JP2018047814A - 進路制御方法及び地上装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】無線列車制御システムの特徴を踏まえた新たな進路自動制御方法及び地上装置を提供する。【解決手段】地上装置30は、各列車10について、駅の出発時に、当該停車位置を発点とし次の停車駅を停止目標着点とする予定進路を設定する。特に、線路ノードの一種である踏切道については、列車10の予測到達時分が踏切道に定められた基準鳴動時分以下となる時刻を占有開始時刻とし、列車10の予測到達時分と踏切道における踏切警報機64の継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分以上となると、列車10によって鎖錠する。そして、列車10が踏切道を占有すると、当該踏切道の踏切警報機64の鳴動を開始させ、占有を解除すると、鳴動を終止させる。【選択図】図1

Description

本発明は、無線列車制御システムにおける進路制御に関する。
従来の鉄道保安システムでは、ダイヤ情報に基づいて各列車の進路設定等の進路制御を行う進路制御装置が各駅の連動装置に指令を行い、連動装置は、この指令に従って信号機や転てつ器等の地上設備を制御して進路を構成する連動制御を行っている。
近年、地上側と車上側との通信手段として無線通信を用いた無線列車制御システムの開発が進められている。無線列車制御システムでは、車上側で列車の走行位置や走行速度を計測して地上側へ送信するため、列車位置の検知のための軌道回路が不要となる。無線列車制御システムの従来技術としては、例えば特許文献1の技術が知られている。また、無線列車制御を活用した踏切制御方式としては、例えば特許文献2や特許文献3の技術が知られている。
特開2011−25834号公報 特公平7−10667号公報 特開2011−246015号公報
しかしながら、原理的に無線列車制御システムは列車位置を連続検知可能であるものの、上述の特許文献1に開示されているような連動制御は、線路を区切った固定区間(軌道回路が設置された物理的な区間や仮想的なブロック)を単位とした進路鎖錠を行っていた。このため、特許文献1の技術は、無線列車制御システムのメリットを未だ十分に活用できていないと考えられた。
例えば、線路を固定区間で区切った場合には、進路の始点は区間境界となるため、列車間隔を短くすることに限界があった。また、列車位置を固定区間単位で判断することになるため、ダイヤ乱れ時等で、必要に応じて列車の進行順序を変更する場合に効率的な対処ができない場合が生じ得た。
また、進路制御では、線路上の踏切道に関する制御も考慮する必要がある。すなわち、踏切道には、踏切警報機やしゃ断かんといった踏切保安設備が設けられているが、道路交通を妨げないよう、この踏切警報機の鳴動の開始及び終止や、しゃ断かんの開閉を、適切なタイミングで行う必要がある。
従来の踏切制御は、列車が最速で踏切道に到達する時間が基準鳴動時分以下である地点から鳴動を開始することを基本としている。しかし、列車は必ずしも最速で走行するわけではないから、鳴動時間が長大化する傾向にある。無線列車制御システムでは列車の位置や速度が連続的に把握できるので、鳴動時間の適正化が図れる。特許文献2の技術は、現在の列車位置・速度に基づき、最速で踏切道に到達する時間を連続的に算出し、基準鳴動時分となった時点で鳴動を開始するようにしている。この技術では、低速で踏切道に接近する列車に対して鳴動開始までの時間を遅らせるものであり、高速で接近する列車に対しては低減効果が少ない。また、鳴動を開始してから列車が最速で走行しなければ鳴動時間が長大化する。
また、特許文献3の技術は、駅近傍に踏切道が存在し、列車が駅を出発してから鳴動すると踏切警報機の警報時間が不足する場合についての技術である。従来の踏切制御は、進路設定後に踏切警報機を鳴動させ、信号機の進行現示を遅らせることにより鳴動時間の調整を行っている。これを現示時素という。しかし、列車の出発位置は異なる場合があるが、現示時素は一律なため不必要に鳴動する場合がある。特許文献3は、この時間を適正化するものであるが、現示時素そのものをなくすものではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無線列車制御システムの特徴を踏まえた新たな進路制御を実現することである。
上記課題を解決するための第1の発明は、
各列車の列車位置に基づいて列車制御及び踏切警報機の鳴動制御を行う無線列車制御システムの進路制御方法であって、
各列車について、当該列車の列車位置を発点とし、到達目標位置を着点として、前記発点から前記着点までを予定進路として設定することと、
各列車について、前記予定進路上の走行位置に対する走行速度を予測した速度曲線(以下、「走行予測方程式」という)を予測することと、
少なくとも踏切道を含む線路ノードそれぞれに対する進入列車の優先順位を、各列車の前記走行予測方程式を用いて設定することと、
前記線路ノードそれぞれについて、優先順位が最優先に設定された列車の前記走行予測方程式に基づき、前記列車が当該線路ノードに接近したことを示す接近条件を満たし、且つ、当該線路ノードの占有列車設定が占有列車無しの場合に、当該列車を占有列車として当該線路ノードを占有させる占有設定を行うことと、
前記占有設定された踏切道の踏切警報機の鳴動開始を指示することと、
各列車について、前記予定進路の前記発点から順に当該列車が占有列車として設定された線路ノードに対する進入を許可することで、当該列車の進行許可区間を設定することと、
前記線路ノードを列車が通過した場合に、当該通過した列車を占有列車とする線路ノードの占有列車設定を占有列車無しとする占有解除を行うことと、
前記占有解除された踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示することと、
を含む進路制御方法である。
また、他の発明として、
各列車の列車位置に基づいて列車制御及び踏切警報機の鳴動制御を行う無線列車制御システムにおける地上装置(例えば、図19の地上装置30)であって、
各列車について、当該列車の列車位置を発点とし、到達目標位置を着点として、前記発点から前記着点までを予定進路として設定する手段(例えば、図19の進路設定部204)と、
各列車について、前記予定進路上の走行位置に対する走行速度を予測した速度曲線(以下、「走行予測方程式」という)を予測する手段(例えば、図19の列車走行予測部208)と、
少なくとも踏切道を含む線路ノードそれぞれに対する進入列車の優先順位を、各列車の前記走行予測方程式を用いて設定する手段(例えば、図19の列車間優先関係判定部206)と、
前記線路ノードそれぞれについて、優先順位が最優先に設定された列車の前記走行予測方程式に基づき、前記列車が当該線路ノードに接近したことを示す接近条件を満たし、且つ、当該線路ノードの占有列車設定が占有列車無しの場合に、当該列車を占有列車として当該線路ノードを占有させる占有設定を行う手段(例えば、図19の進路占有・鎖錠部216)と、
前記占有設定された踏切道の踏切警報機の鳴動開始を指示する手段(例えば、図19の進路占有・鎖錠部216)と、
各列車について、前記予定進路の前記発点から順に当該列車が占有列車として設定された線路ノードに対する進入を許可することで、当該列車の進行許可区間を設定する手段(例えば、図19の進路占有・鎖錠部216)と、
前記線路ノードを列車が通過した場合に、当該通過した列車を占有列車とする線路ノードの占有列車設定を占有列車無しとする占有解除を行う手段(例えば、図19の進路占有解除部218)と、
前記占有解除された踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示する手段(例えば、図19の進路占有解除部218)と、
を備える地上装置を構成しても良い。
この第1の発明等によれば、無線列車制御システムにおける新たな連動制御が実現される。すなわち、各列車について、列車位置を発点とした予定進路を設定するため、進路の発点を任意に設定できる。
また、各列車について予定進路上の走行を予測した走行予測方程式に基づいて、線路ノード毎に進入列車の優先順位を設定し、線路ノードそれぞれについて、優先順位が最優先の列車が接近条件を満たし、且つ、占有列車設定が占有列車無しの場合に、当該線路ノードを当該列車によって占有する。そして、各列車について、予定進路の発点から順に、当該列車が占有した線路ノードに対する進入を許可することで、当該列車の進行許可区間を設定し、当該列車が線路ノードを通過すると、当該列車による当該線路ノードの占有を解除する。これにより、進路の鎖錠範囲を最小化することができ、例えばダイヤ乱れ時にも、進路の競合を抑えた効率的な進路制御を実現することができる。
また、線路ノードである踏切道を占有すると、当該踏切道の踏切警報機の鳴動を開始し、占有を解除すると、鳴動を終止する。これにより、列車の踏切道の接近及び通過に応じて、踏切警報機の鳴動を適切に制御することができる。
第2の発明として、第1の発明の進路制御方法であって、
前記占有設定を行うことは、
前記線路ノードが踏切道である場合に、前記走行予測方程式に基づいて予測した当該踏切道へ到達するまでの所要時分である予測到達時分が、当該踏切道に定められた基準鳴動時分以下であることを接近条件とすること、
を含む、
進路制御方法を構成しても良い。
この第2の発明によれば、列車の踏切道への予測到達時分が、当該踏切道に定められた基準鳴動時分以下であることを接近条件として、当該列車によって当該踏切道が占有される。つまり、踏切道の占有によって踏切警報機の鳴動を開始するので、列車が実際に踏切道に到達する前に、基準鳴動時分の鳴動を確保することができる。これにより、列車が踏切道を通過する際の踏切警報機の鳴動の開始を適切に制御することができる。
第3の発明として、第1又は第2の発明の進路制御方法であって、
前記進行許可区間を設定することは、
進入許可の対象の線路ノードが踏切道の場合に、対応する占有列車の前記走行予測方程式に基づいて予測した当該踏切道へ到達するまでの所要時分である予測到達時分と、当該踏切道の踏切警報機の継続鳴動時分との合計が、当該踏切道に定められた基準鳴動時分以上である場合に、当該占有列車の当該踏切道への進入を許可する、
ことを含む、
進路制御方法を構成しても良い。
この第3の発明によれば、占有列車の踏切道への予測到達時分と踏切警報機の継続鳴動時分との合計が基準鳴動時分以上である場合に、当該占有列車の踏切道への進入が許可される。継続鳴動時分には、当該踏切道の競合列車の通過に伴う鳴動時分を合算することができる。このため、例えば、競合列車による踏切道の占有が解除された後に、当該列車で直ちに占有することで、踏切警報機の鳴動を継続し、当該列車が実際に踏切道に到着する前の鳴動時分として基準鳴動時分を確保し易くなるため、連続する二列車による踏切道の通過間隔を短くすることが可能となる。
第4の発明として、第1〜第3の何れかの発明の進路制御方法であって、
前記予定進路上の踏切道に対する進入が許可されていない列車に対して、当該踏切道の進入前に停止させる踏切道防護パターンを設定すること、
を含む、
進路制御方法を構成しても良い。
この第4の発明によれば、予定進路上の踏切道に対する進入が許可されていない列車に対して、当該踏切道の進入前に停止させる踏切道防護パターンが設定される。これにより、例えば、列車の予測到達時分が踏切道に定められた基準鳴動時分より短く、走行予測方程式に従った走行では、踏切警報機の鳴動時分が基準鳴動時分に達する前に踏切道に到達してしまうといったような場合に、当該踏切道に設定された踏切道防護パターンによって、列車の踏切道への到達時分を調整し、踏切警報機の継続鳴動時分が基準鳴動時分に達した後に踏切道に到達させることができる。
