JP2018000077A - 真菌の酒類混濁能の簡易判定法 - Google Patents

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恭子 平塚
林 伸之
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伸之 林
真紀子 金政
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真紀子 金政
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Abstract

【課題】酒類に対して混濁能のある真菌を迅速にかつ簡便に判別する方法を提供する。
【解決手段】真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法であって、エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を設けた固体培地上で、被検体の真菌を嫌気培養し、培養結果から真菌の酒類における混濁能を判定することを含んでなる、方法。固体培地が、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなってよく、かつ、下層の培地に傾斜をつけてその上に上層が重層してなってよい方法。第1の培地がエタノールを含む真菌用基本培地であり、第2の培地がエタノールを含む、酒類をベーズとする培地又は真菌用基本培地であり、第2の培地が第1の培地のエタノール濃度より高い濃度のエタノールを有する、培地である、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、真菌の酒類における混濁能を簡易に判定する方法に関する。また本発明は、かかる判定方法に使用可能な真菌用の固体培地に関する。
酒類(アルコール飲料)の製造において、嫌気環境であっても生育ができ、かつ、アルコール環境で、貧栄養条件下においても生育が可能な菌はしばしば、アルコール飲料に対し混濁能(酒類製品液中での増殖能)をもつ菌とされている。アルコール飲料の製造において、このような菌が飲料に混入することは、品質を損ね、製造業者、販売業者など関連事業者に大きな損害を与えうる。
特にビールの製造においては、このような菌は、ビール混濁菌とよばれ、既知の種については検査法が確立されているが、既知の混濁菌以外の菌についてもリスクの程度を把握しておく必要がある。
このため、新たに検出された菌が、容器詰されたアルコール飲料の中で混濁能を有するかを判断することは品質管理上、不可欠である。
ビール混濁菌の検出法については、これまでも色々な方法が提唱されている。
例えば、ビール混濁能を有する乳酸菌を判別するために、プライマー(例えば、特開2008−054632号公報(特許文献1))やヌクレオチド(例えば、特開2002−034578号公報(特許文献2))を利用する技術が報告されている。しかしながら、これら技術は、予め配列が特定されている必要があるため、混濁能が未知の菌の混濁能判別には適用できない。
特許第3163432号公報(特許文献3)には、pHを4.7〜5.5に調整した滅菌醸造物を培地として、被検物を添加して嫌気培養を行って、濁度を測定することによる混濁菌の判別方法が開示されている。しかしながら、ここに開示された方法は、ビールなどの実際の醸造物に、被検体を植菌して、容器詰め条件を再現した嫌気条件で培養を行うものであり、これは、製造現場でしばしば行われる植菌試験に近い環境を作り出して行っているものといえ、効率化と迅速化の観点からは、依然として改善の余地があると考えられる。またこの方法は、混濁菌が乳酸菌である場合のみであり、真菌の場合については何ら示されていない。
前記したように、製造現場では実際に、混濁能が疑われる被検体となる菌が、ビールなどのアルコール飲料において混濁能を有するか否かを判別する場合、容器詰めされた製品に植菌して培養し、混濁能を確認する植菌試験が行われる。植菌試験は、実際に当該菌が製品に混入した場合と近い条件で評価できるものの、菌の調製や混濁の確認等に労力がかかること、また、数週間から8週間程度の培養期間が必要であるため、より迅速な判別手段が望まれていたといえる。
このため、被検体となる真菌が、アルコール飲料に対し混濁能を有するか否かを鑑別しかつ迅速に判別する手段は、本発明者らが知る限りこれまで存在していなかった。
文献 International Journal of Food Microbiology 130 (2009), p.56-60(非特許文献1)には、ビール混濁能のある乳酸菌を判別する方法として、ホップ濃度に勾配をつけた培地が記載されている。しかしながら、真菌についての開示も示唆されていない。
特開2016−034264号公報(特許文献4)には、連続的に濃度勾配を設けた培地の作製方法、およびその培地を利用した微生物の分離、培養、およびスクリーニング方法が開示されている。ここに開示されている実施例は、大腸菌の培養例のみであり、またこの文献では、培地の作製方法を利用して、寒天状の食品を製造する方法についても記載されている。しかしながら、この文献には、真菌を培養することや、アルコール飲料における混濁能を判別することについては、記載も示唆もされていない。
