JP2017169177A - スピンダウンコンバータ及び周波数変換方法 - Google Patents

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英治 齊藤
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亮 井口
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Yuki Shiomi
雄毅 塩見
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大地 廣部
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Abstract

【課題】スピンダウンコンバータ及び周波数変換方法に関し、高周波から低周波へ簡便に周波数変換を行うことを可能にする。【解決手段】磁性体と逆スピンホール効果部材とを接合した逆スピンホール効果素子に外部磁場を印加するとともに、前記磁性体にマグノンの自励振動を発生する強度のエネルギーを有する第1の周波数の電気信号を前記逆スピンホール効果素子と作用させ、前記逆スピンホール効果素子から前記第1の周波数より低周波の第2の周波数の電気信号を出力する。【選択図】図1

Description

本発明は、スピンダウンコンバータ及び周波数変換方法に関するものであり、例えば、スピンを利用したMHz〜GHz帯の高周波帯で使用するスピンダウンコンバータ及び周波数変換方法に関するものである。
近年の高度情報化社会において、我々の生活を支える情報処理を担うデバイスは増加の一途をたどっている。これらのデバイスによる消費電力の増加は社会的課題と認知されており、その解決に向けて様々な取り組みがなされている。そのような取り組みのうちの一つとして、スピントロニクスがあげられる。
スピントロニクスは、従来のエレクトロニクスに代わる情報処理技術である。エレクトロニクスでは、電子のもつ電荷によってビットを表現し、電流によって情報を伝達している。これに対してスピントロニクスでは、電子の持つスピンによってビットを表現し、スピン流によって情報を伝達している。スピントロニクスはエレクトロニクスに比較して消費電力が少ない情報処理が実現できると期待されており、すでに記憶素子での実用化がなされている。
この様な背景の中、スピントロニクスに適した材料開発も大きく進展してきている。スピントロニクスに利用される材料は、磁性体である。磁性体は、その内部の電子スピンがある方向に固定されており、自発磁化を発現している。この自発磁化の運動は、磁性体中を波として伝搬することが知られており、一般にスピン波或いはマグノンと呼ばれる。
このスピン波は、前述のスピン流の一種であり、スピントロニクスにおいて情報の伝達を担うことができる。磁性絶縁体を素子材料として、電荷を一切利用せず、このスピン波だけによって情報処理及び伝達を実現する技術はマグノニクスと呼ばれ、さらに電力消費の小さなデバイスとして期待されている(例えば、特許文献1或いは特許文献2参照)。
スピントロニクスやマグノニクスにおける基本的素子構造は、磁性体と金属の接合である。この接合において、磁性体を強磁性共鳴によって励起して長波長のマグノンを励起すると、金属中にスピン流が流れ(スピンポンピング)、そのスピン流から逆スピンホール効果を通して直流電圧が生じる。そのため、磁性体と金属の接合はしばしば逆スピンホール効果素子と呼ばれる。
図18は従来の逆スピンホール効果素子の説明図である。逆スピンホール効果素子では、YIG等の強磁性体(FM)51とPt等の常磁性金属(NM)52の接合が形成されている。強磁性体51内の磁化Mは外部磁場(図示せず)によって、典型的には数GHz〜数10GHzで歳差運動を行っている。ここに外部から歳差運動と同じ周波数のマイクロ波を入力することによって強磁性共鳴を励起すると、角運動量保存則に基づいて、強磁性体51から常磁性金属52にスピン流Jが注入される(スピンポンピング)。常磁性金属52に注入されたスピン流Jは、逆スピンホール効果によって電圧に変換される。この電圧は常磁性金属52の端部をつなぐAu等の電極から取り出すことができる。
また、マグノンの非線形現象として、3マグノン散乱及び4マグノン散乱が生じることが知られている。これらの散乱過程は、エネルギー保存則と運動量保存則を満足する場合、強磁性共鳴によって励起された長波長マグノンを分裂させて、有限の波数を持ったマグノンを生成する。例えば、波数0で周波数がωのマグノンが3マグノン散乱で分裂する場合には、波数が±kで周波数がω/2の2つのマグノンになる。これらの非線形現象については、マグノニクスの応用に向けた研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