第5の発明として、第1の発明の進路制御方法であって、
前記踏切道は、当該踏切道に交差する各線路の線路交差点それぞれが個別の前記線路ノードとされ、
前記鳴動の終止を指示することは、
当該踏切道の全ての線路交差点に係る線路ノードが占有列車無しの場合に、当該踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示することである、
進路制御方法を構成しても良い。
この第5の発明によれば、踏切道に交差する線路交差点が複数の場合には、踏切道の全ての線路交差点それぞれに係る線路ノードが未占有の場合に、当該踏切道の踏切警報機の鳴動を終止する。つまり、1つでも列車に占有されている線路交差点が有る場合には、踏切道の踏切警報機の鳴動は終止されない。これにより、踏切道に係る安全確保がなされる。
第6の発明として、第1〜第5の何れかの発明の進路制御方法であって、
前記予定進路の取り消し指令に応じて、当該予定進路に係る列車に占有設定されているが進入が許可されていない線路ノードについては占有解除し、進入が許可されている線路ノードについては当該列車の停車後に占有解除することで、当該予定進路を取り消すこと、
を含む、
進路制御方法を構成しても良い。
この第6の発明によれば、予定進路の取り消しを行うことができる。そして、予定進路の取り消しによって踏切道の占有を解除すると、当該踏切道の踏切警報機の鳴動は終止される。
列車制御システムの全体構成図。 進路制御の手順の概要図。 予定進路の設定の説明図。 転てつ器の占有開始時刻の説明図。 踏切道の占有開始時刻、及び、鎖錠の開始の説明図。 踏切道防護パターンによる鳴動時間の確保の説明図。 踏切道防護パターンによる鳴動時間の確保の説明図。 複数列車の通過に伴う踏切警報機の鳴動継続の説明図。 予定進路の取り消しの説明図。 二列車の絶対的優先関係の説明図。 二列車の絶対的優先関係の説明図。 二列車の絶対的優先関係の説明図。 二列車の絶対的優先関係の説明図。 二列車の相対的優先関係の説明図。 線路ノードについての防護方程式の設定の説明図。 走行予測方程式の作成の説明図。 制限速度についての防護方程式の設定の説明図。 加速方程式と減速方程式との交差の説明図。 地上装置の機能構成図。 駅ダイヤ情報のデータ構成例。 転てつ器構成データのデータ構成例。 着点構成データのデータ構成例。 踏切道構成データのデータ構成例。 制限速度変化点データのデータ構成例。 転てつ器進路状態データのデータ構成例。 着点進路状態データのデータ構成例。 踏切道線路交差点進路状態データのデータ構成例。 踏切道鳴動状態データのデータ構成例。 列車情報のデータ構成例。 予定進路データのデータ構成例。 競合列車優先関係データのデータ構成例。 走行予測データのデータ構成例。 進路制御処理のフローチャート。 列車間優先関係判定処理のフローチャート。 列車走行予測処理のフローチャート。 走行方程式作成処理のフローチャート。 進路占有・鎖錠処理のフローチャート。 進路占有解除処理のフローチャート。 進路取消処理のフローチャート。
[システム構成]
図1は、本発明を適用した列車制御システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、列車制御システム1は、軌道Rを走行する列車10に搭載される車上装置20と、地上装置30とを備えて構成される。車上装置20と地上装置30とは、所定の無線通信網を介した無線通信が可能となっている。無線通信網は、通信エリアが連続して軌道を含むように複数の無線基地局40を設置して構成しても良いし、或いは、軌道Rに沿ってループアンテナやLCX(同軸漏洩ケーブル)を敷設して構成しても良い。
車上装置20は、自列車の列車IDや走行位置、走行速度を含む車上情報を地上装置30へ送信する。走行位置及び走行速度は、例えば速度発電機が検出する車軸の回転数の計測値をもとに算出する。走行位置は、例えばキロ程として算出される。そして、車上装置20は、地上装置30から受信した制御情報に従った自列車の速度制御を行う。
地上装置30は、例えば中央司令所に設置され、車上装置20と無線通信を行うことで、各列車10の走行位置及び走行速度を管理する在線管理や、走行位置や走行速度に応じて各列車10の進路の設定や占有、鎖錠、占有解除を含む進路制御、踏切道に設けられた踏切警報機64の鳴動制御を行う。
[原理]
地上装置30による進路制御、及び、踏切警報機64の鳴動制御について説明する。
(A)進路制御の手順
図2は、本実施形態の進路制御の手順を示す概要図である。列車10に対する進路制御は、(1)進路設定、(2)進路占有、(3)進路鎖錠、の順に行う。
進路設定は、列車10の先頭位置を発点とし、この発点から、停止目標として指定された着点70(70b,70c,・・・)までの経路を、予定進路として設定する。本実施形態では、着点70は駅の停止位置とされ、複数の着点70(70b,70c,・・・)の候補が存在する。そのうちの1つが、1つの列車10の着点70として選定されることとなる。図2においては丸印が着点を示しており、B駅の停止位置に関する着点70bと、C駅の停止位置に関する着点70cとが示されている。そして、列車10の予定進路が、C駅まで、すなわち着点70cまで設定されている。また、予定進路の設定は、列車10が駅を出発する前に、当該列車10の次の停車駅を停止目標として設定される。つまり、本実施形態では、予定進路は、停車駅間を単位として設定される。
図3は、進路設定のより詳細な例を示す図である。図3では、A駅に在線する列車10Xは、次の停車駅であるB駅に定められた着点70b1までの予定進路が設定される。また、同じくA駅に在線する列車10Yは、B駅を通過するため、次の停車駅であるC駅に定められた着点70c2までの予定進路が設定される。同じ駅であっても着点が異なるのは、停止する番線が異なるため、すなわち、詳細な停止位置が異なるためである。
進路設定が行われると、次いで、進路占有が実行される。予定進路上の線路ノードについて、発点から近い順に、占有可能か否かを判断し、占有可能な線路ノードまでを、当該列車10で占有する(図2(2)参照)。本実施形態において、線路ノードとは、転てつ器50、踏切道60、及び、着点70のことである。なお、踏切道60は、一又は複数の線路と交差するように設けられるため、踏切道60と各線路の交差点である踏切道線路交差点それぞれを1つの線路ノードとして扱うこととしても良いが、ここでは、踏切道60は、一の線路と交差する、すなわち1つの踏切道線路交差点を有するとして説明する。また、線路ノードには、占有状態と鎖錠状態とがあり、占有状態は「未占有」と「占有」の何れか、鎖錠状態は「鎖錠」と「未鎖錠」の何れかを取る。
進路の占有及び鎖錠は、当該進路上に存在する線路ノード1つ1つに対して行う。なお、この占有は、物理的に占有する意味ではなく、論理的な占有を意味する。図2では、列車10の予定進路上に、転てつ器50a,50bと、踏切道60と、着点70b,70cとが存在しており、転てつ器50a、着点70b、及び、踏切道60が占有されている(占有状態)。これ以外の転てつ器50b、及び、着点70cは占有されていない(未占有状態)。
続いて、占有した線路ノードを鎖錠する。つまり、転てつ器50aについては、予定進路に沿った所定方向(開通方向)に転換させ、転換が完了すると鎖錠として扱う。踏切道60については、列車10が到達すると予測される時点での踏切警報機64の継続鳴動時分が所定の基準鳴動時分に達すると見込まれた時点で鎖錠として扱う。着点70bについては、直ちに鎖錠とすることができる。そして、予定進路のうち、鎖錠した線路ノードまでを、列車10が進行可能な進行許可区間として設定する。詳細には、鎖錠した線路ノードとその次の未鎖錠の線路ノードとの間に先行列車が存在しなければ、その未鎖錠の線路ノードの外方に定められた停止位置までが進行許可区間となり、先行列車が存在するならば、その先行列車から所定距離だけ外方の位置までが進行許可区間となる。図2では、転てつ器50a、及び、着点70bは鎖錠されているが、踏切道60は鎖錠されておらず、従って、発点から、踏切道60の外方(手前)所定距離までの区間が、列車10の進行許可区間とされている。
(B)占有及び鎖錠のタイミング
線路ノードの占有は、列車10が線路ノードに接近したことを示す所定の接近条件を満たすことでなされる。本実施形態において、列車10の線路ノードへの接近条件は、当該列車10による当該線路ノードへの占有開始時刻に達したこと、である。
転てつ器50、及び、着点70の占有開始時刻は、列車10が減速することなく通過できると判断できる限界の時刻として定められる。図4は、転てつ器50の占有開始時刻を説明する図であり、列車の走行予測曲線と、時間軸とを併せて示している。図4に示すように、線路ノードが転てつ器50の場合には、列車10の走行予測曲線が、転てつ器50の外方に定められる停止位置に停止するための減速パターンに当たって減速を開始する減速開始位置の到達時刻(減速開始時刻ta)より、更に、転てつ器50の転換及び鎖錠に要する転換余裕時間MTだけ以前の時刻が、占有開始時刻toとなる。
また、線路ノードが着点70の場合には、列車10の走行予測曲線が、着点70の外方に定められる停止位置に停止するための減速パターンに当たって減速を開始する減速開始時刻が、占有開始時刻となる。
そして、占有開始時刻に達したと判断された転てつ器50、及び、着点70は、占有開始時刻に達したと判断された列車10によって占有されたとして設定される。占有された後は、続いて鎖錠が行われる。つまり、転てつ器50については、開通方向への転換が行われて転換が完了すると、鎖錠されたことになる、また、着点70については、直ちに鎖錠される。
踏切道60の占有開始時刻は、踏切警報機64による所定の基準鳴動時分以上の鳴動が継続した後に、列車10が踏切道60に到達すると見込まれる鳴動の開始時刻として定められる。図5(a)は、踏切道60の占有開始時刻を説明する図であり、時間軸を併せて示している。図5(a)に示すように、線路ノードが踏切道60である場合には、列車10の走行予測曲線に従って走行した場合に踏切道60に到達すると予測される到達予測時刻より、踏切道60に定められた基準鳴動時分だけ以前の時刻が、占有開始時刻となる。つまり、踏切道60についての接近条件は、現在時刻から予測到達時刻までの時間間隔である予測到達時分が基準鳴動時分以下であること、と言い換えることができる。そして、占有開始時刻に達して踏切道60が列車10によって占有されると、踏切道60の踏切警報機64による鳴動が開始される。
占有された後は、続いて鎖錠が行われる。つまり、図5(b)に示すように、踏切警報機の鳴動が開始されるとともに遮断機の遮断が完了し、到達予測時分と、踏切道60の継続鳴動時分との合計が、踏切道60に定められた基準鳴動時分以上であると、踏切道60は鎖錠される。また、踏切道60が鎖錠されると、当該踏切道60に対する踏切道防護パターンが消去されて、列車10が踏切道60に進入可能となる。
踏切道60に対する踏切道防護パターンは、列車10を踏切道60の外方に停止させるための防護パターンであり、列車10の速度照査に用いられる。踏切道防護パターンは、予定進路上の踏切道60に進入が許可されていない列車10、すなわち当該踏切道60を鎖錠していない列車10に対して設定され(図5(a)の状態)、踏切道60が列車10によって鎖錠されると、当該列車10に対する当該踏切道60の防護パターンは消去される(図5(b)の状態)。なお、当該踏切道60の他の列車10に対する踏切道防護パターンは消去されない。
