JP2017191066A - 磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法 - Google Patents

磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法 Download PDF

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健一 内田
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俊介 大門
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亮 井口
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Abstract

【課題】磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法に関し、磁区等の磁気特性観察を通してスピンペルチェ効果の微視的なメカニズムを解明したり界面敏感な磁気特性を計測する方法を提供する。【解決手段】磁性体にスピン流注入部材4を接合した試料1のスピン流注入部材に対してその平面方向に電圧を印加して、スピン流或いはスピン波スピン流を磁性体3に注入し、注入されたスピン流或いはスピン波スピン流と磁性体に形成された磁区の磁気モーメントとの反応による発熱−吸熱反応による温度変化を赤外線画像として撮像し、撮像した赤外線画像から磁性体の磁気特性を解析する。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法に関するものであり、例えば、磁性体に発現する磁区の状態や、表面・界面敏感な磁気測定をスピンペルチェ効果の利用によって可能にする磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法に関するものである。
磁性材料は様々な製品・研究に用いられており、磁性材料の持つ磁気特性を調べるため一つの手段として磁区観察装置が実用化されている。例えば、磁気記録媒体、磁気ヘッド或いはスピントロニクスデバイスは磁性材料からなり、磁性材料に磁区が形成されている。この磁区における磁化方向は外部磁場を印加しない状態では磁区毎に異なった方向を向いている。
近年、微細加工技術の発展とともに、デバイスにおける磁性体膜のサイズは、ミクロンオーダからサブミクロンオーダのサイズになっており、これらの微小サイズの磁性体膜における磁区構造を評価するための各種の磁区観察装置が実用化されている。
このような磁区観察装置としては、スピン偏極電子顕微鏡或いはスピン偏極トンネル顕微鏡等の電子顕微鏡、磁気力顕微鏡(MFM)或いはカー顕微鏡等が挙げられる。この内、電子顕微鏡やMFMを用いた磁区観察方法の場合には、ナノオーダーの分解能を有するものの、試料表面をスキャンする必要があり、視野が狭く且つ時間がかかるという問題がある。
一方、カー顕微鏡は、強磁性体に光を入射すると、強磁性体の磁区の磁化方向に応じて、偏光面が回転する磁気光学カー効果を動作原理にしているものである。このカー顕微鏡は、試料に光を照射することにより、磁区構造の変化をリアルタイムで撮像することができるという特長がある。
特開2009−130070号公報 国際公開公報 WO2009/151000
J.Flipse et al.,Phys.Rev.Lett.Vol.113,p.027601(2014)
しかし、カー顕微鏡を用いた磁区観察装置は、磁気光学効果が小さな磁性材料に適用することが困難であるという問題があるとともに、表面・界面敏感な磁気測定が困難であるという問題もある。
一方、近年、従来のエレクトロニクスに代わる情報処理技術としてスピントロニクスが注目を集めている。エレクトロニクスでは、電子のもつ電荷によってビットを表現し、電流によって情報を伝達している。これに対して磁性材料を用いたスピントロニクスでは、電子の持つスピンによってビットを表現し、スピン流によって情報を伝達している。スピントロニクスはエレクトロニクスに比較して消費電力が少ない情報処理が実現できると期待されており、すでに記憶素子での実用化がなされている。
この様な背景の中、本発明者等は、磁性体とスピン流−電流変換部材との接合を利用したスピンゼーベック効果素子を提案している(例えば、特許文献1参照)。このスピンゼーベック効果は、磁性材料として磁性絶縁体を用いた場合にも生じる現象であり、この場合には、スピン流の代わりに、スピン波スピン流が磁性絶縁体中を波として伝搬する(例えば、特許文献2参照)。
