JP2017118927A - 生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体 - Google Patents

生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】生体音に含まれる雑音を好適に解析する電気聴診器システムを提供する。【解決手段】生体音解析装置は、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得手段110と、生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得手段120と、生体音情報及び参照情報に基づいて、生体音に含まれる雑音を示す雑音情報を出力する出力手段200とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば断続性ラ音を含む生体音を解析する生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
この種の装置として、電子聴診器等によって検出される生体の呼吸音について、そこに含まれる副雑音(即ち、正常な呼吸音とは異なる音)の音種を判別するものが知られている。例えば特許文献1では、生体音の音波形を複数の区分に分割し、区分毎に音波形の特徴を特定して音種を判別するという手法が提案されている。
特開2013−123494号公報
上述した特許文献1に記載されている技術では、高周波帯域の周波数成分が多く認められるか否かによって、細かな断続性ラ音と荒い断続性ラ音とを判別している。しかしながら、このような手法では、例えば周囲の環境音の影響等が入る場合において正確に音種を判別することができなくなるおそれがある。即ち、周波数成分だけ判別基準として用いる場合、状況によっては、必ずしも正確な結果が得られないおそれがある。
また、特許文献1に記載されている技術では、複数種類の断続性ラ音(例えば、捻髪音及び水泡音)が同時に発生している場合、それらの両方が発生しているか否かを判別することができない。
本発明が解決しようとする課題には、上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、生体音に含まれる雑音を好適に解析可能な生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための生体音解析装置は、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得手段と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得手段と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力手段とを備える。
上記課題を解決するための生体音解析方法は、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程とを備える。
上記課題を解決するためのコンピュータプログラムは、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程とをコンピュータに実行させる。
上記課題を解決するための記録媒体は、上述したコンピュータプログラムが記録されている。
本実施例に係る生体音解析装置の構成を示すブロック図である。 捻髪音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。 解析処理後の捻髪音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。 水泡音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。 解析処理後の水泡音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。 本実施例に係る生体音解析装置の動作の流れを示すフローチャートである。 捻髪音の2次元分布を示すモデル図である。 水泡音の2次元分布を示すモデル図である。 捻髪音のパワーの確率分布を示すモデル図である。 水泡音のパワーの確率分布を示すモデル図である。 呼吸音情報のパワー分布比率を区画ごとに示す図表である。
<1>
本実施形態に係る生体音解析装置は、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得手段と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得手段と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力手段とを備える。
本実施形態に係る生体音解析装置によれば、その動作時には、先ず第1取得手段によって、生体音の経時的な変化を示す生体音情報が取得される。また、第2取得手段によって、生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報が取得される。なお、「生体音」とは、生体が発する音であり、典型的には呼吸音である。「雑音」とは、本来であれば生体音に含まれるべきではない異音であり、例えば異常呼吸音(副雑音)である断続性ラ音等が挙げられる。また「所定期間」とは、雑音の発生時期及び周波数特性の特徴が顕著に現れる期間であり、例えば1呼吸周期に対応する期間である。
