JP2018068261A - Lamp法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法 - Google Patents

Lamp法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多種多様の皮膚常在菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌を簡易かつ迅速に検出できるLAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法を提供することを目的とする。【解決手段】主成分としてペプトン、D−マンニトール、D−トレハロース、ポリミキシンBを含有する培地を用いて培地上で表皮ブドウ球菌を発育させる。培地上で発育した表皮ブドウ球菌と推定される菌株に対して、特定の配列のプライマーセットを用いてLAMP法による核酸増幅反応を行い、短時間で表皮ブドウ球菌であるか否かの鑑別を可能とする。【選択図】図3

Description

本発明は、LAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法に関する。詳しくは、多種多様の皮膚常在菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を簡易かつ迅速に検査することができるLAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法に係るものである。
ヒトの皮膚には、多種多様な皮膚常在菌が生息しており、健常な皮膚表面に存在する主要な菌として表皮ブドウ球菌が知られている。この表皮ブドウ球菌を主体とする皮膚常在菌は、紫外線を吸収することによって紫外線による障害から皮膚を保護したり、活性酸素除去能を有する酵素を産生する。また、皮脂を代謝して、その代謝産物により皮膚を乾燥や炎症から保護する役割がある(特許文献1)。
このような表皮ブドウ球菌の特性を活かし、例えば特許文献2には、表皮ブドウ球菌を用いた美容方法が開示されている。具体的には、ヒトの皮膚表面から採取した皮膚常在菌から表皮ブドウ球菌を選択的に所定の分別方法で釣菌した後、増殖させ、ヒトの皮膚に投与(戻す)することにより、ヒトの皮膚表面に表皮ブドウ球菌を確実に定着させ、表皮水分量を一定値に保つことが可能なものとなっている。
ここで、表皮ブドウ球菌の検出・同定には、一般に選択培地による分離や増殖培地による培地、顕微鏡観察や免疫学的な反応性を利用した方法など様々なものが用いられている。なお、ヒトの皮膚には約1000菌種もの細菌が存在することが知られているが、この多種多様な細菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌を生菌状態で取り出す技術としては、表皮ブドウ球菌の選択性と発育性とを高めた培養法で分別したあと、遺伝子検査により同定する方法がもっとも合理的な方法であると考えられている。
具体的には、まず、何らかの方法(擦過、綿棒、懸濁など)にてヒトの皮膚表層上の菌を採取し、ブドウ球菌属の選択培地に塗布して1〜2日間培養する。その後、表皮ブドウ球菌と疑わしき微小菌集落の数株を釣菌し、非選択培地に植菌して所定温度で純培養させる。最後に遺伝子検査により、分離菌株の菌種を同定するというものである。
ここで、ブドウ球菌属(Staphylococcus属)の代表的な菌種である表皮ブドウ球菌、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、メチシリン耐性(Methicillin Resistant)株を含むため、MRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus)、およびMASE(Methicillin Resistant Staphylococcus epidermidis)などのメチシリン耐性ブドウ球菌の選択培地として開発されたMRSAスクリーニング培地から、選択剤であるメチシリン(もしくは相当抗生剤)を除くとブドウ球菌属培地としての用途が高いことが知られている。(特許文献3)。
また、表皮ブドウ球菌の遺伝子検査としては、表皮ブドウ球菌の特異遺伝子を視覚的・機器的に捉えることができる程度まで増幅し、定量的に判別することが可能なPCR法が提案されている(特許文献4、特許文献5)。
特開平09−77653号公報 PCT/2012/078835 特開2002−34553号公報 米国特許第8673566号明細書 米国特許第8110198号明細書
ところで、特許文献3に開示されているMRSAスクリーニング培地からメチシリン(もしくは相当抗生剤)を除いた培地は、表皮ブドウ球菌、および黄色ブドウ球菌を主に培養することができるため、選択性を高めることは可能であるが、その他の多くのブドウ球菌属やコリネバクテリア属の菌種も混在して発育するため、外観上の識別から表皮ブドウ球菌を見分けることは困難であり、表皮ブドウ球菌の釣菌での的確性は決して高いものではなかった。
