以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る慣性センサ310は、基部71と、錘部72と、接続部74と、検知素子部50(第1検知素子部50a)と、を含む。
接続部74は、錘部72と基部71とを接続する。接続部74は、錘部72の基部71に対する相対的な位置の変化に応じて変形可能である。接続部74は、例えば、第1部分74aを含む。
第1検知素子部50aは、例えば、接続部74の第1部分74a上に設けられる。例えば、第1検知素子部50aは、第1部分74aに固定される。第1検知素子部50aは、第1磁性層10aと、第2磁性層20aと、第1中間層30aと、を含む。第1磁性層10aは、例えば第1の磁化自由層10である。第2磁性層20aは、参照層20である。第2磁性層20aも磁化自由層でも良い。第1中間層30aは、中間層30である。第1中間層30aは、第1磁性層10aと、第2磁性層20aとの間に設けられる。第1中間層30aは、例えば、非磁性である。
例えば、第1磁性層10a、第2磁性層20a及び第1中間層30aは、抵抗変化部(第1抵抗変化部50sa)に含まれる。この例では、第1磁性層10aと接続部74との間に、第2磁性層20aが配置されている。実施形態において、第2磁性層20aと接続部74との間に、第1磁性層10aが配置されても良い。
この例では、第1検知素子部50aは、第1電極51a(例えば下側電極51)と、第2電極52a(例えば上側電極52)と、をさらに含む。第1電極51aと第2電極52aとの間に、第1抵抗変化部50saが設けられる。
例えば、第1電極51aと第2電極52aとの間に第1磁性層10aが配置される。第1磁性層10aと第1電極51aとの間に第2磁性層20aが配置される。この例では、第2電極52aと接続部74との間に、第1電極51aが配置されている。実施形態において、第1電極51aと接続部74との間に、第2電極52aが配置されても良い。
第2磁性層20aから第1磁性層10aに向かう方向をZ軸方向(積層方向)とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向に対して垂直でX軸方向に垂直な方向をY軸方向とする。
第1磁性層10a、第2磁性層20a及び第1中間層30aのそれぞれのZ軸方向に沿った長さは、それぞれの層の厚さに相当する。接続部74のZ軸方向に沿う長さは、接続部74の厚さに相当する。基部71のZ軸方向に沿う長さは、基部71の厚さに相当する。錘部72のZ軸方向に沿う厚さは、錘部72の厚さに相当する。
例えば、接続部74(第1部分74a)の長さ(厚さ)は、基部71から錘部72に向かう方向(たとえばX軸方向)の錘部72の長さ(厚さ)よりも短い(薄い)。例えば、後述するように、基部71から錘部72に向かう方向(例えばX軸方向)に対して垂直な方向(Y軸方向)の接続部74(第1部分74a)の長さ(幅)は、接続部74のX軸方向の長さよりも短い。これにより、例えば、錘部72が動いたときに、歪が大きく(例えば最大)になる。
これにより、例えば、接続部74は、錘部72よりも変形し易い。錘部72の位置の変化に応じて、接続部74が変形する。
図2(a)及び図2(b)は、第1の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的断面図である。
図2(a)及び図2(b)は、それぞれ、第1状態ST1及び第2状態ST2に対応する。
図2(a)に表したように、第1状態ST1においては、錘部72の基部71に対する相対的な位置が、第1位置である。第1状態ST1は、例えば、錘部72に加速度(力)が加わっていないときの状態である。
図2(b)に表したように、第2状態ST2においては、錘部72の基部71に対する相対的な位置が、第2位置である。第2位置は、第1位置とは異なる。第2状態ST2は、例えば、錘部72に加速度72gが加わった状態である。第2状態ST2における接続部74(第1部分74a)の形状は、第1状態ST1における接続部74(第1部分74a)の形状とは異なる。このように、接続部74は、錘部72の基部71に対する相対的な位置の変化に応じて変形する。
基部71は、例えば、可動する物体に固定して使用され、基部71は、固定された物体と一緒に動く。一方、錘部72は、歪む接続部74などを介して基部71に接続される。これにより、錘部72は、基部71の動きとは異なって動くことができる。例えば、基部71が可動したときに、錘部72の動きは慣性により、基部71と一体には実質的に動かない。基部71と錘部72とを接続する接続部74に歪が発生し、その歪を検知することにより、慣性及び加速度の少なくともいずれかが検知される。
接続部74の変形に伴って、第1磁性層10aの磁化の方向は、変化可能である。接続部74の変形に伴って、第2磁性層20aの磁化の方向も変化しても良い。
例えば、第1磁性層10aが磁化自由層であり、第2磁性層20aも磁化自由層である場合は、両方の磁性層の磁化の方向が、接続部74の変形に伴って変化する。例えば、第1状態ST1においては、第1磁性層10aの磁化は第1磁化方向であり、第2磁性層20aの磁化は第2磁化方向である。第2状態ST2においては、第1磁性層10aの磁化は第1磁化方向とは異なる方向であり、第2磁性層20aの磁化は第2磁化方向とは異なる方向である。
例えば、第1磁性層10aが磁化自由層であり、第2磁性層20aが磁化固定層である場合は、第1磁性層10aの磁化の方向が、接続部74の変形に伴って変化する。例えば、第1状態ST1においては、第1磁性層10aの磁化は第1磁化方向であり、第2磁性層20aの磁化は第2磁化方向である。第2状態ST2においては、第1磁性層10aの磁化は第1磁化方向とは異なる方向であり、第2磁性層20aの磁化は第2磁化方向である。
このように、接続部74の変形に伴って磁性層の磁化の方向が変化することで、第1抵抗変化部50saを流れる電流の抵抗が変化する。慣性センサ310においては、加わる加速度72gに応じて、錘部72の位置(相対的な位置)が変化する。この位置の変化により接続部74が変形し、この変形に伴って、磁性層の磁化の方向が変化する。磁性層の磁化の方向の変化に応じた抵抗の変化を検知することで、加速度が検知される。この磁化の方向の変化は、後述する逆磁歪効果によるもので、変形に伴って磁性層に歪が発生したときに、磁性層の磁化方向が変化することを利用したものである。
以下、抵抗変化部(第1抵抗変化部50sa)における磁化の変化と、抵抗の変化の例について説明する。以下では、説明を簡単にするために、第2磁性層20aが磁化固定層であり、第1磁性層10aが磁化自由層である場合について説明する。検知素子部50においては、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、抵抗変化部で発現する「MR効果」と、が利用される。
「MR効果」は、磁性体を有する積層膜において、外部磁界が印加されたときに、磁性体の磁化の変化によって積層膜の電気抵抗の値が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。抵抗変化部に電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで、MR効果は発現する。検知素子部50に加わる応力に基づいて、例えば、抵抗変化部に引っ張り応力が加わる。このとき、応力の大きさ及び方向に応じて、第1磁性層10aの磁化の向きは、変化する。第2磁性層20aの磁化方向と、第1磁性層10aの磁化方向と、の間の相対的な磁化角度に応じて、磁性層に流す電流に伴う抵抗の値が変化する。低抵抗状態の抵抗をRとし、MR効果によって変化する電気抵抗の変化量をΔRとしたときに、ΔR/Rを「MR変化率」という。
図3(a)〜図3(c)は、第1の実施形態に係る慣性センサの動作を例示する模式的斜視図である。
これらの図は、検知素子部50の異なる状態を例示している。これらの図は、検知素子部50における磁化方向と、引っ張り応力の方向と、の関係を例示している。
図3(a)は、引っ張り応力が印加されていない状態を示す。このとき、この例では、第2磁性層20a(参照層20)の磁化の向きは、第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化の向きと、同じである。
図3(b)は、引っ張り応力が印加された状態を示している。この例では、X軸方向に沿って引っ張り応力が印加されている。例えば、接続部74の変形により、例えば、X軸方向に沿った引っ張り応力が印加される。すなわち、引っ張り応力は、第2磁性層20a(参照層20)及び第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化の向き(この例では、Y軸方向)に対して直交方向に印加される。このとき、引っ張り応力の方向と同じ方向になるように、第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化が回転する。これを「逆磁歪効果」という。このとき、第2磁性層20a(参照層20)の磁化は固定されている。第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化が回転することで、第2磁性層20a(参照層20)の磁化の向きと、第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。
