JP2017184722A - 生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼ、それをコードする遺伝子 - Google Patents

生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼ、それをコードする遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度の基質および/または生成物の存在下においても酵素活性を保持できる酵素、すなわち、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼの提供。
【解決手段】土壌由来メタゲノムライブラリーからのスクリーニングによって得られたβ−グルコシダーゼであって、5mM以上のセロビオース存在下又は50mM以上の高濃度のグルコースの存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下又はグルコースの非存在下の夫々ににおけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼ。
【選択図】なし

Description

本発明は、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼ、それをコードする遺伝子に関する。
植物由来バイオマスはセルロースや、キシランやキシログルカンなどのヘミセルロースから成っており、その効率的利用は循環型社会の実現のために重要である。
現在、植物由来バイオマスを単糖やオリゴ糖に分解する反応(糖化)は、微生物が生産する糖質分解酵素を用いた酵素糖化により行われるのが主流である。
一般にセルロースは、セルラーゼを合成できる微生物(細菌、真菌、粘菌、原生動物、昆虫等)によって分解される(非特許文献1)。セルラーゼは、セルロースのβ−1,4−グルカン又はβ−D−グルコシド結合を加水分解して、セロオリゴ糖、セロビオース及び/又はβ−D−グルコースを生成する酵素の総称であり、その作用形式により3つの型に大別されている。すなわち、エンドグルカナーゼ(EG;EC3.2.1.4)、エキソグルカナーゼ(セロビオハイドロラーゼ;CBH;EC3.2.1.91)、及びβ-グルコシダーゼ(β-D-グルコシドグルハイドラーゼ;BG;EC3.2.1.21)(非特許文献2)である。エンドグルカナーゼは、主としてセルロース繊維の非結晶部分に作用してセルロース糖鎖の内部を切断する(非特許文献3)。また、エキソグルカナーゼは、結晶性セルロースに作用してセルロース糖鎖の末端を分解し、セロビオースを産生する(非特許文献4)。一方、β-グルコシダーゼは、エンドグルカナーゼ及び/又はエキソグルカナーゼの作用によって生じたセロビオース及び/又はセロオリゴ糖等から最終産物であるβ−D−グルコースを遊離させる働きをもつ(非特許文献5)。したがって、セルロースの糖化には、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ及びβ−グルコシダーゼの3つの酵素の存在とそれらの効率的な活性組み合わせにより、それらの酵素の活性が効率的に発揮されることが必要となる。
一方で、バイオマスの酵素糖化に関わる多くの酵素はその酵素反応の生成物や高濃度の基質によって酵素反応が阻害されることが知られている(生成物阻害と基質阻害)。例えば、エンドグルカナーゼやセロビオハイドロラーゼはその生成物であるセロビオースによって阻害されることが知られている。一方、β−グルコシダーゼは、上述のように、植物由来バイオマスを糖化する際に、エンドグルカナーゼやセロビオハイドロラーゼによって生産されたセロビオースなどのセロオリゴ糖をグルコースに分解する重要な酵素であるが、その生成物であるグルコースによって劇的に阻害され(生成物阻害)、また、基質であるセロビオースが高濃度で存在する際も活性が低下する(基質阻害)ことが知られている。
したがって、植物由来バイオマスの酵素糖化を効率的におこなうためには、上記の生成物阻害や基質阻害に耐性を持つ高機能なβ−グルコシダーゼが不可欠である。
環境中の微生物には、未利用の遺伝子資源が豊富に存在すると考えられている。環境中の微生物の多くは培養が困難であるが、培養が困難な微生物から培養を介さずにゲノムDNAを抽出し、有用遺伝子をスクリーニングする方法として、メタゲノム手法が知られている。
これまでに、メタゲノム手法を用いることにより、高濃度のグルコース存在下でもグルコースによる阻害作用を受けることなく、酵素活性を保持することのできるβ−グルコシダーゼを単離できたことが報告されている(特許文献1および2)。
特許第5392681号公報 特開2011−205992号公報
Aro et al. Journal of Biological Chemistry, 276(26):24309-14 (2001) Knowles et al. Trends in Biotechnology, 5, 255-261 (1987) Kumar et al. J Ind Microbiol Biotechnol. 35(5):377-91. (2008) Nevalainen and Penttila, 1995 Molecular biology of cellulolytic fungi. In: Genetics and Biotechnology K. Esser and U. Kuck, Editors, The Mycota Vol. III (1995), pp. 303-319 Springer Verlag. Suurnakki et al. Cellulose 7:189-209 (2000)
特許文献1および2に開示されるβ−グルコシダーゼは、本発明者らにより見出されたものである。当該β−グルコシダーゼは、生成物であるグルコースが高濃度に存在する環境下においても酵素活性を保持するものである。
一方で、β−グルコシダーゼは、上述のように、その酵素反応の基質が高濃度に存在することによっても酵素反応が阻害される。
そこで、本発明は、高濃度の生成物のみならず、高濃度の基質の存在下においても高い酵素活性を保持できる酵素、すなわち、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有する、新たなβ-グルコシダーゼの単離に成功し、本発明を完成するに至った。なお、当該β−グルコシダーゼは、高濃度の生成物のみならず、高濃度の基質の存在下においても高い酵素活性を保持できる酵素であり、すなわち、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼであった。
すなわち、本発明は以下の通りである:
本発明は、一態様において、
〔1〕5 mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
50 mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼに関する。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、別の態様において、
〔2〕下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼであって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するβ−グルコシダーゼに関する:
a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b)配列番号1、5〜11で示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c)配列番号1、5〜11で示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列、
e)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列。
ここで、本発明のβ−グルコシダーゼは、一実施の形態において、
〔3〕上記〔2〕に記載のβ−グルコシダーゼであって、
5 mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
50 mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有することを特徴とする。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼであって、
D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、β−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する性質を有することを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔5〕下記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸に関する:
i)配列基配列1、5〜11のいずれかで示される塩基配列、
ii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
iii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
iv)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
また、本発明は、別の態様において、
