以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成し且つ実施可能な実施形態を例として示す添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用でき且つ構造的又は論理的変更を行うことができることを理解すべきである。従って、以下の詳細な説明は、限定的意味で捉えるべきでなく、実施形態の範囲は、特許請求の範囲及びそれら均等物によって規定される。
種々の動作は、実施形態の理解の助けになるように複数の個別の動作として説明する場合があるが、説明の順序は、これら動作が順序依存であることを暗示するように解釈すべきでない。
説明は、上方/下方、前/後、及び上/下といった透視的説明を使用する場合がある。斯かる説明は、単に、議論を容易にするために使用されていて、開示する実施形態の適用を限定するように意図しない。
用語「結合(coupled)」及び「接続(connected)」は、それら派生語と共に、使用できる。これら用語は相互に同義語として意図しないことを理解すべきである。特定の実施形態において、「接続」は、2つ又は複数の要素が物理的又は電気的に相互に直接接することを意味するために使用できる。「結合」は、2つ又は複数の要素が物理的又は電気的に直接接することを意味できる。但し、「結合」は、2つ又は複数の要素が相互に直接接していないが、相互に協働又は相互作用することも意味できる。
説明において、「A/B」又は「A及び/又はB」の形式の句は、(A)、(B)又は(A及びB)を意味する。説明において、「A、B及びCの少なくとも1つ」の形式の句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)又は(A、B及びC)を意味する。説明において、「(A)B」の形式の句は、(B)又は(AB)を意味し、即ちAは任意の要素である。
説明は、同じ又は異なる実施形態の1つ又は複数をそれぞれ参照する用語「実施形態(単数又は複数)」を使用する場合がある。更に、用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等は、実施形態に関連して使用するとき、同義語であり、概略的に「開放的(open)」用語であることを意図する(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「含むが、限定されない」と解釈され、用語「を有している(having)」は「少なくとも有している」として解釈され、用語「含む(includes)」は「含むが、限定されない」と解釈されるべきである)。
本明細書において複数及び/又は単数の用語が使用される場合、当業者は、文脈及び/又は応用に応じて適宜、複数から単数へ、及び/又は、単数から複数へ変換できる。種々の単数/複数の置換えは、明確化のために本明細書において明示できる。
種々の実施形態において、骨折の弾性固定を可能にする方法、装置及びシステムが提示される。
本明細書における実施形態は、骨プレートの長手軸に沿った弾性的な動的運動を許容する一方で、仮骨形成による骨折の治癒を刺激するために骨折部位における他の全ての方向の安定性を維持する、骨折の安定した固定を可能にする骨接合プレートを提供する。一実施例において、ロックスクリュー穴がロックプレート内部のシリコン外包内で弾性的に懸架される、「動的」ロックプレート設計を説明し、試験する。
図1は、概ねプレート長手軸に沿って互い違いのパターン(staggered pattern)に配列される細長いプレート穴2を持つ楕円形骨プレート1の上面図である。滑動要素3は、滑動要素のねじ切り貫通孔4が骨プレート1の細長いプレート穴2と合致するように、骨プレート1の表面下方に存在する。滑動要素3は、対応するねじ切り骨締結具と係合するためにねじ切り貫通孔4を有する。貫通孔4は、骨プレート1の上面に対して実質的に直交して配向されてよい。貫通孔4は、互い違いの/オフセットしたスクリュー穴へ挿入された骨締結具が、プレートが結合される骨部材の中央部の方へ向けられるか/傾斜するように、プレートの長手中央線へ向かって傾斜してもよい。
図2は、骨プレート1及び滑動要素3のねじ切り貫通孔4を通過する横断面図である。貫通孔4は、骨プレート1の凸状上面に概ね直交して配向される。滑動要素3は、概ね棒形であり、長方形断面である。他の実施形態において、正方形、楕円形、湾曲、又はプレートの断面形状に近似する湾曲した長方形等、他の断面形状を使用してよい。滑動要素は、医学的に受容される任意の材料、例えば限定されないが、チタン又はステンレス鋼のような金属等で構成される。滑動要素3は、底部プレート面6まで延び、且つ、プレートの曲げ強さを維持するために上部プレート面7を通って延びることなく上部プレート面7の方へ延びる、対応する形状の凹部5の中に配置される。図2に示すように、滑動要素用の凹部は、底部プレートを通って底面まで延び、滑動要素は、底部カバー9によってプレートの中に保持される。凹部5は、滑動要素3と凹部5との間の摩擦及び摩耗を減少するために低摩擦部材8で裏張りされる。低摩擦部材は、医学的に受容される任意の材料、例えば限定されないが、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のポリマーである。UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)等、摩擦係数の低い他の代表的な生体適合性ポリマーを使用してもよい。代わりに、滑動要素と凹部との間の空間は、超弾性境界面を提供するシリコン誘導体で充填されてもよく、境界面は、摩擦を減少し、及び/又は、凹部における滑動要素の弾性サスペンションを提供できる。
滑動要素3は、滑動要素の挿入後にレーザー溶接、プレス嵌め、又は匹敵する確実な接合手段によってプレート1に堅固に接続される底部カバー9によってプレート1内部に保持される。従って、滑動要素3は、骨プレート1内に拘束されて、骨プレート1の長手軸に直交する滑動を防止する。滑動要素3は、骨ロックスクリュー11によって骨部材10に結合してもよく、骨スクリューは、ねじ切りスクリュー軸部12とねじ切りスクリュー頭部13(図3)とを有するスクリューとしてもよい。1つの好ましいロックスクリューは、スクリュー頭部13及びスクリュー軸部12において同じねじ山外径及びねじ山ピッチを有する。スクリュー頭部13及びスクリュー軸部12は同じピッチ、即ち回転螺旋体の傾斜を有する一方、スクリュー軸部12は単一の螺旋体を有し、スクリュー頭部13はコア径の周りを同時に回転する3つの螺旋体を有する。この配列体は、スクリュー軸部12に比べてスクリュー頭部13のコア径をより大きくでき、ねじ山をより密にする。この配列体は、又、スクリュー軸部がスクリュー挿入全体において滑動要素3のねじ切り穴14の中に係合するという利点を有する。従って、滑動要素又は骨プレートを骨表面に圧迫する必要なく、骨表面より所与の高さにおいて滑動要素3を骨部材10に堅固に接続するための手段を提供する。更に、スクリュー頭部13が滑動要素3の中へ係合せずに滑動要素3に圧迫されるのを防止する。滑動要素3における骨スクリューのポジティブロックは、滑動要素3の上面に圧迫されるスクリュー頭部13の端部キャップ15によって提供される。
図4は、貫通孔14の代替実施形態を示し、滑動要素におけるねじ切り孔14が円錐形である。これによって、滑動要素における対応するねじ切り円錐スクリュー頭部のポジティブロックが可能になる。
図5は、滑動要素3を可視化するために底部カバー9を除いた骨プレート1の底面図である。滑動要素3の長手寸法は、凹部5の対応する長手寸法より小さい。この長手寸法の差が、プレート1に対する滑動要素3の許容される軸方向運動を決定する。この制御された軸方向運動は、0.2〜2mm、好ましくは0.3〜1mmの範囲である。ばね22等のばね要素は、1〜100N、好ましくは5〜50Nの範囲の実効ばね予荷重の適用によって、滑動要素3を、規定された休止位置へ押し進める。滑動要素3がばね要素22の予荷重に対抗する力を及ぼす場合、プレートに対する滑動要素の運動(骨プレートの長手軸に沿った直線運動)が開始される。力を取り除くと、滑動要素3は、ばね力によってその休止位置へ復帰する。ばね要素に予荷重を与える一実施例は、下記のとおりである。ばね要素に予荷重を与えるために、組立時に、滑動要素及び/又はばね要素を骨プレートの中へ挿入する前、又は、挿入するときにばね要素を圧縮する。
図6は、一連の細長いばねフィンガ23と溝24とによってばね要素が滑動要素3に統合される又はその一部である(別個のばねとは対照的に)、ばね要素の代替実施形態を示す。溝24は、滑動要素3の一部分を弾性ばね要素へ変換する。
図7は、溝24が滑動要素3の両側に導入される、ばね要素の更に別の代替実施形態を示す。溝24は、滑動要素3の両側を弾性ばね要素へ変換し、ばね要素は、凹部5内部のねじ切りスクリュー穴14を弾性的に懸架し、且つ、ねじ切り貫通孔14がその非負荷中心位置から両方向へ並進運動できるようにする。
