JP2017168830A - 電気化学キャパシタ用電極及び電気化学キャパシタ - Google Patents

電気化学キャパシタ用電極及び電気化学キャパシタ Download PDF

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康作 竹内
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崇晃 三原
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Abstract

【課題】多孔質炭素材料の表面の利用効率を高めることで、低抵抗での充放電が可能な高い性能を有する電気化学キャパシタ用電極および電気化学キャパシタを提供する。【解決手段】多孔質炭素粒子と有機バインダーを含む電気化学キャパシタ用電極であって、多孔質炭素粒子は炭素部分と空隙とがそれぞれ連続した共連続構造部分を有する粒子であり、有機バインダーが、電極中で多孔質炭素粒子同士を結合するフィブリル状または略球状の固化物として存在している電気化学キャパシタ用電極。【選択図】図2

Description

本発明は、電気化学キャパシタ用電極及びそれを用いた電気化学キャパシタに関するものである。
近年、排気ガスによる大気汚染対策、化石燃料代替エネルギーの利用促進、二酸化炭素による地球温暖化対策の必要性が強く叫ばれ、電気自動車あるいはハイブリッド自動車等の技術開発が進められている。また、電子機器、特にスマートフォン等の革新的な端末機器の市場はめざましく発展している。これらの技術革新に関連して、駆動パワーアシストやエネルギーの回収、有効利用を目的とし、新たな蓄電デバイスとして電気化学キャパシタの開発が進められている。
電気化学キャパシタは、二次電池を大きく上回る高速充放電特性と高サイクル特性が特徴の蓄電デバイスである。電気化学キャパシタの例としては、電気二重層キャパシタとリチウムイオンキャパシタの2つが挙げられる。電気二重層キャパシタは、通常、正極及び負極として活性炭を含む電極を用い、電解質イオンの物理的な吸脱着により充放電が行われる。その際、化学反応を伴わないため、劣化が起こりにくく、サイクル特性に優れることを特徴とする。一方、リチウムイオンキャパシタは、通常、正極として電気二重層キャパシタと同様の活性炭を含む電極を用い、負極としてリチウムイオン電池の負極と同様のリチウム吸蔵炭素材料を用いる。正極でイオンを吸脱着し、負極でリチウムイオンを吸蔵放出することで充放電を行う。
従来電気化学キャパシタ用電極材料として一般的に用いられている粒子状または粉体状の活性炭は、電極中で凝集しやすく、電解液との接触面積が制限されたるため、電気化学キャパシタの高静電容量化は困難であった。また、活性炭の凝集により、電解液の流動抵抗が大きくなるため、電気化学キャパシタの高速充放電特性のさらなる向上の弊害ともなっていた。さらに、活性炭の表面に細孔が多く形成され、高い比表面積を有している場合でも、その細孔が連通していないために、凝集内部の表面が活用されない等の課題があった。
そこで、連通孔を有することで高効率に表面の活用できる多孔質炭素材料を用いた電極の開発が試みられている。例えば、特許文献1には、細孔と、この細孔の外郭を構成する炭素質壁が三次元網目構造である多孔質炭素材料を電極に用いたキャパシタが記載されている。
特開2014−36113号公報
しかし、特許文献1に記載のキャパシタの電極は、バインダーが多孔質炭素材料の孔を閉塞し、孔の内部へ電解液が十分に侵入できないため、多孔質炭素材料の表面の利用効率を十分に高めることができないという問題があった。本発明は、多孔質炭素材料の表面の利用効率を高めることで、低抵抗での充放電が可能な高い性能を有する電気化学キャパシタ用電極および電気化学キャパシタを提供することを課題とする。
本発明は、多孔質炭素粒子と有機バインダーを含む電気化学キャパシタ用電極であって、多孔質炭素粒子は炭素部分と空隙とがそれぞれ連続した共連続構造部分を有する粒子であり、有機バインダーが、電極中で多孔質炭素粒子同士を結合するフィブリル状または略球状の固化物として存在している電気化学キャパシタ用電極である。
本発明の電気化学キャパシタ用電極は、多孔質炭素材料として共連続構造部分を有する粒子を用いるとともに、バインダーによる細孔閉塞が抑制されることにより、多孔質炭素粒子の共連続構造部分の空隙に電解液が入り込みやすく、電気化学キャパシタとして高い性能を発揮することが可能である。
本発明の電気化学キャパシタ用電極に含まれる多孔質炭素粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で作製した本発明の電気化学キャパシタ用電極の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
<電気化学キャパシタ用電極>
〔多孔質炭素粒子〕
本発明の電気化学キャパシタ用電極(以下、単に「電気化学キャパシタ用電極」または、「電極」ということがある。)に用いられる多孔質炭素粒子は、炭素部分と空隙とがそれぞれ連続構造をなす共連続構造部分を有する。具体的には、例えば液体窒素中で充分に冷却した試料をピンセット等により割断した断面や、乳鉢等で粉砕して得た粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)等によって表面観察した際に、図1の走査型電子顕微鏡写真に例示されるように、炭素部分と、炭素部分以外の部分として形成された空隙とがそれぞれ連続しつつ絡み合った構造として観察される部分を有する。
このような多孔質炭素粒子は、共連続構造部分の空隙に電解液が効率よく侵入し、電解液との接触面積が非常に大きくなり、高静電容量化に寄与できる。また、共連続構造部分の空隙部分を電解質イオンが効率的に移動できるため、高速充放電も可能となる。また、炭素部分が連続することで、電気伝導性が高くなるため内部抵抗を低減させることができる。加えて炭素部分がお互いに構造体を支えあう効果により、例えば製造工程や使用時において引張、圧縮等の変形に対しても、大きな耐性を有する材料とできる。また、セル作製に際して電極の接触抵抗の低減のために電極のプレスを行っても、共連続構造部分は残存するため、やはり高効率に電解液が浸入できる。
共連続構造としては、格子状やモノリス状が挙げられ、特に限定するものではないが、上記効果を発揮できる点ではモノリス状であることが好ましい。モノリス状とは、共連続構造において炭素部分が三次元網目構造をなす形態をいい、個別の粒子が凝集・連結した構造や、あるいは逆に、凝集・連結した鋳型粒子を除去することにより生じた空隙とその周囲の骨格により形成された構造、のような不規則な構造とは区別される。
また、多孔質炭素粒子の共連続構造部分は周期構造を有することが好ましい。周期構造を有することは、電気化学キャパシタ用電極に対してX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つことにより確認できる。また、多孔質炭素粒子の構造周期は0.002μm〜20μmであることが好ましい。構造周期とは、多孔質炭素粒子に対してX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度θより、下記の式で算出されるものである。
構造周期:L、λ:入射X線の波長
ただし構造周期が大きくて小角での散乱が観測できない場合がある。その場合はX線コンピュータ断層撮影(X線CT)によって構造周期を得る。具体的には、X線CTによって撮影した三次元画像をフーリエ変換した後に、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得る。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数より構造周期を算出する。また電極のサイズや形状によりX線測定が困難である場合は、評価に供せる程度にまで乳鉢で電極を粉砕して測定に用いる。共連続構造部分の構造周期が0.002μm以上であると、空隙部に電解液が侵入しやすくなり、また流動抵抗も低減することができる。また、炭素部分を通じて電気伝導性を向上することが可能となる。構造周期は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。また、構造周期が20μm以下であると、高い表面積や物性を得ることができる。構造周期は10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
