JP2017502209A - 反応スラスタを試験する地上システムおよび方法 - Google Patents

反応スラスタを試験する地上システムおよび方法 Download PDF

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Abstract

真空環境で反応スラスタ(100)を試験するシステム(300、400)および方法(500)。方法は、少なくとも部分的にアースに接続された真空室内に反応スラスタを配置し、真空環境を提供するように真空室から少なくとも1つのガスを除去し、電子のビームを生成するように反応スラスタを作動させ、および/または、真空室の少なくとも1つの導電性表面からビームの電子を電気的に絶縁する、ことを含む。電気的な絶縁は、電極を介してビームに電気的バイアス電圧を印加することによって達成され得る。電極は、真空室内に配置された導電性物体および/または真空室の壁の少なくとも一部分を備えることができる。全ての場合、電極は、アースに接続された真空室の部分から電気的に絶縁される。

Description

本開示は、反応スラスタ(例えば、ホールまたはイオンスラスタ)に関する。より具体的には本開示は、低い密度および圧力の環境(例えば、宇宙空間、または122kmを超える高度)で使用することを意図した反応スラスタの地上試験のシステムおよび方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、発明者デーヴィッド・キュー.キング(David Q. King)、ピーター・ワイ.ピーターソン(Peter Y. Peterson)、ジャスティン・エム.プッチ(Justin M. Pucci)により「自由膨張低圧環境宇宙空間用途の地上シミュレーション」という名称で2013年11月4日に出願された出願番号第61/899,842号の米国特許仮出願の利益を主張するとともに、ここに参照によって組み込む。
当業技術内で知られている、イオンスラスタなどの多くの反応スラスタがある。イオンスラスタは一般に、イオンを加速することで宇宙船を推進するのに使用される。ホール効果型イオンスラスタは、吐出チャネルの内部にある電極(陽極)と、電子を提供するための下流にある陰極と、吐出チャネル内に印加された主として「径方向」の磁場トポロジーとを備える。磁場トポロジーは、磁気回路と強磁性構造とによって確立される。磁気回路は、電磁石コイルまたは永久磁石から成る。強磁性構造は、磁場源によって生成される磁場のための磁束チャネルとして機能する。軸方向の電場が、吐出チャネル内で中性推進剤分配システムとしても機能し得る陽極と、電子放出源(陰極)との間に生じる。陰極から放出された電子は、陰極と陽極との間に印加された電位勾配によって陽極へと引きつけられる。陽極へと加速される電子は、吐出チャネル内に入り、そこで、方位ExBドリフトを経験し始めて、ホール電流と呼ばれるものを生成する。ホール電流は効果的に、陽極への軸方向の電子移動の大部分を妨げる。ホール電流領域は、「仮想陰極」と記述されるものを形成する。捕捉された電子は、壁や陽極へと失われるか、ホール電流領域の上流から流される中性推進剤粒子と再結合するか、それとのイオン化衝突に巻き込まれるかするまで、吐出チャネル周りに方位方向に旋回する。イオン化された推進剤ガスは次いで、ホール電流によって維持される電位勾配を通して加速される。加速されたイオンビームは、陰極からイオンビームへとさらなる電子を引き入れて、準中性の推進プラズマを形成する。
いくつかのシナリオでは、イオンスラスタは、地球を周回する物体(例えば、衛星)の向きと位置を制御するのに使用される。従って、イオンスラスタは、低い密度および圧力の環境で作動するように設計される。そのような環境に配備する前に、イオンスラスタの作動は、試験環境で試験される。試験環境は、低い密度および圧力の環境を模擬するように意図される。この点に関して、試験環境は、真空室(すなわち、1つまたは複数の真空ポンプによって空気および他のガスが除去された密閉空間)を用いて生成される。真空室はしばしば、アースに通常接続される導電性材料(例えば、鋼)から形成される。
本開示は、真空室環境で反応スラスタ(例えば、イオンスラスタ)を試験するシステムおよび方法の実施に関する。方法は、少なくとも部分的にアースに接続されかつ少なくとも部分的に導電性材料から形成された真空室内に反応スラスタを配置し、真空環境を提供するように真空室から少なくとも1つのガスを除去し、電子のビームを生成するように反応スラスタを作動させ、および/または、真空室の少なくとも1つの導電性表面からビームの電子および/またはイオンを電気的に絶縁する、ことを含む。
