JP2017133379A - 蒸気タービンおよび蒸気タービンにおける流路部の流路長の拡大幅の決定方法 - Google Patents
蒸気タービンおよび蒸気タービンにおける流路部の流路長の拡大幅の決定方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】作動流体のエネルギーの損失を低減する。【解決手段】第1タービン段落(6)と第2タービン段落(6)との間の軸方向の距離(A)が、第1タービン段落(6)の軸方向の全長(B)よりも小さい場合に、第2タービン段落(6)における流路部の周方向の長さである流路長(L’)が、第1タービン段落(6)における流路長(L)よりも大きく、かつ第1タービン段落(6)における流路長(L)に所定の長さを加えた値よりも小さくなっている。【選択図】図4
Description
本発明は、蒸気タービンおよび蒸気タービンの部分流入段における流路部の流路長の拡大幅の決定方法に関する。
蒸気タービンの入口側(高圧段側)は、作動流体である蒸気の密度が低い。このため、作動流体を同一速度で流そうとすると、蒸気タービンの入口側は、出口側(低圧段側)に比べて、作動流体が流れる流路の断面積が小さくなる。蒸気タービンの流路の断面積は、静翼の翼高さによって決まる。また、構造的に蒸気タービンの上部側からしか作動流体を供給できない場合や、翼高さが低いこと、に起因して作動流体のエネルギーの二次流れ損失が大きくなりすぎることを考慮する必要もある。このため、静翼段について、一部の領域を壁が存在する閉止部とし、残りの領域を作動流体が流入する流路が存在する流路部とすることで、作動流体が流れる流路の断面積を小さくした部分流入段を設ける手法が一般的に適用されている。
また、蒸気タービンは、低圧段側に向かうにつれて、作動流体が膨張して、作動流体の密度が下がるため、作動流体が流れる流路の断面積はそれに応じて拡大していく。部分流入段の場合は閉止部の壁面部分の面積が低圧段側に向かうにつれて減少し、あるところで全周流入になる。
以上のような部分流入段における作動流体のエネルギーの損失評価について開示した文献として非特許文献1および2がある。非特許文献1では、部分流入段のフランジの厚さや形状が非定常流動場へ与える影響を、CFD(数値流体力学)解析を行って評価している。一方、非特許文献2では、部分流入段の3次元モデルに対してCFD解析を行って部分流入段の翼間流路の流れなどを評価している。
高田真司他3名、「蒸気タービン部分流入段非定常流動解析によるフランジ形状の考察」、日本機械学会論文集(B編)78巻788号(2012−4)、2012年
阪井直人、「蒸気タービン部分流入段の流速分布と段落効率に関する研究」、ターボ機械第38巻第4号、2010年4月
しかしながら、上述した非特許文献1および2の他、従来技術には、部分流入段における流路部の長さである流路長の拡大率が、作動流体のエネルギーの損失にどのように影響しているのかについて具体的に評価しているものが全く存在していないという問題点がある。
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作動流体のエネルギーの損失を低減することのできる蒸気タービンなどを実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る蒸気タービンは、静翼段と動翼段とを備えているタービン段落を少なくとも2つ備えている蒸気タービンであって、前記静翼段は、複数の静翼が周方向に並べて配置されている流路部と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部と、を有するものであり、前記動翼段は、前記流路部において互いに隣接する前記静翼の間を流出した前記作動流体を受けて回転する動翼が、周方向に複数並べて配置されているものであり、少なくとも2つのタービン段落について、前段のタービン段落を第1タービン段落、後段のタービン段落を第2タービン段落とする場合、前記第1タービン段落と前記第2タービン段落との間の軸方向の距離が、前記第1タービン段落の軸方向の全長よりも小さい場合に、前記第2タービン段落における前記流路部の周方向の長さである流路長が、前記第1タービン段落における前記流路長よりも大きく、かつ前記第1タービン段落における前記流路長に所定の長さを加えた値よりも小さくなっていることを特徴としている。
第1タービン段落と第2タービン段落との間の軸方向の距離が、第1タービン段落の軸方向の全長よりも小さい場合に、流路部の流路長について急激な拡大を行うと、一部作動流体が流れない領域(作動流体の流れが停滞する領域)が発生することが判明している。前記領域では、作動流体の流れが停滞しているため、作動流体のエネルギーの損失の原因となる。また、動翼段における前記領域付近では動翼が仕事をせずに回転(運動)しているために、作動流体が撹拌される(作動流体の流れがかき乱される)ことによって作動流体のエネルギーに損失が生じる。
