以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
<第1の実施の形態>
[画像形成装置100]
図1を参照して、第1の実施の形態に従う画像形成装置100について説明する。図1は、画像形成装置100の装置構成の一例を示す図である。
図1には、カラープリンタとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンタとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンタであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびFAXの複合機(所謂MFP)であってもよい。
画像形成装置100は、スキャナー20と、プリンター50とで構成されている。スキャナー20は、カバー21と、用紙台22と、トレー23と、ADF(Auto Document Feeder)24とで構成されている。カバー21の一端は、用紙台22に固定されており、カバー21は、当該一端を支点として開閉可能に構成されている。画像形成装置100のユーザーは、カバー21を開くことで、用紙Sを用紙台22にセットすることができる。画像形成装置100は、用紙Sが用紙台22にセットされた状態でスキャン指示を受け付けると、用紙台22にセットされた用紙Sのスキャンを開始する。また、画像形成装置100は、用紙Sがトレー23にセットされた状態でスキャン指示を受け付けると、用紙Sは、ADF24によって1枚ずつ自動的に読み取られる。
プリンター50は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37A〜37Cと、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、タイミングローラー40と、定着装置47と、制御装置101とを備える。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト30に沿って順に並べられている。画像形成ユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
画像形成ユニット1Yは、感光体10Yと、帯電装置11Yと、光源12Yと、現像装置13Yと、クリーニング装置17Yとを含む。画像形成ユニット1Mは、感光体10Mと、帯電装置11Mと、光源12Mと、現像装置13Mと、クリーニング装置17Mとを含む。画像形成ユニット1Cは、感光体10Cと、帯電装置11Cと、光源12Cと、現像装置13Cと、クリーニング装置17Cとを含む。画像形成ユニット1Kは、感光体10Kと、帯電装置11Kと、光源12Kと、現像装置13Kと、クリーニング装置17Kとを含む。
以下では、感光体10Y,10M,10C,10Kを総称して感光体10ともいう。帯電装置11Y,11M,11C,11Kを総称して帯電装置11ともいう。光源12Y,12M,12C,12Kを総称して光源12ともいう。現像装置13Y,13M,13C,13Kを総称して現像装置13ともいう。クリーニング装置17Y,17M,17C,17Kを総称してクリーニング装置17ともいう。
帯電装置11は、感光体10の表面を一様に帯電する。光源12は、制御装置101からの制御信号に応じて感光体10にレーザー光を照射し、入力された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。光源12は、プリントヘッド300に設けられている。プリントヘッド300の詳細については後述する。
現像装置13は、現像ローラー14を回転させながら、現像ローラー14に現像バイアスを印加し、現像ローラー14の表面にトナーを付着させる。これにより、トナーが現像ローラー14から感光体10に転写され、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。トナー像と反対極性の転写電圧が一次転写ローラー31に印加されることによって、トナー像が感光体10から中間転写ベルト30に転写される。イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて感光体10から中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
中間転写ベルト30は、従動ローラー38および駆動ローラー39に張架されている。駆動ローラー39は、モーター(図示しない)によって回転駆動される。中間転写ベルト30および従動ローラー38は、駆動ローラー39に連動して回転する。これにより、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写ローラー33に搬送される。
クリーニング装置17は、感光体10に圧接されている。クリーニング装置17は、トナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
カセット37A〜37Cには、それぞれ、異なるサイズの用紙Sがセットされる。以下では、カセット37A〜37Cを総称してカセット37ともいう。用紙Sは、タイミングローラー40によってカセット37Cから1枚ずつ搬送経路41に沿って二次転写ローラー33に送られる。二次転写ローラー33は、トナー像と反対極性の転写電圧を搬送中の用紙Sに印加する。これにより、トナー像は、中間転写ベルト30から二次転写ローラー33に引き付けられ、中間転写ベルト30上のトナー像が転写される。二次転写ローラー33への用紙Sの搬送タイミングは、中間転写ベルト30上のトナー像の位置に合わせてタイミングローラー40によって調整される。タイミングローラー40により、中間転写ベルト30上のトナー像は、用紙Sの適切な位置に転写される。
定着装置47は、自身を通過する用紙Sを加圧および加熱する。これにより、トナー像は用紙Sに定着する。その後、用紙Sは、トレー48に排紙される。
[プリントヘッド300]
図2および図3を参照して、図1に示されるプリントヘッド300の内部構造について説明する。図2は、プリントヘッド300の内部構造を表わす正面図である。図3は、プリントヘッド300の内部構造を表わす平面図である。
