JP2018044830A - 荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉 - Google Patents
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Abstract
Description
磁気閉じ込め核融合のプラズマ密度は、1014/cm3前後とされ、これは大気の10万分の1であり、炉の大きさに比べて核融合反応で生じた荷電粒子の平均自由行程の方が大きい。
荷電粒子ビームを使用する研究もされているが、核融合プラズマやペレットを加熱・点火するためであり、荷電粒子ビーム同士を衝突させることで核融合反応を発生させようとする研究は、素粒子研究の分野以外では、見当たらない。
・その1(ビーム衝突精度)
2本の荷電粒子ビームを、平均自由行程を超える長さに亘り、対向して重ねる必要があるから、0.1μm程度の極めて高い精度が求められることになる。
核融合発生領域を限定するため、荷電粒子ビームを軸方向にも圧縮し、荷電粒子をバンチ状にしなければならないが、荷電粒子のバンチの後方は、互いに衝突する粒子が減少するため、後半ほど核融合を生じなかった未反応燃料粒子が増加してしまうので、荷電粒子をバンチにしたことによって、未反応粒子の加速に要したエネルギーが無駄になる。
さらに、核融合生成粒子は、核融合反応点を中心にあらゆる方向に等方に飛翔するため、直接電力変換、粒子の弁別、荷電粒子の回収等を困難なものにしている。
未反応粒子及び核融合生成粒子に含まれる三重水素3H(トリチウムT)を、他の核種の荷電粒子と混合した後では、その中から電荷質量比の違いによって、特定の核種を分離することが困難になっていた。
静電型の直接電力変換は、部品点数が多くなること、出力電圧が高くなってしまうなどの問題があった。
・その6(燃料の管理)
中性子を発生しない核融合燃料である重水素2H(デューテリウムD)及びヘリウム3(3He)は、核融合爆弾(水素爆弾)の原料であるから、その取扱いについて十分な管理が要求される。
また、使用環境において存在する荷電粒子や中性子による燃料の変質、核反応を防止する必要性がある。
荷電粒子の衝突方式として、一方が低速で大量の、他方が高速で少量の荷電粒子を衝突(以下「非対称衝突」と呼ぶ。)させさせることにより、衝突誤差δの許容値を大きく確保するとともに、高速の荷電粒子を無駄なく核融合させ、加速に要したエネルギーの無駄を減らすことができる。
4種類の核融合反応について、高速の粒子がほぼ全て核融合反応をすると仮定し、100倍多いため、低速粒子の99%が未反応粒子となる非対称衝突方式と、対称衝突させる場合とを比較した。
表1 非対称衝突と対称衝突の比較
低速の荷電粒子をさらに低速にすることによって、加速に要するエネルギーを減らすことができるが、荷電粒子の収束状態の維持とトレードオフとなると考えられる。
低速粒子を重水素2H(デューテリウムD)とする核融合は、ヘリウム3(3He)の入手が困難な地球上において、D−D反応から核融合を開始することができ、ヘリウム3を生産できる。宇宙開発が進み、ヘリウム3(3He)を入手できるようになった後は、放射性物質を発生しない安全なD−3He反応に移行することが望まれる。
低速粒子をヘリウム3(3He)とする核融合は、宇宙においてヘリウム3(3He)が豊富な環境で有利と考えられる。
D−T及びD−3He反応は、対称衝突と比較して非対称衝突の方が、無効となるエネルギーが増大することになるが、D−D反応と同時に使用する場合は、未反応の低速の重水素原子核2H粒子に衝突させるので、無効エネルギーが増大することにはならない。
また、効率が高いとされる分散型加速器(非特許文献1参照)使用した場合、60%以上の効率が得ることができるから、加速に要するエネルギーより大きな核融合エネルギーを回収することができると期待できる。
3He−3He反応については、核融合反応断面積が0.01barnと小さく、高い核融合反応率を確保するために、他の反応と比較して荷電粒子バンチの圧縮度を高くする必要がある。
核融合生成粒子が核融合反応点を中心にあらゆる方向に等方に飛翔することから、直接電力変換、粒子の弁別及び回収を困難なものにしている。
楕円形状を基調とする内面を有するセラミック等の絶縁体で作成した荷電粒子収束器を使用して、多面体(切頂20面体等)の面を単位として配置することにより、それぞれの方向に飛散した粒子を荷電粒子収束器ごとに収束することができる。
表2 核融合反応生成粒子の飛翔速度等一覧
三重水素3H(トリチウムT)とヘリウム3(3He)の飛翔速度の比率は、約10%程度と僅かであるが異なっている。核融合生成粒子のパルス幅(時間幅)が13nSである場合、1m以上離れた地点で混合を遁れて分離することができる計算となる。
