本趣旨の以下の詳細な説明は、添付図面を参照し、添付図面は、例示として、本趣旨が実施可能な特定の態様及び実施形態を示す。これらの実施形態は、当業者が本趣旨を実施できるようにするのに十分に詳細に説明される。本趣旨の範囲から逸脱せずに、他の実施形態を利用することも可能であり、構造的、論理的、及び電気的変更を行うことが可能である。本開示での「実施形態」、「一実施形態」、又は「様々な実施形態」への参照は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではなく、そのような参照は、2つ以上の実施形態を意図する。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味で解釈されるべきではなく、範囲は添付の特許請求の範囲及びそのような特許請求の範囲が権利を有する法的均等物の全範囲によってのみ規定される。
神経線維は、軸索とも呼ばれ、神経細胞からの突起である。神経線維はシナプスにおいて神経細胞を別の神経細胞、筋肉、又は腺細胞に接続している。シナプスとは、神経細胞が電気信号又は化学信号を他の細胞に渡せるようにする構造である。神経線維はA線維、B線維、及びC線維を含む。A線維は、最大の線維であり、刺激の振幅が増大するにつれて最初に捕捉される線維である。A線維は、感覚線維(求心性)或いは、筋組織を支配する運動線維(遠心性)であることができる。例えば、頸部の迷走神経の刺激は、喉頭筋線維を興奮させ、これは迷走神経捕捉のマーカとして使用し得る喉頭筋の活性化を生じさせる。B線維はより小さく、電流振幅を増大させる場合、次に捕捉される線維である。通常、遠心性副交感神経線維及び交感神経線維がある。これらのB線維は、自律神経刺激治療の標的であり得る。C線維は、最も小さく、痛み及び他の感覚情報に関連付けられた線維である。
厚い線維ほど、枯渇が生じるランヴィエ絞輪間に短いセクションの髄鞘を有し、したがって、線維が受ける電場の変化が大きいことが観測されている。現在、迷走神経が、表1に示される線維タイプ及びサイズを含むと信じられており、線維の大半がC線維であると更に信じられている。
幾つかの提案されている自律神経刺激治療は、耐えられるまで高い振幅を滴定することにより、迷走神経内の可能な限り多くの神経線維を捕捉しようとする。一般的に言えば、迷走刺激は、まずA運動線維及び大きな感覚神経線維を捕捉し、次に小さな感覚線維及びB副交感神経線維を捕捉し得る。この順序は一般的な順序であり、その理由は、電極に近い線維ほど強い電場を受け、離れた線維よりも先に活性化され、さらにこれらの線維タイプのサイズが重複するためである。心拍数を下げる線維は、最も小さいB遠心性副交感線維である。C線維は無髄であるため、これらのB遠心性副交感線維は有髄線維のうち最小である。心拍反応を生じさせる神経刺激は、B遠心性副交感線維が捕捉されており、その他のより大きな線維タイプも捕捉されていることを示す。
図1は、神経と別の膜との間のシナプスにおける神経活動を示す。活動電位は、神経末端に達するまで神経軸索100を下って電気的に伝搬し、神経末端はシナプス前終末101と呼ばれることもある。シナプス前終末は、標的細胞のシナプス後膜102と連絡する。標的細胞は、別の神経、筋肉、又は腺であり得る。シナプス前終末と標的細胞とのこの膜−膜接合部は、シナプス103と呼ばれる。シナプスの一種は、電気シナプス結合であり、シナプス前終末は、ある細胞から次の細胞にチャネルを通って渡るイオン又は小分子を使用して、シナプス後膜と電気的に連絡する。別のタイプのシナプスは、化学シナプス結合であり、神経伝達物質が細胞間での伝送に使用される。シナプス前終末エリア101は、神経伝達化学物質105を含む多数のシナプス小胞104を有する。シナプス前終末101に伝搬する活動電位は、シナプス前終末内で化学反応を起こさせ、シナプス前終末は神経伝達物質をその終末内のシナプス小胞から細胞外空間中に放出する。この細胞外空間はシナプス間隙106と呼ばれることもある。神経伝達物質は、シナプス前終末とシナプス後終末との間のシナプス間隙を渡る。神経伝達物質は、シナプス後膜102(別の神経細胞)又は筋細胞(神経筋接合部)のいずれかの受容体107内で連鎖反応を開始させ、この連鎖反応は、シナプス後神経での活動電位の発射又はシナプスが神経筋接合部内で終わる場合には筋収縮をトリガーする。例えば、標的細胞が筋肉であり、シナプスが神経筋接合部である場合、神経伝達物質アセチルコリン(Ach)は標的筋細胞の急速な収縮を生じさせる。神経筋接合部において、活性電位は神経筋シナプス接合部に移動し、カルシウムイオンを電圧依存性カルシウムチャネル108に通し、電圧依存性カルシウムチャネル108はAchをシナプス前終末から細胞外空間に放出する。標的筋細胞の膜内のシナプス後受容体はAchを受け取る。シナプス前終末は、シナプス前終末を神経伝達物質のシナプス小胞で補充する神経伝達物質再取り込みポンプ109を有する。
本発明者らは、シナプス前活動電位が互いの近くに来た場合、シナプス後受容体が活動電位をトリガーしないことを観測したため、このシナプス間隙106にわたる連続した連絡が、神経内の活動電位間で最小量の時間を必要とするように見えることを観測した。刺激周波数が高いほど、所与の時間期間中により多くの刺激パルスを生成し、その時間期間中、神経内により多くの対応する活動電位を生成し得る。例えば、神経刺激信号は、約0.25Hz〜50Hzの範囲内であり得るか、約2Hz〜約20Hzの範囲内に有り得るか、又は約20Hzであり得る。より高い周波数(例えば、約100Hz〜1kHz)では、シナプス前終末が、活動電位が軸索を伝搬し続けたにもかかわらず、シナプス間隙をわたって連絡することができないことが観測された。シナプス前終末のこの連絡不可能性は、枯渇ブロックと呼び得る。この枯渇ブロックの取得に使用される周波数は、活動電位が神経を下って伝搬しないようにする高周波(1kHzを超える)AC神経ブロックよりも低い。例えば、1kHzを超える周波数では、刺激は神経が活動電位を伝導しないようにブロックする。逆に、枯渇ブロックは、1kHz未満の周波数で送達され、したがって、活動電位が神経を下りシナプス前終末まで伝搬することを止めず、むしろ、シナプス前終末がもはや、シナプス間隙をわたって別の細胞の受容体に連絡することがもはやできないように、シナプス前終末を枯渇させる。
図2は、シナプス前終末枯渇ブロックの観測に使用される実験セットアップ210を示す。頸部迷走神経211は、胸部分岐212及び反回神経213に分岐する。示される実験セットアップは、双極構成での電流源214及び螺旋電極215を使用して頸部迷走神経211を刺激し、神経電気(ENG)モニタ216を使用して頸部迷走神経211が反回神経分岐213及び胸部分岐212に分岐する前の神経活動をモニタし、筋電図(EMG)モニタ218を使用して喉頭筋217の振動をモニタするのに使用された。このセットアップは、枯渇ブロック刺激からの活動電位がなお、ENGによって検知されるが、喉頭振動がEMG218によって検知されないことを観測するために使用された。したがって、枯渇ブロック刺激が、シナプス間隙をわたって連絡するシナプス前終末の能力をブロックしたと結論付けることができた。
図3は、刺激が20Hzから200Hzに変更される場合の刺激信号と記録ENG及びEMG信号との観測関係を示し、シナプス前終末を枯渇させ、シナプス接合部をブロックする観測時間も含む。20Hz刺激中、ENG信号及びEMG信号は両方とも、刺激信号を辿る。ENG信号及びEMG信号の両方での高いピークは、刺激アーチファクトを反映している。しかし、200Hz刺激中、ENG応答は、刺激信号後になお存在するが、EMG信号は、約100msの発現反応後に素早く低下する。刺激が200Hzに変更された後、短い遷移時間後、電荷平衡からのアーチファクトのみがEMG波形に見られる。したがって、神経中の軸索は、活動電位を伝搬することによって活性であり続けるが、シナプス間隙にわたる連絡は、シナプス前終末がシナプス間隙にわたって連絡する能力を枯渇した後、低減又は停止する。示されるように、このシナプス接合部ブロックは、非常に素早く(例えば、200Hz信号が印加された後、50ms〜100ms)、シナプス前終末で受け取られる伝搬パルスが、シナプス前終末が連絡する能力を枯渇させるとすぐに生じる。神経伝達物質及び/又はカルシウムをシナプス前終末に戻す生理学的再取り込みプロセスが、200Hz刺激からの神経伝達物質の伝送についていくことができるようには見えない。
図4は、刺激が200Hzから20Hzに変更される場合の刺激信号と記録ENG及びEMG信号との観測関係を示す。シナプス接合部ブロックは、刺激が200Hzで送達されるときに生じる。この時間中、ENGはなお、刺激アーチファクト信号を辿って存在するが、EMG応答は存在しない。これは、刺激が神経を捕捉しており、活動電位に軸索を伝搬させていることを示す。刺激中のあらゆるパルスは、神経線維中に各活動電位を生じさせる。しかし、喉頭筋は刺激されず、その理由は、シナプス接合部ブロックを生じさせるシナプス前終末枯渇による。毎秒200の活動電位は、シナプス前終末がシナプス間隙にわたって連絡する能力を枯渇させる。しかし、刺激が200Hzから20Hzに変更される場合、ENG応答は、刺激中のあらゆるパルスが神経線維中の各活動電位を生じさせるため、刺激パルスを辿り引き続き存在する。EMGは、刺激周波数が20Hzに変更された後、短い遷移期間直後、刺激パルスの直後に再出現する。シナプス前終末がシナプス間隙にわたって連絡する能力は、毎秒20パルスでは枯渇しない。したがって、示されるように、シナプス接合部ブロックは、非常に素早く(例えば、信号が200Hzから20Hz信号に変更された後、50ms〜100ms)除去することができ、これは、シナプス前終末中の神経伝達物質及び/又はカルシウムを戻すための生理学的反応時間を反映していると考えられる。
表2に示されるように、特定の周波数が、他の周波数よりも素早くシナプス接合部の枯渇ブロックをオン/オフすることが観測された。データは、約200Hzを超える周波数が高速枯渇ブロックを提供し、一方、約100Hz〜約150Hzの周波数がより遅い枯渇ブロックを提供することを示唆する。100Hz未満の周波数は、枯渇ブロックの提供に有効ではない傾向を有し、その理由は、それらの周波数が、シナプス前終末からシナプス間隙をわたり標的細胞に連絡する能力を回復するシナプス前終末の能力を超えないためである。例えば、神経筋接合部では、約100Hz未満の周波数は強直性攣縮を生じさせ、約100Hz〜約150Hzの周波数は、90%枯渇ブロックを約10秒〜4秒で生じさせ、約200Hz〜1000Hzの周波数は90%枯渇ブロックを生じさせ、1kHzを超える周波数は、神経伝導ブロックに入ることを開始し、神経伝導ブロックでは、刺激は、活動電位が神経を下って伝搬しないように捕捉する。
