JP2017212237A - 加熱装置、および加熱方法 - Google Patents

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保徳 塚原
Yasunori Tsukahara
保徳 塚原
隆平 金城
Ryuhei Kaneshiro
隆平 金城
雄也 田中
Yuya Tanaka
雄也 田中
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Abstract

【課題】容器内の所望の箇所にマイクロ波により発生する電界を集中させることができる加熱装置を提供する。
【解決手段】容器101と、マイクロ波を発生する複数の半導体型発振器103と、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波をそれぞれ伝送して、複数の位置1041から容器101内にマイクロ波を照射する複数の導波管104と、複数の半導体型発振器103の位相を制御する制御部105とを備えるようにした加熱装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、容器においてマイクロ波を照射する加熱装置等に関する。
従来、反応物質に対してマイクロ波(電磁波)を照射することにより、熱処理等を行う加熱装置や化学反応方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特表2006−516008号公報(第1頁、第1図等)
しかしながら、従来の加熱装置等においては、容器内の所望の箇所を局所的に加熱することが困難である、という課題があった。
例えば、容器内にマイクロ波を照射して内容物等を加熱する場合、加熱される箇所に偏り等が発生することが知られているが、この加熱される箇所を所望の箇所となるよう制御することができなかった。
本発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、容器内の所望の箇所を局所的に加熱させることができる加熱装置等を提供することを目的とする。
本発明の加熱装置は、容器と、マイクロ波を発生する複数のマイクロ波発振器と、複数のマイクロ波発振器が発生するマイクロ波をそれぞれ伝送して、複数の位置から容器内にマイクロ波を照射する複数の伝送部と、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する制御部とを備えた加熱装置である。
かかる構成により、複数の位置から容器内に照射されるマイクロ波の位相を制御することができ、容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、複数のマイクロ波発振器の少なくとも一部が異なる位相のマイクロ波を発生するよう複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、個々のマイクロ波発振器の位相を制御することにより容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、複数のマイクロ波発振器が同位相のマイクロ波を発生するよう複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、個々のマイクロ波発振器の位相を制御することにより容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、容器内の1以上の所望の箇所に複数の位置から照射されるマイクロ波により生じる電界が集中するよう、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、容器内の1以上の所望の箇所に容易にマイクロ波により発生する電界を集中させることができ、容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、容器内の所望の箇所が、複数の位置から照射されるマイクロ波が干渉により強めあう位置となるよう、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、容器内の1以上の所望の箇所に容易にマイクロ波により発生する電界を集中させることができ、容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、容器内の所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相となるように、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、容器内の1以上の所望の箇所に容易にマイクロ波により発生する電界を集中させることができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、容器内に、マイクロ波の吸収性を有する部材である吸収性部材を更に備え、所望の箇所は、吸収性部材内の箇所である加熱装置である。
かかる構成により、吸収性部材内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。これにより、例えば吸収性部材を選択的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、吸収性部材は、容器内の内容物よりもマイクロ波に対する誘電損失が高い材料により構成される加熱装置である。
かかる構成により、吸収性部材内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。これにより、例えば吸収性部材を選択的に加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、吸収性部材は、容器内の内容物の処理に用いられる触媒を有する固定床である加熱装置である。
かかる構成により、吸収性部材である固定床を選択的に加熱することができる。これにより、例えば、固定床の近傍の内容物、例えば、固定床に接触した内容物に対して局所的に触媒を用いた反応を行なわせることができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、容器は、内部にマイクロ波を透過する透過領域を有し、伝送部は、透過領域を介してマイクロ波を照射する加熱装置である。
かかる構成により、マイクロ波を透過領域を伝送させて所望の箇所に照射することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、制御部は、所望の箇所が経時的に変更されるよう、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、容器内の異なる複数の箇所を、順次加熱することができる。
また、本発明の加熱装置は、前記加熱装置において、吸収性部材が、容器内において経時的に移動し、制御部は、吸収性部材の経時的な移動に伴って移動する吸収性部材内の予め決められた1以上の箇所が、所望の箇所となるよう、複数のマイクロ波発振器の位相を制御する加熱装置である。
かかる構成により、経時的に移動する吸収性部材内の所望の箇所を、移動に追従して加熱することができる。
本発明による加熱装置等によれば、容器内の所望の箇所を局所的に加熱することができる。
本発明の実施の形態における加熱装置の外観および構成を模式的に示す斜視図(図1(a))、および断面模式図(図1(b)) 同加熱装置を説明するための断面模式図 同加熱装置のシミュレーション試験に用いられたモデルを示す斜視図(図3(a))、および材料定数を示す表(図3(b)) 同加熱装置の寸法等を説明するための正面図(図4(a))、側面図(図4(b))、および平面図(図4(c)) 同加熱装置の位相差について説明するための図 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す電界分布の図(図6(a)〜図6(d)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す発熱分布の図(図7(a)〜図7(f)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す電界分布のグラフ(図8(a)〜図8(b)) 同加熱装置の吸収性部材を用いた場合のシミュレーション試験に用いられたモデルを示す斜視図(図9(a))、および材料定数を示す表(図9(b)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す電界分布の図(図10(a)〜図10(d)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す発熱分布の図(図11(a)〜図11(f)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す電界分布のグラフ(図12(a)、図12(b))および吸収性部材における電力吸収量の表(図12(c)、図12(d)) 同加熱装置の変形例を説明するための斜視図 同加熱装置の変形例を説明するための断面図 同加熱装置の変形例を説明するための斜視図 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す磁界分布の図(図16(a)〜図16(d)) 同加熱装置のシミュレーション試験結果を示す磁界分布のグラフ(図8(a)〜図8(b)) 同加熱装置の吸収性部材を用いた場合のシミュレーション試験結果を示す磁界分布の図(図18(a)〜図18(d))
以下、加熱装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における加熱装置1の外観および構成を模式的に示す斜視図(図1(a))、および、図1(a)のIb−Ib線における断面模式図(図1(b))である。本実施の形態による加熱装置1は、容器の内容物に対してマイクロ波を照射するものである。
加熱装置1は、容器101、吸収性部材102、複数の半導体型発振器103、複数の導波管104、および制御部105を備える。ここでは、一例として、加熱装置1が、5つの半導体型発振器103(ここでは、半導体型発振器103a〜103eとする)と、同数の導波管104(ここでは、導波管104a〜104eとする)とを備えている場合を示している。ただし、半導体型発振器103と導波管104の数は問わない。
容器101は、内部にマイクロ波を照射することにより、加熱を行なう容器である。例えば、容器101は、内部の内容物10や、吸収性部材102に対してマイクロ波を照射することによって、内容物10等の加熱を行なう装置である。容器101は、例えば、加熱を含む1以上の処理を内部で行なうための処理容器であってもよい。容器101内で行なう1以上の処理は、どのような処理であってもよい。1以上の処理は、例えば、1以上の反応を行なうための加熱を含む処理であってもよい。1以上の反応は、例えば、容器101内の内容物10を用いて行なわれる化学反応等の1以上の反応である。1以上の反応は、内容物10を構成する1以上の物質の結合や分解、変性等である。また、1以上の反応は、上記のような反応の2以上の組合せ等であってもよい。なお、容器101で行なわれる処理は、加熱が不要である処理も含んでいてもよい。1以上の処理は加熱を含む乾燥処理や、殺菌処理や、滅菌処理等であってもよい。