図2および図3に示されるように、プリントヘッド300は、光源12Y,12M,12C,12Kと、コリメータレンズ310Y,310M,310C,310Kと、ミラー311Y,311M,311C,311Kと、ミラー312と、ポリゴンミラー313と、モーター314と、fθレンズ316と、ミラー318Y,318M,318C,318Kと、ミラー319Y,319M,319Cと、ミラー320と、光センサ321とを含む。
理解を容易にするために、図3においては、図2に示されるミラー318Y,318M,318Cと、ミラー319Y,319M,319Cとの図示を省略している。以下では、光源12Kから照射されるレーザー光に注目して、レーザー光の経路について説明する。
光源12Kから照射されたレーザー光は、コリメータレンズ310Kによって集光され、ミラー311Kに照射される。ミラー311Kは、コリメータレンズ310Kを通過したレーザー光をミラー312に反射する。ミラー312は、当該レーザー光をポリゴンミラー313に反射する。
ポリゴンミラー313は、角柱形状(たとえば、六角柱)を有する。ポリゴンミラー313の側面は、ミラーで構成されている。ポリゴンミラー313は、モーター314によって回転駆動される。ポリゴンミラー313は、回転しながらレーザー光を反射することで、レーザー光の反射方向を規則的に変える。ポリゴンミラー313は、回転しながら、レーザー光をfθレンズ316に反射する。fθレンズ316を通過したレーザー光は、ミラー318によって感光体10K(図1参照)に反射される。
画像形成装置100は、ポリゴンミラー313を回転しつつ、感光体10Kを回転させすることで、ポリゴンミラー313によって反射されたレーザー光を感光体10K上で走査させる。このとき、ポリゴンミラー313の1面分のミラーで感光体10Kの主走査方向の1ラインが走査される。主走査方向とは、感光体10の回転軸の方向を示す。ポリゴンミラー313が6面のミラーで構成される場合には、ポリゴンミラー313が1回転することで、感光体10Kの主走査方向の6ラインが走査される。画像形成装置100は、入力された画像パターンに従って、光源12Kのオン/オフを切り替えることで、感光体10K上の任意の位置を露光する。これにより、入力画像を表わす静電潜像が感光体10K上に形成される。
同様に、光源12Yから照射されるレーザー光は、ポリゴンミラー313によって感光体10Y上に反射される。光源12Mから照射されるレーザー光は、ポリゴンミラー313によって感光体10M上に反射される。光源12Cから照射されるレーザー光は、ポリゴンミラー313によって感光体10C上に反射される。ミラー311Y,311M,311C,311Kが段差を設けて設置されることにより、光源12Y,12M,12C,12Kから照射されるレーザー光は、それぞれ、感光体10Y,10M,10C,10Kに反射される。
光源12から照射されるレーザー光の一部は、ミラー320によって光センサ321に導かれる。光センサ321は、ミラー320からの反射光を受けることで、主走査方向の露光タイミングを制御する際の基準信号となる同期信号(すなわち、SOS(Start Of Scan)信号)を出力する。プリントヘッド300は、当該同期信号を用いて、主走査方向における光源12の各々の発光を同期させる。
[モーター314の制御]
ポリゴンミラー313が回転時に受ける負荷の大きさは、周囲の大気圧に応じて変動する。そのため、ポリゴンミラー313の回転が安定するタイミングも、周囲の大気圧に応じて変動する。そこで、本実施の形態に従う画像形成装置100は、周囲の大気圧に応じた最適な制御パラメータで、ポリゴンミラー313を駆動するモーター314を制御し、ポリゴンミラー313の回転を早期に安定させる。
以下では、図4を参照して、モーター314の制御方法について説明する。図4は、周囲の大気圧に応じてモーター314の制御パラメータを変えている様子を示す図である。
画像形成装置100は、たとえば、PID制御によりモーター314を制御する。PID制御の詳細については後述するが、PID制御では、制御パラメータとして、比例定数Kpと、積分定数Kiと、微分定数Kdとが調整される。
グラフG1には、画像形成装置100が高気圧下(たとえば、低地)に設置されている場合における、ポリゴンミラー313(あるいは、モーター314)の回転数の時間的変化が示されている。グラフG1の例では、比例定数Kpは「3.0」に設定され、積分定数Kiは「1.0」に設定され、微分定数Kdは「0.4」に設定されている。グラフG1に示されるように、ポリゴンミラー313の回転数は、PID制御により、基準回転数「n」のオーバーシュートとアンダーシュートとを繰り返しながら、基準回転数「n」に徐々に近づいていく。グラフG1の例では、ポリゴンミラー313の回転数は、時刻TAに安定している。
グラフG2には、画像形成装置100が低気圧下(たとえば、高地)に設置されている場合における、ポリゴンミラー313の回転数の時間的変化が示されている。グラフG2の例では、比例定数Kpは、「3.0」に設定され、積分定数Kiは、「1.0」に設定され、微分定数Kdは、「0.4」に設定されている。グラフG2に示されるように、低気圧下にあるポリゴンミラー313が高気圧下と同じ制御パラメータで制御されると、ポリゴンミラー313の回転数は、時刻TAにおいて安定していない。
グラフG3には、制御パラメータが低気圧用に調整された場合におけるポリゴンミラー313の回転数の時間的変化が示されている。グラフG3の例では、比例定数Kpが「3.9」に設定され、積分定数Kiが「1.6」に設定され、微分定数Kdが「0.4」に設定されている。その結果、ポリゴンミラー313の回転数は、時刻TAに安定している。
このように、画像形成装置100は、周囲の大気圧に基づいて、ポリゴンミラー313の回転を制御するための制御パラメータを調整する。これにより、画像形成装置100は、ポリゴンミラー313の回転を周囲の大気圧に合わせて早期に安定させることができる。
なお、図4には、微分定数Kdが維持された状態で、比例定数Kpおよび積分定数Kiが調整されている例が示されているが、少なくとも、比例定数Kpが大気圧に応じて調整されればよい。すなわち、比例定数Kpが積分定数Kiおよび微分定数Kdよりも優先して調整される。好ましくは、比例定数Kp、積分定数Ki、および微分定数Kdの全てが周囲の大気圧に応じて調整される。
[比較例]