また特許文献4、または特許文献5に開示されたPCR法を用いた表皮ブドウ球菌の検査法は、反応を行うための特殊な遺伝子増幅装置を必要とし、最終的な判定操作は電気泳動法等の特殊な手法や機器、もしくは紫外線を照射する装置などが必要で、操作工程が多く、検査操作の開始から判定までに長時間(約4〜5時間)を要する。
一方、最近ではPCR法に代わる遺伝子増幅法として、LAMP法(Loop−Mediated Isothermal Amplification)による手法が栄研化学株式会社より開発された。この手法は、特殊な大型機器を用いることなく、また反応時間も短く簡便であるため、迅速な判定を可能としている。しかしながら、表皮ブドウ球菌に特異的に反応するLAMPプライマーは未だ報告されていない。
そのため、表皮ブドウ球菌の検出に際しては、ブドウ球菌スクリーニング培地、およびPCR法による遺伝子検査方法の組み合わせが主に使用されている。しかしながら、この従来の方法では、多種多様なブドウ球菌属の菌種が存在する中から表皮ブドウ球菌のみを分離同定するには多大な工数と費用が必要とされており、より効率的な検査方法の開発が望まれていた。
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、多種多様の皮膚常在菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌を簡易かつ迅速に検出することができるLAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のLAMP法プライマーセットは、LAMP法による核酸増幅反応を行い、皮膚常在菌のうち表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットであり、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなる。
ここで、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法による核酸増幅反応を行うことにより、皮膚常在菌のうち表皮ブドウ球菌の特異的な核酸配列を増幅することが可能となるため、多種多様な皮膚常在菌の中から表皮ブドウ球菌の検出、および判別が可能となる。
上記の目的を達成するために、本発明の表皮ブドウ球菌の検査キットは、皮膚常在菌の菌株よりブドウ球菌属をスクリーニングする培地と、LAMP法による核酸増幅反応を行い、前記ブドウ球菌属の菌種のうち表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットであり、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットとを備える
ここで、表皮ブドウ球菌の検査キットが皮膚常在菌の菌群から所定のブドウ球菌属をスクリーニングする培地を備えることにより、多種多様な皮膚常在菌の菌群からブドウ球菌属の菌種(特に表皮ブドウ球菌)を選択的に発育・検出することができる。
また、ブドウ球菌属の菌種のうち表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットであり、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットを用いてLAMP法による核酸増幅反応を行うことにより、スクリーニング培地により発育・検出した菌株の中から表皮ブドウ球菌の特異的な塩基配列を増幅することが可能となるため、多種多様な皮膚常在菌の中から表皮ブドウ球菌の菌種の検出、および判別が可能となる。
さらに、スクリーニング用の培地が、少なくともペプトンを有することにより、ブドウ球菌属の菌種の発育を促進させることができる。
また、スクリーニング用の培地が、少なくともD−マンニトールを有することにより、ブドウ球菌属の菌種のうち、表皮ブドウ球菌はD−マンニトールから酸産生できないため、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルが青紫色のまま変色せず、ブドウ球菌属の菌種から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、少なくともD−トレハロースを有することにより、ブドウ球菌属の菌種のうち、表皮ブドウ球菌はD−トレハロースから酸産生できないため、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルが青紫色のまま変色せず、ブドウ球菌属の菌種から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、少なくともポリミキシンBを有することにより、ブドウ球菌属の菌種のうち、抗生剤であるポリミキシンBに耐性を有しない菌株の発育を抑制することができる。一方で、表皮ブドウ球菌はポリミキシンBに耐性を有するため、ポリミキシンBが存在する環境下においても発育が可能であり、多種多様なブドウ球菌属の菌種から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、精製水1000ml当たり12.0gのペプトンを有することにより、ブドウ球菌属の菌種の発育を最も効率的に促進させることができる。