この踏切道60に対する踏切道防護パターンによって、踏切道60の鳴動時間の確保が実現される。図6、図7は、踏切道防護パターンによる鳴動時間の確保を説明する図である。図6では、列車10の出発駅の近傍に踏切道60が設けられており、列車10の予定進路として、出発駅を発点とし、この踏切道60を通過する予定進路が設定される。
図6(a)のように、列車10が駅を出発してから踏切道60に到達するまでの予測到達時分が踏切道60に定められた基準鳴動時分に満たない場合、列車10による踏切道60の占有開始時刻は、例えば駅ダイヤで定められる列車10の予測出発時刻より前の時刻に定められる。これにより、列車10の出発前に踏切道60の踏切警報機の鳴動を開始することができ、鳴動時間を適正化することができる。
しかし、列車10の実際の出発時刻は早まる(早発となる)可能性がある。すなわち、図6(b)に示すように、列車10が、占有開始時刻以降の時刻であるが予測出発時刻より早い時刻に駅を出発すると(早発)、予測到達時刻より早い時刻に踏切道に到達することになり、踏切道60の到達時点での鳴動時分が、踏切道60に定められた基準鳴動時分に満たなくなる。
また、図7では、列車10の予定進路として、踏切道60の前方に転てつ器50が存在する進路が設定されており、転てつ器50の手前で停止する走行予測曲線に従って求めた踏切道60の予測到達時刻に基づいて、踏切道60の占有開始時刻が設定されている。この占有開始時刻が到来し、踏切道60の踏切警報機の鳴動が開始された後に、転てつ器50の手前での停止が不要となった場合、列車10の走行予測曲線が、転てつ器50の手前では停止せずに通過するような走行予測曲線に変更され、列車10は予測到達時刻よりも早い時刻に踏切道60に到達することになり、踏切道60への到達時点での鳴動時分が、踏切道60に定められた基準鳴動時分に満たなくなる。
これらの図6(b)、図7に示すように、踏切道60の踏切警報機の鳴動を開始した後に、継続鳴動時分と列車10の踏切道60への予測到達時分との合計時分が踏切道60の基準鳴動時分に満たない状態となった場合は、踏切道60に対する踏切道防護パターンを再度生成させ、列車10の踏切道60への到達を遅らせる走行時間の“時間稼ぎ”を行う。但し、踏切道60の鎖錠状態は維持する。
そして、所定時間が経過し、踏切警報機64の継続鳴動時分が増加することで、到達予測時分と継続鳴動時分との合計が基準鳴動時分に達すると、踏切道60に対する踏切道防護パターンが消去されることで、列車10が踏切道60に進入可能となる。
また、同一の踏切道60に対する複数の列車10それぞれの通過に伴う鳴動を、通過毎に終止することなく、継続して行うことができる。図8は、複数列車10a,10bの通過に伴う踏切道60の踏切警報機64の鳴動の継続を説明するための図である。図8では、予定進路が踏切道60を含む一部区間で競合する列車10aと列車10bとが存在している。
この場合、従来の踏切制御では、一方の列車が出発して踏切道を通過すると、一旦鳴動が終止し、後続列車の進路設定により再度踏切警報機が鳴動する。このとき、踏切道までの距離が短い場合、一定時間、後続列車の出発が保留される。これに対して、本実施形態においては、列車10aと列車10bが同時に踏切道60を進路設定可能であり、先行列車(例えば10a)が踏切道60を通過後、直ぐに後続列車(10b)の占有が可能であるので、踏切警報機64の鳴動を継続させることができる。このため、鳴動時間を稼ぐための出発保留、すなわち現示時素は不要となる。
また、図6(a)に示したように、列車10による踏切道60の占有開始時刻が、列車10の駅の出発予測時刻より前の時刻として設定された場合、列車10の発車前に踏切道60の踏切警報機の鳴動が開始される。しかし、列車10の実際の発車時刻は、駅での客扱い等によって遅延する可能性もある。客扱いの予測は不可能であり、出発時刻が遅延した分、踏切60の踏切警報機の鳴動時間が延長される。そこで、道路交通事情のシビアな踏切道では、踏切道60の占有開始時刻となった後、列車10の出発準備が整ったことを確認してから、踏切警報機の鳴動を開始させる。列車の出発準備完了の確認は、例えば、発車ベル、ドア締め、列車の速度等による。この場合、列車10が通常走行すると、踏切道60の鳴動時間が不足するため、踏切道60の到達予測時分と継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分に達するまで踏切道防護パターンを消去せずに進路占有の状態のままとして、列車10の踏切道60への到達を遅らせる走行時間の“時間稼ぎ”を行うことにより、鳴動時間を適正化する。
列車10の走行予測曲線は、列車10による予定進路の最短時間での走行予測に関する列車走行予測を行って得られる走行位置に対する走行速度を表した曲線である。以下、この走行予測曲線のことを「走行予測方程式」という。減速開始時刻や予測到達時刻は、走行予測方程式から求めることができる。列車走行予測の詳細については後述する。
占有・鎖錠・解除について包括的に説明すると、占有開始時刻に達したと判断された線路ノード(転てつ器50、着点70、踏切道60)については、占有開始時刻に達したと判断された列車10によって占有されたとして設定される。占有された後は、続いて鎖錠が行われる。
そして、列車10が線路ノードを通過すると、当該列車10による当該線路ノードの鎖錠が解除され(解錠:未鎖錠)、続いて占有が解除される(未占有)。つまり、予定進路上の全体を一度に占有・鎖錠するのではなく、列車10の走行に応じて、順次、線路ノードを占有・鎖錠してゆき、走行に応じて、順次、占有・鎖錠を解除してゆく。
(C)進路の取り消し
列車10に設定された予定進路を取り消すこともできる。図9は、予定進路の取り消しを説明する図である。図9では、列車10には、当該列車10の先頭位置を発点とした着点70cまでの予定進路が設定されている。この予定進路上の線路ノードのうち、転てつ器50a、着点70b、及び、踏切道60a,60bが占有されており、転てつ器50b、及び、着点70cは占有されていない。占有された線路ノードのうち、転てつ器50a、着点70b、及び、踏切道60aが鎖錠されている。
この列車10に対して、予定進路の取り消し指令がなされた場合、列車10の予定進路上の線路ノードのうち、占有されているが鎖錠されていない線路ノードである踏切道60bについては、直ちに占有解除する。また、鎖錠されている線路ノードである転てつ器50a、着点70b、及び、踏切道60aについては、列車10が停止した後に、列車10が当該線路ノード上に位置しないことを確認した上で、占有を解除する。また、予定進路の取り消しによって占有解除した線路ノードのうち、踏切道60a,60bについては、列車10に対する防護パターンを設定するとともに、当該踏切道60a,60bそれぞれに係る踏切警報機64の鳴動を終止する。
その後、列車10を再出発させる場合、踏切道60の進入までの鳴動時間が不足することになるが、列車先頭が進路始点であるので、図6、図7を参照して説明したように駅の発車時と同様に扱い、踏切道60に対する防護パターンによって、踏切道60の鳴動時間を確保することができる。
(D)進路の競合
線路ノードを占有可能か否かの判断は、当該線路ノードの占有状態が未占有であるか否かだけでなく、他の列車の進路との競合関係を判断して行う。ある1つの線路ノードの占有は、ある一列車のみに与えられるからである。列車の競合関係の有無は、競合する二列車それぞれの予定進路上の線路ノードのうち、共通の線路ノードの有無によって判断する。つまり、共通する線路ノードが無い場合には、二列車に「競合関係が無い」と判断し、共通する線路ノードが有る場合には、二列車に「競合関係が有る」と判断する。そして、競合関係がある場合には、競合する線路ノードに対する優先関係を判断する。優先関係を判断するに当たって、競合する線路ノードを含む区間を二列車の競合区間とし、この競合区間における全ての線路ノードに対する優先関係を判断する。
優先関係には、絶対的優先及び相対的優先の二種類がある。絶対的優先は、二列車の位置関係などによって絶対的に決まる優先関係である。図10〜図13は、絶対的優先関係の一例である。図10は、二列車が対向する場合であって、一方の列車の予定進路上に既に他方の列車が存在する場合の一例である。図10では、列車10a,10bが対向しており、一方の列車10aの予定進路上に他方の列車10bが既に存在している。また、競合する線路ノードは、転てつ器50bである。この場合、例えば、競合する転てつ器50bについて、一方の列車10aを優先とすると、この一方の列車10aは、転てつ器50bを通過した後は、他方の列車10bの存在によってそれ以上進行することができず、いわゆるデッドロックの状態となる。このため、競合する転てつ器50bについては、他方の列車10bを優先とする。つまり、対向する二列車のうち、一方の列車の進路上に既に他方の列車が存在する場合には、当該二列車で競合する線路ノードについては、他方の列車を優先とする。
図11は、二列車が対向する場合であって、二つ以上の競合する線路ノードのうち、一つ以上の線路ノードを一方の列車が占有している場合の一例である。図11では、二列車10a,10bが対向しており、競合する線路ノードである二つの転てつ器50b,50cのうち、一方の転てつ器50cが一方の列車10cによって占有されている。この場合、例えば、占有されていない他方の転てつ器50bについて、他方の列車10aを優先とすると、この他方の列車10aは、一方の転てつ器50cを占有できないためにこれ以上進行することができず、いわゆるデッドロックの状態となる。このため、転てつ器50bについては、一方の列車10bを優先とする。つまり、対向する二列車が競合する線路ノードのうち、一部の線路ノードを一方の列車が占有している場合には、それ以外の競合する全ての線路ノードについても、一方の列車を優先とする。
図12は、二列車が同一駅の同一番線に到着する場合の一例であり、二列車の競合する線路ノードに、同一駅の同一番線に係る着点70が含まれている場合の一例である。図12では、列車10a,10bの競合する線路ノードに、A駅の同一番線に定められた着点70a1,70a2が含まれている。この場合、各列車のA駅での着発時刻を定めた駅ダイヤを参照し、A駅への到着時刻が早いほうの列車を優先とする。図12の例では、競合区間に存在する線路ノードである転てつ器50a,50b、着点70a1,70a2の全てが、一方の列車10の優先とされる。
図13は、同一駅を出発する順向する二列車が同一線路を進行する場合の一例である。図13では、順向する二列車の進路は、A駅の異なる番線を発車後、A駅構内の背向の転てつ器50aによって同一の線路に合流した後、A駅構内を進出するよう定められている。この場合、A駅の駅ダイヤを参照し、A駅の発時刻が早いほうの列車10を優先とする。図13の例では、競合区間に存在する線路ノードである転てつ器50a,50bの全てが、一方の列車10の優先とされる。なお、図13では、A駅から発車する二列車がB駅に到着する際に、当該二列車がB駅構内の対向の分岐器50bによって分岐して異なる番線に到着する例を示しているが、同一番線(同一着点)に到着しても良い。
