JP2017513490A - ガン及び様々な病態生理学的状態を処置するための方法において使用するためのApoO - Google Patents

ガン及び様々な病態生理学的状態を処置するための方法において使用するためのApoO Download PDF

Info

Publication number
JP2017513490A
JP2017513490A JP2016563136A JP2016563136A JP2017513490A JP 2017513490 A JP2017513490 A JP 2017513490A JP 2016563136 A JP2016563136 A JP 2016563136A JP 2016563136 A JP2016563136 A JP 2016563136A JP 2017513490 A JP2017513490 A JP 2017513490A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
apoo
cells
compound
use according
mitochondrial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016563136A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017513490A5 (ja
JP6698031B2 (ja
Inventor
ルエ,フィリップ
スミー,ファティマ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Universite Paul Sabatier Toulouse III
Original Assignee
Universite Paul Sabatier Toulouse III
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Universite Paul Sabatier Toulouse III filed Critical Universite Paul Sabatier Toulouse III
Publication of JP2017513490A publication Critical patent/JP2017513490A/ja
Publication of JP2017513490A5 publication Critical patent/JP2017513490A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6698031B2 publication Critical patent/JP6698031B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/1703Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • A61K38/1709Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/1703Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • A61K38/1709Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • A61K38/1716Amyloid plaque core protein
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/18Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from animals or humans

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Marine Sciences & Fisheries (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

本発明は、ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。本発明はさらに、病態生理学的状態を処置するのに使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである化合物に関する。