いくつかのシナリオでは、電気的な絶縁は、(1)ビームに電気的バイアス電圧を印加すること、(2)真空室の導電性表面に隣接して誘電性または浮動性材料を配置すること、および/または、(3)イオンスラスタおよびビームを真空室および真空室内に配置された他の装置から絶縁すること、によって達成される。
選択肢(1)に関しては、電気的バイアス電圧は、真空室の内部に配置されかつ真空室から電気的に絶縁された電極を用いてビームに印加される。電極は、反応スラスタの下流に配置された導電性物体(例えば、プレートまたは多孔質スクリーン)から成る。一定のバイアス電圧が、反応スラスタの作動中に電極に印加される。印加されるバイアス電圧は、印加されるバイアス電圧の方向にイオンおよび電子のビームを平均プラズマ電位へと駆動する。十分なバイアスがあると、ビームは、真空室と相互作用せず、それによって、より宇宙空間らしい環境をシミュレートするように、優先的にシフトされる。代替として、電極に印加される電圧の値は、イオンスラスタの作動中に動的に変化する。動的な変化は、1つまたは複数のパラメータに基づいて実行される。パラメータは、限定される訳ではないが、真空室内の中性ガスの密度、真空室への反応スラスタの陰極の電圧、反応スラスタから流れるプラズマ内の電流の値、および/または、電極において集められる電流の量を含む。
他のシナリオにおいて、電気的な絶縁は、真空室の下流端がイオンおよび電子のビームに対して異なる電位を有するように、真空室の下流端に電圧を印加することによって達成される。特に、真空室の下流端は、アースに接続される真空室の上流端から電気的に絶縁される。「上流」、「下流」という用語は本明細書中では、反応スラスタのチャネル内のイオンの動きに関する方向を記載するために使用される。
選択肢(2)および(3)に関しては、イオンスラスタビームの絶縁は、真空室内の少なくとも1つの誘電性または浮動性材料の配置によって達成される。この場合、イオンスラスタからの電子は、低い密度および圧力の環境に存在しない電位伝導経路から妨げられる。
実施例は、以下の図面を参照して説明され、そこでは同様の参照符号は、これらの図面全体を通して同様の部材を表している。
例示的な反応スラスタの概略図。 例示的な試験システムの概略図。 図2の真空室で作動する反応スラスタの平衡条件を理解するのに有用な概略図。 例示的な試験システムの概略図。 別の例示的な試験システムの概略図。 ビーム電位に電気的バイアス電圧を印加することによってどのようにビーム電位が変えられるかを理解するのに有用な概略図。 試験システム内で反応スラスタを試験する例示的な方法の流れ図。
本明細書において使用される「プラズマ」という用語は、中性原子、イオンおよび自由電子から成るイオン化された気体のことをいう。
本明細書において使用される「電子」という用語は、負電気の電荷(例えば、−1)を有する安定な亜原子粒子のことをいう。
本明細書において使用される「イオン」という用語は、原子の電子外殻から1つまたは複数の電子が除去されて正味の正電荷となる原子または一団の原子のことをいう。
本明細書において使用される「ビーム」という用語は、反応スラスタから放出される中性原子、イオンおよび電子のことをいう。
本明細書において使用される「宇宙空間」という用語は、大気圏のすぐ上の空間領域のことをいう。
図1を参照すると、例示的な反応スラスタ100の概略図が提供される。より詳細には、図1にはホール効果型のイオンスラスタの断面図が提供される。ホール効果型のイオンスラスタは、推力を生成するように電場によって推進剤を加速するように構成される。本発明の実施例は、ホール効果型のイオンスラスタに限定されない。従って、反応スラスタ100は代替として、任意の他の種類のイオンスラスタまたはプラズマに基づく反応スラスタを含むことができる。
一般に反応スラスタ100は、地球の周りの軌道にある場合、衛星や他の宇宙船を所望の軌道に移動させるようその位置を調節するのを助けるために衛星や他の宇宙船上で使用するように、または衛星や他の宇宙船を長い飛行任務(例えば、惑星間飛行任務)において推進するように構成される。この点に関して、反応スラスタ100は、衛星や他の宇宙船に確実に結合され得るハウジング102内に配置されたさまざまなスラスタ構成要素104−116、120−126を備える。ハウジング102は、少なくとも部分的に導電性材料から形成され得る。スラスタ構成要素は、電源126、推進剤120、チャネル104(例えば、環状チャネル)、および磁場源106、108を含む。電源126は、限定される訳ではないが、バッテリ、燃料電池および/または太陽電池を含み得る。推進剤120は、限定される訳ではないが、キセノン、クリプトン、アルゴン、ビスマス、ヨウ素、マグネシウムおよび/または亜鉛を含み得る。