容器101は、例えば、内部で化学反応等の1以上の反応を行なうためのリアクターであってもよい。リアクターは、内部で1以上の反応を行なうための反応器である。容器101内においては、例えば、マルチモードでマイクロ波照射が行なわれる。容器101は、例えば、マルチモードでマイクロ波照射が行なわれるリアクターである。
容器101内には、例えば、内容物10が配置される。例えば、容器101内には、例えば、内容物10が、連続的、あるいは非連続的に供給される。容器101は、例えば、内容物10を内部に供給するための供給口(図示せず)と、内部の内容物10を取り出すための取出口(図示せず)とを有している。供給口は、例えば、投入口と考えてもよい。また、取出口は、例えば、排出口や回収口と考えてもよい。なお、供給口と取出口とを一の入出口(図示せず)等で実現してもよい。内容物10は、例えば、ポンプ(図示せず)等を用いて、容器101内に供給されたり、容器101内から取り出しが行なわれても良い。容器101は、例えば、バッチ式の容器であってもよい。容器101がバッチ式である場合、例えば、内容物10は、非連続に(例えば、バッチ単位で)に容器101内に供給される。また、容器101は、例えば、連続的に供給された内容物10に対して1以上の反応を連続的に行なって、内容物10を連続的に取り出すような、いわゆるフロー式容器等の連続式の容器であってもよい。例えば、容器101は、液状の内容物が、上方に未充填空間を有した状態で水平方向に流れる横型のフロー式の容器であってもよい。例えば、内容物の供給口を、取出口が設けられている高さと、同じ、あるいは高い位置に設けることで、供給口から供給された流体である内容物10が、供給口側から取出口側に向かって容器101内を自然に流れて取出口から排出されることとなり、容器101をこのようなフロー式の容器として用いることができる。
容器101は、容器101の内部を加熱するためのヒータや、温水ジャケット等の加熱手段(図示せず)等を有していても良い。また、容器101の内部を冷却するための冷水ジャケット等の冷却手段(図示せず)等を有していても良い。容器101は、内部に、1または2以上の仕切板(図示せず)や、内容物を撹拌するためのスクリューや撹拌羽根等の撹拌手段等を有していても良い。ここでは、容器101内に、仕切板としても用いられる吸収性部材102が配置されている場合を例に挙げて示している。また、容器101内には、容器101内部の状況を示す情報を取得するための1以上のセンサ(図示せず)を有していても良い。センサは、例えば、温度センサや、圧力センサ、湿度センサ等である。
容器101の形状は問わない。図1においては、一例として、容器101が断面形状がU字形状を有しており横方向に伸びる筒形状を有している場合を例に挙げて説明しているが、容器101は、例えば、横長の直方体形状や、カプセル形状、円筒形状を有していても良く、断面形状が半円形状や台形形状を有しており横方向に伸びる筒形状を有していても良い。また、容器101は、横長の形状ではなく縦長のカプセル形状や円筒形状等の縦長の形状を有していても良く、球形状を有していても良い。また、容器101は、底面等が水平に配置されてもよく、底面等が水平面に対して傾斜して配置されてもよい。例えば、加熱装置1は、容器101を底面が水平面に対して傾斜した状態で保持するための脚部(図示せず)を有していても良い。
容器101の材質等は問わない。容器101は、内壁が、マイクロ波を反射する物質で構成されていることが好適である。マイクロ波を反射する物質は、例えば、金属である。
容器101内に配置される内容物10は、例えば、単一の物質であってもよく、二以上の種類の物質の混合物であってもよい。また、内容物は、例えば、不純物等を有する物質であってもよい。また、内容物10は、例えば、粉体や粒状体、ペレット等の固体であってもよく、流動性を有するものであってもよい。流動性を有する内容物10は、例えば、液状の内容物である。液状の内容物10は、例えば、水や油、水溶液、コロイド溶液等のように、流動性の高いものであってもよく、あるいは、スラリーや懸濁液のように、流動性の低いものであってもよい。なお、容器101における化学反応等によって、原料から生成物が生成される場合、容器101の内容物10には生成物が含まれていると考えてもよい。すなわち、内容物10は、原料および/または生成物であってもよい。例えば、容器101内においてエステル化を行なう場合、油脂とアルコールが原料であってもよい。
内容物10は、例えば、1または2以上の種類の原料と1または2以上の種類の触媒との混合物であってもよい。原料と混合される触媒は固体触媒等の不均一系触媒であってもよく、液状の触媒等の均一系触媒であってもよい。また、固体触媒は、容器101内で流動床を形成してもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、固体触媒の形状は問わない。固体触媒の形状は、例えば、無定型の粒状、円柱状、球状、ペレット状、リング状、シェル状等であってもよい。また、これらの形状の固体触媒は、中空であってもよく、中空でなくてもよい。また、固体触媒は、多孔質であってもよく、多孔質でなくてもよい。また、その固体触媒は、例えば、マイクロ波吸収性もしくはマイクロ波感受性を有してもよく、または、そうでなくてもよい。固体触媒がマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する場合には、容器101の内部においてマイクロ波を照射した際に、固体触媒がマイクロ波によって加熱されることになり、その固体触媒近傍での化学反応が促進されることになる。なお、そのマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性については、照射されるマイクロ波の周波数や容器101の内部の温度等に依存することになる。すなわち、使用するマイクロ波の周波数、及び原料を反応させる容器101の内部の温度において、誘電損失係数の高いものがマイクロ波吸収性の高いものとなる。したがって、例えば、そのようなマイクロ波吸収性の高い物質を含む固体触媒を用いるようにしてもよい。例えば、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、マイクロ波吸収性を有する物質として、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、または活性炭など)や、鉄、ニッケル、コバルト、またはフェライト等がある。したがって、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性を有する物質を含むものであってもよい。具体的には、固体触媒は、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよく、そのようなマイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒とを組み合わせたコンポジットであってもよく、または、マイクロ波吸収性やマイクロ波感受性を有する物質と、アルカリ触媒もしくは酸触媒等の触媒と、金属もしくは金属酸化物とを組み合わせたコンポジットであってもよい。そのコンポジット化は、例えば、物理吸着によって行われてもよく、化学結合によって行われてもよく、合金化によって行われてもよく、または、その他の方法によって行われてもよい。容器101がいわゆるフロー型容器である場合、原料である内容物や、原料と固体触媒とを混合した内容物は、容器101の上流側に入れられる。
容器101内には、1または2以上の吸収性部材102が配置される。この実施の形態においては、一例として一の吸収性部材102が配置されている場合を示しているが、吸収性部材102の数は問わない。吸収性部材102は、マイクロ波の吸収性を有する部材である。吸収性部材102は、例えば、マイクロ波の吸収性が高い部材である。誘電損失が高い部材と考えてもよい。吸収性部材102は、例えば、容器101内におけるマイクロ波の照射対象となる部材である。例えば、吸収性部材102は、容器101の複数の位置から照射されるマイクロ波によって発生する電界を集中させる対象となる部材と考えてもよい。吸収性部材102は、例えば、複数の位置から照射されるマイクロ波が干渉により強めあう位置に配置される部材と考えてもよい。また、吸収性部材102は、入射されるマイクロ波の位相が同位相となる位置に配置される部材と考えてもよい。例えば、吸収性部材102内の1または2以上の所望の箇所が、マイクロ波によって発生する電界を集中させる箇所となる。所望の箇所は、例えば、集中箇所と考えてもよい。ここでの吸収性部材102内とは、例えば、吸収性部材102の表面および内部を含む概念である。吸収性部材102は、例えば、容器101内に入れられる内容物10以外のものである。吸収性部材102は、例えば、内容物10とは異なる材料の部材である。なお、容器101内におけるマイクロ波によって発生する電界が集中する箇所の全てが、吸収性部材102内に存在する必要はない。吸収性部材102は、例えば、容器101に対して固定された部材であってもよく、可動性を有するよう(例えば、移動可能となるよう)容器101に取付けられた部材であってもよい。
吸収性部材102は、例えば、内容物10の加熱に用いられる部材である。例えば、吸収性部材102が照射されたマイクロ波により加熱されることにより、この加熱された吸収性部材102から伝達される熱により内容物10が加熱される。吸収性部材102は、例えば、マイクロ波の誘電損失が高い材料、好ましくは、内容物10に対して比誘電損失が高い材料であることが好ましい。誘電損失とは、複素誘電率の虚部である。マイクロ波の誘電損失が高い材料とは、例えば、誘電損失係数が高い材料である。マイクロ波の誘電損失が高い材料とは、例えば、マイクロ波の吸収効率が高い材料や、上述したようなマイクロ波吸収性が高い材料と考えてもよい。例えば、上述したように、2.45GHzのマイクロ波が照射される場合には、誘電損失が高い物質としては、フラーレンを除くカーボン類(例えば、グラファイトなど)や、鉄、ニッケル、コバルト、またはフェライト等がある。吸収性部材102は、マイクロ波の誘電損失が高い材料で構成された部材であってもよく、マイクロ波の誘電損失が高い材料を内部や表面の少なくとも一部に有する部材であってもよい。例えば、吸収性部材102は、マイクロ波の誘電損失が高い材料の膜を表面に有する部材や、マイクロ波の誘電損失が高い材料を表面に吸着させた部材であってもよく、マイクロ波の比誘電損失が高い材料で構成される複数のフィラーや粒状部材を内部に有する部材であってもよい。吸収性部材102は、例えば、マイクロ波を吸収して熱に変換する部材と考えてもよい。例えば、吸収性部材102は、いわゆるサセプターと考えてもよい
吸収性部材102は、例えば、吸収性部材102は、内容物10の反応に用いられる触媒を有するいわゆる固定床であってもよい。内容物10の反応に用いられる触媒は、例えば、上述したような固定触媒である。例えば、吸収性部材102は、上述したような固体触媒で構成されていてもよく、上述したような固体触媒を表面や内部等に有する部材であっても良い。例えば、吸収性部材102は、例えば、上述したような固体触媒が内部に配置された容器であって、その表面の少なくとも一部がメッシュ等で構成された部材であってもよい。また、吸収性部材102は、表面が固体触媒の層でコーティングされたメッシュ状の部材であってもよい。また、吸収性部材102は、多孔質の部材であって、内容物10と接触可能な表面等に固体触媒の層や、粒状や粉末状の固体触媒が配置(例えば、吸着)されたものであってもよい。また、吸収性部材102は、フィルター状の部材であって、内容物10と接触可能な表面や内部等に触媒層や、粒状や粉末状の固体触媒が配置されたものであってもよい。なお、ここでの固体触媒が配置される容器を構成する部材や、メッシュ状の部材や、多孔質の部材や、フィルター状の部材は、上述したようなマイクロ波の誘電損失が高い材料、好ましくは、内容物10よりもマイクロ波の比誘電損失が高い材料で構成された部材であることが好ましい。なお、固体触媒が内容物10よりもマイクロ波の比誘電損失が高い材料を有する部材である場合は、これらの部材の材質として、どのようなものを用いてもよい。