特開2005−270003号公報(特許文献5)には、濃度勾配を形成させた固体培地を利用して、植物の変異株を選抜する方法が開示されている。この方法は、植物の遺伝子変異株を簡易に選抜するためのものである。しかしながら、この文献には、真菌を培養することや、アルコール飲料における混濁能を判別することについては、記載も示唆もされていない。
特開2008−054632号公報 特開2002−034578号公報 特許第3163432号公報 特開2016−034264号公報 特開2005−270003号公報
M. Haakensen, A. Schubert, B. Ziola, International Journal of Food Microbiology 130 (2009), p.56-60
本発明は、酒類(例えば、ビール、果実酒(ワイン等)、チューハイ、カクテル等)に対して、目的とする真菌が混濁能を有するか否か(また、その混濁能の強度の程度)を判定する方法を提供することをその目的とする。
本発明者らは今般、エタノールについて濃度勾配を設けた固体培地を用意し、この培地上で、酒類混濁能を判定したい被検体の真菌を嫌気条件下で培養し、その培養結果を評価することで、真菌の酒類における混濁能を迅速かつ簡便に判定することに成功した。ここで、固体培地におけるエタノールの濃度勾配は、エタノールの濃度の異なる2層の培地を用意し、下層の培地に傾斜をつけてその上に上層を斜めに重層することにより調製した。さらに、混濁能を判定しようとする酒類としてビールを選択し、それを培地に添加して、固体培地にその濃度勾配をさらに設けて、真菌の培養を行うことで、ビール混濁能の判別の精度をより高めることができた。また混濁能を判定する酒類としてビール以外の他の酒類(例えば、果実酒やチューハイ、カクテルなど)についても、この判定方法を使用して、真菌の混濁能を判定することができた。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法であって、
エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を設けた固体培地上で、被検体の真菌を嫌気培養し、培養結果から真菌の酒類における混濁能を判定することを含んでなる、方法。
<2> 固体培地が、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜をつけてその上に上層が重層してなるものである、前記<1>の方法。
<3> エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地のうち、
第一の培地が、エタノールを含む、真菌用基本培地であり、かつ
第二の培地が、エタノールを含む、酒類をベースとする培地又は真菌用基本培地であって、
第二の培地のエタノール濃度が、第一の培地のエタノール濃度以上である、前記<1>または<2>の方法。
<4> 第一の培地が、エタノールを0〜10%含み、かつ
第二の培地が、エタノールを10〜20%含む、前記<3>の方法。
<5> 酒類がビールテイスト飲料、果実酒、チューハイ、又はカクテルである、前記<1>〜<4>のいずれかの方法。
<6> エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜があり、その上に上層が重層してなる、真菌用の固体培地。
<7> エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地のうち、
第一の培地が、エタノールを含む、真菌用基本培地であり、かつ
第二の培地が、エタノールを含む、酒類又は真菌用基本培地をベースとする培地であって、第二の培地のエタノール濃度が、第一の培地のエタノール濃度以上である、前記<6>の固体培地。
<8> 第一の培地が、エタノールを0〜10%含み、かつ
第二の培地が、エタノールを10〜20%含む、前記<6>または<7>の固体培地。
<9> 真菌の酒類における混濁能を判別するために用いられる、前記<6>〜<8>のいずれかの固体培地。
本発明によれば、酒類(例えば、ビール、果実酒、チューハイ、カクテル等)に対して、目的とする真菌が混濁能を有するか否かを迅速かつ簡便に判定することができる。容器詰めされた製品に植菌し培養して行われる植菌試験に比べて、簡便に試験可能であり、また、大幅に短い期間で、混濁能の有無を判断できる。また、混濁能が疑われる真菌が多数存在する場合、本発明の方法により、混濁能のある可能性の高い真菌を絞り込み、その後、植菌試験にて詳細に判定することで、全ての真菌を植菌培養する場合に比べて、真菌の混濁能の判別の作業とそれに要する時間を大幅に軽減し、効率化することができる。また本発明の方法により、真菌の混濁能の判別が効率化できることで、品質管理に要するコストも低減することが可能となる。さらに本発明の方法では、目的とする真菌が混濁能を有するかどうかだけでなく、混濁能の強度の程度も把握することができる。また本発明によれば、嫌気条件によりその真菌の生育が抑制されているのか、アルコール濃度により生育が抑制されているのかがわかる。
本発明の方法における固体培地の一実施形態の概略図である。 実施例で行った試験での菌の塗沫の仕方を示す。
真菌の酒類混濁能の簡易判定方法
本発明による真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法は、前記したように、エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を設けた固体培地上で、被検体の真菌を嫌気培養し、培養結果から真菌の酒類における混濁能を判定することを含んでなる。
