JP2017140904A - 自動車車体の製造方法 - Google Patents

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Koji Fukumoto
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【課題】本発明は、焼付塗装工程後に、硬化した熱硬化型接着樹脂によって、ルーフパネルに残留変形が生じない自動車車体の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】ルーフパネル3とルーフ補強材2との間に熱硬化型接着樹脂としてのマスチック樹脂4を介して接着する接着工程と、前記接着工程後に焼付塗装処理が施される焼付塗装工程と、を備えた自動車車体の製造方法であって、前記焼付塗装工程の間、ルーフパネル3とルーフ補強材2との間にスペーサ5を設置して両者の間隔を固定することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、焼付塗装工程後に、硬化した熱硬化型接着樹脂によって、ルーフパネルに残留変形(ここに言う「残留変形」の定義詳細は、後記参照)が生じない自動車車体の製造方法に関する。
自動車の軽量化のために、ルーフパネルやルーフ補強材のアルミニウム化が進んでいる(例えば、特許文献1〜3参照)。ところが、自動車の車体構造の主たる部分(特に、ルーフサイドレール)には鋼材が使われている。したがって、ルーフパネルやルーフ補強材のアルミニウム化を進めた場合、ルーフサイドレールにルーフパネルやルーフ補強材を接合する際、異材接合が必要になるばかりか、焼付塗装工程時に鋼材とアルミニウム材(ここで、アルミニウム材とは、純アルミニウム材とアルミニウム合金材を含めた総称である)の線膨張係数の差に起因して両者の接合箇所およびその近傍に熱変形が生じる。この熱変形が焼付塗装工程後も残留し{すなわち、硬化した熱硬化型接着樹脂としてのマスチック接着樹脂(以下、単に「マスチック樹脂」とも言う)によって、接着されたルーフパネルに残留変形を生じさせ}、ルーフパネルの形状精度に悪影響を与えることがある。
上述したような問題を少しでも抑えるための解決策として、上記特許文献1に開示されたような技術が紹介されている。すなわち、鋼製ルーフサイドレールの車幅方向の熱膨張量をアルミニウム製ルーフパネルの熱膨張量に近づけるために、車体幅方向に配置されるルーフ補強材をアルミニウム化している。
別の解決策として、上記特許文献2に開示されたような技術が紹介されている。すなわち、ルーフ補強材の車体幅方向(長手方向)に、上述した熱膨張差を吸収する屈曲部を設けた構造が採用されている。
さらに、別の解決策として、上記特許文献3に開示されたような技術が紹介されている。すなわち、ルーフ補強材に開口を設けている。
特開2005−219599号公報 特許第5094623号公報 特許第5194761号公報
しかし、上記特許文献1に開示された技術では、ルーフ補強材はルーフパネルに沿う形でアーチ状になっているため、焼付塗装工程における熱膨張時には車幅方向よりも車体上方向に変形しやすい。つまり、ルーフパネルとルーフ補強材の間に配置されるマスチック樹脂が薄くなった状態で熱硬化してしまい、焼付塗装後に残留変形(図9における符号Bで示された破線で囲まれた箇所)を生じやすい問題がある。
また、上記特許文献2および3に開示された技術は、ルーフパネルとルーフ補強材の間に介在するマスチック樹脂によるルーフパネルの残留変形の改善効果は発揮される。しかし、ルーフ補強材全体としては、弱体化してしまうため、ルーフ補強材に要求される剛性や強度が確保できなくなるといった問題点があった。
本発明の目的は、焼付塗装工程後に、硬化した熱硬化型接着樹脂によって、ルーフパネルに残留変形が生じない自動車車体の製造方法を提供することにある。
この目的を達成するために、第1発明に係る自動車車体の製造方法は、
アルミニウム製または鋼製の何れかからなるルーフパネルとアルミニウム製ルーフ補強材との間に熱硬化型接着樹脂を介して接着する接着工程と、前記接着工程後に焼付塗装処理が施される焼付塗装工程と、を備えた自動車車体の製造方法であって、
前記焼付塗装工程の間、前記ルーフパネルと前記ルーフ補強材との間にスペーサを設置して両者の間隔を固定することを特徴とする自動車車体の製造方法である。
また、第2発明に係る自動車車体の製造方法は、第1発明に係る自動車車体の製造方法において、前記焼付塗装工程後に、前記スペーサを取外すことを特徴とする。