以下では、図5を参照して、画像形成装置100の制御シーケンスについて説明する。図5は、比較例に従う画像形成装置100の制御シーケンスと、本実施の形態に従う画像形成装置100の制御シーケンスとを示す図である。
より詳細には、図5(A)には、高気圧用の制御パラメータが適用された画像形成装置100が低気圧下で使用される場合における制御シーケンスが比較例として示されている。図5(B)には、低気圧用の制御パラメータが適用された画像形成装置100が低気圧下で使用される場合における制御シーケンスが示されている。
まず、図5(A)を参照して、比較例に従う画像形成装置100の制御シーケンスについて説明する。
グラフG11には、ポリゴンミラー313の駆動を開始するための開始信号の波形が示されている。グラフG11に示される開始信号は、ローアクティブ(Low Active)で示されている。すなわち、電圧がhigh状態のときに、ポリゴンミラー313の駆動が停止され、電圧がlow状態のときに、ポリゴンミラー313の駆動が開始される。
グラフG12には、モーター314(あるいは、ポリゴンミラー313)の回転数の時間的変化が示されている。グラフG12に示されるように、時刻T1において、モーター314の回転駆動が開始される。その後、モーター314の回転数が基準回転数「n」に達すると、画像形成装置100は、モーター314の駆動力を低下する。駆動力の低下直後には、モーター314の回転数が基準回転数「n」をオーバーシュートする。その後、モーター314の回転数は、徐々に下がる。その後、モーター314の回転数が基準回転数「n」に達すると、画像形成装置100は、モーター314の回転力を増加する。回転力の増加直後には、モーター314の回転数が基準回転数「n」をアンダーシュートする。その後、モーター314の回転数は、徐々に上がる。このように、モーター314の回転数は、基準回転数「n」のオーバーシュートとアンダーシュートとを繰り返しながら、基準回転数「n」に徐々に近づいていく。
画像形成装置100は、PID制御によりモーター314を制御する。PID制御の詳細については後述するが、PID制御では、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲内に収まった時点で、ロック信号が出力される。グラフG13には、ロック信号の波形が示されている。グラフG13に示されるロック信号は、ローアクティブ(Low Active)で示されている。すなわち、電圧がlow状態のときに、ロック信号が出力される。グラフG13の例では、時刻T1から時間ΔTX1が経過した時刻T2において、ロック信号が出力されている。
画像形成装置100は、ポリゴンミラー313の回転が安定した後に印字を許可するための信号(以下、「印字許可信号」ともいう。)を出力する。グラフG14には、印字許可信号の波形が示されている。グラフG14に示される印字許可信号は、ローアクティブで示されている。すなわち、電圧がlow状態のときに、印字許可信号が出力される。グラフG14に示されるように、画像形成装置100は、安定して画像を印字できるレベルの安定性を確保するために、ロック信号が出力されてから時間ΔTX2(たとえば、500ms)が経過した時刻T5に印字許可信号を出力する。
次に、図5(B)を参照して、本実施の形態に従う画像形成装置100の制御シーケンスについて説明する。
グラフG15には、モーター314(あるいは、ポリゴンミラー313)の回転数の時間的変化が示されている。比較例と同様に、モーター314の回転数は、基準回転数「n」のオーバーシュートとアンダーシュートとを繰り返しながら、基準回転数「n」に徐々に近づいていく。
グラフG16には、ロック信号の波形が示されている。グラフG16に示されるロック信号は、ローアクティブ(Low Active)で示されている。すなわち、電圧がlow状態のときに、ロック信号が出力される。グラフG16の例では、時刻T1から時間ΔTA1が経過した時刻T3において、ロック信号が出力されている。
グラフG17には、印字許可信号の波形が示されている。グラフG17に示される印字許可信号は、ローアクティブで示されている。すなわち、電圧がlow状態のときに、印字許可信号が出力される。グラフG17に示されるように、画像形成装置100は、安定して画像を印字できるレベルの安定性を確保するために、ロック信号が出力されてから時間ΔTA2(たとえば、100ms)が経過した時刻T4に印字許可信号を出力する。
グラフG13,G16を比較すると、モーター314の回転が開始されてからロック信号が出力までの時間(すなわち、ΔTX1,ΔTA1)は、本実施の形態に従う画像形成装置100よりも比較例に従う画像形成装置100の方が早い。しかしながら、グラフG14,G17を比較すると、ロック信号が出力されてから印字許可信号が出力されるまでの時間(すなわち、ΔTX2,ΔTA2)は、比較例に従う画像形成装置100よりも本実施の形態に従う画像形成装置100の方が早い。結果として、モーター314の回転が開始されてから印字許可信号が出力までの時間(すなわち、ΔTX1+ΔTX2,ΔTA1+ΔTA2)は、比較例に従う画像形成装置100よりも本実施の形態に従う画像形成装置100の方が早くなる。
なお、図5には、時間ΔTA1が時間ΔTX1よりも長い例が示されているが、時間ΔTA1は、時間ΔTX1よりも短くともよい。
[PID制御]
画像形成装置100は、たとえば、PID制御によりモーター314(図2参照)を制御する。以下では、図6および図7を参照して、PID制御について説明する。図6は、PID制御を実現するための構成の一例を示す図である。
図6に示されるように、画像形成装置100は、PID制御を実現するための構成として、取得部90と、制御装置101と、ポリゴンミラー313と、モーター314と、PID回路322と、エンコーダ340とを含む。
取得部90は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する。取得部90の詳細については後述する。取得された大気圧は、制御装置101に出力される。
制御装置101は、取得部90から出力される大気圧に基づいて、PID制御に関する制御パラメータをPID回路322に設定する。制御パラメータの設定は、図7に示されるパラメータ情報124に基づいて決定される。図7は、パラメータ情報124のデータ構造を示す図である。
