以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。実施形態に係る負荷切替判断システムの説明に先立ち、まず配電系統および変圧器系統について説明する。図1は、配電系統、需要家負荷、及び太陽光発電機(分散電源)を示す概念図である。配電用変電所4は、送電網からの電力の電圧を調整し、配電系統1に電流を送出する。配電用変電所4には、複数の配電系統1が並列的に接続される。以下、説明の便宜上、各配電系統1を区別する場合に符号1a、1bで表し、各配電系統1を区別しない場合に符号1で表す場合がある。
配電系統1aは、複数の配電区間5に分かれている。1つの配電系統1aにおいて複数の配電区間5は直列的に接続されている。以下、説明の便宜上、各配電区間5を区別する場合に符号5a、5bで表し、各配電区間5を区別しない場合に符号5で表す場合がある。隣り合う2つの配電区間5は、開閉器6を介して直列的に接続されている。開閉器6は、複数の配電区間5のそれぞれの始点に設けられる。開閉器6は、開閉器6に対して配電用変電所4の側(以下、上流側という)とその反対側(以下、下流側という)との間の導通(オン)と絶縁(オフ)とを切り替える。配電区間5は、1つの配電系統1に沿って隣り合う一対の開閉器6に挟まれる区間ということもできる。また、開閉器6は、例えば、センサ内蔵自動開閉器であり、開閉器6の上流側と下流側との間を流れる電流を測定可能である。配電区間5の配電線7には、需要家負荷2および太陽光発電機3の少なくとも一方が連系される。
需要家負荷2は、例えば、高圧需要家負荷2aおよび低圧需要家負荷2bの少なくとも一方を含む。高圧需要家負荷2aは、例えば、商業施設、工業施設などの事業系施設に設けられる負荷である。高圧需要家負荷2aの契約種別としては、例えば、業務用電力や高圧電力などがある。低圧需要家負荷2bは、例えば、事業系施設よりも小規模な負荷であり、住宅、集合住宅などの施設に設けられる負荷である。高圧需要家負荷2aの契約種別としては、例えば、電灯電力や動力用電力などがある。負荷電流は、配電系統1の配電線7から需要家負荷2へ流れる電流(潮流電流)である。
太陽光発電機3は、例えば、大規模太陽光発電機3aおよび小規模太陽光発電機3bの少なくとも一方を含む。大規模太陽光発電機3aは、例えばメガソーラであり、小規模太陽光発電機3bは、例えば住宅用太陽光発電機である。発電電流は、太陽光発電機3から配電系統1の配電線7へ流れる電流(逆潮流電流)である。また、系統電流Icは、配電系統1の配電線7を流れる電流である。例えば、系統電流Icの配電区間5aにおける系統電流Icは、負荷電流と発電電流とを加味した電流である。負荷電流と発電電流とで配電線7に対する電流の向きが逆であるので、系統電流Icの値は、負荷電流の絶対値と発電電流の絶対値との差分に相当する。
配電系統1bは、配電系統1aと同様であり、配電系統1aと共通する説明を簡略化あるいは省略する。配電系統1bは、複数の配電区間5に分かれている。複数の配電区間5のうち配電区間5cは、開閉器8を介して配電区間5aと接続されている。開閉器8は、例えば、連系自動開閉器であり、配電区間5aと配電区間5bとの間の導通と絶縁とを切り替える。開閉器8は、例えば、配電系統1aと配電系統1bとの間で電力を融通する際に利用される。例えば、配電区間5cで系統事故が発生した場合、配電区間5bから開閉器8を介して配電区間5dに電力を供給することができる。
図2は、変圧器系統、需要家負荷、及び太陽光発電機を示す概念図である。変圧器系統11、12は、図1に示した配電線7から枝分かれする系統であり、互いに独立している。配電設備として、変圧器系統11には変圧器13が設けられ、変圧器系統12には変圧器14が設けられる。変圧器13、14は、それぞれ、その高圧側が配電線7に接続され、その低圧側が需要家負荷2あるいは太陽光発電機3に接続される。なお、変圧器13と変圧器14とは、同じ配電区間5(図1参照)に属していてもよいし、異なる配電区間5に属していてもよく、異なる配電系統1に属していてもよい。ここでは、変圧器14が交換などの工事の対象であるものとし、変圧器13は、変圧器14の工事に伴う変圧器系統12の停電を回避するために、変圧器系統12の負荷を担当する変圧器の切替え先の候補(以下、切替候補という)であるものとする。
