JP2017189164A - 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分を含む組成物 - Google Patents

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雄也 有川
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拓海 渡部
智子 古賀
Tomoko Koga
智子 古賀
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Hideko Akai
日出子 赤井
鉄夫 笠井
Tetsuo Kasai
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Abstract

【課題】低濃度で、インクジェット等による吐出可能な低粘度を有し、吐出後には増粘して形状を保持することが可能であり、細胞への悪影響を極力抑えて、インクジェット等により細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を容易かつ効率的に形成することができる組成物を提供する。【解決手段】細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1を満たす化合物(A)を含む、組成物。条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット、ディスペンサー等により細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を形成するために好適に用いられる組成物と、この組成物を用いた細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体に関する。
創薬支援、再生医療等の観点から、細胞を二次元又は三次元に積層して細胞含有構造体を形成する技術が必要とされている。
従来、細胞含有構造体を形成するための手法として、細胞含有ゲルをディスペンスする方法、細胞含有液をインクジェットで積層する方法などが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
このようにして細胞含有構造体を形成するために用いられる細胞含有液や細胞含有ゲルには、
(1) 細胞の均一分散性
(2) 細胞非毒性
といった一般的な性能に加えて、
(3) インクジェットやディスペンサーで吐出可能な低粘性
(4) 吐出後は速やかに増粘又はゲル化する造形性
(5) 細胞接着性
といったインクジェットやディスペンサーによる吐出及び造形に特有の性能が求められる。
従来、インクジェット用の細胞含有液としては、細胞と、細胞接着性、造形性付与のための、イオン架橋等によりゾル−ゲル変化を起こすアルギン酸を含む溶液が用いられている。
しかし、従来提案されている細胞含有液では、造形性を得るためには、比較的高濃度で添加しないとゲル化が生じないため、細胞に対する様々な悪影響が出やすいといった課題があった。特に、アルギン酸と多価イオンによるイオン架橋を用いた場合には、細胞との接着性が十分でないため、細胞が増殖しにくくなったり、細胞死が起こるといった欠点が知られている。
また、一般的に知られるポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーも、液中のポリマー濃度を高くすることで、細胞含有液の粘性を高め、吐出後の造形性をある程度高めることはできる。しかし、ポリマー自体が細胞に対して親和性のないものであり、細胞含有液中に細胞以外の成分を高濃度で含有することは細胞への悪影響(細胞被毒、細胞増殖の抑制等)の問題があり好ましくない。しかも、ポリマー濃度を高めても、十分に満足し得る造形性は得られていない。
特開2010−22251号公報 特開2015−229148号公報 特表2014−526318号公報
本発明は、細胞への悪影響を極力抑えて、インクジェット等により細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を容易かつ効率的に形成することができる組成物を提供することを課題とする。また、この組成物を用いた細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、インクジェット、ディスペンサー等による吐出時は吐出可能な低粘度を有し、吐出後には増粘して形状を保持することが可能な組成物を見出した。さらに本発明で見出された組成物は、極めて希薄な条件で上記の性能を達成できることから、細胞へ与える悪影響(細胞被毒、細胞増殖の抑制等)を抑えることが可能である。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1を満たす化合物(A)を含む、組成物。
条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。
[2] 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、[1]に記載の組成物。
[3] 前記粘度(β)が、200mPa・s以下である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 前記粘度(β)が、1mPa・s以上である、[1]〜[3]の何れかに記載の組成物。
[5] 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、[1]〜[4]の何れかに記載の組成物。
[6] 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、[1]〜[5]の何れかに記載の組成物。
[7] 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、[1]〜[6]の何れかに記載の組成物。
[8] 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、[7]に記載の組成物。
[9] 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件2を満たす化合物(A)を含む、組成物。
条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。
[10] 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、[9]に記載の組成物。
[11] 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、[9]又は[10]に記載の組成物。
[12] 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、[9]〜[11]の何れかに記載の組成物。
[13] 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、[9]〜[12]の何れかに記載の組成物。
[14] 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、[13]に記載の組成物。
[15][1]〜[14]の何れかに記載の組成物の、二次元又は三次元成型体である、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体。
本発明の組成物で用いる化合物(A)は、0.2質量%という極めて希薄な水溶液又は水分散液(B)において、せん断応力がかかっていないときには高粘度であり、せん断応力がかかったときには低粘度となるチキソ性を有するものである。