図5Aは、異なる刺激周波数への神経筋接合部の反応を示す。神経筋接合部は、神経中の軸索が筋肉と連絡するシナプス接合部の一種である。一般に100Hz未満の範囲内(例えば、約50Hz)での軸索の刺激は、筋肉の強直性攣縮を生じさせるおそれがある。最終的に、筋肉は疲労し、追加の刺激にもはや反応しなくなり得る。シナプス前終末は、約100Hz〜約1kHzの範囲内の刺激周波数では、シナプス間隙にわたり連絡する能力を枯渇させる。この刺激信号の周波数は、筋収縮をトリガーする生理学系の能力外であり、その理由は、この周波数が、神経伝達物質及び/又はカルシウムを刺激での続く活動電位のために補充することができるよりも高速で活動電位を捕捉させ得るためである。観測されるブロックは、筋肉の疲労ではなく接合部の枯渇を原因とする。したがって、神経筋接合部に適用される枯渇ブロックの利点は、枯渇ブロックが筋疲労又は強直性攣縮を生じさせないことである。神経筋枯渇ブロックは、刺激を停止することにより素早く可逆化される。
図5Aが周波数範囲の単純な例示であり、これらの範囲が様々な用途で可変であることに留意する。図5Bは、異なる刺激周波数への神経筋結合部の反応の別の例示を提供する。図5Bは、活性化と枯渇ブロック範囲との間の遷移期間T1を示す。遷移期間T1は、伝達物質及びシナプス末端器官に依存し得、約70Hz〜130Hzの範囲であり得る。図5Bは、枯渇ブロックと伝導ブロックとの組合せを提供し得る枯渇ブロック範囲と伝導ブロック範囲との間の遷移期間T2も示す。
枯渇ブロック、枯渇ブロックと伝導ブロックとの組合せ、及び高周波kHz伝導ブロックの幾つかの特徴を以下に提供する。例えば、枯渇ブロックはより低い周波数、ひいてはより低い電力要件を有し、比較的高速のブロック(<100ms)及び比較的高速の回復(100ms未満で50%超及び10秒で100%)を有する。例えば、枯渇ブロックと伝導ブロックとの組合せ(例えば、約1kHz)は、伝導ブロックに起因して低速線維を極めて高速にブロックし、高kHz周波数を用いて開始し、次に、下げられて、より低周波でブロックを維持し、7ms未満でより低速の線維をブロックし、より高周波のkHzブロックよりも高速の回復を有し得る。例えば、高周波kHz伝導ブロックは高速である(例えば、7ms未満でオン、10ms未満でオフ)が、周波数がより高く、電流要件がより高いことに起因して、よりエネルギー集約的である。
例えば、kHz伝導ブロックは、単純に示される1kHzではなく約1kHz〜5kHzというより低い境界を用いて観測し得る。さらに、枯渇ブロックの上限は単純に示される1kHzではなく約2kHzであり得る。さらに、刺激が枯渇から伝導に遷移する周波数は、神経線維及び終板に依存する。高速α線維は、より高い伝導率及び発射率を有し、したがって、必ずしも1kHzでブロックするわけではなく、より低速の線維はより低い周波数(例えば、600Hz)でブロックする。したがって、大半の線維が活性化することができる神経刺激周波数帯、大半の線維が枯渇し得る枯渇ブロック周波数帯、及び大半の線維が活動電位をブロックさせるkHz伝導ブロック周波数帯があり得る。例として、神経刺激周波数帯は、約50Hzまで拡張し得、枯渇ブロック周波数帯は約100Hz〜約700Hzまで拡張し得、kHz伝導ブロック周波数帯は約5kHzから100kHzまで拡張し得る。例えば、約50Hzと約100Hzとの間の遷移又は約70Hzと130Hzとの間の遷移及び約700Hzと約5kHzとの間の別の遷移等の遷移周波数が帯間にあり得る。刺激周波数への神経の反応は、伝達物質及びシナプス末端器官に依存するように見える。したがって、異なるタイプの線維は、遷移周波数内の周波数に対して別様に反応し得る。例として、ある周波数は、幾つかの線維の活性化又は神経刺激を生じさせ得、他の線維では枯渇ブロックを生じさせ得る。刺激は、線維の直径若しくは起源又は電極のロケーションにより、特定の線維に制限し得る。例えば、枯渇ブロック刺激の周波数は、求心性神経と遠心性神経とを区別するか、又は異なるタイプの神経伝達物質を放出する異なる線維を区別することが見つかり得る。枯渇ブロック及び活性化/刺激の両方を提供可能なそのような周波数は、遷移領域で見出され得るが、枯渇ブロック周波数帯内等の周波数帯の1つ内で見出されることもできる。
異なる周波数への反応は、適用毎に変化し得、適用毎に変化すると予期されるが、枯渇ブロックを送達する刺激パラメータは、妥当なエネルギー消費コストで現在の装置で利用可能であると予期される。刺激が300μsのパルス幅で提供される表に示される研究では、A線維は2mA、200Hzでブロックされ、その間、5mA、200Hzで心拍を下げるB線維はなお興奮していた。A線維は、EMGを介して記録される喉頭運動線維を担当した。小さな副交感遠心性B線維は、より高い活性化閾値を有し、通常、洞房結節での心拍コントロールを担当する。この例は、NMJブロックが、電気刺激を介する活性化と全く同様に、段階的に、標的となっている線維軸索のサイズになることを示した。
表2に示されるように、枯渇ブロックの速度は刺激の周波数に依存し、約100Hz〜約1kHzの範囲内のより高い周波数は、その範囲内のより低い周波数よりも素早く神経伝達物質ブロックを提供する。幾つかの実施形態によれば、枯渇ブロックは、比較的高い周波数(例えば、約200Hz〜400Hz)において枯渇ブロックを開始して、高速枯渇(例えば、約50ms以下)を達成し、次に続けて枯渇ブロック刺激の周波数を約100Hzに下げて、ブロックを維持するプロセスによって実施し得る。低い周波数の刺激ほど、少数のパルスを送達するため、低周波枯渇ブロックは、高周波枯渇ブロックよりもエネルギー効率的である。仮に枯渇ブロックが200Hzではなく約100Hzで開始される場合、枯渇ブロックの達成までにより長い時間がかかるであろう。現在の観測に基づいて、100Hzでの枯渇ブロックが約5秒〜10秒かかると考えられる。2(又は3以上の)段階の周波数を使用することによって、ある周波数を使用して枯渇ブロックを比較的素早く誘導し、次に、別の周波数を使用して枯渇ブロックを比較的効率的に維持する等の各周波数の利点を得ることができる。
様々な実施形態は、シナプス接合部において枯渇ブロックを使用して、選択的な線維連絡を提供し得る。枯渇ブロックは、直径、起源、又は電極への位置により、特定の線維に制限し得る。枯渇ブロックパルスの振幅は、神経線維のうちの幾つかのみの刺激閾値のみよりも大きくなるように制御することができる。したがって、全ての線維が、活性電位を伝搬させる別の刺激信号を用いて活性化され得るが、線維のうちの幾つかのシナプス前終末は、刺激の周波数が枯渇ブロックを生じさせるため、シナプス接合部にわたって連絡する能力を素早く枯渇する。非正弦波波形又は正弦波波形を含め、様々な刺激波形が使用可能である。非正弦波波形は、直線パルス、二相矩形波パルスを含み得る電荷平衡波形、単方向用途での準台形波、及びパルス三角波を含み得る。神経連絡及び神経刺激治療の一環としての所望の生理学的反応を引き起こす神経刺激は、低周波刺激(例えば、約20Hz又は約0.25Hz〜約50Hzの範囲内)と呼ばれ得、一方、これと比較して、枯渇周波数は高周波数(例えば、約200Hz又は約100Hz〜約1kHzの範囲内)と呼ばれ得る。神経線維を活性化して、神経刺激治療を送達するのに効果的なこれらの低周波数での刺激は、本明細書では単に「神経刺激(nerve stimulation)」又は「神経刺激(neural stimulation)」と呼ばれ得、一方、より高い「枯渇」周波数での刺激は、本明細書では単に「枯渇ブロック刺激」と呼ばれ得る。「高振幅低周波」(HALF:high amplitude,low frequency)刺激信号は、刺激閾値を超え得、したがって、小さな線維及び大きな線維の両方の補充に使用し得る。したがって、HALF信号は、必要な全てのA感覚線維及びB遠心性線維を捕捉することにより、刺激の所望の効果を得るために使用し得る。「小振幅高周波」(SAHF:small smplitude,high frequency)刺激信号は、より小さな刺激閾値のみを超える振幅に設定し得、したがって、より低い刺激閾値を有する線維(例えば、より大きな線維又は刺激電極により近い線維)の幾つかのみを補充し、その間、より高い刺激閾値を有する他の線維(例えば、より小さな線維又は刺激電極から更に離れた線維)はなお、HALF刺激を用いて興奮させることができる。枯渇ブロック刺激は、同じ又はより低い振幅を有するより低周波数(例えば、20Hz)で呼び起こされる全ての信号の有効性を相殺する。SAHFは、比較的高い刺激閾値を有する線維であるより小さな線維ではなく、比較的低い刺激閾値を有する線維である大きな線維の神経伝達物質枯渇ブロックを達成するのに使用し得る。幾つかの実施形態では、低周波刺激と同じ又は概ね同じ高振幅を使用して、より高周波数の枯渇ブロック刺激を送達し、低周波刺激を使用した、施される治療の効果を低減又は調整し得る。
電流振幅及びパルス幅は、軸索が脱分極するか否かを制御し、刺激の周波数は、神経伝達物質が神経末端で枯渇するか否かを制御する。電流振幅及びパルス幅は、枯渇ブロックにより大きな線維のみを選択するように制御し得る。例えば、電流振幅及びパルス幅は、A線維からの神経伝達物質を枯渇させ、より小さな線維からの神経伝達物質を枯渇させないように制御し得るか、又はA線維及びB線維の両方を枯渇させるようにより高い振幅及び/又はより幅の広いパルスを用いて制御し得る。
限定ではなく例として、意図される線維の完全な神経伝達物質ブロックは、補充曲線を取得することによって保証し得る。補充曲線は、神経標的の活性化閾値及び飽和閾値を識別し得る。補充曲線は、個々の患者に固有であり得、電流振幅の増大に伴う活動の増大を示し得、次に、活動が、電流振幅の増大に伴ってあまり増大しないプラトーを示し得る。活性化閾値は、神経活動が、電流振幅の増大に伴って増大を開始する場所を反映し、飽和閾値は、神経活動が、電流振幅の更なる増大に応答してあまり増大しない場所を反映する。枯渇ブロック刺激の電流振幅は、活性化閾値よりも高いマージンに設定し得るため、活性化閾値に基づいて決定し得る。飽和閾値は、神経線維の全て又は略全てが活動電位を伝搬する閾値を示す。枯渇ブロック刺激の電流振幅は、ブロックが意図される線維の飽和閾値よりも高く、ブロックが意図される線維の飽和閾値に基づいて決定し得る。例として、枯渇刺激信号の振幅は、概ね、ブロックが意図される線維の飽和閾値に設定し得るか、線維の飽和閾値よりも高いマージンに設定し得るか、又は飽和閾値よりも低いマージンに設定して、部分ブロックを提供し得る。