磁気結合による直接電力変換を行うことで、低い電圧による電気エネルギーに直接変換することができる。
荷電粒子収束筒63hで収束し、核種分離後、荷電粒子の流れに平行に導体を配置し、その周囲を磁性体で取り囲み磁気結合することで、導体に電流を誘起することで、荷電粒子の運動エネルギーから直接電力変換を行うことが出来る。核融合生成粒子のパルス幅と同等のパルス状の電流を得る。
さらに、図に示していないが、真空容器内部に、荷電粒子を下方に誘導する電界を与える電極を絶縁容器の外側に配置する。
中性子は、電磁界の影響を受けにくいこと、物質の透過力が高いため、荷電粒子との分離は容易である。
GPS等位置情報取得機能を内蔵して、運搬状況を記録する他、ブラックボックスで知られるような航空機の運行情報を含めた記憶装置を内蔵した核融合燃料カセットを使用し、核融合燃料の位置管理と核融合燃料が飛行計画のとおりに使用されたか否かを管理する。
磁気結合による直接電力変換を行うことで、低い電圧の電気エネルギーに直接変換することができる。
図1は、荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60uを使用した実施例1の核融合発電炉の説明図である。
図2は、荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60uを使用した実施例2の簡易型の核融合発電炉の説明図であり、中性子及び放射性物質を生成しない、D−3He及び3He−3He反応専用の核融合炉である。
2つの粒子加速器62(電界ピストン型粒子加速器62t)により、重水素2H原子核を加速し、時間差を付けて、電子レンズ63(キャピラリー63c)により収束して、核融合炉の中心に向かって発射する。
図3は、燃料粒子および生成粒子の飛翔状況の説明図である。(表2の非対称衝突燃料粒子および生成粒子の飛翔状態を図に示したものである。)
遅い重水素2H(デューテリウムD)ビーム1に、高速の重水素2H(デューテリウムD)ビーム2が衝突し、核融合反応で生成した粒子が、1m離れた地点に、水素1H(プロトンp)、中性子n、三重水素3H(トリチウムT)及びヘリウム3(3He)の順に到達する。
遅い重水素2H(プロトンp)ビーム1に、高速の三重水素3H(トリチウムT)ビーム2が衝突し、核融合反応で生成した粒子が、1m離れた地点に、中性子n及びヘリウム4Heの順に到達する。
遅い重水素2Hビーム1に、高速のヘリウム3(3He)ビーム2が衝突し、核融合反応で生成した粒子が、1m離れた地点に、水素1H及びヘリウム4Heの順に到達する。
3He−D反応については(c)の燃料粒子を入れ替えたものであり、3He−3He反応については、粒子放出順序により飛翔粒子のエネルギーに相違が生じるので粒子飛翔図は省略した。
核融合生成粒子の核種ごとの飛翔速度の違いを利用して、混合する前に到達時間差で核種を分離することが可能であることが解る。
(a)は、衝突直前、(b)は、一部衝突、(c)は、衝突終了、(d)は、衝突終了直後、(e)は、核融合生成荷電粒子である水素原子核1H(p),三重水素3H(T)及びヘリウム3(3He)が分離して球殻状に広がっていく様子を表している。(中性子nも飛翔しているが、図には描いていない。)
衝突時に下方に向かう運動エネルギーが存在するため、上方に向かう粒子は遅く、下方に向かう粒子の速度は相加するので速くなる。
また、低速のビーム1のバンチの上から下に向かって衝突が進行することから、上側に飛翔する生成粒子の半径方向の幅が広く、下側に向かう粒子の半径方向の幅が狭くなる。
逆順とした場合、低速粒子に衝突する直前に、高速の粒子同士が相対速度差の400keVで衝突してD−3He反応を生じるので、核融合生成粒子の分離への影響を考慮する必要がある。
なお、図4(a)から(f)のビームの太さを強調して描かれているが、低速のビーム1の太さは10μm前後、長さは3.9cm前後である。
電界ピストン型粒子加速器62tは、石英やセラミックなどの丈夫な絶縁体でテーパー状に形成された容器の外側に多数の環状の電極を設け、内部に電気的に絶縁された複数の加速グリッド62aを設けている。
加速グリッド62aは、荷電粒子のエミッションを増加させないように、荷電粒子を正確に容器の先端に向けて加速するために設けている。容器の直径が小さい部分では、加速グリッド62aを省略している。
ノード番号が大きくなるほど両極性パルスの負電圧が加えられる時刻が遅延し、正電圧を加えるまでの時間間隔を短くしている。
荷電粒子は、電極及び加速グリッド62aの負の電圧に引かれ、正の電圧に反発して電界ピストン型粒子加速器62tの先端に向かって加速する。