このため、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分と共に、このような化合物(A)を含有する本発明の組成物は、インクジェットやディスペンサー等による吐出の際にはせん断応力がかかることによって低粘度化するため問題無く吐出が可能であり、吐出後にはせん断応力が取り除かれることにより増粘又はゲル化するため、細胞を目的の位置に容易に固定することができる。
しかも、上記のチキソ性を、化合物(A)濃度0.01〜3質量%というような、通常の細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有液の高分子濃度の1/5〜1/10程度の希薄濃度で発揮することができるため、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体中の化合物(A)濃度を下げ、細胞に対する悪影響を押えることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本明細書において、化合物(A)の水溶液又は水分散液の粘度、化合物(A)の細胞毒性、数平均アスペクト比は、以下の方法により測定、評価された値である。
<粘度の測定方法>
BROOKFIELD社製コーンプレート粘度計DV3Tを用い、スピンドルCP−40を装着して25℃にて粘度測定を実施する。回転数を0.3、0.6、1.5、6.0(rpm)の順に上げていき、各回転数において測定開始3分後の粘度の値を読み取る。スピンドルCP−40を用いた場合、上記回転数はそれぞれせん断速度2.25、4.5、11.25、45(1/s)に相当する。
<細胞毒性の評価方法>
培地として、10%ウシ胎児血清(以下、FBS)(Moregate Exports Pty Ltd.製)を含むDMEM培地(Dulbecco's modified Eagle’s medium)(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を使用する。
滅菌チューブ等に、表1に示す各被験物質添加液中の化合物(A)の目的濃度となるように、1.10質量%の化合物(A)を含む水溶液、5倍濃度のDMEM(DMEM×5)、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液より調製し、フタを閉めて20回程度振ることで混ぜ合わせた後に、10秒×3回ボルテックスミキサーで混合を行い、各被験物質添加液No.1〜4を得る。なお、超純水は滅菌済みのものを使用する。
上記各被験物質添加液No.1〜4を10mL調製する際の、1.10質量%の化合物(A)含有水溶液、DMEM×5、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5質量%炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液の添加量は表1の通りとした。
Figure 2017189164
陽性対照として、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100、和光純薬社製)の被験物質添加液中の濃度が1.0質量%となるように、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、5倍濃度のDMEM(DMEM×5)、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液より調製し、ピペッティングにより混合を行い、被験物質添加液No.5を得る。
上記被験物質添加液No.5を10mL調製する際のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、DMEM×5、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5%炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液の添加量は表2の通りとし、混和後、0.22μmフィルター濾過により滅菌を行う。
Figure 2017189164
6ウェルプレートの各ウェルにDMEM培地を2.0mLずつ添加する。細胞としては、マウス由来繊維芽細胞L−929細胞を使用して、各ウェルに4×10cells/ウェルずつ細胞を播種する。
炭酸ガスインキュベーター(設定温度:37℃,設定CO濃度:5%)内で静置し、翌日、各ウェルの培地を除去し、各被験物質添加液No.1〜5を十分に混和後、各ウェルに2.0mLずつ添加する。同様の炭酸ガスインキュベーター内で3日間静置培養する。培養期間終了後に各被験物質添加液を除去し、DMEM培地を2.0mLずつ添加する。この時、細胞を添加しないウェルを1ウェル設け、DMEM培地2.0mL添加する(ブランクウェル)。
Cell Titer 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)を全ウェルに添加し、プレートミキサーで撹拌する。炭酸ガスインキュベーター内で1〜4時間反応させ、各ウェルの吸光度(490nm)をマイクロプレートリーダー(TECAN Austria GmbH製)にて測定する。
各ウェルの吸光度からブランクウェルの吸光度(細胞を添加していないウェル)を引いた値を各ウェルの測定値とする。培地のみで3日間上記の方法で細胞を静置培養したものを陰性対照とした。陰性対照の測定値の平均値を細胞生存率100%とし、ウェルごとに次式に従って細胞生存率を算出し、被験物質群の細胞生存率の平均値±標準偏差を算出する。
なお、試験はn=5で行い、平均を取る。
細胞生存率が20%以上である場合、細胞毒性がない材料と判断する。細胞毒性がない細胞生存率の範囲は、20%以上、好ましくは25%以上、更に好ましくは28%以上である。
細胞生存率(%)=(各ウェルの測定値)÷(コントロール群の測定値の平均値)×100
<数平均アスペクト比の算出方法>
化合物(A)の最も短い短軸方向の長さ(La)と、最も長い長軸方向の長さ(Lb)を少なくとも50個以上測定し、アスペクト比(Lb/La)を算出する。その後、得られたアスペクト比の数平均を取ることで、数平均アスペクト比を求めることができる。La及びLbの値は、原子間力顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等による画像から求めることができる。
繊維状の化合物(A)の具体的なLa及びLbの測定方法は以下の通りである。
<La(繊維径)及びLb(繊維長)の測定方法>
手法:原子間力顕微鏡(AFM)法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製Digital Instrument NanoscopeIIIデ−タサンプリング数:512×512ポイント
AFM像の種別:高さ像、位相像(繊維一つひとつを認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を一本ずつ抽出し、繊維一本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。この計測値を平均して数平均繊維径とした。
また、観察像から繊維長を計測し、この計測値を平均して数平均繊維長とした。
〔組成物〕
本発明の組成物は、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1又は条件2を満たす化合物(A)を含むことを特徴とする。
条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。
条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。
本発明の組成物は、チキソ性を有していることが特に好ましい。本発明の組成物におけるチキソ性とは、せん断等の応力がかかった際に粘度が低下する現象のことを指す。
[化合物(A)]
まず、本発明の組成物に含まれる化合物(A)について説明する。
<条件1>