生体音情報及び参照情報が取得されると、それらの情報に基づいて、出力手段から雑音を示す雑音情報が出力される。具体的には、出力手段では生体音情報と参照情報とが比較され、生体音に雑音が含まれているか否かが判定されると共に、雑音と判定された音に関する情報が雑音情報として出力される。なお、出力される雑音情報は複数種類であっても構わない。複数種類の雑音情報を出力するためには、第2手段において、参照情報が複数種類(即ち、雑音毎に)取得されるようにすればよい。
本実施形態では特に、雑音情報を出力するために用いられる参照情報が、雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む情報として取得されている。このため、生体音に含まれる雑音を、所定期間内における発生時期及び周波数特性の観点から精度よく判別することができる。具体的には、所定の周波数範囲において、所定期間内における一の期間でのみで発生するような雑音等を正確に判別することが可能となる。生体音に含まれる雑音の中には、発生時期及び周波数特性に顕著な特徴を有するものがあることが一般的に知られている。よって、雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得することで、極めて好適に雑音情報を出力することが可能となる。
なお、生体音に含まれる雑音は、周波数特性のみに基づいて判別することもできると考えられる。しかしながら、周波数特性のみを基準とする判別方法では、例えば周囲の環境音の影響等が入る場合において、正確な判別が行えなくなる可能性がある。即ち、判別基準が周波数特性のみであるが故に、予期せぬノイズ等により判別制度が大きく低下してしまうおそれがある。しかるに本実施形態では、既に説明したように、所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を利用して生体音に含まれる雑音を示す情報を出力することができる。従って、生体音を好適に解析して、正確な雑音情報を得ることが可能である。
<2>
本実施形態に係る生体音解析装置の一態様では、前記生体音情報に基づいて、前記生体音に断続性ラ音が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、前記出力手段は、前記断続性ラ音が含まれていると判定された前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する。
この態様によれば、先ず判定手段によって生体音に断続性ラ音が含まれているか否かが判定される。なお、判定手段は、既存の技術を利用して生体音に断続性ラ音が含まれているか否かを判定することができる。言い換えれば、判定手段による断続性ラ音の判定手法は、特に限定されるものではない。
判定手段によって断続性ラ音が判定されると、断続性ラ音が含まれていると判定された生体音情報及び参照情報に基づいて、雑音情報が出力される。即ち、この態様では、雑音情報を出力する対象となる生体音が、断続性ラ音である雑音を含む生体音に限られる。このため、出力すべき雑音情報が予め限定されることになり、より正確に雑音情報を出力することが可能となる。
<3>
本実施形態に係る生体音解析装置の他の態様では、前記生体音情報を前記所定期間に対応づける時間軸情報を取得する第3取得手段を更に備え、前記出力手段は、前記所定期間に対応づけられた前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する。
この態様によれば、第3取得手段によって、生体音情報を所定期間に対応づける時間軸情報が取得される。これにより、生体音情報と所定期間とを好適に対応づけることが可能となり、参照情報(即ち、雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性)に基づき、より正確な雑音情報を出力することが可能となる。
<4>
上述した第3取得手段を備える態様では、前記所定期間は、1呼吸周期に対応する期間であり、前記第3取得手段は、吸気相及び呼気相を含む呼吸相を前記時間軸情報として取得してもよい。
この場合、1呼吸周期における発生時期及び周波数特性に特徴のある雑音に関して、極めて正確な雑音情報を出力することが可能となる。例えば、吸気相においてのみ高周波数で発生するような雑音や、吸気相及び呼気相の両方で発生するが、その多くが低周波数で発生する雑音等を示す雑音情報を、正確に判別して出力することができる。
<5>
上述した1呼吸周期に対応する期間を所定期間とする態様では、前記第2取得手段は、前記発生時期が前記吸気相であること、前記周波数特性が第1周波数よりも高いことを、捻髪音に対応する前記参照情報として取得してもよい。
断続性ラ音の一種である捻髪音は、呼吸相の吸気相において第1周波数よりも高い音として発生する。よって、これに対応する参照情報を取得することで、生体音に含まれる捻髪音の雑音情報を極めて高い精度で出力することが可能となる。
<6>
或いは1呼吸周期に対応する期間を所定期間とする態様では、前記第2取得手段は、前記発生時期が前記吸気相及び呼吸相の両方に及ぶこと、前記周波数特性が第2周波数よりも低いことを、水泡音に対応する前記参照情報として取得してもよい。
断続性ラ音の一種である水泡音は、呼吸相の吸気相及び呼気相の両方において、第2周波数よりも低い音として発生する。よって、これに対応する参照情報を取得することで、生体音に含まれる水泡音の雑音情報を極めて高い精度で出力することができる。
<7>
本実施形態に係る生体音解析装置の他の態様では、前記参照情報は、前記発生時期及び前記周波数特性の2軸上で表された前記雑音情報の分布情報を含み、前記出力手段は、前記分布情報及び前記生体音情報の一致度合いに基づいて、前記雑音情報を出力する。