両極性パルスの電圧波形は、正と負の高電圧を炭化シリコンなどの半導体スイッチSa、Sdを介して電極に印加して作成している。
電圧を反転する際は、図5(c)に示すように、残った電荷をダイオードD、インダクタンスL及びスイッチSb、Scを経由して放電し、電圧を反転した後に、スイッチSa、Sdを導通して高電圧Vhを加えることで、電界ピストン型粒子加速器62tの動作の効率化を図っている。
イオン回収チューブ68tは、イオン回収路68に接続して荷電粒子を回収し、磁気弁別器64Rに送っている。イオンを輸送する他、帯電を除去することができ、特にメンテナンスに際して帯電した三重水素3H(トリチウムT)を除去することが要求される。
また、この方法は、管内壁の帯電量を調整する方法として用いることができる。
水素原子の大きさが極めて微小であることから、帯電した水素原子が管の構成原子の隙間を抜けて外側に漏出することが考えられる。三重水素3H(トリチウムT)の漏出を防ぐため、管の内壁に水素H、重水素2Hなどの原子核をあらかじめ帯電しておく方法も考えられる。
さらに、管壁内に予め帯電させた金属などを埋め込む方法も考えられる。
楕円は、2つの焦点を持ち、1つの焦点から発した粒子は、楕円の内側(図のa点)で反射(θ1=θ2)して、他の焦点に収束する性質がある。
また、荷電粒子が荷電粒子収束器63hの内側の壁面に浅い角度θ1で衝突するので、直角または直角に近い角度で衝突する場合と比較して、壁面への衝撃が大きく緩和される。
荷電粒子収束器63hの核融合反応点70から遠い方の焦点付近の形状は、徐々に細くなるキャピラリー63cの形状とし、ゆるやかに荷電粒子を収束している。
荷電粒子収束器63hは、荷電粒子の照射に耐える強靭なセラミックなどを用い、中性子を伴う反応を利用する場合は、中性子を透過し易いジルコニウムなどを含む材料を用いる。
核融合で生成した荷電粒子は、より軽い粒子から順に荷電粒子収束器63hに到達するが、粒子を弁別するためには、それぞれの粒子を異なる流路に誘導する必要がある。
このため、どちらか一方の粒子を減速するか、または、偏向磁界を増減して、異なる流路に誘導する必要がある。
到達した粒子毎に時限回生減速器65hにより到達時刻により異なる制動を加えて飛翔速度を調整し、磁気偏向器64により異なる方向に偏向する。
弁別後の荷電粒子は、磁気結合回生減速器65gにより十分減速し、荷電粒子のままでイオンタンク59iに回収する。ただし、三重水素3H(トリチウムT)は、タンクに蓄積せずに直ちに加速して核融合炉に打ち込み、消滅するように構成している。
丈夫な絶縁体で形成された筒状の容器の外側に導体65cを配置し、当該導体を容器から離れた位置でループにして接続し、荷電粒子による誘導電流Iを導くことができる。容器から離れた位置で適当な電気抵抗を持たせることで熱に変換し、容器の局所的な過熱を避けつつ効果的な熱交換を行うことができる。
円環状の磁心65mの中を通過する荷電粒子の流れと逆方向に内側に配置した電極65tに誘導電流が流れ、荷電粒子の減速を行うとともに電気エネルギーに直接エネルギー変換を行っている。
ロゴスキーコイルの構成とすることもできる。
磁気結合回生減速器65gの電気出力に電力変換器65pを経由して電気エネルギーを取り出すが、スイッチする小さな容量のコンデンサーまたはインダクターを負荷とするなど、電力変換器65pの変換係数を瞬時に変化することで、磁気結合回生減速器65gによって取り出す電力量及び減速量を調整する。
図7(d)は、静電結合回生減速器65eの説明図である。狭い流路に荷電粒子を通して、電極に誘導電流を整流して取り出すように構成している。遅延回路を使用しないので、部品点数を減少できる。
なお、図1には、荷電粒子収束器63h、可変回生減速器65h、粒子分離器64x(偏向器64)及び磁気結合回生減速器65gを一組のみ記載するに止めており、他の荷電粒子収束筒63hについては外形のみを鎖線で描画している。
さらに、核融合生成粒子は、全て荷電粒子であるから、壁面への衝突などによる損失を除けば、荷電粒子の運動エネルギーは全て直接電力変換の対象であるから、極めて高い電力への変換効率が期待できる。
図4(f)のビームの太さは強調して描かれている。(ビーム1の太さは10μm、長さは3.9cm前後である。)
このため磁気弁別器64Rに送り、重水素2H(デューテリウムD)粒子のみを弁別する必要がある。
並行磁界の中に未反応粒子68nを導き、電荷質量比の違いを利用して、重水素2H(デューテリウムD)粒子から、混入した水素1H(プロトンp)、三重水素3H(トリチウムT)、ヘリウム3(3He)及びヘリウム4Heを分離する。
特許文献2及び3に示す可変容積一軸偏心ネジポンプ(アルミナなどの絶縁性の高い強靭な材料で作製したモーノポンプ)で、機械的な回転力により荷電粒子を圧縮する。
