JP2017157521A - ケーブル及びワイヤハーネス - Google Patents

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Abstract

【課題】屈曲耐久性を維持しつつも作業環境の悪化を低減させることが可能なケーブル及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】複数の電線の周囲に巻き付けられている紙テープ6と、紙テープ6の外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる外皮7と、を備え、紙テープ6のガーレー試験機法による透気抵抗度が、5.0秒/100cc以上であるケーブル1である。
【選択図】図2

Description

本発明は、ケーブル及びワイヤハーネスに関し、特に、自動車等の車両において車輪側と車体側とを接続するケーブル及びワイヤハーネスに関する。
近年、自動車等の車両において、電動式の制動装置が用いられている。
電動式の制動装置としては、電気機械式ブレーキ(Electro-Mechanical Brake、EMB)や、電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake、EPB)が知られている。
電気機械式ブレーキは、単に電動ブレーキあるいは電気ブレーキとも呼称されるものであり、運転者によるブレーキペダルの操作量(踏力又は変位量)に応じて、車両の各車輪に備えられた専用の電気モータの回転駆動力を制御し、当該電気モータにより駆動されるピストンによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けることにより、運転者の意図に応じた制動力を発生させるように構成されている。
電動パーキングブレーキは、車両の停止後に運転者がパーキングブレーキ作動スイッチを操作することにより、車両の各車輪に備えられた専用の電気モータを駆動させて、当該電気モータにより駆動されるピストンによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けた状態とし、制動力を発生させるように構成されている。
また、近年の車両においては、走行中の車輪の回転速度を検出するABS(Anti-lock Brake System)センサや、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ、温度センサなどのセンサ類が車輪に搭載されることが多い。
そこで、車輪に搭載されたセンサ用の信号線や電気機械式ブレーキの制御用の信号線と、電気機械式ブレーキや電動パーキングブレーキ用の電気モータに電力を供給する電源線とを共通のシースに収容したケーブルを用い、車輪側と車体側とを接続することが行われている。このケーブルの端部にコネクタを一体に設けたものは、ワイヤハーネスと呼称されている。
特許文献1では、複数の電線とその複数の電線を一括して被覆するシースとの間に、タルク粉体を介在させることで、電線とシース間の摩擦を低減し、屈曲時に電線にかかるストレスを低減して屈曲耐久性を向上させたケーブルが提案されている。
特開2014−135153号公報
しかしながら、特許文献1に記載のケーブルでは、タルク粉体の使用量が多い場合、作業環境にタルク紛体が飛散し、作業環境が悪化する可能性があるという問題がある。
そこで、本発明は、屈曲耐久性を維持しつつも作業環境の悪化を低減させることが可能なケーブル及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線の周囲に巻き付けられている紙テープと、前記紙テープの外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる外皮と、を備え、前記紙テープのガーレー試験機法による透気抵抗度が、5.0秒/100cc以上であるケーブルを提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記ケーブルと、前記第1電線と前記第2電線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、ワイヤハーネスを提供する。
本発明によれば、屈曲耐久性を維持しつつも作業環境の悪化を低減させることが可能なケーブル及びワイヤハーネスを提供できる。
本発明の一実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示すブロック図である。 (a)本発明の一実施の形態に係るケーブルの横断面図であり、(b)図2(a)のケーブルにおける第1電線と第2電線の撚り方向および紙テープの巻方向を説明する図である。 本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスの概略構成図である。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
(ケーブルを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられている。
EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている。EPB制御部101bは、車両100のECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として1対の第1電線2が接続されている。