変圧器系統12の負荷を変圧器13に振り替える場合、図2(B)に示すように、変圧器系統11と変圧器系統12とが低圧本線延線15などによってセクション解除(連系)され、変圧器13は、変圧器系統11および変圧器系統12の双方の負荷を担当することになる。そのため、予め、変圧器系統11および変圧器系統12の総負荷と、変圧器13の容量とを加味して、変圧器系統12の負荷を変圧器13に振り替えるか否かが判断される。変圧器系統11および変圧器系統12の総負荷が変圧器13の容量を超えると予測される場合、例えば、図2(C)に示すように変圧器系統12に仮設用変圧器16が設けられ、仮設用変圧器16に負荷を振り替えて変圧器14の工事が行われる。また、仮設用変圧器16を設ける代わりに、低圧発電車に用いて、変圧器系統12の負荷に対して電力が供給される場合もある。
変圧器14の工事に際して、負荷を変圧器13に振り替えるか、もしくは仮設用変圧器16または低圧発電車を用いるかの判断は、変圧器系統11および変圧器系統12の総負荷の予測値に基づいて行われる。一般的に、仮設用変圧器16または低圧発電車を用いる場合、負荷を変圧器13に振り替える場合に比べてコストがかかることから、負荷の予測値が高精度であることが望まれる。本実施形態によれば、負荷の予測値を高精度に算出することができ、この情報を、工事の要目(例、内容、実施時期)の決定する際の判断材料に利用することができる。以下、図3以降を参照して実施形態に係る負荷切替判断システムおよび負荷切替判断プログラムについて説明する。
図3は、実施形態に係る負荷切替判断システムを示すブロック図である。負荷切替判断システム30は、情報記憶部31、処理部32、入力部33、記憶部34、及び出力部35を備える。負荷切替判断システム30は、概略すると以下のように動作する。処理部32は、後述する各種の算出処理によって、図2に示した変圧器系統11、12を流れる最大系統電流の予測値を算出して、その合算値を切替時の最大系統電流の予測値とし、切替候補の変圧器13の容量と切替時の最大系統電流の予測値との比較情報を生成する。入力部33は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどであり、処理部32が行う算出処理の条件などの入力に用いられる。記憶部34は、処理部32による算出処理の結果等を記憶する。出力部35は、ディスプレイあるいはプリンタなどであり、上記の比較情報として、切替時の最大系統電流の予測値の時間履歴と切替候補の変圧器13の容量とグラフ上に表した画像などを出力する。以下、負荷切替判断システム30の各部に付いて説明する。
情報記憶部31は、最大負荷電流および最小負荷電流の予測値の算出に用いられる情報として、契約情報D1、設備情報D2、最大負荷電流予測モデル情報D3、及び最小負荷電流予測モデル情報D4を記憶する。契約情報D1は、需要家負荷2ごとの契約高および契約種別情報を含む。契約高(契約容量)は、契約電力、瞬時の使用の上限の電力などであり、例えば契約の電流が30A、電圧が100Vである場合、3000W(3kW)である。契約種別情報は、需要家負荷2が使用する電気を電圧や相の数などで分類したデータである。例えば、契約種別には、業務用電力、高圧電力、電灯電力、動力用電力などがあり、契約種別情報は、需要家負荷2ごとに契約種別を示す情報である。設備情報D2は、需要家負荷2ごとの配電線、電柱、地中設備などの配電設備の管理に用いられる識別情報である。例えば、設備情報D2は、需要家負荷2と配電設備との接続関係を示す情報を含む。例えば、配電線、電柱、地中設備などの設備要素にはそれぞれ、個別のIDが予め割り付けられており、設備情報D2は、需要家負荷2にいずれの供給要素が接続されているかを、IDを用いて表した情報である。最大負荷電流予測モデル情報D3は、最大負荷電流の予測値を算出する算出式を定める情報であり、各時刻に対応する算出式の係数を含む。最小負荷電流予測モデル情報D4は、最小負荷電流の予測値を算出する算出式を定める情報であり、各時刻に対応する算出式の係数を含む。最大負荷電流および最小負荷電流の予測値の算出処理については、後に図4などで説明する。
