JP2017121459A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】パルス印加時間の延長を招くことなく、2つの組織或いは部位の内、一方を他方に対し、高輝度で描出することが可能なMRI装置及び方法を提供する。
【解決手段】MRI装置の撮像部は、第一の領域を励起する予備RFパルスと、前記第一の領域とは異なる第二の領域を励起する励起RFパルスとを含む高周波パルスを用いてNMR信号を収集する。複数チャネルから照射された高周波パルスによって生じる照射磁場分布を調整するシミングパラメータを算出するシミングパラメータ算出部は、予備RFパルスと励起RFパルスに対し、それぞれ、異なるシミングパラメータを設定し、撮像部は異なるシミングパラメータで調整された予備RFパルスと励起RFパルスとを用いて撮像を行う。
【選択図】図6

Description

本発明は磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関し、特に、所定の信号を抑制する抑制パルスを用いた撮像技術に関する。
MRI装置は、生体内に存在する原子核、主としてプロトンからのNMR信号を計測し、生体組織を構成する原子核密度(プロトン密度)やNMR信号の位相情報を画像化する装置である。MRI装置では、血流プロトンと静止した組織のプロトンとの挙動の相違を利用した血流撮像法が種々開発されており、さらに血流の方向の違いを利用して、所望の血流をほかの血流より高輝度で描出する技術が広く使われている。例えば、上流側或いは下流側の血流プロトンを予備励起して、撮像領域に入る血流の信号を抑制して静脈と動脈を分離する技術などがある。
このような技術では、不要な血流からの信号を抑制するために、不要な血流のプロトンを予め飽和させて信号を弱めるRFパルス(プリサチュレーションパルスと呼ばれる)が用いられる。この方法では動脈と静脈を分離することはできるが、複数の動脈或いは静脈のうちの所望のものだけを選択的に描出することはできない。これに対し、RFパルスと領域選択傾斜磁場との組み合わせにより所望の部位のみを励起する手法(2D励起法)も開発されている。例えば、特許文献1には、頭頸部の血管の走行状態を画像化する際に、2D励起法を採用し、2本の頸動脈のうち1本からの信号を抑制し、他の1本だけを描出する技術が提案されている。
一方、現在のMRI装置では、RFパルスを複数の小型コイルを組み合わせた多チャネル送信コイルを用いて照射する。この場合、励起RFパルスには、励起する領域に対し、照射される磁場(照射磁場)を空間的に一様にしたいという要請がある。励起磁場に分布があると、それに起因して組織からのNMR信号にムラを生じ、正確なプロトン分布や位相情報が得られなくなるからである。このため、従来のMRI装置では、予め各チャネルから照射されるRFパルスにより生じる磁場分布を測定し、磁場分布を均一化するための補正量を算出し、RFパルスを発生するRFコイルの駆動電圧に、この補正量を重畳する(特許文献2)。この補正量は、RFシミングパラメータ(以下、単にシミングパラメータという)と呼ばれる。
国際公開2011/037064号 特開2010−29640号公報
複数の動脈からの血流のうち所望の動脈のみを描出する場合、上述の2D励起法では、特殊な形状(エンベロープ)のRFパルスと傾斜磁場パルスとを組み合わせて印加し、限定された領域のみを励起してプリサチュレーションするので、RFシミングは省くことができる。しかし、RFパルスと傾斜磁場パルスの組み合わせで励起するものであるため、プリサチュレーションに必要なパルス印加時間が長いという問題がある。
本発明は、予備RFパルスと励起RFパルスとを用いた撮像において、これらRFパルスを、所定の組織或いは部位に対し異なる効果を持つ異なるシミングパラメータで調整することにより、パルス印加時間の延長を招くことなく、2つの組織或いは部位の内、一方を他方に対し、高輝度で描出することを可能にする。例えば、予備RFパルスは、それにより励起される領域において、複数の部位の一つが他の部位よりも照射磁場が小さくなる照射磁場分布となるようにシミングパラメータが調整され、励起RFパルスは励起される領域全体が均一な照射磁場分布となるようにシミングパラメータが調整される。
本発明は、血流撮像に好適に適用される。
本発明が適用されるMRI装置の一実施形態を示す図 本発明で採用される送信コイルの一実施形態を示す図 第一実施形態のMRI装置の演算部の機能ブロック図 第一実施形態で採用するパルスシーケンスの一例を示す図 第一実施形態の撮像方法における第一領域と第二領域の関係を説明する図 第一実施形態の演算部の動作を示すフロー図 第一実施形態におけるROI指定のための入力画面例を示す図で、頸部断層像の上に二つのROIを指定する様子を示す。 (a)、(b)は、第一実施形態における初期照射磁場分布とシミングパラメータにより調整した後の照射磁場分布を示す。 第一実施形態のMRI装置で撮像される画像例を示す図で、(a)はプリサチュレーションを行わない場合の頭部画像、(b)は右頸動脈からの信号を抑制した頭部画像、(c)は左頸動脈からの信号を抑制した頭部画像である。 第一実施形態の変形例におけるROI設定を説明する図 第二実施形態の演算部の動作を示すフロー図 第二実施形態のMRI装置で実行される撮像とそれにより得られる画像との関係を示す図 第三実施形態の撮像方法における第一領域と第二領域の関係を説明する図 第三実施形態で採用するパルスシーケンスの一例を示す図
本発明の実施の形態の概要を説明する。
本実施形態のMRI装置は、複数チャネルの各々から高周波パルスを照射する複数チャネル送信コイルを有し、被検体の第一の領域を励起する予備RFパルスと、前記第一の領域とは異なる第二の領域を励起する励起RFパルスとを含む高周波パルスを用いてNMR信号を収集する撮像部と、前記複数チャネルから照射された高周波パルスによって生じる照射磁場分布を調整するシミングパラメータを算出するシミングパラメータ算出部と、を備える。前記シミングパラメータ算出部は、前記予備RFパルス用のシミングパラメータとして、前記励起RFパルス用に設定されたシミングパラメータである第二のシミングパラメータとは異なる第一のシミングパラメータを算出し、前記撮像部は前記第一のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと、前記第二のシミングパラメータで調整した励起RFパルスとを用いて撮像を行う。