さらに、均一な共連続構造を有することで、電解液の流動抵抗を低減できるほか、多孔質炭素粒子製造工程、電極作製工程、デバイス組立工程等、製造に関わるあらゆる工程において、引張、圧縮等の変形に対する大きな耐性を有する材料とできる。多孔質炭素粒子の共連続構造の均一性は、多孔質炭素粒子に対してX線を入射した際の散乱強度のピークの半値幅により決定できる。本発明の電気化学キャパシタ用電極のX線散乱ピークの半値幅は5°以下であることが好ましく、3°以下であることがさらに好ましく、1°以下であることが特に好ましい。なお、本発明におけるピークの半値幅とは、ピークの頂点を点Aとし、点Aからグラフ縦軸に平行な直線を引き、該直線とスペクトルのベースラインとの交点を点Bとしたとき、点Aと点Bを結ぶ線分の中点(点C)におけるピークの幅である。なお、ここで言うピークの幅とは、ベースラインに平行で、かつ点Cを通る直線上の幅のことである。
なお、X線による構造周期の解析に際して、後述の共連続構造を有しない部分については、構造周期が上記範囲外となるため解析には影響なく、上記式で算出される構造周期を以って、共連続構造部分の構造周期とするものとする。
構造周期は小さいほど構造が細かく、単位体積あるいは単位重量当りの表面積が大きく、電解液との接触効率が高まり特に高静電容量化に寄与できる。また、構造周期は大きいほど電解液の流動抵抗を低減し、効率よく電解質イオンの出入りが起こり高レート特性の発現に寄与できる。これらのことから、共連続構造部分の構造周期は電気化学キャパシタの用途、使用条件に応じて適宜調整することができる。
また、共連続構造部分は、平均空隙率が10〜80%であることが好ましい。平均空隙率とは、包埋した試料をクロスセクションポリッシャー法(CP法)により精密に形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となるよう調整された拡大率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、平均空隙率の計算に必要な着目領域を512画素四方で設定し、着目領域の面積をA、孔部分の面積をBとして、以下の式で算出されたものを言う。
平均空隙率(%)=B/A×100
平均空隙率は、高いほど電解液の流路として圧力損失が小さくなる一方、低いほど圧縮や曲げに強くなるため、取り扱い性や加圧条件での使用に際して有利となる。これらのことを考慮し、共連続構造部分の平均空隙率は15〜75%の範囲であることが好ましく、18〜70%の範囲がさらに好ましい。
本発明における共連続構造部分の空孔サイズは0.05μm以上であると電解液の流動抵抗が低減できるため好ましく、0.1μm以上であると電解液の侵入がさらに容易となるとともに共連続構造部分の表面の利用効率が高まるためより好ましく、0.2μm以上であるとさらに好ましい。一方、本発明における共連続構造部分の空孔サイズは10μm以下であると高密度の電極が得られやすくなるため好ましく、5μm以下であると高表面積を得るのが容易と成るためより好ましく、1μm以下であるとさらに好ましく、0.5μm以下であると一層好ましい。
なお、共連続構造部分の空孔サイズは共連続構造に由来する構造周期が存在する場合は下記の式にて算出することができる。
空孔サイズ=構造周期×平均空隙率(%)/100
また、構造周期が存在しない場合は、包埋した試料をクロスセクションポリッシャー法(CP法)により精密に形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)となるよう調整された拡大率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、空孔サイズの定量に必要な着目領域を512画素四方で設定し、孔部分領域の最大幅を共連続構造部分の空孔サイズとする。最大幅とは孔部分領域に収めることができる円の最大直径を意味する。
〔細孔〕
さらに、本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いる多孔質炭素粒子は、表面に平均直径0.01〜10nmの細孔を有することが好ましい。表面とは、粒子を巨視的に見た場合の表層だけではなく、多孔質炭素粒子の共連続構造部分における炭素部分の表面も含め、多孔質炭素粒子のあらゆる外部との接触面を指す。細孔は、共連続構造部分における炭素部分の表面および/または後述する共連続構造を実質的に有しない部分に形成することができるが、少なくとも共連続構造を有する部分における炭素部分の表面に形成することが好ましい。
このような細孔の平均直径は0.01nm以上であることが好ましく、0.1nm以上であることがさらに好ましい。また、5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがさらに好ましい。細孔の平均直径が0.01nm〜10nmであることにより、電解質イオンに対する吸脱着機能を向上させることができる。細孔直径は、効率的な電解質イオンの吸着等の観点から、電解質イオンの直径に対して1.1〜2.0倍程度に適宜調整することが好ましい。
また、細孔容積は0.1cm/g以上であることが好ましく、1.0cm/g以上であることがより好ましく、1.5cm/g以上であることがさらに好ましい。細孔容積が0.1cm/g以上であることにより、電解質イオンに対する吸脱着機能がより向上する。上限は特に限定されないが、10cm/gを超えると、多孔質炭素粒子の強度が低下したり、かさ密度が著しく低くなったりして、取り扱い性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
なお、本明細書において、細孔の平均直径とは、BJH法またはMP法のいずれかの方法による測定値を意味する。すなわち、BJH法またはMP法による測定値のどちらか一方でも0.01〜10nmの範囲に入っていれば、表面に平均直径0.01〜10nmの細孔を有するものと判断する。細孔直径の好ましい範囲についても同様である。BJH法やMP法は、細孔径分布解析法として広く用いられている方法であり、試料に窒素を吸脱着させることにより求めた脱着等温線に基づいて求めることができる。BJH法はBarrett−Joyner−Halendaの標準モデルに従って円筒状と仮定した細孔の直径に対する細孔容積の分布を解析する方法であり、主として2〜200nmの直径を有する細孔に適用することができる(詳細はJ.Amer.Chem.Soc.,73,373,1951等を参照)。また、MP法は吸着等温線の各点での接線の傾きの変化から求められる各区間の外部表面積と吸着層厚み(細孔形状を円筒形とするため細孔半径に相当)を基に細孔容積を求め、吸着層厚みに対してプロットすることにより、細孔径分布を得る方法であり(詳細はJounalof Colloid and Interface Science,26,45,1968等を参照)、主として0.4〜2nmの直径を有する細孔に適用できる。本発明では、いずれも小数第二位を四捨五入して、小数第一位まで求めた値を用いる。
なお、共連続構造部分の空隙がBJH法あるいはMP法により測定される細孔径分布や細孔容積に影響を及ぼす可能性がある。すなわち、純粋に細孔のみではなく、空隙の存在をも反映した値としてこれらの測定値が得られる可能性があるが、その場合であってもこれらの方法により求めた測定値を本発明における細孔の平均直径および細孔容積と判断するものとする。また、BJH法あるいはMP法により測定される細孔容積が0.05cm/g未満であれば、表面に細孔は形成されていないものと判断する。
また、多孔質炭素粒子は、BET比表面積が20m/g以上であることが好ましい。BET比表面積は100m/g以上であることがより好ましく、500m/g以上であることがさらに好ましく、1000m/g以上であることが一層好ましい。BET比表面積が20m/g以上であることにより、電解質イオンの吸脱着に作用できる面積が大きくなり、電気化学キャパシタとしての性能が向上する。上限は特に限定されないが、4500m/gを超えると、多孔質炭素粒子の強度が低下したり、かさ密度が著しく低くなったり、取り扱い性が悪くなったりする傾向がある。なお、本発明におけるBET比表面積は、JISR 1626(1996)に準じ、電気化学キャパシタ用電極に窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータをBET式に基づいて算出することができる。
なお、BJH法あるいはMP法による細孔測定と、BET比表面積測定における窒素の吸脱着試験は、電気化学キャパシタ用電極そのものを試料として実施することができる。その際、電気化学キャパシタ用電極の形状や大きさによって測定が困難である場合は、必要に応じて測定に供せる程度にまで乳鉢で粉砕して測定を実施することができる。すなわち、本発明の電極は、最終的に電極とした状態において測定される細孔直径、細孔容積およびBET比表面積が上記範囲であることが好ましい。
〔表面原子組成〕
