JP2017534054A - 抗原提示を検出する方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI又はII等の抗原提示分子を介した抗原提示を検出する方法に関する。本発明では、抗原エピトープに特異的な第1の結合物質及び抗原提示分子に特異的な第2の結合物質を採用する。本発明の結合物質は、抗原提示の際に検出可能なシグナルを誘発する近接プローブに連結される。本発明の方法はMHCを介してin vitroで、また組織サンプルにおいてin situで抗原提示の検出を可能とする。このため本発明の方法は、例えば感染性疾患、免疫障害、特に自己免疫疾患、及び癌等の増殖性障害のような様々な疾患の診断において新たな診断ツールとして適用される。【選択図】なし

Description

本発明は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI又はII等の抗原提示分子を介した抗原提示を検出する方法に関する。本発明では、抗原エピトープに特異的な第1の結合物質及び抗原提示分子に特異的な第2の結合物質を採用する。本発明の結合物質は、抗原提示の際に検出可能なシグナルを誘発する近接プローブに連結される。本発明の方法はMHCを介してin vitroで、また組織サンプルにおいてin situで抗原提示の検出を可能とする。このため本発明の方法は、例えば感染性疾患、免疫障害、特に自己免疫疾患、及び癌等の増殖性障害のような様々な疾患の診断において新たな診断ツールとして適用される。
MHC分子はクラスI分子又はクラスII分子のいずれかとして分類される。クラスII MHC分子は主にTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ等のような免疫応答の開始及び持続に関与する細胞上で発現される。クラスII MHC分子はヘルパーTリンパ球によって認識され、提示される特定の免疫原性ペプチドに対するヘルパーTリンパ球の増殖及び免疫応答の増幅を誘導する。クラスI MHC分子はほぼ全ての有核細胞上で発現され、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、これにより続いて抗原担持細胞が破壊される。CTLは腫瘍拒絶において、またウイルス感染と闘う上で特に重要である。
CTLは無傷外来抗原自体ではなく、MHCクラスI分子に結合したペプチドフラグメントの形態の抗原を認識する。抗原は通常は細胞によって内因性に合成され、細胞質内でタンパク質抗原の一部が小ペプチドフラグメントへと分解されるはずである。これらの小ペプチドの一部がプレゴルジ区画(pre-Golgi compartment)へ移行し、クラスI重鎖と相互作用して、適当なフォールディング及びサブユニットβ2ミクログロブリンとの会合が促進される。ペプチド-MHCクラスI複合体は次に、発現及び特異的CTLによる潜在的認識のために細胞表面へと送られる。MHCクラスII分子は通常は樹状細胞、単核食細胞、一部の内皮細胞、胸腺上皮細胞及びB細胞等の抗原提示細胞上にのみ見られる分子のファミリーである。クラスIIペプチドによって提示される抗原は細胞外タンパク質に由来する(クラスIのように細胞質性でない)。したがって、抗原提示のMHCクラスII依存性経路はエンドサイトーシス経路又は外因性経路と呼ばれる。MHCクラスII分子のローディングは食作用によって行われる。細胞外タンパク質はエンドサイトーシスされ(endocytosed)、リソソームにおいて消化され、生じるエピトープペプチドフラグメントがMHCクラスII分子上にローディングされた後、それらが細胞表面へと移動する。
ペプチド-MHC結合は概して免疫活性及び/又は不活性に関し、それにより炎症、アレルギー、自己免疫疾患、様々なタイプの癌、及び感染(ウイルス又は細菌による)を含むが、これらに限定されない広範な病態及び疾患に関わっている。癌等の免疫抑制と関連する疾患を有する患者は、免疫抑制を解消し及び/又は腫瘍特異的免疫応答を向上させる戦略から恩恵を受ける可能性がある。対照的に、炎症、自己免疫、アレルギー及び喘息等の免疫活性の増大と関連する疾患を有する患者は、免疫応答を下方調節する戦略から恩恵を受ける可能性がある。したがって、このことはMHC結合を介した免疫反応を誘発するとみられるペプチド抗原が実際にin situ又はin vivoでMHCを介して提示され、ひいては免疫学的に活性であり、免疫系を活性化する可能性があるか否かをモニタリングする上で問題となる。
能動癌免疫療法は、例えば抗原特異的ワクチン接種により腫瘍に対する細胞性免疫応答を誘導するために患者の免疫系を利用するものである。黒色腫、腎細胞癌、非小細胞肺癌、グリオーマ及び他の腫瘍における有望な戦略は、DCをex vivoでローディングするための自己腫瘍溶解物若しくは特異的タンパク質を用いたDCワクチン接種、ペプチドワクチン接種、又は腫瘍特異的T細胞の養子移入を含む。標的としての腫瘍関連又は腫瘍特異的抗原(TAA)の使用は、寛容を克服し、健常組織の完全性を維持するための免疫応答の効果的な誘導という点で全腫瘍プロテオームよりも優れていると考えられる。特異的腫瘍抗原に対するワクチン接種は、グリオーマを含む様々な腫瘍体(tumour entities)の療法において有望なツールであることが証明されている。
例えば、原発性グリオーマ及び他の腫瘍体の30 %で発現される構成的に活性な形態であるEGFR変異体III(EGFRvIII)等の腫瘍特異的新抗原に対するペプチドワクチンが、膠芽腫と新たに診断された患者における放射線化学療法の補助として第三相臨床試験において現在試験されている。しかしながら、癌精巣抗原New York Esophageal 1(NY-ESO-1)等の古典的腫瘍関連抗原は、抗原特異的T細胞応答を誘導するためにプロテアソームプロセシング及びMHC分子上での提示を必要とする細胞内タンパク質である。
推定又は同定されたエピトープペプチドのMHC結合を評定するために、NetMHC又はSYFPEITHI等のコンピューターによる結合アルゴリズムが確立されている。これらの分析は後続のin vitroクラスI及びクラスII結合アッセイ、並びに細胞結合研究、例えばT2結合アッセイの指針となり得る。MHC上に提示される新規のエピトープは、in vitro系又は腫瘍組織に由来するMHC-ペプチド複合体からペプチドを溶出するHLA-リガンドーム(ligandome)分析によって同定することができる。これらの分析は、様々な癌を有する患者において現在臨床試験中であるマルチペプチドワクチン(例えばIMA 950、NCT01920191)の開発に首尾よく適用されている。
これらの方法は全て、主としてMHCクラスI結合研究のために開発され、HLA型について制限的であるという点で限定される。現在の結合アルゴリズムはMHCクラスIIについての信頼性が限定されており、クラスIIペプチド複合体は幾らか不安定であり、ひいては分析が困難である。一部の試験は非常に高コストであり、時間がかかり、又は単離したばかりの腫瘍組織を必要とする。さらに、現在の結合アルゴリズムはプロセシング及びMHCクラスIIとペプチドとの相互作用がinsituで生じる細胞状況に関する情報を殆ど提供することができない。
背景技術における上記の欠点に鑑みると、MHCへの結合による抗原エピトープの提示を細胞状況で容易にモニタリングすることができないことはこれまでに解決されていない課題である。所与のエピトープが実際に提示され、免疫反応を媒介する能力を保有するか否かの検証は依然として困難である。このため、MHC複合体等のそれらの抗原提示分子への抗原エピトープの結合を、好ましくは細胞上で直接insituで検出するアプローチの改善が当該技術分野で必要とされている。
上記の課題は、第1の態様において、抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法であって、該方法が、
(a)第1の結合物質及び第2の結合物質を準備することであって、第1の結合物質がエピトープに特異的に結合することが可能であり、第2の結合物質が抗原提示分子に特異的に結合することが可能であり、第1の結合物質及び第2の結合物質が、第1の結合物質と第2の結合物質との空間的近接により検出可能なシグナルが誘導されることを特徴とすることと、
(b)抗原エピトープを提示するとみられる抗原提示分子を準備することと、
(c)抗原エピトープを準備することと、
(d)抗原エピトープ、抗原提示分子、第1の結合物質及び第2の結合物質を接触させることと、
を含み、検出可能なシグナルの存在が、抗原提示分子によるエピトープの抗原提示の指標となる、方法によって解決される。
「結合物質」という用語は本明細書で使用される場合、標的分子に特異的に結合することが可能な任意の分子を指し、好ましくは、標的分子は本発明のエピトープ又は抗原提示分子である。結合物質はアプタマー、抗体、受容体分子、リガンド又は分子インプリントポリマーから選択することができる。さらに、「結合物質」という用語は、標的に特異的に結合する能力を維持する限りにおいて上述の結合物質の全てのフラグメント、多量体又は誘導体を含む。「第1の結合物質」、「第2の結合物質」、「第3の結合物質」又は「第4の結合物質」という用語は、互いに独立して上述の分子のいずれかから選択され得る。しかしながら最も好ましくは、第1〜第4の結合物質は本明細書に開示される発明において重複しない特異性を有する。このため、本発明の結合物質は各々、結合する特異的な標的を有し、その特異的標的は他の本発明の結合物質のいずれとも結合しない。
「結合することが可能な」という用語は本明細書で使用される場合、結合物質が或る特定の条件下でその標的に特異的に結合することが可能であることを意味するものとする。これらの条件は使用される結合物質の種類に応じて変化し得る。
本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」及び「特異的に結合する」等の用語は、結合物質としての抗体との関連で使用される場合に所定の抗原上のエピトープへの抗体の結合を指す。通例、抗体はBIACORE 2000機器において組み換え抗原/エピトープを分析物として、抗体をリガンドとして用いた表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合に、およそ10-7 M未満、例えばおよそ10-8 M、10-9 M若しくは10-10 M未満、又は更に低い平衡解離定数(KD)で結合し、所定の抗原又は近縁抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で所定の抗原に結合する。
本発明における「空間的近接」という用語は、2つの本発明の結合分子間の空間的(三次元)近接距離を指すものとする。本発明の基本概念は、抗原提示分子を介したエピトープ提示がエピトープと抗原提示分子との直接結合を必要とするというものである。したがって、エピトープが抗原提示分子によって提示される場合、その両方が互いに密接に空間的に近接し、また直接接触することが好ましい。この場合、本発明の第1の結合物質及び第2の結合物質はそれらの標的に結合する場合、同様に密接に空間的に近接する。そして、特に2つの本発明の結合物質の2つの標的が共に1つの複合体となるか、又は少なくとも空間的に非常に密接である場合に、2つの本発明の結合物質の「空間的近接」により本発明による検出可能なシグナルが誘導される。本発明の或る特定の実施の形態では、本発明の第1の結合物質及び第2の結合物質と特異的に結合する二次結合物質を使用する。この実施の形態では、本発明の第1の結合物質及び第2の結合物質の空間的近接は、それらがその標的に結合する場合に本発明の第3の結合物質及び第4の結合物質の空間的近接をもたらす。好ましくは、本発明の結合物質の2つの標的は少なくとも200 nm以下、好ましくは100 nm以下、より好ましくは80 nm以下、更により好ましくは50 nm以下、最も好ましくは30 nm〜40 nm以下の距離にあるものとする。空間的近接は、好ましい実施の形態では本発明の結合物質の標的上の結合部位の距離を指す。
また本発明の更なる実施の形態では、第1の結合物質と第2の結合物質との空間的近接は検出可能なシグナルを直接的又は間接的に誘導する。この点で、「直接的に」という用語は、第1の結合物質及び第2の結合物質が第1の結合物質及び第2の結合物質の空間的近接の際に検出可能なシグナルを生じる手段を含むことを意味するものとする。これに関連して、「間接的に」という用語はシグナルが第1の結合物質及び第2の結合物質の空間的近接に依存する条件で、更なる方法工程の実行時に最終的に検出可能なシグナルをもたらす第1の結合物質及び第2の結合物質を指す。