図8は、円筒形骨区分10に付着された骨スクリュー11に関連付けて示す滑動要素3の実施形態の長手断面図である。ばね22は、滑動要素3の円筒形穴17の中に引っ込められる。凹部5は、低摩擦層8で裏張りされる。ロックスクリュー11は、プレート1が骨表面18へ圧迫されないように滑動要素3を固定する。非ロックスクリューを使用する代替実施形態において、プレートは、骨表面へ圧迫できる。
図9は、円筒形骨の2つの対応する区分に骨スクリュー11を用いて弾性的に固定される骨プレート1の断面図である。滑動要素3の中のばね22は、骨折部位19寄りに配置される。従って、骨区分10へ作用する外部圧縮力が加えられると、プレート1に対する滑動要素3の並進運動/移動を誘導し、これがプレート1の長手軸に対して平行の骨区分10の並進運動を誘導する。このことが、制御された運動外包(motion envelope)内で骨折部位19における表面間の対称的運動を生成する。骨折部位の運動量は、プレートの凹部5内部のスライダの並進運動の最大範囲によって制御される。従って、ばね要素の剛性及び予荷重に基づいて、100〜1000N好ましくは200〜800Nの設定閾値を上回る外部圧縮力は、プレート内部で滑動要素3の付加的運動を生まない。選択されるばね要素の予荷重及び剛性が充分小さい場合、滑動要素は、過剰なプレートの曲げを防止するのに充分に低い外部圧縮力でその最大許容変位に達する。過剰なプレートの曲げは、その凹部内での滑動要素3の過剰な摩擦、摩耗又はジャミングを導く可能性がある。
弾性的に懸架される滑動要素による骨への骨プレートの弾性結合は、骨折した骨の1つ又は複数の骨区分に応用しながら、他の骨区分を、標準的骨締結具、例えば非ロック又はロックスクリュー等を用いて同じ骨プレートに固定できる。
図10は、円筒形骨と関連付けた骨プレート1の断面図であり、プレート1は複数の非共線的な骨釘20を用いて骨10に付着される。骨釘20は、ねじ切り頭部21を有し、滑動要素3の対応するねじ切り貫通孔14の中へ確実にロックする。骨釘20は、骨における多平面固定のために円滑な軸部25を有し、円滑な軸部は、釘の長手軸の方向に作用する力の滑動要素3への伝達を防止する。
図11は、滑動要素3のねじ切り貫通孔14を通過する骨プレート1の横断面図である。滑動要素3は、少なくとも部分的に凹部5に囲繞される。特定の実施形態において、滑動要素は、上部、底部及びプレート中央寄りに囲繞されるが、特定の実施形態において、側面においては実質的に露出する。1つの側面を開放しておくことによって、滑動要素を、所定の位置へドロップでき、シリコンを成形できるので、これに被せてプレートを溶接する必要がない。この実施形態において、凹部5は、骨プレート1の側面から形成され、プレート底面6まで貫通し、プレート上面7へ向かって延びる。滑動要素3は、エラストマルーメン26によって凹部5内に懸架される。エラストマルーメン26は、凹部5及び/又は滑動要素3の一部分に選択的に接合されて、骨プレート1に対する滑動要素3の所望の弾性的拘束に影響を及ぼす。例えば、一実施形態において、滑動要素3の表面27は、エラストマルーメン又はエラストマ材料に接合される。図11は、滑動要素が運動を抑制される状況を示す。金属・金属間接触及び摩損を防止することに加えて、滑動要素のこの弾性的拘束は、特にスクリューが滑動要素のスクリュー穴の軸に対して正確に平行に挿入されない場合に、ねじ切りスクリュー頭部の滑動要素への係合を容易にする。
図12は、ねじ切り貫通孔14を持つ滑動要素3が見えるように底部を除いた骨プレート1の底面図である。滑動要素3は、優先的に長手方向の運動を許容するエラストマルーメン26によって骨プレート1の側面に形成された凹部5に囲繞される。この図は、滑動要素3の長手寸法が凹部5の対応する長手寸法より小さい実施形態を示す。長手寸法のこの差は、プレート1に対する滑動要素3の許容可能な運動を決定する。この制御された運動範囲は、0.1〜2mm好ましくは0.3〜1mmの範囲である。図示する実施形態において、滑動要素3は、骨プレートの外面まで延びない。図12は、滑動要素3のエッジと凹部エリア5のエッジとの間のエラストマ26を示す。他の実施形態において、エラストマは、滑動要素3を取り囲む又は包むエラストマルーメン26である。
図13は、上面7を持つ骨プレート1及びねじ切り貫通孔14を持つ滑動要素3の斜視図である。この図は、「骨プレートの側面」(即ち、上面又は骨対向面ではなく)の凹部を示し、これを介して滑動要素3及びエラストマルーメン26を挿入できる。
図14は、骨プレート1の底面6を越えて下向きに突出する滑動要素3を示す。ねじ切り貫通孔14を持つ滑動要素3は、凹部の中に納まる。図示するエラストマルーメン26は、滑動要素3を取り囲む。この図は、内部滑動要素3が骨プレートの側面の空洞(即ち骨対面又は上面ではない空洞)内に少なくとも部分的に囲繞されることを示す。この図は、底面の下方へ延びるスライダの部分を示すように設計されている。それでも、空洞は、プレートの側面に在る。滑動要素3の表面27は、エラストマルーメン又は弾性材料に接合される。
一実施形態において、外面と骨対向面とを有する骨プレートが提供され、骨プレートは、内部滑動要素を備える。各滑動要素は、対応するねじ切りスクリュー頭部を有する骨スクリュー又は釘用のねじ切り受け穴を含む。滑動要素は、プレートの長手軸に対して平行の制御された変位を被るが、プレートの長手軸に対して直交する変位に対しては実質的に抑制される。ねじ切り頭部を持つ骨スクリューは、骨プレートを骨表面に圧迫することなく、滑動要素の中のねじ切り受け穴に堅固に固定できる。従って、骨区分は、骨プレートの長手軸に対して平行の制御された変位の可能性を保持しながら、骨プレートに固定的に固定できる。変位の量は、骨プレート内の滑動要素の運動外包によって制御される。
滑動要素は概ね棒形であり、長方形断面を持つ。他の実施形態において、他の断面形状、例えば正方形、楕円形、湾曲又はプレートの断面形状に類似する湾曲長方形等を使用できる。滑動要素は、プレートの凹部の中へ嵌合するサイズ及び形状を持ち、且つ、所望の運動量を可能にするサイズを持つことだけが求められる。滑動要素は、医学的に受容される任意の材料、例えば限定されないが、チタン又はステンレス鋼等の金属で構成される。
滑動要素は、プレートの長手方向に作用する荷重に応答するプレートに対する滑動要素の並進運動の量を決定するばね要素によって、プレートの中に弾性的に懸架される。この弾性サスペンションは、プレート−骨間固定構成体の重量支持に応答して骨プレートに付着された隣り合う骨区分間のダイナミックな運動を可能にする。ばね要素は、滑動要素とは別個のばねとするか又は滑動要素の一部とすることができる。他の実施形態において、ばね要素は、エラストマ材料である。
荷重応答性の滑動要素を介した骨−プレート間の弾性固定は、骨折部位における制御された対称的な運動を可能にし、これは、仮骨形成による骨折治癒を促進することが知られている。更に、弾性固定は、固定点における荷重配分を強化して、応力の集中を減少することによって、構成体の強度を強化する。弾性固定は、更に、固定構成体が過度に剛性であることよる応力遮蔽(stress-shielding)によって引き起こされる骨吸収及び空洞形成を減少する。
弾性固定は、エラストマの使用によって可能になる。エラストマは、プレート又は滑動要素の表面の少なくとも一部分に確実に付着して、骨プレートに対する滑動要素の所望の弾性的拘束を可能にする。
特定の実施形態において、エラストマは、空隙(例えば、エアポケット)が無いか、又は実質的に空隙がない。他の実施形態において、エラストマは、エラストマの圧縮性を増すことによって、更にシステムの実効剛性を減少できる空隙を有する。
エラストマは、シリコン等(但し、これに限定されない)の医療に適する任意のエラストマとすることができる。特定の実施形態において、エラストマは、所望の移動量/弾性を可能にする0.1〜50MPaの範囲の弾性率を有する。特定の実施形態において、エラストマ材料の弾性率及び処方は、エラストマ内部で異なることができる。例えば、2つの異なるエラストマを使用するか又は異なる厚み又は粘度のエラストマを使用できる。
特定の実施形態において、エラストマは、滑動要素を取り囲む又は包むエラストマルーメンを含む。他の実施形態において、エラストマは滑動要素と凹部の壁との間に在る。
特定の実施形態において、滑動要素は、単独要素として又はエラストマルーメンと一緒に取外し可能とすることができる。言い換えると、特定の実施形態において、滑動要素は、プレートの中へ組み込まれ、シリコンは、滑動要素とプレートを一緒に接着するように成形される。他の実施形態において、滑動要素外部にシリコンを成形して接着し、その後、この構成要素をプレートへ押し込むことができる。この場合、プレートには接着されない。「無負荷」のモジュラー骨プレートの他の実施形態において、外科医は、弾性滑動要素、非弾性ロック要素又は非ロック要素を挿入できる。
特定の実施形態において、プレートにおける滑動要素の弾性サスペンションは、プレートの長手方向の荷重に応答するプレートに対する滑動要素の二方向並進運動の量を決定する2つ以上のばね要素によって得られる。
特定の実施形態において、ばね要素は、個別のばねで構成される。特定の実施形態において、ばね要素は、滑動要素の一部である弾性構造体又は材料によって形成された一体化ばねで構成される。