化合物(A)は、その含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であると、吐出時の高せん断応力下では低粘性で吐出安定性に優れる一方で、吐出後の非せん断応力下では増粘又はゲル化して造形性に優れたものとなる。この粘度比(α/β)は3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。粘度比(α/β)は大きい程好ましく、その上限には特に制限はないが、通常100以下である。
化合物(A)は非せん断応力下における造形性をより良好なものとする観点から、上記粘度(α)が10mPa・s以上であり、20mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・s以上であることがより好ましく、60mPa・s以上であることが更に好ましい。粘度(α)が上記下限以上であると、本発明の組成物を吐出した際に速やかに流動性を失い、細胞を所望の位置に容易に固定化し得る、優れた造形性を得ることができる。
化合物(A)は、特に、その含有量が0.15質量%である水溶液又は水分散液(B)において、上記の粘度比(α/β)と粘度(α)、更には以下の粘度(β)の好適条件を満たすことが好ましく、含有量が0.10質量%である水溶液または水分散液(B)において上記の粘度比(α/β)と粘度(α)、更には以下の粘度(β)の好適条件を満たすことがさらに好ましい。
化合物(A)は高せん断応力下における吐出安定性をより良好なものとする観点から、上記粘度(β)が200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることが特に好ましい。高せん断応力下における吐出安定性の観点から、粘度(β)は小さい程好ましいが、吐出前後のインクの液だれの観点から、粘度(β)は1mPa・s以上であることが好ましく、2mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることが特に好ましい。
<条件2>
化合物(A)は、その含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、また、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものであると、吐出時の高せん断応力下では低粘性で吐出安定性に優れる一方で、吐出後の非せん断応力下では増粘又はゲル化して造形性に優れたものとなる。
化合物(A)は非せん断応力下における造形性をより良好なものとする観点から、上記粘度(α)が10mPa・s以上であり、20mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・s以上であることがより好ましく、60mPa・s以上であることが更に好ましい。粘度(α)が上記下限以上であると、本発明の組成物を吐出した際に速やかに流動性を失い、細胞を所望の位置に容易に固定化し得る、優れた造形性を得ることができる。
条件1と同様、化合物(A)は、特に、その含有量が0.15質量%である水溶液又は水分散液(B)において、上記の粘度(α)の好適条件を満たすことが好ましく、その含有量が0.10量%である水溶液又は水分散液(B)において、上記の粘度(α)の好適条件を満たすことがさらに好ましい。
また、条件2において、化合物(A)は、数平均アスペクト比5.0以上、好ましくは10以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。数平均アスペクト比は大きい程好ましく、その上限には特に制限はない。化合物(A)の数平均アスペクト比が上記下限以上であると、高せん断応力下及び非せん断応力下における粘度を好適範囲とすることが容易となり、本発明に好ましい粘度特性を得ることができる。
即ち、例えば、化合物(A)が水分散性高分子の場合、引力相互作用は主に分子又は粒子の表面同士で作用することから、分子又は粒子が分散媒中で有する体積に対する表面積の大きい物質の方が有利である。言い換えれば、分子又は粒子の分散媒中でのアスペクト比が大きいものほど、少量で大きなチキソ性を示すことから、化合物(A)の数平均アスペクト比は上記下限以上であることが好ましい。
なお、化合物(A)がロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである場合、その数平均繊維径は、高せん断応力下における吐出安定性と非せん断応力下における造形性の両立の面から50μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが特に好ましく、さらに好ましくは50nm以下である。化合物(A)の数平均繊維径の下限は、通常1nmである。
また、化合物(A)は高せん断応力下における吐出安定性をより良好なものとする観点から、上記粘度(β)が200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以下であることが特に好ましい。高せん断応力下における吐出安定性の観点から、粘度(β)は小さい程好ましいが、吐出前後のインクの液だれの観点から、粘度(β)は1mPa・s以上であることが好ましく、2mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることが特に好ましい。
<好適条件>
化合物(A)は、上記の条件1及び条件2の一方のみを満たすものであってもよいが、条件1と条件2とを共に満たすことが好ましい。
また、非せん断応力下での造形性の観点から、化合物(A)はその0.2質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、ゲル状になることが好ましい。本明細書において、「ゲル状」とは、重力が及ぼされる環境で、5〜45℃で24時間、形状を保持できる状態を指す。このような形状を保持できる化合物(A)であれば、いかなる形状および物質でも構わない。ゲル状であるかの確認は、例えば次の方法で確認することができる。
まず、ガラス基板上に1mLの化合物(A)の0.2質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を滴下して水滴を作製し、水が揮発しない条件(密閉容器中、高湿度下等)において所定の温度で所定の時間静置する。これを水平方向に45°傾けた際に、液垂れが起こる場合にはゲル状ではく、液垂れが起こらない場合にはゲル状であると判断できる。5〜45℃において、24時間以内にゲル状となるものであることが好ましく、1時間以内にゲル状となるものであることがより好ましく、1分以内にゲル状となるものであることが更に好ましく、10秒以内にゲル状となるものが特に好ましく、最も好ましくは、非せん断応力下で直ちに流動性を失いゲル状となることが好ましい。特に、化合物(A)はその0.15質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃で、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となるものであることが好ましく、1時間以内にゲル状となるものであることがより好ましく、1分以内にゲル状となるものであることが更に好ましく、10秒以内にゲル状となるものが特に好ましく、最も好ましくは、非せん断応力下で直ちに流動性を失いゲル状となることが好ましい。また、化合物(A)の含有量が0.10質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)が上記のようにゲル状になることが更に好ましい。
また、化合物(A)は、前述の細胞毒性の評価において、細胞毒性を示さないものであることが好ましい。
<化合物(A)の種類>
化合物(A)は、上記の条件1及び/又は条件2を満たすものであれば特に限定されない。