こうしてマグノン系に入力されたエネルギーは、格子系への緩和によって失われる。ある閾値Pを超えて、この緩和過程を上回るレベルに磁性共鳴の入力エネルギーを供給すると、有限の波数を持ったマグノンの密度が増大するSuhlの不安定性が生じる。この閾値Pを超えて励起エネルギーをさらに増大させると、第2の閾値Poscでマグノンの自励振動が生じる。このマグノンの自励振動によって、自発磁化のGHz帯の信号にkHz〜数MHzの変調がかかる(例えば、非特許文献2参照)。
特開2009−295824号公報 米国特許第8254163号明細書
T.Tashiro et.al.,"Spin−current emission governed by nonlinear spin dynamics" Scientific Report vol.5,p.15158,2015 S.Rezende et.al.,"Spin−wave instabilities,auto−oscillations, and chaos in Yttrium−iron−garnet", Proceedings of the IEEE,vol.78,p.893,1990
しかしながら、この自励振動領域における物理現象の応用はこれまで行われていなかった。マグノンの特徴的な周波数はGHz帯であり、現代の通信技術の要となる周波数帯の物理現象である。
一般的に、GHz帯の信号を取り扱う高周波回路は価格が高く、受信回路などにおいてはミキサと内部発生器を利用してMHz帯へ変換して信号処理を行なっている。この様な複雑な回路設計を解消するための革新的な素子が求められてきた。
したがって、本発明は、通信の受信回路などの高周波回路において、高周波から低周波へ簡便に周波数変換を行うデバイス及び変換方法を提供することを目的とする。
一つの態様では、スピンダウンコンバータは、ストリップ導体を備えた平面伝送線路と、前記ストリップ導体に対して磁性体にマグノンの自励振動を発生できる位置に近接配置された前記磁性体と逆スピンホール効果部材とを接合した逆スピンホール効果素子と、前記逆スピンホール効果素子に外部磁場を印加する磁場印加手段と、前記逆スピンホール効果部材に設けられた一対の引出電極と、前記一対の引出電極の間に接続されたフィルタとを備えている。
他の態様では、周波数変換方法は、磁性体と逆スピンホール効果部材とを接合した逆スピンホール効果素子に外部磁場を印加するとともに、前記磁性体にマグノンの自励振動を発生する強度のエネルギーを有する第1の周波数の電気信号を前記逆スピンホール効果素子と作用させ、前記逆スピンホール効果素子から前記第1の周波数より低周波の第2の周波数の電気信号を出力する。
一つの側面として、通信の受信回路などの高周波回路において、高周波から低周波へ簡便に周波数変換を行うことが可能になる。
本発明の実施の形態のスピンダウンコンバータの構成説明図である。 本発明の実施の形態のスピンダウンコンバータの原理の説明図である。 マグノン系の非線形現象に関する説明図である。 マグノンの自励振動の概念図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの概略的構成図である。 本発明の実施例1に用いる逆スピンホール効果素子における強磁性共鳴スペクトルである。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの評価装置構成の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの電圧出力の評価結果の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける強磁性共鳴スペクトルの入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力マイクロ波信号の時間領域波形の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧の振動成分の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。 