JP2017139454A - 永久磁石とそれを用いたモータ、発電機、および車 - Google Patents

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陽介 堀内
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新哉 桜田
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Yoshiko Okamoto
佳子 岡本
将也 萩原
Masaya Hagiwara
将也 萩原
剛史 小林
Takefumi Kobayashi
剛史 小林
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Masaki Endo
将起 遠藤
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Tadahiko Kobayashi
忠彦 小林
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Abstract

【課題】Sm−Co系焼結磁石の磁化や保磁力等の磁気特性を向上させると共に、強度等の機械特性を高めることを可能にした永久磁石を提供する。【解決手段】永久磁石は、組成式:RpFeqMrCusCo100-p-q-r-s(Rは希土類元素から選ばれる1種以上の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる1種以上の元素、10≦p≦13.3、25≦q≦40、0.87≦r≦5.4、3.5≦s≦13.5(原子%))で表される組成を有する焼結体6Bを具備する。永久磁石を構成する焼結体6Bは、Th2Zn17型結晶相を含む主相2と、主相中のR濃度の1.2倍以上の元素RおよびM濃度の1.2倍以上の元素Mを含むR−Mリッチ相3とを有する金属組織を備える。焼結体6Bを構成する結晶粒の平均結晶粒径が35μm以上200μm以下の範囲である【選択図】図6

Description

本発明の実施形態は、永久磁石とそれを用いたモータ、発電機、および車に関する。
高性能な永久磁石としては、Sm−Co系磁石やNd−Fe−B系磁石等の希土類磁石が知られている。ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)や電気自動車(Electric Vehicle:EV)のモータに永久磁石を使用する場合、永久磁石には耐熱性が求められる。HEVやEV用のモータには、Nd−Fe−B系磁石のNd(ネオジム)の一部をDy(ジスプロシウム)で置換して耐熱性を高めた永久磁石が用いられている。Dyは希少元素の一つであるため、Dyを使用しない永久磁石が求められている。Sm−Co系磁石はキュリー温度が高いため、Dyを使用しない組成系で優れた耐熱性を示すことが知られており、高温で良好な動作特性の実現が期待されている。
Sm−Co系磁石は、Nd−Fe−B系磁石に比べて磁化が低く、最大磁気エネルギー積((BH)max)も十分な値を実現することができない。Sm−Co系磁石の磁化を高めるためには、Coの一部をFeで置換すると共に、Fe濃度を高めることが有効である。しかしながら、Fe濃度が高い組成領域では、Sm−Co系磁石の保磁力が減少する傾向にある。また、Sm−Co系磁石は脆い金属間化合物からなり、加えて焼結磁石として用いることが一般的であるため、疲労特性の点から脆性が問題となるおそれがある。そこで、高Fe濃度の組成を有するSm−Co系焼結磁石において、保磁力等の磁気特性の向上に加えて、強度や靭性等の機械特性を高めることが求められている。
特開2010−034522号公報 特開2012−204599号公報
本発明が解決しようとする課題は、Sm−Co系焼結磁石の磁化や保磁力等の磁気特性を向上させると共に、強度等の機械特性を高めることを可能にした永久磁石とそれを用いたモータおよび発電機を提供することにある。
実施形態の永久磁石は、
組成式:RpFeqrCusCo100-p-q-r-s
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素であって、元素Rの50原子%以上がSmであり、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.3、25≦q≦40、0.87≦r≦5.4、3.5≦s≦13.5を満足する数である)
で表される組成を有する焼結体を具備する。永久磁石を構成する焼結体は、Th2Zn17型結晶相を含む主相と、主相中のR濃度の1.2倍以上の元素Rと主相中のM濃度の1.2倍以上の元素Mとを含むR−Mリッチ相とを有する金属組織を備える。焼結体を構成する結晶粒の平均結晶粒径は35μm以上200μm以下の範囲である。
Sm−Co系焼結磁石の作製に用いる合金インゴットの金属組織を拡大して示すSEM−反射電子像である。 図1に示す合金インゴットの金属組織を模式的に示す断面図である。 図2に示す合金インゴットを粒子径が20μmを超える程度となるように粉砕した合金粒子の金属組織を模式的に示す断面図である。 図2に示す合金インゴットを粒子径が10μm以下程度となるように粉砕した合金粒子の金属組織を模式的に示す断面図である。 図3に示す合金粒子を用いて作製した焼結磁石の金属組織を模式的に示す断面図である。 図4に示す合金粒子を用いて作製した焼結磁石の金属組織を模式的に示す断面図である。 実施形態の永久磁石モータを示す図である。 実施形態の可変磁束モータを示す図である。 実施形態の永久磁石発電機を示す図である。
以下、実施形態の永久磁石について説明する。この実施形態の永久磁石は、
組成式:RpFeqrCusCo100-p-q-r-s …(1)
(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.3、25≦q≦40、0.87≦r≦5.4、3.5≦s≦13.5を満足する数である)
で表される組成を有する焼結体を具備する。実施形態の永久磁石を構成する焼結体は、Th2Zn17型結晶相を含む主相と、主相中のR濃度の1.2倍以上の元素Rと主相中のM濃度の1.2倍以上の元素Mとを含むR−Mリッチ相とを有する金属組織を備える。