ステーター62sとローター62rとが作る密閉された空間であるキャビティーは、ローター62rの偏心回転に伴い、その容積を減じながら軸方向に移動する。
なお、荷電粒子圧縮ポンプ62pの先端B(図9(a)に示す。)が開いた瞬間に荷電粒子が勢い良く飛散することになるので、円筒形状のイオンタンク59iの内部で荷電粒子が回転するように導き、荷電粒子同志の衝突をさけて核融合反応が生じないように導入している。
なお、荷電粒子圧縮ポンプ62pの使い方は、図1及び図2のとおりである必要はない。
複雑になることから図示していないが、電界ピストン型粒子加速器62tの直前に荷電粒子圧縮ポンプ62pを挿入する構成方法(荷電粒子圧縮ポンプ62pと電界ピストン型粒子加速器62tを直列に接続する。)も考えられる。
さらに、荷電粒子の流路を構成する部材に帯電除去のための電極を配置する他、絶縁体の厚み(電極までの距離)を調整することで帯電量を調整し、荷電粒子の流れを調整し安定化する。
熱交換室57は、全体形状が球殻状で、図10(a)に示すような円環状(ドーナッツ状)の熱交換器57cを複数組み合わせた形状で、内部の高い圧力に耐えるようになっている。
中性子nの照射を受ける個所には、十分な強度があり、中性子nに対する反応断面積の小さなジルコニウムなどを用いる。
真空容器55を取り囲むように配置した中性子熱交換器57cは、保守作業のために一部を取り外すことが可能であり、接合箇所から中性子が漏出しない形状とする必要がある。
保守管理のために中性子熱交換器57cを分解して任意に取り外すことができる構造としている。
荷電粒子収束筒63hの取り出し部分等から、中性子nが外部に漏れないように対策が必要である。
図1の中性子熱交換器57と真空容器55(63h)との間、または、図2の熱交換室57は、空冷とし、気体を循環して、熱駆動ポンプ66(特許文献4の可変容積進行型ポンプ等)に導き、熱を回転力に変換し、発電機88を駆動して発電する。
図には示していないが、中性子減速材10に三重水素3H(トリチウムT)が多く含まれる場合は、漏えいを減少させるため、必要に応じて熱交換器を挿入する。
中性子減速材10は、冷却した後、中性子熱交換器57cの下部に戻し、循環している。
Li6 + n → 4He(3.5MeV) + T(2.7MeV)
この反応に適切な速度まで中性子nを減速することが必要であること、生成した三重水素3H(トリチウムT)を収集しなければならないこと、三重水素3H(トリチウムT)の取扱量が増加するとともに、装置が複雑になるため、望ましい方法ではないと考えられる。
3He + n → T
やはり、中性子減速材10として軽水を用いるのがベストと考えられ、中性子捕獲の結果、ガンマー線γを放出して、重水素2H(デューテリウムD)に変換されるから、精製して燃料の一部に加えることができる。
1H + n → 2H + γ
簡易型の非対称荷電粒子ビーム衝突方式核融合炉60uは、粒子の弁別装置を持たないから、ヘリウム4(4He)や水素1H(プロトンp)とともにイオンタンク59i、回収ガスボンベ68Vに回収する。
可変容積進行型ポンプ66の作動流体をCから導入し、複数のピストン66pで構成する気筒を順次移動しながら加熱を受けることで膨張し、回転しながら往復運動するピストン66pを駆動する。膨張を終えた作動流体は、Dからシリンダー66c壁を通して再度熱交換し、熱エネルギーを十分回収してEから排出している。
作動流体が空気である時は図には示していないが予め圧縮して用いる。水などのバイナリ流体は圧縮することなく用いることができる。
流路AからBと、流路CからEは、互いに分離されており、混合しないので、流路AからBに流す熱源流体に放射性物質が含まれていた場合でも漏えいを低く抑えることができる。
全ての反応において、毎秒7.28×1019個の粒子が衝突する条件で検討し、生成粒子の損失がないものとして計算した。
電力に換算して505.5MWの出力があり、ヘリウム3(3He)を燃焼せずに蓄積した場合は、290.4MWの出力となる。D−T反応205.1MW及びD−3He反応215.2MWと比較して、D−D反応による出力は、85.2MWと総発電量に対する占める割合が少ない。
表3 D−D反応による核融合発電量
なお、低速粒子の加速エネルギーは、117kW(194kW)と少ないため、無視した。
η=1−(TL/TH)
D−3He反応による215.2MWの電力換算出力があり、直接発電の効率が85%であると仮定すると、182.9MWの電気出力が得られ、損失となった32.3MWの熱出力から熱効率60%の発電を行うことで、19.4MWの電気出力を得ることができるから、合計202.3MWの電力を得ることができる。