EPB制御部101bは、車両100の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用電気モータ101aに駆動電流を出力することにより、ブレーキパッドを車輪102のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪102に制動力を発生させるように構成されている。また、EPB制御部101bは、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、EPB用電気モータ101aに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪102への制動力を解除するように構成される。つまり、EPB101の作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持されるように構成されている。なお、パーキングブレーキ作動スイッチ101cは、レバー式又はペダル式のスイッチであってもよい。
また、車両100には、ABS装置104が搭載されている。ABS装置104は、ABSセンサ104aと、ABS制御部104bと、を備えている。
ABSセンサ104aは、走行中の車輪102の回転速度を検出するものであり、車輪102に搭載されている。ABS制御部104bは、急停止時に車輪102がロックされないように、ABSセンサ104aの出力に基づいて制動装置を制御し、車輪102の制動力を制御するものであり、ECU103に搭載されている。ABSセンサ104aには、信号線として1対の第2電線3が接続されている。
第1電線2と第2電線3とを一括してシース7(図2参照)で被覆したものが、本実施の形態に係るケーブル1である。車輪102側から延出されたケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
図1では、図の簡略化のために1つの車輪102のみを示しているが、EPB用電気モータ101a、およびABSセンサ104aは、車両100の各車輪102に搭載されていてもよく、例えば、車両100の前輪のみ、あるいは後輪のみに搭載されていてもよい。
(ケーブル1の説明)
図2(a)は、本実施の形態に係るケーブル1の横断面図、図2(b)は第1電線と第2電線の撚り方向および紙テープ6の巻方向を説明する図である。
図2(a),図2(b)に示すように、ケーブル1は、1対の第1電線2と、第1電線2よりも外径が小さい1対の第2電線3を撚り合わせた対撚線4と、1対の第1電線2と対撚線4とを撚り合わせた集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられている紙テープ6と、紙テープ6の外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる外皮としてのシース7と、を備えている。
本実施の形態では、第1電線2は、車両100の車輪102に搭載されたEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線からなる。また、第2電線3は、車輪102に搭載されたABSセンサ104a用の信号線からなる。
第1電線2は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた第1導体21の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1絶縁体22を被覆して構成される。
第1導体21に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は十分な機械的強度が得られず屈曲耐久性が低下するおそれがあり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。
第1電線2の第1導体21の外径、および絶縁体22の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1電線2がEPB101用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線であることを考慮し、第1導体21の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定すると共に、第1電線2の外径を2.0mm以上4.0mm以下に設定した。
第2電線3は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた第2導体31の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2絶縁体32を被覆して構成される。第2導体31に用いる素線としては、第1導体21と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
第2電線3の外径は、第1電線2の外径よりも小さい。本実施の形態では、1対(2本)の第2電線3を撚り合わせた対撚線4と1対の第1電線2とを撚り合わせるため、ケーブル1の外径を円形状に近づけるという観点から、第2電線3として、第1電線2の外径の半分程度のものを用いることが望ましいといえる。具体的には、第2電線3としては、外径1.0mm以上1.8mm以下、第2導体31の外径が0.4mm以上1.0mm以下のものを用いることができる。
対撚線4の撚りピッチP1は、第2電線3の外径を考慮し、第2電線3に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、対撚線4の撚りピッチP1を約30mmとしたが、対撚線4の撚りピッチP1はこれに限定されるものではない。なお、対撚線4の撚りピッチP1とは、任意の第2電線3が対撚線4の周方向において同じ位置となる対撚線4の長手方向に沿った間隔である。
集合体5は、1対の第1電線2と対撚線4とを撚り合わせて構成される。本実施の形態では、1対の第1電線2同士を接触させるとともに、1対の第2電線3同士を接触させ、さらに1対の第1電線2と第2電線3とを接触させて、集合体5を構成した。このとき、1対の第1電線2の間である谷間には、第2電線3の少なくとも一部が配置される。
