JP2018049036A - 静電容量型センサシート及び静電容量型センサ - Google Patents
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Abstract
高い伸長率を有し、柔軟な測定対象物の変形や動作に追従することが可能で、かつ伸縮変形や繰り返し変形に対する耐久性に優れ、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定するために用いることができる静電容量型センサシートを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の静電容量型センサシートは、エラストマー組成物からなる誘電層と、前記誘電層の表面に積層された表側電極層と、前記誘電層の裏面に積層された裏側電極層とを備え、前記表側電極層及び裏側電極層は、平均長さ100μm以上で、かつ、アスペクト比が1000以上の単層カーボンナノチューブを含む導電性組成物からなり、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定するために用いられることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
C=ε0εrS/d・・・(1)
ここで、Cはキャパシタンス、ε0は自由空間の誘電率、εrは誘電層の比誘電率、Sは電極層面積、dは電極間距離である。
このようなセンサシートは、誘電層がエラストマーからなるものであるため、静電容量の変化が比較的大きいとの特性を有する。
これに対して、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布の測定に使用する静電容量型センサシートでは、その使用態様にもよるが、測定時の誘電層の変位量(伸長率)が100%を超えることも珍しくない。
そのため、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布の測定に使用する静電容量型センサシートでは、誘電層には高い伸長率が要求され、また、電極層には誘電層を伸長させた際に、それに追従でき、かつ導電性が維持される(電気抵抗が増加しない)ことが要求される。
そして、特許文献1に記載の静電容量型センサシートでは、このような要求を充分に満足することができず、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布の測定に使用する静電容量型センサシートとしては使用することが困難であった。特に、カーボンブラック等の導電性フィラーを用いて電極層を形成した場合には、誘電層の伸長にともなって電極層が伸長した際に導電パスが切断されやすく、伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布の測定に使用することができなかった。
エラストマー組成物からなる誘電層と、前記誘電層の表面に積層された表側電極層と、前記誘電層の裏面に積層された裏側電極層とを備え、
前記表側電極層及び裏側電極層は、平均長さ100μm以上で、かつ、アスペクト比が1000以上の単層カーボンナノチューブを含む導電性組成物からなり、
伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定するために用いられる
ことを特徴とする。
また、本発明の静電容量型センサシートでは、前記表側電極層及び裏側電極層はそれぞれ平行に配置された複数の帯状体からなり、この表側電極層と裏側電極層とが表裏方向から見て略直角で交差するように配置されていることが好ましい。
また、
前記表側電極層及び裏側電極層は、前記導電性組成物を含む塗布液の塗布により形成されていることが好ましい。
本発明の静電容量型センサシートと、
計測手段と、
前記静電容量型センサシートが備える表側電極層及び裏側電極層のそれぞれと前記計測手段とを接続する外部配線とを備え、
伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定することを特徴とする。
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の静電容量型センサシートの一例を模式的に示す上面図であり、(b)は、(a)に示した静電容量型センサシートのA−A線断面図である。