相対的優先は、二列車の走行状態に応じて決まる優先関係であり、上述の絶対的優先関係が当てはまらない場合である。図14は、相対的優先関係の一例である。相対的優先関係では、競合区間の進出時刻が早いほうの列車が優先となる。競合区間の進出時刻は、当該列車から見て、競合区間の進出側の最後の線路ノードの進出時刻である。図14では、列車10a,10bが対向しており、競合する線路ノードは、転てつ器50b,50cである。この場合、一方の列車10aが転てつ器50cを進出する時刻と、他方の列車10bが転てつ器50bを進出する時刻とを比較する。線路ノードの進出時刻は、列車走行予測によって得られる走行予測方程式に基づいて算出され、この走行予測方程式から求められる当該線路ノードの占有終止時刻とされる。
(E)列車走行予測
列車走行予測では、線路ノードに対する停止制御のための防護方程式や、速度制限区間に対する速度制限制御のための防護方程式を設定し、これらの防護方程式に加速方程式を加えることで、列車10の予定進路上の最短の走行を表す走行予測方程式を作成する。この走行予測方程式から、線路ノードの占有開始時刻及び占有終止時刻を求めることができる。
(E1)防護方程式
図15は、列車10aの進路に係る防護方程式の作成を説明する図である。図15では、列車10aの現在の走行位置(図15で図示されている位置)から着点70aへ至る予定進路上に、線路ノードである踏切道60、及び、転てつ器50が存在する例を示している。踏切道60は、列車10aが占有しており、転てつ器50は、対向する列車10bと競合している。競合関係は絶対的優先であり、対向列車10bが優先である。また、予定進路上の転てつ器50と着点70aとの間に、速度制限区間が設けられている。
先ず、予定進路上の線路ノード(踏切道60、転てつ器50、及び、着点70a)に対する停止制御のための防護方程式と、速度制限区間に制限速度を遵守した走行曲線(この場合、直線)である防護方程式とを設定する。なお、防護方程式は、列車10aの走行位置(図15において、横方向)に対する走行速度(図15において、縦方向)を示す速度曲線として定められ、図15中の列車10aの進路の上側に示している。防護方程式には、減速パターンである減速方程式と、定速度パターンである定速度方程式と、がある。
予定進路上の線路ノードのうち、他列車によって占有されている線路ノードと、他列車の絶対的優先である線路ノードと、停止目標着点とについてのみ、減速方程式が設定される。線路ノードに設定される防護方程式は減速方程式のみであり、当該線路ノードに係る停止位置に停止させるため(停止制御のため)の減速方程式が設定される。すなわち、停止位置で走行速度をゼロとする終了点を定め、この終了点から進行方向の逆方向に延長した、減速度βで減速する減速方程式を設定する。図15では、転てつ器50の線路ノードについては、当該転てつ器50の外方の停止位置で走行速度をゼロとする終了点82aが定められ、この終了点82aから進行方向の逆方向に延長する減速方程式80aが設定される。着点70aの線路ノードについては、当該着点70aの外方の所定位置で走行速度をゼロとする終了点82dが定められ、この終了点82dから進行方向の逆方向に延長する減速方程式80dが設定されている。踏切道60については、自列車で占有しているため、減速方程式は設定されていない。減速度βは、列車10aの性能として定められる減速度を、当該線路ノードの外方に定められた勾配によって補正して決定される。この減速方程式は、少なくとも、線区に定められた制限速度(上限速度)に到達するまで、列車10aの進行方向と逆方向に延長される。
また、速度制限区間については、開始位置に対して減速方程式が、開始位置と終了位置との間に対しては定速度方程式が設定される。すなわち、図15では、当該速度制限区間の開始位置で、走行速度が、速度制限区間の制限速度以下の所定速度となる開始点82b定められ、この開始点82bから、列車10aの進行方向と逆方向に延長する減速方程式80bが設定される。また、速度制限区間の終了位置で、走行速度が、速度制限区間の制限速度以下の所定速度となる終了点82cが定められ、開始点82bと終了点82cとの間に定速度方程式80cが設定される。
ただし、演算処理上は、開始点82bおよび終了点82cを区別して扱わず、ともに「制限速度変化点」として扱うことが可能である。すなわち、ある制限速度変化点において内方の制限速度が外方の制限速度よりも高い場合には終了点82cと判断することができ、逆に、内方の制限速度が外方の制限よりも低い場合には、開始点82bと判断することができる。これを利用して、制限速度変化点が開始点82bに相当するのか、終了点82cに相当するのかを判定することができる。
また、線路ノードについて設定した減速方程式については、当該線路ノードが他の列車と競合する場合には、減速制御解除点を当該減速方程式に設定する。減速制御解除点は、当該線路ノードについての停止制御が解除される時点を表す。すなわち、当該線路ノードが他の競合列車の占有又は絶対的優先となっているならば、競合列車による占有が解除される占有終止時刻に相当する位置に、減速解除点を設定する。
図15では、転てつ器50が列車10bと競合しており、競合関係はこの競合列車10bが絶対的優先となっているため、競合列車10bの転てつ器50の占有終止時刻に相当する減速方程式80a上の位置に、減速解除点84aが設定される。また、着点70については列車10aの停止目標着点であるので、減速方程式80dに減速解除点は設定されない。
(E2)走行予測方程式
図16は、走行予測方程式の作成を説明する図である。図16では、図15に示した列車10aの予定進路に対して、走行予測方程式を作成する例を示している。ここで、列車10aは線路に設定された制限速度(上限速度)を超えて走行しないため、速度制限区間を除いた区間については制限速度(上限速度)で定速走行させるための定速度方程式を追加設定し、これを防護方程式とみなして走行予測方程式の作成を行う。すなわち、図17に示すように、速度制限区間の開始位置を終了点82eとして外方に延長した定速度方程式80eと、速度制限区間の終了位置を開始点82fとして内方に延長した定速度方程式80fとが、防護方程式として追加設定される。
走行予測方程式は、防護方程式70を加速方程式で繋ぐようにして作成する。具体的には、図16に示すように、先ず、列車10aの現在の走行位置及び走行速度を開始点88aとして、加速度αで加速する加速パターンである加速方程式を作成する。次いで、この加速方程式と最初に交差する防護方程式を、続く方程式として採用する。続いて、防護方程式に設定された減速解除点を開始点とする加速方程式、或いは、当該防護方程式と交差する防護方程式を、その次に続く方程式として採用する。この処理を、最後の防護方程式まで、つまり予定進路の着点70aについて設定された防護方程式を採用するまで、繰り返し行う。最後の防護方程式については、他の防護方程式との交差を判定せず、終了点(この場合、着点70a)まで採用する。こうして選択・作成された一連の方程式が走行予測方程式となる。
詳細に説明する。図18は、加速方程式が減速方程式に交差する場合を説明する図である。なお、定速度方程式が減速方程式と交差する場合も同様である。図18(a)に示すように、加速方程式90aと減速方程式80gとの交点92aへの到着予測時刻(或いは到着予測位置とも言える。以下同じ。)が、減速方程式80gの減速解除点84gへの到着予測時刻より早い場合には、減速方程式80gにおける交点92aから減速解除点84gまでの方程式部分94gを、走行予測方程式として採用する。そして、減速解除点84gを開始点として、新たな加速方程式90bを作成する。
また、図18(b)に示すように、加速方程式90cと減速方程式80hとの交点92cへの到着予測時刻が、減速方程式80hの減速解除点84hへの到着予測時刻と同じ或いは遅い場合には、減速方程式80hを走行方程式として採用しない。加速方程式90cは、減速方程式80hを通過し、次に交差する減速方程式80iを対象とする。
また、図18(c)に示すように、加速方程式90dと減速方程式80jとの交点92dへの到着予測時刻が減速方程式80jの減速解除点84jへの到着予測時刻より早く、且つ、減速方程式80jの減速解除点84jが減速方程式80jの終了点に一致する場合には、減速方程式80jにおける交点92dから減速解除点84jまでの方程式部分94jを、走行予測方程式として採用する。そして、減速方程式80jの終了点の位置(つまり、該当する線路ノードの停止位置)において、減速解除点84jへの到着予測時刻(減速解除時刻)となる時点を開始点として、新たな加速方程式90eを作成する。
図16に示す例では、先ず、列車10の現在の走行位置及び走行速度を開始点88aとする加速方程式が作成される。そして、この加速方程式のうち、定速度方程式80e(図17参照)との交点88bまでの方程式部分86aが、走行予測方程式として採用される。次いで、定速度方程式80e(図17参照)のうち、交点88bから転てつ器50についての減速方程式80a(図17参照)との交点88cまでの方程式部分86bと、減速方程式80a(図17参照)のうち、交点88cから減速解除点84aまでの方程式部分86cと、が順に走行予測方程式として採用される。続いて、減速方程式80a(図17参照)の減速解除点84aを開始点とする加速方程式が作成され、この加速方程式のうち、速度制限区間の開始位置についての減速方程式80b(図17参照)との交点88dまでの方程式部分86dと、減速方程式80b(図17参照)のうち、交点88dから終了点82bまでの方程式部分86eと、定速度方程式80c(図17参照)の開始点82bから終了点82cまでの方程式部分86fとが、順に走行予測方程式として採用される。更に、この終了点82cを開始点とする加速方程式が作成され、この加速方程式のうち、着点70aに係る終了点82dについての減速方程式80d(図17参照)との交点88eまでの方程式部分86gと、減速方程式80d(図17参照)のうち、交点88eから終了点82dまでの方程式部分86hと、が順に走行予測方程式として採用される。
[機能構成]
図19は、地上装置30の機能構成図である。図19によれば、地上装置30は、入力部102と、表示部104と、時計部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成される一種のコンピュータである。
入力部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置で実現され、操作入力に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。時計部106は、水晶発振器等を有する発振回路によって構成され、現在時刻や、指定タイミングからの経過時間を計時する。通信部108は、例えば通信モジュールやルータ、モデム等で実現される通信装置であり、無線基地局40を介した車上装置20との間のデータ通信や、転てつ器50、踏切警報機64との間の制御信号の通信を実現する。
処理部200は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置・演算回路を有して構成され、処理部200に記憶されたプログラムやデータ、通信部108を介した車上装置20等の外部装置からの受信データ等に基づいて、地上装置30の全体制御を行う。また、処理部200は、在線管理部202と、進路設定部204と、列車間優先関係判定部206と、列車走行予測部208と、占有開始・終止時刻算出部214と、進路占有・鎖錠部216と、進路占有解除部218と、進路取消部220と、転てつ器制御部222と、踏切警報機制御部224と、を有する。処理部200が有する各機能部は、それぞれの機能を実現するための演算回路で実現されるものとしてもよいし、1つの演算装置・演算回路によるプログラムの実行によりソフトウェア的に実現されるものとしてもよい。