〔6〕宿主細胞において機能可能なプロモーターと上記〔5〕に記載の核酸とが作動可能に連結された核酸に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔7〕上記〔5〕または〔6〕に記載の核酸を含むベクターに関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔8〕上記〔6〕に記載の核酸または〔7〕に記載のベクターが宿主細胞に導入された形質転換体に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔9〕上記〔8〕に記載の形質転換体に発現誘導処理を行う工程を含む、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼの製造方法に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔10〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼの少なくとも一つ、および/または、上記〔8〕に記載の形質転換体を用いて、植物由来のバイオマスを加水分解する工程を含む、植物由来のバイオマスの糖化方法に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔11〕上記〔10〕に記載の糖化方法を用いた、セルロースからβ−D−グルコースを製造する方法に関する。
本発明により提供するβ−グルコシダーゼは、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するものである。よって、本発明のβ−グルコシダーゼを用いることで、植物由来バイオマスの糖化処理をより効率的に行うことが可能である。
図1は、下記「実施例5.MeBglD2の至適pH」の試験結果を示すグラフである。図1のグラフは、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するものとして単離された酵素(MeBglD2)の各pHの条件下におけるグルコシダーゼ活性を測定した結果を示す。縦軸は、最も活性の高かったpH条件下での活性を100%とした時の、各pHでの相対的な活性の強さを示す。 図2は、下記「実施例6.MeBglD2の至適温度」の試験結果を示すグラフである。図2のグラフは、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するものとして単離された酵素(MeBglD2)の各温度条件下におけるグルコシダーゼ活性を測定した結果を示す。縦軸は、最も活性の高かった温度条件下での活性を100%とした時の、各温度での相対的な活性の強さを示す。 図3は、下記「実施例9.MeBglD2のグルコースまたはセロビオースによる活性化」の試験結果を示すグラフである。図3(a)は、各濃度のグルコースを添加した時のpNP-β-D-Glc (●)、pNP-β-D-Fuc (○)またはpNP-β-D-Gal(□)に対する活性を示す。図3(b)は、各濃度のセロビオースを添加した時のpNP-β-D-Glc (●)、pNP-β-D-Fuc (○)またはpNP-β-D-Gal(□)に対する活性を示す。縦軸は、グルコースまたはセロビオース非添加時の各基質への活性を100%とした時の相対活性を示す。 図4は、下記「実施例10.MeBglD2の様々な糖などよる活性化」の試験結果を示すグラフである。図4(a)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Glcへの相対活性を示し、図4(b)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Galへの相対活性を示し、図4(c)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Fucへの相対活性を示す。なお、縦軸は、「糖など」を添加していない時の各基質への活性を100%として相対的な活性の強さを示す。 図5は、下記「実施例11.キシロースとガラクトースによるMeBglD2の活性化」の試験結果を示すグラフである。図5(a)は、各濃度のガラクトースを添加した時の各基質(pNP-b-D-Glc (●)、pNP-b-D-Fuc (○)または pNP-b-D-Gal(□))に対する活性を示す。また、図5(b)は、各濃度のキシロースを添加した時の各基質(pNP-b-D-Glc (●)、pNP-b-D-Fuc (○)または pNP-b-D-Gal(□))に対する活性。なお、縦軸は、ガラクトース非添加時またはキシロース非添加時の各基質への活性を100%とした時の相対活性を示す。 図6は、下記「実施例12.MeBglD2のTrichodermaセルラーゼとの相乗効果」の試験結果を示すグラフである。図6のグラフは、MeBglD2添加時または非添加時のTrichodermaセルラーゼを用いたバイオマスの糖化率を示す。なお、図6における各バーは、酵素反応を24時間(白)、48時間(灰色)、72時間(黒)行った際の糖化率(%)を示す。 図7は、下記「実施例12.MeBglD2のTrichodermaセルラーゼとの相乗効果」の試験における、40℃で72時間酵素反応を行った後のサンプルについてhigh-performance ion chromatography system (HPIC)で解析した結果を示す。 図8は、下記「実施例13.MeBglD2への耐熱化のための変異導入」の試験において用いたThermus thermophilus由来BGL 、および、Thermotoga maritima由来BglAとMeBglD2とのアミノ酸配列のアライメントを示し、また、当該試験において導入した変異の箇所を示す。 図9は、下記「実施例14.耐熱性試験」の結果を示すグラフである。図9中、縦軸は氷上で30分間静置したもの(熱処理無し)を100%とした時の相対的な残存活性を示す。 図10は、下記「実施例15.耐熱化のための多重変異の導入」の試験において作製した変異を有する各MeBglD2の耐熱性試験の結果を示すグラフである。図10中、縦軸は氷上で30分間静置したもの(熱処理無し)を100%とした時の相対的な残存活性を示す。 図11は、下記「実施例16.耐熱化したMeBglD2を用いたバイオマス糖化」の試験の結果を示すグラフである。また、図11中、withoutはTrichoderma reesei由来セルラーゼのみ(MeBglD2非添加)の試験区を示し、WtはTrichoderma reesei由来セルラーゼに野生型のMeBglD2を添加して糖化反応を行った試験区を示し、N59C、A295G、N59C/A295G、H8L/N59C/A295Gはそれぞれの耐熱性変異を導入したMeBglD2をTrichoderma reesei由来セルラーゼに添加してバイオマスの酵素糖化を行った試験区を示す。なお、図11における各バーは、酵素反応を24時間(白)、48時間(灰色)、72時間(黒)行った際の糖化率(%)を示す。 図12は、下記「実施例16.耐熱化MeBglD2のその他の耐性」の試験結果を示すグラフである。図12は、野生型(Wt)MeBglD2、または、N59C、A295G、N59C/A295G、もしくは、H8L/N59C/A295Gの耐熱性変異を導入したMeBglD2に対して、10%エタノール、10%DMSO、5mM CuSO4、または、未添加(without)区の相対活性を示す。 図13は、下記「実施例17.耐熱化MeBglD2の糖による活性化」の試験結果を示すグラフである。図13は、終濃度50 mMの糖(D-Glc、D-Xyl、または、Maltose)存在下における、野生型(Wt)MeBglD2、または、H8L、N59C、A295G、N59C/A295G、もしくは、H8L/N59C/A295Gの耐熱性変異を導入したMeBglD2のpNP-b-D-Glcに対する相対活性を示す。
本発明は、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼを提供するものである。ここで、本発明のβ−グルコシダーゼは、下記(a)〜(f)の物理的及び化学的性質を有するものとして定義することができる。
(a)至適pH
本発明のβ‐グルコシダーゼのpHに対する酵素活性に関しては、pH変化に対する最高活性値を100%としたときにpH5以上の弱酸性〜アルカリ性領域で80%以上の高い活性を示す。よって、本発明のβ−グルコシダーゼの至適pHは、pH5以上であり、より好ましくは、pH6.0〜8.0の範囲である。
(b)至適温度
本発明のβ‐グルコシダーゼの温度に対する活性に関しては、温度変化に対する最高活性値を100%としたときに55℃〜65℃の範囲で80%以上の高い活性を示す。よって、本発明のβ−グルコシダーゼの至適温度は55℃〜65℃であり、より好ましくは60℃である。
(c)基質特異性
本発明のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性に加えて、β−ガラクトシダーゼ活性、β−キシロダーゼ活性、β−フコシダーゼ活性、および、α−グルコシダーゼ活性からなる群より選択される少なくとも一つ以上の活性を有する。また、好ましい形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性、β−ガラクトシダーゼ活性、β−フコシダーゼ活性、β−キシロダーゼ活性、および、α−グルコシダーゼ活性の全てを有する。
よって、本発明のβ−グルコシダーゼは、セロビオースおよびセロオリゴ等(例えば、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオースなど)、ラミナリビオースおよびラミナラン(ラミナリトリオース、ラミナリテトラオースなど)、ソフォロース、ラクトース、キシロオリゴ糖や4−ニトロフェノール(pNP)の水酸基と糖のヘミアセタールとが脱水縮合により結合した化合物(例えば、4-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシドなど)を基質として、それらを加水分解することができる。
より具体的には、本発明のβ−グルコシダーゼは、β−D−グリコシド結合を分解する作用を有し、それに加えて、β−D−ガラクドシド結合、β−D−フコシド結合、β−D−キシロシド結合からなる群より選択される一以上の結合を分解する作用を有する。より好ましい形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、β−D−グリコシド結合、β−D−ガラクドシド結合、および、β−D−フコシド結合を分解する作用を有するものであり、さらに好ましい形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、β−D−グリコシド結合、β−D−ガラクドシド結合、β−D−フコシド結合、および、β−D−キシロシド結合の全ての結合について分解する作用を有する。