そこで、前記構成では、第1タービン段落に対する第2タービン段落の流路部の流路長の拡大幅があまり大きくなり過ぎないように、第2タービン段落における流路部の流路長を、第1タービン段落における流路長よりも大きく、かつ第1タービン段落における流路長に所定の長さを加えた値よりも小さくしている。このため、前記構成によれば、前記所定の長さの値を適切に設定することにより、作動流体のエネルギーの損失を低減させることができる。
また、本発明の態様2に係る蒸気タービンは、前記所定の長さが、前記第2タービン段落の前記静翼段において周方向に互いに隣接する静翼同士の配置間隔の2倍に等しいことが好ましい。CFD解析によれば、所定の長さが第2タービン段落の静翼段において周方向に互いに隣接する静翼同士の配置間隔の2倍に等しいとき、作動流体のエネルギーの損失をほぼ最大限小さくできることが判明している。よって、前記構成によれば、作動流体のエネルギーの損失をほぼ最大限小さくすることができる。
また、上記の課題を解決するために、本発明の態様3に係る蒸気タービンにおける流路部の流路長の拡大幅の決定方法は、静翼段と動翼段とを備えているタービン段落を少なくとも2つ備えている蒸気タービンであって、前記静翼段は、複数の静翼が周方向に並べて配置されている流路部と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部と、を有するものであり、前記動翼段は、前記流路部において互いに隣接する前記静翼の間を流出した前記作動流体を受けて回転する動翼が、周方向に複数並べて配置されているものである蒸気タービン、における前記流路部の周方向の長さである流路長の拡大幅の決定方法であって、少なくとも2つのタービン段落について、前段のタービン段落を第1タービン段落、後段のタービン段落を第2タービン段落とする場合、前記第1タービン段落と前記第2タービン段落との間の軸方向の距離が、前記第1タービン段落の軸方向の全長よりも小さい場合に、前記第2タービン段落における前記流路長を、前記第1タービン段落における前記流路長よりも大きく、かつ前記第1タービン段落における前記流路長に所定の長さを加えた値よりも小さくすることを特徴としている。前記方法によれば、前記態様1と同様の効果を得ることができる。
本発明は、作動流体のエネルギーの損失を低減することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態について図1〜図10に基づいて説明すれば、次の通りである。以下、説明の便宜上、特定の項目にて説明した構成と同一の機能を有する構成については、同一の符号を付記し、その説明を省略する場合がある。
〔蒸気タービンの概略構成〕
まず、本発明の実施の一形態に係る蒸気タービン1の概略構成について説明する。図1は、蒸気タービン1の概略構成を示す(子午)断面図である。なお、本実施形態では、蒸気タービン1が軸流タービンである場合について説明するが、蒸気タービン1の種類は、これに限定されない。
まず、本発明の実施の一形態に係る蒸気タービン1の概略構成について説明する。図1は、蒸気タービン1の概略構成を示す(子午)断面図である。なお、本実施形態では、蒸気タービン1が軸流タービンである場合について説明するが、蒸気タービン1の種類は、これに限定されない。
同図に示すように、蒸気タービン1は、中空のケーシング2と、ケーシング2の内部に設けられた車軸3と、ケーシング2の内壁面に固定された静翼段4と、車軸3の周囲に固定された動翼段5と、とを備えている。静翼段4と動翼段5とは車軸3の軸方向Zに隣り合うように配置されており、隣り合う静翼段4と動翼段5とによりタービン段落6が構成されている。タービン段落6は、ケーシング2内において作動流体である蒸気の流れ方向上流側の高圧部21と、作動流体流れ方向下流側の低圧部22との間の作動流体流路に設けられている。軸流タービンが多段薄型タービンである場合には、複数段のタービン段落6が軸方向Zに繰り返されて設けられる。なお、本実施形態では、タービン段落6が5段設けられている場合について説明するが、タービン段落6の段数はこれに限定されない。
上記構成の蒸気タービン1において、高圧高温の作動流体が高圧部21から低圧部22に向かって膨張するときに作動流体の持つ熱と圧力のエネルギーが作動流体の速度へと変換され、さらに静翼段4と動翼段5とから構成されるタービン段落6により車軸3の回転運動に変換される。
〔タービン段落6の構造の詳細〕