さらに、本実施の形態では、1対の第1電線2及び対撚線4と紙テープ6との間に、ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在を配置し(図示せず)、第1電線2と対撚線4と共に撚り合わせることにより、集合体5を構成した。このため、複数の介在の撚り方向及び撚りピッチは、集合体5の撚り方向及び撚りピッチと同じになる。複数の介在は1対の第1電線2及び対撚線4と紙テープ6との間の隙間を埋めるように配置され、集合体5の外周に紙テープ6を巻き付けた際の断面形状がより円形状に近づくようにしている。
なお、複数の介在の一部は、1対の第1電線2の間である谷間や1対の第2電線3の間である谷間にも配置されてもよい。
介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。また、図2の横断面視において、介在の断面積は、第1電線2の断面積及び第2電線3の断面積よりも小さいとよい。
なお、EPB101では、基本的に車両の停止時に電気モータ101aに駆動電流を供給する。これに対して、ABSセンサ104aは車両の走行時に使用されるものであり、通常の使用時において第1電線2に駆動電流が供給されているときにABSセンサ104aが使用されることは少ない。そこで、本実施の形態では、対撚線4の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較してケーブル1の外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
なお、ここでは第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給する場合を説明しているが、第1電線2は、例えば、車輪102に設けられた電気機械式ブレーキ(以下、EMBという)の電気モータに駆動電流を供給するために用いられてもよい。この場合、車両100の走行中にも第1電線2に電流が流れることになるため、ノイズによるABS装置104の誤動作を抑制するために、対撚線4の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
また、ここでは第2電線3がABSセンサ104a用の信号線である場合を説明しているが、第2電線3は、車輪102に設けられる他のセンサ、例えば温度センサやタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ等に用いられる信号線であってもよいし、車両100の制振装置の制御に用いられるダンパ線であってもよく、さらにはEMB制御用の信号線(CANケーブル等)であってもよい。第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものである場合であっても、第2電線3が車両100の停車中に使用される場合には、ノイズによる誤動作を抑制するために、対撚線4の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
集合体5全体の外径は、例えば、5mm〜9mm程度である。集合体5の撚りピッチP2は、集合体5の外径を考慮し、第1電線2と対撚線4に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、集合体5の撚りピッチP2を約60mmとしたが、集合体5の撚りピッチP2はこれに限定されるものではない。なお、集合体5の撚りピッチP2とは、任意の第1電線2または対撚線4が集合体5の周方向において同じ位置となる集合体5の長手方向に沿った間隔である。
集合体5の周囲には、紙テープ6が螺旋状に巻き付けられており、本実施の形態において、紙テープ6は、集合体5を構成する全ての電線(1対の第1電線2及び対撚線4)に接触している。紙テープ6は、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2,3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、紙テープ6を設けることで、従来のようにタルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、電線2,3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2,3にかかるストレスを低減して、屈曲耐久性を向上させることが可能になる。
紙テープ6としては、第1電線2の第1絶縁体22、および第2電線3の第2絶縁体32に対して、滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましい。より具体的には、紙テープ6としては、紙テープ6と絶縁体22,32間の摩擦係数(静摩擦係数)が、紙テープ6を設けなかった際におけるシース7と絶縁体22,32間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さいものを用いるとよい。
紙テープ6は、植物等の繊維を絡ませてテープ状にしたものであり、その成分として、セルロースやヘミセルロース等を含む。一般的に、紙テープは木材パルプを使用して製造される。紙テープは、不織布テープと比較して破りやすく、ケーブル1を端末加工する際の加工性が比較的高いという利点がある。
ところで、本発明者らは、ケーブルの試作の過程で、ウレタン系樹脂からなるシースを紙テープの外周に被覆すると、シースが発泡し、シースにボイドが発生してしまう場合があるという課題があることを見出した。これに関し、本発明者らが鋭意検討したところ、湿気が多い環境下で複数の電線の周囲に紙テープを巻き付けると、紙テープで覆われている空間内に湿気(水分)を含んだ空気が溜まってしまい、当該空間内に溜まった空気からの水分を紙テープが吸湿してしまうことが確認された。そして、水分を含んだ紙テープの外周にウレタン系樹脂からなるシースを押し出し被覆すると、被覆の際の熱により紙テープから水分が蒸発しシースが発泡してしまうことが確認された。