また、スピン流−熱流変換の相反性から、スピンゼーベック効果には逆効果も存在する。このような逆効果は、スピンペルチェ効果と呼ばれ、磁性体とスピン軌道相互作用を有しスピン流注入部材となる導電体との接合界面に流れるスピン流によって誘起される熱流発生現象である。このスピンペルチェ効果は、スピンゼーベック効果と同様に磁性絶縁体においても発現する現象であり、微細薄膜熱電対を用いた測定によって2014年に初めて実験的に観測された(例えば、非特許文献1参照)。
図15は、スピンペルチェ効果の説明図である。磁性体41とスピン流注入部材42の二層構造からなる試料のスピン流注入部材42に電流を流すと、スピン流注入部材42と磁性体41との界面におけるスピンホール効果(スピン流-電流変換現象)によって電流が面直方向に流れるスピン流Jへと変換される。このスピン流Jは、スピン流注入部材42と磁性体41との界面の相互作用を介して、磁性体41中に注入される。
磁性体41にスピン流Jが注入されると、磁性体41内の磁化43の運動が注入されるスピンの向きに応じて増強または抑制される。この磁化43の運動の変化は磁化43の温度と直接的に関係しており、注入されるスピンの向きと磁化43が同じ向きであれば発熱し、逆向きであれば冷却が起こる。したがって、試料に外部磁場Hextを印加すると、磁性体41内の磁化43の向きが外部磁場Hextの方向に整列するので、外部磁場Hextの向きにより吸熱反応或いは発熱反応が発現する。しかし、スピンペルチェ効果の微視的なメカニズムは報告されていない。
本発明者は、鋭意研究の結果、このような、スピンペルチェ効果を利用することにより、微小構造の磁化の向き、即ち、磁区構造を知ることができることに想い至った。また、カー顕微鏡では困難であった磁区光学効果が小さな磁性体材料の磁区の観察が可能であることに想い至った。さらに、スピンペルチェ効果は、磁性体とスピン注入部材となる導電体の接合界面で発現する現象であるので、カー顕微鏡とは異なり表面・界面で発現する新しい磁気構造の発見にも適用可能であるとの結論に至った。
したがって、本発明は、磁区等の磁気特性観察を通してスピンペルチェ効果の微視的なメカニズムを解明することや界面敏感な磁気特性を計測することを目的とする。
一つの態様では、磁気特性観察装置は、磁性体にスピン流注入部材を接合した試料を載置する試料載置部材と、前記スピン流注入部材に対してその平面方向に電圧を印加する電圧印加部材と、前記試料の温度を赤外線画像として撮像する赤外線撮像部材と、前記赤外線画像から磁性体の磁区状態を解析する解析部材とを備えている。
他の態様では、磁気特性観察方法は、磁性体にスピン流注入部材を接合した試料のスピン流注入部材に対してその平面方向に電圧を印加して、スピン流或いはスピン波スピン流を前記磁性体に注入し、前記注入されたスピン流或いはスピン波スピン流と前記磁性体に形成された磁区の磁気モーメントとの反応による発熱−吸熱反応による温度変化を赤外線画像として撮像し、前記撮像した赤外線画像から磁性体の磁気特性を解析する。
一つの側面として、磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法において、磁区等の磁気特性観察を通してスピンペルチェ効果の微視的なメカニズムを解明することや界面敏感な磁気特性を計測することが可能になる。
本発明の実施の形態の磁気特性観察装置の概念的構成図である。 本発明の実施例1の磁気特性観察装置の概略的構成図である。 確認試験の状況の説明図である。 画像解析結果の説明図である。 外部磁場Hextを右向きに印加した場合の磁場強度依存性を示すパターン図である。 外部磁場Hextを左向きに印加した場合の磁場強度依存性を示すパターン図である。 温度変化及び位相の外部磁場強度依存性の説明図である。 スピンペルチェ効果の印加電圧依存性を示すパターン図である。 温度変化及び位相の印加電圧依存性の説明図である。 本発明の実施例1の磁気特性観察方法のイメージ図である。 実際に取得した解析画像である。 本発明の実施例2の磁気特性観察装置の概略的構成図である。 本発明の実施例2におけるスピンペルチェ効果による温度変化の印加電圧依存性の説明図である。 比較のために示したPtを用いた場合の温度変化の印加電圧依存性の説明図である。 スピンペルチェ効果の説明図である。
ここで、図1を参照して、本発明の実施の形態の磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法を説明する。本発明者らは、鋭意研究の結果、スピンゼーベック効果の逆効果であるスピンペルチェ効果を用いることによって、磁区等の磁気特性観察を通してスピンペルチェ効果の微視的なメカニズムを解明することや界面敏感な磁気特性を計測することが可能であることを見出した。