比較例のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧の振動成分の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波のパワーを一定とした場合の強磁性共鳴に対応した入力マイクロ波の周波数と出力交流電圧の周波数スペクトルの関係図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波のパワーを一定とした場合の強磁性共鳴に対応した入力マイクロ波の周波数と出力交流電圧の周波数の関係図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波の周波数を強磁性共鳴に一致させた状態における入力マイクロ波のパワーと出力交流電圧の周波数の関係図である。 本発明の実施例1スピンダウンコンバータにおける出力交流電圧のスペクトル高さの入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。 本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧のスペクトル半値半幅の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。 従来の逆スピンホール効果素子の説明図である。
ここで、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態のスピンダウンコンバータを説明する。本発明者らは、鋭意研究の結果、逆スピンホール効果素子において磁性体中の磁化をマグノンの自励振動領域において発振させると、金属中に交流電圧が生じることを発見した。本発明者らは、この発見に基づき、強磁性共鳴を行うためのマイクロ波を入力として、その入力を変調した交流電圧を取り出せるため、高周波回路におけるダウンコンバータとして機能することを見出した。
図1は本発明の実施の形態のスピンダウンコンバータの構成説明図である。本発明のスピンダウンコンバータは、ストリップ導体12を備えた平面伝送線路10と、ストリップ導体12に対して磁性体21にマグノンの自励振動を発生できる位置に近接配置された磁性体21と逆スピンホール効果部材22とを接合した逆スピンホール効果素子20と、逆スピンホール効果素子20に外部磁場Hを印加する磁場印加手段と、逆スピンホール効果部材22に設けられた一対の引出電極23,24と、一対の引出電極23,24の間に接続されたフィルタ25とを備えている。平面伝送線路10としては、マイクロストリップ線路或いはコプレーナ線路のいずれかを用いれば良い。この場合、マイクロ波の反射を回避するために、ストリップ導体12の出力端に終端抵抗を接続することが望ましい。なお、図における符号11,13は、絶縁基板及び接地導体である。なお、フィルタ25としては、KHz〜数MHzの周波数の信号を透過するバンドパスフィルタ或いはローパスフィルタを用いれば良い。
磁性体21としては、強磁性体、フェリ磁性体或いは反強磁性体を用いれば良い。強磁性体としては、合金から絶縁体まで特に限定されないが、実用的には、入手が容易で且つスピン角運動量の散逸の小さいフェリ磁性体であるYIG(イットリウム鉄ガーネット)やイットリウムガリウム鉄ガーネット、即ち、一般式で表記するとYFe5−xGa12(但し、x<5)を用いることが望ましい。これは、YFe5−xGa12はバンドギャップが大きいので伝導電子が非常に少なく、したがって、伝導電子によるスピン角運動量の散逸が小さいためである。なお、他のフェリ磁性体としては、置換型希土類鉄ガーネット(X1−xGdFe12(Xは任意の希土類元素、希土類元素の組み合わせ、及び、希土類の一部を他の元素で置換したもの)やフェライトが挙げられ、反強磁性体としては、典型的には酸化ニッケルやFeOが挙げられる。
逆スピンホール効果部材22としては、Pt、Au、Pd、Ag、Bi、或いは、f軌道を有する元素のいずれかを含んだ物質を用いることが望ましく、特にPtが望ましい。これらの元素を含んだ物質はスピン軌道相互作用が大きいので、磁性体21との界面において、スピン波から電流への交換を高効率で行うことができる。
磁場印加手段としては、ストリップ導体12の延在方向に平行な方向に外部磁場Hを印加する磁場印加手段であっても、或いは、ストリップ導体12の延在方向に直交する方向に外部磁場Hを印加する磁場印加手段であっても良い。また、結晶磁気異方性等の物質内部に発生する有効内部磁場でも構わない。これらの磁場を全て纏めて外部磁場と称する。
このようなスピンダウンコンバータを用いて周波数変換する場合には、逆スピンホール効果素子20に外部磁場Hを印加するとともに、磁性体21にマグノンの自励振動を発生する強度のエネルギーを有する第1の周波数の電気信号を逆スピンホール効果素子20と作用させ、逆スピンホール効果素子20から第1の周波数ωより低周波の第2の周波数ωの電気信号を出力すれば良い。