一方、本発明のβ−グルコシダーゼは、α−D−ガラクトシド結合、α−L−フコシド結合、β−L−フコシド結合、α−D−キシロシド結合、α−L−アラビノシド結合(α−L−アラビノフラノシド結合、および、α−L−アラビノピラノシド結合を含む)、β−L−アラビノシド結合、α−D−マンノシド結合、β−D−マンノシド結合、α−L−ラムノシド結合を分解する作用を有しない。
(d)生成物耐性
本発明のβ‐グルコシダーゼは、高濃度のグルコースに対して高い活性阻害耐性を有し、基質を含む反応溶液中のグルコース濃度が、例えば、1 Mの高濃度状態であっても基質をグルコース非存在下のときの活性に対して100%を超えた相対活性で加水分解することができる。
(e)基質耐性
本発明のβ−グルコシダーゼは、高濃度の基質に対して高い活性阻害耐性を有し、基質であるセロビオースの濃度依存的に活性が増加する。
なお、基質とは上記「(c)基質特異性」に示される基質を含み、本発明のβ−グルコシダーゼは、高濃度の当該基質存在下であっても高い活性阻害耐性を有する。特に、本発明のβ−グルコシダーゼは、基質としてのセロビオースに対する活性阻害耐性を有する。
また、本明細書において、「セロビオース非存在下」または「グルコース非存在下」とは、セロビオースまたはグルコースが存在しない条件をいう。すなわち、「セロビオース非存在下」または「グルコース非存在下」のときの活性に対して100%を超えた相対活性とは、例えば、セロビオース(またはグルコース)が存在しない条件下の酵素活性を100%として、高濃度のセロビオース(またはグルコース)存在下での酵素活性を評価すればよい。
なお、活性の測定は、公知の方法により行うことができる。例えば、4−ニトロフェニル β−D−グルコピラノシド(4-Nitrophenyl β-D-Glucopyranoside:pNP β-D-Glc)などの配糖体を基質として用いた酵素反応を行い、反応後の溶液中に存在する遊離pNPについてOD405における吸光度として定量し、測定することができる。
(f)基質および/または生成物存在下における酵素活性
f−i.グルコースによる酵素活性への影響
本発明のβ‐グルコシダーゼは、グルコース存在下で活性を増大する性質を有する。本発明のβ‐グルコシダーゼにおいて、少なくとも1 M以下のグルコースは、本酵素の活性阻害物質ではなく、活性促進物質として作用し得る。特に、高濃度のグルコース存在下において、本発明のβ−グルコシダーゼは、そのβ−グルコシダーゼ活性、および、β−フコシダーゼ活性が増大する。
本発明のβ−グルコシダーゼの活性を増大させることを目的とした場合、グルコース非存在下と比較して活性が上昇する限りにおいて特に制限されないが、例えば、反応溶液中に50〜500 mMの範囲となるようにグルコースを添加することが好ましく、100〜250mMの範囲となるようにグルコースを添加することがより好ましい。
f−ii.セロビオースによる酵素活性への影響
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、セロビオースの存在下で活性を増大する性質を有する。本発明のβ‐グルコシダーゼにおいて、少なくとも100 mM以下のセロビオースは、本酵素の活性阻害物質ではなく、活性促進物質として作用し得る。特に、高濃度のセロビオース存在下において、本発明のβ−グルコシダーゼは、そのβ−グルコシダーゼ活性、および、β−フコシダーゼ活性が増大する。
本発明のβ−グルコシダーゼの活性を増大させることを目的とした場合、セロビオース非存在下と比較して活性が上昇する限りにおいて特に制限されないが、例えば、反応溶液中に5 mM以上となるようにセロビオースを添加することが好ましく、50 mM以上となるようにセロビオースを添加することがより好ましい。
f−iii.その他の糖類による酵素活性への影響
さらに、本発明のβ−グルコシダーゼのβ−グルコシダーゼ活性は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトースの存在下で活性が増大する。特に、D−グルコース、D−キシロース、および、マルトースは、本発明の酵素のβ−グルコシダーゼ活性を増大させる強い作用を有する。
また、本発明のβ−グルコシダーゼのβ−フコシダーゼ活性は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、D−キシロース、マルトース、および、キシリトールの存在下で活性が増大する。特に、D−グルコース、D−キシロース、および、マルトースは、本発明の酵素のβ−フコシダーゼ活性を増大させる強い作用を有する。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、以下のように、アミノ酸配列または塩基配列を用いて特定することもできる。
一実施の形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなり、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するものである。
a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
ここで、上記a)〜f)で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼのうち、下記a’)〜f’)に示されるアミノ酸配列を有するポリペ内度からなるβ−グルコシダーゼは、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有し、かつ、耐熱性を有するものである:
a’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
なお、本明細書において、「耐熱性を有する」とは、高温下に一定時間置かれた場合であっても、同条件に置かれた配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼと比較して、酵素活性がより維持されていることをいう。本発明の耐熱性を有するβ−グルコシダーゼの好ましい実施形態においては、55℃30分間の熱処理を加えた際に、同条件の熱処理を加えた配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼと比較して、2倍以上の活性を維持しているものである。本発明の耐熱性を有するβ−グルコシダーゼのより好ましい実施形態としては、55℃30分間の熱処理を加えた際に、熱処理を加えていない配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼと比較して、約80%以上の活性を維持しているもの、または、57.5℃30分間の熱処理を加えた際に、熱処理を加えていない配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼと比較して、約50%以上の活性を維持しているものである。なお、熱処理および熱処理後の活性の評価は、下記「実施例14.耐熱性試験」に記載の方法によって評価することができる。
また、上記a)〜f)で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼのうち、下記a’’)〜f’’)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチ度からなるβ−グルコシダーゼは、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有し、かつ、エタノール耐性、DMSO耐性、および、銅イオン耐性の少なくとも一つの耐性を有するものである:
a’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
なお、本明細書において、「エタノール耐性、DMSO耐性、および、銅イオン耐性」を有するとは、エタノール、DMSO、または、銅イオンの存在下においても、それぞれの物質の非存在下におけるβ−グルコシダーゼの活性と比較して、同等またはそれ以上の活性を有することをいう。なお、「エタノール耐性、DMSO耐性、または、銅イオン耐性」は、下記「実施例16.耐熱化MeBglD2のその他の耐性」に記載の方法によって評価することができる。
ここで、上記に記載するエタノール耐性、DMSO耐性、および、銅イオン耐性の少なくとも一つの耐性を有する本発明のβ−グルコシダーゼのうち、さらに好ましい実施形態としては、エタノール存在下、または、CuSO4存在下において、それらの物質の非存在下における配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼの活性と比較して、さらに向上した酵素活性を有するものである。このような、β−グルコシダーゼは、下記a’’’)〜f’’’)のように記載することができる:
a’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
本明細書において、「同一性」とは、2つの塩基配列またはアミノ酸配列にギャップを導入して又は導入しないでアラインメントさせたときに、一方の塩基配列またはアミノ酸配列の全塩基数に対する他方の塩基配列またはアミノ酸配列の同一塩基数または同一アミノ酸数の割合(%)をいう。本発明のβ−グルコシダーゼは、配列番号1、5〜11で示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%、95%、98%、99%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列を有するポリペプチドからなり、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するものである。また、本発明のβ‐グルコシダーゼは、配列番号2、12〜18で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、98%、または、99%の同一性を有し、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するものである。
なお、塩基配列またはアミノ酸配列により特定される、本発明のβ−グルコシダーゼは、好ましい形態において、上記(a)〜(f)の物理的性質及び化学的性質を有するものである。