本発明の電気化学キャパシタ用電極に含まれる多孔質炭素粒子は、X線光電子分光法(XPS)により測定した表面原子組成における窒素原子と酸素原子の合計量が0.5%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、4%以上であることがさらに好ましい。最表面の窒素原子と酸素原子の合計量が0.5%以上であると、電解液に対する電極の濡れ性が向上し、共連続構造内部に電解液が浸透しやすくなるため、細孔の利用効率が高まり、高容量化、レート特性向上が可能である。一方、多孔質炭素粒子の最表面の窒素原子と酸素原子の合計量は25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。最表面の窒素原子と酸素原子の合計量が25%以下であると、キャパシタ運転時における多孔質炭素の分解劣化が抑制され、耐久性向上に寄与できる。なお、多孔質炭素粒子の最表面の原子組成は、X線光電子分光法(XPS)により測定されるものであり、測定にあたっては励起X線はmonochromatic AlK1,2線(1486.6eV)、X線径は100μmとし、光電子脱出角度すなわち試料表面に対する検出器の傾きは45°とする。XPSの装置としては、例えばPHI社製Quantera SXMを用いることができる。
〔共連続構造を実質的に有しない部分〕
本発明の電気化学キャパシタ用電極に用いられる多孔質炭素粒子は、共連続構造を実質的に有しない緻密部分(以下、単に「緻密部分」という場合がある。)を含んでいることも、好ましい態様である。共連続構造を実質的に有しない緻密部分とは、クロスセクションポリッシャー法(CP法)により形成させた断面を、1±0.1(nm/画素)の拡大率で観察した際に、解像度以下であることにより明確な空隙が観察されない部分が、一辺が前述の構造周期の3倍に対応する正方形の領域以上の面積で存在することを意味する。
緻密部分には炭素が緻密に充填されているため電子伝導性が高く、電気抵抗を低くすることが可能である。また、緻密部分が存在することで、特に圧縮破壊に対する耐性を高めることが可能である。
緻密部分の割合は適宜調整することができ、例えば5体積%以上が緻密部分であると、電気伝導性、熱伝導性を高いレベルで維持したりすることが可能であるため好ましい。
また、緻密部分がそれぞれの粒子1個1個に存在すると、粒子内における電気伝導性を高めることが可能になるほか、粒子自体の圧縮強度を高め高圧下での性能劣化が少なくなる等の効果が期待できるため、好ましい。
〔多孔質炭素粒子の形状〕
本発明において多孔質炭素粒子とは、10nm〜10mmの平均粒子径を有する多孔質炭素材料を指し、球状の材料に限られず、短繊維状、薄片状、塊状、棒状等の形状や、不規則な形体を有する材料も含まれる。
粒子径は、多孔質炭素粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、各粒子の最も長い部分の長さ(長径)と最も短い部分の長さ(短径)を測定し、(長径+短径)/2で求められる数値を粒子径とする。本発明においては、ランダムに多孔質炭素粒子50個について測定した平均値を多孔質炭素粒子の平均粒子径とする。また、電極中に存在する多孔質炭素粒子の粒子径および平均粒子径は、電極を割断した断面を走査型電子顕微鏡で観察し、多孔質炭素の構造体の最小単位の大きさを上記と同様の方法で測定して求めることができる。
多孔質炭素粒子の平均粒子径は、10μm以下であると、例えば塗工液を形成する固形分として非常に滑らかなものが得られるため、塗布等の工程における塗工液はがれや割れ等の欠点を防止することが可能であり、好ましい。一方、0.1μm以上であると、樹脂との複合材料とした場合に、フィラーとしての強度向上効果を充分に発揮させられるため好ましい。
〔有機バインダー〕
本発明の電気化学キャパシタ用電極は、前述の多孔質炭素粒子とともに、有機バインダーを含む。そして、本発明においては、有機バインダーは電極中で、多孔質炭素粒子同士を結合する、フィブリル状または略球状の固化物として存在する。このような有機バインダーの固化物は、電極中に分散して存在していることが好ましい。
有機バインダーがフィブリル状の固化物として存在している、とは、電極を走査型電子顕微鏡で観察した際に、有機バインダーが多孔質炭素粒子とは独立の固化物として観察され、図2の写真に例示されるように、有機バインダーが糸を引くように多孔質炭素粒子同士を繋いでいる様子が確認されることを意味する。
また、有機バインダーが略球状の固化物として存在している、とは、電極を走査型電子顕微鏡で観察した際に、有機バインダーが多孔質炭素粒子とは独立した固化物として観察され、かつ以下に詳述する画像処理を実施することによって確認される概念であるとする。まず、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡により、電極を観察する。その際、有機バインダーの種類やサイズに応じて観察前に公知の染色処理を実施してもよく、またエネルギー分散型X線分析を組み合わせて観察してもよい。走査型電子顕微鏡で観察する場合は、まず電極を剃刀等を用いて割断し、得られた断面を観察する。透過型電子顕微鏡で観察する場合は、樹脂包埋した上で切削して得た切片を観察する。観察においては、凝集していることが確認できる固化物を避け、凝集していない有機バインダーの固化物に着目するものとする。次いで、得られた観察画像から画像処理ソフトウェア等を用いて有機バインダー部分を抽出し、当該バインダーの形状を楕円に近似する。楕円近似は、近似楕円がバインダーに内接し、かつ、近似楕円の面積が最大となるように実施する。このように得られた楕円を、本明細書において以下「近似楕円」と呼ぶ。そして、近似楕円の面積(A)の、有機バインダーの面積(B)に対する比率(A/B)を測定する。このような測定を電極中に存在する10箇所の有機バインダーの固化物について行い、その場合にA/Bの平均値が0.5以上であると、有機バインダーが略球状の固化物として存在していると判断する。
有機バインダーがフィブリル状または略球状の固化物として存在することにより、多孔質炭素粒子との接触面積が小さくなり、多孔質炭素粒子の細孔を閉塞しないため、多孔質炭素粒子の表面を有効に活用できる。また、本発明の電気キャパシタ用電極に含まれる多孔質炭素粒子は共連続構造を有しているため、有機バインダーがフィブリル状または略球状の固化物として存在することにより、有機バインダーが多孔質炭素粒子の共連続構造を閉塞することがなく、共連続構造の内部まで電解液を侵入させるが可能となり、共連続構造の効果を十分に活用することが可能となる。さらに、有機バインダーが略球状の固化物として存在する場合、A/Bが0.6以上であると、共連続構造の細孔閉塞を抑制しつつ高効率に多孔質炭素粒子に対する接着性を発揮できるため好ましく、0.7以上であるとより好ましく、0.8以上であるとさらに好ましい。
有機バインダーがフィブリル状の固化物として存在している場合、フィブリル状の固化物の太さが共連続構造の空孔サイズよりも小さいと、共連続構造の空孔を有機バインダーが閉塞せず、電解液が共連続構造内部に入り込みやすいため好ましい。フィブリル状の固化物の太さは、共連続構造の空孔サイズの0.9倍以下であるとより好ましく、0.85倍以下であるとさらに好ましい。なお、フィブリル状の固化物の太さは、次の手順で得ることができる。まず、電極を剃刀等を用いて割断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡により観察する。その際、両端が確認できるフィブリル状の固化物を10本抽出する。次いで、それぞれの観察画像からフィブリルの中央における太さを測定し、10本の平均値をフィブリル状固化物の太さとする。
有機バインダーが略球状の固化物として存在している場合、近似楕円の長径が共連続構造の空孔サイズよりも大きいと、有機バインダーが共連続構造の内部に入りこまないため好ましい。さらに近似楕円の長径が共連続構造の空孔サイズの2倍以上であると、有機バインダーによって強固に多孔質炭素粒子が接着されるためより好ましく、10倍以上であるとさらに好ましい。近似楕円の短径が共連続構造の空孔サイズよりも小さいと共連続構造の空孔を有機バインダーが閉塞せず、電解液が共連続構造内部に入り込みやすいため好ましく、0.9倍以下であるとより好ましく、0.85倍以下であるとさらに好ましい。なお、略球状の固化物の近似楕円の長径および短径は、10箇所の有機バインダーの固化物について測定を行った平均値とする。
本発明に用いられる有機バインダーは、疎水性バインダーでも親水性バインダーでもよい。疎水性バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン-ブタジエンゴム等を挙げることができ、親水性バインダーとしては、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらバインダーは単独で用いても良いし、複数を組み合わせて使用しても良い。上記の中でポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴムは、電極作製工程において略球状またはフィブリル状の構造となる条件範囲が広い利点や、少ない接触面積で多孔質炭素粒子を接着することが可能である利点を有するため好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは少量接着性に優れるため、特に好ましい。