Description

発明の分野
本発明は、ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。本発明はさらに、病態生理学的状態を処置するのに使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである化合物に関する。
発明の背景
ガンの流行は過去数十年間で劇的に拡大し、紛れもなく、研究されている主要な現代病となった。ガンの病因に関する新たな遺伝学的側面は、ますます重要と認識されている。最近、ガンを患っている患者を処置するために、新規戦略が開発された。それらのうち、細胞周期の停止を誘導するために、又はアポトーシスを誘導するために、新規化学療法化合物が設計された。実際、アポトーシスの誘導は、患者を処置するための非常に有望な戦略となった。しかしながら、科学界は、現在の化学療法の周知の副作用を緩和し、ガンの処置において効率的な結果を提供する新たな化合物を強く必要としている。
一方、肥満及び糖尿病の流行は世界的規模に達しており、早死につながる、非脂肪組織における外因性脂質沈着による二次臓器不全の前兆である。実際、よく見られる肥満関連障害(非アルコール性脂肪肝疾患、2型糖尿病及び脂肪毒性心筋症)は、臓器内の過剰な脂質蓄積(脂肪毒性と称されている病理学的プロセス)に起因する。しかしながら、前記脂肪毒性に関与する機構は依然として論争中であり、過剰な脂質蓄積に起因する病状を処置するための効率的な治療法であって、これまでに適切であると判明したものはない。したがって、過剰な脂質蓄積に起因する病状を治療及び/又は予防するための新たな治療戦略について、長い間満たされていない必要性が存在する。
本発明者らは、ApoOがミトコンドリア内に局在し、その発現が、特にマウス及びヒトの心臓におけるミトコンドリア機能不全に関連することを示した。本発明者らは、ApoOがアデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)及びシクロフィリンDと相互作用し、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)が開口状態(これは、マイルドな脱共役を誘導する)をとるようにすることを証明した。
結果として、ミトコンドリア呼吸及び脂肪酸代謝が増強される。このカスケード事象はミトコンドリア代謝シンクを生成し、それにより、細胞が脂質及び脂肪毒性生成物を蓄積して、最終的にはアポトーシスにつながる。
したがって、本発明者らは、驚くべきことに、ガンを処置するための、より正確にはガン細胞におけるアポトーシスを誘導するための新たな治療戦略を開発するために非常に有用なApoOの新たな役割を示した。したがって、本発明は、ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。
より正確には、マウス及びヒトの心臓において実験することによって、本発明者らは、ApoOの過剰発現が、糖尿病性心臓の代謝表現型を模倣する心筋症を誘導することを見出した。したがって、本発明はまた、病態生理学的状態、好ましくは肥満、糖尿病、心筋症、筋障害、脂肪肝、膵炎及び/又は甲状腺機能低下症における脂質過負荷を軽減するための方法において使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである化合物に関する。
発明の詳細な説明
定義
本明細書を通して、いくつかの用語が用いられ、以下の段落で定義される。
本明細書で使用される用語「アポリポタンパク質O」又は「ApoO」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、脂質に結合してリポタンパク質(これは、リンパ系及び循環系を介して脂質を輸送する)を形成するアポリポタンパク質のタンパク質ファミリーのメンバーを意味する。ApoOは、23アミノ酸長のシグナルペプチドを含有する198アミノ酸のタンパク質である。その配列は、以下の通りである:
前記配列は、配列番号1によって示される。
アポリポタンパク質O遺伝子は、一連のヒト組織において発現される。ヒトApoO遺伝子の例示的な配列は、アクセッションナンバーNM_024122の下でデータベースに寄託されている。ヒトApoOタンパク質の例示的な配列は、選択的スプライシングのため、アクセッションナンバーQ9BUR5及びC9J574の下でUniProtKB/Swiss-Protデータベースに寄託されている。
本明細書で使用される表現「ミトコンドリア膜透過性遷移孔」又は「MPTP」は、ミトコンドリア膜上に局在する細孔を指す。この細孔は、分子量1.5kDa未満の代謝産物及び分子(プロトンを含む)のミトコンドリアへの自由な通過を可能にする。MPTPを構成するタンパク質は、少なくとも電圧依存性アニオンチャネル(VDAC)、シクロフィリンD及びアデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)を含み、後者は、MPTP開口のレギュレーターとして作用する。
本明細書で使用される表現「ミトコンドリア脱共役」及び「脱共役」は、ミトコンドリアのプロトン勾配が、酸化的リン酸化のためのエネルギーを提供するという目的を果たし得る前に、その解消を引き起こす現象を指す。
本明細書で使用される用語「アポトーシス」は、プログラム細胞死を指す。本発明との関連では、前記死は、本発明者によって証明された新たな生物学的プロセスを介してApoOによって誘導される。前記プロセスは、脱共役を誘導して最終的には脂質及び脂肪毒性生成物の蓄積をもたらし、したがってアポトーシスをもたらすMPTPの開口を含む。
本明細書で使用される表現「カスパーゼ3」は、カスパーゼ8及びカスパーゼ9と相互作用するカスパーゼタンパク質を指す。それは、CASP3遺伝子カスパーゼ−3によってコードされ、外因性(デスリガンド)及び内因性(ミトコンドリア)経路の両方によってアポトーシス細胞において活性化される。
その最も広い意味において、用語「処置する」及び「処置」は、このような用語が適用される障害若しくは症状、又はこのような障害若しくは症状の1つ以上の症候の進行の回復、緩和、阻害、又はこれらの予防を指す。
ガンの処置
第1の態様では、本発明は、ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。
本発明はまた、ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導することによってガンを処置するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。
用語「ガン」は、ガン性細胞とも称される無秩序な細胞成長を特徴とする疾患又は障害を指す。
本発明者らは初めて、タンパク質ApoOの新たな役割を示した。心筋芽細胞においてApoOのin vivo蛍光標識を実施することによって、本発明者らは、ApoOの予想外のミトコンドリア内局在性を証明した。実際、ApoOは、ミトコンドリア内膜にアドレスされる。
次いで、本発明者らは、ApoOが、ミトコンドリアの機能及びエネルギー生成のレギュレーションにおいて重要な役割を果たすことを証明した。前記目的を達成するために、ApoOは、特有の結合パートナー:シクロフィリンD及びANTを有する。本発明者らは、ApoOとシクロフィリンD及びANTとの相互作用がMPTPの開口につながることを示した。したがって、MPTPは、ミトコンドリア呼吸のレギュレーションにおいて主要な役割を果たす。本発明者らはさらに、ApoO過剰発現が細胞内活性酸素種(ROS)の増加につながることを示した。実際、プロアポトーシス因子Bax(Bad、Bak、カスパーゼ−9)のmRNAレベルは増強された。これは、in vivoではApoO発現ベクターでトランスフェクションした肝臓において、及びin vitroでは心筋芽細胞において実際に確認された。
本発明者らは、トリグリセリドレベルは有意に改変されなかったが、ジグリセリド及びセラミドレベルはApoOの発現によって増加したことを示した。したがって、ApoOは、脂肪毒性種の細胞内蓄積をもたらし、アポトーシスに明らかにつながることが示された。新たに発見されたこの生物学的機構を介して、ApoOによって引き起こされるMPTPの開口は、プログラム細胞死のプロセスにおける重要な工程であることが見出された。
さらに、本発明者らは、ApoOを過剰発現するガン性細胞株を開発し、前記細胞におけるカスパーゼ−3活性の有意な増加を示したが、これは、アポトーシスの増加を示している。したがって、本発明者らは、ガン性細胞株におけるアポトーシスの誘導におけるApoOの役割を示したが、これは、ApoOがガン処置の重要なターゲットであることを明確に証明している。
好ましくは、前記ガン性細胞は、高含量のミトコンドリアを有する細胞である。好ましくは、前記ガン性細胞は、少なくとも30体積%、好ましくは40体積%のミトコンドリアを含む。
典型的には、このようなガン細胞は、心臓細胞、肝臓細胞、膀胱細胞、脳細胞、乳房細胞、結腸細胞、直腸細胞、子宮内膜細胞、腎細胞、血液細胞、肺細胞、表皮細胞、膵臓細胞、前立腺細胞及び甲状腺細胞からなる群より選択される。
したがって、本発明の化合物は、心臓ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、脳ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガン、腎臓ガン、白血病、肺ガン、黒色腫、リンパ腫、膵臓ガン、前立腺ガン及び甲状腺ガンからなる群より選択されるガンを処置するために非常に有用である。
好ましくは、前記ガンは、心臓ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、脳ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガン、腎臓ガン、白血病、黒色腫、リンパ腫、膵臓ガン、前立腺ガン及び甲状腺ガンからなる群より選択される。
より好ましくは、前記ガンは、脳ガンである。前記脳ガンは、良性又は悪性ガンであり得る。脳ガンの非限定的なリストとしては、脊索腫、頭蓋咽頭腫、神経節細胞腫、神経節腫、未分化神経節膠腫、頸静脈小体、髄膜腫、松果体細胞腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、神経膠腫、血管芽細胞腫及びラブドイド腫瘍が挙げられる。
好ましくは、前記ガンは、神経膠腫である。神経膠腫は、最も一般的な種類の成人脳腫瘍であり、悪性脳腫瘍の78パーセントを占める。それらは、グリアと称される脳の支持細胞から生じる。これらの細胞は、星状細胞、上衣細胞及び希突起膠細胞(又はオリゴ)に細分される。グリア系腫瘍としては、以下のものが挙げられる:星状細胞腫、上衣腫、多形性神経膠芽腫、髄芽腫、乏突起膠腫。
より好ましくは、前記ガンは、神経膠芽腫である。神経膠芽腫は急速に進行する致命的ガンであり、ヒトにおいて最も一般的で最も浸潤性の原発性悪性脳腫瘍であり、全ての機能性組織の脳腫瘍例の52%及び全ての頭蓋内腫瘍の20%を占める。本発明者らは、神経膠芽腫細胞におけるApoOの過剰発現が、脂肪毒性及びミトコンドリア機能不全を誘導することを証明した。前記現象は、最終的には、細胞のアポトーシスにつながる。
結果として、本発明はさらに、ガン性細胞における脂肪毒性及びミトコンドリア機能不全を誘導することによってガンを処置するのに使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される化合物に関する。ガン性細胞内における脂肪毒性及びミトコンドリア機能不全を誘導することによって、本発明の化合物は、最終的には、前記ガン性細胞のアポトーシスを誘導する。
典型的には、前記ガンのガン性細胞は、大量のATPを必要とし、及び/又は産生する。前記細胞は、高酸化的リン酸化(すなわち、アデノシン三リン酸(ATP)を産生するための増強された代謝活性)を特徴とする。
好ましくは、前記化合物は、ヒトApoO、好ましくはネイティブなヒトApoOである。より好ましくは、前記化合物は、配列番号1に開示されている配列である。
好ましくは、前記化合物は、MPTPと相互作用してMPTPが開口状態をとるように促し、それにより、ミトコンドリア脱共役を誘導する。典型的には、前記化合物は、MPTPの脂質又はタンパク質成分と相互作用する。
より好ましくは、前記化合物は、シクロフィリンD及びANTと相互作用してMPTPが開口状態をとるようにし、それにより、ミトコンドリア脱共役を誘導する。MPTPの前記開口状態は、ROS生成の増加をもたらす酸素消費量及び電子伝達鎖束を増強した。
好ましくは、前記化合物は、ミトコンドリア呼吸を増加させ、脂肪酸代謝を増加させ、前記ガン性細胞内の脂質蓄積を誘導する。これらの現象は、明らかに、ガン性細胞のアポトーシスにつながる。
本明細書で使用される用語「ApoO変異体」は、ネイティブな配列のApoOと機能的に同等なタンパク質であって、類似のアミノ酸配列を有し、ネイティブなApoOの1つ以上の活性をある程度保持するタンパク質を指す。変異体はまた、活性を維持するフラグメントを含む。このような変異体は、欠失、挿入及び/又は置換などのアミノ酸変化を有するタンパク質を含む。「欠失」は、関連タンパク質における1つ以上のアミノ酸残基の欠如を指す。「挿入」は、関連タンパク質における1つ以上のアミノ酸の追加を指す。「置換」は、ポリペプチドにおける別のアミノ酸残基による1つ以上のアミノ酸残基の置き換えを指す。典型的には、このような変化は、変異体タンパク質の活性がネイティブな配列のタンパク質と実質的に類似するように、性質の点で保存的である(例えば、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyを参照のこと)。置換の場合、別のアミノ酸を置換するアミノ酸は、通常、類似の構造的及び/又は化学的性質を有する。挿入及び欠失は、典型的には、1〜5アミノ酸の範囲内であるが、挿入の位置に応じて、より多くのアミノ酸が挿入又は除去され得る。変異は、部位特異的突然変異誘発(Carter, et al. 1985; Nucl. Acids Res. 13:4331; Zoller et al. 1982)、カセット突然変異誘発(Wells et al. 1985)及びPCR突然変異誘発(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (2001))などの当技術分野で公知の方法を使用して作製され得る。
好ましくは、ApoO変異体は、ApoOのネイティブなアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は97%のアミノ酸配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。
「アミノ酸配列同一性のパーセント(%)」は、配列をアライメントし、必要であればギャップを導入して配列同一性のパーセントを最大にした後の、ApoO配列中のアミノ酸残基と同一の候補配列中のアミノ酸残基の割合を指し、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない。
本明細書で使用される表現「ApoOフラグメント」は、ネイティブなApoOと本質的に同じ生物学的機能又は活性を保持し得るポリペプチドであって、ApoOアミノ酸配列の領域を含むポリペプチドを指す。好ましくは、前記フラグメントは、30〜190、好ましくは40〜160、より好ましくは70〜160アミノ酸の長さを有する。
好ましくは、前記フラグメントは、少なくとも8アミノ酸、好ましくは少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも15アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、好ましくは少なくとも30アミノ酸を含む。
好ましくは、前記フラグメントは、8〜190、好ましくは8〜100、より好ましくは8〜50アミノ酸の長さを有する。
好ましくは、前記フラグメントは、ネイティブなApoOのN末端の40アミノ酸。実際、本発明者らは、ApoO配列が、N末端の40アミノ酸を含むN末端ミトコンドリアアドレスラベルを含むことを証明した。したがって、これらのアミノ酸は、ApoOフラグメントがミトコンドリア膜に正しくアドレスされるために必須である。
あるいは、前記フラグメントは、ネイティブなApoOのC末端の少なくとも60、好ましくは90、好ましくは120、好ましくは158アミノ酸を含む。好ましくは、前記フラグメントは、配列番号10、配列番号11及び配列番号12に示されているフラグメントからなる群より選択される。
前記フラグメントはそれぞれ、以下の通りである:
配列番号10:YTTWCQETY;
配列番号11:QWGLDSYDY;及び
配列番号12:YDWGLRGY。
より好ましくは、前記フラグメントは、配列番号12に示されているフラグメントである。
いかなる理論にも拘束されないが、本発明者らは、本発明との関連では、これらの非常に特異的なApoOフラグメントが、ApoOの有益な特性に関与すると考える。
典型的には、前記ApoO又はApoOフラグメントは、ベクター中にあり得る。「ベクター」は、別の核酸を輸送することができる核酸である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド又はファージであり得る。ベクターは、適切な環境に存在する場合、ベクターによって運ばれる1つ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指令することができる。ベクターは、一般に、望ましくは1つ以上のターゲット細胞において発現されるタンパク質をコードする遺伝子を含む。好ましくは、目的の遺伝子は、5’LTR配列と3’LTR配列との間に配置される。さらに、目的の遺伝子がターゲット細胞に組み込まれた後、該遺伝子の発現を特定の方法でレギュレーションするために、目的の遺伝子は、好ましくは、他の遺伝要素、例えば転写調節配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーと機能的な関係にある。特定の実施態様では、有用な転写調節配列は、活性に関して、時間的及び空間的に高度にレギュレーションされるものである。当業者であれば、ベクターを慎重に選択し、ターゲットガン性細胞内においてApoOを発現させるためのルーチン技術を認識している。
典型的には、前記ベクターは、ウイルスベクターであり得る。オンコレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターは、安定なトランスダクションをもたらし、長期間の導入遺伝子発現を維持し、レンチウイルスの場合には非分裂細胞のトランスダクションを可能にするので、有望な特徴を示す。
あるいは、前記ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。AAVは、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、145ヌクレオチドの逆位末端反復(ITR)を含む約4.7kbの長さである。AAVは、例えば、遺伝子療法において外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的な独特の特徴を有する。培養物中の細胞のAAV感染は非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は、不顕性及び無症候性である。また、AAVは、多くの哺乳動物細胞に感染し、in vivoで多くの異なる組織をターゲティングする可能性がある。また、AAVは、分裂細胞及び非分裂細胞に徐々にトランスダクションし、それらの細胞の一生にわたって、転写活性な核エピソーム(染色体外因子)として本質的に存続し得る。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド中のクローニングDNAと同様に感染性であり、それにより、リコンビナントゲノムの構築が実行可能となる。
AAVの複数の血清型が存在し、様々な組織指向性を提供する。公知の血清型としては、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10及びAAV11が挙げられる。
好ましくは、前記ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、好ましくはリコンビナントアデノ随伴ウイルスベクターである。
より好ましくは、本発明との関連では、前記ベクターは、AAV9である。AAV9は血液脳関門を通過することができるので、アデノ随伴ウイルス9の使用は、遺伝子を脳細胞に送達するために非常に便利である。
したがって、好ましい実施態様では、本発明は、脂肪毒性、ミトコンドリア機能不全及び最終的には神経膠芽腫細胞のアポトーシスを誘導することによって神経膠芽腫を処置するためのApoOをコードするベクターであって、ApoOを発現するアデノ随伴ウイルス9であるベクターに関する。
本明細書で使用される表現「ネイティブなApoOの生物学的機能及び/又は活性」は、シクロフィリンD及びANTと相互作用してMPTPが開口状態をとるように促し、及び/又はミトコンドリア呼吸を増加させ、脂肪酸代謝を増加させ、脂質蓄積を誘導するApoOの能力を指す。
当業者であれば、最も適切な投与経路を認識している。好ましくは、本発明の化合物は、経口投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与され得る。最も好ましくは、本発明の化合物は、所望の薬理学的効果を得るのに十分な投与量で、注射によって、例えば、動脈内注射、腹腔内注射又は好ましくは静脈内注射によって投与される。
