(第1実施例)
本願に係る発明(以下「本発明」と称す)の受付装置の一実施例として、特に血液検査と尿検査の受付を機械的に行う受付装置1を取り上げ説明する。尚、以下の説明で方向を示す場合は、図1において示される受付装置1を基準とし、正面(前)は図の左手前、背面(後)は図の右奥側のことを示し、上(上方)は図の上側、下(下方)は図の下側ことを示す。その他の方向に関しては明細書中に記載された通りとする。また、以下の説明では、本発明の受付装置を具体的に説明するために、病院において血液検査と尿検査の受付を機械的に行う受付装置1を実施例として用いるが、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、尿検査以外に受付できる検査項目を適宜に追加したものでもよい。また、健康診断における検査の受付装置にも適用できることは言うまでもない。
図1は受付装置1の概要を示す斜視図である。本実施例の受付装置1は、本体部8、及び本体部8の前面に取り付けられたフロントパネル9からなる。本体部8は後述するカップ収容部50やラベル貼付手段30等を収容するものである。フロントパネル9は、本体部8に対して開閉自在に蝶着されており、フロントパネル9を本体部8から開くことで本体部8の内部を露出させることができる。フロントパネル9を開放して本体部8内部を露出させることで、受付装置1のメンテナンスやカップ収容部50(図2参照)への採尿カップ5の補充などを行うことができる。
フロントパネル9には、本体部8が備える受付部40の一部を、フロントパネル9を閉じた状態において受付装置1の外部に露出させるための開口が設けられている。受付部40は、患者の診察カードに記憶された情報を読み取るカード読取口41と、整理券(図示せず)を排出する整理券出口42を備える。ここでいう整理券とは、採血を受ける患者に対して発行される、整理番号や患者の個人情報、採血に係る事項等が印字される紙面である。
フロントパネル9は、受付装置1の処理結果等を患者に示すため表示装置であるモニタ7及び採尿カップ5を排出するカップ取出口10を備える。詳しくは後述するが、本体部8の内部でラベルが貼付された採尿カップ5は、カップ移送路20を通ってカップ取出口10から排出される。カード読取口41、整理券出口42及びモニタ7等の装置は受付装置1が備える演算装置(図示せず)によって制御される。
次に、受付装置1の動作の概要について説明する。受付装置1は、ホストコンピュータ(図示せず)と接続されると共に、ホストコンピュータを介して血液を採血する採血場に配置された採血管準備装置(図示せず)と接続されことで採血業務支援システムを構成する。
本実施例における受付装置1は、個人を識別できるID番号等の識別情報を記憶した診察カード(図示せず)が、カード読取口41に挿入されることで受付処理を開始する。受付装置1は、カード読取口41にて診察カードに記録された識別情報を読み取ると、その識別情報を、ホストコンピュータに対して照会し、そのホストコンピュータから患者の氏名などの所定の個人情報と、患者が必要とする検査項目に関する検査情報を取得する。取得した個人情報及び検査情報に基づいて受付装置1は患者が尿検査や血液検査を必要とするか否かを判断し、尿検査を必要とする患者には採尿カップ5を提供し、血液検査を必要とする患者には採血場において必要となる情報(例えば、整理番号など)が印字された整理券(図示せず)を発行する。
より詳しくは図2、図3を参照して後述するが、受付装置1は、ホストコンピュータから取得した個人情報に基づいて患者に尿検査の必要があると判断した場合、その患者の個人情報に基づいて、所定の情報(例えば、氏名、年齢、生年月日などの項目)を印字した採尿ラベル31a(図2参照)をラベル貼付手段30(図2参照)によって採尿カップ5に貼付する。その後、ラベル貼付手段30からラベル貼付済みの採尿カップ5を放出し、カップ移送路20を介してカップ取出口10に排出する。
また、受付装置1は、患者に血液検査があると判断した場合、採血場において必要となる情報(例えば、整理番号)が印字された整理券を、整理券出口42から排出する。整理券の排出に合わせ、受付装置1は、ホストコンピュータを介して接続された採血管準備装置に対して、整理券に印字した整理番号及びその整理番号に関連付けられた患者の個人情報や採血に関する指示項目(例えば、生化学、血算、血糖、凝固など)の情報を送信する。