在線管理部202は、車上装置20から受信した車上情報をもとに、各列車の走行位置及び走行速度を管理する。走行位置及び走行速度は、該当する列車情報310の位置速度データ316(図29参照)として記憶される。
進路設定部204は、列車10の予定進路を設定する。具体的には、駅ダイヤ情報304を参照し、ある列車10のある駅の出発時刻の所定時間前となると、当該列車10の予定進路として、当該駅から、当該列車10の次の停車駅までの進路を設定する。進路の設定は、線路ノード構成データ330を参照して行うことができる。また、進路設定部204は、設定する進路上に存在する転てつ器50の開通方向についても判断する。設定した予定進路は、該当する列車情報310の予定進路データ318(図30参照)として記憶される。
図20は、駅ダイヤ情報304のデータ構成の一例を示す図である。図20によれば、駅ダイヤ情報304は、駅304a毎に、当該駅を着発する全ての列車について、列車ID304bと、着発番線304cと、到着時刻304dと、出発時刻304eと、走行条件304fと、停止目標着点304gと、を対応付けて格納している。走行条件304fは、例えば始発や停車、通過、終点といった、列車の駅に対する走行形態である。停止目標着点304gは、当該駅から出発する場合に、対応する列車が次に停車する停車駅およびその停車駅での停車番線であり、この停止目標着点304gが、対応する列車の当該駅を出発した場合の着点となる。
線路ノード構成データ330は、線路ノードである転てつ器50に関する転てつ器構成データ332と、着点70に関する着点構成データ336と、踏切道60に関する踏切道構成データ340と、を含む。
図21は、転てつ器構成データ332のデータ構成の一例を示す図である。図21によれば、転てつ器構成データ332は、転てつ器50それぞれについて、識別情報である転てつ器ID332aと、設置位置332bと、転換余裕時間332cと、共通側車両接触限界332dと、定位側車両接触限界332eと、反位側車両接触限界332fと、隣接ノードデータ334とを格納している。設置位置332bは、例えばキロ程で表現された絶対位置が格納される。車両接触限界332d〜332fは、設置位置332bからの軌道に沿った距離が格納される。この車両接触限界332d〜332fで定められる設置位置332bからの位置が、転てつ器50の停止位置となる。隣接ノードデータ334は、当該転てつ器50にとって軌道Rに沿って隣接する線路ノードに関するデータであり、方向別に、隣接する線路ノード334aと、隣接する線路ノードまでの距離334bと、隣接する線路ノードとの間の勾配334cとを対応付けて格納している。方向は、列車の進行方向を示す起点側及び終点側に区別される。勾配334cは、隣接線路ノードまでが下り勾配である場合に、その勾配の大きさを示す値である。
図22は、着点構成データ336のデータ構成の一例を示す図である。図22によれば、着点構成データ336は、着点それぞれについて、識別情報である着点ID336aと、設置位置336bと、隣接ノードデータ338とを格納している。隣接ノードデータ338は、当該着点70にとって軌道Rに沿って隣接する線路ノードに関するデータであり、起点側及び終点側の方向別に、隣接する線路ノード338aと、隣接する線路ノードまでの距離338bと、隣接する線路ノードとの間の勾配338cとを対応付けて格納している。
図23は、踏切道構成データ340のデータ構成の一例を示す図である。図23によれば、踏切道構成データ340は、踏切道それぞれについて、識別情報である踏切道ID340aと、設置位置340bと、基準鳴動時分340cと、当該踏切道に含まれる踏切道線路交差点の識別情報である所属線路交差点ID340dと、当該踏切道線路交差点それぞれの踏切道線路交差点構成データ342と、を格納している。
踏切道線路交差点構成データ342は、識別情報である踏切交差点ID342aと、隣接ノードデータ344と、を格納している。隣接ノードデータ344は、当該踏切道線路交差点にとって軌道Rに沿って隣接する線路ノードに関するデータであり、起点側及び終点側の方向別に、隣接する線路ノード344aと、隣接する線路ノードまでの距離344bと、隣接する線路ノードとの間の勾配344cとを対応付けて格納している。
図19に戻り、列車間優先関係判定部206は、競合する線路ノードに対する列車間の優先関係を判定する。具体的には、対象の二列車それぞれに設定された予定進路上の線路ノードのうち、共通の線路ノードの有無を判断し、共通する線路ノードが無い場合には、二列車に競合関係が無いと判断し、共通する線路ノードが有る場合には、二列車に競合関係が有ると判断する。そして、競合関係がある場合には、競合する線路ノードを全て含めた1つの区間を定めて二列車の競合区間とし、この競合区間内に存在する線路ノード全体に対する優先関係を判断する。優先関係の判断としては、まず、二列車の競合区間の競合形態が絶対的優先関係であるかを判断する。絶対的優先関係は次の(ア)〜(エ)の四種類であり、優先となる列車は一意に決まる。
(ア)競合区間上に一方の列車が存在する場合。この場合、競合区間上に存在する一方の列車を優先とする(図10参照)。
(イ)競合区間の線路ノードの何れかを一方の列車が占有している場合。この場合、競合区間の線路ノードを占有している一方の列車を優先とする(図11参照)。
(ウ)競合区間上に停止目標着点が存在する場合。この場合、駅ダイヤ情報304を参照し、停止目標着点の到着時刻が早いほうの列車を優先とする(図12参照)。
(エ)同一駅を出発する二列車が順向であり、同一線路を進行する場合(図13参照)。この場合、駅ダイヤ情報304を参照し、出発時刻が早いほうの列車を優先とする。
競合区間の競合形態が絶対的優先関係でない場合には、相対的優先関係であると判断する。判断した二列車の競合関係は、該当する列車情報310の競合列車優先関係データ320(図31参照)として記憶される。
列車走行予測部208は、防護方程式作成部210と、走行方程式作成部212とを有しており、列車に対する列車走行予測を行って、列車10の予定進路を最短時間で走行する走行予測方程式を作成する。
防護方程式作成部210は、列車10に設定された予定進路上の線路ノードに対する停止制御や、予定進路上の速度制限区間に対する速度制限制御についての防護方程式を設定する。具体的には、予定進路上の線路ノードのうち、当該列車の停止目標着点と、他列車による占有又は絶対的優先となっている線路ノードとについて、停止制御のための減速方程式を設定する。線路ノードの占有状態や鎖錠状態は、進路状態318dとして、該当する列車情報310の予定進路データ318(図30参照)に格納されており、これを参照して判断することができる。
すなわち、線路ノードの外方に定められている停止位置で走行速度をゼロとする終了点を定め、この終了点から進行方向の逆方向に延長した、減速度βで減速する減速方程式を設定する。減速度βは、列車10の性能として定められる減速度を、当該線路ノードの外方に定められた勾配によって補正して決定する。列車10の減速度は、該当する列車情報310の性能データ314(図29参照)として記憶されている。線路ノードの勾配は、線路ノード構成データ330に記憶されている。
更に、他列車による占有又は絶対的優先となっている線路ノードに対して、減速制御解除点を減速方程式に設定する。すなわち、当該線路ノードの競合列車の占有終止時刻に相当する位置に減速解除点を設定する。競合列車が複数である場合には、複数の競合列車それぞれの占有終止時刻のうち、最も遅い時刻に相当する位置を減速解除点とする。競合列車については、該当する列車情報の競合列車優先関係データ320(図31参照)を参照して判断することができる。
また、制限速度変化点データ360を参照して、予定進路上の制限速度変化点それぞれについて、内方の制限速度と外方の制限速度との高低に応じて、速度制限制御のための防護方程式(減速方程式、或いは、定速度方程式)を設定する。すなわち、内方の制限速度が外方の制限速度より低い制限速度変化点については、速度制限区間の開始位置と判定することができ、この制限速度変化点の位置で内方の制限速度となる開始点を定め、この開始点から進行方向と逆方向に外方の制限速度に到達するまで延長した、減速度βで減速する減速方程式を設定する。また、内方の制限速度が外方の制限速度より高い制限速度変化点については、速度制限区間の終了位置と判定することができ、この制限速度変化点の位置で外方の制限速度となる終了点を定め、この終了点から、進行方向と逆方向に当該速度制限区間の開始位置まで延長した定速度方程式を設定する。
更に、列車は線区に設定された制限速度(上限速度)を超えて走行しないため、速度制限区間を除いた区間について、制限速度(上限速度)で定速走行させるための定速度方程式を、防護方程式として追加設定する。すなわち、速度制限区間の開始位置を終了点とする線区の制限速度(上限速度)の定速度方程式と、速度制限区間の終了位置を開始点とする線区の制限速度(上限速度)の定速度方程式とを設定する。設定した防護方程式は、該当する列車情報310の走行予測データ322の防護方程式テーブル324として記憶される(図32参照)。
図24は、制限速度変化点データ360のデータ構成の一例を示す図である。図24によれば、制限速度変化点データ360は、線区に設けられている制限速度変化点それぞれについて、識別情報である制限速度変化点ID360aに対応付けて、設置位置360bと、制限速度データ362と、隣接ノードデータ364と、を格納している。制限速度データ362は、線区の起点側及び終点側の方向別に線路に定められた制限速度として、起点側制限速度362aと、終点側制限速度362bとを格納している。隣接ノードデータ364は、起点側及び終点側の方向別に、隣接する線路ノード364aと、隣接する線路ノードまでの距離364bと、隣接する線路ノードとの間の勾配364cとを対応付けて格納している。
走行方程式作成部212は、防護方程式作成部210によって作成された防護方程式に加速方程式を加えることで、列車の予定進路を最短時間で走行する走行予測方程式を作成する。具体的には、列車の現在の走行位置及び走行速度を開始点として、加速度αで加速する加速パターンである加速方程式を作成する。次いで、この加速方程式と最初に交差する防護方程式を、続く方程式として採用する。続いて、防護方程式に設定された減速解除点を開始点とする加速方程式、或いは、当該防護方程式と交差する防護方程式を、その次に続く方程式として採用する。この処理を、最後の防護方程式まで、つまり予定進路の停止目標着点について設定された防護方程式を採用するまで、繰り返し行う。最後の防護方程式については、他の防護方程式との交差を判定せず、終了点までを採用する(図16参照)。最後の防護方程式まで作成・採用した一連の方程式が走行予測方程式となる。作成した走行予測方程式は、該当する列車情報310の走行予測データ322の走行方程式テーブル326として記憶される(図32参照)。