神経線維から離間された電極から生じる患者の1つ又は複数のバリエーションがあり得るため、処置が実施されて、個々の各患者の選択的線維刺激治療プロファイルが決定可能である。異なる神経標的内の神経線維は、体の異なる部分を支配しているため、特定の処置は、刺激される特定の神経標的に依存する。例えば、頸部迷走神経が標的である場合、患者の選択的線維刺激治療プロファイルは、喉頭振動並びに血圧及び心拍変動を観測することによって決定し得る。したがって、枯渇ブロックを提供する様々な実施形態はまず、神経標的の活性化閾値及び飽和閾値を見つけ得る。電流振幅は、神経標的の飽和閾値の上であるように選択し得、周波数は、所与の用途で、シナプス前終末がシナプス間隙にわたって連絡する能力を素早く枯渇させて、その用途で有効な枯渇ブロックを提供するのに十分に高い周波数(例えば、200Hz)であるように選択し得る。処置は、異なるタイプのブロック間での遷移(例えば、枯渇ブロックとkHz伝導ブロックとの間の遷移)への生理学的効果をモニタしながら、刺激の周波数を遷移させ得、これにより、効率を改善する、時定数(例えば、発現/回復)を改善する、又は幾つかの神経線維を活性化させるとともに他の神経線維に枯渇ブロックを提供もする所望の周波数及びロケーションを見つける。
幾つかの実施形態は、刺激を段階的に強化し得る。刺激の段階的な強化は、刺激をより許容可能なものにし得る段階的ブロックを提供し得る。例えば、神経筋接合部枯渇ブロックでは、段階的に強化される刺激は、段階的ブロックの初期期間を作成することにより、刺激の開始時に1つの初期筋活動の力を低減し得る。幾つかの実施形態は、ブロック中、刺激信号の周波数を変更し得る。したがって、より高い周波数刺激が使用されて、ブロックを素早く取得し得、次に、より低い周波数刺激が使用されて、前に得られたブロックを維持し得る。例えば、初期周波数(例えば、260Hz)が使用されて、枯渇ブロックを素早く達成し、その後、第2の周波数(例えば、130Hz)が続けられて、枯渇ブロックを維持し得る。刺激の周波数は、完全な又は90%の枯渇ブロックを達成するのに必要な時間に関連する。例えば、約100Hz〜約150Hzの範囲内の周波数は、90%枯渇ブロックを約10秒〜4秒で提供し、約200Hz〜1000Hzの範囲内の周波数は、90%枯渇ブロックを1秒未満に(例えば、約数ミリ秒で)提供する。1kHzを超える周波数は、神経伝導ブロックに入り始める。
本趣旨は、迷走神経を刺激する用途又は他の神経を刺激する用途で使用し得る。迷走神経は、複雑な神経の例として本明細書において考察される。迷走神経は、以下に概説する自律神経系(ANS)の一部である。図6は、頸部迷走神経からの幾つかの分岐を示す。頸部迷走神経619は、耳周囲の部位を支配する耳介枝620、咽頭周囲の部位を支配する咽頭枝621、喉頭周囲の部位を支配する喉頭内神経622、喉頭外神経623、及び反回神経624、舌咽神経からの分岐と共に頸動脈洞を支配する洞岐625、肺を支配する肺枝626、並びに心臓を支配する心臓枝627を含め、幾つかの分岐に分かれる複合神経である。迷走神経は、肝臓、胃、腸、膀胱、及び腎臓を含め、体の他の部分を引き続き支配する。例えば、心臓を支配する線維はより小さなB線維を含む。頸部迷走神経を刺激する、心不全治療等の治療が提案されている。より大きな直径のA線維(運動)を活性化させずに、より小さな直径のB線維(副交感神経)を活性化して、喉頭振動、咳、及び様々な不快な感覚等であるが、これらに限定されないA線維活性化から生じ得る不要な副作用を回避するように、頸部迷走神経を刺激することが望ましいことがある。
ANSは「不随意」器官を統制し、一方、随意(骨格)筋は体性運動神経によって制御される。不随意器官の例としては、呼吸器官及び消化器官が挙げられるとともに、血管及び心臓も挙げられる。多くの場合、ANSは、無意識で再帰的に機能して、例えば、腺を統制し、皮膚、目、胃、腸、及び膀胱中の筋肉を統制し、心筋及び血管周囲の筋肉を統制する。ANSは、交感神経系及び副交感神経系を含む。交感神経系は、ストレス及び、緊急事態への「闘争逃走反応」と関係がある。影響の中でも特に、「闘争逃走反応」は、血圧及び心拍を上げて、骨格筋血流を上げるとともに、消化を低下させて、「闘争逃走」にエネルギーを提供する。副交感神経系は、リラックス及び「休止消化反応」と関係があり、影響の中でも特に、血圧及び心拍を下げるとともに、消化を増大させて、エネルギーを保存する。ANSは、正常な内部機能を維持し、体性神経系と共に機能する。求心性神経は、インパルスを神経中心に向けて伝達し、遠心性神経は、インパルスを神経中心から離れて伝達する。
交感神経系及び副交感神経系の刺激は、心拍、血圧、及び他の生理学的反応を生じさせることができる。例えば、交感神経系の刺激は、瞳孔を広げ、唾液及び粘液の生成を低下させ、気管支筋を弛緩させ、胃の不随意収縮(蠕動)及び胃の運動性の連続した波を低減し、肝臓によるグリコーゲンからグルコースへの変換を増大させ、腎臓による尿分泌を低減させ、膀胱の壁を弛緩させ、括約筋を閉じさせる。副交感神経系の刺激(交換神経系を阻害する)は、瞳孔を収縮させ、唾液及び粘液の生成を増大させ、気管支筋を収縮させ、胃及び大腸の分泌及び運動性を増大させ、小腸での消化を増大させ、尿の分泌を増大させ、膀胱の壁を収縮させ、括約筋を弛緩させる。交感神経系及び副交感神経系に関連する機能は多く、互いに複雑に融合することができる。
副交感神経活動の低減は、様々な心血管疾患の発症及び進行の原因となる。本趣旨の幾つかの実施形態は、自律神経系の緊張を調節することにより、様々な心血管疾患を予防的又は治療的に治療するために使用することができる。心血管疾患を治療するための神経刺激は、本明細書では神経心臓治療(NCT:neurocardiac therapy)と呼ばれ得る。心血管疾患の治療に使用される迷走刺激は、VST又はNCTのいずれかとして呼び得る。しかし、VSTは、非心血管疾患の場合に送達し得、NCTは迷走神経以外の神経の刺激により送達し得る。心血管疾患又は症状の例としては、高血圧、HF、及び心臓リモデリングが挙げられる。これらの症状について以下に概説する。
高血圧は、心疾患及び他の関連する心臓併存疾患の原因である。高血圧は、血管が収縮するときに生じる。その結果、心臓は、流れを維持するためにより高い血圧でより頑張って働き、これはHFの原因となり得る。高血圧は一般に、心血管損傷又は他の悪影響を誘導する可能性が高いレベルへの全身動脈血圧の一時的又は持続的な増大等の高い血圧に関連する。高血圧は、140mm Hgを超える収縮期血圧又は90mm Hgを超える拡張期血圧として定義されている。コントロールされない高血圧の結果としては、網膜血管疾患及び脳卒中、左室肥大及び心不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、及び腎血管性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。一般集団の大部分及びペースメーカ又は除細動器が移植された患者の大部分は、高血圧を患っている。長期死亡率及び生活の質は、この集団では、血圧及び高血圧を低減することができる場合、改善することができる。高血圧を患う多くの患者は、生活習慣の変更及び高血圧薬に関連する治療等の治療に応じない。
HFは、心臓機能が、末梢組織の代謝要求に応えるのに不適切なレベル未満に下がり得る正常未満の心拍出量を生じさせる臨床的な症候群である。HFはそれ自体、付随する静脈性鬱血及び肺鬱血に起因して、鬱血性心不全(CHF)として存在し得る。HFは、虚血性心疾患等の様々な病因に起因し得る。HF患者は、自律機能障害を有し、これにはLV機能障害及び死亡率の増大が関連付けられる。
心臓リモデリングは、心筋梗塞(MI)後に生じ得る構造的、生化学的、神経ホルモン的、及び電気生理学的な要因又は心拍出力低減の他の原因を含む心室の複雑なリモデリングプロセスを指す。心室リモデリングは、心室の拡張期充満圧を増大させ、それにより、いわゆる前負荷(すなわち、心室が拡張期終了時に心室内の血量によって伸張される程度)を増大させるいわゆる後方不全に起因して心拍出量を増大させるように機能する生理学的補償メカニズムによってトリガーされる。前負荷の増大は、収縮期中の1回拍出量を増大させ、これは、フランク・スターリングの原理として知られている現象である。しかし、心室が、ある時間期間にわたり、前負荷の増大に起因して伸張するとき、心室は拡張する。心室容積の拡大は、所与の収縮期圧での心室壁張力を増大させる。心室によって行われる圧力−容積の増大の仕事と共に、これは、心室筋を肥大させる刺激として機能する。拡張の欠点は、正常な残存心筋に課される追加の作業負荷及び肥大の刺激を表す壁張力の増大(ラプラスの法則)である。肥大が、張力の増大に見合うのに適切ではない場合、結果として、更なる及び進行性の拡張を生じさせる悪循環が生じる。心臓が拡張を開始すると、求心性圧受容器及び心肺受容器の信号が、血管運動中枢神経系コントロールセンターに送信され、このセンターは、ホルモン分泌及び交感神経放電で応答する。血流力学的変調、交感神経系の変調、及びホルモン変調(アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無等)の組合せは、心室リモデリングに関わる細胞構造内での有害な変調の主な原因となる。肥大を生じさせる持続した圧力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)及び最終的な壁の菲薄化を誘導し、壁の菲薄化は、心機能の更なる低下を生じさせる。したがって、心室拡張及び肥大は、最初は補償し得、心拍出量を増大させ得るが、プロセスは最終的に、収縮機能障害及び拡張機能障害を生じさせる。心室リモデリングの程度が恐らくは、MI後患者又は心不全患者での死亡率増大に相関することが示されている。