特定の実施形態において、ばね要素は、滑動要素に隣接するプレート区分の一部である弾性構造体又は材料によって形成された一体化ばねで構成される。
特定の実施形態において、ばね要素は、滑動要素(図12の3として示す)とプレート(1)との間に配置される弾性材料(エラストマ)によって形成される。
特定の実施形態において、ばね要素は、滑動要素を包む又は取り囲む弾性材料(エラストマ)ルーメンによって形成される。例えば、エラストマは、凹部の壁と滑動要素のエッジとの間ではなく、滑動要素の上及び下に在る。
一実施形態において、滑動要素は、2つ以上のばね要素の間に懸架される(例えば、図7に示すようなばね要素)。この構成によって、2つの対向する方向への弾性変位が可能になる。図7は、2つのばね要素が滑動要素と一体的である実施形態を示す。別の実施形態において、ばね要素は、滑動要素とは別個のものとすることができる。別の実施形態において、ばね要素は、別個のばね要素と一体的ばね要素の組合せである。他の実施形態において、ばね要素は、エラストマ又はエラストマルーメンとすることができる。他の実施形態において、別個のばね等のばね要素とエラストマの組合せが可能である。例えば、滑動要素の片側はばね(別個又は一体的)を持ち、滑動要素の他方の側のばね要素はエラストマとすることができる。
特定の実施形態において、個別の又は一体的ばね要素とエラストマばね要素との組合せとすることができる。例えば、個別及び/又は一体的ばね要素及び滑動要素は、エラストマルーメンによって取り囲むことができる。又は、個別又は一体的ばね要素と、凹部の壁と滑動要素との間のエラストマ材料の組合せとすることができる。
特定の実施形態において、プレートにおける滑動要素の弾性サスペンションは、規定された休止位置において各滑動要素を保持し、且つ、プレートの長手方向の荷重に応答するプレートに対する各滑動要素の一方向並進運動の量を決定するばね要素によって得られる。
特定の実施形態において、骨折プレートは、複数の(特定の実施形態では1つより多く、特定の実施形態では2つより多い)貫通孔で構成され、各々の貫通孔は、滑動要素及びばね要素を有する。特定の実施形態では、骨折プレートは、全て同じ形状の、同じ材料の滑動要素及びばね要素を有する。特定の実施形態において、骨折プレートは、異なる形状及び/又は異なる材料音滑動要素及び/又は異なるばね要素を有する。例えば、プレートの特定の区分は、個別のばね要素を持つことができ、プレートの他の区分は、滑動要素と一体的なばね要素を持つことができ、他の区分は、エラストマ材料のばね要素を持つか、又はプレートの他のエリアは、個別の、一体的な及び/又は弾性材料のばね要素の組合せを採用できる。
別の実施形態において、規定された休止位置において滑動要素を保持するために単一のばね要素が使用される。これによって、骨スクリューの挿入時に滑動要素の安定した位置が保証される。その後の固定構成体の負荷(患者が骨折した骨に体重又は力を加えたとき起こるもの等)は、滑動要素の運動を開始させ、運動の開始は、ばね要素の予荷重によって規定できる。荷重が取り除かれると、滑動要素は、その規定された休止位置へ復帰する。
別の実施形態において、滑動要素は、重合体膜等の低摩擦層の中に部分的に又は完全に埋め込める。この配列は、滑動要素とプレートとの間の摩擦及び摩耗を減少する。
別の実施形態において、滑動要素及びこれに対応する固定用穴は、互い違いの配列で構成される。例えば、図1、図3及び図10参照。直線に沿って配列される滑動要素に比べると、この互い違いの固定は、捩じれ荷重を受けたときの固定構成体の安定性を増す。
特定の実施形態において、1つ又は複数の滑動要素は、プレートの骨対向面を越えて延びて、受け穴が非ロック骨スクリューによって骨表面に圧迫されているとき骨表面上方にプレート本体を上昇させる。これは、滑動要素の弾性サスペンションと一緒に、プレートと骨表面との間の制御された相対的運動を可能にする。図14参照。
特定の実施形態において、内部滑動要素は、プレートの側面の空洞内に少なくとも部分的に囲繞される。図11は、プレートの側面の空洞内に囲繞された滑動要素を示す。
別の実施形態において、滑動要素のねじ切り受け穴は円錐形である。これによって、滑動要素における対応するねじ切り円錐形スクリュー頭部のポジティブロックを可能にする。
別の実施形態において、滑動要素のねじ切り受け穴は円筒形であり、スクリュー頭部及びスクリュー軸部において同じねじ山外径及びねじ山ピッチを有する骨スクリューと一緒に使用される。これは、スクリュー軸部がスクリューの挿入全体を通じて滑動要素のねじ切り穴に係合するという利点を有する。それによって、この実施形態は、スクリュー頭部が滑動要素に圧迫されるのを防止する。スクリュー頭部が滑動要素のねじ切り穴の中に容易に係合できるようにすることは、骨プレート内部における滑動要素の予荷重も防止する。
特定の実施形態においては、複数の骨スクリューがある(例えば、図3及び図9参照)。特定の実施形態において、装置は、更に、ねじ切り頭部と円滑なペグ軸部を持つ1つ又は複数の非共線的骨ペグを備える(例えば、図10参照)。別の実施形態において、1つ又は複数の滑動要素は、滑動要素のねじ切り穴と確実に係合するねじ切り頭部を持つペグを用いて骨に接続できる。ロックスクリューの代わりにロックペグを使用することによって、プレート内部の滑動要素の予荷重の危険を減少する。固定強度を強化するために、ロックペグは、多平面構成で挿入できる。この場合、滑動要素の少なくとも2つのねじ切り穴は共線的ではない中央軸を有する。
特定の実施形態において、プレートはねじ切り及び/又は非ねじ切りスクリュー穴を含む。
別の実施形態において、滑動要素は、骨プレートの特定の区分のみに配置され、骨プレートの別の区分は、ねじ切り又は非ねじ切り穴(業界で使用されるような)を有する。一実施形態において、ばね要素及び滑動要素は、プレートの1つの区分に配置され、プレートの別の区分は、ばね要素及び滑動要素無しでねじ切り又は非ねじ切り穴を有する。ばね要素及び滑動要素無しの標準的ねじ切り穴又は標準的非ねじ切り穴(業界において使用されるような)(本明細書及び請求項においては静止受け穴と呼ぶ)を持つ骨プレートは、骨表面へのプレートの圧迫及び堅固な固定を可能にする一方、滑動要素/ばね要素を持つ骨区分は、対応する骨区分の弾性固定を可能にし、固定構成体の間欠的負荷に応答する骨片間運動を得る可能性を保持する。例えば、骨折の一方の側においては、骨プレートは、ばね要素及び滑動要素を用いる弾性サスペンションを備え、骨折の多方の側の対応する骨区分においては、骨プレートは、静止受け穴を備える(弾性サスペンションを備えない)。又、特定の実施形態において、骨プレートの同じ区分において、滑動要素/ばね要素及び静止受け穴を一緒に使用できる。例えば、1つおきの穴を静止受け穴とすることができる(他の穴は弾性サスペンション貫通孔である)。他の実施形態において、弾性サスペンション(滑動要素及びばね要素を使用する)と静止受け穴の混合体であり、混合体は、骨折を横切る骨プレート全体で同じとすることができる。他の実施形態において、静止受け穴と弾性サスペンションの混合体は、プレート内部で変動できる。例えば、骨折の一方の側はより多くの弾性サスペンション及びより少ない静止受け穴を持ち、骨折の多方の側においては、弾性サスペンションより多くの静止受け穴を持つ。言い換えると、骨プレートの異なる部分は各々異なる組合せを使用できる。
別の実施形態において、滑動要素及び1つ又は複数のスクリュー穴は、同じプレート区分において組合せできる。これによって、標準的非ロックスクリューを用いてプレートを骨表面に一時的に固定できるようして、滑動要素へのロックスクリューの取付けを容易にできる。
本発明は、可撓性プレートを用いて骨折を固定する方法も提供する。特定の実施形態において、方法は、骨折した骨部材をほぼ整列させることと、骨プレートにおいて弾性的に懸架される複数の滑動要素の受け穴に堅固に接続する複数の骨締結具によって骨折を横切って骨プレートを当てること、を含む。滑動要素は、実質的にプレートの長手軸に対して直交する変位を防止しながら、骨プレートの長手軸に対して平行の制御された並進運動を許容するように構成される。骨スクリューは、骨プレート又は滑動要素を骨表面に圧迫することなく、滑動要素に堅固に固定される。
特定の実施形態において、受け穴は、骨プレートの上面又は骨対向面に対して直交する方向の1つ又は複数の受け穴の運動を実質的に抑制しながら、優先的にプレートの長手軸に沿ったプレートに対する並進運動を許容するように懸架される。
特定の実施形態において、ばね要素は、加荷重がないときプレートに対して中立位置に受け穴を懸架し、且つ、加荷重に応答してプレートに対して受け穴の制御された弾性並進運動を可能にする弾性ばねとして作用する。
特定の実施形態において、可撓性要素は、プレートと骨部材との間の衝撃荷重の伝達を減衰させて、固定構成体の安定性を強化する。
特定の実施形態において、可撓性要素は、単一の骨区分に関連付けられる複数の固定要素間の荷重伝達の配分を強化する。標準的な静止プレートの場合、典型的には、整列が完ぺきではないので1つのスクリューが残りのスクリューより多くの荷重を受ける。本発明の弾性サスペンション(弾性的に懸架された滑動要素)を使用することによって、スクリューは変位できるので、荷重はスクリュー全てに亘って配分され、弾性要素は負荷を受けないことさえある。
