JP2017184722A - 生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ−グルコシダーゼ、それをコードする遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】土壌由来メタゲノムライブラリーからのスクリーニングによって得られたβ−グルコシダーゼであって、5mM以上のセロビオース存在下又は50mM以上の高濃度のグルコースの存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下又はグルコースの非存在下の夫々ににおけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼ。
【選択図】なし
Description
現在、植物由来バイオマスを単糖やオリゴ糖に分解する反応(糖化)は、微生物が生産する糖質分解酵素を用いた酵素糖化により行われるのが主流である。
したがって、植物由来バイオマスの酵素糖化を効率的におこなうためには、上記の生成物阻害や基質阻害に耐性を持つ高機能なβ−グルコシダーゼが不可欠である。
これまでに、メタゲノム手法を用いることにより、高濃度のグルコース存在下でもグルコースによる阻害作用を受けることなく、酵素活性を保持することのできるβ−グルコシダーゼを単離できたことが報告されている(特許文献1および2)。
一方で、β−グルコシダーゼは、上述のように、その酵素反応の基質が高濃度に存在することによっても酵素反応が阻害される。
そこで、本発明は、高濃度の生成物のみならず、高濃度の基質の存在下においても高い酵素活性を保持できる酵素、すなわち、生成物阻害耐性および基質阻害耐性を有するβ-グルコシダーゼを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は以下の通りである:
本発明は、一態様において、
〔1〕5 mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
50 mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼに関する。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、別の態様において、
〔2〕下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼであって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するβ−グルコシダーゼに関する:
a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b)配列番号1、5〜11で示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c)配列番号1、5〜11で示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列、
e)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f)配列番号2、12〜18に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列。
ここで、本発明のβ−グルコシダーゼは、一実施の形態において、
〔3〕上記〔2〕に記載のβ−グルコシダーゼであって、
5 mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
50 mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有することを特徴とする。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼであって、
D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、β−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する性質を有することを特徴とする。
〔5〕下記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸に関する:
i)配列基配列1、5〜11のいずれかで示される塩基配列、
ii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
iii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
iv)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
また、本発明は、別の態様において、
〔6〕宿主細胞において機能可能なプロモーターと上記〔5〕に記載の核酸とが作動可能に連結された核酸に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔7〕上記〔5〕または〔6〕に記載の核酸を含むベクターに関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔8〕上記〔6〕に記載の核酸または〔7〕に記載のベクターが宿主細胞に導入された形質転換体に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔9〕上記〔8〕に記載の形質転換体に発現誘導処理を行う工程を含む、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼの製造方法に関する。