上記表側電極層と裏側電極層とが表裏方向(誘電層の厚さ方向)で交差する部分が検出部C0101〜C1616となる。なお、検出部の符号「C○○△△」中、上2桁の「○○」は、表側電極層01A〜16Aに対応し、下2桁の「△△」は、裏側電極層01B〜16Bに対応する。
そのため、上記の通り検出部が効率良く配置されていることとなる。
上記伸長率が大きくすることで、柔軟な測定対象物の変形や動作に対する追従性が向上し、より正確に、かつ広い測定レンジで測定することが可能となるからである。
なお、本発明において、一軸引張りに耐えられる伸長率とは、JIS K 6251に準拠した引張り試験において、破断時伸び以下の伸長率であって、かつ、引張荷重を開放後元の状態に復元する伸長率をいい、例えば、一軸引張りに耐えられる伸長率が30%であるとは、一軸方向に30%伸長させた際に破断に至らず、かつ、引張荷重を開放した後に元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。
図2は、図1に示した静電容量型センサシートを用いた静電容量型センサの一例を示す模式図である。
静電容量型センサシート1の表側接続部01A1〜16A1のそれぞれは、複数(16本)の配線が結束された外部配線103を介して計測手段104と接続されており、また、裏側接続部01B1〜16B1のそれぞれは、複数(16本)の配線が結束された外部配線102を介して計測手段104と接続されている。
なお、外部配線は、図2に示すように表側電極層及び裏側電極層の片端にのみ接続されていればよいが、場合によっては両端に接続されていても良い。
このような静電容量型センサシートを備えた静電容量型センサもまた本発明の一つである。
交流インピーダンスを用いた測定方法では、高い周波数信号を用いた測定でも繰返し精度に優れ、高い周波数信号を用いることで、インピーダンスが大きくなり過ぎないため計測精度をより高めることができるばかりでなく、静電容量計測に要する時間を短縮することができ、センサとしては時間あたりの計測回数を増加させることが可能となる。そのため、例えば、測定対象物の歪み(変形)を時間分解して計測することで、動きの速さなどを検知する測定にも適している。
そして、本発明に静電容量型センサシートは、後述する構成の電極層を備えているため、高い周波数信号を用いた測定に好適である。
<表側電極層/裏側電極層>
表側電極層及び裏側電極層は、ともに平均長さ100μm以上で、かつ、アスペクト比が1000以上の単層カーボンナノチューブを含む導電性組成物からなる。以下、表側電極層及び裏側電極層を合わせて単に電極層ともいう。
なお、上記表側電極層及び裏側電極層は通常同一の材料を用いて形成されるが、必ずしも同一材料を用いる必要はない。
このようなカーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いることで、上述した通り電極層に高い伸長率(200%以上の伸長率)を付与することができるため、電極層(表側電極層/裏側電極層)は優れた伸縮性を発揮し、誘電層の変形に対する追従性を向上させることができる。また、誘電層を繰り返し伸長させた際に、電気抵抗の変動が少ないため長期信頼性にも優れる。この理由は、上記カーボンナノチューブの場合、カーボンナノチューブ自体が伸縮しやすく、その結果、電極層が誘電層に追従して伸長した時に導電パスがより切断されにくいためと考えられる。
また、長尺のカーボンナノチューブを用いた場合、短尺のカーボンナノチューブを用いた場合に比べて、少ない電気接点数で導電性が確保されるとともに、1本のカーボンナノチューブにおける他のカーボンナノチューブとの電極接点数が多くなるためより高次元な電気的ネットワークを形成することができ、このことが導電パスが切断されにくい理由と考えられる。
カーボンナノチューブからなる電極層の導電性を向上させる手法としては、一般に、電荷移動材料やイオン液体等の低分子材料をドーパントとして、電極層にコーティング又は混合させる方法が考えられる。しかしながら、本発明の静電容量型センサシートが備える電極層においてドーパントを使用した場合、ドーパントが誘電層中に移行することが懸念され、誘電層中にドーパントが移行した場合、誘電層の絶縁性の低下(体積抵抗率の低下)や、繰り返し使用時の耐久性の低下が懸念され、その結果、測定精度が低下するおそれがある。
これに対し、カーボンナノチューブとして平均長さ100μm以上で、かつ、アスペクト比が1000以上の単層カーボンナノチューブ(SWNT)を用いた場合には、ドーパントを使用しなくても電極層に充分な導電性を付与することができるのである。