パラメータ情報124は、たとえば、画像形成装置100の記憶装置120(図15参照)に予め格納されている。パラメータ情報124は、ポリゴンミラー313の制御パラメータを大気圧ごとに規定している。パラメータ情報124に規定されている大気圧「高」,「中」,「低」は、それぞれ、大気圧の範囲を表わす。大気圧の各々には、比例定数Kp、積分定数Ki、および微分定数Kdの組み合わせが対応付けられている。
図7の例では、大気圧「高」には、比例定数「P1」、積分定数「I1」、および微分定数「D1」が対応付けられている。大気圧「中」には、比例定数「P2」、積分定数「I2」、および微分定数「D2」が対応付けられている。大気圧「低」には、比例定数「P3」、積分定数「I3」、および微分定数「D3」が対応付けられている。
制御装置101は、パラメータ情報124に規定されている大気圧の中から、画像形成装置100の設置場所における大気圧に相対的に近い大気圧を特定する。好ましくは、制御装置101は、パラメータ情報124に規定されている大気圧の中から、画像形成装置100の設置場所における大気圧に最も近い大気圧を特定する。制御装置101は、特定された大気圧に対応付けられている制御パラメータをPID回路322に設定する。
制御装置101は、モーター314の駆動を開始するための開始信号を受け付けたことに基づいて、PID回路322を介してモーター314の駆動を開始する。エンコーダ340は、ポリゴンミラー313の回転速度を検知するためのセンサである。検知した回転速度は、PID回路322にフィードバックされる。
PID回路322は、差分回路323と、増幅/減衰器324A〜324Cと、積分回路325と、微分回路326と、加算回路327とを含む。
差分回路323は、制御装置101から出力される目標速度(基準信号)から、エンコーダ340から出力される回転速度(フィードバック信号)を差分し、差分結果として得られた差分信号を増幅/減衰器324A〜324Cのそれぞれに出力する。
増幅/減衰器324Aは、制御装置101によって設定された比例定数「Kp」に基づいて、差分回路323から出力される差分信号を増幅/減衰する。その結果、差分信号は、「Kp」倍に増幅/減衰される。増幅/減衰後の差分信号は、加算回路327に出力される。
増幅/減衰器324Bは、制御装置101によって設定された積分定数「Ki」に基づいて、差分回路323から出力される差分信号を増幅/減衰する。その結果、差分信号は、「Ki」倍に増幅/減衰される。増幅/減衰後の差分信号は、積分回路325に出力される。
積分回路325は、増幅/減衰器324Bによって増幅/減衰された所定時間の差分信号を積分する。積分結果として得られた積分信号は、加算回路327に出力される。
増幅/減衰器324Cは、制御装置101によって設定された微分定数「Kd」に基づいて、差分回路323から出力される差分信号を増幅/減衰する。その結果、差分信号は、「Kd」倍に増幅/減衰される。増幅/減衰後の差分信号は、加算回路327に出力される。
微分回路326は、増幅/減衰器324Cによって増幅/減衰された差分信号を時間で微分する。これにより、差分信号の時間的変化が検知される。微分結果として得られた微分信号は、加算回路327に出力される。
加算回路327は、増幅/減衰器324Aから出力される増幅/減衰後の差分信号と、積分回路325から出力される積分信号と、微分回路326から出力される微分信号とを加算し、その加算結果に基づいてモーター314を制御する。
フィードバックされた回転速度と目標速度との比較を繰り返しながらモーター314の回転が制御されることで、ポリゴンミラー313の回転速度は、目標速度に徐々に近付けられる。
制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が目標速度に一致または略一致したことに基づいて、ロック信号を出力する。すなわち、制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲内に収まったことに基づいて、ロック信号を出力する。ロック信号が出力された後は、現在の状態が維持される。
なお、図7では、パラメータ情報124に規定されている大気圧が3つに区分されている例が示されているが、パラメータ情報124に規定されている大気圧は、2つに区分されてもよいし、4つ以上に区分されてもよい。また、図7では、パラメータ情報124がテーブルとして表されている例が示されているが、パラメータ情報124は、必ずしもテーブルとして表される必要はない。たとえば、パラメータ情報124は、大気圧と制御パラメータとの相関式で表わされてもよい。当該相関式においては、大気圧が説明変数で表され、制御パラメータが目的変数で表される。
[PLL制御]
上述では、制御装置101がPID制御によりモーター314を制御する例について説明を行ったが、モーター314の制御方法は、PID制御に限定されない。たとえば、制御装置101は、PLL制御によりモーター314を制御してもよい。
以下では、図8および図9を参照して、PLL制御について説明する。図8は、PLL制御を実現するための構成の一例を示す図である。
図8に示されるように、画像形成装置100は、PLL制御を実現するための構成として、取得部90と、制御装置101と、ポリゴンミラー313と、モーター314と、PLL回路330と、エンコーダ340とを含む。
取得部90は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する。取得部90の詳細については後述する。取得された大気圧は、制御装置101に出力される。
制御装置101は、取得部90から出力される大気圧に基づいて、PLL回路330の制御パラメータを設定する。制御パラメータの設定は、図9に示されるパラメータ情報124Aに基づいて決定される。図9は、パラメータ情報124Aのデータ構造を示す図である。
パラメータ情報124Aは、たとえば、画像形成装置100の記憶装置120(図15参照)に予め格納されている。パラメータ情報124Aは、ポリゴンミラー313の制御パラメータを大気圧ごとに規定している。パラメータ情報124Aに規定されている大気圧「高」,「中」,「低」は、それぞれ、大気圧の範囲を表わす。大気圧の各々には、PLL制御におけるゲインが対応付けられている。