本発明の本態様の好ましい実施の形態において、第1の結合物質が第1の近接プローブを含み、第2の結合物質が第2の近接プローブを含み、第1の近接プローブと第2の近接プローブとの空間的近接により検出可能なシグナルが誘導される。本態様では、本発明による「近接プローブ」が結合物質に例えば共有結合的に付着している。この場合、本発明の「近接プローブ」は上記に規定される空間的近接に感受性を有し、空間的に近接する場合に検出可能なシグナルを生じることができるように反応する。本発明の近接プローブは、空間的近接に感受性を有する当該技術分野で既知の任意の手段から選択され得る。
本発明の代替的な実施の形態は、第1の結合物質に特異的に結合することが可能な第3の結合物質を準備することと、第2の結合物質に特異的に結合することが可能な第4の結合物質を準備することとを更に含み、工程(d)が抗原エピトープ、抗原提示分子、第1の結合物質、第2の結合物質、第3の結合物質及び第4の結合物質を接触させることを含む上記の方法に関する。二次結合物質の使用は好ましくはシグナル増幅によるものであり得る。
第3の結合物質及び第4の結合物質の使用の代替的な実施の形態において、第3の結合物質が第1の近接プローブを含み、第4の結合物質が第2の近接プローブを含み、第1の近接プローブと第2の近接プローブとの空間的近接により検出可能なシグナルが誘導されることが好ましい場合がある。この際に、近接プローブは第1の結合物質及び第2の結合物質に付着していない。
本発明の「結合物質」は、標的への特異的結合(binding)を可能にする任意の分子から選択され得る。本発明の結合物質はペプチド又は核酸アプタマー、抗体、又は抗体の抗原結合フラグメントであるのが好ましい。最も好ましくは、本発明の結合物質は抗体又はその誘導体若しくはフラグメントである。抗体特異性を依然として維持する抗体の誘導体又はフラグメントは当業者に既知である。本発明の抗体は好ましくはモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、好ましくはモノクローナル抗体、又はそれらの誘導体若しくはフラグメントである。
第3の結合物質及び第4の結合物質(抗体)を必要とする実施の形態において上記の方法を用いる場合、第1の結合物質及び第2の結合物質(抗体)が異なる種で生じたものであることが好ましい場合がある。例えば、本発明の第1の結合物質及び第2の結合物質はマウス、ヤギ、ウサギ、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ及びヒト、又は抗原免疫化時に抗体を産生することが可能な任意の他の動物の抗体から選択され得る。この実施の形態により、第3の抗体及び第4の抗体を第1の結合物質及び第2の結合物質のそれぞれの抗体種に特異的な抗体とすることが可能となる。例えば第1の結合物質がラット抗体であり、第2の結合物質がウサギ抗体である場合、第3の結合物質は例示的なヤギ抗ラット抗体であり、第4の結合物質は例示的なヤギ抗ウサギ抗体である。理論的には、抗体種の全ての順列が本発明において可能である。
本発明において、「エピトープ」という用語は本明細書で使用される場合、ヌクレオチド、炭水化物、タンパク質若しくはペプチド、脂質、カプシドタンパク質、多糖、リポ多糖、糖脂質、糖タンパク質、及び/又は細胞の少なくとも一部を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は抗原、パラトープ結合部位、抗原決定基及び/又は決定基と区別なく使用することができる。本明細書で使用される場合、決定基という用語は文脈上他に指定のない限り、影響要素若しくは決定要素又は影響因子若しくは決定因子を含み得る。一態様では、「エピトープ」という用語はペプチド結合部位を含むが、これに限定されない。この際に、本発明のペプチドエピトープは100アミノ酸、好ましくは90アミノ酸、80アミノ酸、70アミノ酸、60アミノ酸、50アミノ酸、40アミノ酸、30アミノ酸、20アミノ酸、19アミノ酸、18アミノ酸、17アミノ酸、16アミノ酸、15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸の最大長を有するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。好ましくは、ペプチドは7〜14の最小長を有し、好ましくは8個、9個、10個、11個、12個、13個又は14個のアミノ酸を含む/からなる。
本発明の好ましい実施の形態では、本発明のエピトープはペプチドエピトープ、好ましくはMHCクラスI又はMHCクラスII、最も好ましくはMHCクラスIIペプチドエピトープである。MHCクラスIエピトープについては、ペプチドが5個〜20個のアミノ酸(例えば7個〜15個のアミノ酸、又は8個〜11個のアミノ酸(例えば8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長又は11アミノ酸長))を有するのが好ましい。本発明によるMHCクラスIIペプチドは好ましくは8アミノ酸〜100アミノ酸、好ましくは8アミノ酸〜30アミノ酸、最も好ましくは8アミノ酸〜16アミノ酸、すなわち8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸又は16アミノ酸の全長を有する。
本発明のエピトープが好ましくは疾患関連抗原に由来するエピトープ、好ましくは自己免疫障害等の免疫障害と関連するエピトープ、又は腫瘍関連抗原(TAA)、又はTAAに由来するエピトープであり、好ましくはTAAが癌突然変異抗原、癌生殖系列発現抗原、癌ウイルス抗原又は癌過剰発現抗原の群から選択される。かかるエピトープ(epitopes)の最も好ましい例は、本明細書に開示される発明の例示的な説明に使用されるエピトープである(下記の「実施例」を参照されたい)。したがって、エピトープはIDH1に由来することができ、IDH1R132H突然変異を含むか、又はエピトープはNY-ESOに由来する。これらの抗原エピトープが好ましいが、抗原エピトープは本発明の方法を限定するものではないと理解されるものとする。
この点で、或る特定の実施の形態では抗原提示分子がMHCクラスI若しくはMHCクラスII分子、又はMHC I若しくはMHCII分子を含む任意のタンパク質複合体、好ましくはMHCクラスII分子であることが好ましい。MHCのヒト変異体はヒト白血球抗原(HLA)複合体と表される。抗原提示分子は、本発明の好ましい実施の形態ではMHCクラスI又はII分子から選択される。しかしながら、特にそのタンパク質が抗原提示中に提示されるエピトープと密接に空間的に近接している場合に、MHCと同じ複合体中にあるか又は複合体の抗原提示機能と直接関連する任意のタンパク質を使用することも可能である。
本発明のこの好ましい実施の形態では、第1の結合物質は候補ペプチドエピトープと特異的に結合することが可能な抗体であり、第2の結合物質はMHC複合体と特異的に結合する抗体である。エピトープがMHCクラスIを介して提示される場合、上記MHC抗体はMHCクラスIに特異的であり、エピトープがMHCクラスIIを介して提示される場合、上記MHC抗体はMHCクラスIIに特異的である。かかる抗MHC抗体は当該技術分野で既知である。
本明細書に記載される発明に従うと、「検出可能なシグナル」は、直接観察によって又は機器によって知覚又は感知することが可能であり、試験サンプルにおけるエピトープ提示(エピトープ/抗原提示分子の相互作用又は結合)の存在に応じるレポーター系における変化又は特性の出現を指す。検出可能なシグナルの幾つかの例は可視若しくは赤外吸収、蛍光、リン光又は化学発光の変化である。検出可能なシグナルの他の例は、電気化学的特性の変化に関するものであり得る。光の放出が好ましい。検出可能なシグナルが近接ライゲーションアッセイ(PLA)によって生じるのが最も好ましい。
「近接ライゲーションアッセイ」又は「PLA」という用語は本明細書で使用される場合、分析物(「分析物」という用語は、好ましくは本明細書で上記に規定されるエピトープ及び抗原提示分子を指す)と、少なくとも2つの近接検出剤(proximity detection agents)とを接触させることを含むアッセイを指し、ここで第1の検出剤が第1の結合物質と第1の近接プローブとしての第1のオリゴヌクレオチド部分とを含み、第2のプローブが第2の結合物質と第2の近接プローブとしての第2のオリゴヌクレオチド部分とを含む。各々の検出剤のオリゴヌクレオチド部分は同じであっても又は異なっていてもよい。幾つかの実施の形態では、一連の近接検出剤の各検出剤のオリゴヌクレオチド部分は異なる配列を含む。幾つかの実施の形態では、分析物を一連の近接検出剤と接触させる。幾つかの実施の形態では、一連の近接検出剤は2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ以上の近接検出剤を含む。幾つかの実施の形態では、一連の近接検出剤は近接検出剤の対、すなわち「近接検出剤対」である。
付加的な一実施の形態では、PLAは2つの近接検出剤を含み、ここで第1の検出剤は第3の結合物質と第1の近接プローブとしての第1のオリゴヌクレオチド部分とを含み、第2のプローブは第4の結合物質と第2の近接プローブとしての第2のオリゴヌクレオチド部分とを含む。ここで、第3の結合物質は上記のような第1の結合物質と特異的に結合することが可能であり、第4の結合物質は第2の結合物質と特異的に結合することが可能である。
幾つかの実施の形態では、1つ又は複数の分析物と少なくとも2つの近接検出剤とを接触させた後、少なくとも2つの近接検出剤のオリゴヌクレオチド部分は互いに相互作用することが可能である。幾つかの実施の形態では、かかる相互作用は1つ又は複数の付加的なオリゴヌクレオチドによって媒介され得る。幾つかの実施の形態では、近接検出剤の各オリゴヌクレオチド部分の少なくとも一部が別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。例えば幾つかの実施の形態では、各々の近接検出剤のオリゴヌクレオチド部分の少なくとも一部にハイブリダイズすることによって少なくとも2つの近接検出剤間の相互作用を媒介する、少なくとも1つの付加的なオリゴヌクレオチドを添加する(本明細書で「スプリントオリゴヌクレオチド」と称される)。
幾つかの実施の形態では、少なくとも2つの近接検出剤のオリゴヌクレオチド部分は化学ライゲーションを起こすことが可能である。幾つかの実施の形態では、各々のオリゴヌクレオチド部分のライゲーション可能な末端は、各近接検出剤のオリゴヌクレオチド部分の少なくとも一部にハイブリダイズすることが可能なスプリントオリゴヌクレオチドによって結び付けられる。
少なくとも2つの近接検出剤のオリゴヌクレオチド部分の化学ライゲーションに続いて、ライゲートしたオリゴヌクレオチド部分は当該技術分野で既知の任意の方法によって検出することができる。このような幾つかの実施の形態では、ライゲートしたオリゴヌクレオチド部分は「標的核酸」と称される。ライゲートしたオリゴヌクレオチド部分(又は「標的核酸」)を検出する例示的な方法としては、直接検出、リアルタイムPCR(5'-ヌクレアーゼリアルタイムPCRを含むが、これに限定されない)、ローリングサークル増幅、ライゲーションとPCRとの組合せ、及び増幅に続く検出工程(例えば第2の増幅、直接検出、ライゲーション等)が挙げられるが、これらに限定されない。核酸を検出する非限定的な方法の例が本明細書に記載される。
例示的な近接検出アッセイは例えば米国特許第6,511,809号、米国特許出願公開第2002/0064779号、国際公開第2005/123963号、2010年7月8日付けで出願された米国仮特許出願第61/362,616号、及びGustafsdottir et al., Clin. Chem. 52: 1152-1160 (2006)に記載されている。
「定量的核酸検出アッセイ」という用語は本明細書で使用される場合、サンプル中の特定の核酸配列の量を定量化することが可能なアッセイを指す。非限定的な定量的核酸検出アッセイの例は本明細書に記載される。
本明細書で使用される場合、「検出プローブ」という用語は、増幅産物の検出を容易にする増幅反応に使用される分子を指す。例示的な増幅反応としては、定量的PCR、リアルタイムPCR及びエンドポイント分析増幅反応が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施の形態では、かかる検出プローブは標的核酸及び/又は対照核酸の増幅をモニタリングするために使用することができる。幾つかの実施の形態では、増幅反応中に存在する検出プローブは、時間に応じて生じるアンプリコン(複数の場合もある)の量のモニタリングに好適である。