作動中に、反応スラスタ100は、高速(例えば、20km/s)までイオンを加速するために電位を使用する。電位は、円筒形陽極とホール電流によって形成される仮想陰極116との間で維持される。いくつかのシナリオでは、100V〜1000Vの間の電位が陽極112と陰極116との間に印加される。実施例は、この例示的な電圧範囲に限定されない。
その後、推進剤120は、陽極112内に形成された通路(図示せず)を通してチャネル104内へ導入される。陽極112の通路は、ガス分配器として作用する。陽極112は、チャネル104の閉端110に配置される。チャネル104は、反応スラスタ100の軸114周りに周方向に延在し、閉端110から開端122へと軸方向にも延在する。陰極116は、開端122の近くでチャネル104の外側に配置される。
磁場源106、108が、チャネル104を横断して主として径方向に磁場を印加する。いくつかのシナリオでは、径方向の磁場は、少なくとも100ガウス(例えば、約100〜500G、0.01〜0.05T)である。電磁場によって、陰極116から放出された電子はチャネル104周りに周方向に移動する。これらの電子のいくつかは、陽極112の方へとチャネル104内へ入る。径方向の磁場は、電子を周方向へとそらせ、それによって、電子は、螺旋軌道を移動する。推進剤120が反応スラスタ100のチャネル104内へと拡散するにつれて、推進剤の原子は、高エネルギー円運動電子と衝突し、イオン化を生じる。上に言及したように、イオンは、原子の電子外殻から1つまたは複数の電子が除去されて正味の正電荷となる原子または一団の原子である。従って、推進剤イオン(例えば、キセノンイオン)は一般に、+1、+2および/または+3の電荷を有する。
正電荷の推進剤イオンは次いで、ホール電流によって形成された仮想陰極の方へと引きつけられる。この点に関して、推進剤イオンは、チャネル104の開端122から高速で放出され、それによって推力を生成する。チャネル104から排出される際に、推進剤イオンは、電子を引きつけて、イオンおよび電子のビーム124を形成する。
特に、イオン化された推進剤120の流れは、3つの成分部分すなわち、イオン、電子、および中性粒子を有する。これらの成分部分は、異なる振る舞いを有する。例えば、電子は、イオンに比較するとかなり小さい質量を有する。従って、電子は、径方向の磁場によって影響を及ぼされ、従って、チャネル104に関して径方向130に移動する。また、電子は、反応スラスタ100から特定の距離(例えば、20cm)に配置される場合、電場で移動する。この点に関して、電子は、電場によって送られる場所にはどこへでも移動する(すなわち、電子は、軸方向128および任意の径方向130にスラスタから流れ去ることができる)。従って、イオンは、電子に比較してかなり大きな質量を有する。従って、イオンは、径方向の磁場によってあまり影響を及ぼされず、従って、反応スラスタ100から離れる方へ主に軸方向128に移動する。径方向130にイオンの若干の膨張または相対的な分散がある。この膨張または相対的な分散は、イオンが電子へと電気的に引きつけられるので、電子によって影響を及ぼされる。
上に言及したように、反応スラスタ100は、地球を周回する物体(例えば、衛星)の向きと位置、または惑星間空間を移動する物体(例えば、宇宙船)の主または副推進システムを制御するのに使用可能である。従って、反応スラスタ100は、比較的低い密度および圧力の環境で作動するように設計される。比較的低い密度および圧力の環境に配備する前に、反応スラスタ100の作動は、地球上の試験環境(例えば、真空室環境)で試験される。地球上の試験環境は、宇宙空間の低い密度および圧力の環境を模擬するように意図される。この点に関して、試験環境は、試験システムを用いて生成される。例示的な試験システムが図2に示される。
