以下、図面を参照しながら、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」)及び磁気共鳴イメージング方法を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、各実施形態において説明する内容は、原則として、他の実施形態においても同様に適用することができる。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源102と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、コンピューター130(「画像処理装置」とも称される)とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及びコンピューター130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源102から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源102は、静磁場磁石101に電流を供給する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源102を備えなくてもよい。また、静磁場電源102は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、コンピューター130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
シーケンス制御回路120は、コンピューター130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
なお、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンピューター130へ転送する。コンピューター130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。コンピューター130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、及び画像生成機能136を備える。
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース機能131を有する処理回路150は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
記憶回路132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
続いて、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100について、図2〜図7を用いて簡単に説明する。ここで、図2、図3A、図3Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理について説明するための図である。また、図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が実行するパルスシーケンスを表すパルスシーケンス図である。また、図5A、図5B、図5C、図5D、図5E、図5F、図5Gは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明するための図である。また、図6は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順について説明するためのフローチャートである。また、図7は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が生成するデータの一例を示す図である。
まず、化学交換飽和移動(CEST:Chemical Exchange Saturation Trasfer)について簡単に説明する。自由水(バルク水)におけるプロトンと高分子のプロトンとは、互いに交換される。例えば、アミド基(−NH)、ヒドロキシル基(−OH)、及びアミノ基(−NH2)等の、高分子のプロトンは、交換性プロトンである。化学交換飽和移動は、アミド基(−NH)、ヒドロキシル基(−OH)、及びアミノ基(−NH2)等のプロトンと自由水におけるプロトンとが交換されることを利用した磁気共鳴イメージング手法である。
まず、シーケンス制御回路120は、自由水の共鳴周波数から離れた周波数(off−resonanceな周波数)であって、交換性プロトン(例えば高分子のプロトン)の共鳴周波数で、周波数選択RF(Radio Frequency)パルス(MT(Magnetic Transfer)パルス)を印加する。この結果、交換性プロトンが、印加されるMTパルスによって飽和する。続いて、交換性プロトンが、自由水プロトンと化学交換される。この結果、自由水プロトンの信号が飽和する。続いて、シーケンス制御回路120は、自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRFパルスを印加する。シーケンス制御回路120は、所定時間経過時に、データを収集する。磁気共鳴イメージング装置100は、交換性プロトンと、自由水プロトンとの化学交換の大きさをイメージングすることができる。
典型的な状況において、高分子などの交換性プロトンのT2緩和時間は、自由水のプロトンのT2緩和時間に比べて極めて短い。従って、直接的に、高分子などの交換性プロトンのT2緩和時間(高分子の磁化)を用いて磁気共鳴イメージングを行うことは難しい。これに対して、自由水のT2緩和時間(自由水の磁化)は、磁気共鳴イメージングを行うのに適している。従って、磁気共鳴イメージング装置100は、高分子のT2緩和時間を直接観測してイメージングを行うことは難しい場合でも、化学交換を通じて低下した自由水プロトンの磁化(以下、「信号」と呼ぶ)を観測することで、高分子のプロトンに関して間接的にイメージングを行うことができる。
CEST効果は、「Zスペクトル」や、「MTRasymスペクトル」と呼ばれる量を用いて記述される。処理回路150は、画像生成機能136により、シーケンス制御回路120が実行したパルスシーケンスにより得られたデータから、ZスペクトルやMTRasymスペクトルを生成する。
Zスペクトルとは、MTパルス印加後に自由水プロトンに対応するRFパルスを印加したときの信号強度を、印加したMTパルスの周波数の関数として表したスペクトルである。図2は、Zスペクトルの一例を表した図である。横軸は印加されたMTパルスの周波数を表す。また、縦軸は、MTパルス印加後に自由水プロトンに対応するRFパルスを印加したときの、自由水プロトンの信号値を表す。曲線10は、Zスペクトルを表す。換言すると、曲線10は、前述した自由水プロトンの磁化(「信号」)の、印加されたMTパルスの周波数依存性を表す。
シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの周波数が、自由水のプロトンの共鳴周波数(0ppm)に等しい時、信号は、最も低下する。また、矢印11Aは、アミド基プロトンの共鳴周波数に対応する周波数を表す。アミド基プロトンの共鳴周波数は、約3.5ppmである。矢印11Bは、アミノ基プロトンの共鳴周波数に対応する周波数を表す。また、アミノ基プロトンの共鳴周波数は、約2ppmである。矢印11Cは、ヒドロキシル基プロトンの共鳴周波数に対応する周波数を表す。ヒドロキシル基プロトンの共鳴周波数は、約1ppmである。
CEST効果が存在しない時、Zスペクトルには、自由水プロトンの飽和の効果のみが反映される。この結果、Zスペクトルは、自由水プロトンの共鳴周波数を基準とした原点に対して、対称なスペクトルとなる。これに対して、CEST効果が存在する場合、CEST効果を反映して、Zスペクトルは、自由水プロトンの共鳴周波数を基準とした原点に対して、非対称なスペクトルとなる。例えば、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの周波数が「2ppm」であった場合、MTパルスによってアミノ基のプロトンが飽和し、自由水プロトンと化学交換が起こる。この結果、信号値は低下する。一方、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの周波数が「−2ppm」であった場合、自由水プロトンと化学交換が起こるプロトンが「−2ppm」には存在しない。この結果、信号値は低下しない。