採血管準備装置では、受信した情報に基づいて適切な採血管を選択し、選択した採血管に整理番号及び所定の情報(例えば、指示項目、氏名、生年月日など)が印字された採血ラベルを貼付し、患者毎のトレーに採血管を仕分けして収容する。
この構成により採血場の採血者または採血スタッフは、患者が提示する受付装置1から取得した整理券の整理番号と、採血管準備装置において準備されたラベルの整理番号とを照合することで、効率よく、且つ取り違えなく採血を実施できる。
次に、図2、図3を参照して受付装置1の要部を説明する。図2は、本体部8の内部構成を説明するための、フロントパネル9を開いて本体部8内部を露出した状態を示す正面図である。図3は、図2に示す状態から、ラベル貼着手段30を本体部8から引き出した状態を示す斜視図である。
受付装置1は、図2に示すように本体部8内に、受付部40と、カップ収容部50と、ラベル貼付手段30と、カップ移送路20と、を備える。受付部40は、前述した通り、診察カードを読み取るカード読取口41と、整理番号等が印字された整理券を排出する整理券出口42と、からなる部分であり、フロントパネル9を閉鎖した状態においても、フロントパネル9の開口部を介して、カート読取口41及び整理券出口42が受付装置1の外部に露出するように取り付けられる。
カップ収容部50は、複数の採尿カップ5を積み重ねて収容する部分である。尿検査を必要とする患者を受け付けた場合、カップ収容部50から採尿カップ5の1つが取り出され、次工程であるラベル貼着手段30に採尿カップ5が供給される。
図2には、カップ収容部50は、採尿カップ5を積み重ねて収容する様子を模式的に示したが、カップ収容部50としては、採尿カップ5の収容数、積み重ねの方法、採尿カップを取り出す分離方法、採尿カップ5のラベル貼付手段30への供給方法、或いはラベル貼付手段30とカップ収容部50の位置関係等について、周知の技術を採用可能なものであり、詳細な説明はここでは省略する。
ラベル貼付手段30は、採尿ラベル(図示せず)に所定の情報を印字し、その印字した採尿ラベルをカップ収容部50から供給される採尿カップ5のラベル貼付面5bに貼付する装置である。ここで、図3を参照してラベル貼付手段30について詳述する。図3は、ラベル貼付手段30を受付装置1の本体部8から、図示矢印Pの方向に引き出した状態を示す図である。ラベル貼付手段30の本体部8奥側には、ロール状に巻き回されたラベル連続体31が収容される。ラベル連続体31には、複数の未印字の採尿ラベル31aが仮着されている。ラベル貼付手段30は、収容されたラベル連続体31から引き出され、ガイドローラ等から成る搬送路(図示せず)を介して印刷ヘッド(図示せず)に搬送されたラベル連続体31上の採尿ラベル31aの各々に所定の情報を印字する。また、前述した通り、ラベル貼付手段30は、印字した採尿ラベル31aを、カップ収容部50から供給される採尿カップ5のラベル貼付面5bに貼付する。具体的には、カップ収容部50から順次供給される採尿カップ5がラベル貼付手段30におけるカップ受入口32からラベル貼着位置(図示せず)に到達すると、周知のラベル貼付技術を用いてラベル貼付手段30が採尿ラベル31aを採尿カップ5のラベル貼付面5bに貼付する。採尿ラベル31aが貼付された採尿カップ5は、ラベル貼付手段30のラベル貼着位置から、カップ移送路20に向けて放出される。尚、本実施例におけるラベル貼付手段30からカップ移送路20への採尿カップ5の放出は、ラベル貼付手段30に対して下方に位置するカップ移送路20への自由落下によるものである。
再び図2を参照して説明する。カップ移送路20は、ラベル貼付手段30から放出された採尿カップ5を、カップ取出口10に向けて移送するための通路である。前述したとおり、カップ移送路20の一部がラベル貼付手段30の下方に位置することで、ラベル貼付手段30から落下放出された採尿カップ5をカップ移送路20の一部で受け止めるよう構成される。詳しくは後述するが、カップ移送路20は、ラベル貼付手段30から採尿カップ5を受け取る上流側から、カップ取出口10に繋がる下流側にかけて下り勾配となるように配設されたスロープ状の部材である。尚、図2に示すように、移送用スロープ21は本体部8側に、排出用スロープ22はフロントパネル9側に取り付けられており、フロントパネル9が開放された状態(図2の状態)では、移送用スロープ21と排出用スロープ22とが分離する。フロントパネル9を閉じた状態において、移送用スロープ21と、排出用スロープ22の一部が重なり合うことで、カップ移送路20が構成される。