図3(b)においては、第2磁性層20a(参照層20)の磁化方向が一例として図示されており、磁化方向は、図3(b)に示した方向でなくても良い。
逆磁歪効果においては、強磁性体の磁歪定数の符号によって磁化の容易軸が変化する。大きな逆磁歪効果を示す多くの材料は、磁歪定数が正の符号を持つ。磁歪定数が正の符号である場合には、上述のように引っ張り応力が加わる方向が磁化容易軸となる。つまり、磁歪定数が正の場合には、上記のように、第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁化は、引っ張り応力が印加された磁化容易軸の方向に回転する。一方、磁歪定数が負の符号の場合には、引っ張り応力が印加された方向に対して垂直な方向が、磁化容易軸となる。このときは、応力印加によって、応力が印加された方向に対して垂直な方向に、第1磁性層10aの磁化方向が向く。
例えば、第1磁性層10a(磁化自由層10)の磁歪定数が正である場合には、第1磁性層10a(磁化自由層10)の初期磁化方向(応力が印加されていないときの磁化方向)は、引っ張り応力が加わる方向とは異なる方向に設定される。一方、磁歪定数が負である場合には、引っ張り応力が加わる方向に垂直な方向が磁化容易軸となる。
図3(c)は、磁歪定数が負である場合の状態を例示している。この場合には、第1磁性層10a(磁化自由層10)の初期磁化方向(応力が印加されていないときの磁化方向)は、引っ張り応力が加わる方向(この例ではX軸方向)に対して垂直な方向とは異なる方向に設定される。
図3(c)には、第2磁性層20a(参照層20)の磁化方向が一例として図示されており、磁化方向は、図3(c)に示した方向でなくても良い。
第1磁性層10aの磁化と第2磁性層20aの磁化との間の角度に応じて、検知素子部50(抵抗変化部)の電気抵抗が、例えば、MR効果によって変化する。
磁歪定数(λs)は、外部磁界を印加して強磁性層をある方向に飽和磁化させたときの形状変化の大きさを示す。外部磁界がない状態における強磁性層の長さがLであるときに、外部磁界が印加されたときに強磁性層の長さがΔLだけ変化したとすると、磁歪定数λsは、ΔL/Lで表される。この変化量は、磁界の大きさによって変わるが、磁歪定数λsは、十分な磁界が印加され、磁化が飽和された状態のΔL/Lとしてあらわす。
例えば、第2磁性層20a(参照層20)が磁化固定層である場合、第2磁性層20aには、Fe、Co,Niやそれらの合金材料が用いられる。また、第2磁性層20aには、上記の材料に添加元素を加えた材料などが用いられる。第2磁性層20aには、例えば、CoFe合金、CoFeB合金及びNiFe合金等を用いることができる。第2磁性層20aの厚さは、例えば2ナノメートル(nm)以上6nm以下である。
第1中間層30aには、金属または絶縁体を用いることができる。金属としては、例えば、Cu、Au及びAg等を用いることができる。金属の場合、第1中間層30aの厚さは、例えば1nm以上7nm以下である。絶縁体としては、例えば、マグネシウム酸化物(MgO等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(TiO等)、または、亜鉛酸化物(ZnO等)を用いることができる。絶縁体の場合、第1中間層30aの厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。
第1磁性層10aが磁化自由層である場合、第1磁性層10aには、例えば、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、それらの少なくともいずれかを含む合金材料が用いられる。上記の材料に添加元素を加えた材料が用いられる。
第1磁性層10aには、磁歪(磁歪定数)が大きい材料が用いられる。具体的には、磁歪の絶対値が、10−5よりも大きい材料が用いられる。これにより、歪に対して、磁化が敏感に変化する。第1磁性層10aには、正の磁歪を有する材料を用いても良く、負の磁歪を有する材料を用いても良い。
第1磁性層10aには、例えば、Fe、CoまたはNiの単元素金属を用いることができる。第1磁性層10aには、例えば、Fe、Co及びNiの少なくともいずれかを含む合金を用いることができる。この他、第1磁性層10aには、Fe−Co−Si−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等を用いることができる。上記のTb−M−Fe合金及びFe−M3−M4−B合金においては、磁歪定数λsが100ppmよりも大きい。第1磁性層10aの厚さは、例えば2nm以上である。
第1磁性層10aは、2層構造を有することができる。この場合、第1磁性層10aは、FeCo合金の層と、FeCo合金の層と積層された以下の層と、を含むことができる。FeCo合金の層と積層されるのは、Fe−Co−Si−B合金、Tb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)等から選択される材料の層である。上記のTb−M−Fe合金及びFe−M3−M4−B合金においては、磁歪定数λsが100ppmよりも大きい。
上記のように第1磁性層10aの磁歪定数が大きいときに、高い歪感度GF(Gauge Factor)が得られる。さらに、GFの値は、磁歪定数に加えて、第1磁性層10aの軟磁性によって大きく影響をうける。歪感度GFは、GF=(dR/R)/Δεで表される。ここで、Δεは、歪である。Rは、抵抗である。ΔRは、Δεの歪を受けたときの抵抗の変化である。歪感度GFは、単位歪変化における抵抗変化量の大きさを表し、無次元量である。
例えば、Feを含む合金であり、アモルファス構造を有する材料は、大きなGFを有することが分かった。この材料においては、例えば、3,000以上のGFの値が得られる。
本願明細書において、アモルファス構造は、微結晶構造を含む。この微結晶構造においては、結晶粒の大きさが2nmよりもさい。さらに、アモルファス構造は、結晶構造が認められない構造を含む。微結晶構造、または、結晶構造が認められない構造は、例えば、透過型電子顕微鏡による実像により観測できる。さらに、例えば、磁性層における微小ビームによる電子回折を用いても良い。例えば、電子回折パターンがスポットパターンとなるか、リング状パターンとなるかで判断できる。例えば、スポットパターンは、結晶構造に対応する。リング状パターンは、アモルファス構造に対応する。電子回折の例については、後述する。
例えば、第1磁性層10aとして、Bを含むFeを用いることで、第1磁性層10aは、アモルファス構造となる。実施形態において、以下のような機能層を設けても良い。
図4は、第1の実施形態に係る慣性センサの一部を例示する模式的斜視図である。
図4に表したように、機能層15aと第1中間層30aとの間に、第1磁性層10aが配置される。機能層15aを設けることで、第1磁性層10a中のBの濃度を高めることができる。例えば、第1中間層30a(MgO層)の上に、第1磁性層10a(例えば、CoFeB層、厚さ4nm)を設ける。この第1磁性層10aの上に、機能層15aとして、厚さが1.5nmのMgO層を設ける。これにより、CoFeB層は、アモルファス構造(微結晶構造を含む)となる。この場合、保磁力は、4Oe以下となり、GFの値は、3,000以上4,000以下となる。
図5(a)〜図5(i)、及び、図6(a)〜図6(i)は、慣性センサの特性を例示するグラフ図である。
図5(a)〜図5(i)は、第1試料S01の特性を示す。図6(a)〜図6(i)は、第2試料S02の特性を示す。例示するグラフ図である。第1試料S01においては、機能層15aとして、上記のMgO層が用いられている。第2試料S02においては、機能層15aとして、Ta層が用いられている。
図5(a)〜図5(i)は、それぞれ、歪εが、0.8×10−3、0.6×10−3、0.4×10−3、0.2×10−3、0.0×10−3で−0.2×10−3、−0.4×10−3、−0.6×10−3、及び、−0.8×10−3であるときの、電気抵抗の磁場依存性の測定結果を示している。図6(a)〜図6(i)は、それぞれ、歪εが、0.8×10−3、0.6×10−3、0.4×10−3、0.2×10−3、0.0×10−3で−0.2×10−3、−0.4×10−3、−0.6×10−3、及び、−0.8×10−3であるときの、電気抵抗の磁場依存性の測定結果を示している。
これらの図に表したように、機能層15aの材料によって、特性が大きく変化する。
図7(a)及び図7(b)は、慣性センサの特性を例示するグラフ図である。