組成式(1)において、元素Rとしてはイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素が使用される。元素Rはいずれも永久磁石に大きな磁気異方性をもたらし、高い保磁力を付与するものである。元素Rとしては、サマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)およびプラセオジム(Pr)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、特にSmを使用することが望ましい。元素Rの50原子%以上をSmとすることで、永久磁石の性能、とりわけ保磁力を再現性よく高めることができる。さらに、元素Rの70原子%以上がSmであることが望ましい。
元素Rの含有量pは10原子%以上13.3原子%以下の範囲である。元素Rの含有量pが10原子%未満であると、多量のα−Fe相が析出して十分な保磁力を得ることができない。一方、元素Rの含有量が13.3原子%を超えると、飽和磁化の低下が著しくなる。元素Rの含有量pは10.2〜13原子%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10.5〜12.5原子%の範囲である。
鉄(Fe)は、主として永久磁石の磁化を担う元素である。Feを比較的多量に含有させることによって、永久磁石の飽和磁化を高めることができる。ただし、Feをあまり過剰に含有させるとα−Fe相が析出したり、また後述する所望の2相分離組織が得られにくくなるため、保磁力が低下するおそれがある。このため、Feの含有量qは25原子%以上40原子%以下の範囲である。Feの含有量qは27〜38原子%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜36原子%の範囲である。
元素Mとしては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選ばれる少なくとも1種の元素が用いられる。元素Mを配合することによって、Fe濃度が高い組成で大きな保磁力を発現させることができる。元素Mの含有量rは0.87原子%以上5.4原子%以下の範囲である。元素Mの含有量rを0.87原子%以上とすることによって、Fe濃度を高めることができる。一方、元素Mの含有量rが5.4原子%を超えると、磁化の低下が著しくなる。元素Mの含有量rは1.3〜4.3原子%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1.5〜2.9原子%の範囲である。
元素MはTi、Zr、Hfのいずれであってもよいが、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、元素Mの50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高める効果をさらに向上させることができる。一方、元素Mの中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少なくすることが好ましい。Hfの含有量は元素Mの20原子%未満とすることが好ましい。
銅(Cu)は、永久磁石に高い保磁力を発現させるための元素である。Cuの配合量sは3.5原子%以上13.5原子%以下の範囲である。Cuの配合量sが3.5原子%未満であると、高い保磁力を得ることが困難になる。一方、Cuの配合量sが13.5原子%を超えると、磁化の低下が著しくなる。Cuの配合量sは3.9〜9原子%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは4.2〜7.2原子%の範囲である。
コバルト(Co)は、永久磁石の磁化を担うと共に、高い保磁力を発現させるために必要な元素である。さらに、Coを多く含有させるとキュリー温度が高くなり、永久磁石の熱安定性が向上する。Coの含有量が少なすぎると、これらの効果を十分に得ることができない。ただし、Coの含有量が過剰になると、相対的にFeの含有割合が下がって磁化が低下する。従って、Coの含有量は元素R、元素MおよびCuの各含有量を考慮した上で、Feの含有量が上記した範囲を満足するように設定される。
Coの一部は、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)から選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換してもよい。これらの置換元素Aは磁石特性、例えば保磁力の向上に寄与する。ただし、元素AによるCoの過剰な置換は磁化の低下を招くおそれがあるため、元素Aによる置換量はCoの20原子%以下であることが好ましい。
この実施形態の永久磁石は、組成式(1)で表される組成を有する焼結体からなる焼結磁石である。焼結磁石(焼結体)は、Th2Zn17型結晶相を含む領域を主相としている。ここで、焼結磁石の主相とは、焼結体の断面等を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察した際に、観察像(SEM像)内で面積比率が最も大きい相を示すものである。焼結磁石の主相は、溶体化処理により形成したTbCu7型結晶相(1−7相/高温相)を前駆体とし、これに時効処理を施して形成した相分離組織、すなわちTh2Zn17型結晶相(2−17相)からなるセル相とCaCu5型結晶相(1−5相)等からなるセル壁相との相分離組織を有していることが好ましい。セル壁相の磁壁エネルギーはセル相に比べて大きいため、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動の障壁となる。つまり、磁壁エネルギーの大きいセル壁相がピンニングサイトとして働くことで、磁壁ピニング型の保磁力が発現するものと考えられる。
Sm−Co系焼結磁石において、SEM等で観察される金属組織(焼結体の組織)は、上述した主相以外の異相として、主相中のR濃度(元素Rの濃度)の1.2倍以上の元素Rと主相中のM濃度(元素Mの濃度)の1.2倍以上の元素Mとを含むR−Mリッチ相を有している。R−Mリッチ相は、主相中のM元素の濃度を低下させ、それにより主相の相分離を阻害する要因、さらには主相の相分離により得られる磁気特性を低下させる要因となる。従って、Sm−Co系焼結磁石の磁気特性の観点からは、R−Mリッチ相の析出を抑制することが好ましい。ただし、R−Mリッチ相の析出量(存在量)を適度な値に制御することによって、磁気特性に及ぼす悪影響を抑制した上で、Sm−Co系焼結磁石の抗折強度等の機械的特性を向上させることができる。
