JP2017227607A - 汚染土壌の放射能測定方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定可能とする。
【解決手段】放射線検出にプラスチックシンチレータ10を用いて汚染土壌の放射能を測定する際に、波高弁別器40を用いて土壌中のセシウム領域の計数値Aを分離測定する。カリウム領域の計数値Bも分離測定し、カリウム領域の計数値Bに補正係数Cを乗じて得た補正値Dをセシウム領域の計数値Aから差引くことによりカリウムの影響を低減することもできる。
【選択図】図5

Description

本発明は、汚染土壌の放射能測定方法及び装置に係り、特に、プラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定することが可能な、汚染土壌の放射能測定方法及び装置に関する。
放射能で汚染された物質の放射能を測定する技術として、特許文献1には、ベルトコンベア上で瓦礫の放射能を連続的に測定する技術が記載されている。
又、特許文献2には、土壌を含む汚染物質を収容する容器内にNaI(ヨウ化ナトリウム)シンチレータを用いたγ線検出器を設けることが記載されている。
特開2014−9998号公報 特開2016−33491号公報(段落0015、0017、図1) 特開2014−159970号公報
しかしながら、NaIシンチレータ(例えば発光用に不純物としてタリウムTlを0.1%程度添加したNaI(Tl)シンチレータ)は、空気中の水分を取込んで溶けてしまう潮解性が大きいため、測定対象中に混在する突起物などでピンホール等が生じた場合には、使用できなくなる。又、測定時に温度を一定化する対策が必要で、衝撃や急激な温度変化で割れることがあるなどの問題点を有していた。
一方、特許文献3に記載されたようなプラスチックシンチレータは、NaI(Tl)シンチレータのような潮解性が無く、運用中にピンホールが開いたとしても問題なく使用できるので、屋外環境でも長期間安定的に作動し、耐環境性に富み、温度変化への対策が不要で、衝撃や温度変化にも強いという特徴を有する。
しかしながら、プラスチックシンチレータは、NaI(Tl)シンチレータとは異なり、図1に例示するように、光電効果の確率がコンプトン散乱の確率に比べて大幅に低いことから、γ線検出に際して光電ピークが生じないため、エネルギー分析(核種の同定)が困難と考えられていた。
なお、特許文献3に記載された技術は、汚染土壌でなく食品を対象とするものであるため、食品中に多く含まれるカリウムの補正が必要不可欠であった。
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、プラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定可能とすることを課題とする。
NaI(Tl)シンチレータの質量減弱係数とプラスチックシンチレータの質量減弱係数を図1(A)(B)に比較して示すように、プラスチックシンチレータは、NaI(Tl)シンチレータとは異なり、光電効果の確率がコンプトン散乱の確率に比べて大幅に低いことから、γ線検出に関して光電ピークが生じず、エネルギー分析が困難である。しかし、図3に示す如く、入射したγ線のエネルギーに依存してコンプトン連続部が高エネルギー側に伸びていくことから、土壌中のセシウム領域(Cs−137/134)とカリウム領域(K−40)を分離して測定することが可能である。そこで、発明者は、プラスチックシンチレータを用いて、セシウム領域及びカリウム領域の分離測定並びに補正実験を実施し、カリウムの影響を受けずにセシウムの放射能を測定可能であることを検証した。
具体的には、福島の実汚染土壌に非汚染の同質土壌を混ぜ、土壌選別基準の8000Bq/kgをやや下回る濃度で検証用汚染土壌を作成した。これに市販の特級KClを混ぜ、土壌中に存在するK−40と併せて、それぞれ500Bq/kg、1000Bq/kg、2000Bq/kgのK−40を含有するセシウム汚染土を調整した。ここで、500Bq/kgを選んだ理由は、1988年のUNSCEAR報告によると土壌中のK−40濃度は平均370Bq/kgであり、変動幅は100−700Bq/kgであることに起因する。一方、2000Bq/kgは、最大で同程度の土壌が福島で発見されていることによる。
これらの土壌を、パイロット試料がゲルマニウム半導体検出器により定量された後に、専用容器に入れて、プラスチックシンチレータで計測し、セシウムとカリウムの分離性能を確認した。
基準放射能計測にはゲルマニウム半導体検出器を用いた(60分計測)。
エネルギー校正は、カドミウムCd−109(88keV)、コバルトCo−57(122keV)、セシウムCs−137(662keV)、コバルトCo−60(1173keV、1333keV)、カリウムK−40(1461keV)の5点フィッティングを行った。
効率校正は、U8容器(充填量50mm)に入った日本アイソトープ協会製セシウムCs−137標準線源を用い、旧文科省マニュアルに準じた自己吸収補正を行った。
プラスチックシンチレータによる評価計測には、セシウムチェッカーを用いた。
計測は規定の容器に入れたKCl並びにKClと同一の幾何要件に設定された放射能評価済みの混合土壌を用いて行った(15分計測)。
ゲルマニウム半導体検出器で測定した各混合土壌の放射能濃度は表1の通りであった。