図7(a)は、第1試料S01に対応し、図7(b)は、第2試料S02に対応する。これらの図は、外部磁場Hを固定し、歪εを−0.8×10−3と0.8×10−3との間の範囲連続的に変化させたときの電気抵抗Rの変化を示す。これらの図の横軸は、歪εであり、縦軸は、電気抵抗Rである。歪εの変化は、−0.8×10−3から0.8×10−3に向けての変化と、0.8×10−3から−0.8×10−3に向けての変化の両方である。これらの結果は、歪センサ特性を示している。これらの図から、ゲージファクターGFが算出される。
図7(a)から、第1試料S01におけるゲージファクタは、4027と算出される。図7(b)から、第2試料S02におけるゲージファクタは、859と算出される。
このように、MgOの機能層15aを用いて、第1磁性層10aをアモルファス構造とすることで、大きなゲージファクタを得ることができる。
MgOの機能層15aは、第1磁性層10aからのBの拡散を抑制すると考えられる。機能層15aは、例えば、拡散バリア層として機能する。機能層15aとして、例えば、面積抵抗の低いMgO層が設けられる。例えば、第1中間層30aに用いられるMgO層の面積抵抗よりも、5倍程度以下の層が、機能層15aに用いられる。機能層15aを設ける際に、積層膜全体の面積抵抗RAが実質的に増大しないように設計される。
以下、機能層15aの有無による、第1磁性層10aの結晶状態の差の例について説明する。
図8(a)〜図8(d)は、慣性センサの特性を例示する顕微鏡像である。
図9(a)〜図9(d)は、慣性センサの特性を例示する顕微鏡像である。
図8(a)〜図8(d)は、第1試料S01に対応し、図9(a)〜図9(d)は、第2試料S02に対応する。
図8(a)は、第1試料S01の慣性センサの断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)写真像である。図8(b)〜図8(d)は、それぞれ、図8(a)の点P1〜P3についての、電子線のナノディフラクションによる結晶格子回折像である。図9(a)は、第2試料S02の積層構造の写真である。図9(b)〜図9(d)は、それぞれ、図9(a)の点P4〜P6についての、電子線のナノディフラクションによる結晶格子回折像である。
図8(a)に示したように、第1試料S01においては、第2磁性層20aの上に、第1中間層30aが設けられ、第1中間層30aの上に、第1磁性層10aが設けられている。第1磁性層10aの上に、機能層15aが設けられている。機能層15aの上にキャップ層45が設けられている。一方、図9(a)に表したように、第2試料S02においては、機能層15aが設けられていない。
図8(a)からわかるように、第2磁性層20aは、結晶性である。第1中間層30aも結晶性である。一方、第1磁性層10aの大部分においては、原子の規則的な配列が観察されない。すなわち、第1磁性層10は、アモルファスである。
図8(b)に示すように、第2磁性層20aに対応する点P1の回折像において、回折スポットが観察される。この回折スポットは、第2磁性層20aが結晶構造を有していることに起因する。
図8(c)に示すように、第1中間層30aに対応する点P2の回折像において、回折スポットが観察されている。この回折スポットは、中間層30が結晶構造を有していることに起因する。
一方、図8(d)に示すように、第1磁性層10aに対応する点P3の回折像においては、明確な回折スポットが観察されない。この回折像においては、アモルファス構造を反映したリング状の回折像が観察されている。第1試料S01の第1磁性層10aが、アモルファス部分を含んでいることがわかる。
図9(a)からわかるように、第2磁性層20a及び第1中間層30a)は、結晶である。そして、第1磁性層10aも結晶性である。
図9(b)に示すように、第2磁性層20aの回折像において、結晶構造に起因する回折スポットが確認される。
図9(c)に示すように、第1中間層30aの回折像において、結晶構造に起因した回折スポットが確認される。
図9(d)に示すように、第1磁性層10aの回折像においても、結晶構造に起因する回折スポットが確認される。この結果から、第2試料S02の第1磁性層10aの大部分は、結晶構造を有していることがわかる。
上記の第1試料S01のように、アモルファス部分を含む第1磁性層10aを用いることで、高いゲージファクタが得られる。
図10は、慣性センサの特性を例示するグラフ図である。
この例では、第1磁性層10a及び第2磁性層20aの両方に、アモルファス構造(微結晶構造を含む)のFeB材料が用いられている。図10から、算出されたゲージファクタは、5290である。このように、アモルファス構造の磁性層を用いることで、高いゲージファクタが得られる。
例えば、第1中間層30aが金属の場合は、GMR効果が発現する。第1中間層30aが絶縁体の場合は、TMR効果が発現する。例えば、検知素子部50においては、例えば、抵抗変化部の積層方向に沿って電流を流すCPP(Current Perpendicular to Plane)−GMR効果が用いられる。
また、第1中間層30aとして、CCP(Current-Confined-Path)スペーサー層を用いることができる。CCPスペーサー層においては、絶縁層の一部に1nm以上5nm程度の幅(例えば径)の金属電流パスが膜厚方向に貫通して複数形成される。CCPスペーサー層においても、CPP−GMR効果が用いられる。
このように、本実施形態においては、検知素子部50における逆磁歪現象が用いられる。これにより、高感度な検知が可能になる。逆磁歪効果を用いる場合、例えば、外部から加えられる歪に対して、第1磁性層10a及び第2磁性層20aの少なくともいずれかの磁性層の磁化方向が変化する。加速度により生じた歪(有無及びその程度など)によって、2つの磁性層の磁化の相対的な角度が変わる。加速度により生じた歪によって電気抵抗が変わるため、検知素子部50は、慣性センサとして機能する。
図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る慣性センサの一部を例示する模式的斜視図である。
図11(a)に示したように、検知素子部50は、例えば、第1電極51aと、第2電極52aと、を含む。第1電極51aと第2電極52aとの間に第1抵抗変化部50saが設けられている。この例では、第1抵抗変化部50saにおいては、第1電極51aの側から第2電極52aに向けて、バッファ層41、反強磁性層42、磁性層43、Ru層44、第2磁性層20a、第1中間層30a、第1磁性層10a及びキャップ層45が、この順で設けられている。
バッファ層41は、シード層を兼ねても良い。バッファ層41の厚さは、例えば1nm以上10nm以下である。バッファ層41には例えば、TaまたはTiなどを含むアモルファス層が用いられる。バッファ層41には、結晶配向促進のためのシード層となるRuまたはNiFeなどの層が用いられる。バッファ層41として、これらの膜の積層膜を用いても良い。反強磁性層42の厚さは、例えば、5nm以上10nm以下である。磁性層43の厚さは、例えば2nm以上6nm以下である。この例では、第2磁性層20aの厚さは、例えば2nm以上5nm以下である。第1中間層30aの厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。第1磁性層10aの厚さは、例えば2nm以上5nm以下である。キャップ層45の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下である。
第2磁性層20aには、例えば、磁性積層膜を用いても良い。一方、第1磁性層10aは、MR変化率を大きくするための磁性積層膜10pと高磁歪磁性膜10qとを含んでも良い。高磁歪磁性膜10qは、磁性積層膜10pとキャップ層45との間に設けられる。磁性積層膜10pは、例えば、MR変化率を大きくする。磁性積層膜10pの厚さは、例えば1nm以上3nm以下である。磁性積層膜10pには、例えば、CoFeを含む合金やCoFeなどが用いられる。高磁歪磁性膜10qの厚さは、例えば、例えば1nm以上5nm以下である。
第1電極51a及び第2電極52aには、例えば、非磁性体であるAu、Cu、Ta、Al等を用いることができる。第1電極51a及び第2電極52aとして、軟磁性体の材料を用いることで、抵抗変化部に影響を及ぼす外部からの磁気ノイズを低減することができる。この軟磁性体の材料には、例えば、パーマロイ(NiFe合金)や珪素鋼(FeSi合金)を用いることができる。検知素子部50は、アルミニウム酸化物(例えばAl2O3)やシリコン酸化物(例えばSiO2)等の絶縁体で覆われる。これにより、リーク電流が抑制される。
第1磁性層10a及び第2磁性層20aの少なくともいずれかの磁性層の磁化方向は、応力に応じて変化する。少なくともいずれかの磁性層(応力に応じて磁化方向が変化する磁性層)の磁歪定数の絶対値は、例えば、10−5以上に設定することが好ましい。これにより、逆磁歪効果によって、外部から加えられる歪に応じて磁化方向が変化し易い。例えば、第1磁性層10a及び第2磁性層20aの少なくともいずれかには、Fe、Co及びNiなどのような金属または、それらを含む合金などが用いられる。用いる元素や添加元素などによって、磁歪定数は大きく設定される。磁歪定数の絶対値は、大きいことが好ましい。現実的なデバイスとして使用できる材料を考慮すると、磁歪定数の絶対値は、10−2程度以下が実用的である。