主治医は、投与を終了、中断又は適合する方法及び時期を理解しているであろう。逆に、主治医はまた、臨床反応が適切でない場合には、処置をより高いレベルに適合することを理解しているであろう。目的の障害の管理における投与量の規模は、処置すべき症状の重症度によって変化するであろう。症状の重篤度は、例えば、標準的な予後評価方法によって部分的に評価され得る。さらに、用量及びおそらく投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重及び反応に応じて変化するであろう。動物医療では、上記と同程度のプログラムが用いられ得る。
過剰な脂質蓄積に起因する病状の処置
ヒトの心臓、マウスの肝臓及び心筋芽細胞(cardiac myobloasts)において実験することによって、本発明者らは、ApoOの過剰発現が高レベルのアポトーシス(これは、とりわけ、高いカスパーゼ3活性によって証明された)に関連していたことを見出した。したがって、本発明者らは、ApoOの過剰発現がアポトーシス率を増加させることを初めて明らかにした。
したがって、ApoOの阻害は、肥満に関連する障害、例えば非アルコール性脂肪肝疾患、2型糖尿病及び脂肪毒性心筋症を治療及び/又は予防するために非常に適切であることが見出された。実際、これらの病状は、アポトーシスの原因となる脂肪毒性につながる臓器内の過剰な脂質蓄積に起因する。したがって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターの投与は、脂肪毒性を最小化し、ターゲット細胞の生存率を高める。本発明者らは、脂肪毒性が、ミトコンドリア機能不全の原因ではなく結果であることの立証責任を果たした。
したがって、第2の態様では、本発明は、肥満、糖尿病、脂肪肝、膵炎及び甲状腺機能低下症からなる群より選択される病態生理学的状態を処置するための方法において使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである化合物に関する。好ましくは、前記病態生理学的状態は、肥満及び糖尿病からなる群より選択される。
特定の実施態様では、前記化合物は、病態生理学的状態、好ましくは肥満、糖尿病、心筋症、筋障害、脂肪肝、膵炎及び/又は甲状腺機能低下症における脂質過負荷を軽減するための方法において使用され、前記化合物は、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである。好ましくは、前記病態生理学的状態は、肥満、糖尿病及び心筋症からなる群より選択される。
好ましくは、前記被験体は、糖尿病及び/又は肥満を患っている。
表現「ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビター」は、広く理解されるべきであり、この表現は、ApoO又はApoOに結合する化合物の発現をダウンレギュレーションする薬剤を指す。
「発現のインヒビター」は、遺伝子の発現を阻害又は有意に低減する生物学的効果を有する天然化合物又は合成化合物を指す。したがって、「ApoO遺伝子発現のインヒビター」は、ApoOタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害又は有意に低減する生物学的効果を有する天然化合物又は合成化合物を指す。
本明細書で使用される用語「ApoO活性」は、脂質に結合してリンパ系及び循環系を介して輸送し、又は細胞内の脂質取り込み及び脂質代謝を増強するApoOの能力を意味する。
一実施態様では、本発明の化合物は、低分子量インヒビター、例えば(天然又は非天然)小有機分子であり得る。
「小有機分子」という用語は、医薬品に一般に使用されるこのような有機分子と同程度のサイズの(天然又は非天然)分子を指す。この用語は、生物学的な巨大分子(例えば、タンパク質、核酸など)を除外する。好ましい小有機分子は、最大約5000Da、より好ましくは最大2000Da、最も好ましくは最大約1000Daのサイズの範囲内である。
別の実施態様では、本発明の化合物は、ApoOタンパク質に結合してApoO活性を阻害する抗体である。
ApoOタンパク質に対する抗体は、例えばとりわけブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから選択される宿主動物に適切な抗原又はエピトープを投与することによって、公知の方法にしたがって生じ得る。当技術分野で公知の様々なアジュバントを使用して、抗体産生を増強し得る。本発明の実施に有用な抗体はポリクローナルであり得るが、モノクローナル抗体が好ましい。ApoOタンパク質に対するモノクローナル抗体は、培養液中の連続細胞株によって抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製及び単離され得る。産生及び単離のための技術としては、限定されないが、Kohler and Milstein (1975)に最初に記載されているハイブリドーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Cote et al., 1983);及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al. 1985)が挙げられる。あるいは、一本鎖抗体の産生について記載されている技術(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)を、抗ApoO一本鎖抗体の産生に適応させ得る。本発明の実施に有用なApoOインヒビターはまた、限定されないが、インタクトな抗体分子のペプシンによる消化によって生成され得るF(ab’)2フラグメント、及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド橋の還元によって生成され得るFabフラグメントを含む抗ApoO抗体フラグメントを含む。あるいは、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーを構築して、ApoOに対する所望の特異性を有するフラグメントの迅速な同定を可能にし得る。
ヒト化抗ApoO抗体及びその抗体フラグメントはまた、公知の技術にしたがって調製され得る。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含む非ヒト(例えば、齧歯類)キメラ抗体の形態である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見られない残基を含み得る。抗体の能力をさらに洗練するために、これらの改変が行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むであろう。ヒト化抗体を作製するための方法は、例えばWinter(米国特許第5,225,539号)及びBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)によって記載されている。
さらに別の実施態様では、ApoOインヒビターは、アプタマーから選択され得る。アプタマーは、分子認識の点において、抗体の代替物を代表する分子クラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で実質的に任意のクラスのターゲット分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド又はオリゴペプチド配列である。このようなリガンドは、Tuerk C. and Gold L., 1990に記載されているランダム配列ライブラリーの試験管内進化法(SELEX)を通して単離され得る。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって得られる。このライブラリーでは、各メンバーは、独特な配列の最終的に化学的に改変された線状オリゴマーである。この分子クラスの可能な改変、使用及び利点は、Jayasena S.D., 1999に概説されている。ペプチドアプタマーは、ツーハイブリッド法(Colas et al., 1996)によってコンビナトリアルライブラリーから選択されるプラットフォームタンパク質(例えば、E. coliチオレドキシンA)によってディスプレイされるコンフォメーション的に制限された抗体可変領域からなる。また、アプタマーは、in vitro及びin vivoでシャペロン媒介性オートファジーを介して内因性タンパク質を迅速かつ可逆的にノックダウンする膜透過性ターゲティングペプチドベースの方法に組み合わされ得る(Fan X, Nature Neuroscience 2014)。
別の実施態様では、阻害性低分子RNA(siRNA)もまた、本発明において使用するためのApoO遺伝子発現のインヒビターとして機能し得る。ApoO遺伝子発現は、被験体又は細胞を、ApoO遺伝子発現が特異的に阻害されるように、低分子二本鎖RNA(dsRNA)又は低分子二本鎖RNAの産生を引き起こすベクター若しくは構築物と接触させることによって減少され得る(すなわち、RNA干渉すなわちRNAi)。配列が公知の遺伝子について、適切なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターを選択するための方法は、当技術分野で周知である(例えば、Tuschl, T. et al. (1999); Elbashir, S. M. et al. (2001); Hannon, GJ. (2002); McManus, MT. et al. (2002); Brummelkamp, TR. et al. (2002);米国特許第6,573,099号及び米国特許第6,506,559号;並びに国際公開公報第01/36646号、国際公開公報第99/32619号及び国際公開公報第01/68836号を参照のこと)。
リボザイムもまた、本発明において使用するためのApoO遺伝子発現のインヒビターとして機能し得る。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイムの作用機序は、相補的ターゲットRNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、それに続くヌクレオチド鎖切断を含む。ApoOmRNA配列のヌクレオチド鎖切断を特異的かつ効率的に触媒する人工ヘアピン型又はハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子は、その結果、本発明の範囲内で有用である。最初に、典型的には以下の配列GUA、GUU及びGUCを含むリボザイム切断部位についてターゲット分子をスキャンすることによって、任意のRNAターゲット候補内の特異的リボザイム切断部位を同定する。同定したら、切断部位を含有するターゲット遺伝子の領域に対応する約15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切なものにし得る予測される構造特徴(例えば、二次構造)について評価し得る。候補ターゲットの適切性はまた、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス性を試験することによって評価され得る。
ApoO遺伝子発現のインヒビターとして有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは両方とも、公知の方法によって調製され得る。これらとしては、例えば固相ホスホアミダイト化学合成などによる化学合成技術が挙げられる。あるいは、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivoにおける転写によって生成され得る。このようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだ多種多様なベクターに組み込まれ得る。本発明のオリゴヌクレオチドへの様々な改変は、細胞内安定性及び半減期を増加させる手段として導入され得る。可能な改変としては、限定されないが、分子の5’末端及び/又は3’末端へのリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列の付加、あるいは、オリゴヌクレオチド骨格内におけるホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート又は2’−O−メチルの使用が挙げられる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA及びリボザイムは、in vivoにおいて単独で又はベクターと共に送達され得る。その最も広い意味において、「ベクター」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸を細胞(好ましくは、ApoOを発現する細胞)に輸送するのを容易にすることができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下において生じる分解程度と比べて低い分解程度で、核酸を細胞に輸送する。一般に、本発明において有用なベクターとしては、限定されないが、プラスミド、ファージミド、ウイルス、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸配列の挿入又は取り込みによって操作されたウイルス又は細菌源由来の他のビヒクルが挙げられる。ウイルスベクターは好ましい種類のベクターであり、限定されないが、以下のウイルス:レトロウイルス、例えばモロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳ガンウイルス及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;並びにRNAウイルス、例えばレトロウイルス由来の核酸配列を含む。命名されていないが当技術分野で公知の他のベクターを容易に用い得る。
好ましいウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的の遺伝子で置換された非細胞変性真核生物ウイルスをベースとする。非細胞変性ウイルスとしては、生活環が、ゲノムウイルスRNAからDNAへの逆転写、続いて、宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みを含むレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)が挙げられる。レトロウイルスは、ヒト遺伝子療法の治験に認可されている。最も有用なのは、複製欠損性の(すなわち、所望のタンパク質の合成を指令することができるが、感染性粒子を製造することができない)レトロウイルスである。このような遺伝子改変レトロウイルス発現ベクターは、in vivoにおける遺伝子の高効率なトランスダクションのための一般用途を有する。(外因性遺伝物をプラスミドに組み込む工程、プラスミドでパッケージング細胞株をトランスフェクションする工程、パッケージング細胞株によってリコンビナントレトロウイルスを産生する工程、組織培養培地からウイルス粒子を回収する工程、ウイルス粒子をターゲット細胞に感染させる工程を含む)複製欠損性レトロウイルスを生産するための標準的なプロトコールは、Kriegler, 1990及びMurry, 1991に提供されている。
特定用途のための好ましいウイルスは、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスであり、これらは、遺伝子療法におけるヒトへの使用について既に認可されている二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損性となるように操作され得、広範囲の細胞型及び種に感染することができる。それはさらに、熱及び脂質溶媒に対する安定性;造血細胞を含む多様な系統の細胞における高いトランスダクション頻度;並びに、重感染阻害の欠如(したがって、複数回のトランスダクションが可能である)などの利点を有する。報告によれば、アデノ随伴ウイルスは、ヒト細胞DNAに部位特異的に組み込まれ得るので、レトロウイルス感染に特徴的な挿入突然変異誘発の可能性及び挿入遺伝子発現の変動性が最小限になる。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択的圧力の非存在下において、100継代超にわたって組織培養液中で継続し、これは、アデノ随伴ウイルスのゲノム組み込みが比較的安定な事象であることを意味する。アデノ随伴ウイルスはまた、染色体外で機能し得る。
他のベクターとしては、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは当技術分野で詳細に記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrook et al., 1989を参照のこと。過去数年間、プラスミドベクターは、抗原をコードする遺伝子をin vivoで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されている。それらは、ウイルスベクターの多くと同じ安全性の懸念がないので、これに特に有利である。しかしながら、宿主細胞と適合性のプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内の作動的にコードされる遺伝子からペプチドを発現し得る。いくつかの一般に使用されるプラスミドとしては、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40及びpBlueScriptが挙げられる。他のプラスミドも当業者に周知である。加えて、制限酵素及びライゲーション反応を使用してプラスミドを特注設計して、DNAの特定のフラグメントを除去及び付加し得る。プラスミドは、様々な非経口、粘膜及び外用経路によって送達され得る。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、眼、皮内、皮下又は他の経路によって注入され得る。それはまた、鼻腔内スプレー又は液滴、直腸坐剤及び経口によって投与され得る。それはまた、遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面に投与され得る。プラスミドを水溶液に加え、金粒子上で乾燥させ、又は別のDNA送達システム(限定されないが、リポソーム、デンドリマー、コクリエート及びマイクロカプセル化を含む)と併用し得る。
好ましい実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA又はリボザイム核酸配列は、異種調節領域、例えば異種プロモーターのコントロール下にある。プロモーターは、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、内皮細胞、周皮細胞および星状細胞に特異的であり得る。例えば、ミューラーグリア細胞における特異的発現は、グルタミンシンターゼ遺伝子のプロモーターを通して得られ得る。プロモーターはまた、例えばウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーター又は任意の合成プロモーターであり得る。
好ましい実施態様では、本発明の化合物は、shRNAである。前記shRNAは、ApoO活性のインヒビター又はApoO遺伝子発現のインヒビターとして作用する。好ましくは、前記shRNAは、MISSION shRNA setのものであり、Sigma Aldrich, Saint Quentin Fallavierによって販売されているsh4 (TRCN 72707)及びSh5 (TRCN 72705)から選択される。
治療組成物
本発明の別の目的は、ガンを処置するための、より好ましくはガン細胞におけるアポトーシスを誘導するための化合物を含む治療組成物であって、前記化合物が、ApoO、その変異体又はフラグメント及びそれらの混合物及びからなる群より選択される治療組成物に関する。
本発明の別の目的はまた、肥満、糖尿病、脂肪肝、膵炎及び甲状腺機能低下症からなる群より選択される病態生理学的状態を処置及び/又は予防するための化合物を含む治療組成物であって、前記化合物が、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである治療組成物に関する。
当業者であれば、所望の目的を果たすために投与するApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターの有効量を認識しているであろう。
「ApoO、そのフラグメント若しくは誘導体、それらの混合物又は前記ApoO、その変異体若しくはフラグメントをコードするベクターの有効量」は、任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で、ガン性細胞のアポトーシスを誘導し、又は病態生理学的状態における脂質過負荷を低減するために十分な量を意味する。しかしながら、ApoO、そのフラグメント若しくは誘導体、それらの混合物又は前記ApoO、その変異体若しくはフラグメントをコードするベクターの1日総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されると理解されよう。それを必要とする任意の特定の被験体のための特定の治療有効用量レベルは、処置される障害の病期、特定のApoO、そのフラグメント若しくは誘導体又は用いられるApoOをコードする核酸を含むベクターの活性、被験体の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路、処置期間、処置と組み合わせて又は同時に使用される薬物を含む様々な要因に依存するであろう。