粒子を加速するために4.7MWを要し、効率60%の分散型加速器を使用した場合、7.8MWの電力を要するから、差引、194.5MWの電力が得られる計算になる。
表4 D−3He反応による核融合発電量
D-3He反応または3He−3He反応を利用した中性子が発生しない核融合を用いる。
D−3He反応による215.2MWの電力換算出力がある想定であるが、直接発電は10%の21.5MWに抑え、193.7MWを熱に変換して、空気を加熱して噴射することで、核融合推進機80の駆動力にしている。(全てを熱出力とし、タービンを駆動して発電する方法も考えられる。)
粒子の衝突エネルギーに4.7MWを要し、効率60%の分散型加速器を使用した場合、7.8MWの電力を要するから、直接発電で得た電力を投入して賄う。
図11(b)は、核融合推進機80の正面図である。核融合推進機80の上面に大気圏突入シールド80sを構成している。機体の底面には、車輪を収納する必要があり、継ぎ目が存在するため大気圏突入シールドを底面に設けることは望ましくないからである。
また、貨物室85の扉を背面に設ける場合は、クレーンなどを使用して荷を釣り上げて積み込む必要があるが、貨物室85の扉を底面に設け、内蔵のクレーン97を設けているから、自力で荷の積み下ろしができる。
貨物室85には、貨物モジュール95または回転可能な乗員モジュール96等を搭載することができ、乗員モジュール96は、国際結合機構80CBMを備えコックピット80cや宇宙ステーションとドッキングすることができる。
矢印は、空気の流れを示している。取り込んだ空気をタービン86で圧縮し、簡易型の非対称衝突型核融合炉60uの熱交換室57に送り、加熱して高温になった空気を後方のタービン86に送り拡張し、ノズル93から後方に噴射する。
宇宙空間では、タービン86を駆動する必要が無いから、機体内に蓄積した推進剤50(空気50a、水50w等を含む。)を換気口56から熱交換室57に導入し、タービン86をバイパスして噴射する。
火星以下の天体に垂直離着陸可能な推力が必須である。
なお、図12(c)の荷電粒子ビーム1及び2は、太さを強調して描かれているが、この例ではビーム1の太さは10μm前後であり、長さは3から10cmであることを想定している。
ヘリウム3(3He)を用いる核融合では、核融合生成粒子の分離を行う必要がないこと、中性子nの発生が少ないこと、並びに、荷電粒子ビームのバンチを軸方向に長くすることができることなどから、炉の設計が容易になる。
熱交換室57の軸方向の形状は、明確に示していないが、熱交換室57を螺旋状にすることで、空気との熱交換の効率を向上させることも考えられる。
減速した荷電粒子は、回収する。あるいは、核融合炉の真空容器55に空気が逆流しない状況が確保できた場合は、図には示していないが減速した荷電粒子をノズルから混合加熱室58に噴射して熱交換室57を通過した空気と混合し、直接的な加熱を行うこともできる。
膨張した空気をタービン86に導き、ノズル93から噴射して推力を得ている。
重水素2H(デューテリウムD)燃料は、繰り返し使用されるので、散乱した核融合生成粒子である水素1H、ヘリウム4He等の粒子が累積すると、核融合反応率が低下することになる。
水素1H、ヘリウム4He等の累積の状況にもよるが、磁気弁別器64Rなどを用いて、イオン回収路68から回収した未反応燃料68nを弁別しながら再使用するか、エンジンの使用時間が短い場合は、使い捨てる方法(核融合燃料カセット79に回収し精製し再利用する。)も考えられる。
航行終了後は、残った低速用の重水素2H(デューテリウムD)粒子も核融合燃料カセット79に回収する。
大気圏外で使用するエンジンは、宇宙空間専用のエンジンとして設計する方法もある。
図13(a)は、滑走路を使用して水平離着陸を、図13(b)は、荷が軽いときは、垂直離着陸を、図13(c)は、荷を下ろすだけのときは、内蔵のクレーン97によるスカイクレーン方式による運行を行うことができることを示している。
図13(d)は、宇宙空間においては、乗員モジュール96を核融合推進機80から離れた位置で内蔵のクレーン97等を用いて結合し、互いに回転することで人工重力を発生することができることを示している。
核融合推進機80の背面に大気圏突入シールド80sを配置することにより、貨物室の扉などの継ぎ目を設ける必要が無いので、壊れにくい大気圏突入シールド80sを実現している。
図13(f)は、大気圏突入時には、重力(制動)の方向に合わせてコックピット80c及び乗員モジュール96を貨物室85内で回転することが可能であることを示している。
核融合燃料カセット79は、重水素ガス(D2)、ヘリウム3ガス(3He)のボンベの他、回収した水素ガス51(H2)、重水素ガス52(D2)及びヘリウムガス54(4He)を収容する回収ガスボンベ68V、並びに、電子装置79e、電源79dなどを内蔵している。