特定の実施形態において、可撓性要素は、受け穴とプレートとの間の直接接触を少なくとも部分的に防止して、表面摩耗及び材料の疲労を減少する。
特定の実施形態において、2つ以上の受け穴及びプレートの弾性サスペンションは、骨折の一方の側で実現される一方、対応する骨区分は静止受け穴に取り付けられる。
特定の実施形態において、2つ以上の受け穴及びプレートの弾性サスペンションは、骨折の両側において実現される。
特定の実施形態において、2つ以上の受け穴及びプレートの弾性サスペンションは、静止受け穴を持つ骨プレート構成体に比べて40〜90%の範囲で固定構成体の軸方向剛性を実質的に減少する。
特定の実施形態において、1つ又は複数の可撓性要素は、骨折の治癒の進行を推定するための手段として、受入れ要素とプレートとの間の荷重伝達の存在又は大きさを捕捉するために、変位、圧力又は荷重を計測するためのセンサを含む。例えば、センサは、骨がいつ治癒したかを測定する助けとなるように埋め込むことができる。例えば、センサが変位を計測する場合、骨が治癒するとき部分の変位が時間とともに減少すると予想できる。センサが荷重を計測する場合、プレートに対する荷重は骨の治癒と共に減少すると予想できる。
特定の実施形態において、エラストマ材料は、エラストマルーメンを含むことができ、1つ又は複数の可撓性要素のエラストマルーメンは、前記センサに過渡的動力を提供するためのエネルギ発生のための手段を含む。
特定の実施形態において、図1〜図14を参照して上に説明する骨プレートのいずれも、埋植後に1つ又は複数の動的パラメータを計測できる「スマート」骨プレートとして設計できる。計測できるパラメータの一例は、骨の治癒を評価するために使用できる骨折空隙における運動である。標準的な一体構造的ロックプレートと比べて、懸架されプレートから分離された滑動要素を持つダイナミック骨プレートは、1つ又は複数のセンサを組み込めるように独自に設計される。
図15は、図12に示す骨プレート1と同様の骨プレート101の断面図である。図15に示すように、骨プレート101は、ねじ切り貫通孔114を持つ滑動要素103を含むことができる。滑動要素103は、長手方向の運動を可能にするエラストマルーメン126によって骨プレート101の側面に形成された凹部105の中に囲繞できる。図15に示すように、滑動要素103の長手寸法は、凹部105の対応する長手寸法より小さい。長手寸法の差は、プレート101に対する滑動要素103の許容される運動を決定する。
更に図15に示すように、骨プレート101は、滑動要素103又は骨プレート102の本体に動作可能に結合された1つ又は複数のセンサを含むことができる。センサ130は、トランスミッタ要素132に動作可能に結合でき、トランスミッタ要素は、骨プレート101の外部に配置されたレシーバ要素134と通信するように構成できる。一実施例において、トランスミッタ要素132は、レシーバとしても作用でき、レシーバ要素134は、トランスミッタとしても作用できる。斯かる装置は、一般にトランスシーバとして知られている。無線周波数遠隔測定、無線周波数識別、ブルーツゥース、ジグビー、近距離通信、体内通信及びこれに類似するものを含めて(但し、これらに限定されない)適切な任意の無線通信手段を使用できる。トランスミッタ要素132は、その中に組み込まれた動力源を含むか、又は、動力源は、トランスミッタ要素132とは別個に骨プレート101に組み込める。その代わりにまたはこれに加えて、外部動力源をレシーバ要素134に組み込むか又は別個の外部要素として設置できる。
センサ130は、骨プレート101、滑動要素103、エラストマルーメン126又はこれら組合せの動的パラメータを計測するために適する任意のセンサを含むことができる。一実施例において、1つ又は複数のセンサ103は、骨プレート101、滑動要素103、エラストマ層126又はこれら組合せの中に組み込める。センサ103は、自己動力式とするか又は外部動力源による動力を受けることができる。一実施例において、センサ130は、骨プレート101の性能を評価するために骨プレート101に対する滑動要素103の運動を評価するのに適切な様式で、骨プレート101の中へ組み込める。別の実施例において、センサ130は、骨プレート101に対する滑動要素103の相対的位置を計測するように構成できる。別の実施形態において、センサ130は、滑動要素103の変位を直接計測するように構成できる。更に別の実施例において、センサは、滑動要素103の運動を間接的に評価する手段として、エラストマルーメン126内の圧力又は骨プレート101の隣接する本体に対してエラストマルーメン126が適用する圧力を計測するように構成できる。運動を評価する際、センサ130は、滑動要素103の長手方向の運動を計測するように構成できる。他の方向の運動も、センサ130によって評価できる。
センサの代わりに又はセンサに加えて、骨プレート101は、少なくとも1台の加速度計を含むことができる。一実施例において、2台の加速度計を使用し、1台は骨プレート101の本体上または本体内に配置し、他の1台は、滑動要素103又はエラストマルーメン126内に配置して、滑動要素103の相対的加速を測定できる。
本明細書において説明するダイナミック骨プレートの利点のいくつかを更に説明するために、下に2つの実施例を示す。具体的には、実施例1は、ロックされた骨接合プレートにおける弾性サスペンションスクリュー穴が衝撃荷重をどの程度減衰できるかを示すための第1生体力学研究の結果を示す。実施例2は、ダイナミックロックプレートが骨折治癒を刺激するために軸方向の対称的ダイナミゼーションをどの程度提供できるかを示すための第2生体力学研究の結果を示す。
実施例1
要約:ロックプレート構成体の高い剛性は、医原性骨折及び衝撃疲労に寄与する可能性がある。逆に、弾性固定による衝撃減衰は、長期的な動的荷重に曝される耐荷構造体の耐久性を増すための主要な設計上の戦略である。この実施例は、ロックスクリュー穴がロックプレート内部のシリコン外包内に弾性的に懸架される「ダイナミック」ロックプレート設計によって与えられる衝撃減衰を評価した。
生体力学研究において、大腿骨幹部代用物の10mm骨折空隙を架橋(bridge)するための3つの別個の固定構成体即ち標準ロックプレート、ダイナミックロックプレート及びIlizarovリング固定器について、衝撃減衰を評価した。まず、3つの固定構成体を、それら軸方向剛性を測定することによって特徴付けた。その後、力の伝達の減衰を量化するために、構成体を、所定範囲の軸方向の衝撃荷重にさらした。
標準ロックプレート構成体と比べると、ダイナミックプレート構成体は、58%剛性が小さく(p<0.01)、Ilizarov構成体は、88%剛性が小さかった(p<0.01)。衝撃減衰は、構成体の剛性に反比例的に相関することが判明した。標準プレート構成体に比べて、ダイナミックプレート構成体及びIlizarov構成体は、それぞれ48%(p<0.01)及び74%(p<0.01)まで、衝撃荷重の伝達を減衰することが判明した。従って、生体力学研究の結果は、構成体の剛性が低ければ衝撃荷重の減衰を高めることによって、ダイナミックロックプレートが標準ロックプレートに比べて著しく大きい衝撃減衰を提供することを実証した。
背景:骨接合プレート構成体は、骨折治癒の過程が徐々に生理学的荷重伝達を回復するまで、骨折を横切って長期的に荷重伝達に耐えなければならない。臨床的に、このプレート骨接合は、骨折の治癒と固定不良との間の競争であり、長期の又は過剰な負荷は、固定構成体の緩み又は疲労故障の危険を増す。
弾性サスペンションは、長期的に動的負荷に曝される構成体の耐久性を増すための主要な設計戦略である。衝撃負荷の場合、弾性サスペンションは、長期に亘って衝撃エネルギを分配することによって荷重の大きさを減衰して構造的損傷を防止する緩衝器として作用できる。骨折固定に固有の伝統的なIlizarov固定器は、薄いキルシュナーワイヤによって外側円形フレームの内部で骨折片を弾性的に懸架する。逆に、現代のロックプレートは、非常に堅固な固定方法を表し、ねじ切りスクリュー頭部を持つロックスクリューは、ねじ切りプレート穴の中へ確実にロックされる。これらロックプレート構成体は、弱体の骨減少症の骨において伝統的な非ロック構成体に比べて固定を改良できる。しかし、弾性固定がない場合、ロックプレート構成体は、その堅固な固定がスクリュー−骨間及びスクリュー−プレート間の境界面に応力集中を誘導することが分かっているので、骨折及びインプラント疲労のかなりのリスクも示す。
ロックプレートを用いた弾性固定を可能にするために、本発明者は、「ダイナミック」ロックプレートを開発した。このロックプレートにおいては、ロックスクリュー穴はロックプレート内部のシリコン外包内で弾性的に懸架される。本発明者は、ダイナミックロックプレートによって与えられる弾性サスペンションは、同時代の剛性ロックプレートに比べて骨接合構成体を介して伝達される衝撃荷重を減衰できると仮説を立てた。非常に可撓性の固定システムと歴史的に比較するために、本発明者は、更に、Ilizorov固定器のテンションワイヤサスペンションは、ロックプレートによる堅固な固定に比べて優れた衝撃荷重の減衰を提供すると仮説を立てた。生体力学研究の目標は、骨接合構成体の剛性と衝撃荷重の伝達を減衰するためのその能力との間の相関を図表化することであった。斯かる衝撃減衰挙動は、臨床的な利点を提供し得ることにより、ピーク負荷の減少は、インプラント破砕、骨折、又は固定不良の危険を潜在的に軽減できるだろう。