幾つかの実施の形態では、検出プローブは「配列ベース」であり、増幅産物を配列特異的に検出することを意味する。非限定的な例としては、配列ベースの検出プローブは特異的な増幅産物にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドを含み得る。幾つかの実施の形態では、検出プローブは「配列非依存性」であり、増幅産物の配列にかかわらず増幅産物を検出することを意味する。
複数の検出プローブは「検出可能に異なる」ものであってもよく、少なくとも1つの検出法によって互いに区別可能であることを意味する。検出可能に異なる検出プローブとしては、異なる波長の光を放出する検出プローブ、異なる波長の光を吸収する検出プローブ、異なる波長の光を散乱させる検出プローブ、異なる蛍光減衰寿命を有する検出プローブ、異なるスペクトル特徴を有する検出プローブ、異なる放射性崩壊特性を有する検出プローブ、異なる電荷の検出プローブ及び異なるサイズの検出プローブが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施の形態では、検出プローブは蛍光シグナルを発する。
「検出可能な標識」という用語は本明細書で使用される場合、直接又は間接的に検出可能な部分を指す。幾つかの実施の形態では、非限定的な例として、検出可能な標識は例えばそのスペクトル特性のために直接検出可能であり得る。幾つかの実施の形態では、非限定的な例として、検出可能な標識は例えばその酵素活性のために間接的に検出可能であり得る。ここで酵素活性により直接検出可能なシグナルが生じる。かかる検出可能な標識としては、放射標識;顔料、染料及び他の色原体;スピン標識;蛍光標識(すなわちフルオロフォア、例えばクマリン、シアニン、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンザゾール、ボラポリアザインダセン(borapolyazaindacenes)、並びにフルオレセイン、ローダミン及びロドールを含むキサンテン);検出可能なシグナルが物質の化学修飾によって生成する化学発光物質;金属含有物質;酵素活性によりシグナルが生成する酵素(例えば、基質から検出可能な生成物が形成されることによる);別の分子に選択的に結合することができるハプテン(例えば抗体に結合する抗原;又はアビジン及びストレプトアビジンに結合するビオチン等)が挙げられるが、これらに限定されない。多くの検出可能な標識が当該技術分野で既知であり、その幾つかが例えば、Richard P. Haugland, Molecular Probes Handbook ofFluorescent Probes and Research Products(第9版、CD-ROM、2002年9月、上掲)に記載されている。幾つかの実施の形態では、検出可能な標識は発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光性染料、タンデム染料、粒子、ハプテン、酵素又は放射性同位体を含む。幾つかの実施の形態では、フルオロフォアはキサンテン、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン、ボラポリアザインダセン又はカルボピラニン(carbopyranine)である。幾つかの実施の形態では、酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はβ−ラクタマーゼである。幾つかの実施の形態では、粒子は半導体ナノ結晶である。
「エンドポイントポリメラーゼ連鎖反応」又は「エンドポイントPCR」は、PCR反応の進行中ではなく反応が完了した後に核酸標的配列の存在又は量を検出するポリメラーゼ連鎖反応法である。
「リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」又は「リアルタイムPCR」は、反応の進行中に核酸標的配列の存在又は量を検出するポリメラーゼ連鎖反応法である。幾つかの実施の形態では、反応組成物中に存在する1つ又は複数の検出プローブによって発せられるシグナルを、プライマー伸長産物の合成の指標としてPCR中の複数の時点でモニタリングする。幾つかの実施の形態では、PCR中の複数の時点で放出される蛍光を、プライマー伸長産物の合成の指標としてモニタリングする。幾つかの実施の形態では、シグナルをPCRの各サイクル中に検出する。
「多重増幅反応」は、2つ以上の標的核酸配列及び/又は対照核酸配列を同じ反応中に増幅する増幅反応である。「多重ポリメラーゼ連鎖反応」又は「多重PCR」は、2つ以上の標的核酸配列及び/又は対照核酸配列を同じ反応中に増幅するポリメラーゼ連鎖反応法である。
「一重(singleplex)増幅反応」は、1つの標的核酸配列又は対照核酸配列のみを反応中に増幅する増幅反応である。「一重ポリメラーゼ連鎖反応」又は「一重PCR」は、1つの標的核酸配列又は対照核酸配列を反応中に増幅するポリメラーゼ連鎖反応法である。
「閾値サイクル数(Threshold cycle)」又は「CT」は、定量的核酸検出アッセイにより観察されるシグナルが一定の閾値を超えるサイクル数として規定される。幾つかの実施の形態では、一定の閾値は標的核酸配列又は対照核酸配列を欠く反応中に観察されるシグナルの量として設定される。幾つかの実施の形態では、一定の閾値はバックグラウンドノイズシグナルを上回るレベルで設定される。例えば幾つかの実施の形態では、一定の閾値は、バックグラウンドノイズシグナルの二乗平均平方根とバックグラウンドノイズグナルとの合算の3倍以上に相当する値で設定される。幾つかの実施の形態では、観察されるシグナルは検出プローブからのものである。幾つかの実施の形態では、観察されるシグナルは蛍光標識からのものである。
「固体支持体」という用語は本明細書で使用される場合、液体と混合又は接触した後、液体から分離することができる任意の固体物質を指す。液体からの分離は、幾つかの実施の形態では遠心分離、磁石の使用、濾過、沈降、ピペット操作等を含み得る。非限定的な固体支持体の例としては、微小粒子(例えばポリマービーズ、金属粒子、磁性ビーズ等)、マイクロタイタープレート(例えば96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレート等)及びマイクロアレイチップが挙げられる。幾つかの実施の形態では、固体支持体は例えば、共有的分析物結合部分及び/又は非共有的分析物結合部分及び/又はオリゴヌクレオチド部分の結合を容易にするコーティングを含む。幾つかの実施の形態では、コーティングは結合対の第1の成員を含む。このような幾つかの実施の形態では、共有的分析物結合部分及び/又は非共有的分析物結合部分及び/又はオリゴヌクレオチド部分は、結合対の第2の成員を含む。
「固体支持体粒子」という用語は本明細書で使用される場合、固体支持体微小粒子を指す。非限定的な固体支持体粒子の例としては、ポリマービーズ、金属粒子、ガラスビーズ及び磁性ビーズが挙げられる。
本発明の幾つかの好ましい実施の形態は、工程(b)において抗原提示分子を生体細胞中、好ましくは樹状細胞、Bリンパ球又は腫瘍細胞から選択される抗原提示細胞等の生体細胞の表面上に準備することを含む。使用することができ、本発明による抗原提示分子を含む付加的な細胞はミクログリア細胞、内皮細胞、又は古典的単球、非古典的単球及び中間単球を含む単核食細胞等の単球である。
本明細書で使用される場合、「ミクログリア細胞」という用語は、活性化されて炎症性物質を放出する、中枢神経系に見られるマクロファージ様のグリア細胞を指し、単核食細胞及びマクロファージを含む。
本明細書で使用される場合、「単核食細胞」という用語は血液、並びに中枢神経系及び脳を含む体組織に見られる免疫細胞であり、例えばミクログリア細胞、単球(monocytes)、マクロファージ、組織球、樹状細胞、ミクログリアの前駆体細胞、単球の前駆体細胞、マクロファージの前駆体細胞、ミクログリア様細胞株、マクロファージ様細胞株又は細胞株を含む。
幾つかの実施の形態では、MHC等の抗原提示分子を含む本発明の細胞を細胞懸濁液、例えば現行の技術水準の細胞培養系中に準備する。かかる細胞は浮遊細胞であっても又は接着細胞であってもよい。本発明の細胞は組織サンプルの状況で準備することが更に好ましい。かかる組織サンプルは、本明細書に開示される方法又は生成物のいずれかによって治療可能又は診断可能な疾患に罹患した組織のものであり得る。「組織サンプル」という用語(「組織」という用語は「組織サンプル」という用語と区別なく使用される)は、個々に又は任意のマトリックスと複合して又は任意の化学物質を伴って1つ又は複数の細胞から構成される任意の物質を含むことが理解されるものとする。この定義は、任意の生体物質又は有機物質及び任意の細胞の小部分(subportion)、その生成物又は副生成物を含むものとする。好ましい組織の非限定的な一例は腫瘍組織サンプルである。組織サンプルは好ましくはパラフィン包埋組織サンプルとして準備される。
さらに、本発明のエピトープは細胞状況(生体細胞中)で準備することもできる。細胞は本発明の抗原提示分子も含む同一の細胞であるのが好ましい。例えば、本発明のエピトープ又はその前駆体は細胞内で内因性に発現させることができる。代替的には、細胞はエピトープ又はその前駆体を、1つ又は複数の発現構築物を介して異所的に発現することができる。好ましい細胞型は先に言及される細胞型及び組織と同一である。
「発現構築物」という用語は本発明において、RNAを転写するように設計された任意の二本鎖DNA又は二本鎖RNA、例えば下流の対象の遺伝子又はコード領域に操作可能に接続した少なくとも1つのプロモーターを含有する構築物(例えば、タンパク質若しくはそのフラグメント、又は任意の対象のRNAをコードするcDNA又はゲノムDNAフラグメント)を意味する。レシピエント細胞への発現構築物のトランスフェクション又は形質転換により、細胞が発現構築物によってコードされるRNA又はタンパク質を発現することが可能になる。発現構築物は遺伝子組み換えプラスミド、ウイルス、若しくは例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス若しくはヘルペスウイルスに由来する人工染色体、又は当業者に既知の任意の他の発現ベクターであり得る。発現構築物は生細胞中で複製するか又は合成的に作製することができる。本願の目的上、「発現構築物」、「発現ベクター」、「ベクター」及び「プラスミド」という用語は本発明の用途を一般的、説明的な意味で実証するために区別なく使用され、本発明を特定のタイプの発現構築物に限定することを意図するものではない。さらに、発現構築物又はベクターという用語は、アッセイに利用される細胞が既にかかるDNA配列を内因性に含んでいる例も含むことを意図する。
このため、本発明による方法工程(d)は、抗原提示分子を含む生体細胞を準備するか又は代替的には抗原提示分子を細胞内で発現させることと、エピトープ又はその前駆体を細胞に添加するか又は細胞内で発現させることと、細胞に第1の結合物質及び第2の結合物質、任意に第3の結合物質及び第4の結合物質を添加することとを含む。
本発明の好ましい実施の形態では、第1の近接プローブ及び第2の近接プローブは核酸、好ましくはDNA分子である。例えば、第1の近接プローブ及び第2の近接プローブは少なくとも2つの線状核酸鋳型に相補的な核酸配列を含み、第1の近接プローブ及び第2の近接プローブを2つの線状核酸鋳型にライゲートして環状核酸分子を形成することができる。この実施の形態では、「近接プローブ」は本明細書で上記に記載されるオリゴヌクレオチド部分である。
本発明の方法は、検出可能なシグナルが存在するか否かを決定する付加的な工程(e)を含み得る。検出可能なシグナルの存在の決定は核酸ライゲーションの工程、好ましくは更にはローリングサークルPCR増幅等のPCR増幅工程(上記を参照されたい)を含み得る。
本発明の好ましい実施の形態はex vivo、in vitro又は最も好ましくはin situ方法である上述の方法に関する。
現行の技術水準のアプローチの上述の課題は、疾患を患う対象の治療のために個人用疾患治療計画を作成する方法によって更に解決される。本態様では、この方法は、
(a)対象から得られる生体サンプルを準備する工程と、
(b)本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法を用いて、生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、エピトープ及び抗原提示分子が生体サンプル中で準備される工程と、
(c)(a)で検出されるエピトープ又は抗原に対応するワクチン分子を含むワクチン組成物を選択することによって、対象の治療のための治療計画を作成する工程と、
を含む。
本発明の課題は、個人用ワクチン組成物を作製する方法であって、
(a)対象から得られる生体サンプルを準備する工程と、
