JP2017189164A - 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分を含む組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、細胞含有構造体を形成するための手法として、細胞含有ゲルをディスペンスする方法、細胞含有液をインクジェットで積層する方法などが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
(1) 細胞の均一分散性
(2) 細胞非毒性
といった一般的な性能に加えて、
(3) インクジェットやディスペンサーで吐出可能な低粘性
(4) 吐出後は速やかに増粘又はゲル化する造形性
(5) 細胞接着性
といったインクジェットやディスペンサーによる吐出及び造形に特有の性能が求められる。
条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。
条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。
このため、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分と共に、このような化合物(A)を含有する本発明の組成物は、インクジェットやディスペンサー等による吐出の際にはせん断応力がかかることによって低粘度化するため問題無く吐出が可能であり、吐出後にはせん断応力が取り除かれることにより増粘又はゲル化するため、細胞を目的の位置に容易に固定することができる。
BROOKFIELD社製コーンプレート粘度計DV3Tを用い、スピンドルCP−40を装着して25℃にて粘度測定を実施する。回転数を0.3、0.6、1.5、6.0(rpm)の順に上げていき、各回転数において測定開始3分後の粘度の値を読み取る。スピンドルCP−40を用いた場合、上記回転数はそれぞれせん断速度2.25、4.5、11.25、45(1/s)に相当する。
培地として、10%ウシ胎児血清(以下、FBS)(Moregate Exports Pty Ltd.製)を含むDMEM培地(Dulbecco's modified Eagle’s medium)(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を使用する。
滅菌チューブ等に、表1に示す各被験物質添加液中の化合物(A)の目的濃度となるように、1.10質量%の化合物(A)を含む水溶液、5倍濃度のDMEM(DMEM×5)、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液より調製し、フタを閉めて20回程度振ることで混ぜ合わせた後に、10秒×3回ボルテックスミキサーで混合を行い、各被験物質添加液No.1〜4を得る。なお、超純水は滅菌済みのものを使用する。
上記各被験物質添加液No.1〜4を10mL調製する際の、1.10質量%の化合物(A)含有水溶液、DMEM×5、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5質量%炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液の添加量は表1の通りとした。
上記被験物質添加液No.5を10mL調製する際のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)、DMEM×5、FBS、超純水、200mM L−グルタミン及び7.5%炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液の添加量は表2の通りとし、混和後、0.22μmフィルター濾過により滅菌を行う。
炭酸ガスインキュベーター(設定温度:37℃,設定CO2濃度:5%)内で静置し、翌日、各ウェルの培地を除去し、各被験物質添加液No.1〜5を十分に混和後、各ウェルに2.0mLずつ添加する。同様の炭酸ガスインキュベーター内で3日間静置培養する。培養期間終了後に各被験物質添加液を除去し、DMEM培地を2.0mLずつ添加する。この時、細胞を添加しないウェルを1ウェル設け、DMEM培地2.0mL添加する(ブランクウェル)。
Cell Titer 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS)を全ウェルに添加し、プレートミキサーで撹拌する。炭酸ガスインキュベーター内で1〜4時間反応させ、各ウェルの吸光度(490nm)をマイクロプレートリーダー(TECAN Austria GmbH製)にて測定する。
なお、試験はn=5で行い、平均を取る。
細胞生存率が20%以上である場合、細胞毒性がない材料と判断する。細胞毒性がない細胞生存率の範囲は、20%以上、好ましくは25%以上、更に好ましくは28%以上である。
細胞生存率(%)=(各ウェルの測定値)÷(コントロール群の測定値の平均値)×100
化合物(A)の最も短い短軸方向の長さ(La)と、最も長い長軸方向の長さ(Lb)を少なくとも50個以上測定し、アスペクト比(Lb/La)を算出する。その後、得られたアスペクト比の数平均を取ることで、数平均アスペクト比を求めることができる。La及びLbの値は、原子間力顕微鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等による画像から求めることができる。
繊維状の化合物(A)の具体的なLa及びLbの測定方法は以下の通りである。
手法:原子間力顕微鏡(AFM)法(タッピングモード)
探針:未修飾のSi製カンチレバー(NCH)
環境:室温・大気中(湿度50%程度)
装置:ブルカー社製Digital Instrument NanoscopeIIIデ−タサンプリング数:512×512ポイント
AFM像の種別:高さ像、位相像(繊維一つひとつを認識するため)
画像解析法:AFM観察像から繊維をトレースして、繊維を一本ずつ抽出し、繊維一本の高さの最高値を繊維の太さとして計測した。この計測値を平均して数平均繊維径とした。
また、観察像から繊維長を計測し、この計測値を平均して数平均繊維長とした。
本発明の組成物は、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1又は条件2を満たす化合物(A)を含むことを特徴とする。