ここで図2を参照すると、反応スラスタ(例えば、図1の反応スラスタ100)のための例示的な地球上の試験システム200の概略図が提供される。試験システム200は一般に、反応スラスタ100(例えば、ホール効果型のイオンスラスタ)の作動を試験するための低い密度および圧力の環境を提供するように構成される。この点に関して、地球上の試験システム200は、真空室202と、少なくとも1つの真空ポンプ(「ポンプ」)204−216とを備える。真空室202は、1つまたは複数の真空ポンプ204−216によって空気および他のガスが除去された密閉空間である。これは結果として、真空室202内の低い圧力の空間(「真空環境」)となる。真空環境によって人は、反応スラスタ100の作動が意図されている比較的低い密度および圧力の環境のシミュレーションで、反応スラスタ100の作動を分析することができる。
真空室202は、導電性材料から形成される。導電性材料は、限定される訳ではないが、ステンレス鋼、アルミニウム、軟鋼、および/または真鍮を含むことができる。真空室202は、閉端232、234を有する略円筒形状を有する。他のシナリオでは、真空室202は、球状などの、円筒形状以外の形状を有し得る。通常、地球上の真空室202は、図2に示すようにアースに接続され、従って、ほぼ0ボルトの電圧を有する。
ここで図3を参照すると、地球上の真空室202の1つまたは複数の導電性材料内で作動する反応スラスタ(例えば、図1の反応スラスタ)の平衡条件を理解するのに有用な概略図が提供される。真空室202の一部だけが図3に示される。反応スラスタは、詳細なしで、もっぱら、陰極(例えば、図1の陰極116)と、陽極(例えば、図1の陽極112)と、ハウジング(例えば、図1のハウジング102)とを含むように示される。通常の地球上の試験環境を示すこの場合では、ビーム電位は、真空室の壁302に到達するイオンおよび電子の電流の組み合わせによって決定される平衡値に調節される。これらの電流は、異なる現象によって駆動される。背景圧力に依存して、イオンは、別の粒子と衝突し得ない。この場合、イオンは一直線に移動する。イオンは、かなりの運動量およびエネルギーを与えられているので、ビーム内の電位を変えることによってほんの少し影響を及ぼされるだけである。10,000倍軽い電子は、かなり小さく方向付けられた運動量を有しており、イオンとは異なる経路、ビーム電位によって規定された経路に従うようになる。このように、イオンは、反応性スラスタまたは加速器から離れるように軸方向に移動し、いくぶん径方向にそれる。電子は、最小抵抗の経路に自由に従い、結局、ビーム内および/または導電性室壁内であれ、集められるイオンの電流の平衡を保つことになる。
シースと呼ばれる電気的境界層は、プラズマと、真空室202の内側の任意の表面との界面に発生する。真空室の側壁302に沿って、低いイオンフラックスのために、シース電位は、真空室に関して(例えば、+10ボルトまで)正と成り得る。真空室の端壁304に沿って、これが高いイオンフラックスの場合、シース電位は、小さくなる(例えば、≦+1ボルト)。端壁304から側壁302へのこの電圧差によって、ビーム電位平衡に影響を及ぼすビームおよび壁内の円運動の電流が可能となる。側壁302上の正の電位は、ビーム電子を引きつけ、ビーム電子は、吸収されて、壁内を流れる電流となる。イオンの大部分は、端壁304に到達する。全体で、端壁304に到達するイオンの数は、電荷の保存によって、壁302上に吸収される電子の数と等しくなければならない。しかしながら、真空室の壁302、304は導電性なので、対立する電荷が、異なる位置に到達することができ、壁302、304内を流れる電流を通して中和され得る。電子の一部は、接地された真空室の側壁上と、真空室と電気的に接触している真空室内の任意の導電性表面上とに吸収されることによって、最小抵抗の経路を見出すことになる。これらの電子は、接地導電性経路302に沿って端壁304へと移動し、そこで、正味のイオン吸収によって中和される。これは、以下の数式(1)に対応する。
w=Jib−Jeb (1)
ただし、Jwは、接地表面電流(例えば、壁電流)、Jibは、イオンビーム電流、Jebは、中和電子の電流である。
平衡ビーム電位は、陰極電位Vcが真空室に対して負、通常−25〜−10ボルトとなるようなものである。電子は、陰極から出て、スラスタ本体および真空室壁を含む、より正の電位の方へと移動する。電子の速度の方向は、電子の負電荷に起因して、電流の流れとは反対であることに留意されたい。