図1は本発明の実施の形態の磁気特性観察装置の概念的構成図である。本発明の実施の形態の磁気特性観察装置は、磁性体3にスピン流注入部材4を接合した試料1を載置する試料載置部材6と、スピン流注入部材4に対してその平面方向に電圧を印加する電圧印加部材6と、試料1の温度を赤外線画像として撮像する赤外線撮像部材7と、赤外線画像から磁性体3の磁気特性を解析する解析部材8とを備えている。
スピン流注入部材4に印加する電圧は、矩形波形状の交流電圧であることが望ましい。このように、矩形波形状の交流電圧を印加することによって、ジュール熱による発熱効果は一定であるとともに、交流電圧の極性の交代によって吸熱−発熱現象が交代するので、ジュール熱の影響を受けずにスピンペルチェ効果により磁区構造等の磁気特性を詳細に観察することができる。
赤外線画像を撮像する際には、交流電圧の極性の交代によって吸熱−発熱現象が交代するので、交流電圧の周期にロックインして撮像することが望ましく、そのためには、赤外線撮像部材7を制御するロックイン制御部材を有していることが望ましい。
赤外線撮像部材7としては、冷却式半導体センサーや非冷却式マイクロボロメーターセンサーを備えた赤外線カメラ等を用いれば良く、赤外線画像は、典型的には二次元マトリクス状に配置された画素(ピクセル)からなり、例えば、100画素×100画素〜1000画素×1000画素が望ましい。この赤外線撮像部材7により、例えば、磁性体3を0.5mm×0.5mm〜10.0mm×10.0mmの範囲で撮像する。
また、解析部材8により画素単位で赤外線像をフーリエ変換してフーリエ画像を構成することが望ましい。この場合、撮像した画像を画素単位で積算したのちフーリエ変換しても良いし、予めロックイン測定により画素単位でフーリエ変換してから積算しても良い。
また、磁性体3に外部磁場を印加する外部磁場印加部材をさらに設けることが望ましい。このように、外部磁場印加手段を設けることによって、外部磁場の強度を変化させることによって、磁区の変化の様子を逐次観察することができる。
このような磁気特性観察装置を用いて磁区構造等の磁気特性を観察するためには、磁性体3にスピン流注入部材4を接合した試料1のスピン流注入部材4に対してその平面方向に電圧を印加して、スピン流或いはスピン波スピン流を磁性体3に注入する。注入されたスピン流或いはスピン波スピン流と磁性体3に形成された磁区の磁気モーメントとの反応による発熱−吸熱反応による温度変化を赤外線画像7として撮像する。最後に、撮像した赤外線画像から磁性体3の磁区構造等の磁気特性を解析装置8により解析すれば良い。
この場合のスピン流注入部材4に印加する電圧としては、矩形波形状の交流電圧が望ましく、例えば、交流電圧の周期としては、0.1Hz乃至1000Hzであることが望ましい。周波数が速いほどスピンペルチェ効果と熱ノイズが良好に分離され、この上限値は使用する赤外線カメラのフレームレートとデータの通信速度に依存して決まる。また、原理的には下限値は存在しないが、ここでは、目安として0.1Hzとした。
赤外線画像は、交流電圧の周期にロックインして撮像することが望ましく、赤外線画像は、典型的には、二次元マトリクス状に配置された画素からなる赤外線画像として撮像し、撮像した赤外線画像を画素単位でフーリエ変換してフーリエ画像を構成する。
また、磁性体3に、磁性体3の磁区方向が完全に整列しない程度の外部磁場を印加した状態で赤外線画像を撮像しても良く、外部磁場の強度を変化させることによって、磁区の磁気モーメントの変化の様子を逐次観察することができる。
磁性体としては、強磁性体、フェリ磁性体或いは反強磁性体のいずれでも良く、特に、
Fe5−xGa12(但し、0≦x<5)或いは置換型希土類鉄ガーネット(X1−xGdFe12(Xは任意の希土類元素、希土類元素の組み合わせ、及び、希土類の一部を他の元素で置換したもの)のいずれかのフェリ磁性体を用いることが望ましい。なお、YFe5−xGa12或いは(X1−xGdFe12を用いる場合には、成長基板2として、GGG(GdGa12)単結晶基板を用いる。