条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。
条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。
まず、本発明の組成物に含まれる化合物(A)について説明する。
化合物(A)は、その含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であると、吐出時の高せん断応力下では低粘性で吐出安定性に優れる一方で、吐出後の非せん断応力下では増粘又はゲル化して造形性に優れたものとなる。この粘度比(α/β)は3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。粘度比(α/β)は大きい程好ましく、その上限には特に制限はないが、通常100以下である。
化合物(A)は、その含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、また、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものであると、吐出時の高せん断応力下では低粘性で吐出安定性に優れる一方で、吐出後の非せん断応力下では増粘又はゲル化して造形性に優れたものとなる。
条件1と同様、化合物(A)は、特に、その含有量が0.15質量%である水溶液又は水分散液(B)において、上記の粘度(α)の好適条件を満たすことが好ましく、その含有量が0.10量%である水溶液又は水分散液(B)において、上記の粘度(α)の好適条件を満たすことがさらに好ましい。
化合物(A)は、上記の条件1及び条件2の一方のみを満たすものであってもよいが、条件1と条件2とを共に満たすことが好ましい。
また、非せん断応力下での造形性の観点から、化合物(A)はその0.2質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、ゲル状になることが好ましい。本明細書において、「ゲル状」とは、重力が及ぼされる環境で、5〜45℃で24時間、形状を保持できる状態を指す。このような形状を保持できる化合物(A)であれば、いかなる形状および物質でも構わない。ゲル状であるかの確認は、例えば次の方法で確認することができる。
まず、ガラス基板上に1mLの化合物(A)の0.2質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を滴下して水滴を作製し、水が揮発しない条件(密閉容器中、高湿度下等)において所定の温度で所定の時間静置する。これを水平方向に45°傾けた際に、液垂れが起こる場合にはゲル状ではく、液垂れが起こらない場合にはゲル状であると判断できる。5〜45℃において、24時間以内にゲル状となるものであることが好ましく、1時間以内にゲル状となるものであることがより好ましく、1分以内にゲル状となるものであることが更に好ましく、10秒以内にゲル状となるものが特に好ましく、最も好ましくは、非せん断応力下で直ちに流動性を失いゲル状となることが好ましい。特に、化合物(A)はその0.15質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃で、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となるものであることが好ましく、1時間以内にゲル状となるものであることがより好ましく、1分以内にゲル状となるものであることが更に好ましく、10秒以内にゲル状となるものが特に好ましく、最も好ましくは、非せん断応力下で直ちに流動性を失いゲル状となることが好ましい。また、化合物(A)の含有量が0.10質量%濃度の水溶液又は水分散液(B)が上記のようにゲル状になることが更に好ましい。
化合物(A)は、上記の条件1及び/又は条件2を満たすものであれば特に限定されない。
水溶性・水分散性高分子としては、親水性天然高分子や多糖類、合成高分子などが挙げられ、例えば、澱粉、変性澱粉、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸類、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、ペクチン、キタンサンガム、カラギーナン、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ポリイタコン酸、コラーゲン、ヒアルロナート、フィブリン、アガロース、キトサン、キチン、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルローススルフェート、シアノエチルセルロースなど)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン系重合体(エチレン−無水マレイン酸共重合体など)、酢酸ビニル系共重合体(酢酸ビニル−アクリル酸メチル共重合体など)、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体など)、カルボキシル基又はスルホン酸基を有する重合体又はその塩又はそのエステル(ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩(アンモニウム塩、ナトリウムなどのアルカリ金属塩)又はそのエステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−ポリビニルアルコール共重合体、(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体など)、ビニルエーテル系重合体(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどのポリビニルエーテルアルキルエーテル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)、スチレン系重合体(スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンブタジエンラテックスなど)、窒素原子含有重合体(ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などのカチオン性重合体又はその塩、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、ポリ(メタ)アクリルアミド類、ポリビニルピロリドンなど)、ポリウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸−塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックス、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、及び、これらを化学修飾することにより得られる誘導体などが挙げられる。
