JP2017197581A - バイグリカン変異体および関連する治療薬および使用方法 - Google Patents
バイグリカン変異体および関連する治療薬および使用方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】バイグリカン変異体および関連する治療薬および使用方法の提供。
【解決手段】本開示は、いかなるグリコサミノグリカン側鎖も含まないように2つのセリン残基に置換を含むバイグリカン関連治療用ポリペプチドを提供する。異常なレベルまたは活性のバイグリカンに関連する疾患または状態;例えば、不安定なジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に起因する、不安定な細胞質の膜に関連する障害;異常なMuSKの活性化またはアセチルコリンレセプター(AChR)の集合に起因する障害を含む、異常なシナプスまたは神経筋接合部に関連する障害を処置するための方法がさらに提供される。疾患の例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーなどの筋ジストロフィー、神経筋障害および神経障害が挙げられる。
【選択図】図3
【解決手段】本開示は、いかなるグリコサミノグリカン側鎖も含まないように2つのセリン残基に置換を含むバイグリカン関連治療用ポリペプチドを提供する。異常なレベルまたは活性のバイグリカンに関連する疾患または状態;例えば、不安定なジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に起因する、不安定な細胞質の膜に関連する障害;異常なMuSKの活性化またはアセチルコリンレセプター(AChR)の集合に起因する障害を含む、異常なシナプスまたは神経筋接合部に関連する障害を処置するための方法がさらに提供される。疾患の例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーなどの筋ジストロフィー、神経筋障害および神経障害が挙げられる。
【選択図】図3
Description
政府の補助金
この研究は、National Institutes of Healthによって付与された助成金HD23924、NS064295およびAR055878の下、政府の支援によってなされた。したがって、米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
この研究は、National Institutes of Healthによって付与された助成金HD23924、NS064295およびAR055878の下、政府の支援によってなされた。したがって、米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
関連出願への相互参照
この出願は、2010年5月17日に出願された米国仮出願第61/345,557号の利益を主張する。参照された出願の全体の教示は、参考として明示的に本明細書に援用される。
この出願は、2010年5月17日に出願された米国仮出願第61/345,557号の利益を主張する。参照された出願の全体の教示は、参考として明示的に本明細書に援用される。
配列表
本願は、EFS−Web経由でASCII形式にて提出された配列表を含み、その全体が本明細書によって参考として援用される。2011年5月17日に作成された前記ASCIIコピーは、BURF012WO1.txtという名称であり、そのサイズは14,904バイトである。
本願は、EFS−Web経由でASCII形式にて提出された配列表を含み、その全体が本明細書によって参考として援用される。2011年5月17日に作成された前記ASCIIコピーは、BURF012WO1.txtという名称であり、そのサイズは14,904バイトである。
発明の背景
ジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)は、細胞骨格を細胞外マトリックスに連結しており、筋細胞/形質膜の完全性の維持に必要である。コアDAPCは、細胞骨格足場分子であるジストロフィン、およびジストログリカンとサルコグリカンとの膜貫通型部分複合体からなる。DAPCは、会合するシントロフィンを少なくとも部分的に介して、重要なシグナル伝達分子を細胞表面に局在化させるようにも働く(非特許文献1;非特許文献2)。ジストロフィンまたは任意のサルコグリカンのいずれかの変異によって、筋細胞膜の破損、筋線維の喪失および線維症を特徴とする筋ジストロフィーが生じる(非特許文献3;非特許文献4)。さらに、細胞表面上でDAPCと会合する細胞外マトリックスタンパク質であるラミニン−α2の変異は、主な先天性筋ジストロフィーの根拠である(非特許文献5)。
ジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)は、細胞骨格を細胞外マトリックスに連結しており、筋細胞/形質膜の完全性の維持に必要である。コアDAPCは、細胞骨格足場分子であるジストロフィン、およびジストログリカンとサルコグリカンとの膜貫通型部分複合体からなる。DAPCは、会合するシントロフィンを少なくとも部分的に介して、重要なシグナル伝達分子を細胞表面に局在化させるようにも働く(非特許文献1;非特許文献2)。ジストロフィンまたは任意のサルコグリカンのいずれかの変異によって、筋細胞膜の破損、筋線維の喪失および線維症を特徴とする筋ジストロフィーが生じる(非特許文献3;非特許文献4)。さらに、細胞表面上でDAPCと会合する細胞外マトリックスタンパク質であるラミニン−α2の変異は、主な先天性筋ジストロフィーの根拠である(非特許文献5)。
α−/β−ジストログリカン部分複合体は、DAPCにおいて絶対必要な構造的連結を形成する。膜貫通型β−ジストログリカンおよびもっぱら細胞外のα−ジストログリカンは、共通の前駆体のタンパク分解性切断によって生じる(Ibraghimovら(1992)Nature 355:696;Boweら(1994)Neuron 12:1173)。β−ジストログリカンの細胞質テイルは、ジストロフィンに結合し、高度にグリコシル化されたムチン様のα−ジストログリカンは、アグリン、ラミニンおよびパールカンを含むいくつかのECMエレメントに結合する(Ervasti and Campbell,(1993)J Cell Biol.122:809;Boweら(1994)Neuron.12:1173;Geeら(1994)Cell 77:675;Hemler,(1999)Cell 97:543)。ジストログリカン欠損のマウスが、これらの構造を形成せず、発生過程の非常に早い段階で死亡するので、このマトリックスタンパク質への結合は、基底膜の構築にとって不可欠であるとみられる(Henry,M.D.and K.P.Campbell.1998.Cell.95:859)。β−ジストログリカンは、シグナル伝達アダプター分子Grb2に結合することができ、p125FAKと間接的に会合する(Yangら(1995)J.Biol.Chem.270:11711;Cavaldesiら(1999),J.Neurochem.72:01648)。これらの会合の意義は、不明のままであるが、これらの結合特性は、ジストログリカンもまたシグナル伝達分子を細胞表面に局在化させるように働き得ることを示唆する。
いくつかの一連の証拠から、ジストログリカンが、神経筋接合部の形成、特に、シナプス後分化においても機能し得ると示唆されている。明確にするために、神経筋接合部の構成要素をここで手短に述べておく。神経筋接合部(NMJ)または神経と筋肉とのシナプスの構造上の主要な特徴は、運動ニューロンおよび筋肉のそれぞれシナプス前およびシナプス後の特殊化、介在するシナプス基底膜、ならびに特殊化されたシュワン細胞キャップである(Salpeterら(1987)The Vertebrate Neuromuscular Junction.New York,Alan R.Liss.)。そのシナプス前装置は、シナプスのベシクルの規則正しい整列によって特徴付けられ、そのベシクルのサブセットは、その活性帯において形質膜と融合する用意ができており、筋肉上のアセチルコリンレセプター(AChR)によって認識されるアセチルコリン(acethylcholine)を放出し、最終的には、筋肉の電気的な活性化および収縮をもたらす(Heuserら(1981)J.Cell Biol.88:564)。これらの帯と接合部後のひだの頂とを横切るシナプス間隙は、わずか50nmである。これらの頂は、>10,000分子/μm2という密度に達し得るAChRで満ちている(Fertuckら(1976)J.Cell.Biol.69:144)。シナプス後膜における高いAChR密度に加えて、狭いシナプス間隙にアセチルコリンが局在化されかつ厳重に制御されて分泌されることにより、ニューロンと筋肉との間の迅速かつ確実なシナプスの伝達が保証される。重症筋無力症に見られる機能的AChRの数の減少など、これらの特殊化が乱されることにより、消耗性となり得、致死的な臨床成績に至ることが多い(Oosterhuisら(1992)Neurology&Neurosurgery 5:638)。
シナプス基底膜(SBL)は、シナプス前膜とシナプス後膜との間に挟まれており、神経筋接合部の構造、機能および制御にとって重要な分子を含む(Bowe,M.A&Fallon,J.R.,(1995)Ann.Rev.Neurosci.18:443;Sanesら(1999)Ann.Rev.Neurosci.22:389)。そのシナプス基底膜は、特殊化されたラミニン、プロテオグリカンおよびコラーゲンを含む異なるセットの細胞外マトリックス分子からなる(Hallら(1993)Neuron 10:(Suppl.)99)。SBLは、AChE、ニューレグリンおよびアグリンをはじめとした、シナプスの構造および機能の制御にとって不可欠な分子も含む。したがって、SBLは、シナプスの局在的な分化を維持するために特殊化された構造と、不可欠な制御分子に対する貯蔵所の両方として働く。
シナプス後膜の分子組成は、かなり詳細に知られている。上で述べたように、最も豊富な膜タンパク質は、AChRである。サイトゾルのAChR会合タンパク質であるラプシン(以前は43kDタンパク質として知られていた)は、レセプターとともに化学量論的レベルで存在し、AChRのサイトゾルドメインと細胞骨格との間の重要な連結を形成する可能性がある(Froehnerら(1995)Nature 377:195;Gautamら(1995)Nature 377:232)。シナプス後膜には、erbB2−4も豊富に存在し、その一部または全部が、ニューレグリンレセプターとして働く(Altiokら(1995)EMBO J.14:4258;Zhuら(1995)EMBO J.14:5842)。AChRおよび他の分子が、神経と筋肉との情報交換にとって不可欠である。細胞骨格エレメントは、大まかに2つのサブセットに分類することができる。ジストロフィンおよびユートロフィンが、DAPCのメンバーであり、膜貫通型ヘテロマーであるα−/β−ジストログリカンを介してシナプスの基底膜に連結されている。また、シナプス後の細胞骨格には、α−アクチニン、ビンキュリン、タリン、パキシリンおよびフィラミンをはじめとした、いくつかの限局的な接着関連分子が豊富に存在する(Sanesら(1999)Ann.Rev.Neurosci.22:389)。後者のタンパク質は、おそらく、インテグリン(その一部はシナプスに豊富に存在する)を介して直接または間接的に細胞外マトリックスと情報交換する(Martinら(1996)Dev.Biol.174:125)。アクチンは、両方のセットの細胞骨格分子と会合している(Rybakovaら(1996)J.Cell Biol.135:661;Amannら(1998)J.Biol.Chem.273:28419−23;Schoenwaelderら(1999)Curr.Opin.Cell.Biol.11:274)。これらの特殊化されたタンパク質のセットの機能は、下記で検討される。
α−ジストログリカンは、シナプス形成分子のアグリンに結合し(Boweら(1994)Neuron.12:1173;Campanelliら(1994)Cell.77:663;Geeら(1994)Cell.77:675;Sugiyamaら(1994)Neuron.13:103;O’Tooleら(1996)Proc Natl
Acad Sci USA.93:7369)(Fallon and Hall,(1994)Trends Neurosci.17:469に概説)、β−ジストログリカンは、AChR会合タンパク質のラプシンに結合する(Cartaudら(1998)J Biol Chem.273:11321)。さらに、シナプス後膜上でのアグリン誘導性AChRクラスター形成は、ジストログリカンの発現が低レベルの筋細胞では著しく減少する(Montanaroら(1998)J Neurosci.18:1250)。このプロセスにおけるジストログリカンの正確な役割は、不明である。現在利用可能な証拠は、ジストログリカンが、主要なアグリンレセプターの一部ではなく、シナプス後の特殊化の機構において構造上の役割を果たし得ると示唆している(Gesemannら(1995)Biol.128:625;Glassら(1996)Cell.85:513;Jacobsonら(1998)J Neurosci.18:6340)。
Acad Sci USA.93:7369)(Fallon and Hall,(1994)Trends Neurosci.17:469に概説)、β−ジストログリカンは、AChR会合タンパク質のラプシンに結合する(Cartaudら(1998)J Biol Chem.273:11321)。さらに、シナプス後膜上でのアグリン誘導性AChRクラスター形成は、ジストログリカンの発現が低レベルの筋細胞では著しく減少する(Montanaroら(1998)J Neurosci.18:1250)。このプロセスにおけるジストログリカンの正確な役割は、不明である。現在利用可能な証拠は、ジストログリカンが、主要なアグリンレセプターの一部ではなく、シナプス後の特殊化の機構において構造上の役割を果たし得ると示唆している(Gesemannら(1995)Biol.128:625;Glassら(1996)Cell.85:513;Jacobsonら(1998)J Neurosci.18:6340)。
神経筋接合部の形成において重要な役割を果たす別の分子は、アグリンに応答してリン酸化されるようになるチロシンキナーゼレセプターMuSKである。しかしながら、アグリンは、MuSKに結合せず、どのようにしてアグリンがMuSKを刺激するかは不明である。コレセプターの存在が示唆されていた。抗体架橋によるMuSKの活性化は、培養された筋管上でのAChRのクラスター形成を誘導するのに十分であり(Xieら(1997)Nat.Biotechnol.15:768およびHopf and Hoch(1998)J.Biol.Chem.273:6467)、恒常的に活性なMuSKは、インビボにおいてシナプス後分化を誘導し得る(Jonesら(1999)J.Neurosci.19:3376)。しかしながら、MuSKのリン酸化は、アグリン誘導性AChRクラスター形成にとって必要であるが、十分でない。
ジストログリカンの機能は、筋肉をはるかに超えた範囲に及ぶ。上で述べたように、ジストログリカンが欠損したマウスは、筋肉が分化するよりずっと前に死亡する。予期しない発生において、非筋細胞におけるα−ジストログリカンが、ラッサ熱ウイルスおよび脈絡髄膜炎熱ウイルス(choriomeningitis fever viruses)に対するレセプターとして(Cao,W.ら、1998,Science.282:2079)、ならびにシュワン細胞上でMycobacterium lepraeに対するコレセプターとして(Rambukkanaら(1998)Science.282:2076)、機能すると示された。ジストログリカンは、脳にも豊富に存在するが、脳でのその機能は、理解されていない(Goreckiら(1994)Hum Mol Genet.3:1589;Smalheiser and Kim(1995)J Biol Chem.270:15425)。
α−ジストログリカンは、3つの既知ドメインを含む。アミノ末端のドメインは、自律的な球状の配置に折り畳まれる(Brancaccioら(1995)Febs Lett.368:139)。このタンパク質を3つに分割した中央部分は、セリンおよびトレオニンリッチであり、高度にグリコシル化される(Brancaccioら(1997)Eur J Biochem.246:166)。実際に、α−ジストログリカンのコアの分子量は、約68kDaであるが、天然の分子は、種および組織起源に応じて、SDS−PAGEにおいて120〜190kDaの範囲のサイズである多分散のバンドとして移動する(Ervasti and Campbell(1993)J Cell Biol.122:809;Boweら(1994)Neuron.12:1173;Geeら(1994)Cell.77:675;Matsumuraら(1997)J Biol
Chem.272:13904)。おそらくこの3分割の中央におけるα−ジストログリカンのグリコシル化は、そのラミニンおよびアグリンへの結合特性にとって不可欠である。
Chem.272:13904)。おそらくこの3分割の中央におけるα−ジストログリカンのグリコシル化は、そのラミニンおよびアグリンへの結合特性にとって不可欠である。
ジストログリカンおよびDAPCが、他の組織と同様に筋肉における種々のプロセスにおいて重大な役割を果たすことは明らかである。ジストログリカンおよび/またはDAPCの機能を調節する治療物質および治療方法を開発する必要がある。
Brenmanら、Cell.(1996)84:757−767
Bredtら、Proc Natl Acad Sci USA.(1998)95:14592
Hoffmanら、Cell.(1987)51:919
Straub,and Campbell、Curr Opin Neurol.(1997)10:168
Helbling−Leclercら、Nat Genet.(1995)11:216
発明の要旨
ある特定の実施形態において、本開示は、いかなるグリコサミノグリカン(GAG)側鎖も含まないように、対応するバイグリカンの2つのセリン残基に少なくとも2つのアミノ酸残基置換を有するポリペプチド配列を含む、バイグリカン関連治療用ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、2つのセリン残基は、配列番号9の残基42および47に対応する位置に存在する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
ある特定の実施形態において、本開示は、いかなるグリコサミノグリカン(GAG)側鎖も含まないように、対応するバイグリカンの2つのセリン残基に少なくとも2つのアミノ酸残基置換を有するポリペプチド配列を含む、バイグリカン関連治療用ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、2つのセリン残基は、配列番号9の残基42および47に対応する位置に存在する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、細胞上の筋肉特異的キナーゼ(MuSK)を活性化する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、MuSKのアグリン誘導性リン酸化を増強する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、ユートロフィンレベルをアップレギュレートする。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、MuSKに結合する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、α−サルコグリカンおよび/またはγ−サルコグリカンに結合する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、サルコグリカンのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、アセチルコリンレセプター(AChR)のアグリン誘導性クラスター形成を増強する。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号9に1つ以上のLRRを含む。
いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸38〜365と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、配列番号8とハイブリダイズする核酸によってコードされる。
ある特定の実施形態において、本開示は、(i)バイグリカン関連治療用ポリペプチド;および(ii)薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本開示は、細胞の表面上でジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を安定化するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物とその細胞を接触させる工程を包含する。
ある特定の実施形態において、本開示は、細胞のシナプス後膜(postynaptic membrane)を活性化するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物とその細胞を接触させる工程を包含する。
ある特定の実施形態において、本開示は、細胞内のMuSKを活性化するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物とその細胞を接触させる工程を包含する。
上記のある特定の実施形態において、細胞は、筋細胞である。
ある特定の実施形態において、本開示は、被験体の細胞内の異常なジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に関連する状態を処置するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物をその被験体に投与する工程を包含する。例えば、その状態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne’s Muscular Dystrophy)、ベッカー型筋ジストロフィー(Becker’s Muscular Dystrophy)、先天性筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーおよび筋緊張性ジストロフィー(mytonic dystrophy)から選択される筋ジストロフィーであり得る。
ある特定の実施形態において、本開示は、被験体における異常な神経筋接合部またはシナプスを特徴とする状態を処置するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物をその被験体に投与する工程を包含する。そのような状態は、神経筋の疾患または神経学的な疾患であり得る。
ある特定の実施形態において、本開示は、VI型コラーゲン欠損に関連する状態を処置するためまたは予防するための方法を提供し、その方法は、有効量のバイグリカン関連治療用ポリペプチドまたはバイグリカン関連治療用ポリペプチドを含む組成物をその被験体に投与する工程を包含する。VI型コラーゲン欠損に関連する状態は、ベスレム型ミオパチー(Bethlem’s myopathy)、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(Ullrich Congenital Muscular Dystrophy)またはソースビー眼底変性症(Sorsby’s fundus dystrophy)であり得る。
いくつかの実施形態において、本開示は、バイグリカン関連治療用ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を提供する。
ある特定の実施形態において、本開示は、本明細書中に記載される任意のバイグリカン関連ポリペプチドを産生する方法を提供し、その方法は:(a)前記ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供する工程、および(b)前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で細胞を培養する工程を包含する。その方法は、(c)そのポリペプチドを精製する工程をさらに包含し得る。
ある特定の態様において、本開示は、MuSKとバイグリカンとの結合を検出するための方法を提供し、その方法は:(a)バイグリカンを固体支持体に貼り付ける工程、(b)MuSK外部ドメインおよびFcドメインを含む融合タンパク質とバイグリカンを接触させる工程、ならびに(c)その融合タンパク質へのバイグリカンの結合をアッセイする工程を包含する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
いかなるグリコサミノグリカン(GAG)側鎖も含まないように、対応するバイグリカンの2つのセリン残基に少なくとも2つのアミノ酸残基置換を有するポリペプチド配列を含む、バイグリカン関連治療用ポリペプチド。
(項目2)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)