また、情報記憶部31は、最大発電電流の予測値の算出に用いられる情報として、分散電源情報D5および最大発電電流予測モデル情報D6を記憶する。分散電源情報D5は、配電系統1(図1参照)に連系されている太陽光発電機3などの分散電源の設備に関する情報である。例えば、分散電源情報D6は、各太陽光発電機3と配電設備(例、配電線7)との接続関係を示す情報を含む。例えば、分散電源情報D6は、各太陽光発電機3がいずれの変圧器系統(図2の符号11、12)に連系されているかの情報を含む。また、分散電源情報D6は、各太陽光発電機3の発電容量(設備容量)を示す情報を含む。例えば、太陽光発電機3には個別のIDが割り付けられており、分散電源情報D6は、太陽光発電機3ごとにIDと発電容量とを関連付けた情報を含む。発電容量は、例えば、kW(キロワット)などで表される。最大発電電流予測モデル情報D6は、最大発電電流の予測値を算出する算出式を定める情報であり、各時刻に対応する算出式の係数を含む。最大発電電流の予測値の算出処理については、後に図5などで説明する。
上述の情報記憶部31は、例えば、ハードディスクなどの大容量記憶装置でもよいし、インターネット回線などを介して処理部32に接続される記憶装置でもよい。また、情報記憶部31は、複数の記憶部で構成されてもよく、上述の各種情報が複数の記憶部に分かれて記憶されていてもよい。これら複数の記憶部は、一部の記憶部が他の記憶部と別の装置に設けられてもよい。また、情報記憶部31の少なくとも一部は、負荷切替判断システム30の外部の装置であってもよく、負荷切替判断システム30は、各種の算出処理に用いる情報の少なくとも一部を外部のサーバなどから取得してもよい。
処理部32は、情報記憶部31と有線または無線によって通信可能に接続される。処理部32は、各種の算出処理に用いられる情報を、情報記憶部31から取得する。処理部32は、予測電流算出部41と、系統電流算出部42と、選択部43と、合算部44と、比較情報生成部45と、条件設定部46とを備える。
予測電流算出部41は、指定された配電設備(例、図2の変圧器13、14)から需要家負荷2へ流れる最大負荷電流の予測値と、この配電設備から需要家負荷2へ流れる最小負荷電流の予測値と、太陽光発電機3などの分散電源から配電設備へ流れる最大発電電流の予測値とを、一年間の一部の期間ごとに算出する。予測電流算出部41は、最大負荷電流算出部47と、最小負荷電流算出部48と、最大発電電流算出部49とを備える。
まず、図4を参照して、最大負荷電流算出部47および最小負荷電流算出部48について説明する。図4は、負荷電流の算出処理の一例を示す説明図である。図4(A)には、契約情報D1(契約高情報、契約種別情報)、及び設備情報D2を用いて、各配電区間5に連系される需要家負荷2を分類した各パターンを示した。ここでは、1つの配電区間5に連系される需要家負荷2に関して、電灯電力の総契約高がA1[kW]、動力用電力の総契約高がA2[kW]、業務用電力の総契約高がA3[kW]、高圧電力の総契約高がA4[kw]とする。1つの配電区間5に関して、総契約高の積算値として(A1+A2+A3+A4)を算出し、電灯電力の総契約高(A1)の比率としてB1=A1/(A1+A2+A3+A4)を算出し、動力用電力(A2)、業務用電力(A3)、高圧電力(A3)についても同様に比率としてB2、B3、B4を算出する。以下の説明では適宜、各配電区間5において、総契約高の積算値(A1+A2+A3+A4)に占める各契約種別の総契約高(例、A1)の比率(例、B1)を組にしたパターン(例、(B1,B2,B3,B4))を構成比パターンと称する。図4(A)のパターン1からパターン4は、複数の配電系統に含まれる複数の配電区間を、構成比パターンに応じて分類したものである。このようなパターン1からパターン4は、例えば、配電系統の各配電区間あるいは各変圧器系統について、各契約種別の契約高の構成比でクラスター分析を実施して分類することで得られる。
図4(A)において、パターン1からパターン4は、それぞれ、各グループの代表的な構成比パターンである。パターン1は、例えば、住宅地区に対応し、電灯電力の割合が大きい。パターン2は、例えば、住宅と工業施設とが隣接する地区に対応し、電灯電力の割合および高圧電力の割合が高い。パターン3は、例えば、商業地区に対応し、業務用電力の割合が高い。パターン4は、例えば、工業地区に対応し、高圧電力の割合が高い。
図4(B)は、図4(A)のパターン1に対応するロードカーブR1、及びパターン4に対応するロードカーブR2を示す図である。パターン1は、例えば、住宅地区に対応し、ロードカーブR1は、6時ごろから負荷電流が緩やかに増加し、夜間に負荷電流が減少する。また、パターン4は、例えば工業地区に対応し、ロードカーブR2は、稼働開始の10時ごろから負荷電流が急峻に増加し、昼食の時間帯に負荷電流が一旦低下した後、稼働終了から夜間にかけて負荷電流が減少する。このように、ロードカーブの形状は、構成比パターンによって大きく異なる。