また、スクリーニング用の培地が、精製水1000ml当たり8.0g〜15.0gのD−マンニトールを有することにより、ブドウ球菌属の菌種のうち、表皮ブドウ球菌はD−マンニトールを利用できないため、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルが青紫色のまま変色せず、ブドウ球菌属の菌種から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、精製水1000ml当たり8.0g〜15.0gのD−トレハロースを有することにより、ブドウ球菌属の菌種のうち、表皮ブドウ球菌はD−トレハロースを利用できないため、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルが青紫色のまま変色せず、ブドウ球菌属の菌種から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、5.0mg〜10.0mgのポリミキシンBを有することにより、グラム陰性菌群の発育抑制のみならず、ブドウ球菌属の菌種のうち、抗生剤であるポリミキシンBに耐性を有しない菌株の発育を最も効率的に抑制することができる。一方で、表皮ブドウ球菌はポリミキシンBに耐性を有するため、ポリミキシンBが存在する環境下においても発育が可能であり、多種多様なブドウ球菌属の菌株から表皮ブドウ球菌の検出を容易なものとすることができる。
また、スクリーニング用の培地が、精製水1000ml当たり5.0gのハートエキス末、8.5gのカゼイン由来の消化ペプトン、3.5gの大豆由来のペプトン、8.0g〜15.0gのD−マンニトロール、8.0g〜15.0gのD−トレハロース、50mlの50%卵黄液、5.0〜10.0mgのポリミキシンB、5.0mgのアズトレオナム、15.0mgの寒天を含み、pH7.3±0.2である場合には、最も効率的に皮膚常在菌から選択的に表皮ブドウ球菌の菌種を発育・検出することが可能となる。
上記の目的を達成するために、本発明の表皮ブドウ球菌の検査方法は、検体をブドウ球菌属の菌種のうち表皮ブドウ球菌の発育条件下で培養する工程と、発育菌から所定の菌株を釣菌する工程と、釣菌した前記所定の菌株に対して配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットを用いて、LAMP法により表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅する工程と、増幅産物を解析する工程とを備える。
ここで、検体を表皮ブドウ球菌の発育条件下で培養する工程を備えることにより、多種多様な皮膚常在菌の菌種から表皮ブドウ球菌の菌種を選択的に発育・検出することができる。
また、発育菌から所定の菌株を釣菌する工程を備えることにより、培地上で発育した発育菌の中から表皮ブドウ球菌と推察される菌株を特定し釣菌することが可能となる。
また、釣菌した所定の菌株に対して配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットを用いて、LAMP法により表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅する工程を有することにより、表皮ブドウ球菌の特異的な核酸配列を増幅することが可能となるため、釣菌した菌株の中から表皮ブドウ球菌の菌株の検出、および判別が可能となる。
本発明に係るLAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法は、多種多様の皮膚常在菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌を簡易かつ迅速に検出することができる。
プライマーセット1における濁度の経時的変化を示すグラフである。 プライマーセット2における濁度の経時的変化を示すグラフである。 プライマーセット3における濁度の経時的変化を示すグラフである。 プライマーセット4における濁度の経時的変化を示すグラフである。 プライマーセット5における濁度の経時的変化を示すグラフである。
以下、LAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法に関する本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明において皮膚常在菌から表皮ブドウ球菌の同定検査は、等温核酸増幅法であるLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を用いて核酸増幅反応を行う。