実施形態の焼結磁石は、Th2Zn17型結晶相を含む主相と、主相中のR濃度の1.2倍以上の元素Rと主相中のM濃度の1.2倍以上の元素Mとを含むR−Mリッチ相とを有する金属組織(焼結体の組織)を備えており、さらに金属組織中のR−Mリッチ相の体積分率を0.2%以上15%以下の範囲に制御している。R−Mリッチ相の体積分率を15%以下と少なくした場合、R−Mリッチ相は焼結体を構成する結晶粒の粒界(結晶粒界)に存在する傾向があり、主相の相分離の阻害や磁気特性の低下が抑制される。従って、Sm−Co系焼結磁石の保磁力や磁化を向上させることができる。詳細は後述する。
焼結体の結晶粒界に存在する適度な量のR−Mリッチ相は、焼結体の強度の向上にも寄与する。すなわち、Sm−Co系焼結磁石を構成する合金は脆い金属間化合物からなり、そのような合金の焼結体は特に強度特性が劣りやすい。焼結磁石の強度を劣化させる要因として、金属間化合物は塑性変形が生じにくいことが挙げられる。このため、応力が負荷されると結晶粒界で破壊が生じる。このような応力負荷による破壊を防ぐためには、合金の降伏応力を高めることが有効である。このような点に対して、焼結体の結晶粒界に適度な量のR−Mリッチ相を存在させることで結晶粒界自体の強度が向上し、これにより応力が負荷された際の結晶粒界の破壊を抑制することができる。
さらに、焼結体の結晶粒界にR−Mリッチ相が存在すると、焼結時の結晶粒界の移動が抑制されるため、結晶粒の過度な粗大化を抑制することができる。焼結体の結晶粒径と強度との間には、ホール・ペッチの関係が成り立つとされており、結晶粒の過度な粗大化を抑制することで強度が向上する。加えて、R−Mリッチ相は転位のピニングサイトとしても機能し、この点からも焼結磁石の強度の向上に寄与すると考えられる。これらの要因に基づいて、焼結体の結晶粒界に適度な量のR−Mリッチ相を存在させることによって、Sm−Co系焼結磁石の強度を向上させることが可能となる。
焼結磁石中に存在するR−Mリッチ相の体積分率は、上述したように磁気特性の低下を抑制するために15%以下とする。R−Mリッチ相の体積分率は10%以下であることがより好ましい。ただし、R−Mリッチ相の体積分率が低すぎると、上述した焼結体の強度向上効果を十分に得ることができないため、R−Mリッチ相の体積分率は0.2%以上とする。R−Mリッチ相の体積分率は0.3%以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5%以上である。また、焼結体を構成する結晶粒の平均粒径は35μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。結晶粒の平均粒径が200μmを超えると、焼結磁石の強度が低下しやすくなる。上述したように、結晶粒界にR−Mリッチ相を存在させることで、結晶粒の過度な粗大化が抑制され、結晶粒の平均粒径を200μm以下とすることができる。ただし、結晶粒界は磁化の反転核となる可能性がある。結晶粒径が小さすぎると結晶粒界が増加するため、保磁力や角型性が低下する傾向がある。従って、結晶粒の平均粒径は35μm以上であることが好ましい。
Sm−Co系焼結磁石におけるR−Mリッチ相の出現と磁気特性との関係について詳述する。Sm−Co系焼結磁石は、SmやCo等の原料を溶解して合金インゴットを形成し、合金インゴットを粉砕して得た粉末を磁場中で圧縮成型した後に焼結することにより作製される。良好な磁気特性、特に保磁力を発現させるためには、焼結工程に引き続いて実施される溶体化処理工程で1−7相の単相を得ること重要であるとされている。合金インゴットは、図1のSEM−反射電子像に示すように、主相である2−17相の他に様々な相(異相)を含んでいる。異相はFe濃度が高くなるほど析出しやすく、特にSm等の元素Rの濃度とZr等の元素Mの濃度が主相より多い相(R−Mリッチ相/図1ではR−Mリッチ相の代表例としてSm−Zrリッチ相を示す)が多量に生成しやすい。
R−Mリッチ相等の異相は、保磁力発現の観点から焼結および溶体化処理時に消去されることが好ましいが、従来の製造プロセスでは異相の生成および消去を制御することができなかった。本発明者等はこの原因について注意深く調査を行った結果、合金インゴットを粉砕した後の粉末粒径が異相の生成量に関係があることを見出した。合金インゴットの粉砕工程から焼結工程までについて、図2ないし図6を参照して説明する。図2は合金インゴット1の金属組織を模式的に示している。図2に示すように、合金インゴット1の金属組織は、主相2とR−Mリッチ相3のような異相とを有している。
合金インゴット1を粒子径が20μmを超える程度となるように粉砕した場合、図3に示すように、合金粉末4Aは主相2とR−Mリッチ相3との2相状態の粒子5Aを有することになる。一方、合金インゴット1を粒子径が10μm以下程度となるように粉砕した場合、図4に示すように、合金粉末4Bは主相2の単相粒子5BとR−Mリッチ相3の単相粒子5Cとが混在した状態となる。図3に示すような合金粉末4Aを焼結すると、図5に示すように、焼結体6A中にR−Mリッチ相3が比較的多量に出現する。一方、図4に示すような合金粉末4Bを焼結すると、図6に示すように、焼結体6B中にR−Mリッチ相3が出現するものの、その量は大幅に少なくなる。焼結体6A中にR−Mリッチ相3が多量に生成すると、主相1中の元素M(Zr等)が欠乏する傾向にある。Fe濃度が高い組成においては、焼結工程および溶体化工程で2−17相が安定化する傾向があり、このことが高Fe濃度側で十分な保磁力が発現しないことの原因の1つと考えられる。
Fe濃度が増えると2−17相が安定化する原因として、Fe−Feダンベルペアの数が増大し、Rサイトに入るFeの量が増えることが考えられる。Fe−Feダンベルペアは、Sm等の元素Rよりもc軸方向の大きさが大きいことが予測され、元素RがFe−Feダンベルペアに置き換わることで、c軸方向への歪量が多くなると考えられる。そこで、この歪を緩和するために、Fe−Feダンベルペアが不規則にRサイトに入っている1−7相よりも、規則化して置換される2−17相の方が安定化すると推測される。Zr等の元素Mは、その原子半径がCoやFeよりも大きいため、Rサイトに置換されることが予測される。ただし、Rサイトのc軸方向への大きさはFe−Feダンベルペアより小さいため、元素MでFe−Feダンベルペアを置換することによって、Fe−Feダンベルペアの増大に起因する高Fe濃度領域での2−17相の安定化を抑制し、溶体化処理で1−7相を再現性よく形成することができると推測される。