前記2つのセリン残基が、配列番号9の残基42および47に対応する位置に存在する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目4)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目5)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目6)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、細胞上の筋肉特異的キナーゼ(MuSK)を活性化する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目7)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、MuSKのアグリン誘導性リン酸化を増強する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目8)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、ユートロフィンレベルをアップレギュレートする、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目9)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、MuSKに結合する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目10)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、α−サルコグリカンおよび/またはγ−サルコグリカンに結合する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目11)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、サルコグリカンのリン酸化を誘導する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目12)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、アセチルコリンレセプター(AChR)のアグリン誘導性クラスター形成を増強する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目13)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9に1つ以上のLRRを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目14)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸38〜365と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目15)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号8とハイブリダイズする核酸によってコードされる、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目16)
(i)項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチド;および(ii)薬学的に許容され得るキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目17)
細胞の表面上でジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を安定化するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目18)
細胞のシナプス後膜を活性化させるための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目19)
細胞内のMuSKを活性化するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目20)
前記細胞が、筋細胞である、項目17、18または19に記載の方法。
(項目21)
被験体の細胞内の異常なジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に関連する状態を処置するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
前記状態が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーおよび筋緊張性ジストロフィーから選択される筋ジストロフィーである、項目21に記載の方法。
(項目23)
被験体における異常な神経筋接合部またはシナプスを特徴とする状態を処置するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
前記状態が、神経筋の疾患または神経学的な疾患である、項目23に記載の方法。
(項目25)
VI型コラーゲン欠損に関連する状態を処置するためまたは予防するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
VI型コラーゲン欠損に関連する前記状態が、ベスレム型ミオパチー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーまたはソースビー眼底変性症である、項目25に記載の方法。
(項目27)
項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、宿主細胞。
(項目28)
項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドを産生する方法であって、該方法は:(a)該ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供する工程、および
(b)該ポリペプチドの産生を可能にする条件下で該細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目29)
MuSKとバイグリカンとの間の結合を検出するための方法であって、該方法は:
(a)該バイグリカンを固体支持体に貼り付ける工程
(b)MuSK外部ドメインおよびFcドメインを含む融合タンパク質と該バイグリカンとを接触させる工程、ならびに
(c)該融合タンパク質への該バイグリカンの結合をアッセイする工程を包含する、方法。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
いかなるグリコサミノグリカン(GAG)側鎖も含まないように、対応するバイグリカンの2つのセリン残基に少なくとも2つのアミノ酸残基置換を有するポリペプチド配列を含む、バイグリカン関連治療用ポリペプチド。
(項目2)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)
前記2つのセリン残基が、配列番号9の残基42および47に対応する位置に存在する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目4)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目5)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目6)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、細胞上の筋肉特異的キナーゼ(MuSK)を活性化する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目7)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、MuSKのアグリン誘導性リン酸化を増強する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目8)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、ユートロフィンレベルをアップレギュレートする、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目9)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、MuSKに結合する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目10)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、α−サルコグリカンおよび/またはγ−サルコグリカンに結合する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目11)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、サルコグリカンのリン酸化を誘導する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目12)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、アセチルコリンレセプター(AChR)のアグリン誘導性クラスター形成を増強する、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目13)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9に1つ以上のLRRを含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目14)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸38〜365と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目15)
前記バイグリカン関連治療用ポリペプチドが、配列番号8とハイブリダイズする核酸によってコードされる、前述のいずれかの項目に記載のポリペプチド。
(項目16)
(i)項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチド;および(ii)薬学的に許容され得るキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目17)
細胞の表面上でジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を安定化するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目18)
細胞のシナプス後膜を活性化させるための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目19)
細胞内のMuSKを活性化するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物と該細胞とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目20)
前記細胞が、筋細胞である、項目17、18または19に記載の方法。
(項目21)
被験体の細胞内の異常なジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に関連する状態を処置するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
前記状態が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィーおよび筋緊張性ジストロフィーから選択される筋ジストロフィーである、項目21に記載の方法。
(項目23)
被験体における異常な神経筋接合部またはシナプスを特徴とする状態を処置するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
前記状態が、神経筋の疾患または神経学的な疾患である、項目23に記載の方法。
(項目25)
VI型コラーゲン欠損に関連する状態を処置するためまたは予防するための方法であって、有効量の項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目16に記載の組成物を被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
VI型コラーゲン欠損に関連する前記状態が、ベスレム型ミオパチー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーまたはソースビー眼底変性症である、項目25に記載の方法。
(項目27)
項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、宿主細胞。
(項目28)
項目1〜15のいずれかに記載のポリペプチドを産生する方法であって、該方法は:(a)該ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供する工程、および
(b)該ポリペプチドの産生を可能にする条件下で該細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目29)
MuSKとバイグリカンとの間の結合を検出するための方法であって、該方法は:
(a)該バイグリカンを固体支持体に貼り付ける工程
(b)MuSK外部ドメインおよびFcドメインを含む融合タンパク質と該バイグリカンとを接触させる工程、ならびに
(c)該融合タンパク質への該バイグリカンの結合をアッセイする工程を包含する、方法。
発明の詳細な説明
I.概要
本開示は、機能不全のDAPC、不安定な細胞構造、神経筋接合部もしくはシナプスの異常またはVI型コラーゲン欠損に関連する疾患または状態を処置するためおよび/または予防するための、バイグリカン関連組成物および方法を提供する。そのような疾患としては、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型、肢帯型)、他の筋障害、神経筋障害および神経障害が挙げられるが、これらに限定されない。
I.概要
本開示は、機能不全のDAPC、不安定な細胞構造、神経筋接合部もしくはシナプスの異常またはVI型コラーゲン欠損に関連する疾患または状態を処置するためおよび/または予防するための、バイグリカン関連組成物および方法を提供する。そのような疾患としては、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型、肢帯型)、他の筋障害、神経筋障害および神経障害が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、DAPCおよびジストログリカンが広範な組織に分布することを考慮すると、バイグリカンは、細胞膜を通じたシグナル伝達の制御および/または筋細胞以外の細胞の細胞膜の完全性の維持において役割を果たす可能性がある。例えば、ジストログリカンまたは他のDAPC構成要素は、脳、腎臓および心臓に豊富に存在する。したがって、本開示は、より広くは、バイグリカン関連ポリペプチドと相互作用する膜タンパク質複合体(例えば、DAPCまたはMuSKレセプター)の異常に関連する疾患または障害に対するバイグリカン関連組成物および治療方法を提供する。
ジストログリカンは、微生物(例えば、ラッサ熱ウイルスおよび脈絡髄膜炎熱ウイルス)が細胞に侵入するために使用するレセプターであると知られているので、本明細書中に記載されるバイグリカン関連治療薬は、そのような微生物による感染を処置するためおよび/または予防するために使用され得る。特定の作用機序に限定されるものではないが、バイグリカン関連治療薬は、ジストログリカンへの微生物の結合を妨げ得るかまたは阻害し得る。
ヒトバイグリカン(例えば、Fischerら、J.Biol.Chem.264:4571(1996)における「骨小型プロテオグリカン」として;GenBankアクセッション番号J04599;配列番号9)と、シビレエイの発電器官から単離されたDAG−125の両方が、DAPC構成要素と相互作用すると示された。それら2つのタンパク質間の配列相同性および類似する生物学的活性(本明細書中にさらに記載される)に基づいて、ヒトバイグリカン(配列番号9)が、シビレエイDAG−125のヒトオルソログであり得ると考えられている。あるいは、シビレエイDAG−125のヒトオルソログは、ヒトバイグリカンと高度に関係するタンパク質であり得る。明確にするために、本明細書中で使用される用語「バイグリカン」は、ヒトバイグリカン(配列番号9)およびシビレエイDAG−125、ならびにそれらのホモログを含むと意図されている。
II 定義
便宜のため、本明細書、実施例および添付の請求項において使用されるある特定の用語および句の意味を下記に提供する。
便宜のため、本明細書、実施例および添付の請求項において使用されるある特定の用語および句の意味を下記に提供する。
「GAG」とは、反復二糖単位から構成される長い非分枝の多糖鎖である「ムコ多糖」と本明細書中で交換可能に使用されるグリコサミノグリカンのことを指す。その2つの糖のうちの1つは、常にアミノ糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)である。グリコサミノグリカンは、コアタンパク質のセリン残基に共有結合されることにより、プロテオグリカン分子を形成する。
用語「糖タンパク質」とは、ポリペプチド鎖に共有結合的に付着された1つ以上の炭水化物基を含むタンパク質のことを指す。代表的には、糖タンパク質は、不定の組成の多くの比較的短い分枝状のオリゴ糖鎖の形態の1重量%〜60重量%の炭水化物を含む。プロテオグリカンは、糖タンパク質とは対照的に、より大きく(最大で数百万ダルトン)、多くの長い非分枝のグリコサミノグリカン鎖の形態の90重量%〜95重量%の炭水化物を含む。
用語「バイグリカン」とは、ヒトバイグリカンまたはシビレエイDAG−125の少なくとも1つの生物学的活性を有するポリペプチドのことを指す。好ましいバイグリカンとしては、シビレエイDAG−125(配列番号1〜3を含む)、ヒトバイグリカン(配列番号9)ならびにそれらのホモログおよびフラグメントが挙げられる。好ましいホモログは、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約75%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、なおもより好ましくは、少なくとも約98または99%の同一性を有するタンパク質またはペプチドである。なおもより好ましいホモログは、ヒトバイグリカンまたはシビレエイDAG−125に対してある特定のパーセンテージ(perentage)の相同性(または同一性)を有するホモログであり、これらの分子の少なくとも1つの生物学的活性を有する。用語バイグリカンは、完全長バイグリカンに限定されず、バイグリカンの少なくとも1つの活性を有するフラグメント(一部)も含む。バイグリカンは、本明細書中で使用されるとき、GAG側鎖を有するポリペプチドと有しないポリペプチドの両方の形態のことを指す。
用語「野生型ヒトバイグリカン」とは、GenBankアクセッション番号J04599および配列番号9に示されているアミノ酸配列を有する、Fischerら、J.Biol.Chem.264:4571(1989)に記載されているタンパク質のことを指す。野生型ヒトバイグリカンタンパク質をコードするcDNA配列は、配列番号7に示されており、そのオープンリーディングフレームは配列番号8として示されている。
用語「バイグリカンコア」とは、GAG鎖を含まないバイグリカンのことを指す。
本明細書中に記載されるとき、用語「バイグリカン関連治療薬」とは、野生型バイグリカンタンパク質(例えば、シビレエイDAG−125または哺乳動物の、好ましくは、ヒトのバイグリカン)の2つのグリカン化された(glycanated)セリン残基に対応する2つのアミノ酸残基が、欠失しているか、または別のアミノ酸(好ましくは、グリシン、またはアルキル側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン))によって置き換えられており、ポリペプチドがグリコサミノグリカン(GAG)側鎖を欠く(すなわち、そのポリペプチドが野生型のグリカン化(glycanation)部位を欠くので)、バイグリカン様ポリペプチドのことを指す。さらに、バイグリカン関連治療薬は、野生型バイグリカンの特徴および生物学的活性のうちの1つ以上を有する。例えば、バイグリカン関連治療薬は、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:約35〜約55kDaの分子量;配列番号1〜6または配列番号9、10もしくは11の残基38〜365のうちの1つ以上と少なくとも80%、85%、90%、95%または99%同一であるアミノ酸配列;および対応する定義において下記に列挙されるようなバイグリカンの1つ以上の(one
of more)生物学的活性。
of more)生物学的活性。
用語「バイグリカン関連治療薬」は、野生型バイグリカンの少なくとも1つの生物学的活性を有する、上に記載されたバイグリカン様ポリペプチドの一部をさらに含む。用語「バイグリカン関連治療薬」には、そのペプチド模倣物もしくは誘導体、またはバイグリカン様ポリペプチドをコードする核酸も含まれる。
「バイグリカンの生物学的活性」は、以下のうちの1つ以上のことを指すように意図されている:形質膜の完全性を維持する能力;形質膜上でDAPCを安定化する能力;DAPCの1つ以上の構成要素に結合する能力;例えば、α−ジストログリカンへの結合(野生型ヒトバイグリカンなどのある特定のバイグリカンの場合)、サルコグリカン構成要素(例えば、α−サルコグリカンまたはγ−サルコグリカン)への結合;MuSKへの結合;VI型コラーゲンへの結合;シナプス後分化を刺激することなどによる、神経筋接合部(neuromuscluar junction)の形成の刺激;AChR集合、例えば、アグリン誘導性のAChR集合の増強;DAPC構成要素、例えば、サルコグリカンのリン酸化;MuSKリン酸化の刺激またはアグリン誘導性のMuSKリン酸化の増強。ある特定の実施形態において、バイグリカンは、MuSK、α−サルコグリカン、γ−サルコグリカンおよびVI型コラーゲンに結合するが、α−ジストログリカンに結合しない。
用語「バイグリカン核酸」とは、バイグリカンタンパク質をコードする核酸、例えば、配列番号9を有するタンパク質をコードする核酸のことを指す。
用語「異常な」は、本明細書中において「異常型の」と交換可能に使用され、野生型の分子もしくは活性または正常な分子もしくは活性とは異なる分子または活性のことを指す。
用語「DAPC」とは、ジストロフィン、α−およびβ−ジストログリカンならびにサルコグリカン膜貫通型複合体を含む、図1に示される膜複合体である「ジストロフィン結合タンパク質複合体」のことを指す。
「サルコグリカン」は、α−、β−、γ−、デルタ−およびイプシロン−サルコグリカンを含む異なる形態で存在する(exit)。ある特定のサルコグリカンは、ある特定の組織に特異的であり、例えば、α−およびデルタ−サルコグリカンは、骨格筋特異的である。
「ジストロフィン会合タンパク質」は、α−ジストログリカン、ジストロブレビン(dystrobrevin)、サルコスパン(sarcospan)およびシントロフィンなどのタンパク質または糖タンパク質を含む。
用語「AChR」とは、アセチルコリンレセプターのことを指す。
用語「SLRP」とは、スモールロイシンリッチリピートプロテオグリカンのことを指す。
本明細書中で「筋肉特異的キナーゼ」と交換可能に使用される用語「MuSK」とは、正常な筋肉および除神経された筋肉ならびに他の組織(心臓、脾臓、卵巣または網膜を含む)において発現されるタンパク質チロシンキナーゼのことを指す(Valenzuela,D.ら、1995,Neuron 15:573−584を参照のこと)。そのチロシンキナーゼは、「除神経された筋肉のキナーゼ」に対する「Dmk」と代替的に称される。したがって、用語MuSKとDmkとは、交換可能に使用されてもよい。そのタンパク質は、チロシンキナーゼのTrkファミリーに関係するとみられ、米国特許第5,814,478号にさらに記載されている。
本明細書中で使用される用語「MuSK活性化分子」とは、分化した筋細胞の状況においてMuSKレセプターのリン酸化を誘導することができる分子のことを指す。そのような活性化分子の1つは、本明細書中に示される実施例に記載されるようなアグリンである。
用語「実質的な同一性」は、ポリペプチドに適用されるとき、2つのペプチド配列が、最適にアラインメントされるとき(例えば、デフォルトのギャップウェイトを使用したプログラムGAPまたはBESTFITによって)、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは、少なくとも95パーセントの配列同一性またはそれ以上(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的なアミノ酸置換によって異なっている。保存的なアミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性のことを指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的なアミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリンおよびアスパラギン−グルタミンである。