次に、蒸気タービン1のタービン段落6の構造について詳細に説明する。図2の(a)は、径方向rから見た蒸気タービン1のタービン段落6の静翼段4および動翼段5の一部分を示す図である。同図に示されるタービン段落6は、作動流体の部分流入が行われる部分流入段となっている。すなわち、静翼段4の全周は、作動流体が流入する領域であり、流路が存在する流路部40と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部44とに分かれている。
次に、蒸気タービン1のタービン段落6の構造について詳細に説明する。図2の(a)は、径方向rから見た蒸気タービン1のタービン段落6の静翼段4および動翼段5の一部分を示す図である。同図に示されるタービン段落6は、作動流体の部分流入が行われる部分流入段となっている。すなわち、静翼段4の全周は、作動流体が流入する領域であり、流路が存在する流路部40と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部44とに分かれている。
流路部40には、複数の静翼(ノズル翼)41が周方向θに並べて配置されている。各静翼41はケーシング2の内壁面に直接的または間接的に固定されている。閉止部44には、静翼41が配置されていない。各静翼41間と、静翼41と閉止部44の間とには、それぞれノズル42が形成されている。ノズル42のノズル出口43は動翼段5に向けて開口しており、ノズル出口43から動翼段5へ向けて作動流体が噴出する。
動翼段5は、車軸3の周囲に植設された複数の動翼(ブレード翼)51から構成されている。周方向θに隣り合う動翼51は、所定の動翼ピッチPtだけ周方向θへ離間している。動翼51は、ノズル出口43から動翼段5へ向けて噴き出した作動流体から作用する力により動翼回転方向に回転する。
〔部分流入段における流路部の流路長の急拡大の問題点について〕
次に、図2の(b)に基づき、タービン段落6(部分流入段)における流路部40の流路長の急拡大の問題点について説明する。タービン段落6における流路部40の長さである流路長の拡大率は、設計によって任意の値に設定することができる。しかしながら、図2の(b)に示すように、互いに隣接するタービン段落間(一段目のタービン段落6と二段目のタービン段落6との間)の軸方向Zの距離(拡大前後のタービン段落6間の軸方向Zの距離)が一段目のタービン段落6の軸方向Zの全長よりも小さい場合に、流路部40の流路長について急激な拡大を行うと、同図の実線の四角で囲まれた部分に示すように、一部作動流体が流れない領域(作動流体の流れが停滞する領域)が発生する。前記領域では、作動流体の流れが停滞しているため、作動流体のエネルギーの損失の原因となる。なお、同図の黒色が濃い部分は、作動流体の流れが生じていない(作動流体が停滞している)箇所を示している。また、同図の黒色が薄い(白みがかっている)部分は、作動流体に対して仕事が為されている箇所を示している。
次に、図2の(b)に基づき、タービン段落6(部分流入段)における流路部40の流路長の急拡大の問題点について説明する。タービン段落6における流路部40の長さである流路長の拡大率は、設計によって任意の値に設定することができる。しかしながら、図2の(b)に示すように、互いに隣接するタービン段落間(一段目のタービン段落6と二段目のタービン段落6との間)の軸方向Zの距離(拡大前後のタービン段落6間の軸方向Zの距離)が一段目のタービン段落6の軸方向Zの全長よりも小さい場合に、流路部40の流路長について急激な拡大を行うと、同図の実線の四角で囲まれた部分に示すように、一部作動流体が流れない領域(作動流体の流れが停滞する領域)が発生する。前記領域では、作動流体の流れが停滞しているため、作動流体のエネルギーの損失の原因となる。なお、同図の黒色が濃い部分は、作動流体の流れが生じていない(作動流体が停滞している)箇所を示している。また、同図の黒色が薄い(白みがかっている)部分は、作動流体に対して仕事が為されている箇所を示している。
また、同図の実線の楕円で囲まれた領域では動翼51が仕事をせずに回転(運動)しているために、作動流体が撹拌される(作動流体の流れがかき乱される)ことによって作動流体のエネルギーに損失が生じる。このため、タービン段落6における流路部40の流路長の急拡大を行うと、設計で想定していた流量で作動流体が流れず、タービン段落6で得られる仕事量が設計とずれるため、想定していた出力が得られない可能性がある。
以上が、部分流入段における流路部の流路長の急拡大の問題点であり、この問題点は、本発明者が本願の出願時点において初めて見出した問題点である。
〔部分流入段におけるCFD解析の結果について〕