水素ガス51(H2)及び重水素ガス52(D2)は、水素吸蔵合金59mとヒーター59hを内蔵している。
燃料ボンベに圧入したヘリウム3ガス53が、中性子nによって三重水素3H(トリチウムT)に変化すること防ぐため、中性子n遮蔽材(ホウ素など)によって囲むこと、並びに、回収ボンベ68vや燃料ボンベ52の重水素2H(デューテリウムD)がボンベ材料の金属原子間を浸透して、ヘリウム3(3He)ガス53に混入しないようにするため、多重構造にしたボンベ間に真空00を設ける構造としている。
回収ガスボンベ68vは、処理可能な工場において回収するときのみ回収ガスのヒーター59hを稼働することができる仕組みとなっている。
各ガスタンクは、電子装置79eによって制御される弁79vで開閉され、認証を行う。
電子装置には、非対称衝突核融合炉60uの運転状況を記録(核融合推進機80の航行記録を含む。)する他、GPS等受信機を内蔵し、独自に測位して位置を記録するほか、追跡用の電波を発信することができる。複数の核融合燃料カセット79を装備し、異常発生時にそれまでの運転記録を放出する。
燃料や機の盗難・奪取を避けるため、積載モジュール(貨物モジュール95、乗員モジュール96)の交換を短時間で行い、安全を優先する運行を行う。
2H 重水素原子核(D) 3H 三重水素原子核(T) 32 多面体(切頂二十面体等)
3He ヘリウム3原子核 4He ヘリウム原子核(アルファ粒子α)
50 推進剤(冷却材) 50a 空気 50b 粉体 50w 水
51 水素ガス 52 重水素ガス 53 ヘリウム3ガス 54 ヘリウム4ガス
55 真空容器 56 換気口 57 熱交換室 57c 中性子熱交換器
57o 開口部 58 混合反応室
59t タンク 59i イオンタンク 59m 水素吸蔵合金 59h ヒーター
60u 非対称ビーム衝突型核融合炉 61 荷電粒子発生器
62 粒子加速器 62a 加速グリッド 62t 電界ピストン型粒子加速器
62p 荷電粒子圧縮ポンプ(可変容積一軸偏心ネジポンプ)
62r ローター 62s ステーター
63 電子レンズ 63c キャピラリー 63h 荷電粒子収束器
64 偏向器 64R 磁気弁別器 64x 電荷質量分離器
64N 磁極N 64S 磁極S
65 回生減速器 65c 導体 65e 静電結合回生減速器 65g 磁気結合回生減速器
65h 可変回生減速器 65m 磁心 65P 電力変換器 65R 荷電粒子減速器
65t 電極
66 熱駆動ポンプ(可変容積進行型ポンプ) 66c シリンダー 66g 案内ピン
66l ピストンリング 66p ピストン 66s 回転軸 66t 案内溝 66v 弁
68 イオン回収路 68n 未反応燃料 68t イオン回収チューブ
68V 回収ガスボンベ
70 核融合反応点
79 核融合燃料カセット 79b 内蔵ボンベ 79c 接続装置
79d 内蔵電源 79e 内蔵電子装置 79v 弁
80 核融合推進機 80c コクピット 80CBM 共同結合機構CBM
80s 大気圏突入シールド 81 加熱型原子力ジェットエンジン
82 主翼 83 尾翼 84 エンジンフラップ
85 貨物室 85d 貨物室ドア 86 タービン 88 発電機
93 噴射ノズル 94 乗降スロープ 94g 着陸脚 94h ロボットアーム
95 貨物モジュール 96 乗員モジュール 97 内蔵のクレーン
6Li + n → 4He(3.5MeV) + 3H(2.7MeV)
この反応に適切な速度まで中性子nを減速することが必要であること、生成した三重水素3H(トリチウムT)を収集しなければならないこと、三重水素3H(トリチウムT)の取扱量が増加するとともに、装置が複雑になるため、望ましい方法ではないと考えられる。
3He + n → 3H(0.19MeV) + 1H(0.57MeV)
やはり、中性子減速材10として軽水を用いるのがベストと考えられ、中性子捕獲の結果、ガンマー線γを放出して、重水素2H(デューテリウムD)に変換されるから、精製して燃料の一部に加えることができる。
1H + n → 2H + γ
磁気結合による直接電力変換を行うことで、低い電圧による電気エネルギーに直接変換することができる。
荷電粒子収束器で収束し、核種分離後、荷電粒子の流れに平行に導体を配置し、その周囲を磁性体で取り囲み磁気結合することで、導体に電流を誘起することで、荷電粒子の運動エネルギーから直接電力変換を行うことが出来る。核融合生成粒子のパルス幅と同等のパルス状の電流を得る。
さらに、図に示していないが、真空容器内部に、荷電粒子を下方に誘導する電界を与える電極を絶縁容器の外側に配置する。
中性子は、電磁界の影響を受けにくいこと、物質の透過力が高いため、荷電粒子との分離は容易である。