〔10〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のβ−グルコシダーゼの少なくとも一つ、および/または、上記〔8〕に記載の形質転換体を用いて、植物由来のバイオマスを加水分解する工程を含む、植物由来のバイオマスの糖化方法に関する。
また、本発明は、別の態様において、
〔11〕上記〔10〕に記載の糖化方法を用いた、セルロースからβ−D−グルコースを製造する方法に関する。
(a)至適pH
本発明のβ‐グルコシダーゼのpHに対する酵素活性に関しては、pH変化に対する最高活性値を100%としたときにpH5以上の弱酸性〜アルカリ性領域で80%以上の高い活性を示す。よって、本発明のβ−グルコシダーゼの至適pHは、pH5以上であり、より好ましくは、pH6.0〜8.0の範囲である。
本発明のβ‐グルコシダーゼの温度に対する活性に関しては、温度変化に対する最高活性値を100%としたときに55℃〜65℃の範囲で80%以上の高い活性を示す。よって、本発明のβ−グルコシダーゼの至適温度は55℃〜65℃であり、より好ましくは60℃である。
本発明のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性に加えて、β−ガラクトシダーゼ活性、β−キシロダーゼ活性、β−フコシダーゼ活性、および、α−グルコシダーゼ活性からなる群より選択される少なくとも一つ以上の活性を有する。また、好ましい形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、β−グルコシダーゼ活性、β−ガラクトシダーゼ活性、β−フコシダーゼ活性、β−キシロダーゼ活性、および、α−グルコシダーゼ活性の全てを有する。
よって、本発明のβ−グルコシダーゼは、セロビオースおよびセロオリゴ等(例えば、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオースなど)、ラミナリビオースおよびラミナラン(ラミナリトリオース、ラミナリテトラオースなど)、ソフォロース、ラクトース、キシロオリゴ糖や4−ニトロフェノール(pNP)の水酸基と糖のヘミアセタールとが脱水縮合により結合した化合物(例えば、4-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシドなど)を基質として、それらを加水分解することができる。
一方、本発明のβ−グルコシダーゼは、α−D−ガラクトシド結合、α−L−フコシド結合、β−L−フコシド結合、α−D−キシロシド結合、α−L−アラビノシド結合(α−L−アラビノフラノシド結合、および、α−L−アラビノピラノシド結合を含む)、β−L−アラビノシド結合、α−D−マンノシド結合、β−D−マンノシド結合、α−L−ラムノシド結合を分解する作用を有しない。
本発明のβ‐グルコシダーゼは、高濃度のグルコースに対して高い活性阻害耐性を有し、基質を含む反応溶液中のグルコース濃度が、例えば、1 Mの高濃度状態であっても基質をグルコース非存在下のときの活性に対して100%を超えた相対活性で加水分解することができる。
本発明のβ−グルコシダーゼは、高濃度の基質に対して高い活性阻害耐性を有し、基質であるセロビオースの濃度依存的に活性が増加する。
なお、基質とは上記「(c)基質特異性」に示される基質を含み、本発明のβ−グルコシダーゼは、高濃度の当該基質存在下であっても高い活性阻害耐性を有する。特に、本発明のβ−グルコシダーゼは、基質としてのセロビオースに対する活性阻害耐性を有する。
また、本明細書において、「セロビオース非存在下」または「グルコース非存在下」とは、セロビオースまたはグルコースが存在しない条件をいう。すなわち、「セロビオース非存在下」または「グルコース非存在下」のときの活性に対して100%を超えた相対活性とは、例えば、セロビオース(またはグルコース)が存在しない条件下の酵素活性を100%として、高濃度のセロビオース(またはグルコース)存在下での酵素活性を評価すればよい。
なお、活性の測定は、公知の方法により行うことができる。例えば、4−ニトロフェニル β−D−グルコピラノシド(4-Nitrophenyl β-D-Glucopyranoside:pNP β-D-Glc)などの配糖体を基質として用いた酵素反応を行い、反応後の溶液中に存在する遊離pNPについてOD405における吸光度として定量し、測定することができる。
f−i.グルコースによる酵素活性への影響
本発明のβ‐グルコシダーゼは、グルコース存在下で活性を増大する性質を有する。本発明のβ‐グルコシダーゼにおいて、少なくとも1 M以下のグルコースは、本酵素の活性阻害物質ではなく、活性促進物質として作用し得る。特に、高濃度のグルコース存在下において、本発明のβ−グルコシダーゼは、そのβ−グルコシダーゼ活性、および、β−フコシダーゼ活性が増大する。