このような塩基配列またはアミノ酸配列の同一性により特定されるポリペプチドとしては、例えば、β−グルコシダーゼホモログ(オルソログ及びパラログを含む)やβ−グルコシダーゼ変異体が挙げられる。このような同一性を有するポリペプチドは、例えば、配列番号1、5〜11で示される塩基配列や配列番号2、12〜18で示されるβ−グルコシダーゼアミノ酸配列をクエリーとして、ゲノムデータベース等をBLAST検索等を用いて検索することによって得ることができる。
また、「ストリンジェントな条件」とは、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味する。通常は低ストリンジェント〜高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件であり、好ましくは50℃、5×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。
また、「アミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列」における「数個」とは、2〜50個、2〜45個、2〜40個、2〜35個、2〜30個、2〜25個、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜4個、2〜3個又は2個の整数をいう。前記置換は、保存的アミノ酸置換であることが好ましい。保存的アミノ酸置換であれば、配列番号2で示されるβ‐グルコシダーゼと実質的に同等な構造又は性質を有し得るからである。保存的アミノ酸置換とは、同一の保存的アミノ酸群に属するアミノ酸間の置換をいう。保存的アミノ酸群には、非極性アミノ酸群(グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファンが属する)及び極性アミノ酸群(非極性アミノ酸以外のアミノ酸が属する)、荷電アミノ酸群(酸性アミノ酸群(アスパラギン酸、グルタミン酸が属する)及び塩基性アミノ酸群(アルギニン、ヒスチジン、リジンが属する)及び非荷電アミノ酸群(荷電アミノ酸以外のアミノ酸が属する)、芳香族アミノ酸群(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンが属する)、分岐状アミノ酸群(ロイシン、イソロイシン、バリンが属する)、並びに脂肪族アミノ酸群(グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンが属する)等が知られている。
本発明のβ−グルコシダーゼを構成するアミノ酸は、修飾されていてもよい。ここでいう「修飾」とは、例えば、本発明のβ−グルコシダーゼがその活性を有する上で必要な機能上の修飾(例えば、グリコシル化のような糖鎖の付加)及び/又は本発明のβ−グルコシダーゼを検出する上で必要な標識修飾のいずれも含む。標識には、例えば、蛍光色素(FITC、ローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)、又はビオチン若しくは(ストレプト)アビジン)による標識が挙げられる。
また、本発明の、β−グルコシダーゼは必要に応じて、シグナルペプチドや標識ペプチドのような他の生物種由来のアミノ酸配列又はタグアミノ酸配列のような人工的アミノ酸配列と連結することができる。
本発明のβ−グルコシダーゼは、前記物理的性質及び化学的性質を有するポリペプチド、または、前記配列番号で特定されるポリペプチド(a)〜e)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチド)であれば、それが由来する生物種は問わない。例えば、細菌(例えば、アクチノマイセス類)、真菌(例えば、酵母、糸状菌)、粘菌、原生動物、又は昆虫(例えば、シロアリ、ゴキブリ)等のいずれの由来であってもよい。
また、本発明は別の態様において、下記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸を提供する。
i)配列基配列1、5〜11のいずれかに示される塩基配列、
ii)配列番号2、12〜18のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
iii)配列番号2、12〜18のいずれかにで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
iv)配列番号2、12〜18のいずれかにで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
本明細書において「核酸」とは、DNA、RNA又はそれらの組合せをいうが、それ以外にも、PNA(Peptide Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid;登録商標)/BNA(Bridge Nucleic Acid)、メチルホスホネート型DNA、ホスホロチオエート型DNA、2'-O-メチル型RNA等の化学修飾核酸、擬似核酸又はそれらとDNA及びRNAの組み合わせも含む。好ましくは、DNAである。
また、上記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる「核酸」は、宿主細胞において機能可能なプロモーターと作動可能に連結させることができる。
プロモーターとしては、宿主特異的なプロモーター、すなわち、特定の宿主細胞内で作動可能なプロモーターを使用する。例えば、大腸菌中で作動可能なプロモーターとしては、lac、trp若しくはtacプロモーター又はファージ・ラムダ由来のPR若しくはPLプロモーター等が挙げられる。また、酵母で作動可能なプロモーターとしては、例えば、酵母解糖系遺伝子由来のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、TPI1プロモーター、ADH2-4cプロモーター等が挙げられる。植物細胞で作動可能なプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。昆虫細胞で作動可能なプロモーターとしては、例えば、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモーター、バキュロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター、バキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター等が挙げられる。
また、本発明は、別の態様において、上記核酸を発現可能な状態で含む発現ベクターを提供する。
「発現ベクター」とは、一般に、内部にコードされた遺伝子を発現制御できるシステムを包含するベクターをいう。「発現可能な状態」とは、発現ベクターに含まれる前記核酸が宿主内の所定条件下で転写され得る状態をいう。例えば、発現ベクターに含まれる宿主特異的なプロモーターの制御下に前記核酸を連結した状態が該当する。
本発明の発現ベクターにおけるベース部分、すなわち、ベクターの主要な骨格部分は、特に限定はしない。好ましくは、プラスミド又はウイルスである。プラスミドの場合、例えば、大腸菌由来のプラスミド(pBI系、pPZP系、pSMA系、pUC系、pBR系、pBluescript系(stratagene社)プラスミド)、枯草菌由来のプラスミド(pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(Yep13、Yep24、YCp50等)等を使用することができる。ウイルスの場合、ファージ(λgt11、λZAP等のλファージ)、植物ウイルス(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメゴールデンモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス)等を使用することができる。これらは、導入する宿主に応じて適宜選択すればよい。
本発明の発現ベクターは、上記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸及びベース部分以外に、他の構成要素を含むことができる。例えば、プロモーター、エンハンサー若しくはターミネーター等の調節領域、又は選択マーカー遺伝子等の標識領域が挙げられる。また、宿主が真核生物である場合には、スプライシングシグナル(ドナー部位、アクセプター部位、ブランチポイント等)、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)等の調節領域を連結することもできる。それぞれの構成要素の種類は、導入する宿主に応じて当該分野で公知のものを適宜選択すればよく、特に限定はしない。
発現ベクターの所定の部位に目的の核酸を挿入する方法は、当該分野で公知の方法、例えば、Sambrook, J. et. al., (1989) Molecular Cloning: a Laboratory Manual Second Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に従って行えばよい。通常は、調製された核酸の両端を適当な制限酵素で処理し、発現ベクター中のプロモーター制御下における対応する制限酵素部位に挿入して連結する方法、又はTaq DNAポリメラーゼ等による3'-A突出末端を有するPCR産物であれば発現ベクター中のプロモーター制御下における5'-T突出末端部位に挿入して連結する方法等が採用される。その他、市販のシステム又はキットを用いる場合であれば、それらに特異的な方法によって調製することもできる。
また、本発明は、別の態様において、発現ベクターを宿主に導入した形質転換体又はその後代を提供する。
本明細書において「形質転換体」とは、発現ベクターの導入により形質転換された宿主であり、形質転換体の第1世代をいう。宿主は、導入された発現ベクターの複製が可能で、かつその発現ベクターに含まれる核酸を発現できれば特に限定されない。宿主の具体例を挙げると、細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli等)及び枯草菌(Bacillus subtilis))、酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)又はメタノール資化性酵母(Pichia pastoris))、糸状菌(例えば、コウジカビ(Aspergillus)及びアカパンカビ(Neurospora))、植物(植物体、その器官、組織、分化した細胞若しくは未分化状態の植物細胞(カルス)を含む)又は昆虫細胞(例えば、sf9又はsf21)が挙げられる。
