以下、添付図面を参照しつつ、本願に開示される技術思想の好適な実施形態の例を説明する。
図1は、本発明を実施し得るシステム100のハードウェア構成を説明するための図である。図1に描かれるように、システム100は、ハードウェア的には一般的なコンピュータと同様であり、CPU102,主記憶装置104,大容量記憶装置106,ディスプレイ・インターフェース107,周辺機器インタフェース108,ネットワーク・インターフェース109などを備えることができる。一般的なコンピュータと同様に、主記憶装置104としては高速なRAM(ランダムアクセスメモリ)を使用することができ、大容量記憶装置106としては、安価で大容量のハードディスクやSSDなどを用いることができる。システム100には、情報表示のためのディスプレイを接続することができ、これはディスプレイ・インターフェース107を介して接続される。またシステム100には、キーボードやマウス、タッチパネルのようなユーザインタフェースを接続することができ、これは周辺機器インタフェース108を介して接続される。ネットワーク・インターフェース109は、ネットワークを介して他のコンピュータやインターネットに接続するために用いられることができる。
大容量記憶装置106には、オペレーティングシステム(OS)110や、心筋血流増加率算出プログラム120、位置合わせプログラム122、輪郭抽出・体積計算プログラム124が格納される。システム100の最も基本的な機能は、OS110がCPU102に実行されることにより提供される。心筋血流増加率算出プログラム120は、本願によって開示される新規な処理に関するプログラム命令を備えており、それら命令の少なくとも一部がCPU102に実行されることにより、システム100は、本願に開示される新規な処理を遂行することができる。
位置合わせプログラム122は、複数の核医学画像データ間で画像の位置や大きさを合わせるための命令を備えるプログラムである。現在市販の多くのPET,SPECT装置には、このようなプログラムが備えられており、位置合わせプログラム122として、そのようなプログラム又はその一部を利用してもよい。
輪郭抽出・体積計算プログラム124は、心筋の輪郭を抽出するための命令を備えるプログラムである。心筋輪郭抽出のアルゴリズム又はソフトウェアにはいくつかのものが知られており、例えば本願出願人によるPCT出願の国際公開公報(WO2013/047496A1)にそのようなアルゴリズムが開示されている。その他にも、Cedras-Sinai Medical Centerで開発されたQGS、University of Michiganで開発された4D-MSPECT、札幌医大で開発されたpFASTのような、心筋輪郭抽出のアルゴリズム又はソフトウェアが存在する。輪郭抽出・体積計算プログラム124に含まれるプログラム命令は、これらのアルゴリズムやソフトウェアを使って心筋輪郭の抽出を行い、抽出した心筋の体積を計算するように構成されてもよい。本願に開示される発明の実施形態は、様々な心筋輪郭抽出アルゴリズムと共に動作しうるが、その抽出精度の高さから、WO2013/047496A1に記載のアルゴリズムを用いて心筋輪郭抽出を行うことは好ましいことである。
大容量記憶装置106にはさらに、三次元核医学画像データ130,132,134が格納されていることができる。これらの核医学画像データは、プログラム120,122,124による解析又は操作の対象となる。大容量記憶装置106にはさらに、上記核医学画像データに関連する各種のデータ収集条件を格納する、収集条件ファイル131,133,135も格納されていることができる。これらのデータの詳細については後に改めて説明する。図1には他にも、データ140,150,152が描かれているが、これらについても後に説明する。
システム100は、図1に描かれた要素の他にも、電源や冷却装置など通常のコンピュータシステムが備える装置と同様の構成を備えることができる。コンピュータシステムの実装形態には、記憶装置の分散・冗長化や仮想化、複数CPUの利用、CPU仮想化、DSPなど特定処理に特化したプロセッサの使用、特定の処理をハードウェア化してCPUに組み合わせることなど、様々な技術を利用した様々な形態のものが知られている。本願で開示される発明は、どのような形態のコンピュータシステム上に搭載されてもよく、コンピュータシステムの形態によってその範囲が限定されることはない。本明細書に開示される技術思想は、一般的に、(1)処理手段に実行されることにより、当該処理手段を備える装置またはシステムに、本明細書で説明される各種の処理を遂行させるように構成される命令を備えるプログラム、(2)当該処理手段が当該プログラムを実行することにより実現される装置またはシステムの動作方法、(3)当該プログラム及び当該プログラムを実行するように構成される処理手段を備える装置またはシステムなどとして具現化されることができる。前述のように、ソフトウェア処理の一部はハードウェア化される場合もある。
また、システム100の製造販売時や起動時には、データ130〜135等は、大容量記憶装置106の中に記憶されていない場合が多いことに注意されたい。これらのデータは、例えば周辺機器インタフェース108やネットワーク・インターフェース109を介して外部の装置からシステム100に転送されるデータであってもよい。実施形態によっては、データ131,133,135,140,150,152は、心筋血流増加率算出プログラム120がCPU102に実行されることを通じて形成されたものであってもよい。また、位置合わせプログラム122やOS110の実装形態によっては、データ131,133,135,140,150,152の少なくともいずれかは、大容量記憶装置106に格納されず、主記憶装置104にしか格納されない場合もある。本願で開示される発明の範囲は、これらのデータの有無によって限定されるものではないことを、念のために記しておく。
次に、三次元核医学画像データ130,132,134について詳しく説明する。これらの画像データは、心筋血流増加率を求めるために遂行される核医学測定により得られる画像データである。また本実施例においては、当該三次元核医学画像データは、核医学測定の手法としてSPECTを用いて得られた画像データである。心筋血流増加率を求めるには、一般に、負荷(Stress)を与えて核医学測定を行って得られた核医学画像データと、安静(Rest)時に核医学測定を行って得られた核医学画像データとを比較する。従って、心筋血流増加率を求めるためには、少なくともこれら2つの核医学画像データが必要である。本実施例においては、データ130が、負荷(Stress)を与えた直後にSPECTデータ収集を行って得られたデータであり、データ134が、安静(Rest)時にSPECTデータ収集を行って得られたデータであるとする。以後、それぞれ負荷時データ、安静時データと称する場合がある。
以下に詳細に説明する実施例においては、画像データ130,132,134は、いずれも、各画素値が放射線カウント値に対応している画像データである。しかし、実施形態によっては、画像データ130,132,134は、各画素値が組織放射能濃度を表すような画像データである場合がある。