〔導電助剤〕
本発明の電気化学キャパシタ用電極は、さらに導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤を含むことで、多孔質炭素粒子間により強固な導電パスを形成することができる。導電助剤の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックや、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンなどを挙げることができ、これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
〔集電体〕
また、本発明の電気化学キャパシタ用電極は、さらに集電体を含むことが好ましい。この場合、前述の多孔質炭素粒子および有機バインダーを含む合剤層が集電体表面に形成されている電極とすることが好ましい。集電体としては、公知の物を用いることができるが、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルなどを例示することができる。
〔表面利用効率〕
電気化学キャパシタ用電極の表面の利用効率は、たとえば充放電試験により求めた静電容量をBET比表面積で除した値、すなわちBET比表面積あたりの静電容量にて評価される。BET比表面積あたりの静電容量が大きいほど、電極表面の利用効率が大きいため、低抵抗での充放電が可能になることから、電気化学キャパシタ用電極として高性能であることを意味する。
<電気化学キャパシタ>
本発明の電気化学キャパシタの一つの態様である、電気二重層キャパシタの好ましい態様について以下に記述する。電気二重層キャパシタのセルは、正極と負極としての2つの電極がセパレータを介して配置され、さらに電解液に浸漬された構成を有する。本発明の電気二重層キャパシタは、正極または負極、またはその両方に本発明の電気化学キャパシタ用電極を用いてなるものである。電気化学キャパシタのセル形態は何ら限定されるものではないが、例えばコイン型セル、ラミネートセル、円筒型セル等が挙げられる。
セパレータとしては従来公知の物を用いることができるが、電気的な絶縁が可能で、イオンの流動性を妨げないものであることが好ましい。具体的には開孔率が高く、厚みの薄いセパレータであることが好ましい。
電気二重層キャパシタの電解液としては、公知の電解質溶液を使用可能であり、水系、非水系のいずれでもよい。水系では、硫酸水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、塩化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等が挙げられる。非水系では、4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩等の電解質と、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類や、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド等のアミド類や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物類や、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類や、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類とを含む溶液が挙げられる。
本発明の電気化学キャパシタの他の態様である、リチウムイオンキャパシタの好ましい態様について以下に記述する。本発明のリチウムイオンキャパシタの正極には本発明の電気化学キャパシタ用電極が用いられ、その好ましい態様は、前述した電気二重層キャパシタ用の電極と同様である。負極は、活物質、バインダー、導電助剤を含む電極ペーストを集電体に塗布し、製造することができる。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸脱着可能な炭素材料であればいずれも使用することができる。該負極は、リチウムイオンによりプレドーピングされたものを使用することが好ましく、プレドーピングの方法は特に限定されない。好ましい態様として、正極と負極を、セパレータを介して配置し、電解液に浸漬することにより、本発明のリチウムイオンキャパシタは作製される。電解液は、特に限定されないが、リチウム塩を溶解した非水系有機電解液が好ましく、使用する有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が用いられ、電解質の溶解性、電極との反応性、粘性と使用温度範囲に応じて適切に選択される。
<電気化学キャパシタの用途>
本発明の電気化学キャパシタは、高静電容量で、高速充放電が可能であるため、各種電子機器やエネルギーデバイスにおいて、効率的な電力貯蓄や、電力平準化等に活用できる。たとえば、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車、電気自動車、携帯電話、スマートフォン、電車、コピー機、複合機、パソコン、航空機、各種家電、事務機器、工作機器、二輪車、フォークリフト、建設機械、クレーン等の各種機械、電子機器に好適である。また、太陽光発電、風力発電、地熱発電、波力発電等の再生エネルギー関連機器や電力供給コントロール基地、さらには病院、工場、データセンター等のバックアップ電源に好適に利用される。
特に、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車、電気自動車においては、ブレーキ作動時にモータにて発電される電力を本発明の電気化学キャパシタに瞬時に貯蓄し、これを発進時等の大きな駆動力が必要な際に供給することができる。ブレーキにより回生され、回収された電気エネルギーを用いて走行を行うことで、従来よりも燃費を向上させることができる可能性がある。
また、携帯電話、スマートフォンにおいては、本発明の電気化学キャパシタにより高速充電が可能となるため、好適に利用される。本発明の電気化学キャパシタを活用することで、充電に要する時間の短縮が可能である。
また、本発明の電気化学キャパシタにより瞬間的な過負荷や電圧降下が起こった際の電力平準化が可能であり、携帯電話、スマートフォンなどでは、特にGPS機能や無線通信機能を起動する際、またLEDフラッシュを使用するなどの大電力を瞬時に必要とする場合に、二次電池のみではその負荷を軽減することが難しいが、本発明の電気化学キャパシタによって、小型かつ高負荷に耐えられるデバイスとすることが可能になる。これらの効果によって、従来よりも電圧降下による突然のシャットダウンを防止することができ、安定した動作が可能なデバイスとすることができる。
また、本発明の電気化学キャパシタは、高静電容量、高速充電特性という特徴を活かし、電車搭載用としても好適に利用される。本発明の電気化学キャパシタを搭載した電車は、走行にかかる摩擦力等に起因するエネルギーのロスが少ないため、ブレーキによる回生をおこなうことで、省エネルギーでの走行が可能となるため好ましい。特に架線からの電力供給に落雷などによる電圧降下などの急激な変動があった場合でも、安定した加速、減速を行うことが可能となり、安定運行に寄与できるため好ましい。
また、コピー機や複合機としては、使用していない時間にメイン電源からキャパシタへ充電して電力を貯蓄し、使用の際に放電することで瞬時に暖機し、即座にプリント出力等を行うことが可能であるため、好適に利用される。
更に本発明の電気化学キャパシタは、風力発電や太陽光発電と組み合わせることも好ましい。風力発電は、風力の変動によって発電量が時間で大きく変化してしまい、従来の二次電池では電圧の大幅な変動に追従できず、効率よく電力を貯蔵することができないが、本発明の電気化学キャパシタの高速充放電特性によって、高効率な蓄電が可能となる。また太陽光発電では、特に曇天時などの太陽電池側の電圧が低下した場合においても、本発明の電気化学キャパシタ側の充電電圧が低いため、効率よく蓄電が可能であり、好ましい。またこれら発電により蓄電された電力は、電子回路を通じて適宜二次電池に充電して利用することも好ましい。
<多孔質炭素粒子の製造方法>
本発明の電気化学キャパシタ用電極に含まれる多孔質炭素粒子は、一例として、炭化可能樹脂10〜90重量%と消失樹脂90〜10重量%とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させ、固定化する工程(工程2)、加熱焼成により炭化する工程(工程3)を有する製造方法により製造することができる。
〔工程1〕
工程1は、炭化可能樹脂10〜90重量%と、消失樹脂90〜10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