換言すると、Zスペクトルの非対称性を表す量が、CEST効果の大きさを表す量になる。MTRasymスペクトルは、CEST効果の大きさを表す量である。
例えば、周波数「−x ppm」のMTパルスを印加した時の信号強度が「S−」であり、それとは対称な位置にある周波数「+x ppm」のMTパルスを印加した時の信号強度が「S+」とし、MTパルスを何も印加しなかった時の信号強度が「S0」とすると、周波数「x ppm」におけるMTRasymスペクトルは、例えば、「(S+−S−)÷S0」の式により算出できる。
図3A及び図3Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の有するシーケンス制御回路120が、マルチスライス同時収集を行わない場合に、実行するパルスシーケンスの例を示すパルスシーケンス図の一例である。
図3Aでは、シーケンス制御回路120が、スピンエコーのパルスシーケンスを用いて撮像を行う場合について説明する。
図3Aの最上段は、シーケンス制御回路120が印加するRFパルスを示している。プレシーケンス20は、イメージングシーケンスに先立ってシーケンス制御回路120がMTパルスを印加するシーケンスを表す。ここで、イメージングシーケンスは、シーケンス制御回路120が撮像を行うシーケンスを表す。MTパルス20A、MTパルス20B、MTパルス20C、MTパルス20Dは、プレシーケンス20において、シーケンス制御回路120によって印加されるMTパルスを表す。また、90度パルス21は、シーケンス制御回路120によって印加される90度RFパルスを表す。また、180度パルス26は、シーケンス制御回路120によって印加されるリフォーカスパルスを表す。
図3Aの二段目は、シーケンス制御回路120が印加するスライス勾配を表している。スライス勾配22は、それぞれ90度パルス21、リフォーカスパルス26とともにシーケンス制御回路120によって印加されるスライス勾配を表している。
図3Aの最下段は、生成されるエコーを表している。エコー24は、スピンエコーのパルスシーケンスにより生成されるエコーを表している。
図3Aの三段目は、シーケンス制御回路120が印加する位相エンコード勾配を表している。位相エンコード勾配23は、シーケンス制御回路120によって印加さえる位相エンコード勾配を表している。
図3Aの四段目は、シーケンス制御回路120が印加するリードアウト勾配を表している。リードアウト勾配25は、エコー24の生成と同時にシーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配を示している。
シーケンス制御回路120は、プレシーケンス20において、例えば、MTパルス20A、MTパルス20B、MTパルス20C、MTパルス20Dを印加する。プレシーケンス20は、1又は複数の任意の軸方向(スライス方向、位相エンコード方向、及び読み出し方向)に印加された傾斜スポイラパルスを含んでもよい。典型的には、MTパルスは自由水の共鳴周波数から離れた(off−resonanceな)周波数で印加される。シーケンス制御回路120は、MTパルスを、スライス選択的に印加してもよく、またスライス非選択的に印加してもよい。MTパルス20A、MTパルス20B、MTパルス20C、MTパルス20Dは、例えばsinc関数によりそれぞれ形成される、周波数選択的RFパルスである。また、MTパルス20A、MTパルス20B、MTパルス20C、MTパルス20Dは、例えば二項パルスである。
単一の周波数での励起により得られるCEST効果は、比較的小さい。例えば、正常組織において、CEST効果による信号利得の効果は、所定周波数での正常組織については約2〜3%である。このため、シーケンス制御回路120は、プレシーケンス20において、典型的には、MTパルスを、所定の個数、例えば、20個印加する。なお、図3Aにおいては、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスの個数が4個の場合について説明しているが、印加するMTパルスの個数はこれに限られない。
シーケンス制御回路120が、プレシーケンス20において自由水プロトンの共鳴周波数から離れた周波数でMTパルスを印加すると、印加されたMTパルスの周波数に対応するプロトン(例えば、ヒドロキシル基のプロトン、アミド基のプロトン、アミノ基のプロトン)の磁化が飽和する。続いて、印加されたMTパルスの周波数に対応するプロトンと、自由水のプロトンとの間で化学交換が起こる。この結果、時間の経過とともに、印加されたMTパルスの周波数に対応するプロトンから、自由水プロトンへと磁化の飽和が移る。この結果、自由水プロトンの磁化が飽和する。この時、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスを開始する。
シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスにおいて、90度パルス21、180度パルス26を印加する。その結果、エコー24が生成される。また、シーケンス制御回路120は、位相エンコード勾配23を印加して位相エンコードを行う。シーケンス制御回路120は、エコー24が生成されている間、リードアウト勾配25を印加し、データ収集を行う。
一つのエコーに関するデータの収集が完了すると、シーケンス制御回路120は、位相エンコード勾配23や、MTパルス20A、20B、20C、20Dの周波数の値を変えて収集を繰り返す。
図3Bは、シーケンス制御回路120が、グラジエントエコーを用いて収集を行う場合のパルスシーケンスの一例を示している。
図3Bの最上段は、シーケンス制御回路120が印加するRFパルスを示している。図3Aと同様に、プレシーケンス20は、イメージングシーケンスに先立ってシーケンス制御回路120がMTパルスを印加するシーケンスを表す。図3Aと同様に、MTパルス20A、MTパルス20B、MTパルス20C、MTパルス20Dは、プレシーケンス20において、シーケンス制御回路120によって印加されるMTパルスを表す。また、90度パルス201は、シーケンス制御回路120によって印加される90度RFパルスを表す。
図3Bの二段目は、シーケンス制御回路120が印加するスライス勾配を表している。スライス勾配202は、90度パルス201とともにシーケンス制御回路120によって印加されるスライス選択のためのスライス勾配を表している。
図3Bの最下段は、生成されるエコーを表している。エコー204は、グラジエントエコーのパルスシーケンスにより生成されるエコーを表している。
図3Bの三段目は、シーケンス制御回路120が印加する位相エンコード勾配を表している。位相エンコード勾配203は、シーケンス制御回路120によって印加される位相エンコード勾配を表している。
図3Bの四段目は、シーケンス制御回路120が印加するリードアウト勾配を表している。リードアウト勾配205は、シーケンス制御回路120により印加されるリードアウト勾配を示している。リードアウト勾配205により、エコー204が生成される。
図3Aと同様に、シーケンス制御回路120は、プレシーケンス20において、MTパルスを印加する。その後、シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスを開始する。
シーケンス制御回路120は、イメージングシーケンスにおいて、90度パルス201を印加する。また、シーケンス制御回路120は、リードアウト勾配205を印加する。その結果、エコー204が生成される。また、シーケンス制御回路120は、位相エンコード勾配203を印加して位相エンコードを行う。シーケンス制御回路120は、エコー204が生成されている間、リードアウト勾配205を印加し、データ収集を行う。
このように、プレシーケンス20とイメージングシーケンスとで、パルスシーケンスの繰り返し単位であるTR(Repetition Time)が構成される。このように、シーケンス制御回路120は、一つの繰り返し単位が終わると、位相エンコード量やMTパルスの周波数を変えて、次の繰り返し単位のパルスシーケンスを実行する。