このように、M濃度が主相より高いR−Mリッチ相の生成を抑制し、主相中のM濃度を十分に確保することによって、高Fe濃度の組成域で高保磁力の発現が期待される。つまり、25原子%以上のFe濃度を有する組成において、従来の製造プロセスでは困難であった、主相中のM濃度を十分に確保することができれば、高保磁力を発現させることが可能となる。焼結体中のR−Mリッチ相の生成量は、上述したように原料粉末(合金粉末)の粒度に影響される。図4に示すように、主相2の単相粒子5BとR−Mリッチ相3の単相粒子5Cとが混在した合金粉末4Bを焼結した場合、各元素の拡散が進行しやすいため、均一な金属組織が得られる。一方、図3に示すように、主相2とR−Mリッチ相3との2相粒子5Aを有する合金粉末4Aを焼結した場合、均一になるための拡散距離が図4に示す合金粉末4Bに比べて長くなり、拡散が進行しにくくなることが予測される。さらに、粒子5A内のR−Mリッチ相3が安定化し、焼結後も残存することが予測される。
つまり、焼結体の原料粉末として用いる合金粉末の粒度を調整することによって、R−Mリッチ相の生成状態を制御することができる。具体的には、各元素の拡散が進行しやすい合金粒子と、R−Mリッチ相が生成しやすい合金粒子との比率を調整することによって、適度な量のR−Mリッチ相を有する焼結体、さらにはそのような焼結体に溶体化処理や時効処理を施して作製される焼結磁石、具体的には金属組織中のR−Mリッチ相の体積分率が0.2〜15%の範囲である焼結磁石を得ることができる。このような焼結磁石は、磁化や保磁力等の磁気特性に優れるだけでなく、強度等の機械特性にも優れるものである。従って、Sm−Co系焼結磁石の実用性を大幅に高めることが可能となる。なお、
焼結体の原料粉末として用いる合金粉末の粒度については、後に詳述する。
この実施形態の永久磁石において、主相やR−Mリッチ相中のFe濃度、R濃度(Sm濃度等)、M濃度(Zr濃度等)等は、エネルギー分散型X線分光法(SEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:SEM−EDX)により測定することができる。SEM−EDX観察は、焼結体の内部に対して行う。焼結体内部の測定とは、以下に示す通りである。まず、最大の面積を有する面における最長の辺の中央部において、辺に垂直(曲線の場合は中央部の接線と垂直)に切断した断面の表面部と内部とで組成を測定する。
測定箇所は、上記断面において各辺の1/2の位置を始点として辺に対し垂直に内側に向けて端部まで引いた基準線1と、各角部の中央を始点として角部の内角の角度の1/2の位置で内側に向けて端部まで引いた基準線2とを設け、これら基準線1、2の始点から基準線の長さの1%の位置を表面部、40%の位置を内部と定義する。なお、角部が面取り等で曲率を有する場合には、隣り合う辺を延長した交点を辺の端部(角部の中央)とする。この場合、測定箇所は交点からではなく、基準線と接した部分からの位置とする。
測定箇所を以上のようにすることによって、例えば断面が四角形の場合、基準線は基準線1および基準線2でそれぞれ4本の合計8本となり、測定箇所は表面部および内部でそれぞれ8箇所となる。この実施形態においては、表面部および内部でそれぞれ8箇所全てが上記した組成範囲内であることが好ましいが、少なくとも表面部および内部でそれぞれ4箇所以上が上記した組成範囲内となればよい。この場合、1本の基準線での表面部および内部の関係を規定するものではない。このように規定される焼結体内部の観察面を研磨して平滑にした後、倍率2500倍でSEM観察を行う。加速電圧は20kVとすることが望ましい。SEM−EDXの観察場所は結晶粒内の任意の20点とし、これら各点で測定を行って平均値を求め、この平均値を各元素の濃度とする。
R−Mリッチ相の体積分率は、電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyser:EPMA)で観察した視野中におけるR−Mリッチ相の面積比率で定義する。R−Mリッチ相の面積比率は、以下のようにして求めることができる。まず、フィールドエミッション(FE)タイプのEPMAにより2500倍のBSE像(反射電子像)を撮影する。市販の画像解析ソフト等で、撮影した画像を二つのしきい値を使用して特定のコントラスト抽出を行った後、面積計算する。コントラスト抽出とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対して、ある“しきい値”を2つ設け、しきい値A以下もしくはしきい値B以上ならば“0”、しきい値A以上でしきい値B以下ならば“1”として、領域を区別することである。しきい値は抽出を行いたい輝度がその分布の両側で最小となる値を使用し、その領域を選択する。別のコントラストと輝度の分布が重なる場合は、両者の輝度が最小となる値をしきい値として使用し、その領域を選択する。
焼結体(焼結磁石)を構成する結晶粒の平均粒径(平均結晶粒径)は、電子後方散乱回折像法(SEM−Electron Backscattering Pattern:SEM−EBSP)により測定することができる。以下に、測定面積内に存在する結晶粒の平均粒面積と平均粒径を求める手順を示す。まず、前処理として、試料をエポキシ樹脂にて包埋して機械研磨およびバフ仕上げした後、水洗およびエアブローによる散水を行う。散水後の試料をドライエッチング装置で表面処理する。次に、EBSDシステム−Digiview(TSL社製)が付属する走査型電子顕微鏡S−4300SE(日立ハイテクノロジーズ社製)で試料表面を観察する。観察条件は、加速電圧30kV、測定面積500μm×500μmとする。観察結果から、測定面積内に存在する結晶粒の平均粒面積および平均粒径は、下記の条件により求める。
