JP2017166844A - マグネシウム系合金の強度予測方法 - Google Patents

マグネシウム系合金の強度予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マグネシウム系合金の引け巣の影響を考慮した強度予測を行う強度予測方法を提供する。【解決手段】マグネシウム系合金の予測対象部材の断層写真を読み出す読み出し工程と、読みだされた断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する分割工程と、複数の領域のそれぞれにおいて、領域に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定工程と、複数の領域のそれぞれでのき裂進展抵抗値に基づいて、所定の荷重を付与した際に、引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出工程と、領域におけるき裂進展量と周辺の他の領域との関係に基づいて、当該領域を、破壊領域として判定する。【選択図】図8

Description

本発明は、マグネシウム系合金の強度予測方法であって、マグネシウム系合金の製造時に生じる引け巣による影響を考慮した強度予測方法に関する。
電気製品、自動車や航空機などの輸送機器、精密機器、製造機械など、様々なアプリケーションにおいて筐体などを構成するために種々の金属素材が用いられる。このような様々なアプリケーションの筐体などは、鉄やアルミなどの単一金属素材で形成されるだけでなく、様々な合金素材が用いられることが多くなってきている。
例えば、電子機器や輸送機器などにおいては、軽量化を目的として合金素材が用いられることがある。精密機器や製造機械などにおいては、耐久性や強度の向上を目的として合金素材が用いられることがある。このように、従来の単一金属素材が使用されていたアプリケーションやそのアプリケーションの構成部分においても、種々の合金素材が用いられるようになってきている。特に、電気製品の分野では使い勝手の良さが求められることから、輸送機器の分野では低燃費が求められることから、軽量でありながら耐久性や強度に優れた合金素材が、これらのアプリケーションの構成部分に使用されることが多くなってきている。
例えば、低燃費や低公害を目的として、輸送機器の軽量化が求められている。
輸送機器は、多くの金属製の部品を備えており、これら多くの各種部品のそれぞれが、軽量の金属や合金で製造されることが、輸送機器の軽量化の基本となる。
あるいは、可搬容易性や使用感の向上を目的として、電子機器の軽量化が求められている。例えば、ノートブックパソコンやタブレット端末などは、使用者によって持ち運びされたり、デジタルカメラとしての使用がなされたりするために、より軽量であることが好ましい。もちろん、可搬性のある電子機器のみならず、据え置きされる電子機器であっても輸送時への対応などのために軽量化されることが好ましい場合も多い。これらの電子機器も、筐体が金属や合金で製造されていたり、内部の部品が金属や合金で製造されていたりするからである。
このような状況で、構造材料として実用可能な金属においては、最も低密度のマグネシウムが注目されている。マグネシウムの室温における密度は、1.7g/cm3であり、この密度は鉄の密度の約1/4であり、アルミニウムの密度の約2/3である。また、マグネシウムは、比強度、比剛性、切削性、耐くぼみ性、振動吸収等の性質が優れていることも知られている。
これらの特性により、マグネシウムは、携帯電話機などの小型の電子機器の筐体や部品などに用いられてきた。しかしながら、上述のように、他の電子機器や大型製品である輸送機器にも使用されることが望まれるようになっている。
一方で、マグネシウムは低温で発火しやすく、高温環境下での難燃性が低い問題を有している。このため、マグネシウムを電子機器や輸送機器の筐体や部品に使用する場合には、製造工程での温度管理が難しい問題がある。あるいは、これらの筐体や部品に使用される場合に、電子機器や輸送機器が高温となることによる劣化などの問題がある。
このような難燃性が低いことへの対応として、マグネシウムに他の素材を添加したマグネシウム系合金が、これら機器の筐体や部品に使用されることが提案されている。例えば、マグネシウムにカルシウムを添加して難燃性を向上させる技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このようにカルシウムが添加されて難燃性が向上されたマグネシウム系合金が、様々な機器の筐体や部品に使用されることが行われている。
特開2000−109963号公報
特許文献1は、カルシウム0.1〜15重量%を含む難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理するか、又はカルシウム0.1〜15重量%を含む難燃性マグネシウム合金の既存含有量に加えて、融解時にアルミニウム又は亜鉛をさらに添加し、冷却後塑性加工処理することにより高強度難燃性マグネシウム合金を製造するマグネシウム合金を開示する。
マグネシウム合金の難燃性を向上させるために、特許文献1は、マグネシウムにカルシウムを含有させることを目的としている。特許文献1によれば、マグネシウムにカルシウムを含有させるマグネシウム合金は、発火温度が上昇して難燃性が高まる。
ここで、マグネシウム系合金素材(マグネシウム系合金で製造する部材、インゴット、ビレット等の総称)は、製造工程において鋳造が用いられることが多い。これは、特許文献1に開示されるカルシウムを添加したマグネシウム系合金でも同様である。鋳造とは、所定の形状を有する型に溶融金属が流し込まれて冷却されて、所定形状の型に合わせた合金素材が製造される製造方法である。
この鋳造においては、所定形状の型を変化させることで、棒状部材が得られたり、板状部材が得られたり、箱型部材が得られたりする。これら形状を有するマグネシウム系合金の合金素材が塑性加工や機械加工されることで、目的とする部品や部材がマグネシウム系合金で製造される。
しかしながら、マグネシウムにカルシウムを添加したカルシウム含有のマグネシウム合金は、鋳造時の成形性(湯流れ性)が低く、欠陥が発生しやすいという問題がある。すなわち、特許文献1の技術は、鋳造時の成形性が悪く、鋳造によって製造されるマグネシウム系合金の合金素材の製造精度が低くなることがある。これは、カルシウムが添加されることによって顕著であるが、カルシウムが添加されないマグネシウム系合金であっても同様である。