高分子電解質としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸、ポリイタコン酸、(メタ)アクリル酸・無水マレイン酸共重合体、カルボキシル基含有ポリオレフィンワックス、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体などのカルボキシル基を有する高分子の塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、カルボキシメチルデキストランナトリウムなどが挙げられる。
硬直巨大分子としては、アルブミン、グロブリンなどのタンパク質、DNAポリペプチド、ナノファイバーセルロースなどが挙げられる。また、巨大分子の集合体としては、シリカ、アルミナ、でんぷんなどが挙げられる。
以下に、化合物(A)として好適な多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物について説明する。
セルロースの種類としては特に制限されず、植物由来原料から精製を経て不純物を除去されたものなどが好適に使用される。上記植物由来原料としては、例えば、針葉樹、広葉樹などの木質;コットンリンター、コットンリントなどのコットン;さとうきび、砂糖大根などの絞りかす;亜麻、ラミー、ジュート、ケナフなどの靭皮繊維;サイザル、パイナップルなどの葉脈繊維;アバカ、バナナなどの葉柄繊維;ココナツヤシなどの果実繊維;竹などの茎幹繊維;バクテリアが産生するバクテリアセルロース:バロニア、シオグサなどの海草;ホヤの被嚢などが挙げられる。
本発明の組成物における化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上、3質量%以下であることが好ましい。
化合物(A)の含有量が0.01質量%以上であると、非せん断応力下における造形性が良好となる傾向がある。一方、化合物(A)の含有量が3質量%以下であると高せん断応力下における吐出安定性が良好となる傾向がある。また、細胞に対する影響の観点から、組成物中の化合物(A)の含有量は少ない方が好ましい。本発明の組成物における化合物(A)の含有量は、より好ましくは0.02質量%以上、2質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以上、1.5質量%以下である。
組成物中の化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、細胞に与える影響を抑えて細胞増殖性を高めた上で、良好な吐出安定性と造形性を得ることができる。
(細胞)
<種類>
本発明における「細胞」としては、典型的には付着性の株化された哺乳動物細胞、癌細胞、又は、神経、内皮、皮膚、肺、筋肉、腎臓、肝臓、腸など由来の初代培養細胞などが用いられるが、哺乳類の細胞以外も用いることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物細胞であってもよい。また、遺伝子導入した組み換え体細胞なども使用することができる。例えば、外胚葉、中胚葉又は内胚葉に由来する分化細胞や幹細胞を用いることもできる。
また、これらの細胞は、「細胞塊」として本発明の組成物中に含まれていてもよい。
本発明の組成物中の細胞の大きさは特に限定されない。細胞の大きさは、好ましくは1.0μm以上であり、更に好ましくは1.5μm以上である。また、好ましくは250μm以下であり、更に好ましくは230μm以下である。
本発明の組成物中の細胞及び/又は細胞塊の密度(含有量)は限定されない。本発明の組成物中の細胞及び/又は細胞塊の密度は、好ましくは104個/mL以上であり、1013個/mL以下である。細胞及び/又は細胞塊の密度が上記範囲であることにより、吐出安定性及び造形性に共に優れたものとすることができる。
<種類>
本発明における「細胞外マトリックス成分」とは、哺乳動物由来、または、哺乳類以外の組織由来などの細胞外マトリックスに含まれる少なくとも1種である。また、「細胞外マトリックス成分」は、哺乳動物由来、または、哺乳類以外の組織由来であっても用いることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物由来であってもよい。また、遺伝子導入した組み換え体細胞組織由来なども使用することができる。
本発明における細胞増殖因子は、細胞の増殖を促進又は制御する物質をいい、用いる細胞に対応したものを用いればよい。細胞増殖因子としては、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インシュリン等が挙げられる。
本発明の細胞含有組成物中の細胞外マトリックス成分の濃度(含有量)は限定されない。本発明の組成物中の細胞外マトリックス成分の濃度は、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、さらに好ましく80質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以下である。細胞外マトリックス成分の濃度が上記範囲であることにより、吐出安定性及び造形性に共に優れたものとすることができる。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに細胞外マトリックス成分以外の他の成分を含んでいてもよい。本発明の組成物が含有していてもよい他の成分としては、例えば、細胞死を阻害する薬剤、抗アポトーシス性薬剤、サイトカイン、細胞培養液、抗酸化剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