ここで真菌とは、一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物の総称であり、菌界に属する生物を指す。形態的に、菌糸と呼ばれる1列に配置する細胞列から体が構成されているものは糸状菌と呼ばれ、単細胞のままで繁殖するものは酵母と呼ばれるが、真菌の中には、生活環の中で酵母型と糸状菌型を行き来するものがあるので、キノコ、カビ、あるいは糸状菌および酵母はいずれも分類上の単位とはされていない。アルコール飲料製品中は、通常、酸素濃度が非常に低い為、真菌の中でも発酵能を持つ酵母が混濁菌として報告されている例が多い。
ここで酒類とは、アルコール飲料(エタノールを1%以上含有する飲料)であれば特に制限はないが、典型的には、容器詰めするなどにより嫌気条件下で、保存・輸送等されうるものである。酒類としては、ビールテイスト飲料、チューハイやカクテル等の購入後に割らずに飲めるRTD(レディー・トゥ・ドリンク)、果実酒、リキュール類、日本酒などが挙げられる。本発明において、酒類は好ましくは、ビールテイスト飲料、果実酒、チューハイ、又はカクテルであり、より好ましくはビールテイスト飲料である。本発明は、真菌の増殖の観点から、エタノール度数が20%未満のアルコール飲料で特に有効な判定法である。
本発明において「ビールテイスト飲料」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有する飲料をいい、典型的には、発泡性である「ビールテイスト発泡性飲料」である。また本発明の「ビールテイスト飲料」は、非発酵性、発酵性のいずれであってもよい。発酵性のビールテイスト飲料は、前述したビールテイスト飲料であって、酵母により発酵させた飲料をいう。例えば、ビール、発泡酒、リキュール、その他醸造酒等の穀類や豆類等の発酵飲料が挙げられる。
本発明において、「果実酒」とは、果汁から作られた醸造酒を意味し、果実をスピリッツのような酒につけ込んだ混合酒も包含される。例えば、ワイン、シードル、梅酒などが包含される。また「チューハイ」とは、蒸留酒を別の飲料で割ったアルコール飲料をいい、「カクテル」とは、ベースとなる酒に、別の酒または果汁などを混ぜて作るアルコール飲料をいう。ここで使用される酒、蒸留酒としては、ウォッカ、スピリッツやリキュールなどが挙げられる。
本発明において、酒類における混濁能(酒類混濁能)があるとは、例えば容器詰めした状態のような、嫌気条件下か実質的にそれに近い条件下のアルコール飲料中であっても生育することができることをいい、これは換言すれば、嫌気条件下でかつ、アルコール存在下の低栄養条件であっても生育ができることを意味する。
またここで、「エタノールおよび/または酒類の濃度勾配」とは、エタノールのみの濃度勾配、エタノールと酒類の両方の濃度勾配、酒類のみの濃度勾配のいずれの場合も包含し、好ましくは、エタノールのみの濃度勾配、またはエタノールと酒類の両方の濃度勾配であり、より好ましくは、エタノールと酒類の両方の濃度勾配である。エタノールと酒類の両方の濃度勾配とは、エタノールと酒類が比例的に濃度勾配を有する場合(すなわち、エタノールと酒類とが同じ方向に向かって共に濃度が増すように濃度勾配を有する場合)を指す。
またここで濃度勾配とは、エタノールや酒類の存在による影響が徐々に増加もしくは徐々に低下するように、それらの濃度が徐々に濃くもしくは徐々に薄くなっていく状態にあることをいう。
本発明においては、「エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を設けた固体培地」は、濃度勾配を設けることができる限り固体培地の構造は特に制限されないが、好ましくは、後述するように、エタノールおよび/または酒類について濃度の異なる2種の培地の層を斜めに重層させることで、濃度勾配を設けたものである。
本発明の方法における固体培地の具体例として、その一実施形態の概略を図1に示す。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の簡易判定方法において使用する固体培地は、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜をつけてその上に上層が重層してなるものである。なお、このような濃度勾配を設けた固体培地を、以下において「グラジエント培地」ということがある。
すなわち、本発明において使用する好ましい固体培地は、「エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地」からなり、それら上層と下層となった二層構造を有する。そして、下層となった培地の層における底面と反対側の表面は、傾斜が設けられており、底面に対して平行ではなく、斜めに傾いた面をもち、その上に2層のうちのもう一方の層である上層が重層してなる。上層の下面(すなわち底面側の面)は、勾配をつけた下層の表面(斜面)に接するため、同じく斜めに傾いている一方、表面(すなわち、二層からなる固体培地の表面でもある面)は、固体培地の底面に平行した状態となる。すなわち、本発明において「下層の培地に傾斜をつけてその上に上層が重層してなる」とは、このような状態を意味する。