ここで、LAMP法とは鋳型となる塩基配列に自身の鋳型となる塩基配列に、自身の3'末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このときに形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法として定義される。
次に、LAMP法による表皮ブドウ球菌の同定検査の一連の流れについて説明を行う。
1.検体試料の準備
まず、検体試料としては、被験者5名(女性3名、弾性2名)の顔面の皮膚表面を減菌ガーゼで軽く拭き取ることにより得た。
2.培地
培地としては、OPAII Staphylococcus Agar(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)からMRSAの選択剤であるセフォキシチンを除去した培地組成を基本として、さらに表皮ブドウ球菌の発育に好適な環境となるように各成分を見直し、主に以下の4種類の培地を準備した。
(培地1)
培地1は、精製水1000mlあたり表1に示す成分配合で調整した。
Figure 2018068261
(培地2)
培地2は培地1に対してD−トレハロースを除いたものであり、精製水1000mlあたり表2に示す成分配合で調整した。
Figure 2018068261
(培地3)
培地3は、培地1に対してポリミキシンBを除いたものであり、精製水1000mlあたり表3に示す成分配合で調整した。
Figure 2018068261
(培地4)
培地4は、培地1に対してD−トレハロースとポリミキシンBを除いたものであり精製水1000mlあたり表4に示す成分配合で調整した。
Figure 2018068261
ここで、必ずしも、ハートエキス末、カゼイン―スイ消化ペプトンを使用する必要はない。ハートエキス末、カゼイン―スイ消化ペプトンは表皮ブドウ球菌が発育を促進する成分であるが、表皮ブドウ球菌が増殖可能な成分であれば本発明に使用可能である。
また、必ずしも、アズトレオナムを使用する必要はない。アズトレオナムはグラム陰性菌種の大半の発育を抑制する抗生剤であるが、同様な効果を有する抗生剤であれば本発明に使用可能である。
なお、各培地においてD−マンニトールの組成は8.0g〜15.0gの範囲内であれば表皮ブドウ球菌の検出において優位的なものとなるが、特に10.0gとした場合が最も効率的に検出が可能となる。
また、培地1、および培地3においてD−トレハロースの組成は8.0g〜15.0gの範囲内であれば表皮ブドウ球菌の検出において優位的なものとなるが、特に10.0gとした場合が最も効率的に検出が可能となる。
また、培地1、および培地2においてポリミキシンBの組成は5.0mg〜10.0mgの範囲内であれば表皮ブドウ球菌の検出において優位的なものとなるが、特に5.0mgとした場合が最も効率的に検出が可能となる。
次に、検体試料を培地1乃至培地4のそれぞれの培地に塗布し、35℃の一定温度条件のもとで2日間培養させ、培地1乃至培地4において外観判断により表皮ブドウ球菌と推察されるコロニーを3株ずつ釣菌し、同定操作を行った。なお同定操作には、最も同定確立が高いとされるマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計(MALDI−TOF MS)MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス社)を用いた。その結果を表5に示す。
Figure 2018068261
表5に示す通り、培地1が表皮ブドウ球菌の釣菌率が最も高く、表皮ブドウ球菌のスクリーニング用の培地として好適であることが分かる。なお、表5において「S.」は「Staphylococcus」の略語であり、「C.」は「Corynebaterium」の略語である。
すなわち、表皮ブドウ球菌はD−マンニトール、およびD−トレハロースの何れからも酸産生することができないため、pH指示薬であるブロモクレゾールパープルが青紫色のまま変色しない。一方で、ブドウ球菌属の菌種のうち、D−マンニトール、およびD−トレハロースから酸産生する菌種の菌集落周辺は黄色となる。
また、表皮ブドウ球菌はポリミキシンBに対して耐性を有するため、ポリミキシンBの存在下でも発育が可能である。一方、ブドウ球菌属の菌種のうちポリミキシンBに耐性を有しない菌種はその発育が抑えられる。
以上から、培地1においてはpH指示薬の菌株の反応状況、および培地上における各菌種の発育状況から、外観判断に基づいて容易に表皮ブドウ球菌の検出が可能となる。
一方で、培地2乃至培地4においては、表皮ブドウ球菌以外の菌株も釣菌されていることがわかる。このことから、培地1が表皮ブドウ球菌の釣菌の的確性が高く、表皮ブドウ球菌のスクリーニング用の培地として最も好適であるといえる。
3.LAMP法による表皮ブドウ球菌の同定検査
LAMP法による同定検査に際しては、塩基配列情報の取得、プライマーの設計、核酸増幅反応操作、核酸増幅産物の検出の手順で進めた。以下、各手順の詳細について説明する。