次に図4を参照して、カップ移送路20について詳述する。図4(a)は、受付装置1のフロントパネル9に設けられたカップ取出口10から、カップ取出口10の内部(本体部8の内部)方向を見たときの、カップ移送路20の様子を示す拡大図である。カップ取出口10の内側方向(図の奥側)から外側方向(図の手前)にかけて、移送用スロープ21と、排出用スロープ22と、が順に配設されることでカップ移送路20が構成される。
前述した通り、本実施例の受付装置1では、フロントパネル9を閉じた際に、本体部8に設けられた移送用スロープ21と、フロントパネル9に設けられた排出用スロープ22とが、互いのスロープの少なくとも一部の領域が重なることで、図4(a)に示すように、カップ移送路20が構成される。
図4(b)、(c)、(d)、(e)を参照し更に詳しく説明する。図4(b)は、本実施例にかかるカップ移送路20の構成を模式的に示す側面図であり、図4(c)はカップ移送路20の傾斜角度を説明するための模式図であり、図4(d)は図4(b)中におけるA−A線から見た断面図、図4(e)は図4(b)中におけるB−B線から見た断面図/端面図である。
移送用スロープ21、排出用スロープ22は、例えば金属材や樹脂材からなる板体を、夫々一方側(図の上側)を開放するように湾曲形成し、採尿カップ5を移送するための移送面を底部とする断面略凹形状をしている。更に本実施例における移送用スロープ21と排出用スロープ22は、少なくともこの2つのスロープが重なる領域において、移送用スロープ21より排出用スロープ22の方が僅かに大きい略相似形となるように形成されており、図4(e)に良く示されているように、排出用スロープ22の開放部22cから排出用スロープ21の湾曲した内部に、移送用スロープ21を重ねるように配置させることができる。
この2つのスロープが重なる領域において、移送用スロープ21の開放部21cの幅寸法(移送方向に直交する方向の寸法)W1は、例えば、採尿カップ5の移送を邪魔せず、採尿カップ5が移送用スロープ21上を、略真直ぐな姿勢を保ったまま移送されるような幅にするのが好ましい。例えば、図4(e)に示すように、移送用スロープ21の湾曲した内部に採尿カップ5を載置した状態で、湾曲部内に位置するカップの口部5c側部分(即ち、採尿カップの外径寸法が大きい部分)における幅寸法(移送方向に直交する方向の寸法)より僅かに大きい寸法にすればよい。これに伴い、排出用スロープ22の開放部22cの幅寸法W2は、排出用スロープ22に移送用スロープ21を重ねることができるように、移送用スロープ21の開放部21cの幅寸法W1より僅かに大きくすればよい。
尚、本実施例におけるカップ移送路20では、少なくとも移送用スロープ21と排出用スロープ22の2つのスロープが重なる領域において、移送用スロープ21と排出用スロープ22は略相似形となるように形成されている例を示したが、本発明としては、相似形に限定されるものではなく、移送用スロープ21と排出用スロープ22の形状や材質などは異なるものであってもよい。
更に本実施例では、図4(c)に示すように、移送用スロープ21と排出用スロープ22は、夫々水平方向に対して異なる傾斜角度を有するように傾斜した状態で配設されており、カップ移送路20の全体が、ラベル貼付手段30からカップ取出口10方向にかけての下り勾配となるよう構成されている。尚、この傾斜角度の詳細な説明は図5(a)を用いて後述する。
開放されているフロントパネル9が閉じられると、フロントパネル9に配設された排出用スロープ22は図4(b)中に矢印Rで示す方向に移動して、移送用スロープ21の下流側の端部21aの垂直下方に排出用スロープ22の一部が位置する。
次に、図4(e)を参照して移送用スロープ21と排出用スロープ22との重なりについて詳述する。尚、図4(e)中、22bの符号を付した一点鎖線は、排出用スロープ22の上流側の端部22bを示す仮想線である。この図から分かるように、移送用スロープ21の下流側の端部21aと、排出用スロープ22の上流側の端部22bが当接して、排出用スロープ22の移動の邪魔をしないよう、互いの端部の間には僅かな間隙Gが設けられている。この間隙Gを設けたことにより、移送用スロープ21と排出用スロープ22との重ね合わせがスムーズに行える。