鋳造において溶融金属が冷却されて凝固する際に、凝固収縮(液体が固体になる際に起きる体積減少)による空隙である「引け巣」と呼ばれる欠陥が生じる問題がある。この引け巣には鋳造部素材の表面に生じる「外引け巣」と内部に生じる「内引け巣」があり、これらの引け巣が生じると、引け巣そのものや、引け巣が生じる前後に発生する「凝固割れ(凝固収縮による割れ)」や「熱間割れ(凝固後の熱収縮による割れ)」のために合金における強度分布にばらつきが生じてしまうことになる。
特許文献1では、マグネシウムにカルシウムを添加することで難燃性を向上させることを目的としている。しかしながら、特許文献1のように難燃性を向上させることを主目的としてカルシウムを添加することは、上記の引け巣などの欠陥の発生による機械的特性を損なう問題を解決することが出来ない。このように、引け巣などの構造欠陥が生じてしまうと、製造されるマグネシウム系合金による合金素材の強度に悪影響が生じる。
ここで、上述した外引け巣と内引け巣の内、内引け巣の一種にマイクロシュリンケージ(結晶粒界に発生する引け巣)がある。一般的な合金金属の凝固(溶融段階から冷却によって固化すること)においては、液相線温度(凝固開始温度)近傍の初期段階において母相金属が晶出し、固相線温度(凝固終了温度)に至る最終段階において結晶粒界に金属間化合物が晶出する。結晶粒界に晶出する金属間化合物の流動性は温度降下に伴って低下するため、マイクロシュリンケージは、凝固温度範囲(液相線温度から固相線温度までの温度範囲)が広く、金属間化合物量が多いマッシ―型(粥状)凝固となる合金に生じ易い。
以上のことから、外引け巣、内引け巣双方共に製品部に生じさせないことが重要である。カルシウムが添加される特許文献1を含む一般のマグネシウム合金は、凝固温度範囲が広くマッシ―型凝固となるものが多くマイクロシュリンケージが生じてしまう。すなわち引け巣が生じることに繋がってしまう問題を有している。もちろん、カルシウムを添加しないマグネシウム系合金であっても、このマイクロシュリンケージによる引け巣を生じさせないことが必要である。
一方で、鋳造によってマグネシウム系合金を製造するに際しては、この引け巣を全く生じさせないことは難しい。鋳造による製造では、溶融金属が型に流し込まれた後で、冷却されて凝固する工程を経る。この凝固段階での外的もしくは内的要因によって引け巣やこれに起因する割れがどうしても生じてしまうからである。
このため、引け巣を生じさせないアプローチとは別に、引け巣が生じることを前提として、引け巣の影響を考慮したマグネシウム系合金の強度予測が行えることが必要である。引け巣において、内部に生じる内引け巣は外観観察ではわからないので、この内部引け巣の影響を考慮したマグネシウム系合金の強度予測が必要である。
マグネシウム系合金の強度予測が可能となることで、鋳造により製造されたマグネシウム系合金の品質保証や利用における事前の問題回避を可能とできる。例えば、鋳造によって製造されたマグネシウム系合金の強度が予測できることで、鋳造された合金素材のそれぞれによる加工性や耐久性を予測して使用できる。この使用における予測性が高いことで、部品や部材に加工して使用した後での耐久性や強度不足による完成品の歩留まり低下を防止できる。また、予め強度予測できることで、合金素材の使用における不測の問題を事前確認できて使用可能性が高まる。
本発明は、マグネシウム系合金の引け巣の影響を考慮した強度予測を行う強度予測方法を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明のマグネシウム系合金の強度予測方法は、マグネシウム系合金の予測対象部材の断層写真を読み出す読み出し工程と、
読みだされた断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する分割工程と、
複数の領域のそれぞれにおいて、領域に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定工程と、
複数の領域のそれぞれでのき裂進展抵抗値に基づいて、所定の荷重を付与した際に、引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出工程と、
領域におけるき裂進展量と周辺の他の領域との関係に基づいて、当該領域を、破壊領域として判定する、判定工程と、を備える。
本発明のマグネシウム系合金の強度予測方法は、鋳造製造によって製造されたマグネシウム系合金の部材の強度を、鋳造製造によって生じうる引け巣による影響を考慮して、予測できる。
このとき、予測される強度は、当該鋳造製造されたマグネシウム系合金が、破断してしまう場合に付与される応力(単位面積当たりの荷重 N/mm=MPa)によって定められる。
本発明のマグネシウム系合金の強度予測方法は、引け巣をき裂とみなして、き裂の成長を予測するき裂進展抵抗を当てはめることで、引け巣を起因として破断する応力を予測する。すなわち、き裂進展抵抗によって引け巣に基づく破断を予測することで、マグネシウム系合金の強度を予測できる。
また、マグネシウム系合金は、様々な形状、寸法の引け巣を含んでいるが、様々な引け巣のそれぞれでのき裂進展を予測することで、最終的なマグネシウム系合金の強度を予測できる。このため、より精度の高い強度予測を行うことができる。
マグネシウム系合金の製造工程の一つである溶融金属製造を示す模式図である。 マグネシウム系合金の製造工程の一つである鋳造での型での凝固を示す模式図である。 欠陥形状による破壊機構の変化を説明する説明図である。 引け巣をき裂とみなせる場合を説明している説明図である。 引け巣を含むマグネシウム系合金の断面ミクロ写真である。 引け巣を起点とした破壊の進行を説明する説明図である。 Rカーブを示す説明図である。 本発明の実施の形態1におけるマグネシウム系合金の強度予測装置(以下、「強度予測装置」という)のブロック図である。 本発明の実施の形態1における予測対象部材での断層写真の撮像の模式図である。 本発明の実施の形態1における複数の領域に仮想分割された断層写真の模式図である。 き裂進展量算出部によってき裂の進展が算出される断層写真の模式図である。 本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。 本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。 本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。 本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。 本発明の実施の形態2における強度予測装置のブロック図である。 本発明の実施の形態2における破壊領域判定後の断面を示す模式図である。 本発明の実施の形態2における破壊状態と判断される破壊領域を示す断層写真の模式図である。