化合物(A)は、その水溶液又は水分散液が、加えるせん断力が小さい場合には高粘度を示し、加えるせん断力が大きい場合には低粘度を示すものである。このような性質は一般にチキソ性、又は構造粘性などと呼ばれる。チキソ性の発現原理は必ずしも学術的に解明されているわけではないが、一般には溶質間、および分散質間に生じる引力相互作用により形成された弱いネットワーク構造によるものとされている。すなわち、形成されたネットワーク構造により高い粘性を示す液体にせん断力を加えると、ネットワーク構造が破壊され流動性を示すようになるが、せん断力を取り除くと再びネットワーク構造が形成され粘性が増大することによってチキソ性が発現すると考えられている。また、せん断力を加えない場合、ネットワーク構造の形成によりゲル化し、流動性を失う場合もある。
ネットワーク構造の発現にかかる引力相互作用としては、例えばπ−πスタッキング、水素結合、イオン結合、静電相互作用、疎水性相互作用、分子間力、ファンデルワールス力などが挙げられ、化合物(A)は、これらの相互作用を強く示す官能基、例えば芳香族基、アルキル基、水酸基、アミド基、イオン性基などを有することが多い。
化合物(A)としては、水溶性・水分散性高分子、高分子電解質、硬直巨大分子、巨大分子の集合体などが挙げられ、これらの中から条件1及び/又は条件2を満たすものを適宜選択して用いることができる。以下に、化合物(A)を例示するが、水溶性・水分散性高分子であって、高分子電解質である化合物(A)も存在し、これらは必ずしも明確に分類されるものではない。
<水溶性・水分散性高分子>
水溶性・水分散性高分子としては、親水性天然高分子や多糖類、合成高分子などが挙げられ、例えば、澱粉、変性澱粉、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸類、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、ペクチン、キタンサンガム、カラギーナン、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ポリイタコン酸、コラーゲン、ヒアルロナート、フィブリン、アガロース、キトサン、キチン、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルローススルフェート、シアノエチルセルロースなど)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン系重合体(エチレン−無水マレイン酸共重合体など)、酢酸ビニル系共重合体(酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体など)、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体など)、カルボキシル基又はスルホン酸基を有する重合体又はその塩又はそのエステル(ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩(アンモニウム塩、ナトリウムなどのアルカリ金属塩)又はそのエステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−ポリビニルアルコール共重合体、(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体など)、ビニルエーテル系重合体(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどのポリビニルエーテルアルキルエーテル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)、スチレン系重合体(スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンブタジエンラテックスなど)、窒素原子含有重合体(ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などのカチオン性重合体又はその塩、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリ(メタ)アクリルアミド類、ポリビニルピロリドンなど)、ポリウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸−塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックス、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、及び、これらを化学修飾することにより得られる誘導体などが挙げられる。
<高分子電解質>
高分子電解質としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸、ポリイタコン酸、(メタ)アクリル酸・無水マレイン酸共重合体、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックス、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体などのカルボキシル基を有する高分子の塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、カルボキシメチルデキストランナトリウムなどが挙げられる。
<硬直巨大分子・巨大分子の集合体>
硬直巨大分子としては、アルブミン、グロブリンなどのタンパク質、DNAポリペプチド、ナノファイバーセルロースなどが挙げられる。また、巨大分子の集合体としては、シリカ、アルミナ、でんぷんなどが挙げられる。
これらの化合物(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、化合物(A)の水溶液又は水分散液として、予め調製されたヒドロゲルを希釈することによって水溶液又は水分散液を作製して用いてもよい。例えば、コラーゲン、ヒアルロナート、フィブリン、アルギナート、アガロース、キトサン、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリ酸化エチレンおよびそのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、アガロース、アルギナート、ゼラチン、ヒアルロナン、ポロクサマー、ペプチドヒドロゲル、ポリ(イソプロピルn−ポリアクリルアミド)、ポリエチレングリコール・ジアクリラート(PEG−DA)、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリルアミド、ポリ(乳酸)、シリコーン、シルクなどが含水させることによって得られるヒドロゲルや、Matrigel(商標)、NovoGel(商標)などの市販のヒドロゲルを水で希釈して用いてもよい。
化合物(A)としては好ましくは、水溶性・水分散性高分子であり、水溶性又は水分散性が良好で、細胞毒性が低いことから、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物が更に好ましい。
<多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物>
以下に、化合物(A)として好適な多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物について説明する。
多糖類としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン等が挙げられる。また、多糖類を化学修飾することにより得られる化合物としては、これらの多糖類を各々化学修飾することに得られる化合物等が挙げられる。好ましくは、低せん断時における水溶液又は水分散液の粘度が高いことから、セルロース、キトサン、アルギン酸、及びこれらを各々化学修飾することに得られる化合物である。
<セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物>