また、間隙Gの存在により、カップ移送路20を構成した状態において、移送用スロープ21と排出用スロープ22との間に段差が生じる。この段差を設けたことによる作用の詳細については、図5(b)を参照して後述するが、この実施例によると、採尿カップ5がこの段差を通過する際に、移送用スロープ21との間に生じた摩擦力が弱まった状態で、且つ段差を落下しながら通過するので、採尿カップ5は、僅かに勢いを増した状態で排出用スロープに移送にされる。これにより、採尿カップ5がスロープとの摩擦などにより止まってしまうことを防止できるので、採尿カップ5のよりスムーズな移送が実現できる。
以上のように、本発明の実施例におけるカップ移送路20は、その全体が、ラベル貼付手段30からカップ取出口10方向にかけて下り勾配となるように配設されることで、ラベル貼付手段30から放出された採尿カップ5は、カップ移送路20によりカップ取出口10に向けて傾斜状態で、動力を用いずに移送される。
尚、上述の重なる領域とは、図4(b)の模式図に示すように、移送用スロープ21と排出用スロープ22の少なくとも一部を上下方向に配置させたときの状態を、カップ移送路20の真上(図の上)から見たときに、夫々の投影面が重なる部分のことである。また、前記移送用スロープ21の下流側(排出用スロープ22側)である一方の端部21aと、前記排出用スロープ22の上流側(移送用スロープ21側)である他方の端部22bとが、水平面に直交する同一面上に配設され、カップ移送路20の真上から見たときに、一方の端部21aと他方の右端部22bとの間に隙間がない場合も含まれる。即ち、移送用スロープ21の下流側である端部21aの垂直下方に排出用スロープ22のすくなくとも一部が位置すれば、カップ移送路20として成り立つ。
ここで図5(a)を参照して、採尿カップ5が傾斜状態で移送される仕組みを詳しく説明する。図5(a)は本実施例にかかるカップ移送路20を説明する模式図であり、採尿カップ5がカップ移送路20を移送される状態を説明するためのものである。この図5(a)に示すカップ移送路20は、移送用スロープ21と排出用スロープ22が異なる傾斜角度を有する構成の一実施例を示すものであり、この実施例では、移送用スロープ21は、側面から見たときにスロープ上に1点の屈曲を設け、2つの異なる傾斜角度を有する。具体的には、図5(a)に示すカップ移送路20の使用の態様において、移送用スロープ21の上流側(屈曲に対してラベル貼付手段30側)は傾斜角度θ1a、下流側(屈曲に対して排出用スロープ21側)は傾斜角度θ1bであり、傾斜角度θ1aは傾斜角度θ1bより大きい。
そして、移送用スロープ21と排出用スロープ22とは、移送用スロープ21全体がなす第1の傾斜角度θ1(図4(c)参照。移送用スロープ22の上流側である他方の端部21bと下流側である一方の端部21aを結ぶ仮想線が水平となす角度であり、θ1b<θ1<θ1aの関係からなる)と、排出用スロープ22がなす第2の傾斜角度θ2とが異なり、しかも、移送用スロープ21全体がなす第1の傾斜角度θ1は、排出用スロープ22がなす第2の傾斜角度θ2より大きくなるように配設されている。
尚、本実施例の場合、移送用スロープ21の下流側(排出用スロープ21側)の傾斜角度θ1bは、排出用スロープ22の第2の傾斜角度θ2より大きいのが望ましいが、同一であっても良い。
かかる構成からなるカップ移送路20を用いた採尿カップ5の移送の仕組みを、以下に説明する。
ラベル貼付手段30から放出された採尿カップ5は、上方(図の矢印A1)から移送用スロープ21の移送面21d(図4参照)に向けて落下し、まず、採尿カップ5の底部5aの一部が、矢印A2の部分である移送用スロープ21における傾斜角度θ1aの領域の移送面21dに当接する。この時、採尿カップ5の重心位置(図示せず)は、底部5aと移送面21dとが当接した部分より下流側(図の左側・カップ取出口10側)に位置するものの、当接した移送面21dの傾斜角度θ1aが十分大きく構成されていることから、採尿カップ5は下流側(図の左側)に転倒する前に、底部5aが移送面21dに沿うように滑り落ちる(図の矢印A3)ため、採尿カップ5は、底部5aを下側にした状態で移送用スロープ21を滑り落ちる。そして、移送用スロープ21を滑り落ちた採尿カップ5は、第2の傾斜角度θ2を有した排出用スロープ22を介して、カップ取出口10に、底部5aを下側にした傾斜状態で排出される。