本発明の第1の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法は、マグネシウム系合金の予測対象部材の断層写真を読み出す読み出し工程と、
読みだされた断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する分割工程と、
複数の領域のそれぞれにおいて、領域に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定工程と、
複数の領域のそれぞれでのき裂進展抵抗値に基づいて、所定の荷重を付与した際に、引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出工程と、
領域におけるき裂進展量と周辺の他の領域との関係に基づいて、当該領域を、破壊領域として判定する、判定工程と、を備える。
この構成により、マグネシウム系合金の製造過程で生じやすい引け巣によって変動しうる強度を、高い精度で予測できる。
本発明の第2の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1の発明に加えて、所定の曲線は、金属部材における曲率の鋭い欠陥であるき裂が、安定成長から不安定破壊に至るき裂の進展量と荷重との関係に基づくRカーブである。
この構成により、引け巣をき裂とみなして、マグネシウム系合金の強度予測を、現実的な処理手順で行える。
本発明の第3の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1または第2の発明に加えて、領域内の引け巣は、断層写真から読み取られる。
この構成により、実際のマグネシウム系合金を、物理的な切断操作などを要せずに、強度予測できる。
本発明の第4の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、領域内の引け巣は、き裂として把握される。
この構成により、引け巣をき裂として把握し、応力によって進展するき裂から、マグネシウム系合金の破壊を予測できる。また、き裂とすることで、き裂進展と破壊予想を、明確なパラメータで計算できる。
本発明の第5の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、き裂進展量算出工程は、複数の領域のそれぞれでのき裂進展量を、荷重の大きさを変化させながら算出する。
この構成により、荷重に対応するき裂の進展を、より正確に算出できる。
本発明の第6の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第5の発明に加えて、き裂進展量算出工程は、複数の領域の全てで、荷重を変化させながら、き裂進展量を算出する。
この構成により、マグネシウム系合金の対象物全体で、様々な場所で発生している引け巣に対応して、強度を予測できる。
本発明の第7の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、判定工程は、領域に含まれる引け巣に基づくき裂進展量が、当該領域から隣接する他の領域に到達すると共に、当該隣接する他の領域に含まれる引け巣と接続する場合には、き裂進展量が到達する他の領域を、破壊領域として判定する。
この構成により、応力によって破壊につながると考えられる領域を予測して、最終的な破壊の広がりを予測できる。
本発明の第8の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、判定工程は、複数の領域のいずれかの領域に対して、隣接する他の領域からのき裂進展量が、領域に含まれる引け巣と接続する場合および領域を横断する場合の少なくとも一つの場合において、領域を、破壊領域として判定する
この構成により、応力によって破壊につながると考えられる領域を予測して、最終的な破壊の広がりを予測できる。
本発明の第9の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、判定工程で判定された破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する、破壊領域積算工程を、更に備える。
この構成により、荷重の付与によって、破壊につながりうる領域の広がりなどに基づいて、強度を予測できる。実際に、マグネシウム系合金が使用される場合に非常に近い強度予測が実現できる。
本発明の第10の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第9の発明に加えて、破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上である場合には、当該予測対象部材が、破壊される状態であると判断する、強度判断工程を更に備える。
この構成により、より実際に近い状態での強度予測ができる。
本発明の第11の発明に係るマグネシウム系合金の強度予測方法では、第10の発明に加えて、強度判断工程は、破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上となる場合の、き裂進展算出工程で付与された荷重を、予測対象部材の破壊強度であると判断する。
この構成により、強度を、破壊に対応する荷重で示すことができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(発明者による分析)
まず、発明者によるマグネシウム系合金の鋳造における引け巣の発生と、この引け巣が強度に及ぼす影響とを、説明する。
図1は、マグネシウム系合金の製造工程の一つである溶融金属製造を示す模式図である。例えば、マグネシウム系合金としてマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)が溶融容器100に投入される。このとき、製造されるマグネシウム系合金の組成比率に合わせて、それぞれの原料であるマグネシウム、アルミニウム、カルシウムが投入される。もちろん、製造されるマグネシウム系合金が異なる元素組成を有する場合には、アルミニウム、カルシウム以外の別の原料が溶融容器100に投入される。
溶融容器100には熱が加えられて投入されたマグネシウムなどの原料が溶融される。更に撹拌等をされて可能な限り均一になった溶融金属が製造される。溶融容器100で製造された溶融金属は、図2に示される型200に流し込まれる。図2は、マグネシウム系合金の製造工程の一つである鋳造での型での凝固を示す模式図である。
型200は、円柱や角柱などの所定の内部空間を有し、この型200の内部に図1で製造された溶融金属が流し込まれる。内部空間に溶融金属が流し込まれると、型200は冷却される。この冷却に従って、内部空間に流し込まれた溶融金属は凝固する。この凝固工程によって、型200内部でマグネシウム系合金10が鋳造によって製造される。