容器101内における吸収性部材102が配置される位置は問わない。吸収性部材102は、通常、内容物10と接触される位置に配置される。吸収性部材102は、容器101の内壁に沿って配置されてもよく、内壁から突出するよう配置されてもよい。また、容器101の内部を仕切るように配置されてもよい。吸収性部材102が配置される位置は、変更可能であってもよく、変更不可であってもよい。例えば、吸収性部材102や容器101は、容器101内の複数の位置のうちの所望の位置に吸収性部材102を移動させて固定するためのロック機構を有するスライド構造(図示せず)や、所定の位置にボルト等を用いて吸収性部材102を固定するための構造(図示せず)等を有していても良い。部材を固定する構造等は、公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
吸収性部材102の形状等は問わない。例えば、吸収性部材102は、上述したようなフィルター状の形状やメッシュ状の形状を有していても良い。また、吸収性部材102は、1以上の貫通孔等を有していても良い。また、例えば、吸収性部材102は、柱状の部材や、球状の部材、プレート状の部材や、膜状やシート状の部材であってもよい。吸収性部材102の高さや、厚さ、幅等は問わない。本実施の形態においては、一例として、図1(b)に示すように、吸収性部材102が容器101内を長手方向に対して垂直に仕切る仕切板の形状を有しており、仕切板としても機能する場合を例に挙げて示している。例えば、この仕切板である吸収性部材102の上部と、容器101内部の上面との間には空間が設けられており、容器101内の吸収性部材102で仕切られた一方の領域に供給された内容物10の高さが、吸収性部材102の高さよりも高くなった場合、内容物10は、この吸収性部材102の上部を越えて(即ちオーバーフローして)、この吸収性部材102で仕切られた他方の領域に移動する。この場合、吸収性部材102の上面等の上部に、電界強度が高くなるよう容器101内の複数の位置からマイクロ波を照射することで、例えば、吸収性部材102を越える際に、内容物10をマイクロ波によって集中的に加熱することが可能となる。これにより、例えば、内容物10が吸収性部材を102を越える際に加熱によって反応させることが可能となる。なお、吸収性部材102は、常に内容物10の高さよりも低くなる高さを有する部材であってもよい。
なお、吸収性部材102は、不要である場合、省略してもよい。例えば、後述するマイクロ波を照射する所望の箇所が、吸収性部材102でない場合(例えば、内容物10が配置されている箇所である場合)等においては、吸収性部材102は設けないようにしてもよい。
半導体型発振器103は、半導体素子を用いて構成されたマイクロ波を発生するマイクロ波発振器である。半導体型発振器103は、半導体マイクロ波発振器とも呼ばれる。半導体型発振器103は、発生するマイクロ波の位相が制御可能である。複数の半導体型発振器103は、後述する制御部105により、発生するマイクロ波の位相が制御される。複数の半導体型発振器103は、例えば、少なくとも一部が、他の半導体型発振器103とは異なる位相のマイクロ波を発生するよう制御可能である。位相の制御は、例えば初期位相の制御と考えてもよい。
複数の半導体型発振器103の位相がどのように制御されるかは問わない。半導体型発振器103の位相は、例えば、移相器(図示せず)を用いて設定や変更が可能である。例えば、複数の半導体型発振器103が、それぞれの位相を制御する移相器(図示せず)と接続されていてもよい。例えば、この移相器を、後述する制御部105が制御することで、各半導体型発振器103の位相を制御するようにしてもよい。また、例えば、後述する制御部105が各半導体型発振器103の位相を制御する移相器を有していても良い。また、後述する制御部105が位相器であってもよい。移相器の構造等については、公知技術であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。移相器については、例えば、以下の文献を参照されたい。「"高周波回路教室[V.コントロール回路]"、[online]、アイラボラトリー、[平成28年3月11日検索]、インターネット<URL: http://www1.sphere.ne.jp/i−lab/ilab/kairo/k5/k5_3a.htm>」。
半導体型発振器103が出射するマイクロ波の周波数や、強度等は問わない。1以上の半導体型発振器103が出射するマイクロ波の周波数は、例えば、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、24GHzであってもよく、915MHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であってもよい。2以上の半導体型発振器103が出射するマイクロ波の周波数は、通常、同じ周波数であるが、異なるようにしてもよい。また、2以上の半導体型発振器103が出射するマイクロ波の強度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、半導体型発振器103がマイクロ波を出力する際に利用する電源(図示せず)等は、各半導体型発振器103が有していても良く、加熱装置1が有していても良い。あるいは、電源等は、加熱装置1の外部等に設けられていても良い。また、半導体型発振器103は、増幅器等を有していても良い。なお、一のマイクロ波を発生する発振器(図示せず)が発生するマイクロ波を分岐して、分岐した各マイクロ波をそれぞれ異なる増幅器で増幅する場合、あるいは分岐した各マイクロ波の位相を後述する制御部105により制御したものをそれぞれ異なる増幅器で増幅する場合、各増幅器を半導体型発振器と考えるようにしてもよい。つまり、このような分岐したマイクロ波を増幅する複数の増幅器を複数の半導体型発振器を考えるようにしてもよい。あるいはこのような複数の増幅器のそれぞれと一の発振器との組合せを、それぞれ半導体型発振器と考えてもよい。上記の場合の制御部105は、例えば、移相器であってもよい。
複数の導波管104は、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波をそれぞれ伝送して、容器101内の複数の位置から容器101内にマイクロ波を照射する伝送部である。複数の位置を、ここでは出射位置1041と呼ぶ。複数の導波管104は、通常、複数の半導体型発振器103と1対1で対応付けて設けられる。複数の導波管104のそれぞれは、例えば、一端が容器101の内部にマイクロ波を伝送可能となるよう、容器101の互いに異なる位置に接続されている。例えば、導波管104の一端が、容器101内に対して開口するよう接続されていてもよい。なお、この開口している部分は、マイクロ波を透過可能な材質のプレート等で塞がれていてもよい。ここでの接続は、取付と考えてもよい。例えば、容器101の導波管104が接続された位置から、導波管104を伝送されたマイクロ波が容器101内に出射される。容器101の、各導波管104を伝送されたマイクロ波が出射される位置が出射位置1041である。出射位置1041は、例えば、容器101の各導波管104が接続された位置である。導波管104は、容器101に対して直接接続されていてもよく、間接的に接続されていてもよい。なお、導波管104の容器101の接続構造や取付構造等については、公知技術であるため、ここでは説明を省略する。。なお、図1において、導波管104a〜104eにそれぞれ対応する出射位置1041を、出射位置1041a〜1041eとする。
一の半導体型発振器103が発生するマイクロ波は、この半導体型発振器103に対応する一の導波管104を伝送され、容器101のこの導波管104が取り付けられた出射位置1041から容器101内に照射される。例えば、半導体型発振器103a〜103eがそれぞれ発生したマイクロ波は、例えば、それぞれ導波管104a〜104eを伝送され、容器101の複数の出射位置1041a〜1041eから容器101内に照射される。各出射位置1041は、例えば、容器101内の、各導波管104が取り付けられている部分の中心位置や、端部等であってもよい。導波管104は、半導体型発振器103が発生するマイクロ波の周波数に応じた規格のものを使用することが好適である。
なお、ここでは、導波管104a〜104eが、対応する出射位置1041a〜1041eが容器101の上面の長手方向に向かって一直線上に等間隔に配列されるよう、容器101に取り付けられている場合を一例として示しているが、本発明においては、導波管104や、その出射位置1041の配置等は問わない。
また、例えば、出射位置1041から容器101内の所望の箇所までマイクロ波を照射することが可能であれば、複数の導波管104を伝送されたマイクロ波を、容器101内に配置された誘電率が低い物質等を介して、各出射位置1041から容器101内に照射するようにしてもよい。ここでの誘電率とは、複素誘電率の実部である。誘電率が低い物質は、例えば、マイクロ波透過性が高い物質である。誘電率が低い物質は、好ましくは、内容物10や、吸収性部材102よりも誘電率が低い物質である。誘電率が低い物質は、例えば、空気や、ガラスや、ゴム、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等である。
例えば、容器101が内部にマイクロ波を透過する透過領域を有する場合、複数の導波管104は、容器101内のこの透過領域を介してマイクロ波を照射するようにしてもよい。容器101内の透過領域を介してマイクロ波を照射するということは、容器101内の透過領域に対してマイクロ波を照射することや、透過領域に伝送されるようマイクロ波を照射することである。例えば、複数の導波管104は、透過領域を介して、容器内101の内容物10や吸収性部材102にマイクロ波を照射するようにしてもよい。マイクロ波を透過する透過領域は、例えば、マイクロ波の透過性が高い領域であり、具体的には、マイクロ波の透過性が高い物質を有す領域である。マイクロ波の透過性が高い物質は上述したような誘電率が低い物質である。
例えば、容器101内に未充填空間が存在する場合、複数の導波管104は、半導体型発振器103の発生したマイクロ波を、容器101内の未充填空間に照射してもよい。未充填空間とは、容器101内の内容物10が充填されていない空間である。未充填空間は、空気等の気体を有する空間である。また、この場合において、例えば、未充填空間内の空気等を、窒素により置換することにより、未充填空間を窒素を有する空間としてもよい。また、例えば、窒素の代わりに他の不活性ガス等を用いてもよい。未充填空間内の気体は、通常、マイクロ波の透過性が高い物質である。未充填空間内の気体がマイクロ波の透過性が高い物質である場合、マイクロ波が照射される未充填空間は、例えば、上述した透過領域と考えてもよい。これにより、例えば、マイクロ波は、未充填空間を介して、出射位置1041から内容物10や、吸収性部材102等に対して照射される。例えば、図1に示すように、出射位置1041が、容器101の上部に設けられており、容器101内の上方(例えば、内容物10の上方)に未充填空間が存在する場合、マイクロ波は出射位置1041から容器101内の未充填空間に照射される。なお、未充填空間を有する場合、通常、内容物10は、気体以外である。