次に、図4〜図7を用いて、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の行うマルチスライス収集について説明する。初めに、CESTイメージングにおけるマルチスライス収集の技術背景について説明する。
CESTスキャンは、撮影に一般に時間を要する。例えば、CEST効果は比較的小さな効果であるため、シーケンス制御回路120は、CESTイメージングを行うために、通常複数のMTパルスを繰り返し印加する。従って、プレシーケンス20の時間が長くなる結果、撮影時間が長くなる。また、例えば、MTパルスが印加された自由水プロトン以外のプロトンから、自由水プロトンへ磁化が移動するまで時間がかかるため、シーケンス制御回路120は、MTパルスを印加してから、イメージングシーケンス270Aを開始するまで、長い時間待機する。従って、プレシーケンス20の時間が長くなる結果、撮影時間が長くなる。また、例えば、シーケンス制御回路120は、ZスペクトルやMTRasymスペクトルを得るために、多くの周波数でデータ点を収集する。従って、撮影時間が長くなる。例えば、シーケンス制御回路120は、−6ppmから+6ppmまでの周波数でデータ点を収集するので、撮影時間が長くなる。また、複数のスライスについてZスペクトルを得る場合、シーケンス制御回路120は、スライスの枚数だけ撮影を繰り返すことになるから、撮影時間が長くなる。
このような背景のもと、シーケンス制御回路120は、マルチスライス同時収集を行って撮像時間を短縮する。シーケンス制御回路120は、マルチスライス同時収集を行うことにより、撮像時間を短縮し、かつ、各スライスで、MT効果を得ることができる。加えて、実施形態に係るマルチスライス同時収集については、さらなる利点がある可能性が考えられる。マルチスライスの系におけるMT効果は、例えば所定のスライスについて着目してみると、シーケンス制御回路120が印加するMTパルスによる直接的、単一的な効果の効果以外の効果の寄与がある可能性が考えられる。例えば、隣接するスライスがMTパルスを印加されることによる間接的な寄与など、マルチスライスによって影響するMT効果が起こる可能性が考えられ、この場合、CEST効果が増大する。従って、実施形態に係るマルチスライス同時収集により、画質がさらに向上することが考えられる。
第1の実施形態では、シーケンス制御回路120が、単一周波数のMTパルスを印加してマルチスライス同時収集を行う場合について説明する。これにより、シーケンス制御回路120は、各スライスごとにCESTスペクトルを収集する代わりに、例えば3スライスや5スライス同時に収集を行う。これにより、撮像時間が短くなる。これに対して、第2の実施形態では、シーケンス制御回路120が、複数の周波数のMTパルスを印加してマルチスライス同時収集を行う場合について説明する。これにより、各スライスでMT効果を増大させつつ、撮像時間を短縮することができる。
図5A〜図7を参照しながら、図4を用いて、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が行う処理について説明する。図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100が実行するパルスシーケンスの例を表すパルスシーケンス図である。
図4の最上段は、シーケンス制御回路120が印加するRFパルスを表している。図4の最下段は、生成されるエコーを表している。ここで、シーケンス制御回路120は、例えばスライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4に対して、マルチスライス同時収集を行う。図4の二段目、三段目、四段目、五段目は、それぞれ、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4に対して行われる処理を示している。
シーケンス制御回路120は、プレシーケンス60において、MTパルス60Aを印加する。同時に、シーケンス制御回路120は、スライス方向に傾斜磁場を印加する。この時、例えば、正方形61Aで示されるように、スライスS1においては、スライスS1における自由プロトンの共鳴周波数を0ppmとして、+5.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同時に、正方形62Aで示されるように、スライスS2においては、スライスS2における自由プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)を0ppmとして、+4.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同時に、正方形63Aで示されるように、スライスS3においては、スライスS3における自由プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)を0ppmとして、+3.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同時に、正方形64Aで示されるように、スライスS4においては、スライスS4における自由プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)を0ppmとして、+2.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。また、スライスS5(図4には図示されていない)においては、スライスS5における自由プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)を0ppmとして、+1.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。
かかる点について、図5A〜図5Dを用いて説明する。図5Aに、シーケンス制御回路120が、MTパルス60Aを印加したときのスライス方向の傾斜磁場とスライスとの関係が示されている。直線40fは、傾斜磁場を表している。ここで、縦軸は傾斜磁場の大きさである。また、横軸は、z軸、すなわちスライス方向の位置である。また、スライス40Aは、スライスS1を表している。同様に、スライス40B、スライス40C、スライス40D、スライス40Eは、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5を表している。図5Aに示されているように、スライスによって、磁場の大きさが異なる。
また、スライスS1〜スライスS5の選び方の一例は、例えば図5Bに示されている。図5Bの例では、スライスS1〜スライスS5は、被検体の頭部に、異なるアキシャル軸上の位置に配置されている。
図5Cに、このような状況における、スライスごとの自由水プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)が示されている。自由水プロトンの共鳴周波数ωは、ω=γ(B0+zGz)で表される。ここで、γは磁気回転比である。B0は、静磁場の大きさである。zは、スライス方向の位置である。Gzは、スライス勾配磁場の大きさである。この式からわかるように、スライス勾配磁場の大きさGzが有限の場合、スライス方向の位置zによって、自由水プロトンの共鳴周波数ωが異なる。今、スライスS1における自由水プロトンの共鳴周波数の大きさが、例えば矢印で示される共鳴周波数41Aで表されるとする。この時、スライスS2における自由水プロトンの共鳴周波数の大きさは、例えば矢印で示される共鳴周波数41Bで表される。同様に、スライスS3、スライスS4、スライスS5における自由水プロトンの共鳴周波数の大きさは、それぞれ矢印で示される共鳴周波数41C、共鳴周波数41D、共鳴周波数41Eで表される。