スピン流注入部材4としては、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、或いは、f軌道を有する元素のいずれかを含んだ物質を用いることが望ましく、特にPtが望ましい。これらの元素を含んだ物質はスピン軌道相互作用が大きいので、磁性体3との界面において、電流からスピン流或いはスピン波スピン流への交換を高効率で行うことができる。或いは、スピン流注入部材として、スピン軌道相互作用の符号がPtとは反対のWを用いても良く、吸熱−発熱反応がPtの場合とは逆になる。また、Pt/Cu/YIGの三層構造のように、スピン流注入部材は、上記物質と、スピン流を伝搬する金属や磁性絶縁体からなる多層構造でも良い。
本発明の実施の形態によれば、磁区等の磁気特性観察を通してスピンペルチェ効果の微視的なメカニズムを解明することや界面敏感な磁気特性を計測することが可能になる。
次に、図2乃至図11を参照して、本発明の実施例1の磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法を説明する。図2は本発明の実施例1の磁気特性観察装置の概略的構成図である。GGG単結晶基板11上にフェリ磁性体であるYIG(YFe12)12を112μmの厚さに成長させ、このYIG12上にスピン流注入部材である厚さが5nmのPt13を接合したものを試料10とする。Pt13に電源14により電圧を印加してPt13に電流を流し、YIG12との接合界面で電流をスピン波スピン流に変換する。このスピン波スピン流の注入による吸熱−発熱現象を赤外線カメラ15で撮像することにより、YIG12に形成された各磁区を観察することができる。ここでは、640画素×512画素の赤外線カメラ15により、YIG12をPt13を介して1.9mm×1.6mmの範囲で撮像する。なお、赤外線CCD15の制御、電源14の制御及び撮像画像の解析はPC16で行う。
ここで、図3乃至図7を参照してスピンペルチェ効果の確認実験を説明する。図3は、確認試験の状況の説明図であり、図3(a)は実験時の試料の状況図であり、図3(b)は印加電圧の説明図である。図3(a)に示すように、試料10としては、YIG12にΠ字状のPt13を設け、電流を右下端から左下端に向かうように流すとともに、外部磁場Hextを図において水平方向に印加した場合を示している。また、図3(b)に示すように、周波数が10Hzの矩形波の交流電圧を印加する。
この時、印加電圧の周波数にロックインして撮像を行うことにより、特定の周波数成分のみを取り出すことができる。これにより、矩形波の交流電圧によって生じるジュール発熱は全ての時刻において一定で時間変化していないので、ジュール熱の寄与を完全に取り除くことができる。この時、一周期測定するたびにロックイン計測を行っている。
図4は、画像解析結果の説明図であり、フーリエ変換した画像を解析したものを示しており、図4(a)は赤外線強度を示す振幅像(amplitude)であり、図4(b)はスピンペルチェ効果による吸熱−発熱を示す位相像(Phase)であり、図4(c)は、明確化のために図4(b)の位相像を模写したものである。図4(a)は、電流と同周期で振動する成分のみを取り出してノイズやジュール熱等を分離した純粋なスピンペルチェ効果による温度変化を示した図であり、スピンペルチェ効果によって吸熱もしくは発熱が生じているPtパターン上が強く光っている。
図4(b)及び図4(c)は、スピンペルチェ効果による吸熱−発熱を示しており、電流に対して時間遅れ無く生じる発熱が位相φで現れたとすると、吸熱は位相反転したφ+180°で現れる。図4(b)及び図4(c)の場合には、電流を右下端から左下端に向かうように流した場合を示しており、Ptパターンの左側で発熱が生じ、Ptパターンの右側で吸熱が生じている。
図5乃至図7は、スピンペルチェ効果の外部磁場強度依存性を説明する。図5は外部磁場Hextを右向きに印加した場合の磁場強度依存性を示すパターン図であり、+1.0mTの場合には、各磁区が同じ方向に磁化されていないので、吸熱−発熱が入り混じったまだら模様を示している。一方、+4.9mT以上になると、各磁区が同じ方向に整列するので、一様に吸熱もしくは発熱する。図6は外部磁場Hextを右向きに印加した場合の磁場強度依存性を示すパターン図であり、−1.8mTの場合には、各磁区が同じ方向に磁化されていないので、吸熱−発熱が入り混じったまだら模様を示している。一方、‐5.1mT以上になると、各磁区が同じ方向に整列するので、一様に吸熱もしくは発熱する。なお、右側の位相像はカラー写真であるため不鮮明であるが、実際には図4(c)に示した模写図と同様になっている。
図7は温度変化及び位相の外部磁場強度依存性の説明図である。図7(a)に示すように、吸熱或いは発熱による温度変化ΔTは、外部磁場強度が0近傍以外では、外部磁場強度には殆ど依存しないことが分かる。また、図7(b)に示すように、フーリエ変換した場合の吸熱と発熱の位相のズレは、磁性体の磁化過程に対応して変化し、磁化が飽和した領域では外部磁場強度には殆ど依存しないで180°のズレとして現れる。なお、図における位相の絶対値は、試験装置の信号伝送等にかかる遅延時間を表しており、この値自体には意味はない。