シミングパラメータ算出部は、例えば、前記予備RFパルスにより前記第一の領域に生じる照射磁場分布が、第一の部位の照射磁場が第二の部位の照射磁場より小さくなるように、前記第一のシミングパラメータを算出する。なお照射磁場(B1)が大きい/小さいとは、その強度(|B1|)が大きい/小さいことを意味する。
本実施形態のMRI装置は、従来のRFシミングが撮像部位における照射磁場分布を均一にするようにシミングパラメータを設定するものであったのに対し、予備RFパルスによる照射磁場分布を所望の部位(第一の部位)で小さくなるシミングパラメータを設定することで、その後の励起RFパルスによって選択励起される撮像部位において、当該所望の部位を選択的に描出することができる。或いは、その後の励起パルスによって選択励起される撮像部位において、当該所望の部位以外の部位を選択的に描出することができる。
次に、本実施形態が適用されるMRI装置の全体構成を説明する。図1は、本実施形態のMRI装置の全体構成を示すブロック図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置100は、静磁場発生部2、傾斜磁場発生部3、シーケンサ4、送信部5、受信部6、信号処理部7、演算部8及び被検体1を載せるベッド9を備えている。
静磁場発生部2は、被検体1が置かれる空間に均一な静磁場を発生させる装置であり、永久磁石方式、常電導方式或いは超電動方式の静磁場発生装置を備えている。静磁場の方向によって、垂直磁場方式と水平磁場方式があり、その方式の相違により、静磁場発生装置に含まれる磁石の形状やそれを囲むガントリ形状が異なる。本発明ではいずれの方式の静磁場発生装置も限定されず適用できる。
傾斜磁場発生部3は、静磁場発生部2が形成する静磁場空間に磁場勾配を形成するものであり、MRI装置の座標系すなわち静止座標系であるX、Y、Zの3軸方向の傾斜磁場を発生する3組の傾斜磁場コイル31と、それぞれの傾斜磁場コイル31を駆動する傾斜磁場電源33とを備える。後述するシーケンサ4からの命令に従って、それぞれの傾斜磁場電源33を駆動することにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzを印加する。これにより、高周波パルスの照射に応答して被検体1から発生するNMR信号(エコー信号)に位置情報を付与することができる。具体的には、これら3組の傾斜磁場コイルの組み合わせにより、任意の方向の撮像断面(スライス面)を設定し、そのスライス面に直交し且つ互いに直交する2つの方向についてエコー信号を位相エンコードしたり周波数エンコードしたりすることができる。
送信部5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1に高周波パルスを照射するもので、高周波発振器51、変調器53、高周波増幅器55及び高周波コイル(以下、送信コイルという)57を備える。一般的なMRI装置で撮像対象とする原子核種は、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。
高周波発振器51から出力されたRFパルスをシーケンス4からの指令によるタイミングで変調器53により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器55で増幅した後に送信コイル57に供給することにより、所定の振幅及び位相を持つ高周波パルス(以下、RFパルスという)が被検体1に照射される。RFパルスの振幅や位相は、変調器53及び高周波増幅器55により調整することが可能である。
送信コイル57は、静磁場発生部2が垂直磁場方式か水平磁場方式かによって、或いは全身用か局所用かによって、種々の種類の高周波コイルが用いられる。本実施形態においもて送信コイル57の種類には限定されないが、複数対の給電点を持つ複数チャネルの送信コイルが用いられる。なお本明細書において「複数チャネルの送信コイル」は、複数の小型コイルを組み合わせたマルチプルコイルや、バードケージコイルやTEM(Transverse Electromagmetic)コイルのような給電点の対が複数ある送信コイルを含む。
複数チャネルの送信コイル57は、図2に示すように、各チャネルがそれぞれ送信部5に接続されており、チャネル毎に駆動される。なお図2では、4チャネルの送信コイルを例示しているが、チャネル数は3以上であれば特に限定されない。このような複数チャネルの送信コイル57から照射する高周波パルスによって発生する磁場(以下、照射磁場という)は、各チャネルの照射磁場を合成したものであり、その組み合わせによって照射磁場分布が決まる。一般には、照射磁場は空間的に均一であることが好ましく、照射磁場分布が空間的に均一であるように、各チャネルから照射されるRFパルスの振幅と位相が調整される。このRFパルスの振幅と位相を調整することをRFシミングと言い、照射磁場分布を決定する各RFパルスの振幅と位相をRFシミングパラメータと言う。照射磁場分布は、被検体に内在する磁化の影響も受けるため、RFシミングは被検体毎(被検体の撮像部位毎)に行う必要がある。本実施形態のMRI装置で行うRFシミングの詳細は後に詳述する。
受信部6は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号を検出するもので、受信側の高周波コイル(以下、受信コイルという)61と、信号増幅器63と、直交位相検波器65と、A/D変換器67とを備える。受信コイル61で検出されたエコー信号は、信号増幅器63で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器65により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器67でディジタル量に変換されて、信号処理部7に送られる。
本実施形態のMRI装置の撮像部は、以上説明した静磁場発生部2、傾斜磁場発生部3、シーケンサ4、送信部5及び受信部6によって構成されている。
信号処理部7は、各種データ処理と処理結果の表示および保存等を行うもので、演算部8を兼ねるCPU81を備え、さらに光ディスクや磁気ディスク等の外部記憶装置71、画像やGUI等を表示する表示部(ディスプレイ)73及び入力部75などを備えることができる。入力部75は、MRI装置の各種制御情報や信号処理部7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール、キーボード、マウスなどの入力装置を含み、GUIを表示するディスプレイ73とともにユーザーインターフェイスを構成する。即ち操作者は、入力部75に近接して配置されたディスプレイ73の表示画面を見ながら入力部75を介してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