本発明の任意の治療剤を、薬学的に許容し得る賦形剤、及び場合により持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組み合わせて、治療組成物を形成し得る。
「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」は、適宜、哺乳動物、特にヒトに投与した場合に有害な反応、アレルギー反応又は他の望ましくない反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤は、無毒性固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は任意の種類の製剤補助剤を指す。
医薬組成物の剤形、投与経路、投与量及びレジメンは、当然ながら、処置すべき症状、病気の重度、患者の年齢、体重及び性別などに依存する。
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤に対して薬学的に許容し得るビヒクルを含有する。これらは、特に、等張無菌食塩水溶液(リン酸一ナトリウム又は二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を追加すると注射可能な溶液を構成可能な乾燥(特に、凍結乾燥)組成物であり得る。
投与に使用される用量は、様々なパラメーターの関数として、特に、使用される投与様式、関連病状又はあるいは所望の処置期間の関数として適合され得る。
加えて、他の薬学的に許容し得る形態としては、例えば、経口投与用の錠剤又は他の固体;徐放性カプセルが挙げられ;任意の他の形態が現在使用され得る。
以下の図面及び実施例によって、本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
心筋芽細胞におけるApoO及びApoO Δ1−40の発現及び局在性。(a)コントロール心筋芽細胞、及びApoOを安定に過剰発現するトランスフェクタントにおけるApoO mRNAレベル。SH2、SH3、SH4及びSH5は、その後、4つの異なるshRNA−ApoO発現ベクターで安定トランスフェクションした4つの独立したApoOクローンを示す;(b)コントロール、ApoO及びshRNA−ApoO細胞から調製した全タンパク質抽出物を用いたApoOウエスタンブロット分析;(c)カルレティキュリン抗体を用いて同じ膜をプローブすることによって、同等のレーンローディング及び転写を確認した;(d)カルレティキュリンシグナルに対するApoOの定量;(e)ApoO及びコントロール細胞から調製した膜タンパク質抽出物を用いたApoOウエスタンブロット分析。カルレティキュリン抗体を用いて同じ膜をプローブすることによって、同等のレーンローディング及び転写を確認した;(f)ApoO又は(g)ApoO AbとハイブリダイゼーションしたApoO D1−40を過剰発現する心筋芽細胞の細胞質画分及びミトコンドリア画分のウエスタンブロット分析。アクチン及びANTを、細胞質及びミトコンドリア精製コントロールとしてそれぞれ使用した。1回の実験からの代表的なデータが示されている。実験を3回繰り返した。ラベルは、ミトコンドリア(Mit)、細胞質(Cyto.)である。**p<0.01。 in vivoトランスフェクション肝臓におけるhApoO発現。コントロール(n=12)及びApoO(n=12)発現ベクターの急速尾静脈注射による流体力学的in vivo肝臓トランスフェクション後のマウス肝臓におけるヒトApoO mRNAレベル。**p<0.01。 ApoOは、ミトコンドリア性である。(A)コントロール(n=12)、hApoO発現ベクター(n=12)及び生理食塩水(n=12)の急速尾静脈注射による流体力学的in vivo肝臓トランスフェクション後のマウス肝臓から得られたPCR増幅産物の2%臭化エチジウム染色アガロースゲル電気泳動。(B)ANT抗体を用いて転写膜をプローブすることによって実施したローディング/転写コントロールの上に示されている、ApoO抗体でプローブした単離された肝臓ミトコンドリア由来のタンパク質抽出物のウエスタンブロット。 心筋芽細胞における呼吸及び酸化ストレスにおけるApoOの役割。(a)コントロール細胞、ApoO、ApoO D1−40又はshRNAApoO処理ApoOを発現する安定トランスフェクタントにおける基礎酸素消費量(n=5)。(b)異なる薬物:1.5μg/mlオリゴマイシン(Oligo)、2μMカルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)及び1μMアンチマイシン(Anti.)で処理したコントロール及びApoO細胞の酸素消費量(n=5)。(c)コントロール及びApoO細胞における呼吸制御指数(RC)。(d)コントロール及びApoO細胞における漸増用量(1〜6μM)の2′,7′ジクロロジヒドロフルオレセインジアセタート(DCFDA)の存在下で測定した活性酸素種(n=4)。(e)コントロール及びApoO細胞におけるシトクロムCオキシダーゼ活性(n=4)。コントロール、ApoO、shRNAApoO及びApoO D1−40細胞におけるミトコンドリア複合体I(f)及び複合体III(g)の遺伝子発現レベル(n=5)。A.U.:任意単位。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。データは、平均±SEMを表す。 ApoOは、ミトコンドリアにおけるANT及びCyPDと相互作用する。(A)マウス心臓由来のミトコンドリアタンパク質複合体の一次元BN−PAGEゲル分析。(1):4〜13%ポリアクリルアミド一次元勾配ブルーネイティブゲルのクーマシーブルー染色。(2):転写PVDF膜のポンソーS染色。それぞれApoO、ANT又はCypD抗体を用いて転写PVDF膜の増強化学発光を使用して、ApoO、ANT及びCypDを検出した。同じ複合体(黒色の四角形)において、ApoO、ANT及びCypDが検出された。(B)ApoO−GSTプルダウンのウエスタンブロット分析。上のパネル:ローディング及び転写をコントロールするために使用した転写膜のポンソーS染色。下のパネル:ANT又はCypD抗体でプローブした同じ膜の増強化学発光を使用したANT及びCypD検出、ラベルは、以下のものである:心臓ミトコンドリアタンパク質抽出物なしで(GST−ApoO)若しくはありで(GST−ApoO+Mit)インキュベーションしたGST−ApoO融合タンパク質、GSTのみ(GST)、又はGSTと心臓ミトコンドリアタンパク質抽出物(GST+Mit)。(C)CypDの不活性化は、ApoO誘導性呼吸を減少させる:コントロール心筋芽細胞、及び200nMシクロスポリンA(CsA)ありで又はなしで50分間処理したApoOを過剰発現する心筋芽細胞における酸素フロー(n=5)。 ApoOは、心筋芽細胞における脂肪酸代謝を誘導する。コントロール細胞、ApoO細胞、及びその後にshRNA ApoO(shApoO)でノックダウンしたApoO細胞における(A)Fatp4及び(B)Cd36 mRNA発現レベル(n=5)。(C)5μMトリアクシンC(ACSLインヒビター)あり及びなしの場合の、コントロール及びApoO細胞におけるパルミトイルCoA合成速度(n=5)。(D)BODIPY−パルミタート(パルミタートの蛍光類似体)と共に2分間インキュベーションしたコントロール及びApoO細胞の共焦点顕微鏡画像、スケールバー=10μM。(E)コントロール及びApoO細胞発現細胞における総脂肪酸(FAME又は脂肪酸メチルエステルとして示される)の細胞内レベル(n=6)。(F)コントロール、ApoO又はApoO D1−40細胞における(F)Fatp4及び(G)Cd36 mRNAレベル。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。データは、平均±SEMを表す。 シクロフィリンDのノックダウンは、心筋芽細胞におけるApoO誘導性脂肪毒性を軽減する:(A)、(B)20nM CsAの8時間処理あり及びなしの場合の、コントロール及びApoO細胞における総脂肪酸及びFATP4 mRNAレベル(n=5)。(C)コントロール細胞(Cont.)及びApoO細胞、並びにその後のshRNA−シクロフィリンD発現ベクターによるトランスフェクションあり及びなしの場合のコントロール細胞及びApoO細胞(Cont.−shCypD及びApoO−shCypD)におけるFAMEの細胞内レベル。(D)これらの細胞におけるFATP4 mRNAレベルのRT−qPCR分析。(E)、(F)100μMパルミタートの8時間インキュベーションあり又はなしの場合の、コントロール及びApoO細胞におけるジグリセリド(DG)及びトリグリセリド(TG)の細胞内レベル(n=5)。(G)100μMパルミタート及び20nMシクロスポリンA(CsA)の8時間インキュベーションあり又はなしの場合の、コントロール及びApoO細胞におけるジグリセリドレベル(n=5)。コントロール、ApoO、Cont.−shCypD及びApoO−shCypD細胞におけるジグリセリドレベル(n=4)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。 ApoOは、マウス及びヒトの心臓における脂肪毒性副産物の細胞内レベルを高める。(a)、(b)野生型(WT、n=12)及び心臓特異的ApoOトランスジェニックマウス心臓(ApoO−Tg、n=11)におけるジグリセリド及びトリグリセリドレベル。(c)、(d)コントロール(n=12)及びApoO(n=12)発現ベクターの急速尾静脈注射による流体力学的in vivoトランスフェクション後の肝臓におけるジグリセリド及びトリグリセリドレベル。(e)、(f)ヒト心耳サンプルにおけるApoO mRNAレベルと、ジグリセリド(n=30)又はトリグリセリド(n=27)の細胞内濃度との間の相関関係。*p<0.05、**p<0.01。 ApoOは、in vivoで及びin vitroでアポトーシスを誘導する。(a)ヒト心耳サンプルにおけるApoOとBax mRNAレベルとの間の正の相関関係(n=48)。(b)、(c)野生型(WT、n=15)及び心臓特異的トランスジェニックマウス(ApoO−Tg、n=16)におけるBax mRNAレベル及びカスパーゼ−3活性。(d)、(e)コントロール及びApoO発現ベクター(n=12)の急速尾静脈注射による流体力学的in vivo肝臓トランスフェクションの48時間後の肝臓におけるBax mRNAレベル及びカスパーゼ−3活性。(f)、(g)コントロール細胞、ApoO細胞、及びその後にshRNA−ApoO発現ベクターで安定トランスフェクションしたApoO細胞(shApoO)におけるBax mRNAレベル及びカスパーゼ−3活性。(h)漸増濃度のパルミタートと共に一晩インキュベーションしたコントロール及びApoO発現細胞におけるカスパーゼ−3活性(n=6)。(i)100μMパルミタート及び20nMシクロスポリンA(CsA)又は30μMボンクレティック酸(BA)の12時間インキュベーションあり又はなしの場合の、ApoOを安定に発現するH9c2心筋芽細胞のカスパーゼ−3活性(n=4)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。 ApoOを過剰発現する心筋芽細胞におけるミトコンドリアの変質及び分解。(a)、(b)100μMパルミタートで24時間処理したコントロール及びApoO細胞の透過型電子顕微鏡分析。(c)、(d)ApoO細胞における自食作用胞及び多層体(ミエリン像、mf)におけるミトコンドリアの分解。正常なミトコンドリア(nM)及び核(N)がラベルされている。(e)ApoOの役割を示す概略図。(1)ApoO誘導性のマイルドな脱共役は、より多くのNADH/FADHを必要とする電子伝達鎖を活性化する。(2)成体心臓では、NADH及びFADH産生は、長鎖脂肪酸(LCFA)のβ−酸化によって主に生成され、それらの消費は、ミトコンドリアの代謝シンクを生成する。(3)LCFAは、CPT−1及び開口MPTPを介してミトコンドリアに迅速に入る。(4)LCFAトランスポーター(FATP)の発現の増加は、ミトコンドリアの消費量の増加を補う。(5)LCFA取り込みは、ミトコンドリアの脂肪酸酸化能力を超え、脂肪毒性につながる。(6)酸化ストレス及びミトコンドリア機能不全の増強は、脂質取り込み、β−酸化及びミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、PGC1α及びPPARα)の発現を増加させる。(7)ROSレベルの増加は、MPTP開口及びプロトン勾配の喪失をさらに刺激し、Baxと共に作用してアポトーシス誘導因子(AIF)及びシトクロムCを放出させ、細胞死をもたらす。ミトコンドリア外膜(OMM)及びミトコンドリア内膜(IMM)がラベルされている。 ApoOは、心筋芽細胞におけるジグリセリドレベルを増加させる。(a)100μMパルミタート及び10μMオレアートによる12時間インキュベーションあり又はなしの場合の、コントロール(n=4)及びApoO発現ベクター(n=4)で安定トランスフェクションしたH9c2心筋芽細胞におけるジグリセリドの細胞内レベル。(b)100μMパルミタート及び10μMオレアートによる12時間インキュベーションあり又はなしの場合の、コントロール(n=4)及びApoO発現ベクター(n=4)で安定トランスフェクションしたH9c2心筋芽細胞におけるジグリセリド(DG)とトリグリセリド(TG)との細胞内比。(c)100μMパルミタート及び1又は10μMオレアートによる12時間インキュベーションあり又はなしの場合の、コントロール(n=6)及びApoO発現ベクター(n=6)で安定トランスフェクションしたH9c2心筋芽細胞のカスパーゼ−3活性。**p<0.01、***p<0.001 ApoOを過剰発現するU87トランスフェクタント。(A)空ベクターでトランスフェクションしたU87コントロール細胞(pTT)、及びApoOを安定に過剰発現するトランスフェクタント(pTT−ApoO)におけるヒトApoO mRNAレベル。(B)コントロール及びApoO細胞から調製した全タンパク質抽出物を用いたApoOウエスタンブロット分析。カルレティキュリン抗体を用いて同じ膜をプローブすることによって、同等のレーンローディング及び転写を確認した。(C)カルレティキュリンシグナルに対するApoOのImageJ定量。1回の実験からの代表的なデータが示されている。実験を3回繰り返した。*p<0.05。 ApoOは、U87細胞におけるアポトーシスを誘導する。100μMパルミタートと共に一晩インキュベーションしたコントロール及びApoO発現細胞におけるカスパーゼ−3活性(n=4)。*p<0.05。データは、平均±SEMを表す。 APOOの過剰発現は、ガン細胞の呼吸を増強する。コントロール細胞、APOO発現細胞(APOO細胞)、及びその後にshAPOOでトランスフェクションしたAPOO細胞における基礎酸素消費率(OCR)(n=3)。**P<0.01、***P<0.001。データは、平均±SEMを表す。 APOOの過剰発現は、ガン細胞における脂肪毒性を促進する。100μMパルミタートと共に一晩インキュベーションしたコントロール(左)及びAPOO発現(右)細胞の透過型電子顕微鏡検査(n=6)。黒色の矢印は、脂肪滴を示す。 APOOの過剰発現は、ガン細胞における膜小疱形成を促進する。コントロール(左)及びAPOO発現(右)細胞の透過型電子顕微鏡検査。黒色の矢印は、小疱を示す(n=3)。
実施例1:ミトコンドリア機能不全とApoOによる脂肪毒性との関連性
アポリポタンパク質(Apo)は、リンパ系及び循環系を介して血漿脂質輸送プロセスを促進するリポタンパク質に結合することを初めて特性評価した。しかしながら、Apoについて、異なる予想外の機能も同定した。ApoEはAkt/PKBリン酸化を活性化し、ApoJは核に移行され得、DNA修復タンパク質Ku80に結合する。最終的に、Bcl2ファミリーメンバーと構造相同性を有するApoL6は、オートファジーなどの経路をレギュレーションする。
肥満によって心臓においてディファレンシャルにレギュレーションされる遺伝子を同定することを目的とする機能ゲノミクス研究を通じて、本発明者らは、アポリポタンパク質(ApoO)が、糖尿病患者由来の心臓において過剰発現されることを発見した。このタンパク質の発現の変化が心機能の改変にどのように関係するかを明らかにするために、本発明者らは、心筋芽細胞、生理学的レベルでApoOを発現する3つの独立した心臓特異的トランスジェニックマウス系統、in vivoトランスフェクションマウス肝臓、及びヒト心臓サンプルを利用したin vitro及びin vivo操作を実施した。本発明者らは最初に、ApoOがミトコンドリアに局在し、シクロフィリンD及びアデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)と相互作用して、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)が開口状態(これは、マイルドな脱共役を誘導する)をとるようにすることを示す。最初、MPTPは、細胞の「生死」の決定において重要な役割を果たすと考えられており、心臓病における心臓保護のターゲットとして提案された。この細孔は、分子量1.5kDa未満の代謝産物及び分子(プロトンを含む)のミトコンドリアへの自由な通過を可能にし、これが脱共役につながる。MPTPの正確なタンパク質組成は依然として論争中であるが、調節成分として機能すると提案されているシクロフィリンD及びANTを最低限含む。
心臓効率の低下は、齧歯類及びヒトの両方において、肥満及び2型糖尿病の顕著な特徴の1つである。心筋Vo2の増加及び心臓効率の低下の機構は、完全には理解されていない。ミトコンドリア脱共役の増加は、心筋細胞のエネルギー特性及び収縮性に影響を与える基本機構の1つであり、糖尿病性心筋症の流行の増大に寄与することが示唆された。したがって、MPTPレギュレーターは、ミトコンドリア機能不全及び心筋細胞の運命をコントロールするために非常に重要である。
材料及び方法
ヒト心臓サンプル。倫理委員会の承認後、参加前に、本研究における患者全員から、サンプル採取及び分子分析に関する書面による同意を得た。冠動脈バイパス手術前に、Department of Cardiology, Toulouse University Hospitalの医師が、患者を慎重に選択した。
バイオインフォマティクス。ヒト心臓サンプルからのマイクロアレイ発現データは、GEO repository (GSE1145)からダウンロードした。このシリーズは、心臓移植を受けた患者であって、その失敗が異なる病因(例えば、特発性拡張型心筋症、虚血性心筋症、弁膜心筋症及び肥大型心筋症)に起因する患者から、及び「正常」臓器のドナーであって、その心臓を移植に使用することができないドナーから採取した107個の心筋サンプルから構成されていた。アレイの強度を正規化し、階層的クラスタリング(平均連鎖群、ピアソン相関、閾値r=0.8)を適用して、共発現遺伝子群を同定した。試験した107個のヒト心臓について、ApoO発現レベルをプロットし、Toppgene及びIngenuity Pathway Analysis (Ingenuity systems, Redwood City, CA, USA)の両方を使用して関連分子経路を定義するために使用した。Mitopred、mitoprot及びYLocを使用して、ApoOの細胞内局在性を予測した。
動物:
全ての動物研究は、INSERM Institute Animal Facilityのガイドラインにしたがっており、INSERM I2MC UMR 1048の動物管理委員会によって承認された。French Ministry of Agricultureのガイドラインにしたがって、全ての動物手順を実施した。Toulouse I2MC animal facilityにおいて、明期12時間/日(6AM〜6PM)、周囲温度22+/−1℃の部屋で、動物を飼育した。
ApoO発現ベクターの構築
ヒトApoO(pTT−ApoO)を過剰発現させるために、プライマーhApoO5BamPTT(配列番号2)及びhApoO3BamPTT(配列番号3)を使用して、ApoOコード配列を増幅し、pTT発現ベクターのBamH1部位にクローニングした。プライマーSnapApoEcorV−F(配列番号4)及びSnapApoEcorV−R(配列番号5)を使用してpTT−ApoOのPCR増幅によって、pSNAP−ApoOを作製し、pSNAP-tag(登録商標)(Ozyme, Saint-Quentin-en-Yvelines, France)のEcoRV部位にクローニングした。hApoOpGEX1FBam(配列番号6)及びhApoOpGEX1RSma(配列番号7)を使用してpTT−ApoOのPCR増幅によって、pGEX2T−ApoOを構築し、pGEX2T(Promega, Charbonnieres-les-Bains)のBamHI/SmaI部位にクローニングした。本研究で使用した全てのプライマーは、Eurogentec France (Angers)によって合成された。使用した全ての制限酵素は、New England Biolabs (Ozyme, Saint-Quentin-en-Yvelines)製であった。ABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)Terminator version 3.1 Ready反応サイクル配列決定キット(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)を使用してDNA二本鎖配列決定によって、発現ベクター内の全てApoO配列を確認し、ABI 3130XL DNA配列決定機器(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)にロードした。