次に、拡大前後のタービン段落6間の軸方向Zの距離が小さい部分流入段について、流路部40の流路長の拡大率を大きくした場合のCFD解析の結果(マッハ数分布)を図3の(a)に示す。同図に示す黒色が薄い(白みがかっている)部分は、作動流体が停滞しておらず、作動流体に対して仕事が為されている箇所を示している。一方、黒色が濃い部分は、作動流体が停滞し、作動流体に対して仕事が為されていない箇所を示している。すなわち、同図の四角で囲まれた領域においては、作動流体に流れは生じておらず、この部分の流路は無駄になっている。次に、図3の(b)に部分流入段におけるエントロピー分布の解析結果を示す。同図に示す黒色が薄い(白みがかっている)部分は、エントロピーが高い領域を示しており、黒色が濃い部分は、エントロピーが低い領域を示している。同図から、マッハ数が小さく流れが生じていない実線の四角で囲まれた部分ではエントロピーが増加(攪拌作用により損失が拡大)していることが分かる。したがって、これらの領域を減らすことによって、損失を低減させることができることが分かる。
次に、拡大前後のタービン段落6間の軸方向Zの距離が小さい部分流入段について、流路部40の流路長の拡大率を大きくした場合のCFD解析の結果(マッハ数分布)を図3の(a)に示す。同図に示す黒色が薄い(白みがかっている)部分は、作動流体が停滞しておらず、作動流体に対して仕事が為されている箇所を示している。一方、黒色が濃い部分は、作動流体が停滞し、作動流体に対して仕事が為されていない箇所を示している。すなわち、同図の四角で囲まれた領域においては、作動流体に流れは生じておらず、この部分の流路は無駄になっている。次に、図3の(b)に部分流入段におけるエントロピー分布の解析結果を示す。同図に示す黒色が薄い(白みがかっている)部分は、エントロピーが高い領域を示しており、黒色が濃い部分は、エントロピーが低い領域を示している。同図から、マッハ数が小さく流れが生じていない実線の四角で囲まれた部分ではエントロピーが増加(攪拌作用により損失が拡大)していることが分かる。したがって、これらの領域を減らすことによって、損失を低減させることができることが分かる。
なお、図3の(a)に示す図では、マッハ数が高くなる程、白みが濃くなり、逆にマッハ数が低くなる程、黒みが濃くなる。一方、図3の(b)に示す図では、エントロピーが高くなる程、白みが濃くなり、逆にエントロピーが低くなる程、黒みが濃くなる。そして、このような白黒の濃淡の関係については、図3に限られず、図5、図6、図7、図8、図9、図10においても同様である。
〔蒸気タービン1の特徴部分の構造〕
次に、図4に基づき、本発明の実施の一形態に係る蒸気タービン1の特徴部分の構造について説明する。図4の(a)は、蒸気タービン1に関し、前段(拡大前)と後段(拡大後)との各タービン段落6(部分流入段)における全周の概略構成を示す斜視図である。また、図4の(b)は、タービン段落6における流路部の流路長の拡大幅の設定方法について説明するための図である。
次に、図4に基づき、本発明の実施の一形態に係る蒸気タービン1の特徴部分の構造について説明する。図4の(a)は、蒸気タービン1に関し、前段(拡大前)と後段(拡大後)との各タービン段落6(部分流入段)における全周の概略構成を示す斜視図である。また、図4の(b)は、タービン段落6における流路部の流路長の拡大幅の設定方法について説明するための図である。
図4の(a)に示す前段(拡大前)のタービン段落6(紙面に対して左側のタービン段落6)を第1タービン段落6とし、後段(拡大後)のタービン段落6(紙面に対して右側のタービン段落6)を第2タービン段落6とする。
このとき、図4の(b)に示すように、第1タービン段落6と第2タービン段落6との間の軸方向の距離Aが、第1タービン段落6の軸方向の全長Bよりも小さい場合に、第2タービン段落6における流路部40の周方向の長さである流路長L’を、第1タービン段落6における流路長Lよりも大きく、かつ第1タービン段落6における流路長Lに所定の長さ(Δ)を加えた値よりも小さくする(L’<L+Δ)。
ここで、上記距離Aは、より厳密には、拡大前の段(第1タービン段落6)の動翼51の軸方向の後端から、拡大後の段(第2タービン段落6)の静翼41の軸方向の前端までの距離と定義することができる。また、上記全長Bは、より厳密には、拡大前の段(第1タービン段落6)の静翼41の軸方向の前端から、拡大前の段(第1タービン段落6)の動翼51の軸方向の後端までの距離と定義することができる。