また、例えば、容器101内の底面や側面に透過領域を設け、この透過領域を介して、1以上の出射位置からマイクロ波を容器101内に照射するようにしてもよい。例えば、容器101の底面に1以上の出射位置1041を設けるとともに、容器101内の底面側に出射位置1041を覆うように、ガラス等の固体であって、化学反応に寄与しない誘電率の低い物質を配置することで、底面側に透過領域を設け、底面側に設けられた1以上の出射位置1041から透過領域を介して、マイクロ波を容器101内、例えば、容器101内の内容物10や照射対象物102等に照射するようにしてもよい。
容器101内、特に、マイクロ波を照射する際の容器101内は、常圧であってもよく、減圧されていてもよく、加圧されていてもよい。なお、加熱装置1は、容器101内の減圧や加圧を行なうための、図示しない減圧手段や加圧手段を有していてもよい。
制御部105は、複数の半導体型発振器103の位相を制御する。半導体型発振器103の位相を制御するということは、例えば、複数の半導体型発振器103をそれぞれ制御して、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御することである。位相を制御することで、複数の半導体型発振器103がそれぞれ発生するマイクロ波の位相を異なる位相としたり、同じ位相としたりすることができる。位相の制御は、例えば、発生するマイクロ波の位相を早めることや遅くしたりすることである。位相の制御は、例えば、半導体型発振器103の初期位相を制御することや設定すること等と考えてもよい。複数の半導体型発振器103の位相の制御は、例えば、複数の半導体型発振器103間の位相の相対的な制御であってもよく、絶対的な制御であってもよい。
制御部105が、どのように各半導体型発振器103の位相を制御するかは問わない。例えば、制御部105は、上述したような半導体型発振器103と接続された移相器(図示せず)や、制御部105が有する移相器(図示せず)を制御することで、半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御してもよい。また、制御部105が移相器であってもよい。この場合、例えば、各半導体型発振器103がそれぞれ発生するマイクロ波の位相が、予め設定された位相となるよう移相器である制御部105が位相を制御するようにすればよい。制御部105は、半導体型発振器103を直接制御することで位相を制御してもよく、半導体型発振器103に入力される信号等を制御することにより、間接的に半導体型発振器103の位相を制御してもよい。制御部105は、例えば、制御信号等を各半導体型発振器103に対して出力することで、半導体型発振器103を制御してもよい。各半導体型発振器103の位相を制御することで、複数の出射位置1041から照射されるマイクロ波の位相を制御することができる。これにより、後述するように容器101内におけるマイクロ波により電界が集中する箇所を制御することができる。制御部105が、マイクロ波を発生する半導体型発振器103の位相を制御するための構成や、制御方法等については、公知技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
制御部105は、例えば、複数の半導体型発振器103の少なくとも一部が異なる位相のマイクロ波を発生するよう複数の半導体型発振器103の位相を制御する。少なくとも一部が異なる位相を発生するよう制御できれば、制御部104が、複数の半導体型発振器103のそれぞれの位相をどのように制御するかは問わない。例えば、制御部105は、3以上の半導体型発振器103が、2または3以上の異なる位相のマイクロ波を発生するよう、各半導体型発振器103の位相を制御する。例えば、制御部105は、複数の半導体型発振器103の一部分(全てを除く)を構成する2以上の半導体型発振器103が同じ位相のマイクロ波を発生するよう制御し、残りの半導体型発振器103をこれとは異なる位相のマイクロ波を発生するよう制御してもよい。例えば、制御部105は、図1に示した加熱装置1において、半導体型発振器103aと半導体型発振器103eとの位相を同位相とし、半導体型発振器103bと半導体型発振器103dとの位相を同位相とするとともに、半導体型発振器103aと半導体型発振器103eとの組と、半導体型発振器103bと半導体型発振器103dとの組と、半導体型発振器103cとの位相を、互いに異なる位相となるように制御してもよい。また、制御部105は、複数の半導体型発振器103の全てが異なる位相となるよう複数の半導体型発振器103を制御してもよい。
また、制御部105は、例えば、容器内の1または2以上の所望の箇所に複数の出射位置から照射されるマイクロ波により生じる電界が集中するよう、複数の半導体型発振器103の位相を制御してもよい。電界が集中するということは、例えば、電界強度が高くなることである。ここでの電界が集中する、とは、例えば、複数の出射位置1041から照射されるマイクロ波の位相を制御しない場合と比較して、電界が集中するということである。例えば、マグネトロンや、半導体型発振器103等のマイクロ波発振器に、例えば、上述したような移相器等を用いずに、位相を制御せずにマイクロ波を発生させた場合、ランダムな位相のマイクロ波が発生する。マイクロ波の位相を制御しない場合とは、このような場合を意味すると考えてもよい。
また、制御部105は、例えば、容器内の1または2以上の所望の箇所が、それぞれ、複数の出射位置から照射されるマイクロ波が干渉により強めあう位置となるよう、複数の半導体型発振器103の位相を制御してもよい。マイクロ波が干渉により強めあう位置とは、マイクロ波の強度が干渉により強め合う位置と考えてもよい。マイクロ波が強め合うということは、例えば、振幅が大きくなることと考えてもよい。マイクロ波が干渉により強めあう位置とは、例えば、照射される複数のマイクロ波のそれぞれから個別に得られる電界よりも少なくとも高い強度の電界が得られる位置である。また、マイクロ波が干渉により強め合う位置は、例えば、複数のマイクロ波の中に、干渉により弱め合うものが含まれない位置であってもよい。ただし、所望の箇所における波の高さは問わない。位置制御部105は、例えば、容器内の1または2以上の所望の箇所が、複数の位置から照射されるマイクロ波が干渉により最も強めあう位置となるよう、複数の半導体型発振器103の位相を制御することが好ましい。このような構成とすることによって、1以上の所望の箇所において、複数の位置から照射されるマイクロ波を集中させることができる。これにより、容器101内の1以上の所望の箇所を選択的に加熱することが可能となる。なお、制御部105は、1以上の所望の箇所が、3以上の出射位置から照射されるマイクロ波のうちの2以上が干渉により最も強め合う位置であって、残りのマイクロ波が、この最も強め合った2以上のマイクロ波を、少なくとも弱めることがない位置となるように、3以上の半導体型発振器103の位相を制御することによって、所望の箇所が干渉により強め合うようにしてもよい。
なお、複数の半導体型発振器103が同じ周波数のマイクロ波を発生する場合、制御部105は、所望の箇所が、複数の出射位置から照射される複数のマイクロ波の位相差がπ未満の範囲に収まる箇所となるように、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御するようにしてもよい。この場合、上述したように、所望の箇所が、複数のマイクロ波同士が干渉により弱め合わない位置となり、その結果、所望の箇所において、マイクロ波が干渉により強め合うこととなり、所望の箇所に電界を集中させることができる。
例えば、制御部105は、容器内の1または2以上の所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相となるように、複数の半導体型発振器103の位相を制御する。入射される複数のマイクロ波の位相が同位相となるということは、例えば、所望の箇所に入射された時点の位相が同位相であることである。複数のマイクロ波が最も強め合う箇所は、入射される複数のマイクロ波の位相が同位相である箇所、つまり位相差が0となる箇所である。このため、このように所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相となるように位相を制御することで、所望の箇所が複数の位置から照射されるマイクロ波が干渉によって最も強め合う位置となり、所望の箇所に、複数の位置から照射されるマイクロ波を集中させることできる。これにより、所望の箇所を選択的に加熱することができる。
上述した1以上の所望の箇所は、容器101内の所望の箇所であればどの箇所であってもよく、例えば、上述した吸収性部材102内の1以上の所望の箇所である。例えば、吸収性部材102の表面(例えば、上面)の1以上の所望の箇所である。例えば、吸収性部材102における内部電力消費を高める場合(例えば、発熱量を高める場合)、吸収性部材102内(例えば、吸収性部材102の表面)に設定される1以上の所望の箇所は、2以上であることが好ましく、数が多い方がより好ましい。また、この所望の箇所と、各出射位置1041との間は、未充填空間等の、誘電率が低い物質を有する空間であることが好ましい。
1以上の所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相とするための、各半導体型発振器103がマイクロ波を出力する際の位相は、どのように決定してもよい。例えば、複数の出射位置1041と所望の箇所との距離、あるいは距離の差によって発生する位相差が無くなるよう、マイクロ波を出力する際の位相を決定する。ここで、決定する位相は、初期位相と考えてもよい。
以下、複数の位置からそれぞれ所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が、同位相となるようにするための位相の制御について例を挙げて説明する。なお、以下の第1の例および第2の例においては、いずれも、半導体型発振器103a〜103eがそれぞれ発生するマイクロ波の出力周波数は同じであるとする。
図2は、容器101内に照射されるマイクロ波の位相の制御を説明するための側断面模式図である。図において、図1と同一符号は同一または相当する部分を示している。ここでは、吸収性部材102の上面の一点が、所望の箇所1021であるとする。また、ここでは、容器101の各導波管104a〜104eと接続されている接続部分の中心を各出射位置1041a〜1041eとしている。各出射位置1041a〜1041eと所望の箇所1021との距離をそれぞれ距離Ka〜Keとする。なお、ここでは、説明の便宜上、それぞれの距離Ka〜Keが異なる値となるように、吸収性部材102の位置を設定している。
(A)第1の例
複数の出射位置1041a〜1041eからそれぞれ所望の箇所1021に入射されるマイクロ波の位相が、同位相となるよう位相を制御するために、例えば、各出射位置1041a〜1041eと所望の箇所1021との間の距離Ka〜Keの差によって生じる位相差が0となるように、半導体型発振器103a〜103eが発生するマイクロ波の位相を制御すればよい。