この場合の第1の周波数ωは典型的にはGHzのオーダーであり、第2の周波数ωは典型的にはMHzのオーダーである。第1の周波数ωの電気信号を、平面伝送線路10に設けたストリップ導体12を介して逆スピンホール効果素子20と作用させれば良い。この場合、フィルタ24の透過周波数を設定することによって、所望の周波数を有する第2の周波数の信号を任意に取り出すことができる。また、外部磁場Hの大きさを調整することで、第2の周波数ωを選択することができる。
図2は、本発明の実施の形態のスピンダウンコンバータの原理の説明図である。本発明のスピンダウンコンバータを構成する逆スピンホール効果素子20は、磁性体21と逆スピンホール効果部材22の接合を有している。磁性体21内の磁化Mは外部磁場(図示せず)によって、典型的には数GHz〜数10GHzで歳差運動を行っている。ここに外部から歳差運動と同じ周波数のマイクロ波を大きなパワーで入力すると、マグノンの自励振動が励起される。この自励振動の結果、磁性体21から逆スピンホール効果部材22へ注入されるスピン流Jに自励振動の周波数を持った交流成分が生じる。この交流成分を持ったスピン流Jによる逆スピンホール効果によって、逆スピンホール効果部材22に自励振動の周波数成分を持った交流電圧が発生する。なお、マイクロ波の入力手段としては、マイクロ波キャビティを用いても良い。
図3はマグノンの非線形現象に関する説明図である。マグノンの状態は、強磁性共鳴における入力マイクロ波のパワーによって、線形領域と非線形領域に分けることができる。線形領域と非線形領域の違いは、主に磁化の外部磁場に平行な成分Mの大きさの変化と対比して理解することができる。線形領域は入力マイクロ波のパワーが小さい領域であり、この範囲において磁化のM成分は、飽和磁化Mとほとんど変わらない大きさを維持している。換言すると歳差運動の半径が小さい領域であり、強磁性共鳴の周波数に相当するエネルギーを持ったマグノンが少数励起されている状態である。
入力マイクロ波のパワーを上げていくと、閾値PでSuhlの不安定性が生じ非線形過程が生じることでM成分がMの値から乖離し始める。この領域は強磁性共鳴によってマグノンに渡されたエネルギーが、非線形過程を通じて異なる周波数のマグノンへ受け渡されていることで生じる。歳差運動の半径が大きくなる領域であり、マグノンの数が線形領域に比べて大きくなっている。さらにマイクロ波のパワーを上げていくと、閾値Poscで自励振動が生じる。
図4はマグノンの自励振動の概念図である。マグノンの自励振動は、強磁性共鳴に合致した周波数成分での磁化の歳差運動と、非線形過程によって生成された周波数成分での磁化の歳差運動との間で位相が揃うことによって、エネルギーが交換される現象と理解できる。即ち、z軸周りの歳差運動周期と、z成分の伸縮の周期が一致する成分が生まれ、その2つの振動の間でエネルギーのやり取りが発生する。この二つの歳差運動の間では磁化の外部磁場に平行な成分Mが異なり、この二つの磁化の振動の間をkHzからMHzの間の周波数で行ったり来たりする。これが、図2で生じる交流電圧の起源と考えられる。
本発明の実施の形態によれば、平面伝送線路と逆スピンホール効果素子を用いるだけであるので、複雑な回路設計を必要とせず、材料の物性によってGHzオーダーの高周波信号をMHzオーダーの低周波信号に変換することができる。
次に、図5乃至図17を参照して、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータを説明する。図5は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの概略的構成図であり、図5(a)は概略的斜視図であり、図5(b)は要部上面図である。絶縁基板31の上面にストリップ導体32とストリップ導体32の両側に設けた接地導体33とを有するコプレーナ線路30を用意する。ストリップ導体32の出力端側には終端抵抗34を接続して入力マイクロ波の反射を防止する。このストリップ導体32の端部近傍に、フェリ磁性体であるYIG(YFe12)41と逆スピンホール効果部材であるPt42との接合からなる逆スピンホール効果素子40を両面テープを用いて配置しているので、Pt42とストリップ導体32或いは接地導体33は短絡していない。Pt42には一対のAu引出電極43,44を設け、このAu引出電極43,44の間にバンドパスフィルタ45を接続する。
この実施例1においては、YIG41の厚さを19μmとし、Pt42の厚さを6nmにしている。なお、実際には、GGG(GdGa12)単結晶基板上にYIG41を成長させている。また、図5においては、コプレーナ線路30に対してPt42、YIG41の順序で積層しているが、逆でも良いが、GGG単結晶基板を研磨して薄くする必要がある。