受信部6からデータ(エコー信号)がCPU81に入力されると、CPU81は信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の画像をディスプレイ73に表示させるとともに、外部記憶装置71に記録する。被検体1の画像は、例えば、プロトン密度の空間分布や励起状態の緩和時間の空間分布を画像化した形態画像や機能画像を含む。
演算部8は、シーケンサ4を介して送信部5及び受信部6に指令を送り、所定のパルスシーケンスに従って撮像を行うように制御する。パルスシーケンスは、高周波パルス及び傾斜磁場パルスの印加強度やタイミング、及びエコー信号収集タイミングなどを定めたもので、撮像方法によって種々のものがあり、プログラムとして内部記憶装置或いは外部記憶装置に格納されている。演算部8は所望のパルスシーケンスを読出し、実行することで、当該パルスシーケンスに従った撮像を制御する。
演算部8は上述した撮像の制御の他に、パルスシーケンスに含まれる高周波パルスの照射磁場を決定するシミングパラメータを算出する機能を有する。既に述べたように、本実施形態の送信コイル57は多チャネル送信コイルであり、演算部8は送信コイルのチャネル毎にシミングパラメータを算出し、照射磁場を最適化する。なお最適化は、従来のMRI装置のような均一化だけを含むものではない。
本実施形態のシミングパラメータ算出部は、この演算部8において上述したシミングパラメータ算出の機能を実現する部分を意味する。演算部8は、主としてCPU81とそれに付随するソフトウェアやメモリ等で構成されるが、シミングパラメータ算出部を含む演算部の機能の一部或いは全部は、CPU81以外のハードウェア、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programable Gate Array)などで実現することも可能であり、本発明に含まれる。
本実施形態のMRI装置は、予備RFパルスを含むパルスシーケンスを実行する際に、予備RFパルスのシミングパラメータと、予備RFパルスとは別に印加される、撮像部位を励起するための励起RFパルスのシミングパラメータとを、当該撮像部位の所望の部分の描出能を高めるように異ならせることが特徴である。例えば予備RFパルスが、所定の領域の磁化を予め飽和させて、当該所定の領域からの信号を抑制する抑制RFパルスの場合、その抑制効果が所定の領域内で部分的に異ならせるシミングを行う。一方、励起RFパルスについては、照射磁場分布を領域全体として均一化するシミングを行う。
以下、具体的な撮像方法に即して、本実施形態のMRI装置のシミング手法の実施形態を説明する。
<第一実施形態>
本実施形態のMRI装置は、撮像部が、第一の領域を励起する予備RFパルスの印加に続いて、励起RFパルス及びエンコード傾斜磁場の印加とNMR信号収集とを含むパルスシーケンスを実行し、第二の領域を撮像する。一例として、予備RFパルスは、第一の領域からの信号を抑制する抑制RFパルスであり、パルスシーケンスは、TOF(タイムオブフライト)法に基づくパルスシーケンスである。
また本実施形態のMRI装置は、シミングパラメータ算出部が、予備RFパルス用のシミングパラメータ(第一のシミングパラメータ)として繰り返し演算により、所望の部位における照射磁場分布が最小値を取るシミングパラメータを算出する。また励起RFパルス用のシミングパラメータ(第二のシミングパラメータ)として、第二の領域全体の照射磁場分布を均一化するシミングパラメータを算出する。
以下、頸部動脈を対象とした血管撮像を行う場合を例に、本実施形態のMRI装置の、主として演算部の機能と動作を説明する。
本実施形態の演算部8は、図3に機能ブロック図を示すように、ROI設定部81、照射磁場算出部82、シミングパラメータ算出部83、撮像制御部84、画像再構成部85、表示制御部87、メモリ89を備える。なお演算部8は、図3には示す各部のほかに、シミングパラメータ以外の撮像のための条件を算出したり設定したりするための機能を備えていてもよい。
ROI設定部81は、入力部75を介して入力された1ないし複数のROIの情報(座標)を受け付ける。照射磁場算出部(B1算出部)82は、NMR信号をもとに被検体1の所定の撮像断面における照射磁場分布を算出する。図示する例ではB1算出部82は、シミングパラメータ算出部83の一機能として示しているが、独立していてもよい。シミングパラメータ算出部83は、B1算出部82が算出した照射磁場分布と、ROI設定部81が設定したROI情報をもとに、所定の照射磁場分布を生成するためのシミングパラメータを算出する。ここでは、送信コイル57は図2に示すような4チャネル送信コイルであり、それぞれのチャネルのシミングパラメータを算出するものとする。
撮像制御部84は、シミングパラメータ算出部83で算出したシミングパラメータや入力部75を介して選択されたパルスシーケンスをシーケンサ4に設定し、シーケンサ4を介して撮像部を制御する。
画像再構成部85は、撮像によって受信部6が受信したデータを用いて、被検体の画像を再構成する。被検体の画像には、撮像対象部位の画像の他に、撮像前に取得される位置決め画像なども含まれる。
表示制御部87は、画像再構成部85が作成した画像を表示画像としてディスプレイ73に表示させるとともに、ディスプレイ73に表示されるGUI等の制御を行う。
演算部8の動作を説明する前に、本実施形態のMRI装置による血管撮像に用いられるパルスシーケンスを説明する。図4に血管撮像用のパルスシーケンスの一例として3D−TOFシーケンス400を示す。図4において、RFはRFパルスの印加タイミング、Gs、Gp及びGrは、それぞれ、スライス選択傾斜磁場パルス、位相エンコード傾斜磁場パルス、読出し傾斜磁場パルス(周波数エンコード傾斜磁場パルス)の印加タイミング、Sigはエコー信号の発生を示している。
このパルスシーケンスは、抑制RFパルス411を印加する第1の部分410と、励起RFパルス421を印加してからエコー信号を計測するまでの第2の部分420とを含み、第1の部分410では、抑制RFパルス411と同時にスライス傾斜磁場パルス412を印加し、図5に示すように、頸動脈が流れる被検体領域(第一の領域)510を励起し、予め頸動脈流を流れる血流スピンを飽和する。但し、後述するように、ここでは抑制RFパルス411によって第一の領域510が均一に励起されるのではなく、第一の領域510に含まれる予め指定されたROIでは抑制効果が弱まるように励起される。