さらに、本願で解析対象とする核医学データの収集を行うプロトコールは、負荷時測定と安静時測定との間に、放射性医薬品の投与を行わずに、核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線の収集を行うことを含むことを特徴とする。この放射線収集をプレスキャン(PreScan)と呼ぶ。プレスキャンは、負荷時測定と安静時測定とのうち、時間的に後の測定の直前に行われ、当該後の測定における一連のデータ収集の直前に行われる。例えば、後で図2を参照して説明するように、後の測定が負荷時データの測定である場合は負荷をかける直前、後の測定が安静時データである場合は放射性医薬品投与の直前に、プレスキャンを行う。本実施例においては、このプレスキャンによって得られた核医学画像データを符号132で表している。従って、本願で解析対象とするデータには、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134の、少なくとも3つが含まれる。
図2を参照して、本願で解析対象とするデータを取得するための核医学測定プロトコールについて、より具体的に説明する。この図には、プロトコールの中でどのようなイベントが行われるのかが時間軸上に模式的に描かれている。上述のように、心筋血流増加率を求めるには負荷時及び安静時のそれぞれについて核医学測定を行う必要があるが、負荷時測定を先行させるようなプロトコールを組むこともできるし、安静時測定を先行させるようなプロトコールを組むこともできる。
負荷時測定を先行する場合、はじめに被験者に負荷を与える(202)。負荷としては、例えばエルゴメータやトレッドミルを用いた運動負荷、アデノシンやジピリダモールを用いた薬剤負荷を採用することができる。負荷をかけている最中に、放射性医薬品の投与(静脈注射)を行う(204)。続いて負荷を停止し、核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線のデータ収集を行う(206)。その後、一定の時間(数時間)を空けて安静時測定を行うのであるが、安静時測定の前に、まずは放射性医薬品の投与を行わずに核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線のデータ収集を行う(208)。すなわちプレスキャンを行う。プレスキャン終了直後、安静時測定用の放射性医薬品投与を行い(210)、核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線のデータ収集を行う(212)。データ収集206によって得られる画像データが負荷時データ130となり、データ収集208によって得られる画像データがプレスキャンデータ132となり、データ収集212によって得られる画像データが安静時データ134になる。
一方、安静時測定を先行する場合、まずは被験者に安静時測定用の放射性医薬品投与を行い(222)、核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線のデータ収集を行う(224)。その後、一定の時間(数時間)を空けて負荷時測定を行うが、負荷時測定の前に、まずは放射性医薬品の投与を行わずに核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線データ収集を行う(226)。すなわちプレスキャンを行う。プレスキャン終了後、直ちに負荷を開始する(228)。また、負荷の最中に、負荷時測定用の放射性医薬品の投与を行う(230)。負荷終了後、核医学装置を用いて被験者の体内から放射される放射線のデータ収集を行う(232)。データ収集232によって得られる画像データが負荷時データ130となり、データ収集226によって得られる画像データがプレスキャンデータ132となり、データ収集224によって得られる画像データが安静時データ134になる。
なお前述のように、本実施例においては、放射線データ収集に用いられる核医学装置はSPECT装置であり、従って投与される放射性医薬品は、SPECT装置による放射線データ収集に適した医薬品である。心筋血流の核医学画像化に適したSPECT用放射線医薬品としては、例えば201TlCl(塩化タリウム)やテトロホスミンテクネチウム(99mTc)注射液、15-(4-ヨードフェニル)- 3(R,S)-メチルペンタデカン酸(123I)注射液等が知られている。本願に開示される発明は、心筋血流の核医学画像化に適した放射性医薬品のいずれに対しても使用可能である。
次に、図3を用いて、本願に開示される、心筋血流増加率を算出する処理300の流れを説明する。処理300は、心筋血流増加率算出プログラム120がCPU102に実行されることにより、システム100が遂行する処理であることができる。また、実施形態によっては、処理300が遂行される途中で、位置合わせプログラム122や輪郭抽出・体積計算プログラム124が心筋血流増加率算出プログラム120から呼び出され、CPU102に実行されることにより、所定の処理が遂行されることがある。
ステップ305は処理の開始を示す。ステップ310では、心筋血流増加率算出プログラム120による処理対象となるデータの読み込み(ロード)が行われる。すなわち、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134のそれぞれにつき、その全部又は一部が大容量記憶装置106から読み出され、主記憶装置104に格納される。なお、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134は,外部の核医学装置から,ネットワーク・インターフェース109を介して直接主記憶装置104に取り込まれても良い。
ステップ315では、データ収集プロトコールの判定が行われる。すなわち、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134を収集したプロトコールが、負荷時測定と安静時測定とのうちどちらを先行させるプロトコールであったのかを判定する。この判定は、例えば、負荷時データ130及び安静時データ134に含まれている時間情報(例えばデータ収集開始時刻等)を比較することにより、行われてもよい。例えば、負荷時データ130の収集開始時刻が安静時データ134の収集開始時刻よりも時間的に早い場合は、負荷先行のプロトコールであったと判定することができる。逆に、負荷時データ130の収集開始時刻が安静時データ134の収集開始時刻よりも時間的に遅い場合は、安静先行のプロトコールであったと判定することができる。実施形態によっては、どちらのプロトコールであるかの情報を操作者がシステム100に入力することにより、システム100がデータ収集プロトコールを特定するようにしてもよい。
なお、データ130が負荷時データであることは、データ130に含まれる識別情報により判断されてもよい。同様に、データ134が安静時データであることは、データ134に含まれる識別情報により判断されてもよい。
ステップ320では、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134についての各種収集条件の取得が行われる。各種収集条件とは、例えば次のような情報である。
・ 被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。例えば投与する放射性医薬品を投与用のシリンジに入れた状態で、そのシリンジごと放射線量を測定することにより、得られる値。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ データ収集時間