(塩基配列情報の取得)
通常、表皮ブドウ球菌の同定検査を目的とする遺伝子検査では、表皮ブドウ球菌のみが有する特異的な遺伝子(gene)、もしくは、表皮ブドウ球菌および他の菌種も有する遺伝子であるが表皮ブドウ球菌に特徴ある塩基配列(非相同塩基箇所)が多く存在する遺伝子を使用する。これらの目的遺伝子としては、Alkaline Phosphatase、Lipase、SERP0107、Catalase、および16S rRNA遺伝子などが挙げられる。本件では、ブドウ球菌属の根幹的性状であるCatalase geneを選択した。
表皮ブドウ球菌Catalase geneのDNA塩基配列データは、NCBI GenBANK(Nucleotide)より以下のデータをFASTA形式にて入手した。
>gi|27466918:1021718−1023232 Staphylococcus epidermidis ATCC 12228 chromosome、 complete genome NCBI Reference Sequence:NC_004461.1
(プライマーの設計)
プライマーの設計に際しては、ブドウ球菌属の菌種のうち前記した培地1において発育可能な菌種を中心に、以下の表6に示す8つの類族菌種のDNA塩基配列を公開ソフトDDBJ(DNA DATE Bank of Japan)ClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/)にて多重整列(multiple sequence alignment)し、DNA塩基配列の相同箇所を調査した。
Figure 2018068261
多重整列の結果から、他菌種とDNA塩基配列の相同性の高い、5'−側から550塩基を外し、551塩基から1515塩基領域を用いLAMP法プライマーを設計した。プライマーの設計には、LAMP法プライマー設計支援ソフトウェアーPrimerExplorerV5(栄研化学株式会社)を用いた。この際、多重整列の結果から、>gi|27466918:1021718−1023232 Staphylococcus epidermidis ATCC 12228 chromosome、 complete genome NCBI Reference Sequence:NC_004461.1の塩基が、配列上他の菌種と全く異なる、もしくは他の1菌種のみと相同な塩基配列領域を用いてプライマー設計をおこなった。その結果、配列表、および以下に示す5組のプライマーセット1〜プライマーセット5を得た。
プライマーセット1(5'→3')
F3(配列番号1):CGTTTATTCTCATATGGAGATGC
B3(配列番号2):GCTGTGACTCATATATACCTTGA
FIP(配列番号3):GGACACAAGTTCTCAACTCCAACT−TCGTTTAGGAGTTAATCATTGG
BIP(配列番号4):TTAGTCGTGATGGACAAATGCG−GGATAATAATGTGGGCCTCC
プライマーセット2(5'→3')
F3(配列番号5):TGTCCATTTAGTCGTGATGG
B3(配列番号6):CGCTCTTTTGCATCTTCAGA
FIP(配列番号7):TCAGGCTGTGACTCATATATACCT−GCGTTTCTTAGATAATAACCAAGG
BIP(配列番号8):CATTCCCGACAGATGGTGATGG−AATAATTTACCTGGCTGTTCAA
プライマーセット3(5'→3')
F3(配列番号9):GTTATCGTTTAGGAGTTAATCATTG
B3(配列番号10):GGGAATGGTGGCTTCTTG
FIP(配列番号11):ATCACGACTAAATGGACACAAGTT−GCAGATTCCTGTCAATCAAC
BIP(配列番号12):CTTAGATAATAACCAAGGTGGAGGC−GTTCAGGCTGTGACTCAT
プライマーセット4(5'→3')
F3(配列番号13):CAACGTTATCGTTTAGGAGTT
B3(配列番号14):GGGAATGGTGGCTTCTTG
FIP(配列番号15):CGACTAAATGGACACAAGTTCTCA−ATTGGCAGATTCCTGTCAAT
BIP(配列番号16):CTTAGATAATAACCAAGGTGGAGGC−GTTCAGGCTGTGACTCAT
プライマーセット5(5'→3')
F3(配列番号17):CTACAAGGACGTTTATTCTCAT
B3(配列番号18):GGCTGTGACTCATATATACCTT
FIP(配列番号19):GGACACAAGTTCTCAACTCCAACT−CCCAACGTTATCGTTTAGGAG
BIP(配列番号20):TTAGTCGTGATGGACAAATGCG−GGATAATAATGTGGGCCTCC
(核酸増幅反応操作)