迷走は、異なる刺激閾値で補充される多くの神経経路を有する。迷走刺激への様々な生理学的反応には、VST強度の様々な閾値が関連付けられる。VSTの強度は、刺激信号のパラメータを調整することにより、調整することができる。例えば、信号(例えば、電流又は電圧)の振幅は増大されて、信号の強度を増大させることができる。振幅への代替又は追加として、他の刺激パラメータを調整することもできる。例えば、刺激強度は、刺激信号の周波数、刺激バースト周波数、パルス幅、及び/又はデューティサイクルを用いて変更することができる。
例えば、図7は、図の左側から右側へのVST強度の増大を示し、VSTへの様々な生理学的反応を引き起こす強度閾値を更に示す。VSTは、VSTが生理学的反応「B」を生じさせる強度よりも低い強度で、生理学的反応「A」を生じさせ、生理学的反応「B」は、VSTが生理学的反応「C」を生じさせる強度よりも低いVST強度で生じる。別の言い方をすれば、VSTは、特定のレベルの強度(例えば、刺激閾値)に達した後、反応「A」をトリガーし、より高い強度(例えば、より高い刺激閾値)に達した後、反応「A」と共に反応「B」をトリガーし、さらに高い強度(例えば、さらにより高い刺激閾値)に達した後、反応「A」及び「B」と共に反応「C」をトリガーする。
上で識別したように、VSTは、心血管疾患の治療に使用し得る。心臓の機能及びリモデリングへのVSTの有利な効果は、必ずしも心拍低減を介して仲介する必要はない。すなわち、VSTは、VSTに関連する望ましくない変時効果及び咳、筋刺激等の高強度刺激に起因する他の副作用なしで、患者に利することができる。むしろ、抗炎症、抗交感神経、及び抗アポトーシスメディエータは、心拍低減が実現する強度よりも低いVST強度でトリガーされる。これらのメディエータは、VSTが治療効果を心血管疾患に提供する経路として機能する。より低いVST強度での生理学的反応は、HF等の心血管疾患に治療的に有効な結果を有する。これらの反応は、これらの治療を仲介するか、又はこれらの治療への経路を提供する。より低いVST強度でHFに有益なそのような反応の例としては、抗炎症、抗交感神経、及び抗アポトーシス反応、並びに一酸化窒素(NO)の増大が挙げられる。より高いVST強度の生理学的反応は、望ましくないことがある。患者がVSTに耐える能力を低減し得るより高いVST強度への反応の例としては、心拍の低減、房室伝導の長期化、血管拡張、及び咳が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、より低いVST強度での幾つかの生理学的反応も望ましくないことがある。例えば、患者は、喉頭振動を不快と感じ得る。これらの反応の少なくとも幾つかは、治療によっては望ましいこともあれば、望ましくないこともある。限定ではなく例として、心拍を低減し、及び又は房室伝導を長期化させるVSTは、幾つかの心血管症状の治療には望ましいが、他の心血管症状では望ましくないことがある。VSTの強度は、刺激信号のパラメータを調整することによって調整することができる。例えば、信号(例えば、電流又は電圧)の振幅は増大されて、信号の強度を増大させることができる。振幅への代替又は追加として、他の刺激パラメータを調整することもできる。例えば、刺激強度は、刺激信号の周波数(例えば、刺激パルスの周波数)、刺激バースト周波数(例えば、各バーストが複数のパルスを含むバーストを開始するバースト周波数で送達される複数のバースト)、パルス幅、及び/又はデューティサイクルを用いて変更することができる。
本趣旨は、高強度刺激の望ましくない影響を回避するように閾値の強度を設定又は制限するのに使用することができるとともに、より低い刺激強度での幾つかの望ましくない影響に枯渇ブロックを提供するのに使用することもできる。例えば、枯渇ブロックが実施されて、反応「A」をブロックし得、刺激の強度は、反応「C」を回避するように設定し得、したがって、望ましい反応「B」を刺激に残す。本明細書に提供される幾つかの実施形態は、シナプス前終末ブロックを送達して、喉頭振動を生じさせ得る等のより低い閾値での望ましくない活性化をブロックし、その間、下限を超えるVST強度を送達し得る。より低い閾値での望ましくない活性化をブロックすることにより、刺激の強度を増大させて、望ましい線維のうちより多くを捕捉し、刺激への望ましい反応を改善することが可能であり得る。
図8は、図の左側から右側へのVST強度の増大を示し、VST強度の上限の定義に使用されるVSTへの望ましくない生理学的反応を引き起こす強度閾値と、VSTへの別の生理学的反応を引き起こす別の強度閾値とを更に示す。例えば、咳のVST強度閾値は、上限として使用することができ、喉頭振動反応のVST強度閾値は、下限として使用することができる。幾つかの実施形態では、上限を定義する生理学的反応は、検出される筋刺激である。大きな筋刺激又は過度の刺激は、患者にとって厄介であり得る。迷走神経捕捉閾値は、まず、喉頭振動を生じさせるA線維を補充し、次に、咳副作用が検出されるまで、強度を増大させることにより設定することができる。強度は、喉頭振動を生じさせた強度と、咳を生じさせた強度との間に設定される。例えば、刺激信号の振幅が増大されて、VST強度を増大させ、1.0mAが喉頭振動を生じさせ、2.5mAが咳を生じさせた場合、ペーシング振幅は1.0mA〜2.4mAに設定し得る。枯渇ブロックは、適切な刺激パラメータを用いて適用されて、VSTが喉頭振動又は低振幅で誘導される他の望ましくない反応を生じさせないようにし得る。
図9A〜図9Cは、複雑な神経928内の異なる線維タイプの異なる刺激閾値の簡易図を使用するとともに、神経刺激と、シナプス前終末枯渇ブロック刺激との異なる組合せを更に使用する選択的刺激を示す。限定ではなく例として、図9A〜図9Cのそれぞれは、神経刺激及びシナプス前終末枯渇ブロック刺激の両方を送達するように構成される双極刺激リード929を含む。これらの図に示される概念は、単極刺激及び多極刺激等の他のタイプの刺激に適用し得る。図は、単純な例として、小閾値、中閾値、及び大閾値として識別される3つの刺激閾値を示す神経の簡易図を提供する。所与の線維の閾値は、その線維タイプ及び刺激電極への位置に依存する。しかし、概念は単に、線維サイズに基づいて示され得る。図9A〜図9Cの簡易図は、小刺激閾値を有するより大きなサイズのA線維と、中刺激閾値を有する中サイズのB線維と、大刺激閾値を有するより小さなサイズのC線維とを有する。図9Aは、中刺激閾値を有する中サイズB線維の選択的刺激を示す。神経刺激は、A線維及びB線維の両方の刺激閾値を超えるパラメータを有し、枯渇ブロックは、A線維の刺激閾値を超えるパラメータを有する。したがって、神経刺激と枯渇ブロック刺激との組合せは、B線維のみへの有効な刺激を生じさせ、その理由は、B線維のみが各シナプス間隙をわたって連絡することができるためである。図9Bは、中刺激閾値を有する中サイズB線維及び小閾値を有する小サイズC線維の選択的刺激を示す。神経刺激は、A線維、B線維、及びC線維の刺激閾値を超えるパラメータを有し、枯渇ブロックは、A線維の刺激閾値を超えるパラメータを有する。したがって、神経刺激及び枯渇ブロックの組合せは、B線維及びC線維のみへの有効な刺激を生じさせ、その理由は、B線維及びC線維のみが各シナプス間隙をわたって連絡することができるためである。図9Cは、小閾値を有する小サイズC線維の選択的刺激を示す。神経刺激は、A線維、B線維、及びC線維の刺激閾値を超えるパラメータを有し、枯渇ブロックは、A線維及びB線維の刺激閾値を超えるパラメータを有する。したがって、神経刺激及び枯渇ブロックの組合せは、C線維のみへの有効な刺激を生じさせ、その理由は、C線維のみが各シナプス間隙をわたって連絡することができるためである。
図10は、神経刺激によって捕捉される神経中の第1の組の軸索1030と、枯渇ブロック刺激によって捕捉される第2の組の軸索1031とを示し、第2の組の軸索は第1の組の軸索のサブセットである。神経刺激は、第1の組の軸索の刺激閾値よりも大きく、したがって、活動電位により大きな第1の組の軸索を伝搬させる。しかし、枯渇ブロックは、軸索のサブセットのシナプス前終末が、各シナプス間隙をわたって伝導しないようにし、第1の組の軸索のうちの残りの軸索のみが、シナプス間隙をわたる連絡において有効である。
図11A〜図11Mは、枯渇ブロック刺激を使用して選択的神経刺激を送達するのに使用し得る電極構成の幾つかの例を示す。これらの例は、可能な全ての電極構成を示すことを意図されていない。電極構成は、双極構成又は単極構成であり得る。さらに、電極の間隔は、示される間隔から可変である。また、これらの例は、必ずしも神経刺激と枯渇ブロック刺激との間のタイミングを表すことを意図されない。幾つかの実施形態は、枯渇ブロック刺激(例えば、200Hz)を中断して、神経刺激(例えば、20Hz)が送達される時間窓を提供し、したがって、2つ以上の陰極及び/又は2つ以上の陽極を使用した2つの信号の同時送達を回避し得る。信号の極性は切り換え得る。幾つかの実施形態は、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方で陰極を共有し得、幾つかの実施形態は、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方で陽極を共有し得る。