ステップサイズ2μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界と見なす。ただし、同一結晶粒内に内包される測定点が5点未満の結晶粒、および測定面積範囲の端部に到達している結晶粒は、結晶粒として見なさないこととする。粒面積は結晶粒界に囲まれた同一結晶粒内の面積であり、平均粒面積は測定面積範囲内に存在する結晶粒の面積の平均値である。粒径は同一結晶粒内における面積と同面積を有する真円の直径とし、平均粒径は測定面積範囲内に存在する結晶粒の粒径の平均値である。
この実施形態の永久磁石は、例えば以下のようにして作製される。まず、所定量の元素を含む合金粉末を作製する。合金粉末は、例えばアーク溶解法や高周波溶解法で溶解した合金溶湯を鋳造して合金インゴットを形成し、合金インゴットを粉砕することにより調製される。合金粉末の他の調製方法としては、ストリップキャスト法、メカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法、還元拡散法等が挙げられ、これらの方法で調製した合金粉末を用いてもよい。このようにして得られた合金粉末または粉砕前の合金に対し、必要に応じて熱処理を施して均質化してもよい。フレークやインゴットの粉砕は、ジェットミルやボールミル等を用いて実施される。粉砕は合金粉末の酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気中や有機溶媒中で行うことが好ましい。
前述したように、合金粉末の粒径(粉砕後の粒径)が焼結体の金属組織に影響し、その結果として焼結磁石の磁気特性や強度にも影響する。具体的には、合金粉末は粒子径が3μm以上7μm未満の粒子を80体積%以上含み、粒子径が7μm以上15μm未満の粒子を1体積%以上10体積%以下の範囲で含むことが好ましい。このような粒度分布を有する合金粉末を用いて焼結体を作製し、そのような焼結体に後述する溶体化処理や時効処理を施すことによって、Th2Zn17型結晶相を含む主相と体積分率が0.2〜15%の範囲のR−Mリッチ相とを有する金属組織を備える焼結磁石を得ることができる。
合金粉末の大半(80体積%以上)が3μm以上7μm未満の粒子径を有する粒子であり、それに粒子径が7μm以上15μm未満の粒子を1〜10体積%の範囲で含ませることによって、焼結体中の適度な量のR−Mリッチ相を析出させることができる。粒子径が7μm以上15μm未満の粒子の量が多すぎるとR−Mリッチ相の析出量が増大し、逆に少なすぎると有効量のR−Mリッチ相を析出させることができない。合金粉末における粒子径が3μm以上7μm未満の粒子の比率は85体積%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは95体積%以上である。粒子径が7μm以上15μm未満の粒子の量を考慮して、粒子径が3μm以上7μm未満の粒子の比率は98体積%以下であることが好ましい。また、粒子径が7μm以上15μm未満の粒子の比率は5体積%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3体積%以下である。
例えば、粒子径が15μm以上の粒子のみの合金粉末を用いて、焼結温度を1160〜1220℃として焼結体を作製した場合、焼結体に明らかなR−Mリッチ相が析出し、また十分な焼結密度も得られない。粒子径が7μm未満の粒子のみの合金粉末を用いた場合、十分な密度を有する焼結体が得られ、またR−Mリッチ相の生成はほとんど認められない。粒子径が3μm未満の粒子のみの合金粉末を用いた場合も同様であるが、焼結体中の酸素濃度が高くなる傾向がある。酸素濃度が高いと磁化および保磁力が共に低くなるおそれがある。粒子径が7μm以上15μm未満の粒子のみの合金粉末を用いた場合、R−Mリッチ相の量は減少し、R−Mリッチ相が結晶粒界に存在する傾向がある
上記した各焼結体におけるR−Mリッチ相の体積分率をSEM−反射電子像により評価したところ、粒子径が15μm以上の粒子のみの合金粉末を用いた場合には15%を超えており、粒子径が3μm以上7μm未満の粒子のみの合金粉末を用いた場合には0.1%であった。これらに対して、粒子径が3μm以上7μm未満の粒子を主としながら、粒子径が7μm以上15μm未満の粒子を数%程度含む合金粉末を用いた場合、焼結体中のR−Mリッチ相の体積分率は適度な量となる。すなわち、R−Mリッチ相の体積分率を0.2〜15%の範囲とすることができる。
さらに、各焼結体の平均結晶粒径をSEM−EBSPにより評価したところ、粒子径が15μm以上の粒子のみの合金粉末を用いた場合には30μm程度であり、粒子径が3μm以上7μm未満の粒子のみの合金粉末を用いた場合には200μmを超えていた。これらに対して、粒子径が3μm以上7μm未満の粒子を主としながら、粒子径が7μm以上15μm未満の粒子を数%程度含む合金粉末を用いた場合、焼結体の平均結晶粒径は35〜200μmの範囲となる。このような平均結晶粒径を有する焼結体からなる焼結磁石は良好な強度を示し、さらに保磁力や残留磁化も良好な値を示す。
次に、電磁石等の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することによって、結晶軸を配向させた圧縮成型体を作製する。この圧縮成型体を適切な条件下で焼結することで、高密度を有する焼結体を得ることができる。圧縮成型体の焼結は、真空雰囲気中やアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。さらに、真空雰囲気中での焼成と不活性ガス雰囲気中での焼成とを組合せて適用することも有効である。この場合、まず圧縮成型体を真空雰囲気中で焼成し、次いで仮焼結体を不活性ガス雰囲気中で焼成することが好ましい。例えば、焼結温度に近い温度まで9×10-2Pa以下の真空雰囲気を保ち、その後に不活性ガス雰囲気として焼結を行うことが好ましい。このような焼結工程によれば、高密度の焼結体を得ることができる。真空雰囲気が9×10-2Paを超えると、Sm等の酸化物が過剰に形成されて磁気特性が低下する。