負荷電流を算出する算出式は、構成比パターンおよび時刻ごとに定められている。図4(C)には、負荷電流の予測値の算出に用られる算出式の一例を示した。図4(C)の式(1)において、ハット付のYは、負荷電流の予測値である。ac,wは偏回帰係数であり、Xc,wは契約高である。添え字のcは、構成比パターンとの対応関係を示し、図4(A)のように構成比パターンが4つのパターンに分類される場合、1、2、3、4のいずれかが割り付けられる。例えば、図4(A)のパターン1に分類される配電区間に関してcが1、パターン2に分類される配電区間に関してcが2というように、cの値が割り付けられる。また、添え字のwは、契約種別との対応関係を示し、例えば契約種別が「電灯電力」、「動力用電力」、「業務用電力」、の3種類である場合、1、2、3のいずれかが割り付けられる。例えば、契約種別が「電灯電力」に関してwが1、「動力用電力」に関してwが2というように割り付けられる。例えば、a1,1、X1,1は、それぞれ、パターン1に分類される配電区間に関して契約種別が「電灯電力」の偏回帰係数、契約高である。
また、Y、a、Xのそれぞれの上付き文字のtは、負荷電流の予測値の算出対象の時間帯を示し、例えば、毎正時に対応する1から24のいずれかの整数が割り付けられる。ここでは、算出対象の時間帯は、例えば、月、平日あるいは休日の区別、時間帯の3種類の項目で区分されている。例えば、月が12種類、平日あるいは休日の区別が2種類、時間帯が24種類に分類される場合、その組み合わせで算出対象の時間帯は、12×2×24の576種類に分類され、576種類の時間帯のそれぞれに対して、負荷電流の予測値を算出する算出式の偏回帰係数(ac,w)が予め算出される。なお、月、平日あるいは休日の区別、時間帯の3項目以外の項目があってもよく、例えば曜日、気温などの項目があってもよい。また、各項目を区分する数は任意である。例えば、月を2か月ごとの6区分としてもよいし、平日あるいは休日の区分に正月、連休初日、連休最終日などの区分を追加してもよい。
Xc,wは、契約高情報から得られる情報であり、偏回帰係数(ac,w)は、例えば最小2乗法によって、測定値に対する誤差の2乗和が最小とする値として算出される。例えば、配電系統の電流を目的変数とし、分類したクラスター(構成比パターン)ごとの契約高を説明変数として、重回帰分析を実施することで、実負荷電流の予測モデル(最大負荷電流予測モデル情報D3、最小負荷電流予測モデル情報D4)が得られる。図3の最大負荷電流算出部47は、オペレータが入力部33を介して入力する算出条件(算出対象の期間、変圧器系統)に基づいて、最大負荷電流予測モデル情報D3から算出条件に合致する偏回帰係数(ac,w)を取得する。また、最大負荷電流算出部47は、図4(C)の式(1)に契約高情報から得られるXc,wを代入して、最大負荷電流の予測値を算出する。同様に、図3の最小負荷電流算出部48は、最小負荷電流の予測値を算出する。最小負荷電流の予測値を算出する計算式は、最大負荷電流の予測値を算出する計算式と同様であるが、偏回帰係数(ac,w)が異なる。なお、図4で説明した負荷電流の算出処理は、一例であり、その他の手法で負荷電流の予測値を算出してもよく、数値シミュレーションにおけるモデルの選択は任意である。また、例えば、需要家負荷2と変圧器13との間、あるいは変圧器13などにセンサを設けて電流値を測定し、測定値を統計処理することで、負荷電流の予測値を算出してもよい。
次に、最大発電電流の予測値の算出について説明する。図5は、発電電流の算出処理の一例を示す説明図である。図5(A)において符号E0は、発電量の理論値の時間推移である。発電量の理論値は、日射量の理論値と太陽光発電機の発電容量との積で表される。符号E1からE3は、それぞれ、天気および時刻に応じた発電指標値である。この発電指標値は、天気および時刻に応じた実際の発電量を統計処理し、発電量の理論値で規格化した値(kwあたりの発電量)である。符号E1は、快晴の発電指標値であり、符号E2は、晴の発電指標値である。また、符号E3は、雨もしくは曇の発電指標値である。このような天気の種別ごとの発電指標値の時間推移の情報は、数式またはテーブルデータの形式で表され、最大発電電流予測モデル情報D6として情報記憶部31に記憶される。