尚、この採尿カップ5の底部5aを下側にした状態に転倒させるための、移送用スロープ21(より詳しくは、移送面21d)の傾斜角度θ1aは、ラベル貼付手段30から放出される採尿カップ5の落下速度、採尿カップ5の大きさや質量、採尿カップ5と移送面21dとの摩擦力、カップ取出口10までの移送距離などを踏まえ、実験的に決めればよい。
発明者らの実験によると、例えば、移送用スロープ21の上流側の傾斜角度θ1aは略55度、下流側の傾斜角度θ1bは略30度であり、移送用スロープ21全体がなす第1の傾斜角度θ1は略38度、排出用スロープ22の第2の傾斜角度θ2は略22度とすることにより、採尿カップ5は動力を用いずにカップ取出口10まで移送されることが分かった。
次に、図5(b)を参照して、カップ移送路20に形成される段差25の作用を説明する。図5(b)は採尿カップ5の移送の状態を分かり易く説明するための図であり、図5(a)の段差部分を取出し、より簡略化して示した図である。上述したように、この段差25は移送用スロープ21と排出用スロープ22の重なる領域において、間隙Gを設けたことにより形成されるものである。
図5(b)に良く示されるように、段差25を通過する採尿カップ5に着目すると、段差を通過する採尿カップ5は、底部5a及び口部5cが移送用スロープ21との接触から瞬間的に開放され、それまで採尿カップの底部5a及び口部5cの2点と移送用スロープ21とが接触することにより生じていた摩擦力が、採尿カップ5の側面(ラベル貼付面5b)と移送用スロープ21の下流側である一方の端部21aとの1点だけの接触になることから、摩擦力が弱まった状態で排出用スロープ22へ移送される。合わせて、採尿カップ5は、段差25を落下しながら排出用スロープ22へ移送される。つまり、カップ移送路20に段差25を設けたことにより、段差25を通過する採尿カップ5は、僅かに下り方向への勢いを増しながら次の排出用スロープ22に移送されるので、採尿カップ5が排出用スロープ22との摩擦などにより途中で止まってしまうことを防止でき、よりスムーズにカップ取出口10への排出が行えるようになる。
本実施例によると、移送用スロープ21において、傾斜角度θ1aを有した移送面21dの領域では採尿カップ5がスピード優先で移送されるものの、傾斜角度θ1bを有した移送面21dから第2の傾斜角度θ2を有した排出用スロープ22にかけて、徐々に傾斜角度が小さくなるので、採尿カップ5をゆっくりと移送することができるから、よりスムーズに採尿カップ5の排出を行うことができる。
このように、採尿カップ5が一気にスロープを下ってカップ取出口10に排出されないので、採尿カップ5がカップ取出口10にぶつかることによって生じる衝突音の発生を抑えることができるし、衝突による採尿カップ5の破損を防止できる。また、カップ取出口10にゆっくりと排出されるので患者を驚かすことがない、などの効果が得られる。
尚、本実施例に示すカップ移送路20では、図5(a)に示す使用の態様において、移送用スロープ21は2つの傾斜角度θ1a、θ1bを有し、排出用スロープ22は第2の傾斜角度θ2を有するように配設させた構成を示したが、本実施例に限定されるものではなく、例えば、移送用スロープ21を1つの傾斜角度(移送面21dがフラット)としても良いし、3つ以上の傾斜角度θ1a、θ1b、θc…を有するように構成しても良い。また、排出用スロープ22も複数の傾斜角度を有するように構成しても良い。
また、移送用スロープ21の移送面21d、排出用スロープ22の移送面22dがそれぞれ曲面を描くように湾曲させた構成とし、湾曲した移送用スロープの全体の第1の傾斜角度θ1(移送用スロープの上流側における他方の端部21bと下流側における一方の端部21aを結ぶ仮想線が水平となす角度)と、湾曲した排出用スロープの全体の第2の傾斜角度θ2(排出用スロープの上流側における他方の端部22bと下流側における一方の端部22aを結ぶ仮想線が水平となす角度)を異なるように配設させる構成としても良い。