また、上記カーボンナノチューブのアスペクト比は、10000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましい。
不純物を多量に含有するカーボンナノチューブを用いて電極層を形成した場合、電極層の導電性や伸長率が低下することがあり、また、電極層の弾性率を上昇し、センサシートが硬くなり、その伸縮性が低下するおそれがあるからである。
上記バインダー成分を含有させることにより、誘電層との密着性、及び、電極層自体の強度を向上させることができ、さらに、後述した方法で電極層を形成する際にカーボンナノチューブの飛散を抑制することができるため、電極層形成時の安全性も高めることができる。
上記バインダー成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
また、上記バインダー成分としては、生ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの加硫させていない状態のもの)も使用することができ、このように比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層の変形に対する電極層の追従性も高めることができる。
なお、本発明において、上記SP値はFedorsの推算法により算出した値である。
上記バインダー成分は、特に、特に誘電層を構成するエラストマーと同種のものが好ましい。誘電層と電極層との密着性を顕著に向上させることができるからである。
ここで、上記導電性組成物が可塑剤を含有し、かつ、誘電層を形成するためのエラストマー組成物もまた可塑剤を含有する場合には、両組成物において可塑剤濃度は同一であることが好ましい。誘電層と電極層との間での可塑剤の移行を防止し、これにより静電容量型センサシートにおける反りやシワの発生を抑制することができるからである。
また、本発明の静電容量型センサシートでは、電極層を実質的に上記カーボンナノチューブのみで形成することも可能である。
カーボンナノチューブの含有量を高めることにより、繰り返し変形を受けた際の電極層の導電性低下(電気抵抗の増加)を抑制することができ、耐久性に優れるものとすることができる。
一方、カーボンナノチューブの量が少なく、バインダー成分の量が多くなると、必要な導電性を得るために膜厚を厚くすることが必要となり、結果として電極層の弾性が増加し、測定対象物の変形や変位に対する緩衝層となり、測定精度が低下するおそれがある。
これに対して、上記平均厚さが0.1μm未満では、導電性が不足し、測定精度が低下するおそれがあり、一方、10μmを超えるとカーボンナノチューブの補強効果により静電容量型センサシートが硬くなり、測定対象物への追従性が低下し、伸縮等の変形を阻害するおそれがある。
具体的には、誘電層の表面に積層された電極層の厚さ方向を0.01μm刻みでスキャンし、その3D形状を測定した後、誘電層の表面に電極層が積層されている領域及び積層されていない領域において、それぞれ縦200×横200μmの矩形領域の平均高さを計測し、その平均高さの段差を電極層の平均厚さとする。
本発明の静電容量型センサシートでは、誘電層がウレタンゴムを含有するエラストマー組成物からなるものであり、容易に透明な誘電層とすることができるため、上記表側電極層及び上記裏側電極層の透明性を高めることにより、全体として透明な静電容量型センサシートとすることができる。しかしながら、カーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて電極層を形成する場合、カーボンナノチューブに対して高度な分散化処理や精製処理等の前処理が必要となり、電極層の形成工程が煩雑となり経済的にも不利となる。
一方、電極層の透明性は静電容量型センサシートとしての性能には影響しない。
そのため、静電容量型センサシートとして透明性が要求される場合には透明な電極層(例えば、可視光(550nm光)透過率が85%以上)を形成すればよく、そうでない場合には不透明な電極層を形成すればよく、不透明な電極層の方が容易にかつ安価に製造することができる。
上記誘電層は、シート状を有し、エラストマー組成物からなる。なお、その平面視形状は特に限定されず、図1に示すように矩形状であってもよいし、円形状等の他の形状であってもよい。
