JP2017127215A - おう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法 - Google Patents
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Abstract
Description
おう吐時に空間に浮遊した浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の経時変化データを取得し、この浮遊ウイルス濃度Cの経時変化データに基づき、ウイルス汚染空間での滞在時間t(min)と、単位時間当たりの人の空気取込み量A(m3/min)と、空中から鼻口への移行率ηとに基づいて、下式(1)により人体へのウイルス取込み量I(pfu)を求め、これを指標値として感染リスクを評価することを特徴とするおう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法が提供される。
1.1 模擬吐しゃ実験室の配置
嘔吐時のウイルス拡散状況を再現するため、BSL2レベルの実験環境(5m×4m×3mH)を確保し模擬吐物(phage Qβ含)を用いて評価を行った。実験室の床・壁を全面養生後、吐しゃ中心位置から同心円状にラインを引き、ウイルス回収器材を設置した。実験要領のシャーレ、プラ板及びサンプラ(ウイルスの捕集器)の平面配置状態を図7に示す。実験前に温湿度を調整し、HEPAにて清浄化を図った。実験時環境は24±2℃、30±10%RH(空調停止)であった。
1.2 模擬吐物の調整と評価法
レトルト御飯200g(加熱調理済)と蒸留水800mL(室温)を滅菌済みの袋に入れ約30回手で揉み混ぜ、適量のフェノールレッドを加え着色した。さらに、1.7×1011(pfu/mL)濃度のphage Qβを1mL加え攪拌し模擬吐物とし、100mLビーカー10個に等分後、高さ1.6mから落下させた。ウイルス回収器材には滅菌シャーレおよび滅菌プラ板(100×100mm)を用いた。吐しゃ後、距離毎に設置した器材を回収し、1器材当たり5mLの0.1%ペプトン加生理食塩水で洗い出しPhage Qβを回収し、50mL(器材10枚分)を定量用試料の原液とした。原液1mLを大腸菌(E.coli)と混ぜ、寒天培地に重層し培養した。空中に浮遊したウイルスの捕集には、MD-8エアサンプラ(ザルトリウス, 吸引量500L)を用いた。ウイルスを捕足したゼラチンフィルタを20mLの0.1%ペプトン加生理食塩水に溶解し、このうち1mLをプラーク法にて定量した。
2.1 ウイルスの床表面への飛散量
高さ1.6mから落下させた模擬吐物は、落下点から同心円状に飛散した。目視できる最長飛散距離は3.5mであった。回収器材を用いたウイルス回収法で確認したところ、最長5m地点(回収器材の最長地点)からウイルスが検出された。吐物中心からの距離と床面積100cm2当たりのウイルス量の関係を図8(実験1回目、2回目)に示す。また、回収器材(シャーレとプラ板)の違いによる差について図9に示す。
2.2 ウイルスの空間中への飛散量
吐しゃ終了時点からの経過時間と空中浮遊ウイルス量の変化を確認した。2回の実験の結果、1回目は11分経過後の濃度1200(pfu/m3)から徐々に浮遊ウイルス濃度が低下し、60分後に120(pfu/m3)、2回目は13分経過後の560(pfu/m3)から減少し60分後には、120(pfu/m3)となった(図10)。どちらの場合にも、浮遊ウイルス濃度は指数関数的に減少する傾向が確認され、吐しゃ後1時間経過した時点においても空間中に比較的高い濃度でウイルスが浮遊していることが確認された。
[試算1]
人の単位時間呼吸量 A=0.010m3/min、空気中から鼻口への移行率η=1、浮遊ウイルス濃度の変化式(実験の1回目から求めた近似式)f(t)=2793.3×exp(−0.051×t)とする。ここで、滞在開始時刻t1=0, 滞在終了時刻t2=10とすると、[数6]による計算式から、吐しゃ直後から10分間滞在した場合には、約219(pfu)のウイルスを体内に取り込む可能性がある。
吐しゃ後60分経過後から10分間(吐しゃ後70分まで)滞在した場合には、[数8]による計算式から、10〜11(pfu)のウイルスを体内に取り込む可能性がある。