占有開始・終止時刻算出部214は、各列車10について、列車走行予測部208によって作成された当該列車10の走行予測方程式に基づいて、予定進路上の線路ノードのうち、未鎖錠の線路ノードについての占有開始時刻、及び、占有終止時刻を算出する。すなわち、転てつ器50については、走行方程式から求められる、当該転てつ器50についての減速パターンの減速開始点の位置を列車10(詳細には、先頭位置)が通過する時刻から、転てつ器50の転換余裕時間だけ以前の時刻を、占有開始時刻とする。また、走行方程式から求められる、転てつ器50の設置位置を列車10(詳細には、最後尾位置)が通過する時刻を、占有終止時刻とする。着点70については、走行方程式から求められる、当該着点70についての減速パターンの減速開始点の位置を列車10(詳細には、先頭位置)が通過する時刻を、占有開始時刻とする。また、走行方程式から求められる、着点70の設置位置を列車10(詳細には、最後尾位置)が通過する時刻を、占有終止時刻とする。踏切道線路交差点62については、走行予測方程式から求められる、踏切道線路交差点62の予測到達時刻から、当該踏切道線路交差点62が所属する踏切道60に定められた基準鳴動時分だけ以前の時刻を、占有開始時刻とする。また、走行予測方程式から求められる、踏切道線路交差点62の設置位置を列車10(詳細には、最後尾位置)が通過する時刻を、占有終止時刻とする。
進路占有・鎖錠部216は、線路ノードに対する占有及び鎖錠を行う。具体的には、線路ノード進路状態データ350を参照し、線路ノードそれぞれについて、何れかの列車10の占有開始時刻となると、当該線路ノードをその列車10で占有する。次いで、線路ノードが転てつ器50ならば、転てつ器制御部222を介して、当該転てつ器50を占有した列車10の開通方向へ転換させ、転換が完了すると鎖錠とする。また、着点70ならば、占有すると、直ちに鎖錠とする。また、踏切道線路交差点62ならば、踏切警報機制御部224を介して、当該踏切道線路交差点62に係る踏切警報機64の鳴動を開始させる。そして、当該踏切道線路交差点62の占有開始時分と当該踏切道60の継続鳴動時分との合計時分がゼロ以上となると、当該踏切道線路交差点62を鎖錠し、当該列車に対する防護パターンを消去する。
線路ノード進路状態データ350は、転てつ器50に関する転てつ器進路状態データ352と、着点70に関する着点進路状態データ354と、踏切道線路交差点62に関する踏切道線路交差点進路状態データ356と、を含む。
図25は、転てつ器進路状態データ352のデータ構成の一例を示す図である。図25によれば、転てつ器進路状態データ352は、転てつ器50それぞれについて、転てつ器ID352aと、現在の転換方向352bとともに、当該転てつ器50を予定進路に含む列車それぞれについて、列車ID352cと、進入側停止目標着点352dと、開通方向352eと、占有状態352fと、鎖錠状態352gと、占有開始時刻352hと、占有終止時刻352iと、停止減速度352jと、を対応付けて格納している。進入側停止目標着点352dは、対応する列車に設定された予定進路の停止目標着点である。
占有開始時刻352h、及び、占有終止時刻352iは、絶対時刻を格納しているが、それぞれ、現在時刻から占有開始時刻までの時間間隔すなわち占有開始時分、及び、現在時刻から占有終止時刻までの時間間隔すなわち占有終止時分を、格納することとしても良い。停止減速度352jは、当該転てつ器50についての停止制御を行う場合の減速度であり、対応する列車10の性能である減速度を、当該転てつ器50の外方の勾配によって補正した値となる。
図26は、着点進路状態データ354のデータ構成の一例を示す図である。図26によれば、着点進路状態データ354は、着点70それぞれについて、着点ID354aとともに、当該着点を予定進路に含む列車それぞれについて、列車ID354bと、進入側停止目標着点354cと、進出側停止目標着点354dと、占有状態354eと、鎖錠状態354fと、占有開始時刻354gと、占有終止時刻354hと、停止減速度354iと、を対応付けて格納している。進入側停止目標着点354cは、対応する列車10が当該着点70に進入する際の予定進路の停止目標着点であり、進出側停止目標着点354dは、対応する列車10が当該着点70から進出する際の予定進路の停止目標着点である。占有開始時刻354g、及び、占有終止時刻354hは、絶対時刻ではなく、それぞれ、占有開始時分、及び、占有終止時分を格納することとしても良い。
図27は、踏切道線路交差点進路状態データ356のデータ構成の一例を示す図である。図27によれば、踏切道線路交差点進路状態データ356は、踏切道線路交差点それぞれについて、踏切道線路交差点ID356aとともに、当該踏切道線路交差点を予定進路に含む列車それぞれについて、列車ID356bと、占有状態356cと、鎖錠状態356dと、防護パターンの設定有無356eと、占有開始時刻356fと、占有終止時刻356gと、停止減速度356hとを対応付けて格納している。占有開始時刻356f、及び、占有終止時刻356gは、絶対時刻ではなく、それぞれ、占有開始時分、及び、占有終止時分を格納することとしても良い。
図19に戻り、進路占有解除部218は、線路ノードに対する占有解除を行う。具体的には、線路ノードそれぞれについて、当該線路ノードの設置位置を、当該線路ノードを占有している列車10(詳細には、最後尾位置)が通過すると、鎖錠及び占有を解除する。次いで、占有解除した線路ノードが踏切道線路交差点62ならば、踏切警報機制御部224を介して、当該踏切道線路交差点62に係る踏切警報機64の鳴動を終止させる。
進路取消部220は、地上装置30の上位装置や司令員の操作等によって外部入力される列車10を指定した予定進路の取り消し指令に応じて、当該列車10に設定されている予定進路の取り消しを行う。具体的には、指定された列車10の予定進路上の線路ノードのうち、当該列車10によって占有しているが鎖錠していない線路ノードついては、直ちに占有を解除し、鎖錠している線路ノードについては、当該列車10が停車した後、当該線路ノード上に位置していないことを確認した上で占有を解除する。そして、占有解除した線路ノードが踏切道線路交差点62ならば、踏切警報機制御部224を介して、当該踏切道線路交差点62に係る踏切警報機64の鳴動を終止させる。
転てつ器制御部222は、転てつ器50の動作制御を行う。すなわち、転てつ器50に対して、進路占有・鎖錠部216の転換指示に従って、指示された転換方向への転換動作を行わせる。また、随時、各転てつ器50の現在の転換状態(定位/反位/転換中)を取得・管理する。
踏切警報機制御部224は、踏切警報機64の鳴動制御を行う。すなわち、進路占有・鎖錠部216の指示に従って、踏切警報機64の鳴動を開始させるとともに、進路占有解除部218の指示に従って、踏切警報機64の鳴動を終止させる。また、各踏切警報機64の継続鳴動時間を計時し、各踏切警報機64の制御状態を、踏切道鳴動状態データ370として管理する。
図28は、踏切道鳴動状態データ370のデータ構成の一例を示す図である。図28によれば、踏切道鳴動状態データ370は、踏切道それぞれについて、踏切道ID370aと、当該踏切道に設けられている踏切警報機64の鳴動状態370bと、その継続鳴動時分370cと、を格納している。
記憶部300は、ROMやROM等のICメモリや、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部200が地上装置30を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が実行した演算結果や、通信部108を介して送受するデータ等が一時的に格納される。また、記憶部300には、進路制御プログラム302と、駅ダイヤ情報304と、列車情報310と、線路ノード構成データ330と、線路ノード進路状態データ350と、制限速度変化点データ360と、踏切道鳴動状態データ370と、が記憶される。
列車情報310は、地上装置30の管理対象となる列車10に関する情報である。図29は、列車情報310のデータ構成の一例を示す図である。図29によれば、列車情報310は、列車10それぞれについて、識別情報である列車ID312に対応付けて、性能データ314と、位置速度データ316と、予定進路データ318と、競合列車優先関係データ320と、走行予測データ322とを含む。
性能データ314は、走行性能に関するデータであり、列車長314aと、加速度314bと、減速度314cと、最高速度314dとを格納している。位置速度データ316は、現在の走行位置及び走行速度に関するデータであり、先頭列車の先端部の位置316aと、最後尾車両の後端部の位置316bと、走行速度316cと、を格納している。
予定進路データ318は、当該列車10に設定された予定進路に関するデータである。列車10の予定進路は、始発駅から終着駅までの区間について、途中の停車駅間を単位として設定される。このため、予定進路データ318は、図30に示すように、停車駅に設定されている停止目標着点318a毎に、当該停止目標着点までの予定進路上の線路ノード318bと、その線路ノード318bが転てつ器50である場合の開通方向318cと、進路状態318dとを対応付けて格納している。進路状態318dは、占有状態と、鎖錠状態と、占有開始時刻と、占有終止時刻とを含む。
競合列車優先関係データ320は、予定進路が競合する列車に関するデータであり、図31に示すように、予定進路が競合する列車320aそれぞれについて、競合する線路ノード320bと、競合する線路ノードについての優先関係320cと、優先関係が絶対的優先関係である場合に優先となる列車320dと、優先関係が相対的優先関係である場合の当該列車及び競合列車それぞれの競合区間の進出時刻320eと、を対応付けて格納している。
走行予測データ322は、当該列車10に対して行った列車走行予測に関する最新のデータであり、図32に示すように、防護方程式テーブル324と、走行方程式テーブル326と、を含む。
防護方程式テーブル324は、設定した防護方程式毎に、例えば終了点が当該列車10の走行位置に近い順に並べて付した式番号324aと、防護対象324bと、防護種別324cと、終了点距離324dと、減速度324eと、内方制限速度324fと、減速制御解除時刻324gとを対応付けて格納している。防護対象324bは、当該防護方程式を設定した線路ノード或いは制限速度変化点である。防護種別324cは、防護方程式の種別であり、減速方程式であるか定速度方程式であるかを示す。終了点距離324dは、当該列車10の現在の走行位置(詳細には、先頭位置)から、防護方程式の終了点の位置までの距離である。内方制限速度324fは、防護方程式の終了点の内方の制限速度である。
走行方程式テーブル326は、作成した走行方程式を構成する部分方程式毎に、例えば作成順に並べて付した式番号326aと、式種別326bと、開始点距離326cと、開始時間326dと、開始速度326eと、加減速度326fと、を対応付けて格納している。式種別326bは、部分方程式が、加速方程式、減速方程式、或いは、定速度方程式の何であるかを示す。開始点距離326cは、当該列車10の現在の走行位置(詳細には、先頭位置)から、部分方程式の開始点の位置までの距離である。開始時間326dは、現在時刻から、部分方程式の開始点の位置に到達するまでの時間である。開始速度326eは、部分方程式の開始点の速度である。
[処理の流れ]
図33は、地上装置30が行う進路制御処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部200が、進路制御プログラム302を実行することで実現される。