大気圧が高くなるほど、ゲインは、大きくなるように規定されている。図9の例では、大気圧「低」には、ゲイン「GA」が対応付けられている。大気圧「中」には、ゲイン「GA」よりも大きいゲイン「GB」が対応付けられている。大気圧「高」には、ゲイン「GB」よりも大きいゲイン「GC」が対応付けられている。
制御装置101は、パラメータ情報124Aに規定されている大気圧の中から、画像形成装置100の設置場所における大気圧に相対的に近い大気圧を特定する。好ましくは、制御装置101は、パラメータ情報124Aに規定されている大気圧の中から、画像形成装置100の設置場所における大気圧に最も近い大気圧を特定する。制御装置101は、特定された大気圧に対応付けられている制御パラメータをPLL回路330に設定する。
制御装置101は、モーター314の駆動を開始するための開始信号を受け付けたことに基づいて、PLL回路330を介してモーター314の駆動を開始する。エンコーダ340は、ポリゴンミラー313の回転角を検知するためのセンサである。検知された回転角は、PLL回路330にフィードバックされる。
PLL回路330は、分周器331と、位相比較器332と、ループフィルタ333と、発信器334とを含む。
分周器331は、エンコーダ340から出力されるフィードバック信号の周波数をN/1に下げる。周波数の低減率「N」は、予め定められている。
位相比較器332は、制御装置101から出力される基準信号の周波数と、分周器331から出力されるフィードバック信号の周波数とのいずれか一方から他方を差分する。これにより、基準信号の周波数とフィードバック信号の周波数との位相差に比例した差分信号がパルス信号として位相比較器332から出力される。位相比較器332から出力される差分信号は、ループフィルタ333に出力される。
ループフィルタ333は、低周波数の信号を通過させるローパスフィルタとして機能する。位相比較器332から出力される交流電圧としての差分信号は、ループフィルタ333を通過することにより直流電圧に変換される。このとき、直流電圧は、制御装置101によって設定されるゲインに応じた大きさで出力される。より具体的には、設定されたゲインが大きいほど直流電圧は大きくなり、設定されたゲインが小さいほど直流電圧は小さくなる。ループフィルタ333を通過した直流電圧は、発信器334に出力される。
発信器334は、ループフィルタ333から出力される直流電圧の大きさに応じた周波数の制御信号を生成する。より具体的には、ループフィルタ333から出力される直流電圧の大きさが大きくなるほど、発信器334は、周波数が高い制御信号を生成する。発信器334は、生成した制御信号によってモーター314を制御する。
以上の処理により、フィードバック信号の位相が基準信号の位相よりも進んだ場合には、PLL回路330は、モーター314の回転数を下げる。フィードバック信号の位相が基準信号の位相よりも遅れた場合には、PLL回路330は、モーター314の回転数を上げる。これにより、PLL回路330は、モーター314の回転速度を一定に維持する。
制御装置101は、基準信号の周波数の位相と、フィードバック信号の周波数の位相とが一致または略一致したことに基づいて、ロック信号を出力する。すなわち、制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲内に収まったことに基づいて、ロック信号を出力する。ロック信号が出力された後は、現在の状態が維持される。
なお、上述では、PLL制御のゲインが大気圧に応じて調整される例について説明を行ったが、制御対象のパラメータは、ゲインに限定されない。制御対象のパラメータは、PLL制御に関するパラメータであればよい。たとえば、分周器331による周波数の低減率「N」が大気圧に応じて調整されてもよい。
また、図9では、パラメータ情報124Aに規定されている大気圧が3つに区分されている例が示されているが、パラメータ情報124Aに規定されている大気圧は、2つに区分されてもよいし、4つ以上に区分されてもよい。また、図9では、パラメータ情報124Aがテーブルとして表されている例が示されているが、パラメータ情報124Aは、必ずしもテーブルとして表される必要はない。たとえば、パラメータ情報124Aは、大気圧と制御パラメータとの相関式で表わされてもよい。当該相関式においては、大気圧が説明変数で表され、制御パラメータが目的変数で表される。
[取得部90]
図10を参照して、図6および図8に示される取得部90について説明する。図10は、取得部90による大気圧の取得方法を概略的に示す図である。
取得部90は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する。取得部90による大気圧の取得方法には、様々な方法が採用され得る。以下では、大気圧を取得するための第1〜第3の取得方法について順に説明する。
まず、大気圧の第1の取得方法について説明する。取得部90は、大気圧を検知するための気圧センサ105を含む。好ましくは、気圧センサ105は、画像形成装置100の内部に設けられている。大気圧が気圧センサ105から直接的に取得されることで、大気圧が正確に検知される。
次に、大気圧の第2の取得方法について説明する。取得部90は、GPS(Global Positioning System)モジュール106(位置検知部)と、気圧特定部107とを含む。GPSモジュール106は、画像形成装置100の現在位置(すなわち、設置場所)を検知する。当該現在位置は、緯度および経度で表わされる。気圧特定部107は、地域ごとの大気圧を規定している地域別大気圧情報123に基づいて、画像形成装置100の設置場所の地域における大気圧を特定する。地域別大気圧情報123は、気象情報を提供しているWebサイトなどから予めダウンロードされている。地域別大気圧情報123に規定される地域は、たとえば、緯度および経度などで示される。気圧特定部107は、地域別大気圧情報123に規定されている地域の中から、画像形成装置100の現在位置が属する地域を特定し、当該地域に対応付けられている大気圧を特定する。気圧特定部107による気圧の特定機能は、回路素子によって実現されてもよいし、制御装置101上に搭載されてもよい。