(b)本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法を用いて、生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、エピトープ及び抗原提示分子が生体サンプル中で準備される工程と、
(c)ワクチン化合物を(b)において検出されるエピトープ/抗原に対応する組成物に混合することによって、個人用ワクチン組成物を作製する工程と、
を含む、方法に関するまた更なる態様において解決される。
上述の方法を用いて作製されるワクチン組成物も本発明に含まれる。
また、これらの方法は好ましい実施の形態では、ex vivo、in vitro又は最も好ましくはin situ方法である。
本発明の方法の特定の用途はいわゆる「個別化医療(personalized medicine)」にある。「個別化医療」という用語はその最も広い文脈で、個体の表現型及び/又は遺伝子型の知識に基づく、それを考慮した特定の個体に対する医薬組成物及び薬剤の調整を指すように本明細書で使用される。このため、任意の特定の個体に投与される組成物又は薬剤の選択において、疾患に罹患した患者組織での疾患特異的エピトープの提示等の情報が使用される。組成物又は薬剤が投与時に個体に特に適していることを確実にするために使用され得る更なる情報は個体の病歴、臨床データ及び/又は個体の遺伝子型である。「個別化医療」は、医療の提供を革命的に変化させる可能性を有するが、これまで殆ど成功していない。本発明の実施の形態は、個別化医療の開発及び提供のための新規の手段(avenues)及びアプローチを提供する。病変組織、特に腫瘍組織での抗原/エピトープ提示にこの方法を使用することで、患者の免疫系を強化するためのワクチンの標的化選択が可能となる。したがって癌治療においては、特定の癌を患う患者を治療に先立って診断された腫瘍の抗原性についてスクリーニングすることができる。本発明の方法により腫瘍組織で提示されることが見出されたエピトープに応じて、ワクチン接種治療計画及び特定の腫瘍ペプチドワクチンを含む個人用ワクチン組成物の設計を展開することができる。
個別化医療の態様の好ましい実施の形態では、疾患は自己免疫疾患等の免疫障害及び癌疾患から選択される。最も好ましくは、本態様の方法は癌疾患との関連で適用される。そして、組織サンプルは好ましくは腫瘍組織サンプルであり、抗原提示の検出は腫瘍組織サンプルにおいてin situで行われる。さらに、エピトープ又は抗原は腫瘍関連抗原(TAA)であり、腫瘍疾患に応じて突然変異腫瘍抗原、生殖系列発現腫瘍抗原、ウイルス発現腫瘍抗原又は過剰発現腫瘍抗原から選択することができる。
治療計画及び特に強力なワクチン組成物を生成するために、単一のエピトープ又は抗原の提示を組織サンプルで検出するだけでなく、少なくとも2個、好ましくは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個以上のエピトープの検出を行うことが好ましい。以下で多数のかかるエピトープ/抗原は「パネル」と称される。幾つかのエピトープのパネルを試験することによって、本発明の方法は、試験対象の個体の腫瘍で提示されるエピトープ/抗原を標的化するかかるワクチンのみを含むワクチン組成物を生成することを可能とする。既知のTAAのパネルの試験が好ましい。
「ワクチン」という用語は、レシピエントにおいて防御免疫を誘発するために使用することができる組成物を指す。一部の個体が強力若しくは防御的な免疫応答、又は場合によってはいかなる免疫応答も開始することができない可能性があるため、実際には本発明のワクチンが免疫化集団の一部において免疫を誘発し得ることに留意されたい。この能力の欠如は個体の遺伝的背景から生じるか、又は免疫不全状態(後天性又は先天性)若しくは免疫抑制(例えば、化学療法による治療又は免疫抑制薬の使用に起因する)のためであり得る。本発明によるワクチンは、1つ又は複数のペプチド又はその変異体を含むワクチン組成物であるペプチドワクチンであるのが好ましい。
本発明において、「患者」、「対象」又は「個体」という用語は区別なく使用され、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒト患者を指す。哺乳動物又はヒトが1つ又は複数の疾患を患う個体であるのが好ましい。
本発明のまた更なる態様は、疾患を患う対象を診断、階層化、モニタリング又は分類する方法であって、該方法が、
(a)診断対象の疾患を患う対象の生体サンプルを準備する工程と、
(b)本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法を用いて、生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、エピトープが候補疾患に特徴的であり、エピトープ及び抗原提示分子が生体サンプル中で準備される工程と、
を含み、上記細胞サンプル又は組織サンプルにおけるエピトープ/抗原の提示の有無に基づいて診断が得られる、方法に関する。
本発明の目的上、「生体サンプル」という用語は対象から採取され、以下に規定される生体物質(特に生体細胞)を含有する可能性がある任意のサンプルを意味することを意図したものである。この生体サンプルは特に患者に由来する血液、血清、唾液、組織、腫瘍若しくは骨髄のサンプル、又は循環細胞のサンプルであり得る。この生体サンプルは当業者に既知のサンプルを採取する任意の手段によって得られる。
本発明の目的上、「生体物質」という用語は、本発明によるMHCタンパク質等の抗原提示分子によるエピトープ又は抗原の提示の検出を可能にする任意の物質を意味することを意図したものである。このため、本発明の生体サンプルは特に、MHCクラスI又はMHCクラスIIタンパク質のいずれかを発現する細胞を含有するサンプルである。
本明細書に記載される発明による抗原/エピトープ提示の検出により、診断対象の対象から得られる細胞サンプルに関連する疾患の提示をモニタリングすることが可能となる。例えば、診断態様は感染性疾患、免疫障害又は腫瘍疾患の検出に適用され得る(下記も参照されたい)。
本発明の方法及び組成物は任意の疾患、特に癌の治療に用いられ得る。
本発明の様々な方法及び組成物の対象となり得る疾患は、好ましくは罹患(diseased)組織又は細胞の細胞表面上の抗原エピトープの差次的提示を特徴とする任意の疾患又は病態である。
疾患は好ましくは感染性疾患の群から選択され得る。「感染性疾患」という用語は哺乳動物の身体に侵入し、その正常機能を破壊する細菌、ウイルス又は真菌生物に起因する病的状態を含む。所与の病原体に特徴的な抗原エピトープが抗原提示細胞上に提示され、この提示を本発明の方法を用いて検出することができる。
別の好ましい実施の形態は、疾患が自己免疫疾患である本明細書に記載される本発明の方法及び組成物の使用に関する。本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患(複数の場合もある)」という用語は、閉塞性気道疾患(COPD(慢性閉塞性肺疾患)等の病態を含む)、喘息(例えば内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、小児(infantile)喘息)、特に慢性又は難治性喘息(例えば、遅発型喘息及び気道過敏症(hyperresponsiveness)、気管支喘息を含む気管支炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、1型真性糖尿病及びそれと関連する合併症、アトピー性湿疹(アトピー性皮膚炎)、接触皮膚炎、更には湿疹性皮膚炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)、アテローム性動脈硬化症、並びに筋萎縮性側索硬化症を含む疾患の群を指す。特に、この用語はCOPD、喘息、乾癬、全身性エリテマトーデス(lupus erythematosus)、1型真性糖尿病、血管炎及び炎症性腸疾患を指す。
癌の治療、予防又は診断への上述の方法及び組成物の使用が特に好ましい。好ましくは、癌は子宮頸癌、肺癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、肝臓癌、結腸癌、骨の癌、皮膚癌、頭頸部の癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、胃癌、肛門部の癌、乳癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸腫瘍、内分泌腺の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎(epinephros)癌、軟部組織肉腫、尿道腫瘍、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌及び尿管癌、好ましくは子宮頸癌、肺癌、肝臓癌、結腸癌、皮膚癌、胃癌、前立腺癌、グリオーマ等の脳癌、星状細胞腫又は腎臓癌を含む群から選択される。
次に、本発明の付加的な一態様は、本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法における近接ライゲーションアッセイ(PLA)の使用に関する。
また更なる一態様は、本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法におけるPLAキットの使用に関し、ここでキットは少なくとも第1の結合物質及び第2の結合物質を含み、任意にキットは第2の結合物質及び第4の結合物質を更に含む。
本明細書で上記に記載される抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法の実行への使用に適合する診断キットも提供され、該診断キットは少なくとも第1の結合物質、第2の結合物質、任意に第3の結合物質及び第4の結合物質を含む。診断キットはPLA陽性プローブ、PLA陰性プローブ等のPLAアッセイの実行に有用な物質を更に含み得る。
本発明の課題はエピトープ及び抗原提示分子、第1の結合物質、並びに第2の結合物質を含むタンパク質複合体によって更に解決される。この点で、エピトープ、抗原提示分子及び結合物質についての上述の記載は同様に本態様にも当てはまる。
本発明は様々な疾患のワクチンベースの治療の改善を可能にする。本発明によるワクチンは医薬組成物中に配合することができる。これらの組成物は上記の物質の1つに加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者に既知の他の材料を含み得る。かかる材料は無毒性であり、活性成分の有効性を妨げないものとする。担体又は他の材料の正確な性質は投与経路、例えば経口、静脈内、皮膚若しくは皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内又はパッチ経路によって異なり得る。
経口投与用の医薬組成物は錠剤、カプセル、粉末又は液体の形態であり得る。錠剤はゼラチン等の固体担体又はアジュバントを含み得る。液体医薬組成物は概して、水、石油、動物油若しくは植物油、鉱油又は合成油等の液体担体を含む。生理食塩溶液、デキストロース若しくは他のサッカリド溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール等のグリコールが含まれていてもよい。
静脈内、皮膚若しくは皮下注射、又は罹患部位での注射については、活性成分はパイロジェンフリーであり、好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー液、乳酸加リンガー液等の等張ビヒクルを用いて好適な溶液を良好に調製することが可能である。保存料、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加剤が必要に応じて含まれていてもよい。
ポリペプチド、ペプチド又は核酸分子、個体に与えられる本発明による他の薬学的に有用な化合物のいずれについても、投与は好ましくは「予防的に有効な量」又は「治療的に有効な量」(場合によっては、予防法が療法とみなされ得る)での投与であり、これは個体に対する利益を示すのに十分である。実際の投与量並びに投与の速度及び時間経過は、治療されるものの性質及び重症度に応じて異なる。治療の処方、例えば投与量の決定等は一般開業医及び他の医師の責任に含まれ、通例治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び開業医に既知の他の因子が考慮される。
代替的には、標的化療法は抗体又は細胞特異的リガンド等の標的化系を使用して活性剤を、より具体的には或る特定のタイプの細胞に送達するために用いることができる。標的化は様々な理由で、例えば活性剤が許容することができないほど毒性であるか、又はそうでなければ高すぎる投与量で必要とされるか、又はそうでなければ標的細胞内に入ることが可能でない場合に望まれ得る。