ここで、型200に溶融金属を流し込み、冷却固化によって製造される鋳造においては、型200の外側から中央、下から上に向かって凝固が進むため、最終凝固部となる中央上部付近では凝固収縮による体積減少に伴って溶融金属の高さが下がってしまう(外引け巣による凹みが生じる)傾向がある。図2には、製造されたマグネシウム系合金100の中央付近の高さが下がっている状態が示されている。
このような最終凝固部位である中央付近12においては、引け巣11が発生しやすい。一方で、様々な形状となる型200においては、特に複雑な形状である場合や形状以外の様々な外的要因において、様々な場所に様々な大きさの引け巣11が生じることもありえる。このため、例えば、図2の型200によって製造されるマグネシウム系合金10は、高さ方向に直交する断面のそれぞれにおいて、異なる態様での引け巣が発生する。異なる態様とは、引け巣11の発生する場所や引け巣11の寸法や面積、あるいは引け巣の形状などが異なることである。
このように、鋳造によって製造されるマグネシウム系合金の内部には、様々な態様で引け巣11が発生しており、その高さ方向での直交断面によってさまざまな状態である。このため、鋳造によって製造されるマグネシウム系合金の強度は、外部観察からのみではわからない。
(全体概要)
(引け巣をき裂とみなすことでの強度予測)
まず、実施の形態1におけるマグネシウム系合金の強度予測方法(以下、「強度予測方法」という)が、引け巣をき裂とみなすメカニズムについて説明する。
引け巣11は、溶融金属が凝固する過程で生じる構造欠陥の一つである。凝固の際の内部要因や外部要因によって引け巣11が生じるので、その場所、形状、大きさなどは様々となる。引け巣11のこれらの態様がさまざまであることで、引け巣11が製造されたマグネシウム系合金10の強度にどのような影響を与えるかは、分かりにくい。
欠陥形状による金属部材の破壊機構について説明する。図3は、欠陥形状による破壊機構の変化を説明する説明図である。図3においては、大きな2種類としての欠陥形状としての曲率の鈍い欠陥である切欠きと、曲率の鋭い欠陥であるき裂とを示している。
曲率の鈍い欠陥である切欠きは、図3の上側に示されている。切欠きの場合には、相対的に大きな応力でき裂が発生し、発生と同時に不安定成長き裂として急激に伝ぱし、不安定破壊に至る。一方、曲率の鋭い欠陥であるき裂は、相対的に小さな応力で発生し、初期段階においては、安定的にき裂が進展する。すなわち、図3の下側の真ん中にあるように、安定成長き裂として安定的に成長していく。き裂を含む金属部材や構造部材に応力が加えられると、き裂はまずこのように安定的に成長していく。
き裂は、安定的に成長した後で、更に応力が加えられると、図3の下の右側にあるように不安定成長き裂となって急激に伝ぱし、不安定破壊に至る。この不安定破壊の段階なると、瞬時に金属部材や構造部材は破断する。
一方で、マグネシウム系合金10は、上述の通り、製造工程などによって引け巣11を生じさせる。この引け巣11は、図3で説明した曲率が鋭いき裂と同様とみなすことができる。図4は、引け巣をき裂とみなせる場合を説明している説明図である。図5は、引け巣を含むマグネシウム系合金の断面ミクロ写真である。図5のように、引け巣そのものは、形状が複雑であり比較的曲率の鋭い欠陥である。すなわち、曲率の鋭い欠陥であるき裂として、引け巣をみなすことができる。
図4の下側は、引け巣の断面形状を示している。引け巣は、その断面形状が、き裂と同様である。このため、図4に示すように、破壊となる不安定破壊に至るまでは、引け巣は、き裂と同様に安定的に成長する。この結果、単体の引け巣に着目すれば、その引け巣を起因として破壊に至るまでは、き裂での安定成長に合わせて考えることができる。
図6は、引け巣を起点とした破壊の進行を説明する説明図である。図4において説明したように、引け巣は、き裂と同様とみなすことができる。一般的に曲率の鋭い欠陥であるき裂は、金属疲労などによって発生する。この発生したき裂は、応力が加わることで、安定成長する。図6の上側の真ん中の状態である。更に応力が加わることで、安定成長の限界を超えると、図6の上側の右のように、不安定破壊に至ってしまう。
引け巣も、き裂と同様に応力が加わった後で、一定のレベルまでは引け巣は安定成長する。その後、不安定破壊に至り、き裂と同様の移行を示す。すなわち、引け巣はき裂とみなされることで、き裂の成長と破壊までの変化に合わせて、引け巣による部材の強度を予測することができる。
き裂の安定成長と不安定破壊に至る過程は、Rカーブと呼ばれるき裂進展抵抗を示す曲線で計ることができる。図7は、Rカーブを示す説明図である。Rカーブは、横軸に初期状態のき裂の長さ(き裂の初期値)を示しており、縦軸にき裂進展抵抗を示している。図7のグラフ中の曲線は、き裂の初期値によって定まる曲線である。実線である曲線は、き裂の初期値がグラフの横軸のある場所となる場合に、き裂進展抵抗の関係を示す曲線である。この曲線がRカーブであり、き裂の初期値によって、グラフ中の開始場所が相違するだけであって、曲線形状は同じである。
原点とRカーブとを結ぶ接線が、当該き裂が成長して破壊に至る臨界点を示すことができる。図7における原点からの接線が、Rカーブの曲線と接する部分が、安定成長が終了して破壊に至る点を示す。この点を、グラフの横軸から読み取ると、安定成長が終わって破壊が始まる状態まで成長したき裂の長さが把握できる。
加えて、この接線の傾きは、破断応力を示す。接線の傾きが大きいほど、破断応力が大きいために強く、接線の傾きが小さいほど、破断応力は低く、弱い。
図7での破線によるRカーブの曲線は、き裂の初期値が、実線のRカーブ曲線よりも小さい。このため、破線のRカーブ曲線での接線の傾きは、実線のRカーブ曲線での接線の傾きよりも大きい。このため前者の方が強い。また、その際に、破壊に至る段階でのき裂の成長量も算出できる。
このように、Rカーブを用いることで、き裂の初期値に応じて、荷重を徐々にかけていく中で、き裂が安定成長を超えて破壊に至る過程を把握することができる。上述のように、本発明では引け巣をき裂とみなすことができるとの発明によって、このRカーブを引け巣に適用して、引け巣による破壊の成長を算出して、マグネシウム系合金の強度を予測する。
(全体構成)
図8は、本発明の実施の形態1におけるマグネシウム系合金の強度予測装置(以下、「強度予測装置」という)のブロック図である。本発明のマグネシウム系合金の強度予測方法(以下、「強度予測方法」という)は、図8に示される強度予測装置1を用いて実行される。