第1磁性層10a及び第2磁性層20aの少なくともいずれかには、前述のように、高い歪感度(ゲージファクタGF)が得られる材料として、例えば、Feを含有するアモルファス構造の磁性層を用いることが好ましい。このような材料においては、約5,000のGFが得られる。さらに、最適化により、約10,000のGFを得ることも可能になると考えられる。
例えば、第1中間層30aとしてMgOのような酸化物が用いられる。MgO層上の磁性層は、一般的にプラスの磁歪定数を有する。例えば、第1中間層30aの上に第1磁性層10aを形成する場合、第1磁性層10aとして、CoFeB/CoFe/NiFeの積層膜を用いる。最上層のNiFe層をNiリッチにすると、NiFe層の磁歪定数はマイナスでその絶対値が大きくなる。酸化物層上のプラスの磁歪が打ち消されることを抑制するために、最上層のNiFe層のNi組成は、一般的に用いられるNi81Fe19のパーマロイ組成と比較して、Niリッチにしない。具体的には、最上層のNiFe層におけるNiの比率は、80原子パーセント(atomic%)未満とすることが好ましい。第1磁性層10aを磁化自由層とする場合には、第1磁性層10aの厚さは、例えば、1nm以上20nm以下が好ましい。
第1磁性層10aが磁化自由層である場合において、第2磁性層20aは、磁化固定層でも磁化自由層でも良い。第2磁性層20aが磁化固定層である場合、外部から歪が加えられても第2磁性層20aの磁化方向は実質的に変化しない。そして、第1磁性層10aと第2磁性層20aとの間での相対的な磁化の角度によって電気抵抗が変化する。電気抵抗の違いによって歪の有無が検知される。これにより加速度が検知される。
第1磁性層10a及び第2磁性層20aの両方が磁化自由層である場合には、例えば、第1磁性層10aの磁歪定数は、第2磁性層20aの磁歪定数とは異なるように設定される。
第2磁性層20aが磁化固定層である場合も磁化自由層である場合も、第2磁性層20aの厚さは、例えば1nm以上20nm以下が好ましい。
例えば、第2磁性層20aが磁化固定層である場合、例えば、第2磁性層20aには、反磁性層/磁性層/Ru層/磁性層の積層構造を用いたシンセティックAF構造などを用いることができる。反磁性層には、例えばIrMnなどが用いられる。ハードバイアス層を設けても良い。
検知素子部50に必要な面積は、極めて小さいサイズで十分である。検知素子部50は、例えば、正方形のサイズで考えると、最少サイズとして、一辺の長さが10nm×10nm〜20nm×20nm以上のサイズを有していれば良い。
一方、このような小さい素子サイズでは、センサとして動作させるために反磁界の対策の難易度があがる。例えば、MEMS構造体に対して十分小さい素子サイズであれば、素子を配置するための面積は十分であるため、反磁界対策やノイズ対策がしやすいように素子サイズを大きくすることが実用上好ましい、素子サイズの例については、後述する。
検知素子部50の面積は、圧力によって撓む接続部74の面積よりも十分に小さくする。例えば、検知素子部50の面積は、錘部72の平面形状の面積の1/5以下である。例えば、錘部72のサイズは、60μm以上600μm以下程度である。例えば、錘部72の平面形状の直径が60μm程度の場合には、検知素子部50の一辺の長さは、例えば、12μm以下である。例えば、錘部72の平面形状の直径が600μmのときには、検知素子部50の一辺の長さは、120μm以下である。
この上限の値と比べると、上記の、一辺の長さが10nm以上20nm以下というサイズは、極端に小さい。このため、素子の加工精度等も考慮すると、検知素子部50を過度に小さくする必然性が生じない。そのため、検知素子部50の一辺のサイズは、例えば、0.5μm以上60μm以下程度とすることが現実的に好ましい。極端に素子サイズが小さくなると、検知素子部50に生じる反磁界の大きさが大きくなるため、検知素子部50のバイアス制御が困難になるなどの問題が生じる。素子サイズが大きくなると、反磁界の問題が生じなくなるため、工学的観点で扱いやすくなる。その観点で、0.5μm以上60μm以下が、好ましいサイズである。
例えば、検知素子部50のX軸方向に沿った長さは、0.5μm以上60μm以下が好ましい。検知素子部50のX軸方向に沿った長さは、1μm以上20μm以下がさらに好ましい範囲である。
例えば、検知素子部50のY軸方向(X軸方向に対して垂直で、X−Y平面に対して平行な方向)に沿った長さは、0.5μm以上60μm以下が好ましい。検知素子部50のY軸方向に沿った長さは、1μm以上20μm以下がさらに好ましい範囲である。
例えば、検知素子部50のZ軸方向(X−Y平面に対して垂直な方向)に沿った厚さ(長さ)は、20nm以上100nm以下である。厚さは、例えば、膜の積層膜厚で決まる。
検知素子部50のX軸方向に沿った長さは、検知素子部50のY軸方向に沿った長さと同じでも良く、異なっても良い。検知素子部50のX軸方向に沿った長さが、検知素子部50のY軸方向に沿った長さと異なるときに、形状磁気異方性が生じる。これにより、ハードバイアス層で得られる作用と同様の作用を得ることもできる。
検知素子部50において流される電流の向きは、第1磁性層10aから第2磁性層20aに向かう方向でも良く、第2磁性層20aから第1磁性層10aに向かう方向でも良い。
本実施形態に係る慣性センサ310によれば、高感度に加速度や変位などを検知する慣性センサを提供できる。
例えば、Siを用いたピエゾ抵抗型の慣性センサがある。この場合には、歪感度(ゲージファクタGF)は用いる材料で決まり、例えばゲージファクタGFは、約130である。また、Siを用いたピエゾ抵抗型の慣性センサの場合には、一辺が100μm程度の素子の面積が必要である。単位面積あたりのゲージファクタGFは、例えば130/100μm2であり、約1010となる。
一方、本実施形態に係る慣性センサにおいては、検知素子部50として、スピン歪センサを用いる。前述のように、4000〜5000程度のゲージファクタが得られる。本実施形態においては、磁性層を用いることで、さらに高いゲージファクタGFも得られる。例えば、約10,000のゲージファクタGFも得られる。このゲージファクタGFを実現するために必要な素子面積は、前述のように、一辺が100nm程度である。このため、例えば、単位面積あたりのゲージファクタGFは、約1017となる。このように、実施形態においては、Siを用いたMEMS構造の慣性センサの場合と比較して、例えば、約7桁の単位面積あたりの感度向上が可能になる。つまり、小さいデバイスでも、従来と同等の感度が実現できる。従来と同等のサイズにおいて、従来よりも高い特性が得られる。例えば、高感度、広周波数領域、または、広ダイナミックレンジなどの特性が得られる。実施形態によれば、従来技術では実現が困難だった慣性センサの実現が可能となる。
図11(b)に示したように、慣性センサ50は、バイアス層55a及び55b(ハードバイアス層)を含んでもよい。バイアス層55a及び55bは、歪抵抗変化部50sに対向して設けられる。
この例では、第2磁性層20が磁化固定層である。バイアス層55a及び55bは、第2磁性層20に並置される。バイアス層55a及び55bの間に、歪抵抗変化部50sが配置される。バイアス層55aと歪抵抗変化部50sとの間に絶縁層54aが設けられる。バイアス層55bと歪抵抗変化部50sとの間に絶縁層54bが設けられる。
バイアス層55a及び55bは、第1磁性層10にバイアス磁界を印加する。これにより、第1磁性層10の磁化方向を適正な位置にバイアスすることが可能になるとともに、単一磁区化することが可能となる。
バイアス層55a及び55bのそれぞれの大きさ(この例ではY軸方向に沿った長さ)は、例えば、100nm以上10μm以下である。
絶縁層54a及び54bのそれぞれの大きさ(この例ではY軸方向に沿った長さ)は、例えば、1nm以上5nm以下である。
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的斜視図である。
図12に表したように、慣性センサ320においては、第1検知素子部50aに加えて第2検知素子部50bがさらに設けられる。すなわち、接続部74は、第1部分74aに加えて、第2部分74bをさらに含む。例えば、第2部分74bの上に、第2検知素子部50bが設けられる。第2検知素子部50bは、第2部分74bに固定される。
この例では、第3検知素子部50c及び第4検知素子部50dがさらに設けられている。すなわち、接続部74は、第3部分74c及び第4部分74dをさらに含む。第3検知素子部50cは、第3部分74cの上に設けられる。第3検知素子部50cは、第3部分74cに固定される。第4検知素子部50dは、第4部分74dの上に設けられる。第4検知素子部50dは、第4部分74dに固定される。第1〜第4検知素子部50a〜50dは、検知素子部50に含まれる。後述するように、検知素子部50の数は5以上でも良い。