本明細書において、「形質転換体」は、形質転換体の後代を含む。「形質転換体の後代」とは、前記形質転換体(第1世代)から無性生殖又は有性生殖を介して得られる形質転換体第2世代以降であって、かつ第2実施形態の核酸を発現可能な状態で保持しているものを意味する。例えば、宿主が大腸菌や酵母等の無性生殖を行う単細胞微生物であれば、形質転換体第1世代以降から分裂又は出芽等によって新たに生じた細胞(クローン体)が該当する。
発現ベクターを宿主に導入して本発明の形質転換体又はその後代を調製する方法は、当該分野で公知の形質転換方法を使用することができる。また、本発明の形質転換体から後代を得る方法は、その形質転換体の宿主である生物種において後代を得るために用いられる通常の方法で行えばよい。
また、本発明は、形質転換体に発現誘導処理を行い、本発明のβ−グルコシダーゼを製造する方法を提供する。
本発明のβ−グルコシダーゼを製造する方法は、本発明の発現ベクターを包含する形質転換体等を培養する工程(培養工程)、培養した形質転換体等に発現誘導処理を行う工程(発現誘導工程)、及び培養液及び/又は形質転換体等から本発明のβ−グルコシダーゼを回収する工程(回収工程)を含む。以下、それぞれの工程について説明をする。
「培養工程」は、本発明の形質転換体等を適当な培地で培養する工程である。形質転換体等を培地で培養する方法は、形質転換体の宿主の培養に用いられる通常の方法に従えばよい。
「発現誘導工程」は、培養した前記形質転換体等に所定の発現誘導処理を行い、形質転換体等に包含される発現ベクター中の本発明のβ−グルコシダーゼをコードする核酸の発現を誘導させる工程である。発現誘導の方法は、ベクターに含まれるタンパク質発現制御システムによって異なるため、そのシステムに適した誘導処理を行えばよい。
「回収工程」は、発現誘導工程で誘導された本発明のβ−グルコシダーゼを形質転換体等又はその培養液から回収する工程である。ポリペプチドの回収は、当該分野では公知の技術により適宜行うことができる。
また、本発明は、別の態様において、植物由来のバイオマスを分解し、糖化する方法を提供する。本糖化方法は、本発明のβ−グルコシダーゼ等及び/又は本発明の形質転換体等を用いて植物由来のバイオマスを加水分解する工程を含むことを特徴とする。
ここで、植物由来のバイオマスとは、例えば、「セルロースおよび/またはヘミセルロース」(以下、「セルロース等」とする)をいい、セルロース等を含有するあらゆる資源を対象とすることができる。例えば、木本類(例えば、スギ又はカラマツのような針葉樹若しくはブナ、ナラ、カシ、ユーカリ又はポプラのような広葉樹の樹幹、根、枝、葉、花、種子及びそれらの落葉を含む)及び草本類(ススキ、タケ若しくはササ等の単子葉類、ヨモギ、セイタカアワダチソウ若しくはクズのような双子葉類の根、茎、葉、花、種子及びそれらの枯死体を含む)を含む種子植物又はシダ類等の利用度の低い植物資源のみならず、植物性農業廃棄物(例えば、イネ、ムギ、トウモロコシ等の茎、葉、籾殻)、農産物の加工処理で発生する残渣(例えば、果皮、オカラのような搾り粕)、紙資源(例えば、新聞紙、雑誌、廃棄OA紙、ダンボール)及び建築廃材が挙げられる。
本発明のβ−グルコシダーゼを用いて植物由来のバイオマスの糖化処理を行う方法は、公知の方法に従い行うことができ、当業者であれば適宜実施することができる。
また、本発明は、別の態様として、上記の糖化方法を用いてセルロース等からβ-D-グルコースを製造する方法を提供する。本方法は、上記糖化方法と同様に公知の方法に従い適宜実施することができ、その結果の生産物としてβ-D-グルコースを得ることができる。
(実施例1.生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼの土壌由来メタゲノムライブラリーからのスクリーニング)
フォスミドベクターを使用した土壌由来メタゲノムライブラリーの作製と大腸菌への形質転換は、参考文献1(Kimura N, Sakai K, Nakamura K. (2010) Isolation and characterization of a 4-nitrotoluene-oxidizing enzyme from activated sludge by a metagenomic approach. Microbes Environ. 25:133-139.)および参考文献2(Nasuno E, Kimura N, Fujita MJ, Nakatsu CH, Kamagata Y, Hanada S. (2012) Phylogenetically novel LuxI/LuxR-type quorum sensing systems isolated using metagenomic approach. Appl Environ Microbiol. 78:8067-8074.)に記載の方法により行った。
その後、作製した土壌由来メタゲノムライブラリーから、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼを以下の手順でスクリーニングした。
メタゲノムライブラリーを保有する大腸菌を200μlのLuria-Bertani(LB) + 12.5 μg/mlクロラムフェニコール(LB+Cm)培地に植菌し、37℃で18時間、静置培養した。静置培養後、650μlのLB+Cm培地をさらに添加し、30分間37℃震盪培養を行った。なお、震盪培養は、タイテック BioShakerを使用し、最大スピードの設定で行った。
震盪培養後、200μlのLB+Cm+1μl Copy control solution(Epicentre CopyControl Induction Solution 1000×)を添加し、37℃で5時間、さらに震盪培養を行った。培養後、 菌体を3500 rpmで5分間遠心分離し、集菌した。
集菌した菌体に対して、100 μlの2倍希釈したBugBuster(Novagen)を添加しピペッティングによって懸濁後、室温で30分間静置した。30分の静置後、400μlの50 mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH 5.5)を添加し、3500 rpmで15分間遠心分離を行った。遠心分離後の上清100μlをマイクロプレートに移し、p-nitrophenyl (pNP)基質(10 mM pNP-b-D-Glc)を20μlずつ添加し、37℃で一晩インキュベートを行った。次に、1Mの炭酸水素ナトリウムを100μl添加後、Absorbance 405 nmを測定し、遊離pNPの定量を行った。次いで、遊離pNP定量の結果を基に、pNP基質に対して活性を有するクローンをピックアップし、β−グルコシダーゼライブラリーとした。
上記で作製したβ−グルコシダーゼライブラリーから、以下の手順で生成物(グルコース)阻害耐性及び基質(セロビオース)阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼのスクリーニングを行った。
まず、β−グルコシダーゼライブラリーを200μlのLB+Cmに植菌し、37℃で約12時間、震盪培養を行った。次に、700μlのLB+Cmをさらに添加し、30分間37℃で震盪培養を行った。その後、200μlのLB+Cm+1μl Copy control solution(Epicentre CopyControl Induction Solution 1000×)をさらに添加し、37℃で5時間、震盪培養を行った。震盪培養を行った後、菌体を3500 rpm 5分間遠心分離し、集菌した。集菌後の菌体に対して、100 μLの2倍希釈したBugBusterを添加し、ピペッティングによって懸濁後、室温で30分間静置した。静置後、400μlの50mM酢酸バッファー(pH 5.5)を添加し、3500 rpmで15分間遠心分離を行った。遠心分離処理後、上清30μlをマイクロプレートに移し、25μlの1 M D-glucoseまたは0.1 M cellobioseを添加し、そこに20 mM pNP-b-D-Glcを5 μlずつ添加し、37℃で2時間インキュベートを行った。インキュベート後は、100 μlの1 M炭酸水素ナトリウムを添加することにより、反応を止めた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、遊離pNPの定量を行った。遊離pNPの定量結果を基に、D-glucoseまたはcellobiose添加時と非添加時の活性の強さをOD405で比較し、特にD-glucose添加時及びcellobiose添加時に活性の強かったβ−グルコシダーゼを生産していたクローン(D2)をピックアップし、以下の実験に使用した。
(実施例2.フォスミドベクターの抽出とインサートDNAの塩基配列の決定)
D-glucose添加時およびcellobiose添加時に高い活性を有するb-グルコシダーゼを生産するクローン(D2)をLB+Cm培地で培養し、NucleoSpin Plasmid EasyPure (タカラバイオ)を用いてフォスミドベクターを抽出した。抽出したフォスミドベクター内のインサートDNAの塩基配列はHiSeq 2000(Illumina)によって解析した。インサートDNA(約30 kbp)中には27個の推定Open Reading Frame (ORF)があり、その中に1つのβ−グルコシダーゼをコードすると考えられる配列番号1に記載の塩基配列を含む遺伝子が含まれていた。本遺伝子をmebglD2と命名し、解析を進めた。
また、mebglD2がコードするタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)を、塩基配列から同定した。
(実施例3.MeBglD2をコードする遺伝子のクローニング)
クローンD2から抽出したフォスミドベクターを鋳型に、mebglD2遺伝子を以下のプライマーの組合せでPCRによって増幅した。
5’-AGGAGATATACCATGGTGAGCACACAAAACGAACCC-3’ (配列番号3)
5’-GGTGGTGGTGCTCGAGTGTCGTCTGCGGCGCCGGCAG-3’ (配列番号4)