ここで炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、炭素部分として残存する樹脂であり、炭化収率が40%以上のものが好ましい。炭化可能樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができ、熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルが挙げられ、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂等を列挙することができる。コスト、生産性の点でポリアクリロニトリル、フェノール樹脂が好ましく、ポリアクリロニトリルがより好ましい。特に本発明では、ポリアクリロニトリルでも高比表面積が得られることから、好ましい態様である。これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。ここでいう炭化収率は、熱重量測定(TG)法で、窒素雰囲気下、10℃/分で昇温したときの重量変化を測定し、室温での重量と800℃での重量との差を、室温での重量で除したものをいう。
また消失樹脂とは、後述する工程2の後に除去できる樹脂であり、好ましくは不融化処理と同時もしくは不融化処理後または焼成と同時、の少なくともいずれかの段階で除去することのできる樹脂である。除去率は、最終的に多孔質炭素粒子となった際に80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。消失樹脂を除去する方法については特に限定されるものではなく、薬品を用いて解重合する等して化学的に除去する方法、消失樹脂を溶解する溶媒により除去する方法、加熱して熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法等が好適に用いられる。これらの手法は単独で、もしくは組み合わせて使用することができ、組み合わせて実施する場合にはそれぞれを同時に実施しても別々に実施しても良い。
化学的に除去する方法としては、酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が経済性や取り扱い性の観点から好ましい。酸またはアルカリによる加水分解を受けやすい樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。
消失樹脂を溶解する溶媒により除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂に対して、連続して溶媒を供給して消失樹脂を溶解、除去する方法や、バッチ式で混合して消失樹脂を溶解、除去する方法等が好適な例として挙げられる。
溶媒により除去する方法に適した消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。中でも溶媒への溶解性から非晶性の樹脂であることがより好ましく、その例としてはポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂をバッチ式で加熱して熱分解する方法や、連続して混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を加熱源中へ連続的に供給しつつ加熱して熱分解する方法が挙げられる。
消失樹脂は、これらのなかでも、後述する工程3において、炭化可能樹脂を焼成により炭化する際に熱分解により消失する樹脂であることが好ましく、後述する炭化可能樹脂の不融化処理の際に大きな化学変化を起こさず、かつ焼成後の炭化収率が10%未満となる樹脂であることが好ましい。このような消失樹脂の具体的な例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリカーボネート等を列挙することができ、これらは、単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。
工程1においては、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶させ、樹脂混合物(ポリマーアロイ)とする。ここでいう「相溶させ」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。
炭化可能樹脂と消失樹脂は、樹脂同士のみの混合により相溶させてもよいし、溶媒等を加えることにより相溶させてもよい。
複数の樹脂が相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系等が挙げられる。また特に炭化可能樹脂と消失樹脂の少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好適な例として挙げられる。
加えられる溶媒については特に限定されるものではないが、溶解性の指標となる炭化可能樹脂と消失樹脂の溶解度パラメーター(SP値)の平均値との差の絶対値が、5.0以内であることが好ましい。SP値の平均値との差の絶対値は、小さいほど溶解性が高いことが知られているため、差がないことが好ましい。またSP値の平均値との差の絶対値は、大きいほど溶解性が低くなり、炭化可能樹脂と消失樹脂との相溶状態を取ることが難しくなる。このことからSP値の平均値からの差の絶対値は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下が最も好ましい。
相溶する系の具体的な炭化可能樹脂と消失樹脂の組み合わせ例としては、溶媒を含まない系であれば、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレン、ポリフェニレンオキシド/スチレン−アクリロニトリル共重合体、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリカーボネート等が挙げられる。溶媒を含む系の具体的な組合せ例としては、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル/ポリ乳酸、ポリビニルアルコール/酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール/ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール/デンプン等を挙げることができる。
炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する方法については限定されるものではなく、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式のミキサーや、スクリューによる混練押出機等が挙げられる。
また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際の温度(混合温度)を、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることも好ましい態様である。ここで軟化する温度とは、炭化可能樹脂または消失樹脂が結晶性高分子であれば融点、非晶性樹脂であればガラス転移点温度を適宜選択すればよい。混合温度を炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることで、両者の粘性を下げられるため、より効率の良い攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されるものではないが、熱分解による樹脂の劣化を防止する観点から、400℃以下であることが好ましい。
また、工程1においては、炭化可能樹脂10〜90重量%に対し消失樹脂90〜10重量%を混合する。炭化可能樹脂と消失樹脂が前記範囲内であると、最適な空隙サイズや空隙率を任意に設計できるため好ましい。炭化可能樹脂が10重量%以上であれば、炭化後の材料における力学的な強度を保つことが可能になるほか、収率が向上するため好ましい。また炭化可能な材料が90重量%以下であれば、消失樹脂が効率よく空隙を形成できるため好ましい。
炭化可能樹脂と消失樹脂の混合比については、それぞれの材料の相溶性を考慮して、上記の範囲内で任意に選択することができる。具体的には、一般に樹脂同士の相溶性はその組成比が1対1に近づくにつれて悪化するため、相溶性のあまり高くない系を原料に選択した場合には、炭化可能樹脂の量を増やす、減らす等して、いわゆる偏組成に近づけることで相溶性を改善することも好ましい態様として挙げられる。