図11Aは、第1の電極1132及び第2の電極1133が、神経刺激1130の送達に使用されるとともに、枯渇ブロック1131の送達にも使用される電極構成を示す。幾つかの他の電極構成を使用して刺激することが他よりも適する幾つかの解剖学的位置があり得る。これらの幾つかを以下に示す。幾つかの実施形態は、リード上の利用可能な電極の中から刺激ベクトルを電子的に切り換えるように構成し得る。図11Bは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の送達に使用され、第1の電極1132及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用される。図11Cは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用され、第2の電極1133及び第3の電極1134は枯渇ブロック1131の送達に使用される。図11Dは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第2の電極1133は、枯渇ブロック1131の送達に使用され、第2の電極1133及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用される。図11Eは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第2の電極1133及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用され、第1の電極1132及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の送達に使用される。図11Fは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の提供に使用され、第2の電極1133及び第3の電極1134は、神経刺激1130の提供に使用される。図11Gは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第2の電極1133は、神経刺激1130の送達に使用され、第1の電極1132及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の送達に使用される。図11Hは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第2の電極1133は、枯渇ブロック1131の送達に使用され、第3の電極1134及び第4の電極1135は、神経刺激1130の送達に使用される。図11Iは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第2の電極1133は、神経刺激1130の送達に使用され、第3の電極1134及び第4の電極1135は、枯渇ブロック1131の送達に使用される。図11Jは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第4の電極1135は、神経刺激1130の送達に使用され、第2の電極1133及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の送達に使用される。図11Kは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第4の電極1135は、枯渇ブロック1131の送達に使用され、第2の電極1133及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用される。図11Lは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第3の電極1134は、枯渇ブロック1131の送達に使用され、第2の電極1133及び第4の電極1135は、神経刺激1130の送達に使用される。図11Mは、第1の電極1132と、第2の電極1133と、第3の電極1134と、第4の電極1135とを含む電極構成を示し、この構成では、第1の電極1132及び第3の電極1134は、神経刺激1130の送達に使用され、第2の電極1133及び第4の電極1135は、枯渇ブロック1131の送達に使用される。
図12は、限定ではなく例として、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方の同時送達を示す。例えば、様々な実施形態は、B線維での活動電位を引き起こす治療波形と同時にA線維をブロックするブロック波形を送達可能な刺激器を提供し得る。より具体的な例では、A線維は、A線維の刺激閾値に達するのに十分であるが、B線維の刺激閾値に達するには十分ではない低電流振幅において200Hz周波数を使用してブロックし得る。そのような刺激信号は、有効にA線維をブロックし得るが、B線維はブロックしない。B線維において活動電位を駆動する治療は、20Hz且つA線維及びB線維の両方の刺激閾値に達するのに十分な高電流振幅で送達し得る。A線維は、低電流振幅での200Hz周波数においてシナプス前終末枯渇ブロックによってブロックされるため、活動電位は20Hz信号によって駆動されない。結合波形は、一方の双極電極上にあり得る。互いと比較して、20Hz信号は、比較的高振幅で且つ比較的低周波数を有し、したがって、高振幅低周波(HALF)信号と呼ばれ得、200Hz信号は比較的小さな振幅且つ比較的高周波数を有し、したがって、小振幅高周波(SAHF)信号と呼ばれ得る。治療用B線維の活性化は、HRの低減に繋がり、一方、不要なA線維のロックは、喉頭振動を止める。
図13は、限定ではなく例として、同時の神経刺激及び枯渇ブロック刺激の断続的送達を示す。断続的送達は、刺激オフ時間によって隔てられた刺激オン時間を含む。刺激オン時間は、プログラムされた開始時間及びプログラムされた停止時間又はプログラムされた開始時間及びプログラムされた持続時間等のプログラムされた時間に生じるように、スケジュールし得る。断続的送達の例としては、10秒オン/50秒オフが挙げられる。例として、刺激オン期間は、1/4秒〜150秒の範囲内の時間期間であり得、刺激オフ期間は、1秒〜150秒の時間期間にわたる。枯渇ブロックの発現は、短い期間のバーストを可能にするのに十分に素早い。刺激オン時間は、事象の検出によってトリガーし得る。事象検出は、患者コマンド又は臨床医コマンドの受信であり得る。事象検出は、検知パラメータから特定される事象検出であり得る。例えば、図13の内因性心臓信号の例によって示されるように、刺激は、心周期の特定の部分が、心拍、ECG、心音、又は血圧等の検知パラメータを使用して検出されるとき、トリガーし得る。事象検出に応答して送達される刺激の持続時間は、プログラムされた固定事象であってもよく、又は事象検出若しくは事象検出の頻度に基づいて可変であってもよい。例えば、刺激を送達する時間窓は、刺激速度の増大に応答して短縮し得る。
図14は、限定ではなく例として、選択的神経線維刺激システムの例を示す。システム1436は、刺激電極1437に接続し得る。システム1436は、刺激器1438と、刺激器1438に動作可能に接続されて、送達される刺激を制御するコントローラ1439とを含み得る。コントローラ1439は、枯渇ブロックコントローラ1440と、神経刺激コントローラ1441とを含み得、刺激器1438は、枯渇ブロック刺激器1442と、神経刺激器1443とを含み得る。枯渇ブロックコントローラ1440は、枯渇ブロック刺激器1442に動作可能に接続されて、枯渇ブロック刺激の送達を制御し得、枯渇ブロック刺激は、約100Hz〜約1kHzの範囲内の周波数を有する。この枯渇ブロック刺激は、幾つかの選択的神経線維刺激実施形態では、SAHFと呼ばれ得る。神経刺激コントローラ1441は、神経刺激器1443に動作可能に接続されて、神経刺激の送達を制御し得、神経刺激は、約0.25Hz〜約50Hzの範囲内の周波数であり得る。例えば、神経刺激信号の周波数は約20Hzであり得る。この神経刺激信号は、HALF信号と呼ばれ得る。
図15は、限定ではなく例として、選択的神経線維刺激システムの例を示す。システム1536は、図14と類似点を有し、枯渇ブロックコントローラ1540と、神経刺激コントローラ1541とを含むコントローラ1539を含むとともに、図14に示され説明されるものと同様の枯渇ブロック刺激器1542及び神経刺激器1543とを含む刺激器1538を更に含む。コントローラ1539は、刺激のタイミングを制御するように構成されるタイミングモジュール1544を更に含み得る。タイミングは、様々な方法で制御し得る。タイミングモジュールは、枯渇ブロック刺激及び神経刺激の両方のタイミングを制御するように構成し得る。例えば、タイミングモジュールは、枯渇ブロック及び神経刺激の両方の開始時間及び停止時間を制御し得る。タイミングモジュールは、枯渇ブロック及び神経ブロックの両方の開始時間及び持続時間を制御し得る。タイミングモジュールは、枯渇ブロック刺激への変更のタイミング又は神経刺激への変更のタイミングを制御し得る。例えば、タイミングモジュールは、第1の枯渇ブロック刺激周波数から第2の枯渇ブロック刺激周波数への変更を制御し得る。タイミングモジュールは、枯渇ブロック刺激及び神経刺激間の相対的なタイミングを制御し得る。例えば、枯渇ブロック刺激は、神経刺激のタイミングに依存し得る。さらに、枯渇ブロック刺激は中断されて、神経刺激のパルスが送達される窓を提供し得る。枯渇ブロックは、神経刺激と同時に開始されてもよく、又は神経刺激開始のわずかに前若しくはわずかに後に開始してもよい。例えば、表2によれば、200Hz信号枯渇ブロック信号は、神経刺激の1秒未満前に開始し得、それにより、神経刺激が開始される前に90%ブロックが達成される。1545において一般的に示されるように、タイミングは、臨床医若しくは患者からのコマンド若しくは入力に基づいてもよく、又は限定ではなく例として、呼吸センサ、血圧センサ、血流センサ、若しくは心周期についての情報及び心拍情報を含み得る心臓センサ等の生理学的センサに基づいてもよい。
コントローラ1539は、滴定制御モジュール1546を更に含み得る。滴定制御モジュールは使用されて、枯渇ブロック刺激を調整して、枯渇ブロック刺激によって捕捉される軸索を制御し、神経刺激を調整して、神経刺激によって捕捉される軸索を制御し、又は枯渇ブロック刺激及び神経刺激の両方を調整し得る。刺激の振幅が調整され、パルス幅が調整され、又は振幅及びパルス幅の両方が調整されて、捕捉される軸索を制御し得る。
滴定は、本明細書で使用される場合、枯渇ブロック刺激、神経刺激、又は枯渇ブロック刺激及び神経刺激の両方であり得る刺激の投与量を、治療的又は予防的に有効であるレベルまで調整するプロセスを指す。有効な枯渇ブロック刺激は、所望の軸索の捕捉に有効な振幅及びパルス幅を有する枯渇ブロック周波数(例えば、100Hz〜1kHz)での刺激であり得る。有効な神経刺激は、所望の軸索の捕捉に有効な振幅及びパルス幅を有する神経刺激周波数(例えば、0.25Hz〜50Hz、約20Hz等)での刺激であり得る。さらに、神経刺激は、所望の治療の提供に有効な刺激量を提供する「投与量」成分も有する。投与量は、所与の時間フレームでの神経刺激の量又は強度を含むとともに、神経刺激が時間期間にわたって送達される回数も含む。神経刺激の強度は、振幅、デューティサイクル、持続時間、及び又は神経刺激の周波数、又は時間期間にわたり生じる神経刺激事象の数等のパラメータを調整することにより、調整し得る。滴定手順は、移植処置中、経過観察臨床通院中、又は患者が臨床的設定から離れて外来である間、行われ得る。滴定は、医師により制御されるか、又は装置プログラミングに基づいて自動的に制御し得る。一般に1545に示されるように、滴定は、臨床医若しくは患者からのコマンド若しくは他の入力に基づいてもよく、又は限定ではなく例として、分時換気量センサ、血圧センサ、血流センサ、インピーダンスセンサ、加速度計、筋電図(EMG)センサ、又は神経電気(EKG)を検出するように構成されたセンサ等の心周期についての情報及び心拍情報を含み得る心臓センサ等の生理学的センサに基づいてもよい。心臓センサは、例えば、電極及び心音センサを含み得る。