PCRはPrimeStar Max(タカラバイオ)を使用して行った。増幅した遺伝子をNcoI及びXhoIで消化したpET28aにIn-Fusion HD cloning kit(タカラバイオ)を用いてクローニングした。
(実施例4.MeBglD2の発現)
pET28aにクローニングしたMeBglD2をECOS BL21(DE3)(ニッポンジーン)に形質転換した。得られた形質転換体は、LB+20μg/ml カナマイシン(LB+Km)培地で前培養を行った。つぎに、前培養した形質転換体をOvernight Express LB(Novagen)+20 mg/ml カナマイシン(OELB+Km)培地に植え、25℃、180 rpmで一晩培養を行った。培養した菌体は、5000 rpmで4 分間で遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体は、50 mlのBenzonase Nuclease HC(Novagen)とComplete EDTA-free(Roche)とを加えた50 mlのBugBuster(Novagen)に懸濁し、室温で45分インキュベートした。インキュベート後、10,000 rpm、4℃で10分間遠心分離後、上清を回収し、0.45 μmのフィルターで滅菌処理し、酵素粗抽出液を得た。つぎに、得られた酵素粗抽出液を5 mLのHisTrap HP(GEヘルスケア)で精製した。精製した酵素は、Amicon Ultra-10(ミリポア)で濃縮し、精製MeBglD2とした。
(実施例5.MeBglD2の至適pH)
MeBglD2の至適pHについて、表1に示す組成を有する反応溶液Aを用いて、以下の手順で調べた。なお、反応溶液は、pHを3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5のそれぞれに調整したMcIlvaine’s Bufferを用いて調製した。なお、McIlvaine’s Bufferは、参考文献3(McIlvaine TC (1921) A buffer solution for colorimetric comparison. J Biol Chem. 49:183-186.)に記載されている。
Figure 2017184722
各反応溶液についてサーマルサイクラーを使用し、30℃で5分間、酵素反応を行った。その後、1 M 炭酸水素ナトリウム溶液を50μl添加し、反応を停止させた。反応を停止させた後、Absorbance 405 nmを測定し、反応溶液中の遊離pNPを定量した。その結果を図1に示す。図1は、最も活性の高かったpHでの活性を100%とした時の、各pHでの相対的な活性の強さを示す。図1が示すように、MeBglD2の至適pHは、pH 6.0〜8.0であった。
(実施例6.MeBglD2の至適温度)
MeBglD2の至適温度は、表2に示す組成を有する反応溶液Bを用いて、以下の手順で調べた。
Figure 2017184722
各反応溶液についてサーマルサイクラーを使用し、5分間酵素反応を行った。このとき、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80℃の各温度条件で酵素反応を行った。その後、1 M 炭酸水素ナトリウム溶液を50 ml添加し、反応を止めた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、反応溶液中の遊離pNPを定量した。その結果を図2に示す。図2は、最も活性の高かった温度での活性を100%とした時の、各温度での相対的な活性の強さを示す。図2が示すように、MeBglD2の至適温度は60℃であった。
(実施例7.MeBglD2の基質特異性)
pNP基質に対するMeBglD2の基質特異性を、表3に示す組成を有する反応溶液Cを用いて、以下の手順で調べた。
Figure 2017184722
調製した反応溶液を60℃で5分間酵素反応させた。その後、1 M 炭酸水素ナトリウム溶液を50 μl添加し、反応を停止させた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、反応用液中の遊離pNPを定量した。その結果を表4に示す。表4は、pNP基質として用いた各化合物と、それぞれの基質に対する酵素活性(遊離pNPを定量)を示す。表4に示すとおり、MeBglD2は強いβ−グルコシダーゼ活性、β−フコシダーゼ活性、β−ガラクトシダーゼ活性と弱いβ−キシロシダーゼ活性とα−グルコシダーゼ活性を有していた。
Figure 2017184722
(実施例8.MeBglD2の基質特異性(二糖))
二糖に対するMeBglD2の基質特異性を、表5に示す組成を有する反応溶液Dを用いて、以下の手順で調べた。
Figure 2017184722
反応溶液Dの組成である「二糖」として、セロビオース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ソフォロース、ラクトースをそれぞれ使用した。調製した各反応用液を60℃で5 分間反応させた。その後、98℃で10分間インキュベートし、反応を停止させた。反応停止後、Wako Lab assay glucose(和光純薬工業株式会社)を使用し、反応溶液中のグルコースの定量を行った。
また、「二糖」としてセロビオースを使用した際には、セロビオースの基質濃度を変化させた場合の活性についても調べた。具体的には、表6に示す組成を有する反応溶液Eを用いて、以下の手順で行った。
Figure 2017184722
なお、反応溶液Eにおいて、セロビオースの終濃度がそれぞれ5、25、50、100、200、300mMになるように添加した。調製した各反応用液は、60℃で5分間反応させた。その後、98℃で10分間インキュベートし、反応を停止させた。反応停止後、Wako Lab assay glucoseを使用し、反応溶液中のグルコースを定量した。
二糖に対するMeBglD2の基質特異性の結果を表7に示す。MeBglD2は高濃度のセロビオースでも基質阻害を受けず、むしろセロビオースの濃度が増加するにしたがってその比活性も増加した。また、MeBglD2はラミナリビオースやソフォロースにも高い活性を示す一方、ラクトースに対する活性は低く、ゲンチビオースに対する活性は検出されなかった。
Figure 2017184722
(実施例9.MeBglD2のグルコースまたはセロビオースによる活性化)
MeBglD2のpNP-b-D-Glc、pNP-b-D-GalまたはpNP-b-D-Fucに対する活性がグルコースまたはセロビオースの添加によって活性化されるかを調べた。実験手順は、表8に示す組成を有する反応溶液Fを用いて、以下の通りに行った。
Figure 2017184722
調製した反応溶液Fは、サーマルサイクラーを使用し、60℃で5分間反応させた。その後、1 M 炭酸水素ナトリウムを100μl添加し、反応を停止させた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、反応用液中の遊離pNPを定量した。その結果を図3に示す。なお、図3(a)は、各濃度のグルコースを添加した時のpNP-β-D-Glc (●)、pNP-β-D-Fuc (○)またはpNP-β-D-Gal(□)に対する活性を示す。図3(b)は、各濃度のセロビオースを添加した時のpNP-β-D-Glc (●)、pNP-β-D-Fuc (○)またはpNP-β-D-Gal(□)に対する活性を示す。なお、縦軸は、グルコースまたはセロビオース非添加時の各基質への活性を100%とした時の相対活性を示す。図3に示すように、pNP-b-D-Glcに対する活性は250 mMグルコースの添加によって約7.2倍上昇した。また、pNP-b-D-Glcに対する活性は100 mMセロビオースの添加によっても約4.8倍上昇した。同様に、pNP-b-D-Fucに対する活性は250 mMグルコースの添加によって約9.4倍上昇し、100 mMセロビオースの添加によって約7.7倍上昇した。これに対し、pNP-b-D-Galに対する活性はグルコースやセロビオースを添加しても大きく変化しなかった。
(実施例10.MeBglD2の様々な糖などよる活性)
MeBglD2の活性がグルコースとセロビオース以外のどのような糖や糖アルコールなどによって活性化されるかを、表9に示す組成を有する反応溶液Gを用いて、以下の手順で調べた。
Figure 2017184722
反応溶液Gの組成として含まれる、200 mM「糖などの化合物」としては、以下に列挙する物質を使用した:D-glucose、D-galactose、D-mannose、D-fructose、D-fucose、L-fucose、D-arabinose、D-xylose、sucrose、maltose、D-glucitol、D-mannitol、xylitol、trehalose、D-gluconic acid sodium salt。
調製した各反応用液は、サーマルサイクラーを使用し、60℃で5 分間反応させた。その後、1 M 炭酸水素ナトリウムを50 μl添加し、反応を停止させた。反応停止後、マイクロプレートリーダーでAbsorbance 405 nmを測定し、反応溶液中の遊離pNPを定量した。その結果を図4に示す。なお、図4(a)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Glcへの相対活性を示し、図4(b)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Galへの相対活性を示し、図4(c)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Fucへの相対活性を示す。なお、図4は、「糖など」を添加していない時の各基質への活性を100%として相対的な活性の強さを示す。図4に示すとおり、50 mMの糖などを添加した結果、グルコースやセロビオース以外にもガラクトースやフコース、キシロース、マルトースなどによってpNP-b-D-GlcおよびpNP-b-D-Fucへの活性は上昇した。また、pNP-b-D-Galに対する活性は、これらの糖などを添加してもほとんど活性化されなかった。
(実施例11.キシロースとガラクトースによるMeBglD2の活性化)