本発明におけるグラジエント培地の上下二層の間の傾斜面角度は、培地液量と培地作製容器容量のバランスに合わせて傾斜角度を設定できる。好ましい具体例としては、培地液量が25mlで培地作製容器が10cm×10cm角型ディッシュの場合3.5°程度であるが、培地量と容器容量のバランスに加え、作製する培地の表面張力等にも合わせて傾斜角度を設定できる。
本発明におけるグラジエント培地の調製方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして調製することができる。
まず下層とする培地と、上層とする培地を調製する。そして、グラジエント培地中に設ける培地間の斜面の所望する傾斜角度に応じて、培地作製用容器(例えば、角型ディッシュ)を傾け、ここに下層とする培地を分注し、固化させる。このとき、培地作製用容器を傾けるには、培地作製用容器を、所望する傾斜角度に応じた斜面におくことで行ってもよい。次いで、傾けた培地作製用容器を元に戻し、平坦な面において水平状態として、固化した下層の上に、上層とする培地を分注し、固化させる。このようにして、グラジエント培地を調製することができる。すなわち、図1にあるように、培地作製用容器中の培地が、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる上層部分と、下層部分とに分けられ、上層部分の培地に含まれる成分と、下層部分の培地に含まれる成分とが徐々に変化する状態が形成され、全体として濃度勾配が形成される。
ここで使用する培養用容器は、真菌の酒類における混濁能を判別するための培養において培地に、エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を形成させることができ、培養された真菌の生育状況が観察しうる容器であれば特に制限はない。生育状況が確認し易い観点からは、容器に罫線などの目印となるものが記載されていてもよい。例えば、本発明において使用可能な培養用容器としては、例えば、角型シャーレ、角型ディッシュなどが挙げられる。
グラジエント培地を調製する際に、例えば、濃度勾配を形成させる方向の辺の長さを変更したり、容器を傾ける際の角度を調節したりすることで、濃度勾配の大きさを適宜変更することができる。例えば、濃度勾配を形成させる方向の辺の長さを長くすることで、より緩やかな濃度勾配を形成することができる。また容器を傾ける際の角度を大きくすることで、より急峻な濃度勾配を形成することができる。
よって本発明の別の好ましい態様によれば、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜があり、その上に上層が重層してなる、真菌用の固体培地が提供される。本発明の固体培地は、好ましくは、真菌の酒類における混濁能を判別するために用いられる。
また本発明のさらに別の好ましい態様によれば、本発明による真菌用の固体培地の製造方法が提供される。この方法は、培地作製用容器を傾けた状態で、下層とする培地を分注して固まらせた後、培地作製容器を水平状態として、上層とする培地を分注して固化させて、下層の上に上層を重層させることを含む。
本発明においては、「エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地」を使用する。すなわち、エタノールに関して濃度が異なる2種の培地、酒類に関して濃度が異なる2種の培地、および、エタノールと酒類の両方に関して濃度が異なる2種の培地が包含される。またここで、例えば、エタノールに関して濃度が異なる2種の培地という場合は、一方の培地はエタノールを含まない培地(すなわちエタノール0%の培地)であり、他方がエタノールを所望濃度(0%を超えた濃度)含む培地である場合も包含する意味で用いられる。また、酒類に関して濃度が異なる2種の培地という場合は、一方が酒類をベースとする培地とし、他方を酒類をベースとしない培地、すなわち、基本培地などの培地とする場合を包含し、また、2種の培地それぞれについて酒類を濃度を変えて含む場合も包含する。
本発明における「エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地」の一方を「第一の培地」とし、他方を「第二の培地」として以下、さらに説明する。
本発明において固体培地の二層について、どちらの層を第一の培地とし、他方を第二の培地とするかは特に制限はなく、いずれであっても良い。したがって、例えば、上層として第一の培地を使用し、下層として第二の培地を使用しても良いし、その逆に、上層として第二の培地を使用し、下層として第一の培地を使用しても良い。以下において説明する第一の培地と第二の培地の場合には、好ましくは、上層として第一の培地を使用し、下層として第二の培地を使用する。
本発明の方法においては「培地」としては、固体培地が使用される。このため培地には、寒天、アガロース、ジェランガムなどの固化剤が含まれる。本発明においては固化剤としては、好ましくは寒天が使用される。使用する固化剤の量は、一般的な固体培地を調製する際に用いられる量である。
本発明において「培地」には、特に言及が無い限り、真菌用基本培地を使用する。真菌用基本培地とは、真菌の培養に用いられる公知の培地であり、通常、真菌の維持・増殖に必要とされる栄養素が含まれる。したがって本発明において培地として使用する場合には、通常、固化剤を含む真菌用基本培地を用いる。本発明においては、真菌基本培地として、好ましくは、麦芽寒天培地を使用する。