本発明のβ−グルコシダーゼの活性を増大させることを目的とした場合、グルコース非存在下と比較して活性が上昇する限りにおいて特に制限されないが、例えば、反応溶液中に50〜500 mMの範囲となるようにグルコースを添加することが好ましく、100〜250mMの範囲となるようにグルコースを添加することがより好ましい。
また、本発明のβ−グルコシダーゼは、セロビオースの存在下で活性を増大する性質を有する。本発明のβ‐グルコシダーゼにおいて、少なくとも100 mM以下のセロビオースは、本酵素の活性阻害物質ではなく、活性促進物質として作用し得る。特に、高濃度のセロビオース存在下において、本発明のβ−グルコシダーゼは、そのβ−グルコシダーゼ活性、および、β−フコシダーゼ活性が増大する。
本発明のβ−グルコシダーゼの活性を増大させることを目的とした場合、セロビオース非存在下と比較して活性が上昇する限りにおいて特に制限されないが、例えば、反応溶液中に5 mM以上となるようにセロビオースを添加することが好ましく、50 mM以上となるようにセロビオースを添加することがより好ましい。
さらに、本発明のβ−グルコシダーゼのβ−グルコシダーゼ活性は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトースの存在下で活性が増大する。特に、D−グルコース、D−キシロース、および、マルトースは、本発明の酵素のβ−グルコシダーゼ活性を増大させる強い作用を有する。
また、本発明のβ−グルコシダーゼのβ−フコシダーゼ活性は、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、D−キシロース、マルトース、および、キシリトールの存在下で活性が増大する。特に、D−グルコース、D−キシロース、および、マルトースは、本発明の酵素のβ−フコシダーゼ活性を増大させる強い作用を有する。
一実施の形態において、本発明のβ−グルコシダーゼは、下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなり、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するものである。
a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
a’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
a’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号6、7、10、および、11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号13、14、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
ここで、上記に記載するエタノール耐性、DMSO耐性、および、銅イオン耐性の少なくとも一つの耐性を有する本発明のβ−グルコシダーゼのうち、さらに好ましい実施形態としては、エタノール存在下、または、CuSO4存在下において、それらの物質の非存在下における配列番号1のアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼの活性と比較して、さらに向上した酵素活性を有するものである。このような、β−グルコシダーゼは、下記a’’’)〜f’’’)のように記載することができる:
a’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c’)配列番号6、10、および、11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f’)配列番号13、17、および、18のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
なお、塩基配列またはアミノ酸配列により特定される、本発明のβ−グルコシダーゼは、好ましい形態において、上記(a)〜(f)の物理的性質及び化学的性質を有するものである。
このような塩基配列またはアミノ酸配列の同一性により特定されるポリペプチドとしては、例えば、β−グルコシダーゼホモログ(オルソログ及びパラログを含む)やβ−グルコシダーゼ変異体が挙げられる。このような同一性を有するポリペプチドは、例えば、配列番号1、5〜11で示される塩基配列や配列番号2、12〜18で示されるβ−グルコシダーゼアミノ酸配列をクエリーとして、ゲノムデータベース等をBLAST検索等を用いて検索することによって得ることができる。
また、本発明の、β−グルコシダーゼは必要に応じて、シグナルペプチドや標識ペプチドのような他の生物種由来のアミノ酸配列又はタグアミノ酸配列のような人工的アミノ酸配列と連結することができる。
i)配列基配列1、5〜11のいずれかに示される塩基配列、
ii)配列番号2、12〜18のいずれかに示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
iii)配列番号2、12〜18のいずれかにで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
iv)配列番号2、12〜18のいずれかにで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびβ−フコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