(1)上記形態例では、浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の経時変化データの近似式は、曲線の指数関数式を近似式とした場合を示したが、近似式における該当区間が直線的で、短時間であれば、滞在開始時刻と滞在終了時刻の間の浮遊ウイルス濃度は直線的に減少すると仮定できる。その場合、滞在開始時刻と滞在終了時刻の浮遊ウイルス濃度を単純平均し、浮遊ウイルス濃度として取り扱うことが可能である。
模擬吐しゃ実験に基づいて、縦軸を浮遊ウイルス濃度C(pfu/m 3 )とし、横軸を吐しゃ後の経過時間とした、吐しゃ後の時刻(t)における浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の近似式f(t)を予め取得しておき、
前記浮遊ウイルス濃度Cの近似式f(t)に基づき、ウイルス汚染空間での滞在開始時刻t1(min)から滞在終了時刻t2(min)までの浮遊ウイルス濃度の累積量と、単位時間当たりの人の空気取込み量A(m3/min)と、空中から鼻口への移行率ηとに基づいて、下式(5)により人体へのウイルス取込み量I(pfu)を求め、これを指標値として感染リスクを評価することを特徴とするおう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法が提供される。
1.1 模擬吐しゃ実験室の配置
嘔吐時のウイルス拡散状況を再現するため、BSL2レベルの実験環境(5m×4m×3mH)を確保し模擬吐物(phage Qβ含)を用いて評価を行った。実験室の床・壁を全面養生後、吐しゃ中心位置から同心円状にラインを引き、ウイルス回収器材を設置した。実験要領のシャーレ、プラ板及びサンプラ(ウイルスの捕集器)の平面配置状態を図7に示す。実験前に温湿度を調整し、HEPAにて清浄化を図った。実験時環境は24±2℃、30±10%RH(空調停止)であった。
1.2 模擬吐物の調整と評価法
レトルト御飯200g(加熱調理済)と蒸留水800mL(室温)を滅菌済みの袋に入れ約30回手で揉み混ぜ、適量のフェノールレッドを加え着色した。さらに、1.7×1011(pfu/mL)濃度のphage Qβを1mL加え攪拌し模擬吐物とし、100mLビーカー10個に等分後、高さ1.6mから落下させた。ウイルス回収器材には滅菌シャーレおよび滅菌プラ板(100×100mm)を用いた。吐しゃ後、距離毎に設置した器材を回収し、1器材当たり5mLの0.1%ペプトン加生理食塩水で洗い出しPhage Qβを回収し、50mL(器材10枚分)を定量用試料の原液とした。原液1mLを大腸菌(E.coli)と混ぜ、寒天培地に重層し培養した。空中に浮遊したウイルスの捕集には、MD-8エアサンプラ(ザルトリウス, 吸引量500L)を用いた。ウイルスを捕足したゼラチンフィルタを20mLの0.1%ペプトン加生理食塩水に溶解し、このうち1mLをプラーク法にて定量した。
2.1 ウイルスの床表面への飛散量
高さ1.6mから落下させた模擬吐物は、落下点から同心円状に飛散した。目視できる最長飛散距離は3.5mであった。回収器材を用いたウイルス回収法で確認したところ、最長5m地点(回収器材の最長地点)からウイルスが検出された。吐物中心からの距離と床面積100cm2当たりのウイルス量の関係を図8(実験1回目、2回目)に示す。また、回収器材(シャーレとプラ板)の違いによる差について図9に示す。
2.2 ウイルスの空間中への飛散量
吐しゃ終了時点からの経過時間と空中浮遊ウイルス量の変化を確認した。2回の実験の結果、1回目は11分経過後の濃度1200(pfu/m3)から徐々に浮遊ウイルス濃度が低下し、60分後に120(pfu/m3)、2回目は13分経過後の560(pfu/m3)から減少し60分後には、120(pfu/m3)となった(図10)。どちらの場合にも、浮遊ウイルス濃度は指数関数的に減少する傾向が確認され、吐しゃ後1時間経過した時点においても空間中に比較的高い濃度でウイルスが浮遊していることが確認された。
[試算1]
人の単位時間呼吸量 A=0.010m3/min、空気中から鼻口への移行率η=1、浮遊ウイルス濃度の変化式(実験の1回目から求めた近似式)f(t)=2793.3×exp(−0.051×t)とする。ここで、滞在開始時刻t1=0, 滞在終了時刻t2=10とすると、[数6]による計算式から、吐しゃ直後から10分間滞在した場合には、約219(pfu)のウイルスを体内に取り込む可能性がある。
吐しゃ後60分経過後から10分間(吐しゃ後70分まで)滞在した場合には、[数8]による計算式から、10〜11(pfu)のウイルスを体内に取り込む可能性がある。