図5Dに、このような状況において、ある一つの周波数のMTパルスをシーケンス制御回路120が印加した場合が示されている。シーケンス制御回路120は、例えば、MTパルス42で示されているような周波数のMTパルスを、例えば図4のMTパルス60Aのように印加する。ここで、MTパルス42の周波数は、スライスS1では、例えば矢印43Aのように表される。また、MTパルス42の周波数は、スライスS2では、例えば矢印43Bのように表される。また、同様に、MTパルス42の周波数は、スライスS3、スライスS4、スライスS5では、それぞれ矢印43C、矢印43D、矢印43Eのように表される。
換言すると、印加されるMTパルス42の周波数の「絶対的な」値は、どのスライスでも等しい。
しかしながら、各スライスにおける自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」としたときの印加されるMTパルス42の周波数の「相対的な」値は、各スライスで異なる。例えば、シーケンス制御回路120がスライスS1に対して印加するMTパルス42の周波数は、スライスS1における自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」として、矢印43Aに示されるように、「5.5ppm」となる。また、シーケンス制御回路120がスライスS2に対して印加するMTパルス42の周波数は、スライスS2における自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」として、矢印43Bに示されるように、「4.5ppm」となる。同様に、シーケンス制御回路120がスライスS3、スライスS4、スライスS5に対して印加するMTパルス42の周波数は、スライスS3、スライスS4、スライスS5における自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」として、矢印43C、矢印43D、矢印43Eに示されるように、それぞれ、「3.5ppm」、「2.5ppm」、「1.5ppm」となる。このように、シーケンス制御回路120は、複数のスライスにわたって傾斜磁場下でMTパルスを印加することにより、各スライスにおける自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、異なるppmでプロトンを飽和させる。
図4に戻り、シーケンス制御回路120は、プレシーケンス60において、MTパルス60Aと同じ周波数で、繰り返しMTパルスを印加する。具体的には、シーケンス制御回路120は、プレシーケンス60において、MTパルス60B、MTパルス60C、MTパルス60Dを印加する。
MTパルス60Aと同様に、例えば、正方形61B、正方形62B、正方形63B、正方形64Bで示されるように、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4においては、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4における自由プロトンの共鳴周波数を0ppmとして、それぞれ、+5.5ppm、+4.5ppm、+3.5ppm、+2.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同様に、例えば、正方形61C、正方形62C、正方形63C、正方形64Cで示されるように、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4においては、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4における自由プロトンの共鳴周波数を0ppmとして、それぞれ、+5.5ppm、+4.5ppm、+3.5ppm、+2.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同様に、例えば、正方形61D、正方形62D、正方形63D、正方形64Dで示されるように、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4においては、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4における自由プロトンの共鳴周波数を0ppmとして、それぞれ、+5.5ppm、+4.5ppm、+3.5ppm、+2.5ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。
プレシーケンス60の印加が終了すると、イメージングシーケンス270Aにおいて、シーケンス制御回路120は、RFパルス65を印加する。RFパルス65は、スライスS1における自由水プロトンの共鳴周波数41Aに対応するRFパルス成分65A、スライスS2における自由水プロトンの共鳴周波数41Bに対応するRFパルス成分65B、
スライスS3における自由水プロトンの共鳴周波数41Cに対応するRFパルス成分65C、スライスS4における自由水プロトンの共鳴周波数41Dに対応するRFパルス成分65Dを含む。
続いて、シーケンス制御回路120は、所定のシーケンスをイメージングシーケンス270Aにおいて行って、エコー70(または複数のエコー)を生成する。このとき、シーケンス制御回路120は、それぞれのスライスについて、例えばデータ収集71A、71B、71C、71Dを行う。
シーケンス制御回路120が実行するシーケンスの例としては、例えばFASE(Fast Asymmetric Spin Echo)、EPI(Echo Planar Imaging)、bSSFP(balanced Steady State Free Precession)、ラジアル収集シーケンス等が挙げられる。
このように、プレシーケンス60とイメージングシーケンス270Aとで、パルスシーケンスの繰り返し単位であるTR(Reptition Time)が構成される。このように、シーケンス制御回路120は、一つの繰り返し単位が終わると、位相エンコード量やMTパルスの周波数を変えて、次の繰り返し単位を実行する。
例えば、シーケンス制御回路120は、プレシーケンス72において、MTパルス72A、MTパルス72B、MTパルス72C、MTパルス72Dを印加する。
この状況は、例えば図5Eに示されている。シーケンス制御回路120は、例えば、MTパルス44で示されているような周波数のMTパルスを、例えば図4のMTパルス72Aのように印加する。ここで、MTパルス44の周波数は、スライスS1では、例えば矢印45Aのように表される。同様に、MTパルス44の周波数は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5では、例えば矢印45B、矢印45C、矢印45D、矢印45Eのように表される。
シーケンス制御回路120がスライスS1に対して印加するMTパルス44の周波数は、スライスS1における自由水プロトンの共鳴周波数41Aを基準周波数「0ppm」として、矢印45Aに示されるように、「5.0ppm」となる。同様に、シーケンス制御回路120がスライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5に対して印加するMTパルス44の周波数は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5における自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」として、矢印45B、矢印45C、矢印45D、矢印45Eに示されるように、それぞれ、「4.0ppm」、「3.0ppm」、「2.0ppm」、「1.0ppm」となる。
図4に戻り、例えば、正方形73Aで示されるように、スライスS1においては、スライスS1における自由プロトンの共鳴周波数を0ppmとして、+5.0ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。同時に、正方形74A、正方形75A、正方形76Aで示されるように、スライスS2、スライスS3、スライスS4においては、スライスS2、スライスS3、スライスS4における自由プロトンの共鳴周波数(ラーモア周波数)を0ppmとして、それぞれ+4.0ppm、+3.0ppm、+2.0ppmの周波数の非共鳴プロトンが飽和される。
シーケンス制御回路120は、同様の処理を行って、スライスS1について+5.0ppmのデータを収集する。また、シーケンス制御回路120は、スライスS2、スライスS3、スライスS4について、それぞれ+4.0ppm、+3.0ppm、+2.0ppmのデータを収集する。これにより、一つの繰り返し周期が完了する。