これらの活性剤を直接投与する代わりに、例えばウイルスベクター中で細胞に導入されるコード遺伝子からの発現によって標的細胞内で産生させてもよい(VDEPT法の変法、下記を参照されたい)。ベクターは治療される特定の細胞に対して標的化するか、又は程度の差はあるが選択的に標的細胞によってスイッチが入れられる調節要素を含有することができる。
代替的には活性剤は、治療される細胞において産生されるか又はそれに標的化される活性化剤による活性形態への変換のために前駆体形態(プロドラッグ)で投与することができる。このタイプのアプローチはADEPT又はVDEPTとして知られることもあり、前者は細胞特異的抗体へのコンジュゲートによる細胞に対する活性化剤の標的化を含み、後者はウイルスベクター中のコードDNAからの発現によるベクター中の活性化剤、例えばワクチン又は融合タンパク質の産生を含む。
本発明の具体的な実施の形態では、ワクチン又はその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸が提供され、遺伝子療法によって免疫細胞活性化を変調するために投与される。より具体的な実施の形態では、ワクチン若しくは融合タンパク質、又はその機能的誘導体をコードする核酸(単数又は複数)を遺伝子療法によって投与する。遺伝子療法は、対象への特定の核酸の投与によって行われる療法を指す。本発明のこの実施の形態では、核酸はそのコードされるペプチド(複数の場合もある)を産生し、これが次いで疾患又は障害の機能を変調することによって治療効果を発揮する働きをする。当該技術分野で利用可能な遺伝子療法に関する方法論のいずれを本発明の実施において用いてもよい。
好ましい実施の形態では、本発明の治療法はワクチン、融合タンパク質又はそのフラグメント、誘導体若しくは類似体のいずれか1つ又は複数を好適な宿主において発現する発現ベクターの一部である核酸を含む。具体的な実施の形態では、かかる核酸は融合タンパク質のコード領域(複数の場合もある)に操作可能に接続したプロモーターを保有する。プロモーターは誘導性又は構成的、任意に組織特異的であり得る。別の具体的な実施の形態では、コード配列(及び任意の他の所望の配列)がゲノム内の所望の部位での相同的組換えを促進する領域に隣接し、それにより核酸の染色体内発現をもたらす核酸分子を使用する。
対象(患者)への治療的核酸の送達は直接的(すなわち、患者を核酸又は核酸含有ベクターに直接曝露する)又は間接的(すなわち、細胞を初めに核酸によりin vitroで形質転換した後、患者に移植する)であり得る。これら2つのアプローチは、それぞれin vivo又はex vivo遺伝子療法として既知である。本発明の具体的な実施の形態では、核酸をin vivoで直接投与し、核酸が発現されてコード産物が産生される。これは例えば、核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、核酸が細胞内に入るように投与すること;裸のDNAを直接注射すること;微小粒子衝突を使用すること;核酸を脂質でコーティングすること;関連細胞表面受容体/トランスフェクト剤を使用すること;リポソーム、微小粒子若しくはマイクロカプセルに封入すること;核内に入ることが知られているペプチドと接続して核酸を投与すること;又は受容体媒介エンドサイトーシスを受けやすいリガンドと接続して核酸を投与することを含む当該技術分野で既知の多数の方法のいずれかによって達成することができる。
本発明のワクチンは1つ又は複数のアジュバント化合物も含む。アジュバント化合物は、デポー(depot)として機能することによってワクチンの長期放出を向上するという点で有用である。ワクチンへの長期曝露は、免疫系にプロセシングのために抗原が提示される時間及び抗体応答の期間を増大するはずである。アジュバント化合物も、例えば免疫細胞を刺激又は変調することによって免疫細胞と相互作用する。さらに、アジュバント化合物は粒子としてのワクチンの結合後にマクロファージ食作用を向上させる(担体/ビヒクル機能)。
本発明をここで以下の実施例において添付の図面及び配列表を参照して更に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本発明の目的上、本明細書で引用される全ての参照文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
ペプチドコーティングELISAにおける抗IDH1R132H抗体(H09)による可溶性のMHCクラスII結合IDH1R132H 15-mer及び20-merペプチドの結合を示す図である。(A)グリオーマ組織p001及びp018に対するH09を用いたIDH1R132H IHC;右パネル、図示領域の拡大。(B)aa 132を包含するIDH115-mer及び20-merペプチドライブラリー。(C)IDH1 15-mer及び20-merペプチドコーティングELISA。黒色、IDH1 WTペプチド;赤色、IDH1R132Hペプチド;MOG、陰性対照;DMSO、ビヒクル対照。(D、E)MHCクラスII結合IDH1R132Hp122-136ペプチドコーティングELISA。H09(1°)を特異的(赤色、IDH1R132H-HLA-DR1)及び対照(黒色、CLIP-HLA-DR1)四量体(4-mer)と共にプレインキュベートし、続いてp122-136 IDH1R132H(pIDH1)コーティングELISAに供した;青色、四量体なし;MOG、対照;DMSO、ビヒクル。 同上 PLAによるMHCクラスII-ペプチド相互作用の分析のためのツールを示す図である:グリオーマ細胞株LN229における突然変異型及び野生型IDH1のHLA-DR発現及び過剰発現。(A)抗HLA-DRA及びIDH1R132H特異的一次抗体を用いたPLAスキーム。α、β、HLA-DR鎖;pIDH、IDH7エピトープペプチド;赤色、ローリングサークル増幅。(B)HLA-DRを内因性に発現するグリオーマ細胞株LN229の免疫蛍光染色(LN229 IDH1 D252G R132H)及びフローサイトメトリー(LN229 IDH1 D252G R132H、DG RH;LN229 IDH1 D252G、DG)。(C)左上パネル、IDH1突然変異体の酵素活性、並びに酵素アッセイによるIDH1 D252G R132H(DG RH)、IDH1 D252G(DG)、IDH1R132H(RH)及びIDH1 WT(WT)LN229における2-HG測定についてのスキーム;左下パネル、ウエスタンブロット;右パネル、IDH1 D252G(DG)又はIDH1D252G R132H(DG RH)を過剰発現するLN229の免疫蛍光染色。EV、空ベクター。 同上 IDH1 D252G R132Hを過剰発現するグリオーマ細胞株LN229におけるin vitroでのIDH1R132Hペプチド及びMHCクラスIIの特異的共局在化を示す図である。(A)左パネル、LN229 IDH1 D252G R132H(DG RH)及びLN229 IDH1 D252G(DG)のそれぞれに対するIDH1 R132H-HLA-DR PLA。右上パネル、IDH1 R132H共染色(緑色)を用いたIDH1 R132H-HLA-DR PLA。右下パネル、図示領域の拡大。(B)LN229 IDH1 R132H D252Gに対するHLA-DRA特異的siRNA又はsiRNA対照プールを用いたIDH1 R132H-HLA-DR PLA。フローサイトメトリーによるLN229IDH1 R132H D252GにおけるHLA-DRAノックダウンの定量化。赤色、PLAシグナル;青色、DAPI。 NY-ESO-1を過剰発現するグリオーマ細胞株LN229におけるin vitroでのNY-ESO-1ペプチド及びMHCクラスIIの特異的共局在化を示す図である。(A)NY-ESO-1を安定過剰発現するLN229の免疫蛍光染色。(B)SK-Mel-23及びSK-Mel-37における内因性NY-ESO-1並びにLN229において過剰発現されるmycタグ付き(MYC)NY-ESO-1を検出するウエスタンブロット。チューブリン、ローディング対照;LN229 EV、陰性対照。(C)抗mycで共染色したLN229 NY-ESO-1及び空ベクターに対するNY-ESO-1-HLA-DR PLA。NY、NY-ESO-1;EV、空ベクター。 NY-ESO-1及びHLA-DRを内因性に発現する黒色腫細胞株SK-Mel-37におけるin vitroでのNY-ESO-1ペプチド及びMHCクラスIIの特異的共局在化を示す図である。(A)左上パネル、内因性に発現されたNY-ESO-1を検出するSK-Mel-37の免疫蛍光染色;左下パネル、一次抗体を含まない陰性対照;右パネル、SK-Mel-37における内因性HLA-DR発現のフローサイトメトリー。特異的、HLA-DR特異的抗体(赤色);iso、アイソタイプ(緑色)。(B)SK-Mel-37に対するNY-ESO-1-HLA-DR PLA;下、図示領域の拡大。赤色、PLAシグナル、青色、DAPI。(C)SK-Mel-37におけるHLA-DRA又はNY-ESO-1のsiRNAノックダウン。左上パネル、siRNA対照プール(siCONTROL)及びNY-ESO-1 siRNA(siNY-ESO-1)で処理したSK-Mel-37の免疫蛍光染色;下パネル、フローサイトメトリーによるSK-Mel-37におけるHLA-DRAノックダウンの定量化。(D)siCONTROL、siNY-ESO-1及びsiHLA-DRAで処理したSK-Mel-37に対するPLA。赤色、PLAシグナル。右パネル、図示領域の拡大。 同上 グリオーマ組織におけるIDH1R132H及びMHCクラスIIの特異的共局在化を示す図である。(A)HLA-DR+グリオーマ組織p001(IDH1R132H)、p002(IDH1R132H)及びp003(IDH1 WT)に対するPLA。赤色、PLAシグナル。(B)IBA-1で共染色したHLA-DR+グリオーマ組織p006(IDH1R132H)及びp012(IDH1 WT)に対するPLA。緑色、IBA-1;赤色、PLAシグナル。(C)グリオーマ組織p006、p007、p011及びp012の代表的なHLA-DRIHC。挿入図(Inlays)、図示領域の拡大。 同上
材料及び方法
ペプチド
ヒトIDH1wt及びIDH1R132Hアミノ酸配列IDH1 p118-146 PRLVSGWVKPIIIGRHAYGDQYRATDFVV(配列番号1)及びPRLVSGWVKPIIIGHHAYGDQYRATDFVV(配列番号2)はそれぞれ、132位でのArgからHisへのアミノ酸交換を包含し、132位を含有する考え得る全ての15-mer IDH1ペプチドを含み、122位(マウスではThr)を除いてマウス配列と同一である。10-mer及び20-merのIDH1wt及びIDH1R132HのELISA及びin vitro刺激のためのペプチドライブラリーは以下のペプチドを含有するものであった:
IDH1wtp118-132: PRLVSGWVKPIIIGR(配列番号3)、
IDH1wtp120-134: LVSGWVKPIIIGRHA(配列番号4)、
IDH1wtp122-136: SGWVKPIIIGRHAYG(配列番号5)、
IDH1wtp124-138: WVKPIIIGRHAYGDQ(配列番号6)、
IDH1wtp126-140: KPIIIGRHAYGDQYR(配列番号7)、
IDH1wtp128-142: IIIGRHAYGDQYRAT(配列番号8)、
IDH1wtp130-144: IGRHAYGDQYRATDF(配列番号9)、
IDH1wtp132-146: RHAYGDQYRATDFVV(配列番号10)、
IDH1R132Hp118-132: PRLVSGWVKPIIIGH(配列番号11)、
IDH1R132Hp120-134: LVSGWVKPIIIGHHA(配列番号12)、
IDH1R132Hp122-136: SGWVKPIIIGHHAYG(配列番号13)、
IDH1R132Hp124-138: WVKPIIIGHHAYGDQ(配列番号14)、
IDH1R132Hp126-140: KPIIIGHHAYGDQYR(配列番号15)、
IDH1R132Hp128-142: IIIGHHAYGDQYRAT(配列番号16)、
IDH1R132Hp130-144: IGHHAYGDQYRATDF(配列番号17)、
IDH1R132Hp132-146: HHAYGDQYRATDFVV(配列番号18)、
20-mers:
IDH1R132Hp123-142 GWVKPIIIGHHAYGDQYRAT (配列番号19)、及び、
IDH1wtp123-142 GWVKPIIIGRHAYGDQYRAT(配列番号20)。