MeBglD2のpNP-b-D-GlcおよびpNP-b-D-Fucへの活性がガラクトースやキシロースによって活性化されることが明らかになったので、その活性の上昇がガラクトースやキシロースの濃度依存的であるかを調べた。具体的には、表10に示す組成を有する反応溶液Hを用いて、以下の手順で調べた。なお、反応溶液Hに含まれる基質として、pNP-b-D-Glc, pNP-b-D-GalまたはpNP-b-D-Fucを用いた。
Figure 2017184722
調製した各反応用液は、サーマルサイクラーを使用し、60℃で5分間反応させた。その後、1 M 炭酸水素ナトリウムを50 μl添加し、反応を停止させた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、反応用液中の遊離pNPを定量した。その結果を図5に示す。なお、図5(a)は、各濃度のガラクトースを添加した時の各基質(pNP-b-D-Glc (●)、pNP-b-D-Fuc (○)または pNP-b-D-Gal(□))に対する活性を示す。また、図5(b)は、各濃度のキシロースを添加した時の各基質(pNP-b-D-Glc (●)、pNP-b-D-Fuc ○)または pNP-b-D-Gal(□))に対する活性。なお、縦軸は、ガラクトース非添加時またはキシロース非添加時の各基質への活性を100%とした時の相対活性を示す。図5に示すように、pNP-b-D-Glcに対する活性は1000 mMガラクトースの添加によって約6.5倍上昇し、1000 mMキシロースの添加によって約11.4倍上昇した。また、pNP-b-D-Fucに対する活性は750 mMガラクトースの添加によって約4.4倍上昇し、750 mMキシロースの添加によって約14.1倍上昇した。一方、pNP-b-D-Galに対する活性はガラクトースやキシロースを添加してもpNP-b-D-GalやpNP-b-D-Fucほどは大きく変化しなかった。
(実施例12.MeBglD2のTrichodermaセルラーゼとの相乗効果)
MeBglD2とTrichoderma reesei PC-3-7株が生産するセルラーゼ(PC-3-7)とのバイオマス糖化における相乗効果を調べた。
Trichoderma reesei PC-3-7株をAvicel(登録商標)を添加したBasal培地(Kawamori et al. 1986, Applied Microbiology and Biotechnology Vol.24 pp 449-453)を用いて培養し、培養上清をTrichodermaセルラーゼ(PC-3-7)として用いた。バイオマスはイナワラを苛性ソーダ処理(0.5%水酸化ナトリウム水溶液で100℃ 5分間加熱)したものを使用した。バイオマス酵素糖化の試験に用いた反応溶液の組成は以下の表11に示すとおりである。
Figure 2017184722
上記の組成で3種の反応溶液((i)PC-3-7なし, MeBglD2なし;(ii)PC-3-7あり, MeBglD2なし;(iii)PC-3-7あり, MeBglD2あり)をボトル中に作製し、40℃、150 rpmでストロークしながら反応させた。反応開始より24時間、48時間、72時間後にサンプルを200 mlずつ取り出した。取り出したサンプルは、100℃で5分間加熱し、酵素を失活させた。その後、13000 rpmで5 分間遠心し、上清2μlを18μlのdwで希釈した。得られた溶液に40μlのDNS溶液(0.8 gのNaOH、0.25 gの3, 5-ジニトロサリチル酸、15 gの酒石酸ナトリウムカリウム四水和物を滅菌水に溶解し、50 mlにメスアップしたもの)を加え、98℃で10分間反応させた。反応させた後、180 μlの蒸留水(distilled water:dw)で希釈し、そのうち180 μlをマイクロプレートに移し、Absorbance 540nmを測定し、還元糖量を定量した。上記手順によって求められた還元糖量からバイオマスの糖化率を算出し、その結果を図6に示す。また、40℃で酵素反応を72時間行った後のサンプルに含まれる糖類をhigh-performance ion chromatography system (HPIC)で解析した。その結果を図7に示す。なお、図7(a)は、(ii)PC-3-7あり, MeBglD2なしの反応溶液を用いた際の結果を示し、図7(b)は、(iii)PC-3-7あり, MeBglD2ありの反応溶液を用いた際の結果を示す。図6および図7に示すように、MeBglD2を植物由来バイオマスの酵素糖化の際に添加すると、糖化率が大きく向上することが明らかとなった。
(実施例13.MeBglD2への耐熱化のための変異導入)
MeBglD2に対して人工的に変異を導入し、耐熱化の検討を行った。まずMeBgID2と耐熱性を有するb-グルコシダーゼであるThermus thermophilus由来BGLとThermotoga maritima由来BglAとのアライメントを行った。なお、例えば、Thermus thermophilusが生産するb-グルコシダーゼは、至適温度が88℃であり、90℃で10分間熱処理した場合にも、熱処理をしていないものと比較して、約半分の活性を維持できる耐熱性のb-グルコシダーゼである(参考文献:Dion M, Fourage L, Hallet JN, Colas B. 1999. Cloning and expression of a b-glycosidase from Thermus thermophilus. Sequence and biochemical characterization of the encoded enzyme. Glycoconj J. 16, 27-37)。
アライメントの結果から、MeBglD2と耐熱性を有する酵素で異なっているアミノ酸残基を見出して、変異導入の候補とした。MeBglD2のこれらのアミノ酸残基を、耐熱性を有する酵素の対応するアミノ酸残基に置換することによってMeBglD2の耐熱化を試みた。また、酵素のN末端の疎水性を高め、疎水結合を増やすことによる耐熱化を試みた。具体的な変異箇所を下記に示し、図8に示す。
変異箇所1:8番目のH残基をL(H8L変異体)、I(H8I変異体)またはV(H8V
変異体)に置換する
変異箇所2:59番目のNをCに置換する(N59C変異体)
変異箇所3:118番目のEをTに置換する(E118T変異体)
変異箇所4:210番目のPをKに置換する(P210K変異体)
変異箇所5:216番目からのGNAQTをVKDGに置換する(216VKDG変異体)
変異箇所6:295番目のAをGに置換する(A295G変異体)
変異箇所7:319番目からのRPPGEYをPPEGPAに置換する(319PPEGPA変
異体)
また、本発明者らは、別途、MeBglD2の結晶構造解析に成功した。そこで、上記のアライメント結果に加え、MeBglD2の立体構造と既知のThermus thermophilus由来BGLおよびThermotoga maritima由来BglAの立体構造を比較することによって、上記の変異箇所が耐熱性を有さないMeBglD2と耐熱性を有するThermus thermophilus由来BGLおよびThermotoga maritima由来BglAで立体構造が異なっていることを確認した。
なお、変異の導入は、具体的には、下記のようにして行った。
pET28a-MeBglD2を鋳型に、以下のプライマーの組合せでPCRを行った。
Figure 2017184722
各プライマーを用いたPCRにより得られたPCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(タカラバイオ)を用いて環状プラスミドにした。その後、環状プラスミドを大腸菌(BL21 (DE3)、ニッポンジーン)に形質転換した。形質転換した大腸菌から以下の手順で酵素を調製し、耐熱性試験を行った。
(実施例14.耐熱性試験)
上記で作製した各変異MeBglD2を発現する各大腸菌を、20 mg/mlになるようにカナマイシンを添加した15 mLのOvernight Expression Instant LB medium (Novagen)に植菌し、30℃ 150 rpmで24時間培養した。培養後、6,000 gで3分間遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体は、1.5 mLの酵素抽出バッファー(1×BugBuster (Novagen), Complete EDTA free (Roche)、20 mMリン酸バッファー pH 7.0、300 mM NaCl、10 mMイミダゾール)に懸濁し、室温で20分間インキュベートした。インキュベートの後、4℃で15,000 g、10分間遠心分離し、上清を粗抽出液として回収した。粗抽出液は、His Spin Trap (GHヘルスケア)で粗精製した。粗精製の工程により得られた酵素は、下記表13に記載の組成からなる耐熱性試験の反応溶液を用いて熱処理と活性測定を行った。
Figure 2017184722
反応溶液Iに添加した粗精製酵素は、氷上、52.5℃、55℃、57.5℃、60℃、62.5℃のそれぞれの条件で30 分間インキュベートした。インキュベート後、各サンプルを氷冷し、その後10 mlの10 mM pNP-b-D-Glcを添加し、60℃で5分間インキュベートした。
50 mlの1 M NaHCO3を添加し、マイクロプレートリーダーでAbsorbance 405を測定した。耐熱性試験の結果を図9に示す。図9中、縦軸は氷上で30分間静置したもの(熱処理無し)を100%とした時の相対的な残存活性を示している。耐熱性試験の結果により、H8L変異体、N59C変異体またはA295G変異体で耐熱性が向上することが明らかになった。特に、N59CとA295G変異体で耐熱性が劇的に向上していた。
(実施例15.耐熱化のための多重変異の導入)
ここで、さらなる耐熱性の向上を目指し、H8L変異体、N59C変異体またはA295G変異体の3つの変異点の重ね合わせを行った。具体的にはH8L変異体へさらにN59C変異(H8L/N59C変異体)またはA295G変異(H8L/A295G変異体)を、H8L変異体へさらにN60CおよびA295G変異(H8L/N59C/A295G変異体)を、N59C変異体へさらにA295G変異(N59C/A29G変異体)を導入した。導入の手順は前述のプライマーを用いたPCRによって行った。PCRにより得られたPCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(タカラバイオ)を用いて環状プラスミドにし、得られた4つのプラスミドベクター(pET28b-MeBglD2 H8L/N59C、pET28b-MeBglD2 H8L/A295G、pET28b-MeBglD2 H8L/N59C/A295G、pET28b-MeBglD2 N59C/A295G)をBL21 (DE3)(ニッポンジーン)に形質転換した。得られた形質転換体について、実施例14に記載の耐熱性試験と同様にして、酵素の耐熱性を調べた。その結果を図10に示す。