「筋芽細胞」は、他の筋芽細胞との融合によって、最終的に骨格筋線維になる筋管を生じる細胞である。この用語は、時折、骨格筋線維の直前の前駆体として認識可能なすべての細胞に対して使用される。あるいは、この用語は、融合が可能な有糸分裂後の細胞に対して用意されたものであり、その他のものは、推定的な筋芽細胞と称される。
「筋原線維」は、厚い微細線維と薄い微細線維との規則正しい配列から構成され、収縮性の装置を構成する、横紋筋の長い円柱状の細胞小器官である。
「筋管」は、いくつかの末梢に配置された筋原線維を含む細長い多核細胞(3つ以上の核)である。それらは、筋芽細胞の融合によってインビボまたはインビトロで形成され、最終的には、末梢に配置された核を有し、それらの細胞質のほとんどが筋原線維で満たされた、成熟した筋線維になる。
「ユートロフィン」(ジストロフィン会合タンパク質)は、成体の筋肉において神経筋接合部付近に局在化するジストロフィンの常染色体のホモログ(395kDというサイズ)であるが、ジストロフィンの非存在下では(すなわち、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは)、ユートロフィンは、筋細胞膜の細胞質の面にも配置される。
本明細書中で使用されるとき、用語「トランスフェクション」とは、核酸媒介性の遺伝子導入によるレシピエント細胞への核酸、例えば、発現ベクターの導入のことを意味する。用語「形質導入」は、一般に、核酸によるトランスフェクションがその核酸のウイルス送達によるときに、本明細書中で使用される。「形質転換」とは、本明細書中で使用されるとき、細胞の遺伝子型が、外来性のDNAまたはRNAの細胞取り込みの結果として変化するプロセスのことを指し、例えば、形質転換された細胞は、組換え型のポリペプチドを発現するか、または移入された遺伝子によるアンチセンス発現の場合、組換えタンパク質の天然に存在する形態の発現が乱される。
本明細書中で使用されるとき、用語「トランスジーン」とは、細胞に導入された核酸配列のことを指す。トランスジーンが導入された細胞に由来する娘細胞もまた、そのトランスジーンを含むと言われる(それが欠失されない限り)。トランスジーンは、例えば、それが導入されたトランスジェニック動物またはトランスジェニック細胞に対して部分的または全体的に異種性すなわち外来性であるポリペプチドをコードし得るか、あるいは、それが導入され、それが挿入される細胞のゲノムを変更するように(例えば、それは、天然の遺伝子の位置とは異なる位置に挿入される)その動物のゲノムに挿入されるように設計されているかまたは挿入されているトランスジェニック動物またはトランスジェニック細胞の内在性遺伝子と相同である。あるいは、トランスジーンは、エピソームとしても存在し得る。トランスジーンは、1つ以上の転写制御配列、および選択されたコード配列の最適な発現に必要であり得る他の任意の核酸(例えば、イントロン)を含み得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「ベクター」とは、それに連結されている別の核酸を運搬することができる核酸分子のことを指す。ベクターの1つのタイプは、エピソーム、すなわち、染色体外の複製が可能な核酸である。適切なベクターは、それらに連結されている核酸の自律複製および/または発現が可能なベクターである。それらに作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができるベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、通常ベクター型では染色体に結合していない環状の二本鎖DNAループのことを指す「プラスミド」の形態であることが多い。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるので、本明細書において、「ベクター」は、別段特定されない限り、「プラスミド」のことを表わす。しかしながら、本開示は、等価な機能を果たし、後にその点に関して当該分野で公知になるそのような他の形態の発現ベクターも提供する。
「〜に由来する」は、その句が本明細書中で使用されるとき、所与の配列内から選択されるペプチド配列またはヌクレオチド配列のことを示す。命名された配列に由来するペプチド配列またはヌクレオチド配列は、親配列に対して少数の改変(ほとんどの場合、その親配列に存在する約15%未満、好ましくは、約10%未満、および多くの場合、約5%未満のアミノ酸残基または塩基対の欠失、置換または挿入である)を含み得る。DNAの場合、2つが互いに選択的にハイブリダイズすることができる場合、1つのDNA分子は、もう1つのDNA分子に由来するとも考えられる。
用語「キメラ」、「融合」および「複合」は、天然では、別段、直接(共有結合的に)連結されずに見出されているという意味において相互に異種の少なくとも2つの構成要素部分を含む、タンパク質、ペプチドドメインまたはヌクレオチドの配列または分子を表すために使用される。より詳細には、それらの構成要素部分は、天然では、同じ連続したポリペプチドまたは遺伝子として見出されておらず、少なくとも、同じ順序もしくは配向で見出されていないか、またはキメラタンパク質もしくは複合ドメインに存在するスペーシングと同じスペーシングで見出されていない。そのような材料は、少なくとも2つの異なるタンパク質もしくは遺伝子、またはその同じタンパク質もしくは遺伝子の少なくとも2つの隣接していない部分に由来する構成要素を含む。複合タンパク質、およびそれらをコードするDNA配列は、それらが、別段天然では一緒に直接(共有結合的に)連結されずに見出されている少なくとも2つの構成部分を含むという意味において、組換えである。
用語「調節する」とは、阻害することまたは刺激することを指す。
用語「シナプス後膜を活性化する」とは、神経筋接合部におけるシグナルの伝達、一般に、神経細胞から筋細胞(mucle cell)へのシグナルの伝達の刺激のことを指す。活性化には、通常、神経筋接合部における細胞膜上でのAChRの集合の刺激;および/またはMuSKのリン酸化が含まれる。活性化によって、シナプス後分化が誘導される。
用語「処置する」とは、被験体に関して、その被験体の疾患または障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。処置は、その疾患もしくは状態を治癒すること、またはそれを改善することであり得、その少なくともある特定の症状を減少させることであり得る。
III.バイグリカン関連治療用ポリペプチド
本開示の1つの態様は、細胞の形質膜の完全性を維持する際に使用するためのバイグリカン関連治療薬、特に、これらの膜においてジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を安定化し、それにより、その膜の崩壊を防ぐバイグリカン関連治療薬を提供する。本開示は、シナプス後膜の分化を刺激することなどによって神経筋接合部の形成を刺激するバイグリカン関連治療薬、より広くは、シナプス形成を刺激するバイグリカン関連治療薬も提供する。
本開示の1つの態様は、細胞の形質膜の完全性を維持する際に使用するためのバイグリカン関連治療薬、特に、これらの膜においてジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)を安定化し、それにより、その膜の崩壊を防ぐバイグリカン関連治療薬を提供する。本開示は、シナプス後膜の分化を刺激することなどによって神経筋接合部の形成を刺激するバイグリカン関連治療薬、より広くは、シナプス形成を刺激するバイグリカン関連治療薬も提供する。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、2つのセリン残基(例えば、配列番号9の残基42および47)に少なくとも2つのアミノ酸残基置換を含むバイグリカン変異ポリペプチドを含む(そのバイグリカンポリペプチドは、いかなるグリコサミノグリカン(GAG)側鎖も含まない)。例えば、そのバイグリカン変異ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み得る。配列番号10は、コンセンサス(consenus)配列であり、ここで、残基42および47は、各々独立して存在しない場合もあるし、セリンまたはトレオニンを除く任意のアミノ酸である場合もある。ある特定の実施形態では、配列番号10の残基42と47の両方が存在する。ある特定の実施形態では、バイグリカン変異ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。配列番号11は、配列番号9と類似であるが、変異S42AおよびS47Aを含む。
対象のバイグリカン変異ポリペプチドは、任意の好適な手法を用いて作製され得る。そのような多数の手法が、当該分野で周知である。例えば、バイグリカンをコードするDNA配列の改変は、指定部位突然変異誘発を使用して1つ以上のヌクレオチドを変更することによって達成され得る。一般に、部位特異的突然変異誘発の手法は、刊行物によって例証されているように当該分野で周知である(Carterら、1986,Biochem
J.,237(1):1−7;Sambrookら、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold
Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)。認識され得るように、その手法は、代表的には、一本鎖と二本鎖の両方の形態で存在するファージミドベクターを使用する。あるいは、変異体は、PCRTMを使用することによって、作製され得る。指定部位突然変異誘発において有用な代表的なベクターとしては、M13ファージ(Messingら、1981)またはpUC119などのベクターが挙げられる。これらのベクターは、容易に商業的に入手可能であり、それらの使用は、当業者に広く周知である。あるいは、二本鎖プラスミドまたはファージミドなどを使用した指定部位突然変異誘発の方法もまた当該分野で周知であり、それらも使用され得る。
J.,237(1):1−7;Sambrookら、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold
Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)。認識され得るように、その手法は、代表的には、一本鎖と二本鎖の両方の形態で存在するファージミドベクターを使用する。あるいは、変異体は、PCRTMを使用することによって、作製され得る。指定部位突然変異誘発において有用な代表的なベクターとしては、M13ファージ(Messingら、1981)またはpUC119などのベクターが挙げられる。これらのベクターは、容易に商業的に入手可能であり、それらの使用は、当業者に広く周知である。あるいは、二本鎖プラスミドまたはファージミドなどを使用した指定部位突然変異誘発の方法もまた当該分野で周知であり、それらも使用され得る。
特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、DAPCの1つ以上の構成要素に結合する。そのバイグリカン治療薬は、好ましくは、α−サルコグリカンなどのサルコグリカン構成要素に結合する。なおもより好ましい実施形態において、バイグリカン治療薬は、例えば、α−サルコグリカン、γ−サルコグリカンおよびδ−サルコグリカンから選択される、サルコグリカン複合体の構成要素に結合する。バイグリカン関連ポリペプチドが結合するサルコグリカンの構成要素は、好ましくは、α−サルコグリカンである。一般に、バイグリカン関連治療用ペプチドは、DAPCの1つ以上の構成要素と接触することにより、例えば、その複合体を安定化し、筋ジストロフィーに見られるような異常なDAPC複合体に起因する形質膜の不安定化を減少させる。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、MuSK、α−サルコグリカン、γ−サルコグリカンおよびVI型コラーゲンに結合するが、α−ジストログリカンには結合しない。バイグリカンがα−ジストログリカンに結合できない実施形態であっても、なおも、バイグリカンがα−ジストログリカンに間接的に影響し得る機構が存在する。以下の機構が、結合しない理論であると考えられるだろう:1)バイグリカンは、VI型コラーゲンに結合し得、アルファ−DGに対する他のリガンドを補充し得る;この機構は、筋肉または非筋肉組織において生じ得る、2)バイグリカンは、MuSKに結合し得るがゆえに、α−ジストログリカンを間接的に補充し得る、および3)バイグリカンは、二量体化すると知られているので、α−ジストログリカンに結合できない変異バイグリカンは、内因性のバイグリカンプロテオグリカンとヘテロ二量体化し得、ゆえに、α−ジストログリカンを補充し得る。
他の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、レセプターチロシンキナーゼMuSKに結合する。そのような化合物は、MuSKおよび/またはサルコグリカン複合体の構成要素、例えば、α−サルコグリカンに結合し得る。好ましい実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、MuSKを活性化し、αおよび/またはγ−サルコグリカンのリン酸化を誘導する。
対象のバイグリカン関連治療薬は、好ましくは、上で述べられた分子の1つ以上に特異的に結合し、すなわち、それらは、その細胞において望ましくない効果をもたらす他の分子に有意にまたは検出可能なレベルで結合しない。バイグリカン関連治療薬は、好ましくは、10−6以下という解離定数で、なおもより好ましくは、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12または10−13M以下という解離定数で結合する。その解離定数は、当該分野で周知の方法に従って測定され得る。
DAPCの構成要素もしくはMuSKへのバイグリカン関連治療薬の結合のレベルを測定するため、または例えば、これらの分子に結合する化合物のライブラリーのメンバーを特定するための結合アッセイは、当該分野で公知であり、さらに本明細書中にも記載される。そのようなアッセイにおいて使用するためのDAPC構成要素またはMuSKを調製するための方法もまた公知である。そのような構成要素は、組織から単離され得るか、またはそれらがタンパク質であるとき、組換え的にもしくは合成的に調製され得る。それらのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、GenBankまたは刊行物から、公的に入手可能である。
他の好ましい実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、DAPCの1つ以上の構成要素および/またはMuSKに結合できることに加えてまたはそれに代わって、バイグリカンの1つ以上の生物学的活性を有する。例えば、バイグリカン関連治療薬は、神経筋接合部の形成、特に、シナプス後膜の分化(AChR集合の誘導および/またはMusKのアグリン誘導性のチロシンリン酸化(tyrosine phorphorylation)の刺激を含む)を刺激し得る。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、AChRのアグリン誘導性クラスター形成を二相性の形式(低濃度での増強およびより高レベルでの脱増強(depotentiation))で増強する。場合によっては、バイグリカン関連治療薬は、高濃度においてAChRのアグリン誘導性クラスター形成を阻害しない。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、インビボにおいて筋肉損傷を減少させる。
バイグリカン関連治療薬は、タンパク質もしくはその誘導体、ペプチド模倣物もしくはその誘導体、または核酸(例えば、バイグリカン変異ポリペプチドをコードする核酸)であり得る。一般に、バイグリカン関連治療薬は、必要とされる特徴、例えば、α−サルコグリカンおよび/または他のDAPC構成要素への結合を有する。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、以下のアミノ酸配列:IQAIEFEDL(配列番号1);LGLGFNEIR(配列番号2);およびTSYHGISLFNNPVNYWDVL(配列番号3)のうちの1つ以上、またはそれらに関連するアミノ酸配列(例えば、これらのアミノ酸配列が得られるシビレエイタンパク質の哺乳動物オルソログのアミノ酸配列)を含む。バイグリカン関連治療薬は、好ましくは、これらの配列の3つすべてまたはそれに関連する配列を含む。例えば、バイグリカン関連治療薬は、ヒトバイグリカンの一部である以下のアミノ酸配列のうちの1つ以上を含み得る:IQAIELEDL(配列番号4);LGLGHNQIR(配列番号5);およびAYYNGISLFNNPVPYWEVQ(配列番号6)。
シビレエイDAG−125を含む組成物およびシビレエイDAG−125を使用する方法は、本開示の範囲内であるが、好ましい組成物および方法は、本明細書中でシビレエイDAG−125のオルソログと称される、シビレエイDAG−125の哺乳動物(脊椎動物を含む)のホモログに関係するものである。シビレエイDAG−125の好ましいオルソログは、ヒト、げっ歯類、マウス、イヌ、ネコ、ヒツジおよびウシのオルソログである。DAG−125の哺乳動物オルソログは、バイグリカンである。
シビレエイDAG−125の哺乳動物オルソログは、配列番号1〜3の1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含むプローブでライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。他の多数の方法が、シビレエイDAG−125の哺乳動物オルソログをクローニングするために利用可能である。例えば、シビレエイDAG−125に対する抗体が作製され得、それを使用して哺乳動物発現ライブラリーがスクリーニングされ得る。シビレエイDAG−125の哺乳動物オルソログ(mammalian ortholgogs)としてクローニングされたタンパク質の同定は、シビレエイDAG−125を使用する実施例に記載されるアッセイと同じ生物学的アッセイを行うことによって確証され得る。
したがって、本明細書中に提供されるポリペプチドは、ヒアルロナンと相互作用できないことまたはグリコサミノグリカンのタイプを理由にそれぞれ「非集合性または小型のデルマタン硫酸プロテオグリカン」とも称される、スモールロイシンリッチプロテオグリカン(SLRP)のファミリーのメンバーでもあり得る。SLRPは、そのタンパク質およびゲノムの組成に基づいて3つのクラスに分類される。すべてのSLRPが、各端において小さいシステインクラスターに隣接したロイシンリッチリピート(LRR)を含む中央のドメインを特徴とする。SLRPは、例えば、Iozzoら(1998)Ann.Rev.Biochem.67:609(明確に本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
SLRPタンパク質コアは、約35〜45kDの範囲であり、1つまたは2つのGAG鎖がN末端の最も端に付着している。SLRPタンパク質コアの一般構造は、保存されたジスルフィド結合されたシステインを有するドメインに隣接した6〜10個のロイシンリッチリピート(LRR)のタンデム型の整列からなる。グリコシル化の程度およびGAG鎖の数に応じて、天然の分子量は、約100〜250kDの範囲である。配列相同性に基づいて、Iozzo,前出では、SLRPが、1)バイグリカンおよびデコリン;2)フィブロモジュリン、ルミカン、ケラトカン、PREPLPおよびオステオアドヘリン(osteoadherin);ならびに3)エピフィカン(epiphycan)およびオステオグリシン(osteoglycin)からなる3つのクラスに分類されると提案されている。SLRPタンパク質コアの最も必要不可欠な特性は、LRRである。そのようなリピート(SLRPにおいて各24aa)は、多種多様の細胞内、膜貫通および細胞外の状況において、タンパク質間相互作用を媒介する(Kobe&Deisenhofer,(1994)Trends Biochem.Sci.19:415−21)。例えば、trkB上のニューロトロフィン結合部位は、LRRである(Windischら(1995)Biochemistry 34:11256−63)。それらのリピートは、αヘリックスに続く逆平行の配置のベータシートという一般構造を有すると考えられるが、配列解析から、この順序がSLRPでは逆転している可能性があることが示唆された(Hockingら(1998)Matrix Biol.17:1−19)。各リピートの保存された残基がそれらの二次構造を規定しているが、介在するアミノ酸がリガンド結合の特異性を決定している可能性がある。
本明細書中の方法における使用に適したSLRPには、クラスI SLRP(例えば、バイグリカンおよびデコリン)の変異体が含まれる。α−ジストログリカンに結合すると示されたシビレエイのプロテオグリカンであるDAG−125の部分的なアミノ酸配列(例えば、米国特許第6,864,236号を参照のこと)は、ヒトバイグリカンと強い相同性を示す:合計37アミノ酸長の配列において78%の同一性が見出された。げっ歯類、ブタおよびヒト由来のバイグリカンは、>95%同一である。ヒト由来のデコリンとバイグリカンとは、55%しか同一でない。そのような相同性は、共有される機能と独特の機能の両方を有する、デコリンおよびバイグリカンと一致する。したがって、シビレエイDAG−125は、ヒトバイグリカンのアミノ酸配列とより密接に似ているアミノ酸配列を有するが、バイグリカンとデコリンとの間の構造および機能の類似性に基づくと、後者のプロテオグリカンおよびその誘導体もまた、本明細書中の方法を実施するために使用され得る。
様々な種由来のバイグリカンおよびデコリンの遺伝子およびタンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、GenBankなどにおいて公的に入手可能である。例えば、ヒトバイグリカンは、GenBankアクセッション番号J04599(骨小型プロテオグリカンI(バイグリカン)をコードするヒトhPGI、Fisherら(1989)J.Biol.Chem.264:4571に記載されている;配列番号7〜9)およびM65154として見出され得;ウシバイグリカンは、GenBankアクセッション番号L07953として見出され得;ラットバイグリカンは、GenBankアクセッション番号U17834として見出され得、マウスバイグリカンは、GenBankアクセッション番号L20276およびX53928として見出され得;ヒツジ属(ovis)バイグリカンは、GenBankアクセッション番号AF034842として見出され得;ヒトデコリンは、GenBankアクセッション番号M14219に見出され得;ウサギデコリンは、GenBankアクセッション番号I47020に見出され得;ニワトリデコリンは、GenBankアクセッション番号P28675に見出され得;ウマ属デコリンは、GenBankアクセッション番号AF038に見出され得;ウシデコリンは、GenBankアクセッション番号P21793に見出され得;ヒツジ属デコリンは、GenBankアクセッション番号AF125041に見出され得;ラットデコリンは、GenBankアクセッション番号Q01129に見出され得る。バイグリカンおよびデコリンならびに他のSLRPの配列は、GenBankにおいて見出され得る。
デコリンおよびバイグリカンは、それぞれ1つおよび2つのグリコサミノグリカン(GAG)鎖を有する。それらの組成は、組織特異的であり、いくつかのレベルで制御され得る(Hockingら(1998)Matrix Biol 17:1−19)。例えば、皮膚および軟骨由来のバイグリカンGAGは、主にデルマタン硫酸であるが、骨で合成されるバイグリカンは、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。ヘパラン硫酸側鎖は、報告されていない。タンパク質コアと細胞型の両方が、これらのSLRPの異なるグリコシル化に寄与する。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、融合タンパク質を含む。例えば、バイグリカン様ポリペプチドまたはその一部は、免疫グロブリン部分に融合され得る。あるいは、その融合タンパク質は、プロテオグリカンの2つ以上の部分間の組み合わせであり得、例えば、バイグリカン分子の一部が、デコリン分子の一部に融合され得る。
ある特定の実施形態において、バイグリカン関連治療薬は、バイグリカンの一部およびフラグメントを含む。一部は、代表的には、少なくとも5、10、15または20アミノ酸長である。好ましい一部は、DAPC構成要素との相互作用などの生物学的活性を発揮するために十分である。一部は、タンパク質の1つ以上の特定のドメインを含み得るか、またはそれらからなり得る。バイグリカンおよびデコリンのドメインは、2つのシステインリッチ領域(成熟バイグリカンのNおよびC末端の40〜50アミノ酸に含まれる)およびロイシンリッチリピート(LRR)を含む。「LRR領域」とは、そのリピートを含むバイグリカンの領域のことを指し、本質的にアミノ酸81〜314からなる。各個別のリピートが、本明細書中で「LRR」と称される。LRRは、タンパク質間相互作用を媒介すると考えられており、ゆえに、DAPCおよびシナプス後膜を安定化する(stabilzing)ために十分であり得る。バイグリカンがMuSKに結合するという観察結果に少なくとも基づいて、LRRが、バイグリカンとMuSKとの相互作用の媒介に関与し、MuSKリン酸化の媒介にも関与し得ると考えられる。