上記エラストマー組成物は、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
これらのなかでは、ウレタンゴム又はシリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が小さいからである。永久歪みが小さいと、繰り返し使用しても(例えば、1000回の伸縮を繰り返したとしても)初期静電容量(無負荷時の静電容量)が変化しにくく、静電容量型センサシートとして優れた測定精度を長期間に渡って維持することができる。
更に、カーボンナノチューブとの密着性に優れる点から、ウレタンゴムが特に好ましい。
また、上記ウレタンゴムは、2種以上の上記ポリオール成分を併用したものであってもよい。
これらのなかでは、体積抵抗率が高い点からオレフィン系ウレタンゴムが好ましく、伸長率が大きく、比誘電率が高い点からはエステル系ウレタンゴムが好ましい。
勿論、誘電層に付与すべき、体積抵抗率、伸長率及び誘電率を考慮して各種ウレタンゴムを混合することもできる。
また、上記エステル系ポリオールとしては、例えば、ポリライト8651(DIC社製)等が挙げられる。
また、上記エーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、PTG−2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)等が挙げられる。
上記誘電フィラーを含有する場合、上記エラストマー組成物中におけるその含有量は、通常、0体積%より多く、25体積%以下程度である。
誘電フィラーの含有量が25体積%を超えると、誘電層の硬度が高くなったり、永久歪みが大きくなったりすることがある。また、ウレタンゴム製の誘電層の成形に際して硬化前の液粘度が高くなるため高精度の薄膜形成が難しくなることがある。
上記C硬さが10°未満では、誘電層が軟らかすぎるため高品質な加工が難しく、充分な測定精度を確保することができない場合があり、一方、55°を超えると、誘電層が硬すぎるため、測定対象物の変形荷重が小さい場合に測定対象物の変形動作を阻害してしまい、計測目的に対して測定結果がそぐわないおそれがある。
検出部C0101〜C1616は、図1にハッチングで示すように、表側電極層01A〜16Aと、裏側電極層01B〜16Bとが誘電層の厚さ方向に交差する部分(重複する部分)に配置されている。検出部C0101〜C1616は、静電容量型センサシート1では、合計256個(=16個×16個)配置されている。検出部C0101〜C1616は、静電容量型センサシート1の略全面に亘って、略等間隔に配置されている。検出部C0101〜C1616は、それぞれ表側電極層01A〜16Aの一部と、裏側電極層01B〜16Bの一部と、誘電層2の一部とを備えている。
また、本発明の静電容量型センサシートは、伸長率が高く、1軸方向に30%以上繰り返し伸長させることが可能であり、柔軟な測定対象物の変形や動作に追従することが可能で、かつ伸縮変形や繰り返し変形に対する耐久性に優れ、例えば測定対象物の形をトレースしたり、測定対象物の動きを直接的に検知すること等ができる。
本発明の静電容量型センサシートの構成は、図1に示した静電容量型センサシートの構成に限定されるわけではなく、例えば、図3に示したような構成を備えていてもよい。
図3は、本発明の静電容量型センサシートの別の一例を模式的に示す上面図である。
上記表側電極層と裏側電極層とが表裏方向(誘電層の厚さ方向)で交差する部分が検出部F0101〜F1616となる。なお、検出部の符号「F○○△△」中、上2桁の「○○」は、表側電極層01D〜16Dに対応し、下2桁の「△△」は、裏側電極層01E〜16Eに対応する。
より具体的には、電極層を形成した導電性組成物と同様の導電性組成物を用いて、線幅を細く、かつ、厚さが厚くなるように上記表側配線及び裏側配線を形成することにより、充分な導電性を確保しつつ、センサシートの伸縮性を損なわず追従することができ、電極層と同様に繰返し伸張に耐えられる配線とすることができる。
これに対し、例えば、上記表側配線及び裏側配線を金属材料を用いて形成した場合には、配線を形成した部分の伸縮性が損なわれるおそれがあるため不利である。
図4は、本発明の静電容量型センサシートの別の一例を模式的に示す断面図である。
