JP2017518275A - アルツハイマー病(ad)の処置および予防 - Google Patents

アルツハイマー病(ad)の処置および予防 Download PDF

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Abstract

本発明は、ADの処置および予防に使用するためのオキシ水酸化アルミニウムを開示する。

Description

本発明は、アルツハイマー病(AD)を処置および予防するための手段および方法に関する。
ADは、βアミロイド沈着を起こすアミロイドβポリペプチド(Aβ)の異常蓄積により特徴付けられる。ADは、現在世界中で2800万人に影響を与えている最も優勢な神経変性障害である。それは、一般に他の認知、行動および精神神経変化と関係する特徴的健忘性機能不全を呈する。ADは、細胞内および細胞外アミロイド沈着物の異常蓄積 − 広範なアストロサイト増加および小神経膠細胞症ならびに異栄養性ニューロンおよびニューロン脱落と密接に関係する − により特徴付けられる。これらのアミロイド沈着は、主に、神経系の多様な細胞型において発現される、アミロイド前駆体タンパク質(APP;gi:112927)に由来するAβペプチドAβ40およびAβ42からなる。Aβペプチドは、ADの病因および進行に直接関与すると考えられる。
アミロイド沈着以外に、神経原線維のもつれ(NFT)は、最初に、Alois Alzheimerにより記載された、ADの第二の特徴的神経病理学的特徴を具体化する。これらの病変は、海馬、扁桃体連合野およびある皮質下核に生じる。NFTは、ニューロンの細胞質に位置し、過リン酸化タウタンパク質からなる。タウは、正常条件下で微小管集合および安定性を促進する軸索、微小管結合タンパク質である。タウの過リン酸化は微小管結合の喪失と続く微小管分解をもたらし、これが、次に軸索輸送の機能障害と続く軸索およびニューロン変性を起こす。タウ過リン酸化およびもつれ形成がADの原因であるのかまたは結果であるのかはなお不明である。
アミロイドおよびタウ/過リン酸化タウ病理以外に、神経炎症は、ADにおける神経変性を起こす病態生理学的変化の第三の複合的柱として考えることができる。ADにおける神経炎症表現型は、炎症促進性サイトカイン、細胞接着分子およびケモカインの内因性発現をもたらす、罹患脳領域におけるミクログリアおよびアストロサイトの強固かつ広範な活性化により特徴付けされる。これらの変化は、アミロイドおよびタウ/過リン酸化タウおよびそれらのメディエーターにより惹起される進行している毒性と関係する事象に対するグリア反応の結果であると考えられる。
現在、ADおよび関連障害の可能性のある処置戦略は、Aβまたはタウ/過リン酸化タウのような神経毒物の蓄積を阻止または低下させる免疫療法に基づくと考えられている。
タウ/過リン酸化タウを標的とする多様な能動的および受動的処置戦略が動物モデルにおいてタウ/過リン酸化タウ沈着および関連する神経病理学的変化の減少をもたらしているが、しかしながら、現在までヒトAD患者で肯定的データはない。かなり対照的に、極最近、相当数の臨床治験が失敗している。例えば、“アミロイドβを標的とする2種のモノクローナル抗体−バピネオズマブおよびソラネズマブ−のフェーズIII臨床治験は、孤発性疾患の認知症段階でアミロイドβの免疫学的攻撃にほとんど臨床的利点を示さなかった”との結果が得られた(Aisen et al., Nat. Rev. Drug Disc. 12 (2013), 324-325; Mullard, Nat. Rev. Drug Disc. 11 (2012), 657-660)。また“2つのリーディングγ−セクレターゼ阻害剤、セマガセスタット[..]およびアバガセスタットの臨床的失敗”を含む、仮説により導かれる候補疾患修飾的因子“例えば、抗炎症剤、セクレターゼ阻害剤およびモジュレーター、ホルモン療法、スタチンおよび他の薬物は、期待外れである”他の研究がある(Aisen et al., 2013; Mullard, 2012)。解説者は、AD臨床治験のこの悪い臨床結果を、“メマンチンの承認以来実質的な成功がない、アルツハイマー病治療における‘失われた10年’の最高点”として名付けている(Aisen et al., 2013)。開発過程で、US−FDAはADの新規治療剤の承認の規定も変更しており、PET(陽電子放出断層撮影)スキャンを使用する放射線学的バイオマーカーのようなAD特異的バイオマーカーの使用を推奨した(Kozauer et al., N. Engl. J. Med. 368 (2013), 1170-1171)。
WO94/16327A1は、“アミロイドタンパク質イオンチャネル”が関与する治療剤を開示する。しかしながら、WO94/16327A1のこのアミロイドタンパク質イオンチャネルの概念はさらに遂行されず、最終的に科学的チャレンジを受けた(Sokolov et al., J. Gen. Physiol. 128 (2006), 637-647; Eliezer, J. Gen. Physiol. 128 (2006), 631-633により注釈)。
さらに、WO94/16327A1の教示は、インビボでのAlイオンと潜在的Aβ−イオンチャネルの活性相互作用を、それにより、これらのチャネルを阻害することを暗示する。それゆえに、アルミニウムがこの課題を完全に満たすために、化合物は、示唆される濃度で活性部位としての脳に到達しなければならない。ヒト脳において、アルミニウムの通常レベルは0.25〜0.75mg/kg湿重量の範囲であり、灰白質(ADにおいて影響される認知機能制御を主に担う)は、白質で見られる濃度の約2倍を含む(The EFSA Journal (2008) 754, 24-88; Annex to the EFSA Journal (2008) 754, 1-34 opinion “Safety of aluminium from dietary intake”)。年齢と共に、ヒト脳組織においてアルミニウム濃度は増加し得るとの証拠がある。同様に、AD患者由来の脳は、健常対照脳より高Alレベルを示すとのいくつかの研究もある(Yokel, NeuroToxicology 21 (2000), 813-828にレビュー)。それゆえに、示唆される治療的活性Al濃度が既に健常脳および疾患脳で存在する(WO94/16327A1、請求項12に記載された使用目的製剤の範囲は:0.01〜10mg/kgである)。さらに、非経腸および経口取り込み後のAlの脳におけるバイオアベイラビリティは、能動的に制御される、高度に有効な流入/流出機構により低く維持されたままであり、示唆される治療濃度に達するためには高い末梢濃度が必要である。可能性のある毒作用を惹起せずに、末梢Alのさらなる増加が、直接の治療的に有益な効果を発揮させることに至るであろうとの推測に信頼できる科学的根拠はない。
さらに、本明細書の図7および8は、局所適用したオキシ水酸化アルミニウムが、アルツハイマー病のAPPトランスジェニックモデル(Tg2576)において、脳Aβレベルを有意に変えることなく、認知機能低下を有意に低減できることを開示する。これは、このADモデルにおいてオキシ水酸化アルミニウムにより発揮される有益な機能的効果の根底にあるAPP/Aβ比に依存しない機構を暗示する。
WO99/27944A1は、Aβに対する免疫応答の誘発に有効な薬剤の存在に本質的に基づくADワクチンを開示する。WO2011/120924A1は、ウイルス様粒子に結合したAβ1−6ペプチドに本質的に基づくAβワクチンを記載する。WO2006/005707A2、WO2009/149486A2およびWO2009/149485A2は、ADの予防および処置用ワクチンに使用するためのAβミモトープペプチドを開示する。
Heneka et al. (Nature, 493 (7434)(2012): 674-678)は、アミロイドβ凝集を減少させるためのNLRP3の阻害によるADの処置を示唆する。Aimanianda et al. (TIPS, 30 (6)(2009): 287-295)は、ミョウバンがNLRP3を活性化することを開示する。
Magga et al. (J. Cell. Mol. Med. 16 (2012): 1060-1073)は、骨髄幹細胞からの単核球細胞の産生およびそのADにおける治療的使用を報告する。Lebson et al. (Cell Transp. Cogn. Com. 17 (2008): 470/471)は、AD APP+PS1トランスジェニックマウスにおける単球遺伝子治療を開示する。WO2012/055981A1は、アミロイド沈着の予防または低減のための“エンドトキシンを含まないTLR4アゴニスト”の使用を示唆する。Malm et al. (GLIA 58 (2010): 889-900)は、ADにおける単核球細胞の役割および治療可能性に関する総説である。
WO2009/105641A1は、アミロイド症の処置におけるM−CSFの使用を開示する。Boissionneault et al. (Brain 132 (4)(2008): 1078-1092)は、ADにおけるアミロイド沈着および認知機能障害に対するM−CSFの影響を報告する。Luo et al. (Neuroscience letters 367 (2)(2013): 210-172)は、傷害されたニューロンにおけるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)シグナル伝達が保護および生存を促進することを開示する。
