘍効果等のマウス生体内での様子を、in vivoイメージング(IVIS)で体外からモニタリングした。同時に末梢血中の免疫細胞分画などの評価を、尾静脈より採血後、フローサイトメーター(BD FACS Fusion)で解析した(図2:day7〜day35)。
この実験の結果、本願発明に係るPDRCTLを注射したマウスにおいて、腫瘍細胞の増殖を抑えて宿主の長期生存が可能であること、腫瘍の縮退や完治もまた見込めることが示された(図2:day35など)。したがって、本願発明のCTLは、ATLの輸注療法において高い有効性を有することを実証した。
本願発明は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患、特に成人T細胞性白血病に対する、安全かつ有効である新規の医薬組成物、この医薬組成物を用いる治療法、特にT細胞輸注療法を提供することができる。本願発明に係るHLA−A2402拘束性を有するATL患者は、日本では最もコモン(約60%)であり、さらに、アジア諸国ではパプア・ニューギニアを中心としたオセアニア地域のメラネシア人の間にも HTLV−1キャリアが観察されている。よって、本願発明は、日本および海外においても、成人T細胞性白血病の治療のための安全かつ有効である医薬組成物を提供することが可能である。
配列番号1:HT-9のβ鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号2:HT-9のβ鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号3:HT-9のβ鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号4:HT-9のVβ領域のアミノ酸配列
配列番号5:HT-9のTCRβ全長のcDNA配列
配列番号6:HT-9のTCRβ全長のアミノ酸配列
配列番号7:HT-9のα鎖CDR1アミノ酸配列
配列番号8:HT-9のα鎖CDR2アミノ酸配列
配列番号9:HT-9のα鎖CDR3アミノ酸配列
配列番号10:HT-9のVα領域のアミノ酸配列
配列番号11:HT-9のTCRα全長のcDNA配列
配列番号12:HT-9のTCRα全長のアミノ酸配列
配列番号13:TCRβ−P2A−TCRαポリペプチドのcDNA配列
配列番号14:TCRβ−P2A−TCRαポリペプチドのアミノ酸配列
配列番号15:Tax301〜309のアミノ酸配列
配列番号16:プライマー1/2:TRBV9/TRBV5
配列番号17:プライマー3:TRBV25
配列番号18:プライマー4:TRBV10
配列番号19:プライマー5:TRBV20
配列番号20:プライマー6:TRBV28
配列番号21:プライマー7:TRBV2
配列番号22:プライマー8:TRBV29
配列番号23:プライマー9:TRBV7
配列番号24:プライマー10:TRBV27
配列番号25:プライマー11:TRBV7
配列番号26:プライマー12:TRBV12
配列番号27:プライマー13:TRBV11
配列番号28:プライマー14:TRBV19
配列番号29:プライマー15:TRBV30
配列番号30:プライマー16:TRBV4
配列番号31:プライマー17:TRBV3
配列番号32:プライマー18:TRBV18
配列番号33:プライマー19:TRBV21
配列番号34:プライマー20:TRBV14
配列番号35:プライマー21:TRBV23
配列番号36:プライマー22:TRBV6
配列番号37:プライマー23:TRBV24
配列番号38:プライマー24:TRBV13
配列番号39:プライマー25:TRBV15
配列番号40:プライマー26:BC
配列番号41:プライマー26:3’BC
配列番号42:プライマー27:5’BC
配列番号43:TCRα用 3−TRa−C
配列番号44:TCRβC1用 C−TCb−C1
配列番号45:TCRβC2用 C−TRb−C2

Claims (19)

  1. ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)に起因する疾患の治療用医薬組成物であって、
    組換えT細胞レセプター(TCR)を発現する組換えリンパ球を含み、
    前記リンパ球がCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、
    前記組換えT細胞レセプター(TCR)タンパク質が、HLA−A24拘束性であり、HTLV−IがコードするTaxタンパク質のTax301〜309(配列番号15)に対する特異性を有し、配列番号3のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる相補性決定領域3(CDR3)を含むβ鎖タンパク質を含み、
    T細胞輸注療法において用いられる、医薬組成物。
  2. 前記疾患が成人T細胞白血病・リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記リンパ球が前記疾患に罹患した患者に由来する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 前記リンパ球が前記疾患に罹患した患者とは異なる供給源に由来する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  5. 前記HLA−A24拘束性がHLA−A2402拘束性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 前記β鎖タンパク質が配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  7. 前記β鎖タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2、および配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. 前記β鎖タンパク質が配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むβ鎖可変領域(Vβ領域)を含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  9. 前記β鎖タンパク質が配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含み、前記組換えTCRが配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  10. 前記TCRが、配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3を含むα鎖タンパク質を含み、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  11. 前記α鎖タンパク質が、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含むα鎖可変領域(Vα領域)を含み、前記組換えTCRが、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 前記α鎖タンパク質が、配列番号12のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチドを含み、前記組換えTCRが、配列番号6のアミノ酸配列を含むβ鎖タンパク質および配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含むTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項10または11に記載の医薬組成物。
  13. 前記リンパ球が、HTLV−Iに感染しておりHLA−A2402を有する標的細胞と接触される場合に、該標的細胞の傷害を引き起こす作用、インターフェロン−γを産生する作用、およびIL−2を産生する作用のうちの少なくとも1つを示す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  14. 前記組換えリンパ球が、造血幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞(BM)、リンパ球系共通前駆細胞、T細胞前駆細胞(ナイーブT細胞)、ナイーブCD8T細胞、または成熟CD8T細胞に由来する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  15. ビヒクルを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  16. 組換えT細胞レセプター(TCR)を発現する組換えリンパ球であって、
    前記リンパ球はCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、
    前記組換えT細胞レセプター(TCR)タンパク質は、HTLV−IがコードするTaxタンパク質のTax301〜309(配列番号15)に対する特異性を有し、HLA−A24拘束性であり、配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するβ鎖可変領域(Vβ領域)を含むβ鎖タンパク質を含む、組換えリンパ球。
  17. 前記TCRが、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するα鎖可変領域(Vα領域)を含むα鎖タンパク質を含み、配列番号12のアミノ酸配列を含むα鎖タンパク質を含む組換えTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項16に記載の組換えリンパ球。
  18. 組換えTCRを発現するリンパ球を取得する方法であって、
    ヒトの造血幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄細胞(BM)、リンパ球系共通前駆細胞、T細胞前駆細胞(ナイーブT細胞)、ナイーブCD8T細胞、または成熟CD8T細胞からなる群より選択される細胞に対して、組換えTCRα及びTCRβをコードするポリヌクレオチドを導入する工程、及び
    組換えTCRαおよびTCRβを発現する細胞を単離する工程
    を含み、
    前記TCRαは配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するα鎖可変領域(Vα領域)を含み、前記TCRβは配列番号4のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するβ鎖可変領域(Vβ領域)を含む、方法。
  19. 前記TCRが、配列番号12のアミノ酸配列を含むTCRαおよび配列番号6のアミノ酸配列を含むTCRβを含む組換えTCRと実質的に同等のTCR活性を有する、請求項18に記載の方法。
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