また本発明においては、培地に酒類を加える場合には、培地に、真菌用基本培地を使用するか部分的に使用してそこに酒類を添加してもよいが、典型的には、真菌用基本培地は使用せずに、代わりに酒類をベースとした構成の培地を用いる。ここで、酒類をベースとした培地とは、用意した酒類について、必要に応じて適宜ガス抜き処理などの前処理をした後、ここにそのまま寒天などの固化剤を加えたり、または酒類を適宜水などで希釈した後に固化剤を加えたりした後、滅菌し固化させることにより調製することができる。
本発明の好ましい態様によれば、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地のうち、いずれか一方の培地が、酒類をベースとする培地である。この場合、他方の培地は、酒類は含まない、真菌用基本培地であることが好ましい。酒類は、発酵という工程を経て造られることから、通常、真菌用基本培地の成分に比べると栄養成分が大幅に少ないことが多い。このため、一方の培地では、真菌用基本培地は含まず酒類を含む一方、他方の培地では酒類は含まずに真菌用基本培地とすることで、固体培地(グラジエント培地)上に、真菌用基本培地と酒類とによる濃度勾配が生じる結果、栄養成分の十分な状態から貧栄養の状態まで変化する濃度勾配をつくりだすことができる。
本発明の好ましい態様によれば、第二の培地のエタノール濃度は、第一の培地のエタノール濃度以上に設定する。第一の培地と第二の培地とで濃度差を生じさせることにより、固体培地上に濃度勾配を有利に生じさせることができる。
本発明のより好ましい態様によれば、第一の培地は、エタノールを含む真菌用基本培地であり、かつ、第二の培地は、エタノールを含む酒類をベースとした培地または真菌用基本培地である。なおここで、エタノールを0%含む、という表現は、エタノールを含まないという意味と同義である。
さらに好ましくは、第一の培地は、エタノールを0〜15%含み、かつ、第二の培地は、エタノールを5〜30%含む。さらにより好ましくは、第一の培地は、エタノールを0〜10%含み、かつ、第二の培地は、エタノールを10〜20%含む。第一の培地のエタノール濃度及び第二の培地のエタノール濃度は、培地の種類や酒類の液性に応じ、当業者であれば上記範囲内で適宜設定が可能である。
ここで、より好ましくは、第二の培地は、酒類を希釈せずに、固化剤を加えたものからなる。
第二の培地が真菌用基本培地である場合、好ましくは第一の培地はエタノールを0%〜12%(より好ましくは0〜10%)含み、第二の培地はエタノールを10%より大きく20%以下含む。このとき、より好ましくは、第一の培地がエタノールを10〜12%(好ましくは10%)含む場合には、第二の培地はエタノールを20%未満含み、あるいは、第一の培地がエタノールを10%未満含む場合には、第二の培地はエタノールを10%より高く20%以下含む。さらにより好ましくは、第一の培地は0〜5%のエタノールを含み、第二の培地はエタノールを15%より高く20%以下含む。
第二の培地が酒類をベースとした培地である場合、好ましくは第一の培地はエタノールを0〜12%(より好ましくは0〜10%)を含み、第二の培地はエタノールを10〜20%含む。このとき、より好ましくは、第一の培地がエタノールを5〜10%含む場合には、第二の培地はエタノールを20%未満含み、第一の培地のエタノールが5%未満である場合には、第二の培地はエタノールを10%〜20%含む。さらに好ましくは、第一の培地がエタノールを10%未満含む場合には、第二の培地はエタノール濃度を10%より大きくかつ20%以下もしくは20%未満含む。
前記したように、本発明による真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法では、グラジエント培地上で、被検体の真菌を嫌気培養し、培養結果から真菌の混濁能を判定する。
ここで、被検体とする真菌は、混濁能の有無の判定を希望する真菌であり、必要により、麦芽寒天培地などの真菌用培地を使用して、予め前培養しておいてもよい。本発明では被検体の真菌を、グラジエント培地上に、接種や塗沫し、それを嫌気培養する。
嫌気培養は、慣用の嫌気培養用の装置、器具などを使用することで適宜行うことができる。例えば、嫌気パック、嫌気パウチ、嫌気ジャー、嫌気インキュベーター、嫌気チャンバー、嫌気グローブボックスなどが使用できる。
培養条件は、通常の真菌の培養条件に従って、温度、湿度等を設定することができる。例えば、温度は室温、例えば25℃程度とすることができる。
培養期間は、判定方法に用いる固体培地の大きさ、真菌のそこへの塗沫量、真菌の種類等に応じて、当業者であれば適宜設定することができる。迅速に判定するという観点からは、例えば、培養期間は4〜14日間程度、あるいは、10日間程度などであることができる。
本発明の判定方法においては、嫌気培養の後、培養結果から真菌の混濁能を評価し、判定する。具体的には例えば、対照培地で培養したものと、本発明の方法に従う固体培地を使用して培養したものとを、生育状況や、コロニー形成などの観点で比較し、濃度勾配での濃度の比較的濃い条件であっても、真菌が盛んに生育したり、維持されていたりする場合には、その条件で、真菌は死滅したり、生育が抑制されたりしないことから、耐性があるといえ、その真菌は、混濁する可能性があると評価しうる。