このためには、複数の出射位置1041のうちの基準となる一の出射位置1041から所望の箇所1021までの距離と、各出射位置1041a〜1041eと所望の箇所1021との間の距離との差を算出し、その差を、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の波長で除算して余りαa〜αe(<λ)を求め、このαa〜αeを波長λで除算した値に2πを乗算して位相差を算出し、この位相差だけ各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を、上記の基準となる一の出射位置からマイクロ波を照射する一の半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相に対して進めるよう設定する。ただし、基準となる一の出射位置1041については、上記の位相差の算出は行なわなくても良く、基準となる一の出射位置1041の位相は変更しないようにしてもよく、位相差を0としてもよい。
例えば、一の基準となる出射位置を出射位置1041cとした場合、距離Kaと距離Kcの距離の差、つまりKa−Kcを算出し、この差を、半導体型発振器103が発生するマイクロ波の波長λで除算して余りαa(αa<λ)を求め、このαaを波長λで除算した値に2πを乗算した値2παa/λを算出し、この値だけ半導体型発振器103aが発生するマイクロ波の位相を、半導体型発振器103cが発生するマイクロ波の位相に対して進めるよう設定する。
同様に、距離Kbと距離Kcの距離の差、つまりKb−Kcを算出し、この差をマイクロ波の波長λで除算して余りαb(αb<λ)を求め、このαbを波長λで除算した値に2πを乗算した値2παb/λを算出し、この値だけ半導体型発振器103bが発生するマイクロ波の位相を、半導体型発振器103cが発生するマイクロ波の位相に対して進めるよう設定する。
同様に、距離KdおよびKeと、距離Kcとの距離の差を波長λで除算した余りがそれぞれαdおよびαeであったとすると、半導体型発振器103dおよび103eが発生するマイクロ波の位相を、半導体型発振器103cが発生するマイクロ波の位相に対して2παd/λおよび2παe/λ進めるよう設定する。
ここでは、距離Kcが距離の基準であるため、上記の位相は、半導体型発振器103cの位相を基準とした位相である。このため、半導体型発振器103については、上記のような位相差を算出しなくてもよく、半導体型発振器103cの位相は、例えば、変化させなくてもよく、位相差を0としてもよい。
なお、ここでは、位相の基準を出射位置1041cとした場合について説明したが、どの出射位置1041を位相の基準としてもよい。また、何れかの出射位置と所望の箇所との距離を基準とする代わりに、任意の距離を用いるようにしてもよい。この場合、制御部105は、各半導体型発振器103から発生するマイクロ波の位相を、全ての半導体型発振器103の位相を同位相とした場合に対して、上記で各半導体型発振器103について算出した位相差分だけシフトする(例えば、位相を進める)よう制御してもよい。
また、上記で算出する位相差は、一の距離を基準とした場合の相対的な位相差であるため、制御部105は、この相対的な位相差が無くなるよう各半導体型発振器103の位相を結果的に制御できれば、どのように、各半導体型発振器103の位相を制御してもよい。例えば、半導体型発振器103cに対する半導体型発振器103aの位相差がπであった場合、制御部105は、半導体型発振器103aの位相を半導体型発振器103cの位相に対してπ進めてもよく、半導体型発振器103aの位相を1/3π進めるとともに、半導体型発振器103cの位相を2/3π遅らせるようにしてもよい。かかることは、以下においても同様である。
(B)第2の例
例えば、上記の距離Ka〜Keを、それぞれの半導体型発振器103a〜103eが発生するマイクロ波の波長λで除算して得られた余りβa〜βeを、更に、各半導体型発振器103a〜103eのマイクロ波の波長λで除算して得られた値に2πを乗算した値を取得し、全ての位相を同位相とした場合に対してこの取得した値の分だけ位相を進めたマイクロ波を、各半導体型発振器103a〜103eから発生する。ただし、βa〜βeは、いずれもλ未満であるとする。
例えば、半導体型発振器103aの位相を、2πβa/λ進め、半導体型発振器103bの位相を、2πβb/λ進め、半導体型発振器103cの位相を、2πβc/λ進め、半導体型発振器103dの位相を、2πβd/λ進め、半導体型発振器103eの位相を、2πβe/λ進めるようにすればよい。
なお、上記の制御は一例であり、複数の出射位置1041からそれぞれ所望の箇所1021に入射されるマイクロ波の位相が、同位相となるようにすることができれば、半導体型発振器103a〜103eの位相をどのように変更してもよい。
なお、上記においては、所望の箇所1021が一つである場合を例に挙げて説明したが、所望の箇所が複数である場合、それぞれの箇所が同位相となるように各半導体型発振器103a〜103eの位相を決定すればよい。ただし、所望の箇所の配置によっては、複数の箇所が同位相となるような位相が決定できない場合がある。
例えば、吸収性部材102内の複数の箇所(例えば、吸収性部材102の上面等の複数の箇所)において、複数の半導体型発振器103a〜103eが発生したマイクロ波が同位相で照射されるよう各半導体型発振器103a〜103eの位相を決定してもよい。この場合、この吸収性部材102内の複数の箇所を、複数の所望の箇所と考えてもよい。
上記のように半導体型発振器103a〜103eの位相を制御する場合、各導波管104の配置(例えば、各導波管104の取り付け位置)等の物理的な変更が不要であるため、例えば、所望の箇所の位置等を変更した場合であっても、制御部105がマイクロ波を発生する際の位相を変更するよう各半導体型発振器103を制御するだけで、容易にマイクロ波を集中させる所望の箇所を変更することができる。例えば、所望の箇所の位置の変更に追従せて、マイクロ波を集中させる箇所を移動させることができる。これにより、所望の箇所の位置の変更等を容易に行なうことが可能となる。
なお、上記において、制御部105が、半導体型発振器103a〜103eのそれぞれの位相を、同位相等の予め決められた位相となるように制御するようにし、上記の距離Ka〜Keの差により生じる位相差が0となるように、1以上の所望の箇所や、複数の出射位置1041の位置を設定するようにしてもよい。例えば、(A)において算出したαa、αb、αdおよびαeがいずれも同じ値となるように、所望の箇所や、複数の出射位置1041等を設定するようにしてもよい。
また、上記においては、5つの半導体型発振器103を用いた場合について説明したが、半導体型発振器103の数は2以上、好ましくは3以上、であればよく、2以上であれば、上記と同様の制御が実現可能である。
また、上記の(A)や(B)において示した位相差や初期位相等を算出する算出式等の代わりに、適宜、近似した位相差や初期位相等を算出可能な近似式等を用いるようにしてもよい。
なお、容器内の1または2以上の所望の箇所が、複数の位置から照射されるマイクロ波の干渉により強めあう位置となるようするために、制御部105が制御する複数の半導体型発振器103がそれぞれ発生するマイクロ波の位相は、上記以外の手法等により決定してもよい。例えば、複数の半導体型発振器103の位相をそれぞれ変えてシミュレーションや実験等を行なうことで、所望の位置においてマイクロ波が強め合うような位相を決定してもよい。
なお、制御部105は、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の強度等の制御も行なっても良い。また、制御部105は、容器101内や容器外に設けられた容器101内部等の状況を示す情報を取得するための1以上のセンサ(例えば、温度センサ、圧力センサ)等の出力に応じて、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の強度等の制御を行なっても良い。
また、制御部105は、複数の半導体型発振器103を集中的に制御してもよく、制御部105を各半導体型発振器103に対して分散させて設置することで、各半導体型発振器103を分散的に制御してもよい。例えば、複数の制御部105が、各半導体型発振器103と一体となるように設けられていてもよい。例えば、制御部105が移相器である場合、各半導体発振器103が、それぞれ、移相器である制御部105と一体に形成されていてもよい。
なお、制御部105が、各半導体型発振器103を制御する際に用いる位相の変化量や変化方向等の情報は、図示しない格納部等に予め格納しておくようにし、制御の開始時や制御中に、適宜、制御部105が読み出すようにすればよい。位相の変化方向の情報は、例えば、位相を進めるか遅らせるかを指定する情報である。格納部は、不揮発性の記憶媒体や、揮発性の記憶媒体により実現可能である。
制御部105は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。制御部105の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。例えば、制御部105は、コンピュータ等で実現される。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
次に、加熱装置1の動作の一例について以下に簡単に説明する。容器101内には内容物10が供給される。制御部105は、複数の半導体型発振器103にマイクロ波を発生させる。この際、制御部105は、各半導体型発振器103が発振する位相を、予め決められた変化量(例えば、移相量)だけ変化させる。制御する。複数の半導体型発振器103から発生したマイクロ波は、それぞれの半導体型発振器103に対応する導波管104内を伝送され、複数の導波管104にそれぞれ対応する複数の出射位置1041から容器101内に出射される。複数の出射位置1041から出射されたマイクロ波の位相が制御されているため、所望の箇所でマイクロ波が干渉によって強め合い、所望の箇所の電界の強度が高くなる。このようにして、所望の箇所に複数の出射位置1041から照射されたマイクロ波を、容器101内の所望の箇所に集中させることができる。
なお、この加熱装置1を用いて行なわれる化学反応方法は、例えば、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御する工程と、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波を、複数の導波管104でそれぞれ伝送させて、複数の位置から容器101内に照射する工程とを備えた化学反応方法である。
以下、本実施の形態における加熱装置1の(1)吸収性部材を配置していない場合、および(2)吸収性部材を配置した場合における、シミュレーションによる実証試験結果について、それぞれ説明する。
(1)吸収性部材を配置していない場合のシミュレーション試験
(基本条件)
図3は、吸収性部材を配置していない加熱装置1のシミュレーションによる実証試験において用いられた加熱装置1のモデルを示す斜視図(図3(a))、およびシミュレーション試験において設定された材料定数を示す表(図3(b))である。