先ず、駅それぞれを順に対象としたループAの繰り返し処理を行う。ループAでは、進路設定部204が、駅ダイヤ情報304を参照して、何れかの列車10の対象駅における発車時刻の所定時間前となったならば(ステップA1:YES)、その列車10について、現在の走行位置を発点とし、次の停車駅を停止目標着点として、予定進路を設定する(ステップA3)。ループAはこのように行われる。
全ての駅を対象としたループAの処理を終了すると、列車間優先関係判定処理(図34参照)を行って、予定進路が競合する列車間の優先関係を判定する(ステップA5)。続いて、全ての列車10を順に対象としたループBの繰り返し処理を行う。ループBでは、列車走行予測部208が、対象列車10についての列車走行予測処理(図35参照)を行って、対象列車10の列車走行予測を行う(ステップA7)。次いで、占有開始・終止時刻算出部214が、列車走行予測の結果に基づき、対象列車10の予定進路上の線路ノードそれぞれについて、占有開始時刻及び占有終止時刻を算出する(ステップA9)。ループBはこのように行われる。
全ての列車を対象としたループBの処理を終了すると、続いて、進路占有・鎖錠部216が、進路占有・鎖錠処理(図37参照)を行う(ステップA15)。次いで、進路占有解除部218が、進路占有解除処理(図38参照)を行う(ステップA17)。その後、何れかの列車10に対する進路取り消し指令が成されているかを判断し、進路取り消し指令がなされているならば(ステップA:19)、進路取消部220が、指定された列車10についての進路取消処理(図39参照)を行う(ステップA21)。以上の処理を行うと、ステップA1に戻り、同様の処理を繰り返す。
図34は、列車間優先関係判定処理の流れを説明するフローチャートである。列車間優先関係判定処理では、先ず、全ての列車10を順に対象としたループDの繰り返し処理を行う。ループDでは、列車間優先関係判定部206が、対象列車10と、予定進路が競合する他の列車(競合列車)を抽出する(ステップB1)。予定進路が競合するか否かは、それぞれの予定進路に共通の線路ノードが含まれるか否かによって判断する。
次いで、抽出した競合列車を順に対象としたループEの繰り返し処理を行う。ループEでは、対象列車と競合列車との競合する線路ノードについての優先関係を、それぞれの予定進路や走行位置等から判定する(ステップB3)。そして、判定した優先関係が絶対的優先関係ならば(ステップB5:YES)、競合形態から、対象列車と競合列車のうち、競合区間を優先とする列車を判定する(ステップB7)。
ループEはこのように行われる。全ての競合列車に対するループEの処理を行うと、ループDの処理は終了となる。全ての列車10を対象としたループDの処理を行うと、列車間優先関係判定処理は終了となる。
図35は、走行予測処理の流れを説明するフローチャートである。走行予測処理では、先ず、防護方程式作成部210が、対象列車の予測進路上の線路ノードを抽出する(ステップC1)。そして、抽出した線路ノードを順に対象とするループFの繰り返し処理を行う。ループFでは、対象の線路ノードが対象列車によって鎖錠されているか否かを判断する。鎖錠されていないならば(ステップC3:NO)、対象の線路ノードの外方に定められた停止位置を速度ゼロの終了点とする減速方程式を設定する(ステップC5)。次いで、対象の線路ノードに進路設定している競合列車のうち、絶対的優先関係である競合列車を抽出する(ステップC7)。競合列車が抽出されたならば(ステップC9:YES)、抽出した競合列車それぞれの対象線路ノードについての進路占有終止時刻のうち、最も遅い時刻を、減速方程式の減速解除時刻として設定する(ステップC11)。絶対的優先関係にある競合列車が抽出されないならば(ステップC9:NO)、現在時刻を、減速方程式の減速解除時刻として設定する(ステップC13)。ループFはこのように行われる。
抽出した全ての線路ノードに対するループFの処理を行うと、続いて、対象列車の予定進路上の制限速度変化点を抽出する(ステップC15)。そして、抽出した制限速度変化点それぞれを順に対象としたループGの繰り返し処理を行う。ループGでは、対象の制限速度変化点の内方の制限速度が外方の制限速度より低いならば(ステップC17:YES)、対象の制限速度変化点は速度制限区間の開始位置と判断されるため、対象の制限速度変化点で内方の制限速度となる開始点を定めて減速方程式を設定する(ステップC19)。一方、対象の制限速度変化点の内方の制限速度が外方の制限速度以上ならば(ステップC17:NO)、対象の制限速度変化点は速度制限区間の終了位置と判断されるため、対象の制限速度変化点で外方の制限速度となる終了点を定めて定速度方程式を設定する(ステップC21)。ループGはこのように行われる。
抽出した全ての制限速度変化点を対象としたループGの処理を行うと、対象線路の予定進路のうち、速度制限区間を除く区間について、線区の制限速度(上限速度)での定速度方程式を設定する(ステップC23)。その後、走行方程式作成部212が、走行方程式作成処理(図36参照)を行って、このように設定した防護方程式を用いて対象列車の走行予測方程式を作成する(ステップC25)。以上の処理を行うと、列車走行予測処理は終了となる。
図36は、走行方程式作成処理の流れを説明するフローチャートである。走行方程式作成処理では、先ず、走行方程式作成部212が、対象列車の現在の走行位置及び走行速度を開始点とする加速方程式を作成し、処理対象方程式とする(ステップD1)。そして、この処理対象方程式を、走行予測方程式の部分方程式として採用する(ステップD3)。次いで、処理方程式と最初に交差する防護方程式を取得する(ステップD7)。交差する防護方程式が存在しないならば(ステップD7:NO)、処理方程式の終了点を開始点とする加速方程式を作成し、新たな処理対象方程式とする(ステップD9)。その後、ステップD3に戻り、同様の処理を行う。
交差する防護方程式が存在するならば(ステップD7:YES)、処理対象方程式と防護方程式との交点の位置、速度及び時刻を算出する(ステップD9)。そして、交差する防護方程式が最終の防護方程式(つまり、予定進路の停止目標着点について設定された減速方程式)ならば(ステップD13:YES)、交差する防護方程式の交点から終了点までを、走行予測方程式の部分方程式として採用する(ステップD29)。そして、走行方程式作成処理は終了となる。
一方、交差する防護方程式が最終の防護方程式でないならば(ステップD13:NO)、交差する防護方程式に減速解除点が設定されているかを判断する。減速解除点が設定されていないならば(ステップD15:NO)、交差する方程式を処理対象方程式とし、交点以降を走行予測方程式の部分方程式として採用する(ステップD17)。その後、ステップD5に戻り、同様の処理を行う。
交差する防護方程式に減速解除点が設定されているならば(ステップD15:YES)、交点の時刻と、減速解除点の時刻(減速解除時刻)とを比較する。交点の時刻が減速解除時刻より早いならば(ステップD19:YES)、交差する防護方程式の交点から減速解除点までを、走行予測方程式の部分方程式として採用する(ステップD21)。そして、減速開始点を開始点とする加速方程式を作成し、処理対象方程式とする(ステップD23)。その後、ステップD3に戻り、同様の処理を行う。一方、交点の時刻が減速解除時刻以降ならば(ステップD19:NO)、交差する防護方程式を不採用とし(ステップD25)、処理対象方程式とその次に交差する防護方程式を取得する(ステップD27)。その後、ステップD7に戻り、同様の処理を行う。
図37は、進路占有・鎖錠処理の流れを説明するフローチャートである。進路占有・鎖錠処理では、進路占有・鎖錠部216が、線区の全ての線路ノードを順に対象としたループHの繰り返し処理を行う。ループHでは、対象の線路ノードの進路状態を判断し、何れの列車10にも鎖錠されていないならば(ステップE1:NO)、何れかの列車10によって占有されているかを判断する。対象の線路ノードが何れかの列車10にとって占有されており(ステップE3:YES)、且つ、対象の線路ノードが転てつ器50ならば(ステップE5:YES)、対象の線路ノードを占有している列車10の対象の線路ノードである転てつ器50についての開通方向を取得し、開通方向への転換が完了しているかを判断する。開通方向への転換が完了しているならば(ステップE7:YES)、対象の線路ノードを、占有している列車10で鎖錠する(ステップE9)。
踏切道60の踏切警報機の鳴動については、踏切道線路交差点62を転てつ器50や着点70といった線路ノードの一種に加えることにより、踏切道60に列車10が到達する時刻を予測することができるので、列車10の予測到達時間と踏切道60の基準鳴動時分の比較により、踏切警報機の鳴動時分を適正化できる。すなわち、対象の線路ノードが踏切道線路交差点62ならば(ステップE5:NO〜ステップE11:YES)、係る踏切道60の警報機警報機が鳴動を開始しており、且つ、遮断機が遮断完了しているかを確認する。鳴動開始及び遮断完了しているならば(ステップE12:YES)、対象の線路ノードを占有している列車10による対象の線路ノードの占有開始時分と、対象の線路ノードである踏切道線路交差点62の継続鳴動時分との合計時分を算出する。そして、この合計時分が基準鳴動時分以上ならば(ステップE13:YES)、占有している列車10に対する踏切道線路交差点62の踏切道防護パターンを消去し(ステップE15)、対象の線路ノードを、占有している列車10で鎖錠する(ステップE17)。
また、係る踏切道60の踏切警報機64が鳴動開始していない、或いは、遮断完了していない場合(ステップE12:NO)、或いは、対象の線路ノードの占有開始時分と継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分未満である場合には(ステップE13:NO)、対象の線路ノードである踏切線路交差点62に対する踏切道防護パターンを継続又は再生成して、踏切道警報機64の鳴動時間の調整を行う(ステップE18)。
また、対象の線路ノードが着点70ならば(ステップE11:NO)、対象の線路ノードを、占有している列車10で鎖錠する(ステップE17)。
一方、対象の線路ノードが何れの列車10にも占有されていないならば(ステップE3:NO)、対象の線路ノードを進路設定している列車10のうち、占有開始時刻が現在時刻に達している列車10を抽出する(ステップE19)。列車10が抽出されたならば(ステップE21:YES)、対象の線路ノードを、抽出した列車10で占有する(ステップE23)。次いで、対象の線路ノードが転てつ器50ならば(ステップE25:YES)、抽出した列車10の対象の線路ノードについての開通方向を取得し(ステップE27)、対象の線路ノードである転てつ器50に対して、取得した開通方向への転換を指示する(ステップE29)。
また、対象の線路ノードが踏切道線路交差点62ならば(ステップE25:NO〜ステップE31:YES)、対象の線路ノードである踏切道線路交差点62に係る踏切警報機64の鳴動の開始を指示する(ステップE33)。ループHはこのように行われる。全ての線路ノードを対象としたループHの処理を行うと、進路占有・鎖錠処理は終了となる。
図38は、進路占有解除処理の流れを説明するフローチャートである。進路占有解除処理では、進路占有解除部218が、線区の全ての線路ノードを順に対象としたループIの繰り返し処理を行う。ループIでは、対象の線路ノードの進路状態が鎖錠ならば(ステップF1:YES)、対象の線路ノードを占有している列車10が、対象の線路ノードを通過したかを判断する。通過したならば(ステップF3:YES)、対象の線路ノードの占有を解除する(ステップF5)。