方法の説明:生体力学研究において、大腿骨幹部代用物における10mm骨折空隙を架橋するために応用される3つの別個の固定構成体、即ち標準ロックプレート、ダイナミックロックプレート及びIlizarovリング固定器について、衝撃減衰を評価した。まず、3つの固定構成体を、準静的負荷の下でその軸方向剛性を測定することによって特徴付けた。その後、生理学的負荷の大きさを代表する所定範囲の軸方向の衝撃荷重力を構成体に加えた。はっきりと規定された衝撃荷重に応答して各構成体を介して伝達された力の大きさ及び長さを測定することによって、衝撃減衰を量化した。
標準ロック(「標準」)及びダイナミックロック(「ダイナミック」)プレートは、図16Aに示すように大腿骨骨折の固定のための典型的な大きい骨片プレート(fragment plate)を代表する同一の断面形状を持つ。標準及びダイナミックプレートは、9つの穴を有し、長さ204mm、幅18mm、厚さ6mmであり、Ti6Al4V ELIチタン合金(F136−13,2003)で製造される。標準プレートとダイナミックプレートとの間の唯一の相違は、ダイナミックプレートのロック穴が、図16Bに示すように、プレート側面ポケット内のシリコン外包において弾性的に懸架される個別の滑動要素に一体化されたことである。ポケット形状は、滑動要素の約1mmの軸方向並進運動を許容するが、残りの全ての自由度は厳密に抑制される。従って、弾性サスペンションは、圧縮負荷に応答して骨折空隙を横切る制御された軸方向運動を可能にしながら、曲げ及び捩じれ負荷に対して安定した固定を提供する。シリコンサスペンションは、50Aジュロメータ硬さの長期埋植可能な医療用シリコンエラストマ(HCRA 4750、米国カリフォルニア州サンタポーラ、Applied Silicon)からトランスファー成形した。標準及びダイナミックプレートは、同じ直径5.0mmのバイコルチカルセルフタップロックスクリュー(bicortical self-tapping locking screw)を受け入れる。
試験片間の変動可能性を最小限に抑えるために、プレートは、直径27mm及び壁厚み7mmを持つ大腿骨幹部を代表する円筒形の丈夫な代用物(3403−10、米国ワシントン州バション、Sawbones)において評価した。長さ270mmの骨幹部代用物の中央部の10mm幅の切骨空隙を架橋するためにプレートを使用した。この切骨空隙は、骨折部位において骨の連続性が欠けるために骨接合構成体を介する全荷重伝達に依存する粉砕骨折の生体力学的制約を模倣した。標準及びダイナミックプレートは、図17Aに示すように、切骨空隙の両側においてプレート端部からロック穴1、3及び4に配置された3つのスクリューを用いて(中央ロック穴は切骨空隙の上方に配置され、空のまま残される)付けられる。Ilizarov構成体は、図17Bに示すように、切骨空隙の上下の2つの直径180mmのリングで構成される。各リングに、2本の1.8mmキルシュナーワイヤを当てて、130kgまで聴力を与えた。
構成体の剛性及び衝撃減衰を、3つのグループ(標準、ダイナミック及びIlizarov)の各々について3つの試験片に関して評価した。構成体の剛性は、サーボ−水圧材料テストシステム(Instron 8800、マサチューセッツ州ノーウッド)において評価した。構成体は、遠位においてロードセルに、且つ、近位においてアクチュエータに堅固に接続した。アクチュエータは、50N増分で1000Nまで軸方向の静的圧縮を加えた。構成体の剛性は、各荷重増分を対応するアクチュエータ変位増分で割ることによって推論した。
衝撃減衰は、図17Cに示すように固定構成体に対して制御されたスケーラブルな衝撃の適用のためのモノレール落下テストシステムを用いてテストした。落下テストシステムは、衝撃試験規格(F1446−13、2013)に準拠するように設計され検証され、これまでの生体力学研究の衝撃テストシミュレーションと相関された。軸方向衝撃は、5、10、20、40及び60mmの漸増する落下高さhdropから質量2.0kgを垂直落下させることによって誘発した。これは、0.1〜1.2ジュールのエネルギEIの範囲の衝撃を誘発した。衝撃は、垂直に整列した骨幹構成体の近位端に集中した。構成体の遠位端は、単軸ロードセル(Instron 12619、マサチューセッツ州ノーウッド)の中央に堅固に固定した。このロードセルは、骨接合構成体を介して伝達された衝撃力Frを記録した。Fr信号は、データ取得システム(PCI−6221、米国テキサス州オースチンNational Instruments)を用いてサンプルレート20kHzで記録され、衝撃試験規格(F1446−13、2013)が指定するように600Hz低域フィルタで処理した。その後、Fr信号を後処理して、衝撃時に伝達されたピーク力FT,peak及び衝撃持続時間tIを測定した。衝撃持続時間は、FT信号の開始からFT,peakまでを評価した。各グループの3つの構成体を、5〜60mmの範囲の衝撃落下高さhdropの各々でテストした。
衝撃力の結果を統計的に分析するために、FT,peak及びtI値を、α=0.05の有意水準でANOVAを用いて3つの固定構成体間で比較し、その後、構成体の対間の有意差を測定するためにボンフェローニ調整対比較(Bonferroni adjusted pair-wise comparison)を行った。
結果:1000Nまでの圧縮の軸荷重―変位の履歴は、図18Aに示すように、標準構成体の場合不変の剛性を示したが、ダイナミック及びIlizarov構成体の場合には徐々に剛性を増した。具体的には、標準プレート構成体は、300Nの負荷(3213N/mm)及び1000Nの負荷(3265N/mm)において比較的固かった。ダイナミックプレート構成体の平均剛性は、300N負荷における646N/mmから1000N負荷における992N/mmまで増大した。Ilizarov構成体の平均剛性は、300Nにおける138N/mmから1000Nにおける260N/mmまで増大した。図18Bに示すように、300Nの圧縮負荷において、ダイナミック構成体は、標準プレート構成体より58%剛性が小さく(P<0.01)、Ilizarov構成体は88%剛性が小さい(P<0.01)。
衝撃テストにおいて、伝達された力FT,peakは、図19Aに示すようにパワー相関において衝撃エネルギのレベルが増大すると、増大した。所与の衝撃エネルギレベルの場合、最も剛性の高い構成体は、最も高いFT,peakを誘発し、従って、許容した衝撃減衰量は最も小さかった。衝撃持続時間tIは、図19Bに示すように、衝撃エネルギに関係なく所与の固定構成体について表面上不変であった。但し、構成体間のt1は、1桁の大きさで変動し、より剛性の高い構成体は衝撃持続時間がより短かった。標準、ダイナミック及びIlizarov構成体の平均衝撃持続時間は、それぞれ、0.7s(SD0.03s)、1.7s(SD0.09s)及び7.5s(SD0.56s)であった。
ダイナミックプレート構成体は、標準ロックプレートに比べて平均で488N(SD64N)だけFT,peakを著しく減少した。FT,peakの減少は、図20Aに示すように、落下高さ5mmにおける48%(p<0.01)から落下高さ60mmにおける22%(p<0.01)までの範囲であった。このFT,peakの減少は、図20Bに示すように典型的な力の履歴グラフにおいて示すように、衝撃持続時間tIの増大に合致する。ダイナミックプレート構成体は、標準ロックプレート構成体に比べてtIを平均で133%(p<0.01)だけ増大した。
Ilizarov構成体は、標準ロックプレートに比べてFT,peakを著しく減少した。FT,peakの減少は、落下高さ5mmにおける60%(p<0.01)から落下高さ60mmにおける74%(p<0.01)までの範囲であった。Ilizarov構成体は、標準構成体に比べて平均で325%(p<0.01)だけtIを著しく増大した。
論証:骨折固定の場合、Ilizarovリング固定器は、ワイヤ「スポーク」上の外部固定器リングの弾性サスペンションによって固有の減衰メカニズムを提供する。その優れた耐久性によって、Ilizarov固定器は、しばしば、癒合遅延又は非癒合の場合に髄内ネイル又はプレート構成体が広範囲の重量支持(extended weight bearing)に耐えられないとき、修正手術のために使用される。
これに対して、本発明者の知る限り、衝撃減衰機構は、骨接合プレートにおいては研究又は実現されていない。プレート構成体は、典型的にはIlizarov固定器より1桁の大きさで剛性が高い。Ilizarov固定器と異なり、プレート構成体は、プレート端部において医原性の骨折を誘発するという良く知られたリスクを負う。現代のロックプレートは、プレート端部においてより高い応力集中部を誘発し、高い応力集中部は、構成体の強度を標準非ロックプレートに比べて最高22%減少することが立証されている。更に、ロックプレート構成体のインプラント疲労及び固定不良の発生率は、12%と高いことが判明している。