図3の最大発電電流算出部49は、情報記憶部31から最大発電電流予測モデル情報D6および分散電源情報D5を取得する。最大発電電流算出部49は、発電指標値を発電量の理論値に対する補正係数として用いて、最大発電電流の予測値を算出する。最大発電電流算出部49は、オペレータが入力部33を介して入力する天気の種別に基づいて、快晴の発電指標値E1、晴の発電指標値E2、及び雨もしくは曇の発電指標値E3のいずれを用いるか決定する。最大発電電流算出部49は、図5(B)に示す式(2)に従って発電量の予測値を算出する。式(2)において、Pは発電量の予測値であり、bは発電指標値であり、Zは太陽光発電機の発電容量あたりの発電量の理論値である。なお、上付きのtは時刻を表す。また、Qは、太陽光発電機の発電容量であり、分散電源情報D5から求められる。例えば、最大発電電流算出部49は、オペレータが入力部33を介して入力した変圧器系統に関する発電電流を算出する際に、この変圧器区間に連系される太陽光発電機の発電容量の総量を、分散電源情報D5を用いて算出する。Z×Qは、太陽光発電機の発電量の理論値に相当し、bは発電量の理論値に対する補正係数に相当する。最大発電電流算出部49は、式(2)を用いて算出される発電量(kw)予測値を、電圧(V)で割ることで、最大発電電流の予測値を算出する。
図3の系統電流算出部42は、最小負荷電流算出部48が算出した最小負荷電流の予測値と、最大発電電流算出部49が算出した最大発電電流の予測値との差分を、系統電流として算出する。選択部43は、系統電流算出部42が算出した系統電流と、最大負荷電流算出部47が算出した最大負荷電流の予測値とのうち大きい方を、最大系統電流として選択する。最大負荷電流の予測値は、分散電源の影響を無視した場合の最大系統電流に相当する。
図6は、最大負荷電流、及び最小負荷電流と発電電流とから算出される最大系統電流の説明図である。図6(A)において、符号Q1は最大負荷電流の予測値の時間履歴であり、符号Q2は、所定の時刻(例、12時)における最大負荷電流の予測値である。また、図6(B)において、符号Q3は、最小負荷電流の予測値の時間履歴であり、符号Q4は、最大発電電流の予測値の時間履歴であり、符号Q5は、所定の時刻(例、12時)における系統電流の予測値である。系統電流算出部42は、各時刻における最小負荷電流の予測値(Q3)と最大発電電流の予測値(Q4)との差分を算出することによって、各時刻における系統電流(Q5)を算出し、系統電流の予測値の時間履歴を求める。選択部43は、各時刻(例、12時)における最大負荷電流の予測値(図6(A)のQ2)と、同じ時刻(例、12時)における系統電流の予測値(図6(B)のQ5)とを比較し、値が大きい方を最大系統電流として選択する。
ところで、系統電流としては、最大負荷電流から最小発電電流を差し引いた値もある。最小発電電流が0以上であることから、最大負荷電流は、最大負荷電流から最小発電電流を差し引いた値以上になる。また、系統電流として、最大発電電流から最大負荷電流を差し引いた値もある。最大負荷電流の値は、最小負荷電流の値以上であることから、最大発電電流から最小負荷電流を差し引いた値は、最大発電電流から最大負荷電流を差し引いた値以上になる。上述のように、最大負荷電流の予測値と、最大発電電流の予測値から最小負荷電流の予測値を差し引いた系統電流の予測値とのうち、大きい方を最大系統電流の予測値として選択すると、系統電流を過小評価することを避けることができる。選択部43は、選択した最大系統電流の予測値を記憶部34に記憶させる。
条件設定部46は、オペレータから入力部33に入力される情報に基づいて、処理部32による算出処理の算出条件を設定する。例えば、オペレータは、入力部33を介して、工事対象の配電設備(例、図2の変圧器14)の情報、切替候補の配電設備(例、図2の変圧器13)、及び工事の予定時期(算出対象の期間)を入力する。例えば、処理部32は、設備情報D2を情報記憶部31から取得し、設備情報D2を用いて地図上に変圧器の位置を示した画像をディスプレイなどの出力部35に表示させ、オペレータは、マウスなどの入力部33を操作することで、この画像上でポインタを移動させ変圧器を指定してもよい。また、処理部32は、変圧器のIDのリストを表す画像を出力部35に表示させ、オペレータは、このリストを参照して、キーボードなどの入力部33を操作することで変圧器のIDを入力してもよい。同様に、オペレータは、キーボードなどの入力部33を操作することで工事の予定時期(算出対象の期間)を入力してもよい。