セシウム137は混合土壌1を基準として±10%になり、カリウム40は各濃度目標値に対して±20%以内に収まることが確認された。
図3、4、5は各々、表1中のK−40が500Bq/kg、1000Bq/kg、2000Bq/kgの混合土壌1、2、3のγ線スペクトルを示すが、図からも各混合土壌のCs−137放射能濃度はほぼ等しく、K−40放射能濃度のみが変化していくことがわかった。
図2は、プラスチックシンチレータで計測したカリウム40(KClとする)と混合土壌の出力波高分布を示したものである。出力波高分布はγ線エネルギー分布とほぼ等価である。これによれば、セシウム寄与分とカリウム寄与分はエネルギーの違いによって明確な分離測定が可能であることがわかる。そこで、主たる寄与分がカリウム40であるエネルギー領域をカリウム領域、主たる寄与分がセシウム137であるエネルギー領域をセシウム領域と定義して、領域内の計数を求めたものを表2に示す。
表2から、カリウム40放射能濃度と、カリウム40領域正味計数値との関係を調べると、図6のような直線関係にあることが確認された。
一方、前出図2中に示されるK40スペクトルにより、セシウム領域に含まれる計数にはK−40寄与があることがわかる。そのため、全量KClを用いた場合のK−40スペクトルにおいて、カリウム領域計数値とセシウム領域計数値の比を求めることにより、カリウム領域の計数値からセシウム領域のカリウム寄与分を補正減算することが可能である。表2からK40の補正係数は0.855であることから、この係数をカリウム領域計数値に乗じた値をカリウム補正値とすることができる。
図7は、補正処理前後のK−40放射能濃度とセシウム領域正味計数値の関係を示したものであるが、図よりセシウム領域の計数値はほぼ存在上限までのカリウム40放射能濃度に対して影響を受けないことが分かった。
従って、プラスチックシンチレータを用いた汚染土壌測定において、スペクトル分析に基づくセシウム領域とカリウム領域の分離計測により、セシウム放射能濃度は、土壌中のカリウムの影響をほぼ受けずに計測できることが分かった。
更に、相当高濃度なカリウムが混在する場合には、カリウム領域における計数値を利用した補正を行えば、より精密な測定も可能であることが判明した。
本発明は、上記のような知見に基づいてなされたものであり、放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する際に、波高弁別器を用いて土壌中のセシウム領域の計数値を分離測定することにより、前記課題を解決するものである。
本発明は、又、放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する際に、波高弁別器を用いて土壌中のセシウム領域の計数値とカリウム領域の計数値を分離測定し、カリウム領域の計数値を用いてセシウム領域の計数値を補正してカリウムの影響を低減することにより、同様に前記課題を解決するものである。
ここで、前記補正を、カリウム領域の計数値に補正係数を乗じて得た補正値をセシウム領域の計数値から差引くことにより行うことができる。
本発明は、又、放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する汚染土壌の放射能測定装置であって、土壌中のセシウム領域の計数値を分離測定するための波高弁別器を備えたことを特徴とする汚染土壌の放射能測定装置により、同じく上記課題を解決するものである。
本発明は、又、放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する汚染土壌の放射能測定装置であって、土壌中のセシウム領域の計数値とカリウム領域の計数値を分離測定するための波高弁別器と、カリウム領域の計数値を用いてセシウム領域の計数値を補正してカリウムの影響を低減する補正手段と、を備えたことを特徴とする汚染土壌の放射能測定装置により、同じく上記課題を解決するものである。
本発明によれば、プラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を正確に測定することが可能となる。特に、カリウム領域における計数値を利用した補正を行った場合には、より精密な測定が可能となる。
本発明の原理を説明するための(A)NaI(Tl)シンチレータの質量減弱係数と(B)プラスチックシンチレータの質量減弱係数を比較して示す図 同じくプラスチックシンチレータで測定したセシウム汚染土壌とKCl試薬中のK−40の出力波高分布を比較して示す図 同じくK40放射能濃度目標値が500Bq/kgの混合土壌1のγ線スペクトルを示す図 同じくK40放射能濃度目標値が1000Bq/kgの混合土壌2のγ線スペクトルを示す図 同じくK40放射能濃度目標値が2000Bq/kgの混合土壌3のγ線スペクトルを示す図 同じくK−40放射能濃度とカリウム領域正味計数値の関係の例を示す図 同じくK−40放射能濃度とセシウム領域正味計数値の関係の例を示す図 本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図 本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図 同じく処理手順を示す流れ図
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