上に言及したように、試験システム200は、反応スラスタの地球上での試験のための真空環境を提供することができる。地球上の真空環境の性質は、反応スラスタの作動を評価するために宇宙空間の真空レベルをシミュレートするように、大気ガス、排出された推進剤ガス、および真空室や関連する装置から脱ガスされた任意のガスを除去するのに真空ポンプに依拠する。真空ポンプは、真空ポンプに入りかつ/または真空ポンプと接触する過剰のガスを捕捉および/または除去することによって作動する。例えば、反応スラスタの作動中に、反応スラスタ100から流出する若干のガスは、試験プロセス中にポンプ204−216によって有効または即座に除去できない。このガスは、ポンプ204−216の表面から反射し、それによって、真空室202内の中性ガスの密度を増加させ得る。イオン化されないガスもまた、真空環境および宇宙環境内の反応スラスタ100から排出される。
地球上の真空環境では、ガス密度が、宇宙空間環境内のガス密度に比較して、地球上の真空環境において10〜1000倍の大きさとなり得る。ガス密度が高くなる結果、地球上の真空室202内の中性ガスの圧力が高くなり得る。このように中性ガスの圧力が高くなることは、ビーム124の導電性の一因となる。この点に関して、中性ガスは、イオンビーム124との電荷交換によってイオン化され、従って、導電性プラズマが、宇宙空間環境内の導電性プラズマに比較して地球上の真空環境ではより広く分散することを理解されたい。導電性プラズマは、電圧分布を有する。例えば、ビームは、陰極の近くで−25ボルト、ビームの中心領域で+15〜+20ボルトの電圧を有する。電圧分布は、電子の流れや、電子に作用する圧力に関連する。
さらに、地球上の導電性真空室202は、宇宙配備用途には存在しない電子経路を提供する。従って、真空室202は、その中で試験されている反応スラスタ100のビーム124内における自然の電位差が十分でない。ビーム124の自然の電位は、電子およびイオンに作用する力の結果である。上に言及したように、スラスタから特定の距離(例えば、20cm)を越えた電子は、電場(すなわち、イオン化されたガスによって生成される圧力などの、電子に作用する力)で移動する。地球上の導電性真空環境では、電場は、真空室202の導電性内部表面と接続する。これらの導電性内部表面は、限定される訳ではないが、その幾何学的形状を画定する真空室の壁の内側表面を含む。結果として、電子は、これらの導電性表面に引きつけられ、従って、矢印220、226によって示されるように、意図していない径方向経路を真空室の壁へと移動する。実際、電子は、反応スラスタ100から径方向に真空室の壁上に集まる。結果として、真空室202の等電位は、宇宙空間環境には存在しない、電子およびイオンのための最小抵抗の経路になり、それによって、ビーム124の自然な放出に対して電気的な干渉を生じることになる。プラズマが、地球上の真空環境ではより広く分布し、真空室が、ビーム124の自然の電位を妨げるので、真空スラスタ100の作動は、宇宙飛行の作動に比較して、地上試験では影響を及ぼされる。
上に説明した試験システム200の影響は、スラスタの出力レベルとともに増加する。例えば、いくつかのシナリオでは、反応スラスタ100は、主電極とスラスタとの間で作用する300ボルトの放電と15アンペアの電流とを有する4.5kWのシステムである。放電によって、ほぼ12アンペアのイオンが、チャネル104内へ噴射される中性推進剤120から生成される。従って、反応スラスタ100から移動し去る12アンペアの電子がある。イオンが電子を吸収すると、中性粒子になる。その後、中性粒子は、真空ポンプ204−216を介して真空室202から排出される。この点に関して、真空室202内のガス圧力は、6×10-6トルに維持される。6×10-6トルの圧力においてさえ、反応スラスタ100に影響を及ぼすガス密度は、宇宙環境内に存在するものより100倍大きいものである。
宇宙船用の電気的推進のいくつかの用途では、50kW以上に及ぶ出力レベルが必要とされる。推進剤の流量は一般に出力とともに増加するので、50kWにおいて低い真空レベルを維持する能力は、特定の地球上の試験技術を用いて実施するには法外なほど費用のかかるものになる。費用は、耐久試験を受ける必要のある反応スラスタでは20,000時間以上の作動寿命が望まれるという事実によっていっそう大きくなる。
本開示は、従来の試験システム(例えば、図2の試験システム200)によって生じる望ましくない影響なしに地球上の試験設備において反応スラスタを試験する方法を記述する。本発明の地球上の試験設備によって実施される試験システムの例示的な実施例はここで、図4〜図6に関連して説明される。