プレート骨接合におけるシリコンエラストマの使用は、新しい概念であるが、長期的に埋植可能なシリコンは、指関節等の永久的インプレントのために臨床的に既に使用されている。シリコンゲルと異なり、指関節及び本生体力学研究のダイナミックロックプレートに使用されるシリコンエラストマは、非常に高い生体適合性及び生体不活性を有する。
本生体力学研究の結果は、ダイナミックロックプレートの衝撃減衰要素が標準ロックプレートに比べて荷重伝達を著しく減少できることを実証した。最も固い構成体(標準)は、減衰量が最も小さく、最も高いピーク力FT,peakを伝達しており、衝撃減衰が、構成体の剛性に逆相関することが判明した。ダイナミックロック構成体が衝撃持続時間を増大しながらピーク力を減少したという観察結果は、長い衝撃持続時間に亘って衝撃エネルギを分配することによってピーク負荷を減少する緩衝器の減衰メカニズムに一致する。ダイナミック構成体のこの衝撃減衰作用は、臨床的利点を与え、ピーク荷重伝達の減少は、インプラントの破損、骨折又は固定不良のリスクを緩和できる。更に、ダイナミックロックプレートの弾性固定は、標準ロックプレートに比べて構成体の剛度を減少し、このことが骨折部位において誘発される運動量を増大する。仮骨形成による生物学的骨折治癒は骨片間運動によって刺激されるので、ダイナミックプレートによって与えられる弾性固定は、更に、治癒の促進に必要な生体力学的環境を支持できる。
結論として、本生体力学研究の結果は、剛性の低い骨折固定構成体は衝撃荷重の伝達を減衰する可能性がより大きいことを実証した。標準ロックプレートに比べて、ダイナミックロックプレートは、著しく低い剛性を有し、衝撃負荷の伝達を著しく減衰する。
実施例2
要約:遠皮層ロック(far cortical locking−FCL)スクリューを持つロックプレート構成体の対称的な軸方向ダイナミゼーションは、骨折治癒の速度及び強度を著しく強化することが判明した。FCLは、弾性的なねじ軸部の屈曲からダイナミゼーションを得るので、直径の小さい骨の骨折に必要とされる短いスクリューに効果的にスケールを合わせることができない。このスケーリングの制限に対処するために、本生体力学研究は、プレート内のロック穴の弾性サスペンションを使用することによってロックスクリューの長さに関係なく対称的な軸方向ダイナミゼーションを導き出す新たなダイナミックロックプレートを評価した。
標準ロック(「標準」)プレート構成体及びダイナミックロック(「ダイナミック」)プレート構成体を、大腿骨幹部の骨幹部ブリッジプレートモデルにおいてテストして、軸負荷に応答する骨片間運動の量及び対称性を測定し、軸負荷、捩じれ及び曲げを受けたときの構成体の剛性を評価した。その後、標準及びダイナミック構成体に対して、故障するまで、軸方向圧縮、捩じれ及び曲げの荷重を動的に加えて、構成体の強度及び故障モードを測定した。また、骨粗鬆症の大腿骨幹部の認証モデルにおいて強度テストを繰り返して、骨粗鬆症の骨におけるブリッジプレートの最悪のシナリオにおける構成体強度及び故障モードを測定した。
標準プレート構成体の1つの体重(700N)軸荷重は、遠皮質(0.32±0.02mm)より近皮質(0.1±0.01mm)において3分の1より小さい非対称的骨片間運動を生じた。標準プレート構成体と比べると、ダイナミックプレート構成体は、近皮質において0.32mmだけ対称的な運動を強化し、遠皮質において0.33mmだけ強化する。ダイナミックプレート構成体は、標準ロック構成体に比べて、77%低い軸方向剛性(p<0.001)、15%低い捩じれ剛性(p=0.03)及び同様の曲げ剛性(p=0.27)を有する。ダイナミックロック構成体と標準ロック構成体との間には、非骨粗鬆試験片の捩じれテストを除いて(このテストにおいて、ダイナミック構成体は、標準構成体より21%強かった(p=0.01))全てのテスト条件の下で目立った差はなかった。
ダイナミックプレート構成体は、対称的に骨片間運動を強化し、且つ、軸方向の制御されたダイナミゼーションを届けることが示され、且つ、強度の点で標準プレート構成体に少なくとも匹敵することが判明した。ダイナミックプレートは、標準ロックスクリューを用いて適用でき、対称的に軸方向ダイナミゼーションを強化して、仮骨形成による自然の骨治癒を促進できる。
背景:骨接合構成体の軸方向ダイナミゼーションは、骨折治癒と固定構成体の故障との間の競争において決定要因となり得る。50年を超える調査は、制御された軸方向ダイナミゼーションが、仮骨形成により二次的骨治癒を動的に刺激することによって骨折治癒の速度及び強さを改良できることを一貫して実証してきた。Goodship及びKenwrightによる画期的研究は、1mmの軸方向ダイナミゼーションは、堅固な固定に比べて3倍以上の強力な治癒及び2倍以上速い治癒を与えることを実証した(Goodship AE, Kenwright J.「実験的脛骨骨折の治癒に対する誘導された微細移動の影響」、J BoneJoint Surg Br、 1985;650−5)。逆に、過度に固い固定構成体によって引き起こされる欠陥骨折運動(deficient fracture motion)は、二次的骨折治癒を抑制して、癒合遅延、非癒合及び固定不良に寄与する可能性があることの充分な証拠がある。堅固な固定は、仮骨形成を抑制するために解剖学的整復及び骨片間圧縮が使用される一次的骨治癒にとって原則的要件である。しかし、完ぺきな整復及び絶対的安定は得ることが困難であり、応力遮断によって骨溶解が誘発される傾向がある。一次的骨治癒は、二次的骨治癒より緩慢であり、且つ、弱く、かなりの再骨折のリスクを負う。
ロックプレートは、固定的角度安定性を与えて、解剖学的整復及び骨片間圧縮よりも血液供給の維持及び機能的整復を強調する生物学的ブリッジプレート技法を可能にする。解剖学的整復及び骨片間圧縮がない場合、ロックされたブリッジプレート構造体は二次的骨治癒に依存する。但し、ロックプレート構成体の初期剛性は、一次的骨治癒のために剛性を最大限に持つように設計された従来のプレート構成体に匹敵する。ロックプレート構成体は、従来の非ロックプレート(時間を経ると徐々に緩む)と異なり、長期間その初期剛性を保持する。
FCLスクリュー又はダイナミックロックスクリュー(DLS)は、スクリュー軸部の弾性固定によって制御された対称的な骨片間運動を許容し、ロックプレート構成体の軸方向ダイナミゼーションを可能にする。羊の脛骨の骨折治癒研究において、FCL構成体の軸方向ダイナミゼーションは、全ての皮質表面において対称的仮骨ブリッジングを与えることが判明し、標準ロックプレートと比較して157%強い治癒を産出した(Bottlang M, Lesser M,Koerber J, Doornink J, von Rechenberg B, Augat P, Fitzpatrick DC, Madey SM, Marsh JL.、「遠皮質ロックはロックプレートで安定させた骨折の治癒を改良できる」、J Bone Joint Surg Am 、2010;92−7:1652−60)。臨床的に、FCLで安定させた31件の連続遠位大腿骨骨折の予測観察研究は、インプラント又は固定の不良無し、癒合までの平均時間16週間及び非癒合率3%を報告した(Bottlang M, Fitzpatrick DC, Sheerin D, Kubiak E, Gellman R, Vande Zandschulp C, Doornink J, Earley K, Madey SM.「遠皮質ロックスクリューを用いた遠位大腿骨骨折のダイナミック固定:予測観察研究」、J Orthop Trauma、2014;28−4:181−8)。これらデータは、ロックプレート構成体の軸方向ダイナミゼーションの必要性及び有効性を支持する一方で、FCL及びDLSスクリューは、小さい直径の骨の骨折に応用できる短いスクリューにスケールを合わせることができない(弾性固定のためには充分に長いスクリュー軸部を必要とするので)。
このスケーリングの制限に対処するために、本生体力学研究は、使用されるロックスクリューのタイプ及び長さに関係なく対称的な軸方向ダイナミゼーションを導き出すダイナミックプレート法と呼ばれる新しい戦略を評価した。本生体力学研究において利用したダイナミックプレートの一実施例において、ロック穴は、図21A及び図21Bに示すように、許容可能な軸方向運動量を制御するシリコン外包によってプレート内に弾性的に懸架される。この生体力学研究は、ダイナミックプレートが、標準ロックプレート構成体に匹敵する強度を維持しながら対称的な制御された軸方向ダイナミゼーションを提供できる、という仮説を検証した。
方法の説明:標準ロックプレート構成体及びダイナミックロックプレート構成体を、軸方向圧縮、捩じれ及び曲げを与えて骨幹部ブリッジプレート構成でテストした。まず、骨片間運動の量及び対称性並びに軸方向圧縮、捩じれ及び曲げにおける構成体の剛性を測定するために、標準及びダイナミックプレート構成体の剛性テストを、非骨粗鬆症の大腿骨幹部の代用物において各主要負荷モードで実施した。その後、その強度及び故障モードを測定するために各負荷モードにおける故障までテストした。又、骨粗鬆症の骨におけるブリッジプレートの最悪シナリオにおける構成体の強度及び故障モードを測定するために、骨粗鬆症大腿骨幹部の認証モデルにおいて故障テストを繰り返した。