特定の実施形態において、本開示は、サルコグリカンに結合できるバイグリカンの一部からなるバイグリカン関連治療薬を提供する。ヒトバイグリカンのα−サルコグリカン結合ドメインは、成熟バイグリカンタンパク質のN末端ドメイン、すなわち、配列番号9のアミノ酸38〜80、より詳細には、アミノ酸38〜58に配置されていると示されている。C末端のシステインリッチドメインがγ−サルコグリカンとの相互作用を媒介することも示されている。したがって、バイグリカン関連治療薬は、N末端またはC末端のシステインリッチドメイン、すなわち、配列番号9のアミノ酸38〜80および315〜368からなるバイグリカンの一部(フラグメント)を含み得る。バイグリカンのある特定のドメインの組み合わせもまた、本明細書中に開示される。例えば、バイグリカンのフラグメントは、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150または200アミノ酸からなり得る。バイグリカン関連治療薬の短い部分は、「ミニバイグリカン関連治療薬」と呼ばれる。
野生型ヒトバイグリカンは、アミノ酸1〜19がシグナルペプチドを構成する368アミノ酸(配列番号9)からなる(GenBankアクセッション番号NP_001702およびFisherら、前出)。したがって、シグナルペプチドを有しない野生型ヒトバイグリカンは、配列番号9のアミノ酸20〜368からなる。プレプロペプチドであるアミノ酸1〜37は、プロセシング中に切断されるので、成熟バイグリカンタンパク質は、配列番号9のアミノ酸38〜368からなる。アミノ酸38〜80は、N末端のシステインリッチ領域に対応する。およそアミノ酸81〜314は、約24または23アミノ酸のリピートを10個含むロイシンリッチリピート領域に対応する。ヒトバイグリカンをコードするcDNAにおけるオープンリーディングフレームは、配列番号7のヌクレオチド121〜1227に対応し、配列番号8として表される。バイグリカンの成熟型をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7のヌクレオチド232〜1227に存在する。
バイグリカン関連治療薬は、バイグリカンコアの成熟型、すなわち、シグナルペプチドが取り除かれたもの、またはシグナルペプチドを有する完全長バイグリカンに関係し得る(ただし、そのバイグリカンコアの2つのグリカン化されるセリンは、欠失しているか、または本明細書中に記載されるような他のアミノ酸によって置換されている)。
好ましいバイグリカン関連治療薬は、SLRP、例えば、バイグリカンもしくはそのオルソログのヌクレオチド配列またはその一部と少なくとも約70%、好ましくは、少なくとも約80%、なおもより好ましくは、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、またはなおもより好ましくは、少なくとも約99%同一のヌクレオチド配列によってコードされる。
本明細書中に開示される好ましい核酸は、SLRP、例えば、バイグリカン(例えば、ヒトバイグリカンをコードする配列番号7または8)またはDAG−125もしくはそのオルソログのヌクレオチド配列、その一部と少なくとも約70%、好ましくは、少なくとも約80%、なおもより好ましくは、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、なおもより好ましくは、少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸を含む(ただし、バイグリカンコアの2つのグリカン化されるセリンは、欠失しているか、または本明細書中に記載されるような他のアミノ酸によって置換されている)。1つの実施形態において、その核酸は、配列番号1〜3または配列番号4〜6もしくは9の1つ以上を含むポリペプチドをコードする。
本開示の別の態様は、例えば、配列番号1〜6もしくは9またはその相補鎖のうちの1つ以上を有する、バイグリカン関連治療薬をコードする核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件(例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)に続く50℃での2.0×SSCの洗浄)は当業者に公知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見出され得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCという低ストリンジェンシーから50℃における約0.2×SSCという高ストリンジェンシーまでから選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温、約22℃における低ストリンジェンシー条件から約65℃における高ストリンジェントシー条件に上昇され得る。温度と塩の両方が、変動されてもよいし、他方の変数が変更されつつ、温度または(of)塩濃度が一定に保持されてもよい。好ましい実施形態において、バイグリカン関連ポリペプチドをコードする核酸は、配列番号1〜6もしくはその相補鎖のうちの1つまたはSLRPをコードする核酸に、中程度にストリンジェントな条件下で、例えば、約2.0×SSCおよび約40℃において結合し得る。特に好ましい実施形態において、本開示に係る核酸は、配列番号1〜6または9のうちの1つをコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号7もしくは8またはその相補鎖を有する核酸)に高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし得る。
本明細書中に開示されるポリペプチドおよび核酸を調製するための様々な方法が当該分野で周知である。例えば、そのポリペプチドまたは核酸は、組織から単離され得るか、またはその化合物は、組換え的にもしくは合成的に作製され得る。組織から単離されたタンパク質は、好ましくは、少なくとも約70%、好ましくは、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、最も好ましくは、少なくとも約99%純粋である。したがって、好ましいポリペプチドは、約1%未満、なおもより好ましくは、約0.1%未満の、ポリペプチドが抽出される材料を含み得る。
バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、組換え的にも作製され得る。代表的には、そのタンパク質をコードする遺伝子が、プラスミドまたはベクターに挿入され、次いで、得られた構築物が、適切な細胞にトランスフェクトされ、次いで、そこでそのタンパク質が発現され、最終的には、そこからそのタンパク質が精製される。バイグリカンを作製し、精製する方法は、Mercadoら(“Biglycan regulates the
expression and sarcolemmal localization
of dystrobrevin,syntrophin,and nNOS.”Faseb J.2006)において検討されている。バイグリカン関連ポリペプチドは、実施例3の方法に従っても精製され得る。いくつかの実施形態において、実施例3の方法は、さらなる精製工程と組み合わされる。これらの工程は、例えば、イオン交換樹脂を利用し得る。
expression and sarcolemmal localization
of dystrobrevin,syntrophin,and nNOS.”Faseb J.2006)において検討されている。バイグリカン関連ポリペプチドは、実施例3の方法に従っても精製され得る。いくつかの実施形態において、実施例3の方法は、さらなる精製工程と組み合わされる。これらの工程は、例えば、イオン交換樹脂を利用し得る。
したがって、本開示はさらに、開示されるタンパク質を作製する方法に関する。例えば、目的のタンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、そのタンパク質の発現が生じるのを可能にするのに適切な条件下で培養され得る。それらの細胞は、例えば、振盪フラスコまたはバイオリアクター内で培養され得る。そのタンパク質は、分泌シグナル配列を含めることによって分泌され得、そのタンパク質を含む培地と細胞との混合物から単離され得る。あるいは、そのタンパク質は、細胞質に保持され得、その細胞が回収され、溶解され、そのタンパク質が単離され得る。細胞培養物には、宿主細胞、培地および(代表的には)細胞副産物を含む。細胞培養に適した培地は、当該分野で周知である。そのタンパク質は、細胞培養液、宿主細胞またはその両方から単離され得る。タンパク質を精製するための手法は、当該分野で公知であり、それらとしては、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびそのタンパク質の特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製が挙げられる。
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞またはげっ歯類細胞である。例示的な宿主細胞株としては、HEK(ヒト胎児腎)293細胞またはCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞(例えば、CHO−S細胞)が挙げられる。
したがって、バイグリカン関連治療用ポリペプチドに対するコード配列は、微生物または真核細胞のプロセスを介してそのタンパク質の組換え型を作製するために使用され得る。遺伝子構築物(例えば、発現ベクター)へのポリヌクレオチド配列のライゲート、および真核生物(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)または原核生物(細菌細胞)のいずれかの宿主への形質転換もしくはトランスフェクトが、標準的な手順である。
組換えタンパク質を作製するための発現ビヒクルには、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、本発明の融合タンパク質の発現に適したベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:大腸菌などの原核細胞における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
酵母における組換えタンパク質の発現のためにいくつかのベクターが存在する。例えば、YEP24、YIP5、YEP51、YEP52、pYES2およびYRP17は、出芽酵母への遺伝的構築物の導入において有用なクローニングビヒクルおよび発現ビヒクルである(例えば、Broachら(1983)Experimental Manipulation of Gene Expression,ed.M.Inouye Academic Press,p.83(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。これらのベクターは、pBR322oriが存在するおかげで大腸菌において複製でき、酵母2ミクロンプラスミドの複製決定基(replication determinant)のおかげで出芽酵母において複製できる。さらに、アンピシリンなどの薬物耐性マーカーが使用され得る。
上記タンパク質は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス系)または原核細胞において産生され得る。
バイグリカン関連治療薬(therepeutic)を作製するために使用され得る細胞は、翻訳後修飾、例えば、グリコシル化またはスルホン化を触媒する酵素のレベルおよび/または活性を高めるためにさらに改変され得る。例えば、細胞は、スルホトランスフェラーゼ、例えば、コンドロイチンスルホトランスフェラーゼ、例えば、コンドロイチン−6−スルホトランスフェラーゼ(C6ST;Fukutaら(1995)J.Biol.Chem.270:18575)、またはNastukら(1998)J.Neuroscience 18:7167に記載されている神経系関連スルホトランスフェラーゼ(NSIST)をコードする発現構築物で形質転換され得るかまたは同時トランスフェクトされ得る。
いくつかの実施形態において、バイグリカンまたはデコリンなどの本明細書中に記載されるような組換えタンパク質は、免疫共沈降および結合研究を容易にするエピトープタグ化されたものとして作製される。適切なタグの1つは、hisタグである。例えば、本明細書中に記載されるようなタンパク質は、ワクシニアウイルス/T7バクテリオファージ発現系を用いて真核細胞において作製され得る。バイグリカン関連ポリペプチド、例えば、成熟バイグリカンタンパク質をコードする組換えワクシニアウイルスvBGN4は、T7ファージプロモーターの支配下においてポリヒスチジン融合タンパク質として発現され得、Hockingら(1996)J Biol Chem 271:19571−7に記載されているように、例えば、HT−1080細胞およびUMR106細胞において発現され得る。タグ化されていないタンパク質は、通常、被験体に投与されたときに免疫応答を生じる可能性が低いので、タグ化されていないタンパク質を使用することに対する利点もある。
不死化された細胞株、例えば、バイグリカン陰性細胞株などの筋細胞株は、Jatら、PNAS(1991)88:5096−100;Nobleら(1992)Brain Pathology 2:39−46に記載されているように得ることができる。1つの実施形態では、H−2Kb/tsA58トランスジェニックマウスが使用される。このマウスは、インターフェロン誘導性プロモーターの支配下の熱不安定性の不死化遺伝子(SV40ラージT抗原のtsA58変異体)を有するヘテロ接合体である(このマウスは、Charles Riverにおいて入手可能である)。この遺伝子を含む細胞は培養されると、インターフェロンの存在下、33℃において無制限に増殖する。しかしながら、温度が39℃(この温度では、tsA58抗原は機能しない)に上げられ、インターフェロンが除去されると、その細胞は、分裂を停止する。
この方法は、アストロサイト、破骨細胞、小柱網および結腸上皮細胞をはじめとした多種多様の細胞型を生育するために使用されている(Chambersら(1993)PNAS 90:5578−82;Grovesら(1993)Dev.Biol.159:87−104;Whiteheadら(1993)PNAS 90:587−91;Nobleら(1995)Transgenic Res.4:215−25;Tammら(1999)Invest.Ophtamol.Vis.Sci.40:1392−403。この手法は、筋細胞株の作製に十分に適している。例えば、ただ1つの研究において、65個の別個の筋細胞株を、新生仔から4週齢の齢の範囲の動物から得た(Morganら(1994)Dev.Biol.162 486−98)。これらの株を、80世代超にわたって維持した。著しいことに、それらは、許容されない培養条件に変更されたときに筋管を形成しただけでなく、宿主マウスに移植されたときには筋肉も形成した。MuSK−/−筋細胞株を作製するために、H−2Kb/tsA58トランスジェニック法もまたD.Glassおよび共同研究者によって使用された(Sugiyamaら(1997)J.Cell Biol.139:181−91)。
条件的に不死化された細胞株を作製するために、特定の変異、例えば、バイグリカンまたはMuSKの欠損を有するマウスを、ヘテロ接合体のH−2Kb/tsA58トランスジェニックマウスと交配することができる。完全な活性のためにただ1コピーの遺伝子が必要であるだけなので、その交配は、単純である。次いで、新生仔動物由来の筋細胞を、プレーティングし、許容条件下(インターフェロンありの33℃)で生育し得る。次いで、増殖中の細胞をクローン化し、各株由来のサンプルを非許容温度に変更し、筋管を形成する能力について試験し得る。野生型;デコリン−/−;バイグリカン−/o;およびデコリン−/−バイグリカン−/o細胞株が、この手法を用いて得ることができる細胞株の例である。
本明細書中に記載される化合物は、例えば、バイグリカン(biglyan)の構造に基づいて調製され得るペプチド模倣物でもあり得る。
バイグリカン関連治療薬で被験体を処置するためのある特定の方法は、被験体への本明細書中に記載されるタンパク質の投与を含む。しかしながら、そのタンパク質は、遺伝子治療法によって被験体において産生されることもできる。したがって、例えば、被験体は、バイグリカン関連治療用タンパク質をコードするベクターの注射を筋肉に(例えば、その被験体が筋ジストロフィーを有する場合)受け得る(その結果、そのベクターは、筋細胞に進入でき、そこで発現されることが可能となる)。あるいは、そのベクターは、ウイルスキャプシド(viral capside)を提供するウイルスベクターであり得、そのウイルスは、細胞、例えば、筋細胞に感染し、それにより、そのベクターを送達する。遺伝子治療のための方法およびベクターは、当該分野で周知である。例証的な方法が下記に示される。
好ましい哺乳動物発現ベクターは、細菌内でのベクターの増殖を促進する原核生物配列と、真核細胞で発現される1つ以上の真核生物転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHygに由来するベクターが、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのうちのいくつかが、原核細胞と真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするpBR322などの細菌プラスミドからの配列で改変される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)などのウイルスの誘導体が、真核細胞におけるタンパク質の一過性の発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、下記の遺伝子治療送達系の説明の中に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において使用される様々な方法は、当該分野で周知である。原核細胞と真核細胞の両方に適した他の発現系、ならびに一般的な組換え手順については、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)のChapter16および17を参照のこと。場合によっては、バキュロウイルス発現系を使用することによって組換え融合タンパク質を発現することが望ましいことがある。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUW1)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、−gal含有pBlueBacIII)が挙げられる。
さらに他の実施形態において、対象の発現構築物は、対象の遺伝子をウイルスベクター(組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよび単純ヘルペスウイルス−1、または組換え細菌プラスミドもしくは組換え真核生物プラスミドを含む)に挿入することによって得られる。下記でより詳細に記載されるように、その対象の発現構築物のそのような実施形態は、様々なインビボおよびエキソビボ遺伝子治療プロトコルにおいて使用するために特に企図されている。
レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、一般に、インビボにおいて、特にヒトに外来性遺伝子を伝達するために最適な組換え遺伝子送達系であると理解されている。これらのベクターは、細胞への遺伝子の効率的な送達を提供し、伝達された核酸は、宿主の染色体DNAに安定的に組み込まれる。レトロウイルスを使用するための主な必要条件は、特に、細胞集団に野生型ウイルスが広がる可能性に関して、その使用の安全性が保証されることである。複製欠損レトロウイルスだけを産生する特殊化された細胞株(「パッケージング細胞」と呼ばれる)の開発によって、遺伝子治療用のレトロウイルスの有用性が高まっており、欠損レトロウイルスは、遺伝子治療の目的での遺伝子導入における使用について十分に特徴付けられている(概説については、Miller,A.D.(1990)Blood 76:271を参照のこと)。したがって、レトロウイルスのコード配列(gag、pol、env)の一部が、バイグリカン会合タンパク質をコードする核酸によって置換され、それにより複製欠損になった組換えレトロウイルスが構築され得る。次いで、その複製欠損レトロウイルスは、ビリオンにパッケージングされ、そのビリオンを用いて、標準的な手法によってヘルパーウイルスを使用することによって標的細胞が感染され得る。組換えレトロウイルスを作製するためのプロトコル、およびインビトロまたはインビボにおいてそのようなウイルスを細胞に感染させるためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.ら(eds.)Greene Publishing Associates,(1989),Sections 9.10−9.14および他の標準的な研究室のマニュアルに見ることができる。好適なレトロウイルスの例としては、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWEおよびpEMが挙げられる。エコトロピックレトロウイルス系とアンホトロピックレトロウイルス系の両方の調製に適したパッケージングウイルス株の例としては、SYMBOL 121 \f“Symbol”Crip、SYMBOL 121 \f“Symbol”Cre、SYMBOL 121 \f“Symbol”2およびSYMBOL 121 \f“Symbol”Amが挙げられる。レトロウイルスは、種々の遺伝子をインビトロおよび/またはインビボにおいて多くの異なる細胞型(神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む)に導入するために使用されている(例えば、Eglitisら(1985)Science 230:1395−1398;Danos and Mulligan,(1988)PNAS USA 85:6460−6464;Wilsonら(1988)PNAS USA 85:3014−3018;Armentanoら(1990)PNAS
USA 87:6141−6145;Huberら(1991)PNAS USA 88:8039−8043;Ferryら(1991)PNAS USA 88:8377−8381;Chowdhuryら(1991)Science 254:1802−1805;van Beusechemら(1992)PNAS USA 89:7640−7644;Kayら(1992)Human Gene Therapy 3:641−647;Daiら(1992)PNAS USA 89:10892−10895;Hwuら(1993)J.Immunol.150:4104−4115;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO89/07136;PCT出願WO89/02468;PCT出願WO89/05345;およびPCT出願WO92/07573を参照のこと)。
USA 87:6141−6145;Huberら(1991)PNAS USA 88:8039−8043;Ferryら(1991)PNAS USA 88:8377−8381;Chowdhuryら(1991)Science 254:1802−1805;van Beusechemら(1992)PNAS USA 89:7640−7644;Kayら(1992)Human Gene Therapy 3:641−647;Daiら(1992)PNAS USA 89:10892−10895;Hwuら(1993)J.Immunol.150:4104−4115;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO89/07136;PCT出願WO89/02468;PCT出願WO89/05345;およびPCT出願WO92/07573を参照のこと)。
さらに、ウイルス粒子の表面上のウイルスパッケージングタンパク質を改変することによって、レトロウイルスおよびその結果としてレトロウイルスベースのベクターの感染範囲を制限することが可能であると示されている(例えば、PCT公開WO93/25234、WO94/06920およびWO94/11524を参照のこと)。例えば、レトロウイルスベクターの感染範囲を改変するためのストラテジーとしては:細胞表面抗原に特異的な抗体をウイルスのenvタンパク質に結合すること(Rouxら(1989)PNAS USA 86:9079−9083;Julanら(1992)J.Gen Virol 73:3251−3255;およびGoudら(1983)Virology 163:251−254);または細胞表面リガンドをウイルスのenvタンパク質に結合すること(Nedaら(1991)J.Biol.Chem.266:14143−14146)が挙げられる。結合は、タンパク質または他の種類(例えば、envタンパク質をアシアロ糖タンパク質に変換するラクトース)を用いた化学的架橋の形態、ならびに融合タンパク質(例えば、一本鎖抗体/env融合タンパク質)を作製することによるものであり得る。この手法は、感染をある特定の組織タイプに限定するかまたは別途向かわせるために有用であり、エコトロピックベクターをアンホトロピックベクターに変換するためにも使用され得る。
別のウイルス遺伝子送達系は、アデノウイルス由来のベクターを利用する。アデノウイルスのゲノムは、それが目的の遺伝子産物をコードするが、正常な溶菌性ウイルスの生活環において複製する能力に関して不活性化されるように、操作され得る(例えば、Berknerら(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeldら(1991)Science 252:431−434;およびRosenfeldら(1992)Cell 68:143−155を参照のこと)。アデノウイルス株Adタイプ5dl324または他のアデノウイルスの株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する好適なアデノウイルスベクターは、当業者に周知である。組換えアデノウイルスは、それらが非分裂細胞に感染できない点、ならびに気道上皮(Rosenfeldら(1992)前出で引用)、内皮細胞(Lemarchandら(1992)PNAS