ELISA及びin vitro刺激のための陰性対照ペプチドはマウスミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)p35-55 MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号21)であった。MOGペプチドはGenscriptによって合成され、IDH1(wt、IDH1R132H)15-mer及び20-merはBachemDistribution Services GmbHによって合成された。ペプチドをPBS 10 % DMSO中、2.5 mg/mlで希釈し、-80℃で保管した。
コンピューターによるMHCクラスIIペプチド結合の予測
ヒトIDH1R132H 29-merペプチドPRLVSGWVKPIIIGHHAYGDQYRATDFVVは、アルギニン(arginin)(R)からヒスチジン(histidin)(H)へのアミノ酸変化をもたらすコドン132に点突然変異を含む、考え得る全てのプロセシング済みIDH1R132H 15-merを含む。15-mer IDH1R132Hペプチドと利用可能なHLA-DR型との結合をNetMHCII 2.2アルゴリズムによって予測した。
IDH1R132H及びIDH1野生型ペプチドコーティングELISA
ELISAプレート(Costar)を、IDH1R132H及びIDH1wt p118-132、p120-134、p122-136、p124-138、p126-140、p128-142、p130-144、p132-146、p123-142(PBS中で1ウェル当たり10 μg)でコーティングし、PBS 0.05% Tween 20で洗浄し、PBS 0.05 % Tween 20中の3 % FBSでブロッキングした。陰性対照としてMOG p35-55を等濃度で使用し、ペプチド希釈剤PBS 10 % DMSOを等容量で使用した。一次抗体としてモノクローナルマウス抗IDH1R132H(1:1000、H09、Dianova)を使用した。HRPコンジュゲート二次抗体はヒツジ抗マウスIgG(1:5000、Amersham)とした。IDH1R132Hp123-142に結合したHLA-DRB1*01:01 MHCクラスII四量体及びCLIPに結合した対照四量体であるHLA-DRB1*01:01 MHCクラスII四量体は、NIH tetramer core facilityの好意により提供され、競合的ELISAのためのH09とのプレインキュベーション中に1:200で使用した。基質はTMB(ebioscience)とし、反応は1M H2SO4で停止させた。450 nmでのODをELISAリーダー(ThermoFisher)で測定した。
グリオーマ組織
アッセイを、Department of Neuropathology at Heidelberg Universityで診断を受けた患者に由来するグリオーマ組織を用いて行った。IDH1突然変異状況はIHCによって日常的に診断された。組織はDepartment of Neuropathology,UniversityHospital Heidelbergの保管所からTissue Bank of the NationalCenter for Tumour Diseases,University Hospital Heidelbergの規制に従って得て、地方規制当局の認可後に使用した。
細胞株及び遺伝子発現の修飾
HLA-DR1を内因性に発現するグリオーマ細胞株LN229を、安定発現のためのpLenti6.2/V5-DEST中のヒトIDH1R132H又はIDH1wt(NCBI GenBank CR641695.1)の完全長cDNAを用いてレンチウイルスにより形質導入した。ウイルスをHEK293Tパッケージング細胞株のトランスフェクションによって産生した。IDH1R132Hタンパク質は二量体化し、増殖に影響を与えることにより安定したIDH1R132H発現を損なう癌代謝物(oncometabolite)R-2-HGを生じるため、アミノ酸交換D252Gをもたらす第2の点突然変異を、部位特異的突然変異誘発によりIDH1R132H及びwtコード配列に導入した。この二量体化欠損突然変異は不活性の酵素を生じ、それにより発現安定性の増大をもたらす。形質導入細胞を安定過剰発現について10 μg/mlブラストサイジン(Sigma-Aldrich)を用いて選択した。LN229における癌精巣抗原CTAG1A(NY-ESO-1)の安定過剰発現を、FuGene HDトランスフェクション試薬(Promega)を用いた、レトロウイルスベクターpMXs-IRES-Bsd(商標)(Cell Biolabs, Inc.)中のDKFZ Genomics Facilityによって提供される完全長NY-ESO-1 cDNA(NCBI Genbank BC160040)によるトランスフェクションによって行った。トランスフェクションの72時間後に細胞を9 μg/mlブラストサイジン(Sigma-Aldrich)を用いて選択した。NY-ESO-1並びにHLA-DR1及びHLA-DR3を内因性に発現する黒色腫細胞株SK-Mel-37を、NY-ESO-1由来ペプチドの内因性提示の分析に使用した。LN229におけるHLA-DR、並びにSK-Mel-37におけるHLA-DR及びNY-ESO-1のノックダウンのために、ON-TARGET SMARTpool(商標) siRNA(DharmaconRNA Technologies,Lafayette,CO,USA)を使用した。siRNA標的配列は以下のようにした:
CTAG1B(NY-ESO-1)については:
CUGAAUGGAUGCUGCAGAU(配列番号22)、
CCGGCAACAUACUGACUAU(配列番号23)、
CGCCAUGCCUUUCGCGACA(配列番号24)、
GCUGGAGGAGGACGGCUUA(配列番号25)。
HLA-DRAについては:
UGACAAAGCGCUCCAACUA(配列番号26)、
UGACCAAUCAGGCGAGUUU(配列番号27)、
GGAAUCAUGGGCUAUCAAA(配列番号28)、
CAACUGAGGACGUUUACGA(配列番号29)。
陰性対照としてON-TARGETplus siCONTROL Non-targeting Pool(D-001810-10-05,Dharmacon)を使用した。トランスフェクションをlipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用い、製造業者のプロトコルに従って行った。
近接ライゲーションアッセイ
腫瘍細胞株をカバーガラスに播種し、70 %〜90 %コンフルエントまで成長させ、Cytofixx Pump Spray(Cell Path)を用いて-20℃で30分間、その後PBS中の4 % PFAを用いて室温で30分間固定及び透過処理した。グリオーマ組織をHistoClear(商標)II(NationalDiagnostics)を用いて脱パラフィンし、再水和した。抗原回復をCell Conditioning Solution CC1(Ventana Medical Systems,Inc.)を用いて30分間行った。PLAはDetection Reagents Red、PLA Probe抗マウスPLUS、PLA Probe抗ウサギMINUS及びWash Buffers Fluorescence(全てDuolink,Olink Bioscience)を用い、製造業者の説明書に従って行った。簡潔に述べると、ブロッキング溶液を用いて37℃で30分間ブロッキングを行い、一次抗体モノクローナルマウス抗ヒトIDH1R132H(1:100,H09,Dianova)又はマウス抗ヒトモノクローナルNY-ESO-1(1:50,E978,SigmaAldrich)をモノクローナルウサギ抗ヒトHLA-DR(1:50,EPR3692,Abcam)と共に抗体希釈剤中、4℃で一晩インキュベートした。PLA Probe抗マウスPLUS及びPLA Probe抗ウサギMINUSを37℃で1時間インキュベートした。ライゲーション及び増幅を、Detection Reagents Redを用いて行った。免疫蛍光(IF)共染色をPLAシグナルの増幅後に下記のように行った。Vectashield HardSet Mounting Medium with DAPI(Vector laboratories)をマウンティング及び核染色に使用した。
免疫蛍光染色
IF染色のために細胞をカバーガラス上に播種し、70 %〜90 %コンフルエントまで成長させ、上記のように固定及び透過処理した。ブロッキング及び染色のために、ブロッキング溶液(Duolink,Olink Bioscience)及び抗体希釈剤(Duolink,Olink Bioscience)をそれぞれPLAと同様に使用した。一次抗体として抗IDH1R132Hを上記のように使用した。付加的なIF染色を、モノクローナルウサギ抗mycタグ(1:200,71D10,Cell Signaling)及びポリクローナルウサギ抗ヒトIBA-1(1:100,和光純薬工業株式会社)を用いて行い、使用する二次抗体はロバ抗マウスAlexaFluor(商標) 488及びヤギ抗ウサギAlexaFluor546(商標)(全て1:300,Molecular Probes,Invitrogen)とした。DAPI染色及びマウンティングを上記のように行った。PLA共染色のために、IDH1R132H又はmycタグ検出については二次抗体抗マウスAlexaFluor(商標) 488、IBA-1検出については抗ウサギAlexaFluor(商標) 488(全て1:300,MolecularProbes,Invitrogen)を使用した。
免疫組織化学
グリオーマ組織をHistoClear(商標)II(NationalDiagnostics)を用いて脱パラフィンし、再水和した。抗原回復をCell Conditioning Solution CC1(Ventana Medical Systems,Inc.)を用いて30分間行った。内因性ペルオキシダーゼをPBS中の3 %過酸化水素を用いてブロッキングした。ブロッキングを5 % FBSを用いて1時間行った。一次抗体(モノクローナルマウス抗ヒトIDH1R132H(1:100,H09,Dianova)及びモノクローナルウサギ抗ヒトHLA-DR(1:50,EPR3692,Abcam))を4℃で一晩インキュベートした。呈色反応をLiquid DAB+Substrate Chromogen System(DAKO)を用いて行った。対比染色をヘマラム(Carl Roth GmbH + Co. KG)を用いて行った。
ウエスタンブロット
全タンパク質を150 mM NaCl(J.T. Baker,Deventer,Netherlands)、1 % Nondiet P-40(Genaxxon Bioscience,Ulm,Germany)、10 mMEDTA(GerbuBiotechnik,Gaiberg,Germany)、200 mMジチオスレイトール(Carl Roth)、100 μMPMSF及びcomplete EDTA-free(1:50,Roche,MannheimGermany)を含有する氷冷TRIS-HCl(50 mM,pH 8.0,Carl Roth)を用いた20分間の細胞溶解によって単離し、遠心分離して残屑をペレット化した。タンパク質濃度をBio-Radタンパク質アッセイ(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)によって595 nmで測定し、Laemmliサンプル緩衝剤で希釈した30 μgのタンパク質を95℃で5分間変性させ、12 %アクリルアミド−ポリアクリルアミドSDS含有ゲル上で電気泳動的に分離した。タンパク質をニトロセルロースメンブレン上に1.5mA/cm2で1時間のウェットブロットによってブロットした。0.5M TBS(pH 7.4)、1.5 M NaCl、0.05 % Tween 20中の5 %粉乳によるブロッキングの後、メンブレンをwt及びR132H IDH1の検出のための一次モノクローナルマウス抗IDH1R132H(1:500,H09,Dianova)、モノクローナルラット抗panIDH1(1:500,W09,Dianova)、モノクローナルウサギ抗mycタグ(71D10,1:1000,Cell Signaling)、抗NY-ESO-1(1:500、Sigma Aldrich)と共に4℃で一晩、またローディング対照としてのマウス抗α−チューブリン(1:5000,Sigma-Aldrich)と共に室温で1時間連続的にインキュベートした。二次HRPコンジュゲート抗ラット(1:(1000xF),Dako)又は抗マウス(1:5000,GEHealthcare,Buckinghamshire,UK)抗体による染色を室温で1時間行い、続いてECL又はECLprime(どちらもAmersham)を用いた化学発光発生を行った。