そこで、本発明者らは、紙テープ6として、JIS P 8117:2009に準拠するガーレー試験機法による透気抵抗度が5.0秒/100cc以上であるものを用いることを想到するに至った。このようにすることで、上記空間内に溜まった湿気を含んだ空気を空間外に排出しやすくし、シース7が発泡してしまうことを低減することが可能となる。
また、紙テープ6のガーレー試験機法による透気抵抗度は、30.0秒/100cc以下とすることが望ましい。紙テープ6のガーレー試験機法による透気抵抗度が30.0秒/100ccを超えて大きいものを用いると、紙テープ6の強度が弱くなり、複数の電線の周囲に紙テープ6を巻き付ける際に紙テープ6が破れたりし作業性が低下するおそれがあるためである。
シース7が発泡してしまうことをより低減し、作業性が低下するおそれをより低減するという観点から、紙テープ6のガーレー試験機法による透気抵抗度は、6.0秒/100cc以上20.0秒/100cc以下であることがより好ましい。
なお、本実施の形態では、紙テープ6として、透気抵抗度が7.3秒/100ccのものを用いた。
本実施の形態において、紙テープ6は、その幅方向(紙テープ6の長手方向および厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体5に巻き付けられる。紙テープ6が重なり合う幅は、例えば、紙テープ6の幅の1/4以上1/2以下である。なお、紙テープ6は、集合体5に縦添え巻きで巻き付けられていてもよい。
紙テープ6の幅は、紙テープ6を巻き付けた際に紙テープ6に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体5全体の外径が小さくなるほど幅の狭い紙テープ6を用いることが望ましい。具体的には、集合体5の外径が5mm〜9mmである場合、紙テープ6の幅は、20mm〜50mm程度とすればよい。紙テープ6の巻きピッチP3、すなわち紙テープ6が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、紙テープ6の幅および重なり幅(紙テープ6の巻き付け角度)に依存し、この場合最大で40mm程度となる。ここでは、紙テープ6の巻きピッチP3を約30mmとしたが、紙テープ6の巻きピッチP3はこれに限定されるものではない。
なお、紙テープ6を集合体5に螺旋状に巻き付ける場合、紙テープ6の幅を大きくし、巻きピッチP3を大きくしていくと、紙テープ6を縦添えした状態に近くなり、ケーブル1の柔軟性が失われて曲げにくくなる。そのため、紙テープ6の巻きピッチP3は、40mm以下とすることが望ましい。紙テープ6の幅を小さくし、巻きピッチP3を小さくすると、巻回数が多くなり、ケーブル1に曲がり癖が付与されやすくなるが、本実施の形態では、この紙テープ6により付与される曲がり癖を利用して、集合体5の撚りによる曲がり癖を修正することになる(詳細は後述する)。
紙テープ6の周囲には、外皮としてのシース7が設けられる。シース7は、ウレタン系樹脂からなる。本実施の形態では、第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものであり、第1電線2に駆動電流が流れる時間が比較的短いため、紙テープ6の周囲に設けられるシールド導体を省略しているが、第1電線2の用途等に応じて、紙テープ6とシース7の間、あるいはシース7の外周にシールド導体を設けてもよい。
(対撚線4と集合体5の撚り方向、紙テープ6の巻き付け方向)
本実施の形態に係るケーブル1では、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが異なり、かつ、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とが異なっている。つまり、ケーブル1では、対撚線4の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とは同じ方向となり、集合体5の撚り方向のみが異なる方向となっている。
なお、ここでいう撚り方向とは、ケーブル1を先端側(図2Bの左側、紙テープ6の重なりが上となる側)から見たときに、電線2,3が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。ここでは、対撚線4の撚り方向が右回り(時計回り)となり、集合体5の撚り方向が左回り(反時計回り)となる。なお、対撚線4の撚り方向とは、2本の第2電線3を撚り合わせる方向であり、集合体5の撚り方向とは、2本の第1電線2と対撚線4とを撚り合わせる方向である。
また、紙テープ6の巻き付け方向とは、ケーブル1を先端側(図2Bの左側、紙テープ6の重なりが上となる側)から見た時に、紙テープ6が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。ここでは、紙テープ6の巻き付け方向は右回り(時計回り)となる。図2Aでは、先端側から見たときの断面図を示しており、対撚線4の撚り方向を破線矢印A、集合体5の撚り方向を破線矢印B、紙テープ6の巻き付け方向を破線矢印Cで表している。
一般に、電線を撚り合わせたり、螺旋状にテープを巻き付けたりすると、その撚り方向、巻き付け方向に応じて曲がり癖が付与されてしまい、ケーブル全体が自然に湾曲してしまう。本実施の形態では、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とを異ならせ、かつ、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とを異ならせているため、対撚線4の曲がり癖と集合体5の曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺され、かつ、集合体5の曲がり癖と紙テープ6を巻き付けることによる曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺されることになり、曲がり癖を抑制した直線状のケーブル1を容易に実現できる。その結果、ケーブル1の長手方向における屈曲特性のばらつきを抑制することが可能になる。