H9c2心筋芽細胞の細胞培養及びトランスフェクション
H9c2は、European Collection of Cell Cultures (Salisbury, England)から入手した。1.5g/リットルの重炭酸ナトリウムを含有するように調整し、抗生物質−抗真菌溶液(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)及び10%ウシ胎児血清(FBS, AbCys s.a., Paris)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)中で、H9c2細胞を培養した。細胞を直径10cmの組織培養皿上にプレーティングし、37℃、飽和湿度の5%COインキュベーターで成長させ、培地を2日ごとに交換した。エレクトロポレーションによってH9c2心筋芽細胞を安定トランスフェクションし、以前に公開されているように、トランスフェクタントのプールを選択した。
ApoO過剰発現のノックダウン
ApoO遺伝子発現をノックダウンするために使用したshRNA及びコントロールは、MISSION shRNA set; Sh2 = TRCN 72707; Sh4 = TRCN 72704; Sh5= TRCN 72705 (Sigma Aldrich, Saint-Quentin Fallavier)のものであり、安定トランスフェクタントのプールを作製することによって、推奨されるように使用した。空ベクター(shRNAインサートなし)コントロールもトランスフェクションしたが、有意な効果はなかった。
膜調製
Harmancey, R. et al, western diet changes cardiac acyl-CoA composition in obese rats: a potential role for hepatic lipogenesis. J Lipid Res 51, 1380-1393, (2010)に記載されているように、膜調製を実施した。
機能ゲノミクス
Qiacube (Qiagen, Courtaboeuf)自動プロトコールによってRNeasyキット(Qiagen, Courtaboeuf)を使用して、全RNAを精製した。Experionキャピラリー電気泳動(Bio-Rad, Marnes La Coquette)によって、全RNAの完全性を確認した。RNA品質指数が8.5/10以上のサンプルを分析のために選択した。RiboGreen及びVictor(商標)X5 2030マルチラベルリーダー(Perkin Elmer, Courtaboeuf)を使用して、全RNAを正確に定量した。ChipShot(商標)ダイレクトラベリングキット(Promega, Charbonnieres-les-Bains)による蛍光標識のために、全RNAを使用した。標識RNAをパンゲノムラットガラスマイクロアレイにハイブリダイゼーションさせた。標準的なハイブリダイゼーションの後、Ventanaディスカバリーハイブリダイゼーション洗浄システム(Ventana Medical Systems SA, Illkirch)によってガラスアレイを洗浄し、GenPix 4000スキャナー(Molecular Devices France, St. Gregoire)を使用してスキャンした。X-dotリーダーソフトウェア(COSE, Paris)によって、スキャン画像を処理し、オペレーターがスポット検出を検証した。Toppgene及びIngenuity pathway analysisソフトウェア(Ingenuity systems, Redwood City, CA, USA)の両方を使用して、マイクロアレイデータを分析した。
パルミタートの調製及びカスパーゼ3活性のモニタリング
Hickson-Bick et al, J Mol Cell Cardiol 32, 511-519, (2000)及びHirota, et al. Life Sci 79, 1312-1316, (2006)に記載されているように、パルミタートの調製及びカスパーゼ−3活性の測定を実施した。
心エコー分析
i13 L 14−MHzリニアアレイトランスデューサーを備えるVivid 7 PRO心エコーシステム(GE Medical System, Velizy)を使用することによって、心エコー図検査を実施した。1〜2%イソフルラン(Baxter, Maurepas)によって軽度麻酔した胸部剃毛ラットを仰向け、トランスデューサーを左半胸郭上に置いて、画像を取得した。左心室の二次元傍胸骨長短軸画像を取得し、二次元ターゲットMモードトレーシングを掃引速度200mm/秒で記録した。American Society for Echocardiographyの推奨にしたがって、全ての測定を実施した。画像が軸上にあることを基準として、最先端の方法を、円形の左心室腔(2D画像)を有する3連続の心周期(n)に適用した。多大な努力を払って良好な画質を達成し、徐々に移動させてトランスデューサーを角張らせることによって、心臓の心内膜及び心外膜の境界を可視化した。式FS=(EDD−ESD)/EDD×100(式中、EDD及びESDは、それぞれ拡張末期径及び収縮末期径である)によって、左心室(LV)短縮(FS)のパーセント(LV収縮機能の尺度)を計算した。
心電図
ADIシステム(ADinstruments LTD, Oxford, UK)を使用して、表面心電図(ECG)を記録した。
心臓特異的ヒトApoOトランスジェニックマウスの作製
フランスの法律及びINSERMの動物管理ガイドラインにしたがって、トランスジェニックマウスの研究を行った。マウスαMHCプロモーターを含有する5.5kbのBamHI−SalIフラグメントと、ヒトApoOコード配列を含有するSalI−HindIII cDNAフラグメントとから、αミオシン重鎖(αMHC)−ApoO導入遺伝子を構築した。αMHC−ApoO導入遺伝子をNotIで線状化し、電気溶出によって精製し、elutip-dカラム(Schleicher and Schuell)で濃縮し、B6D2/F1ハイブリッド雌の受精卵の核注入に使用した。次いで、マイクロインジェクションした卵母細胞を、B6CBA/F1ハイブリッド偽妊娠養母に再移植した。3つのトランスジェニックマウス系統を作製し、C57B6l6/Jマウスと交配した。QIAcube装置のDNAeasy血液組織キット(Qiagen, Courtaboeuf)を使用して、ゲノムDNAを抽出した。推奨されるようにプライマーrtiMHCP1F(配列番号8)及びrtiMHCP1R(配列番号9)並びにDynazyme II酵素(Ozyme, Saint-Quentin-en-Yvelines)を使用してPCRによって、子孫を追跡した。PCRをマウス1匹当たり少なくとも3回実施し、PCR産物をアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
マウス肝臓の流体力学的in vivoトランスフェクション
若干の修正を加えた以外は記載されているように、プラスミド50μgを含む等張NaCl 2mlを、20〜24gのマウスの尾静脈に6〜8秒間かけて単回水圧注入することによって、DNAを投与した。
RNA抽出及び品質コントロール
以前に記載されているように、組織サンプルから単離した全RNAを品質チェック及び濃度コントロールした。製造業者のプロトコール(Ozyme, Saint-Quentin-en-Yvelines)にしたがってRNeasyカラム及びQIAcube自動装置を使用して、培養H9c2心筋芽細胞から全RNAを単離した。
遺伝子発現のリアルタイムPCR分析
オリゴは、Perlプライマーソフトウェアで設計し、Eurogentec Companyが合成した。MyiQ(商標)リアルタイムPCR装置(Bio-Rad)に記載されているように、SurePrimeキット試薬(MP Biomedicals, Illkirch)を使用して、リアルタイムPCRを実施した。SigmaStat3ソフトウェアを用いて、リアルタイムPCRを統計的に分析した。
消費量の測定
OROBOROS Oxygraph-2k (Oroboros Instruments GmbH, Innsbruck, Austria)及び標準Oroboros手順を使用して、Oフローを測定した。CCCPの存在下における酸素消費量を、オリゴマイシンで測定したもので割ることによって、呼吸制御指数(RC)の計算を行った。RCは、呼吸とリン酸化との間の共役のタイトネスを示す。
活性酸素(ROS)種の評価
Victor(商標)X5 2030マルチラベルリーダー(Perkin Elmer, Courtaboeuf)を用いて、製造業者(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)によって推奨されるように、5−(及び−6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセタート(カルボキシ−DCFDA)を使用した。
カスパーゼ−3酵素活性のモニタリング
カスパーゼ−3基質IV蛍光基質(VWR, Strasbourg)及びVictor(商標)X5 2030マルチラベルリーダー(Perkin Elmer, Courtaboeuf)を使用して、カスパーゼ−3アッセイを実施した。
アシル−CoAシンテターゼ活性
Askari, B. et al., Diabetes 56, 1143-1152, (2007)に記載されているように、アシル−coAシンテターゼ活性を実施した。
シトクロムCオキシダーゼ活性
シトクロムcオキシダーゼアッセイキットSigma Aldrich (Saint-Quentin-Fallavier)及びVictor(商標)X5 2030マルチラベルリーダー(Perkin Elmer, Courtaboeuf)を使用して、推奨されるように、シトクロムCオキシダーゼ活性を実施した。
共免疫沈降及びGSTプルダウン
Harlow, E et al., Cold spring Harbor Laboratory Press, (1999)に記載されているように、RIPA緩衝液中で、共免疫沈降(Co−IP)及びGSTプルダウンを実施した。
共焦点顕微鏡検査
Falcon培養スライド(BD Biosciences, Le Pont de Claix)上で、Bodipy−パルミタート(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)の蛍光検出を実施した。サブコンフルエント細胞を、Bodipy−パルミタート1μMと共に2分間インキュベーションし、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、4%ホルムアルデヒドを含有するPBSによって室温で15分間固定し、続いて、−20℃で5分間固定した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、蛍光封入剤及びカバースリップで覆ってから、Zeiss LSM 510共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Meditec France SAS, Le Pecq)上で分析した。
透過型電子顕微鏡検査。組織を、2%グルタルアルデヒドの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)によって4℃で4時間固定し、0.2Mリン酸緩衝液で一晩洗浄し、次いで、1%四酸化オスミウムの250mMサッカロース及び0.05Mリン酸緩衝液によって室温で1時間後固定した。次いで、サンプルを、一連の段階的エタノール溶液、続いてプロピレンオキシドで脱水し、Epon-araldite樹脂(Embed 812-Araldite 502, Electron Microscopy Sciences)に包埋した。最後に、組織を厚さ70nmの切片(Ultracut Reichert Jung)にスライスし、100メッシュコロジオンコーティングカッパーグリッド上にマウントしてから、3%酢酸ウラニルの50%エタノール溶液及びレイノルズクエン酸鉛で染色した。付着細胞を固定し、上記のように洗浄し、2%酢酸ウラニルで一晩染色した。透過型Hitachi HU12A電子顕微鏡上で、加速電圧75kVで検査を行った。
脂質プロファイリング
FAST-PREP (MP Biochemicals)用いてメタノール/5mM EGTA(2:1v/v)2ml中で、細胞又は組織をホモジナイズした。50μlを蒸発させ、乾燥ペレットをNaOH(0.1M)0.2mlに一晩溶解し、Bio-Radアッセイを用いてタンパク質を測定した。
中性脂質分子種分析。
内部標準:スティグマステロール3μg、1,3−ジミリスチン2μg、ヘプタデカン酸コレステリル3μg及びトリヘプタデカン酸グリセリル5μgの存在下、クロロホルム/メタノール/水(2.5:2.5:2.1、v/v/v)で脂質を抽出した。クロロホルム相を蒸発乾固した。SPEカラム(Macherey Nagel glass Chromabond pure silice, 200 mg)によって、中性脂質を分離した。クロロホルム2mlでカートリッジを洗浄した後、抽出物を、クロロホルム20□l中のカートリッジにアプライし、中性脂質をクロロホルム:メタノール溶液(90:10、v/v)2mlで溶出した。有機相を蒸発乾固し、酢酸エチル20μlに溶解した。Zebron-1 Phenomenex融合シリカキャピラリカラム(内径5m×0,32mm膜厚0.50μm)を使用してFOCUSサーモエレクトロンシステムの気液クロマトグラフィーによって、脂質抽出物1μlを分析した。キャリアガスとして水素(0.5bar)を使用して5℃/分の速度で、オーブン温度を200℃〜350℃にプログラムした。注入器及び検出器は、それぞれ315℃及び345℃であった。
脂肪酸メチルエステル(FAME)の定量。
内部標準トリヘプタデカン酸グリセリル2μgの存在下でホモジネートを乾燥させ、14%三フッ化ホウ素メタノール溶液(SIGMA)1ml及びヘキサン1ml中、55℃で1時間メチル基転移した。水1mlを抽出物に追加した後、FAMEをヘキサン3mlで抽出し、蒸発乾固し、酢酸エチル20μlに溶解した。Famewax RESTEK融合シリカキャピラリカラム(内径30m×0,32mm膜厚0.25μm)を使用してClarus 600 Perkin Elmerシステムの気液クロマトグラフィーによって、FAME(1μl)を分析した。2℃/分の速度で、オーブン温度を110℃〜220℃にプログラムし、キャリアガスは水素(0.5bar)であった。注入器及び検出器は、それぞれ225℃及び245℃であった。
ウエスタンブロット
哺乳動物MCL-1細胞溶解キット溶液(Sigma Aldrich, Saint-Quentin-Fallavier)を用いて、プロテアーゼインヒビターの混合物の存在下で、心臓組織又は肝臓組織を破砕した。製造業者のプロトコールにしたがって、手順を実施した。タンパク質60μgを10%ポリアクリルアミド−SDSゲルにロードし、0.45 μmニトロセルロース膜BA85 (Schleicher and Schuell, Ecquevilly, France)上にブロットした。ウエスタンブロットでは、ローディングコントロールとしてアクチンの代わりにリバーシブルポンソーS染色を使用した。MultiMarkマルチカラースタンダード(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)を使用して、タンパク質の分子量を決定した。0.1%Tween20及び3%脱脂粉乳を含むTBS(7mM Tris、pH7.5;150mM NaCl)中で、ニトロセルロース膜を2時間ブロッキングした。TBS−Tween0.1%中で、抗ApoO血清のハイブリダイゼーションを2時間実施した。TBS−Tween0.1%で3回洗浄した後、TBS−Tween0.1%+3%脱脂粉乳中で、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(10−4希釈)を膜と共に2時間インキュベーションした。ブロットをTween−TBSで3回洗浄し、TBSで1回洗浄してから、製造業者のプロトコール(Fisher Scientific SAS, Illkirch, France)にしたがってSuperSignal West Pico化学発光基質を用いて、ハイブリダイゼーションを明らかにした。
統計分析、及びディファレンシャルに発現される遺伝子の同定。
全ての結果は、平均±SEとして示されている。ANOVAを使用して多重比較を分析し、続いて適切な場合にはStatview 4.5ソフトウェア(Abacus Concepts, Inc., Berkeley, CA)を使用してダネット事後検定によって分析した。対応のないスチューデントt検定を使用して、単一比較を実施し、0.05以下のp値を有意であるとみなした。
結果
この結果は、ミトコンドリア機能不全と脂肪毒性との間の相互作用を識別し、マウス及びヒトの心臓における透過性遷移孔と脂質代謝との関連を初めて実証している。また、本発明者らは、ミトコンドリア機能及び脂質代謝の新たなシグナルレギュレーターとしてApoOの重要性を実証する。本発明者らが開発したApoOモデルは、ミトコンドリア心機能障害と脂質蓄積との間の最初の関連性を表す。
生理学的レベル(内因性の2倍未満)でヒトApoOを構成的に発現するマウス心臓は、心室機能の低下、収縮機能障害の特徴的なパターン、及び拡張型心筋症を示した。具体的には、心臓特異的ApoO−Tgマウスは、PR間隔の延長、並びに短縮率及び駆出率の減少を示した。心筋縦断面の透過型電子顕微鏡(TEM)分析により、ミトコンドリアのクリステの喪失又は不連続などの変性変化が明らかになった。公的に入手可能なヒト心臓マイクロアレイデータセットの検査により、ApoO mRNAレベルは、1〜5の任意単位で変動することが明らかになった。最高及び最低のApoO発現を有するマイクロアレイ間の合成発現比を使用した経路分析により、様々な代謝経路における有意な富化が明らかになり、最も有意なものは、酸化的リン酸化及びミトコンドリア機能不全であった。次いで、本発明者らは、ApoOを過剰発現する心筋芽細胞トランスフェクタントを作製するための発現ベクターを設計した。in vivo蛍光標識、並びにApoOを過剰発現する心筋芽細胞由来のタンパク質抽出物及び細胞内画分を用いた研究により、ApoOのミトコンドリア局在性が明らかになった(図1)。
in vivo蛍光標識、並びにApoOを過剰発現する心筋芽細胞由来のタンパク質抽出物及び細胞内画分(図1e、f)を用いた研究により、ApoOのミトコンドリア局在性が明らかになった。ApoO配列のin silico調査により、推定N末端ミトコンドリア「アドレスラベル」が明らかになった。N末端の40残基の欠失(ApoO Δ1−40)は、ミトコンドリアから細胞質へのApoO分布を変化させた(図1g)。
さらに、pTT−hApoO発現ベクターの急速尾静脈注射による流体力学的in vivoマウス肝臓トランスフェクションは、発現ベクターのPCR増幅(図3A)によって証明されるように、ApoO mRNAレベルの上昇(図2)をもたらし、肝細胞由来の単離されたミトコンドリアにおけるApoOタンパク質のレベルを増加させた(図3B)。最近の研究では、酵母及びC. elegansオルソログで得られた証拠により、並びにヒト細胞株のプロテオミクス及び共焦点顕微鏡検査を通じて、ApoOはミトコンドリア性であると提案されている。興味深いことに、C. elegansのApoOオルソログの突然変異は、マウス心臓における適度なApoO過剰発現で観察されたものと同様のクリステの崩壊をもたらした。
ApoOは、ミトコンドリア呼吸を増加させる。
ヒト心臓のトランスクリプトームバイオインフォマティクス分析にしたがって、本発明者らは、ApoOを過剰発現する心筋芽細胞における酸化的リン酸化遺伝子の発現の有意な増加を測定した。この増加は、ApoOのN末端欠失及び心筋芽細胞のshApoO処理の両方によって減少した。本発明者らはまた、基礎酸素消費量の2倍の増加(これは、ApoOのミトコンドリア局在性に依存し、ApoO shRNA処理によって縮小した)を示したApoO−Tg心臓及びApoO細胞の両方において、シトクロムCオキシダーゼ活性(呼吸鎖の必須要素)の増加を見出した(図4A)。アンチマイシン(キノンサイクルのインヒビター)は、酸素消費をほぼ完全に阻害したが、これは、測定された呼吸の大部分がミトコンドリア性であることを示している(図4B)。ApoO細胞では、オリゴマイシンによって基礎酸素消費が部分的に阻害され、脱共役剤カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)の追加は、酸素消費量の2倍の増加をもたらしたが、これは、これらの細胞が高い電子伝達活性を有することを示唆している。呼吸共役(RC)の計算により、ApoO細胞では、RCが減少していることが確認された(図4C)。したがって、ApoOは、ミトコンドリア機能に対する2つの異なる効果(総呼吸の増加及びマイルドな脱共役)を有する。これらの効果はまた、細胞内の活性酸素種(ROS)の増加に関連していた(図4D)。本発明者らは、流体力学的in vivoトランスフェクションマウス肝臓由来の単離されたミトコンドリア(これは、酸素消費量の有意な増加を示した)を用いて、同等の結果を観察した。
ApoOは、シクロフィリンD及びアデニンヌクレオチドトランスロカーゼと相互作用する。