USA 89:6482−6486)、肝細胞(Herz and Gerard,(1993)PNAS USA 90:2812−2816)および筋細胞(Quantinら(1992)PNAS USA 89:2581−2584)をはじめとした多種多様の細胞型に感染させるために使用され得る点において、ある特定の状況において有益であり得る。さらに、そのウイルス粒子は、比較的安定しており、精製および濃縮に耐えられ、上記のように、感染の範囲に影響するように改変され得る。さらに、導入されたアデノウイルスDNA(およびその中に含まれる外来DNA)は、宿主細胞のゲノムに組み込まれず、エピソームのままであり、それによって、導入されたDNAが宿主ゲノム(例えば、レトロウイルスDNA)に組み込まれる場合における挿入性の突然変異誘発の結果として生じ得る潜在的な問題が回避される。そのうえ、外来DNAに対するアデノウイルスゲノムの運搬能は、他の遺伝子送達ベクターと比べて大きい(最大8キロベース)(Berknerら、前出;Haj−Ahmand and Graham(1986)J.Virol.57:267)。現在使用されており、ゆえに本明細書中に記載される方法において使用するのに好ましいほとんどの複製欠損アデノウイルスベクターでは、ウイルスE1およびE3遺伝子の全部または一部が欠失しているが、80%ものアデノウイルス遺伝物質が保持されている(例えば、Jonesら(1979)Cell 16:683;Berknerら、前出;およびGrahamら、Methods in Molecular Biology,E.J.Murray,Ed.(Humana,Clifton,NJ,1991)vol.7.pp.109−127を参照のこと)。挿入されたキメラ遺伝子の発現は、例えば、E1Aプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および付随するリーダー配列、ウイルスE3プロモーター、または外から付加されたプロモーター配列の支配下であり得る。
USA 89:6482−6486)、肝細胞(Herz and Gerard,(1993)PNAS USA 90:2812−2816)および筋細胞(Quantinら(1992)PNAS USA 89:2581−2584)をはじめとした多種多様の細胞型に感染させるために使用され得る点において、ある特定の状況において有益であり得る。さらに、そのウイルス粒子は、比較的安定しており、精製および濃縮に耐えられ、上記のように、感染の範囲に影響するように改変され得る。さらに、導入されたアデノウイルスDNA(およびその中に含まれる外来DNA)は、宿主細胞のゲノムに組み込まれず、エピソームのままであり、それによって、導入されたDNAが宿主ゲノム(例えば、レトロウイルスDNA)に組み込まれる場合における挿入性の突然変異誘発の結果として生じ得る潜在的な問題が回避される。そのうえ、外来DNAに対するアデノウイルスゲノムの運搬能は、他の遺伝子送達ベクターと比べて大きい(最大8キロベース)(Berknerら、前出;Haj−Ahmand and Graham(1986)J.Virol.57:267)。現在使用されており、ゆえに本明細書中に記載される方法において使用するのに好ましいほとんどの複製欠損アデノウイルスベクターでは、ウイルスE1およびE3遺伝子の全部または一部が欠失しているが、80%ものアデノウイルス遺伝物質が保持されている(例えば、Jonesら(1979)Cell 16:683;Berknerら、前出;およびGrahamら、Methods in Molecular Biology,E.J.Murray,Ed.(Humana,Clifton,NJ,1991)vol.7.pp.109−127を参照のこと)。挿入されたキメラ遺伝子の発現は、例えば、E1Aプロモーター、主要後期プロモーター(MLP)および付随するリーダー配列、ウイルスE3プロモーター、または外から付加されたプロモーター配列の支配下であり得る。
本明細書中に開示される遺伝子の送達に有用なさらに別のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖性の生活環のためのヘルパーウイルスとしてアデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどの別のウイルスを必要とする天然に存在する欠損ウイルスである(概説として、Muzyczkaら、Curr.Topics in Micro.and Immunol.(1992)158:97−129を参照のこと)。アデノ随伴ウイルスは、そのDNAを非分裂細胞に組み込む場合があり、高頻度の安定的な組み込みを示すいくつかのウイルスのうちの1つでもある(例えば、Flotteら(1992)Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349−356;Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcLaughlinら(1989)J.Virol.62:1963−1973を参照のこと)。AAVの300塩基対しか含まないベクターがパッケージングされ得、組み込み得る。外来性DNAのための余地は、約4.5kbに限定される。Tratschinら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3251−3260に記載されているものなどのAAVベクターが、細胞にDNAを導入するために使用され得る。種々の核酸が、AAVベクターを用いて種々の細胞型に導入されている(例えば、Hermonatら(1984)PNAS USA 81:6466−6470;Tratschinら(1985)Mol.Cell.Biol.4:2072−2081;Wondisfordら(1988)Mol.Endocrinol.2:32−39;Tratschinら(1984)J.Virol.51:611−619;およびFlotteら(1993)J.Biol.Chem.268:3781−3790を参照のこと)。
遺伝子治療における用途を有し得る他のウイルスベクター系が、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスおよびいくつかのRNAウイルスから得られている。特に、ヘルペスウイルスベクターは、中枢神経系および眼球組織の細胞に組換え遺伝子を残存させるための独特のストラテジーを提供し得る(Peposeら(1994)Invest Ophthalmol Vis Sci 35:2662−2666)。
上で例証された方法などのウイルス伝達方法に加えて、ウイルスによらない方法もまた、動物の組織においてバイグリカン関連治療用タンパク質の発現を引き起こすために使用され得る。ウイルスによらない遺伝子導入方法のほとんどは、高分子の取り込みおよび細胞内輸送のために哺乳動物細胞が使用している正常な機構に依存している。ある特定の実施形態において、ウイルスによらない遺伝子送達系は、標的化された細胞による遺伝子の取り込みのためのエンドサイトーシス経路に依存している。このタイプの例示的な遺伝子送達系としては、リポソーマル由来の系、ポリリジン結合体、および人工ウイルスエンベロープが挙げられる。
代表的な実施形態において、目的のタンパク質をコードする遺伝子は、表面上に正電荷を有するリポソーム(例えば、リポフェクチン)および(必要に応じて)標的組織の細胞表面抗原に対する抗体でタグ化されたリポソームに封入され得る(Mizunoら(1992)No Shinkei Geka 20:547−551;PCT公開WO91/06309;日本国特許出願1047381;および欧州特許公開EP−A−43075)。例えば、筋肉、神経または心臓細胞のリポフェクションは、特定の組織関連抗原に対するモノクローナル抗体でタグ化されたリポソームを用いて行われ得る(Mizunoら(1992)Neurol.Med.Chir.32:873−876)。
さらに別の例証的な実施形態において、遺伝子送達系は、ポリリジンなどの遺伝子結合物質で架橋された抗体または細胞表面リガンドを含む(例えば、PCT公開WO93/04701、WO92/22635、WO92/20316、WO92/19749およびWO92/06180を参照のこと)。例えば、任意の対象の遺伝子構築物が、ポリカチオン、例えば、ポリリジンに結合体化された抗体を含む可溶性のポリヌクレオチドキャリアを用いてインビボにおいて特定の細胞をトランスフェクトするために使用され得る(米国特許第5,166,320号を参照のこと)。エンドサイトーシスを介した対象の核酸構築物の効率的な送達が、エンドソーム構造からの遺伝子の脱落を増強する物質を用いて改善され得ることも認識され得る。例えば、ホールアデノウイルスまたはインフルエンザHA遺伝子産物の融合性ペプチドを送達系の一部として使用することにより、DNA含有エンドソームの効率的な破壊が誘導され得る(Mulliganら(1993)Science 260−926;Wagnerら(1992)PNAS USA 89:7934;およびChristianoら(1993)PNAS USA 90:2122)。
バイグリカン関連タンパク質をコードする核酸は、例えば、米国特許第5,679,647号およびCarsonら、WO90/11092における関連特許およびFelgnerら(1990)Science 247:1465に記載されているように、「裸の」DNAとしても被験体に投与され得る。
臨床の状況では、遺伝子送達系は、いくつかの方法のいずれかによって患者に導入され得る。例えば、遺伝子送達系の薬学的調製物が、全身性に、例えば、静脈内注射によって導入され得、主に、遺伝子送達ビヒクルによって提供されるトランスフェクションの特異性、その遺伝子の発現を制御する転写制御配列に起因する細胞タイプもしくは組織タイプの発現、またはそれらの組み合わせによって、標的細胞における構築物の特異的な形質導入が生じる。他の実施形態において、組換え遺伝子の最初の送達は、動物へのかなり局在化された導入に限定される。例えば、遺伝子送達ビヒクルは、カテーテル(米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位注射(例えば、Chenら(1994)PNAS USA 91:3054−3057)によって導入され得る。
バイグリカン関連治療用ペプチドをコードする遺伝子は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターの支配下であり得る。これらは、当該分野で周知である。
化合物が野生型バイグリカンタンパク質の生物学的活性を有するか否かを判定するための方法は、当該分野で公知である。野生型バイグリカンタンパク質の生物学的活性は、以下のうちの1つ以上のことを指すと意図されている:形質膜の完全性を維持する能力;形質膜上でDAPCを安定化する能力;DAPCの1つ以上の構成要素に結合する能力;例えば、α−ジストログリカンへの結合、α−サルコグリカンなどのサルコグリカン構成要素への結合;α−サルコグリカンのリン酸化;MuSKへの結合;シナプス後分化を刺激することなどによる神経筋接合部の形成を刺激するVI型コラーゲンへの結合;AChR集合の刺激;MuSKリン酸化の刺激およびアグリン誘導性MuSKリン酸化の増強。そのような方法は、上に記載された活性の1つ以上を有する化合物を同定するために化合物のライブラリーをスクリーニングするためにさらに適合され得る
細胞膜の破損、例えば、「漏出性の膜」の存在は、例えば、Tinsleyら(1996)Nature 384:349およびStraubら(1997)J.Cell Biol.139:375)に記載されているような、クレアチンキナーゼの放出またはEvans Blue色素の吸収を測定するアッセイによって判定され得る。
細胞膜の破損、例えば、「漏出性の膜」の存在は、例えば、Tinsleyら(1996)Nature 384:349およびStraubら(1997)J.Cell Biol.139:375)に記載されているような、クレアチンキナーゼの放出またはEvans Blue色素の吸収を測定するアッセイによって判定され得る。
バイグリカン関連治療薬は、種々の動物モデル、特に、ジストロフィン陰性のmdxマウスにおいても試験され得る(例えば、米国特許第7,612,038号を参照のこと)。
IV.処置方法
本開示は、筋肉の、神経筋の、神経性のおよびVI型コラーゲン関連性の障害を含む障害の処置の治療的および予防的な方法を提供する。治療方法は、疾患または障害の少なくとも1つの症状を排除するようにまたは少なくとも減少させるように意図されており、好ましくは、その疾患または障害を治癒するように意図されている。予防的方法は、疾患または障害の出現を防ぐように意図された方法、すなわち、その疾患または障害の出現に対抗するように意図された方法を含む。
本開示は、筋肉の、神経筋の、神経性のおよびVI型コラーゲン関連性の障害を含む障害の処置の治療的および予防的な方法を提供する。治療方法は、疾患または障害の少なくとも1つの症状を排除するようにまたは少なくとも減少させるように意図されており、好ましくは、その疾患または障害を治癒するように意図されている。予防的方法は、疾患または障害の出現を防ぐように意図された方法、すなわち、その疾患または障害の出現に対抗するように意図された方法を含む。
野生型バイグリカンは、α−ジストログリカンおよびサルコグリカン(sarocoglycans)に結合すると示されており、それにより、DAPCの様々な構成要素との間の連結として機能する。さらに、バイグリカンのレベルは、ジストロフィンを欠くマウス(筋ジストロフィーモデルであるmdxマウス)の筋細胞において高いと見出された。筋細胞にジストロフィンが存在しないことが、細胞膜を不安定化すると知られているので、ジストロフィン陰性筋細胞におけるバイグリカンのアップレギュレーションは、ジストロフィンが存在しないことに対する代償機構となり得る。したがって、ある特定の実施形態において、本開示は、形質膜の不安定性または構成、特に、形質膜上の異常なDAPCに起因する不安定性に関連する疾患または障害を予防するためおよび処置するための方法を提供する。DAPCは、筋細胞の膜上に見られるので、本明細書中の方法を用いて処置され得る疾患には、筋ジストロフィーおよび筋萎縮などの筋肉の疾患が含まれる。
その点において、筋ジストロフィーを処置するためおよび潜在的に治癒するための有望な方針の1つは、ユートロフィンの制御された発現に基づく内在性の代償機構の活性化である。ユートロフィンは、ジストロフィンと多数の構造的特性および機能的特性を共有するジストロフィンのホモログである。しかしながら、正常な筋肉のユートロフィンとデュシェンヌ型の筋肉のユートロフィンの両方において、筋膜の一部分:神経筋接合部および筋腱間接合部にのみ発現される。その膜の大部分は、ユートロフィンを有しない。しかしながら、動物モデルにおいて、ジストロフィンを欠く筋肉にユートロフィンを強制的に発現させることにより、筋膜においてDAPCが回復し、ジストロフィーの表現型がレスキューされることが示された。ユートロフィン遺伝子は、デュシェンヌ型患者では正常であるので、筋肉においてその発現を活性化する方法および/またはそれを筋膜に標的化する方法は、その膜にDAPCが回復するように働き得、ひいては筋細胞の健康を促進し得る。
いくつかの一連の証拠から(その多くが、本発明者らが行った観察によってもたらされた)、スモールロイシンリッチリピートプロテオグリカンバイグリカンが、ユートロフィンの発現および局在化を制御するための方法において使用され得ると示唆される。アグリンタンパク質は、ユートロフィン発現のアップレギュレーションを引き起こし得、それを細胞表面上の特定のドメインに局在化されるように指示し得ると証明された。アグリンに対するシグナル伝達レセプターは、レセプターチロシンキナーゼMuSKである。また、アグリンが、培養された筋管においてα−およびγ−サルコグリカンのチロシンリン酸化を誘導し得ることも観察された。また、バイグリカンが、α−およびγ−サルコグリカンのチロシンリン酸化を制御し得ることも観察された。さらに、レセプターチロシンキナーゼMuSKは、これらのタンパク質のこのバイグリカン誘導性チロシンリン酸化に必要である。さらに、バイグリカンは、MuSKに結合し得る。これらの観察結果から、バイグリカンが、筋細胞表面上でユートロフィンを含むDAPCを構築するように直接作用し得ることが示唆される。
したがって、本願は、ユートロフィンをアップレギュレートし、MuSKを活性化し、そして/またはサルコグリカンのリン酸化を誘導する、バイグリカン関連治療薬によるこれらの障害の処置法を提供する。
単なる例証として、バイグリカン関連治療薬(例えば、ポリペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣物)を、筋ジストロフィーまたは筋肉が萎縮する他の状態を有する患者に送達することにより、内因性ユートロフィン遺伝子発現がアップレギュレートされ得、そして/または筋膜へのユートロフィンの局在化が促進され得る。そのような実施形態において、バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、それ自体のポリペプチドの形態で、または例えば、ヒト化抗体配列もしくは類似のキャリア実体に融合された融合タンパク質の一部として、送達され得る。バイグリカン関連治療用ポリペプチドは、核酸ベースの方法(プラスミドDNAとして、ウイルスベクター内において、またはバイグリカン関連治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を患者に導入する他の様式を含む)によって送達され得る。バイグリカン関連治療薬の送達は、ジストロフィン結合タンパク質複合体の残りの部分を同時に回復させつつ、ユートロフィンの高発現および筋細胞表面へのユートロフィンの制御された局在化を指示することによって、筋線維を内部から治癒するのに役立ち得る。
さらに、DAPCは、他の細胞型上にも見られるので、本開示(present discosure)は、任意の異常なDAPCに関連する疾患を処置するための方法も提供する。例えば、DAPCは、脳に存在し、さらに、アグリンは、アルツハイマー病を有する患者の老人斑に見られるので、本明細書中に記載される方法に従って神経性疾患も処置され得るかまたは予防され得る。本明細書中に記載される方法に従って神経障害が処置され得るかまたは予防され得るさらなる示唆は、筋ジストロフィーを有する患者が末梢神経系および中枢神経系の障害にも罹患することが多いという所見に基づく。したがって、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する患者の約3分の1が、精神的苦痛、特に、精神遅滞を有する。それゆえ、ジストロフィン、ゆえにDAPCが、神経系において役割を果たすと考えられる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する患者は、横隔膜の問題も有することから、横隔膜におけるジストロフィンおよびおそらくDAPCに対する役割が示唆される。それゆえ、本明細書中に記載される化合物は、横隔膜の異常に関連する障害における適用も見出し得る。
処置され得るかまたは予防され得る疾患が、バイグリカンが異常である疾患だけでなく、バイグリカンによって改善され得るかまたは治癒され得る欠損に関連するより一般的な任意の疾患または状態も含むことに注意すべきである。特に、DAPCまたはそれに会合する構成要素の任意の構成要素の欠損または異常を特徴とし、それにより、例えば、不安定な形質膜がもたらされる疾患は、バイグリカン関連治療薬が、欠損した構成要素に起因する欠損を少なくとも部分的に治癒し得るならば、本明細書中に記載される方法に従って処置され得るかまたは予防され得る。特に、本明細書中の方法に従って処置され得る疾患は、バイグリカン関連治療薬の存在によってより安定にされ得る、不安定なDAPCに関連する任意の疾患を含む。
さらに、バイグリカンは、MuSKに結合し、MuSKをリン酸化すると示されたので(MuSKは、神経筋接合部の形成、特に、シナプス後膜分化のアグリン誘導性の刺激を媒介するために、アグリン誘導性のAChR集合を増強し、そしてバイグリカン陰性マウスの筋管にそれを加えることによってその筋管における不完全なアグリン誘導性のAChR集合を補正すると知られるレセプターである)、本開示は、神経筋障害などの神経筋接合部の疾患または障害を予防するためおよび処置するための方法も提供する。
A.例示的な疾患および障害
特定の細胞型の形質膜の不安定化または不適当な構成を特徴とする疾患または障害には、神経系が関与しない脱力および筋萎縮によって特徴付けられる遺伝的変性筋障害の一群である筋ジストロフィー(MD)が含まれる。主要な3つのタイプは、偽肥大型(デュシェンヌ型、ベッカー型)、肢帯型および顔面肩甲上腕型である。例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮は、筋細胞膜の破損を特徴とし、すなわち、それらは、漏出性の膜を特徴とし、それは、DAPCの構成要素、すなわち、ジストロフィンの変異に起因すると考えられている。サルコグリカンの変異も、筋ジストロフィーおよび漏出性の膜をもたらすと知られている。したがって、本開示は、ジストロフィンおよび/もしくはサルコグリカン、またはDAPCの他の構成要素の変異に関連する疾患、特に、筋ジストロフィーを処置するためまたは予防するための方法を提供する。
特定の細胞型の形質膜の不安定化または不適当な構成を特徴とする疾患または障害には、神経系が関与しない脱力および筋萎縮によって特徴付けられる遺伝的変性筋障害の一群である筋ジストロフィー(MD)が含まれる。主要な3つのタイプは、偽肥大型(デュシェンヌ型、ベッカー型)、肢帯型および顔面肩甲上腕型である。例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮は、筋細胞膜の破損を特徴とし、すなわち、それらは、漏出性の膜を特徴とし、それは、DAPCの構成要素、すなわち、ジストロフィンの変異に起因すると考えられている。サルコグリカンの変異も、筋ジストロフィーおよび漏出性の膜をもたらすと知られている。したがって、本開示は、ジストロフィンおよび/もしくはサルコグリカン、またはDAPCの他の構成要素の変異に関連する疾患、特に、筋ジストロフィーを処置するためまたは予防するための方法を提供する。
ジストロフィンの異常は、より軽度のベッカー型筋ジストロフィー(BMD)と重度のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の両方に関与する。BMDでは、ジストロフィンは産生されるが、そのサイズおよび/または量が異常である。患者は、軽度から中程度に脱力している。DMDでは、タンパク質が産生されず、患者は、13歳までに車いす生活となり、通常、20歳までに死亡する。
本明細書中の方法に従って処置され得る別のタイプのジストロフィーとしては、大いに身体機能を麻痺させる臨床的に早発性の筋肉疾患である先天性筋ジストロフィー(CMD)が挙げられ、それは、新生児期の重篤な筋緊張低下の最多原因である。その症状は、出生時にまたは生後1ヶ月目に認められ、運動性の重大時点の遅れ、重篤かつ早期の拘縮および関節変形に関連することが多い筋緊張低下からなる。血清クレアチンキナーゼは、この疾患の初期に正常値の30倍まで上昇し、次いで、急速に減少する。筋生検における組織学的変化は、筋線維のサイズが大きくばらついていること、壊死した線維および再生中の線維がいくつかあること、筋内膜のコラーゲン組織が著しく多いこと、ならびに特異的な超微細構造的特徴がないことからなる。CMDの診断は、臨床像および筋生検の形態学的変化に基づくが、類似の臨床病理学的特徴を有する他の筋障害が存在し得るので、その診断は確実に行うことはできない。CMDと分類される疾患の群の中で、様々な形態が個々に区別されている。より一般的な2つの形態は、西洋型および日本型であり、後者は、重篤な精神障害を伴い、通常、福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)と称される。
先天性筋ジストロフィー(CMD)の1つの形態は、近年、ラミニンアルファ2鎖遺伝子の変異によって引き起こされると特徴付けられた。ラミニンは、DAPCに会合するタンパク質である。したがって、本開示は、通常はDAPCに会合する異常分子に関連する疾患を処置するための方法も提供する。