つまり、移送用スロープ21の第1の傾斜角度θ1と排出用スロープ22の第2の傾斜角度θ2が異なり、移送用スロープ21の第1の傾斜角度θ1は排出用スロープ22の第2の傾斜角度θ2より大きくなるように配設され、且つ移送用スロープ21と排出用スロープ22の重なる領域においてスロープに上下方向に段差(より詳しくは間隙G)が生じるように配設されていればよく、スロープの構成は問わない。
次に、カップ取出口10について図7を参照して説明する。本発明の実施例にかかるカップ取出口10は、フロントパネル9を貫通するように設けられた略四角形状をしている。そして、カップ取出口10の下方部には、フロントパネル9の表面側に突出するように、カップ移送路20から移送されてきた採尿カップ5を受け入れ、保持するカップ受入部11が設けられている。
このように構成されたカップ取出口10には、図7に良く示されているように、カップ移送路20における排出用スロープ22の一方の端部22aが挿入された状態となるように配設されており、ラベル貼付手段30からカップ移送路20を介して移送され、カップ取出口10に排出された採尿カップ5は、最終的にカップ取出口10におけるカップ受取部11に収容される。
本実施例では、排出用スロープ22の一方の端部22aがカップ取出口10内部に挿入された例を示したが、本実施例に限定されるものではなく、採尿カップ5が、排出用スロープ22の一方の端部22aから、カップ受入部11に排出されるように構成されていれば、排出用スロープ22の一方の端部22aはカップ取出口10内部に挿入されていなくても良い。この場合、カップ取出口10及びカップ受入部11の底部は、採尿カップ5の排出及び収容を良好にするため、カップ移送路20のスロープと連続的になるように構成されると共に、排出用スロープがなす第2の傾斜角度θ2と略同じ下り勾配を有する構成とするのが良い。
排出された採尿カップ5の状態を図7(b)に示す。図7(b)はカップ取出口10に採尿カップ5が排出された状態を示す図であり、図7(a)中の矢印F方向から見た部分拡大図である。この図7(b)によく示されるように、排出された採尿カップ5は、底部5aがカップ受入部11の一部に支持された状態において、カップ移送路20(より詳しくは、排出用スロープ22)の傾斜角度に沿うように傾いた状態で、しかも、採尿カップ5の一部、本実施例では、少なくとも採尿カップ5の底部5a側の一部が、カップ取出口10の開口部10aがなす仮想の面(フロントパネル9の表面と同一面を成す仮想の面)より外側、即ち、受付装置1の表面側に飛び出すように露出した状態で、カップ受入部11に収容される。これにより、患者は容易に採尿カップ5を視認にし、かつ、容易に採尿カップ5を受付装置1から取り出すことができる。
図7(c)はカップ取出口10に採尿カップ5が排出された状態を示す図であり、図7(a)中の矢印U方向から見た部分拡大図である。この図7(c)によく示されるように、カップ取出口10は、その開口部10aの外形を、カップ取出口10を俯瞰したときに、採尿カップ5全体が視認可能で、しかも、手先が十分に入る程度の大きさとすることにより、採尿カップ5の視認性、及びカップ取出口10に傾斜状態で排出された採尿カップ5の取扱性をきわめて良好なものとすることができる。
かかる構成によれば、カップ移送路20に所定の傾斜角度を設けることで、採尿カップ5は、ラベル貼付手段30からカップ取出口10へ、動力を用いずともカップ移送路20に沿うように傾いたままの状態で移送されると共に、カップ取出口10に排出された採尿カップ5は、カップ受入部11において、少なくとも採尿カップ5の底部5a側の一部が、カップ取出口10より受付装置1の表面側に位置するように傾斜状態で収容される。
また、移送用スロープ21と排出用スロープ22の重なる領域においてスロープに上下方向に段差が生じる構成としたことにより、移送用スロープ21を移送されてきた採尿カップ5が段差を通過する時に、採尿カップ5は、移送用スロープ21との間に生じた摩擦力を軽減した状態で、且つ段差を落下しながら通過するので、採尿カップ5は、僅かに勢いを増した状態で排出用スロープ22に移送にされる。これにより、採尿カップ5が排出用スロープ22との摩擦などにより止まってしまうことを解消でき、よりスムーズにカップ取出口10まで移送可能となる。