公知の治療ターゲットであるミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の適切なレギュレーションは、ミトコンドリア呼吸及び心臓ホメオスタシスに必須である。ApoOのミトコンドリア局在性、並びに適度なApoO過剰発現でミトコンドリア構造及び心機能に対して観察された効果を考慮して、本発明者らは、ApoOが、MPTP機能に関与するタンパク質と相互作用すると仮説した。MPTP構造は、まだ完全には決定されていない。当初、MPTPは、マトリックスにシクロフィリン−D(CypD)と、内膜にアデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)と、外膜に電位依存性アニオンチャネル(VDAC)とを含むと提案された。最近、遺伝子ターゲティングマウス実験により、VDACはMPTPに不要であったことが示された。この細孔は、1.5kDa未満の分子及び代謝産物(プロトンを含む)のミトコンドリアへの自由な通過を可能にし、これがミトコンドリア脱共役につながる。ApoOはミトコンドリア内膜に局在するというコンピュータ予測と一致して、ブルーネイティブページ及びGSTプルダウン実験により、ApoOとシクロフィリン−D及び/又はANTとの間の相互作用が実証され(図5A及びB)、VDACとの相互作用が排除された。
ApoOとMPTPとの間の機能的関係を試験するために、本発明者らは、シクロフィリンDに結合するMPTP遮断薬シクロスポリンA(CsA)でApoO細胞を処理した。CsAは、ミトコンドリア呼吸に対するApoO過剰発現の効果を低減したが(図5C)、これは、ApoOがシクロフィリンDと相互作用することを裏付けている。ミトコンドリアカルセイン−コバルトアッセイによって示されるように、本発明者らはまた、ApoOが、培養心筋芽細胞におけるMPTPの開口動態を変化させることを示した。ApoO−Tgマウス心臓から単離したミトコンドリアでは、カルシウム保持能力も有意に減少した。
ApoO誘導性のMPTP開口により、観察されたマイルドなミトコンドリア脱共役及び酸素消費量の増加が説明される。いくつかの研究では、糖尿病におけるミトコンドリア機能不全を説明する機構として、脱共役が提案されている。ApoO媒介性のレギュレーションは、CsA(シクロフィリンD(CypD)をターゲティングする薬物)によって減少したように、本発明者らは、ApoO細胞におけるCypD遺伝子のノックダウンが、ApoO媒介性の呼吸を部分的に妨げることを示すことができた。
総合すると、この結果は、ミトコンドリア機能のレギュレーションにおけるApoOの役割を示している。
ApoO誘導性のMPTP開口は、脂肪酸代謝及び脂肪毒性を増加させる。
エネルギー源として脂肪酸を使用するミトコンドリアが豊富な組織、例えば心臓及び褐色脂肪組織では、ApoOが高発現されている。したがって、本発明者らは、電子伝達鎖フラックスのApoO誘導性増加が、長鎖脂肪酸(LCFA)のミトコンドリア輸送を増加させると仮定した。LCFAをミトコンドリアに提供するために、細胞は、最終的には、原形質膜における脂肪酸取り込みを増加させるであろう。
本発明者らは、ApoO発現細胞における緑色蛍光BODIPY−パルミタートの急速な蓄積を測定し(図6D)、細胞内の総脂肪酸が120%増加したことを見出した(図6E)。したがって、本発明者らは、ApoOが、脂肪酸代謝に関与する遺伝子の発現を誘導することができるかを分析した。ApoO細胞では、脂肪酸トランスポーター(CD36及びFATP4)の発現及び長鎖アシル−CoAシンテターゼ(ACSL)の活性が大きく増加しており、この効果は、ApoO shRNA又はトリアクシンC(ACSLインヒビター)のいずれかによる処理によって有意に低減した(図6A〜C)。ACSL及びFATP4は、LCFAのエステル化を触媒して、脂質チャネリングを可能にする。ACSLの過剰発現を介して脂質取り込みを増加させることによって、心臓脂肪毒性の動物モデルを作製した。本発明者らの仮説を検証するために、本発明者らは、ApoO細胞を低用量のCsA(200nM)と共にインキュベーションし、細胞内脂肪酸レベル及び特にFATP4発現の有意な減少を示した(図7A及びB)。N末端の40残基の欠失、又はshCypDによるApoO心筋芽細胞の処理は、脂肪酸トランスポーターの発現、及び脂肪酸の細胞レベルを減少させたが、これは、ApoO誘導性のMPTP開口が、ミトコンドリア呼吸だけではなく脂肪酸代謝にも影響を与えることを示している(図7C及びD)。本発明者らは、LCFAが、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT1)及び非特異的MPTP(1.5kDa未満の溶質が透過可能)を介して迅速にミトコンドリアに入ることができると仮定した。同様に、ApoO−Tgマウス由来の心臓は、脂肪酸トランスポーターの発現及びACSLの活性の有意な増加を示した。ヒト心耳サンプルでは、ApoO発現は、CD36、FATP4及びACSL−3の発現と正に相関していた。マイクロアレイデータマイニングは、これらの結果と一致しており、ApoO発現が上昇している患者の心臓では、CD36及びFATP2も増加していたことを示した。これらの変化は、脂質取り込み及びβ−酸化に関与することが公知の転写因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPARα)の増加に関連するはずである。実際、ヒト心耳サンプル、ApoO−Tgマウス由来の心臓、in vivoトランスフェクションマウスの肝臓、及びApoO細胞において、ApoO発現は、PPARα mRNAレベルの増加をもたらした。
過剰な脂肪酸取り込みが、ミトコンドリアの脂肪酸酸化能力を超えると、毒性脂質の貯蔵が増加して、脂肪毒性をもたらす。本発明者らのモデルシステムの脂質組成分析により、ApoO発現は、細胞内トリグリセリドのレベルを有意に改変しなかったことが明らかになったが、ApoO−Tg心臓及びトランスフェクション肝臓では、ジグリセリドなどの毒性種のレベルが増加した(図8a〜d)。ヒト心臓サンプルでは、内因性ApoO mRNAレベルは、トリグリセリドレベルではなくジグリセリドレベルと相関していた(図8e〜f)。また、ApoO細胞のパルミタート処理は、ジグリセリドの劇的な細胞内蓄積を誘導し、トリグリセリドレベルに有意に影響を与えなかった(図7E及びF)。
ApoOのN末端の40残基の欠失、又はshCypDによるApoO心筋芽細胞の処理は、細胞ジグリセリドレベルを減少させた。ApoO細胞を20nM CsAと共にインキュベーションすると、細胞内ジグリセリドレベルが有意に減少したが(図7G及びH)、これは、ApoO媒介性のMPTP開口が脂肪毒性を促進することを裏付けている。
ApoOは、アポトーシスを増加させる。
MPTP開口は、プログラム細胞死のプロセスにおける重要な工程である。本発明者らは、ApoO過剰発現がアポトーシスを促進すると仮説し、ヒト心臓におけるApoO mRNAレベルとプロアポトーシス因子Baxとの間の正の相関関係を見出した(図9a)。ApoO−Tgマウス由来の心臓におけるApoO過剰発現が適度であっても、Bax発現及びカスパーゼ3活性(図9b〜c)は増強された。ApoOトランスフェクション肝臓を用いてin vivoで(図9d〜e)、及びApoO細胞を用いてin vitroでこれらの結果を確認したところ、Bax発現及びカスパーゼ−3活性の増加は、ApoO shRNA処理によって有意に低減した(図9f〜g)。また、TEMにより、ApoO細胞の原形質膜における小疱形成(これは、プロアポトーシス状態の指標である)が明らかになった。これらの細胞の機能ゲノミクス分析により、プログラム細胞死及び代謝経路のレギュレーションに関与する遺伝子の発現の大幅な増加が明らかになった。低用量のCsAによる処理は、基礎カスパーゼ−3活性及びBax発現の減少を示したApoO細胞を治癒した。実際、これらの細胞は、細胞体凝縮及び細胞質空胞変性の減少を含む特徴的な形態改善を示した。また、ApoO過剰発現は、漸増用量のパルミタートのアポトーシス効果を劇的に増幅し、コントロール細胞におけるカスパーゼ−3活性がやや増加した(図9h)。興味深いことに、パルミタート誘導性のカスパーゼ−3活性は、CsAによる処理によって有意に減少した(図9i)。ApoOは、シクロフィリンD及びANTをターゲティングし、MPTP開口をモデュレーションすることによってアポトーシス及び脂肪毒性を増加させ得る。これらの結果により、病的なApoO過剰発現とミトコンドリア機能不全(これは、最終的には、ミトコンドリア生合成をトリガーするはずである)の誘導との間の潜在的関連性が示唆された。したがって、心臓手術を受けた患者由来のヒト右心耳サンプル、及びApoO−Tgマウス由来の心臓では、ApoO及びPPAR−γコアクチベーター1α(PGC−1α)(ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーター)の発現は密接に相関している。本発明者らは、ミトコンドリア合成の増加が、ApoO−Tg心臓及びApoO細胞で観察された自食作用胞及び多層体におけるミトコンドリアの変質及び分解をバランスすると仮定した(図10a〜d)。本発明者らは、ApoO誘導性のアポトーシス及びミトコンドリアの変質が、細胞死に至る悪循環へと細胞を誘導すると仮説した。本発明者らが線維形成及びアポトーシスの発生によって証明したように、この仮説により、ApoO−Tg心臓で観察された筋原線維及び心筋細胞の喪失が説明される。本発明者らの結果に基づいて、本発明者らは、ApoOが、図10eに示されているモデルにおける中心的分子であると提案する。
この図に示されているカスケード事象は、ApoO刺激性のMPTP開口から始まる。高い発現レベルでは、ApoOはMPTPの開口率を高めて、マイルドな脱共役、呼吸の増加及び反応性酸素種(ROS)の産生をもたらす。成体の心臓では、NADH及びFADH産生は、LCFAのβ−酸化によって主に引き起こされるので、活性化された電子伝達鎖は、より多くのNADH/FADH(これは、ミトコンドリア代謝シンク生成する)を必要とする(図10e1及び2)。これは、ApoO細胞で観察されたβ−酸化の誘導によって裏付けられる。CPT−1、おそらくは開口MPTPを通じて、LCFAはミトコンドリアに迅速に入る(図10e3)。LCFAトランスポーター(FATP)の発現の増加は、ミトコンドリアの消費量の増加を補う(図10e4)。LCFA取り込みは、ミトコンドリアの脂肪酸酸化能力を超え、特にパルミタートなどの飽和LCFAの存在下では、脂肪毒性をもたらす。過剰なパルミタートは、ジグリセリドなどの毒性脂質副産物を生成する(図10e5)。パルミタートから非毒性トリグリセリドを強制的に生成させるオレアートのような不飽和脂質の追加によって、この毒性は減少され得る。パルミタート及びオレアートの両方で処理したApoO細胞は、ジグリセリド/トリグリセリド比の2倍の減少(図11a〜b)、及びカスパーゼ−3活性の12倍の減少(図11c)を示した。したがって、MPTP開口によって誘導されるアポトーシスは、脂質取り込みによって増大される。強い酸化ストレス及びミトコンドリア機能不全は、脂質取り込み、β−酸化及びミトコンドリア生合成に関与する遺伝子、例えばPGC1α及びPPARαの発現を増加させる(図10e6)。ROSレベルの増加は、MPTP開口及びプロトン勾配の喪失をさらに刺激し、Baxと共に作用してアポトーシス誘導因子(AIF)及びシトクロムCを放出させ、細胞死をもたらす(図10e7)。本発明者らは、MPTPを遮断することによって、脂肪毒性及びアポトーシスを含む全ての後続工程が抑制され得ることを示した。実際、Baxなどのプロアポトーシス遺伝子の発現及びカスパーゼ−3の活性の減少によって示されるように、CsAは、呼吸速度だけではなくアポトーシスも減少させた。MPTP遮断薬はまた、脂肪酸トランスポーターの発現レベルを減少させ、脂質蓄積を減少させた。したがって、MPTPは、脂肪酸代謝に関与する。
肥満及び糖尿病は、過剰な異所性脂質沈着による二次臓器不全の前兆である。この脂肪毒性は、心筋症、筋障害、脂肪肝、膵炎、甲状腺機能低下症及び糖尿病として現れる。細胞における持続的な脂質取り込みにつながるシグナルの性質は、依然として不明である。動物脂肪毒性モデルは、明らかなミトコンドリア機能不全を示す。これらのモデルでは、脂肪蓄積は、ミトコンドリア機能の低下に先行すると提案されている。しかしながら、ミトコンドリア機能不全がより原因としての役割を果たすという逆の機構も提案されている。本発明者らは、脂肪毒性は、ミトコンドリア機能不全の原因ではなく結果であるという証拠を示した。
酵母及びC. elegansにおける研究により、ApoOオルソログは、ミトフィリン複合体の内膜内に位置することが明らかになった。ミトフィリンは、ミトコンドリア内膜組織システム(MITOS又はMICOSとも称されるMINOS)と称されているヘテロオリゴマータンパク質複合体に関与する。外膜及びクリステ膜に近接して並置する内側境界領域を有するミトコンドリア内膜の特徴的な形態の維持のためには、MINOSの完全性が必要である。ミトフィリンタンパク質は、ミトコンドリアのアーキテクチャの重要なオーガナイザーである。本研究では、本発明者らは、この複合体由来の少なくとも1つのタンパク質(すなわち、ApoO)が、構造オーガナイザーよりも積極的な役割を果たし、MPTP開口をレギュレーションすることを示した。
したがって、心臓におけるApoOの生理学的役割は、糖尿病及び肥満における心機能障害の主要な病理学的プロセスに関する新たな知見を与え得る。本研究はまた、ミトコンドリア心機能障害の発症と、新たなミトコンドリア作用因子ApoOによる脂質蓄積との間の関連性を立証する。
実施例2:ApoOは、ガン細胞株におけるアポトーシスを誘導する
材料及び方法
U87神経膠芽腫の細胞培養及びトランスフェクション
U87は、European Collection of Cell Cultures (Salisbury, England). p y, g )から入手した。1.5g/リットルの重炭酸ナトリウムを含有するように調整し、抗生物質−抗真菌溶液(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)及び10%ウシ胎児血清(FBS, AbCys s.a., Paris)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)中で、U87細胞を培養した。細胞を直径10cmの組織培養皿上にプレーティングし、37℃、飽和湿度の5%CO2インキュベーターで成長させ、培地を2日ごとに交換した。エレクトロポレーションによってU87神経膠芽腫を安定トランスフェクションし、以前に記載されているように(Smih et al 2002)、トランスフェクタントのプールを選択した。
ウエスタンブロット分析
プロテアーゼインヒビターの混合物の存在下で、培養細胞をRIPA緩衝液(0.15M塩化ナトリウム、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、50mM Tris、pH8)に再懸濁した。溶解物を6秒間超音波処理し、6,500×gで10分間遠心分離した。タンパク質20μgを12%ポリアクリルアミド−SDSゲルにロードし、0.45 μmニトロセルロース膜BA85 (Schleicher and Schuell, Ecquevilly, France)上にブロットした。ローディングコントロールとしてリバーシブルポンソーS染色を使用した。MultiMarkマルチカラースタンダード(Life Technologies SAS, Villebon sur Yvette)を使用して、タンパク質の分子量を決定した。0.1%Tween20及び3%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris、pH8.8、150mM NaCl)中で、ニトロセルロース膜を2時間ブロッキングした。次いで、膜を所望の抗体とハイブリダイゼーションさせた。ApoOタンパク質を明らかにするために、膜を、TBS−Tween0.1%緩衝液を含む抗ApoO血清と共に4℃で一晩インキュベーションした。TBS−Tween0.1%で3回洗浄した後、TBS−Tween0.1%+3%脱脂粉乳中で、100,000倍希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗体(Life Technologies SAS, Saint Aubin, France)を膜と共に2時間インキュベーションした。ブロットをTBS−Tween1%で3回洗浄し、TBSで1回洗浄してから、製造業者のプロトコール(Fisher Scientific SAS, Illkirch, France)にしたがってSuperSignal West Pico化学発光基質を用いて、ハイブリダイゼーションを明らかにした。製造業者のプロトコールにしたがって、カルレティキュリン(Epitomics, Burlingame, USA)抗体によるハイブリダイゼーション及び顕色を実施した。ImageJソフトウェアを用いて、タンパク質の免疫バンドのデンシトメトリーを定量した。
パルミタートの調製及びカスパーゼ−3活性のモニタリング
pTTのみ又はpTT−ApoOで予めトランスフェクションした神経膠芽腫を100μMパルミタートで一晩処理した。以前に記載されているように(Hickson−Bick et al. 2000; Hirota et al. 2006)、パルミタートの調製及びカスパーゼ−3活性のアッセイを実施した。カスパーゼ−3基質IV蛍光基質(VWR, Strasbourg)及びVictorTM X5 2030マルチラベルリーダー(Perkin Elmer, Courtaboeuf)を用いて、カスパーゼ−3活性を測定した。
結果
本発明者らは、ApoOを過剰発現するU87トランスフェクタント細胞を開発した(図12)。U87は、本発明者らが本実験のためにEuropean Collection of Cell Culturesから入手したヒト初代神経膠芽腫細胞株である。
本発明者らは、
−コントロールU87細胞(pTT);及び
−ApoOを過剰発現するU87トランスフェクタント(pTT−ApoO)において、
カスパーゼ−3活性を測定及び比較した。
結果は、ApoOを過剰発現するU87トランスフェクタント細胞では、コントロールU87細胞と比較して、カスパーゼ−3活性が有意に増加していることを示しているが(図13)、これは、アポトーシス効果の増幅を示している。実際、前述のように、アポトーシス細胞では、カスパーゼ−3活性が上昇していることが証明されている。
したがって、これらの結果は、ApoOを過剰発現するガン性細胞株では、アポトーシスが誘導されることを明らかに示しているが、これは、アポトーシスの誘導におけるApoOの重要な役割を裏付けている。
したがって、これらの結果は、特にアポトーシスを誘導することによってガン処置戦略を実行するために、ApoOが中心的なターゲットであることを証明している。
実施例3:ApoOは、ガン細胞株におけるアポトーシスを誘導する
現在では、代謝調節障害は、ガン細胞の顕著な特徴であることが広く認められている。加えて、神経膠芽腫細胞は、浸潤性腫瘍の成長中にミトコンドリアのグルコース酸化を使用することが公知である。
さらに、腫瘍と周囲の脳組織との間の代謝の違いは、代謝活性がガン治療の重要なターゲットを構成することを示している。
前述のように、本発明者らは、アポリポタンパク質O(ApoO)が、ミトコンドリア呼吸、脂肪酸代謝及び脂肪毒性を増強することを本明細書で示した。
さらに、本発明者らは、ApoOを発現するように神経膠芽腫細胞をトランスフォーメーションする効果を調査することを決定した。この目的のために、ApoOをコードするポリヌクレオチドを含むアデノ随伴ウイルス9で、神経膠芽腫細胞をトランスフォーメーションした。
a)ApoOは、神経膠芽腫の呼吸を誘導する
本発明者らは、ApoOの発現をサイレンシングするショートヘアピンRNA(shApoO)で神経膠芽腫細胞を処理した後、酸素消費量を比較した。
本発明者らは、ApoOを発現する細胞では、shApoOで処理した細胞(すなわち、前記発現が抑制されている細胞)と比較して、酸素消費量がより重大であることを示した(図14)。
したがって、本発明者らは、APoOが神経膠芽腫の呼吸を誘導するという事実を明らかにした。
b)ApoOは、神経膠芽腫における脂肪毒性を誘導する
加えて、本発明者らは、
−ApoOを発現しない神経膠芽腫細胞では、パルミタートの存在下であっても、脂質が蓄積しないのに対して;
−ApoOを発現する神経膠芽腫細胞では、パルミタートの存在下で、脂質が蓄積することを説明した。
図15において、脂質小胞は矢印によって示されている。
これらの結果は、ApoOの発現又は過剰発現が、脂肪毒性の原因である脂質蓄積を明らかに誘導することを示している。
c)ApoOは、神経膠芽腫におけるミトコンドリア機能不全を促進し、アポトーシスを誘導する
最後に、本発明者らは、神経膠芽腫細胞におけるApoOの発現又は過剰発現が、異常ミトコンドリアの発生を誘導することを明らかにした。
これらの知見は、ApoOが、神経膠芽腫におけるミトコンドリア機能不全を促進することを明らかに示している。
また、本発明者らは、ApoOを発現する細胞では、アポトーシスが起こるのに対して、ApoOを発現しない細胞では、前記結果が見られないことを確認した(図16)。アポトーシスの現象は、矢印によって示されている。
結論
本発明者らは、神経膠芽腫細胞において、ApoOを発現するAAV9を使用することによってApoOの過剰発現を誘導することの立証責任を果たした。AAV9は血液脳関門を通過することができるので、アデノ随伴ウイルス9の使用は、遺伝子を脳細胞に送達するのに非常に便利である。
本発明者らは、ApoOの発現又は過剰発現が、ターゲティングしたガン性細胞内における脂肪毒性及びミトコンドリア機能不全につながることを確認した。これらの現象は、最終的には、神経膠芽腫細胞のアポトーシスにつながる。
したがって、これらの結果は、ApoOが、ガン処置の非常に有望な治療戦略であることを裏付けている。