YIG41に強磁性共鳴を起こして、YIG/Pt接合においてスピンポンピングを行うために、外部磁場Hと入力マイクロ波PinがYIG/Pt接合に印加される。図5においては、ストリップ導体32の延在方向をy方向とし、外部磁場Hをy軸方向に印加しており、マイクロ波磁場と外部磁場Hが直交する構成となっている。なお、外部磁場Hをx軸方向に印加するパラレルポンピングでも同様の結果が得られる。
図6は、本発明の実施例1に用いる逆スピンホール効果素子における強磁性共鳴スペクトルである。ここでは強磁性共鳴を入力マイクロ波に対する出力マイクロ波のS値(S11)の大きさで確認している。図6では外部磁場Hが545Oe、入力マイクロ波541mWとした場合のデータであり、強磁性共鳴の吸収ピークが3.23GHzに観測されている。ここでは反射マイクロ波の強度を測定するために、終端抵抗を取り外している。
図7は、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの評価装置構成の説明図である。ここでは、装置構成を簡素化するために、図5に示した装置構成から終端抵抗を除きストリップ導体32を接地導体33に直接短絡させている。これは、接地導体33と信号の境界に、電場0の境界条件が課されるために、その上にサンプルを置くことでサンプルに入る磁場強度が最大になるためであり、以下の出力マイクロ波とは、その反射波を測定した結果である。また、バンドパスフィルタの代わりに、プリアンプ46を介してPt42で発生する交流電圧を測定するためのスペクトルアナライザ47を設けた。この素子特性評価においては、外部磁場を545Oeとし、強磁性共鳴周波数を3.23GHzに固定して行った。
図8は、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータの電圧出力の評価結果の説明図である。強磁性共鳴の周波数である3.23GHzで電圧出力にピークが発生する。このピークは磁場の向きによって反転しており、逆スピンホール効果による電圧であることが分かる。なお、図8においては、電圧出力が磁場の向きに対して対称な形状になっていないが、これは実験条件等によるものであり、理想的には対称な形状が得られる。
図9は、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける強磁性共鳴スペクトルの入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。ここでも、外部磁場Hを545Oeとし、強磁性共鳴周波数を3.23GHzに固定して、入力マイクロ波のパワーを変えて出力マイクロ波の強度スペクトルを測定している。図9の一番上 の図に示すように、入力マイクロ波のパワーが296mWのとき、単一の強磁性共鳴スペクトルが観測できる。入力マイクロ波のパワーが427mWのとき、強磁性共鳴スペクトルを中心に対象な形で複数のピークδf2−,δf1−,δf1+,δf2+が確認できる。これらが非線形効果によって生じたマグノンの自励振動を反映したピークである。これらのピークは入力マイクロ波のパワーをさらに増加させるとより鋭く励起数が増えていくことが観察された。なお、図7の一番下の図、下から二番目の図における組み込み図は、出力マイクロ波の波形をオシロスコープで観察した図である。
図10は、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力マイクロ波信号の時間領域波形である。この典型的な波形は、強磁性共鳴の共鳴周波数を3.23GHz、入力マイクロ波パワーを541mWとして取得している。図9における一番上の図のスペクトルにおける周波数δfに相当する波形である。出力マイクロ波を3.23GHzでダイオード検波し、重畳しているMHz成分だけを取り出して表示している。図10に示す波形には、最も大きな振動周波数成分であるδf1+に対応した振動が確認できる。即ち、図10の振動波形のピークtoピークから振動の周期が分かり、それが、図7のピークのx軸に示されるδf1+の周波数の逆数の振動成分の周期と一致している。
図11は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧の振動成分の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。この信号は図9において観測された、強磁性共鳴下での逆スピンホール電圧のピークの時間変化を、周波数成分にしたスペクトルを示している。即ち、逆スピンホール電圧に重畳された交流成分のスペクトルである。入力マイクロ波のパワーが小さい領域(298mW)では特に周波数成分はないが、パワーを徐々に大きくしていくと、2.0MHz〜3.5MHzのあたりにピークが現れる。このピークは入力マイクロ波のパワーが大きくなると低周波数側にシフトしていく振る舞いが観察されている。またこのピークの強度は、入力マイクロ波のパワーが531mWから541mW付近のときに最大となることが見て取れる。この振動成分は、マグノンの自励振動によるものと考えられる。