また、第3発明に係る自動車車体の製造方法は、第2発明に係る自動車車体の製造方法において、前記スペーサには、取外すための把手が予め設けられていることを特徴とする。
また、第4発明に係る自動車車体の製造方法は、第1発明に係る自動車車体の製造方法において、前記焼付塗装工程後に、前記スペーサを設置したままにしておくことを特徴とする。
また、第5発明に係る自動車車体の製造方法は、第1〜4のいずれかの発明に係る自動車車体の製造方法において、前記スペーサは、前記ルーフパネルと前記ルーフ補強材との間の車幅方向の中央部のみに設置することを特徴とする。
以上のように、本発明は、
アルミニウム製または鋼製の何れかからなるルーフパネルとアルミニウム製ルーフ補強材との間に熱硬化型接着樹脂を介して接着する接着工程と、前記接着工程後に焼付塗装処理が施される焼付塗装工程と、を備えた自動車車体の製造方法であって、
前記焼付塗装工程の間、前記ルーフパネルと前記ルーフ補強材との間にスペーサを設置して両者の間隔を固定することを特徴とする。
このように、スペーサが設置されたことにより、焼付塗装工程における加熱過程で(すなわち、熱膨張時に)、ルーフパネルとルーフ補強材との隙間が極端に狭くなるのを防止し、前記隙間を規定寸法に維持することが可能となる。したがって、焼付塗装工程後にも、硬化した熱硬化型接着樹脂によって、ルーフパネルに残留変形を生じさせることがないという作用効果を奏する。
本発明の実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装前の自動車のルーフ構造の模式断面図である。 同実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装前(破線)と焼付塗装時(実線)の形状変化を示す模式断面図である。 同実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装完了後の自動車のルーフ構造の模式断面図である。 本発明に係る自動車車体の製造方法におけるスペーサの設置位置(スペーサは、車幅方向の中央部のみに設置)を説明するための平面視(ルーフパネルを外す)説明図である。 本発明に係る自動車車体の製造方法におけるスペーサの設置位置(車幅方向の複数個所に設置)を説明するための平面視(ルーフパネルを外す)説明図である。 本発明に係る自動車車体の製造方法における種々のスペーサ形状を示す模式断面図である。 従来の自動車車体の製造方法における焼付塗装前の自動車のルーフ構造の模式断面図である。 従来の自動車車体の製造方法における焼付塗装前(破線)と焼付塗装時(実線)の形状変化を示す模式断面図である。 従来の自動車車体の製造方法における焼付塗装完了後の自動車のルーフ構造の模式断面図である。
本発明者は、如何にすれば、
ルーフ補強材全体としての弱体化を招くことなく(すなわち、ルーフ補強材に要求される剛性や強度が確保されたまま)、焼付塗装工程後に、硬化した熱硬化型接着樹脂によって、ルーフパネルに残留変形が生じない自動車車体の製造方法を実現することができるか鋭意研究を行った。その結果、以下に説明するような構成を採用することで初めて目的を達成できることを見出した。以下、本発明について、実施形態を例示しつつ、詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装前の自動車のルーフ構造の模式断面図、図2は同実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装前(破線)と焼付塗装時(実線)の形状変化を示す模式断面図、図3は同実施形態1の自動車車体の製造方法における焼付塗装完了後の自動車のルーフ構造の模式断面図である。なお、図1〜図3においては、本発明に係る自動車のルーフ構造の一部(ルーフパネルとルーフ補強材の各々の片側半部およびルーフサイドレール)を示す。
図1〜図3において、1は車室内を囲む鋼製ボデーの一部である左右のルーフサイドレール、2は車体幅方向に延在するアルミニウム合金製押出材からなるルーフ補強材、3はアルミニウム合金製ルーフパネル、4は熱硬化型接着樹脂としてのマスチック樹脂、5は金属製スペーサである。ここで、スペーサ5の材質はアルミニウム合金製であり、その形状はルーフパネル3とルーフ補強材2の隙間やスペーサ5(後記詳細)が設置されるルーフ補強材2のフランジ形状(後記詳細)、に合わせた略直方体(厚さ2〜5mm、幅10〜30mm、長さ10〜50mm)である。