Claims (18)

  1. ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導するために使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される、化合物。
  2. ガン性細胞におけるアポトーシスを誘導することによってガンを処置するために使用するための化合物であって、ApoO、その変異体又はフラグメント、それらの混合物及び前記ApoO、その変異体又はフラグメントをコードするベクターからなる群より選択される、化合物。
  3. 前記ガン性細胞が、高含量のミトコンドリアを有する細胞、好ましくは、少なくとも30体積%、好ましくは40体積%のミトコンドリアを含む細胞である、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
  4. 前記ガン性細胞が、心臓細胞、肝臓細胞、膀胱細胞、脳細胞、乳房細胞、結腸細胞、直腸細胞、子宮内膜細胞、腎細胞、血液細胞、表皮細胞、膵臓細胞、前立腺細胞及び甲状腺細胞からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  5. 前記ガン性細胞が脳ガン細胞であり、前記脳ガンが、脊索腫、頭蓋咽頭腫、神経節細胞腫、神経節腫、未分化神経節膠腫、頸静脈小体、髄膜腫、松果体細胞腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、神経膠腫、血管芽細胞腫及びラブドイド腫瘍を含む脳ガンから選択される、請求項4に記載の使用のための化合物。
  6. 前記ガン性細胞が、星状細胞、上衣細胞及び希突起膠細胞からなる群より選択される、請求項5に記載の使用のための化合物。
  7. 前記ガンが膠芽細胞腫である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  8. ヒトApoO、好ましくは配列番号1に示されているヒトApoOである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  9. ApoOフラグメントであり、30〜190、好ましくは50〜130、より好ましくは70〜120アミノ酸の長さを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  10. ApoOフラグメントであり、8〜190、好ましくは8〜100、より好ましくは8〜50アミノ酸の長さを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  11. 配列番号10、配列番号11及び配列番号12に示されているフラグメントからなる群より選択されるApoOフラグメントである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  12. 配列番号12に示されているApoOフラグメントである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  13. ApoOフラグメントであり、ネイティブなApoOのN末端の少なくとも40アミノ酸を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  14. MPTPと相互作用してMPTPが開口状態をとるようにし、それにより、ミトコンドリア脱共役を誘導する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  15. CyPD又はANTと相互作用する、請求項14に記載の化合物。
  16. ミトコンドリア呼吸を増加させ、脂肪酸代謝を増加させ、前記ガン性細胞内の脂質蓄積を誘導する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
  17. 肥満、糖尿病、脂肪肝、膵炎及び甲状腺機能低下症からなる群より選択される病態生理学的状態を処置するための方法において使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである、化合物。
  18. 病態生理学的状態、好ましくは肥満、糖尿病、心筋症、筋障害、脂肪肝、膵炎及び/又は甲状腺機能低下症における脂質過負荷を軽減するための方法において使用するための化合物であって、ApoO活性又はApoO遺伝子発現のインヒビターである、化合物。
JP2016563136A 2014-04-16 2015-04-15 ガン及び様々な病態生理学的状態を処置するための方法において使用するためのApoO Active JP6698031B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP14305565.5 2014-04-16
EP14305565 2014-04-16
PCT/EP2015/058143 WO2015158760A1 (en) 2014-04-16 2015-04-15 ApoO FOR USE IN A METHOD FOR TREATING CANCER AND VARIOUS PATHOPHYSIOLOGICAL SITUATIONS