図13に示されるように、神経刺激及び/又は枯渇ブロックは断続的であり得る。図16は、例として、断続的神経刺激(INS:intermittent neural stimulation)の表現を示す。図は、1つの刺激パルス又は1組のグループ化された刺激パルス(すなわち、バースト1647)が送達される、刺激がオンである間隔と、刺激が送達されない、刺激がオフである間隔とを交互にする神経刺激の時間過程を線図で示す。したがって、例えば、幾つかの実施形態は、図16に示される神経刺激バースト内で複数の単相又は二相パルスを送達する。バースト1647内で送達されるパルスは、パルス周波数で送達し得る。これらのパルスは振幅も有する。パルス周波数及びパルス振幅の両方が、神経刺激治療の投与に影響する。刺激オン間隔の持続時間は、刺激持続時間又はバースト持続時間と呼ばれることがある。バースト持続時間も、神経刺激治療の投与に影響する。刺激オン間隔の開始は、時間参照点NS事象である。連続したNS事象間の時間間隔は、INS間隔であり、この間隔は刺激期間又はバースト期間1648と呼ばれることがある。バースト期間1648又は時間期間にわたって生じる神経刺激事象数も、神経刺激の投与に影響する。断続的である神経刺激の用途では、刺激持続時間(すなわち、オン間隔)は、神経刺激が適用されている刺激期間(すなわち、INS間隔)よりも短い。INSのオフ間隔の持続時間は、オン間隔及びINS間隔の持続時間によって決まる。INS間隔に対するオン間隔の持続時間(例えば、比率として表される)は、INSのデューティサイクルと呼ばれることがある。
医師又は臨床医は、1つ又は複数の神経刺激パラメータの調整を制御して、刺激強度を制御し得る。例えば、刺激電極が迷走神経又は他の神経刺激標的近くに移植される移植処置中、医師又は臨床医は、刺激パラメータを調整して、刺激強度を調整し、電極を適宜位置決めし、所望の生理学的効果を提供する神経標的の閾値刺激を提供するように刺激をプログラムし得る。医師又は臨床医は、外来通院中、移植可能な神経刺激器を再プログラムし、電極の移動、電極/組織界面でのインピーダンスの変化等を考慮し得る。外来通院中、医師又は臨床医は、1つ又は複数の神経刺激パラメータの調整を制御して、刺激強度を制御し、所望の生理学的反応を提供する神経刺激強度を決定し得る。滴定ルーチンは、外来患者に移植された移植可能な神経刺激装置の自動プロセスであることができる。自動滴定ルーチンは、患者又は医師若しくは臨床医からの信号により、手動でトリガーすることができる。自動滴定ルーチンは、プログラミングスケジュール又は事象検知によって自動的にトリガーすることができる。
図17は、様々な実施形態による、図14のコントローラ1439又は図15のコントローラ1539に組み込み得るメモリ1749を示す。メモリ1749は、命令1750を含み得、定義されたパラメータセット(例えば、パラメータセット1〜パラメータセットN)を通して漸進的にステップアップすることにより、漸増ルーチンを制御する刺激制御回路によって動作可能であり、各セットは、刺激治療の刺激投与量又は強度を増分的に変更(増大又は低減)する。メモリは、複数の神経刺激パラメータセットを含み得、各セットは、神経刺激のパラメータ値の一意の組合せを含み、パラメータ値の一意の各組合せは、ある強度レベルで神経刺激治療を提供するように定義される。命令は、治療が所望の長期強度になるまで、治療の強度を変更(増大又は低減)するスケジュールに従って、複数の神経刺激パラメータセットを経る命令を含む。様々な実施形態は、所望の治療強度レベルを提供する治療パラメータ(例えば、振幅、パルス幅、デューティサイクル)の望ましい組合せを自動的に見つける神経刺激ルーチンを提供する。
図18は、図15の滴定制御モジュール1546の部分であり得る治療滴定モジュール1851の実施形態を示す。様々な実施形態によれば、コントローラは、刺激特徴1852の任意の1つ又は任意の組合せを設定又は調整するように構成される。刺激特徴の例としては、刺激信号の振幅、周波数、極性、及び波形形態が挙げられる。刺激出力回路の幾つかの実施形態は、所定の振幅、形態、パルス幅、及び極性を有する刺激信号を生成するように構成され、制御信号に応答して、振幅、波形形態、パルス幅、及び極性のうちの少なくとも1つを変更するように更に構成される。神経刺激回路の幾つかの実施形態は、所定の周波数を有する刺激信号を生成するように構成され、コントローラからの制御信号に応答して、刺激信号の周波数を変更するように更に構成される。
治療滴定モジュール1851は、電極設定若しくは電極構成を変更するか、又は神経標的に使用される神経電極の変更若しくは神経刺激の神経標的の変更等の刺激サイト1853を変更するようにプログラムすることができる。例えば、異なる電極が神経標的の刺激に使用することができ、異なる電極が、異なる神経標的の刺激に使用することができる。神経標的に望ましい低刺激閾値は、その神経標的を刺激する異なる電極設定/構成を使用して特定し得る。異なる神経標的は、右迷走神経、左迷走神経、その分岐、圧受容器領域、化学受容器領域、頸動脈洞、及び頸動脈洞枝等の異なる神経経路を含むことができる。異なる神経標的は、神経経路に沿って異なる位置を含み得る(例えば、頸部迷走神経に沿ってより多くの尾側又はより多くの頭側標的)。自律神経標的は、求心性経路及び遠心性経路を含むことができ、交感神経及び副交感神経を含むことができる。刺激は、神経連絡を刺激する刺激及び神経連絡を阻害する刺激を含むことができる。したがって、交感神経反応を呼び起こす刺激は、交感神経刺激及び/又は副交感神経阻害を含むことができ、副交感神経反応を呼び起こす刺激は、副交感神経刺激及び/又は交感神経阻害を含むことができる。
治療滴定モジュール1851は、刺激ベクトル1854を変更するようにプログラムすることができる。ベクトルは、電極間の刺激ベクトル及びトランスデューサの刺激ベクトルを含むことができる。例えば、2つの電極間の刺激ベクトルは、逆にすることができる。電極のより複雑な組合せが使用されて、電極間でのより潜在的な刺激ベクトルを提供することができる。
治療滴定モジュール1851は、メモリに記憶された、刺激ルーチン又はスケジュール1855等の刺激命令に従って神経刺激を制御するようにプログラムすることができる。神経刺激は、刺激バーストで送達することができ、刺激バーストは、所定の周波数での刺激パルスのトレインである。刺激バーストは、バースト持続時間及びバースト間隔によって特徴付けることができる。バースト持続時間は、バーストが続く時間の長さである。バースト間隔は、連続したバーストの開始間の時間によって識別することができる。プログラムされたバーストパターンは、バースト持続時間とバースト間隔との任意の組合せを含むことができる。1つのバースト持続時間及び1つのバースト間隔を有する単純なバーストパターンが、プログラムされた期間にわたり定期的に継続することができるか、又はより複雑なスケジュールに従うことができる。プログラムされたバーストパターンは、より複雑であり、複数のバースト持続時間及び複数のバースト間隔シーケンスで構成されることができる。プログラムされたバーストパターンは、デューティサイクルによって特徴付けることができ、デューティサイクルは、固定時間にわたる神経刺激オンと、固定時間にわたる神経刺激オフとの反復サイクルを指す。デューティサイクルは、オン時間及びサイクル時間によって指定され、したがって、オン時間/サイクル時間の単位を有することができる。幾つかの実施形態によれば、制御回路は、刺激信号の各パルスを開始することにより、刺激回路によって生成される神経刺激を制御する。幾つかの実施形態では、刺激制御回路は、刺激信号パルストレインを開始し、刺激信号は、所定の周波数及びバースト持続時間のパルスのトレインを生成することにより、コントローラ回路からのコマンドに応答する。パルストレインの所定の周波数及びバースト持続時間は、プログラム可能であることができる。パルストレイン中のパルスのパターンは、1つのバースト持続時間及び1つのバースト間隔を有する単純なバーストパターンであることができるか、又は複数のバースト持続時間及び複数のバースト間隔を有するより複雑なバーストパターンを辿ることができる。幾つかの実施形態では、刺激制御回路は、刺激出力回路を制御して、神経刺激セッションを開始し、神経刺激セッションを終了する。制御回路の制御下での神経刺激セッションのバースト持続時間は、プログラム可能であることができる。コントローラは、1つ若しくは複数の検知パラメータ又は神経刺激の停止が望ましいと判断される任意の他の条件により生成され得る等の割り込み信号に応答して、神経刺激セッションを終了することもできる。装置は、メモリに記憶された、プログラムされた治療スケジュール又はルーチンを含み得、プログラム可能な刺激スケジュールの実行に使用することができるクロック又はタイマを更に含み得る。例えば、医師は、日時に基づいて治療の日毎/週毎のスケジュールをプログラムすることができる。刺激セッションは、第1のプログラムされた時間に開始することができ、第2のプログラムされた時間に終了することができる。様々な実施形態は、ユーザによりトリガーされた信号に基づいて、刺激セッションを開始及び/又は終了する。様々な実施形態は、検知されたデータを使用して、刺激セッションをイネーブル及び/又はディセーブルする。様々な実施形態によれば、刺激スケジュールは、神経刺激治療が送達される時間間隔又は期間を指す。スケジュールは、開始時間及び終了時間又は開始時間及び持続時間によって定義することができる。様々なスケジュールが治療を定期的に送達する。限定ではなく例として、装置に治療スケジュールをプログラムして、治療を午前零時から午前2時まで毎日送達するか、治療を5時間置きに1時間、送達するか、治療を1日につき2時間送達するか、又はより複雑な時間表に従って治療を送達することができる。様々な装置実施形態が、運動期間の検知、患者の休息又は睡眠、特定の位置/姿勢、低心拍レベル等の許可条件次第のプログラムされたスケジュールに従って治療を適用する。例えば、刺激は、刺激を可能にする事象の検出に基づいて、心周期と同期させることができる。治療スケジュールは、刺激がいかに送達されるかを指定することもできる。