セルロースの種類としては特に制限されず、植物由来原料から精製を経て不純物を除去されたものなどが好適に使用される。上記植物由来原料としては、例えば、針葉樹、広葉樹などの木質;コットンリンター、コットンリントなどのコットン;さとうきび、砂糖大根などの絞りかす;亜麻、ラミー、ジュート、ケナフなどの靭皮繊維;サイザル、パイナップルなどの葉脈繊維;アバカ、バナナなどの葉柄繊維;ココナツヤシなどの果実繊維;竹などの茎幹繊維;バクテリアが産生するバクテリアセルロース:バロニア、シオグサなどの海草;ホヤの被嚢などが挙げられる。
セルロースの精製方法は特に制限されないが、例えば、原料をベンゼン−エタノールで脱脂した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。又は、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サリファイドパルプおよびアルカリパルプ等の製造方法が挙げられる。また、原料を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行う方法であってもよい。
精製処理に用いる分散媒としては、一般的に水が用いられるが、酸又は塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、原料を木材チップ又は木粉などの状態に破砕してもよく、該破砕は上述の如く、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース繊維の精製処理に使用する酸又は塩基、その他の処理剤は、特に制限されない。例えば、酸としては、酢酸、シュウ酸などが挙げられる。塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。その他の処理剤としては、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸トリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類並びにアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素又は二酸化塩素などで漂白処理を行ってもよい。
2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともできる。その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間に、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は通常0℃以上100℃以下の範囲で選択さる。1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は通常100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
必要に応じて、化学的、又は機械的な処理により繊維長や繊維径を調整してもよい。例えば、塩酸などの酸で化学処理することにより、1,4−グリコシド結合を切断し繊維長を短くすることができる。また、高圧ホモジナイザー処理、高速回転ホモジナイザー処理、ビーズミル処理、超音波処理などの機械的処理により解繊することで繊維径を小さくすることができる。また、これらの処理は2種類以上併用してもよい。
本発明において用いるセルロースは、化学修飾によって誘導化されたものであってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基に化学修飾剤を反応させることである。
セルロースの化学修飾は、上述したリグニン又はヘミセルロース等を除去する精製処理の前に行っても、後に行ってもよいが、化学修飾剤の効率的な反応の観点で、精製処理後のセルロースに対して化学修飾を行うことが好ましい。なお、該化学修飾は、前述の解繊工程によってセルロースをセルロース繊維に解繊した後に行ってもよいし、解繊工程の前に行ってもよい。
化学修飾によってセルロースの水酸基に導入する置換基(水酸基中の水素原子と置換して導入される基)は特に制限されず、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイ基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基およびチエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基およびナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましい。また、上記に加えイオン性基を導入してもよく、カチオン性基としてはアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、およびこれらを含む基などが挙げられる。また、アニオン性基としてはカルボン酸基、スルホン酸基、オキソリン酸基、およびこれらの水素原子を一部又は全部別の陽イオンで置換したものなどが挙げられる。
<化合物(A)の含有量>
本発明の組成物における化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上、3質量%以下であることが好ましい。
化合物(A)の含有量が0.01質量%以上であると、非せん断応力下における造形性が良好となる傾向がある。一方、化合物(A)の含有量が3質量%以下であると高せん断応力下における吐出安定性が良好となる傾向がある。また、細胞に対する影響の観点から、組成物中の化合物(A)の含有量は少ない方が好ましい。本発明の組成物における化合物(A)の含有量は、より好ましくは0.02質量%以上、2質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以上、1.5質量%以下である。
組成物中の化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、細胞に与える影響を抑えて細胞増殖性を高めた上で、良好な吐出安定性と造形性を得ることができる。
[細胞及び/又は細胞外マトリックス成分]
(細胞)
<種類>
本発明における「細胞」としては、典型的には付着性の株化された哺乳動物細胞、癌細胞、又は、神経、内皮、皮膚、肺、筋肉、腎臓、肝臓、腸など由来の初代培養細胞などが用いられるが、哺乳類の細胞以外も用いることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物細胞であってもよい。また、遺伝子導入した組み換え体細胞なども使用することができる。例えば、外胚葉、中胚葉又は内胚葉に由来する分化細胞や幹細胞を用いることもできる。
また、これらの細胞は、「細胞塊」として本発明の組成物中に含まれていてもよい。
本発明における細胞としては、具体的には、血管内皮細胞、表皮細胞、平滑筋細胞、骨細胞、軟骨細胞、骨格筋芽細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、神経細胞、色素細胞、脂肪細胞等を用いることができる。また、幹細胞としては表皮幹細胞、毛嚢幹細胞、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞、神経幹細胞、網膜幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、iPS細胞(induced pluripotent stem cell)、Muse細胞(Multi−lineage differentiating Stress Enduring cell)等の幹細胞を用いることができる。
本発明の組成物は、上記の細胞及び/又は細胞塊の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
<大きさ>
本発明の組成物中の細胞の大きさは特に限定されない。細胞の大きさは、好ましくは1.0μm以上であり、更に好ましくは1.5μm以上である。また、好ましくは250μm以下であり、更に好ましくは230μm以下である。