・ 被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。例えば、投与後のシリンジに残存する放射線量の測定値。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
・ BCF(ベクレルキャリブレーションファクタ,放射線カウント値を放射能濃度(例えばBq/ml)に変換する係数)
実施形態によっては、これらの収集条件は負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134に含まれていることがある。その場合、システム100は、データ130〜134からこれらの情報を読み込んで、主記憶装置104や大容量記憶装置106に格納してもよい。
実施形態によっては、システム100は、これらの収集条件を操作者が入力するためのユーザインタフェース(例えばダイアログボックス)を生成して表示するように構成されてもよい。操作者が必要な収集条件を入力すると、システム100は、それらを主記憶装置104や大容量記憶装置106に格納してもよい。
なお、画像データ130〜134が、各画素値が組織放射能濃度を表す画像データである実施形態においては、BCFは使われないので、BCFを取得することも不要である。
上記の収集条件のうち、どの情報が必要であるかは、実施形態によって異なってもよい。実際に、後にステップ345の実施形態をいくつか紹介するが、これらの実施形態の間で必要な情報は異なっている。また、負荷時データ130や安静時データ134と、プレスキャンデータ132とにおいては、必要とされる情報が異なってもよい。システム100は、収集条件の入力対象となるデータによって、(すなわち当該データが負荷時データ130であるか、プレスキャンデータ132であるか、安静時データ134であるかによって、)異なるユーザインタフェースを生成して表示してもよく、それぞれのユーザインタフェースは、当該データに対して求められる固有のデータ入力に便利なように構成されてもよい。
上述のように、システム100は、取得した収集条件情報を、主記憶装置104や大容量記憶装置106に格納するように構成されてもよい。本実施例では、あくまで例であるが、負荷時データ130のための収集条件情報が収集条件ファイル131に、プレスキャンデータ132のための収集条件情報が収集条件ファイル133に、安静時データ134のための収集条件情報が収集条件ファイル135に、それぞれ格納されているとする。
ステップ325では、必要であれば、データ132がプレスキャンデータであるか否かの判定が行われる。実施形態によっては、この判定は、データ132に含まれる識別情報に基づいて行われてもよい。実施形態によっては、この判定は、データ132に含まれている時間情報(例えばデータ収集開始時刻等)に基づいて行われてもよい。例えば、データ収集プロトコールが負荷先行の場合、データ132が示すデータ収集開始時刻が、負荷時データ130のデータ収集終了時刻と安静時データ134のデータ収集開始時刻との間にあることをもって、データ132がプレスキャンデータであると判定してもよい。また、データ収集プロトコールが安静先行の場合、データ132が示すデータ収集開始時刻が、安静時データ134のデータ収集終了時刻と負荷時データ134のデータ収集開始時刻との間にあることをもって、データ132がプレスキャンデータであると判定してもよい。
ステップ330では、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134の位置合わせが行われる。すなわち、これらのデータから画像化される心筋の位置や大きさが、互いに合致するように位置や大きさの補正を行う。この処理は、位置合わせプログラム122がCPU102に実行されることにより遂行されてもよい。心筋血流増加率算出プログラム120は、ステップ330において位置合わせプログラム122を呼び出してCPU102に実行させるように構成されてもよい。
データ収集プロトコールが負荷先行の場合、安静時データ134を基準に位置合わせを行うことが好ましい。データ収集プロトコールが安静先行の場合、負荷時データ130を基準に位置合わせを行うことが好ましい。
ステップ335はオプションの処理である。このステップでは、位置合わせ後の負荷時データ130及び安静時データ134のそれぞれについて、心筋輪郭抽出が行われる。ステップ335の処理は、ステップ345の実施形態として、処理600又は処理700を行う場合に、特に必要とされる。
ステップ335の処理は、輪郭抽出・体積計算プログラム124がCPU102に実行されることにより遂行されてもよい。前述のように、心筋輪郭抽出のアルゴリズム又はソフトウェアにはいくつかのものが知られており、例えば本願出願人によるPCT出願の国際公開公報(WO2013/047496A1)に、そのようなアルゴリズムが開示されている。輪郭抽出・体積計算プログラム124に含まれるプログラム命令は、そのアルゴリズムを使って心筋輪郭の抽出を行うように構成されてもよい。
また実施形態によっては、輪郭抽出・体積計算プログラム124は、抽出した輪郭を使って、心筋の体積を計算するように構成されてもよい。例えば、抽出した心筋内膜と心筋外膜との間に存在する画素数に、画素−体積の換算係数(例えば、画素あたりの体積)を乗じて、心筋の体積とすることとしてもよい。
実施形態によっては、プレスキャンデータ132についても心筋輪郭抽出を行うように構成してもよい。しかしプレスキャンは、データ収集時間が短い場合があり、放射性医薬品の投与も行わずにデータ収集を行うため、プレスキャンデータ132の各画素の画素値(放射線カウント値)は低いことが多い。このためプレスキャンデータ132においては、心筋輪郭抽出に失敗する場合がある。その場合、プレスキャンデータ132の心筋輪郭情報は、負荷時データ130または安静時データ134のいずれかの心筋輪郭情報と同じとみなすこととしてもよい。特に、負荷時データ130と安静時データ134とのうち、時間的に遅く収集されたデータの心筋輪郭情報と同じとみなすこととしてもよい。
ステップ340もオプションのステップである。実施形態によっては、負荷時データ130及び安静時データ134の全ての画素又は全ての心筋画素に対して心筋血流増加率を算出してもよいが、実施形態によっては、その一部の画素についてのみ、心筋血流増加率を算出してもよい。例えば、データ130〜134を、本願の技術分野でしばしば用いられるArrayデータやポーラーマップ(極座標表示)に変換し、その各画素に対して心筋血流増加率を算出することとしてもよい。すなわち、心筋血流増加率のArrayデータやポーラーマップを作成することとしてもよい。なお、Arrayデータとは、所定範囲の短軸断層画像のそれぞれについて、画像中心から所定角度毎に放射状に走査して最大画素値を求め、これを、一方の軸を短軸断層画像の位置、他方の軸を画像中心からの角度にとった2次元マップに表現したものである。これに対してポーラーマップとは、やはり所定範囲の短軸断層画像のそれぞれについて、画像中心から所定角度毎に放射状に走査して最大画素値を求め、これを同心円状の極座標に展開したものである。
データ130〜134をArrayデータやポーラーマップに変換することで、次のステップ345における処理負荷を軽くすることができると共に、結果の可視性を向上させることができる。