次に、LAMP法による核酸増幅反応を行い前記した5組のプライマーセットについて反応性を調べた。具体的には、前記したプライマーセットと、表7のように調整したDNA増幅試薬キット(栄研化学社製)、および表8に示すa.〜f.のDNA抽出液を用いて、リアルタイム濁度測定装置(栄研化学株式会社製)にて一定温度(本実施例では62℃)で60分間、LAMP法による核酸増幅反応を行った。なお、表8における「S.」は「Staphylococcu」の略語である。また、「S.epidermidis(NO.1)」と「S.epidermidis(NO.2)」は同じ菌種であるが異なる菌株に基づくDNA抽出液である。
Figure 2018068261
Figure 2018068261
前記した5組のプライマーセットと表7に示すDNA増幅試薬キット、および表8に示すa.〜e.のDNA抽出液との組み合わせ(計25通り)について、リアルタイム濁度測定装置による測定結果を図1〜図5に示す。なお、図中における符号a〜eは表8におけるDNA抽出液に対応している。
プライマーセット2、プライマーセット4、およびプライマーセット5においては濁度の経時的な変化は確認できなかった。一方、プライマーセット1、およびプライマーセット3においては、図1、図3に示すように反応時間30分位から顕著な立ちあがりが確認できた。特にプライマーセット3における濁度の立ち上がりの形状、および特異性において良好な結果が得られたため、本発明においてはプライマーセット3のプライマーをLAMP法におけるプライマーと決定した。
(特異性調査)
プライマーセット3を使用して、釣菌した18菌株に対してLAMP反応を実施した結果を表9に示す。表9に示すように、プライマーセット3を使用することで、全ての表皮ブドウ球菌株において陽性反応を示す一方、その他のブドウ球菌属の菌株については陰性反応を示した。すなわち、プライマーセット3は表皮ブドウ球菌を特異的に検出するためのプライマーとして有効であることが示された。なお、表9における「S.」は「Staphylococcu」の略語である。
Figure 2018068261
以上、本発明を適用したLAMP法プライマーセット、表皮ブドウ球菌の検査キット、および表皮ブドウ球菌の検査方法は、多種多様の皮膚常在菌の中から皮膚に有益とされる表皮ブドウ球菌を簡易かつ迅速に検出することができるものとなっている。

Claims (6)

  1. LAMP法による核酸増幅反応を行い、皮膚常在菌のうち表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットであり、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセット。
  2. 皮膚常在菌の菌株よりブドウ球菌属をスクリーニングする培地と、
    LAMP法による核酸増幅反応を行い、前記前記ブドウ球菌属の菌株うち表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅するためのプライマーセットであり、配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットと、を備える
    表皮ブドウ球菌の検査キット。
  3. 前記培地が、
    少なくともペプトン、D−マンニトール、D−トレハロース、ポリミキシンBを含有する
    請求項2に記載の表皮ブドウ球菌の検査キット。
  4. 前記培地が、
    精製水1000ml当たり12.0gのペプトン、8.0g〜15.0gのD−マンニトール、8.0g〜15.0gのD−トレハロース、5.0mg〜10.0mgのポリミキシンB、を含有する請求項2または請求項3に記載の表皮ブドウ球菌の検査キット。
  5. 前記培地が、
    精製水1000ml当たり5.0gのハートエキス末、8.5gのカゼイン由来の消化ペプトン、3.5gの大豆由来のペプトン、8.0g〜15.0gのD−マンニトロール、8.0g〜15.0gのD−トレハロース、50mlの50%卵黄液、5.0〜10.0mgのポリミキシンB、5.0mgのアズトレオナム、15.0mgの寒天を含み、pH7.3±0.2である
    請求項2から請求項4の何れか一項に記載の表皮ブドウ球菌の検査キット。
  6. 検体をブドウ球菌属の菌株のうち表皮ブドウ球菌の発育条件下で培養する工程と、
    発育菌から所定の菌株を釣菌する工程と、
    釣菌した前記所定の菌株に対して配列番号9〜12に示される4種のプライマーからなるLAMP法プライマーセットを用いて、LAMP法により表皮ブドウ球菌に特異的な塩基配列を増幅する工程と、
    増幅産物を解析する工程と、を備える
    表皮ブドウ球菌の検査方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101938559B1 (ko) 2017-06-16 2019-01-15 대한민국 Lamp를 이용한 포도상구균 검출용 프라이머 및 그 용도
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