図19は、各電極構成での閾値を見つけるルーチンの実施形態を示す。示されるルーチンは、時間期間にわたり神経刺激治療の強度を増大させる。強度は、増分1956によって増大され、増分1956は、必ずしも等しい増分でなくてもよい。示される実施形態では、閾値特定ルーチン1957が実行されて、喉頭振動反応等の神経刺激への下限生理学的反応を検出する。喉頭振動は、滴定プロセス中に望ましいことがあり、その理由は、喉頭振動が迷走神経の捕捉を確認し、この値が、下限を超える神経刺激に適切な刺激を決定するのに使用することができるためである。様々な実施形態では、副作用検出ルーチン1958が実行されて、神経刺激への上限生理学的反応(例えば、咳)を検出する。したがって、例えば、幾つかの実施形態は、神経刺激強度を下限(例えば、喉頭振動)と上限(例えば、咳)との間に設定し得、枯渇ブロック刺激強度を下限(例えば、喉頭振動)のわずかに上であるが、神経刺激強度よりも下に設定し得る。そのような閾値ルーチンは、上限(例えば、咳)を超える副作用を回避するとともに、枯渇ブロックなしでは生じる下限を下回る副作用(例えば、喉頭振動)を回避もする。幾つかの実施形態は、時間期間にわたってNCT治療の強度を低減して、神経刺激への望ましい又は望ましくない生理学的反応を検出する。
幾つかの実施形態は、センサを使用して、下限(例えば、喉頭振動)及び上限(例えば、咳又は横隔神経捕捉)を検出する。センサのうちの少なくとも幾つかは、標的神経の刺激に使用される移植可能な神経刺激器等の移植可能な装置の一部であり得る。幾つかの実施形態では、センサのうちの少なくとも幾つかは、プログラマ/PSA(ペーシングシステム分析器)の一部である。センサの例としては、圧力センサ、加速度計、分時換気量センサ、インピーダンスセンサ、神経電気(EKG)を検出するように構成されたセンサ、筋電図(EMG)を検出するように構成されたセンサ、及び血圧センサが挙げられる。幾つかの実施形態は、患者又は医師からのフィードバックを使用する。例えば、痛み評価又は他の尺度を有するクリッカーパッドが使用されて、患者が、刺激が喉頭振動又は他の望ましい反応を提供するか否か及び刺激が咳、横隔神経捕捉、又は他の望ましくない生理学的反応を刺激に対して提供するか否かについてのフィードバックを提供できるようにする。アルゴリズムは、プログラマ、移植可能な装置、患者管理システム内等の、プログラマ及び/又は移植可能な装置と通信するように構成された外部装置に実装することができる。
幾つかのシステム実施形態は、喉頭振動を検知して、迷走神経の捕捉を確認し、より低い刺激閾値を有する軸索を捕捉するように選択された強度(例えば、振幅)で迷走神経に枯渇ブロックを送達して、喉頭振動をブロックするとともに、枯渇ブロック刺激よりも高くなるように選択された強度(例えば、振幅)で神経刺激を送達して、より高い刺激閾値を有する軸索を捕捉し、送達される治療に所望の生理学的反応を提供するように設計し得る。捕捉の確認は、移植処置中に実行し得る。心不全、高血圧、又は他の慢性症状に対して長期治療を提供する、外来患者に移植されたシステム等の幾つかの移植可能なシステムは、枯渇ブロックを中断して、移植可能なシステムが迷走神経を捕捉していることを確認するように構成し得る。確認プロセスは、臨床医若しくは患者からのコマンドに応答して、又はスケジュールに従って開始し得る。
捕捉の確認は、外部センサの使用、患者入力、又は臨床医の観測を含め、幾つかの方法で達成し得る。例えば、臨床医は、指を喉頭上に配置して、喉頭振動を感じ得る。捕捉の確認に使用し得るシステムの一例は、図20に示され、図20は一般に、右迷走神経2059と、右迷走神経から分岐して、気管2062の近くの喉頭筋2061を支配する反回神経2060とを示す。左迷走神経(図示せず)及び左迷走神経から分岐して、気管の近くの喉頭筋を支配する反回神経(図示せず)もある。喉頭筋での活動のEMG検知を通して迷走神経の捕捉を検証する能力は、右及び/又は左迷走神経刺激と併用し得る。反回神経は、喉頭筋の尾側の位置で迷走神経から分岐し、次に、頭側で再びループして戻り、喉頭筋を支配する。このループは、迷走神経刺激パルスの時間と喉頭筋が活性化する時間との間に待ち時間を提供する比較的長い神経経路である。この待ち時間により、喉頭活性化は、刺激アーチファクトによって鈍くならずに、パルス後にEMGセンサによって測定することができる。さらに、ループは、迷走神経刺激場所と喉頭筋との距離を調整する選択肢を提供する。例えば、図20に示される実施形態では、刺激電極は、反回神経が迷走神経から分岐するポイント2064の比較的近くの刺激場所2063において迷走神経を刺激するように配置し得、EMGセンサは、喉頭筋の近傍のEMG検知場所2065において迷走神経に沿って位置決めされて、喉頭筋での活動の検出を改善し、刺激パルスからの干渉の潜在性を低減することができる。刺激電極及びEMGセンサは、同じリード上にあり得る。喉頭筋を支配する10μmA線維での伝導率が0.17ms/cmであると仮定し、反回神経に入る迷走神経の刺激場所から喉頭筋まで戻る移動距離が50cm〜60cmであると仮定すると、喉頭筋は、迷走神経が刺激された後、約8.33ms〜10msで活性化する。したがって、迷走神経刺激に対する喉頭筋の反応は、比較的長い移動距離により、比較的長い待ち時間を有する。刺激場所から喉頭筋までの実際の距離は、刺激場所の位置と、患者の特定の生体構造とに依存する。例えば、より長い首を有する背が高い人ほど、長い反回神経を有し得る。患者固有のテンプレートが作成されて、患者の特定の生体構造差が考慮される。
図21〜図30は、限定ではなく例として、枯渇ブロック刺激を使用して実行し得る幾つかの選択的線維刺激プロセスを示す。図21は、神経刺激(例えば、HALF刺激)を滴定して、刺激への所望の反応を得るプロセスの例を示す。2166において、選択的線維刺激アルゴリズムが開始され得る。2167において、心拍等の生理学的パラメータがモニタされ得、選択的線維刺激アルゴリズムは、モニタされているパラメータが許容可能である限り、引き続き実施され得る。神経刺激(例えば、HALF刺激)は、モニタされているパラメータが許容可能ではない場合、適宜滴定され、それにより、調整された神経刺激は再び、モニタされているパラメータを許容可能なものにする。
図22は、治療送達を検証するプロセスの例を示す。2269において、選択的線維刺激が、治療の一環として送達される。一般に2270に示されるように、システムは、治療送達を検証するときであるか否かをチェックして調べる。検証プロセスは、臨床医によって開始されてもよく、患者によって開始されてもよく、又はシステムによって自動的に開始されてもよい。検証プロセスを自動的に開始した幾つかの実施形態は、患者が検証プロセスをディセーブルできるように構成し得る。検証するときである場合、2271において、枯渇ブロックは一時的に中止し得る。神経刺激も低減されて、枯渇ブロックが中止されたときに生じ得る患者の不快さを低減し得る。2272において、患者はモニタされて、神経刺激がなお神経を捕捉していることを検証し得る(例えば、「システムチェック」)。例えば、幾つかの実施形態は、喉頭振動をチェックして、迷走神経刺激を確認し得る。検証プロセスが、2273において完了した後、プロセスは、選択的線維刺激の送達に戻り得る。幾つかの実施形態は、治療を自動的にイネーブルする。
図23は、神経刺激治療を漸増するプロセスの例を示す。異なる患者は、神経刺激への異なる許容性レベルを有し得る。さらに、患者は、治療の強度が所望の強度レベルで開始される場合、治療に耐えることができないが、強度が数日、数週間、又は数ヶ月のオーダで長期間にわたって増大される場合、神経刺激に慣れ、治療によりよく耐えることができることがある。2374において、選択的神経刺激は治療の一環として送達される。一般に2375に示されるように、システムは、治療を滴定するときであるか否かをチェックして調べる。滴定プロセスは、臨床医によって開始されてもよく、患者によって開始されてもよく、又はシステムによって自動的に開始されてもよい。滴定プロセスは実行し得、その場合、2376において、枯渇ブロック刺激は中止し得、刺激強度は増分され、次に、患者が枯渇ブロックなしで、増大された刺激に耐えるまで送達される。このプロセスは、患者がもはや、枯渇ブロックなしでは刺激に耐えることができなくなるまで続け得、患者が枯渇ブロックなしで刺激に耐えることができなくなった時点で、刺激の強度は、患者が枯渇ブロックなしで耐えることができたレベルに減分し得る。枯渇ブロックが開始され得、2377において、漸増プロセスが続き得、刺激の強度は増分され、次に、患者が枯渇ブロックを用いて、増大した刺激に耐えるまで送達される。このプロセスは、患者がもはや、枯渇ブロックを用いて刺激に耐えることができなくなるまで続け得、患者がもはや、枯渇ブロックを用いて刺激に耐えることができなくなった時点で、刺激の強度は、患者が枯渇ブロックを用いて耐えることができたレベルに減分し得る。システムは、これらの耐性レベル(枯渇ブロック刺激あり又はなし)を使用して、神経刺激強度を設定し、治療中に強度が調整可能な場合、神経刺激強度を制限するように構成し得る。
図24は、枯渇ブロック刺激を調整するプロセスの例を示す。2481において、選択的線維刺激は治療の一環として送達され、次に、プロセスは、2482において、選択的線維刺激に耐えられるか否かを判断する。刺激が耐えられるものである場合、2483に示されるように、枯渇ブロック刺激パラメータは記憶し得、神経刺激の強度を増分する漸増プロセスが、神経刺激が耐えられないものになるまで続けられ得る。2482において、刺激が耐えられるものではない場合、プロセスは、2484において、枯渇ブロックパラメータ(例えば、周波数、パルス幅、及び/又は振幅)を変更し得、変更された枯渇刺激パラメータを用いて刺激が耐えられるものであるか否かを判断し得る(2485)。刺激が耐えられるものではない場合(2485)、且つ枯渇ブロック刺激の変更に利用可能な選択肢がある場合(2486)、プロセスは2484に戻り、枯渇ブロックパラメータを変更し得る。プロセスは、枯渇ブロック刺激の更なる変更に利用可能な選択肢がなくなる(2486)まで継続し得、選択肢がなくなった時点で、枯渇ブロック特徴はディセーブルし得る(2487)か、又はプロセスは、枯渇ブロック刺激を用いての神経刺激が耐えられるものになるまで(2483)、継続し得る。2483において、枯渇ブロック刺激パラメータは記憶され得、神経刺激の強度を増分する漸増プロセスが、神経刺激が耐えられなくなるものになるまで、継続し得る。