プロモーターとしては、宿主特異的なプロモーター、すなわち、特定の宿主細胞内で作動可能なプロモーターを使用する。例えば、大腸菌中で作動可能なプロモーターとしては、lac、trp若しくはtacプロモーター又はファージ・ラムダ由来のPR若しくはPLプロモーター等が挙げられる。また、酵母で作動可能なプロモーターとしては、例えば、酵母解糖系遺伝子由来のプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、TPI1プロモーター、ADH2-4cプロモーター等が挙げられる。植物細胞で作動可能なプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター(Pnos)、トウモロコシ由来ユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。昆虫細胞で作動可能なプロモーターとしては、例えば、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモーター、バキュロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター、バキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター等が挙げられる。
「発現ベクター」とは、一般に、内部にコードされた遺伝子を発現制御できるシステムを包含するベクターをいう。「発現可能な状態」とは、発現ベクターに含まれる前記核酸が宿主内の所定条件下で転写され得る状態をいう。例えば、発現ベクターに含まれる宿主特異的なプロモーターの制御下に前記核酸を連結した状態が該当する。
本発明のβ−グルコシダーゼを製造する方法は、本発明の発現ベクターを包含する形質転換体等を培養する工程(培養工程)、培養した形質転換体等に発現誘導処理を行う工程(発現誘導工程)、及び培養液及び/又は形質転換体等から本発明のβ−グルコシダーゼを回収する工程(回収工程)を含む。以下、それぞれの工程について説明をする。
「発現誘導工程」は、培養した前記形質転換体等に所定の発現誘導処理を行い、形質転換体等に包含される発現ベクター中の本発明のβ−グルコシダーゼをコードする核酸の発現を誘導させる工程である。発現誘導の方法は、ベクターに含まれるタンパク質発現制御システムによって異なるため、そのシステムに適した誘導処理を行えばよい。
「回収工程」は、発現誘導工程で誘導された本発明のβ−グルコシダーゼを形質転換体等又はその培養液から回収する工程である。ポリペプチドの回収は、当該分野では公知の技術により適宜行うことができる。
本発明のβ−グルコシダーゼを用いて植物由来のバイオマスの糖化処理を行う方法は、公知の方法に従い行うことができ、当業者であれば適宜実施することができる。
フォスミドベクターを使用した土壌由来メタゲノムライブラリーの作製と大腸菌への形質転換は、参考文献1(Kimura N, Sakai K, Nakamura K. (2010) Isolation and characterization of a 4-nitrotoluene-oxidizing enzyme from activated sludge by a metagenomic approach. Microbes Environ. 25:133-139.)および参考文献2(Nasuno E, Kimura N, Fujita MJ, Nakatsu CH, Kamagata Y, Hanada S. (2012) Phylogenetically novel LuxI/LuxR-type quorum sensing systems isolated using metagenomic approach. Appl Environ Microbiol. 78:8067-8074.)に記載の方法により行った。
メタゲノムライブラリーを保有する大腸菌を200μlのLuria-Bertani(LB) + 12.5 μg/mlクロラムフェニコール(LB+Cm)培地に植菌し、37℃で18時間、静置培養した。静置培養後、650μlのLB+Cm培地をさらに添加し、30分間37℃震盪培養を行った。なお、震盪培養は、タイテック BioShakerを使用し、最大スピードの設定で行った。
震盪培養後、200μlのLB+Cm+1μl Copy control solution(Epicentre CopyControl Induction Solution 1000×)を添加し、37℃で5時間、さらに震盪培養を行った。培養後、 菌体を3500 rpmで5分間遠心分離し、集菌した。
集菌した菌体に対して、100 μlの2倍希釈したBugBuster(Novagen)を添加しピペッティングによって懸濁後、室温で30分間静置した。30分の静置後、400μlの50 mM 酢酸ナトリウムバッファー(pH 5.5)を添加し、3500 rpmで15分間遠心分離を行った。遠心分離後の上清100μlをマイクロプレートに移し、p-nitrophenyl (pNP)基質(10 mM pNP-b-D-Glc)を20μlずつ添加し、37℃で一晩インキュベートを行った。次に、1Mの炭酸水素ナトリウムを100μl添加後、Absorbance 405 nmを測定し、遊離pNPの定量を行った。次いで、遊離pNP定量の結果を基に、pNP基質に対して活性を有するクローンをピックアップし、β−グルコシダーゼライブラリーとした。