この例では、第1配線57と第2配線58とが、基部71に設けられる。この例では、第1配線57と第2配線58との少なくとも一部は、基部71の上面の上に設けられている。第1配線57と第2配線58は、検知素子部50のそれぞれに電気的に接続される。
この例では、第1〜第4部分74a〜74dは、互いに離間している。すなわち、接続部74は、互いに離間した複数の部分を含む。この例では、接続部74は、錘部72の互いに離間した複数の部分を保持する。
後述するように、実施形態はこれに限らず、第1〜第4部分74a〜74dは、連続していても良い。すなわち、接続部74は、錘部72の外縁と連続的に接続されても良い。
図12に表したように、第1〜第4検知素子部50a〜50dは、実質的に1つの平面内に設けられる。例えば、基部71から錘部72に向かう方向と、第1部分74aから第2部分74bに向かう方向と、に平行な平面が形成される。この例では、平面は、X−Y平面である。この例では、X−Y平面内に、第1〜第4検知素子部50a〜50dが設けられる。
例えば、X−Y平面に投影したときに、錘部72の重心72cと、第1検知素子部50aと、を結ぶ線は、錘部72の重心72cと、第2検知素子部50bと、を結ぶ線と、交差する。この例では、X−Y平面に投影したときに、第1検知素子部50aと、第3検知素子部50cと、を結ぶ線は、錘部72の重心72cを通る。この例では、X−Y平面に投影したときに、第2検知素子部50bと、第4検知素子部50dと、を結ぶ線は、錘部72の重心72cを通る。
第1〜第4検知素子部50a〜50dは、錘部72の外縁72rに沿って、並ぶ。
図13(a)〜図13(c)は、第2の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的断面図である。
図13(a)に表したように、第2検知素子部50bは、第3磁性層10bと、第4磁性層20bと、第2中間層30bと、を含む。第2中間層30bは、第3磁性層10bと第4磁性層20bとの間に設けられ、非磁性である。第3磁性層10bと、第4磁性層20bと、第2中間層30bと、は、第2抵抗変化部50sbに含まれる。この例では、第3電極51bと、第4電極52bと、がさらに設けられる。第3電極51bと、第4電極52bと、の間に、第2抵抗変化部50sbが配置される。この例では、第3電極51bと第4電極52bの間に第3磁性層10bが配置され、第3磁性層10bと第3電極51bとの間に、第4磁性層20bが配置されている。
図13(b)に表したように、第3検知素子部50cは、第5磁性層10cと、第6磁性層20cと、第3中間層30cと、を含む。第3中間層30cは、第5磁性層10cと第6磁性層20cとの間に設けられ、非磁性である。第5磁性層10cと、第6磁性層20cと、第3中間層30cと、は、第3抵抗変化部50scに含まれる。この例では、第5電極51cと、第6電極52cと、がさらに設けられる。第5電極51cと、第6電極52cと、の間に、第3抵抗変化部50scが配置される。
図13(c)に表したように、第4検知素子部50dは、第7磁性層10dと、第8磁性層20dと、第4中間層30dと、を含む。第4中間層30dは、第7磁性層10dと第8磁性層20dとの間に設けられ、非磁性である。第7磁性層10dと、第8磁性層20dと、第4中間層30dと、は、第4抵抗変化部50sdに含まれる。この例では、第7電極51dと、第8電極52dと、がさらに設けられる。第7電極51dと、第8電極52dと、の間に、第4抵抗変化部50sdが配置される。
第3磁性層10b、第5磁性層10c及び第7磁性層10dは、例えば磁化自由層である。これらの磁性層には、第1磁性層10aに関して説明した材料及び構成が用いられる。
第4磁性層20b、第6磁性層20c及び第8磁性層20dは、例えば参照層である。これらの磁性層は、例えば、磁化自由層または磁化固定層である。これらの磁性層には、第2磁性層20aに関して説明した材料及び構成が用いられる。
図14(a)及び図14(b)は、第2の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的平面図である。
図14(a)及び図14(b)は、それぞれ、第1状態ST1及び第2状態ST2に対応する。
図14(a)に表したように、1つの平面(例えばX−Y平面)は、基部71から錘部72に向かう方向と、第1部分74aから第2部分74bに向かう方向と、を含む。例えば、その平面(X−Y平面)内の錘部72の重心72cの位置と、その平面内の第1部分74aの位置と、を結ぶ方向を第1方向LN1とする。一方、その平面内の錘部72の重心72cの位置と、その平面内の第2部分74bの位置と、を結ぶ方向を第2方向LN2とする。第1方向LN1は、第2方向LN2と交差する。この例では、第1方向LN1と、第2方向LN2と、の間の角度は、実質的に90度である。この角度は、例えば、0度よりも大きく180度よりも小さい。
X−Y平面に投影したときに、錘部72の重心72cを中心とする円周に沿って、複数の検知素子部50が配置されている。
例えば、第1状態ST1においては、第1検知素子部50aにおいて、第1磁性層10aの磁化の方向(第1層磁化方向10am)は、第2磁性層20aの磁化の方向(第2層磁化方向20am)に沿っている。この例では、第1層磁化方向10amは、第2層磁化方向20amに対して反平行である。
例えば、第1状態ST1においては、第2検知素子部50bにおいて、第3磁性層10bの磁化の方向(第3層磁化方向10bm)は、第4磁性層20bの磁化の方向(第4層磁化方向20bm)に沿っている。この例では、第3層磁化方向10bmは、第4層磁化方向20bmに対して反平行である。
例えば、第1状態ST1においては、第3検知素子部50cにおいて、第5磁性層10cの磁化の方向(第5層磁化方向10cm)は、第6磁性層20cの磁化の方向(第6層磁化方向20cm)に沿っている。この例では、第5層磁化方向10cmは、第6層磁化方向20cmに対して反平行である。
例えば、第1状態ST1においては、第4検知素子部50dにおいて、第7磁性層10dの磁化の方向(第7層磁化方向10dm)は、第8磁性層20dの磁化の方向(第8層磁化方向20dm)に沿っている。この例では、第7層磁化方向10dmは、第8層磁化方向20dmに対して反平行である。
説明を簡単にするために、参照層20(第2磁性層20a、第4磁性層20b、第6磁性層20c及び第8磁性層20dなど)が、磁化固定層であるとする。
第2磁性層20aの磁化の方向(第2層磁化方向20am)は、第4磁性層20bの磁化の方向(第4層磁化方向20bm)と交差している。例えば、第2層磁化方向20amと第4層磁化方向20bmとの間の角度は、90度である。
この例では、第6磁性層20cの磁化の方向(第6層磁化方向20cm)は、第2磁性層20aの磁化の方向(第2層磁化方向20am)に対して平行である。第8磁性層20dの磁化の方向(第8層磁化方向20dm)は、第4磁性層20bの磁化の方向(第4層磁化方向20bm)に対して平行である。
図14(b)に表したように、第2状態ST2になると、磁化自由層10(第1磁性層10a、第3磁性層10b、第5磁性層10c及び第7磁性層10dなど)の磁化の方向が、第1状態ST1のそれらから変化する。
例えば、図14(a)に表したように、第1磁性層10aにおいては、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1であるときに、第1磁性層10aの磁化(第1層磁化方向10am)は、第1磁化方向である。この例では、第1状態ST1における第1磁化方向(第1層磁化方向10am)、Y軸方向に沿っている。そして、図14(b)に表したように、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1とは異なる第2状態ST2のときには、第1磁性層10aの磁化(第1層磁化方向10am)は、第1状態ST1における第1磁化方向とは異なる方向である。この例では、第2状態ST2における第1磁性層10aの磁化(第1層磁化方向10am)は、Y軸方向に対して傾斜している。これにより、第1検知素子部50aにおいて、第1状態ST1と第2状態ST2との間で、電気抵抗が変化する。
同様に、図14(a)に表したように、第2検知素子部50bにおいては、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1であるときに、第3磁性層10bの磁化(第3層磁化方向10bm)は、第3磁化方向である。この例では、第1状態ST1における第3磁化方向(第3層磁化方向10bm)は、X軸方向に沿っている。そして、図14(b)に表したように、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第2状態ST2のときには、第3磁性層10bの磁化(第3層磁化方向10bm)は、第1状態ST1における第3磁化方向とは異なる方向である。この例では、第2状態ST2における第3磁性層10bの磁化(第3層磁化方向10bm)は、X軸方向に対して傾斜している。これにより、第2検知素子部50bにおいて、第1状態ST1と第2状態ST2との間で、電気抵抗が変化する。