また、本発明の判定方法によれば、生育可能であった距離によって混濁能の強度の程度を判定することができる。具体的には例えば、混濁能の有無を区別するために、基準となるラインを設定する。このラインは、目的とする酒類における混濁能が既知である混濁能を有する株と有さない株とを用いて評価をすることで、設定しても良い。生育できた距離がこの基準となるラインよりも短かった場合には、混濁能を有する可能性が低いと判定し、基準となるラインを越えて生育した場合には、混濁能を有する可能性があると判定することができる。
ビール同士など、液性の近いものについては、あるビールを用いたグラジエント培地を用い、混濁能判定ラインの設定を変えることによって(例えば、Aというビールを用いてラインを“3”と設定した場合、Aよりも微生物耐性が低いビールの混濁能ではラインを“1や2”、Aよりも微生物耐性が高いビールの混濁能ではラインを“4や5”などと変えることによって)、異なる条件や異なる酒類における混濁能を推測するような使い方もできる。
酒類の中でも、ビールに対してチューハイ、カクテルや果実酒のように液性の大きく異なるものについては、当該酒類を用いてグラジエント培地を作製して評価する方法が好ましい。すなわち、本発明による判定方法は、このようなビール以外の酒類についても好ましく使用することができる。
本発明の別の態様によれば、酒類において混濁能のある真菌のスクリーニング法が提供される。この方法は、本発明による真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法に準じて実施することができる。
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1: ビールにおける混濁能の判定
(1) 培地の調製
麦芽寒天培地(日水製薬株式会社製)を121℃15分間高圧蒸気滅菌した。エタノール(以下において「EtOH」ということがある)を加える場合は、滅菌後60℃程度まで温度が下がった後に添加し混合した。
なお加えるエタノールの濃度は各試験の所定の条件に従った。
ビールとしては、キリンビール株式会社製の市販ビール(以下において「当社ビール」という。Alc.5%、OE11、pH4.2、BU20)を使用した。
なおここで「Alc.」はアルコール濃度を意味する。また、「OE」はオリジナルエキス濃度を意味し、BCOJビール分析法(ビール酒造組合、8.3.6、8.4.3および8.5)に準じて測定した。測定はアルコライザー(アントンパール社製)を用いて実施した。また、「BU」は苦味価を意味し、ガス抜き・消泡した試料に対して酸性条件下のイソオクタンで振盪・抽出を行い、波長275nmにおける吸光度(A275)を測定し、A275×50の値を苦味価(BU)とした。
ビールを培地の代わりに使用する際は、まずスターラーで2時間程度攪拌してガス抜きをした。その後、1mol/L NaOHを用いてpHを4.7に調整し、寒天2%を加え、121℃15分間高圧蒸気滅菌した。滅菌後、60℃程度まで温度が下がった後にEtOHを加え混合した。
なお加えるエタノールの濃度は各試験の所定の条件に従った。
2層構造の培地(グラジエント培地)は角型ペトリディッシュ(grid付き、100mm×100mm×15mm)を用いて作製した。斜面(傾斜角度3.5°とした)にディッシュを置き、下層の培地25mlを注ぎ入れ、固めた。下層が固化した後、表面を乾燥させ、上層の培地25mlを静かに注ぎ入れて固めた。これを試験培地とした。
対照の培地は上下層ともに麦芽寒天培地を用い、試験培地と同様に作製した。
(2)試験方法
麦芽寒天培地を用いて、25℃2日間前培養した各真菌の菌体を、上記のグラジエント培地(試験培地)に塗抹した。具体的には、ディッシュのマス目の列それぞれに試験する菌を双方向(1→6、6→1)に塗抹した(図2参照)。なお、第二の培地の濃度勾配が小さい側を1、大きい側を6とした。
その後、嫌気パウチし、25℃10日間嫌気培養した。
対照培地は試験培地と同様に塗抹し、25℃2〜10日間好気培養した。
培養後、対照培地と生育状況を比較し、試験培地にてコロニーが何マス目まで形成されたか目視で確認した。すなわち、エタノールおよびビールの濃度勾配のうち、濃度が濃く、その影響が小さいものから大きくなるにつれて、ディッシュのマス目の列に「1」から順に「6」まで数字がふられていることから、どこまで生育したかを、このマス目にふられた数で確認した。具体的には、第二の培地の濃度が小さい側を1、大きい側を6とする場合には、これら数値「1」〜「6」について、
・数値「4〜6」は混濁能を有する可能性がある、
・数値「2〜3」は混濁させる可能性が低い、および、
・数値「0〜1」は混濁能なし、
と分類して判定することが可能となる。混濁能の有無のみを区別するにあたっては、生育が3以下であれば混濁能を有する可能性が低いとし、生育が4以上であれば、混濁能を有する可能性があるとした。
生育状況の結果は、下記の表にそれぞれまとめた。
・試験1−1: ビール混濁能のある真菌を用いた試験
被検体の真菌として、ビール混濁能のあることが既に判明している真菌株(混濁能+株)8株を用いて、上記実施例1の方法に従って、試験を行った。