荷電粒子収束器63hの核融合反応点70から遠い方の焦点付近の形状は、徐々に細くなる形状とし、ゆるやかに荷電粒子を収束している。
到達した粒子毎に可変回生減速器65hにより到達時刻により異なる制動を加えて飛翔速度を調整し、磁気偏向器64により異なる方向に偏向する。
なお、図1には、荷電粒子収束器63h、可変回生減速器65h、粒子分離器64x(偏向器64)及び磁気結合回生減速器65gを一組のみ記載するに止めており、他の荷電粒子収束器63hについては外形のみを鎖線で描画している。
真空容器55を取り囲むように配置した中性子熱交換器57cは、保守作業のために一部を取り外すことが可能であり、接合箇所から中性子が漏出しない形状とする必要がある。
保守管理のために中性子熱交換器57cを分解して任意に取り外すことができる構造としている。
荷電粒子収束器63hの取り出し部分等から、中性子nが外部に漏れないように対策が必要である。
D−D反応は、毎秒1.46×10 20 個の粒子が、D−T及びD−3He反応において、毎秒7.28×1019個の粒子が衝突する条件で検討し、未反応粒子及び生成粒子の損失がないものとして計算した。
電力に換算して505.5MWの出力があり、ヘリウム3(3He)を燃焼せずに蓄積した場合は、290.4MWの出力となる。D−T反応205.1MW及びD−3He反応215.2MWと比較して、D−D反応による出力は、85.2MWと総発電量に対する占める割合が少ない。
表3 D−D反応による核融合発電量
Claims (10)
- 打ち出す2本の核融合燃料である荷電粒子ビームが
双方共に重水素原子核2H(デューテリウムD)であるもの、
重水素原子核2H(デューテリウムD)と三重水素原子核3H(トリチウムT)であるもの、
重水素原子核2H(デューテリウムD)とヘリウム3原子核3Heであるもの、及び、
双方共にヘリウム3原子核3Heであるものであって、
これらの核融合燃料である荷電粒子をクーロン力により加速してパルス状の荷電粒子ビームのバンチにする粒子加速器62(分散型加速器を含む。)、荷電粒子ビームを収束する電子レンズ63(キャピラリー63cにより収束するものを含む。)からなる「荷電粒子ビーム発生器」を備え、一方が低速の荷電粒子ビームを、他方が高速の荷電粒子ビームを発生し、
真空容器55を備え、その中心に向けて2つの荷電粒子ビームを発射し、核融合燃料の組み合わせによって決まる核融合反応断面積が大きくなる適切な相対速度(加速に要するエネルギーに対して核融合エネルギーが大きくなる速度。)で一の軸上で衝突させて、細長い領域で核融合反応を発生させ、
核融合により生成した荷電粒子の運動エネルギーを熱及び直接電気エネルギーとして取り出すことを特徴とする荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- 高速の核融合燃料より低速の核融合燃料の粒子数を増やした荷電粒子ビームを使用することで、衝突を容易にするとともに、高速の核融合燃料粒子の核融合反応率を向上し、加速に要するエネルギーの無駄を低減するとともに、未反応粒子回収路68を備え、低速の未反応燃料粒子の荷電粒子を回収して再使用する構成としたことを特徴とする請求項1の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- セラミックなどの強靭な絶縁体材料で作成した一方が細くなったテーパー形状の容器に、
軸方向に複数の加速電極(直径が大きい部分には、加速グリッド62aを加える。)を配置し、
電極に一定の間隔で順次負の電圧を印加し、次に早い間隔で順次正の電圧を印加することで、
先端ほど先行する立下り波形より立ち上がり波形が早く印加されることによって、
クーロン力により荷電粒子を加速するとともに、進行方向に圧縮し、
容器の形状に従い半径方向にも圧縮して、
荷電粒子ビームのバンチを打ち出すことができる電界ピストン型加速器62tを備えることを特徴とする、請求項1から2の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- 楕円を基調とする内面形状で、楕円の焦点の1つを核融合反応点70に置き、
他の焦点付近では緩やかに絞るキャピラリーの形状を有し、
核融合反応点70を取り囲む様に配置することで、等方に輻射し飛翔する荷電粒子を、
分担して収束する荷電粒子収束器63hを備えることを特徴とする、
請求項1から3の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- 核融合により生成しパルス状に飛翔する荷電粒子の流れに磁気結合した導体65cに誘起する誘導電流から、荷電粒子の運動エネルギーを直接電力としてエネルギーを取得するとともに荷電粒子を減速する、回生減速器65(磁気結合回生減速器65g、可変回生減速器65h、静電結合回生減速器65eを含む。)を備えることを特徴とする