パルスシーケンスの第2の部分420では、励起RFパルス421と同時に、第1の部分410の傾斜磁場パルス412とは異なるスライス面を選択するスライス傾斜磁場パルス422を印加して被検体頭部520(第二の領域)を励起し、頭部を流れる頸動脈流を撮像する。抑制RFパルス411と励起RFパルス421との間隔は、頸部と頭部の撮像部位の位置関係及び血流速度を考慮した適切な時間に設定される。
励起RFパルス421及びスライス傾斜磁場パルス422の印加後、スライス方向及び位相エンコード方向にそれぞれ傾斜磁場パルス423、424を印加し、読出し傾斜磁場425を印加してエコー信号426を取得すること、信号取得後にリフェイズ用の傾斜磁場パルスを印加することは、通常のTOF法のパルスシーケンスと同様である。図示するパルスシーケンスは3Dパルスシーケンスであるので、スライスエンコード傾斜磁場パルス423と位相エンコード傾斜磁場パルス424及びこれらのリフェイズ用傾斜磁場パルスの強度を変化させながら、エコー信号の計測を繰り返し、被検体頭部520の三次元データを得る。
TOF法のパルスシーケンスでは、短い繰り返し間隔で連続して信号を計測することにより血流の流入効果を利用して、血流スピンを描出する。従って、第1の部分410即ち抑制RFパルス411の印加がない場合には、左右の頸部動脈から頭部に流れる血流全体が描出される。本実施形態では、抑制RFパルス411による照射磁場分布と励起RFパルス421による照射磁場分布とを異ならせることにより、具体的には、左右の頸動脈の内の一方について、抑制RFパルス411照射時の照射磁場が他方の照射磁場より小さくなるようにシミングパラメータを調整することによって、当該一方の頸動脈のみが抑制されない状態を作り出す。これにより続くTOF法の撮像において、一方の頸動脈のみを描出することができる。
次にシミングパラメータ算出部83におけるシミングパラメータの算出を中心に、演算部8の動作を説明する。図6に動作のフローを示す。
まず本撮像に先立って、撮像制御部84は、送信コイルの個々のチャネルの空間感度分布を取得するためのプリスキャンと位置決め画像の撮像とを実行する(S601)。プリスキャンで得られた各空間感度分布をもとに、送信コイルの各チャネルのパラメータ(位相と振幅)が設定される。この場合のパラメータはデフォルトで設定されていてもよい。また空間感度分布はメモリ89に記憶される。位置決め画像は、例えば、比較的低い空間分解能で広い視野を撮像した画像であり、検査者はこの位置決め画像をもとに撮像すべき断面を設定したり、関心領域(ROI)を指定したりすることができる。
演算部8(表示制御部87)は、位置決め画像をもとに指定された第一領域の断面を表示部73に表示させて、入力部75を介したROIの指定を受け付ける(S602)。ROI指定の画面例を図7に示す。図示する例では、プリサチュレーション領域(第一の領域)の断面像700が表示され、検査者が、その画像に描出された左右二つの頸動脈を円形のマークで指定することで、頸動脈の位置情報が演算部8に渡され、ROIとしてROI設定部81に設定される。ここで、信号を抑制した頸動脈に設定したROIを「ROI_T」、抑制しない頸動脈即ち描出したい頸動脈を「ROI_F」と定義する。
なおROI設定用の画像として位置決め画像から作成した断面図の代わりに、送信コイルの各チャネルのパラメータ(位相と振幅)初期値から求めた照射磁場分布B1を表示してもよい。
次にシミングパラメータ算出部83は、メモリ89に格納された送信コイル57の各チャネルの空間感度分布B1n(添え字nは1〜Nの整数、Nはチャネル数を表す。以下、同じ)とROI設定部81に設定されたROIの情報を用いて、所望の照射磁場分布を与えるシミングパラメータを算出する(S603)。
このため、まず照射磁場算出部82は、各チャネルの空間感度分布B1n及び個々のチャネルの位相φnと振幅Anを用いて、プリサチュレーション領域全体の照射磁場分布(B1マップ)B1を算出する。一般に照射磁場分布B1は、式(1)で表される。
Figure 2017121459
ここでシミングパラメータ(An、φn)の初期値を用いて式(1)で算出した照射磁場分布B1を以下の計算の初期値B1とする。
次にシミングパラメータ算出部83は、各チャネルの位相φnと振幅Anを変化させたときに、ROI_FにおけるB1の平均値を評価関数f(次式(2))とし、この評価関数を最小化する位相と振幅の組み合わせ即ちシミングパラメータを算出する。
Figure 2017121459
評価関数fを最小とするシミングパラメータの算出は、例えば、最急降下法など公知の最適化アルゴリズムを用いることができる。繰り返し演算におけるB1(ROI_F)の初期値としては、照射磁場分布の初期値B1のうち、ROI_Fにおける分布を用いることができる。また繰り返し演算の拘束条件として、ROI_TにおけるB1の平均値を変えないという条件を設定する。即ち、B1(ROI_T)におけるB1の平均値は、式(3)に示すように、初期値B1のROI_Tにおける平均値B1(ROI_T)に維持する。
Figure 2017121459
上述した拘束条件に加えて、比吸収率(SAR)SARの制限を拘束条件として追加してもよい。初期値で設定されたシミングパラメータ(An、φn)が、SARを考慮して設定されているものであれば、その時のSARと同じか、それを超えないことを拘束条件とする。SARはパルスシーケンスとそれを決定するパラメータが決まれば算出することができ、その算出方法は公知であるので、ここでは説明を省略する。
演算部8は、算出したシミングパラメータによって得られる照射磁場分布画像を表示部73に表示させてもよい(S604)。この照射磁場分布画像を、例えばROI設定画面に用いた画像と並列に表示することにより、ROI_T及びROI_Fが適切に信号抑制される或いは信号抑制されない照射磁場分布となっているかどうかを確認することができる。ただし結果を表示部73に表示させることは本実施形態において必須ではない。
本実施形態によりシミングパラメータを変化させた場合の第一の領域(抑制RFパルスによる励起領域)の照射磁場分布の変化を図8に示す。図8(a−1)は初期のB1マップ画像で、この画面上に設定されたROI_TとROI_Fが表示されている。図8(b−1)は、上記ステップS803において算出したシミングパラメータを用いて算出した照射磁場のB1マップ画像である。両図(a−1)(b−1)の下側に、ROI_TとROI_Fを通り、X軸に平行な線上(白線)における画素値(磁場強度に対応)を示す(図8(a−2)(b−2))。これらの比較からわかるように、初期的に磁場分布は均一化されておりROI_TとROI_Fとで殆ど差がないが、シミング後はROI_TのほうがROI_Fに比べ磁場強度が大きい。つまりこの照射磁場分布でRFパルスを照射した場合、ROI_T内の血流スピンは励起されて次のTOFパルスシーケンスにおける信号が抑制されるが、ROI_F内の血流スピンは信号が抑制されず、流入効果により高コントラストで撮像される。