条件設定部46は、例えば、オペレータが入力する工事対象の変圧器14(図2参照)の情報および工事の予定時期に応じて、予測電流算出部41が算出対象とする変圧器系統12および算出対象の期間を指定する。予測電流算出部41は、指定された算出対象の変圧器系統12および期間に関して算出処理を行い、記憶部34は、その算出結果に応じた最大系統電流の予測値を記憶する。また、条件設定部46は、オペレータが入力する切替候補の変圧器13の情報に応じて、予測電流算出部41による算出対象を変圧器系統11に変更する。そして、予測電流算出部41は、変更された算出対象の変圧器系統11、及び工事対象の変圧器14と同じ期間に関して算出処理を行い、記憶部34は、その算出結果に応じた最大系統電流の予測値を記憶する。このようにして、記憶部34には、工事対象の変圧器14に対応する最大系統電流の予測値、及び切替候補の変圧器13に対応する最大系統電流の予測値が記憶される。合算部44は、配電設備として工事対象の配電設備(例、図2の変圧器14)が指定された際の最大系統電流と、配電設備として切替候補の配電設備(例、図2の変圧器13)が指定された際の最大系統電流との合算によって切替時の最大系統電流を算出する。
図7は、切替時の最大系統電流の説明図である。図7の符号Q11は、変圧器系統11の最大系統電流であり、符号Q12は、変圧器系統12の最大系統電流である。変圧器系統11と変圧器系統12とでセクション解除がなされた状態(切替時)において、低圧本線延線15には変圧器系統12の最大系統電流Q12と同程度の系統電流Q13が流れることになり、変圧器13における系統電流(切替時の最大系統電流Q14)は、最大系統電流Q11と最大系統電流Q12との合算値と同程度になる。比較情報生成部45(図3参照)は、切替時の最大系統電流Q14と、切替候補の配電設備(例、変圧器13)の容量との比較情報を生成する。
図8および図9は、変圧器の容量と切替時の最大系統電流との比較情報の例を示す図である。ここでは、出力部35がディスプレイなどであり、比較情報は、出力部35に表示される画像であるものとする。図8(A)の比較情報D11は、切替時の最大系統電流の予測値の時間履歴D11aおよび変圧器13の容量D11bをグラフ上に表した画像である。比較情報D11は、例えば、符号D11cで示すような算出条件の情報が表示されるように生成される。切替時の最大系統電流の予測値(D11a)が容量D11b以下の時間帯T1は、変圧器13に負荷を振り替えることが可能な時間帯に相当し、切替時の最大系統電流の予測値(D11a)が容量D11bを超える時間帯T2は、変圧器13に負荷を振り替えることが推奨されない時間帯に相当する。
オペレータは、このような比較情報D11を判断材料に用いることで、変圧器13に負荷を振り替える工事を行う時間帯を決定することができる。また、工事を行う時間帯に制約があって、この時間帯が時間帯T2にかかる場合、オペレータは、工事を仮設用変圧器または低圧発電車を用いる内容に決定することができるし、他の日に工事を行うことを検討することもできる。例えば、図8(B)は、図8(A)から工事の予定時期を変更した際の比較情報D12の例である。このように、工事の予定時期を変更することで、予測電流算出部41による算出対象の時期が変更になり、切替時の最大系統電流の予測値の時間履歴D12aが図8(A)の時間履歴D11aから変化する場合がある。そのため、変圧器13に負荷を振り替えることが可能な時間帯T1が変化し、制約がある時間帯で変圧器13に負荷を振り替えることが可能になる場合もある。出力部35は、比較情報D11および比較情報D12を、1つの画面上で表示してもよいし切替えて表示してもよい。また、算出対象の期間に含まれる日数は、オペレータが任意に設定可能であり、例えば、オペレータは、算出対象の期間として1週間を指定し、処理部32は、月曜日から日曜日までの各曜日に対応する比較情報を生成し、出力部35は、これらの各曜日の比較情報に相当する画像を並べて表示してもよい。
また、オペレータは、比較情報などを用いて、切替候補の変圧器を変更することを検討することもできる。例えば、図8(C)は、図8(A)から切替候補の変圧器を変更した際の比較情報D13の例である。切替候補の変圧器を変更することで、変圧器系統の負荷のパターン(図4(A)参照)が変化し、あるいは変圧器系統に連系される分散電源の総容量が変化して、切替時の最大系統電流の予測値の時間履歴D13aが変化する場合がある。そのため、この変圧器に負荷を振り替えることが可能な時間帯T1が変化し、制約がある時間帯でこの変圧器に負荷を振り替えることが可能になる場合もある。出力部35は、比較情報D11から比較情報D13のうち2つ以上を、1つの画面上で表示してもよいし切替えて表示してもよい。また、切替候補の変圧器の数は、オペレータが任意に設定可能であり、例えば、オペレータは、複数の切替候補の変圧器を指定し、処理部32は、複数の切替候補のそれぞれについて比較情報を生成し、出力部35は、これら比較情報に相当する画像を並べて表示してもよい。