なお、オーバーコート層を形成する場合、その目的は、電極層の保護に限定されるわけでなく、例えば、着色したオーバーコート層を形成することにより、電極層を外部から見えなくしたり、また、一部のみ着色することにより静電容量型センサシートに意匠性を付与したりすることができる。また、オーバーコート層の表面は印字されていてもよい。
また、例えば、オーバーコート層を接着性又は粘着性を有する層とすることで、測定対象物を静電容量型センサシートに貼り付けることができ、また、例えば、オーバーコート層の表面を摩擦係数の低い低μ表面層とすることもできる。
より具体的には、例えば、溶剤系インクであれば、主に溶剤、顔料、ビヒクル、及び、更に必要に応じて配合される補助剤からなる従来公知の溶剤系インクを使用すればよい。ここで、上記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、低沸点芳香族ナフサ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。また、上記顔料としては、カーボンブラック(ブラック)、銅フタロシアニン(シアン)、ジメチルキナクリドン(マゼンタ)、ピグメント・イエロー(イエロー)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ニッケル化合物等が挙げられるが、既に、種々の顔料が知られており、勿論上記に限定されるものではない。
なお、本発明の静電容量型センサシートにおいて、オーバーコート層は表側又は裏側のいずれか一方にのみ形成されていてもよい。
例えば、図1に示した実施形態における静電容量型センサシート1では、表側電極層01A〜16A及び裏側電極層01B〜16Bの配置数を16個としているが、この配置数は特に限定されない。また、上記実施形態における表側電極層01A〜16Aと裏側電極層01B〜16Bの交差角度も特に限定されない。
上記静電容量型センサシートは、例えば、
(1)エラストマー組成物からなる誘電層を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、及び
(2)カーボンナノチューブ及び分散媒を含む組成物の塗布により、上記誘電層の表面及び裏面に電極層を形成する工程(以下、「工程(2)」ともいう)
を経ることより製造することができる。
以下、工程順に説明する。
本工程では、エラストマー組成物からなる誘電層を形成する。まず、エラストマー組成物としてエラストマー(又はその原料)に、必要に応じて、誘電フィラー、可塑剤、鎖延長剤、架橋剤、加硫促進剤、触媒、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を配合したエラストマー組成物を調製する。
上記誘電層の成形方法としては特に限定されず、原料を含む混合物を調製した後、従来公知の方法で成形することにより誘電層を形成することができる。
具体的には、誘電層としてウレタンゴムを含む誘電層を形成する場合には、例えば、ポリオール成分、可塑剤及び酸化防止剤を計量し、加熱、減圧下において一定時間撹拌混合し、混合液を調製する。次に、混合液を計量し、温度を調整した後、触媒を添加しアジター等で撹拌する。その後、所定量のイソシアネート成分を添加し、アジター等で撹拌後、即座に混合液を図5に示す成形装置に注入し、保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのロール巻シートを得る。そのあと、さらに炉で一定時間架橋反応させることで誘電層を製造することができる。
本工程では、カーボンナノチューブ及び分散媒を含む組成物の塗布により、上記誘電層の表面及び裏面に電極層(表側電極層及び裏側電極層)を形成する。
次に、カーボンナノチューブを含む各成分を湿式分散機を用いて分散媒中に分散(又は溶解)させることより塗布液を調製する。ここでは、例えば、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミルなど既存の分散機を用いて分散させればよい。
また、上記塗布液において、上記カーボンナノチューブの濃度は、0.01〜10重量%が好ましい。
0.01重量%未満では、カーボンナノチューブの濃度が薄すぎて繰返し塗布する必要が生じる場合があり、一方、10重量%を超えると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、また再凝集によりカーボンナノチューブの分散性が低下し、均一な電極層を形成することが困難となる場合がある。