また、シーケンス制御回路120は、次の繰り返し周期において、印加するMTパルスの周波数を変えてMTパルスを印加する。この状況は、例えば図5Fにおいて示されている。
シーケンス制御回路120は、例えば、MTパルス46で示されているような周波数のMTパルスを印加する。ここで、MTパルス46の周波数は、スライスS1では、例えば矢印47Aのように表される。同様に、MTパルス46の周波数は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5では、例えば矢印47B、矢印47C、矢印47D、矢印47Eのように表される。
シーケンス制御回路120がスライスS1に対して印加するMTパルス46の周波数は、スライスS1における自由水プロトンの共鳴周波数41Aを基準周波数「0ppm」として、矢印47Aに示されるように、「4.5ppm」となる。同様に、シーケンス制御回路120がスライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5に対して印加するMTパルス46の周波数は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5における自由水プロトンの共鳴周波数を基準周波数「0ppm」として、矢印47B、矢印47C、矢印47D、矢印47Eに示されるように、それぞれ、「3.5ppm」、「2.5ppm」、「1.5ppm」、「0.5ppm」となる。
このように、シーケンス制御回路120は、繰り返し周期(すなわち、TR)ごとに、印加するMTパルスの周波数を変えて、データ収集を繰り返す。このような状況は、例えば図5Gに示されている。
図5Gの例では、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、データ収集範囲が、−5.5ppm〜5.5ppmである場合について説明する。シーケンス制御回路120は、1番目の繰り返し周期において、実線400に示されているように、第1の周波数のMTパルスを印加することによりデータ収集を行う。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS1において、+5.5ppmのデータを収集する。また、シーケンス制御回路120は、スライスS2において、+4.5ppmのデータを収集する。同様に、シーケンス制御回路120は、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、それぞれ+3.5ppm、+2.5ppm、+1.5ppmのデータを収集する。
続いて、シーケンス制御回路120は、2番目の繰り返し周期において、実線401に示されているように、第1の周波数より0.5ppmだけ低い第2の周波数のMTパルスを印加することによりデータ収集を行う。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS1において、+5.0ppmのデータを収集する。また、シーケンス制御回路120は、スライスS2において、+4.0ppmのデータを収集する。同様に、シーケンス制御回路120は、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、それぞれ+3.0ppm、+2.0ppm、+1.0ppmのデータを収集する。
続いて、シーケンス制御回路120は、3番目の繰り返し周期において、実線402に示されているように、第2の周波数より0.5ppmだけ低い第3の周波数のMTパルスを印加することによりデータ収集を行う。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS1において、+4.5ppmのデータを収集する。同様に、シーケンス制御回路120は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、それぞれ+3.5ppm、+2.5ppm、+1.5ppm、+0.5ppmのデータを収集する。
このように、シーケンス制御回路120は、印加するMTパルスの周波数を変えて、繰り返しデータを収集する。例えば、シーケンス制御回路120は、実線403に表されているような周波数のMTパルスを印加することによりデータを収集する。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、それぞれ−1.5ppm、−2.5ppm、−3.5ppm、−4.5ppm、−5.5ppmのデータを収集する。
シーケンス制御回路120は、図5Gに実線で表されている周波数以外にも、例えば破線で表されている周波数においても、MTパルスを印加する。
例えば、シーケンス制御回路120は、破線404で表されているような周波数のMTパルスを印加することによりデータを収集する。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS1、スライスS2、スライスS3、スライスS4において、それぞれ−2.5ppm、−3.5ppm、−4.5ppm、−5.5ppmのデータを収集する。また、シーケンス制御回路120は、スライスS5において、−6.5ppmのデータを収集可能である。シーケンス制御回路120は、スライスS5のデータを収集してもよいし、収集しなくてもよい。
また、例えば、シーケンス制御回路120は、破線405で表されているような周波数のMTパルスを印加することによりデータを収集する。この時、シーケンス制御回路120は、スライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5において、それぞれ+5.0ppm、+4.0ppm、+3.0ppm、+2.0ppmのデータを収集する。また、シーケンス制御回路120は、スライスS1において、+6.0ppmのデータを収集可能である。シーケンス制御回路120は、スライスS1のデータを収集してもよいし、収集しなくてもよい。
図5Gの例では、マルチスライス同時収集を行わない場合、シーケンス制御回路120は、−5.5ppmから5.5ppmまでの周波数について、一つのスライス当たり、0.5ppm間隔で、(5.5−(−5.5))/0.5+1=23回の収集を行う。従って、マルチスライス同時収集を行わない場合、シーケンス制御回路120は、スライスS1からスライスS5まで、合計で、23×5=115回の収集を行う。
これに対して、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、実線の収集を23−8=15回行う。また、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、破線の収集を16回行う。従って、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、合計で15+16=23+8=31回の収集を行う。従って、シーケンス制御回路120は、マルチスライス同時収集を行う場合、収集回数を減らすことができる。
また、例えば、−10ppmから10ppmまでの周波数について、一つのスライス当たり、0.5ppm間隔で収集を行う場合、マルチスライス同時収集を行わない場合、シーケンス制御回路120は、一つのスライスあたり、41回の収集を行う。従って、マルチスライス同時収集を行わない場合、シーケンス制御回路120は、スライスS1からスライスS5まで、合計で、41×5=205回の収集を行う。
これに対して、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、実線の収集を41−8=33回行う。また、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、破線の収集を16回行う。従って、マルチスライス同時収集を行う場合、シーケンス制御回路120は、合計で33+16=41+8=49回の収集を行う。従って、シーケンス制御回路120は、マルチスライス同時収集を行う場合、収集回数を減らすことができる。
図6は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順について説明するためのフローチャートである。