慣性センサ320においては、錘部72の重心72cを基準として、異なる方向に、複数の検知素子部50が配置されている。これにより、異なる方向の加速度を検知することができる。例えば、錘部72の重心72cを基準として、X軸方向に配置される第1検知素子部50aにおける参照層(第2磁性層20a)の磁化の方向と、Y軸方向に配置される第2検知素子部50bにおける参照層(第4磁性層20b)の磁化の方向と、が交差することで、X軸方向に沿った加速度と、Y軸方向に沿った加速度と、が検知できる。さらに、Z軸方向に沿った加速度も検知できる。慣性センサ320によれば、3つの軸の任意の方向の加速度が検知できる。
参照層20が、磁化固定層である場合、複数の参照層20のそれぞれの磁化の方向は、複数の参照層20のそれぞれの配置に応じて設定しても良い。図14(a)に表したように、この例では、第1方向LN1と、第2方向LN2と、の間の角度は、90度である。このとき、第2磁性層20aの磁化の方向と、第4磁性層20bの磁化の方向と、の間の角度は、90度である。第1方向LN1と、第2方向LN2と、の間の角度が、70度以上110度以下であるとき、第2磁性層20aの磁化の方向と、第4磁性層20bの磁化の方向と、の間の角度は、例えば、70度以上110度以下とする。それぞれの検知素子部50における特性が実質的に対称になり、検知感度を高めることができる。
この例では、参照層20が、磁化固定層である場合について説明したが、参照層20が磁化自由層でも良い。この場合には、例えば、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1であるときには、第1磁性層10aの磁化は第1磁化方向であり、第2磁性層20aの磁化は第2磁化方向である。そして、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1とは異なる第2状態のときには、第1磁性層10aの磁化は、第1磁化方向とは異なる方向であり、第2磁性層20aの磁化は、第2磁化方向とは異なる方向である。これにより、第1検知素子部50aにおいて、第1状態ST1と第2状態ST2との間で、電気抵抗が変化する。
一方、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第1状態ST1であるときには、第3磁性層10bの磁化は第3磁化方向であり、第4磁性層20bの磁化は、第4磁化方向である。そして、錘部72の基部71に対する相対的な位置が第2状態ST2のときには、第3磁性層10bの磁化は、第3磁化方向とは異なる方向であり、第4磁性層20bの磁化は、第4磁化方向とは異なる方向である。これにより、第2検知素子部50bにおいて、第1状態ST1と第2状態ST2との間で、電気抵抗が変化する。
このように、接続部74の複数の位置(例えば第1部分74a及び第2部分74b)のそれぞれに検知素子部50のそれぞれが設けられる。参照層20として磁化固定層を用いる場合、第1検知素子部50aの第2磁性層20aの磁化の方向と、第2検知素子部50bの第4磁性層20bの磁化の方向と、を互いに異ならせることで、3軸の方向の加速度が検出される。または、参照層20として磁化自由層を用いることで、3軸の方向の加速度が検出される。
図15(a)及び図15(b)は、第2の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的平面図である。
図15(a)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ320aにおいては、複数の検知素子部50が設けられる。この例では、検知素子部50の数は、8である。実施形態において、検知素子部50の数は、任意である。
この例では、検知素子部50のそれぞれの参照層20の磁化20mは、それぞれの検知素子部50と、錘部72の重心72cと、を結ぶ線に対して直交している。検知素子部50のそれぞれの磁化自由層10の磁化10mは、それぞれの検知素子部50の参照層20の磁化20mに対して、実質的に平行(この例では反平行)である。
実施形態において、検知素子部50のそれぞれの参照層20の磁化20mと、錘部72の重心72cと、を結ぶ線と、の間の角度は、を90度から変更しても良い。検知素子部50のそれぞれの磁化自由層10の磁化10mと、それぞれの検知素子部50の参照層20の磁化20mと、の間の角度が0度または180度から変更しても良い。
図15(b)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ320bにおいては、接続部74が連続的であり、例えば、第1部分74aは、第2部分74bと連続している。
実施形態において、第1部分74aと、第2部分74bと、が分断されていると、加わる加速度に対する接続部74の変形の程度が大きくなり、検知感度が高くなる。一方、接続部74が連続的であると、接続部74の機械的強度が高まる。接続部74の厚さと、必要な検知感度と、信頼性の観点と、に応じて、接続部74が設計される。
例えば、接続部74が薄いと、高い検知感度が得られる。例えば、X−Y平面は、基部71から錘部72に向かう方向と、第1部分74aから第2部分74bに向かう方向と、に平行な平面である。X−Y平面に対して垂直な方向(例えばZ軸方向)を第3方向とする。第3方向に沿った第1部分74aの長さ(厚さ)は、第3方向(Z軸方向)に沿った錘部72の長さ(厚さ)よりも短い(薄い)。そして、第3方向(Z軸方向)に沿った第2部分74bの長さ(厚さ)は、第3方向(Z軸方向)に沿った錘部72の長さ(厚さ)よりも短い(薄い)。
そして、第1部分74aの幅、及び、第2部分74bの幅は、錘部72の幅よりも狭い。例えば、第1部分74aと第2部分74bとは、互いに分断されている。このとき、X−Y平面に対して平行で第1方向LN1に対して垂直な方向を第4方向とする。第4方向に沿った第1部分74aの長さ(幅)は、第4方向に沿った錘部72の長さ(幅)よりも短い。一方、X−Y平面に対して平行で第2方向LN2に対して垂直な方向を第5方向とする。第5方向に沿った第2部分74bの長さ(幅)は、第5方向に沿った錘部72の長さ(幅)よりも短い。これにより、高い検知感度が得易くなる。
(第3の実施形態)
図16(a)及び図16(b)は、第3の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的斜視図である。
図16(a)は、本実施形態に係る慣性センサ330における第1検知素子部50aを例示している。図16(b)は、慣性センサ330における第2検知素子部50bを例示している。これらの図においては、基部71と、錘部72とは、省略されている。慣性センサ330における基部71及び錘部72は、例えば、第1、第2実施形態に関して説明したものと同様である。
図16(a)に表したように、第1磁性層10aは、第1延在方向Dea1に沿って延在している。第1延在方向Dea1は、第1磁性層10aから第2磁性層20aに向かう第1積層方向Dza1(例えばZ軸方向)に対して交差する。この例では、第1延在方向Dea1は、第1積層方向Dza1に対して垂直である。第1磁性層10aは、第1延在方向Dea1に沿った長さ(第1長軸長Lea1)を有する。第1磁性層10aは、第1積層方向Dza1に対して交差し第1延在方向Dea1に対して交差する方向(方向Dfa1)の長さ(第1短軸長Lfa1)を有する。第1磁性層10aの第1長軸長Lea1は、第1磁性層10aの第1短軸長Lfa1よりも長い。
第2磁性層20aは、第2延在方向Dea2に沿って延在している。第2延在方向Dea2は、第1磁性層10aから第2磁性層20aに向かう第1積層方向Dza1(例えばZ軸方向)に対して交差する。この例では、第2延在方向Dea2は、第1積層方向Dza1に対して垂直である。第2磁性層20aは、第2延在方向Dea2に沿った長さ(第2長軸長Lea2)を有する。第2磁性層20aは、第1積層方向Dza1に対して交差し第2延在方向Dea2に対して交差する方向(方向Dfa2)の長さ(第2短軸長Lfa2)を有する。第2磁性層20aの第2長軸長Lea2は、第2磁性層20aの第2短軸長Lfa2よりも長い。
すなわち、第1検知素子部50aにおいて、形状異方性が設けられる。この例では、第2延在方向Dea2は、第1延在方向Dea1に沿っている。例えば、第2磁性層20aの延在方向(第2延在方向Dea2)は、第1磁性層10aの延在方向(第1延在方向Dea1)に対して平行である。
例えば、第1長軸長Lea1(第1延在方向Dea1の第1磁性層10aの長さ)は、第1短軸長Lfa1(第1積層方向Dza1に対して交差し第1延在方向Dea1に対して交差する方向Dfa1の第1磁性層10aの長さ)の1.5倍以上3倍以下である。
例えば、第2長軸長Lea2(第2延在方向Dea2の第2磁性層20aの長さ)は、第2短軸長Lfa2(第1積層方向Dza1に対して交差し第2延在方向Dea2に対して交差する方向Dfa2の第2磁性層20aの長さ)の1.5倍以上3倍以下である。