従って、現在まで、ヒト患者における進行性神経変性および関連する認知低下を停止させる、有効な疾患修飾的処置はない。ADのための利用可能な処置モダリティーは、3種のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)および1種のN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)アンタゴニストを含む。これらの効果は小さく、本質的に対症的でしかない(例えば、Corbett et al., Nat. Rev. Drug Discov. 11 (2012), 833-846参照)。それゆえに、疾患修飾剤に対する高度な医学的要求がある。
本発明の目的は、罹患患者の状態をさらに進行させないまたはさらに軽減させることを意味する、ADの治癒を可能とする、ADの処置および予防のための手段および方法を提供することである。他の目的は、ADを有するまたはADを発症するリスクのあるヒトにおけるADの発症を阻止する手段および方法の提供である。より具体的に、MRI(磁気共鳴画像)または放出断層撮影ベースの技術を使用した脳造影モダリティで測定して、少なくとも1つの顕著なバイオマーカーに関して証明される、効率的なAD処置を提供することが本発明の目的である。
それゆえに、本発明は、ADの処置および予防に使用するためのオキシ水酸化アルミニウムを提供する。
本発明の過程において、医薬製剤における活性成分としてのオキシ水酸化アルミニウムが、現在までのAD薬物療法の臨床治験のいずれでも今日まで見られなかった臨床効果をもたらす、AD患者における真の臨床修飾的効果を提供することに有効であることが証明されたことが判明した。本発明は、それゆえに、この疾患に対する進歩した技術を提供する。初めて、有意な疾患修飾的効果がAD患者において検出できた。さらに、本発明は、特にAD免疫療法の分野における、AD薬物療法の他の臨床治験で報告されている顕著な副作用を伴わずに、有効であることも発見した。
より具体的に、本発明は、(右)海馬の容積のMRIスキャンに関して、AD患者における統計学的に有意な疾患修飾的効果を達成した。さらに、本発明のために行った臨床治験の過程で、初めて、臨床的バイオマーカーと画像診断的バイオマーカーの相関が示された。構造的MRIは、直近の科学論文において、有意なバイオマーカーとして強調されている(Risacher et al., Annu. Rev. Clin. Psychol. 9 (2013), 621-648; Vermuri et al., Neurology 73 (2009), 287-293 and 294-301; Weiner et al., Alzh. Dememt. 9 (2013), e111-94; Frisoni et al., Nat. Rev. Neurol. 6 (2010), 67-77; Fox et al., Arch. Neurol. 57 (2000), 339-344)。
MRIは、断面グループ判別の実施に強い力を提供し、綜合的認知と断面的機能状態の良好な相関を提供する。MRIは、試験された種々CSFバイオマーカーよりも良好に臨床的に定義された疾患状態を反映する(Vermuri et al., Neurology 73 (2009), 287-293 and 294-301)。多くの研究が、臨床的転換の最大2年前に、MCIからADへの転換がほぼ確実な患者(MCIコンバーター)において、海馬および嗅内皮質(EC)容積減少ならびに内部および外部側頭皮質、頭頂葉および前頭葉の皮質の厚さ減少を証明している(Risacher et al., 2013)。
従って、このバイオマーカーは、本発明のために実施した臨床治験の経過中、標準的臨床パラメータ(AD患者の機能および認知機能のモニタリング)と並行して検討した。
本発明で、通常のAD患者の進行(徐々の認知、機能および行動の低下)と比較したAD患者の進行における有意な改善が、ADの疾患修飾的処置を提供する長年にわたる要求を満たすために達成できる。
本発明は、AD患者へのオキシ水酸化アルミニウム(特にAlhydrogelとして)の有効投与を含む。
アルミニウム塩は、長年ワクチンにおけるアジュバントとして使用されているが、しかしながら、ここ数年そのような塩の医薬的使用は、抗原がワクチン製剤に吸着される、2つの懸濁液製剤、すなわちAlhydrogel(オキシ水酸化アルミニウム)およびAdjuPhos(ヒドロキシリン酸アルミニウム)に絞られている(総説:E. B. Lindblad (2004) Vaccine 22, 3658-3668; E. B. Lindblad (2004) Immunology and Cell Biology 82, 497-505; R. K. Gupta (1998) Adv. Drug Delivery Rev. 32, 155-172)。
その長い使用に関わらず、アジュバントとしてのAlhydrogelの作用機序はほとんど理解されていない。Alhydrogelが注射部位にデポーを形成するとの最初の仮説は、多面的ストーリーの一部でしかないことが判明した(総説:C. Exley, P. Siesjoe, H. Eriksson (2010) Trends Immunol. 31, 103-109; S. L. Hem, H. HogenEsch (2007) Expert Rev. Vaccines 6, 685-698; P. Marrack, A. S. McKee, M. W. Munks (2009) Nature Rev. Immunol. 9, 287-293; S. G. Reed, M. T. Orr, C. B. Fox (2013) Nat. Med. 19, 1597-1608)。
ヒトにおいて使用されるアルミニウムアジュバントの主な態様は水酸化アルミニウム(またはオキシ水酸化アルミニウム)およびリン酸アルミニウムである。両方の製剤は、通常、可溶性アルミニウム塩(歴史的に、カリウムミョウバン、すなわちKAl(SO).12HOがしばしば使用された)をアルカリ条件に曝し、そうして懸濁液を形成することにより製造する。X線結晶学およびIRスペクトルでの解析は、水酸化アルミニウムについてベーマイト様構造(オキシ水酸化アルミニウム)およびリン酸アルミニウムについてヒドロキシリン酸アルミニウムに対応する非晶質構造を証明した。
オキシ水酸化アルミニウム製剤は、約pH11のpHでゼロ電荷点を有し、一方ヒドロキシリン酸アルミニウムはpH4ほど低いpHでゼロ電荷点を有するはずである(リン酸含量による)。それゆえにオキシ水酸化アルミニウムおよびヒドロキシリン酸アルミニウムは、中性pHで逆の表面荷電を有し、後者は負に荷電している。しかしながら、表面荷電は詳細な緩衝液組成により変わり得て、特に、リン酸イオンはオキシ水酸化アルミニウムの表面荷電を下げる能力を有することは特筆すべきである。
オキシ水酸化アルミニウムについて、製剤は硫酸イオン、硝酸イオンまたは塩素イオンのようなアニオンを欠き、20ppm未満の特定の重金属含量を有する。オキシ水酸化アルミニウムの懸濁液は、2μm〜約10μmの粒子径分布を有し、これは、約2nm×4.5nm×10nmの小さい繊維から成る凝集物である。
この最も好ましい態様によって、本発明は、欧州薬局方グレードオキシ水酸化アルミニウム(モノグラフ1664)、より具体的にはBrenntag Biosectorにより製造された製品(2%Alhydrogel) (EPコンプライアンス適合)の使用に関する。Alhydrogelは、Alhydrogel 1.3%;Alhydrogel 2%およびAlhydrogel“85”の3種が利用可能である。Alhydrogel 2%は、水酸化アルミニウムゲルの国際標準製剤として選択された。本発明の医薬製剤は、無菌的に、適当な緩衝液、好ましくは等張リン酸緩衝液(1mM〜100mM)中、好ましくは≧1.0mg/ml Alhydrogel(Alとして示す;この測定基準(Alを“Al等価物”とする)を本発明で一般に使用する。;従って、製剤適用におけるオキシ水酸化アルミニウムの用量および量は、Al等価物(オキシ水酸化アルミニウム(Alhydrogel)の)の濃度で、より好ましくは、≧1.5mg/ml Alhydrogel(Alとして示す)の濃度で、最も好ましくは≧2.0mg/ml Alhydrogel(Alとして示す)の濃度で無菌的に製剤する。Alhydrogelいついてのアルミニウム塩の量は、製造についての記載された強度に一致してAlとして示す(すなわち2%Alhydrogelは、2%Al、すなわち20mg/mLに等しい)。この濃度は、各分子量を使用してアルミニウムの各濃度に直接変換される(20mg/mL Al(Mw 101,96)は、10.6mg/mLアルミニウム(分子量26,98)に対応)。使用する塩によって、この値を種々のアルミニウム塩の必要な量/濃度に容易に変換できる(これらの値は、単にアルミニウム(塩)の量に基づくものであって、Alhydrogelの粒子性質の寄与のような他の面は考慮に入れていないことは明らかである)。
しばしばAlumとも呼ばれるAlhydrogel 2%は、オキシ水酸化アルミニウム湿ゲル懸濁液である。