本発明の組成物中の細胞塊の大きさも特に限定されない。細胞塊の大きさは好ましくは2.0μm以上であり、更に好ましくは3.0μm以上である。また、好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。
細胞、細胞塊の大きさが上記範囲であることで、酸素不足等による細胞死を抑制することができ、かつ適切な造形精度が得られる傾向にある。
<密度>
本発明の組成物中の細胞及び/又は細胞塊の密度(含有量)は限定されない。本発明の組成物中の細胞及び/又は細胞塊の密度は、好ましくは10個/mL以上であり、1013個/mL以下である。細胞及び/又は細胞塊の密度が上記範囲であることにより、吐出安定性及び造形性に共に優れたものとすることができる。
(細胞外マトリックス成分)
<種類>
本発明における「細胞外マトリックス成分」とは、哺乳動物由来、または、哺乳類以外の組織由来などの細胞外マトリックスに含まれる少なくとも1種である。また、「細胞外マトリックス成分」は、哺乳動物由来、または、哺乳類以外の組織由来であっても用いることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物由来であってもよい。また、遺伝子導入した組み換え体細胞組織由来なども使用することができる。
本発明における細胞外マトリックス成分としては、具体的にはコラーゲン、プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン)、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリリン等が挙げられる。また、細胞外マトリックス成分は上記以外にも増殖因子等も含んでいても良い。細胞増殖因子としては、特に限定されないが、上皮増殖因子(Epidermal growth factor:EGF)、インスリン様増殖因子(Insulin−likeg rowth factor:IGF)、トランスフォーミング増殖因子(Transforming growth factor:TGF)、神経増殖因子(Nerve growth factor:NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain−derived neurotrophic factor:BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular endothelial growth factor:VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte−colony stimulating factor:G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte−macrophage−colony stimulating factor:GM−CSF)、血小板由来増殖因子(Platelet−derived growth factor:PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin:EPO)、トロンボポエチン(Thrombopoietin:TPO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGFまたはFGF2)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor:HGF)が挙げられる。
本発明では、細胞増殖因子を含めて「細胞外マトリックス成分」と称す。
本発明における細胞増殖因子は、細胞の増殖を促進又は制御する物質をいい、用いる細胞に対応したものを用いればよい。細胞増殖因子としては、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インシュリン等が挙げられる。
本発明の組成物は、上記の細胞外マトリックス成分の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
<濃度>
本発明の細胞含有組成物中の細胞外マトリックス成分の濃度(含有量)は限定されない。本発明の組成物中の細胞外マトリックス成分の濃度は、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、さらに好ましく80質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以下である。細胞外マトリックス成分の濃度が上記範囲であることにより、吐出安定性及び造形性に共に優れたものとすることができる。
本発明の組成物は、化合物(A)に加え細胞(細胞塊であってもよい)又は細胞外マトリックス成分を含んでいればよく、細胞(細胞塊であってもよい)及び細胞外マトリックス成分を含んでいてもよい。これらの組み合わせ等は用途に応じて適宜調整することができる。
[その他の成分]
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに細胞外マトリックス成分以外の他の成分を含んでいてもよい。本発明の組成物が含有していてもよい他の成分としては、例えば、細胞死を阻害する薬剤、抗アポトーシス性薬剤、サイトカイン、細胞培養液、抗酸化剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
<細胞死を阻害する薬剤>
細胞死を阻害する薬剤は、細胞の、壊死、アポトーシス、又は自己貪食を阻害するものである。細胞死を阻害する薬剤は、限定されないが、小分子、抗体、ペプチド、ペプチ体(peptibodies)、又はそれらの組み合わせを含む。具体的には、抗TNF薬剤、インターロイキンの活性を阻害する薬剤、インターフェロンの活性を阻害する薬剤、GCSF(顆粒球コロニー刺激因子)の活性を阻害する薬剤、マクロファージ炎症蛋白の活性を阻害する薬剤、TGF−B(形質転換増殖因子B)の活性を阻害する薬剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の活性を阻害する薬剤、カスパーゼの活性を阻害する薬剤、MAPK/JNKシグナル伝達カスケードの活性を阻害する薬剤、Srcキナーゼの活性を阻害する薬剤、JAK(ヤヌス・キナーゼ)の活性を阻害する薬剤、又はそれらの組み合わせから選択されるものが挙げられる。
<サイトカイン>
サイトカインは、細胞から産生され同種の又は異種の細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインとしては、具体的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子などの造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類等が挙げられる。また、その他の生理活性物質は、例えば、アスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、ビタミンD等のビタミン類、トランスフェリン、血清アルブミン等の蛋白質、脂質、リノール酸、コレステロール、ピルビン酸、レチノイン酸、抗生物質等のその他の生理活性物質を用いてもよい。
〔細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体〕
上述の本発明の組成物を用いて本発明の細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を成型する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の組成物をインクジェット又はディスペンサーで細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を形成する基材に対して吐出して二次元又は三次元に積層成型することにより、良好な吐出安定性及び造形性のもとに容易かつ効率的に本発明の細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を成型することができる。