圧縮成型体の焼結温度は1215℃以下であることが好ましい。Fe濃度が高いと融点の低下が予測されるため、焼結温度が高すぎるとSm等の蒸発が生じやすくなる。焼結温度は1205℃以下がより好ましく、さらに好ましくは1195℃以下である。ただし、焼結体を高密度化するために、焼結温度は1170℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは1180℃以上である。焼結温度による保持時間は0.5〜15時間とすることが好ましい。これによって、緻密な焼結体が得られる。焼結時間が0.5時間未満の場合、焼結体の密度に不均一性が生じる。また、焼結時間が15時間を超えると、合金粉末中のSm等が蒸発することによって、良好な磁気特性を得ることができないおそれがある。より好ましい焼結時間は1〜10時間であり、さらに好ましくは1〜4時間である。本焼結工程はArガス等の不活性ガス雰囲気中で実施する。
次に、得られた焼結体に溶体化処理および時効処理を施して結晶組織を制御する。溶体化処理は相分離組織の前駆体である1−7相を得るために、1100〜1200℃の範囲の温度で0.5〜20時間熱処理することが好ましい。1100℃未満の温度および1200℃を超える温度では、溶体化処理後の試料中の1−7相の割合が小さく、良好な磁気特性が得られない。溶体化処理温度は1120〜1190℃の範囲がより好ましく、さらに好ましくは1120℃〜1180℃の範囲である。溶体化処理時間が0.5時間未満であると構成相が不均一になりやすく、20時間を超えると焼結体中のSm等が蒸発して良好な磁気特性が得られないおそれがある。溶体化処理時間は2〜16時間の範囲とすることがより好ましく、さらに好ましくは4〜12時間の範囲である。溶体化処理は酸化防止のために、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
次に、溶体化処理後の焼結体に時効処理を施す。時効処理は結晶組織を制御し、磁石の保磁力を高める処理である。時効処理は、700〜900℃の温度で4〜80時間保持した後、0.2〜2℃/分の冷却速度で300〜650℃の温度まで徐冷し、引き続いて炉冷により室温まで冷却することが好ましい。時効処理は二段階の熱処理により実施してもよい。例えば、上記した熱処理を一段目とし、その後に二段目の熱処理として300〜650℃の温度で一定時間保持した後、引き続き炉冷により室温まで冷却する。時効処理は酸化防止のために、真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
時効処理温度が700℃未満または900℃を超える場合には、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。時効処理温度は750〜880℃であることがより好ましく、さらに好ましくは780〜860℃である。時効処理時間が4時間未満の場合には、1−7相からセル壁相の析出が十分に完了しないおそれがある。一方、時効処理時間が80時間を超える場合には、セル壁相の厚さが厚くなることでセル相の体積分率が低下したり、また結晶粒が粗大化することで、良好な磁石特性が得られないおそれがある。時効処理時間は6〜60時間であることがより好ましく、さらに好ましくは8〜45時間である。
時効熱処理後の冷却速度が0.2℃/分未満の場合には、セル壁相の厚さが厚くなることでセル相の体積分率が低下したり、また結晶粒が粗大化することで、良好な磁気特性が得られないおそれがある。時効熱処理後の冷却速度が2℃/分を超えると、均質なセル相とセル壁相との混合組織を得ることができず、永久磁石の磁気特性が低下するおそれがある。時効熱処理後の冷却速度は0.4〜1.5℃/分の範囲とすることより好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.3℃/分の範囲である。
なお、時効処理は二段階の熱処理に限らず、より多段階の熱処理としてもよく、さらに多段の冷却を実施することも有効である。また、時効処理の前処理として、時効処理よりも低い温度でかつ短時間の予備的な時効処理(予備時効処理)を施すことも有効である。これによって、磁化曲線の角型性の改善が期待される。具体的には、予備時効処理の温度を650〜790℃、処理時間を0.5〜4時間、時効処理後の徐冷速度を0.5〜1.5℃/分とすることで、永久磁石の角型性の改善が期待される。
この実施形態の永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機の固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。この実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。この実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。
次に、実施形態のモータと発電機について、図面を参照して説明する。図7は実施形態による永久磁石モータを示している。図7に示す永久磁石モータ11において、ステータ(固定子)12内にはロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、実施形態の永久磁石15が配置されている。実施形態の永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ11の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。
図8は実施形態による可変磁束モータを示している。図8に示す可変磁束モータ21において、ステータ(固定子)22内にはロータ(回転子)23が配置されている。ロータ33の鉄心24中には、実施形態の永久磁石が固定磁石25および可変磁石26として配置されている。可変磁石26は、磁束密度(磁束量)を可変することが可能とされている。可変磁石26はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ23には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石26に作用する構造となっている。
実施形態の永久磁石によれば、前述した製造方法の各種条件を変更することによって、例えば保磁力が500kA/mを超える固定磁石25と保磁力が500kA/m以下の可変磁石26とを得ることができる。なお、図8に示す可変磁束モータ21においては、固定磁石25および可変磁石26のいずれにも実施形態の永久磁石を用いることが可能であるが、いずれか一方の磁石に実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ21は、大きなトルクを小さい装置サイズで出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等のモータに好適である。