本発明の第1実施形態は、図8に示す如く、例えば板状の厚いプラスチックシンチレータ10と、例えば光電子増倍管のような増幅器20と、アナログ/デジタル(A/D)変換器30と、マルチチャンネルアナライザ(MCA)のような波高弁別器40と、該波高弁別器40に対してセシウム領域を設定するセシウム領域設定部52及びセシウム領域計数値取得部54を含むコンピュータ50を用いて構成されている。
前記プラスチックシンチレータ10としては、例えばポリビニルトルエンをNaIの代わりに使用したシンチレーション検出器であって、例えば横幅100cm×長さ50cm×厚さ5cm、測定面積0.5m2、容積25lの厚いものを用いることができる。このプラスチックシンチレータ10は、樹脂製のため大型化が可能で成形も容易である。又、耐環境性に富み、温度変化への対策が不要であり、衝撃や温度変化にも強い。又、潮解性を持たないため、屋外環境でも長時間安定的に作動する。
前記コンピュータ50のセシウム領域設定部52においては、図2に示した波高分布に鑑みて、例えば300〜600チャンネルに設定したセシウム領域の計数値Aのみをカウントするように波高弁別器40を設定し、計数値をセシウム領域計数値取得部54で取得して出力する。
食品と異なり汚染土壌ではカリウムの含有量が図6に示したように少ないので、セシウム濃度をほぼ正確に測定することができる。
本実施形態においては、カリウム領域の計数値Bを得る必要が無く、測定を迅速且つ簡単に行うことができる。
次に、カリウム領域の計数値Bによる補正を行うようにした本発明の第2実施形態を図9に示す。
この第2実施形態は、コンピュータ50において、領域設定部53でセシウム領域とカリウム領域を設定し、カリウム領域計数値取得部56でカリウム領域の計数値Bを取得し、補正係数乗算部58で補正係数Cを乗算し、補正値減算部60で補正値Dを減算して計数値(測定値E)を得るようにした点が前記第1実施形態と異なる。
本実施形態においては、図2に示した波高分布に鑑みて、例えば300〜600チャンネルに設定したセシウム領域の計数値Aだけでなく、例えば900〜1200チャンネルに設定したカリウム領域の計数値Bもカウントする。
本実施形態の処理手順を図10に示す。
まずステップ100で、セシウム領域の計数値Aとカリウム領域の計数値Bを分離測定する。
次いでステップ110で、次式(1)に示す如く、カリウム領域の計数値Bに補正係数Cを乗じて補正値Dを求める。
D=C×B ・・・(1)
ここで、補正係数Cは表2の例では0.855と設定することができる。
次いでステップ120で、次式(2)に示す如く、セシウム領域の計数値Aから補正値Dを差引いてセシウム領域の測定値Eとする。
E=A−D ・・・(2)
この第2実施形態によれば、K40の放射能濃度を補正することによって、第1実施形態よりも更に高精度な測定を行うことができる。
10…プラスチックシンチレータ
20…増幅器
30…A/D変換器
40…波高弁別器(MCA)
50…コンピュータ
52…セシウム領域設定部
53…領域設定部
54…セシウム領域計数値取得部
56…カリウム領域計数値取得部
58…補正係数乗算部
60…補正値減算部
A…セシウム領域の計数値
B…カリウム領域の計数値
C…補正係数
D…補正値
E…セシウム領域の測定値

Claims (6)

  1. 放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する際に、
    波高弁別器を用いて土壌中のセシウム領域の計数値を分離測定することを特徴とする汚染土壌の放射能測定方法。
  2. 放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する際に、
    波高弁別器を用いて土壌中のセシウム領域の計数値とカリウム領域の計数値を分離測定し、
    カリウム領域の計数値を用いてセシウム領域の計数値を補正してカリウムの影響を低減することを特徴とする汚染土壌の放射能測定方法。
  3. 前記補正を、カリウム領域の計数値に補正係数を乗じて得た補正値をセシウム領域の計数値から差引くことにより行うことを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌の放射能測定方法。
  4. 放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する汚染土壌の放射能測定装置であって、
    土壌中のセシウム領域の計数値を分離測定するための波高弁別器を備えたことを特徴とする汚染土壌の放射能測定装置。
  5. 放射線検出にプラスチックシンチレータを用いて汚染土壌の放射能を測定する汚染土壌の放射能測定装置であって、
    土壌中のセシウム領域の計数値とカリウム領域の計数値を分離測定するための波高弁別器と、
    カリウム領域の計数値を用いてセシウム領域の計数値を補正してカリウムの影響を低減する補正手段と、
    を備えたことを特徴とする汚染土壌の放射能測定装置。
  6. 前記補正手段が、カリウム領域の計数値に補正係数を乗じて得た補正値をセシウム領域の計数値から差引くことにより補正を行うようにされていることを特徴とする請求項5に記載の汚染土壌の放射能測定装置。
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