ここで図4を参照すると、例示的な試験システム400の概略図が提供される。試験システム400は一般に、反応スラスタ(例えば、図1のイオンスラスタ)の作動を試験するための低い密度および圧力の環境を提供するように構成される。この点に関して、試験システム400は、真空室402と、少なくとも1つの真空ポンプ404−416とを備える。真空構成要素402−416は、図2の対応する真空構成要素202−216と同一または類似のものである。従って、真空構成要素202−216に関連して上に提供された説明は、試験システム400の真空構成要素404−416を理解するために十分なものである。
試験システム400はさらに、従来の試験システム(例えば、図2の試験システム200)によって生じる望ましくない影響なしに反応スラスタを試験する新規な手段を提供する。この点に関して、試験システム400は、真空室402の導電性壁、反応スラスタの導電性表面、および真空室内に配置された任意の他の接地された装置から、ビーム内の電子を電気的に絶縁する。この電気的な絶縁は、(1)真空室の壁の1つまたは複数の表面によって提供される最小抵抗の経路を少なくとも部分的に除去するように、真空室の壁の1つまたは複数の表面の上にまたはそれに隣接して誘電性または浮動性材料460を任意選択的に提供すること、(2)矢印422によって示されるように、イオンと同じ略軸方向の下流方向に電子を移動させる電気的バイアス電圧をプラズマビームに印加すること、および/または、(3)反応スラスタおよびビームを真空室および真空室内に配置された他の装置から絶縁すること、によって実現される。
(2)に関して、真空室402の下流端は、電子およびイオンのビームに対してより正の電位を有するようにされる。この点に関して、電気的バイアス電圧が、真空室の壁に関してビーム418に正のバイアスをかけるように、少なくとも1つの電極450を介してビーム418に印加される。図4に示すように、電極450は、ビーム418の最も下流の部分内に配置される。本発明の実施例は、この点に関して限定されない。1つまたは複数の電極が、真空室の下流部分内の任意の位置に配置され得る。例えば、電極450は代替として、反応スラスタに隣接して配置され、または、反応スラスタの中心軸(例えば、図1の軸114)からオフセットされ得る。
いくつかのシナリオでは、電極450は、真空室の壁の全てから電気的に分離されかつ電源452に電気的に接続された少なくとも1つの導電性プレートまたは他の物体(例えば、円錐体、球体またはロッド)を備える。電極はまた、加速されたビームイオンのためのビームダンプとしても機能し得る。電力が、電源452によって電極450に供給される。真空室402に対して正の電圧が電極450に印加される。例えば、数百ボルトまでの正のバイアスが、電極450に印加される。数百ボルトの値までの正のバイアスは、イオンビームの電流と等しい電流を集めるのに十分であるように選択される。結果として、電子は、(1)真空室の壁へと径方向にまたは反応スラスタの方へと後ろ向きに移動するよりはむしろ、正にバイアスされた電極の方へと引き寄せられ、および(2)真空室の壁へと移動する電子は、そこから反射される。
いくつかのシナリオでは、一定の正の電圧が、電極450に印加される。他のシナリオでは、電極450に印加される電圧の値は、試験プロセス中に動的に変化される。従って、試験システム400はさらに、1つまたは複数の測定装置460(例えば、ゲージ)と、制御装置462とを備える。制御装置462は、1つまたは複数の測定装置460から測定値を受け取り、電圧レベルを修正すべきかを決定するために測定値を分析し、かつ、電極450に供給される電圧の値を電源452に変更させる、ように構成される。制御装置462は、上に列挙した機能を果たすように構成されたハードウェア(例えば、電子回路)および/またはソフトウェアを備えることができる。
電圧レベルの動的な変化は、1つまたは複数のパラメータに基づき得る。パラメータは、限定される訳ではないが、真空室内の中性ガスの密度、真空室内の中性ガスの圧力、地球上の真空室への反応スラスタの陰極の電圧、または、スラスタビームのプラズマ電位、反応スラスタから流れるプラズマ内の電流の値、および/または、電極450において集められる電流の量を含むことができる。
上に言及したように、電極450は、真空室402内に配置された1つまたは複数の物体を備える。本発明の実施例は、この特定の構成の電極に限定されない。例えば、電極は、代替としてまたは付加的に真空室の少なくとも一部分(例えば、真空室の50%超、50%と同じ、または50%未満)を備えるように形成され得る。この電極構成の実施例は、図5に概略示される。