シミングパラメータ算出部83は、算出されたシミングパラメータを図4に示すパルスシーケンス400の抑制RFパルス411のシミングパラメータ(第一のシミングパラメータ)として撮像部(シーケンサ4)に設定する。
続いてシミングパラメータ算出部83は、TOF法の撮像対象部位(第二の領域)のシミングパラメータ(第二のシミングパラメータ)を算出する(S605)。頭部のシミングパラメータは、頭部の照射磁場均一度を最良にするよう決定される。均一度の計算は、例えば、式(4)で表される評価関数Usdを用い、この評価関数を最小化するシミングパラメータを算出する。
Figure 2017121459
式中、m(B1)及びσ(B1)は、それぞれB1の平均値、標準偏差である。つまりUsdは、標準偏差をB1の平均値で除した値であり、この値はB1のばらつきが小さいほど小さく、B1均一度が高いということになる。なお図6のフローでは、ステップS605を、第一のシミングパラメータ算出ステップS603の後に行うものとしているが、撮像前のプリスキャンで各空間感度分布B1nを得た後、直ちにステップS605を行ってもよい。
ステップS605で算出したシミングパラメータは、図4のパルスシーケンス400の励起RFパルス421のシミングパラメータ(第二のシミングパラメータ)として撮像部(シーケンサ4)に設定する。
こうして各RFパルス411、421のシミングパラメータが設定された後、撮像制御部84は撮像を開始する(S606)。即ち、図4に示すパルスシーケンス400に従い撮像を行い、撮像部位である頭部の画像データを取得する。この際、抑制RFパルス411は、第一のシミングパラメータで照射し、励起RFパルス421は第二のシミングパラメータで照射する。励起RFパルス421で励起される撮像断面では、ROI_T内の血流スピンは抑制RFパルス411によって飽和された状態で流入するので、そこからの信号は抑制される。一方、ROI_F内の血流スピンは抑制RFパルス411により抑制されずに撮像断面に流入し、流入効果により高信号となる。即ちROI_Fとして選択された頸動脈のみが描出された画像を得ることができる。
図9に、本実施形態を適用した画像例を示す。図9(a)は図4のパルスシーケンス400の第1の部分410を省いて、即ちプリサチュレーションを行うことなくTOF法の撮像を行って得た画像を示す。図9(b)、(c)は、それぞれROI_Fを左頸動脈、右頸動脈に設定し、プリサチュレーションを含む図4のパルスシーケンスの撮像を行って得た画像を示す。
なお3Dパルスシーケンスで3Dデータが得られている場合には、画像再構成部85は、画像は断層像のみならず、ボリュームレンダリング、MIP処理等公知の手法を用いた3D画像を作成してもよい。表示制御部89は、画像再構成部85が作成した画像を、必要に応じて被検体や撮像に関する付帯情報とともに表示部73に表示させる(S607)。
以上、説明したように本実施形態によれば、第一の領域を励起する抑制RFパルスと第一の領域とは異なる第二の領域を励起する励起RFパルスを用いて血流撮像する際に、抑制RFパルスのシミングパラメータと励起RFパルスのシミングパラメータとを異ならせることにより、第一及び第二の領域を流れる血流のうち所望の血流のみを選択的に画像化することができる。この場合、所謂2D励起のようなRFパルス印加時間の長い高周波パルスを使用しないので、計測時間の長時間化を抑制し、またSARも適切な範囲に抑制することができる。
以上、頸動脈を対象として血流撮像する場合を例に第一実施形態を説明したが、撮像対象は頸動脈に限らず、種々の血流を対象とすることができる。また上記実施形態では3D−TOF法のパルスシーケンスを例示したが、2D−TOF法でもよいし、エンコード方向や傾斜磁場印加方法についても公知の種々の変形例を採用することが可能である。さらにプリサチュレーションに続く血流撮像シーケンスとしては、TOF法に代えて、PC(Phase Contrast)法などのパルスシーケンスも採用することが可能である。
また上記実施形態では、検査者の入力を受け付けてROIを設定する場合を説明したが、部位によっては、ROI設定部81が断面画像の画素値や所定画素値の面積等の情報を用いて、大きな動脈部分を自動的に検出しROIを設定することも可能である。この場合には、図6のROI設定ステップS603は、ROI設定部81によるROIの自動設定ステップとなる。
<第一実施形態の変形例>
第一実施形態では、二つのROI(ROI_T、ROI_F)を設定し、一方からの信号が抑制され、他方からの信号は抑制されないようにシミングパラメータを設定したが、設定するROIは二つに限らない。以下、第一実施形態の変形例として、三つのROIを設定する場合を説明する。装置の構成、採用するパルスシーケンスなどは第一実施形態と同様であるので、第一実施形態と共通する要素やステップの説明は省略し、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。また必要に応じて、第一実施形態で参照した各図を援用する。
図10に、第一の領域の断面を表示したROI設定画面例を示す。図示するように、頭部に流れる動脈には第一実施形態で説明した2本の頸動脈の他に、椎骨動脈がある。本実施形態では、2本の頸動脈と椎骨動脈のいずれか二つからの信号を抑制し、一つの動脈だけを描出する。このためROI設定部81は、血流描出(図4のパルスシーケンスの第2部分420)において信号を抑制する2つのROI_T1、ROI_T2と、信号の抑制を行わない一つのROI_Fを設定する。例えば、左右頸動脈の一方と椎骨動脈からの信号を抑制し、頸動脈の他方の信号を抑制しない設定とする。ROIの設定は、第一実施形態と同様に、図10に示すような、抑制RFパルスによって信号抑制される領域(第一の領域)の断層像を表示し、検査者によるROIの指定を受け付けることにより行うことができる。また自動的に設定してもよい。
次にシミングパラメータ算出部83は、ROI設定部81が設定した上記3つのROIの位置情報及びプリスキャンで得られる送信コイル各チャネルの送信感度分布B1nを用いて、繰り返し演算により、前掲の式(2)で表される評価関数を最小化するシミングパラメータを算出する。
ただし、この繰り返し演算では、次式に示すように、二つのROI_T1、ROI_T2において、第一の領域の照射磁場分布の平均値がいずれも変化しないことを拘束条件とする。この場合にもSARなどの拘束条件を追加してもよい。