この振る舞いから、本発明の実施例1では、強磁性共鳴に対応する3.23GHzの入力マイクロ波が、逆スピンホール効果により常磁性金属層であるPt42において2.0MHz〜3.5MHzの交流電圧に変換されていることが分かる。そのため、素子の出力電圧は強磁性共鳴によって生じた直流電圧に、自励振動による交流電圧が重畳された脈流となっている。
図12は、比較例のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧の振動成分の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。この比較例は、図7に示した逆スピンホール効果素子のYIG41とPt42との間に20nmの厚さのSiO層を挿入したものである。
比較例では挿入したSiO層によってスピン流JのPt42への注入が阻害され、スピンポンピングによるスピン流生成がPt42に生じることがない。そのため、MHz帯の出力交流電圧は観測されない。
図13は、本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波のパワーを一定とした場合の強磁性共鳴に対応した入力マイクロ波の周波数と出力交流電圧の周波数スペクトルの関係図である。ここでは、入力マイクロ波のパワーを541mWに固定して測定を行っている。外部磁場Hと物質固有の磁気回転比で決まる強磁性共鳴の周波数を3.05GHzから3.55GHzへと変化させるにしたがって、素子出力として得られるMHzの交流電圧のピーク位置と大きさが変化する様子が見て取れる。
図14は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波のパワーを一定とした場合の強磁性共鳴に対応した入力マイクロ波の周波数と、出力交流電圧の周波数の関係図である。入力マイクロ波の周波数を横軸に、図13で得られた交流電圧のピーク位置を縦軸に、プロットしている。このとき入力マイクロ波の周波数に対して出力の交流電圧は2.4MHzから3MHzの間で振動する。
図15は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける入力マイクロ波の周波数を強磁性共鳴に一致させた状態における、入力マイクロ波のパワーと出力交流電圧の周波数の関係図である。ここでは、強磁性共鳴の周波数を3.23GHzに固定して測定を行っている。このとき入力マイクロ波のパワーと、出力交流電圧はおよそ線形に変化することが確認された。このことから、出力信号と入力信号を一対一に対応付けることができる。即ち、入力マイクロ波が振幅変調されたGHz信号であるとき、本発明の素子の出力は、周波数変調されたMHz信号となることが分かる。
図16は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧のスペクトル高さの入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。ここでは、強磁性共鳴の周波数を3.23GHzに固定して測定を行っている。スペクトル高さhは、スペクトルをローレンツ関数でフィッティングして求めている。このとき、出力交流信号の大きさは、入力マイクロ波のパワーに対して特徴的なピークを持つことが分かる。
入力マイクロ波のパワーが500mWから530mW程度の範囲、あるいは530mWから580mW程度の範囲であれば、入力と出力の間に単調なおよそ線形の関係性があるので、その関係から出力信号と入力信号を一対一に対応付けることができる。なお、図におけるhISHEは図11の交流出力電圧のスペクトル高さを表し、haoは図10のFMR信号のスペクトル高さを表している。
図17は本発明の実施例1のスピンダウンコンバータにおける出力交流電圧のスペクトル半値半幅の入力マイクロ波のパワーに対する依存性の説明図である。ここでは強磁性共鳴の周波数を3.23GHzに固定して測定を行っている。スペクトルの半値半幅は、スペクトルをローレンツ関数でフィッティングして求めている。このときスペクトルの半値半幅は、入力マイクロ波のパワーが540mW程度までは200kHz程度で一定であるが、540mW以上では線幅が拡大していくことが分かる。