図5に示されるように、電極504は、真空室502の一部分508を備える。この場合、真空室502の第1の部分506が、アースに接続され、真空室502の第2の部分508が、電源520に接続される。誘電性材料510が、2つの部分506、508を互いに電気的に絶縁するようにそれらの間に配置される。
ここで図6を参照すると、ビーム電位に電気的バイアス電圧Vp(例えば、0ボルト<Vp>数百ボルト)を印加することによってどのようにビーム電位が変えられるかを理解するのに有用な概略図が提供される。別の言い方をすれば、ビーム電位は、真空壁602、604よりはむしろ、反応スラスタ(例えば、図1の反応スラスタ)の下流の位置へとビーム電子を引きつけることによって変えられる。物体(例えば、図4の電極450)は、下流の位置に配置され、イオンビーム電流Jibとほぼ同じ電子電流Jebを引きつけるのに十分な電源(例えば、図4の電源452)によってバイアスがかけられる。このように、電子は、主に下流方向に流される。
このバイアスをかけることの別の態様は、陰極電位Vcを、真空室の接地電圧(Vg)より上の正の電圧に上げることである。陰極電子は、より負の電位によって反発され、従って、側壁602、604に到達するのが妨げられる。このように、ビームに電気的なバイアスをかけることで、宇宙環境をシミュレートする。これは、数式(2)〜(4)に相当する。
ib=Jeb (2)
w=0 (3)
p≒Jeb (4)
ここで、Jpは、バイアス電流である。
ここで図7を参照すると、反応スラスタ(例えば、図1のイオンスラスタ100)を試験する例示的な方法700の流れ図が提供される。方法700は、ステップ702で開始し、ステップ704を続ける。ステップ704において、反応スラスタ(例えば、図1のイオンスラスタ100)を真空室(例えば、図3の真空室302または図4の真空室402)内に配置する。反応スラスタは、浮動性アースを備えることができる。真空室は、少なくとも部分的にアースに接続され、任意選択的に、真空室の少なくとも1つの導電性内側表面上に配置された誘電性材料を備えることができる。次にステップ706において、真空環境を提供するように、真空室から少なくとも1つのガスを除去する。真空環境は、宇宙環境に類似した低い密度および圧力の環境を備えることができる。この場合、真空室内のガスの圧力は、6×10-6トル超、6×10-6トルと同じ、または6×10-6トル未満であり得る。いったんガスを真空室から除去すると、ステップ708によって示すように、イオンおよび電子のビームを生成するように反応スラスタを作動させる。
その後、ステップ710を実施し、そこでは、真空室の少なくとも1つの導電性表面からビームの電子を電気的に絶縁する。電気的な絶縁は、電気的バイアス電圧をビームに印加することによって実現できる。電気的バイアス電圧は、アースに接続された真空室の部分内に配置され、その部分から電気的に絶縁された電極(例えば、図1の電極350または図4の電極450)を用いてビームに印加する。いくつかのシナリオでは、電極は、全ての隣接する真空室の壁から離間するように真空室内に配置された導電性物体である。導電性物体は、反応スラスタの下流の真空室内に配置することができる。他のシナリオでは、電極は、真空室の接地された第2の部分から電気的に絶縁された少なくとも1つの真空室の第1の部分を備える。真空室の第1の部分は、真空室の下流端に配置することができる。両方の場合とも、電極がイオンおよび電極のビームに対してより正の電位を有するように、電圧を電極に印加する。電極に印加する電圧のレベルは、反応スラスタの作動の全体に亘って一定とすることができ、または代替として反応スラスタの作動中に動的に調節することができる。動的調節は、真空室内の中性ガスの密度、真空室内の中性ガスの圧力、反応スラスタの陰極の電圧、反応スラスタから流れるプラズマ内の電流の値、および電極において集められる電流の量のうちの少なくとも1つに基づくことができる。ステップ710が終了すると、ステップ712を実行し、そこでは、方法700が終了するか、または他のステップを実行する。

Claims (20)

  1. 地球上の真空環境でプラズマ反応スラスタを試験する方法であって、
    少なくとも部分的にアースに接続されかつ少なくとも部分的に導電性材料から形成された真空室内に反応スラスタを配置し、