図4は、実証実験1において用いられた加熱装置1のモデルの寸法等を説明するための正面図(図4(a))、側面図(図4(b))、および平面図(図4(c))である。なお、図3および図4において、説明の便宜上、図1に相当する部分については、同一または相当する符号を付与している。かかることは、以下のシミュレーション試験結果の図等においても同様である。
容器101は、図1と同様に、長手方向に垂直な断面がU字形状を有し、長手方向における両端および上部が平面で塞がれた形状を有する横型の容器であるとする。ここでは、容器101を長手方向と平行な方向から見た図を正面図としている。内容物10の供給口や、取出口等は省略している。容器101の正面下部は、半径が120mmの半円形状である。内容物10は、容器101の下部、具体的には、半円形状部分に入れられている。また、容器101の正面上部は、高さ200mm、幅240mmの矩形形状である。容器101の長手方向の長さは、500mmである。ここで用いられた導波管104は、WR340規格のものであり、内径の寸法が43.2×86.4mmである。導波管104の高さは、150mmである。複数の導波管104は、容器101の長手方向の中央に、長手方向に向かって80mm間隔で一列に配列されている。
また、内容物10上面の、長手方向に垂直な幅方向の中心線を、電界強度と、電力吸収を測定するための第一測定線61として設定した。
容器101の上部平面には、導波管104がそれぞれ接続される5つの接続部1042(ここでは、それぞれを接続部1042a〜1042eと称す)が設けられており、各接続部1042に、導波管104が接続されている。このシミュレーション試験においては、それぞれの導波管104の容器101に対して反対に位置する端部側において発生したマイクロ波が、導波管104内を伝送され、各接続部1042から容器101内に向かって、2.45GHzの同じ波長のマイクロ波が出射されることを想定している。ここでは、各接続部1042の中心がマイクロ波の出射位置に相当するものと考える。ここで発生するマイクロ波は、制御部105によって位相が制御されたマイクロ波であるとする。なお、接続部1042は、マイクロ波を透過可能な材質のプレート等を介して導波管104と接続されていてもよい。容器101内の電界を集中させたい一の所望の箇所51が、ここでは、内容物10表面の、マイクロ波の出射位置52a〜52eのうちの、長手方向の中央に位置する出射位置52cの、真下の箇所であるとする。
また、ここで発生するマイクロ波の出力は、いずれも100Wに設定され、総入力電力が500Wであるとする。
ここでは、内容物10は、反応に用いられる溶液であるとする。また、容器101内の内容物10の上方には、未充填空間1011が設けられており、この未充填空間1011の気体として、空気が存在しているものとする。シミュレーション試験に用いた内容物10や、空気の材料定数を図3(b)に示す。
図5は、半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相差を算出するための模式図である。図は、容器101内の電界を集中させたい一の所望の箇所51と、容器101におけるマイクロ波の出射位置52a〜52eを示している。上述したように、一の所望の箇所が、ここでは出射位置52cの真下に位置している。出射位置52a〜52eは、それぞれ上記の接続部1042a〜1042eに対応した出射位置であるとする。出射位置52a〜52eは、等間隔dで配列されている出射位置52a〜52eのそれぞれと、所望の箇所51との距離を、ここでは、L1からL5とする。
例えば、複数の出射位置52a〜52eのうちの長手方向の中央の出射位置52cから出射されるマイクロ波が所望の箇所51に入射される際の位相を基準(即ち位相差0°)とした場合、例えば、出射位置52aから出射されるマイクロ波が所望の箇所51に入射される際の位相差は、(L1−L3)×2π/λ×360°/2πで表される。また、同様に、出射位置52bから出射されるマイクロ波が所望の箇所51に入射される際の位相差は、(L2−L3)×2π/λ×360°/2πで表される。λ=12.24cm(2.45GHzの場合)であるため、上記のシミュレーション試験のモデルの寸法を用いて計算した場合、出射位置52aおよび出射位置52eから照射されるマイクロ波についての位相差は、165.1°となる。同様に、出射位置52bおよび出射位置52dから照射されるマイクロ波についての位相差は、45.3°となる。従って、ここで算出した位相差だけ位相を進めたマイクロ波が各出射位置52a〜52eから照射されるよう、制御部105が、各出射位置52a〜52eに対応する半導体型発振器103a〜103eが発生するマイクロ波の位相を制御することで、所望の箇所51における各半導体型発振器103a〜103eが出射するマイクロ波間の位相差をなくして、マイクロ波により発生する電界強度を所望の箇所51に集中させる。このため、ここでは、各出射位置52から出射されるマイクロ波の位相差を、上記のような位相差に設定した場合のシミュレーション試験を行なった。
なお、シミュレーション試験には電場解析ソフト(ANSYS製HFSS13.0)を用い、導波管104を伝送して出射される5つの半導体型発振器103がそれぞれ発生するマイクロ波の位相を制御することで、固定床102への電界集中が起こっているか否かを実証試験した。なお、比較対象として、上記のようなシミュレーションモデルにおいて、周波数が2.45GHzである等振幅等位相のマイクロ波を出射させた場合のシミュレーション結果を用いた。上記のようなシミュレーションモデルにおいて、同位相の複数のマイクロ波を照射した場合、所望の箇所51において全てのマイクロ波間の位相差が0にならないため、この場合のシミュレーション試験結果を、所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相となるよう制御されていない場合を示す比較対照として用いた。
(シミュレーション試験結果)
位相制御による電界分布(V/m)、発熱分布(W)の比較
上記の基本条件によりシミュレーション試験を行なって得られた電界分布の比較、および発熱分布の比較を行なった。
図6は、シミュレーション試験により取得した電界分布を比較するための、等振幅等位相のマイクロ波を用いることを想定した場合(以下、位相制御なし想定と称す)の電界分布の平面図(図6(a))、半導体型発振器103が発生した位相が制御されたマイクロ波を用いることを想定した場合(以下、位相制御あり想定と称す)の電界分布の平面図(図6(b))、位相制御なし想定の電界分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図6(c))、半導体型発振器(位相制御)想定の電界分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図6(d))である。
図7は、シミュレーション試験により取得した発熱分布を比較するための、位相制御なし想定の発熱分布の平面図(図7(a))、位相制御あり想定の発熱分布の平面図(図7(b))、位相制御なし想定の発熱分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図7(c))、位相制御あり想定の発熱分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図7(d))、位相制御なし想定の発熱分布の、容器101の長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面図(図7(e))、位相制御あり想定の発熱分布の容器101の長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面図(図7(f))である。
図8は、シミュレーション試験により取得した第一測定線61に沿った電界分布を示すグラフ(図8(a))、および図8(a)において、更に、上述した位相差以外の位相差のマイクロ波を発生させた場合におけるシミュレーション試験により取得した第一測定線61に沿った電界分布を示すグラフを加えたグラフで(図8(b))である。なお、図8は、第一測定線61を100分割する各点において取得した電界の値をプロットしたものである。図8(a)および図8(b)において、曲線81は、位相制御なし想定の電界強度の分布を示す曲線、曲線82は、位相制御あり想定の電界強度の分布を示す曲線、曲線83は、各出射位置52a〜52eの位相差を、60°、20°、0°、20°、60°に設定した場合の電界強度分布を示す曲線、曲線84は、各出射位置52a〜52eの位相差を、80°、40°、0°、40°、80°に設定した場合の電界強度分布を示す曲線、曲線84は、各出射位置52a〜52eの位相差を、120°、60°、0°、60°、120°に設定した場合の電界強度分布を示す曲線である。
なお、図6〜図8における電界分布は、マイクロ波の一位相区間における電界強度の最大値を示している。かかることは、以下においても同様である。
図6(a)〜図6(d)に示すように、複数の半導体型発振器103からそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、溶液表面と長手方向に沿った深さ方向の断面のいずれにおいても、位相を制御しない場合に比べて、所望の箇所51における電界強度を高くすることができることがわかる。
また、図7(a)〜図7(f)に示すように、複数の半導体型発振器103からそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、溶液表面と長手方向に沿った深さ方向の断面と、長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面のいずれにおいても、位相を制御しない場合に比べて、所望の箇所51近傍を局所的に発熱、つまり局所的に加熱することができることがわかる。
また、図8(a)、図8(b)に示すように、長手方向においては、複数の半導体型発振器103から、長手方向の中心位置における位相差がなくなるようそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、中心位置、つまり所望の箇所51における電界強度を高くすることができる。
このように、本実施の形態のように、複数の半導体型発振器103のそれぞれの位相を適切に制御することで、所望の箇所に電界を集中させることができる。
(2)吸収性部材を配置した場合のシミュレーション試験
(基本条件)
図9は、図3に示した加熱装置1のモデルに対して、されに吸収性部材102を配置したモデルを示す斜視図(図9(a))、およびシミュレーション試験において設定された材料定数を示す表(図9(b))である。なお、図9において、説明の便宜上、図1に相当する部分については、同一または相当する符号を付与している。
ここでは、上記(1)で示した基本条件において、更に、容器101の長手方向における中心位置に、内容物10を仕切るように吸収性部材102を配置した。吸収性部材102は、ここでは固定床であるとする。吸収性部材102の高さは、内容物10の高さと同じ高さであるとする。また、吸収性部材102の厚さは、30mmであるとする。
また、ここでは、吸収性部材102の上面の中心から、容器101の底部に垂直に下ろした直線を、電界強度と、電力吸収を測定するための第二測定線62として設定した。