次に、図11を参照して、大気圧の第3の取得方法について説明する。図11は、画像形成装置100の操作パネル108における画面遷移の一例を示す図である。取得部90は、大気圧の入力を受けるための操作パネル108を含む。操作パネル108は、画像形成装置100に対する操作入力を受け付けるための入力デバイスである。
ステップS1において、画像形成装置100は、初期状態として、操作パネル108にモード選択画面を表示する。画像形成装置100のサービスマンは、テンキー130などを用いて予め決められた入力をモード選択画面に対して行うことで、サービスマンのみが使用できるモード(以下、「サービスマンモード」ともいう。)に切り替えることができる。
ステップS2において、画像形成装置100のモードは、サービスマンモードに切り替えられたとする。このことに基づいて、画像形成装置100は、操作パネル108にパスワード入力画面を表示する。サービスマンは、テンキー130などを用いて予め決められたパスワードをパスワード入力画面に入力することで、画像形成装置100の設置場所における大気圧を設定するモード(以下、「大気圧設定モード」ともいう。)に切り替えることができる。
ステップS3において、画像形成装置100のモードは、大気圧設定モードに切り替えられたとする。このことに基づいて、画像形成装置100は、操作パネル108に大気圧設定画面を表示する。大気圧設定画面は、海抜の入力を受け付ける海抜入力領域131を含む。サービスマンは、画像形成装置100の設置場所における海抜をテンキー130などを用いて海抜入力領域131に入力する。画像形成装置100は、入力された海抜に基づいて、設置場所における大気圧を算出する。大気圧は、たとえば、下記式(1)に基づいて算出される。
P=P0・{1−0.0065・h/(T+0.0065・h+273.15)}5.257・・・(1)
式(1)に示される「P0」は、海面における気圧を表わす。「P0」は、定数である。「P0」の単位は、「hPa」である。式(1)に示される「h」は、海抜(あるいは標高)を表わす。「h」の単位は、「m」である。式(1)に示される「T」は、温度を表わす。「T」の単位は、「℃」である。温度「T」は、定数であってもよいし、サービスマンによって入力されてもよい。
なお、大気圧の取得方法は、上述の第1〜第3の取得方法に限定されず、その他の取得方法が採用されてもよい。また、上述の3つの取得機能の全てが画像形成装置100に搭載される必要はなく、上述の3つの取得機能の少なくとも1つが画像形成装置100に搭載されればよい。
また、取得部90による大気圧の取得タイミングは、任意である。ある局面において、取得部90は、画像形成装置100のセットアップ命令を受けたことに基づいて、大気圧の取得処理を実行する。すなわち、取得部90は、画像形成装置100が設置されたタイミングで、大気圧の取得処理を実行する。
他の局面において、取得部90は、画像形成装置100の起動命令を受けたことに基づいて、大気圧の取得処理を実行する。すなわち、取得部90は、画像形成装置100の電源がオンされたタイミングで、大気圧の取得処理を実行する。
[制御パラメータの設定フロー]
図12を参照して、モーター314の制御パラメータの設定フローについて説明する。図12は、モーター314の制御パラメータを設定するためのフローチャートを示す図である。図12の処理は、画像形成装置100の制御装置101がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS10において、制御装置101は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する。典型的には、当該大気圧は、後述の図13および図14の取得処理により画像形成装置100の記憶装置120(図15参照)に予め格納されており、ステップS10においては、制御装置101は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を記憶装置120から取得する。
ステップS12において、制御装置101は、パラメータ情報124(図7参照)に規定されている大気圧の中から、ステップS10で取得した大気圧に最も近い大気圧を選択し、当該大気圧に対応付けられている制御パラメータを特定する。制御装置101は、特定された制御パラメータを、ポリゴンミラー313を駆動するためのモーター314に設定する。
ステップS20において、制御装置101は、画像形成装置100のユーザーから印刷指示を受け付けたか否かを判断する。制御装置101は、画像形成装置100のユーザーから印刷指示を受け付けたと判断した場合8ステップS20においてYES)、制御をステップS22に切り替える。そうでない場合には(ステップS20においてNO)、制御装置101は、ステップS20の処理を再び実行する。
ステップS22において、制御装置101は、ステップS12で設定された制御パラメータに基づいて、ポリゴンミラー313を回転駆動するためのモーター314の駆動を開始する。
ステップS30において、制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲に収まったか否かを判断する。制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲に収まったと判断した場合(ステップS30においてYES)、制御をステップS40に切り替える。そうでない場合には(ステップS30においてNO)、制御装置101は、ステップS30の処理を再び実行する。
ステップS40において、制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲に収まってから、所定時間(たとえば、100ms)が経過したか否かを判断する。制御装置101は、ポリゴンミラー313の回転速度が一定範囲に収まってから所定時間が経過したと判断した場合(ステップS40においてYES)、制御をステップS42に切り替える。そうでない場合には(ステップS40においてNO)、制御装置101は、ステップS40の処理を再び実行する。
ステップS42において、制御装置101は、印字許可信号を出力する。印字許可信号の出力先は、制御装置101であってもよいし、印字を伴う処理を実行する画像形成装置100内の各装置であってもよい。画像形成装置100は、制御装置101から印字許可信号を受け付けると、印字を伴う処理(たとえば、印刷処理)を開始する。
[大気圧の取得フロー1]