強度予測装置1は、読み出し部3、分割部4、抵抗測定部5、き裂進展量算出部6、判定部7と、を備える。また、図8においては、読み出し部3が読み出す断層写真を記憶する記憶部2が示されているが、記憶部2は、強度予測装置1の内部要素であってもよいし、外部要素であってもよい。
強度予測装置1は、マグネシウム系合金であって、ビレット形状や柱状形状等の任意の3次元形状を有する予測対象部材の強度を予測する。このため、強度予測装置1(強度予測方法)が、その強度予測としての対象とするのは、マグネシウム系合金の予測対象部材である。
(動作手順)
図9は、本発明の実施の形態1における予測対象部材での断層写真の撮像の模式図である。図9に示されるような3次元形状のマグネシウム系合金の予測対象部材50の、複数の断面での断層写真が撮像される。図9の破線は、断層写真の撮像部分である断面を示している。この破線に従った断面に沿って、複数の断層写真が撮像される。記憶部2は、この複数の断層写真を記憶する。
読み出し部3は、記憶部2が記憶しているある予測対象部材50の断層写真を読み取る。このとき、記憶部2は、図9に示されるような予測対象物50を複数の断面で撮像した複数の断層写真を記憶していてもよいし、強度予測装置1での使用に合わせた合成された断層写真を記憶していてもよい。いずれにしても、読み出し部3は、記憶部2から、予測対象部材50の強度予測に必要となる断層写真を読み出す。
分割部4は、読み出された断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する。図10は、本発明の実施の形態1における複数の領域に仮想分割された断層写真の模式図である。断層写真21は、読み出し部3が読み出した予測対象部材50での断層を示す。断層写真21は、予測対象物50のある部分の断面51(純粋な断面であることもあり、複数の断面が合成された合成断面であることもある)を示している。断面51は、引け巣11を含んでいることがある。図10の引け巣11は、立体形状の予測対象物50に含まれる3次元形状の引け巣11を、二次元形状にしたものとして、断層写真21に映っている。
分割部4は、この断層写真21に含まれる断面51を、所定の分解能で仮想分割する。図10の破線は、分割部4による分割線を示している。すなわち、破線によって生じる格子状の目の一つ一つが、分割部4によって分割される分解能である。
この分割部4による仮想分割によって、格子状の一つ一つが、仮想分割された領域41である。図10のように、分割部4によって、断層写真21(断面51)は、複数の領域41に分割される。この分割された複数の領域41には、引け巣11のみを含む領域41もあれば、引け巣11の一部を含む領域41もあり、引け巣11を含まない領域41もある。
抵抗測定部5は、複数の領域41のそれぞれの領域41(ある一つの領域41)において、この領域41に含まれる引け巣11に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する。この所定の曲線は、図7で説明したRカーブである。すなわち、領域41に含まれる引け巣11をき裂とみなすことで、引け巣11の寸法を初期値とすれば、当該領域41の引け巣11に基づくRカーブを描くことができる。
抵抗測定部5は、このRカーブによって、測定対象となっている領域41のき裂進展抵抗を測定できる。き裂とみなした引け巣11の長さを初期値としてRカーブが描かれる。このRカーブに基づいて、抵抗測定部5は、き裂進展抵抗を読み取ることで、測定できる。
抵抗測定部5は、仮想分割された複数の領域41のそれぞれにおいて、このき裂進展抵抗を測定する。
き裂進展量算出部6は、領域41で測定されたき裂進展抵抗に基づいて、当該領域41に荷重を付与した場合に、引け巣11によって広がるき裂進展量を算出する。
き裂進展量算出部6は、複数の領域41のそれぞれの領域において、荷重を付与する場合に、このRカーブの傾きに基づいて、領域41でのき裂進展量を算出する。このとき、き裂の進展は、き裂の基礎となる引け巣11によって始まる。複数の領域41のそれぞれにおいて、引け巣11を含む領域41と含まない領域41とがある。
き裂進展量算出部6は、引け巣11を含む領域41においては、その引け巣11をき裂とみなしたRカーブに基づいて、き裂進展量を算出できる。荷重を徐々に増やしていきながら、引け巣11が広がっていくき裂進展量を、き裂進展量算出部6は、算出する。
図11は、き裂進展量算出部によってき裂の進展が算出される断層写真の模式図である。引け巣11を含むある領域41Aにおいて、き裂進展量算出部6は、領域41A内部に含まれる引け巣11(引け巣11全体の一部であることもある)に基づく、き裂進展量を算出する。このとき、き裂進展量算出部6は、様々な荷重の場合でのそれぞれのき裂進展量を算出して、判定部7に出力する。あるいは、領域41Aに隣接する領域41B(図中では前後左右の4か所の一つのみに符号を付しているが、前後左右のそれぞれが隣接する領域41Bである)に、き裂が進展する荷重となる場合での荷重とき裂進展量を算出して、判定部7に出力する。
判定部7は、算出対象としている領域41Aのき裂進展量が、周辺の他の領域41に到達するかを判定する。これは、き裂進展量算出部6で算出されたき裂進展量に基づいて、判定部7が、判定する。判定部7は、算出対象としている領域41Aの引け巣11によるき裂進展量が、周辺の領域41に到達するかを判定する。図11では、領域41Aからのき裂進展量が、隣接する隣接領域41Bに到達するかどうかを判定する。
ここで、判定部7は、き裂進展量の対象とする領域41Aでのき裂進展や、隣接領域41Bへのき裂進展などを考慮して、領域41Aそのものや隣接領域41Bを、破壊領域として判定する。この破壊領域とは、実際に破壊されてしまった領域ではなく、応力が加わることでき裂が進展し、破壊につながることが想定される領域を示す。すなわち、分割された複数の領域41の内で、応力が加わることで、き裂が進展して破壊につながりうる領域41を、破壊領域として判定する。
(その1:対象領域でのき裂の横断)
図12は、本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。図12には、断層写真21の一部が示されている。格子状の線は、分割部4による分割の線であり、これらの線で囲まれた格子状の一つ一つが領域41である。
ここである領域41Aに引け巣11Aが存在している。この引け巣11Aでのき裂進展量を算出すると、ある荷重において、図12のように進展範囲12Aのように引け巣11Aは進展すると算出される。この進展範囲12Aは、領域41Aを横断(縦断の意味も含む)する。この横断によって、当該荷重が付与されると、領域41Aは、破壊領域となると判定される。