試験で用いた固体培地(グラジエント培地)の構成としては、上層に麦芽寒天培地を使用し、エタノール濃度を下記表にあるようにそれぞれ設定した。また下層には、麦芽寒天培地を使用したもの(表中、「M」で表記)と、当社ビールをベースとした培地(表中、「B」で表記)をそれぞれ使用し、これら各層に含まれるエタノール濃度については、下記表にあるようにそれぞれ設定した。なお、ここで用いたビールはAlc.5%、OE11、pH4.2、BU20であった。
例えば、下記表において、「上層M5%」の列において「下層B」でその下段で「15%」となっている列は、上層がエタノール濃度5%の麦芽寒天培地であり、下層がアルコール濃度15%のビールをベースとする培地としたグラジエント培地を意味する。なお、ビールをベースとする培地については、ビールのアルコール分を含めてその全体のエタノール濃度が示されている。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
表中、「判定成功率」は、試験実施数に対して正しく混濁能を判定できた率(%)で示した。混濁能のある株については、見落としがないことが重要であるため、判定成功率の評価としては、判定率100%を○、100%未満は×とした。
なお、表中、「KBLS」はキリンビール社保有株、「DSM」および「ATCC」は公共の微生物菌株バンクから入手可能な株を意味する。
なお、一部において弱い生育が認められる場合もあったことから、表中ではそれを、数字の後ろにwをつけて示した(例えば、6まで弱く生育したものは「6w」とした)。
結果から、4〜6にはっきりと生育が確認できたものと、4〜6に弱い生育が確認されたものを合わせると、ビール混濁能+の株と高い確率で一致した。
・試験1−2: ビール混濁能のない真菌を用いた試験
被検体の真菌として、ビール混濁能がないことが既に判明している真菌株(混濁能−株)11株を用いて、上記実施例1の方法に従って、試験を行った。
試験で用いた固体培地(グラジエント培地)の構成としては、上層に麦芽寒天培地を使用し、エタノール濃度を下記表にあるようにそれぞれ設定した。表中の表記は、前記試験1−1におけるものと同様である。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
表中、「判定成功率」は、試験実施数に対して正しく混濁能を判定できた率(%)で示した。混濁能なしの株については、本来混濁能がないものをありと判定してしまったとしても、判定成功率が70%以上であれば大幅な省力化につながるため十分に有用であり○とした。逆に判定成功率が30%未満の場合は省力化への貢献が低いと考え、×とした(100%〜70%○、70〜30%△、30%未満×)。
なお表中、「KBLS」はキリンビール社保有株、「NBRC」は公共の微生物菌株バンクから入手可能な株を意味する。
・試験1−1および試験1−2のまとめ
上記の試験1−1と試験1−2より得られた判定成功率(%)の結果を、下記の基準で評価した。
<混濁能+株の評価基準>
○: 混濁能+株を正しく判定できたもの(100%)
×: 混濁能+株の誤判定があったもの
<混濁能−株の評価基準>
○: 混濁能−株の判定成功率が特に良好(70%以上)であったもの
△: 判定成功率が良好(30〜70%)であったもの
×: 混濁能−株の判定成功率が低かった(30%未満)もの
結果は下記の通りとなった。
さらにこれら結果について、下記にしたがって総合的な評価を行った。
<総合評価基準>
○: 混濁能+株、−株ともに〇であったもの
△: 混濁能+株、−株のいずれかが△であったもの
×: 混濁能+株、−株のいずれかが×であったもの
結果は下記の通りとなった。
・試験1−3: 上下層を反転させた試験(ビール混濁能+株を用いた試験)
グラジエント培地の上下層を反転させて試験を行った以外は、前記した試験1−1と同様にして試験を行った。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
なお、表中、例えば「M10%」とあるのは、その層が麦芽寒天培地(M)を使用し、そのエタノール濃度が10%であること意味し、また「B15%」とあるのは、その層がビールをベースとする培地(B)を使用し、そのエタノール濃度が15%であることを意味する。
結果から、上下層を入れ替えても、入れ替える前の場合と同様の機能を保つことが判明し、判定も良好に行うことができた。
・試験1−4: 上下層を反転させた試験(ビール混濁能−株を用いた試験)
グラジエント培地の上下層を反転させて試験を行った以外は、前記した試験1−2と同様にして試験を行った。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
結果から、上下層を入れ替えても、入れ替える前の場合と同様の機能を保つことが判明し、判定も良好に行うことができた。
・試験1−5: ビールの種類を変えて行った試験(ビール混濁能+株および同−株を用いた試験)
ビールとして、A社製の市販ビール(以下において「A社ビール」という。Alc.5%、OE11、pH4.2、BU19)、B社製の市販ビール(以下において「B社ビール」という。Alc.5%、OE12、pH4.5、BU28)、およびC社製の市販ビール(以下において「C社ビール」という。Alc.5%、OE13、pH4.5、BU28)を使用した以外は、上記の試験1−1および試験1−2と同様にして試験を行った。
なお、オリジナルエキス濃度(OE)はBCOJビール分析法(ビール酒造組合、8.3.6、8.4.3および8.5)に準じて測定した。測定はアルコライザー(アントンパール社製))を用いて実施した。また、ガス抜き・消泡した試料に対して酸性条件下のイソオクタンで振盪・抽出を行い、波長275nmにおける吸光度(A275)を測定し、A275×50の値を苦味価(BU)とした。