Figure 2017121459
こうして算出されたシミングパラメータを撮像部に設定し、図4に示すパルスシーケンスを実行し第二領域の撮像を行うことは第一実施形態と同様である。
本変形例によれば、頭部の動脈撮像において、椎動脈からの信号も併せて抑制するので、左右頸動脈を別々に撮像する際の描出能を高めることができる。また信号を抑制しない部位(ROI_F)として椎動脈を設定した場合には、椎動脈のみを撮像することができる。なお本変形例も頸動脈の撮像に限らず、大きな動脈が複数本流れている腹部その他の部位について、その1つの動脈を撮像する場合に適用することができる。
<第二実施形態>
本実施形態は、抑制RFパルス用のシミングパラメータを複数算出し、シミングパラメータを異ならせた撮像を複数行い、これら撮像によって得られた画像間の計算により、目的とする部位の画像を得ることが特徴である。
即ち本実施形態のMRI装置は、シミングパラメータ算出部が、予備RFパルス用のシミングパラメータとして、第一のシミングパラメータの他に、第一のシミングパラメータと異なる第三のシミングパラメータを算出し、撮像部は、前記第一のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと前記励起RFパルスとを用いた第一の撮像、前記第三のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと前記励起RFパルスとを用いた第二の撮像、及び前記予備RFパルスを用いず前記励起RFパルスを用いた第三の撮像を行い、前記第一の撮像、第二の撮像及び第三の撮像で得たNMR信号を用いて前記被検体の画像を形成する。
本実施形態においても演算部の構成は、図3に示す第一実施形態の構成と共通しているので、適宜、図3を援用し、第一実施形態と異なる演算部及び撮像部の機能を中心に説明する。
本実施形態のMRI装置の撮像部及び演算部の動作手順を図11に示す。図11において、図6と同じステップは同じ符号で示し説明を省略する。
前計測(S601)に続く、ROI設定ステップS602では、第二実施形態と同様に3つのROI、例えば、二つの頸動脈と椎骨動脈にROIを設定する。これらをROI_A(左頸動脈)、ROI_B(右頸動脈)、ROI_C(椎骨動脈)とする。次いでシミングパラメータ算出部83は、抑制RFパルスのシミングパラメータとして二つのシミングパラメータ(第一及び第三のシミングパラメータ)を算出する(S6031、S6032)。第一のシミングパラメータは、例えば、照射磁場分布がROI_Aで最小となるように決定される。他の二つのROI_B、ROI_Cでは、照射磁場分布の平均値が変化しないことを拘束条件とする。第三のシミングパラメータは、の例えば、照射磁場分布がROI_Bで最小となるように決定される。他の二つのROI_A、ROI_Cでは、照射磁場分布の平均値が変化しないことを拘束条件とする。また撮像部位である第二領域についてもシミングパラメータ(第二のシミングパラメータ)を設定する(S605)。これはプリスキャン時に設定された初期値でもよく、第二領域の照射磁場分布を均一とするように決定されたシミングパラメータである。
なお図11では省略したが、第一実施形態のステップS604と同様に、これらシミングパラメータを用いた場合にRFパルスの照射で生じる磁場分布(B1マップ)を算出し、表示してもよい。
次に撮像部は、3つの撮像を順次実行する(S6061)。これらの撮像の順序は問わない。第一の撮像では、図4に示すパルスシーケンス400において、第一のシミングパラメータで調整した抑制RFパルスを照射する。従ってそれに続くパルスシーケンスにおいて、ROI_A(左頸動脈)以外の信号は抑制され、左頸動脈を高輝度で描出した画像が得られる。第二の撮像では、第三のシミングパラメータで調整した抑制RFパルスを照射し、ROI_B(右頸動脈)以外の信号が抑制された画像を得る。第三の撮像では、プリサチュレーションを行わない。即ち、図4に示すパルスシーケンス400の抑制RFパルス印加部分410を行わずにTOF法パルスシーケンスを実行する。これによりいずれの動脈からの信号も抑制されず流入効果で高輝度に描出された画像が得られる。
第一〜第三の撮像における信号抑制と得られる画像との関係を示す表を図12に示す。図示するように、これら3つの撮像により、左頸動脈の画像、右頸動脈の画像、3つの動脈の画像が得られる。画像再構成部85は、これら3つの撮像で得られた画像の演算により所望の画像を得る。例えば、第三の撮像で得られた画像データから、第一及び第二の撮像で得られた画像データを差分することにより、椎骨動脈の画像を得ることができる。その他、任意の2つの動脈を描出した画像を得ることができ、各動脈の関係などを把握しやすい形で表示部に表示させることができる。
なお3つの動脈の画像をそれぞれ得ようとする場合、第一実施形態の変形例で説明したように、抑制RFパルスの照射の際に、それぞれの動脈が抑制されない照射磁場分布を算出して、3つの撮像を行うことも可能であるが、本実施形態によれば、2つの撮像だけ照射磁場分布を算出すればよく、照射磁場分布算出処理を減らすことができる。
<第三実施形態>
本実施形態は、ASL(動脈スピンラベル潅流イメージング)法に基づくパルスシーケンスを対象とする。予備RFパルスは、第一の領域を流れる血流スピンをラベルする予備RFパルスであり、予備RFパルスによってラベルされた血流スピンが流入する第二の領域を撮像する。
ASL法は、血流スピンをラベルして信号計測するパルスシーケンスと、コントロールとして血流スピンをラベルしないで信号計測するパルスシーケンスとを実行し、2つのパルスシーケンスによって得られる画像を差分することにより、潅流を描出する手法である。ラベル処理では、撮像しようとする部位に対し血流の上流部分に位置する部位に予備RFパルスを照射し、その部位の血流スピンを反転させる。コントロール処理では、ラベル処理と同じ部位に、血流スピンを反転させない、即ちその部位の磁化が0度となるような予備RFパルス(コントロールRFパルス)を印加する。例えば図13の示すように撮像部位が頭部530の場合、頸部540の血流スピンをラベル処理/コントロール処理する。ラベル処理/コントロール処理から、それぞれ、所定時間後に目的の撮像部位530を選択して、血流撮像パルスシーケンスを実行し、画像データを得る。
ラベル処理及びコントロール処理に用いられる予備RFパルスとしては、例えば、ラベル用として、90度パルス:180度パルス:90度パルスのようなパルス列、コントロール用として90度パルス:180度パルス:−90度パルスのようなパルス列、などが知られており、本実施形態においても特に限定されず公知の予備RFパルスが用いられる。