ステップ340を行う場合、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134のそれぞれを、Arrayデータ又はポーラーマップに変換する。この変換を行う場合、以下の説明において、負荷時データ130,プレスキャンデータ132,安静時データ134は、いずれもArrayデータ又はポーラーマップに変換されたものであると理解して欲しい。
ステップ345では、心筋血流増加率の算出が行われる。このステップの実施形態は大きく4つの種類がある。以下、図4〜7を用いて、それぞれの実施形態を説明する。
図4は、図3のステップ345の実施形態の1つである処理400を説明するためのフローチャートである。また処理400は、(図3や図5〜7に例示される処理と同様に)心筋血流増加率の算出するための処理であり、心筋血流増加率算出プログラム120がCPU102に実行されることにより、システム100が遂行する処理である。
更に処理400は、ステップ315においてデータ収集プロトコールが、負荷時測定を安静時測定に先行させるプロトコールであると判定された場合に行われる処理である。更に処理400は、画像データ130や134に対して後述のSUV変換を行わずに、心筋血流増加率を算出する場合に行われる処理である。
ステップ402は処理の開始を示す。ステップ404では、負荷時測定で被験者に投与された放射線量(負荷時投与量)を算出する。投与された放射線量の算出に必要な情報は次の通りである。
・ 被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
本実施例では、これらの情報はステップ320で取得され、収集条件ファイル131に格納されている。従ってシステム100は、ステップ404において、これらの情報を、収集条件ファイル131から読み込むことにより取得してもよい。
続いて、次の式を用いて、負荷時投与量を算出する。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
負荷時投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
続いてステップ406では、プレスキャンにおいて被験者に投与された放射線量(プレスキャン投与量)を算出する。この算出に必要な情報は次の通りである。
・ 負荷時において、被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 負荷時において、被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
すなわち、負荷時投与量を算出するために必要な情報と同じである。
なお前述のように、プレスキャンのために個別に放射性医薬品の投与を行うことはしない。図2の負荷先行型プロトコールに関連して説明したように、この実施形態におけるプレスキャンは、負荷時測定の後に、放射性医薬品の投与を行うことなく遂行される放射線データ収集である。従って上記の情報は、データ収集開始日時を除いて、負荷時測定に関する情報と同じである。すなわちステップ404で用いた情報と同じである。データ収集開始日時のみは、プレスキャンのデータ収集開始日時情報が必要である。
従って実施形態によっては、上記の情報のうち、データ収集開始日時以外の情報を、負荷時データ130用の収集条件ファイル131から取得してもよい。データ収集開始日時については、プレスキャンデータ132用の収集条件ファイル133から取得してもよい。(プレスキャンのデータ収集開始日時についてはステップ320で取得されている。)実施形態によっては、システム100は、データ収集開始日時以外の情報を、収集条件ファイル131から収集条件ファイル133に自動的にコピーするように構成されてもよく、その場合システム100は、本ステップにおいて、上記の情報を全て収集条件ファイル133から取得するように構成されてもよい。
上記の情報を取得した後、システム100は、負荷時の場合と同様に、次の式を用いてプレスキャン投与量を算出する。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
プレスキャン投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
ステップ408では、安静時において被験者に投与された放射線量(安静時投与量)を算出する。この算出に必要な情報も、負荷時投与量を算出した時と同じであり、次の通りである。
・ 安静時において、被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 安静時において、被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
本実施例では、これらの情報はステップ320で取得され、収集条件ファイル135に格納されている。従ってシステム100は、本ステップにおいて、これらの情報を、収集条件ファイル135から読み込むことにより取得してもよい。
その後システム100は、負荷時の場合と同様に、次の式を用いて安静時投与量を算出するように構成されてもよい。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
安静時投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
ステップ410では、プレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、投与量補正を行う。
プレスキャン用投与量補正係数=負荷時投与量/プレスキャン投与量
ステップ412では、安静時データ134の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、投与量補正を行う。
安静時用投与量補正係数=負荷時投与量/安静時投与量
ステップ414では、投与量補正を行ったプレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
プレスキャン用収集時間補正係数=負荷時データ収集時間/プレスキャンデータ収集時間
本実施例においては、負荷時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間は、ステップ320において取得され、それぞれ収集条件ファイル131,133に格納されている。そこでシステム100は、これらのファイルから負荷時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間の情報を取得し、プレスキャン用収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ416では、投与量補正を行った安静時データ134の各画素値についても、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
安静時用収集時間補正係数=負荷時データ収集時間/安静時データ収集時間