本発明の最も好ましい態様において、AD患者に投与するオキシ水酸化アルミニウムがオキシ水酸化アルミニウム懸濁液、好ましくは欧州薬局方グレードオキシ水酸化アルミニウム(モノグラフ1664)、特にAlhydrogelである。オキシ水酸化アルミニウムは、ADおよび他の認知症の処置用医薬品に対するEMEAガイドラインにより規定されるように、AD軽減効果を達成するための有効量で投与する(Document Ref. CPMP/EWP/553/95 Rev.1 of 24 July 2008)。従って、本発明により提供されるAD修飾効果を達成するのに適する、本発明によるオキシ水酸化アルミニウム製剤についてのあらゆる投与法または投与レジメは、本発明の対象である。本発明の製剤を遅い点滴により送達することが可能であるが、投与の好ましい戦略は、例えば、皮下注射による、複数用量の投与である。好ましくは、それゆえに、オキシ水酸化アルミニウムの投与量は、1AD患者に少なくとも0.5mg、好ましくは少なくとも1.0mg、特に少なくとも1.2mgである。患者に投与する量の好ましい範囲は、1.2mg〜5.0mgの量のオキシ水酸化アルミニウムである。オキシ水酸化アルミニウム投与のAD軽減効果は、少なくとも1.5mgの量で、より明白である。他の好ましい態様によってオキシ水酸化アルミニウムを、AD患者に1.5mg〜5.0mg、好ましくは1.5〜3.0mg、特に1.5〜2.5mgの量で投与する。他の好ましい投与は、AD患者に1.6mg〜2.5mg、好ましくは1.8〜2.2mg、特に1.9〜2.0mgの量でオキシ水酸化アルミニウムを投与することを含む。
他の好ましい態様によって、オキシ水酸化アルミニウムを、2.2mgまたはそれ以上の量で投与する。この量は、USバイオ製品の一般的な標準(U.S.C. 21 CFR 610.15 (2013年4月1日現在))で処方されるものより高い。このようなオキシ水酸化アルミニウムの好ましい高い範囲は、1投与に対しとりわけ2.2〜10mg、2.2〜8mg、2.2〜5mgおよび2.2〜4mgである。
好ましくは、オキシ水酸化アルミニウムは、投与用量に適用される単一有効物質である。本発明のオキシ水酸化アルミニウム製剤は、いずれにしても、特定の臨床効果を有しないが、投与する剤形において、投与目的で、保存目的でまたは他の目的で有用な、多様な補助物質を含んでよい。好ましい態様によって、本発明により適用するオキシ水酸化アルミニウム製剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加物、例えば注射用水を含む。好ましくは、本発明のオキシ水酸化アルミニウム製剤は、さらに、1以上の安定性成分、特にチオメルサール、界面活性剤、抗酸化剤、一価または二価金属イオン用錯化剤、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、糖、糖アルコール、グリセロールおよび/または緩衝物質、特にTRISまたはリン酸緩衝物質を含む。これは、当然、このような補助物質の混合物も含む。
患者に投与する投与形態は、任意の好都合な容積で、例えば、0.1〜10ml、より好ましくは0.2〜5ml、特に0.4〜3mlの容積を有する、例えば、注射可能懸濁液として提供できる。特に好ましい容積は0.5ml、1ml、1.5mlおよび2mlである。本発明の医薬製剤は、欧州および/または米国薬局方により要求および規定されるような、医薬品適正製造基準(GMP)により製造する。
好ましい態様によって、オキシ水酸化アルミニウムを、4〜10、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8、特に7.0〜7.5のpHの懸濁液を用いて、患者に投与する。好ましくは、懸濁液は等張懸濁液である。
好ましくは、オキシ水酸化アルミニウムを、AD患者にできるだけ好都合であるが、なお、AD修飾効果を達成するのに有効な経路により投与する。本発明によるオキシ水酸化アルミニウムの最も有効な処置経路は、皮下、結節内、皮内または筋肉内投与、特に皮下投与である。皮下投与は、皮膚の真皮および表皮の直下の層である皮下組織、特に皮下組織における脂肪組織へのボーラスとして行う。
投与レジメンは、多様なパラメータ、特に認知および機能的能力およびバイオマーカー、特に海馬容積に関するPETスキャンにより測定して、処置成果により、各AD患者について個々に最適化できる(下記参照)。本発明について実施されている臨床治験の経過において、オキシ水酸化アルミニウムのAD患者への少なくとも月1回の投与で、AD軽減が成功することが証明された。長期治療効果を達成するために、このような月1回の投与を少なくとも3ヶ月、特に少なくとも6ヶ月継続すべきである。
本発明によるオキシ水酸化アルミニウムの投与は、少なくとも月に2回(例えば、2週毎または毎週)行ってもよい;また、このような投与レジメンにおいて、オキシ水酸化アルミニウムを、AD患者に少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月、特に少なくとも24ヶ月の期間投与すべきである。
好ましい態様によってオキシ水酸化アルミニウムを、AD患者の上腕(の外部領域)、好ましくは、左右の上腕交互に、皮下に投与する(すなわち最初の用量を右(または左)、2回目の用量を左(右腕)の上腕に投与するなど)。皮下投与のための他の簡便な(または代替的な)領域は、腰の丁度上および下(臍の直ぐ周辺(2インチ円)の領域を除く)、臀部の上部、好ましくは寛骨の背後、大腿の前側、中央から外側、大腿の頂点から4インチ下から膝の4インチ上までなどである。
あるいは、投与すべき用量を、同時に(同じ医師の日(physician date)に;少なくとも同じ日に)AD患者に投与する、2(以上)の分割用量に分けることもできる。例えば、2mg用量を、1.8mgと0.2mg、1.7mgと0.3mg、1.5mgと0.5mg、1.34mgと0.76mg、1.0mgと1.0mg、1.05mgと0.95mg、1.0mg、0.5mgと0.5mg、0.6mg、0.6mgと0.7mg、0.2mg、0.5mgと1.3mg、0.5mg、0.5mg、0.5mgと0.5mg、0.2mg、0.3mg、0.5mgと1.0mgなどに分けてよい。分割した用量を、異なる投与部位にまたは好ましくは同じ投与部位に投与し得る。“同じ投与部位”は、皮膚の10cm領域内、好ましくは皮膚の5cm領域内、特に皮膚の1cm内である。好ましい分割用量は、オキシ水酸化アルミニウムを0.8〜5.0mg、好ましくは1.0〜3.0mg、特に1.0〜1.5mgの量で含む
極めて長く続くAD改善効果を達成するために、本発明の処置を1年より長く実施する。本発明の好ましい態様によって、オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも毎月、少なくとも2年、好ましくは少なくとも4年、特に少なくとも8年投与する。
本発明によるオキシ水酸化アルミニウムの投与は、任意の適当な投与デバイスにより実施し得る。便宜上、オキシ水酸化アルミニウム用量を、AD患者に注射デバイス、特にシリンジにより投与する。本発明において使用するための医薬製剤は、あらゆる適当な形態で提供できる。好ましくは、それらは安定に保存される形態で提供される。保存安定性は、滅菌法、安定化剤添加、凍結、凍結乾燥などの多様な手段により確保できる。好ましくは、このような手段の組合せを使用して、このような製剤の保存安定性を増強する。オキシ水酸化アルミニウム含有組成物を凍結または凍結乾燥したとき、処理中のアジュバント粒子の凝集が観察され得る。このようなオキシ水酸化アルミニウム(Alhydrogel)製剤を速い速度でまたは十分量のトレハロースのようなガラス形成添加物の添加により冷却することにより、Alhydrogelの凝集を阻止または最小化できる。緩衝液塩の凍結能出が、このようなアルミニウム剤の表面化学および結晶化度の修飾を誘発し、これが、凝集させやすくすると提唱された。このようなAlhydrogel粒子のこれらの修飾および得られた凝集物を、緩衝液イオンの選択によりまたは凍結中のガラス状態の急速な形成を阻止することにより、除外または最小化できる(例えば、Clausi et al., J Pharm Sci. 2008 Jun;97(6):2049-61参照)。
本発明によりAD患者に適用する医薬組成物は、適当な容器、例えば、密閉バイアル、アンプル、カートリッジ、(しばしば多重層プラスチックで構成される)軟質バッグ、ガラスまたはポリプロピレンビンまたは、好ましくは、シリンジ、特に充填済み(すぐに使えるまたはすぐに再構成できる)シリンジに製造し(かつ完成させ)、販売する。
本発明の好ましい態様によって、オキシ水酸化アルミニウムを、AD患者に少なくとも1.8mgの量で投与する。
本発明によりオキシ水酸化アルミニウム製剤を投与する好ましい患者は、しばしば“軽度認知機能障害(MCI)を有する患者”とも呼ばれる患者を含む、初期段階であるAD患者である。MCIの概念は、認知症の基準をまだ満たしていなかったアルツハイマー病(AD)の早期臨床的徴候を有する患者を捕らえるために、1990年代に開発された。MCIの健忘性バリアントは、次のものに関する:好ましくは、情報提供者により認定される記憶愁訴;学習能力に介入する、1以上の神経心理学的試験における低認知性能により指標化される、年齢による記憶機能障害(例えば、散文想起、単語リスト);維持される一般的認知機能(例えば、30のうち24以上のミニメンタルステート検査スコア);日常生活の完全な活動;および認知症なし。健忘性MCIの全患者の約2/3が、ADの病理学的特徴を保持し、5年以内にアルツハイマー型認知症の臨床的症候群を発症するが、残りの1/3は、認知機能障害の原因の非進行性であるかまたは極めて遅い進行性の原因(例えば、うつ病または加齢性認知機能障害)を有する。2007年に開発されたADの提唱される新診断基準(Dubois et al., Lancet Neurol. 6 (2007), 734-746)は、患者が次の4つのうち少なくとも一つで陽性であるならば、疾患がMCI段階であると認識できると示唆した:MRIでの内側側頭萎縮;18F−フルオロデオキシグルコースPETでの側頭頭頂皮質代謝低下;脳脊髄液マーカーの異常(タウ、アミロイドβ42またはホスホ−タウ);およびPETでのアミロイド造影陽性。この患者集団は、本発明により処置すべきAD患者に含まれるだけでなく、本発明による処置法が特に有効である患者の好ましい群である。これは、US−FDA(Aisen et al., 2013; Kozauer et al., 2013)により適合されるAD臨床治験の改訂基準に一致する。従って、比較的高いMMSE(ミニメンタルステート検査またはフォルスタイン検査)スコアにより定義されるように、ADの初期段階の患者を処置することが好ましい。好ましくは本発明により処置するAD患者は、23〜30、好ましくは24〜30、より好ましくは25〜29、特に26〜29のMMSEスコア(30が最高点)の患者である。他の好ましい患者群は、27点以上(正常認知を示す)、25〜27点(正常認知をわずかに下回る)または19〜24点(軽度点認知機能障害)の患者である。