血流撮像パルスシーケンスとしては、励起RFパルス印加後にフローエンコードパルス(VENC)を用いたPC法によるパルスシーケンスを用いることができ、エコー信号収集にはGrE−EPI(グラディエントエコープレナー法)やFSE(高速スピンエコー法)などが用いられる。図14にASL法のパルスシーケンス800の一例を示す。ここでは説明を簡単にするために、RFパルス801、802及びVENC803の印加タイミングと信号収取804のみを示し、スライス選択のための傾斜磁場やエンコード傾斜磁場は省略している。またラベル用のパルスシーケンスとコントロールパルスケンスをまとめて示している。このパルスシーケンスでは、図示するように、撮像部位の血流に対し上流に位置する部位(例えば頸部540)を選択してラベル用或いはコントロール用の予備RFパルス801を印加した後、所定の時間を置いて撮像部位530を励起する励起RFパルス802を印加する。励起RFパルス802印加後、VENCパルス803を印加し、所定のエンコード傾斜磁場を与えた状態で、エコー信号を取得する。
ここで予備RFパルス801と励起RF802とは、それぞれのシミングパラメータが独立して設定される。まず予備RFパルス801については、第一の領域540を流れる血流のうち、描出しようとする血管以外の血管部分で照射磁場分布が小さくなるようにシミングパラメータが設定される。即ち、予備RFパルス801で励起される領域について、予め設定した2つのROI_T、ROI_Fをもとに、一方(ROI_T)は照射磁場分布の平均値が変化せず、他方(ROI_F)では最小となるようにシミングパラメータを算出する。ラベル用のRFパルスとコントロール用のRFパルスは同じシミングパラメータとする。励起RFパルス802については、撮像部位全体として照射磁場の均一度を最適化する(最も均一度が高まる)シミングパラメータを算出する。これらシミングパラメータの算出方法は第一実施形態で説明した手法と同じである。シミングパラメータの算出に際し、第一の領域において、複数のROIを設定すること、算出したシミングパラメータを撮像部に設定し、パルスシーケンスを実行することも第一実施形態と同様である。
このようにシミングパラメータを設定した場合、照射磁場分布が小さい血管(ROI_F)では、そこを流れる血流スピンはラベル用予備RFパルスによりラベル(反転)されないまま撮像部位に流入するため、ラベル処理後に得られる画像とコントロール処理後に得られる画像との差異がほとんどないためASLでは描出されない、即ち信号の抑制効果と同様の効果が得られる。一方、比較的大きい照射磁場を維持した部位(血管)(ROI_T)の血流スピンは、ラベル処理においてラベルされ、コントロール処理において磁化ゼロとなるため、差分処理により画像化される。つまり、ラベル用予備RFパルスの照射磁場分布を所定の部位で小さくすることにより、照射磁場の大きい(照射磁場分布の平均値を維持した)部位を選択的に描出することができる。
なお本実施形態についても、第一実施形態の変形例と同様に、3つ以上のROIを設定することも可能であるし、第二実施形態のように、予備RFパルスのシミングパラメータを変えて抑制する部位を異ならせた画像を複数取得し、画像間の演算により所望の部位の画像を得ることも可能である。例えば、第1回の撮像では、ラベル/コントロール用予備RFパルスの照射磁場分布と、血流撮像シーケンスの励起RFパルスの照射磁場分布とをいずれも均一度を最適化するシミングパラメータで実行し、第2の撮像では、ラベル/コントロール用予備RFパルスの照射磁場分布として所定の血管を抑制するシミングパラメータで実行する。そして、第1の撮像で得た画像から第2の撮像で得た画像を差分することで、所定の血管を選択的に描出した画像を得ることができる。
本実施形態によれば、ASL法による潅流撮像において、所望の血流にターゲットを絞って潅流の状態を描出することができる。
以上、本発明のMRI装置の各実施形態を説明したが、各実施形態で例示したパルスシーケンスや撮像部位は一例であって、これらに限定されることなく、異なる領域をそれぞれ励起する2つのRFパルスを含む撮像法であれば適用することが可能である。
本発明により、選択励起とは異なる手法で、所望の部位を選択的に描出する手法が提供される。
1・・・被検体
2・・・静磁場発生部
3・・・傾斜磁場発生部(撮像部)
4・・・シーケンサ(撮像部)
5・・・送信部(撮像部)
57・・・送信コイル
6・・・受信部(撮像部)
7・・・信号処理部
73・・・表示部(ディスプレイ)
75・・・入力部
8・・・演算部
81・・・ROI設定部
82・・・照射磁場算出部
83・・・シミングパラメータ算出部
84・・・撮像制御部
85・・・画像再構成部
87・・・表示制御部
89・・・メモリ
411・・・抑制RFパルス(予備RFパルス)
421・・・励起RFパルス
400・・・TOFパルスシーケンス
510・・・第一の領域
520・・・第二の領域
800・・・ASLシーケンス
801・・・ラベル用RFパルス(予備RFパルス)
802・・・励起RFパルス

Claims (16)

  1. 複数チャネルの各々から高周波パルスを照射する複数チャネル送信コイルを有し、被検体の第一の領域を励起する予備RFパルスと、前記第一の領域とは異なる第二の領域を励起する励起RFパルスとを含む高周波パルスを用いてNMR信号を収集する撮像部と、
    前記複数チャネルから照射された高周波パルスによって生じる照射磁場分布を調整するシミングパラメータを算出するシミングパラメータ算出部と、を備え、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記予備RFパルス用のシミングパラメータとして、前記励起RFパルス用に設定されたシミングパラメータである第二のシミングパラメータとは異なる第一のシミングパラメータを算出し、