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2017513490A true JP2017513490A (ja) 2017-06-01
JP2017513490A5 JP2017513490A5 (ja) 2018-05-31
JP6698031B2 JP6698031B2 (ja) 2020-05-27

Family

ID=50513864

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016563136A Active JP6698031B2 (ja) 2014-04-16 2015-04-15 ガン及び様々な病態生理学的状態を処置するための方法において使用するためのApoO

Country Status (5)

Country Link
US (2) US10272135B2 (ja)
EP (2) EP3131569B1 (ja)
JP (1) JP6698031B2 (ja)
CA (1) CA2945880A1 (ja)
WO (1) WO2015158760A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021049633A1 (ja) 2019-09-11 2021-03-18 国立大学法人熊本大学 難治性遺伝性腎疾患アルポート症候群の根治療法のための薬剤

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012072681A1 (en) * 2010-12-01 2012-06-07 Inserm (Institut National De La Sante Et De La Recherche Medicale) Diagnostic and treatment of chronic heart failure
WO2013183964A1 (ko) * 2012-06-07 2013-12-12 한양대학교 산학협력단 폐암 진단 및 치료를 위한 표적 단백질

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB8308235D0 (en) 1983-03-25 1983-05-05 Celltech Ltd Polypeptides
US5225539A (en) 1986-03-27 1993-07-06 Medical Research Council Recombinant altered antibodies and methods of making altered antibodies
US4946778A (en) 1987-09-21 1990-08-07 Genex Corporation Single polypeptide chain binding molecules
US6506559B1 (en) 1997-12-23 2003-01-14 Carnegie Institute Of Washington Genetic inhibition by double-stranded RNA
AUPP249298A0 (en) 1998-03-20 1998-04-23 Ag-Gene Australia Limited Synthetic genes and genetic constructs comprising same I
GB9927444D0 (en) 1999-11-19 2000-01-19 Cancer Res Campaign Tech Inhibiting gene expression
AU2001245793A1 (en) 2000-03-16 2001-09-24 Cold Spring Harbor Laboratory Methods and compositions for rna interference
TWM441048U (en) * 2012-06-18 2012-11-11 qing-huang Wang Fan blade

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012072681A1 (en) * 2010-12-01 2012-06-07 Inserm (Institut National De La Sante Et De La Recherche Medicale) Diagnostic and treatment of chronic heart failure
WO2013183964A1 (ko) * 2012-06-07 2013-12-12 한양대학교 산학협력단 폐암 진단 및 치료를 위한 표적 단백질

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
福田 一典: "代謝をターゲットにしたがん治療", 日本伝統獣医学会誌, vol. 第21巻,第2号, JPN6018051488, November 2013 (2013-11-01), pages p.42−49 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021049633A1 (ja) 2019-09-11 2021-03-18 国立大学法人熊本大学 難治性遺伝性腎疾患アルポート症候群の根治療法のための薬剤

Also Published As

Publication number Publication date
EP3639843A1 (en) 2020-04-22
WO2015158760A1 (en) 2015-10-22
US10272135B2 (en) 2019-04-30
US20190209648A1 (en) 2019-07-11
US20170035842A1 (en) 2017-02-09
EP3131569B1 (en) 2020-05-27
EP3131569A1 (en) 2017-02-22
CA2945880A1 (en) 2015-10-22
JP6698031B2 (ja) 2020-05-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Fan et al. ECM1 prevents activation of transforming growth factor β, hepatic stellate cells, and fibrogenesis in mice
Dai et al. MiR-21 protected against diabetic cardiomyopathy induced diastolic dysfunction by targeting gelsolin
Tian et al. ANGPTL2 activity in cardiac pathologies accelerates heart failure by perturbing cardiac function and energy metabolism
KR102378462B1 (ko) 비알코올성 간질환 동물 모델 및 비알코올성 간질환의 진단, 예방 또는 치료용 조성물
Chen et al. Knockdown of circROBO2 attenuates acute myocardial infarction through regulating the miR-1184/TRADD axis
Shen et al. Reversal of prolonged obesity-associated cerebrovascular dysfunction by inhibiting microglial Tak1
Tu et al. Cardiolipin synthase 1 ameliorates NASH through activating transcription factor 3 transcriptional inactivation
Das et al. Specific PKC βII inhibitor: one stone two birds in the treatment of diabetic foot ulcers
US20070167386A1 (en) Remedy for cardiac failure containing ask1 inhibitor as active ingredient and method for screening the same
Du et al. Protective Effect of miR‐204 on Doxorubicin‐Induced Cardiomyocyte Injury via HMGB1
Shahzadi et al. Nicotinamide riboside kinase-2 inhibits JNK pathway and limits dilated cardiomyopathy in mice with chronic pressure overload
Yu et al. (Pro) renin receptor RNA interference silencing attenuates diabetic cardiomyopathy pathological process in rats
Hu et al. PRDM16 exerts critical role in myocardial metabolism and energetics in type 2 diabetes induced cardiomyopathy
Marzano et al. Genetic catalytic inactivation of GRK5 impairs cardiac function in mice via dysregulated p53 levels
US20190209648A1 (en) ApoO FOR USE IN A METHOD FOR TREATING CANCER AND VARIOUS PATHOPHYSIOLOGICAL SITUATIONS
Avalle et al. Liver-specific siRNA-mediated Stat3 or C3 knockdown improves the outcome of experimental autoimmune myocarditis
WO2017146227A1 (ja) アトピー性皮膚炎モデル非ヒト動物及びその使用
EP2646572B1 (en) Diagnostic and treatment of chronic heart failure
US11235073B2 (en) Method for treating or preventing heart failure
CN114344468B (zh) NFAT的lncRNA非编码阻遏子在血管相关疾病的用途
WO2018231025A2 (ko) 면역세포 이동에 의한 질환의 치료제 및 이의 스크리닝 방법
CN114306371B (zh) Nron的表达促进剂在制备动脉粥样硬化斑块动物模型中的用途
Zhang et al. Targeted suppression of microRNA-33 in lesional macrophages using pH low-insertion peptides (pHLIP) improves atherosclerotic plaque regression
Ni et al. HIF‐1α and adaptor protein LIM and senescent cell antigen‐like domains protein 1 axis promotes tubulointerstitial fibrosis by interacting with vimentin in angiotensin II‐induced hypertension
Li et al. Recombinant EGFL7 Mitigated Pressure Overload-Induced Cardiac Remodeling by Blocking PI3K [... formula...]/AKT/[... formula...] Signaling in Macrophages

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20171030

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171030

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180413

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180413

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190405

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191001

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200331

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200427

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6698031

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250