このとき、必要に応じて、誘電層表面の電極層を形成しない位置をマスキングしてから塗布液を塗布してもよい。
上記塗布液の乾燥条件は特に限定されず、分散媒の種類等に応じて適宜選択すればよい。
この場合、バインダー成分(又はその原料)を分散させるための分散媒として、カーボンナノチューブを分散させるための分散媒とは異なる分散媒を使用することができるため、分散媒の選択の制約が少なく、バインダー成分(又はその原料)が確実に分散された塗布液を調製することができる。
上記バインダー成分を分散させるための分散媒としては、上述したカーボンナノチューブを分散させる分散媒以外に、例えば、ヘキサン、アセトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
上記オーバーコート層の形成には、例えば、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレードなどの汎用の成膜装置や成膜方法等を用いることができる。
また、オーバーコート層を別個に形成し、架橋または半架橋させたシートをラミネートにより電極層を形成した誘電層に貼り合わせることも可能であり、半架橋の場合には貼り合わせ後に完全架橋させてもよい。
このような工程を経ることにより本発明の静電容量型センサシートを製造することができる。
即ち、最初に一方のオーバーコート層を作製し、次にオーバーコート層上に上記工程(2)と同様の方法により電極層(表側電極層又は裏側電極層)を形成する。その後、別途作製しておいたウレタンゴムを含有するエラストマー組成物からなる誘電層を電極層上に貼り付ける(ラミネート)。続いて、誘電層上に上記工程(2)と同様の方法により電極層(裏側電極層又は表側電極層)を形成し、最後に他方のオーバーコート層を形成する。
(作製例1:ウレタンゴム製の誘電層)
水添水酸基末端液状ポリオレフィンポリオール(エポール、出光興産社製)100質量部、アルキル置換ジフェニルエーテルを主成分とした高温用潤滑油(モレスコハイルーブLB−100、MORESCO社製)100質量部を計量し、自転公転ミキサー(THINKY社製)を用いて2000rpmで3分間撹拌混合した。次に、得られた混合物に触媒(Fomrez catalyst UL−28、Momentive社製)0.07質量部を添加し、自転公転ミキサーで1.5分撹拌した。その後、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI、住化バイエルウレタン社製)11質量部を添加し、自転公転ミキサーで3分間撹拌し、1.5分間脱泡した後、図5に示した成形装置30に注入し、保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ、炉内温度110℃、炉内時間30分間の条件で架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのロール巻シートを得た。
その後、80℃に調節した炉で12時間後架橋させて、オレフィン系ウレタンゴムを含むエラストマー組成物からなる層厚100μmの誘電層を作製した。
誘電層の層厚を50μmにした以外は作製例1と同様にして、ウレタンゴム製の誘電層を作製した。
ここで、破断時伸びは、JIS K 6251に準拠して測定した。
比誘電率は、20mmΦの電極でシート状の測定試料(誘電層)を挟み、LCRハイテスタで静電容量を測定し、電極面積と測定試料の厚さから算出した。
(調製例1)
カーボンナノチューブとして、スーパーグロースCNT(以下、「SGCNT」とも表記する)(単層カーボンナノチューブ、繊維径の中央値が約3nm、成長長さ500μm〜700μm、アスペクト比約100,000、炭素純度99.9%、産業技術総合研究所提供)120mgをトルエン280mlに添加し、マグネチックスターラを用いて100rpmで5分間攪拌した後、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、電極層形成用塗布液(A−1)を得た。
なお、カーボンナノチューブの成長長さとは、カーボンナノチューブを作製する際に成長基板上で成長したフォレストの高さをいう。
カーボンナノチューブとしてVGCF−X(多層カーボンナノチューブ、長さ3μm、アスペクト比約200、炭素純度95%以上、登録商標、昭和電工社製)120mgをトルエン280mlに添加し、マグネチックスターラを用いて100rpmで5分間攪拌し、続いて5分間超音波処理した後、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、電極層形成用塗布液(A−2)を得た。