また、オペレータは、天気の影響を検討することもできる。例えば、図9(A)は天気が「晴」の比較情報D14であり、図9(B)は「曇」の場合の比較情報D15である。天気を変更することで、変圧器系統に連系される分散電源の発電量(図5参照)が変化して、切替時の最大系統電流の予測値の時間履歴が変化する場合がある。オペレータは、例えば、「晴」と「曇」のいずれでも負荷を切替可能な時間帯を選択すること等ができる。
なお、図2から図9の説明においては、低圧系統の工事を中心に説明したが、実施形態に係る負荷切替判断システムは、高圧系統(配電区間)を切替える工事に適用することもできる。図10は、配電区間の切替時の最大系統電流の説明図である。図10(A)は、配電区間の切替前に対応し、図10(B)は配電区間の切替後に対応する。図10(A)において、符号A1からA3は、配電用変電所4から電力の供給を受ける配電区間であり、符号B1、B2は、配電用変電所51から電力の供給を受ける区間である。ここでは、開閉器52の交換などの工事を行う場合を想定し、工事中において配電区間A2と配電区間A3との間が絶縁になるものとする。開閉器53は、連系自動開閉器などであり、配電区間A3と配電区間B2との間の導通、絶縁を切替可能である。開閉器53は、図10(A)において配電区間A3と配電区間B2との間を絶縁にしている。開閉器53は、図10(B)において配電区間A3と配電区間B2との間を導通にしており、配電区間A3は、配電用変電所51から電力の供給を受ける。
図10の符号Q21は、配電区間A3における配電設備から需要家負荷へ流れる最大負荷電流の予測値である。また、符号Q22、Q23は、それぞれ、配電区間B1、B2における配電設備から需要家負荷へ流れる最大負荷電流の予測値である。これら最大負荷電流の予測値は、図4で説明した手法などで算出可能である。例えば、図3に示した予測電流算出部41の最大負荷電流算出部47は、指定された配電区間において需要家負荷2へ流れる最大負荷電流の予測値を一年間の一部の期間ごとに算出する。
図10(A)において、配電用変電所から送出される最大系統電流の予測値Q24は、最大負荷電流の予測値Q22と予測値Q23との合算値と同程度である。図10(B)において、配電用変電所51から送出される最大系統電流の予測値Q25は、配電区間を切替える前の予測値Q24と、配電区間A3における最大負荷電流の予測値Q21との合算値と同程度である。例えば、図3に示した合算部44は、工事対象の配電区間A3の最大負荷電流の予測値Q21と、工事対象の配電区間に連系される切替候補の配電区間B1、B2の最大負荷電流の予測値Q22、Q23との合算によって切替時の最大系統電流の予測値Q25を算出する。また、図3に示した比較情報生成部45は、切替時の最大系統電流の推定値Q25と、切替候補の配電区間の容量Q26(配電線7の過負荷限度)との比較情報D21を生成する。オペレータは、この比較情報を参照することで、配電区間の切替が可能な時間帯などを決定することができる。なお、分散電源(太陽光発電機3)の影響については、図5などで説明した手法を利用して加味することができる。
次に、上述のような負荷切替判断システム30の動作に基づいて、実施形態に係る負荷切替判断方法について説明する。図11は、実施形態に係る負荷切替判断方法を示すフローチャートである。負荷切替判断システム30の構成および各種処理については、図11以外の図も参照する。ステップS1において、条件設定部46は、算出条件を設定する。例えば、条件設定部46は、オペレータから入力部33に入力された情報に基づいて、算出対象の変圧器系統および算出対象の期間を指定する。
ステップS2において、処理部32は、指定された算出対象の変圧系統に分散電源があるか否かを判定する。指定された算出対象の変圧系統に分散電源があると処理部32が判定した場合(ステップS2;Yes)、ステップS3において、最大発電電流算出部49は、最大発電電流の予測値を算出する(図5参照)。また、ステップS4において最小負荷電流算出部48は、最小負荷電流の予測値を算出し、ステップS5において最大負荷電流算出部47は、最大負荷電流の予測値(図4参照)。ステップS3の処理およびステップS4の処理の後、ステップS6において、系統電流算出部42は、最大発電電流の予測値と最小負荷電流の予測値との差分から、系統電流の予測値を算出する。また、ステップS5の処理およびステップS6の処理の後に、ステップS7において、選択部43は、系統電流の予測値と最大負荷電流の予測値とを比較し、その大きい方を最大系統電流として選択する(図6参照)。