細胞死を阻害する薬剤は、細胞の、壊死、アポトーシス、又は自己貪食を阻害するものである。細胞死を阻害する薬剤は、限定されないが、小分子、抗体、ペプチド、ペプチ体(peptibodies)、又はそれらの組み合わせを含む。具体的には、抗TNF薬剤、インターロイキンの活性を阻害する薬剤、インターフェロンの活性を阻害する薬剤、GCSF(顆粒球コロニー刺激因子)の活性を阻害する薬剤、マクロファージ炎症蛋白の活性を阻害する薬剤、TGF−B(形質転換増殖因子B)の活性を阻害する薬剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の活性を阻害する薬剤、カスパーゼの活性を阻害する薬剤、MAPK/JNKシグナル伝達カスケードの活性を阻害する薬剤、Srcキナーゼの活性を阻害する薬剤、JAK(ヤヌス・キナーゼ)の活性を阻害する薬剤、又はそれらの組み合わせから選択されるものが挙げられる。
サイトカインは、細胞から産生され同種の又は異種の細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインとしては、具体的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子などの造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類等が挙げられる。また、その他の生理活性物質は、例えば、アスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、ビタミンD等のビタミン類、トランスフェリン、血清アルブミン等の蛋白質、脂質、リノール酸、コレステロール、ピルビン酸、レチノイン酸、抗生物質等のその他の生理活性物質を用いてもよい。
上述の本発明の組成物を用いて本発明の細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を成型する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の組成物をインクジェット又はディスペンサーで細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を形成する基材に対して吐出して二次元又は三次元に積層成型することにより、良好な吐出安定性及び造形性のもとに容易かつ効率的に本発明の細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を成型することができる。
以下の方法で、リン酸化ナノファイバーセルロース(リン酸化NFCe)を製造した。
リン酸二水素ナトリウム二水和物6.75g、リン酸水素二ナトリウム4.83gを19.62gの水に溶解させ、リン酸化試薬水溶液を得た。このリン酸化試薬水溶液のpHは25℃で6.0であった。
セルロース繊維原料として、針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700mL)を濃度4質量%になるように水を加えて、ダブルディスクリファイナーで変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250mL、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解してパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーを0.3質量%に希釈した後、抄紙法により含水率90%のパルプシート(絶乾質量として3g、厚み200μm)を得た。このパルプシートを前記リン酸化試薬水溶液31.2g(乾燥パルプ100重量部に対してするリン元素量として80.2重量部)に浸漬させた後、105℃の送風乾燥機(ヤマト化学株式会社製、DKM400)にて1時間乾燥処理し、さらに150℃の送風乾燥機(DKM400、前出)で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入したパルプシートを得た。
尚、リン酸基の導入量は、0.73mmol/gであった。リン酸基の導入量は、マイルストーンゼネラル社製マイクロ波試料前処理装置ETHOS1を用いて加圧密閉分解を実施した後、分解溶液を定容し希釈した溶液を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製iCAP7600Duoを用いて誘導結合プラズマ発光分析を実施することにより定量した。
得られたリン酸化NFCeの数平均繊維径は2.6nm、数平均繊維長は665nmで数平均アスペクト比は256であった。
製造例1に従って作製した0.50質量%リン酸化NFCe水分散液に、リン酸化NFCe濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、水分散液1を得た。得られた水分散液1に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
リン酸化NFCe濃度が0.15質量%となるように脱イオン水を加える以外は、実験例1と同様の手法で水分散液2を作製し、各せん断速度における粘度を測定した。
リン酸化NFCe濃度が0.10質量%となるように脱イオン水を加える以外は、実験例1と同様の手法で水分散液3を作製し、各せん断速度における粘度を測定した。
冷却還流装置を取り付けたセパラブルフラスコにポリビニルアルコール(PVOH)1.5g(和光株式会社製、重合度2000、完全けん化品)に超純水98.5gを量り取り、スリーワンモーターを用いて100rpmで撹拌しながら95℃まで昇温し、そのまま95℃で60分間攪拌を継続した。60分間撹拌後、25℃まで放冷し、1.50質量%PVOH水溶液を得た。得られたPVOH水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
比較実験例1で得られた1.5質量%PVOH水溶液に対して、PVOH濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた後、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、0.2質量%PVOH水溶液を得た。得られたPVOH水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)の濃度が1質量%となるように脱イオン水を加えた後、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分撹拌することで、1質量%ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)水溶液を得た。得られたポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X−100)水溶液について各せん断速度における粘度を測定した。