なお、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を成型するに当たり、組成物を吐出する際に組成物に付与されるせん断応力は、吐出に用いる装置や操作条件により異なるが、通常、せん断速度で5〜500(1/s)程度である。
本発明の組成物を吐出して細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を形成する基材としては、特に限定されるものではない。本発明の組成物は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリ2−エトキシメチルアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホベタイン、ポリカルボキシベタイン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、シリコーン、コラーゲン、フィグロネクチン、プロテオグリカン、ポリペプチド、多糖類、ハイドロキシアパタイト、及び、それら誘導体を含んだ、平板、粒子、繊維、ハイドロゲルの表面及び、又は内部に吐出することができる。
以下に実験例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[製造例1]
以下の方法で、リン酸化ナノファイバーセルロース(リン酸化NFCe)を製造した。
リン酸二水素ナトリウム二水和物6.75g、リン酸水素二ナトリウム4.83gを19.62gの水に溶解させ、リン酸化試薬水溶液を得た。このリン酸化試薬水溶液のpHは25℃で6.0であった。
セルロース繊維原料として、針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700mL)を濃度4質量%になるように水を加えて、ダブルディスクリファイナーで変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250mL、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解してパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーを0.3質量%に希釈した後、抄紙法により含水率90%のパルプシート(絶乾質量として3g、厚み200μm)を得た。このパルプシートを前記リン酸化試薬水溶液31.2g(乾燥パルプ100重量部に対してするリン元素量として80.2重量部)に浸漬させた後、105℃の送風乾燥機(ヤマト化学株式会社製、DKM400)にて1時間乾燥処理し、さらに150℃の送風乾燥機(DKM400、前出)で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入したパルプシートを得た。
次いで、リン酸基を導入したパルプシートに500mLのイオン交換水を加え、攪拌洗浄後、濾過脱水して脱水パルプを得た。得られた脱水パルプを300mLのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液5mLを少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを濾過脱水し、500mLのイオン交換水による洗浄および濾過脱水を計3回繰り返して、最終的にリン酸セルロースを得た。
X線回折により、このセルロースはセルロースI型結晶を維持しており、さらにFT−IRによる赤外線吸収スペクトルの測定により、1230〜1290cm−1にリン酸基に基づく吸収が認められ、セルロースに対するリン酸基の付加が確認された。
尚、リン酸基の導入量は、0.73mmol/gであった。リン酸基の導入量は、マイルストーンゼネラル社製マイクロ波試料前処理装置ETHOS1を用いて加圧密閉分解を実施した後、分解溶液を定容し希釈した溶液を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製iCAP7600Duoを用いて誘導結合プラズマ発光分析を実施することにより定量した。
得られたリン酸基導入セルロース繊維を固形分濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス0.8S)にて20000rpmで60分処理し、セルロース繊維の解繊を行いナノ繊維化されたリン酸化NFCeの水分散液を得た。
得られたリン酸化NFCeの数平均繊維径は2.6nm、数平均繊維長は665nmで数平均アスペクト比は256であった。
[実験例1]
製造例1に従って作製した0.50質量%リン酸化NFCe水分散液に、リン酸化NFCe濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、水分散液1を得た。得られた水分散液1に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
[実験例2]
リン酸化NFCe濃度が0.15質量%となるように脱イオン水を加える以外は、実験例1と同様の手法で水分散液2を作製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[実験例3]
リン酸化NFCe濃度が0.10質量%となるように脱イオン水を加える以外は、実験例1と同様の手法で水分散液3を作製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[比較実験例1]
冷却還流装置を取り付けたセパラブルフラスコにポリビニルアルコール(PVOH)1.5g(和光株式会社製、重合度2000、完全けん化品)に超純水98.5gを量り取り、スリーワンモーターを用いて100rpmで撹拌しながら95℃まで昇温し、そのまま95℃で60分間攪拌を継続した。60分間撹拌後、25℃まで放冷し、1.50質量%PVOH水溶液を得た。得られたPVOH水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
[比較実験例2]
比較実験例1で得られた1.5質量%PVOH水溶液に対して、PVOH濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた後、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、0.2質量%PVOH水溶液を得た。得られたPVOH水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
[比較実験例3]
ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)の濃度が1質量%となるように脱イオン水を加えた後、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分撹拌することで、1質量%ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)水溶液を得た。得られたポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
上記実験例1〜3及び比較実験例1〜3の結果を表3に示す。
Figure 2017189164
表3より明らかなように、実験例1の水分散液1の粘度(α)は177mPa・s、粘度(β)は39mPa・sであり、粘度比(α/β)は5で、リン酸化NFCeは条件1を満たす。また、リン酸化NFCeは数平均アスペクト比256のフィブリル状ないし繊維状であり、条件2も満たす。
このリン酸化NFCeを用いた実験例2及び実験例3も、0.15質量%又は0.10質量%という低濃度においても、高いチキソ性を有していることが分かる。即ち、吐出時の高せん断応力下では低粘度を示し流動性に優れることから、インクジェット又はディスペンサー吐出性に優れ、一方、吐出後のせん断応力ゼロの条件下では、粘度は著しく増加してゲル化すること、即ち、良好な造形性を示すことが分かる。