図10に示すように、耐熱性試験の結果から、H8L、N59C、A295Gの3つの変異を重ね合わせることによって耐熱性はさらに向上した。特に、N59C/A295G変異体およびH8L/N59C/A295G変異体では野生型酵素と比較して10℃以上、耐熱性が向上していることが明らかになった。
このように、実施例14および15の試験において、野生型のMeBglD2は55℃で30分間熱処理することによって活性が14%程度まで低下するのに対し、H8L、N59C、A295Gの変異導入によってMeBglD2の耐熱性が大きく向上し、同様の熱処理(55℃ 30分間)後もH8L変異体では約34%、N59C変異体では約84%、A295G変異体では約80%の残存活性が見られた。特にN59CまたはA295G変異体は耐熱性に優れ、60℃で30分間熱処理した後でも7%程度の活性を保持していた。
また、これらの変異を組み合わせることによって耐熱性がさらに向上し、特に、H8L、N59C、A295Gの3箇所に変異を導入した変異酵素は62.5℃の熱処理後でも60%以上の活性を保持していることが明らかになった。
(実施例16.耐熱化したMeBglD2を用いたバイオマス糖化)
MeBglD2はTrichoderma reesei由来セルラーゼと協調的に働き、植物由来バイオマスの酵素糖化を促進するが、実施例13および15において耐熱化したMeBglD2を用いた場合に、バイオマスの酵素糖化効率が向上するか否かについて調べた。具体的には、以下の手順で実験を行った。
Figure 2017184722
上記組成で反応溶液Jをボトル中に作製し、40℃, 150 rpmでストロークした。24時間、48時間、72時間後にサンプルを200 mLずつ取り出した。なお、反応溶液の組成中、MeBgID2としては、N59C、A295G、N59C/A295、または、H8L/N59C/A295の変異を有するものを用いた。その後、100℃で10分間加熱し、酵素を失活させた。失活の工程の後、13000 rpm, 5 min遠心をかけ、上清を2 mL取り出し、得られた上清に対して18 mLのdwで希釈した。希釈後、さらに40 mLのDNSを加え、98℃ 10min熱処理を行った。その後、180 mLのdwで希釈し、そのうちの180 mLをマイクロプレートリーダーを用いて、Absorbance 540を測定した。
その結果を図11に示す。図11中、withoutはTrichoderma reesei由来セルラーゼのみ(MeBglD2非添加)の試験区を示し、WtはTrichoderma reesei由来セルラーゼに野生型のMeBglD2を添加して糖化反応を行った試験区を示し、N59C、A295G、N59C/A295G、H8L/N59C/A295Gはそれぞれの耐熱性変異を導入したMeBglD2をTrichoderma reesei由来セルラーゼに添加してバイオマスの酵素糖化を行った試験区を示す。図11が示すように、耐熱性変異を導入することで72時間酵素糖化を行った際の糖化率が15%以上向上することが明らかになった。
(実施例16.耐熱化MeBglD2のその他の耐性)
MeBglD2は耐熱性以外にもエタノールなどのアルコールや銅イオンなどの重金属などに対して感受性を示す。耐熱性変異によってこれらのアルコールや銅イオンに対する耐性が変化するか否かを調べた。具体的には、下記のようにして行った。
Figure 2017184722
反応溶液Kの添加物としては40% Ethanol, 40% DMSOまたは20 mM CuSO4を用い、各反応用液を調製した。また、酵素液に含有のMeBgID2としては、N59C、A295G、N59C/A295、または、H8L/N59C/A295に変異を有するものを用いた。反応溶液を調製後、サーマルサイクラーを使用し、60℃で5分間させた。5分後、1 M 炭酸水素ナトリウム溶液を50 ml添加し、反応を止めた。反応溶液を50 mlをマイクロプレートに移し、マイクロプレートリーダーでAbsorbance 405を測定した。
その結果を図12に示す。図12に示すように、H8L変異体ではエタノールに対する耐性はわずかに向上するが、DMSOや銅イオンへの耐性は野生型と変化がなかった。A295G変異体では、エタノール耐性、DMSO耐性、銅イオン耐性が向上した。N59Cでは、他の2つの変異体と比較して著しくエタノール耐性、DMSO耐性、銅イオン耐性が向上し、10%程度のエタノールやDMSO、5 mMの硫酸銅には全く感受性を示さないことが明らかになった。また、10%エタノールや5 mM硫酸銅では活性が低下せず、むしろ活性が上昇することを発見した。以上のように、耐熱性変異を導入することによって、熱耐性だけでなく、エタノールやDMSO、銅イオンに対する耐性が向上することが明らかとなった。
(実施例17.耐熱化MeBglD2の糖による活性化)
MeBglD2は耐熱性変異によっても糖による影響を受けるか否かについて調べた。具体的には、下記のようにして行った。
Figure 2017184722
反応溶液Lを調製後、サーマルサイクラーを使用し、30℃で5分間、酵素反応を行った。その後、1 M 炭酸水素ナトリウム溶液を50μl添加し、反応を停止させた。反応を停止させた後、50μlのサンプルについてAbsorbance 405 nmを測定し、反応溶液中の遊離pNPを定量した。その結果を図13に示す。図13が示すように、耐熱化変異を導入したいずれの酵素も、D-グルコース、D-キシロース、または、マルトースの存在下において野生型と同等かそれ以上の活性を有していた。

Claims (12)

  1. 5mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ
    50mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼ。
  2. 下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼであって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するβ−グルコシダーゼ:
    a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
    b)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
    c)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
    d)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
    e)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
    f)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列。
  3. 請求項2に記載のβ−グルコシダーゼであって、
    5mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
    50mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、
    β−グルコシダーゼ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼであって、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、β−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する性質を有する、β−グルコシダーゼ。
  5. 下記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸:
    i)配列基配列1、5〜11のいずれかで示される塩基配列、
    ii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
    iii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
    iv)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
  6. 宿主細胞において機能可能なプロモーターと請求項5に記載の核酸とが作動可能に連結された核酸。
  7. 請求項5または6に記載の核酸を含むベクター。
  8. 請求項6に記載の核酸または請求項7に記載のベクターが宿主細胞に導入された形質転換体。
  9. 請求項8に記載の形質転換体に発現誘導処理を行う工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼの製造方法。
  10. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼの少なくとも一つ、および/または、請求項8に記載の形質転換体を用いて、植物由来のバイオマスを加水分解する工程を含む、植物由来のバイオマスの糖化方法。
  11. 請求項10に記載のバイオマスの糖化方法であって、
    前記加水分解工程が、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において行われる、糖化方法。
  12. 請求項10または11に記載の糖化方法を用いた、セルロースからβ−D−グルコースを製造する方法。
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JP5392681B2 (ja) * 2009-11-30 2014-01-22 独立行政法人産業技術総合研究所 高濃度のグルコース耐性を有するβ−グルコシダーゼ

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