まず、β−グルコシダーゼライブラリーを200μlのLB+Cmに植菌し、37℃で約12時間、震盪培養を行った。次に、700μlのLB+Cmをさらに添加し、30分間37℃で震盪培養を行った。その後、200μlのLB+Cm+1μl Copy control solution(Epicentre CopyControl Induction Solution 1000×)をさらに添加し、37℃で5時間、震盪培養を行った。震盪培養を行った後、菌体を3500 rpm 5分間遠心分離し、集菌した。集菌後の菌体に対して、100 μLの2倍希釈したBugBusterを添加し、ピペッティングによって懸濁後、室温で30分間静置した。静置後、400μlの50mM酢酸バッファー(pH 5.5)を添加し、3500 rpmで15分間遠心分離を行った。遠心分離処理後、上清30μlをマイクロプレートに移し、25μlの1 M D-glucoseまたは0.1 M cellobioseを添加し、そこに20 mM pNP-b-D-Glcを5 μlずつ添加し、37℃で2時間インキュベートを行った。インキュベート後は、100 μlの1 M炭酸水素ナトリウムを添加することにより、反応を止めた。反応停止後、Absorbance 405 nmを測定し、遊離pNPの定量を行った。遊離pNPの定量結果を基に、D-glucoseまたはcellobiose添加時と非添加時の活性の強さをOD405で比較し、特にD-glucose添加時及びcellobiose添加時に活性の強かったβ−グルコシダーゼを生産していたクローン(D2)をピックアップし、以下の実験に使用した。
D-glucose添加時およびcellobiose添加時に高い活性を有するb-グルコシダーゼを生産するクローン(D2)をLB+Cm培地で培養し、NucleoSpin Plasmid EasyPure (タカラバイオ)を用いてフォスミドベクターを抽出した。抽出したフォスミドベクター内のインサートDNAの塩基配列はHiSeq 2000(Illumina)によって解析した。インサートDNA(約30 kbp)中には27個の推定Open Reading Frame (ORF)があり、その中に1つのβ−グルコシダーゼをコードすると考えられる配列番号1に記載の塩基配列を含む遺伝子が含まれていた。本遺伝子をmebglD2と命名し、解析を進めた。
また、mebglD2がコードするタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)を、塩基配列から同定した。
クローンD2から抽出したフォスミドベクターを鋳型に、mebglD2遺伝子を以下のプライマーの組合せでPCRによって増幅した。
5’-AGGAGATATACCATGGTGAGCACACAAAACGAACCC-3’ (配列番号3)
5’-GGTGGTGGTGCTCGAGTGTCGTCTGCGGCGCCGGCAG-3’ (配列番号4)
PCRはPrimeStar Max(タカラバイオ)を使用して行った。増幅した遺伝子をNcoI及びXhoIで消化したpET28aにIn-Fusion HD cloning kit(タカラバイオ)を用いてクローニングした。
pET28aにクローニングしたMeBglD2をECOS BL21(DE3)(ニッポンジーン)に形質転換した。得られた形質転換体は、LB+20μg/ml カナマイシン(LB+Km)培地で前培養を行った。つぎに、前培養した形質転換体をOvernight Express LB(Novagen)+20 mg/ml カナマイシン(OELB+Km)培地に植え、25℃、180 rpmで一晩培養を行った。培養した菌体は、5000 rpmで4 分間で遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体は、50 mlのBenzonase Nuclease HC(Novagen)とComplete EDTA-free(Roche)とを加えた50 mlのBugBuster(Novagen)に懸濁し、室温で45分インキュベートした。インキュベート後、10,000 rpm、4℃で10分間遠心分離後、上清を回収し、0.45 μmのフィルターで滅菌処理し、酵素粗抽出液を得た。つぎに、得られた酵素粗抽出液を5 mLのHisTrap HP(GEヘルスケア)で精製した。精製した酵素は、Amicon Ultra-10(ミリポア)で濃縮し、精製MeBglD2とした。
MeBglD2の至適pHについて、表1に示す組成を有する反応溶液Aを用いて、以下の手順で調べた。なお、反応溶液は、pHを3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5のそれぞれに調整したMcIlvaine’s Bufferを用いて調製した。なお、McIlvaine’s Bufferは、参考文献3(McIlvaine TC (1921) A buffer solution for colorimetric comparison. J Biol Chem. 49:183-186.)に記載されている。