(1)上記形態例では、浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の経時変化データの近似式は、曲線の指数関数式を近似式とした場合を示したが、近似式における該当区間が直線的で、短時間であれば、滞在開始時刻と滞在終了時刻の間の浮遊ウイルス濃度は直線的に減少すると仮定できる。その場合、滞在開始時刻と滞在終了時刻の浮遊ウイルス濃度を単純平均し、浮遊ウイルス濃度として取り扱うことが可能である。
Claims (3)
- 前記おう吐時に空間に浮遊した浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の経時変化データは、模擬吐物を作製し、これを所定の高さから落下させ、各所に設置したウイルス捕集器を用いて浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)の変化を測定し、その平均値をもって縦軸を浮遊ウイルス濃度C(pfu/m3)とし、横軸を経過時間とした変化図を得るようにする請求項1記載のおう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法。
- 前記単位時間当たりの人の空気取込み量A(m3/min)は、0.6〜1.93(m3/h)の範囲の中で、行動状態に応じた数値とする請求項1、2いずれかに記載のおう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法。
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JP2016007557A JP6158963B1 (ja) | 2016-01-19 | 2016-01-19 | おう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法 |
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JP6158963B1 JP6158963B1 (ja) | 2017-07-05 |
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JP2016007557A Active JP6158963B1 (ja) | 2016-01-19 | 2016-01-19 | おう吐時に空間拡散したウイルスによる感染リスクの評価方法 |
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---|---|---|---|---|
WO2021196152A1 (zh) * | 2020-04-01 | 2021-10-07 | 中国科学院深圳先进技术研究院 | 城市内部传染病扩散模拟方法、系统及电子设备 |
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CN114978928A (zh) * | 2022-04-24 | 2022-08-30 | 重庆邮电大学 | 具有时变特性的耦合网络中社会传染的动态消息传递方法 |
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山本俊昭, 日本機械学会論文集(B編), vol. 71, no. 708, JPN6016044715, 2005, pages 1965 - 1970 * |
林伸行, 感染症学雑誌, vol. Vol.89 臨時増刊号, JPN6016044710, 2015, pages p.297 P2-145 * |
林伸行, 第30回 日本環境感染学会総会・学術集会 プログラム・抄録集, vol. p.304 1-P36-7, JPN6016044708, 2015 * |
狩野文雄, 感染対策ICTジャーナル, vol. 5, no. 4, JPN6016044712, 2010, pages 413 - 419 * |
高塚威, 技術開発研究所技報, vol. Vol.20, JPN6016044716, 2014, pages 13 - 16 * |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2021196152A1 (zh) * | 2020-04-01 | 2021-10-07 | 中国科学院深圳先进技术研究院 | 城市内部传染病扩散模拟方法、系统及电子设备 |
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