次いで、対象の線路ノードが踏切道線路交差点62ならば(ステップF7:YES)、同じ踏切道60に所属する全ての踏切道線路交差点62の占有状態を判断する。全ての踏切道線路交差点62が未占有ならば(ステップF9:YES)、当該踏切道60の踏切警報機64の鳴動の終止を指示する(ステップF11)。ループIはこのように行われる。全ての線路ノードを対象としたループIの処理を終了すると、進路占有解除処理は終了となる。
図39は、進路取消処理の流れを説明するフローチャートである。進路取消処理では、進路取消部220が、対象の列車10の予定進路上の線路ノードを順に対象としたループJの繰り返し処理を行う。ループJでは、対象の線路ノードが、対象の列車10によって占有されており(ステップG1:YES)、且つ、鎖錠されているならば(ステップG3:YES)、対象の列車10の走行状態を判断する。列車10が停止しており(ステップG5:YES)、且つ、対象の列車10の停車位置が、対象の線路ノード上でないならば(ステップG:NO)、対象の列車10による対象の線路ノードの占有を解除する(ステップG9)。一方、対象の線路ノードが、対象の列車10によって占有されているが(ステップG1:YES)、鎖錠されていないならば(ステップG3:NO)、対象の列車10による対象の線路ノードの占有を解錠する(ステップG9)。
続いて、対象の線路ノードが踏切道線路交差点62ならば(ステップG11:YES)、同じ踏切道60に所属する全ての踏切道線路交差点62の占有状態を判断する。全ての踏切道線路交差点62が未占有ならば(ステップG13:YES)、対象の踏切道線路交差点62に係る踏切警報機64の鳴動の終止を指示する(ステップG15)。ループJはこのように行われる。以上の処理を行うと、進路取消処理は終了となる。
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、無線列車制御システムの特徴を踏まえた新たな進路制御を実現することができる。すなわち、地上装置30は、各列車10について、駅の停車時に、当該停車位置を発点とし次の停車駅を停止目標着点とする予定進路を設定する。つまり、進路の発点を任意に設定できるとともに、予定進路の設定タイミングの判定が容易である。
また、各列車10について、予定進路上の競合する線路ノードの優先関係を判定し、この線路ノードの優先関係を用いて、予定進路の走行を予測した走行予測方程式を作成することができる。この走行予測方程式をもとに、各列車10の予定進路上の各線路ノードの占有開始時刻を算出する。そして、線路ノード毎に、当該線路ノードを進路設定している列車10の占有開始時刻となると、当該列車10で占有させるとともに、当該列車10が通過すると、占有を解除する。これにより、進路の鎖錠範囲を狭小化することができ、例えばダイヤ乱れ時にも、進路の競合を抑えることができる。
特に、線路ノードの一種である踏切道線路交差点62については、列車10の予測到達時分が踏切道60に定められた基準鳴動時分以下となる時刻を占有開始時刻とし、列車10の予測到達時分と踏切道60における踏切警報機64の継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分以上となると、列車10によって鎖錠する。そして、列車10が踏切道線路交差点62を占有すると、当該踏切道線路交差点62に係る踏切警報機の鳴動を開始させ、占有を解除すると、鳴動を終止させる。これにより、列車10の通過に伴う踏切道60の踏切警報機64の鳴動(鳴動時間や、鳴動開始・終止のタイミング)を、適切に制御することができる。
具体的には、踏切道に設定した踏切道防護パターンによって、駅等に停車した列車の予測出発時刻より早い出発や遅れが生じた場合であっても、踏切警報機の鳴動時間を適切に調整することができる。すなわち、列車の出発が早まった場合(早発)、踏切道の予測到達時刻も早まるため、当該踏切道の鳴動時間が短くなるが、踏切道への予測到達時分と継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分以下となった場合には、踏切道60に対する踏切道防護パターンを再度生成させ、列車10の踏切道60への到達を遅らせる走行時間の“時間稼ぎ”を行うことで、鳴動時間を適正化することができる。
また逆に、駅での客扱い等によって列車10の出発時刻が遅れる可能性が有る場合には、列車10による踏切道60の占有開始時刻となった後、列車10の出発準備が整ったことを確認してから、踏切警報機64の鳴動を開始させる。この場合、列車10の踏切道60への到達予測時分と継続鳴動時分との合計時分が基準鳴動時分に達するまで踏切道防護パターンを消去せずに進路占有の状態のままとして、列車10の踏切道60への到達を遅らせる走行時間の“時間稼ぎ”を行うことにより、鳴動時間を適正化することができる。
また、列車が踏切道の直前に停止した場合には、従来の踏切制御では、踏切警報機の鳴動を取り消すことができないが、本実施形態では、列車先頭が進路始点であるので、進路取り消しによって、この踏切の踏切警報機の鳴動を終止することができる。
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
1 列車制御システム
10 列車、20 車上装置
30 地上装置
102 入力部、104 表示部、106 時計部、108 通信部
200 処理部
202 在線管理部、204 進路設定部、206 列車間優先関係判定部
208 列車走行予測部、210 防護方程式作成部、212 走行方程式作成部
214 占有開始・終止時刻算出部、216 進路占有・鎖錠部
218 進路占有解除部、220 進路取消部
222 転てつ器制御部、224 踏切警報機制御部
300 記憶部
302 進路制御プログラム、304 駅ダイヤ情報
310 列車情報、330 線路ノード構成データ
350 線路ノード進路状態データ、360 制限速度変化点データ
370 踏切道鳴動状態データ
40 無線基地局
50 転てつ器
60 踏切道、62 踏切道線路交差点、64 踏切警報機
70 着点
R 軌道

Claims (7)

  1. 各列車の列車位置に基づいて列車制御及び踏切警報機の鳴動制御を行う無線列車制御システムの進路制御方法であって、
    各列車について、当該列車の列車位置を発点とし、到達目標位置を着点として、前記発点から前記着点までを予定進路として設定することと、
    各列車について、前記予定進路上の走行位置に対する走行速度を予測した速度曲線(以下、「走行予測方程式」という)を予測することと、
    少なくとも踏切道を含む線路ノードそれぞれに対する進入列車の優先順位を、各列車の前記走行予測方程式を用いて設定することと、
    前記線路ノードそれぞれについて、優先順位が最優先に設定された列車の前記走行予測方程式に基づき、前記列車が当該線路ノードに接近したことを示す接近条件を満たし、且つ、当該線路ノードの占有列車設定が占有列車無しの場合に、当該列車を占有列車として当該線路ノードを占有させる占有設定を行うことと、
    前記占有設定された踏切道の踏切警報機の鳴動開始を指示することと、
    各列車について、前記予定進路の前記発点から順に当該列車が占有列車として設定された線路ノードに対する進入を許可することで、当該列車の進行許可区間を設定することと、
    前記線路ノードを列車が通過した場合に、当該通過した列車を占有列車とする線路ノードの占有列車設定を占有列車無しとする占有解除を行うことと、
    前記占有解除された踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示することと、
    を含む進路制御方法。
  2. 前記占有設定を行うことは、
    前記線路ノードが踏切道である場合に、前記走行予測方程式に基づいて予測した当該踏切道へ到達するまでの所要時分である予測到達時分が、当該踏切道に定められた基準鳴動時分以下であることを接近条件とすること、
    を含む、
    請求項1に記載の進路制御方法。
  3. 前記進行許可区間を設定することは、
    進入許可の対象の線路ノードが踏切道の場合に、対応する占有列車の前記走行予測方程式に基づいて予測した当該踏切道へ到達するまでの所要時分である予測到達時分と、当該踏切道の踏切警報機の継続鳴動時分との合計が、当該踏切道に定められた基準鳴動時分以上である場合に、当該占有列車の当該踏切道への進入を許可する、
    ことを含む、
    請求項1又は2に記載の進路制御方法。
  4. 前記予定進路上の踏切道に対する進入が許可されていない列車に対して、当該踏切道の進入前に停止させる踏切道防護パターンを設定すること、
    を含む、
    請求項1〜3の何れかに記載の進路制御方法。
  5. 前記踏切道は、当該踏切道に交差する各線路の線路交差点それぞれが個別の前記線路ノードとされ、
    前記鳴動の終止を指示することは、
    当該踏切道の全ての線路交差点に係る線路ノードが占有列車無しの場合に、当該踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示することである、
    請求項1〜4の何れかに記載の進路制御方法。
  6. 前記予定進路の取り消し指令に応じて、当該予定進路に係る列車に占有設定されているが進入が許可されていない線路ノードについては占有解除し、進入が許可されている線路ノードについては当該列車の停車後に占有解除することで、当該予定進路を取り消すこと、
    を含む、
    請求項1〜5の何れかに記載の進路制御方法。
  7. 各列車の列車位置に基づいて列車制御及び踏切警報機の鳴動制御を行う無線列車制御システムにおける地上装置であって、
    各列車について、当該列車の列車位置を発点とし、到達目標位置を着点として、前記発点から前記着点までを予定進路として設定する手段と、
    各列車について、前記予定進路上の走行位置に対する走行速度を予測した速度曲線(以下、「走行予測方程式」という)を予測する手段と、
    少なくとも踏切道を含む線路ノードそれぞれに対する進入列車の優先順位を、各列車の前記走行予測方程式を用いて設定する手段と、
    前記線路ノードそれぞれについて、優先順位が最優先に設定された列車の前記走行予測方程式に基づき、前記列車が当該線路ノードに接近したことを示す接近条件を満たし、且つ、当該線路ノードの占有列車設定が占有列車無しの場合に、当該列車を占有列車として当該線路ノードを占有させる占有設定を行う手段と、
    前記占有設定された踏切道の踏切警報機の鳴動開始を指示する手段と、
    各列車について、前記予定進路の前記発点から順に当該列車が占有列車として設定された線路ノードに対する進入を許可することで、当該列車の進行許可区間を設定する手段と、
    前記線路ノードを列車が通過した場合に、当該通過した列車を占有列車とする線路ノードの占有列車設定を占有列車無しとする占有解除を行う手段と、
    前記占有解除された踏切道の踏切警報機の鳴動の終止を指示する手段と、
    を備える地上装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109649453A (zh) * 2018-12-07 2019-04-19 天津津航计算技术研究所 一种列车进路自动办理方法

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