初期段階AD患者はまた他のスコア、好ましくは、ADAS−cogなどのような、AD集団を(有効に処置される)と限定するための、認知および機能的パラメータを組み合わせたスコア(および数値的制限)によっても選択できる。
本発明は、初めて、疾患修飾的であるAD処置を提供する。本発明による処置の有効性は、医薬品認可局、特にEMEAおよびUS−FDAにより規定されたパラメータにより証明される。例えば、AD処置に関するEMEAガイドラインは、認知および機能的ドメインを反映する主要評価項目を必要とする。従って、組み合わせ(複合)スコアを、本発明の臨床的評価で使用する。この複合スコアは、二つの確立されたスコア、一つは認知機能(ADAS−cog(アルツハイマー病評定尺度―認知サブスケール))および一つは機能的能力(ADCS−ADL(アルツハイマー病共同研究―日常生活動作質問票))を合わせる。改変ADAS−cogは、認知機能を評価する項目を合わせる。改変ADCS−ADLは、機能的能力に感受性である項目を含む。認知技術は、疾患の開始に向けて低下することが予測され、基礎的機能を実施する能力は、疾患において後に低下すると予測される。複合主要評価項目(本発明による複合スコア)は、認知および基礎的機能の低下に感受性である複合物を作成するために、改変ADAS−cogおよび改変ADCS−ADLの両者を合わせる。複合主要評価項目、すなわち複合合成数を導くために、次の式を使用する。
本発明による複合合成数:
=1.67*単語想起+1.35*見当識+1.42*単語認識+0.55*想起指示+0.81*口頭言語+1.01*単語発見+5.42*ONB+0.15*VPAL+0.19*カテゴリー流暢性+0.28*持ち物+0.35*買い物+0.23*趣味+0.38*飲料+0.37*食事+0.23*現在の事象+0.26*TV+0.33*約束遵守+0.37*旅行+0.33*単独+0.35*電化製品+0.49*衣服+0.36*読書+0.62*電話+0.33*筆致
さらに、AD進行に特徴的であるADバイオマーカーが本発明で観察された。EMEAおよびFDA基準は、MRI、特に嗅内または海馬(傍回)皮質の萎縮のような新しい技術を推奨する。本発明によって、構造的MRIを適用した。より具体的に、右海馬の容積(学習および言語化することが困難である物体の記憶に重要である)を、処置成功のための顕著なADバイオマーカーとして本発明により使用する。
本発明によって、AD患者における通常の低下の進行と比較して、認知および/または機能的低下(約1年の処置期間にわたる)が少なくとも30%(スコア低下により計算)、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも70%遅延させることにより測定できるAD処置の臨床効果が観察できる。好ましくは、認知および機能的パラメータは、処置中、本質的に変化しないままである。これは、本発明により、特に、初期段階患者(MEAおよびFDAのガイドラインにより示唆および推奨される)を有する患者、例えば23以上、好ましくは24以上、より好ましくは25以上、特に26以上のMMSEのAD患者で達成できる。これらの患者について、本発明による処置中の複合スコア変化は、18ヶ月後でもほぼ初期スコアのままであった。これは、EMEAにより必要とされる“疾患修飾的効果”の最小の要求を有意に超える(“規制の観点から、医薬品は、認知および機能的評価ツールにより測定して、進行の疾患が減少または減速し、これらの結果が根底の疾患仮定に対する効果と関連しているならば、疾患修飾的と見なし得る”;“疾患修飾効果は、薬理的処置が根底の病理学的または病態生理学的進行を遅延させたときおよびこれが認知症になる状態の臨床的徴候および症状の改善に付随するとき、考慮される”)。
本発明を、次の実施例および図によりさらに説明するが、それにはなお限定されない。
2mgおよび1mgオキシ水酸化アルミニウム処置を受けた全患者についての(部分的)改変ADL変化および改変ADAS−cog変化からなる複合スコアの変換に関する、本発明の臨床治験結果を示す。
両群の軽度患者集団(軽度集団は、規定ベースラインMMSEスコア24以上と規定される)の比較を示し、この効果が初期疾患段階にある患者コホートにおいて最も顕著であることが示される。
改変ADAS−cog(ADAS−cog項目のみ;最小二乗平均)により証明されるように、1mgおよび2mgオキシ水酸化アルミニウム群について、歴史的対照と比較して2mgおよび1mgアルミニウム群において明らかな疾患進行遅延を示す。
軽度患者集団(軽度集団は、規定ベースラインMMSEスコア24以上と規定される)の2mgおよび1mgオキシ水酸化アルミニウム処置群の右海馬の容積(mm)の進行を示し、この効果が初期疾患段階にある患者コホートにおいて最も顕著であることが示される。
介護者についてのクオリティ・オブ・ライフ−アルツハイマー病(QOL−AD)を示す。介護者は、患者のQOLに関する問診として測定を完了した。測定は13項目からなり、4段階評価で採点し、1が悪く、4が優れる。結果は、混合モデルからの最小二乗平均を使用する経時的変化として示す。
Tg2576動物モデルにおいて測定したマウスの免疫応答を示す:Tg2576マウスに、30μg正味ペプチドを含むコンジュゲート−ワクチンのいずれか、Alumと製剤したKLHまたはAlumのみを、4週間隔で6回皮下注射した。使用したAlum用量は2mg/mlと等しかった。ワクチン接種惹起Abを、屠殺時に採った血漿サンプルで測定した(SeqID1(n=10)、SeqID2(n=8)、KLH−Alum(n=10)およびAlumのみ(n=8))。サンプルを、特定のペプチドに対するIgG Ab濃度について解析した。記載する値は、OD最大/2(405nmで)+SEMとして計算した力価である。IgG応答は、各免疫化ペプチドに対する(SeqID1:抗SeqID1;SeqID2:抗SeqID2、KLH−Alum:抗KLH、Alum:抗AD02);B)免疫化後のヒトAβ1−40/42に対する反応性。SeqID1(n=10)およびSeqID2(n=8)、処置動物は抗Aβ40/42反応性を示し、KLH−AlumおよびAlumのみ処置動物は背景を超える反応性を示さない。このアッセイの背景は、A+Bにおいて黒線および星印で示す、1/100に設定した。
試験したマウスの記憶および学習を示す:Tg2576マウス群(n≦10/群)は、KLH/ALUM(n=9)またはSeqID1−KLH−Alum(n=10)−、SeqID2−KLH−Alum(n=7)−コンジュゲートワクチンまたはAlumのみ(n=8)を6回、毎月の注射を受けた。無処置wt動物(n=20)を、恐怖条件付け文脈学習(CFC)の正の対象として使用した。文脈学習および記憶は、CFC試験の最後にすくんだ時間の%を使用する、CFC解析により評価した。記載するパラメータは、CFC試験パラダイム2日目の代表的2分期間の間、99%不動であった時間の%である。*..p<0.05;**..p<0.01。
試験動物におけるアミロイド負荷を示す:Tg2576マウス群(n≦10/群)は、KLH/ALUM(n=9)またはSeqID1(n=10)−、SeqID2(n=7)−コンジュゲートワクチンまたはAlumのみ(n=8)を6回、毎月の注射を受けた。全製剤におけるAlum用量は2mg/mlに等しい。脳を、6回目の免疫化後8週間後単離した。アミロイド沈着により覆われる相対的全脳面積の定量化(解析した総組織における%)は、Aβ特異的mAb 3A5を使用する免疫蛍光染色に基づく。対照(A、C)およびSeqID1−(B、D)免疫化マウスの皮質(A、B)および歯状回(C、D)の代表的小領域を示す。E)SeqID1−KLH−Alum+SeqID2−KLH−Alumは、KLH−Alum対照と比較して、アミロイド沈着により覆われる相対的面積を有意に減少させる(汎発性および有芯アミロイド;*..p<0.05、**..p<0.01)。わすかであるが、有意なAβ沈着の減少が、Alumのみ処置対KLH−Alum処置動物で検出可能である。(ns)Cにおける矢じりは、脳血管からの不特定蛍光を示す。スケールバー:200μM;写真は10倍拡大で撮った。
実施例
1. AD臨床治験の抜粋(AFF006; Eudract: 2009-016504-22)
材料および方法:
本発明を支持するデータは、初期AD患者における無作為化臨床治験に由来する。本治験(AFF006; Eudract: 2009-016504-22)は、初期AD患者を5処置アームに無作為化した。2治験アームの患者は、1mgアルミニウムまたは2mgアルミニウムを受けた。合計99名の初期AD患者が2治験アームに登録された。所定の患者の参加は18ヶ月続いた。
治験設計:
AFF006は、無作為化、プラセボ対照、並行群、二重盲検式、多施設フェーズII治験として実施され、プロトコールに規定されるように、初期ADの患者における、とりわけアルミニウム(種々の用量)の反復皮下投与の臨床的および免疫学的活性ならびに安全性および耐容性を評価した。オーストリア、フランス、ドイツ、スロバキア、チェコ共和国およびクロアチアの計6カ国で実施された。
臨床治験は、10回の定期的患者外来通院および6回の電話インタビューからなった。処置開始最大4週間前までに、スクリーニング来院(来院1)を行い、患者の臨床治験への適性を確認し、患者のベースライン特徴を確立した。スクリーニング後、適格患者を、処置群に無作為に割り当てた。0週目の無作為化後、患者は、1mgまたは2mgアルミニウムの6回の注射を受けた。注射を、皮下で、治験医により、0週、4週、8週、12週、40週および65週に行った(来院2、3、4、5、7および9)。
来院2、3、4、5、6、7および9に、ワクチンに対する可能性のある局所および全身反応およびバイタルサイン(血圧、心拍、呼吸数および体温)を評価した。さらに、身体的および神経学的試験を行った。有効性パラメータを来院1、2、3、5、6、7、8、9、10に評価した。最終来院(来院10)を、治験薬の最終投与(来院9)12週間後に実施した。患者が臨床治験を中断するとき、早期中断来院(EDV)を行った。
治験集団
本治験は、初期ADの患者で実施した。診断は次の基準により規定された。
− NINCDS/ADRDA基準により規定して、ほぼ確実なアルツハイマー病(1)
− MMSEスコア≧20(2)
−患者のエピソード記憶を障害させる海馬損傷を示す、ヒントがある場合とない場合の選択的想起試験(FCSRT)結果合計想起≦40またはヒントなし想起≦17の結果(3)
− 患者脳の中心的に読んだMRIの結果、特に内側側頭葉萎縮の存在は、診断ADと同等でなければならない(Scheltensスコア≧2)(4)
他の包含/除外基準を適用した(例えば、インフォームド・コンセント書類;50〜80歳の年齢、免疫抑制性剤での処置(除外))。
治験薬の投与
治験来院2、3、4、5、7および9中、患者は、治験医から、合計、65週間処置期間にわたり6回注射で、治験薬を受けた。注射を、上腕、肘から約8〜10cm上の外側表面に適用した。実際の部位の必要条件は、完全所属リンパ節ステーションの存在であった。両上腕の排出リンパ節ステーションが完全でなかったならば、注射を、鼡径リンパ節に近い大腿にした。二つの交互の注射部位(例えば左右の上腕、左上腕と左大腿)を、6回の注射をとおして使用した。
注射を皮下組織に適用した(s.c.)。各注射前、注意深い吸引により血管内適用を避けることに特に注意した。全投与を、治験場所で行った。
容積ベースの形態計測
容積測定のための図譜を作成するために、海馬(左右)および全側脳室ROIを解剖学的MRI鋳型上で描写した。各対象の海馬および側脳室容積を、図譜標識の非線形レジストレーション由来の変換を、個々の対象スキャンおよび対象特異的画像情報と合わせる、完全自動化法を使用して決定した(Collins et al., J. Comput. Assist. Tomogr., 18: 192-205, 1994)。後処理QCレビューに失敗した側脳室および海馬分節化は、手動で補正した。総頭蓋内容積(TIV)を、前処理中に作製した脳マスクから概算し、各対象の平均TIV(TIVavg)を、通院をとおして概算TIVを平均化することにより決定した。頭の大きさの違いを考慮に入れるため、各対象について、海馬および脳室容積の正規化に正規化係数(TIV鋳型/TIVavg_対象)を使用した。
安全性評価:
安全性評価は次のものを含んだ。
− 有害事象(AE)および重篤有害事象(SAE)(AEにより中断した患者数;中断の理由)
− 臨床検査評価:血液学、生化学、凝血、血清学、尿検査、APP交差反応性
− バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数および体温)
− 身体的および神経学的試験
有効性評価:
主要有効性可変値は、改変ADAS−cogにより測定した認知におけるベースラインからの変化(CFB)、改変ADCS−ADLにより測定した機能におけるCFBおよび複合合成数により測定した認知および機能におけるCFBの組み合わせである。
4. 共主要:改変ADAS−cog;
5. 共主要:改変ADCS−ADL;
6. 複合主要評価項目:複合。
ADAS−cogおよび改変ADAS−cogに含まれる他の項目を、来院来院1、2、3、5、6、7、8、9および10またはEDVに測定した。ADCS−ADLを、来院2、5、6、7、8、9および10またはEDVに測定した。複合主要評価項目に寄与する項目を、来院2、5、6、7、8、9および10またはEDVに測定した。
主要有効性評価項目は、全て0〜100の範囲である。各改変スケールおよび合成数について、スコアが低いほど、良好な能力を示す。しかしながら、スケールにおけるいくつかの項目は逆方向、すなわち、スコアが高いほど、良好な能力を示し得る。合成数を計算する前に、逆方向で採点される寄与項目を逆にした。項目を、実測値を当該項目についての可能性のある最高値から減算することにより逆にする。これは、項目のスケールを逆にし、それゆえに、いまやスコアが低いほど良好な性能を示す。改変ADAS−cogおよび複合合成数に含まれる次の項目が、逆のスコアリングを必要とする:言語PAL、NTBカテゴリー流暢性およびCogState ONB。
副次有効性評価項目:
クオリティ・オブ・ライフ(QOL)介護者
QOL介護者は、特に介護者の視点から患者のQOLの評点を得るために設計された短い、13項目問診である。質問は、友人および家族との関係、経済に関する懸念、体調、気分および生活の質の全体的評価にわたる。全ての項目は4段階評価で採点し、1が悪く、4が優れる。合計点は、13〜52の範囲であり得る全項目の加算である。QOL介護者値は、ここでは、ベースラインからの変化として示す。結果は、来院1、6、8および10に測定した。
統計解析
ベースラインデータ
対象を、スクリーニング相の間に記録した人口統計学的情報およびベースライン特徴を使用して、記載した(来院1)。
評価した人口統計情報は、年齢、性別、人種、喫煙習慣、学歴、身長および体重であった。対象人口統計は、安全性、ITTおよびパープロトコール手段の処置により要約した。
主要有効性解析
主要、副次および予備有効性評価項目を、群間の経時的変化の比較により解析した。有効性解析は、下記混合モデルを利用した。混合モデル解析は、3ワクチン群および2アルミニウム群間の、各来院時の全有効性評価項目スコアの、概算したベースラインからの変化を比較した。モデルは、各有効性エンドポイントについて別の反復測定縦断的モデルを使用した。この解析は、処置群間で概算CFB値に差異が有るか否かを評価した。
SAS(登録商標)PROC MIXEDを使用して、反復測定を伴う混合モデル、応答変数としての各有効性評価項目(例えば、改変ADAS−cog)のCFBならびに次の共変数および固定効果を適合させた。
・ 年齢(共変数);
・ 学歴(≦12年、>12年のカテゴリーに分けた固定効果);
・ 性別(固定効果);
・ 有効性パラメータのベースライン試験スコア(共変数);
・ 施設(固定効果);
・ 処置(固定効果);
・ APOEe4状態(固定効果、陽性または陰性);
・ AChE阻害剤の使用(固定効果、薬物療法から決定);
・ 時間(共変数、時間は来院の点で定義する);
・ 時間経過性処置効果(時間*処置)
モデルのための共分散構造は、一次異質的自己回帰(ARH[1])であった。最小二乗平均を、治験における各来院時に概算した。特定の来院時のLS平均を、特定した処置を投与したとき、その時点(来院)の有効性結果における予測CFBとして解釈した。最小二乗平均および標準誤差を、各来院時に混合モデルから概算しており、多様な群について示す。
改変ADAS−cogは、認知機能を評価する項目を合わせる。改変ADCS−ADLは、機能的能力に感受性である項目を含む。認知技術は、疾患の開始に向けて低下することが予測され、基礎的機能を実施する能力は、疾患において後に低下すると予測される。複合主要評価項目(ここでは“複合スコア”と称す)は、認知および基礎的機能の低下に感受性である複合スコアを作成するために、改変ADAS−cogおよび改変ADCS−ADLの両者を合わせる。次の式を、複合主要評価項目、すなわち複合合成数スコアを導くために使用する。
複合合成数スコア:
=1.67*単語想起+1.35*見当識+1.42*単語認識+0.55*想起指示+0.81*口頭言語+1.01*単語発見+5.42*ONB+0.15*VPAL+0.19*カテゴリー流暢性+0.28*持ち物+0.35*買い物+0.23*趣味+0.38*飲料+0.37*食事+0.23*現在の事象+0.26*TV+0.33*約束遵守+0.37*旅行+0.33*単独+0.35*電化製品+0.49*衣服+0.36*読書+0.62*電話+0.33*筆致
複合合成数スコアに対する各項目の寄与パーセントは、下記表1に見ることができる。
結果
AFF006は、人口統計学的データ(表2)および治験群のベースライン特徴を示すデータ(表3)に基づき、初期AD患者を暗示する治験集団を集めた。