MeBglD2の至適温度は、表2に示す組成を有する反応溶液Bを用いて、以下の手順で調べた。
pNP基質に対するMeBglD2の基質特異性を、表3に示す組成を有する反応溶液Cを用いて、以下の手順で調べた。
二糖に対するMeBglD2の基質特異性を、表5に示す組成を有する反応溶液Dを用いて、以下の手順で調べた。
また、「二糖」としてセロビオースを使用した際には、セロビオースの基質濃度を変化させた場合の活性についても調べた。具体的には、表6に示す組成を有する反応溶液Eを用いて、以下の手順で行った。
二糖に対するMeBglD2の基質特異性の結果を表7に示す。MeBglD2は高濃度のセロビオースでも基質阻害を受けず、むしろセロビオースの濃度が増加するにしたがってその比活性も増加した。また、MeBglD2はラミナリビオースやソフォロースにも高い活性を示す一方、ラクトースに対する活性は低く、ゲンチビオースに対する活性は検出されなかった。
MeBglD2のpNP-b-D-Glc、pNP-b-D-GalまたはpNP-b-D-Fucに対する活性がグルコースまたはセロビオースの添加によって活性化されるかを調べた。実験手順は、表8に示す組成を有する反応溶液Fを用いて、以下の通りに行った。
MeBglD2の活性がグルコースとセロビオース以外のどのような糖や糖アルコールなどによって活性化されるかを、表9に示す組成を有する反応溶液Gを用いて、以下の手順で調べた。
調製した各反応用液は、サーマルサイクラーを使用し、60℃で5 分間反応させた。その後、1 M 炭酸水素ナトリウムを50 μl添加し、反応を停止させた。反応停止後、マイクロプレートリーダーでAbsorbance 405 nmを測定し、反応溶液中の遊離pNPを定量した。その結果を図4に示す。なお、図4(a)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Glcへの相対活性を示し、図4(b)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Galへの相対活性を示し、図4(c)は、終濃度50 mMの糖などを添加した時のpNP-b-D-Fucへの相対活性を示す。なお、図4は、「糖など」を添加していない時の各基質への活性を100%として相対的な活性の強さを示す。図4に示すとおり、50 mMの糖などを添加した結果、グルコースやセロビオース以外にもガラクトースやフコース、キシロース、マルトースなどによってpNP-b-D-GlcおよびpNP-b-D-Fucへの活性は上昇した。また、pNP-b-D-Galに対する活性は、これらの糖などを添加してもほとんど活性化されなかった。
MeBglD2のpNP-b-D-GlcおよびpNP-b-D-Fucへの活性がガラクトースやキシロースによって活性化されることが明らかになったので、その活性の上昇がガラクトースやキシロースの濃度依存的であるかを調べた。具体的には、表10に示す組成を有する反応溶液Hを用いて、以下の手順で調べた。なお、反応溶液Hに含まれる基質として、pNP-b-D-Glc, pNP-b-D-GalまたはpNP-b-D-Fucを用いた。
MeBglD2とTrichoderma reesei PC-3-7株が生産するセルラーゼ(PC-3-7)とのバイオマス糖化における相乗効果を調べた。
Trichoderma reesei PC-3-7株をAvicel(登録商標)を添加したBasal培地(Kawamori et al. 1986, Applied Microbiology and Biotechnology Vol.24 pp 449-453)を用いて培養し、培養上清をTrichodermaセルラーゼ(PC-3-7)として用いた。バイオマスはイナワラを苛性ソーダ処理(0.5%水酸化ナトリウム水溶液で100℃ 5分間加熱)したものを使用した。バイオマス酵素糖化の試験に用いた反応溶液の組成は以下の表11に示すとおりである。
MeBglD2に対して人工的に変異を導入し、耐熱化の検討を行った。まずMeBgID2と耐熱性を有するb-グルコシダーゼであるThermus thermophilus由来BGLとThermotoga maritima由来BglAとのアライメントを行った。なお、例えば、Thermus thermophilusが生産するb-グルコシダーゼは、至適温度が88℃であり、90℃で10分間熱処理した場合にも、熱処理をしていないものと比較して、約半分の活性を維持できる耐熱性のb-グルコシダーゼである(参考文献:Dion M, Fourage L, Hallet JN, Colas B. 1999. Cloning and expression of a b-glycosidase from Thermus thermophilus. Sequence and biochemical characterization of the encoded enzyme. Glycoconj J. 16, 27-37)。
変異箇所1:8番目のH残基をL(H8L変異体)、I(H8I変異体)またはV(H8V
変異体)に置換する
変異箇所2:59番目のNをCに置換する(N59C変異体)
変異箇所3:118番目のEをTに置換する(E118T変異体)
変異箇所4:210番目のPをKに置換する(P210K変異体)
変異箇所5:216番目からのGNAQTをVKDGに置換する(216VKDG変異体)