本実施例においては、安静時データ収集時間は、ステップ320において取得され、収集条件ファイル135に格納されているので、システム100は、収集条件ファイル135から必要な情報を得て、安静時用収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ418では、投与量補正及び収集時間補正を行ったプレスキャンデータ132を用いて、投与量補正及び収集時間補正を行った安静時データ134のカウント補正を行う。この補正は、前記補正(投与量補正(ステップ412)及び収集時間補正(ステップ416))後の安静時データ134の各画素につき、その画素値から、前記補正後のプレスキャンデータ132の対応する位置の画素の画素値を減算することによって、行われる。このカウント補正により、負荷時に投与された放射性医薬品の影響が、安静時データ134から除去される。
ステップ420では、負荷時データ130と、カウント補正後の安静時データ134とを用いて、心筋血流増加率の計算が行われる。画素ijの心筋血流増加率(IncMapij)は、負荷時データ130の各画素の画素値(Stressij)と、カウント補正後の安静時データ134の対応する位置の画素の画素値(Restij)とから、次の式によって求められる。
IncMapij[%]=(Stressij−Restij)/(Restij)×100
計算した増加率データは、増加率データ140として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。増加率データ140は、例えば、各画素の画素値が増加率を示す、3次元画像データであることができる。また、図3のステップ340を行う場合には、各画素の画素値が増加率を示す、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップであることができる。
ステップ418のカウント補正が行われることにより、負荷時に投与された放射性医薬品の影響が、安静時データ134から除去されている。従って、当該補正後の安静時データ134中の各画素の画素値は、安静時における心機能をより正確に反映している。そして、そのようなデータを用いて計算することにより、従来技術に比べてより正確に、心筋血流増加率を求めることが可能になる。
ステップ422は処理の終了を示す。
図5は、図3のステップ345の実施形態の1つであり、心筋血流増加率を算出するための処理500を説明するためのフローチャートである。処理500は、ステップ315においてデータ収集プロトコールが、安静時測定を負荷時測定に先行させるプロトコールであると判定された場合に行われる処理である。更に処理500は、画像データ130や134に対して後述のSUV変換を行わずに、心筋血流増加率を算出する場合に行われる処理である。
ステップ502は処理の開始を示す。ステップ504では、安静時測定で被験者に投与された放射線量(安静時投与量)を算出する。投与された放射線量の算出に必要な情報は次の通りである。
・ 被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
本実施例では、これらの情報はステップ320で取得され、収集条件ファイル135に格納されている。従ってシステム100は、ステップ502において、これらの情報を、収集条件ファイル135から読み込むことにより取得してもよい。
続いて、次の式を用いて、安静時投与量を算出する。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
安静時投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
続いてステップ506では、プレスキャンにおいて被験者に投与された放射線量(プレスキャン投与量)を算出する。この算出に必要な情報は次の通りである。
・ 安静時の核医学画像データ収集において、被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 安静時の核医学画像データ収集において、被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
すなわち、安静時投与量を算出するために必要な情報と同じである。
なお前述のように、プレスキャンのために個別に放射性医薬品の投与を行うことはしない。図2の安静先行型プロトコールに関連して説明したように、この実施形態におけるプレスキャンは、安静時測定の後に、放射性医薬品の投与を行うことなく遂行される放射線データ収集である。従って上記の情報は、データ収集開始日時を除いて、安静時測定に関する情報と同じである。すなわちステップ504で用いた情報と同じである。データ収集開始日時のみは、プレスキャンのデータ収集開始日時情報が必要である。
従って実施形態によっては、上記の情報のうち、データ収集開始日時以外の情報を、安静時データ134用の収集条件ファイル135から取得してもよい。データ収集開始日時については、プレスキャンデータ132用の収集条件ファイル133から取得してもよい。(プレスキャンのデータ収集開始日時についてはステップ320で取得されている。)実施形態によっては、システム100は、データ収集開始日時以外の情報を、収集条件ファイル135から収集条件ファイル133に自動的にコピーするように構成されてもよく、その場合システム100は、本ステップにおいて、上記の情報を全て収集条件ファイル133から取得するように構成されてもよい。
上記の情報を取得した後、システム100は、安静時の場合と同様に、次の式を用いてプレスキャン投与量を算出する。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
プレスキャン投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
ステップ508では、負荷時において被験者に投与された放射線量(負荷時投与量)を算出する。この算出に必要な情報も、安静時投与量を算出した時と同じく、次の通りである。
・ 被験者への放射性医薬品投与前に測定した放射線量(投与前放射線量)。
・ 投与前放射線量の測定日時
・ データ収集開始日時
・ 被験者への放射性医薬品投与後に測定した放射線量(投与後放射線量)。
・ 投与後放射線量の測定日時
・ 放射性医薬品に含まれるトレーサーの半減期
本実施例では、これらの情報はステップ320で取得され、収集条件ファイル131に格納されている。従ってシステム100は、本ステップにおいて、これらの情報を、収集条件ファイル131から読み込むことにより取得してもよい。
その後システム100は、安静時の場合と同様に、次の式を用いて負荷時投与量を算出するように構成されてもよい。
減衰時間1(秒)= |投与前放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰時間2(秒)= |投与後放射線量の測定日時−データ収集開始日時|
減衰係数=LN(2.0)/半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
負荷時投与量={投与前放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間1)}−{投与後放射線量×Exp(−減衰係数×減衰時間2)}
ステップ510では、プレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、投与量補正を行う。
プレスキャン用投与量補正係数=安静時投与量/プレスキャン投与量