カーボンナノチューブとしてKH SWCNT ED(単層カーボンナノチューブ、長さ5〜50μm、アスペクト比約3800、炭素純度80〜90%以上、KH Chemical社製)120mgをトルエン280mlに添加し、マグネチックスターラを用いて100rpmで12時間攪拌し、続いて60分間超音波処理した後、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、電極層形成用塗布液(A−3)を得た。
上記作製例2で作製したウレタンゴム製の誘電層を幅8cm×長さ8cmに裁断し、その片面の中央部に、上述した方法で調製した電極層形成用塗布液(A−1)、(A−2)又は(A−3)をエアブラシで帯状に塗布し、80℃で1時間乾燥させることにより、幅20mmで長さ50mmの電極層を形成し、評価用サンプル1(電極層形成用塗布液(A−1)を使用)、評価用サンプル2(電極層形成用塗布液(A−2)を使用)及び評価用サンプル3(電極層形成用塗布液(A−3)を使用)を作製した。
なお、電極層形成用塗布液の塗布量は、電極層形成用塗布液(A−1)及び(A−2)は8ml、電極層形成用塗布液(A−3)は32mlとした。
その後、各評価サンプルにつき、1軸方向に100%まで伸長させる伸長変形を繰り返し行い、帯状電極の両端の電気抵抗を測定した。即ち、まず、伸長を1軸方向に100%まで1回行い、変形履歴を加えた後、これを繰り返し行い、上記電気抵抗の変化を測定した。
評価サンプル1〜3の結果をそれぞれ図6〜8に示す。
電気抵抗の増加が小さいほど、導電性が低下せず繰り返し変形に対する耐久性が良好であると評価できる。
ここで、図6〜8中、各図の一番下の線が、1回目の1軸方向に100%まで伸長する際(往路の際)の電気抵抗の変化を表し、その伸長率100%時の電気抵抗値を表す点から伸びる他方の線(より上方の線)が、1回目の伸長率100%から伸長率0%に戻る際(復路の際)の電気抵抗の変化を表す。この往路と復路を合わせて繰り返し数1回とした。同様にして、100%伸長時の抵抗値が下から2番目の点から伸びる二つの線が繰り返し数2回目の電気抵抗の変化を表し、これらのうち、下方の線が繰り返し数2回目の往路の際の、上方の線が繰り返し数2回目の復路の際の電気抵抗の変化を表す。同様にして、繰り返し数3回目以降の電気抵抗の変化も図6〜8に示す。
評価1と同様にして、評価用サンプル1〜3を作製し、各評価用サンプルを評価1と同様の方法で一軸方向に200%まで伸長させ、各伸長時の抵抗値を測定した。結果を図9に示す。
図9に示した結果から、カーボンナノチューブとして平均長さの短いVGCF−XやKH SWCNT EDを使用した場合には、伸長率の増加にともなって電気抵抗が大きく増大しているのに対し、カーボンナノチューブとして平均長さが長く、アスペクト比が大きいSGCNTを使用した場合には、伸長率の増加が増加しても電気抵抗がさほど増加しないことが明らかとなった。これにより、本発明の静電容量型センサシートが変位量が大きいセンサーとしても好適であることが明らかとなった。
単画素のセンサーシートを作製し、変形に対する静電容量の変化の測定を測定した。
図10は、本評価で使用したセンサーシートを模式的に示す上面図である。
作製例1で作製したウレタンゴム製の誘電層を幅8cm×長さ8cmに裁断し、その片面の中央部に、電極層形成用塗布液A−1をエアブラシで帯状に塗布して乾燥させ1本の裏側電極層(図10中、01B′)を形成した。裏側電極層は平均厚さが約1μm、幅が10mm、長さが80mmである。
続いて、上記誘電層の反対側の面に、上記電極層形成用塗布液A−1を塗布して乾燥させることにより、図10に示すような裏側電極層と直交するような短片を有する平面視L字状の表側電極層(図10中、01A′)で形成した。
その後、表側電極層及び裏側電極層のそれぞれの一端を0.1mm厚の銅箔で補強して外部配線との接続部となる表側接続部及び裏側接続部(図10中、01A′1及び01B′1)を形成し、センサシート1とした。
電極層形成用塗布液A−1に代えて電極層形成用塗布液A−2を用いた以外はセンサシート1の作製と同様にして、センサシート2を作製した。
電極層形成用塗布液A−1に代えて電極層形成用塗布液A−3を用いた以外はセンサシート1の作製と同様にして、センサシート3を作製した。