ここでは、上記(1)と同様に、出射位置52cの直下の吸収性部材102の上面の中心71において、各出射位置52a〜52eから照射されるマイクロ波の位相差がなくなるように位相制御を行なうようにした。つまり、上面の中心71が、上述した所望の箇所51に相当する。具体的には、上記(1)と同様の位相差だけ進めたマイクロ波を、各出射位置52a〜52eから照射するようにした。
吸収性部材102等の材料定数については、図9(b)に示している。また、その他の基本条件(例えば寸法等)については、上記(1)で示した基本条件と同様である。
(シミュレーション試験結果)
位相制御による電界分布(V/m)、発熱分布(W)の比較
図10は、シミュレーション試験により取得した電界分布を比較するための、位相制御なし想定の電界分布の平面図(図10(a))、位相制御あり想定の電界分布の平面図(図10(b))、位相制御なし想定の電界分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図10(c))、半導体型発振器(位相制御)想定の電界分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図10(d))である。
図11は、シミュレーション試験により取得した電界分布を比較するための、位相制御なし想定の発熱分布の平面図(図11(a))、位相制御あり想定の発熱分布の平面図(図11(b))、位相制御なし想定の発熱分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図11(c))、位相制御あり想定の発熱分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図11(d))、位相制御なし想定の発熱分布の、容器101の長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面図(図11(e))、位相制御あり想定の発熱分布の容器101の長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面図(図11(f))である。
図12は、シミュレーション試験により取得した第二測定線62に沿った電界分布を示すグラフ(図12(a))、電力吸収量のグラフ(図12(b))、位相制御なし想定の電力吸収量を示す表(図12(c))、および位相制御あり想定の電力吸収量を示す表(図12(d))である。図12(a)および図12(b)は、第二測定線62を100分割する各点において取得した電界強度の最大値や電力吸収量をプロットしたものである。図12(a)および図12(b)において、曲線121は、位相制御なし想定の電界強度の分布および電力吸収量の分布を示す曲線、曲線122は、位相制御あり想定の電界強度の分布および電力吸収量の分布を示す曲線である。ここでの距離は、吸収性部材102の上面の中心71である所望の箇所を基準、つまり0とした場合の高さ方向の距離である。図12(c)および図12(d)の電力吸収量の表においては、容器101内の内容物10である溶液と、吸収性部材102である固定床との電力吸収量の合計である総電力吸収量と、固定床単体の電力吸収量とを示している。
図10(a)〜図10(d)に示すように、複数の半導体型発振器103からそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、溶液表面と長手方向に沿った深さ方向の断面のいずれにおいても、位相を制御しない場合に比べて、吸収性部材102における電界強度を高くすることができることがわかる。
また、図11(a)〜図11(f)に示すように、複数の半導体型発振器103からそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、溶液表面と長手方向に沿った深さ方向の断面と、長手方向の中心を通る長手方向に垂直な断面のいずれにおいても、位相を制御しない場合に比べて、吸収性部材102を局所的に発熱、つまり局所的に加熱することができることがわかる。
また、図12(a)、図12(b)に示すように、吸収性部材102の高さ方向においては、吸収性部材102の上面の中心71における位相差がなくなるよう、複数の照射位置52a〜52eが照射する位相を変更することで、吸収性部材102の上面側の電界強度や、電力吸収量が高くすることができることがわかる。
また、図12(c)および図12(d)に示すように、複数の半導体発振器103からそれぞれ位相を制御したマイクロ波を照射することで、位相を制御しないと想定した場合に対して、吸収性部材102である固定床単体の電力吸収量を1.89倍に増加させることができる。
また、総電力吸収量の比較から、複数の半導体発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御することで、比較的に狭い間隔で各導波管104を配置して、垂直方向から容器101内にマイクロ波を入射させた場合であっても、損失を低減できることがわかる。
このように、本実施の形態においては、複数の半導体型発振器103のそれぞれが発生するマイクロ波の位相を適切に制御することで、所望の箇所に電界を集中させることができる。
以上、本実施の形態によれば、複数の半導体型発振器103のそれぞれが発生するマイクロ波の位相を制御して、容器101内の所望の箇所にマイクロ波により発生する電界を集中させることができ、所望の箇所の局所的な加熱を行なうことができる。これにより、例えば、容器内で行なわれる反応の細かい制御等が可能となる。
なお、本実施の形態においては、制御部105が、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相が同位相となるように、複数の半導体型発振器102の位相を制御してもよい。例えば、複数の半導体型発振器103が発生したマイクロ波がそれぞれ出射される出射位置と容器101内の一の所望の箇所との距離が全て同じである場合や、半波長未満の範囲で収まる場合等においては、制御部105は、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相が同位相となるように複数の半導体型発振器102の位相を制御してもよい。
図13は、本実施の形態の加熱装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図13においては、制御部105は省略している。この加熱装置2は、回転体である縦型の容器201を備えている。容器201の上面には、3つの半導体型発振器103にそれぞれ接続された3つの導波管104が、回転体である容器201上部の、容器201の回転軸を中心とした仮想の円上に、等間隔に接続されている。また、容器201の回転軸を中心とした仮想の円上には、等間隔に3つの出射位置1041が設けられている。なお、容器201、導波管104、出射位置1041等については、形状や配置等が異なる点を除けば、上記実施の形態の、容器101、導波管104、出射位置1041等と同様であるものとする。
図13に示した加熱装置において、局所的な加熱を行なう対象となる所望の箇所200を、例えば、容器201の回転軸上の位置とした場合、各出射位置1041と、この所望の箇所200までの距離Lが全て等距離となる。このため、制御部105が、複数の半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相が同位相となるように複数の半導体型発振器103の位相を制御することで、各出射位置1041から出射されたマイクロ波が、所望の箇所200に入射される際の位相を同位相とすることができ、この所望の箇所200において、電界等を集中させて、所望の箇所を局所的に加熱することが可能となる。
(第一の変形例)
上記実施の形態において、制御部105は、上述した所望の箇所が経時的に変更されるよう、複数の半導体型発振器103の位相、つまり複数の半導体型発振器103がそれぞれ発生するマイクロ波の位相を制御するようにしてもよい。上述した所望の箇所とは、例えば、マイクロ波により発生する電界を集中させる箇所や、複数の位置から入射されるマイクロ波が干渉により強め合う箇所や、入射されるマイクロ波の位相が同位相となる箇所である。かかることは以下の第二の変形例においても同様である。所望の箇所が経時的に変更されるということは、例えば、複数の箇所のうちの一部が、順番に、所望の箇所として選択されることと考えてもよい。例えば、制御部105は、容器101内の内容物10の複数の位置や、複数の吸収性部材102等に対して順番に、所定の時間ずつ、電界が集中するよう複数の半導体型発振器103の位相を制御(例えば、位相が順次変更されるよう制御)するようにしてもよい。なお、この場合の変更の前後の所望の箇所は、局所的な加熱を行なう観点から、非連続な箇所であることが好ましい。
図14は、本実施の形態の加熱装置1の第一の変形例を説明するための模式図であり、図1等と同一符号は同一または相当する部分を示している。この変形例においては、容器101内に内容物として、加熱対象物を内部に有する5つの密封容器であるレトルトパウチ300a〜300eが配置されている場合を例に挙げて示している。レトルトパウチ300a〜300eは、例えば、載置台301に配置されている。ここでは、レトルトパウチ300a〜300eを用いた場合を例に挙げて示しているが、本発明においては、レトルトパウチ以外の密封容器を用いてもよい。
例えば、図14に示す加熱装置1において、マイクロ波により発生する電界が集中する箇所が、レトルトパウチ300a内の箇所からレトルトパウチ300e内の箇所まで、一定時間毎に順番に変更されるよう、制御部105が、半導体型発振器103の位相を制御することで、レトルトパウチ300a〜300e内の加熱対象物を加熱できるとともに、容器101内の他の部分については加熱しないようにすることができる。これにより、レトルトパウチ300a〜300eのそれぞれの内部を均等かつ局所的に加熱することが可能となる。
(第二の変形例)
上記実施の形態において、吸収性部材102が、容器101内において経時的に移動するようにし、制御部105が、吸収性部材102の経時的な移動に伴って移動する吸収性部材102内の予め決められた1以上の箇所が、上述した所望の箇所となるよう、複数の半導体型発振器103の位相を制御するようにしてもよい。例えば、制御部105が、経時的に移動する吸収性部材102内の、所望の箇所に電界が集中するよう、または、所望の箇所において複数の位置から入射されるマイクロ波が干渉により強め合うよう、あるいは、所望の箇所において入射されるマイクロ波の位相が同位相となるよう、複数の半導体型発振器103の位相を制御するようにしてもよい。この吸収性部材102内の、所望の箇所は、例えば、吸収性部材102の移動にともなって移動する箇所である。