また、ルーフサイドレール1、ルーフ補強材2およびルーフパネル3には、それぞれフランジ1a、2aおよび3aが設けられている。そして、ルーフ補強材2がルーフパネル3の下で上方に凸に湾曲して車体幅方向に延在し、このルーフパネル3とルーフ補強材2を接合するためのマスチック樹脂4がルーフパネル3とルーフ補強材2の間に介在されている。さらに、ルーフパネル3とルーフ補強材2との間には、両者の間隔を固定するスペーサ5が車体幅方向の中央部分のみに設置されている。
また、ルーフサイドレール1のフランジ1a上には、ルーフ補強材2のフランジ2aおよびルーフパネル3のフランジ3aが重ねられ、ボルトで機械的に接合されている。なお、図1に示す自動車のルーフ構造は、ルーフパネル3{従来例(図7参照)に示すルーフパネル13相当}とルーフ補強材2{図7に示すルーフ補強材12相当}の間に、両者の間隔を固定するスペーサ5が車体幅方向の中央部分に設置された構成である。
次に、図1に示す自動車のルーフ構造を有する鋼製ボデーを、焼付塗装炉に装入して170〜200℃に加熱したときの状態を図2に示す。図2に、自動車のルーフ構造の焼付塗装前(破線)と焼付塗装時(実線)の形状変化を示し、従来例の変形モードと比較しながら以下に説明する。
図2に示される(本発明に係る)スペーサ5が設置されていない場合には、従来例(図8参照)のように、ルーフパネル13は車体前後方向と車体幅方向の熱膨張分の釣り合いからルーフサイドレール11側で車体上方向に持ち上がり、車体幅方向の中央部分全体が平坦な変形モードとなるが、車体幅方向に伸びるルーフ補強材12は車体幅方向の中央部分が一番高くなるように車体上方向に変形する。したがって、焼付塗装時(加熱過程の熱膨張時)に車体幅方向の中央部分のルーフパネル13とルーフ補強材12との隙間は、焼付塗装前{すなわち、加熱過程前(熱膨張が発生する前)}に比べて大幅に小さくなり、最悪の場合、接触する場合もありうる。しかし、本発明においては、図2に示すように、ルーフパネル3とルーフ補強材2との間に、両者の間隔を固定するスペーサ5が設置されているため、従来例(図8参照)のような薄くなったマスチック樹脂(14a、14bおよび14c)の熱硬化による残留変形が生じることはない。
続いて、図2に示す焼付塗装の完了後(すなわち、室温まで冷却させた後)の自動車のルーフ構造の状態を図3に示す。室温まで冷却させると、ルーフパネル3、ルーフ補強材2とルーフサイドレール1が熱収縮し、ルーフパネル3とルーフ補強材2との間の隙間は、両者の間隔を固定するスペーサ5で規定される隙間に戻る(すなわち、図1に示す当初の形状に戻る)。したがって、従来例(図9参照)ならば、焼付塗装工程後に、硬化した(すなわち、薄いために極めて硬いバネ特性を有する)マスチック樹脂(14a、14bおよび14c)によるルーフパネル13の残留変形(図9における符号Bで示された破線で囲まれた箇所)が、図3に示す本発明の場合は生じない。
なお、本実施形態においては、スペーサ5はアルミニウム合金製である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、金属としては鋼、ステンレスまたはゴム等でも焼付塗装温度で著しく剛性や強度の低下しない材質のものであれば広範な材料が使用可能である。また、スペーサ5の形状や寸法も、製品仕様に合わせて、ルーフパネルとルーフ補強材との間を所定の間隔に固定することができるものであれば、様々なものが使用可能である(詳細は、後記図6にて説明する)。また、このスペーサ5は、焼付塗装前に耐熱性を有する両面テープ等で固定し、焼付塗装後に剥がすことが出来るようにすれば、不要な重量も防止できるというさらなる作用効果を奏する。
また、本実施形態においては、ルーフパネル3がアルミニウム合金製である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鋼製である場合には、本発明の作用効果は一層顕著となる。また、本実施形態においては、ルーフ補強材2として、押出材の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、アルミニウム合金板のプレス加工品を採用することも可能である。
また、本実施形態においては、一体のスペーサ5をルーフパネル3とルーフ補強材2との間に、車体幅方向の中央部分のみに設置する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、スペーサ5を車体幅方向の中央部分において複数に分割して設置してもよい(図4参照)。