なお、図10中、01A′は表側電極層、01B′は裏側電極層、01A′1は表側接続部、01B′1は裏側接続部、C′0101は検出部、21は静電容量型センサシート、22は誘電層である。
測定結果について、1軸伸長の伸長率に対する静電容量をプロットしたグラフを図11〜13に示す。ここで、センサシート1については図11に、センサシート2については図12に、センサシート3については図13に示す。なお、各グラフでは、1軸伸長を1000回繰り返したときの、1、10、100及び1000往復目の静電容量をプロットしている。
センサシート1(実施例1)は、測定周波数及び繰返し変形回数問わず、定常状態から100%伸長状態に至るまでほぼ直線的に静電容量が増加し、その値にバラツキが認められなかった。また、静電容量の測定値はほぼ計算値と一致している。
センサシート2(比較例1)では、測定周波数が低周波数(500Hz)の場合はセンサシート1と同様の結果が得られたものの、測定周波数を高周波数(5kHz)とした場合には、繰り返し回数が増大していくにともなって静電容量の測定値にバラツキが発生していた。
センサシート3(比較例2)では、測定周波数が低周波数(500Hz)の場合はセンサシート1と同様の結果が得られたものの、測定周波数を高周波数(5kHz)とした場合には、伸長率が大きくなると静電容量の測定値が計算値から大きく外れることとなった。
これらのことから、超長尺の単層カーボンナノチューブを用いた電極層を備える静電容量型センサシートでは、高周波数での繰り返し測定における測定精度に優れることが明らかとなった。
そして、本発明の静電容量型センサシートを用いた静電容量型センサは、例えば、柔軟物の形状をトレースするためのセンサや、人など測定対象物の動きを計測するセンサ等として使用することができる。より具体的には、例えば、足裏による靴底インナーの変形や、臀部による座面クッション変形等を測定(検出)することができる。また、例えば、タッチパネル用の入力インターフェイスとしても使用することができる。
なお、本発明の静電容量型センサは、既存のセンサである光学式のモーションキャプチャーでは測定できない光の遮蔽部位での測定にも利用することが可能である。
2、2′ 誘電層
01A1〜16A1 表側接続部
01A〜16A、01D〜16D 表側電極層
01B1〜16B1 裏側接続部
01B〜16B、01E〜16E 裏側電極層
C0101〜C1616、F0101〜F1616 検出部
01d〜16d 表側配線
01e〜16e 裏側配線
21 静電容量型センサシート
22 エラストマー製の誘電層
23 樹脂フレーム
01A′ 表側電極層
01A′1 表側接続部
01B′ 裏側電極層
01B′1 裏側接続部
C′0101 検出部
101 静電容量型センサ
102、103 外部配線
104 計測手段
Claims (5)
- エラストマー組成物からなる誘電層と、前記誘電層の表面に積層された表側電極層と、前記誘電層の裏面に積層された裏側電極層とを備え、
前記表側電極層及び裏側電極層は、平均長さ100μm以上で、かつ、アスペクト比が1000以上の単層カーボンナノチューブを含み、バインダー成分を含まない導電性組成物からなり、
伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定するために用いられる
ことを特徴とする静電容量型センサシート。 - 一軸引張りに耐えられる伸長率が30%以上である請求項1に記載の静電容量型センサシート。
- 前記表側電極層及び裏側電極層の平均厚さは、それぞれ0.1〜10μmである請求項1又は2に記載の静電容量型センサシート。
- 前記表側電極層及び裏側電極層はそれぞれ平行に配置された複数の帯状体からなり、この表側電極層と裏側電極層とが表裏方向から見て略直角で交差するように配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の静電容量型センサシート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の静電容量型センサシートと、
計測手段と、
前記静電容量型センサシートが備える表側電極層及び裏側電極層のそれぞれと前記計測手段とを接続する外部配線とを備え、
伸縮変形歪み量及び/又は伸縮変形歪み分布を測定することを特徴とする静電容量型センサ。
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