標準及びダイナミックプレートは、大腿骨骨折の固定のための典型的な大きい骨片プレートを代表する同一の断面形状を持つ。標準及びダイナミックプレートは、8つの穴を持ち、長さ204mm、幅18mm、厚み6mmであり、Ti6A14V ELIチタン合金で製造した。標準プレートとダイナミックプレートとの間の唯一の相違は、図21A及び図21Bに示すように、ダイナミックプレートのロック穴がプレート側面ポケット内部のシリコン外包の中で弾性的に懸架される個別の滑動要素に組み込まれたことである。側面ポケットは、プレートの両側から交互パターンで配列されて、その結果、互い違いのロック穴構成体が得られる。ポケットの形状は、滑動要素の約1mmの軸方向並進運動を許容するが、残りの全ての自由度を厳密に抑制した。従って、弾性サスペンションは、曲げ及び捩じれ負荷に対して安定した固定を与えながら、圧縮負荷に応答して骨折空隙を横切る制御された軸方向運動を可能にした。シリコンサスペンションは、ジュロメータ硬度50Aの長期間埋植可能な医療用シリコンエラストマ(HCRA 4750、米国カリフォルニア州サンタポーラApplied Silicon)からトランスファー成形した。標準及びダイナミックプレートは、同じ直径5.0mmセルフタップロックスクリューを受け入れた。プレートは、10mmの骨折空隙を持つ大腿骨幹部代用物において標準ブリッジプレート構成で評価した。この空隙付き切骨は、骨折部位における骨の連続性の欠如により骨接合構成体を介する全荷重伝達に依存する粉砕骨折の生体力学的制約をシミュレートした。プレートは、骨折部位から第1、第2及び第3の穴に配置された3つのスクリューで付けられる。切骨空隙に被る中央ロック穴は、空のままであり、空隙に架かる36mmのプレートスパンを産出する。すべてのスクリューを4Nmまで締めて、骨膜潅流を維持する生物学的固定をシミュレートするために一時的スペーサを用いてプレートを代用物表面から1mmの高さにした。
試験片間の変動可能性を最小限に抑え、且つ、結果の比較のために先行研究と一貫性を持たせるために、大腿骨幹部の代表物試験片においてプレートを評価した。非骨粗鬆症の骨におけるプレート評価は、中サイズの大腿骨幹部を代表する円筒形の丈夫な骨代用物(3403-10、米国ワシントン州バションSawbones)に対して実施された。骨幹代用物は、外径27mm及び壁厚み7mmを有し、皮質骨の骨折の厄介さを模倣することが認証された短繊維強化エポキシ合成物で製造した。弱い骨におけるプレートを評価するために、骨粗鬆症大腿骨幹部の認証モデルを使用した。このモデルは、強化エポキシで製造された直径27mm及び2mmの皮質及び10pcf(0.16g/cm3)ソリッド硬質プリウレタンフォームから機械加工された小柱コアから構成した。必要な骨幹部代用物の量を減少するために、代用物は、ブリッジプレート構成体の片側のみに付けた。反対側において、プレートは、直径27mmの再使用可能なアルミニウムシリンダに固定された。シリンダは、構成体の故障を代用物の側に対して隔離する。
標準及びダイナミックプレート構成体を、図22Aに示すように、二軸材料テストシステム(Instron 8874,マサチューセッツ州カントン)を用いて軸方向圧縮、捩じれ及び曲げについてテストした。構成体は、3つの非骨粗鬆症及び3つの骨粗鬆症の骨幹部代用物において各負荷モードの下で故障までテストした(合計36個の試験片)。軸方向圧縮は、先行研究の軸負荷構成を模倣するために試験片の遠位端をロードセルに堅固に取り付けたまま(Bottlang M, Doornink J, Fitzpatrick DC, Madey SM.「遠皮質ロックは、構成体強度を保持しながらロックされたプレート構成体の剛性を減少できる」、J BoneJoint Surg Am 2009;91−8:1985−94; Stoffel K, Booth G, Rohrl SM, Kuster M.「関節内踵骨骨折における従来プレート対ロックプレートの比較:人間の死体における生体力学研究」、Clin Biomech(Bristol, Avon)2007;22−1:100−5;及びMarti A, Fankhauser C, Frenk A, Cordey J、 GasserB.「遠位大腿骨骨折の内部固定のための侵襲性の小さい安定化の生体力学評価」、J Orthop Tauma 2001;15−7:482−7)、球形ベアリングを介して近位に加えた。捩じれは、図22Bに示すように骨幹部軸部の軸の周りに加えた。曲げは、図22Cに示すようにプレート長さ全体に均一の曲げモーメントを生成するように4点曲げ設定で加えた。上及び下の円筒形支持体は、それぞれ290mm及び400mm分離した。プレートは、空隙閉鎖モードで曲げを誘導するように張力側に配置した。まず、剛性テストは、それぞれ1KN、10Nm及び10Nmまで荷重を与えることによって、非粗鬆症の骨代用物において軸方向圧縮、捩じれ及び曲げの下で実施した。その後、構成体の強度を、故障まで漸進的に動的荷重を与えることによって測定した。静止予荷重LPREを加えた後に、LDYNの荷重振幅を持つ正弦波荷重を2Hzで加えた。100負荷サイクル毎に、この荷重振幅を、構成体故障が発生するまで段階的にLDYNずつ増大した。軸方向圧縮、捩じれ及び曲げについて、50N、1Nm及び1Nmの予荷重LPRE及び100N、1Nm及び1Nmの段階的荷重振幅LDYNがそれぞれ選択された。この段階的荷重増大は、各構成体について妥当な数(<10,000)の荷重サイクル内で故障に達するようしながら、故障まで動的負荷を可能にした。構成体の故障は、重大な破損又は陥没閾値の何れかが先に発生した方によって規定した。陥没dsは、アクチュエータ位置によって計測したとき荷重除去後の回復不能な崩壊を表し、インプラントの曲げ又は緩みによって引き起こされる。圧縮、捩じれ及び曲げにおいてそれぞれ1mm、5度及び1mmの閾値dsは、重大な破損がない場合の構成体の故障の開始を指示すると思われた。陥没dsは、テストシステムのアクチュエータの変位及び回転リポートから評価した。
標準及びダイナミックプレート構成体の性能は、その骨片間軸方向運動の量及び対称性、構成体の剛性、構成体強度及び故障メカニズムによって説明される。dAVGで表される軸方向ダイナミゼーションの量は、漸増軸方向負荷に応答した近及び遠皮質における骨片間運動を0.01mmの解像度の2つのデジタルカリパスによって計測して、これを平均化することによって評価した。軸方向ダイナミゼーションの対称性は、近皮質(dNC)及び遠皮質(dFC)における骨片間運動を比較することによって評価した。構成体の剛性は、圧縮、捩じれ及び曲げについて評価した。圧縮剛性は、軸方向加荷重を骨片間運動dAVGで割ることによって計算した。捩じれ剛性は、捩じれ振幅を骨幹部軸の周りでのアクチュエータの回転振幅αで割ることによって計算した。支持されない試験片の長さを捩じれ剛性に掛けて、捩じれ剛性を導き出した。曲げ剛性は、EI=Fa2(3l−4a)/12yの式で表される。ここで、Fは、総加力であり、l=400mmは下部支持体間の距離であり、a=55mmは下部支持体と上部支持体との間お距離であり、yは、上部支持体の変位である。構成体強度は、故障までの漸進的動的荷重におけるピーク荷重LMAXとして規定した。故障モードは、ハードウェア故障、固定不良及び骨折の存在を視覚的に分析した。
統計分析のために、剛性及び強度の結果を、各負荷モードについて個別に、ダイナミックグループと標準グループとの間で比較した。更に、近皮質及び遠皮質における軸方向ダイナミゼーションパラメータdNC及びdFCをグループ内で比較した。有意水準α=0.05で両側独立スチューデント(two-tailed, unpaired Student)のt-テストを使用して、有意差を検出した。
結果:ダイナミック構成体は、近及び遠皮質における運動を対称的に強化することによって、標準構成体より著しく大きい骨片間運動を生成した。「つま先タッチ(toe-touch)」体重支持を代表する200Nの軸方向負荷において、ダイナミック構成体の軸方向ダイナミゼーションdAVG(0.22±0.05mm)は、図23Aに示すように、標準構成体(0.05±0.01mm)の4倍以上であった。標準構成体は、0.2mmの軸方向ダイナミゼーション(仮骨成形をシミュレートすることで知られる最小運動閾値を表す)を得るためには700Nを必要とした。但し、標準構成体のこの700Nの負荷は、非対称的ダイナミゼーションを誘導し、図23Bに示すように、近皮質運動(dNC=0.10±0.01mm)は0.2mmの刺激閾値より低いままであり、遠皮質運動(dFC=0.32±0.02mm、p<0.001)の3分の1より小さかった。ダイナミック構成体は、図23Bに示すように、標準構成体に比べて、近皮質において0.32mm、遠皮質において0.33mm、このダイナミゼーションを対称的に改良した。剛性評価のために最大荷重1000Nを加えても、標準構成体における近皮質運動(dNC=0.15±0.01mm)は0.2mmの閾値より低いままであり、ダイナミック構成体における近皮質運動(dNC=0.53±0.08mm、p<0.001)の3分の1より小さい。