得られた結果、特に判定成功率について、試験1−3に従ってまとめた結果は下記の通りであり、良好に判定できた。
実施例2: ビール以外の酒類における混濁能の判定
・試験2−1: RTDにおける混濁能判定(1)
ビールの代わりに、ビール以外の酒類としてRTD(オレンジ果汁入りチューハイ、Alc.5.0%、pH4.1)を使用した以外は、上記の試験1−1および試験1−2と同様にして試験を行った。なお混濁能の有無は別途当該RTDへの植菌試験(培養期間は60日間)を行い、グラジエント培地の結果と比較して判定成功率を算出した。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
なお、表中、例えば「M0OR20」とあるのは、上層が麦芽寒天培地(M)を使用し、そのエタノール濃度が0%であること意味し、下層がオレンジ果汁入りチューハイをベースとする培地(OR)を使用し、そのエタノール濃度が20%であることを意味する。同様に、「M0B20」とあるのは、上層が麦芽寒天培地(M)を使用し、そのエタノール濃度が0%であること意味し、下層がビールをベースとする培地(B)を使用し、そのエタノール濃度が20%であることを意味する。植菌試験の結果は、表中「RTDでの混濁」に示す。
結果から、当該RTDを用いて作製したグラジエント培地(M0OR20)は麦芽寒天培地のみのグラジエント培地(M0M20)やビール用のグラジエント培地(M0B20)よりも、当該RTD中での混濁能を良好に判定できた。
このように、ビール以外の酒類についても、当該酒類を用いたグラジエント培地を用いることで、目的とする酒類中の混濁能を評価できることが示された。
・試験2−2: ワインにおける混濁能判定(2)
ビールの代わりに、ビール以外の酒類としてワイン(赤ワイン、Alc.11%、pH3.1)を使用した以外は、上記の試験1−1および試験1−2と同様にして試験を行った。なお、混濁能の有無は別途当該ワインへの植菌試験(培養期間は60日間)を行い、グラジエント培地の結果と比較して判定成功率を算出した。
結果は下記の表に示されるとおりであった。
なお、表中、例えば「M10W15」とあるのは、上層が麦芽寒天培地(M)を使用し、そのエタノール濃度が10%であること意味し、下層がワインをベースとする培地(W)を使用し、そのエタノール濃度が15%であることを意味する。植菌試験の結果は、表中「ワインでの混濁」に示す。
結果から、当該ワインを用いて作製したグラジエント培地(M10W15)は麦芽寒天培地のみのグラジエント培地(M10M15)やビール用のグラジエント培地(M10B15)よりも、当該ワイン中での混濁能を良好に判定できた。
このように、ビール以外の酒類についても、当該酒類を用いたグラジエント培地を用いることで、目的とする酒類中の混濁能を評価できることが示された。

Claims (9)

  1. 真菌の酒類における混濁能の簡易判定方法であって、
    エタノールおよび/または酒類の濃度勾配を設けた固体培地上で、被検体の真菌を嫌気培養し、培養結果から真菌の酒類における混濁能を判定することを含んでなる、方法。
  2. 固体培地が、エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜をつけてその上に上層が重層してなるものである、請求項1に記載の方法。
  3. エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地のうち、
    第一の培地が、エタノールを含む、真菌用基本培地であり、かつ
    第二の培地が、エタノールを含む、酒類をベースとする培地又は真菌用基本培地であって、
    第二の培地のエタノール濃度が、第一の培地のエタノール濃度以上である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 第一の培地が、エタノールを0〜10%含み、かつ
    第二の培地が、エタノールを10〜20%含む、請求項3に記載の方法。
  5. 酒類がビールテイスト飲料、果実酒、チューハイ、又はカクテルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地の層からなり、かつ、下層の培地に傾斜があり、その上に上層が重層してなる、真菌用の固体培地。
  7. エタノールおよび/または酒類の濃度の異なる2種の培地のうち、
    第一の培地が、エタノールを含む、真菌用基本培地であり、かつ
    第二の培地が、エタノールを含む、酒類又は真菌用基本培地をベースとする培地であって、第二の培地のエタノール濃度が、第一の培地のエタノール濃度以上である、請求項6に記載の固体培地。
  8. 第一の培地が、エタノールを0〜10%含み、かつ
    第二の培地が、エタノールを10〜20%含む、請求項6または7に記載の固体培地。
  9. 真菌の酒類における混濁能を判別するために用いられる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の固体培地。
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