また、ステップS2において、指定された算出対象の変圧系統に分散電源がないと処理部32が判定した場合(ステップS2;No)、ステップS8において、最大負荷電流算出部47は、ステップS5と同様に最大負荷電流の予測値を算出する。ステップS9において、記憶部34は、ステップS7で選択された最大系統電流の予測値、またはステップS8で算出された最大負荷電流の予測値を最大系統電流の予測値として、記憶する。
ステップS10において、条件設定部46は、予定された全ての時間帯に関する算出処理が完了したか否かを判定する。条件設定部46は、予定された一部の時間帯に関する算出処理が完了していないと判定した場合(ステップS10;No)、ステップS11において、算出対象の時間帯を次の時間帯に設定する。これにより、ステップS2からステップS10の処理は、予定された全ての時間帯に関する算出処理が完了するまで繰り返えされる。
条件設定部46は、予定された全ての時間帯に関する算出処理が完了したと判定した場合(ステップS10;Yes)、ステップS12において、予定された全ての月日に関する算出処理が完了したか否かを判定する。条件設定部46は、予定された一部の月日に関する算出処理が完了していないと判定した場合(ステップS12;No)、ステップS13において、算出対象の月日を次の月日に設定する。これにより、ステップS2からステップS12の処理は、予定された全ての月日に関する算出処理が完了するまで繰り返えされる。
条件設定部46は、予定された全ての月日に関する算出処理が完了したと判定した場合(ステップS12;Yes)、ステップS14において、予定された全ての変圧器に関する算出処理が完了したか否かを判定する。算出処理が予定される変圧器は、工事対象の変圧器および切替候補の変圧器であり、切替候補の変圧器の数は1つでもよいし、2つ以上でもよい。条件設定部46は、予定された一部の変圧器に関する算出処理が完了していないと判定した場合(ステップS14;No)、ステップS15において、算出対象の変圧器を次の変圧器に設定する。これにより、ステップS2からステップS14の処理は、予定された全ての月日に関する算出処理が完了するまで繰り返えされる。
予定された全ての変圧器に関する算出処理が完了したと条件設定部46が判定した場合(ステップS14;Yes)、ステップS16において、合算部44は、記憶部34に記憶されている最大系統電流の予測値うち、工事対象の変圧器に対応する最大系統電流の予測値と、切替候補の変圧器に対応する最大系統電流の予測値とを合算することにより、切替時の最大系統電流の予測値を算出する(図7参照)。ステップS17において、比較情報生成部45は、変圧器の容量と、切替時の最大系統電流の予測値との比較情報を生成する(図8、図9参照)。ステップS18において、出力部35(例、ディスプレイ)は、比較情報に相当する画像を表示する。オペレータは、この比較情報を判断材料に用いて、工事の内容、実施時期などの要目を決定することができる。
上述の実施形態において、処理部32は、例えばコンピュータシステムを含む。処理部32は、記憶部34に記憶されている負荷切替判断プログラムを読み出し、この負荷切替判断プログラムに従って各種の処理を実行する。この負荷切替判断プログラムは、コンピュータに、指定された配電設備から需要家負荷へ流れる最大負荷電流の予測値と、配電設備から需要家負荷へ流れる最小負荷電流の予測値と、分散電源から配電設備へ流れる最大発電電流の予測値とを、一年間の一部の期間ごとに算出することと、最小負荷電流の予測値と最大発電電流の予測値との差分によって系統電流を算出することと、系統電流と最大負荷電流の予測値とのうち大きい方を最大系統電流として選択することと、配電設備として工事対象の配電設備が指定された際の最大系統電流と、配電設備として切替候補の配電設備が指定された際の最大系統電流との合算によって切替時の最大系統電流を算出することと、切替時の最大系統電流と、切替候補の配電設備の容量との比較情報を生成することと、を実行させる。上記の負荷切替判断プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。