なお、PVOHを更に3.0質量%よりも高濃度の水溶液とした場合は、粘度(α)が大きくなるが、このように高濃度で細胞以外の高分子を含むものは、細胞に対する悪影響が懸念され、好ましくない。
[実施例1]
製造例1に従って作製した0.50質量%リン酸化NFCe水分散液に、リン酸化NFCe濃度が0.20質量%となるように脱イオン水を加えた。さらに、細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを1質量%となるように加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、水分散液4を得た。得られた水分散液4に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを10質量%となるように加えた以外は、実施例1と同様の手法で水分散液5を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを30質量%になるように加えた以外は、実施例1と同様の手法で水分散液6を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンをコンドロイチン硫酸Na10質量%に変更した以外は、実施例1と同様の手法で水分散液7を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてのコラーゲンが10質量%となるように脱イオン水を加えた。続いて、マグネチックスターラーを用いて、25℃で100rpmで30分間攪拌することで、10質量%コラーゲン水溶液を得た。得られた10質量%コラーゲン水溶液に対して、前述の粘度の測定方法に従って、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンを30質量%となるように加えた以外は、比較例1と同様の手法で30質量%コラーゲン水溶液を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
細胞外マトリックス成分としてコラーゲンをコンドロイチン硫酸Na10質量%に変更した以外は、比較例1と同様の手法で10質量%コンドロイチン硫酸Na水溶液を調製し、各せん断速度における粘度を測定した。
これらの結果から、組成物に条件1,2を満たす化合物(A)を用いることで、インクジェット等により容易かつ効率的に細細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体を製造することができることが分かる。
Claims (15)
- 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件1を満たす化合物(A)を含む、組成物。
条件1:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)と、25℃におけるせん断速度45.0(1/s)の時の粘度(β)の比(α/β)が2.0以上であり、粘度(α)が10mPa・s以上である。 - 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、請求項1に記載の組成物。
- 前記粘度(β)が、200mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記粘度(β)が、1mPa・s以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
- 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、請求項1〜4の何れか1項に記載の組成物。
- 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。
- 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物。
- 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、請求項7に記載の組成物。
- 細胞及び/又は細胞外マトリックス成分、並びに、下記条件2を満たす化合物(A)を含む、組成物。
条件2:化合物(A)の含有量が0.2質量%である水溶液又は水分散液(B)において、25℃におけるせん断速度2.25(1/s)の時の粘度(α)が10mPa・s以上であり、化合物(A)が、数平均アスペクト比5.0以上の、ロッド状、フィブリル状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1つの形態を含むものである。 - 前記化合物(A)が、細胞毒性を示さないものである、請求項9に記載の組成物。
- 前記水溶液又は水分散液(B)を、5〜45℃、且つ、せん断速度がゼロの状態で静置した時に、24時間以内にゲル状となる、請求項9又は10に記載の組成物。
- 前記化合物(A)の含有量が0.01質量%以上、3質量%以下である、請求項9〜11の何れか1項に記載の組成物。
- 前記化合物(A)が、多糖類及び/又は多糖類を化学修飾することにより得られる化合物である、請求項9〜12の何れか1項に記載の組成物。
- 前記化合物(A)が、セルロース及び/又はセルロースを化学修飾することにより得られる化合物である、請求項13に記載の組成物。
- 請求項1〜14の何れか1項に記載の組成物の、二次元又は三次元成型体である、細胞及び/又は細胞外マトリックス成分含有構造体。
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石油技術協会誌, vol. 第80巻、第2号, JPN6020032555, 2015, pages 125 - 128, ISSN: 0004460440 * |
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