上述したように、距離Aが全長Bよりも小さい場合に、流路部40の流路長について急激な拡大を行うと、一部作動流体が流れない領域(作動流体の流れが停滞する領域)が発生する。前記領域では、作動流体の流れが停滞しているため、作動流体のエネルギーの損失の原因となる。また、動翼段5における前記領域付近では動翼51が仕事をせずに回転(運動)しているために、作動流体が撹拌される(作動流体の流れがかき乱される)ことによって作動流体のエネルギーに損失が生じる。
そこで、前記構成では、第1タービン段落6に対する第2タービン段落6の流路部40の流路長の拡大幅(または拡大率)があまり大きくなり過ぎないように、第2タービン段落6における流路部40の流路長L’を、第1タービン段落6における流路長Lよりも大きく、かつ第1タービン段落6における流路長Lに所定の長さ(Δ)を加えた値よりも小さくしている。このため、前記構成によれば、所定の長さΔの値を適切に設定することにより、作動流体のエネルギーの損失を低減させることができる。
また、所定の長さΔは、第2タービン段落6の静翼段4において周方向に互いに隣接する静翼41同士の配置間隔(2段目のノズルの1ピッチ分)の2倍に等しいことが好ましい。
後述するCFD解析によれば、所定の長さΔが2段目のノズルの1ピッチ分の2倍に等しいとき、作動流体のエネルギーの損失をほぼ最大限小さくできる。よって、前記構成によれば、所定の長さΔ≒(2段目のノズルの1ピッチ分)×2とすることにより、作動流体のエネルギーの損失をほぼ最大限小さくすることができる。
〔蒸気タービン1の効果〕
上述したように、部分流入段において、流路部の流路長の拡大率が大きすぎることによって生じるマッハ数が小さく流れが生じていない領域を縮小(制限)することによって、作動流体のエネルギーの損失を低減することが可能になる。また、以上のように、部分流入段において、流路部の流路長の拡大幅に制限を設けることによって、動翼51で仕事する領域が減少することによって生じる、設計で想定した出力と、実機で計測される出力値が異なるという問題を回避することができる。
上述したように、部分流入段において、流路部の流路長の拡大率が大きすぎることによって生じるマッハ数が小さく流れが生じていない領域を縮小(制限)することによって、作動流体のエネルギーの損失を低減することが可能になる。また、以上のように、部分流入段において、流路部の流路長の拡大幅に制限を設けることによって、動翼51で仕事する領域が減少することによって生じる、設計で想定した出力と、実機で計測される出力値が異なるという問題を回避することができる。
〔部分流入段におけるCFD解析の結果について〕
次に、前段(拡大前)のタービン段落6における流路部40の流路長(ノズルレンジ)を変化させたときの各部分流入段の全周の一部分を切り出したモデルにおけるCFD解析(2次元解析)の結果を示す。以下で説明するモデル0(1)、0(2)およびモデル1は、それぞれ、ノズルレンジを変化させた各部分流入段の全周の一部分を切り出したものを示している。なお、モデル0(1)は、部分流入段の全周の一部分を切り出したものを示し、モデル0(2)は、部分流入段のモデル0(1)と異なる部分を切り出したものを示している。
次に、前段(拡大前)のタービン段落6における流路部40の流路長(ノズルレンジ)を変化させたときの各部分流入段の全周の一部分を切り出したモデルにおけるCFD解析(2次元解析)の結果を示す。以下で説明するモデル0(1)、0(2)およびモデル1は、それぞれ、ノズルレンジを変化させた各部分流入段の全周の一部分を切り出したものを示している。なお、モデル0(1)は、部分流入段の全周の一部分を切り出したものを示し、モデル0(2)は、部分流入段のモデル0(1)と異なる部分を切り出したものを示している。
図5の(a)および(b)は、それぞれ上述したモデル0(1)およびモデル0(2)における2段目のノズルを全て流路とした場合の解析結果のエントロピー分布を示している。モデル0(1)およびモデル0(2)には、それぞれ流れが生じていない領域が存在し、同領域で作動流体のエネルギー損失は大きくなっている。
次に、図6は、図5に示したモデル0における2段目ブレード入口の軸流速度分布〔図6の(a)〕と、2段目ブレード出口の軸流速度分布〔図6の(b)〕を示している。同図は、図5の(a)に示す位置aの部分について示したものである。図6の(a)に示すように、回転方向位置Thetaが大きい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが小さい領域は流れが存在している領域である。また、図6の(b)に示すように、回転方向位置Thetaが大きい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが小さい領域は流れが存在している領域である。図6の(a)に示すように、2段目ブレード入口では、1段目ノズルが壁になっている部分で軸流速度は小さくなっているのに対し、図6の(b)に示すように、2段目ブレード出口は、1段目ノズルが壁になっている部分で軸流速度が大きくなっている部分が存在し、流れの拡大がみられる部分が存在することが示されている。また、流れ拡大部分の幅は2段目ノズルの1ピッチ分とほぼ等しい。