ステップ512では、負荷時データ130の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、投与量補正を行う。
負荷時用投与量補正係数=安静時投与量/負荷時投与量
ステップ514では、投与量補正を行ったプレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
プレスキャン用収集時間補正係数=安静時データ収集時間/プレスキャンデータ収集時間
本実施例においては、安静時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間は、ステップ320において取得され、それぞれ収集条件ファイル135,133に格納されている。そこでシステム100は、これらのファイルから安静時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間の情報を取得し、プレスキャン用収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ516では、投与量補正を行った負荷時データ130の各画素値についても、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
負荷時用収集時間補正係数=安静時データ収集時間/負荷時データ収集時間
本実施例においては、負荷時データ収集時間は、ステップ320において取得され、収集条件ファイル131に格納されているので、システム100は、収集条件ファイル131から必要な情報を得て、負荷時用収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ518では、投与量補正及び収集時間補正を行ったプレスキャンデータ132を用いて、投与量補正及び収集時間補正を行った負荷時データ130のカウント補正を行う。この補正は、投与量補正(ステップ512)及び収集時間補正(ステップ516)後の負荷時データ130の各画素につき、その画素値から、前記補正後のプレスキャンデータ132の対応する位置の画素の画素値を減算することによって、行われる。このカウント補正により、安静時測定のために投与された放射性医薬品の影響が、負荷時データ130から除去される。
ステップ520では、カウント補正後の負荷時データ130と、安静時データ134とを用いて、心筋血流増加率の計算が行われる。画素ijの心筋血流増加率(IncMapij)は、カウント補正後の負荷時データ130の各画素の画素値(Stressij)と、安静時データ134の対応する位置の画素の画素値(Restij)とから、次の式によって求められる。
IncMapij[%]=(Stressij−Restij)/(Restij)×100
計算した増加率データは、増加率データ140として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。増加率データ140は、例えば、各画素の画素値が増加率を示す3次元画像データであることができる。また、図3のステップ340を行う場合には、各画素の画素値が増加率を示す、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップであることができる。
ステップ518のカウント補正が行われることにより、安静時に投与された放射性医薬品の影響が、負荷時データ130から除去されている。従って、負荷時データ130中の各画素の画素値は、負荷時における心機能をより正確に反映している。そして、そのようなデータを用いて計算することにより、従来技術に比べてより正確に、心筋血流増加率を求めることが可能になる。
ステップ522は処理の終了を示す。
図6は、図3のステップ345の実施形態の1つであり、心筋血流増加率を算出するための処理600を説明するためのフローチャートである。処理600は、ステップ315においてデータ収集プロトコールが、負荷時測定を安静時測定に先行させるプロトコールであると判定された場合に行われる処理である。更に処理600は、画像データ130や134に対して、本願に開示される特徴的なSUV変換を行った上で、心筋血流増加率を算出する場合に行われる処理である。
ステップ602は処理の開始を示す。ステップ604では、負荷時測定で被験者に投与された放射線量(負荷時投与量)を算出する。負荷時投与量の算出方法は、図4の処理400に関連して説明したステップ404と同一であるので、説明を省略する。
ステップ606では、負荷時データ130の各画素の画素値をSUVに変換する。既存のSUV変換は、被験者の体重を用いて正規化を行うものである。しかし、本実施形態のSUV変換は、次の式1によって行われる。
[式1]
SUV=組織放射能濃度/(放射能投与量/心筋重量)
各パラメータについて簡単に説明すると、次の通りである。
組織放射能濃度: 負荷時データ130の各画素の画素値に、ベクレルキャリブレーションファクタ(Becquerel Calibration Factor;BCF)を乗じて得られる値である。BCFとは、放射線カウント値を放射線濃度(例えばBq/ml)に変換する係数である。本実施例では、BCFはステップ320で取得されている。負荷時データ130の各画素の画素値が組織放射能濃度を表しているような実施形態においては、BCFを乗じることなく、画素値をそのまま組織放射能濃度として用いてよい。
放射能投与量: 本ステップでは、負荷時測定で被験者に投与された放射線量である。すなわち、ステップ604で求められた負荷時投与量である。
心筋重量: ステップ335で得られた、負荷時データの心筋輪郭データに基づいて計算される。例えば、抽出した心筋内膜と心筋外膜との間に存在する画素数に、画素−体積の換算係数を乗じて、心筋の体積を求めると共に、求めた心筋体積に、心筋体積−心筋重量の換算係数(密度係数)を乗じて、心筋重量を求めてもよい。密度係数は、公知の文献値等を用いることができ、例えば1.05であることができる。心筋重量の算出は、ステップ335で行われてもよいし、本ステップで行われてもよい。実施形態によって、心筋重量算出アルゴリズムは、輪郭抽出・体積計算プログラム124に実装されてもよいし、心筋血流増加率算出プログラム120に実装されてもよい。計算された心筋重量は、主記憶装置102や大容量記憶装置106に格納されてもよい。実施形態によっては、CPU102のレジスタに格納されてもよい。
各画素の画素値をSUVに変換した後の負荷時データは、負荷時SUVデータ150として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。
なおBCFは、公知の方法にて求める事ができる。例えば、総放射能量既知の放射性医薬品を格納したバイアル(又はシリンジ)を対象として核医学画像の撮像を行い、以下の式にて算出した値とする事ができる。
BCF=減衰補正総放射能量(Bq)÷(全スライスのトータルカウント÷収集時間(秒))
また、円柱ファントムを利用して得られたデータからBCFを求める場合は、下記の式を用いる事ができる。
ボリューム係数=1スライスにおける平均カウント値÷(1ピクセルの体積×収集時間(秒))
BCF=減衰補正総放射能量(Bq)÷(ファントム容量×ボリューム係数)
実施形態によっては、BCFに収集時間補正を行ってもよい。収集時間補正は、例えば、{1ピクセルの体積[cm3]/収集時間[sec]}をBCFに乗ずることにより、なされてもよい。