図9は実施形態による発電機を示している。図9に示す発電機31は、実施形態の永久磁石を用いたステータ(固定子)32を備えている。ステータ(固定子)32の内側に配置されたロータ(回転子)33は、発電機31の一端に設けられたタービン34とシャフト35を介して接続されている。タービン34は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン34に代えて、自動車の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト35を回転させることも可能である。ステータ32とロータ33には、各種公知の構成を採用することができる。
シャフト35は、ロータ33に対してタービン34とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ33の回転により発生した起電力が発電機31の出力として相分離母線および主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機31は、通常の発電機および可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ33にはタービン34からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機31はロータ33の帯電を放電させるためのブラシ36を備えている。
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1〜2)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。ジェットミルによる粉砕条件を調整することによって、表2に示す粒度分布を有する合金粉末を得た。合金粉末を磁界中でプレス成型して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼成炉のチャンバ内に配置し、Arガス雰囲気中にて1200℃まで昇温し、その温度で6時間保持して焼結を行い、引き続いて1180℃で5時間保持して溶体化処理を行った。
次に、溶体化処理後の焼結体を720℃で3時間保持した後に室温まで徐冷し、さらに840℃で20時間保持した。このような条件下で時効処理を行った焼結体を400℃まで徐冷し、さらに室温まで炉冷することによって、目的とする焼結磁石を得た。焼結磁石の組成は表1に示す通りである。磁石の組成分析は、誘導結合発光プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法により実施した。また、前述した方法にしたがって、焼結磁石(焼結体)中のR−Mリッチ相の体積分率と焼結磁石(焼結体)の平均結晶粒径とを求めた。焼結磁石の磁気特性をBHトレーサで評価して保磁力と残留磁化を測定した。さらに、焼結磁石(焼結体)の抗折強度を以下に示す方法にしたがって測定した。これらの測定結果を表3に示す。
ICP法による組成分析は、以下の手順により行った。まず、記述の測定箇所から採取した試料を乳鉢で粉砕し、この粉砕試料を一定量はかり取り、石英製ビーカに入れる。混酸(硝酸と塩酸を含む)を入れ、ホットプレート上で140℃程度に加熱し、試料を完全に溶解させる。放冷した後、PFA製メスフラスコに移して定容し、試料溶液とする。このような試料溶液に対して、ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により含有成分の定量を行う。ICP発光分光分析装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製のSPS4000(商品名)を用いた。
焼結体の機械的強度は、3点曲げ試験機を用いて抗折強度σb3を測定することにより評価した。測定試料はJIS規格に準拠し、幅4.0mm×厚さ3.0mm×長さ47mmの棒状試験片を、時効処理を施した焼結体試料から切り出して作製する。棒状試料は極力同一ブロックから5本を切り出す。切り出すことが困難な場合、同条件で作製した焼結体から切り出して5本用意する。試料表面は#400程度のサンドペーパで研磨し、明確な傷がみられない状態にする。支点間距離は40mm、荷重印加速度は0.5mm/分とする。試験は室温で行う。測定には、例えば3点曲げ試験機・Rin−MIC1−07(松沢社製)を使用する。5本の試料の測定値の平均値を抗折強度σb3とする。
(実施例3〜5)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中でアーク溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを1180℃×4時間の条件で熱処理した後に粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。ジェットミルによる粉砕条件を調整することによって、表2に示す粒度分布を有する合金粉末を得た。合金粉末を磁界中でプレス成型して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼成炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内の真空度が9.5×10-3Paとなるまで真空排気した。この状態でチャンバ内の温度を1160℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気としたチャンバ内の温度を1185℃まで昇温し、その温度で3時間保持して焼結を行い、引き続いて1140℃で12時間保持して溶体化処理を行った。
次に、溶体化処理後の焼結体を750℃で2時間保持した後に室温まで徐冷し、さらに805℃で40時間保持した。このような条件下で時効処理を行った焼結体を400℃まで徐冷し、さらに室温まで炉冷することによって、目的とする焼結磁石を得た。焼結磁石の組成は表1に示す通りである。焼結磁石中のR−Mリッチ相の体積分率、焼結磁石の平均結晶粒径、保磁力、残留磁化、抗折強度を、実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。