シーケンス制御回路120は、MTパルスの周波数を、例えば+5.5ppmから−5.5ppmまで、収集ごとに所定のppmだけ減らして、例えば図5Gの実線に示されたMTパルスの周波数で、例えば図4に示されたパルスシーケンスを実行する。ここで、所定のppmとは、例えば1ppmである。また、冗長になるのを避けるためフローチャートには図示しないが、必要に応じて、シーケンス制御回路120は、例えば図5Gの破線で示されたMTパルスの周波数で、例えば図4に示されたパルスシーケンスを実行する。以下の手順は、シーケンス制御回路120が、図4に示されたパルスシーケンスを実行する場合について説明する。
シーケンス制御回路120は、例えば図4のプレシーケンス60に示されているように、傾斜磁場が印加されている状態で、MTパルスを印加し、スライスごとに、異なる周波数成分を飽和する(ステップS101)。換言すると、シーケンス制御回路120は、複数のスライスS1〜S4にわたって傾斜磁場下でMTパルス60A〜60Dを印加する。ここで、「異なる周波数成分」とは、各スライスごとの自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、印加されるMTパルスの周波数の相対周波数が各スライスで異なるということを意味する。第1の実施形態においては、MTパルス60A〜60Dは、単一の周波数成分を持つMTパルスである。
続いて、シーケンス制御回路120は、例えば図4のRFパルス65に示されているように、スライス選択用スライス勾配磁場を印加しながら、それぞれのスライスに対応するRFパルスを印加する(ステップS102)。換言すると、シーケンス制御回路120は、MTパルス60A〜60Dが印加された複数のスライスS1〜S4それぞれに対して、複数のスライスS1〜S4それぞれにおける所定のプロトン(自由水プロトン)の共鳴周波数41A〜41Dに対応するRFパルス成分65A〜65Dを含んだ周波数のRFパルスを印加する。
続いて、シーケンス制御回路120は、例えば位相エンコードを行う(ステップS103)。続いて、シーケンス制御回路120は、データ収集を行う(ステップS104)。シーケンス制御回路120は、ステップS101〜ステップS104を、前述の終了条件を満たすまで、繰り返す。
続いて、処理回路150は、画像生成機能136により、Zスペクトルを生成する。図7に、処理回路150が画像生成機能136により生成したZスペクトルの一例が示されている。図7において、縦軸は、Zスペクトルの強度を表し、横軸は、周波数を表す。曲線50Aは、スライスS1に関するZスペクトルを表す。また、曲線50B、曲線50C、曲線50D、曲線50Eは、それぞれスライスS2、スライスS3、スライスS4、スライスS5に関するZスペクトルを表す。このように、マルチスライス同時収集を行うことで、例えば5スライス分のZスペクトルが同時に得られる。続いて、処理回路150は、画像生成機能136により、生成したZスペクトルに基づいて、CEST効果結果スペクトラ(例えばMTRasymスペクトル)を生成する(ステップS105)。
また、実施形態において、シーケンス制御回路120が印加するイメージングパルスシーケンスとしては、様々な例が考えられる。シーケンス制御回路120は、例えば、イメージングパルスシーケンスとして、2次元(Two−Dimensional:2D)スキャンを採用することもできるし、3次元(Three−Dimensional:3D)スキャンを採用することができる。シーケンス制御回路120は、例えば、イメージングパルスシーケンスとして、例えば、スピンエコー(Spin Echo:SE)シーケンス、磁場傾斜エコー(Field Gradient Echo:FE)シーケンス、高速SE(Fast SE:FSE)シーケンス、等を採用することができる。
また、実施形態では、シーケンス制御回路120がスライス選択的にMTパルスを印加する例について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、シーケンス制御回路120は、スライス非選択的にMTパルスを印加してもよい。この場合、シーケンス制御回路120は、各スライスについて、同じ周波数を励起して、マルチバンド収集を行うことができる。例えば、シーケンス制御回路120は、例えばスライスS1、スライスS2、スライスS3及びスライスS4に対して、傾斜磁場を印加しない状態(スライス非選択的な状態)で、MTパルスを印加してもよい。CEST収集においては、例えば、+6ppmから−6ppmまで、例えば1ppm間隔で、シーケンス制御回路120は、複数回の収集を行う。ここで、スライス非選択にMTパルスをシーケンス制御回路120が印加することで、シーケンス制御回路120は、1回のCEST周波数励起で複数のスライスに関するデータを取得することができる。
また、実施形態は、これに限られない。第1の実施形態では、シーケンス制御回路120が、ステップS102において、複数のスライスそれぞれにおける自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRFパルス成分を含んだRFパルスを印加する場合、すなわち複数のRFパルス成分を同時に印加する場合について説明した。しかしながら、例えば、シーケンス制御回路120は、複数のRFパルス成分を、少しずつ時刻をずらしながら別々に印加してもよい。
また、シーケンス制御回路120は、MTパルスの周波数を、例えば+5.5ppmから−5.5ppmまで、収集ごとに所定のppm減らしてパルスシーケンスを実行する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、シーケンス制御回路120は、印加するMTパルスの周波数を、例えば+10ppmから−10ppmまでとしてもよい。また、例えばシーケンス制御回路120は、MTパルスの周波数を、例えば−5.5ppmから+5.5ppmまで、収集ごとに1ppm増やしてパルスシーケンスを実行してもよい。また、例えばシーケンス制御回路120は、MTパルスの周波数を、−5ppm以上5ppm以下の場合には収集ごとに0.5ppm減らして、−10ppm以上−5pm未満又は+5ppmより大きく+10ppm以下の場合には収集ごとに1ppm減らして、−10ppmから+10ppmまで、パルスシーケンスを実行してもよい。
以上のように、第1の実施形態では、シーケンス制御回路120は、複数のスライスにわたって傾斜磁場下で単一周波数のMTパルスを印加する。その後、シーケンス制御回路120は、自由水プロトンの共鳴周波数に対応するRFパルスを印加する。これにより、マルチスライス同時収集を行うことができ、撮像時間を短縮することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、シーケンス制御回路120が、MTパルスを単一の周波数成分でMTパルスを印加してマルチスライス同時収集を行う場合について説明した。第2の実施形態では、図8A、図8B,図10A〜図10Eを参照しながら、図9を用いて、シーケンス制御回路120が、MTパルスを複数の周波数成分でMTパルスを印加する場合について説明する。図8A及び図8Bは、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明する図である。図9は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順について説明するためのフローチャートである。図10A、図10B、図10C、図10D、図10Eは、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明した図である。
図9において、第1の実施形態において説明したように、シーケンス制御回路120は、MTパルスの周波数を、+5.5ppmから、−5.5ppmまで、例えば収集ごとに0.5ppm減らして、パルスシーケンスを実行する。シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスは、図4においては単一周波数のMTパルスが印加されていたのに対して、第2の実施形態では、複数の周波数成分でMTパルスが印加されることを除けば、図4と同一のシーケンスである。また、シーケンス制御回路120は、第1の実施形態で説明したように、例えば図5Gのダイヤグラムで示されるようなプロトコルに従ってパルスシーケンスを実行する。