次に、図7は、図5に示したモデル0における2段目ブレード入口の軸流速度分布〔図7の(a)〕と、2段目ブレード出口の軸流速度分布〔図7の(b)〕を示している。同図は、図5の(b)に示す位置bの部分について示したものである。図7の(a)に示すように、回転方向位置Thetaが小さい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが大きい領域は流れが存在している領域である。また、図7の(b)に示すように、回転方向位置Thetaが小さい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが大きい領域は流れが存在している領域である。図7の(a)に示すように、2段目ブレード入口で、1段目ノズルが壁になっている部分で軸流速度は小さくなっているのが、図6に比べると、2段目ブレード入口において壁側で軸流速度が大きくなっている部分が存在し、流れが拡大していることが確認される。図7の(b)に示すように、2段目ブレード出口においても図7の(a)と同様の部分で速度が大きくなっており、流れの拡大がみられる部分が存在することが示されている。また、流れ拡大部分の幅は2段目のノズルの2ピッチ分とほぼ等しい。
以上の結果から、1段目から2段目の流れの拡大は2段目ノズル3ピッチ分であり、それを除いた領域では軸流速度が小さく、流れが生じていない。よって、その部分ではブレードによる仕事は行われず、損失が発生する原因となる。また、3ピッチ分のうち1ピッチ分は速度が非常に小さい領域であり、これらの領域は損失を発生される要因が強いと考えられるため、流路拡大幅は1ピッチ分が好ましい。
次に、上述のモデルにおいて、ノズル1段目の流路幅および壁面領域幅が変化した場合でも同様の流路拡大が生じるかを確認するために、図8にノズル1段目の流路幅および壁面幅が異なるモデル1の場合における解析結果のエントロピー分布を示している。図5と同様に、流れが生じていない領域が存在し、同領域でエントロピーの増大が見られ、損失が生じていることが確認された。
次に、図9は、図8に示したモデル1における2段ブレード入口の軸流速度分布〔図9の(a)〕と、2段ブレード出口の軸流速度分布〔図9の(b)〕を示している。図9は、図8に示す位置aの部分について示したものである。図9の(a)に示すように、回転方向位置Thetaが大きい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが小さい領域は流れが存在している領域である。また、図9の(b)に示すように、回転方向位置Thetaが大きい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが小さい領域は流れが存在している領域である。図9の(a)に示すように、2段目ブレード入口では、1段目ノズルが壁になっている部分で軸流速度は小さくなっているのに対し、図9の(b)に示すように、2段目ブレード出口は1段目ノズルが壁になっている部分で軸流速度が大きくなっている部分が存在し、流れの拡大がみられる部分が存在することが示されている。また、流れ拡大部分の幅は図6と同様、2段目ノズルの1ピッチ分とほぼ等しい。
次に、図10は、図8に示したモデル1における2段目ブレード入口の軸流速度分布〔図10の(a)〕と、2段目ブレード出口の軸流速度分布〔図10の(b)〕を示している。同図は、図8に示す位置bの部分について示したものである。図10の(a)に示すように、回転方向位置Thetaが小さい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。また、Thetaが大きい領域は流れが存在している領域である。また、図10の(b)に示すように、回転方向位置Thetaが小さい領域に軸流速度が小さい領域があり、この部分は流れが生じていない領域にあたり、前段のノズルの流路が壁になっている領域である。
また、Thetaが大きい領域は流れが存在している領域である。図10の(a)に示すように、図7と同様、ブレード入口において壁側で軸流速度が大きくなっている部分が存在し、流れが拡大していることが確認される。図10の(b)に示すように、ブレード出口においても図10の(a)と同様の部分で速度が大きくなっており、流れの拡大がみられる部分が存在することが示されている。また、流れ拡大部分の幅は図7と同様、2段目のノズルの2ピッチ分とほぼ等しい。