このように対象領域である領域41Aは、進展範囲12Aにまで引け巣11Aが進展する荷重において破壊されてしまう破壊領域であると判定される。
(その2:隣接領域と対象領域の引け巣の接続)
図13は、本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。図13には、断層写真21の一部が示されており、図12と同様の見方で把握すればよい。
ある領域41Aを対象領域とみなし、隣接する領域41Bを隣接領域とみなす。対象領域である領域41Aは、引け巣11Aを有している。隣接領域である領域41Bは、引け巣11Bを有している。ここで、隣接領域41Bの引け巣11Bが、き裂進展量の算出において、ある荷重で引け巣11Aと接続することがある。図13の進展範囲12Aは、引け巣11Bが対象領域41Aに到達した上で、引け巣11Aと接続した状態である。
この状態となる場合には、判定部7は、対象領域41Aを破壊領域として判定する。このように、隣接領域の引け巣11Bが対象領域41Aの引け巣11Aと繋がる場合には、判定部7は、対象領域41Aを破壊領域として判定する。
(その3:隣接領域の引け巣からのき裂進展による対象領域での横断)
図14は、本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。図12と同様の見方で把握されればよい。
対象領域41Aの隣接領域41Bは、引け巣11Bを有している。上述の説明の通り、引け巣11Bのき裂進展量が算出される。ここで、ある荷重が付与される場合に、引け巣11Bからき裂が進展して、対象領域41Aを横断(縦断)する場合があり得る。この場合には、判定部7は、対象領域41Aを破壊領域として判定する。
(その4:隣接領域の破壊)
図15は、本発明の実施の形態1における引け巣に基づくき裂進展と破壊領域の判定の一例を示す模式図である。図12と同様の見方で把握されればよい。
対象領域41Aに引け巣11Aが存在し、隣接領域41Bに引け巣11Bが存在している。ここで対象領域41Aの引け巣11Aにある荷重が付与されると、引け巣11Aからのき裂が隣接領域41Bに進展する。この進展によって、進展範囲12Aが、隣接領域41Bの引け巣11Bと接続する場合には、判定部7は、隣接領域41Bを破壊領域として判定する。
以上のように、判定部7は、引け巣11のき裂進展量に基づいて、分割された領域41のそれぞれが、き裂進展によって破壊されうる破壊領域であることを判定する。その1〜その4は、判定部7での破壊領域判定の一例であり、分割された領域41が破壊されるとの判定は、他の基準に基づいてもよい。
なお、対象領域41Aと完全に隣接している隣接領域41Bからの引け巣のき裂進展による到達だけでなく、その外側の領域41の引け巣のき裂進展による到達も、その1〜その4で説明した破壊領域の判定に考慮してもよい。
以上のように、領域41が破壊領域となる荷重および応力を、強度予測装置1は、予測対象部材の強度基準の一つとして算出する。
ここで、き裂進展量算出部6は、領域41のそれぞれでのき裂進展量を、荷重の大きさを変化させながら算出する。特に、必要に応じて、分割された複数の領域41の全てにおいて、荷重を変化させながら、き裂進展量を算出する。この荷重の変化に応じて、その1〜その4を基準として判定される破壊領域が増加する。
強度予測装置1は、ある増加量に破壊領域が達する荷重を、予測対象物の破断荷重として予測する。例えば、予測対象物の面積に応じて、破断応力「MPa(=N/mm2)」として、強度を予測できる。このような予測によって、引け巣11の影響を考慮したマグネシウム系合金の予測対象物の強度が予測できる。特に、判定部7でのその1〜その4の判定によって、異なる引け巣11の干渉も考慮して、強度を予測することができる。
予測対象物の強度を予測できることで、マグネシウム系合金の加工前の強度予測ができ、加工等での活用範囲が広がる。
なお、図8で示された強度予測装置1は、それぞれの要素が工程(ステップ)である強度予測方法として把握されてよい。
すなわち、読み出し部3は、記憶部2に記憶されている予測対象物の断層写真を読み出す読み出し工程を実行する。あるいは、強度予測方法が、この読み出し工程を備える。すなわち、強度予測装置1が強度予測方法である場合には、読み出し部3の機能と同様である読み出し工程が備わる。
分割部4は、断層写真を所定の分解能で複数の領域41に仮想分割する分割工程として把握されてもよい。強度予測装置1が強度予測方法として把握される場合には、分割部4の機能と同様である分割工程が備わる。
抵抗測定部5は、複数の領域41のそれぞれにおいて、領域41に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線(Rカーブ)で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定工程として把握されてもよい。すなわち、強度予測装置1が強度予測方法として把握される場合には、抵抗測定部5の機能と同様である抵抗測定工程が備わる。
き裂進展量算出部6は、複数の領域41のそれぞれでのき裂進展抵抗に基づいて、所定の荷重を付与した際に、引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出工程として把握されてもよい。すなわち、強度予測装置1が強度予測方法として把握される場合には、き裂進展量算出部6の機能と同様であるき裂進展量算出工程が備わる。
判定部7は、領域41におけるき裂進展量が、周辺の他の領域41との関係で、どの程度広がるかを判定し、広がり状況によって、当該領域41を破壊領域として判定する判定工程として把握されてもよい。すなわち、強度予測装置1が強度予測方法として把握される場合には、判定部7の機能と同様である判定工程が備わる。
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、判定部7で判定された破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算して、マグネシウム系合金の予測対象物の強度を判断することを説明する。
なお、実施の形態2で説明する、破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方による強度の判定基準は、強度判定の一態様である。破壊領域の個数、総面積以外に、破壊領域の集中している場所、集中の度合い、分布の度合い、割合など、種々の観点で、強度を判定することもよい。判定部7は、様々な基準をもって、マグネシウム系合金の予測対象物の強度を判定すればよい。
実施の形態2では、これら種々の基準の一例である破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方に基づく判定を説明する。