シーケンス制御回路120は、傾斜磁場が印加されている状態で、マルチバンドのMTパルスを印加し(複数の周波数成分でMTパルスを印加し)、スライスごとに異なる周波数成分を飽和する(ステップS101)。
ここで、「複数の周波数成分でMTパルスを印加する」第1の例として、シーケンス制御回路120は、複数の周波数成分を持つMTパルスを印加してもよい。この場合、シーケンス制御回路120は、例えば、例えば図4において、スライスS1を基準として、+3.5ppmの周波数成分を持つMTパルスと、+2.0ppmの周波数成分を持つMTパルスと、+1.0ppmの周波数成分を持つMTパルスとを重ね合わせたパルスであるMTパルス60Aを印加する。また、シーケンス制御回路120は、MTパルス60Aと同様のパルスであるMTパルス60Bを印加する。同様に、シーケンス制御回路120は、MTパルス60Aと同様のパルスであるMTパルス60C、MTパルス60Dを印加する。
別の「複数の周波数成分でMTパルスを印加する」第2の例として、シーケンス制御回路120は、第1の周波数成分を持つMTパルスと、第1の周波数成分とは異なる第2の周波数成分を持つMTパルスを含んで複数のMTパルスを印加してもよい。この場合、シーケンス制御回路120は、例えば、図4において、スライスS1を基準として、+3.5ppmの周波数で、MTパルス60Aを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、スライスS1を基準として、+2.0ppmの周波数で、MTパルス60Bを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、スライスS1を基準として、+1.0ppmの周波数で、MTパルス60Cを印加する。続いて、シーケンス制御回路120は、スライスS1を基準として、+3.5ppmの周波数で、MTパルス60Dを印加する。
図8Aは、第1の実施形態で説明したマルチスライス同時収集における、シーケンス制御回路120が印加するプレシーケンスの例を示す。矢印一つ一つがMTパルスを表し、A、B、Cはそれぞれ異なる周波数を表す。第1の実施形態で説明したように、自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、各スライスで異なる周波数で励起が行われ、収集が行われる。図8Bは、前述の第2の例について、異なる周波数を含んで複数の周波数でMTパルスが印加される場合においてシーケンス制御回路120が印加するプレシーケンスの例を示す。矢印一つ一つがMTパルスを表し、A、B、Cはそれぞれ異なる周波数を表す。CEST効果が大きくなるように、シーケンス制御回路120は、印加するA、B、Cの周波数が、所定の官能基のCEST効果が大きくなる周波数、例えばA=3.5ppm(アミド基)、B=2ppm(アミノ基)、C=1ppm(ヒドロキシル基)となるように選択する。
前者の場合(複数の周波数成分を持つMTパルスを印加する場合)の場合でも後者の場合(MTパルスごとに周波数成分が異なる)でも、傾斜磁場が存在していない場合は、各スライスで自由水プロトンの共鳴周波数が同じであるから、各スライスごとに、各スライスの自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、同じppmの周波数が飽和される。前者の場合でも後者の場合でも、傾斜磁場が存在している場合は、各スライスで自由水プロトンの共鳴周波数が異なるから、各スライスごとに、各スライスの自由水プロトンの共鳴周波数を基準として、異なるppmの周波数が飽和される。この場合、各スライスは、複数の周波数で複雑に励起される。
第1の実施形態と同様に、シーケンス制御回路120は、スライス選択用のスライス勾配磁場を印加しながら、それぞれのスライスに対応するRFパルスを印加する(ステップS102)。このRFパルスの例としては、例えば図4のRFパルス65である。続いて、シーケンス制御回路120は、位相エンコードを行う(ステップS103)。続いて、シーケンス制御回路120は、データ収集を行う(ステップS104)。データ収集が終わると、処理回路150は、CEST効果結果スペクトラ(例えばMTRasymスペクトル)を生成する(ステップS105)。
図10B〜図10Eは、印加されるMTパルスの周波数と、得られるMTRasymスペクトルの関係を示している。
図10Aにおいて、横軸はppm単位の周波数を表す。周波数90Aは、アミド基に対応する周波数(3.5ppm)を表している。周波数90Bは、アミノ基に対応する周波数(2ppm)を表している。周波数90Cは、ヒドロキシル基に対応する周波数(1ppm)を表している。周波数90Dは、自由水プロトンの共鳴周波数から遠く離れた周波数を表している。
図10Bにおいて、MTRasymスペクトル91は、周波数90Aに対応する周波数でMTパルスを印加した場合のMTRasymスペクトルを表している。横軸はppm単位の周波数を表している。MTRasymスペクトル91は、アミド基に対応する周波数領域で大きな値を持つ。
図10Cにおいて、MTRasymスペクトル92は、周波数90Bに対応する周波数でMTパルスを印加した場合のMTRasymスペクトルを表している。横軸はppm単位の周波数を表している。MTRasymスペクトル92は、アミノ基に対応する周波数領域で大きな値を持つ。
図10Dにおいて、MTRasymスペクトル93は、周波数90Cに対応する周波数でMTパルスを印加した場合のMTRasymスペクトルを表している。横軸はppm単位の周波数を表している。MTRasymスペクトル93は、ヒドロキシル基に対応する周波数領域で大きな値を持つ。
図10Eにおいて、MTRasymスペクトル94は、周波数90Dに対応する周波数でMTパルスを印加した場合のMTRasymスペクトルを表している。横軸はppm単位の周波数を表している。MTRasymスペクトル94は、全周波数にわたって値が小さい。
図10A〜図10Eからわかるように、シーケンス制御回路120が複数の周波数でMTパルスで印加すると、印加されるMTパルスの周波数が所定の官能基に対応した周波数に近い周波数であると、MTRasymスペクトルの値は大きくなる。従って、CEST効果は増大する。
第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、シーケンス制御回路120が、複数の周波数成分を用いてMTパルスを印加する。これにより、CEST効果を増大することができる。CEST効果はもともと小さい効果であることから、CEST効果が増大することが、画質の改善に貢献する。
なお、第2の実施形態において、シーケンス制御回路120は、複数の周波数成分を用いてMTパルスを印加する。このことから、各スライスは複雑に励起する。しかし、医用画像を生成する目的の場合、例えば、正常細胞と異常細胞との間で画像のコントラストが大きくなることが重要であり、画像のコントラストが大きくなるのがどの周波数のMTパルスに起因しているかを同定することはそれらに比べて二次的な重要さであることもある。従って、第2の実施形態においては、シーケンス制御回路120は、複数の周波数成分を用いてMTパルスを印加し、CEST効果を増大させる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態と同様であるが、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、代用可能な領域のデータについては収集を省略し、省略した収集に対して、MTRasymスペクトルの産出を、所定の方法で代用する。これにより、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、収集を更に加速することができる。
この点について、図10F、図11A、図11B、図11Cを用いて説明する。図10F、図11A、図11B、図11Cは、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明した図である。