以上の結果から、図5で示したモデル0(1)およびモデル0(2)と、図8で示したモデル1とで、流路拡大部について、軸流速度分布は同様の傾向を示すことが確認された。よって、1段目ノズルの流路幅が変わったとしても、流路拡大幅は一定である。
以上のことから、1段目の流路幅に関係なく、流路拡大幅は、およそ2ピッチであり、その他の流路については仕事を行わない領域であり、かつ損失の原因となっていることが示された。よって、好ましい流路拡大率は、次式のように定義することができる。
流路拡大率=〔前段流路長さ+(2段目ノズル1ピッチ分流路長さ)×2〕/(前段流路長さ)
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
1 蒸気タービン
4 静翼段
5 動翼段
6 タービン段落
40 流路部
41 静翼
44 閉止部
51 動翼
4 静翼段
5 動翼段
6 タービン段落
40 流路部
41 静翼
44 閉止部
51 動翼
Claims (3)
- 静翼段と動翼段とを備えているタービン段落を少なくとも2つ備えている蒸気タービンであって、
前記静翼段は、複数の静翼が周方向に並べて配置されている流路部と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部と、を有するものであり、
前記動翼段は、前記流路部において互いに隣接する前記静翼の間を流出した前記作動流体を受けて回転する動翼が、周方向に複数並べて配置されているものであり、
少なくとも2つのタービン段落について、前段のタービン段落を第1タービン段落、後段のタービン段落を第2タービン段落とする場合、
前記第1タービン段落と前記第2タービン段落との間の軸方向の距離が、前記第1タービン段落の軸方向の全長よりも小さい場合に、
前記第2タービン段落における前記流路部の周方向の長さである流路長が、前記第1タービン段落における前記流路長よりも大きく、かつ前記第1タービン段落における前記流路長に所定の長さを加えた値よりも小さくなっていることを特徴とする蒸気タービン。 - 前記所定の長さは、前記第2タービン段落の前記静翼段において周方向に互いに隣接する静翼同士の配置間隔の2倍に等しいことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
- 静翼段と動翼段とを備えているタービン段落を少なくとも2つ備えている蒸気タービンであって、前記静翼段は、複数の静翼が周方向に並べて配置されている流路部と、作動流体の流入が阻止される壁で構成された閉止部と、を有するものであり、前記動翼段は、前記流路部において互いに隣接する前記静翼の間を流出した前記作動流体を受けて回転する動翼が、周方向に複数並べて配置されているものである蒸気タービン、における前記流路部の周方向の長さである流路長の拡大幅の決定方法であって、
少なくとも2つのタービン段落について、前段のタービン段落を第1タービン段落、後段のタービン段落を第2タービン段落とする場合、
前記第1タービン段落と前記第2タービン段落との間の軸方向の距離が、前記第1タービン段落の軸方向の全長よりも小さい場合に、
前記第2タービン段落における前記流路長を、前記第1タービン段落における前記流路長よりも大きく、かつ前記第1タービン段落における前記流路長に所定の長さを加えた値よりも小さくすることを特徴とする流路長の拡大幅の決定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016011877A JP2017133379A (ja) | 2016-01-25 | 2016-01-25 | 蒸気タービンおよび蒸気タービンにおける流路部の流路長の拡大幅の決定方法 |
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JP (1) | JP2017133379A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021021371A (ja) * | 2019-07-29 | 2021-02-18 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社 | 軸流タービン |
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-
2016
- 2016-01-25 JP JP2016011877A patent/JP2017133379A/ja active Pending
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