一方で、PVOHやポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは、1.50質量%又は1.00質量%といった高濃度であっても、粘度(α)が低く、吐出後に流動してしまう。
なお、PVOHを更に3.0質量%よりも高濃度の水溶液とした場合は、粘度(α)が大きくなるが、このように高濃度で細胞以外の高分子を含むものは、細胞に対する悪影響が懸念され、好ましくない。
さらに、化合物(A)であるリン酸化NFCe及び比較例としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)について、前述の細胞毒性の評価方法に従って細胞毒性の評価を行った。細胞毒性がない(細胞生存率≧20%)と判断したものを○、細胞毒性がある(細胞生存率<20%)と判断したものを×とし、結果を表4に示した。表4に示す通り、化合物(A)であるリン酸化NFCeは細胞毒性を示さないことが確認された。
Figure 2017189164
<細胞外マトリックス成分及び化合物(A)を含む組成物>
[実施例1]
製造例1に従って作製した0.50質量%リン酸化NFCe水分散液に、リン酸化NFCe濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた。さらに、細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを1質量%となるように加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、水分散液4を得た。得られた水分散液4に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
[実施例2]
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを10質量%となるように加えた以外は、実施例1と同様の手法で水分散液5を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[実施例3]
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを30質量%になるように加えた以外は、実施例1と同様の手法で水分散液6を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[実施例4]
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンをコンドロイチン硫酸Na10質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法で水分散液7を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[比較例1]
細胞外マトリックス成分としてのコラーゲンが10質量%となるように脱イオン水を加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、10質量%コラーゲン水溶液を得た。得られた10質量%コラーゲン水溶液に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
[比較例2]
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを30質量%となるように加えた以外は、比較例1と同様の手法で30質量%コラーゲン水溶液を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
[比較例3]
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンをコンドロイチン硫酸Na10質量%に変更した以外は、比較例1と同様の手法で10質量%コンドロイチン硫酸Na水溶液を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜3の結果を表5に示す。
Figure 2017189164
表5に示されるように、実施例1〜4の水分散液4〜7はいずれも、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が大きく、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)が小さく、粘度比(α/β)が大きいもの、即ち、せん断応力がかかっていないときには高粘度であり、せん断応力がかかったときには低粘度となるチキソ性を有するものである。
これらの結果から、組成物に条件1,2を満たす化合物(A)を用いることで、インクジェット等により容易かつ効率的に細細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を製造することができることが分かる。

Claims (15)

  1. 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1を満たす化合物(A)を含む、組成物。
    条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。
  2. 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記粘度(β)が、200mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記粘度(β)が、1mPa・s以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
  5. 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
  6. 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。
  7. 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物。
  8. 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、請求項7に記載の組成物。
  9. 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件2を満たす化合物(A)を含む、組成物。
    条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。
  10. 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、請求項9に記載の組成物。
  11. 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、請求項9又は10に記載の組成物。
  12. 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、請求項9〜11の何れか1項に記載の組成物。
  13. 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、請求項9〜12の何れか1項に記載の組成物。
  14. 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、請求項13に記載の組成物。
  15. 請求項1〜14の何れか1項に記載の組成物の、二次元又は三次元成型体である、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体。
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