軸方向負荷において、ダイナミック構成体の初期剛性(911±165N/mm)は、図24Aに示すように、標準構成体の初期剛性(3960±230N/mm)より77%低かった。200Nより上の負荷のとき、ダイナミック構成体は二次的剛性1732±140N/mmを示した。捩じりにおいて、ダイナミック構成体の捩じれ剛性(0.44±0.93Nm2/°)は、図24Bに示すように、標準構成体の捩じれ剛性(0.53±0.03Nm2/°、p<0.03)より15%低かった。曲げにおいては、ダイナミック構成体の曲げ剛性(81.9±7.6Nm2)は、図24Cに示すように、標準構成体の曲げ剛性(75.3±1.3Nm2、p=0.27)に匹敵した。
図25Aを参照すると、軸方向圧縮において、全てのダイナミック及び標準構成体は7000Nの荷重上限即ち体重負荷の約10倍に故障なく耐えた。捩じれにおいては、図25Bに示すように、ダイナミック構成体は、標準構成体(32±2Nm、p=0.01)より25%高い荷重(40±1Nm)に耐えた。ダイナミック構成体は、滑動要素を収容するプレートポケットの破損によって故障した。標準構成体は、周期的捩じれにおいて反復的なスクリューの曲げのために高架プレート(elevated place)と骨との間の3つのスクリューの全ての破損によって故障した。曲げにおいて、ダイナミック構成体の強度(82±5Nm)は、図25Cに示すように、標準構成体の強度(79±6Nm、p=0.54)に匹敵した。ダイナミック構成体は、プレート端部のスクリュー穴を通過する代用物の破損によって故障した。標準構成体は、骨折部空隙に被る中央スクリュー穴を通過するプレートの曲げによって故障した。
図26Aを参照すると、軸方向圧縮において、ダイナミック構成体の強度(4533±322Nm)は、標準構成体の硬度(4967±322Nm、p=0.17)に匹敵した。全ての構成体は、近皮質におけるスクリューの曲げ及びスクリューの陥没の組合せ(これはスクリュー穴の間に皮質骨折線(cortical fracture line)を誘発した)によって故障した。
捩じれにおいて、ダイナミック構成体の強度(23±2Nm)は、図26Bに示すように標準構成体の強度(25±4.6Nm、p=0.54)に匹敵した。捻じれは、全ての構成体においてプレート端部に螺旋骨折を誘発した。曲げにおいて、ダイナミック構成体の強度(38±3Nm)は、図26Cに示すように、標準構成体の強度(31.3±3.2Nm、p=0.06)に匹敵した。全ての構成体は、最も外側のスクリュー穴に隣接する粗鬆症の骨幹部の横断骨折によって故障した。
論証:本生体力学研究の結果は、ダイナミックプレートが、標準ロックプレート構成体に匹敵する強度を維持しながら、骨片間運動を対称的に強化して、制御された軸方向ダイナミゼーションを与える、という本発明者の仮説を支持することが、明らかになった。
ダイナミックプレートの軸方向剛性が標準プレートより77%低いという発見は、DLS及びFCLスクリューについて報告された軸方向剛性の減少の74〜88%の範囲内である(Bottlang M, Feist F.「遠皮質ロックの生体力学」J Orthop Trauma 2011;25 Suppl 1:S21−8; Dobele S, Garder M, Schroter S, Hontzsch D, Stockle U, Freude T「DLS 5.0−ダイナミックロックスクリューの生体力学的効果」PLoS One2014;9−4:e91933、及びDoornink J, Fitzpatrick DC, Madey SM, Bottlang M.「遠皮質ロックは関節周囲ロックプレートによる柔軟な固定を可能にする」、J Orthop Trauma 2011;25 Suppl 1:S29−34)。但し、DLS及びFCLスクリューと異なり、スクリュー穴の弾性サスペンションによってプレート内において剛性減少が得られることによって、小さい直径の骨のプレート固定のために短いスクリューが必要とされる時でも軸方向ダイナミゼーションを保持する。
二次的骨治癒の促進のために軸方向ダイナミゼーションが不可欠であるという認識が大きくなるにつれて、ロックプレート構成体の固有の高い剛性を緩和するためのいくつかの代替策が推奨された。その中には、ステンレス鋼ではなくチタンで製造されたより可撓性のプレートの使用及び空のスクリュー穴の長い区分によって骨折ゾーンをつなぐ(bridge)ことによるプレートスパンの増大が含まれる。これら戦略は両方とも、所与の荷重に対応するプレートの屈曲量を増大して、近皮質ではなく遠皮質における運動を増大する。その結果の非対称的ダイナミゼーションが本生体力学研究において確認され、1000N程度の高い標準構成体の負荷が近皮質において誘発する軸方向ダイナミゼーションが0.2mm未満であることを実証した。これは仮骨形成を促進するのに充分ではない。
この生体力学研究は、固定強度及び故障モードは骨の質によって大きな影響を受けるので、非粗鬆症及び粗鬆症の骨の両方における標準構成体に対するダイナミック構成体の強度についても調査した。圧縮、捩じれ及び曲げについて両方の骨の質において故障までテストすることによって、ダイナミック構成体が標準構成体と少なくとも同じか又はそれ以上強いことが実証された。非骨粗鬆症の試験片において、ダイナミック構成体は、標準構成体より21%大きい捻じれ強度を持った。これは、捻じれ下で多平面の安定性を与える、ダイナミックプレートにおけるスクリュー穴の緩やかな互い違いに帰するかもしれない。逆に、標準プレートは平面中央線に沿って集中する標準の線形穴パターンを有し、単一の固定平面の周りで高架プレートのより大きなトグルを許した。これは、反復的なスクリュー軸部の曲げに起因してプレートと骨との間のスクリュー軸部の疲労破損をもたらした。この故障モードは、ロックプレートを1mmの高さで人工大腿骨に付けて、スクリューの破損の結果として捻じれにおいて故障した先行研究と相関した(Bottlang M, Doornink J, Fitzpatrick DC, Madey SM.「遠皮質ロックは、構成体の強度を保持しながらロックされたプレート構成体の剛性を減少できる」、J Bone Joint Surg Am 2009;91−8:1985−94;及びStoffel K, Booth G, Rohrl SM, Kuster M.「関節内踵骨骨折における従来プレート対ロックプレートの比較:人間の死体における生体力学研究」、Clin Biomech(Bristol, Avon)2007;22−1:100−5)。骨粗鬆症の試験片において、ダイナミック構成体は、標準構成体より25%大きい曲げ強度を示した。両方の構成体は、プレート端部における横断破損によって故障した。標準構成体より優れたダイナミック構成体の曲げ強度は、荷重配分を改良しプレート端部における応力集中及びその後の破損を減少する、プレート内部のロック穴の弾性サスペンションに起因すると考えられる。
ダイナミックプレート設計は、プレート内部でロック穴を弾性的に懸架して滑動要素とプレートとの間の金属-金属接触を防止するシリコンエラストマ外包の中へロック穴を持つ個別の滑動要素を埋め込むことによって、軸方向ダイナミゼーションを得た。シリコンエラストマの使用は、骨接合インプラントにおいては新規であると考えられるが、長期的に埋植可能なシリコンは指関節等、ある範囲の永久的インプラントのためにこれまでも臨床的に使用されている。シリコンゲルと異なり、指関節及び本明細書において説明するダイナミックプレートに使用されるシリコンエラストマは、非常に生体適合性及び生体不活性が高い。広範囲の先行性と長い臨床の歴史を持つシリコンエラストマによって、新規の戦略は、古典的骨折治癒の必要前提条件を現代のロックプレートに組み込めるようにする。即ち、制御された軸方向ダイナミゼーションは二次的骨治癒を促進する。
結論として、この生体力学研究は、ダイナミックロックプレートが骨片間運動を対称的に強化し、制御された軸方向ダイナミゼーションを与え、強度の点で標準ロックプレート構成体に少なくとも匹敵することを実証した。ダイナミックロックプレートは標準ロックスクリューで付けることができるので、ロックプレート構成体のダイナミゼーションのためのDLS及びFCLスクリューのよりスケーラブルな対案を提供できる。
上述の実施形態は、本発明の広義の概念から逸脱することなく変更を行うことができることが、当業者には分かるはずである。具体的には、開示された発明は、骨折の一方の側のみへの骨プレートの固定のために実施でき、柔軟な又は堅固な固定のための代替手段によって骨折した骨の対応する側を1つのプレートに付けることができる。従って、この開示は、開示される特定の実施形態に限定されず、請求項によって規定される本開示の趣旨及び範囲内の修正を包括する。
特定の実施形態について図解し説明したが、同じ目的を達成するために考案された多様な別の及び/又は同等の実施形態又は実現を、開示の範囲から逸脱することなく、図示し説明する実施形態と交代できることが当業者には分かるはずである。当業者は、実施形態を多様に実現できることが容易にわかるはずである。本出願は、上述の実施形態の任意の組合せ、適応又は変形を包括することを意図する。従って、実施形態は、明白に、請求項及びそれら均等物によってのみ限定されることを意図する。