フローサイトメトリー
細胞を採取し、PBS、3 % FBS、2 mMEDTA中で1回洗浄し、ヒト血清を用いてブロッキングを行った。表面HLA-DRを、eFluor-450(商標)コンジュゲートマウス抗HLA-DR抗体(1:100,L243,ebioscience)を用いて染色した。細胞をFACS Canto II(Becton Dickinson)上で得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
HLAタイピング
ゲノムDNAを、患者の血液又は腫瘍サンプルからはFFPE LEVDNA Purification KIT AS1130、細胞株からはQIAamp DNAMini Kit(Qiagen)を用いて単離した。PCRベースのタイピングを、96ウェルプレート内で凍結乾燥したHLA-A及びHLA-DR型特異的プライマー対(HLA-A* CTS-PCR-SSP Minitray Kit及びHLA-DRB1*CTS-PCR-SSP Minitray Kit)、及びHLA-DRB1*についてはMastermix 5.0%、HLA-A*についてはMastermix7.5 %(全てDepartment of Transplantation Immunology,University Clinic Heidelbergから)をTaqポリメラーゼ(Fermentas)と共に用いて行った。PCRを製造業者の説明書に従って行った。PCR産物をGelRed(商標)(1:10000,Genaxxon bioscience)を含有する1.5 %アガロースゲル上で分離した。分析を製造業者の説明書に従って行った。
2-HG測定
細胞における2-HG産生を以前に記載されているように分析した(33)。2-HG産生の対照として、酵素的に適格なレトロウイルスによって形質導入したLN229IDH1 R132Hを使用した。ベクターを以前に記載されているように生成した(Schumacher Bunsenature 2014 Referenz)。
画像分析
IF画像をPLAについては63倍対物レンズを用い、免疫蛍光画像については40倍対物レンズを用いた、PLAシグナルをN2.1フィルター、免疫蛍光共染色のシグナルをGFPフィルターで検出するLEICA DM IRB顕微鏡上で取得した。免疫組織化学的画像をZeissAxioplan顕微鏡上で取得した。画像をAdobe Photoshop CS3(商標)を用いて線形最適化した。
統計分析
データを平均+標準誤差として表し、有意性の分析(図1C、図1E)を一元ANOVA、Tukey補正(Prism 6.0)を用いて行った。PLA陽性は高倍率視野当たり20 PLAシグナルに設定し、有意性の分析をフィッシャーの正確確率検定を用いて行った(表2、Rバージョン2.15.2.)。0.05未満のp値を有意とみなした。
実施例1:IDH1R132HのMHCクラスII制限的免疫原性
IDH1R132H突然変異はグリオーマの約80 %で発現され、明確なグリオーマサブタイプを規定する(15〜17)。この点突然変異の高発生率は突然変異特異的モノクローナル抗体(H09)の発生をもたらし(18、19)、組織学的診断に日常的に適用される。このマウス抗体は、キーホールリンペットヘモシアニンに連結した合成ペプチドIDH1R132H p125-137CKPIIIGHHAYGD(配列番号30)を用いた免疫化によって生成されており、グリオーマにおける広範な浸潤性の単一腫瘍細胞の特異的染色をもたらす(図1A)。ヒトMHCクラスII状況におけるIDH1R132Hの推定免疫原性を評定するために、エピトープをコンピューターによるMHCペプチド結合予測によって同定した。ヒトIDH1R132H 29-merペプチド(118-146)PRLVSGWVKPIIIGHHAYGDQYRATDFVVは、コドン132に点突然変異を含む考え得る全てのプロセシング済みIDH1R132H 15-merを含む。コンピューターによるペプチド結合アルゴリズムにより、HLA-DR型依存的なヒトMHCクラスIIへのIDH1R132H 15-merの結合が予測された(表1)。
表1:IDH1R132H 15-merペプチドはヒトMHCクラスIIに結合する(コンピューターによる)。NetMHCIIアルゴリズムを用いて、IDH1R132H 15-merペプチドと利用可能なHLA-DR型との結合を予測した。IC50が500 nM未満のペプチドは弱いバインダーと規定され、IC50が50 nM未満のペプチドは強いバインダーと規定される。結合が予測される15-merのみを示す。
次いで、本発明者らはPLAを用いてin vitroでのIDH1R132Hエピトープのプロセシング及び提示に対処しようとした。PLAは、PCRプローブに連結した対象のタンパク質に特異的抗体を適用することによる未修飾細胞及び組織におけるタンパク質間相互作用分析のために開発された。そして、ローリングサークルPCR増幅はin situで未変性タンパク質の共局在化の蛍光可視化を可能にする。このため、この技法は原則的に、外因性発現又は蛍光標識の導入による系の構造的修飾を必要としないことから、天然ペプチドプロセシングの分析に適用可能である。MHC上のエピトープ提示にPLAを用いるために、対象のエピトープを検出する特異的抗体が必要とされる。IDH1R132H領域を包含するペプチドライブラリーを作成した(図1B)。ペプチドコーティングELISAアッセイから、抗IDH1R132H抗体がIDH1突然変異15-mer p122-136、p124-138及びp126-140並びに20-mer p123-p142に結合する一方で、アミノ酸交換の周辺位置を有するIDH1wtペプチド及びIDH1R132Hペプチドのいずれにも結合が見られないことが実証された(図1C)。用いられるIDH1R132H特異的抗体によるHLA-DR結合IDH1R132H 20-mer p123-142の特異的結合は、ペプチド-MHCクラスII相互作用の分析に不可欠である。本発明者らは、この問題にp123-142IDH1R132HローディングクラスII(DR1)四量体を用いた免疫競合的ELISAアプローチによって対処しようとした(図1D)。本発明者らは以前に、この四量体をIDH1R132H特異的CD4+ T細胞の同定に用いている(Schumacher, Bunse nature 2014)。対照(CLIP)四量体ではなくIDH1R132H-DR1四量体とIDH1R132H特異的抗体とのプレインキュベーションにより、IDH1R132Hペプチドp122-136でコーティングしたELISAプレートに対する特異的抗体の結合の完全な阻害がもたらされた(図1E)。この結果から、IDH1R132H特異的抗体がマスクされないIDH1R132HエピトープをMHCクラスII結合状況で認識するという仮定が支持される。
実施例2:IDH1R132H-MHCクラスII共局在化を検出するin vitro系の確立
HLA-DR上のIDH1R132Hエピトープ提示の検出に対するPLAの適用性及び特異性を評価するin vitro系として(図2A)、本発明者らはHLA-DRB1*01を内因性かつホモ接合的に発現するヒトグリオーマ細胞株LN229を用いた(図2B)。IDH1wtであるLN229細胞を、二重突然変異体IDH1D252G/R132Hを用いて安定的に形質導入した(図2C)。本発明者らは、IDH1R132Hの新形質酵素活性を消失させることにより、IDH1R132Hによって産生される大量のR-2-ヒドロキシグルタル酸(R-2-HG)により悪影響を受けるIDH1R132H発現を増大するために252位に点突然変異を導入した(図2C)。
実施例3:IDH1R132H-MHCクラスII共局在化はin vitroで検出することができる
IDH1D252G/WTを発現する細胞ではなく、IDH1D252G/R132H形質導入細胞において、MHCクラスII HLA-DR及びIDH1R132Hペプチドのエピトープ特異的近接性を、PLAを用いて検出した(図3A)。IDH1R132H特異的抗体による免疫蛍光対比染色から、IDH1R132H発現レベルとPLAシグナルとの相関が明らかとなった。HLA-DR特異的ノックダウンによりIDH1D252G/R132Hを過剰発現するLN229においてPLAシグナルが消失し、HLA-DRに対するPLA特異性が確認された(図3B)。これらの結果から、PLAがIDH1R132Hエピトープ及びMHCクラスII HLA-DRの共局在化を特異的に検出するために好適であることが示され、HLA-DR陽性LN229グリオーマ細胞がこれらのエピトープをHLA-DR上に提示することが可能であることが示唆される。
実施例4:PLAにより内因性に発現された腫瘍関連抗原(TAA)のin vitroでの共局在化も実証される
HLA-DR上のエピトープ提示を検出するツールとしてのPLAの適用性を確認するために、本発明者らは次に、この知見を既知の機能的関連性のTAAの確立まで拡張することを目指した。癌精巣抗原NY-ESO-1(CTAG1B)は、様々な研究において強力な免疫原性標的であり、特異的CD8+ T細胞媒介応答だけでなく、CD4+ T細胞媒介応答も誘導し、HLA-DR1に対する幾つかのMHCクラスII HLA-DR結合エピトープ、例えばp119-143、p121-138及びp123-137を含有することが示されていることから好適な抗原である(20、21)。したがって、本発明者らは、mycタグ付きNY-ESO-1をLN229において過剰発現させ(図4A、図4B)、PLAを行い、完全長ヒトNY-ESO-1に対して生成される特異的抗体を用いてNY-ESO-1及び内因性HLA-DR1の共局在化を示した(図4C)。シグナル強度は、mycに対する対比染色によって示されるように発現レベルと相関した。TAANY-ESO-1に由来するエピトープとHLA-DRとの間に検出される相互作用が抗原の強制的な過剰発現の結果であることを排除するために、本発明者らは内因性に抗原を発現する腫瘍細胞に対するin vitro PLAを行った。黒色腫細胞株SK-Mel-37はNY-ESO-1及びHLA-DRB1*01及びHLA-DRB1*03を内因性に発現する(図4B、図5A)。PLAによりHLA-DR及び内因性NY-ESO-1の共局在化が実証された(図5B)。シグナルをNY-ESO-1又はHLA-DRのいずれかのsiRNA媒介ノックダウンによって消失させることで(図5C、図5D)、MHCクラスII上に提示される内因性エピトープの共局在化を検出するPLAの能力が確認され、抗原提示をin vitroで検出するツールとしてのその適用性が支持された。
実施例5:IDH1R132H-MHCクラスIIPLAによりin situでの共局在化が実証される
本発明者らは次に、腫瘍組織においてin situでエピトープ提示を検出するPLAの適用性を評定した。この目的で、PLAをパラフィン包埋グリオーマ組織に対して行った。図6Aから、IDH1R132H-MHCクラスII共局在化がIDH1R132H+及びHLA-DR+(p001、p002)において特異的に見られたが、IDH1wt HLA-DR+(p003)グリオーマ組織では見られなかったことが実証される。続いて、本発明者らは腫瘍組織中のIDH1R132Hエピトープ提示細胞型を同定しようとした。この目的で、グリオーマ組織をPLAに供し、ミクログリアマーカーIba-1について対比染色した(図6B)。Iba-1を用いた共染色により、PLAシグナルがミクログリア、すなわちプロフェッショナルAPCに制限されないことが示され、クラスII発現グリオーマ細胞自体がIDH1R132Hを提示し得ることが示唆された。18人の患者コホート(IDH1wtグリオーマを有する9人の患者、IDH1R132H+グリオーマを有する9人の患者、そのうち15人がHLA-DR+)の分析から、IDH1R132H-MHCクラスII PLA系において9人のIDH1R132H+患者のうち5人で陽性であり、9人の試験したIDH1wtグリオーマ患者ではいずれも陽性でないことが明らかとなった(フィッシャーの正確確率検定によるp=0.029)。さらに、PLAシグナルは免疫組織化学(IHC)によってもHLA-DRについて陽性に染色された組織においてのみ検出された(図6C、表2)。これらの結果から、invitroだけでなく、in situでもPLAの特異性が確認される。