請求項1から4の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- セラミックなどの絶縁材料で作成した筒状の容器の外側に電極を設け、位相の異なるプラスまたはマイナスの高電圧を一定の周期で加えることで、
荷電粒子の状態で移送するイオン回収チューブ68tを備えることを特徴とする
請求項1から5の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u。
- 雌ねじ形のステーター62sと雄ネジ形のローター62rとを備え、断面形状がハイポサイクロイドあるいはエピサイクロイドで規定される形状(修正した形状を含む。)で、互いに嵌合して密閉されたキャビティーを1つ以上構成するとともに、
偏心半径e、ローターとステーターの断面形状によって決まる形状係数T、波長λ(ピッチ)のうち、任意の1つ、2つ、あるいは全部の要素を、軸方向に変化させることで、ローター62rが偏心回転することにより、密閉されたキャビティーがその容積を減じながら軸方向に移動する、
セラミックなどの強靭な絶縁体材料で作成した容積可変一軸偏心ネジポンプであって、
絶縁体材料の表面に帯電した荷電粒子の反発力によりキャビティーの密閉を行い、機械的な回転力により荷電粒子を圧縮する、荷電粒子圧縮ポンプ62pを備えることを特徴とする
請求項1から6の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u
- 核融合生成粒子の電荷質量比及び到達時間の違いを利用して、電界または磁界(強度を変化するものを含む。)により偏向する電荷質量分離器64xを備え、
核融合生成粒子の電荷質量比及び到達時間の違いを利用して、荷電粒子を核種ごとに分離することを特徴とする
請求項1から7の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u
- 中性子を透過し良い強靭な材料で作製した、高い圧力に耐えられる形状の中性子熱交換器57cであって、核融合によって生成し飛翔する中性子nを減速するとともに、その運動エネルギーを熱に変換する中性子減速材10を満たし、真空容器55を取り囲むように配置した中性子熱交換室57を備えることを特徴とする、
請求項1から8の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u
- 熱交換室57(中性子熱交換室57を含む。)に推進剤50(50a、50b及び50wを含む。)を送り込んで加熱し、
外部に噴射することで推進力を得る加熱型原子力ジェットエンジン81、
発電機88を駆動するタービン86、及び
発電機88を駆動する熱駆動ポンプ66の内1つ以上を備えること特徴とする
請求項1から9の荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉60u
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JP2016179051A JP2018044830A (ja) | 2016-09-14 | 2016-09-14 | 荷電粒子ビーム非対称衝突型核融合炉 |
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CN108915897A (zh) * | 2018-06-01 | 2018-11-30 | 西南石油大学 | 一种通过磁场控制失重/微重力下液氧储罐内液氧流动的方法 |
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JP5663124B1 (ja) * | 2013-12-21 | 2015-02-04 | 一穂 松本 | 容積可変軸流ネジポンプ、流体機関並びに熱機関 |
JP2015081914A (ja) * | 2013-10-21 | 2015-04-27 | 實 藤原 | ターゲット式パルス衝突型核融合炉 |
JP2016109658A (ja) * | 2014-12-07 | 2016-06-20 | 一穂 松本 | 荷電粒子ビーム衝突型核融合炉 |
-
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- 2016-09-14 JP JP2016179051A patent/JP2018044830A/ja not_active Ceased
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