図10Fは、Zスペクトルの典型的な周波数依存性を示している。点線501は、CEST効果が表れる周波数を示している。CEST効果が大きくなるとき、Zスペクトルは、自由水プロトンの共鳴周波数を原点として、非対称なスペクトルとなる。処理回路150は、周波数が+xにおけるZスペクトルと、周波数が−xにおけるZスペクトルの2つのZスペクトルに基づいて、1点のMTRasymスペクトルを算出する。
しかしながら、MTRasymスペクトルの算出に必要なZスペクトルのうち、片方のZスペクトルは、CEST効果が表れない自由水のスペクトルになることも多い。従って、+xの周波数と−xの周波数の二つについて収集するのは、無駄であることも多い。
そこで、第3の実施形態においては、シーケンス制御回路120は、自由水プロトンの共鳴周波数から所定の周波数以上離れた第1の周波数のMTパルスを印加する第1のパルスシーケンスと、それぞれの周波数が自由水プロトンの共鳴周波数より大きい又は、それぞれの周波数が自由水プロトンの共鳴周波数より小さい、複数の第2の周波数のMTパルスを印加する第2のパルスシーケンスとを実行する。
ここで、「自由水プロトンの共鳴周波数から所定の周波数以上離れた第1の周波数」とは、例えば図10Fの領域502に示される領域の周波数を指す。すなわち、Zスペクトルにおける自由水の影響が十分小さい周波数の領域である。また、ここでいう第2のパルスシーケンスとは、例えば周波数領域のうち、自由水プロトンの共鳴周波数より大きい周波数領域か、又は自由水プロトンの共鳴周波数より小さい周波数領域の収集を省略したパルスシーケンスである。第2のパルスシーケンスは、例えば図10Fにおいて、領域503の収集を省略したパルスシーケンスである。
処理回路150は、画像生成機能136により、第1のパルスシーケンスにより得られたデータと、第2のパルスシーケンスにより得られたデータとに基づいて、CEST(Chemical Saturation Transfer)効果の大きさを表すスペクトルを算出する。
ここで、処理回路150は、画像生成機能136により、第2のパルスシーケンスにおいて省略された周波数のZスペクトルを、第1の周波数におけるZスペクトルで置き換える。例えば、第1の周波数が+10ppmであり、第2のパルスシーケンスにおいて、0ppm未満の収集が省略された場合について考える。この場合、例えば周波数が+5ppmのZスペクトルと、周波数が−5ppmのZスペクトルを用いて、5ppmのMTRasymスペクトルが生成される。ここで、処理回路150は、周波数が−5ppmのZスペクトルの値として、周波数が+10ppmのZスペクトルの値で代用する。これにより、処理回路150は、5ppmにおいて、MTRasymスペクトルに類似するスペクトルを得ることができる。このスペクトルは、CEST効果の大きさを表すスペクトルである。また、このスペクトルは、収集される周波数が半分になっているため、半分の撮像時間で収集されたスペクトルである。
図11A〜図11Cに、第3の実施形態でシーケンス制御回路120が実行する第2のパルスシーケンスのいくつかのバリエーションが示されている。
図11Aは、第3の実施形態でシーケンス制御回路120が実行する第2のパルスシーケンスの周波数領域が、スライスS1を基準として、周波数が0ppm以上である場合を示している。シーケンス制御回路120は、実線の周波数領域において、収集を行う。図11Aにおいて線が通っていない領域である領域501については、シーケンス制御回路120は、データ収集を行わない。処理回路150は、画像生成機能136により、シーケンス制御回路120がデータ収集を行わなかった領域のZスペクトルの値を、第1のパルスシーケンスにより得られたZスペクトルの値で置き換える。処理回路150は、画像生成機能136により、置き換えたZスペクトルの値を用いてMTRasymスペクトルを算出することにより、CEST効果の大きさを表すスペクトルを得る。
図11Bは、第3の実施形態でシーケンス制御回路120が実行する第2のパルスシーケンスの周波数領域が、スライスS1を基準として、周波数が−1ppm以上である場合を示している。シーケンス制御回路120は、実線の周波数領域(領域502b)において、収集を行う。また、シーケンス制御回路120は、前述のZスペクトルの値の置き換えで誤差が大きくなる0ppm付近、例えば破線の周波数領域(領域502)においても、収集を行う。図11Bにおいて線が通っていない領域である領域503については、シーケンス制御回路120は、データ収集を行わない。処理回路150は、画像生成機能136により、シーケンス制御回路120がデータ収集を行わなかった領域のZスペクトルの値を、第1のパルスシーケンスにより得られたZスペクトルの値で置き換える。処理回路150は、画像生成機能136により、置き換えたZスペクトルの値を用いてMTRasymスペクトルを算出することにより、CEST効果の大きさを表すスペクトルを得る。図11Bの例では、シーケンス制御回路120は、Zスペクトルの値を置き換えることで誤差が大きくなる0ppm付近については収集を行う。これにより、撮像時間の短縮と画像の劣化の防止を両立することができる。
図11Cは、第3の実施形態でシーケンス制御回路120が実行する第2のパルスシーケンスの周波数領域が、スライスS1を基準として、周波数が−1.5ppm以上である場合を示している。シーケンス制御回路120は、実線の周波数領域において、収集を行う。図11Cにおいて線が通っていない領域である領域504については、シーケンス制御回路120は、データ収集を行わない。処理回路150は、画像生成機能136により、シーケンス制御回路120がデータ収集を行わなかった領域のZスペクトルの値を、第1のパルスシーケンスにより得られたZスペクトルの値で置き換える。処理回路150は、画像生成機能136により、置き換えたZスペクトルの値を用いてMTRasymスペクトルを算出することにより、CEST効果の大きさを表すスペクトルを得る。図11Cの例では、シーケンス制御回路120は、図5Gで破線の領域(すなわち、1回の収集ですべてのスライスについて得ることができない「効率の悪い周波数」)の領域については、収集を省略する。これにより、撮像時間の短縮と画像の劣化の防止を両立することができる。
以上のように、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100は、一部の周波数領域について収集を省略し、省略した部分について所定の操作を行うことで、CEST効果の大きさを表すスペクトルを得る。これにより、撮像時間を短縮することができる。
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
なお、実施形態におけるコンピューター又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピューターとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。図12は、実施形態に係るコンピューター130(画像処理装置)のハードウェア構成を示す図である。上述した実施形態に係る画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)310等の制御装置と、ROM(Read Only Memory)320やRAM(Random Access Memory)330等の記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F340と、各部を接続するバス301とを備えている。
上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、ROM320等に予め組み込まれて提供される。また、上述した実施形態に係る画像処理装置で実行されるプログラムは、コンピューターを上述した画像処理装置の各部として機能させ得る。このコンピューターは、CPU310がコンピューター読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法によれば、撮像時間を短縮することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。