また、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが同じ方向である場合、集合体5を撚り合わせる際に撚りが締まる方向に対撚線4が捩られ、対撚線4の撚りピッチP1が変化してしまう場合がある。対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とを異ならせることで、対撚線4の撚りピッチP1の変化を抑えながら集合体5を形成することが可能になる。
ただし、対撚線4の撚りピッチP1が大きいと、集合体5を撚り合わせる際に対撚線4の撚りが緩んでしまうおそれがある。そのため、対撚線4の撚りピッチP1は、少なくとも、集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることが望ましい。すなわち、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが異なる場合には、対撚線4の撚りピッチP1を集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることで、対撚線4の撚りが崩れにくくなり、集合体5の断面形状を安定させることが可能になる。
本実施の形態では、紙テープ6を巻き付けることによる曲がり癖により、集合体5の曲がり癖を矯正しているため、紙テープ6の巻きピッチP3を、曲がり癖を付与できる程度に小さくする必要がある。そのため、紙テープ6の巻きピッチP3は、少なくとも集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることが望ましい。本実施の形態では、対撚線4の撚りピッチP1を約30mm、集合体5の撚りピッチP2を約60mmとしており、紙テープ6の巻きピッチP3を約30mmとしている。
なお、本実施の形態では、紙テープ6の巻きピッチP3と対撚線4の撚りピッチP1とを同じにしたが、紙テープ6の巻きピッチP3は、対撚線4の撚りピッチP1以上にすればよい。このようにすることで、対撚線4と接触している部分における紙テープ6の歪みを低減でき、ケーブル1の断面形状を円形状に成形しやくなる。また、対撚線4の屈曲耐久性の低下を低減できるという効果を奏する。
同様に、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とを異ならせることで、紙テープ6を巻き付ける際に、集合体5の撚りピッチP2が変化しにくくなり、集合体5の撚りピッチP2を安定させることが可能になる。
さらに、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とを異ならせることで、紙テープ6が第1電線2同士の間、または第1電線2と対撚線4との間の隙間に入り込んでしまうことが抑制され、ケーブル1の断面形状をより円形状に近くすることが可能になる。その結果、ケーブル1の外観を向上させると共に、シース7を除去するストリップ作業を容易に行うことが可能になる。上述のように、ケーブル1では曲がり癖が抑制されているため、シース7を除去するストリップ作業がより容易である。
さらにまた、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とを異ならせることで、集合体5が座屈し易い方向と紙テープ6が座屈し易い方向とを異ならせることができ、例えばケーブル1を捩じれと曲げが同時に加わったような場合であっても、座屈しにくいケーブル1を実現できる。
(ケーブル1を用いたワイヤハーネスの説明)
図3は、本実施の形態に係るワイヤハーネスの概略構成図である。
図3に示すように、ワイヤハーネス10は、本実施の形態に係るケーブル1と、第1電線2と第2電線3の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えて構成される。
図3では、図示左側が車輪102側の端部を示し、図示右側が車体105側(中継ボックス106側)の端部を示している。以下の説明では、ワイヤハーネス10の車輪102側の端部を「一端部」、車体105側(中継ボックス106側)の端部を「他端部」という。
1対の第1電線2の一端部には、EPB用電気モータ101aとの接続のための車輪側電源コネクタ11aが取り付けられ、1対の第1電線2の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側電源コネクタ11bが取り付けられている。
1対の第2電線3(対撚線4)の一端部には、ABSセンサ104aが取り付けられ、1対の第2電線3(対撚線4)の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側ABS用コネクタ12が取り付けられている。
なお、ここでは、第1電線2と第2電線3(対撚線4)に個別にコネクタを設ける場合を説明したが、両電線2,3を一括して接続する専用のコネクタを備えるようにしても構わない。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられた紙テープ6を備える。
紙テープ6を備えることで、タルク粉体等の潤滑剤を用いずとも、電線2,3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2,3にかかるストレスを低減して、屈曲耐久性を向上させることが可能になる。紙テープ6は端末加工時に容易に除去できるので、屈曲耐久性を維持しつつも端末加工の作業性を向上させることが可能になる。
また、紙テープ6のガーレー試験機法による透気抵抗度は、5.0秒/100cc以上である。このようにすることで、紙テープ6で覆われている空間内に溜まった(湿気を含んだ)空気を空間外に排出しやすくし、紙テープ6が当該空間内に溜まった空気からの湿気を吸湿してしまうのを低減することが可能である。これにより、シース7が発泡してしまうことを低減することが可能となる。