(実施例6〜8)
各原料を表1に示す組成となるように秤量した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを1160℃×8時間の条件で熱処理した後に粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。ジェットミルによる粉砕条件を調整することで、表2に示す粒度分布を有する合金粉末を得た。合金粉末を磁界中でプレス成型して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼成炉のチャンバ内に配置し、Arガス雰囲気中にて1195℃まで昇温し、その温度で3時間保持して焼結を行い、引き続いて1150℃で12時間保持して溶体化処理を行った。
次に、溶体化処理後の焼結体を690℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、さらに850℃で20時間保持した。このような条件下で時効処理を行った焼結体を350℃まで徐冷し、さらに室温まで炉冷することによって、目的とする焼結磁石を得た。焼結磁石の組成は表1に示す通りである。焼結磁石中のR−Mリッチ相の体積分率、焼結磁石の平均結晶粒径、保磁力、残留磁化、抗折強度を、実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。
(比較例1〜2)
表1に示す組成を適用する以外は、実施例1と同様にして焼結磁石を作製した。比較例1は合金組成中のFe濃度を25原子%未満としたものであり、比較例2は合金組成中のSm濃度を10原子%未満としたものである。焼結磁石中のR−Mリッチ相の体積分率、焼結磁石の平均結晶粒径、保磁力、残留磁化、抗折強度を、実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。
(比較例3〜4)
実施例6と同組成となるように各原料を秤量した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットを1160℃×8時間の条件で熱処理した後に粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕して合金粉末を調製した。ジェットミルによる粉砕条件を調整することで、表2に示す粒度分布を有する合金粉末を得た。比較例3は粒径が7〜15μmの粒子を含まない合金粉末を用いており、比較例4は7〜15μmの粒子の量が多い合金粉末を用いている。このような合金粉末を用いる以外は、実施例6と同様にして焼結磁石を作製した。焼結磁石中のR−Mリッチ相の体積分率、焼結磁石の平均結晶粒径、保磁力、残留磁化、抗折強度を、実施例1と同様にして測定した。これらの測定結果を表3に示す。
Figure 2017139454
Figure 2017139454
Figure 2017139454
表3から明らかなように、実施例1〜8の焼結磁石はいずれも高磁化と高保磁力を有し、さらに抗折強度の値も大きいことが分かる。実施例1〜8によれば、磁気特性と機械特性に優れ、実用性が高い焼結磁石を提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
11…永久磁石モータ、12…ステータ、13…ロータ、14…鉄心、15…永久磁石、21…可変磁束モータ、22…ステータ、23…ロータ、24…鉄心、25…固定磁石、26…可変磁石、31…可変磁束発電機、32…ステータ、33…ロータ、34…タービン、35…シャフト、36…ブラシ。

Claims (9)

  1. 組成式:RpFeqrCusCo100-p-q-r-s
    (式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素であって、元素Rの50原子%以上がSmであり、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素であり、p、q、rおよびsはそれぞれ原子%で、10≦p≦13.3、25≦q≦40、0.87≦r≦5.4、3.5≦s≦13.5を満足する数である)
    で表される組成を有する焼結体を具備する永久磁石であって、
    前記焼結体は、Th2Zn17型結晶相を含む主相と、前記主相中のR濃度の1.2倍以上の元素Rと前記主相中のM濃度の1.2倍以上の元素Mとを含むR−Mリッチ相とを有する金属組織を備え、
    前記焼結体を構成する結晶粒の平均結晶粒径が35μm以上200μm以下の範囲である、永久磁石。
  2. 請求項1に記載の永久磁石において、
    前記R−Mリッチ相は、前記焼結体の結晶粒界に存在する永久磁石。
  3. 請求項2に記載の永久磁石において、
    前記金属組織中の前記R−Mリッチ相の体積分率が0.2%以上15%以下の範囲である永久磁石。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の永久磁石において、
    前記主相は、前記Th2Zn17型結晶相を有するセル相と、前記セル相を取り囲むように存在するセル壁相とを備える永久磁石。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の永久磁石において、
    前記組成式における元素Mの50原子%以上がZrである永久磁石。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の永久磁石において、
    前記組成式におけるCoの20原子%以下が、Ni、V、Cr、Mn、Al、Ga、Nb、TaおよびWから選ばれる少なくとも1種の元素Aで置換されている永久磁石。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の永久磁石を具備するモータ。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の永久磁石を具備する発電機。
  9. 請求項7に記載のモータまたは請求項8に記載の発電機を具備する車。
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