局所反応の頻度および強度のいずれも、投与したアルミニウム用量に依存した(表4)。このような局所反応(LR)は、自然免疫応答の活性化の指標として役立つ。
疾患進行を伝えるパラメータに関して、2mgアルミニウム群は、1mgアルミニウム群(他の群)を強く凌ぐ(図1および5)。両群の軽度患者集団の比較は、この効果が、初期疾患段階の患者のコホートで最も顕著であることを示した(図2)。改変ADAS−cogにより例示される、18ヶ月にわたる疾患進行の遅延が、2mgアルミニウム群で特に明らかである(図3)。
得られた結果を公的データセットと比較した。同定された歴史的データセットは、ADNI 1軽度ADコホート(観察研究)、ADCSホモシステイン治験からの軽度プラセボ患者(HC、MMSE≧20)ならびにロフェコキシブおよびナプロキセンのADCS NSAID治験からのプラセボ群(NS、MMSE≧20)であった。これら3コホートを合わせて、歴史的対照(HC−ADNI,NS;HC)を作成した。データ点は、6ヶ月目は344患者、12ヶ月目は317患者、そして18ヶ月目は226患者が入手可能であった。ADNI治験は、6ヶ月、12ヶ月および24ヶ月での評価しか実施しておらず、従って、18ヶ月値は直線で補完した。NS治験は12ヶ月長でしかなかったため、この治験から18ヶ月データは入手可能ではなかった。
改変ADAS−cogは、NTBおよびCogState Batteryからの項目を補ったADAS−cogからのいくつかの項目を使用従、これらの項目は歴史的試験の全てで利用可能ではなかった。従って、ADAS−cog項目については改変ADAS−cogと同じ重みを使用するが、NTBおよびCogState項目を含まない、改変ADAS−cog2を作成した(1.67*単語想起+1.35*見当識+1.42*単語認識+0.55*想起指示+0.81*口頭言語+1.01*単語発見)。
改変ADAS−cog2は、AFF006治験からの1mgおよび2mgオキシ水酸化アルミニウム処置群よりも歴史的対照群における実質的に多くの低下を示す(図3)。p値は1mg対HC−ADNI、NS、HC:<0.0001;2mg対HC−ADNI、NS、HC:<0.0001であった
またMRIデータは、2mg群患者について統計学的に有意な疾患修飾的効果および海馬容積と臨床的エンドポイント、例えば右海馬とdapADASの相関を示す:p=0.0006または複合スコア:p=0.0095(図4)。本治験は、初めて臨床的データと放射線学的バイオマーカー(この場合MRI)の並行した進行を提供したことは特筆すべきである。図4は、AD患者における1年の脳萎縮率は3〜6%/年の範囲であるのに、本発明により処置された患者が、18ヶ月の期間にわたり海馬容積のAD関連減少をほとんど示さなかったことを示す(Risacher et al., 2013、表2;健常高齢者の速度は、通常0.5〜2.2の範囲である(またRisacher et al.における表2を参照のこと))。
図5は、本発明により処置された患者の介護者が、患者のQOLが、1mg Alumおよび他の群と比較して、2mgで18ヶ月の期間にわたり、顕著に改善したとして採点したことを示す(データは示していない)。
2. KLH−AlumおよびAlumのみと比較した、2種のAβ標的化ワクチンSeqID1−KLH−AlumおよびSeqID2−KLH−Alumの免疫原性
SeqID:
SeqID1:SWEFRTC
SeqID2:SEFKHGC
動物実験:
全ての動物実験を、Tg2576マウス(Taconic Farms, USA; 129S6/SvEvTac)を使用して、オーストリア動物実験法(TVG2012)により実施した。一般的健康状態を、改変Smith Kline Beecham, Harwell, Imperial College, Royal London Hospital表現型評価(SHIRPA)主要観察スクリーニングにより確認した(Rogers DC et al. (1999) Behav Brain Res 105: 207-217.)。マウスに1ヶ月間隔で6回皮下注射した。血液を一定間隔で採り、血漿を調製し、さらなる使用まで保存した。実験終了時、マウスを殺し、脳を採取し、半球に分けた。一つの半球を4%パラホルムアルデヒド(PFA, Sigma Aldrich, USA)に固定し、脱水し、パラフィン包埋した。脳組織を滑走式ミクロトーム(Leitz, Germany)を使用して7μMに断片化し、断片をSuperfrost Plus Slides(Menzel, Germany)にマウントした。
ELISAにより測定された力価:
標準的酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術を使用して、血漿およびCSF中のワクチン惹起抗体のレベルを測定した(Mandler M et al. (2012) J Alzheimers Dis 28: 783-794.)。使用した基質は、ヒト(BACHEM, CH)Aβ1−40/42(5μg/ml)、KLH(1μg/ml)およびペプチド−ウシ血清アルブミン(BSA)コンジュゲート(SeqID1およびSeqID2、1μM)を含んだ。光学密度(OD)を、405nmでマイクロウェルリーダー(Tecan, CH)を使用して測定した。ODmax/2を計算した。
行動的試験:
認知障害を解析するために、免疫化Tg2576動物を恐怖条件付け文脈学習(CFC、Comery TA et al. (2005) J Neurosci 25: 8898-8902.)に付し、AnyMazeソフトウェア(Stoelting Co, USA)を使用して解析した。CFCに関して、1日目にマウスを条件付けチャンバー(AFFiRiS AG, Austria)に入れ、2分間馴化させ、2分間隔+30秒中断で3回0.8mA足部ショックを与えた。2日目に文脈学習を評価するために、動物をチャンバーに再び入れ、解析用時間枠として選択したs120〜240を伴う5分モニターした(すくみ時間=呼吸以外動きがない)。1日目の最初の2分は、2日目値から減算するベースラインすくみとして考慮した。
脳Aβの解析:
免疫蛍光(IF)解析を先に記載のように実施した(Mandler M et al. (2012) J Alzheimers Dis 28: 783-794)。Aβ特異的IF染色について、免疫化Tg2576の脳断片を、mAb 3A5(AFFiRiS AG, Austria)を使用するアミロイド負荷の解析のために処理した。全ての二次的試薬はVector Labs(USA)から得た。IFについて、DAPI含有VECTASHIELD-HardSet Mounting Mediumを使用して断片をマウントし、対比染色した。断片をMIRAX-SCAN(Carl Zeiss AG, Germany)を使用して試験した。動物におけるAD様病理を、半自動化面積認識プログラム(eDefiniens Architect XD; www.definiens.com, Mandler M. et al (2015) PLoS ONE 10(1): e0115237.)を使用して、アミロイド沈着により占拠された相対的脳面積を決定することにより評価した。解析のために、3スライド/動物および≦5の個々の断片/スライドを評価した。組織人工物または異常染色を担持する断片は除外した。Aβ陽性血管数を評価するために、皮質および海馬を覆う3A5染色断片(3スライド/動物ならびにスライドあたり5個までの個々の断片)を分析した。Aβ陽性血管を、皮質の小区域ならびに海馬において手動で計数した。mmあたりの陽性血管数を決定した。
参考文献:
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Mandler et al., PLoS ONE 10(1) (2015): e0115237. doi:10.1371/journal.pone.0115237.
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Comery et al., J Neurosci 25 (2005): 8898-8902.
結果:
KLH−AlumおよびAlum(オキシ水酸化アルミニウム)のみと比較した2種のAβ標的化ワクチンSeqID1−KLH−AlumおよびSeqID2−KLH−Alumの免疫原性を試験するために、Tg2576マウスに、30μg正味ペプチドを含むコンジュゲートワクチンのいずれか、等用量のAlumと製剤したKLHまたはAlumのみを、4週間隔で6回皮下注射した。使用したAlum用量は2mg/mlと等しかった。ワクチン接種惹起Abを、屠殺時に採った血漿サンプルで測定した(SeqID1(n=10)、SeqID2(n=8)、KLH−Alum(n=10)およびAlumのみ(n=8))。3ワクチン全て、強くかつ同等なIgG力価を、免疫化に使用したペプチドに対して惹起した(図6A)。Alumのみは、背景を超えるシグナルを惹起しなかった(図6A)。両Aβ標的化ワクチン、SeqID1−KLH−AlumおよびSeqID2−KLH−AlumはヒトAβに対するAbを惹起従、KLH−AlumワクチンおよびAlumのみは処置動物において背景を超えるシグナルを惹起しなかった(図6B)。
