JP2017198603A - 放射性物質汚染土壌の除染方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、福島の土壌は火山岩が風化した真砂土が多く、真砂土中には雲母が含まれる。図5に、雲母の結晶端面にセシウムが吸着している模式図を示す。
土壌鉱物の中でも、雲母はその結晶シートの層間にカリウムイオンをサンドイッチ状に吸着している。セシウムは、電子軌道がカリウムに類似しており、原発事故で放出された放射性セシウムは、雲母に吸着されているカリウムイオンを置換して雲母に吸着され、その大部分は雲母のフレイドエッジサイトに存在する。セシウムは、フレイドエッジサイトで立体配置的に吸着されており、フレイドエッジサイトに吸着されたセシウムは、アンモニウムイオンとは交換しない。そのため、特許文献1、2で提案されているアンモニウム系洗浄液で洗浄しても、洗浄により取り除かれるセシウム量は少なく、大部分はフレイドエッジサイトに吸着されたままである。
処理槽中に、カリウムを除く栄養塩類を供給する工程、
カリウム溶解菌により、前記放射性物質汚染土壌に含まれる雲母を溶解するとともに前記雲母に吸着しているセシウムを可溶化する工程、
前記処理槽上方から洗浄水を加え、前記洗浄水に前記可溶化したセシウムを含む放射性排水を前記処理槽下方から排出する工程、
を有することを特徴とする除染方法。
2.前記洗浄水のカリウム濃度が、0.01g/L以下であることを特徴とする1.に記載の除染方法。
3.前記放射性排水を、前記処理槽の下方に設置されたドレインパイプ内に吸引して排出することを特徴とする1.または2.に記載の除染方法。
4.前記放射性排水に含まれるセシウムを除去した再生水を、前記洗浄水として再利用することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の除染方法。
5.前記処理槽内部に設置された温度調整装置により、前記放射性物質汚染土壌の温度を前記カリウム溶解菌の活動に好適な温度に調整することを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の除染方法。
カリウム溶解菌が分泌する有機酸は、弱酸であり、土壌中の無機物の多くは溶解しない。そのため、排水から除去したセシウム濃縮物中のセシウム濃度を高くすることができ、放射性物質の体積を大幅に減容することができる。
洗浄水のカリウム濃度を低くすることにより、土壌中に生息するカリウム溶解菌以外の微生物の活動を抑制することができ、カリウム溶解菌を優先的に活動させ続けることができる。
放射性排水を、吸引して排出することにより、処理槽中の土壌に空気を引き込むことができる。カリウム溶解菌は好気性細菌であるため、土壌に空気を供給することにより、活性化することができる。
放射性排水からセシウムを除去した再生水を、洗浄水として再利用することで、必要な水量を減らすことができ、低コストであり、また、放射性物質を取り除いた後であっても排水量を少なくすることができ、安心感が高い。
処理槽中に、カリウムを除く栄養塩類を供給する工程、
カリウム溶解菌により、前記放射性物質汚染土壌に含まれる雲母を溶解するとともに前記雲母が吸着しているセシウムを可溶化する工程、
前記処理槽上方から洗浄水を加え、前記洗浄水に前記セシウムが溶解した排水を前記処理槽下方から排出する工程、
を有することを特徴とする。
処理槽10は、外部へ漏水しないように遮水壁で形成されている。処理槽10は、底面に水抜き用のドレインパイプ11を備える。
まず、処理槽10の内部に放射性物質汚染土壌12(以下、「汚染土壌」という)を入れ、汚染土壌12を初期洗浄水21で洗浄して、水溶性カリウムを一般排水22に溶解させて取り除く(図1)。
洗浄によりカリウム以外の水溶性の無機塩類等も取り除かれるが、放射性セシウムは、雲母のフレイドエッジサイトに強固に吸着しているため、取り除くことはできない。
先の工程により、汚染土壌12中からは水溶性カリウムが取り除かれているため、汚染土壌12中に生息する微生物の多くは、必須元素であるカリウムが不足して活動が低下している。そして、カリウムを含まない液体培地23が供給されても、汚染土壌中に生息する微生物の多くは活動を再開することができない。それに対し、カリウム溶解菌1は、雲母のフレイドエッジサイトを溶解してカリウムを取り出して利用することができるため、活動を再開することができる。