また、移送用スロープ21の傾斜角度を可変自在に固定できる構成とし、移送用スロープ21と排出用スロープ22の重なる領域において生じる間隙Gを、移送用スロープの可動範囲に対応できる寸法とすることにより、例えば、実際に使用する採尿カップ5の諸元(寸法、質量、移送面との摩擦係数など)に応じて、移送用スロープ21の傾斜角度を調整することができるようになるので、採尿カップ5の移送スピードを最適化するなどのカスタマイズが簡単にできる。また、設置現場での調整ができるようになり、極めて利便性のよい受付装置1を提供できる。
また、カップ移送路20を、ラベル貼付手段30側(即ち、本体部8側)に配設される移送用スロープ21と、カップ取出口10側(即ち、フロントパネル9側)に配設される排出用スロープ22とに夫々分割して配設させることにより、夫々のスロープの長さを、短くすることができることから、採尿カップ5の補給やラベル連続体31の交換などのメンテナンス時にフロントパネル9を本体部8から開いても、夫々のスロープが、本体部8やフロントパネル9から大きく突出することがないので、スロープがメンテナンスの邪魔をしない。また、夫々のスロープに手や腕がぶつかり難くすることができ、過失による故障や破損も防止できるなど、優れたメンテナンス性を有した受付装置1を提供できる。
また、本実施例では、患者が採尿カップ5を受付装置1から取り出せるよう、カップ取出口10において採尿カップ5を支持する部材の一部として、排出用スロープ22の一部(下端)を利用しているので、カップ取出口10の構成部品を削減することができる。
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を説明する。本実施例は、前述した第1実施例に対して、カップ移送路20Aを構成する移送用スロープ21の傾斜角度と排出用スロープ22の傾斜角度が同一となるように配設されている点が異なる。
図6は採尿カップ5がカップ移送路20Aで移送される状態を説明するための模式図である。かかる構成からなるカップ移送路20Aを用いた採尿カップ5の移送の仕組みを、以下に説明する。
ラベル貼付手段30から放出された採尿カップ5は、上方(図の矢印A1)から移送用スロープ21の移送面21dに向けて落下し、まず、採尿カップ5の底部5aの一部が、移送用スロープ21における移送面21dと矢印A2の部分で当接する。この時、採尿カップ5の重心位置(図示せず)は、底部5aと移送面21dとが当接した部分より下流側(図の左側)に位置するため、採尿カップ5は下流側(図の矢印A4)に転倒し、採尿カップ5の口部5cが下側になった状態で、移送用スロープ21を滑り落ちる。そして、移送用スロープ21を滑り落ちた採尿カップ5は、排出用スロープ22を介して移送され、カップ取出口10に口部5cを下側にした傾斜状態で排出される。
尚、この採尿カップ5の口部5cを下側にした状態に転倒させるための、カップ移送路20A(より詳しくは、移送面21d、22d)の第3の傾斜角度θ3は、採尿カップ5をカップ取出口10に排出するスピードをどの程度にするかに基づいて、採尿カップ5の大きさや質量、採尿カップ5と移送面21dとの摩擦力などを踏まえ、実験的に決めればよい。発明者らの実験によると、例えば、傾斜角度θ3は略30度とすることにより、採尿カップ5は動力を用いずにカップ取出口10まで移送されることが分かった。
この異なる実施例にかかるカップ移送路20Aによると、第3の傾斜角度θ3を大きくするに従い、採尿カップ5の排出スピードが速くなる利点がある。
更に、このカップ移送路20Aによると、カップ移送路20Aの第3の傾斜角度θ3を上述した第1実施例における移送用スロープ21の傾斜角度θ1a程度に大きくすれば、カップ移送路20の場合のように、採尿カップ5の底部5aを下側にした傾斜状態で排出させることができる。この場合、カップ移送路20Aの全体の傾斜角度が大きいので、採尿カップ5を素早く移送することができるから、採尿カップ5の排出がより効率よく行うことができるようになる。
以上、本発明によると、極めて簡単な構成であっても採尿カップ5を、動力を用いずとも排出できるし、また、採尿カップ5の排出は、カップ移送路20の傾斜角度を利用した自然落下であり、採尿カップ5の排出をスムーズに行うことができるので、複雑で高価な安全対策を必要としない。