他の筋ジストロフィーとしては、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)が挙げられ、これは、臨床的および遺伝的に不均一なクラスの障害を示す。これらのジストロフィーは、常染色体優性または劣性の形質として遺伝する。常染色体優性型のLGMD1Aは、5q31−q33にマッピングされたが(Speer,M.C.ら、Am.J.Hum.Genet.50:1211,1992;Yamaoka,L.Y.ら、Neuromusc.Disord.4:471,1994)、常染色体劣性型に関わる6つの遺伝子は、15q15.1(LGMD2A)(Beckmann,J.S.ら、C.R.Acad.Sci.Paris 312:141,1991)、2p16−p13(LGMD2B)(Bashir,R.ら、Hum.Mol.Genet.3:455,1994)、13q12(LGMD2C)(Ben Othmane,K.ら、Nature Genet.2:315,1992;Azibi,K.ら、Hum.Mol.Genet.2:1423,1993)、17q12−q21.33(LGMD2D)(Roberds,S.L.ら、Cell 78:625,1994;McNally,E.M.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.91:9690,1994)、4q12(LG1MD2E)(Lim,L.E.ら、Nat.Genet.11:257,1994;Bonnemann,C.G.ら、Nat.Genet.11:266,1995)、および最も最近では5q33−q34(LGMD2F)(Passos−Bueno,M.R.ら、Hum.Mol.Genet.5:815,1996)にマッピングされた。LGMD2C、2Dおよび2Eを有する患者は、それぞれガンマ−、アルファ−およびベータ−サルコグリカンをコードする遺伝子の変異に起因する、サルコグリカン複合体の構成要素の欠損を有する。LGMD2Aに関与する遺伝子は、筋肉特異的カルパインと同定されているのに対し、LGMD1A、2Bおよび2Fに関与する遺伝子は、なおも不明である。
本明細書中に記載される方法に従って処置され得るさらに他のタイプの筋ジストロフィーとしては、Welander遠位型ミオパチー(WDM)が挙げられ、これは、遠位の筋力低下の緩徐な進行を特徴とする成人後期発症型の常染色体優性ミオパチーである。この障害は、遺伝性遠位型ミオパチーに対するモデル疾患と考えられている。この疾患は、染色体2p13と関係がある。別の筋ジストロフィーは、三好ミオパチー(Miyoshi myopathya)であり、これは、最近クローニングされた遺伝子であるジスフェリン(dysferlin)、遺伝子シンボルDYSFの変異によって引き起こされる遠位型筋ジストロフィーである(Weilerら(1999)Hum Mol Genet 8:871−7)。さらに他のジストロフィーとしては、遺伝性遠位型ミオパチー、良性先天性筋緊張低下症、セントラルコア病、ネマリンミオパチーおよび筋細管(中心核)ミオパチーが挙げられる。
本明細書中に記載される方法に従って処置され得るかまたは予防され得る他の疾患には、組織の萎縮、例えば、筋ジストロフィーに起因する筋萎縮以外の筋萎縮を特徴とする疾患が含まれるが、ただし、その萎縮は、バイグリカン関連治療薬で処置されると停止するか、または減速する。さらに、本開示は、組織の萎縮、例えば、筋萎縮を逆転させるための方法も提供する。これは、例えば、萎縮した組織にバイグリカン関連治療薬を提供することによって、達成され得る。
筋萎縮は、神経の外傷に起因する脱神経(筋肉によるその神経との接触が喪失すること);変性、代謝性もしくは炎症性のニューロパチー(例えば、ギランバレー(GuillianBarre)症候群)、末梢神経障害、または環境トキシンもしくは薬物によって引き起こされる神経への損傷に起因し得る。別の実施形態において、筋萎縮は、運動神経細胞障害が原因の脱神経に起因する。そのような運動神経細胞障害としては:成人型運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリッグ病)を含む);乳児性および若年性の脊髄性筋萎縮症、ならびに多巣性伝導ブロックを伴う自己免疫性運動ニューロパチーが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、筋萎縮は、慢性的な不使用に起因する。そのような非活動性萎縮は、脳卒中、脊髄損傷に起因する麻痺;外傷(例えば、骨折、捻挫または脱臼)に起因する骨格の固定、または長期の床上安静を含むがこれらに限定されない状態が原因であり得る。さらに別の実施形態では、筋萎縮は、代謝的ストレスまたは栄養不足(それらとしては、癌の悪液質および他の慢性疾病、飢餓または横紋筋融解症、内分泌の障害(例えば、甲状腺の障害および糖尿病であるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない)に起因する。
筋組織の萎縮およびネクローシスは、その罹患組織の線維症を伴うことが多いので、萎縮またはネクローシスの逆転または阻害は、線維症の阻害または逆転ももたらし得る。
さらに、バイグリカン関連治療薬は、後天性(中毒性または炎症性)のミオパチーの処置において有用であり得る。筋肉の炎症性疾患の結果として生じるミオパチーとしては、多発性筋炎および皮膚筋炎が挙げられるがこれらに限定されない。中毒性ミオパチーは、アミオダロン(adiodarone)、クロロキン、クロフィブラート、コルヒチン、ドキソルビシン、エタノール、ヒドロキシクロロキン、有機リン酸類、ペルヘキシリン(perihexiline)およびビンクリスチンを含むがこれらに限定されない物質に起因し得る。
神経筋ジストロフィーには、筋緊張性ジストロフィーが含まれる。筋緊張性ジストロフィー(DM;またはシュタイネルト病)は、成体が発症する筋ジストロフィーの最も一般的な形態である常染色体優性の神経筋の疾患である。DMの臨床像は、十分に確立されているが、ことのほか様々である(Harper,P.S.,Myotonic Dystrophy,2nd ed.,W.B.Saunders Co.,London,1989)。DMは、進行性の脱力およびるいそうである、ミオトニーを含む筋肉の疾患と一般に考えられるが、他の種々の系における異常を特徴とする。DM患者は、心伝導障害、平滑筋の関与、睡眠過剰、白内障、異常なグルコース応答、ならびに男性において、成熟前の脱毛および精巣萎縮に苦しむことが多い(Harper,P.S.,Myotonic Dystrophy,2nd ed.,W.B.Saunders Co.,London,1989)。時折、診断しにくい最も軽度の形態は、中年または老年に見られ、筋肉の関与がほとんどないかまたはまったくない白内障を特徴とする。ミオトニーおよび筋力低下を示す従来の形態は、成年期の初期および青年期に発生することが最も多い。先天的に生じる最も重篤な形態は、全身性の筋肉の発育不全、精神遅滞および高い新生児期の死亡率に関連する。この疾患および影響する遺伝子は、さらに米国特許第5,955,265号に記載されている。
別の神経筋の疾患は、脊髄性筋萎縮症(「SMA」)であり、これは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに続いて、小児において2番目に最も一般的な神経筋の疾患である。SMAとは、主に乳児および低年齢の小児が罹患する消耗性の神経筋障害のことを指す。この障害は、脊髄の前角細胞としても知られる下位運動ニューロンの変性によって引き起こされる。正常な下位運動ニューロンは、収縮するように筋肉を刺激する。神経変性は、刺激を減少させ、筋組織を萎縮させる(例えば、米国特許第5,882,868号を参照のこと)。
上に記載された筋ジストロフィーおよびミオパチーは、骨格筋障害である。しかしながら、本開示は、平滑筋の障害、例えば、肥大型心筋症、拡張型心筋症および拘束型心筋症をはじめとした心筋障害にも関係する。少なくともある特定の平滑筋、例えば、心筋には、サルコグリカンが豊富に存在する。サルコグリカンの変異は、心筋レベルにおいて筋細胞膜の不安定性をもたらし得る(例えば、Melacini(1999)Muscle Nerve 22:473を参照のこと)。例えば、サルコグリカンが変異した動物モデルは、心臓クレアチンキナーゼの増加を示す。特に、デルタ−サルコグリカン(Sgcd)ヌルマウスが、心筋および骨格筋における組織学的特徴としてネクローシスの病巣領域を伴う心筋症を発症することが示されている。その動物は、骨格および心臓の膜にサルコグリカン−サルコスパン(SG−SSPN)複合体が存在しないことも示した。血管平滑筋SG−SSPN複合体の喪失は、冠状動脈の血管系の不規則さに関連した。したがって、血管平滑筋におけるSG−SSPN複合体の破壊によって、血管機能が乱され、それにより、心筋症が惹起され、筋ジストロフィーが悪化する(Coral−Vazquezら(1999)Cell 98:465)。
デルタ−サルコグリカン陰性マウスと同様に、γ−サルコグリカンを欠くマウスは、生涯の早期において明白なジストロフィーの筋肉変化を示した(Hackら(1998)J
Cell Biol 142:1279)。これらのマウスは、20週齢までに、心筋症を発症し、未熟にも死亡した。さらに、γ−サルコグリカンを欠く骨格筋にアポトーシス筋核が豊富に存在することから、プログラム細胞死が筋線維の変性に関与することが示唆される。エバンスブルー色素による生体染色から、γ−サルコグリカンを欠く筋肉が、ジストロフィン欠損の筋肉に見られるような膜の破壊をもたらすことが明らかになった。γ−サルコグリカンの喪失は、α−およびイプシロン−サルコグリカンが部分的に保持されつつ、ベータ−およびデルタ−サルコグリカンの二次的な減少をもたらすことも示されたことから、ベータ−、γ−およびデルタ−サルコグリカンが1単位として機能することが示唆される。その細胞膜複合体の他の構成要素が機能的であるので、その複合体は、バイグリカン関連治療薬の存在によって安定化され得る。
Cell Biol 142:1279)。これらのマウスは、20週齢までに、心筋症を発症し、未熟にも死亡した。さらに、γ−サルコグリカンを欠く骨格筋にアポトーシス筋核が豊富に存在することから、プログラム細胞死が筋線維の変性に関与することが示唆される。エバンスブルー色素による生体染色から、γ−サルコグリカンを欠く筋肉が、ジストロフィン欠損の筋肉に見られるような膜の破壊をもたらすことが明らかになった。γ−サルコグリカンの喪失は、α−およびイプシロン−サルコグリカンが部分的に保持されつつ、ベータ−およびデルタ−サルコグリカンの二次的な減少をもたらすことも示されたことから、ベータ−、γ−およびデルタ−サルコグリカンが1単位として機能することが示唆される。その細胞膜複合体の他の構成要素が機能的であるので、その複合体は、バイグリカン関連治療薬の存在によって安定化され得る。
動物モデルに加えて、ヒトにおけるある特定の心筋症は、ジストロフィン、ジストログリカンまたはサルコグリカンの変異に関係している。例えば、ジストロフィンは、X連鎖性拡張型心筋症に関与する遺伝子であると同定された(Towbin J.A.(1998)Curr Opin Cell Biol 10:131およびその中の参考文献)。この場合、ジストロフィン遺伝子は、臨床的に明らかな骨格筋ミオパチーなしに心筋症をもたらす5’−変異を含んだ(Biesら(1997)J Mol Cell Cardiol 29:3175)。
さらに、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(変異したジストロフィンに関連する)、または肢帯型筋ジストロフィーなどの他のタイプの筋ジストロフィーを有する被験体にも、心筋症が見られた。例えば、常染色体優性の1例および進行型の常染色体劣性または孤発性の3人の患者(そのうち2人は、アルファサルコグリカン欠損を有することが見出された)において、拡張型心筋症が存在した。これらの3人の患者のうちの2人および他の3例は、ジストロフィン異常症に特徴的であると知られているECGの異常を示した。アルファサルコグリカンが存在しないことと拡張型心筋症が存在することとの間には強い関連が見られた。常染色体優性の6例では、年齢に伴って重症度が増し、同時に筋力低下が存在する、房室(AV)伝導の妨害が存在した。これらのある特定の患者では、ペースメーカーの埋め込みが必要だった(van der Kooi(1998)Heart 79:73を参照のこと)。
バイグリカン関連治療薬は、心筋症、例えば、ウイルス起源の拡張型心筋症、例えば、エンテロウイルス感染、例えば、コクサッキーウイルスB3に起因する心筋症を処置するためまたは予防するためにも使用され得る。精製されたコクサッキーウイルスプロテアーゼ2Aが、インビトロにおいて、および培養された筋細胞のコクサッキーウイルス感染中、および感染したマウス心臓において、ジストロフィンを切断し、それにより、ジストロフィンの機能が損なわれると示されている(Badorffら(1999)Nat Med 5:320。ジストロフィンの切断は、ジストロフィン会合糖タンパク質α−サルコグリカンおよびβ−ジストログリカンを破壊する。したがって、心筋症は、例えば、ジストロフィンまたはそれに会合するタンパク質を破壊する心筋症を引き起こすウイルスに感染した被験体にバイグリカン関連治療薬を投与することによって、予防され得るかまたは逆転され得る。その治療薬を投与することにより、罹患した心臓細胞の細胞膜が再安定化され得るか、または再組織化され得る。
したがって、バイグリカン関連治療薬は、心筋症などの平滑筋の障害を予防するためまたは処置するため、ならびに心臓の平滑筋組織の萎縮および/またはネクローシスを停止するためにも使用され得る。その処置は、筋細胞の生存を促進するためにも使用され得る。
本明細書中に記載される方法に従って処置され得る神経障害には、多発性筋炎および神経原性障害が含まれる。処置され得る別の神経性疾患は、アルツハイマー病である。
本明細書中の方法に従って処置され得る他の疾患には、正常な被験体と比べてプロテオグリカンが異常なレベルで存在するかまたは異常な活性を有する疾患が含まれる。例えば、疾患または障害は、低レベルのバイグリカンによって引き起こされ得、例えば、不安定な細胞膜がもたらされる。あるいは、疾患または障害は、例えば、MuSKの過剰刺激またはAChRの過剰集合をもたらす、異常に高いレベルまたは活性のバイグリカンに起因し得る(下記を参照のこと)。
本明細書中の方法を用いて処置され得るさらに他の疾患または障害には、プロテオグリカンと別の分子(DAPCまたはMuSKの分子以外)、例えば、C1qなどの補体因子との間の異常な相互作用に関連するものが含まれる。例えば、C1qは、バイグリカンと相互作用すると示されている(Hockingら(1996)J.Biol.Chem.271:19571)。細胞表面にC1qが結合することにより、いくつかの生物学的活性(ファゴサイトーシスの増大およびスーパーオキシド産生の刺激を含む)が媒介されることも知られている。したがって、バイグリカンがC1qに結合するので、バイグリカン関連治療薬は、C1qと細胞表面上のそのレセプターとの結合を阻害することによりそのような生物学的活性の1つ以上を阻害するために使用され得る。さらに、C1qまたは他の補体成分と細胞表面との相互作用を阻害するバイグリカン関連治療薬もまた、その細胞およびそのような細胞を含む組織の補体媒介性のネクローシスを阻害するために使用され得る。
さらに、本願は、微生物、例えば、ウイルスによる細胞の感染を予防するためまたは阻害するための方法を提供する。例えば、ジストログリカンが、ある特定の微生物が真核細胞に進入するレセプターであることが示されている(Science(1998)282:2079)。したがって、微生物が結合するジストログリカン分子上の部位を直接または間接的に利用可能でなくす化合物を被験体に投与することによって、その細胞への微生物の進入が阻害され得る。この方法は、例えば、ラッサ熱ウイルスおよびリンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の感染、ならびに他のアレナウイルス(OliverosおよびMobalaを含む)による感染を予防するためまたは阻害するために、使用され得る。可溶性α−ジストログリカンは、LCMV感染とLFV感染の両方を阻止すると示された(Science(1998)282:2079)。
疾患を処置するために最も適切なバイグリカン関連治療薬を選択するために、例えば、筋ジストロフィーを有する患者から確立された細胞培養物に加えて、様々な動物モデルが使用され得る。特に、DAPC構成要素が変異していることもしくは存在しないことに関連する筋ジストロフィーもしくは心筋症(cardiomyophaty)を予防する際または処置する際に使用するための治療薬を同定するために、これらのタンパク質の変異バージョンを有するか、もしくはこれらのタンパク質をコードする遺伝子のヌル変異を有するマウスが使用され得る。例えば、デルタ−サルコグリカンなどの破壊されたサルコグリカンを有するマウスが使用され得る。そのようなマウスは、例えば、Coral−Vazquezら(1999)Cell 98:465に記載されている。あるいは、ジストロフィンが欠損したマウス(mdxマウス)またはα−もしくはγ−サルコグリカンが欠損したマウスが使用され得る。そのようなマウスは、本明細書および文献に記載されている。さらなるマウスは、当該分野において公知の方法に従って作出され得る。治療薬を同定する例証的な実施形態において、種々の治療薬が、デルタ−サルコグリカンヌルマウスに投与され、心機能を調べることによってその治療薬の効果が評価される。この目的のために使用され得る別の動物モデルは、ゲノムの欠失に起因してデルタ−サルコグリカンを発現しない心筋症のハムスターである。このラットは、常染色体劣性の心筋症に対する動物モデルであり、Sakamotoら、FEBS Lett 1999(1999)44:124にさらに記載されている。
バイグリカン治療薬は、米国特許出願2005−0043221で考察されているようにVI型コラーゲン障害を処置するためにも使用され得る。出願2005−0043221では、免疫蛍光法によって測定したとき、バイグリカンヌルマウスがVI型コラーゲンレベルの著しい低下を示すことが示された。実施例2に示されるように、VI型コラーゲン欠損を有するマウスにバイグリカンを投与することによって、筋肉において高レベルのVI型コラーゲンがもたらされた。それゆえ、本明細書中に記載されるバイグリカンは、VI型コラーゲンレベルを上昇させるためにも使用され、それにより、VI型コラーゲン障害が処置され得る。
一般に、VI型コラーゲン障害は、被験体がゼロでない低いレベルまたは活性のVI型コラーゲンを産生する障害である。いくつかの実施形態において、その障害は、VI型コラーゲン活性を減少させるが完全に無くすわけではない変異を特徴とする。いくつかの実施形態において、その障害は、VI型コラーゲンの安定性の低下を特徴とする。ある特定の実施形態において、その障害は、ゼロでない低いレベルのVI型コラーゲンタンパク質を特徴とする。例えば、ヘテロ変異(例えば、ハプロ不全)によって、低レベルのVI型コラーゲンがもたらされ得る。バイグリカン治療薬の投与は、VI型コラーゲンのレベルを増加させ、それにより、VI型コラーゲン障害を処置すると予想される。
したがって、本明細書中に開示される方法に従って処置され得る特定のVI型コラーゲン障害としては、以下が挙げられる。ベスレム型ミオパチーは、少なくとも部分的に、VI型コラーゲン遺伝子の変異によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、ベスレム型ミオパチーは、ハプロ不全によって引き起こされる(Pepe Gら、“COL6A1 genomic deletions in Bethlem myopathy and Ullrich muscular dystrophy.”Ann Neurol.2006 Jan;59(1):190−5;Bakerら、“Molecular consequences of dominant Bethlem myopathy collagen VI mutations”Ann Neurol.2007 Oct;62(4):390−405)。VI型コラーゲンの機能は、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーおよびソースビー眼底変性症においても損なわれる。ベスレム型ミオパチーと同様に、UCMD患者は、VI型コラーゲンの野生型のコピーを有し得る(Jimenez−Mallebreraら、“A comparative analysis of collagen VI production in muscle,skin and fibroblasts from 14 Ullrich congenital muscular dystrophy patients with dominant and recessive COL6A mutations”Neuromuscul Disord.2006 Oct;16(9−10):571−82)。ある特定の実施形態において、VI型コラーゲン関連障害は、本明細書中に記載されるようなバイグリカン治療薬を投与することによって処置され得る。
V.治療用組成物の有効量および投与
上に記載された疾患または障害は、薬学的に有効な量のバイグリカン(bigylcan)関連治療薬を被験体に投与することによって、その被験体において処置され得るかまたは回復し得る。その疾患が、より高いレベルもしくは活性のバイグリカンによって引き起こされるのか、またはより低いレベルもしくは活性のバイグリカンによって引き起こされるのかに応じて、アゴニストまたはアンタゴニストのバイグリカン関連治療薬が、その疾患を有する被験体に投与される。当業者は、どの治療薬が本明細書中の疾患のいずれかを処置するために投与されるべきかを予測することができるが、投与されるのに適切な治療薬を判断するために試験が行われ得る。そのような試験は、例えば、その疾患の動物モデルを使用し得る。あるいは、疾患が、例えばバイグリカンの変異に起因する場合、その変異の影響を測定するためにインビトロ試験が開始され得る。これにより、どのタイプの治療薬が、このタイプの変異を有する被験体に投与されるべきかの判断が可能になり得る。
上に記載された疾患または障害は、薬学的に有効な量のバイグリカン(bigylcan)関連治療薬を被験体に投与することによって、その被験体において処置され得るかまたは回復し得る。その疾患が、より高いレベルもしくは活性のバイグリカンによって引き起こされるのか、またはより低いレベルもしくは活性のバイグリカンによって引き起こされるのかに応じて、アゴニストまたはアンタゴニストのバイグリカン関連治療薬が、その疾患を有する被験体に投与される。当業者は、どの治療薬が本明細書中の疾患のいずれかを処置するために投与されるべきかを予測することができるが、投与されるのに適切な治療薬を判断するために試験が行われ得る。そのような試験は、例えば、その疾患の動物モデルを使用し得る。あるいは、疾患が、例えばバイグリカンの変異に起因する場合、その変異の影響を測定するためにインビトロ試験が開始され得る。これにより、どのタイプの治療薬が、このタイプの変異を有する被験体に投与されるべきかの判断が可能になり得る。
バイグリカン関連治療薬を被験体に投与する別の様式は、目的のバイグリカン関連治療用タンパク質を発現して分泌する細胞を調製し、その細胞をマトリックスに挿入し、このマトリックスを被験体の所望の位置に投与することによるものである。したがって、本開示に従って操作された細胞は、例えば、従来の生体適合性の材料および方法を用いて被包され得、その後、治療用タンパク質を産生させるためにその宿主生物または患者に埋め込まれ得る。例えば、Hguyenら、Tissue Implant Systems and Methods for Sustaining viable High Cell Densities within a Host、米国特許第5,314,471号(Baxter International,Inc.);Uludag and Sefton,1993,J Biomed.Mater.Res.27(10):1213−24(HepG2細胞/ヒドロキシエチルメタアクリレート−メチルメタアクリレート膜);Changら、1993,Hum Gene Ther 4(4):433−40(hGHを発現するマウスLtk−細胞/免疫保護性かつ選択透過性のアルギネートマイクロカプセル;Reddyら、1993,J Infect Dis 168(4):1082−3(アルギネート);Tai and Sun,1993,FASEB
J 7(11):1061−9(hGHを発現するマウス線維芽細胞/アルギネート−ポリ−L−リジン−アルギネート膜);Aoら、1995,Transplanataion Proc.27(6):3349,3350(アルギネート);Rajotteら、1995,Transplantation Proc.27(6):3389(アルギネート);Lakeyら、1995,Transplantation Proc.27(6):3266(アルギネート);Korbuttら、1995,Transplantation Proc.27(6):3212(アルギネート);Dorianら、米国特許第5,429,821号(アルギネート);Emerichら、1993,Exp Neurol 122(1):37−47(ポリマーで被包されたPC12細胞);Sagenら、1993,J Neurosci 13(6):2415−23(半透性ポリマー膜に被包され、ラット脊髄のくも膜下の空間に埋め込まれたウシクロム親和性細胞);Aebischerら、1994,Exp Neurol 126(2):151−8(ポリマーに被包され、サルに埋め込まれたラットPC12細胞;Aebischer、WO92/19595も参照のこと);Savelkoulら、1994,J Immunol Methods 170(2):185−96(抗体を産生する被包されたハイブリドーマ;様々なサイトカインを発現する被包され、トランスフェクトされた細胞株);Winnら、1994,PNAS USA 91(6):2324−8(免疫隔離重合体デバイスに被包され、ラットに移植された、ヒト神経成長因子を発現する操作されたBHK細胞);Emerichら、1994,Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 18(5):935−46(ラットに埋め込まれた、ポリマーに被包されたPC12細胞);Kordowerら、1994,PNAS USA 91(23):10898−902(サルに埋め込まれた、ポリマーに被包され操作されたhNGF発現BHK細胞)およびButlerら、WO95/04521(被包されたデバイス)を参照のこと。次いで、その細胞は、それを必要とする動物宿主、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト被験体に、被包された形態で導入され得る。好ましくは、被包材料は、半透性であり、それにより、被包された細胞によって産生され分泌されたタンパク質の宿主への放出が可能になる。多くの実施形態において、半透性の被包のおかげで、被包された細胞を導入された宿主生物と被包された細胞とが免疫学的に隔離される。それらの実施形態において、被包される細胞は、宿主種の1つ以上の治療用タンパク質および/またはウイルスタンパク質もしくは宿主種以外の種由来のタンパク質を発現し得る。