カリウム溶解菌1は、有機酸を分泌して土壌粒子の構成物質を溶解し、土壌粒子に吸着しているカリウムを可溶化することができる微生物の総称である。カリウム溶解菌は、特別な微生物ではなく、雲母を含む土壌中に普遍的に生息している。カリウム溶解菌の存在は、modified Aleksandrov培地(Journal of Microbiology Research, 3(1); 25-31, 2013.)(グルコース:5.0g/L、MgSO4・7H2O:0.5g/L、CaCO3:0.1g/L、FeCl3:0.006g/L、Ca3(PO4)2:2.0g/L、黒雲母粉末:3.0g/L、寒天:20.0g/L)で培養を行うことにより、有機酸を分泌する菌が存在するとコロニーの周りに透明なハローが形成されることから、容易に判定することができる。
カリウム溶解菌1の分泌する酸は、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸等の有機酸であり酸性が弱く、無機酸と比較すると、雲母を溶解しにくい。そのため、雲母の結晶構造が保たれている部分は、カリウム溶解菌1が分泌する有機酸にほとんど溶解せず、結晶構造が乱れている結晶層端面のフレイドエッジサイトがカリウム分解菌の分泌する有機酸により溶解し、フレイドエッジサイトに吸着されているカリウム、セシウムが可溶化する。
ここで、カリウム溶解菌により、雲母のフレイドエッジサイトは溶解するが、雲母の結晶構造を保っている部分は、ほとんど溶解しない。放射性排水25中の、雲母由来のアルミニウム、マグネシウム、ケイ素等の無機成分の濃度は低いため、放射性排水25からセシウム等の無機物を回収したセシウム濃縮物に含まれるセシウム濃度は高い。除染前の膨大な汚染土壌を、高濃度でセシウムを含むセシウム濃縮物に減容することができ、放射性汚染物質の保管に必要なスペースを大幅に減らすことができる。
カリウム溶解菌1は、一般に好気性細菌であり、酸素存在下で活発に活動する。ドレインパイプ11の先端部に接続した吸引ポンプ13により、処理槽下方のドレインパイプから空気を吸引することにより、処理槽10内を陰圧とし、放射性物質汚染土壌12に空気を供給して、カリウム溶解菌1の生息に好適な環境とすることができる。また、ドレインパイプ11内も陰圧となり、放射性排水25の排出を促進することができる。
図4に示す実施態様では、上流の貯留槽14aに吸着剤15を配置している。貯留槽14aに配置された吸着剤15にセシウムは吸着され、貯留槽14bにはセシウムが除去された再生水26が流入する。この再生水26を、ポンプで移送して洗浄水24として再利用すれば、放出される一般下水の量を減らすことができ、低コストとなる。また、放射性物質の除去後ではあるが、放出される一般下水の量を減らすことができ、下流域の住人や漁業関係者の理解を得ることも容易となる。なお、上流の貯留槽14aで行うセシウム除去方法は、吸着法に限定されず、沈殿法でもよい。
10 処理槽
11 ドレインパイプ
12 放射性物質汚染土壌
13 吸引ポンプ
14a、b 貯留槽
15 吸着剤
21 初期洗浄水
22 一般排水
23 液体培地
24 洗浄水
25 放射性排水
26 再生水
Claims (5)
- 処理槽中の放射性物質汚染土壌から水溶性カリウムを取り除く工程、
処理槽中に、カリウムを除く栄養塩類を供給する工程、
カリウム溶解菌により、前記放射性物質汚染土壌に含まれる雲母を溶解するとともに前記雲母に吸着しているセシウムを可溶化する工程、
前記処理槽上方から洗浄水を加え、前記洗浄水に前記可溶化したセシウムを含む放射性排水を前記処理槽下方から排出する工程、
を有することを特徴とする除染方法。 - 前記洗浄水のカリウム濃度が、0.01g/L以下であることを特徴とする請求項1に記載の除染方法。
- 前記放射性排水を、前記処理槽の下方に設置されたドレインパイプ内に吸引して排出することを特徴とする請求項1または2に記載の除染方法。
- 前記放射性排水に含まれるセシウムを除去した再生水を、前記洗浄水として再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除染方法。
- 前記処理槽内部に設置された温度調整装置により、前記放射性物質汚染土壌の温度を前記カリウム溶解菌の活動に好適な温度に調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の除染方法。
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