    前記撮像部は前記第一のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと、前記第二のシミングパラメータで調整した励起RFパルスとを用いて撮像を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記予備RFパルスにより前記第一の領域に生じる照射磁場分布が、第一の部位で第二の部位より照射磁場が小さくなるように、前記第一のシミングパラメータを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記第二の部位における照射磁場分布の平均値を変化させないことを拘束条件として、繰り返し演算を行い、前記第一のシミングパラメータを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記第一のシミングパラメータで前記予備RFパルスを照射した際の比吸収率が、前記第一の領域に生じる照射磁場分布の均一度を最適化した場合の比吸収率を超えないことを拘束条件として、繰り返し演算を行い、前記第一のシミングパラメータを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  5. 請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記第一の領域における部位の指定を受け付ける入力部をさらに備え、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記入力部を介して指定された部位について、前記第一のシミングパラメータを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  6. 請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記入力部は、前記第一の領域を含む被検体画像と、前記被検体画像上で前記部位を指定するためのGUIとを表示する表示部を含むことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  7. 請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記被検体画像は、撮像対象である前記被検体を撮像して得た形態画像または照射磁場分布画像であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  8. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部は、第二のシミングパラメータとして、前記第二の領域全体の照射磁場分布を均一化するシミングパラメータを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  9. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部は、前記予備RFパルス用のシミングパラメータとして、前記第一のシミングパラメータと異なる第三のシミングパラメータを算出し、
    前記撮像部は、前記第一のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと前記励起RFパルスとを用いた第一の撮像、前記第三のシミングパラメータで調整した予備RFパルスと前記励起RFパルスとを用いた第二の撮像、及び前記予備RFパルスを用いず前記励起RFパルスを用いた第三の撮像を行い、前記第一の撮像、第二の撮像及び第三の撮像で得たNMR信号を用いて前記被検体の画像を形成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  10. 請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記シミングパラメータ算出部が算出する前記第一のシミングパラメータは、前記予備RFパルスにより前記第一の領域に生じる照射磁場分布が、前記第一の領域中の第一の部位で小さくなるシミングパラメータであり、前記第三のシミングパラメータは、前記予備RFパルスにより前記第一の領域に生じる照射磁場分布が、前記第一の部位とは異なる第二の部位で小さくなるシミングパラメータであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  11. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記撮像部は、前記予備RFパルスの印加に続いて、前記励起RFパルス及びエンコード傾斜磁場の印加とNMR信号収集とを含むパルスシーケンスを実行し、前記第二の領域を撮像することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  12. 請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記予備パルスは、前記第一の領域からの信号を抑制する抑制RFパルスであり、前記パルスシーケンスは、TOF(タイムオブフライト)法に基づくパルスシーケンスであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  13. 請求項11に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記予備パルスは、前記第一の領域を流れる流体スピンをラベルする予備RFパルスであり、前記パルスシーケンスは、ASL(動脈スピンラベル潅流イメージング)法に基づくパルスシーケンスであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  14. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
    前記送信コイルのチャンネル数は4以上であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  15. 複数チャネルの高周波コイルを用いて、被検体の第一の領域を予備励起する第一のRFパルスと、前記第一の領域とは異なる第二の領域を励起する第二のRFパルスとを連続して照射し前記第二の領域を撮像する際に、前記第一のRFパルスの照射により前記第一の領域に生じる照射磁場分布を調整するRFシミング方法であって、
    前記第一の領域に含まれる第一の部位の照射磁場を、前記第一の部位と異なる、前記第一の領域に含まれる第二の部位の照射磁場より小さくすることを特徴とするRFシミング方法。
  16. 複数チャネルの高周波コイルを用いて、被検体の第一の領域を予備励起する第一のRFパルスと、前記第一の領域とは異なる第二の領域を励起する第二のRFパルスとを連続して照射し前記第二の領域を撮像する磁気共鳴イメージング方法であって、
    前記第一のRFパルスの照射磁場分布と、前記第二のRFパルスの照射磁場分布を異ならせることを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
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