また、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とを異ならせ、かつ、集合体5の撚り方向と紙テープ6の巻き付け方向とを異ならせることで、撚りや紙テープ6の巻き付けによる曲がり癖を抑制し、かつ、対撚線4と集合体5の撚りピッチP1,P2を安定させることが可能になる。その結果、屈曲特性のばらつきを抑制することが可能になり、また長手方向における可撓性が安定し配策し易いケーブル1を実現できる。さらに、ケーブル1の断面形状をより円形状に近くすることができるので、シース7のストリップ作業が容易になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]複数の電線(第1電線(2)、第2電線(3))と、前記複数の電線の周囲に巻き付けられている紙テープ(6)と、前記紙テープ(6)の外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる外皮(7)と、を備え、前記紙テープ(6)のガーレー試験機法による透気抵抗度が、5.0秒/100cc以上であるケーブル(1)。
[2]前記紙テープ(6)のガーレー試験機法による透気抵抗度が、30.0秒/100cc以下である、[1]に記載のケーブル(1)
[3]前記複数の電線は、1対の第1電線(2)と、前記第1電線(2)よりも外径が小さい1対の第2電線(3)を撚り合わせた対撚線(4)と、を備え、前記紙テープ(6)は、前記1対の第1電線(2)と前記対撚線(4)とを撚り合わせた集合体(5)の周囲に、螺旋状に巻き付けられており、前記対撚線(4)の撚り方向と、前記集合体(5)の撚り方向とが異なり、かつ、前記集合体(5)の撚り方向と、前記紙テープ(6)の巻き付け方向とが異なっている、[1]または[2]に記載のケーブル(1)。
[4]前記対撚線(4)の撚りピッチが、前記集合体(5)の撚りピッチよりも小さく、前記紙テープ(6)の巻きピッチが、前記集合体(5)の撚りピッチよりも小さく、前記対撚線(4)の撚りピッチ以上である、[3]に記載のケーブル(1)。
[5]前記第1電線(2)が、車両(100)の車輪(102)に搭載された電動パーキングブレーキ(101)用の電気モータ(101a)に駆動電流を供給するための電源線からなる、[3]または[4]に記載のケーブル
[6]前記第2電線(3)は、車両(100)の車輪(102)に搭載されたセンサ用の信号線からなる、[3]乃至[5]の何れか1つに記載のケーブル(1)。
[7]前記集合体(5)は、前記1対の第1電線(2)及び前記対撚線(4)と前記紙テープ(6)との間に配置された糸状の複数の介在を有し、前記複数の介在は、前記1対の第1電線(2)及び前記対撚線(4)とともに撚られ、前記複数の介在の撚り方向は、前記集合体(5)の撚り方向と同じであり、前記紙テープ(6)の巻き付け方向と異なっている、[3]乃至[6]の何れか1つに記載のケーブル。
[8][3]乃至[7]の何れか1つに記載のケーブル(1)と、前記第1電線(2)と前記第2電線(3)の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、ワイヤハーネス(10)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
1…ケーブル
2…第1電線
3…第2電線
4…対撚線
5…集合体
6…紙テープ
7…シース(外皮)

Claims (8)

  1. 複数の電線と、
    前記複数の電線の周囲に巻き付けられている紙テープと、
    前記紙テープの外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる外皮と、
    を備え、
    前記紙テープのガーレー試験機法による透気抵抗度が、5.0秒/100cc以上である
    ケーブル。
  2. 前記紙テープのガーレー試験機法による透気抵抗度が、30.0秒/100cc以下である、
    請求項1に記載のケーブル。
  3. 前記複数の電線は、1対の第1電線と、前記第1電線よりも外径が小さい1対の第2電線を撚り合わせた対撚線と、を備え、
    前記紙テープは、前記1対の第1電線と前記対撚線とを撚り合わせた集合体の周囲に、螺旋状に巻き付けられており、
    前記対撚線の撚り方向と、前記集合体の撚り方向とが異なり、かつ、前記集合体の撚り方向と、前記紙テープの巻き付け方向とが異なっている、
    請求項1または2に記載のケーブル。
  4. 前記対撚線の撚りピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、
    前記紙テープの巻きピッチが、前記集合体の撚りピッチよりも小さく、前記対撚線の撚りピッチ以上である、
    請求項3に記載のケーブル。
  5. 前記第1電線が、車両の車輪に搭載された電動パーキングブレーキ用の電気モータに駆動電流を供給するための電源線からなる、
    請求項3または4に記載のケーブル。
  6. 前記第2電線は、車両の車輪に搭載されたセンサ用の信号線からなる、
    請求項3乃至5の何れか1項に記載のケーブル。
  7. 前記集合体は、前記1対の第1電線及び前記対撚線と前記紙テープとの間に配置された糸状の複数の介在を有し、
    前記複数の介在は、前記1対の第1電線及び前記対撚線とともに撚られ、
    前記複数の介在の撚り方向は、前記集合体の撚り方向と同じであり、前記紙テープの巻き付け方向と異なっている、
    請求項3乃至6の何れか1項に記載のケーブル。
  8. 請求項3乃至7の何れか1項に記載のケーブルと、
    前記第1電線と前記第2電線の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、
    ワイヤハーネス。
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