能動免疫療法による通例は突然変異抗原である真の腫瘍抗原の標的化への関心の高まりから(22〜24)、これらの抗原が腫瘍組織において実際に提示されるか否かを評価する必要性が増大している。TAAとは対照的に、突然変異抗原は中枢性トレランス(central tolerance)を受けていないが、MHCクラスIではなくMHCクラスII上に提示されるマイナー抗原であることが多い(25)。これは長い間欠点とみなされてきたが、抗原特異的CD4+ T細胞応答がCD8+ T細胞を単に補助するだけでなく、効果的な抗腫瘍免疫を達成することが可能であるという証拠が増加している(26、27)。潜在的機構は、MHCクラスII上に抗原を提示する腫瘍細胞に対する抗原特異的CD4+ T細胞による直接的な細胞毒性、及び腫瘍抗原を提示する腫瘍内プロフェッショナルAPCによって刺激される抗原特異的CD4+ T細胞による自然免疫細胞の活性化を含む。本発明者らは、グリオーマ及び他のタイプの腫瘍において高頻度に突然変異しているIDH1が新規の腫瘍新抗原であることを以前に実証した。IDH1において最も一般的な突然変異であるIDH1R132H突然変異は、IDH1R132H突然変異グリオーマを有する患者及びワクチン接種後のMHCヒト化A2.DR1マウスにおいて突然変異特異的クラスII制限的CD4+ T細胞応答を誘導することが可能である(Schumacher Bunse Nature 2014)。本発明者らの以前の研究における以下の2つの証拠から、IDH1R32Hが内因性にプロセシングされ、MHCクラスII上に提示されることが示唆される:(i)IDH1wtグリオーマではなくIDH1R132H+グリオーマを有する患者において、突然変異特異的CD4+ T細胞をIDH1R132H(p123-142)でのex vivo刺激後にMHCクラスII制限的に検出することができる。(ii)突然変異特異的CD4+ T細胞を、ヒトIDH1R132Hを発現する被照射同系肉腫によるMHCヒト化マウスのワクチン接種後に検出することができる。ここで、本発明者らは抗原エピトープの提示を、免疫蛍光とPCR法とを組み合わせたPLAを適用してinsituで検出する新規のアプローチを提示する。
表2:グリオーマ患者の突然変異及び遺伝分析並びに臨床情報。f、女性;m、男性;A、星状細胞腫、GBM、膠芽腫(WHO °IV);IHC、免疫組織化学;HLA-DR発現の半定量的分析:-、陰性;+、低い;++、中程度;+++、強い;++++、非常に強い;*、主要ミクログリアHLA-DR発現;n.d.、未確定。
このアプローチは提示をパラフィン包埋組織片においてin situで検出するという利点をもたらすが、抗原を標的化する抗体の以下の要件によって使用が制限される:(i)抗原を標的化する抗体は、MHC(クラスII)に結合した提示エピトープを未変性状態及びin situで認識しなければならない。(ii)突然変異抗原の場合、抗体は突然変異特異的である必要がある。IDH1R132Hについては、両方の要件が満たされる。突然変異特異性は多数の研究において確立されている(18、19、28)。実際に、IDH1R132H IHCは現在日常診断で実行されている。本研究では、本発明者らは、抗体がIDH1R132H p123-142の一部並びにより短いペプチドp122-136、p124-138及びp126-140であるMHCクラスII上に提示される同じエピトープを認識することを実証する(図1B)。重要なことには、これらのエピトープへの抗IDH1R132H抗体の結合は、IDH1R132HクラスII四量体によって遮断することができ、H09が未変性状態でMHCクラスIIに結合するIDH1R132Hエピトープを認識するという証拠が更に支持される(図1E)。
本発明者らは、この観察結果を古典的腫瘍関連抗原NY-ESO-1にまで更に拡張する。NY-ESO-1特異的及びHLA-DR特異的抗体を用いるPLAにより、NY-ESO-1及びHLA-DR1及びHLA-DR3を内因性に発現するSK-Mel-37においてNY-ESO-1エピトープとHLA-DRとの共局在化を検出した(図5)。NY-ESO-1を特徴とする幾つかのクラスIIエピトープが存在しているが、NY-ESO-1抗体によって認識されるエピトープは知られていない。この抗体がMHCクラスII上にも提示されるエピトープを認識するという観察結果は単なる偶然ではなく、クラスII制限的CD4エピトープ及びB細胞エピトープが重複する場合があるためである可能性が高い(29)。実際に、腫瘍組織に対するPLAを用いた抗体のスクリーニングは、腫瘍組織において提示される関連エピトープをマッピングするために有用なツールであり得る。
本発明者らは、IDH1R132HがヒトIDH1R132H突然変異グリオーマにおいて提示されるという証拠も提示する。PLA陽性の生物学的関連性を決定するためにより大きな予測系列が必要とされるが、この方法が標的化免疫療法に対する患者の事前選択に適用され得ると考えられる。腫瘍組織における抗原提示の細胞状況の解読については、多重標識に関して改善の余地がある。本研究におけるそのような試みから、IDH1R132HがMHCクラスII陽性であり得る腫瘍細胞自体によって提示されるだけでなく(図6、(30、31))、ミクログリア細胞によっても提示されることが示唆される。
要約すると、本発明者らは関連腫瘍(関連)抗原の同定に適用され得るが、これに制限されない抗原の提示をin situで検出する新規の方法を提示する。
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図1
none なし
4-mer only 四量体のみ
図2
% of Max 最大値に対する%
specific 特異的
no HLA-DR HLA-DRなし
tubulin チューブリン
図3
cells 細胞
図4
tubulin チューブリン
図5
% of Max 最大値に対する%
specific 特異的
cells 細胞

Claims (17)

  1. 抗原提示分子によるエピトープの抗原提示を検出する方法であって、該方法が、
    (a)第1の結合物質及び第2の結合物質を準備することであって、該第1の結合物質が前記エピトープに特異的に結合することが可能であり、該第2の結合物質が前記抗原提示分子に特異的に結合することが可能であり、該第1の結合物質及び第2の結合物質が、該第1の結合物質と該第2の結合物質との空間的近接により検出可能なシグナルが誘導されることを特徴とすることと、
    (b)前記エピトープを提示するとみられる抗原提示分子を準備することと、
    (c)前記エピトープを準備することと、
    (d)前記エピトープ、前記抗原提示分子、前記第1の結合物質及び前記第2の結合物質を接触させることと、
    を含み、前記検出可能なシグナルの存在が、前記抗原提示分子による前記エピトープの抗原提示の指標となる、方法。
  2. 前記第1の結合物質が第1の近接プローブを含み、前記第2の結合物質が第2の近接プローブを含み、該第1の近接プローブと該第2の近接プローブとの空間的近接により前記検出可能なシグナルが誘導される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が前記第1の結合物質に特異的に結合することが可能な第3の結合物質を準備することと、前記第2の結合物質に特異的に結合することが可能な第4の結合物質を準備することとを更に含み、工程(d)が前記エピトープ、前記抗原提示分子、前記第1の結合物質、前記第2の結合物質、前記第3の結合物質及び前記第4の結合物質を接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第3の結合物質が第1の近接プローブを含み、前記第4の結合物質が第2の近接プローブを含み、該第1の近接プローブと該第2の近接プローブとの空間的近接により前記検出可能なシグナルが誘導される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記結合物質がモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 工程(b)において前記抗原提示分子を生体細胞中、又は樹状細胞、Bリンパ球若しくは腫瘍細胞から選択される抗原提示細胞の生体細胞の表面上で準備する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記エピトープが疾患関連抗原、又は自己免疫障害である免疫障害と関連するエピトープ、又は腫瘍関連抗原(TAA)、又はTAAに由来するエピトープであり、又は該TAAが癌突然変異抗原、癌生殖系列発現抗原、癌ウイルス抗原又は癌過剰発現抗原の群から選択される腫瘍関連抗原(TAA)若しくはTAAに由来するエピトープである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記エピトープがIDH1に由来し、IDH1R132H突然変異、若しくは配列番号30によるアミノ酸配列を含むペプチド(ペプチドIDH1R132H p125-137)を含み、又は前記エピトープがNY-ESO-1に由来する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記エピトープを、該エピトープ若しくはその前駆体を発現する生体細胞を準備するか、又は該エピトープ若しくはその前駆体を生体細胞、若しくは前記抗原提示分子を更に含む細胞、若しくは樹状細胞、Bリンパ球若しくは腫瘍細胞等の抗原提示細胞において異所的に発現させることによって準備する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 疾患を患う対象の治療のための個人用疾患治療計画を作成する方法であって、
    (a)前記対象から得られる生体サンプルを準備する工程と、
    (b)請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を用いて前記生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、該エピトープ及び抗原提示分子が前記生体サンプル中で準備される工程と、
    (c)(a)において検出される前記エピトープ又は抗原に対応するワクチン分子を含むワクチン組成物を選択することによって、前記対象の治療のための治療計画を作成する工程と、
    を含む、方法。
  11. 個人用ワクチン組成物を作製する方法であって、
    (a)対象から得られる生体サンプルを準備する工程と、
    (b)請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を用いて前記生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、該エピトープ及び抗原提示分子が前記生体サンプル中で準備される工程と、
    (c)ワクチン化合物を(b)において検出される前記エピトープ/抗原に対応する組成物に混合することによって、個人用ワクチン組成物を作製する工程と、
    を含む、方法。
  12. 前記生体サンプルが組織サンプルであり、抗原提示の検出を該組織サンプルにおいてin situで行う、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記エピトープがTAA、若しくは突然変異腫瘍抗原であるか又はそれに由来する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 疾患を患う対象を診断、階層化、モニタリング又は分類する方法であって、該方法が、
    (a)診断対象の疾患を患う前記対象の生体サンプルを準備する工程と、
    (b)請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を用いて前記生体サンプルにおける少なくとも1つの既知のエピトープ又は抗原の抗原提示を検出する工程であって、該エピトープが候補疾患に特徴的であり、該エピトープ及び抗原提示分子が前記生体サンプル中で準備される工程と、
    を含み、細胞サンプル又は組織サンプルにおける前記エピトープ/抗原の提示の有無に基づいて診断が得られる、方法。
  15. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法における近接ライゲーションアッセイ(PLA)の使用。
  16. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法におけるPLAキットの使用であって、該キットが少なくとも第1の結合物質及び第2の結合物質を含み、任意に該キットが第3の結合物質及び第4の結合物質を更に含む、使用。
  17. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法の実行への使用に適合する診断キットであって、少なくとも第1の結合物質、第2の結合物質、任意に第3の結合物質及び第4の結合物質を含む、診断キット。
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