図16は、本発明の実施の形態2における強度予測装置のブロック図である。図16の強度予測装置1は、破壊領域積算部8と強度判断部9と、を更に備える。
破壊領域積算部8は、断層写真での予測対象物の断面における、破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する。実施の形態1で説明したように、判定部7は、仮想分割された複数の領域41の内、ある荷重によってき裂進展して破壊となりうる破壊領域を判定する。この破壊領域は、仮想分割された領域41毎に判定される。
また、この判定は、ある荷重が予測対象物に加わった場合の、応力の値毎に行われる。すなわち、異なる荷重のそれぞれの値毎に、複数の領域41のいずれが破壊領域となりうるかを、判定部7は、判定する。例えば、応力が値「10MPa」である場合に、破壊領域の判定を行ったり、応力が値「20MPa」である場合に、破壊領域の判定を行ったりする。この結果、異なる値の荷重のそれぞれに合わせた前提での、異なる結果となりうる破壊領域を、判定部7は判定している。
破壊領域積算部8は、この異なる荷重の値のそれぞれで判定された破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する。例えば、応力が値「10MPa」である場合の破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算し、応力が値「20MPa」である場合の破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する。
図17は、本発明の実施の形態2における破壊領域判定後の断面を示す模式図である。断層写真21には、予測対象物の断面51が示される。上述したように、この断面51において、ある荷重の値において破壊領域45となりうる状態を示している。図17において色掛けをしている部分が、破壊領域45として判定された領域41である。図17は、例えば、応力が値「10MPa」の場合に、破壊領域45となりうる領域41を示している。
破壊領域積算部8は、この図17での破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方を積算する。図17での荷重の段階では、断面51の複数の領域全体における破壊領域45は、まだ少ない状態である。
強度判断部9は、破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上である場合には、予測対象部材が破壊される状態であると判断する。このとき、強度判断部9は、破壊領域45が所定値以上となる際に、予測対象物に付与される応力を、予測対象部材の破壊強度の値として判断する。この応力は、すなわち、破壊領域45が所定値以上となる際のき裂進展算出部6で付与される荷重によって与えられる。
き裂進展算出部6では、付与される荷重を増加させていきながら、き裂進展量を算出する。この荷重増加に伴うき裂進展量によって、破壊領域45も増加していく。この破壊領域45の増加によって、破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上となりうる。この所定値以上となる場合の、き裂進展量算出部6で付与された応力が、予測対象部材の破壊強度の値となる。
例えば、図17の段階では、破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値未満である。すなわち、き裂進展量算出部6での算出において、予測対象物に付与された応力が図17に対応する10MPaである場合には、強度判断部9は、予測対象物が破壊状態ではないと判断できる。結果として、10MPaは、予測対象物の破壊強度に至っていないと判断される。
図18は、本発明の実施の形態2における破壊状態と判断される破壊領域を示す断層写真の模式図である。図17の状態よりも高い荷重を付与することで、判定部7は、より多くの数の領域41を、破壊領域45として判定している。図17との比較によれば、より多くの領域41が破壊領域45となっていることが分かる。
例えば、図18では、き裂進展量算出部6での算出において、予測対象物に付与された仮想の応力が、40MPaである。すなわち、予測対象物のある断面においては、40MPaの応力によって、図18に示される個数の領域41が、引け巣11に基づくき裂の進展によって、破壊領域45に至ると判定される。
破壊領域積算部8は、図18において、付与された応力が40MPaでの破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方を積算する。積算結果を、強度判断部9に出力する。強度判断部9は、積算結果を所定値と比較する。この図18の場合には、積算結果である破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値を超えている。
この所定値を超えていることにより、強度判断部9は、予測対象物がこの40MPaの応力によって破壊に至ると判断する。すなわち、予測対象物の強度限界は、40MPaであると、強度予測装置1は、判断する。
もちろん、強度判断部9は、き裂進展量算出部6で仮想的に付与する荷重を徐々に変化させるのに合わせて、強度を判断する。このため、破壊領域45の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上となる荷重を、強度予測装置1は、破壊強度として予測する。
以上のように、実施の形態2における強度予測装置1は、判定部7で判定された破壊領域45を積算し、積算結果に基づいて予測対象物の破壊強度を予測できる。この予測によって、マグネシウム系合金の予測対象物の荷重に対する強度を予測できる。特に、実際に予測対象物に荷重を掛けることなく破壊強度を予測できるので、製造されたマグネシウム系合金のビレットなどの品質を、適切に把握できる。
すなわち、マグネシウム系合金に実際に荷重を掛けることなく、断層写真を仮想分割した領域41の総量の中で、どの程度が引け巣11に基づくき裂進展で破壊領域45となるかが判定される。この破壊領域45となりうる領域41の総量が、所定値を超える場合には、予測対象物が破断等してしまう状態であると考えられる。強度予測装置1は、この考え方に基づき、予測対象物の破壊強度(破壊に対する強度)を予測する。
なお、強度判断部9が使用する所定値は、論理的、経験則的あるいは別途の理由で変更可能である。例えば、マグネシウム系合金の組成によって所定値を変更してもよい。あるいは、マグネシウム系合金の用途によって、所定値を変更してもよい。