J 7(11):1061−9(hGHを発現するマウス線維芽細胞/アルギネート−ポリ−L−リジン−アルギネート膜);Aoら、1995,Transplanataion Proc.27(6):3349,3350(アルギネート);Rajotteら、1995,Transplantation Proc.27(6):3389(アルギネート);Lakeyら、1995,Transplantation Proc.27(6):3266(アルギネート);Korbuttら、1995,Transplantation Proc.27(6):3212(アルギネート);Dorianら、米国特許第5,429,821号(アルギネート);Emerichら、1993,Exp Neurol 122(1):37−47(ポリマーで被包されたPC12細胞);Sagenら、1993,J Neurosci 13(6):2415−23(半透性ポリマー膜に被包され、ラット脊髄のくも膜下の空間に埋め込まれたウシクロム親和性細胞);Aebischerら、1994,Exp Neurol 126(2):151−8(ポリマーに被包され、サルに埋め込まれたラットPC12細胞;Aebischer、WO92/19595も参照のこと);Savelkoulら、1994,J Immunol Methods 170(2):185−96(抗体を産生する被包されたハイブリドーマ;様々なサイトカインを発現する被包され、トランスフェクトされた細胞株);Winnら、1994,PNAS USA 91(6):2324−8(免疫隔離重合体デバイスに被包され、ラットに移植された、ヒト神経成長因子を発現する操作されたBHK細胞);Emerichら、1994,Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 18(5):935−46(ラットに埋め込まれた、ポリマーに被包されたPC12細胞);Kordowerら、1994,PNAS USA 91(23):10898−902(サルに埋め込まれた、ポリマーに被包され操作されたhNGF発現BHK細胞)およびButlerら、WO95/04521(被包されたデバイス)を参照のこと。次いで、その細胞は、それを必要とする動物宿主、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト被験体に、被包された形態で導入され得る。好ましくは、被包材料は、半透性であり、それにより、被包された細胞によって産生され分泌されたタンパク質の宿主への放出が可能になる。多くの実施形態において、半透性の被包のおかげで、被包された細胞を導入された宿主生物と被包された細胞とが免疫学的に隔離される。それらの実施形態において、被包される細胞は、宿主種の1つ以上の治療用タンパク質および/またはウイルスタンパク質もしくは宿主種以外の種由来のタンパク質を発現し得る。
あるいは、バイグリカン関連治療薬は、バイグリカン関連治療用タンパク質をコードする核酸である。したがって、それを必要とする被験体は、特定の組織、例えば、ジストロフィーの組織に特異的に標的化され得る、目的のタンパク質をコードするある用量のウイルスベクターを投与され得る。そのベクターは、裸の形態で投与され得るか、またはウイルス粒子として投与され得る(本明細書中にさらに記載される)。この目的のために、インビボにおいて標的組織および標的細胞を改変するための様々な手法が開発された。上に記載されたようないくつかのウイルスベクターが開発され、そのベクターは、トランスフェクションを可能にし、場合によっては宿主にそのウイルスを組み込むことを可能にする。例えば、Dubenskyら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,7529−7533;Kanedaら(1989)Science 243,375−378;Hiebertら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,3594−3598;Hatzogluら(1990)J.Biol.Chem.265,17285−17293およびFerryら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,8377−8381を参照のこと。そのベクターは、例えば、血管内もしくは筋肉内への注射、吸入または他の非経口様式で投与され得る。リポソームとの複合体を介した、または注射、カテーテルもしくは微粒子銃による、DNAの投与などのウイルスによらない送達方法も使用され得る。
さらに別の実施形態では、細胞が被験体から得られ、エキソビボで改変され、同じまたは異なる被験体に導入される。治療用化合物のさらなる投与方法は、下記に示される。
A.毒性
バイグリカン関連治療薬の毒性および治療効果は、例えば、LD50(モデル生物の集団の50%にとって致死性の用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を測定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって測定され得る。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表現され得る。高い治療指標を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物は使用してもよいが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限にするために、そのような化合物を罹患組織の部位に標的化する送達系を設計するように注意を払うべきであり、それによって副作用が減少する。
バイグリカン関連治療薬の毒性および治療効果は、例えば、LD50(モデル生物の集団の50%にとって致死性の用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を測定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって測定され得る。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、それは、LD50/ED50比として表現され得る。高い治療指標を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物は使用してもよいが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限にするために、そのような化合物を罹患組織の部位に標的化する送達系を設計するように注意を払うべきであり、それによって副作用が減少する。
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するためのある範囲の投与量を製剤化する際に使用され得る。特に、AChRの集合を増強するために治療薬が投与される場合、所望であれば刺激をもたらし得るかまたは所望であれば阻害をもたらし得る用量を確立することが望ましい。次いで、医学的検査において試験が継続され得る。そのような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたはまったく毒性でない、ED50を含む循環濃度の範囲内におかれる。その投与量は、使用される剤形および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。本明細書中の方法において使用される任意の化合物について、治療的に有効な用量は、最初は細胞培養アッセイから推定され得る。細胞培養物において測定されたIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する被験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成する用量が、動物モデルにおいて製剤化され得る。そのような情報を用いることにより、ヒトにおける有用な用量を正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
B.薬学的組成物
本開示に従って使用するための薬学的組成物は、1つ以上の生理的に許容され得るキャリアまたは賦形剤を用いて、従来の様式で製剤化され得る。したがって、治療薬ならびにそれらの生理的に許容され得る塩および溶媒和化合物は、例えば、注射、吸入もしくはガス注入(口または鼻のいずれかを介したもの)、または経口、頬側、非経口もしくは直腸投与による投与のために製剤化され得る。
本開示に従って使用するための薬学的組成物は、1つ以上の生理的に許容され得るキャリアまたは賦形剤を用いて、従来の様式で製剤化され得る。したがって、治療薬ならびにそれらの生理的に許容され得る塩および溶媒和化合物は、例えば、注射、吸入もしくはガス注入(口または鼻のいずれかを介したもの)、または経口、頬側、非経口もしくは直腸投与による投与のために製剤化され得る。
そのような治療の場合、バイグリカン関連治療薬は、様々な種類の投与(全身性および局所的または局在的な投与を含む)のために製剤化され得る。手法および製法は、Remmington’s Pharmaceutical Sciences,Meade Publishing Co.,Easton,PAに広く見られ得る。全身投与の場合、筋肉内、静脈内、腹腔内および皮下を含む注射が用いられ得る。注射の場合、バイグリカン関連治療薬は、液体の溶液において、例えば、ハンクス液またはリンガー液などの生理的に適合性の緩衝液において製剤化され得る。さらに、その化合物は、固体の形態で製剤化され得、使用の直前に再溶解され得るかまたは懸濁され得る。凍結乾燥された形態もまた含まれる。
経口投与の場合、薬学的組成物は、例えば、薬学的に許容され得る賦形剤(例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム))を用いた従来の手段によって調製される錠剤またはカプセルの形態をとり得る。錠剤は、コーティングされてもよい。錠剤をコーティングする方法は、当該分野で周知である。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁液の形態をとり得るか、または使用前に水もしくは他の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供され得る。そのような液体調製物は、薬学的に許容され得る添加物(例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または食用の硬化脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アチオンドオイル(ationd oil)、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油);および保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸))を用いて従来の手段によって調製され得る。その調製物は、必要に応じて、緩衝剤の塩、香味剤、着色剤および甘味剤も含んでよい。
経口投与用の調製物は、活性な化合物の制御放出をもたらすように適切に製剤化され得る。頬側投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化される錠剤または舐剤の形態をとり得る。吸入による投与の場合、バイグリカン関連治療薬は、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、加圧されたパックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーで提供される形態として都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量の単位は、定量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。例えば、化合物と好適な粉末の基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)との粉末混合物を含む、吸入器または注入器において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジが、製剤化され得る。
化合物は、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与のために製剤化され得る。注射用の製剤は、単位剤形、例えば、アンプル、または保存剤が加えられた複数回用量の入った容器として、提供され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、製剤化剤(formulatory agents)(例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤)を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質非含有水で構成するための粉末の形態で存在し得る。
化合物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤の基剤を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸用の組成物としても製剤化され得る。
先に記載された製剤に加えて、化合物は、デポー調製物としても製剤化され得る。そのような長時間作用性の製剤は、埋め込み(例えば、皮下にまたは筋肉内)または筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、化合物は、好適な重合体もしくは疎水性の材料(例えば、許容され得る油におけるエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性の誘導体、例えば、難溶性の塩として、製剤化され得る。
全身投与は、経粘膜的または経皮的な手段による投与でもあり得る。経粘膜的投与または経皮的投与の場合、透過される障壁に対して適切な浸透剤が、その製剤において使用される。そのような浸透剤は、当該分野で広く公知であり、それらとしては、例えば、経粘膜的投与の場合、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、浸透を促進するために界面活性剤を使用してもよい。経粘膜的投与は、点鼻薬を介する投与または坐剤を用いた投与であり得る。局所的投与の場合、バイグリカン関連治療薬は、当該分野で広く公知であるように軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームに製剤化される。洗浄溶液は、損傷または炎症を処置して治癒を加速させるために局所的に使用され得る。
臨床の状況では、本明細書中に記載されるようなプロテオグリカンをコードする治療的遺伝子に対する遺伝子送達系が、いくつかの方法のいずれか(その各々が、当該分野においてよく知られたものである)によって患者に導入され得る。例えば、遺伝子送達系の薬学的調製物は、全身性に、例えば、静脈内注射によって導入され得、標的細胞におけるタンパク質の特異的な形質導入は、遺伝子送達ビヒクルによって提供されるトランスフェクションの特異性、レセプター遺伝子の発現を制御する転写制御配列に起因する細胞型もしくは組織型の発現、またはその組み合わせによって主に生じる。他の実施形態において、組換え遺伝子の最初の送達は、動物へのかなり局在化された導入に限定される。例えば、遺伝子送達ビヒクルは、カテーテル(米国特許第5,328,470号を参照のこと)または定位注射(例えば、Chenら(1994)PNAS 91:3054−3057)によって導入され得る。バイグリカン会合タンパク質をコードする遺伝子は、例えば、Devら((1994)Cancer Treat Rev 20:105−115)に記載されている手法を用いて、エレクトロポレーションによる遺伝子治療用構築物として送達され得る。
筋細胞にDNAを送達する様式としては、米国特許第5,858,351号に記載されているような組換えアデノ随伴ウイルスベクターを用いる様式が挙げられる。あるいは、遺伝子は、Wolffら(1990)Science 247:1465−1468;Acsadiら(1991)Nature 352:815−818;Barr and Leiden(1991)Science 254:1507−1509に記載されているように、プラスミドDNAの直接的な注射によって筋肉に送達された。しかしながら、この投与様式は、通常、持続したレベルであるが一般に低レベルの発現をもたらす。低いが持続した発現レベルは、本明細書中の方法を実施するために効果的であると予想される。
遺伝子治療用の構築物またはポリペプチドの薬学的調製物は、本質的に、許容され得る希釈剤中の遺伝子送達系もしくはポリペプチドからなり得るか、または遺伝子送達ビヒクルもしくは化合物が埋め込まれる緩効性マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達系が、組換え細胞から、例えば、レトロウイルスベクターからインタクトに産生され得る場合、その薬学的調製物は、その遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
組成物は、所望であれば、活性成分を含む1つ以上の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサーデバイスとして提供され得る。そのパックは、例えば、ブリスター包装などの金属またはプラスチックの箔を含み得る。そのパックまたはディスペンサーデバイスは、投与の指示書を伴い得る。
VI.バイグリカン関連治療薬の追加の例示的な用途
バイグリカン関連治療薬は、細胞培養物または組織培養物(例えば、臓器を生育するための系)への補充物としても使用され得る。任意の細胞型が、これらの補充物から恩恵を受け得る。その培養物に加えられる化合物の量は、小規模の実験において、例えば、特定のバイグリカン関連治療薬の量を増加させながらそれと細胞または臓器をインキュベートすることによって、決定され得る。好ましい細胞としては、真核細胞、例えば、筋細胞または神経細胞が挙げられる。
バイグリカン関連治療薬は、細胞培養物または組織培養物(例えば、臓器を生育するための系)への補充物としても使用され得る。任意の細胞型が、これらの補充物から恩恵を受け得る。その培養物に加えられる化合物の量は、小規模の実験において、例えば、特定のバイグリカン関連治療薬の量を増加させながらそれと細胞または臓器をインキュベートすることによって、決定され得る。好ましい細胞としては、真核細胞、例えば、筋細胞または神経細胞が挙げられる。
他の好ましい組織としては、萎縮した組織が挙げられる。したがって、そのような組織は、組織の萎縮を逆転させるのに有効な量のバイグリカン関連治療薬とともにインビトロでインキュベートされ得る。1つの実施形態において、萎縮した組織を、被験体から得て、その組織を、その組織の萎縮を逆転させるのに十分な量および時間においてバイグリカン関連治療薬とともにエキソビボで培養し、次いで、その組織を同じまたは異なる被験体に再投与し得る。
あるいは、バイグリカン関連治療薬は、筋ジストロフィー、またはバイグリカン関連治療薬で処置され得る他の疾患を有する被験体から得られた細胞または組織のインビトロ培養物に加えられることにより、それらの成長または生存がインビトロにおいて改善され得る。筋ジストロフィーまたは他の疾患を有する被験体由来の脳細胞または筋細胞などの細胞を維持する能力は、例えば、その疾患を処置するための治療薬を開発するために有用である。
VII.タンパク質結合アッセイ
いくつかの実施形態において、本開示は、バイグリカンとMusKとの結合を検出する方法を提供する。そのようなアッセイの1つが、下記の実施例5に記載される。そのバイグリカンは、溶液中に存在し得るか、またはマルチウェルプレートもしくはカラムなどの固体支持体に貼り付けられ得る。いくつかの実施形態において、ペプチドの結合は、ELISA、免疫共沈降、ゲルシフトまたは質量分析によって測定される。いくつかの実施形態において、その方法は、ポジティブコントロールサンプルのそれへの結合と比較する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、ペプチドの結合は、バイグリカンペプチドが活性であることを示唆する。
いくつかの実施形態において、本開示は、バイグリカンとMusKとの結合を検出する方法を提供する。そのようなアッセイの1つが、下記の実施例5に記載される。そのバイグリカンは、溶液中に存在し得るか、またはマルチウェルプレートもしくはカラムなどの固体支持体に貼り付けられ得る。いくつかの実施形態において、ペプチドの結合は、ELISA、免疫共沈降、ゲルシフトまたは質量分析によって測定される。いくつかの実施形態において、その方法は、ポジティブコントロールサンプルのそれへの結合と比較する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、ペプチドの結合は、バイグリカンペプチドが活性であることを示唆する。
上記バイグリカンは、ヒトまたはマウスの内在性のバイグリカン配列などの野生型であり得る。いくつかの実施形態において、バイグリカンペプチドは、野生型ヒトバイグリカン配列(配列番号9)と比べて変異を保有する。いくつかの実施形態において、バイグリカンペプチドは、配列番号11である。
MuSK外部ドメインのポリペプチドは、MuSK外部ドメインまたはその一部、および必要に応じて他のMuSK配列または外来性配列を含むが、完全長MuSKを含まない。いくつかの実施形態において、MuSK外部ドメインのペプチドは、Fcドメインを含む。
いくつかの態様において、本願は、MuSKとバイグリカンとの相互作用を調節する物質を同定するための方法を提供し、その方法は、MuSK外部ドメインまたはバイグリカンへの結合に十分なその一部を含むMuSKタンパク質および被験化合物とバイグリカンを、その被験化合物の非存在下でバイグリカンとMuSKタンパク質とが相互作用する条件において接触させる工程を包含し、ここで、被験化合物が存在しない場合と比較したときに、被験化合物の存在下におけるバイグリカンとMuSKタンパク質との結合のレベルが異なることは、その被験化合物が、バイグリカンとMuSKとの相互作用を調節する物質であることを示唆する。
VIII.実施例
本発明は、限定として決して解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに例証される。本願全体を通じて引用されるすべての引用文献(参照文献、発行特許、公開特許出願を含む)の内容は、明確に本明細書によって参考として援用される。
本発明は、限定として決して解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに例証される。本願全体を通じて引用されるすべての引用文献(参照文献、発行特許、公開特許出願を含む)の内容は、明確に本明細書によって参考として援用される。
本発明の実施は、別段示されない限り、当該分野の技術範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の手法を使用し得る。そのような手法は、文献に十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA
Cloning,Volume IおよびII(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic
Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical
Guide To Molecular Cloning(1984);学術論文のMethods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vol.154および155(Wuら、eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volume I〜IV(D.M.Weir
and C.C.Blackwell,eds.,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照のこと。
Cloning,Volume IおよびII(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic
Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical
Guide To Molecular Cloning(1984);学術論文のMethods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vol.154および155(Wuら、eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volume I〜IV(D.M.Weir
and C.C.Blackwell,eds.,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照のこと。
実施例1:種々の形態のバイグリカンの調製および特徴付け