図25は、枯渇ブロック刺激を実施するプロセスの例を示す。2588において、枯渇ブロック刺激は、第1の組の刺激パラメータを使用して実施し得る。ある時間期間が経過した後(2589)、枯渇ブロック刺激は、第2の組の刺激パラメータを使用して実施し得る(2590)。限定ではなく例として、枯渇ブロック刺激の第1の組のパラメータは、比較的高い周波数(例えば、400Hz)を含み、高速ブロックを提供し得、枯渇ブロック刺激の第2の組のパラメータは、比較的低い周波数(例えば、200Hz)を含み、枯渇ブロック刺激の維持中、エネルギー消費を低減し得る。
図26は、神経刺激の投与量を送達するプロセスの例を示す。2691において、システムは、神経刺激治療の投与に所望の時間があるか否かを判断する。神経刺激治療の投与は臨床医によって開始されてもよく、患者によって開始されてもよく、又はシステムによって自動的に開始されてもよい。神経刺激治療を投与するときである場合、システムは、2692において、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方を含め、選択的神経刺激を開始する。2693において、投与に所望の量の刺激が送達されたか否かが判断され得る。投与が完了した場合、2694において、神経刺激は停止し得、プロセスは2691に戻り、次の投与時間を待ち得る。投与が完了していない場合、2695において、神経刺激は継続し得る。
図27は、神経刺激及び枯渇ブロック刺激を設定するプロセスの例を示す。2795において、神経刺激は送達し得、漸増プロセス(2796及び2797)が、所望の生理学的反応に達するまで実施し得る。プロセスは、枯渇ブロック刺激を送達すること(2798)によって続き得る。所望の生理学的反応の例は、迷走刺激への所望の心拍又は血圧反応である。2799において、枯渇ブロック刺激が望ましくないほど所望の生理学的反応に影響しない場合、神経刺激は2700において継続し得る。2799において、枯渇ブロック刺激が望ましくないほど、所望の生理学的反応に影響する場合、2701において、神経刺激は、2795及び2796において調整され得るか、又は枯渇ブロックが調整され得、2798において、調整された枯渇ブロックが送達され得る。
図28は、2組以上の枯渇ブロック刺激パラメータを使用して神経刺激の投与量を送達するプロセスの例を示す。2802において、枯渇ブロック(例えば、SAHF)及び神経刺激(例えば、HALF)は開始し得る。枯渇ブロック刺激は、第1の組の刺激パラメータを使用して実施し得る。ある時間期間が経過した後(2803)、第1の組の刺激パラメータを使用した枯渇ブロック刺激は停止し得、枯渇ブロック刺激は第2の組の刺激パラメータを使用して実施し得る(2804)。限定ではなく例として、枯渇ブロック刺激の第1の組のパラメータは、比較的高い周波数(例えば、400Hz)を含み、高速ブロックを提供し得、枯渇ブロック刺激の第2の組のパラメータは、比較的低い周波数(例えば、200Hz)を含み、枯渇ブロック刺激の維持中、エネルギー消費を低減し得る。2805において、投与量の所望量の刺激が送達されたか否かが判断され得る。刺激は、投与が完了するまで続けられる。投与が完了した場合、2806において、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方は停止され得、プロセスは2802に戻り、治療の次の投与のトリガーを待ち得る。
図29は、選択的神経刺激を実施するプロセスの例を示す。2907において、枯渇ブロック刺激は、第1の組の刺激パラメータ(例えば、SAHF1)を使用して実施し得る。時間期間が経過した後(2908)、第1の組の刺激パラメータを使用した枯渇ブロック刺激は停止し得、枯渇ブロック刺激は第2の組の刺激パラメータ(例えば、SAHF2)を使用して実施し得る(2909)。限定ではなく例として、枯渇ブロック刺激の第1の組のパラメータは、比較的高い周波数(例えば、400Hz)を含み、高速ブロックを提供し得、枯渇ブロック刺激の第2の組のパラメータは、比較的低い周波数(例えば、200Hz)を含み、枯渇ブロック刺激の維持中、エネルギー消費を低減し得る。神経刺激(例えば、HALF)2910は、枯渇ブロックが第1の組のパラメータを用いて開始されるときに開始することもでき、枯渇ブロックが第1の組のパラメータを用いて開始された後であるが、第2の組のパラメータを使用して実施される前に開始することもでき、又は枯渇ブロックが第2の組のパラメータを使用して実施された後に開始することもできる。2911において、投与に所望量の刺激が送達されたか否かが判断され得る。刺激は、投与が完了するまで続け得る。投与が完了した場合、2912において、神経刺激及び枯渇ブロック刺激の両方は停止し得、プロセスは2907に戻り、治療の次の投与のトリガーを待ち得る。
図30は、選択的神経刺激を滴定するプロセスの例を示す。3013において、枯渇ブロック刺激を用いる神経刺激治療が、耐えられたレベルで送達され得る。滴定プロセスは、臨床医によって開始されてもよく、患者によって開始されてもよく、又はシステムによって自動的に開始されてもよい。3014において、滴定するときである場合、漸増プロセス等の滴定プロセスが実施されて、刺激の新しい耐性閾値を特定し得る(3015)。プロセスは3013に戻り、刺激の新しい耐性閾値に対応する設定で、選択的神経刺激の送達を継続し得る。枯渇ブロックでの滴定プロセスの目標は、必要な限り大きな枯渇ブロックを維持しながら、可能な限り低い電流で枯渇ブロックを送達する(電池を節減するために)ことを含み得る。神経刺激での滴定プロセスの目標は、可能な限り大きな刺激を提供して、可能な限り多くの所望の軸索を捕捉し、過度のエネルギーが多数の追加の所望の軸索の捕捉に繋がらない場合、過度のエネルギー消費を回避することを含み得る。
本趣旨は、心不全での迷走神経刺激を参照して説明された。しかし、本趣旨はそのように限定されない。本趣旨は、迷走神経の刺激又は他の神経標的の刺激を含む他の治療に対して実施することもできる。そのような治療の例としては、クローン病、関節リウマチ、多臓器不全(すなわち、スペイン風邪、大きな火傷)等の炎症性疾患での迷走神経刺激、てんかん、鬱病、摂食障害、及び痛みでの迷走神経刺激、痛み及び心不全での脊髄刺激、圧受容器刺激、高血圧での神経刺激、末梢神経刺激、偏頭痛、痙攣、喘息、又は慢性閉塞性肺疾患での後頭神経刺激が挙げられるが、これらに限定されない。
図31〜図34は、迷走刺激を提供するように構成されたシステム実施形態を示し、左右迷走神経の両方を刺激することができる両側システムとして示される。当業者は、本開示を読み理解した上で、システムが右迷走神経のみを刺激するように設計可能であり、システムが左迷走神経のみを刺激するように設計可能であり、システムが左右迷走神経の両方を両側で刺激するように設計可能なことを理解しよう。さらに、システムは、頸部迷走神経以外の神経標的を刺激するように設計することもできる。システムは、神経連絡を刺激する(迷走が刺激される場合、副交感神経反応を提供する)か、又は神経連絡を阻害する(迷走が阻害される場合、交感神経反応を提供する)ように設計することができる。様々な実施形態は、神経中の神経線維の幾つかの単方向刺激又は選択的刺激を送達する。
図31は、IMD3117が患者の胸部の皮下又は筋下に配置され、リード3118が、迷走神経を刺激するように位置決めされるシステム実施形態を示す。様々な実施形態によれば、神経刺激リード3118は、皮下で神経標的までトンネリングし得る。幾つかの実施形態は、神経カフ電極又は螺旋電極を有して、神経標的を刺激し得る。幾つかの迷走神経刺激リード実施形態は、神経標的近くの血管内に経脈管的に供給され、血管内の電極を使用して、経血管的に神経標的を刺激する。例えば、幾つかの実施形態は、内頸静脈内に位置決めされた電極を使用して迷走を刺激する。他の実施形態は、気管、内頸静脈の喉頭枝、及び鎖骨下静脈内から神経標的に神経刺激を送達する。心臓神経及び心臓脂肪体等の他の神経標的が刺激されることもできる。示されるシステムは、装置の筐体にリードレスECG電極3119を含み得る。これらのECG電極は、例えば、心拍の検出及び心周期の部分の検出に使用可能である。
図32は、移植可能な医療装置(IMD)3217を含むシステム実施形態を示し、衛星電極3220が、少なくとも1つの神経標的を刺激するように位置決めされる。衛星電極は無線リンクを介してIMDに接続され、IMDは衛星の惑星として機能する。刺激及び通信は、無線リンクを通して実行することができる。無線リンクの例としては、RFリンク及び超音波リンクが挙げられる。衛星電極の例としては、皮下電極、神経カフ電極、及び血管内電極が挙げられる。システムは、装置の筐体にリードレスECG電極を含み得る。これらのECG電極3219は、例えば、心拍及び心周期の部分の検出に使用可能である。
図33は、様々な実施形態により、患者の胸部の皮下又は筋下に配置されたIMD3317を示し、リード3321は、心臓にCRM治療を提供するように位置決めされ、リード3318は、迷走神経等の神経標的での神経連絡を刺激及び/又は阻害するように位置決めされる。様々な実施形態によれば、神経刺激リードは、皮下で神経標的までトンネリングし得る。幾つかの実施形態は、神経カフ電極又は螺旋電極を有して、神経標的を刺激し得る。幾つかのリード実施形態は、神経標的近くの血管内に経脈管的に供給され、血管内の電極を使用して、経血管的に神経標的を刺激し得る。例えば、幾つかの実施形態は、内頸静脈内に位置決めされた電極を使用して迷走神経を刺激し得る。
図34は、様々な実施形態により、心臓にCRM治療を提供するように位置決めされたリード3421を有するIMD3417を示し、衛星トランスデューサ3420は、迷走神経等の神経標的を刺激/阻害するように位置決めされる。衛星トランスデューサは、無線リンクを介してIMDと動作可能に通信し得、IMDは衛星の惑星として機能する。刺激及び通信は、無線リンクを通して実行することができる。無線リンクの例としては、RFリンク及び超音波リンクが挙げられる。示されていないが、幾つかの実施形態は、無線リンクを使用して心筋刺激を実行する。衛星トランスデューサの例としては、皮下電極、神経カフ電極、及び血管内電極が挙げられる。
上記詳細な説明は、限定ではなく例示を意図する。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。