図8及び図9を参照して、スピンペルチェ効果の印加電圧依存性を説明する。ここでは図3(b)に示した矩形波状の交流電圧の振幅を0V〜10V(±10v)に変化させた場合を示している。図8は、スピンペルチェ効果の印加電圧依存性を示すパターン図であり、印加電圧が大きくなるにつれて電流が増大するので、スピン波スピン流も増大して、吸熱−発熱パターンが徐々に鮮明になっていく。
図9は温度変化及び位相の印加電圧依存性の説明図であるが、ここでは、電流依存性として説明する。図9(a)に示すように、吸熱或いは発熱による温度変化ΔTは、電流に比例して増加する。また、図9(b)に示すように、フーリエ変換した場合の吸熱と発熱の位相のズレは、電流に依存せずに180°のズレとして現れる。
以上を前提として、実際の磁気特性観察方法を説明する。磁区を観察する場合には、外部磁場を印加しない状態で、矩形波状の交流電圧を印加して赤外線画像を撮像する。図10は本発明の実施例1の磁気特性観察方法のイメージ図である。まず、図10(a)に示すように、矩形波状の交流電圧を印加して交流電圧の周期にロックインして赤外線画像を撮像する。
次いで、図10(b)に示すように、撮像した赤外線を画素単位でフーリエ変換し、フーリエ変換して得られたデータを積算し、交流電圧の周波数と同じ周波数の成分のみを取り出して解析画像とする。図10(c)は解析画像のイメージ図であり、上図は温度変化の振幅像を示し、下図は、温度変化の位相像を示している。
図11は、実際に取得した解析画像であり、図11(a)は振幅像であり、図11(b)は、位相像である。ここでは、外部磁場を印加しない状態の解析画像を示しており、図11(b)に示すまだら模様の位相像を解析することによって、磁区の状態(サイズや磁化方向)を知ることができる。なお、各磁区の磁化方向が完全に揃わない程度の外部磁場を徐々に上げながらロックイン撮像することによって、磁区の状態の変化の磁場依存性を観察することが可能になる。
このように、本発明の実施例1においては、スピンペルチェ効果を利用して磁区を観察しているので、試料表面をスキャンすることなく、界面近傍の磁区の状態を一度の撮像で取得できる。また、スピンペルチェ効果は磁気光学効果の小さな磁性材料でも生じる現象であるので、カー顕微鏡では困難であった、磁気光学効果の小さな磁性材料の磁気的性質の測定も可能になる。なお、実施例1においては、外部磁場印加による吸熱−発熱反応を確認するためにスピン流注入部材の形状をΠ型にしているが、実際の磁気特性観察の場合にはスピン流注入部材の形状は任意であり、ストライプ状でも良いし、磁性体の全面にスピン注入部材を接合しても良い。
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の実施例2の磁気特性観察装置及び磁気特性観察方法を説明するが、スピン流注入部材としてPtの代わりにWを用いた以外は、上記の実施例1と同じである。図11は本発明の実施例2の磁気特性観察装置の概略的構成図である。GGG単結晶基板21上にフェリ磁性体であるYIG22を112μmの厚さに成長させ、このYIG22上にスピン流注入部材であるW23を接合したものを試料20とする。W23に電源24により電圧を印加してW23に電流を流し、YIG22との接合界面で電流をスピン波スピン流に変換する。このスピン波スピン流の注入による吸熱−発熱現象を赤外線カメラ25で撮像することによりYIG2に形成された各磁区を観察することができる。ここでは、640画素×512画素の赤外線カメラ25により、YIG12をW23を介して1.9mm×1.6mmの範囲で撮像する。なお、赤外線カメラ25の制御、電源24の制御及び撮像画像の解析はPC26で行う。
図13は、本発明の実施例2におけるスピンペルチェ効果による温度変化の印加電圧依存性の説明図であり、図13(a)はスピンペルチェ効果による吸熱−発熱パターン図であり、Ptを用いた場合と同様のパターンが得られる。図13(b)は、スピンペルチェ効果による温度変化の印加電圧依存性を電流方向と外部磁場方向を拡張して示した図であり、印加電圧が大きくなるにつれて電流が増大するので、スピン波スピン流も電流に比例して増大している。また、電流の向き及び外部磁場の向きによって吸熱−発熱が反転する。