    真空室の少なくとも1つの導電性表面から反応スラスタによって形成されたビームの電子を電気的に絶縁する、
    ことを含むことを特徴とする、地球上の真空環境でプラズマ反応スラスタを試験する方法。
  2. 電気的に絶縁することは、ビームに電気的バイアス電圧を印加することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 電気的バイアス電圧は、真空室の内部に配置されかつ真空室から電気的に絶縁された電極を用いてビームに印加されることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 反応スラスタの作動中に電極に印加された電圧のレベルを動的に調節することをさらに含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 前記レベルは、真空室内の中性ガスの密度、真空室への反応スラスタの陰極の電圧、反応スラスタから流れるプラズマ内の電流の値、および電極において集められる電流の量のうちの少なくとも1つに基づいて動的に調節されることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 電気的に絶縁することは、真空室の下流端または領域がイオンおよび電子のビームに対してより正の電位を有するように、真空室の下流端または領域にバイアス電圧を印加することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 真空室の下流端は、アースに接続された真空室の上流端から電気的に絶縁されることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 電気的に絶縁することは、真空室の導電性表面に隣接して誘電性材料を配置することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 電気的に絶縁することは、真空室の導電性表面に隣接して浮動性材料を配置することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 反応スラスタは、浮動性アースを備えることを特徴とする請求項1記載の方法。
  11. 真空室と電気的に接触している真空室の内部に配置された装置の少なくとも1つの導電性表面からビームの電子またはイオンを電気的に絶縁することをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  12. 少なくとも部分的に導電性材料から形成された真空室であってアースに電気的に接続された第1の部分を少なくとも備える真空室と、
    真空室の少なくとも1つの導電性表面から反応スラスタによって生成されたビームの電子を電気的に絶縁するように構成された電極と、
    を備えることを特徴とする試験システム。
  13. 電子は、ビームへの電気的バイアス電圧の印加によって導電性表面から電気的に絶縁されることを特徴とする請求項12記載の試験システム。
  14. 電極は、真空室の内部に配置されかつ真空室から電気的に絶縁されることを特徴とする請求項12記載の試験システム。
  15. 反応スラスタの作動中に電極に印加される電圧のレベル調節を容易にするように構成された制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項14記載の試験システム。
  16. 前記レベルは、真空室内の中性ガスの密度、真空室への反応スラスタの陰極の電圧、反応スラスタから流れるプラズマ内の電流の値、および電極において集められる電流の量のうちの少なくとも1つに基づいて動的に調節されることを特徴とする請求項15記載の試験システム。
  17. 電極は、イオンおよび電子のビームに対してより正の電位を有する真空室の第1の部分を少なくとも備えることを特徴とする請求項11記載の試験システム。
  18. 真空室の第1の部分は、アースに接続された真空室の第2の部分から電気的に絶縁されることを特徴とする請求項17記載の試験システム。
  19. 真空室の導電性表面に隣接して配置された誘電性材料をさらに備えることを特徴とする請求項11記載の試験システム。
  20. 真空室の導電性表面に隣接して配置された浮動性材料をさらに備えることを特徴とする請求項11記載の試験システム。
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