図16(b)に表したように、第3磁性層10bは、第3延在方向Deb1に沿って延在している。第3延在方向Deb1は、第3磁性層10bから第4磁性層20bに向かう第2積層方向Dzb1(例えばZ軸方向)に対して交差する。この例では、第3延在方向Deb1は、第2積層方向Dzb1に対して垂直である。第3磁性層10bは、第3延在方向Deb1に沿った長さ(第3長軸長Leb1)を有する。第3磁性層10bは、第2積層方向Dzb1に対して交差し第3延在方向Deb1に対して交差する方向(方向Dfb1)の長さ(第3短軸長Lfb1)を有する。第3磁性層10bの第3長軸長Leb1は、第3磁性層10bの第3短軸長Lfb1よりも長い。
第4磁性層20bは、第4延在方向Deb2に沿って延在している。第4延在方向Deb2は、第3磁性層10bから第4磁性層20bに向かう第2積層方向Dzb1(例えばZ軸方向)に対して交差する。この例では、第4延在方向Deb2は、第2積層方向Dzb1に対して垂直である。第5磁性層20bは、第4延在方向Deb2に沿った長さ(第4長軸長Leb2)を有する。第4磁性層20bは、第2積層方向Dzb1に対して交差し第4延在方向Deb2に対して交差する方向(方向Dfb2)の長さ(第4短軸長Lfb2)を有する。第4磁性層20bの第4長軸長Leb2は、第4磁性層20bの第4短軸長Lfb2よりも長い。
すなわち、第2検知素子部50bにおいて、形状異方性が設けられる。この例では、第4延在方向Deb2は、第3延在方向Deb1に沿っている。第4磁性層20bの延在方向(第4延在方向Deb2)は、第3磁性層10bの延在方向(第3延在方向Deb1)に対して平行である。
例えば、第3長軸長Leb1(第3延在方向Deb1の第3磁性層10bの長さ)は、第3短軸長Lfb1(第2積層方向Dzb1に対して交差し第3延在方向Deb1に対して交差する方向Dfb1の第3磁性層10bの長さ)の1.5倍以上3倍以下である。
例えば、第4長軸長Leb2(第4延在方向Deb2の第4磁性層20bの長さ)は、第4短軸長Lfb2(第2積層方向Dzb1に対して交差し第4延在方向Deb2に対して交差する方向Dfb2の第4磁性層20bの長さ)の1.5倍以上3倍以下である。
例えば、第1長軸長Lea1、第2長軸長Lea2、第3長軸長Leb1及び第4長軸長Leb2のそれぞれは、0.5μm以上60μm以下である。
第1検知素子部50a及び第2検知素子部50bに形状異方性を設け、形状異方性の方向(延在方向)を変えることで、第1検知素子部50aの参照層20(第2磁性層20a)の磁化の方向と、第2検知素子部50bの参照層20(第4磁性層20b)の磁化の方向と、を互いに異ならせることができる。
図17は、第3の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的平面図である。
図17においては、図を見易くするために、接続部74に設けられる複数の部分(第1部分74a及び第2部分74bなど)の境界は、省略されている。
図17に表したように、本実施形態に係る慣性センサ330においては、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a及び第2検知素子部50bなど)が、設けられる。例えば、複数の検知素子部50は、錘部72の外縁72rに沿って設けられている。
例えば、第1検知素子部50aにおいて、第1延在方向Dea1及び第2延在方向Dea2は、Y軸方向に沿っている。
例えば、第2検知素子部50bにおいて、第3延在方向Deb1及び第4延在方向Deb2は、X軸方向に沿っている。
このように、第1検知素子部50aの第1磁性層10aの第1延在方向Dea1は、第2検知素子部50bの第3磁性層10bの第3延在方向Deb1と交差する。第1検知素子部50aの第2磁性層20aの第2延在方向Dea2は、第2検知素子部50bの第4磁性層20bの第4延在方向Deb2と交差する。
慣性センサ330においては、形状異方性を用いて、複数の磁性層のそれぞれの磁化の方向を制御できる。これにより、接続部74の所望の位置に所望の特性を有する検知素子部50を設けることができる。これにより、より高い感度の検知が可能になる。
この例では、X−Y平面に投影したときの錘部72の形状は、円形である。錘部72に加速度72gが加わったときに生じる応力の方向55は、例えば、錘部72の重心72cを中心とした放射状の線に沿う。例えば、応力の方向55に対して交差するように、磁性層の延在方向が設定される。例えば、磁性層の延在方向は、錘部72の重心72cを中心とした放射状の線と交差する。例えば、第1延在方向Dea1は、重心72cと第1磁性層10aとを通る線に対して交差する。第1延在方向Dea1と、重心72cと第1磁性層10aとを通る線と、の間の角度は、例えば、70度以上110度以下であり、例えば約90度である。
例えば、第1方向LN1から第1延在方向Dea1までの角度は、第2方向LN2から第3延在方向Deb1までの角度と、実質的に同じである。第1方向LN1から第1延在方向Dea1までの角度と、第2方向LN2から第3延在方向Deb1までの角度と、の差は、10度以下である。
図18(a)及び図18(b)は、第3の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的平面図である。
これらの図においては、図を見易くするために、接続部74に設けられる複数の部分(第1部分74a及び第2部分74bなど)の境界は、省略されている。
図18(a)及び図18(b)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ330a及び330bにおいても、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a及び第2検知素子部50bなど)が、設けられる。
図18(a)に表したように、慣性センサ330aにおいては、磁性層の延在方向は、錘部72の重心72cを中心とした放射状の線に対して傾斜している。例えば、第1延在方向Dea1と、重心72cと第1磁性層10aとを通る線と、の間の角度は、例えば、0度よりも大きく90度よりも小さい。例えば、第1方向LN1から第1延在方向Dea1までの角度と、第2方向LN2から第3延在方向Deb1までの角度と、の差は、10度以下である。
図18(b)に表したように、慣性センサ330bにおいては、磁性層の延在方向は、錘部72の重心72cを中心とした放射状の線に沿っている。例えば、第1延在方向Dea1と、重心72cと第1磁性層10aとを通る線と、の間の角度は、例えば、プラスマイナス5度以下である。
このような慣性センサによっても、高感度に、加速度や変位を検知することが可能となる。
図19は、第3の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的斜視図である。
図19は、本実施形態に係る別の慣性センサ330cにおける第1検知素子部50aを例示している。図19においては、基部71と、錘部72とは、省略されている。慣性センサ330cにおける基部71及び錘部72は、例えば、第1、第2実施形態に関して説明したものと同様である。
図19に表したように、第1検知素子部50aにおいて、部第1磁性層10a、第2磁性層20a及び第1中間層30aの平面形状(X−Y平面に投影したときの形状)は、扁平円状(楕円も含む)。同様に、第2検知素子部50bに設けられる磁性層のそれぞれの平面形状も扁平円状でも良い。
図20(a)及び図20(b)は、第3の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的斜視図である。
図20(a)は、本実施形態に係る慣性センサ331における第1検知素子部50aを例示している。図20(b)は、慣性センサ331における第2検知素子部50bを例示している。これらの図においては、基部71、錘部72及び接続部74は、省略されている。慣性センサ331における基部71、錘部72及び接続部74は、例えば、慣性センサ330に関して説明したものと同様である。
図20(a)及び図20(b)に表したように、この例では、磁化自由層10の延在方向と、参照層20の延在方向と、が互いに交差している。
例えば、図20(a)に表したように、第1磁性層10aは、第1延在方向Dea1に沿って延在している。第2磁性層20aは、第2延在方向Dea2に沿って延在している。第2延在方向Dea2は、第1延在方向Dea1と交差している。
例えば、図20(b)に表したように、第3磁性層10bは、第3延在方向Deb1に沿って延在している。第4磁性層20bは、第4延在方向Deb2に沿って延在している。第4延在方向Deb2は、第3延在方向Deb1と交差している。
すなわち、慣性センサ331においては、第1磁性層10aに設けられる形状異方性の方向が、第2磁性層20aに設けられる形状異方性の方向とは異なる。第3磁性層10bに設けられる形状異方性の方向が、第4磁性層20bに設けられる形状異方性の方向とは異なる。例えば、第1磁性層10aの形状異方性に基づく磁化の方向を、第2磁性層20aの形状異方性に基づく磁化の方向と、異ならせることができる。例えば、第3磁性層10bの形状異方性に基づく磁化の方向を、第4磁性層20bの形状異方性に基づく磁化の方向と、異ならせることができる。これにより、所望の磁化の方向を有する検知素子部50が得られる。より高感度な検知が可能になる。