また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際に、溶媒を添加することも好ましい態様である。溶媒を添加することで炭化可能樹脂と消失樹脂の粘性を下げ、成形を容易にするほか、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶化させやすくなる。ここでいう溶媒も特に限定されるものではなく、炭化可能樹脂、消失樹脂のうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であるものであれば良く、炭化可能樹脂及び消失樹脂をいずれも溶解するものであれば、両者の相溶性を向上させることが可能となるためより好ましい態様である。
溶媒の添加量は、炭化可能樹脂と消失樹脂の相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して20重量%以上であることが好ましい。また一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して90重量%以下であることが好ましい。
〔工程2〕
工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を相分離させて微細構造を形成し、固定化する工程である。典型的には、この工程において、相分離構造を固定化すると共に、樹脂混合物を繊維状、フィルム状等任意の形状の成形体とする。
混合された炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離は、種々の物理・化学的手法により誘発することができ、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法、物理的な場によって相分離を誘発する流動誘起相分離法、配向誘起相分離法、電場誘起相分離法、磁場誘起相分離法、圧力誘起相分離法、化学反応を用いて相分離を誘発する反応誘起相分離法等種々挙げられる。これらの中では、熱誘起相分離法や非溶媒誘起相分離法等、相分離の際に化学反応を伴わない方法が、多孔質炭素粒子を容易に製造できる点で好ましい。
これら相分離法は、単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合の具体的な方法は、例えば凝固浴を通して非溶媒誘起相分離を起こした後、加熱して熱誘起相分離を起こす方法や、凝固浴の温度を制御して非溶媒誘起相分離と熱誘起相分離を同時に起こす方法、口金から吐出された材料を冷却して熱誘起相分離を起こした後に非溶媒と接触させる方法等が挙げられる。
上記相分離の際に化学反応を伴わない、とは、混合された炭化可能樹脂もしくは消失樹脂が、混合前後においてその一次構造を変化させないことを言う。一次構造とは、炭化可能樹脂もしくは消失樹脂を構成する化学構造のことを示す。相分離の際に重合等の化学反応を伴わないことで、大幅な弾性率向上等の特性変化を抑制し、繊維やフィルム等の任意の構造体に容易に成形できる。
〔消失樹脂の除去〕
工程2において相分離後の微細構造が固定化された樹脂混合物の成形体は、炭化工程(工程3)に供される前または炭化工程と同時、あるいはその両方で消失樹脂の除去処理を行うことが好ましい。除去処理の方法は特に限定されるものではなく、消失樹脂を除去することが可能であれば良い。具体的には、酸、アルカリや酵素を用いて消失樹脂を化学的に分解、低分子量化して除去する方法や、消失樹脂を溶解する溶媒により溶解除去する方法、電子線、ガンマ線や紫外線、赤外線等の放射線や熱を用いて消失樹脂を分解除去する方法等が好適である。
特に、熱分解によって消失樹脂を除去処理することができる場合には、予め消失樹脂の80重量%以上が消失する温度で熱処理を行うこともできるし、炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において消失樹脂を熱分解、ガス化して除去することもできる。工程数を減じて生産性を高める観点から、炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において熱処理と同時に消失樹脂を熱分解、ガス化して除去する方法を選択することが、より好適な態様である。
〔不融化処理〕
工程2において相分離後の微細構造が固定化された樹脂混合物の成形体は、炭化工程(工程3)に供される前に不融化処理に供されることが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線等の高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法等が挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法が、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用しても、それぞれを同時に使用しても別々に使用しても良い。
酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から150℃以上であることが好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼等による重量ロスからの収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下であることが好ましい。
また処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18%以上の酸素濃度を持つ気体を、特に空気をそのまま供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。気体の供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベ等を用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法等が挙げられる。
電子線、ガンマ線等の高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法としては、市販の電子線発生装置やガンマ線発生装置等を用いて、炭化可能樹脂へ電子線やガンマ線等を照射することで、架橋を誘発する方法が挙げられる。照射による架橋構造の効率的な導入から照射強度の下限は1kGy以上であると好ましく、主鎖の切断による分子量低下から材料強度が低下するのを防止する観点から1000kGy以下であることが好ましい。
反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法は、反応性基を持つ低分子量化合物を樹脂混合物に含浸して、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法、予め反応性基を持つ低分子量化合物を混合しておき、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法等が挙げられる。
また不融化処理の際に、消失樹脂の除去を同時に行うことも工程数減少による低コスト化の恩恵が期待できるため好適である。
〔工程3〕
工程3は、工程2において相分離後の微細構造が固定化された樹脂混合物の成形体、あるいは、消失樹脂を既に除去している場合には炭化可能樹脂からなる残存部分を焼成し、炭化して炭化物を得る工程である。
焼成は不活性ガス雰囲気において600℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものを言い、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素等である。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。炭化温度を1500℃以上とする場合には、窒化物形成を抑制する観点からアルゴンを用いることが好ましい。
また不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であれば良く、加熱装置の大きさ、原料の供給量、加熱温度等によって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されるものではないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。また炭化時に発生するガスを系外へ充分に排出できると、品質に優れた多孔質炭素粒子を得ることができるため、より好ましい態様であり、このことから系内の発生ガス濃度が3000ppm以下となるように不活性ガスの流量を決定することが好ましい。
加熱する温度の上限は限定されないが、3000℃以下であれば設備に特殊な加工が必要ないため経済的な観点からは好ましい。また、BET比表面積を高めるためには1500℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましい。
連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、材料をローラーやコンベヤ等を用いて連続的に供給しつつ取り出す方法であることが、生産性を高くすることが可能であるため好ましい。