ステップ608では、安静時測定で被験者に投与された放射線量(安静時投与量)を算出する。安静時投与量の算出方法は、図4の処理400に関連して説明したステップ408と同一であるので、説明を省略する。
ステップ610では、プレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
収集時間補正係数=安静時データ収集時間/プレスキャンデータ収集時間
本実施例においては、安静時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間は、ステップ320において取得され、それぞれ収集条件ファイル135,133に格納されている。そこでシステム100は、これらのファイルから安静時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間の情報を取得し、上の収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ612では、収集時間補正を行ったプレスキャンデータ132の各画素値に対して、次のように求める減衰補正係数を乗じることにより、減衰補正を行う。
減衰時間(秒)= プレスキャンのデータ収集開始日時−安静時のデータ収集開始日時
減衰係数=LN(2.0)/トレーサーの半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
減衰補正係数=Exp(減衰係数×減衰時間)
ステップ614では、収集時間補正及び減衰補正を行ったプレスキャンデータ132を用いて、安静時データ134のカウント補正を行う。この補正は、安静時データ134の各画素につき、その画素値から、補正後のプレスキャンデータ132の対応する位置の画素の画素値を減算することによって、行われる。このカウント補正により、負荷時に投与された放射性医薬品の影響が、安静時データ134から除去される。
ステップ616では、カウント補正後の安静時データ134の各画素の画素値をSUVに変換する。変換式は、前述の式1と同じである。ただし、式中の「組織放射能濃度」は、安静時データ134の画素値であって、ステップ614で説明したカウント補正後の画素値に、前述のBCFを乗じた値である。また、式中の「放射能投与量」は、ステップ608で求められた安静時投与量である。さらに、式中の「心筋重量」も、安静時データの心筋輪郭データ(例えばステップ335で得られたもの)に基づいて計算されたものである。
各画素の画素値をSUVに変換した後の安静時データは、安静時SUVデータ152として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。
ステップ618では、負荷時SUVデータ150と、安静時SUVデータ152とを用いて、心筋血流増加率の計算が行われる。画素ijの心筋血流増加率(IncMapij)は、負荷時SUVデータ150の各画素の画素値(Stress_SUVij)と、安静時SUVデータ152の対応する位置の画素の画素値(Rest_SUVij)とから、次の式によって求められる。
IncMapij[%]=(Stress_SUVij−Rest_SUVij)/(Rest_SUVij)×100
計算した増加率データは、増加率データ140として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。増加率データ140は、例えば、各画素の画素値が増加率を示す、3次元画像データであることができる。また、図3のステップ340を行う場合には、各画素の画素値が増加率を示す、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップであることができる。
本実施例では、トレーサーが集積する心筋の重量を基準として心筋核医学画像データの正規化を行う。従って、正規化値が、従来技術に比べて心機能の実態をより正確に反映している。そのような正規化値を用いて心筋血流増加率が計算されるため、心筋血流増加率の比較可能性が従来技術よりも向上する。すなわち、例えば過去の測定結果との比較や、他の被験者の測定結果との比較がやりやすくなる。なお、実施形態によっては、心筋重量ではなく心筋体積を用いて正規化を行ってもよく、また心臓の大きさに関するその他の指標を用いて正規化をおこなってもよい。
さらに、ステップ614のカウント補正が行われることにより、負荷時に投与された放射性医薬品の影響が、安静時データ134から除去されている。従って、安静時データ134中の各画素の画素値は、安静時における心機能をより正確に反映している。そして、そのようなデータを用いて計算することにより、従来技術に比べてより正確に、SUVや心筋血流増加率を求めることが可能になる。
ステップ620は処理の終了を示す。
図7は、図3のステップ345の実施形態の1つであり、心筋血流増加率を算出するための処理700を説明するためのフローチャートである。処理700は、ステップ315においてデータ収集プロトコールが、安静時測定を負荷時測定に先行させるプロトコールであると判定された場合に行われる処理である。更に処理700は、画像データ130や134に対して、本願に開示される特徴的なSUV変換を行った上で、心筋血流増加率を算出する場合に行われる処理である。
ステップ702は処理の開始を示す。ステップ704では、安静時測定で被験者に投与された放射線量(安静時投与量)を算出する。安静時投与量の算出方法は、図4の処理400に関連して説明したステップ408と同一であるので、説明を省略する。
ステップ706では、安静時データ130の各画素の画素値をSUVに変換する。変換式は、ステップ606に関連して開示した式1と同じである。ただし、式中の「組織放射能濃度」は、安静時データ134の画素値にBCFを乗じた値である。また、式中の「放射能投与量」は、ステップ704で求められた安静時投与量である。さらに、式中の「心筋重量」も、安静時データの心筋輪郭データに基づいて計算されたものである。
各画素の画素値をSUVに変換した後の安静時データは、安静時SUVデータ152として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。
ステップ708では、負荷時測定で被験者に投与された放射線量(負荷時投与量)を算出する。負荷時投与量の算出方法は、図4の処理400に関連して説明したステップ404と同一であるので、説明を省略する。
ステップ710では、プレスキャンデータ132の各画素値に対して、次の補正係数を乗じることにより、収集時間補正を行う。
収集時間補正係数=負荷時データ収集時間/プレスキャンデータ収集時間
本実施例においては、負荷時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間は、ステップ320において取得され、それぞれ収集条件ファイル131,133に格納されている。そこでシステム100は、これらのファイルから負荷時データ収集時間及びプレスキャンデータ収集時間の情報を取得し、上の収集時間補正係数を計算するように構成されてもよい。
ステップ712では、収集時間補正を行ったプレスキャンデータ132の各画素値に対して、次のように求める減衰補正係数を乗じることにより、減衰補正を行う。
減衰時間(秒)= プレスキャンのデータ収集開始日時−負荷時のデータ収集開始日時