図21は、第3の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的平面図である。
図21は、本実施形態に係る慣性センサ331の平面図である。図21においては、図を見易くするために、接続部74に設けられる複数の部分(第1部分74a及び第2部分74bなど)の境界は、省略されている。
図21に表したように、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a及び第2検知素子部50bなど)は、錘部72の外縁72rに沿って設けられている。
この例では、X−Y平面に投影したときに、錘部72の重心7cと、第1検知素子部50aと、を通る直線56aと、第1磁性層10aの第1延在方向Dea1と、は、交差している。直線56aと、第2磁性層20aの第2延在方向Dea2と、は、交差している。この例では、直線56aと第1延在方向Dea1との間の角度は、直線56aと第2延在方向Dea2との間の角度と、同じである。
この例では、X−Y平面に投影したときに、錘部72の重心7cと、第2検知素子部50bと、を通る直線56bと、第3磁性層10bの第3延在方向Deb1と、は、交差している。直線56bと、第4磁性層20bの第4延在方向Deb2と、は、交差している。この例では、直線56bと第3延在方向Deb1との間の角度は、直線56bと第4延在方向Deb2との間の角度と、同じである。
慣性センサ331によれば、より高感度な検知が可能になる。
検知素子部50に含まれる磁性層どうしの延在方向が異なる場合において、延在方向どうしの間の角度は任意である。錘部72の重心72cと、検知素子部50と、を通る直線と磁性層の延在方向と、の角度は、任意である。
図22(a)及び図22(b)は、第3の実施形態に係る別の慣性センサを例示する模式的平面図である。
これらの図は、慣性センサ331に用いられる検知素子部50(第1検知素子部50a)の構成を例示している。これらの図においては、中間層30(第1中間層30a)は省略されている。これらの図は、第1磁性層10a及び第2磁性層20aの平面形状を例示している。
図22(a)に表した例では、第1磁性層10a及び第2磁性層20aのそれぞれの平面形状は、長方形である。この場合は、第1長軸長Lea1は、長方形の長辺の長さに対応する。第1短軸長Lfa1は、長方形の短辺の長さに対応する。第2長軸長Lea2は、長方形の長辺の長さに対応する。第2短軸長Lfa2は、長方形の短辺の長さに対応する。
図22(b)に表した例では、第1磁性層10a及び第2磁性層20aのそれぞれの平面形状は、扁平円状(楕円を含む)である。この場合は、第1長軸長Lea1は、扁平円の長軸の長さに対応する。第1短軸長Lfa1は、扁平円の短軸の長さに対応する。第2長軸長Lea2は、扁平円の長軸の長さに対応する。第2短軸長Lfa2は、扁平円の短軸の長さに対応する。
実施形態において、磁性層の平面形状は、各種の変形が可能である。
(第4の実施形態)
図23は、第4の実施形態に係る慣性センサを例示する模式的斜視図である。
図23に表したように、本実施形態に係る慣性センサ340においては、接続部74の第1部分74aに、複数の検知素子部50(複数の第1検知素子部50a)が設けられている。この例では、複数の第1検知素子部50aの一部は、錘部72の外縁72rに沿う方向に沿って並ぶ。さらに、複数の第1検知素子部50aの別の一部は、錘部72の重心72cから外縁72rに向かう放射状の直線の方向(例えば第1方向LN1)に沿って並ぶ。
この例では、接続部74の第2部分74bに、複数の第2検知素子部50bが設けられている。この例では、複数の第2検知素子部50bの一部は、錘部72の外縁72rに沿う方向に沿って並ぶ。さらに、複数の第2検知素子部50bの別の一部は、錘部72の重心72cから外縁72rに向かう放射状の直線の方向(例えば第2方向LN2)に沿って並ぶ。
加速度72gが加わると、接続部74の第1部分74a及び第2部分74bのそれぞれに歪が生じる。同じ方向の歪が生じる第1部分74a内に複数の第1検知素子部50aを設けることで、感度がより向上する。同じ方向の歪が生じる第2部分74b内に複数の第2検知素子部50bを設けることで、感度がより向上する。複数設けられる検知素子部50は、互いに、直列または並列に接続しても良い。
図24(a)〜図24(c)は、第4の実施形態に係る慣性センサを例示する模式図である。
これらの図は、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a)の接続の接続状態の例を示している。
図24(a)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ341aにおいては、複数の検知素子部50は、電気的に直列に接続されている。例えば、第1部分74a上に複数の第1検知素子部50aが設けられる、複数の第1検知素子部50aの少なくとも2つは、電気的に直列接続される。
直列に接続されている検知素子部50の数をNとしたとき、得られる電気信号は、検知素子部50の数が1である場合のN倍となる。その一方で、熱ノイズ及びショットキーノイズは、N1/2倍になる。すなわち、SN比(signal-noise ratio:SNR)は、N1/2倍になる。直列の接続される検知素子部50の数Nを増やすことで、接続部74のサイズを大きくすることなく、SN比を改善することができる。
例えば、第1検知素子部50aが設けられる第1部分74aに設けられる複数の第1検知素子部50aのそれぞれにおいて、加速度72gに対する電気抵抗Rの変化(例えば極性)は、同様である。そのため、複数の第1検知素子部50aのそれぞれの信号を加算することが可能である。
1つの検知素子部50に加えられるバイアス電圧は、例えば、50ミリボルト(mV)以上150mV以下である。N個の検知素子部50を直列に接続した場合は、バイアス電圧は、50mV×N以上150mV×N以下となる。例えば、直列に接続されている検知素子部50の数Nが25である場合には、バイアス電圧は、1V以上3.75V以下となる。
バイアス電圧の値が1V以上であると、検知素子部50から得られる電気信号を処理する電気回路の設計が容易になり、実用的に好ましい。例えば、圧力が生じるときに同じ極性の電気信号が得られる複数の検知素子部50を設ける。これらの検知素子を直列に接続することで、上記のように、SN比が向上できる。
バイアス電圧(端子間電圧)が10Vを超えると、検知素子部50から得られる電気信号を処理する電気回路においては、望ましくない。実施形態においては、適切な電圧範囲になるように、直列に接続される検知素子部50の数N、及び、バイアス電圧が設定される。
例えば、複数の検知素子部50を電気的に直列に接続したときの電圧は、1V以上10V以下となるのが好ましい。例えば、電気的に直列に接続された複数の検知素子部50(第1検知素子部50a)の2つの端の端子間(一方の端の端子と、他方の端の端子と、の間)に印加される電圧は、1V以上10V以下である。
この電圧を発生させるためには、1つの検知素子部50に印加されるバイアス電圧が50mVである場合、直列に接続される検知素子部50の数Nは、20以上200以下が好ましい。1つの検知素子部50に印加されるバイアス電圧が150mVである場合、直列に接続される検知素子部50(第1検知素子部50a)の数Nは、7以上66以下であることが好ましい。
図24(b)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ341bにおいては、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a)が、電気的に並列に接続されている。実施形態において、複数の検知素子部50の少なくとも一部は、電気的に並列に接続されても良い。
図24(c)に表したように、本実施形態に係る慣性センサ341cにおいては、複数の検知素子部50(第1検知素子部50a)がホイートストンブリッジ回路を形成するように、複数の検知素子部50が接続されている。これにより、例えば、検知特性の温度補償を行うことができる。
実施形態によれば、高感度に加速度や変位などを検知する慣性センサを提供することができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、慣性センサに含まれる基部、錘部、接続部、検知素子部、磁性層及び中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した慣性センサを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての慣性センサも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。