認知機能に対するAβ標的化ワクチン(SeqID1−+SeqID2−KLH−Alum)および非Aβ特異的ワクチン(KLH−Alum)と比較したオキシ水酸化アルミニウムのみ(Alum)の効果を試験するために、我々は、Tg2576マウスにおける文脈記憶および学習を解析する恐怖条件付け文脈学習(CFC)を適用した。予想どおり、CFCは、SeqID1およびSeqID2処置動物は、Aβ沈着のこのADモデルにおいてKLH−Alumを受けている対照動物(ゆえにAβ特異的免疫応答を惹起しない)より優れたことを証明した(図7)。興味深いことに、このADモデルにおいて、Alumのみ(それぞれKLHまたはAβに対する活性免疫応答を惹起するコンジュゲートなし)を受けた動物は、Aβ特異的抗体非存在下で、Aβ標的化ワクチンで検出可能なものと同等な効果を示した。
Alumがまた脳アミロイド負荷に有意に影響するか否かを試験するために、CFCを受けた動物を14ヶ月齢でその後殺した。脳を汎発性および有芯プラークについて、モノクローナル抗体3A5を使用するIF染色により評価した。KLH/ALUM注射対照の皮質ならびに海馬断片は、多数のアミロイドプラークにより覆われていた(図8A+C)。対照的に、SeqID1およびSeqID2免疫化Tg2576マウスの各脳領域は、有意に沈着が少なかった(図8B+DおよびE、p<0.05、データは示していない)。重要なことに、このADモデルにおいて、Alumのみで処置したTg2576動物は、KLH−Alum処置動物(図8E)と比較して、アミロイド沈着の有意な変化はなかった。
それゆえに、図7および8はまた、アルツハイマー病のためのAPPトランスジェニックモデル(Tg2576)において、局所適用したオキシ水酸化アルミニウムが、脳Aβレベルを有意に変化させることなく、認知低下を有意に低減できることも示す。これは、このADモデルにおいてオキシ水酸化アルミニウムにより発揮される有益な機能的効果の根底にあるAPP/Aβ非依存的機構を含意し、さらに、“アミロイドチャネル仮説”の科学的妥当性の欠如を証明する。
続いて、本発明は、次の個々の好ましい態様を記載する。
1. アルツハイマー病(AD)の処置および予防において使用するためのオキシ水酸化アルミニウム。
2. オキシ水酸化アルミニウムが医薬製剤に含まれる、態様1の記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
3. オキシ水酸化アルミニウムを、懸濁液としてAD患者に投与する、態様1または2の記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
4. オキシ水酸化アルミニウムを欧州薬局方グレードオキシ水酸化アルミニウム(モノグラフ1664)、特にオキシ水酸化アルミニウムがAlhydrogelとしてAD患者に投与する、態様1〜3のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
5. 患者に直接適用するすぐに使える形態である、特に予充填シリンジである、態様1〜4のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
6. 医薬製剤に包含され、該製剤がオキシ水酸化アルミニウムを単一有効成分として含む、態様1〜5のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
7. 医薬製剤に包含され、該製剤がさらに補助物質、特に安定性成分、界面活性剤、抗酸化剤、一価または二価金属イオン用錯化剤、炭水化物および/または緩衝物質を含む、態様1〜6のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
8. 医薬製剤に包含され、該製剤が無菌であり、所望により、液体、凍結または凍結乾燥される、好ましくは液体である、態様1〜7のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
9. 医薬製剤に包含され、該製剤が液体であり、5〜9、好ましくは5.5〜8.0、特に6〜7.5のpHを有する、態様1〜8のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
10. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも0.5mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜9のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
11. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも1.0mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜10のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
12. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも1.2mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜11のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
13. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に1.2mg〜5.0mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜12のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
14. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも1.5mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜13のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
15. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に1.5mg〜5.0mg、好ましくは1.5〜3.0mg、特に1.5〜2.5mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜14のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
16. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に1.6mg〜2.5mg、好ましくは1.8〜2.2mg、特に1.9〜2.0mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜15のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
17. 医薬製剤に包含され、該製剤が、さらに、1以上の安定性成分、特にチオメルサール、界面活性剤、抗酸化剤、一価または二価金属イオン用錯化剤、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、糖、糖アルコール、グリセロールおよび/または緩衝物質、特にTRISまたはリン酸緩衝物質を含む、態様1〜16のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
18. 医薬製剤に包含され、該製剤が4〜10、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8、特に7.0〜7.5のpHを有する懸濁液である、態様1〜17のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
19. 医薬製剤に包含され、該製剤が等張懸濁液である、態様1〜18のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
20. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に皮下、節内、皮内または筋肉内投与、特に皮下投与する、態様1〜19のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
21. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも月に1回、少なくとも2ヶ月投与する、態様1〜20のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
22. アルミニウム塩がオキシ水酸化アルミニウムであり、AD患者に少なくとも月に1回、少なくとも6ヶ月投与する、態様1〜21のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
23. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも月に2回、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、特に少なくとも24ヶ月投与する、態様1〜22のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
24. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に上腕、好ましくは左右の上腕交互に皮下に投与する、態様1〜23のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
25. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に、特にほぼ同じ投与部位に分割用量で投与する、態様1〜24のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
26. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に0.8〜5.0mg、好ましくは1.0〜3.0mg、特に1.0〜1.5mg(Alとして示す)の分割用量で投与する、態様1〜25のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
27. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも毎月、少なくとも2年、好ましくは少なくとも4年、特に少なくとも8年投与する、態様1〜26のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
28. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に注射デバイス、特にシリンジにより投与する、態様1〜27のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
29. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも1.8mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜28のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
30. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に液体形態で0.1〜10ml、好ましくは0.2〜5ml、特に0.4〜3mlの適用容積で投与する、態様1〜29のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
31. 医薬製剤に包含され、該製剤が硫酸、硝酸または塩素アニオンを欠く、態様1〜30のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
32. 医薬製剤に包含され、該製剤が20ppm未満の重金属含量を有する、態様1〜31のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
33. 医薬製剤に包含され、該製剤がオキシ水酸化アルミニウムの懸濁液であり、2μm〜約10μmの粒子径分布を有し、該粒子が好ましくは約2nm×4.5nm×10nmの小さい繊維から成る凝集物である、態様1〜32のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
34. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも2.2mg、好ましくは2.2〜10mg、より好ましくは2.2〜8mg、さらに好ましくは2.2〜5mg、特に2.2〜4mg(Alとして示す)の量で投与する、態様1〜33のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
35. オキシ水酸化アルミニウムを23〜30、好ましくは24〜30、より好ましくは25〜29、特に26〜29のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、態様1〜34のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
36. キシ水酸化アルミニウムを27以上のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、態様1〜35のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
37. オキシ水酸化アルミニウムを25〜27のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、態様1〜35のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
38. オキシ水酸化アルミニウムを19〜24のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、態様1〜35のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。

Claims (15)

  1. アルツハイマー病(AD)の処置および予防において使用するためのオキシ水酸化アルミニウム。
  2. オキシ水酸化アルミニウムを欧州薬局方グレードオキシ水酸化アルミニウム(モノグラフ1664)、特にオキシ水酸化アルミニウムがAlhydrogelとしてAD患者に投与する、請求項1の記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  3. 医薬製剤に包含され、該製剤がオキシ水酸化アルミニウムを単一有効成分として含む、請求項1または2の記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  4. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも1.2mg、好ましくは1.2mg〜5.0mg(Alとして示す)の量で投与する、請求項1〜3のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  5. 患者に直接適用するすぐに使える形態である、特に予充填シリンジである、請求項1〜4のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  6. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に1.5mg〜5.0mg、好ましくは1.5〜3.0mg、特に1.5〜2.5mg(Alとして示す)の量で投与する、請求項1〜5のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  7. 医薬製剤に包含され、該製剤が、さらに、1以上の安定化成分、特にチオメルサール、界面活性剤、抗酸化剤、一価または二価金属イオン用錯化剤、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、糖、糖アルコール、グリセロールおよび/または緩衝物質、特にTRISまたはリン酸緩衝物質を含む、請求項1〜6のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  8. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に皮下、節内、皮内または筋肉内投与、特に皮下投与する、請求項1〜7のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  9. アルミニウム塩がオキシ水酸化アルミニウムであり、AD患者に少なくとも月に1回、少なくとも6ヶ月投与する、請求項1〜8のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  10. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に上腕、好ましくは左右の上腕交互に皮下に投与する、請求項1〜9のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  11. オキシ水酸化アルミニウムを23〜30、好ましくは24〜30、より好ましくは25〜29、特に26〜29のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、請求項1〜10のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  12. オキシ水酸化アルミニウムを27以上のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、請求項1〜11のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  13. オキシ水酸化アルミニウムを25〜27のMMSEスコアを有するAD患者に投与する、請求項1〜12のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  14. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に少なくとも2.2mg、好ましくは2.2〜10mg、より好ましくは2.2〜8mg、さらに好ましくは2.2〜5mg、特に2.2〜4mg(Alとして示す)の量で投与する、請求項1〜13のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
  15. オキシ水酸化アルミニウムをAD患者に液体形態で0.1〜10ml、好ましくは0.2〜5ml、特に0.4〜3mlの適用容積で投与する、請求項1〜14のいずれかの記載により使用するオキシ水酸化アルミニウム。
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