また、採尿カップ5の排出にモータなどの駆動装置を必要としないし、駆動装置に対する複雑な制御を行う必要もないので、コストを安くすることができる。
また、採尿カップ5が傾いた状態のままでカップ取出口10におけるカップ受入部11に収容されると共に、少なくとも採尿カップ5の底部5a側、或いは口部5c側の一部がカップ取出口10から受付装置1の表面側に露出することから、患者に採尿カップ5が排出されたことを容易に認識させることができる。また、採尿カップ5が傾いて排出されるため、採尿カップ5の側面部分に手を上から被せるようにして掴めるから、患者による採尿カップ5の取出しが極めて容易に行うことができる。
このため、図1に示す受付装置1において、例えば、カップ取出口10を受付装置1の中間位置より僅かに低い位置に設ければ、子供や車椅子の利用者に対して、採尿カップ5の視認性、取扱性に優れた受付装置1とすることができる。
一方、背の高い人にとっては、カップ取出口10が低い位置になるものの、図7(c)の如くカップ取出口10を俯瞰することができるので、採尿カップ5の視認性を損なうことが無い。また、採尿カップ5はカップ取出口10に傾斜状態で排出されると共に、該カップ取出口10の開口部10aの外形を、採尿カップ5全体が視認可能で、しかも手先が十分に入る程度の大きさにしたことにより、取扱性を損なうことはない。
つまり、従来技術のように、採尿カップ5の排出に気が付かないといった問題をなくすことができる。また、気が付いたとしても、採尿カップ5を取出すために、カップ取出口10を覗き込む必要も無いし、狭いカップ取出口10内に手を差し入れて取出す必要も無いから、指先で探って採尿カップを倒してしまうといった問題も無くすことができる。
更に言えば、採尿カップ5の視認性、取扱性が向上したことにより、患者は受付と同時に採尿カップを受け取り、採尿ができるので、患者に余分な負担を掛ける事が無くなる。これに伴い、病院側においても効率的な尿検査ができるようになる。
また、カップ取出口10に採尿カップ5が取り残される可能性を低減できるので、複数の採尿カップ5がカップ取出口10に存在することが無くなり、患者毎に異なる所定事項が印字されたラベルが貼付された採尿カップ5の取り違えが起きることがなくなる。
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
例えば、上記第1及び第2実施例に示されるカップ移送路20、20Aは、移送用スロープ21と排出用スロープ22の2つの部材からなる構成を示したが、上述した実施例に限定されるものではなく、移送用スロープ21と排出用スロープ22を一体的に構成してもよい。この一体構成のカップ移送路では、カップ移送路はラベル貼付手段30側(本体部側)に設けても良いし、カップ取出口10側(フロントパネル側)に設けても良い。
また、上述した第1実施例において、移送用スロープ21の傾斜角度θ1、θ1a、θ1bのいずれか、または全部を、ヒンジ部品等を利用して調節可能に構成してもよい。特に、当該実施例では、移送用スロープ21が排出用スロープ22と分離して構成しているので、排出用スロープ22に影響を与えず、移送用スロープ21の傾斜(勾配)のみを調整できるので、採尿カップ5の移動速度を容易に調整することが可能となる。しかしながら、排出用スロープ22の傾斜角度θ2を調節可能とすることも、無論、妨げられるものではない。
例えば、上述した第1実施例において、本体部8の内側から、移送用スロープ21と排出用スロープ22の重なる領域において生じる間隙Gに向けて空気を放出すことにより、間隙Gから前側(図4(b)図の矢印R方向とは反対の方向)に空気が吹き出すように構成しても良い。この変形の実施例は、空気を間隙Gに向けて放出する手段の一例として、受付装置1が備える演算装置の放熱用ファンによる排気を利用したエア放出手段を備えさせることにより実現できる。この変形の実施例によると、採尿カップ5が段差を通過する際に、第1実施例における段差の作用に加え、間隙Gを介して内側から放出される空気の作用により下流側に押されるので、採尿カップ5が排出用スロープ22との摩擦などにより止まってしまうことをより効果的に防止でき、極めてスムーズな採尿カップ5の移送が実現できる。