スペクトルの幅は小さいほど好ましく、そのため入力マイクロ波は540mW以下であることが望ましい。以上のことから、入力マイクロ波が540mW以下であれば、入力マイクロ波のパワーに対して強度が線形に応答し、且つ、線幅が狭い出力交流信号が得られることが分かる。なお、図におけるΔWISHEは図11の交流出力電圧のスペクトルの半値半幅を表し、ΔWaoは図10のFMR信号のスペクトルの半値半幅を表している。
本発明の実施例1によれば、コプレーナ線路と逆スピンホール効果素子を用いるだけであるので、複雑な回路設計を必要とせず、材料の物性によってGHzオーダーの高周波信号をMHzオーダーの線幅の狭い低周波信号に変換することができる。
10 平面伝送線路
11 絶縁基板
12 ストリップ導体
13 接地導体
20 逆スピンホール効果素子
21 磁性体
22 逆スピンホール効果部材
23,24 引出電極
25 フィルタ
30 コプレーナ線路
31 絶縁基板
32 ストリップ導体
33 接地導体
34 終端抵抗
40 逆スピンホール効果素子
41 YIG
42 Pt
43,44 Au引出電極
45 バンドパスフィルタ
46 プリアンプ
47 スペクトルアナライザ
51 強磁性体
52 常磁性金属

Claims (14)

  1. ストリップ導体を備えた平面伝送線路と、
    前記ストリップ導体に対して磁性体にマグノンの自励振動を発生できる位置に近接配置された前記磁性体と逆スピンホール効果部材とを接合した逆スピンホール効果素子と、
    前記逆スピンホール効果素子に外部磁場を印加する磁場印加手段と、
    前記逆スピンホール効果部材に設けられた一対の引出電極と、
    前記一対の引出電極の間に接続されたフィルタと
    を備えたスピンダウンコンバータ。
  2. 前記平面伝送線路が、マイクロストリップ線路或いはコプレーナ線路のいずれかである請求項1に記載のスピンダウンコンバータ。
  3. 前記磁性体が、強磁性体である請求項1または請求項2に記載のスピンダウンコンバータ。
  4. 前記磁性体が、フェリ磁性体或いは反強磁性体のいずれかである請求項1または請求項2に記載のスピンダウンコンバータ。
  5. 前記フェリ磁性体が、YFe−xGa12(但し、0≦x<5)或いは置換型希土類鉄ガーネットのいずれかである請求項3に記載のスピンダウンコンバータ。
  6. 前記逆スピンホール効果部材が、Ptである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のスピンダウンコンバータ。
  7. 前記磁場印加手段が、前記ストリップ導体の延在方向に平行な方向に外部磁場を印加する磁場印加手段である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のスピンダウンコンバータ。
  8. 前記磁場印加手段が、前記ストリップ導体の延在方向に直交する方向に外部磁場を印加する磁場印加手段である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のスピンダウンコンバータ。
  9. 磁性体と逆スピンホール効果部材とを接合した逆スピンホール効果素子に外部磁場を印加するとともに、前記磁性体にマグノンの自励振動を発生する強度のエネルギーを有する第1の周波数の電気信号を前記逆スピンホール効果素子と作用させ、前記逆スピンホール効果素子から前記第1の周波数より低周波の第2の周波数の電気信号を出力する周波数変換方法。
  10. 前記第1の周波数が、GHz帯であり、前記第2の周波数がMHz帯である請求項9に記載の周波数変換方法。
  11. 前記第1の周波数の電気信号を、平面伝送線路に設けたストリップ導体を介して前記逆スピンホール効果素子と作用させる請求項9または請求項10に記載の周波数変換方法。
  12. 前記外部磁場を、前記ストリップ導体の延在方向に平行な方向に印加する請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の周波数変換方法。
  13. 前記外部磁場を、前記ストリップ導体の延在方向に直交する方向に印加する請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の周波数変換方法。
  14. 前記第2の周波数を、前記外部磁場の大きさにより規定する請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の周波数変換方法。
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