一方加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度、降温速度の下限は特に限定されないが、昇温、降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度であると好ましい。また昇温速度、降温速度の上限は特に限定されないが、加熱装置を構成する材料の耐熱衝撃特性よりも遅くすることが好ましい。
〔賦活処理〕
工程3において得た炭化物は、更に賦活処理を行うことで、表面に細孔を形成することができる。賦活の方法としては、ガス賦活法、薬品賦活法等、特に限定するものではない。ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、400〜1500℃、好ましくは500〜900℃にて、数分から数時間、加熱することにより細孔を形成させる方法である。また、薬品賦活法とは、賦活剤として塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等を1種または2種以上用いて数分から数時間、加熱処理する方法であり、必要に応じて水や塩酸等による洗浄を行った後、pHを調整して乾燥する。
賦活をより進行させたり、賦活剤の混合量を増加させたりすることにより、一般にBET比表面積が増加し、細孔径は拡大する傾向にある。また賦活剤の混合量は、対象とする炭素原料に対し、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上とする。上限は特に限定されないが、10重量部以下が一般的である。また、ガス賦活法より薬品賦活法の方が、細孔径は拡大する傾向にある。
本発明では、細孔径を大きくしたり、BET比表面積を増加させたりできることから、薬品賦活法が好ましく採用される。中でも、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ性薬剤で賦活する方法が好ましく採用される。
アルカリ性薬剤で賦活した場合、酸性官能基量が増大する傾向にあり、用途によっては好ましくない場合がある。この際には、窒素雰囲気下での加熱処理を行うことにより、低減させることも好適である。
〔粉砕処理〕
本発明に用いる多孔質炭素粒子は、典型的には、工程2において成形された成形体を、それ以降のいずれかの段階で粉砕して粒子状にする粉砕処理を行うことにより製造することができる。粉砕処理は、工程3を経て炭化させた炭化物、あるいはさらに賦活処理を行った多孔質炭素粒子に対して行うと、粉砕が容易であるため好ましい。
粉砕処理としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等を用いた粉砕を例示することができる。ボールミル、ビーズミルに用いる粉砕部材は適宜選択されるが、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物からなる部材、ステンレス、鉄等を芯としてナイロン、ポリオレフィン、フッ化ポリオレフィン等をコーティングした部材、あるいはステンレス、ニッケル、鉄等の金属のみからなる部材が挙げられる。
また粉砕の際に、粉砕効率を高める点で、粉砕助剤を用いることも好ましい態様である。粉砕助剤は、水、アルコールまたはグリコール、ケトン等から任意に選ばれる。アルコールは、エタノール、メタノールが入手の容易さやコストの観点から好ましく、グリコールである場合には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が好ましい。ケトンである場合には、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン等が好ましい。
粉砕処理を施された粒子は、分級することによって粒度が揃い、電極ペーストの塗工や成形を安定化することが可能になる。
<電気化学キャパシタ用電極の製造方法>
本発明の電気化学キャパシタ用電極は、上記のように作製した多孔質炭素粒子を有機バインダーと混合して調製した電気化学キャパシタ用電極ペーストを固化することで製造することができる。
電気化学キャパシタ用電極ペーストは、大きく分けて乾式法と湿式法の二通りの方法で調製することができる。乾式法は特に、有機バインダーがフィブリル状の固化物として存在している電極を製造する方法として好適であり、湿式法は特に、有機バインダーが略球状の固化物として存在している電極を製造する方法として好適である。
乾式法にてペーストを調製する場合、多孔質炭素粒子と、有機バインダーを含むその他の材料とを、溶媒を加えないか、あるいはペーストの全量に対して30重量%以下の溶媒を加えて混合する。混合する方法は特に限定されないが、加熱が容易であることや生産効率の観点から二軸押出機で混練する方法が好ましい。また、必要に応じてさらに導電助剤等の他の材料を混合してもよい。
二軸押出機で混練する方法を実施する場合、押出機のスクリューの少なくとも一部にニーディングディスクを用いることで、有機バインダーのフィブリル化が進行するため好ましい。ニーディングディスク部分を通過する時間は10〜300秒が好ましい。10秒以上とすることで、バインダーが細かく分散するとともに上述した近似楕円の短径が共連続構造の空孔サイズより小さくなりやすいため好ましい。また必ずしも加熱する必要はないが、50℃以上に加熱すると混練時間を短縮することができるため好ましい。一方、加熱温度を有機バインダーの融点以下、好ましくは融点より5〜50℃低い温度とすると、バインダーが多孔質炭素粒子に膜状に接着して細孔閉塞が起こるのを防ぐことができるため、好ましい。
乾式法で調製した電極ペーストは、典型的には、そのまま成形して固化することで、本発明の電気化学キャパシタ用電極とすることができる。電極ペーストの固化は、加熱により行うことが好ましい。また、このように作製した電極にさらに集電体と接合してもよい。
湿式法で電極ペーストを調製する場合、多孔質炭素粒子と、有機バインダーを含むその他の材料と、溶媒とを混合し、スラリー状の電極ペーストを調製する。また、必要に応じてさらに導電助剤等の他の材料を混合してもよい。
ここで、溶媒は、有機バインダーが実質的に溶解しない溶媒を用いる。有機バインダーが溶媒に実質的に溶解しないことは、以下の方法で判断できる。室温にて有機バインダーと溶媒とを重量比5:95で混合し、目視にて固層の存在が確認できれば、有機バインダーが溶媒に実質的に溶解しないと判断できる。有機バインダーが溶媒に実質的に溶解せず固相として存在していることで、固化後に有機バインダーが略球状になりやすくなる。
混合の順は特に限定されるものではなく、全ての材料を同時に仕込む方法や、固形分のみを事前に混合しておく方法、溶媒に対し溶解性のある成分のみを溶媒と混合して事前に溶液を調製しておく方法等が考えられる。混合方法は特に限定されるものではないが、混合効率の観点から、密閉回転型の攪拌機が好ましく用いられる。
湿式法で調製した電極ペーストは、典型的には、集電体に塗工した後に乾燥して固化させることで、電気化学キャパシタ用電極とすることができる。電極ペーストの塗工方法は特に制限されず、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り等が例として挙げられる。電極ペーストの乾燥は、加熱により行うことが好ましい。
<電気化学キャパシタの製造方法>
本発明の電気化学キャパシタは、本発明の電気化学キャパシタ用電極を用いてなること以外は、従来の電気化学キャパシタと全く同様の方法によって製造できるが、以下に好ましい態様について述べる。
本発明の電気二重層キャパシタのセルの組立方法は特に限定するものではなく、一般に用いられる方法で行われるが、好ましくは電気化学キャパシタ用電極と電解液をセル容器内に入れて、密閉封止することにより製造される。電気化学キャパシタ用電極を適宜打ち抜き、切り出し等の方法によってセルの形状にあわせた大きさとされ、必要に応じて捲回、積層または折る等して容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。また、あらかじめ電気化学キャパシタ用電極に電解液を含浸させたものを容器に収納してもよい。またセル組立の際には必要に応じてセパレータやスペーサー、ガスケットを使用することも好ましい態様である。
以下に本発明の好ましい実施例を記載するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
<評価手法>
〔有機バインダーの形状とサイズ〕
電気化学キャパシタ用電極を片刃剃刀で割断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡で観察した。その際、明らかに凝集していることが確認できる固化物を避け、凝集していない有機バインダーの固化物に着目し、有機バインダーの外周が確認できる観察倍率にて観察を行った。