また、異なる所定値のそれぞれに対応するそれぞれの破壊強度を算出し、この異なるそれぞれの破壊強度を、マグネシウム系合金の強度の参考として提示することもよい。
なお、強度予測装置1が強度予測方法として把握される場合には、破壊領域積算部8は、破壊領域積算工程として把握されればよい。同様に、強度予測方法として把握される場合には、強度判断部9は、強度判断工程として把握されればよい。破壊領域積算工程は、破壊領域積算部8と同様の機能を実行する。強度判断工程は、強度判断部9と同様の機能を実行する。
なお、実施の形態1〜2で説明された強度予測装置および強度予測方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
10 マグネシウム系合金
11 引け巣
100 溶融容器
200 型
2 記憶部
3 読み出し部
4 分割部
5 抵抗測定部
6 き裂進展量算出部
7 判定部
8 破壊領域積算部
9 強度判断部

Claims (14)

  1. マグネシウム系合金の予測対象部材の断層写真を読み出す読み出し工程と、
    読みだされた前記断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する分割工程と、
    前記複数の領域のそれぞれにおいて、前記領域に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定工程と、
    前記複数の領域のそれぞれでの前記き裂進展抵抗値に基づいて、所定の荷重を付与した際に、前記引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出工程と、
    前記領域における前記き裂進展量と周辺の他の領域との関係に基づいて、当該領域を、破壊領域として判定する、判定工程と、を備えるマグネシウム系合金の強度予測方法。
  2. 前記所定の曲線は、金属部材における曲率の鋭い欠陥であるき裂が、安定成長から不安定破壊に至るき裂の進展量と荷重との関係に基づくRカーブである、請求項1記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  3. 前記領域内の引け巣は、前記断層写真から読み取られる、請求項1または2記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  4. 前記領域内の引け巣は、前記き裂として把握される、請求項1から3のいずれか記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  5. 前記き裂進展量算出工程は、前記複数の領域のそれぞれでの前記き裂進展量を、荷重の大きさを変化させながら算出する、請求項1から4のいずれか記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  6. 前記き裂進展量算出工程は、前記複数の領域の全てで、前記荷重を変化させながら、前記き裂進展量を算出する、請求項5記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  7. 前記判定工程は、前記領域に含まれる引け巣に基づく前記き裂進展量が、当該領域から隣接する他の領域に到達すると共に、当該隣接する他の領域に含まれる前記引け巣と接続する場合には、前記き裂進展量が到達する前記他の領域を、前記破壊領域として判定する、請求項1から6のいずれか記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  8. 前記判定工程は、前記複数の領域のいずれかの領域に対して、隣接する他の領域からのき裂進展量が、前記領域に含まれる引け巣と接続する場合および前記領域を横断する場合の少なくとも一つの場合において、前記領域を、前記破壊領域として判定する、請求項1から7のいずれか記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  9. 前記判定工程で判定された前記破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する、破壊領域積算工程を、更に備える、請求項1から8のいずれか記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  10. 前記破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上である場合には、当該予測対象部材が、破壊される状態であると判断する、強度判断工程を更に備える、請求項9記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  11. 前記強度判断工程は、前記破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上となる場合の、前記き裂進展算出工程で付与された荷重を、前記予測対象部材の破壊強度であると判断する、請求項10記載のマグネシウム系合金の強度予測方法。
  12. マグネシウム系合金の予測対象部材の断層写真を読み出す読み出し部と、
    読みだされた前記断層写真を、所定の分解能で複数の領域に仮想分割する分割部と、
    前記複数の領域のそれぞれにおいて、前記領域に含まれる引け巣に基づいて、所定の曲線で算出されるき裂進展抵抗を測定する抵抗測定部と、
    前記複数の領域のそれぞれでの前記き裂進展抵抗値に基づいて、所定の荷重を付与した際に、前記引け巣に基づくき裂進展量を算出する、き裂進展量算出部と、
    前記領域における前記き裂進展量前記領域における前記き裂進展量と周辺の他の領域との関係に基づいて、当該領域を、破壊領域として判定する、判定部と、を備えるマグネシウム系合金の強度予測装置。
  13. 前記判定部は、前記領域に含まれる引け巣に基づく前記き裂進展量が、当該個別領域から隣接する他の領域に到達すると共に、当該隣接する他の領域に含まれる前記引け巣と接続する場合には、前記き裂進展量が到達する前記他の領域を、前記破壊領域として判定する、請求項12記載のマグネシウム系合金の強度予測装置。
  14. 前記判定部で判定された前記破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方を積算する、破壊領域積算部を、更に備え、
    前記破壊領域の個数および総面積の少なくとも一方が、所定値以上である場合には、当該予測対象部材が、破壊される状態であると判断する、強度判断部を更に備える、請求項13記載のマグネシウム系合金の強度予測装置。
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