また、本実施形態においては、一体のスペーサ5をルーフパネル3とルーフ補強材2との間に、車体幅方向の中央部分のみに設置する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一体のスペーサ5を車体幅方向の中央部分含めて、車体幅方向の複数の箇所に設置してもよいし、一体のスペーサ5と分割されたスペーサ5の組合せや分割されたスペーサ5のみの組合せのものを車体幅方向の中央部分含めて、車体幅方向の複数の箇所に設置してもよい(図5参照)。
また、本実施形態においては、熱硬化型接着樹脂としてマスチック樹脂を用いた場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、熱硬化型樹脂であり、かつ、接着性を有するものであれば種々のものが採用可能である。
また、本実施形態においては、スペーサ5の形状としては、単純な矩形状であり、かつ、ルーフ補強材2の断面形状としては、単純な両フランジ2b付きのU字状断面の例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すような種々の形状を採用可能である。図6(a)は両フランジ2b付きのU字状断面のルーフ補強材2と左右対称に分割したスペーサ5の組合せ、図6(b)は両フランジ2b付きのU字状断面のルーフ補強材2と左右対称に分割され、さらにフランジ2bを嵌入させるための溝5bが設けられたスペーサ5の組合せ、図6(c)は基本的に図6(a)と図6(b)の折衷案であり、さらにルーフ補強材2の底2dに突起2eが形成された組合せ、図6(d)は図6(b)の変形であり、さらにスペーサ5の端部に取外すための把手5cが予め設けられた組合せ、図6(e)は図6(a)の変形であり、スペーサ5にテーパが設けられ、取外し易くしたもの、図6(f)は図6(e)の変形であり、図6(e)とは逆の傾斜のテーパが設けられ、取外し難くしたもの、図6(g)は図6(a)の変形であり、スペーサ5の下端に突起5d、フランジ2bに下向きの突起2c、スペーサ5の上端とルーフパネル3の間に耐熱性両面テープ6が設けられたもの、図6(h)は基本的に図6(b)と図6(g)の折衷案である。
また、本実施形態においては、ルーフサイドレール1のフランジ1a上には、ルーフ補強材2のフランジ2aおよびルーフパネル3のフランジ3aが重ねられ、ボルトで機械的に接合する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、リベットなどの機械的接合あるいは溶接接合 (スポット溶接等) を適宜選択、組み合わせて用いることも可能である。
本発明で、ルーフパネルあるいはルーフ補強材に用いるアルミニウム合金は、製造がしやすく、成形が容易で、強度にも優れたAA乃至JIS 3000系、5000系、6000系、7000系等のアルミニウム合金の調質材(熱処理材)を適宜選択して用いる。また、アルミニウムとしては、上述したアルミニウム合金以外の純アルミニウムを対象とすることも可能である。本発明に言う「アルミニウム製」とは、上述のアルミニウム合金と純アルミニウムを含めた総称である。
1 ルーフサイドレール
1a、2a、2b、3a フランジ
2 ルーフ補強材
2c、2e、5d 突起
2d 底
3 ルーフパネル
4 マスチック樹脂
5 スペーサ
5b 溝
5c 把手
6 耐熱性両面テープ

Claims (5)

  1. アルミニウム製または鋼製の何れかからなるルーフパネルとアルミニウム製ルーフ補強材との間に熱硬化型接着樹脂を介して接着する接着工程と、前記接着工程後に焼付塗装処理が施される焼付塗装工程と、を備えた自動車車体の製造方法であって、
    前記焼付塗装工程の間、前記ルーフパネルと前記ルーフ補強材との間にスペーサを設置して両者の間隔を固定することを特徴とする自動車車体の製造方法。
  2. 前記焼付塗装工程後に、前記スペーサを取外すことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の製造方法。
  3. 前記スペーサには、取外すための把手が予め設けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動車車体の製造方法。
  4. 前記焼付塗装工程後に、前記スペーサを設置したままにしておくことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の製造方法。
  5. 前記スペーサは、前記ルーフパネルと前記ルーフ補強材との間の車幅方向の中央部のみに設置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載された自動車車体の製造方法。













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