減衰係数=LN(2.0)/トレーサーの半減期(秒) (LN;底がeの自然対数)
減衰補正係数=Exp(減衰係数×減衰時間)
ステップ714では、収集時間補正及び減衰補正を行ったプレスキャンデータ132を用いて、負荷時データ130のカウント補正を行う。この補正は、負荷時データ130の各画素につき、その画素値から、補正後のプレスキャンデータ132の対応する位置の画素の画素値を減算することによって、行われる。このカウント補正により、安静時測定で投与された放射性医薬品の影響が、負荷時データ130から除去される。
ステップ716では、カウント補正後の負荷時データ130の各画素の画素値をSUVに変換する。変換式は、前述の式1と同じである。ただし、式中の「組織放射能濃度」は、負荷時データ130の画素値であって、ステップ714で説明したカウント補正後の画素値に、前述のBCFを乗じた値である。また、式中の「放射能投与量」は、ステップ708で求められた負荷時投与量である。さらに、式中の「心筋重量」も、ステップ606で説明したように、負荷時データの心筋輪郭データに基づいて計算されたものである。
各画素の画素値をSUVに変換した後の負荷時データは、負荷時SUVデータ152として、例えば大容量記憶装置106に格納することとしてもよい(図1参照)。
ステップ718では、負荷時SUVデータ150と、安静時SUVデータ152とを用いて、心筋血流増加率の計算が行われる。このステップの処理は、ステップ618と同一である。従って説明を省略する。
本実施例では、トレーサーが集積する心筋の重量又は体積を基準として心筋核医学画像データの正規化を行う。従って、正規化値が、従来技術に比べて心機能の実態をより正確に反映している。そのような正規化値を用いて心筋血流増加率が計算されるため、心筋血流増加率の比較可能性が従来技術よりも向上する。すなわち、例えば過去の測定結果との比較や、他の被験者の測定結果との比較がやりやすくなる。
さらに、ステップ714のカウント補正が行われることにより、安静時測定で投与された放射性医薬品の影響が、負荷時データ130から除去されている。従って、負荷時データ130中の各画素の画素値は、安静時における心機能をより正確に反映している。そして、そのようなデータを用いて計算することにより、従来技術に比べてより正確に、SUVや心筋血流増加率を求めることが可能になる。
ステップ720は処理の終了を示す。
これで、図3のステップ345の実施形態のバリエーションの説明を終了する。
いずれのバリエーションでも、負荷時測定と安静時測定のうち、時間的に後に行われる測定により得られるデータが、プレスキャンにより得られるデータにより補正される。それによって、時間的に後に行われる測定により得られるデータに残存する、時間的に先行する測定で投与された放射能の影響が、補正される。このため、データの妥当性が向上し、計算される心筋血流増加率の信頼性が高くなる。さらに、負荷時測定と安静時測定との間に空けなければならない時間間隔を、従来よりも著しく短縮することが可能になり、測定者と被験者の両方にとって測定の負担が軽減される。
また、処理600や処理700で例示した実施形態によれば、核医学画像データの画素値を心筋重量を使ってSUV化しており、トレーサーの集積に対して従来よりも適切な仮定の下で正規化を行っているので、測定日時や被験者が異なるデータを比較する際の、妥当性・信頼性が向上する。
図3のフローチャートに戻る。ステップ350では、心筋血流増加率の算出結果の表示を行う。表示の方法は様々であることができる。例えば、結果が格納されている増加率データ140が、各画素の画素値が増加率を示す3次元画像データである場合、例えば、短軸断層画像を並べて表示することにより、算出した心筋血流増加率の表示を輝度又は色調の違いによって行ってもよい。かかる表示法によれば、各断層位置で、心筋血流増加率がどのように変化しているのかを詳しく観察することが可能となる。
例えば、結果が格納されている増加率データ140が、各画素の画素値が増加率を示す、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップである場合は、そのまま2次元Arrayや2次元ポーラーマップとして表示してもよい。場所による心筋血流増加率の高低を、一枚の図で容易に観察することが可能となる。実施形態によっては、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップに変換されている負荷時データ130や安静時データ134と共に、増加率データ140を表示してもよい。または、2次元Arrayデータ又は2次元ポーラーマップに変換されている負荷時SUVデータ150及び安静時SUVデータ152と共に、増加率データ140を表示してもよい。このとき、安静時→負荷時→増加率の順にマップを並べると、負荷時の増加率が観察し易くなり、好都合である。
以上、好適な実施例を用いて本願発明を詳しく説明してきたが、上記の説明や添付図面は、本願発明の範囲を限定する意図で提示されたものではなく、むしろ、法の要請を満たすために提示されたものである。本願発明の実施形態には、ここで紹介されたもの以外にも、様々なバリエーションが存在する。例えば、明細書又は図面に示される各種の数値もいずれも例示であり、これらの数値は発明の範囲を限定する意図で提示されたものではない。明細書又は図面に紹介した各種の実施例に含まれている個々の特徴は、その特徴が含まれることが直接記載されている実施例と共にしか使用できないものではなく、ここで説明された他の実施例や説明されていない各種の具現化例においても、組み合わせて使用可能である。特にフローチャートで紹介された処理の順番は、紹介された順番で実行しなければならないわけではなく、実施者の好みや必要性に応じて、順序を入れ替えたり並列的に同時実行したり、さらに複数のブロックを一体不可分に実装したり、適当なループとして実行したりするように実装してもよい。これらのバリエーションは、全て、本願で開示される発明の範囲に含まれるものであり、処理の実装形態によって発明の範囲が限定されることはない。請求項に特定される処理の記載順も、処理の必須の順番を特定しているわけではなく、例えば処理の順番が異なる実施形態や、ループを含んで処理が実行されるような実施形態なども、請求項に係る発明の範囲に含まれるものである。
更に例えば、心筋血流増加率算出プログラム120の実施形態には、単一のプログラムであるようなものや、複数の独立のプログラムから構成されるプログラム群であるようなものや、位置合わせプログラム122や輪郭抽出・体積計算プログラム124の全部又は一部が一体化されたものも含まれうる。よく知られているように、プログラムの実装形態には様々なものがあり、それらのバリエーションは全て、本願で開示される発明の範囲に含まれるものである。
更に、本願に開示される新規なSUVは、本願に開示される心筋血流増加率の導出にのみ用いられうるものではないことには注意が必要である。本願に開示される新規なSUVは、心筋の重量又は体積を用いて正規化を行うことを特徴としているため、心臓を対象とする各種の核医学検査等、この正規化が妥当性を有する全ての分野において、本願のSUVを用いることができる。
現在の特許請求の範囲で特許請求がなされているか否かに関わらず、出願人は、本願に開示される発明の思想を逸脱しない全ての形態について、特許を受ける権利を有することを主張するものであることを記しておく。