図13を参照して、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得するための制御フローについて説明する。図13は、画像形成装置100のセットアップ時に大気圧を取得する制御フローを示す図である。図13の処理は、画像形成装置100の制御装置101がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS50において、制御装置101は、セットアップ指示を受け付けたか否かを判断する。制御装置101は、セットアップ指示を受け付けたと判断した場合(ステップS50においてYES)、制御をステップS52に切り替える。そうでない場合には(ステップS50においてNO)、制御装置101は、ステップS50の処理を再び実行する。
ステップS52において、制御装置101は、セットアップ処理を実行する。セットアップ処理の一例として、制御装置101は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する。セットアップ処理時には、たとえば、操作パネル108(図11参照)によって大気圧の入力を受け付ける上述の第3の取得方法が実行される。入力された大気圧は、画像形成装置100の記憶装置120に格納される。その他のセットアップ処理として、制御装置101は、現像剤のセット時に実行される初期動作、スキャナー20(図1参照)の位置ずれ調整、搬送用紙の位置ずれ調整などを実行する。
[大気圧の取得フロー2]
図14を参照して、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得するための他の制御フローについて説明する。図14は、画像形成装置100の起動時に大気圧を取得する制御フローを示す図である。図14の処理は、画像形成装置100の制御装置101がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS60において、制御装置101は、画像形成装置100の起動指示を受け付けたか否かを判断する。制御装置101は、画像形成装置100の起動指示を受け付けたと判断した場合(ステップS60においてYES)、制御をステップS62に切り替える。そうでない場合には(ステップS60においてNO)、制御装置101は、ステップS60の処理を再び実行する。
ステップS62において、制御装置101は、初期化処理を実行する。初期化処理の一例として、制御装置101は、画像形成装置100の設置場所における大気圧を取得する処理を実行する。たとえば、上述の第1の取得方法または上述の第2の取得方法が実行される。取得された大気圧は、画像形成装置100の記憶装置120に格納される。その他の初期化処理として、制御装置101は、定着装置47(図1参照)の温度調整、画像の濃度設定、色ずれ調整などを実行する。
[画像形成装置100のハードウェア構成]
図15を参照して、画像形成装置100のハードウェア構成の一例について説明する。図15は、画像形成装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図15に示されるように、画像形成装置100は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、気圧センサ105と、GPSモジュール106と、操作パネル108と、温度センサ109と、記憶装置120とを備える。
制御装置101は、本実施の形態に従う制御プログラム122などの各種プログラムを実行することで画像形成装置100の動作を制御する。制御装置101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120からROM102に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
通信インターフェイス104には、アンテナ(図示しない)などが接続される。画像形成装置100は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、スマートフォンなどの携帯通信端末、サーバーなどを含む。画像形成装置100は、本実施の形態に従う制御プログラム122を、アンテナを介してサーバーからダウンロードできるように構成されてもよい。
気圧センサ105は、画像形成装置100内に設けられており、画像形成装置100の設置場所における大気圧を検知する。好ましくは、気圧センサ105は、プリントヘッド300(図2参照)内のポリゴンミラー313(図2参照)近傍に設けられており、ポリゴンミラー313近傍の大気圧を検知する。
GPSモジュール106は、アンテナ(図示しない)を介して複数の衛星のそれぞれから電波を受信する。GPSモジュール106は、各衛星から電波が発信されてから各電波を受信するまでの時間に基づいて、画像形成装置100の現在位置を検知する。当該現在位置は、たとえば緯度および経度で表される。
操作パネル108は、たとえばタッチパネルとディスプレイとで構成されている。タッチパネルおよびディスプレイは、互いに重ねられている。操作パネル108は、たとえば、ユーザーからスキャン操作や印刷操作などをタッチ操作で受け付ける。
温度センサ109は、画像形成装置100内に設けられており、画像形成装置100内の温度を検知する。好ましくは、温度センサ109は、プリントヘッド300内に設けられており、プリントヘッド300内の温度を検知する。温度センサ109は、たとえば、サーミスターである。
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。一例として、記憶装置120は、本実施の形態に従う制御プログラム122、上述の地域別大気圧情報123(図10参照)、上述のパラメータ情報124(図7参照)、ユーザーやサービスマンによって設定された大気圧の設定値125を格納する。制御プログラム122、地域別大気圧情報123、パラメータ情報124、設定値125の格納場所は、記憶装置120に限定されず、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM102、RAM103、プリントヘッド300(図1参照)内の記憶領域、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で画像形成装置100が構成されてもよい。