図14は、比較のために示したPtを用いた場合の温度変化の印加電圧依存性の説明図であるが、図9(a)に示したものを電流方向と外部磁場方向を拡張したものである。図13との比較では、磁場印加方向に対する依存性が図13に示したWを用いた場合と反対になっている。これは、WとPtは逆符号のスピン流−電流変換係数(スピン軌道相互作用)を有しており、電流を同じ方向に印加したときにスピンホール効果で生成されるスピン流の向きはWとPtで逆向きになるためである。
なお、参考のために、YIG上にAl膜を介してPtを設けた試料について、同様の試験を行ったが、スピンペルチェ効果に基づく温度変化は見られなかった。これは、YIGとPtの間にAl膜を設けたことにより、スピン波スピン流がYIGに注入されなくなったためである。
このように、本発明の実施例2においても、試料表面をスキャンすることなく、界面近傍の磁区の状態を一度の撮像で取得して、スピンペルチェ効果を利用して磁区を観察している。したがって、実施例1と同様に、また、カー顕微鏡では困難であった、磁気光学効果の小さな磁性材料の磁気的性質の測定も可能になる。
1 試料
2 成長基板
3 磁性体
4 スピン流注入部材
5 電圧印加部材
6 試料載置部材
7 赤外線撮像部材
8 解析部材
10,20 試料
11,21 GGG単結晶基板
12,22 YIG
13 Pt
14,24 電源
15,25 赤外線カメラ
16,26 PC
23 W
41 磁性体
42 スピン流注入部材
43 磁化

Claims (14)

  1. 磁性体にスピン流注入部材を接合した試料を載置する試料載置部材と、
    前記スピン流注入部材に対してその平面方向に電圧を印加する電圧印加部材と、
    前記試料の温度を赤外線画像として撮像する赤外線撮像部材と、
    前記赤外線画像から磁性体の磁気特性を解析する解析部材と
    を備えた磁気特性観察装置。
  2. 前記スピン流注入部材に印加する電圧が、矩形波形状の交流電圧である請求項1に記載の磁気特性観察装置。
  3. 前記赤外線画像を、前記交流電圧の周期にロックインして撮像するように前記赤外線撮像部材を制御するロックイン制御部材をさらに有している請求項2に記載の磁気特性観察装置。
  4. 前記赤外線画像が二次元マトリクス状に配置された画素からなり、
    前記解析部材が、前記画素単位で赤外線像をフーリエ変換してフーリエ画像を構成する請求項3に記載の磁気特性観察装置。
  5. 前記磁性体に外部磁場を印加する外部磁場印加部材をさらに有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の磁気特性観察装置。
  6. 磁性体にスピン流注入部材を接合した試料のスピン流注入部材に対してその平面方向に電圧を印加して、スピン流或いはスピン波スピン流を前記磁性体に注入し、
    前記注入されたスピン流或いはスピン波スピン流と前記磁性体に形成された磁区の磁気モーメントとの反応による発熱−吸熱反応による温度変化を赤外線画像として撮像し、
    前記撮像した赤外線画像から磁性体の磁気特性を解析する磁気特性観察方法。
  7. 前記スピン流注入部材に印加する電圧として、矩形波形状の交流電圧を印加する請求項6に記載の磁気特性観察方法。
  8. 前記交流電圧の周期が、0.1Hz乃至1000Hzである請求項7に記載の磁気特性観察方法。
  9. 前記赤外線画像を、前記交流電圧の周期にロックインして撮像する請求項7または請求項8に記載の磁気特性観察方法。
  10. 前記赤外線画像を二次元マトリクス状に配置された画素からなる赤外線画像として撮像し、
    前記撮像した赤外線画像を前記画素単位でフーリエ変換してフーリエ画像を構成する請求項9に記載の磁気特性観察方法。
  11. 前記磁性体に、前記磁性体の磁区方向が完全に整列しない程度の外部磁場を印加した状態で前記赤外線画像を撮像する請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載の磁気特性観察方法。
  12. 前記磁性体が、強磁性体、フェリ磁性体或いは反強磁性体のいずれかである請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載の磁気特性観察方法。
  13. 前記フェリ磁性体が、YFe−xGa12(但し、0≦x<5)或いは置換型希土類鉄ガーネットのいずれかである請求項12に記載の磁気特性観察方法。
  14. 前記スピン流注入部材が、PtまたはWである請求項6乃至請求項13のいずれか1項に記載の磁気特性観察方法。
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