この場合の吸収性部材102の移動は、予め決められた移動経路に沿った移動であることが好ましい。例えば、吸収性部材102の移動に伴って移動する所望の箇所となる1以上の箇所の移動経路を示す情報(例えば、座標群やベジェ曲線等のベクトルデータ等)と移動速度とを示す情報、または移動経路上の位置と、移動の際の経過時間との複数の組を有する情報等を取得して、この情報を用いて、上述した所望の箇所が、移動する1以上の箇所に追従するよう変化させるための、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相の経時的な変化を示す情報を算出して、図示しない記憶媒体等に蓄積しておく。そして、この各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相の経時的な変化を示す情報を読出し、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相が、この情報が示す位相となるよう、経時的に、制御部105が、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御することにより、吸収性部材102の経時的な移動に伴って移動する吸収性部材102内の予め決められた1以上の箇所が、上述した所望の箇所となるように制御することができる。なお、マイクロ波の位相の経時的な変化を示す情報を予め算出する代わりに、移動中の吸収性部材102の1以上の箇所の現在地を、上述した移動経路等の情報から取得し、この移動経路が上述した所望の箇所(例えば、電界が集中する箇所等)となるように、制御部105等が、各半導体型発振器103が発生すべきマイクロ波の位相を算出し、各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相がこの算出された位相となるように、制御部105が、複数の半導体型発振器103を制御するようにしてもよい。このような構成とすることにより、例えば、移動する吸収性部材102の一部を常に局所的に加熱することが可能となる。
なお、移動する吸収性部材102とは、例えば、撹拌翼や、容器101内を移動するトレイ等である。吸収性部材102の移動は、1次元方向の移動であってもよく、二次元方向の移動であってもよく、三次元方向の移動であってもよい。吸収性部材102の移動は、例えば回転軸等を中心とした回転移動等であってもよい。
図15は、本実施の形態の加熱装置1の第二の変形例を説明するための模式図であり、図13等と同一符号は同一ま他は相当する部分を示している。この変形例においては、容器201の回転軸を軸として回転する撹拌翼202が、移動する吸収性部材として設けられているものとする
例えば、図15に示す加熱装置2において、マイクロ波により発生する電界が集中する箇所を、撹拌翼202の上部の、回転により移動する一点2021とし、制御部105は、撹拌翼202の回転に伴って移動するこの一点2021が電界が集中する箇所となるよう各半導体型発振器103が発生するマイクロ波の位相を制御する。これにより、常に、撹拌翼202の一点2021を局所的に加熱することが可能となり、撹拌翼202に接触する内容物10を加熱することができる。
なお、本実施の形態においては、マイクロ波発振器として、半導体型発振器103を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、上記の半導体型発振器103の代わりに、発生するマイクロ波の位相が制御可能な他のマイクロ波発振器を用いてもよい。例えば、このような他のマイクロ波発振器は、マグネトロンや、クライストロン、ジャイロトロン等のマイクロ波発振器である。ただし、半導体型発振器103は、マグネトロンを用いたマイクロ波発振器とは異なり、発生するマイクロ波の周波数スペクトルの範囲は狭く、かつ変動が小さい。半導体型発振器103が発生するマイクロ波は、マグネトロンを用いたマイクロ波発振器が発生するマイクロ波と比べてQ値が高い。また、半導体型発振器1021は、マグネトロンを用いたマイクロ波発振器のように、ランダムにマイクロ波を発生しないため、発生するマイクロ波の位相を精度よく制御することができる。このため、マイクロ波発振器としては、半導体型発振器を用いることが好ましい。
また、本実施の形態においては、半導体型発振器103が発生したマイクロ波を容器101内に伝送する伝送部として、導波管104を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、伝送部として、上記のような導波管104の代わりに、同軸管や同軸ケーブル等の他の伝送部を用いるようにしてもよい。かかることは、以下の実施の形態においても同様である。なお、伝送部として同軸ケーブルを用いる場合、容器内に同軸ケーブルと接続されたアンテナ(図示せず)等を適宜設けるようにしてもよい。
なお、本発明においては、マイクロ波により発生する電界を集中させることは、マイクロ波により発生する磁界を集中させることと実質的に同じことと考えるようにしてもよい。例えば、上記の実施の形態においては、制御部105が1以上の所望の箇所に電界が集中するようマイクロ波の位相を制御する場合等について説明したが、このことは、制御部105が1以上の所望の箇所に磁界が集中するようマイクロ波を制御することと実質的に同じことと考えてもよい。通常、電界が集中する箇所も、磁界が集中する箇所も実質的に同じ箇所となるため、このように電界を磁界と置き換えて考えた場合においても、実質的に、上記実施の形態と同様の構成となり同様の効果を奏する。なお、この場合、吸収性部材102としては、例えば、磁性体等を用いることが好ましい。
図16は、上記の図3に示したシミュレーションのモデルと同様のモデルにおいて、上記(1)と同様のシミュレーション試験を行なった場合における、磁界分布を比較するための、位相制御なし想定の磁界分布の平面図(図16(a))、位相制御あり想定の磁界分布の平面図(図16(b))、位相制御なし想定の磁界分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図16(c))、半導体型発振器(位相制御)想定の磁界分布の図3のIII−III線に沿った断面図(図16(d))である。なお、図16における磁界分布は、マイクロ波の一位相区間における磁界強度の最大値を示している。
図17は、上記の図3に示したシミュレーションのモデルと同様のモデルにおいて、上記(1)と同様のシミュレーション試験を行なった場合における、第一測定線61に沿った電界分布を示すグラフである。
図16および図17に示すように、上記(1)の場合と同様の位相制御を行なうことにより、磁界分布についても、電界分布と同様に、所望の箇所51に集中させることができることがわかる。
図18は、上記の図9に示したシミュレーションのモデルと同様のモデルにおいて、上記(2)と同様のシミュレーション試験を行なった場合における、磁界分布を比較するための、位相制御なし想定の磁界分布の平面図(図18(a))、位相制御あり想定の磁界分布の平面図(図18(b))、位相制御なし想定の磁界分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図18(c))、半導体型発振器(位相制御)想定の磁界分布の図9のIX−IX線に沿った断面図(図18(d))である。なお、図18における磁界分布は、マイクロ波の一位相区間における磁界強度の最大値を示している。
図18に示すように、上記(2)の場合と同様の位相制御を行なうことにより、磁界分布についても、電界分布と同様に、吸収性部材102に集中させることができることがわかる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
以上のように、本発明にかかる加熱装置等は、マイクロ波を利用した加熱装置等として適しており、特に、複数の位置から容器内にマイクロ波を照射する加熱装置等として有用である。
1 加熱装置
10 内容物
101 容器
104 導波管
102 吸収性部材
103 半導体型発振器
105 制御部
1011 未充填空間
1041 出射位置
1042 接続部

Claims (13)

  1. 容器と、
    マイクロ波を発生する複数のマイクロ波発振器と、
    前記複数のマイクロ波発振器が発生するマイクロ波をそれぞれ伝送して、複数の位置から前記容器内にマイクロ波を照射する複数の伝送部と、
    前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する制御部とを備えた加熱装置。
  2. 前記制御部は、前記複数のマイクロ波発振器の少なくとも一部が異なる位相のマイクロ波を発生するよう前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項1記載の加熱装置。
  3. 前記制御部は、前記複数のマイクロ波発振器が同位相のマイクロ波を発生するよう前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項1記載の加熱装置。
  4. 前記制御部は、前記容器内の1以上の所望の箇所に前記複数の位置から照射されるマイクロ波により生じる電界が集中するよう、前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項1から請求項3いずれか一項記載の加熱装置。
  5. 前記制御部は、前記容器内の所望の箇所が、前記複数の位置から照射されるマイクロ波が干渉により強めあう位置となるよう、前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項1記載から請求項4いずれか一項記載の加熱装置。
  6. 前記制御部は、前記容器内の所望の箇所に入射されるマイクロ波の位相が同位相となるように、前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項5記載の加熱装置。
  7. 前記容器内に、マイクロ波の吸収性を有する部材である吸収性部材を更に備え、
    前記所望の箇所は、当該吸収性部材内の箇所である請求項4から請求項6いずれか一項記載の加熱装置。
  8. 前記吸収性部材は、前記容器内の内容物よりもマイクロ波に対する誘電損失が高い材料により構成される請求項7記載の加熱装置。
  9. 前記吸収性部材は、前記容器内の内容物の処理に用いられる触媒を有する固定床である請求項7または請求項8記載の加熱装置。
  10. 前記制御部は、前記所望の箇所が経時的に変更されるよう、前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項4から請求項9いずれか一項記載の加熱装置。
  11. 前記吸収性部材が、前記容器内において経時的に移動し、
    前記制御部は、前記吸収性部材の経時的な移動に伴って移動する当該吸収性部材内の予め決められた1以上の箇所が、前記所望の箇所となるよう、前記複数のマイクロ波発振器の位相を制御する請求項7から請求項9いずれか一項記載の化学反応装置。
  12. 前記容器は、内部にマイクロ波を透過する透過領域を有し、
    前記伝送部は、前記透過領域を介してマイクロ波を照射する請求項1から請求項8いずれか一項記載の加熱装置。
  13. 複数のマイクロ波発振器が発生するマイクロ波の位相を制御する工程と、
    前記複数のマイクロ波発振器が発生するマイクロ波を、複数の伝送部でそれぞれ伝送させて、複数の位置から容器内に照射する工程とを備えた加熱方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019142578A1 (ja) 2018-01-18 2019-07-25 マイクロ波化学株式会社 マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
WO2020262331A1 (ja) * 2019-06-24 2020-12-30 株式会社コロプラ ゲームプログラム、ゲーム方法、および端末装置
CN115278971A (zh) * 2022-09-07 2022-11-01 四川大学 一种微波加热组件和微波加热装置

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