次いで、有機バインダーの形状がフィブリル状である場合、次の手順により、フィブリルの太さを測定した。まず、電極を剃刀を用いて割断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡により観察し、両端が確認できる走査型電子顕微鏡観察において両端が確認できるフィブリル状の固化物を抽出し、その観察画像からフィブリル中央における太さを測定した。同様の測定を10本のフィブリルについて実施し、その平均値をフィブリル状固化物の太さとした。
有機バインダーの形状が略球状である場合、走査型電子顕微鏡観察により得られた画像のデジタルファイルを汎用画像解析ソフト(Media Cybernetics(株)製、Image−Pro Plus)上に展開し、ソフトに組み込まれたルーチンプログラムを利用して、観察画像から有機バインダー部分を抽出し、当該バインダーの形状を楕円に近似した近似楕円を得る。なお、楕円近似は、近似楕円がバインダーの固化物の外周に内接し、かつ、楕円の面積が最大となるように実施する。次いで、上記のソフトにてバインダー部分の面積、近似楕円の長径、短径、面積を求めることとした。
なお、上述したフィブリル状の有機バインダーの観察、または略球状の有機バインダーの観察及び画像解析は、電気化学キャパシタ用電極において無作為に10箇所のバインダー固化物について同様の評価を実施し、各数値は10ヶ所の平均値にて算出することとした。
〔連続構造部分の構造周期〕
多孔質炭素粒子を試料プレートに挟み込み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料及び二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度2θより、共連続構造部分の構造周期を下記の式によって得た。
構造周期:L、λ:入射X線の波長
〔平均空隙率〕
多孔質炭素粒子を樹脂中に包埋し、その後カミソリ等で多孔質炭素粒子の断面を露出させ、日本電子製SM−09010を用いて加速電圧5.5kVにて試料表面にアルゴンイオンビームを照射、エッチングを施した。得られた多孔質炭素粒子の断面を走査型二次電子顕微鏡にて材料中心部を1±0.1(nm/画素)となるよう調整された拡大率で、70万画素以上の解像度で観察した画像から、計算に必要な着目領域を512画素四方で設定し、着目領域の面積A、孔部分または消失樹脂部分の面積をBとして、以下の式で平均空隙率を算出した。
平均空隙率(%)=B/A×100
〔表面原子組成〕
X線光電子分光法(XPS)により測定した。装置はPHI社製Quantera SXMを用い、励起X線はmonochromatic AlK1,2線(1486.6eV)、X線径は100μmとし、光電子脱出角度すなわち試料表面に対する検出器の傾きは45°とした。
[実施例1]
70gのポリサイエンス社製ポリアクリロニトリル(重量平均分子量15万、炭素収率58%)と70gのシグマ・アルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(重量平均分子量4万)、及び、溶媒として400gの和研薬製ジメチルスルホキシド(DMSO)をセパラブルフラスコに投入し、4時間攪拌および還流を行いながら138℃で均一かつ透明な溶液を調整した。このときポリアクリロニトリルの濃度、ポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ13重量%であった。得られたDMSO溶液を25℃まで冷却した後、0.6mmφの1穴口金から3ml/分で溶液を吐出して、20℃に保たれた純水の凝固浴へ導き、その後5m/分の速度で引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。このときエアギャップは8mmとし、また凝固浴中の浸漬長は14cmとした。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。得られた原糸を25℃に保った循環式乾燥機にて1時間乾燥して原糸表面の水分を乾燥させた後、25℃にて6時間の真空乾燥を行い、乾燥後の前駆体材料である原糸を得た。その後240℃に保った電気炉中へ前駆体材料である原糸を投入し、酸素雰囲気化で1時間加熱することで不融化処理を行った。不融化処理を行った原糸は、黒色に変化した。得られた不融化原糸を窒素流量1リットル/分、昇温速度10℃/分、到達温度810℃、保持時間5分の条件で炭化処理を行うことで、共連続構造を有する炭素繊維とした。繊維直径は150μmであった。
次に、この炭素繊維を、ボールミルを用いて粉砕した。その後、賦活処理として、水酸化カリウムを炭化物対比3倍量混ぜ合わせ、ロータリーキルン内に投入して窒素流通下で800℃まで昇温した。1時間15分賦活処理した後、降温してから水と希塩酸とを用い、洗浄液がpH7付近になるまで洗浄した。得られた多孔質炭素粒子には、図1に示すように均一な共連続構造が形成されていた。共連続構造部分の平均空隙率は41%であり、構造周期は77nmであった。また、共連続構造を有しない緻密部分を粒子の一部に含む構造であった。また、表面原子組成は、窒素原子は0.1%、酸素原子は9.1%であった。
得られた多孔質炭素粒子を80重量部、導電助剤としてアセチレンブラックを10重量部、有機バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン10重量部を合計200g二軸混練機にて混合した。その際、スクリューの一部にニーディングディスクを用いて、ニーディングディスク部分を30秒で通過させて。その後、圧延して、電極厚みを200μmとし、さらにアルミニウム箔(厚さ18μm)に導電性ペーストを用いて接着した。その後直径16mmに打ち抜いて電極を得た。該電極を片刃剃刀で割断し、得られた断面を走査型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、図2のように多孔質炭素粒子同士を結合するフィブリル状の固化物として存在するバインダーが観察された。フィブリル状の固化物の太さは4nmであった。図2において有機バインダーの固化物の部分を丸で囲って示す。

Claims (13)

  1. 多孔質炭素粒子と有機バインダーを含む電気化学キャパシタ用電極であって、前記多孔質炭素粒子は炭素部分と空隙とがそれぞれ連続した共連続構造部分を有する粒子であり、前記有機バインダーが、電極中で前記多孔質炭素粒子同士を結合するフィブリル状または略球状の固化物として存在している電気化学キャパシタ用電極。
  2. 前記多孔質炭素粒子の共続構造部分が周期構造を有する、請求項1に記載の電気化学キャパシタ用電極。
  3. 前記共連続構造の構造周期が0.002μm〜20μmである、請求項2に記載の電気化学キャパシタ用電極。
  4. 前記多孔質炭素粒子は、X線散乱ピークの半値幅が5°以下である、請求項2または3に記載の電気化学キャパシタ用電極。
  5. 前記共連続構造の空孔サイズが0.050μm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  6. 前記多孔質炭素粒子がさらに共連続構造を実質的に有しない緻密部分を有する粒子である、請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  7. 前記多孔質炭素粒子が表面に平均直径0.01〜10nmの細孔を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  8. BET比表面積が20m/g以上である、請求項7に記載の電気化学キャパシタ用電極。
  9. 前記多孔質炭素粒子の、X線光電子分光法により測定した表面原子組成における窒素原子と酸素原子の合計量が0.5%以上25%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  10. 前記有機バインダーが、電極中で前記多孔質炭素粒子同士を結合する略球状の固化物として存在し、該固化物の近似楕円の長径が、前記多孔質炭素粒子の共連続構造部分の空孔サイズより大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  11. 前記有機バインダーがポリテトラフルオロエチレンである、請求項1〜10のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  12. さらに集電体を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の電気化学キャパシタ用電極を用いてなる電気化学キャパシタ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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