[第1の実施の形態のまとめ]
本実施の形態に従う画像形成装置100は、周囲の大気圧に応じて、ポリゴンミラー313を駆動するモーター314の制御パラメータを調整する。これにより、画像形成装置100は、周囲の大気圧に合わせてポリゴンミラーの回転を早期に安定させることができ、印刷時におけるユーザーの待ち時間を短縮することができる。
<第2の実施の形態>
[概要]
ポリゴンミラー313が回転時に受ける負荷は、画像形成装置100内の温度に応じて変動する。そのため、ポリゴンミラー313の回転が安定するタイミングも、画像形成装置100内の温度に応じて変動する。
第1の実施の形態に従う画像形成装置100は、周囲の大気圧に基づいて、ポリゴンミラー313の回転を制御するための制御パラメータを調整していた。これに対して、第2の実施の形態に従う画像形成装置100は、周囲の大気圧と、画像形成装置100内の温度との両方に基づいて、ポリゴンミラー313の回転を制御するための制御パラメータを調整する。
温度の影響は、特に、ポリゴンミラー313のモーター314がオイル動圧で駆動される場合に顕著に表れる。この場合、モーター314と、モーター314の軸受け(図示しない)との間には、オイルが介在している。モーター314の軸は、回転によって発生したオイル動圧によって軸受けから浮揚し、滑らかに回転する。このとき、温度が低くなると、オイルの粘性が上がる。オイルの粘性が上がると、モーター314が回転中に受ける負荷が大きくなり、モーター314の停止中におけるポリゴンミラー313の回転数の下降速度が速くなる。結果として、ポリゴンミラー313の回転が早期に安定する。
なお、第2の実施の形態に従う画像形成装置100のハードウェア構成などは、第1の実施の形態に従う画像形成装置100と同じであるので、以下では、それらの説明については繰り返さない。
[制御パラメータの設定フロー]
図16を参照して、モーター314の制御パラメータの設定フローについて説明する。図16は、モーター314の制御パラメータを設定するためのフローチャートを示す図である。図16の処理は、画像形成装置100の制御装置101がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
なお、図16のステップS11,S12A以外の処理は、図12において説明した通りであるので、以下ではそれらの説明については繰り返さない。
ステップS11において、制御装置101は、温度センサ109(図15参照)からプリントヘッド300(図2参照)内の温度を取得する。
ステップS12Aにおいて、制御装置101は、図17に示されるパラメータ情報124Bを参照して、モーター314の制御パラメータを決定する。図17は、パラメータ情報124Bのデータ構造を示す図である。
パラメータ情報124Bは、たとえば、画像形成装置100の記憶装置120(図15参照)に予め格納されている。パラメータ情報124Bに規定されている大気圧「高」,「中」,「低」は、それぞれ、大気圧の範囲を表わす。パラメータ情報124Bに規定されている温度「高」,「中」,「低」は、それぞれ、温度の範囲を表わす。パラメータ情報124Bは、モーター314の制御パラメータを、大気圧および温度の組み合わせごとに規定している。図15の例においては、制御パラメータとして、PLL制御のゲインが示されている。大気圧が高いほど、かつ温度が低いほど、パラメータ情報124Bにおけるゲインは、大きくなるように規定されている。
図17の例では、大気圧「高」および温度「高」の組み合わせには、ゲイン「GC」が対応付けられている。大気圧「高」および温度「中」の組み合わせには、ゲイン「GB」が対応付けられている。大気圧「高」および温度「低」の組み合わせには、ゲイン「GA」が対応付けられている。大気圧「中」および温度「高」の組み合わせには、ゲイン「GD」が対応付けられている。大気圧「中」および温度「中」の組み合わせには、ゲイン「GC」が対応付けられている。大気圧「中」および温度「低」の組み合わせには、ゲイン「GB」が対応付けられている。大気圧「低」および温度「高」の組み合わせには、ゲイン「GE」が対応付けられている。大気圧「低」および温度「中」の組み合わせには、ゲイン「GD」が対応付けられている。大気圧「低」および温度「低」の組み合わせには、ゲイン「GC」が対応付けられている。
ゲイン「GA」は、ゲイン「GB」よりも小さい。ゲイン「GB」は、ゲイン「GC」よりも小さい。ゲイン「GC」は、ゲイン「GD」よりも小さい。ゲイン「GD」は、ゲイン「GE」よりも小さい。
制御装置101は、パラメータ情報124Bに規定されている大気圧および温度の組み合わせの中から、ステップS10で取得した大気圧と、ステップS11で取得した温度との組み合わせに一番に近い組み合わせを選択する。制御装置101は、パラメータ情報124Bに規定されている制御パラメータの中から、選択された組み合わせに対応付けられている制御パラメータを特定する。制御装置101は、ポリゴンミラーを回転するための制御パラメータを、特定された制御パラメータに設定する。
なお、図17では、パラメータ情報124Bに規定されている大気圧および温度がそれぞれ3つに区分されている例が示されているが、大気圧および温度は、それぞれ、2つに区分されてもよいし、4つ以上に区分されてもよい。また、図17では、パラメータ情報124Bがテーブルとして表されている例が示されているが、パラメータ情報124Bは、必ずしもテーブルとして表される必要はない。たとえば、パラメータ情報124Bは、大気圧と温度と制御パラメータとの相関式で表わされてもよい。当該相関式においては、大気圧および温度が説明変数で表され、制御パラメータが目的変数で表される。
[第2の実施の形態のまとめ]
本実施の形態に従う画像形成装置100は、周囲の大気圧と画像形成装置100内の温度との両方に基づいて、ポリゴンミラー313を駆動するモーター314の制御パラメータを調整する。これにより、画像形成装置100は、周囲の大気圧だけでなく、画像形成装置100内の温度に合わせてポリゴンミラーの回転を早期に安定させることができる。結果として、印刷時におけるユーザーの待ち時間がさらに短縮される。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。