バイグリカンは、プロテオグリカン(PG)型と非グリカン化(NG)型の両方として発現される細胞外マトリックスタンパク質である。プロテオグリカン型のバイグリカン(biglyvan)は、セリン5またはセリン10において付加され得る1つまたは2つのグリコサミノグリカン側鎖を含む(ナンバリングは、成熟ポリペプチドの配列に基づく)。
バイグリカンは、プロテオグリカン(PG)型と非グリカン化(NG)型の両方として発現される細胞外マトリックスタンパク質である。プロテオグリカン型のバイグリカン(biglyvan)は、セリン5またはセリン10において付加され得る1つまたは2つのグリコサミノグリカン側鎖を含む(ナンバリングは、成熟ポリペプチドの配列に基づく)。
本発明者らは、組換えDNA技術を使用して、GAG付加部位であり得る2つのセリンがアラニンに変異されている変異型のバイグリカンを作製した。この変異体は、「S5A−S10A」または単に「SA」と呼ばれる。本発明者らは、野生型の構築物も作製した。すべてが、6−HISタグ化されており、ヒトバイグリカン配列に基づいた。接頭辞「His」は、このタグの存在を表示するために使用される。
本発明者らは、3つの形態のバイグリカン(PG、NG、S5A−S10A)を作製し、解析した。すべてのバイグリカンの形態が、HEK293細胞において産生され、ニッケルクロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーとの組み合わせによって精製された。これらの調製物は、図4および5に示されるように>90%純粋だった。具体的には、図4は、SDS−PAGEに続くクマシー染色によって解析された非グリカン化型(NG)およびプロテオグリカン型(PG)のバイグリカンを示している。図5は、Agilent Bioanalyzer 2100 Protein 80チップアッセイによって解析されたNG型およびPG型のバイグリカンの解析を示している。NG型のバイグリカンについては、みかけの質量は、55.9kdであり、純度は、92.6%だった。NG型とPG型のバイグリカンの混合物については、みかけの質量は、58.9kdであり、純度は、74%だった。PG型のバイグリカンについては、みかけの質量は、60kdであり、純度は、測定されなかった。
S5A−S10A調製物の純度も、図6および7に示されるように>90%だった。具体的には、図6は、SDS−PAGEに続くクマシー染色によって解析されたS5A,S10Aバイグリカンの解析を示している。図7は、Agilent Bioanalyzer 2100によるS5A,S10Aバイグリカンの最終的な(finaly)解析を示している。みかけの質量は、46.3kdであり、純度は、93.2%だった。
ウエスタンブロットデータは、S5A−S10Aが、NGよりも速くSDSゲル上を移動したことを示しており、これは、S5および/またはS10上のO結合型グリコシル化の存在と一致する(図8)。図8は、組換え非グリカン化(NG)バイグリカンおよびS5A,S10A変異バイグリカンのウエスタンブロット解析を示している。サンプルを、SDS PAGEにおいて泳動し、ニトロセルロース膜に転写し、バイグリカン抗体を用いてプロービングした。「ser−al」は、両方のGAG付加部位の二重変異体である(S5A;S10A)。アミノ酸の位置は、成熟タンパク質に対する位置である。S5A;S10A変異体の移動度が、(野生型)非グリカン化型よりも速かったことに注意されたい。これらのデータは、一方または両方のセリンが、非グリカン化型において改変されていることを示唆している。NGサンプルの相対的な移動度が、図4および5における移動度と比較して、この図を作成するために使用されたゲルの系が原因で、図6では異なっていることに注意されたい。NGサンプルのすべてが、同じ系で分離されたときは同じ移動度を有する。
NGおよびS5A−S10Aの全炭水化物のガスクロマトグラフィーによるグリコシル解析から、これらの間に大きな違いがあることが明らかになった(表1)。とりわけ、S5A−S10Aの全グリコシル化は、NGにおける全グリコシル化の57%だった。NGではイズロン酸またはグルクロン酸が検出されなかったことから、NG調製物にGAGが存在しなかったことが示唆される。比較として、イズロン酸とグルクロン酸の両方が、PGプロテオグリカンでは高度に豊富に存在する(下記の表1を参照のこと)。
GC−MSによってグリコシル組成を測定する方法(表1)は、以下のとおり行われた。単糖組成解析用に確保されたサンプル(未透析サンプルの情報に基づいて約125μgを提供する)を、ねじぶた付きのチューブに入れ、内標準として10μgのイノシトールを加え、凍結乾燥した。次いで、その乾燥サンプルから、100℃のメタノール中の3M
HClを用いた2時間にわたるメタノリシスに続く、メタノール中のピリジンおよび無水酢酸(アミノ糖の検出用)を用いた再N−アセチル化によって、メチルグリコシドを調製した。前述のメタノリシスおよび再N−アセチル化の工程を、2回繰り返した。次いで、そのサンプルを、Tri−Sil試薬(Thermo Scientific)を用いて80℃において0.5時間、過O−トリメチルシリル化(TMS)した。これらの手順は、以前にMerkle and Poppe(1994)Methods Enzymol.230:1−15;Yorkら(1985)Methods Enzymol.118:3−40に記載されているように行った。TMSメチルグリコシドの解析は、Supelco EC−1溶融石英キャピラリーカラム(30m×0.25mmID)を備え、Hewlett Packard 5970 MSDに接続されたHewlett Packard Series II 5890ガスクロマトグラフィーにおいて行った。
HClを用いた2時間にわたるメタノリシスに続く、メタノール中のピリジンおよび無水酢酸(アミノ糖の検出用)を用いた再N−アセチル化によって、メチルグリコシドを調製した。前述のメタノリシスおよび再N−アセチル化の工程を、2回繰り返した。次いで、そのサンプルを、Tri−Sil試薬(Thermo Scientific)を用いて80℃において0.5時間、過O−トリメチルシリル化(TMS)した。これらの手順は、以前にMerkle and Poppe(1994)Methods Enzymol.230:1−15;Yorkら(1985)Methods Enzymol.118:3−40に記載されているように行った。TMSメチルグリコシドの解析は、Supelco EC−1溶融石英キャピラリーカラム(30m×0.25mmID)を備え、Hewlett Packard 5970 MSDに接続されたHewlett Packard Series II 5890ガスクロマトグラフィーにおいて行った。
DIGグリカン識別キット(Roche)を用いて、レクチンブロッティングを行った。簡潔には、サンプルおよびコントロールを、ニトロセルロース膜上にブロットした(1μgのサンプル、ポジティブおよびネガティブコントロール)。その膜を、ブロッキング溶液(キットによって供給されるもの)に浸漬した後、TBSにおいて1μg/mlのジゴキシゲニン標識レクチンとともにインキュベートした。二次抗体として750mUのアルカリホスファターゼ結合体化ヒツジ抗ジゴキシゲニン、および発色試薬としてニトロブルーテトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルホスフェートを用いて、結合活性を可視化した。カルボキシペプチダーゼY(a,GNA陽性)、トランスフェリン(b,SNA陽性)、フェチュイン(c,MAA陽性)およびアシアロフェチュイン(d,PNAおよびDSA陽性)をポジティブコントロールとして使用した。ウシ血清アルブミン(BSA)をネガティブコントロールとして使用した。Ponceau S染色を、膜上のタンパク質を検出するために使用した。
さらに、種々の形態のバイグリカン上のN結合型グリコシル化の位置を決定した(図15)。SAタンパク質には潜在的なN−グリコシル化部位が2つ存在する;Asn248およびAsn288が、N−グリコシル化のためのN−X−S/Tコンセンサス配列内に見られる。SA変異バイグリカンを、トリプシンで消化し、グリコシル化されたアスパラギン残基をアスパラギン酸残基に変換するH2 18O中のPNGase Fを用いて糖ペプチドを脱グリコシル化した。グリコシル化されたペプチドは、対応するグリコシル化されていないペプチドと比べて3Daの質量の増加を示す。SAのグリコシル化部位Asn248およびAsn288は、親質量リストモニタリング法(parent mass list monitoring method)およびTurboSequestアルゴリズムを用いたデータベース検索と組み合されたLC−MS/MSによってグリコシル化されていると示された。SA由来のN結合型グリコシル化部位のペプチドの要約を図15に示す。これらの結果は、SAの潜在的な2つのN結合型グリコシル化部位が、完全にグリコシル化されていることを示唆した。SAにおけるアミノ酸のナンバリングがNGのそれと異なることに注目すべきである。しかしながら、N−グリコシル化部位を含むペプチド配列は、2つのサンプル間で同一であり、NGサンプルに対するナンバリングは、UniProtデータベースにおいて見られたナンバリングと一致している。
N結合型グリコシル化解析を行うために、50マイクログラムのSAバイグリカンを、25mM DTTを用いて55℃において1時間還元し、90mMヨードアセトアミドを用いて暗黒下にて45分間カルボキシアミドメチル化した。乾燥された透析サンプルを、50mM重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)に再懸濁し、2.5μgのトリプシンで25℃において20時間にわたって消化した。100℃、5分間のトリプシンの非活性化の後、サンプルを、36μLの18O水(H2 18O)および2μLの1M NH4HCO3において、2μgのPNGaseFで脱グリコシル化した。
標識されたペプチドを、200μLの移動相A(0.1%ギ酸水溶液)に再懸濁した。次いで、C18逆相樹脂を窒素圧ボンベ装置にて1,000psiにおいて10分間にわたって自己充填した(10.5cm,Waters,Milford,MA)ナノスプレーテーパーキャピラリーカラム/エミッター(360×75×15μm,PicoFrit,New Objective,Woburn,MA)にサンプルを充填し(約5μLの充填)、次いで、移動相Bを増加させる160分間の直線勾配(約500nL/分の流速)によって質量分析計に直接分離させた。
ナノスプレーイオン源を備えたLTQ Orbitrap Discoverer質量分析計(Thermo Scientific)においてLC−MS/MS解析を行った。得られたデータを、TurboSequestアルゴリズム(Proteome Discoverer 1.1,Thermo Scientific)を用いて組換えSA配列に対して検索した。モノアイソトピック質量に対して30.0ppmというプリカーサーイオン質量許容誤差および0.8Daというフラグメントイオン誤差範囲を許容するようにSEQUESTパラメータを設定した。トリプシンによって生じたペプチドは、最大2つの内部切断部位が失われることを許容し、アルキル化されたシステイン、メチオニンの酸化および18O標識されたアスパラギン酸に対してそれぞれ57.02146Da、15.9949Daおよび2.98826Daという差次的改変が、許容された。
NGサンプルについては、最初の工程以外はすべて上記手順に従った。40マイクログラムのNGを、25mM DTTを用いて55℃において1時間還元し、90mMヨードアセトアミドを用いて暗黒下にて45分間カルボキシアミドメチル化した。乾燥された透析サンプルを、50mM重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)に再懸濁し、2μgのトリプシンで25℃において20時間消化した。100℃、5分間のトリプシンの非活性化の後、サンプルを、36μLの18O水(H2 18O)および2μLの1M NH4HCO3において、2μgのPNGaseFで脱グリコシル化した。
あわせると、これらのデータは、「非グリカン化」型およびSA変異型のバイグリカンが、いくつかの炭水化物部分を含むが、これらは、プロテオグリカン型のバイグリカンとは異なることを示唆している。
NGとS5A−S10Aとの生物活性の比較から、異なる活性が示された。S5A−S10Aは、二相性の応答(増強および脱増強)を示すが、NGは、三相性の応答(増強、脱増強および阻害)を示す(図9)。図9(上のパネル)は、細胞培養バイオアッセイにおけるNGおよびS5A−S10Aバイグリカンの生物活性を示している。最初のニワトリ筋管を、1Uの精製アグリンおよび様々な濃度のNGまたはS5A−S10Aバイグリカンで処理した。次いで、筋管セグメント1つあたりのAChRクラスターの数を、記載されているように(Nastukら、1991,PMID 1660286)3つ組の培養物において計数した。アグリン単独によって誘導されたAChRクラスター形成のレベルは、水平な点線によって示されている。S5A−S10Aが、低い濃度(≦0.05μg/ml)では増強を示し、それより高いすべての濃度では脱増強を示すことに注意されたい。対照的に、NGバイグリカンは、≦0.05μg/mlにおいて増強を示すが、それより高い濃度では脱増強および阻害を示す。SAとNGとを比べると、PGは、AChRクラスター形成に対して著しく異なる効果を示す(下のパネルを参照のこと)。
本発明者らは、S5A−S10Aがインビボにおいて活性であることを見出した。血清クレアチンキナーゼレベルの測定によって評価されるとき、mdxマウスへのS5A−S10Aの全身性注射は、筋細胞の損傷を減少させた(図10)。図10は、S5A−S10Aバイグリカンが、mdxマウスにおいて筋肉の損傷を減少させることを示している。図10aでは、ビヒクルまたはS5A−S10Aバイグリカンを、P18 Mdxマウスの腹腔内に2週間にわたって週に一度注射し、血清クレアチンキナーゼ(sCK)のレベルを測定した。sCKのレベルは、バイグリカンを注射された動物において2倍超減少した(p<0.01;n=4)。図10bは、sCKの減少が、投与されたS5A−S10Aバイグリカンの用量に依存することを示している。
図11は、S5A−S10A rhBGNの機能的有効性を示している。10mg/kgのSA−rhBGNを、記載されている間隔で3ヶ月間にわたってMdxマウスに、腹腔内注射によって投与した。単離された筋肉において伸張性収縮の測定を行った。最大の攣縮反応が達成されるように筋肉の長さを調整し、この長さ(Lo)を測定した。超最大刺激700ms、総伸長Lo/10;伸長速度0.5Lo/sという標準的なECCプロトコルの各テタヌスについて伸張性収縮力の低下を計算した。筋機能の改善における投与頻度応答は、図11において明らかである。
図12は、インビボにおける筋線維に対するSA−rhBGNの効果を示している。記載されている用量のSA−rhBGNをP18においてMdxマウスの腹腔内に注射し、核が中央に局在している筋線維のパーセンテージを、ヒラメ筋について測定した。2週間後に、同じ測定を横隔膜筋に対して行った。以前に記載されたように凍結切片を調製し、染色した(Mercadoら、Faseb J.2006)。前脛骨筋において測定されたユートロフィンの筋細胞膜レベルもまた用量依存的様式で増加した。Nikon(Melville,NY)Eclipse E800顕微鏡を用いて切片を観察し、Scanalytics IP Lab Spectrumソフトウェア(Fairfax,VA)またはNIS Elements(Nikon)を用いて像を取得した。中央に局在した核のパーセンテージをスコアリングするために、H&E染色された切片におけるネクローシス/再生病巣の外側のすべての横断筋線維を、20×対物レンズ下で計数した。
実施例2:バイグリカン投与によって、不十分なVI型コラーゲンレベルを有するマウスのVI型コラーゲンレベルが増加する
野生型VI型コラーゲンを有するバイグリカンヌルマウスでは、VI型コラーゲンレベルが低下している。この系においてインビボでVI型コラーゲンレベルを回復させる組換えバイグリカンの有効性を試験するために、レスキューアプローチを用いた。組換えバイグリカンを、バイグリカンヌルマウスの筋肉内に注射し、VI型コラーゲンの発現を評価した。精製された組換え非グリカン化バイグリカンまたはプロテオグリカンを、5週齢のバイグリカンヌル動物の右大腿四頭筋に注射した(合計6匹の動物)。動物内の比較を可能にするために、ビヒクル単独を左四頭筋に注射した。いずれの場合にも、その溶液に1.0%の墨を含めることによって、注射部位を可視化した。図13aは、注射された組換えバイグリカンプロテオグリカンが、適切に注射の部位を筋周膜および筋外膜に局在化させていることを示している。
野生型VI型コラーゲンを有するバイグリカンヌルマウスでは、VI型コラーゲンレベルが低下している。この系においてインビボでVI型コラーゲンレベルを回復させる組換えバイグリカンの有効性を試験するために、レスキューアプローチを用いた。組換えバイグリカンを、バイグリカンヌルマウスの筋肉内に注射し、VI型コラーゲンの発現を評価した。精製された組換え非グリカン化バイグリカンまたはプロテオグリカンを、5週齢のバイグリカンヌル動物の右大腿四頭筋に注射した(合計6匹の動物)。動物内の比較を可能にするために、ビヒクル単独を左四頭筋に注射した。いずれの場合にも、その溶液に1.0%の墨を含めることによって、注射部位を可視化した。図13aは、注射された組換えバイグリカンプロテオグリカンが、適切に注射の部位を筋周膜および筋外膜に局在化させていることを示している。
注射されたバイグリカンは、バイグリカンヌル筋肉におけるVI型コラーゲンの発現に対して著しい効果を有した。注射の4日後までに、本発明者らは、バイグリカン染色の範囲と密接に共局在する高いVI型コラーゲン発現を観察した(図13b)。ビヒクルを注射された筋肉では、VI型コラーゲンのアップレギュレーションは観察されなかった(データ示さず)。VI型コラーゲン発現は、非グリカン化バイグリカンポリペプチドによってもアップレギュレートされた(データ示さず)。まとめると、これらの結果は、バイグリカンポリペプチドが、インビボにおいて筋肉に送達され得、間質内および筋細胞表面におけるVI型コラーゲンの発現レベルを増強することを示している。さらに、このレスキューは、バイグリカンの非グリカン化型またはプロテオグリカン型のいずれかを用いて達成され得る。
実施例3:S5A−S10A rhBGNの精製
タグ化されていないS5A−S10A rhBGNを、以下のスキームに従って精製した。第1に、変異バイグリカンの凍結アリコートを4℃で解凍した。完全に解凍したら、これらのサンプルを遠心分離することにより、いずれの粒子状物質も除去した。次いで、0.45μmシリンジフィルターを用いて上清を濾過した。次いで、濾過されたサンプルを脱イオン水で1:3希釈した。
タグ化されていないS5A−S10A rhBGNを、以下のスキームに従って精製した。第1に、変異バイグリカンの凍結アリコートを4℃で解凍した。完全に解凍したら、これらのサンプルを遠心分離することにより、いずれの粒子状物質も除去した。次いで、0.45μmシリンジフィルターを用いて上清を濾過した。次いで、濾過されたサンプルを脱イオン水で1:3希釈した。
変異バイグリカンを、1mLのHiTrap QFF(GE LifeSciences)陰イオン交換カラムに1mL/分で適用した。そのカラムを、はじめにQFF A緩衝液(20mM Tris pH8.5;50mM NaCl)で平衡化した。QFF Aを用いて未結合サンプルをカラムから洗い流し、サンプルの適用中および洗浄中に4mLの画分を回収した。2工程グラジエントの最初の部分において変異バイグリカンを溶出した(40カラム体積にわたる0〜50%B;5カラム体積にわたる50〜100%B;QFF B緩衝液は、20mM Tris pH8.5;1M NaClからなる)。1mLの画分を回収し、SDS−PAGE解析およびクマシー染色用にサンプリングした。変異バイグリカンを含む画分を、次の精製工程のためにプールした。図16は、陰イオン交換精製工程のために得られた溶出プロファイルおよびクマシー染色を示している。陰イオン交換からプールされた画分を、500mMという最終濃度のクエン酸ナトリウムのために1Mクエン酸ナトリウムと1:1で混合した。タンパク質を1mLのHiTrap ButylS FF(GE LifeSciences)HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)カラムに1mL/分で適用した。そのカラムをまず、HIC A緩衝液(20mM Tris pH8.5;200mM NaCl;500mMクエン酸ナトリウム)で平衡化した。HIC Aを用いて未結合サンプルをカラムから洗い流し、サンプルの適用中および洗浄中に4mLの画分を回収した。20カラム体積にわたる100〜0%Bのグラジエントで変異バイグリカンを溶出した(HIC B緩衝液は、20mM Tris pH8.5;200mM NaClからなる)。0.75mLの画分を回収し、SDS−PAGE解析および銀染色とクマシー染色との両方のためにサンプリングした。図17は、HIC精製工程のために得られた溶出プロファイルおよびクマシー染色を示している。
実施例4:S5A−S10A rhBGNを安定的に発現するCHO株の構築
標準的なプロトコルを用いて、タグ化されていないS5A−S10A rhBGNを発現するCHO−S細胞株を構築した。簡潔には、rhBGNをpCEP4ベクターに挿入した。そのベクターを、リポフェクタミンを用いてCHO細胞にトランスフェクトし、安定的にトランスフェクトされた細胞を、ハイグロマイシン選択を用いて単離した。この細胞株は、GMP施設への移動およびヒトにおける使用に完全に適合した条件下で維持される。
標準的なプロトコルを用いて、タグ化されていないS5A−S10A rhBGNを発現するCHO−S細胞株を構築した。簡潔には、rhBGNをpCEP4ベクターに挿入した。そのベクターを、リポフェクタミンを用いてCHO細胞にトランスフェクトし、安定的にトランスフェクトされた細胞を、ハイグロマイシン選択を用いて単離した。この細胞株は、GMP施設への移動およびヒトにおける使用に完全に適合した条件下で維持される。
図18aは、振盪フラスコ内で生育された2つの安定的なクローン細胞株からのTVN−102の発現を示している。これらの細胞株によって産生されるTVN−102は、効率的に分泌され、均一である(図18b)。TVN−102は、37℃の培地中で少なくとも5日間安定であり、生物活性は、4℃での少なくとも2週間の貯蔵にわたって保持される。すべてのクロマトグラフィーを、AKTA−100A FPLCにおいて行った。精製されたTVN−102のタンパク質ゲルを図19に示す。用いられた樹脂および方法のすべてが、規制要件およびスケールアップに適合するように設計され、すべての手順が室温において行われた。2回のクロマトグラフィー工程の後、Agilent Bioanalyzer解析によって評価されるTVN−102材料は、>90%純粋である。精製された材料の質量分析は、そのタンパク質がインタクトであることを示している。その材料は、細胞ベースのアグリン増強アッセイによって評価されるとき、生物活性である(図20)。
実施例5:バイグリカンに対するタンパク質結合アッセイおよび生物活性アッセイ
この実施例は、組換えタンパク質の生物学的活性を評価する、細胞培養バイオアッセイおよびタンパク質結合バイオアッセイを示す。とりわけ、これらのアッセイの両方が、NG/S5A−S10A型の組換えバイグリカンの活性に対して選択的である。このバイオアッセイ(図20a)は、培養された筋管においてNGまたはS5A−S10Aバイグリカンがアグリン誘導性活性を増強する能力に基づく。筋管アッセイは、上記の実施例1および図9に記載されている。
この実施例は、組換えタンパク質の生物学的活性を評価する、細胞培養バイオアッセイおよびタンパク質結合バイオアッセイを示す。とりわけ、これらのアッセイの両方が、NG/S5A−S10A型の組換えバイグリカンの活性に対して選択的である。このバイオアッセイ(図20a)は、培養された筋管においてNGまたはS5A−S10Aバイグリカンがアグリン誘導性活性を増強する能力に基づく。筋管アッセイは、上記の実施例1および図9に記載されている。
タンパク質結合アッセイ(図20b)は、バイグリカンとRTK MuSKの外部ドメインとの結合に基づく。図20aは、組換えバイグリカンの4つの独立した調製物が匹敵する生物活性を示すことを示している。図20bは、NGとS5A−S10Aの両方のバイグリカンがMuSKに結合するが、組換えPGバイグリカンがMuSKに結合しないことを示している。図20bに示される実験は、以下のとおり行われた。3つの異なる形態のバイグリカンへのMuSKの結合を、ELISAによって試験した。記載されているバイグリカンの形態を、プラスチック上に固定化し、PBS中の組換えFc融合MuSK外部ドメインでプロービングした。結合したFc融合物を、TMB(テトラメチルベンジジン)で発色される、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合体化抗マウス二次抗体(KPL)を用いて検出した。結合曲線を作成するために、450nmにおける吸光度を用いた。
等価物
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または単なる通例の実験法を用いて確かめることができるだろう。そのような等価物は、以下の請求項によって包含されると意図されている。
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または単なる通例の実験法を用いて確かめることができるだろう。そのような等価物は、以下の請求項によって包含されると意図されている。
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