変異箇所6:295番目のAをGに置換する(A295G変異体)
変異箇所7:319番目からのRPPGEYをPPEGPAに置換する(319PPEGPA変
異体)
pET28a-MeBglD2を鋳型に、以下のプライマーの組合せでPCRを行った。
上記で作製した各変異MeBglD2を発現する各大腸菌を、20 mg/mlになるようにカナマイシンを添加した15 mLのOvernight Expression Instant LB medium (Novagen)に植菌し、30℃ 150 rpmで24時間培養した。培養後、6,000 gで3分間遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体は、1.5 mLの酵素抽出バッファー(1×BugBuster (Novagen), Complete EDTA free (Roche)、20 mMリン酸バッファー pH 7.0、300 mM NaCl、10 mMイミダゾール)に懸濁し、室温で20分間インキュベートした。インキュベートの後、4℃で15,000 g、10分間遠心分離し、上清を粗抽出液として回収した。粗抽出液は、His Spin Trap (GHヘルスケア)で粗精製した。粗精製の工程により得られた酵素は、下記表13に記載の組成からなる耐熱性試験の反応溶液を用いて熱処理と活性測定を行った。
50 mlの1 M NaHCO3を添加し、マイクロプレートリーダーでAbsorbance 405を測定した。耐熱性試験の結果を図9に示す。図9中、縦軸は氷上で30分間静置したもの(熱処理無し)を100%とした時の相対的な残存活性を示している。耐熱性試験の結果により、H8L変異体、N59C変異体またはA295G変異体で耐熱性が向上することが明らかになった。特に、N59CとA295G変異体で耐熱性が劇的に向上していた。
ここで、さらなる耐熱性の向上を目指し、H8L変異体、N59C変異体またはA295G変異体の3つの変異点の重ね合わせを行った。具体的にはH8L変異体へさらにN59C変異(H8L/N59C変異体)またはA295G変異(H8L/A295G変異体)を、H8L変異体へさらにN60CおよびA295G変異(H8L/N59C/A295G変異体)を、N59C変異体へさらにA295G変異(N59C/A29G変異体)を導入した。導入の手順は前述のプライマーを用いたPCRによって行った。PCRにより得られたPCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(タカラバイオ)を用いて環状プラスミドにし、得られた4つのプラスミドベクター(pET28b-MeBglD2 H8L/N59C、pET28b-MeBglD2 H8L/A295G、pET28b-MeBglD2 H8L/N59C/A295G、pET28b-MeBglD2 N59C/A295G)をBL21 (DE3)(ニッポンジーン)に形質転換した。得られた形質転換体について、実施例14に記載の耐熱性試験と同様にして、酵素の耐熱性を調べた。その結果を図10に示す。
図10に示すように、耐熱性試験の結果から、H8L、N59C、A295Gの3つの変異を重ね合わせることによって耐熱性はさらに向上した。特に、N59C/A295G変異体およびH8L/N59C/A295G変異体では野生型酵素と比較して10℃以上、耐熱性が向上していることが明らかになった。
また、これらの変異を組み合わせることによって耐熱性がさらに向上し、特に、H8L、N59C、A295Gの3箇所に変異を導入した変異酵素は62.5℃の熱処理後でも60%以上の活性を保持していることが明らかになった。
MeBglD2はTrichoderma reesei由来セルラーゼと協調的に働き、植物由来バイオマスの酵素糖化を促進するが、実施例13および15において耐熱化したMeBglD2を用いた場合に、バイオマスの酵素糖化効率が向上するか否かについて調べた。具体的には、以下の手順で実験を行った。
その結果を図11に示す。図11中、withoutはTrichoderma reesei由来セルラーゼのみ(MeBglD2非添加)の試験区を示し、WtはTrichoderma reesei由来セルラーゼに野生型のMeBglD2を添加して糖化反応を行った試験区を示し、N59C、A295G、N59C/A295G、H8L/N59C/A295Gはそれぞれの耐熱性変異を導入したMeBglD2をTrichoderma reesei由来セルラーゼに添加してバイオマスの酵素糖化を行った試験区を示す。図11が示すように、耐熱性変異を導入することで72時間酵素糖化を行った際の糖化率が15%以上向上することが明らかになった。
MeBglD2は耐熱性以外にもエタノールなどのアルコールや銅イオンなどの重金属などに対して感受性を示す。耐熱性変異によってこれらのアルコールや銅イオンに対する耐性が変化するか否かを調べた。具体的には、下記のようにして行った。
その結果を図12に示す。図12に示すように、H8L変異体ではエタノールに対する耐性はわずかに向上するが、DMSOや銅イオンへの耐性は野生型と変化がなかった。A295G変異体では、エタノール耐性、DMSO耐性、銅イオン耐性が向上した。N59Cでは、他の2つの変異体と比較して著しくエタノール耐性、DMSO耐性、銅イオン耐性が向上し、10%程度のエタノールやDMSO、5 mMの硫酸銅には全く感受性を示さないことが明らかになった。また、10%エタノールや5 mM硫酸銅では活性が低下せず、むしろ活性が上昇することを発見した。以上のように、耐熱性変異を導入することによって、熱耐性だけでなく、エタノールやDMSO、銅イオンに対する耐性が向上することが明らかとなった。
MeBglD2は耐熱性変異によっても糖による影響を受けるか否かについて調べた。具体的には、下記のようにして行った。
Claims (12)
- 5mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ
50mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、β−グルコシダーゼ。 - 下記a)〜f)のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドからなるβ−グルコシダーゼであって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するβ−グルコシダーゼ:
a)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列がコードするアミノ酸配列、
b)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列がコードするアミノ酸配列、
c)配列番号1、5〜11のいずれかで示される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列がコードするアミノ酸配列、
d)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列、
e)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、もしくは、付加されたアミノ酸配列、
f)配列番号2、12〜18のいずれかに記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列。 - 請求項2に記載のβ−グルコシダーゼであって、
5mM以上のセロビオース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、セロビオース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有し、かつ、
50mM以上の高濃度のグルコース存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が、グルコース非存在下におけるβ−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性と比較して100%を超えた相対活性を有する、
β−グルコシダーゼ。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼであって、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において、β−グルコシダーゼ活性およびフコシダーゼ活性が増大する性質を有する、β−グルコシダーゼ。
- 下記i)〜iv)のいずれかの塩基配列からなる核酸:
i)配列基配列1、5〜11のいずれかで示される塩基配列、
ii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、
iii)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列、
iv)配列番号2、12〜18のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ、高濃度のセロビオース存在下または高濃度のグルコース存在下においてβ−グルコシダーゼおよびフコシダーゼ活性が増大する作用を有するポリペプチドをコードする塩基配列。 - 宿主細胞において機能可能なプロモーターと請求項5に記載の核酸とが作動可能に連結された核酸。
- 請求項5または6に記載の核酸を含むベクター。
- 請求項6に記載の核酸または請求項7に記載のベクターが宿主細胞に導入された形質転換体。
- 請求項8に記載の形質転換体に発現誘導処理を行う工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のβ−グルコシダーゼの少なくとも一つ、および/または、請求項8に記載の形質転換体を用いて、植物由来のバイオマスを加水分解する工程を含む、植物由来のバイオマスの糖化方法。
- 請求項10に記載のバイオマスの糖化方法であって、
前記加水分解工程が、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−キシロース、および、マルトース、D−マンノース、D−フコース、L−フコース、キシリトールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物の存在下において行われる、糖化方法。 - 請求項10または11に記載の糖化方法を用いた、セルロースからβ−D−グルコースを製造する方法。
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