この態様によれば、参照情報には、発生時期及び周波数特性の2軸上で表された雑音情報の分布情報が含まれている。このため、分布情報と生体音情報の一致度合いを利用すれば、生体音情報がどの程度雑音情報に近い傾向を有しているのかを容易に知ることができる。この結果、例えば一致度合いが所定の閾値を超えているか否かを判定することにより、好適に参照情報に対応する雑音か否かを判別することができる。従って、より正確な雑音情報を出力することが可能となる。
<8>
本実施形態に係る生体音解析方法は、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程とを備える。
本実施形態に係る生体音解析方法によれば、上述した本実施形態に係る生体音解析装置と同様に、正確な雑音情報を出力することができる。
なお、本実施形態に係る生体音解析方法においても、上述した本実施形態に係る生体音解析装置における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
<9>
本実施形態に係るコンピュータプログラムは、生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程とをコンピュータに実行させる。
本実施形態に係るコンピュータプログラムによれば、上述した本実施形態に係る生体音解析方法と同様の処理をコンピュータに実行させることができるため、正確な雑音情報を出力することができる。
なお、本実施形態に係るコンピュータプログラムにおいても、上述した本実施形態に係る生体音解析装置における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
<10>
本実施形態に係る記録媒体は、上述したコンピュータプログラムが記録されている。
本実施形態に係る記録媒体によれば、上述したコンピュータプログラムをコンピュータにより実行させることにより、正確な雑音情報を出力することができる。
本実施形態に係る生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
以下では、生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、呼吸音の解析を行う生体音解析装置を例に挙げて説明する。
<装置構成>
先ず、本実施例に係る生体音解析装置の構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施例に係る生体音解析装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本実施例に係る生体音解析装置は、呼吸音取得部110と、参照情報取得部120と、呼吸相取得部130と、処理部200と、結果表示部300とを備えて構成されている。
呼吸音取得部110は、生体の呼吸音を呼吸音信号として取得可能に構成されたセンサである。呼吸音取得部110は、例えばECM(Electret Condenser Microphone)やピエゾを利用したマイク、振動センサ等で構成されている。また、呼吸音取得部110は、生体の呼吸音を呼吸音信号として取得可能に構成されたセンサだけでなく、センサからの呼吸音信号を取得するものを含んでもよい。呼吸音取得部110で取得された呼吸音信号は、時間周波数解析部210及び断続性ラ音判定部220に出力される構成となっている。なお、呼吸音取得部110は、「第1取得手段」の一具体例である。
参照情報取得部120は、生体音に含まれる雑音を判別するための参照情報を記憶するデータベースを含んで構成されている。参照情報取得部120は、記憶された参照情報を適宜取得して、捻髪音傾向算出部230及び水泡音傾向算出部240に出力可能に構成されている。本実施例に係る参照情報取得部120は特に、断続性ラ音である捻髪音及び水泡音に関する参照情報を取得可能とされている。なお、参照情報取得部120は、「第2取得手段」の一具体例である。
呼吸相取得部130は、生体の呼吸相情報(即ち、吸気相及び呼気相に関する時間軸情報)を取得可能に構成されたセンサである。呼吸相取得部130は、呼吸音取得部110と一体的に構成されていてもよい。呼吸相取得部130で取得された呼吸相情報は、捻髪音傾向算出部230及び水泡音傾向算出部240に出力される構成となっている。なお、呼吸相取得部130は、「第3取得手段」の一具体例である。
処理部200は、複数の演算回路やメモリ等を含んで構成されている。処理部200は、時間周波数解析部210と、断続性ラ音判定部220と、捻髪音傾向算出部230と、水泡音傾向算出部240と、捻髪音判定部250と、水泡音判定部260とを備えて構成されている。
時間周波数解析部210は、呼吸音取得部110で取得された呼吸音情報に対して時間周波数解析処理を実行する。具体的には、時間周波数解析部210は、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理等を実行可能に構成されている。時間周波数解析部210の解析結果は、捻髪音傾向算出部230及び水泡音傾向算出部240に出力される構成となっている。
断続性ラ音判定部220は、呼吸音取得部110で取得された呼吸音情報に基づいて、呼吸音に断続性ラ音が含まれているか否かを判定する。なお、断続性ラ音判定部220における具体的な判定方法については、既存の技術を利用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。断続性ラ音判定部220における判定結果は、捻髪音傾向算出部230及び水泡音傾向算出部240に出力される構成となっている。
捻髪音傾向算出部230は、時間周波数解析部210から入力される時間周波数解析された呼吸音信号、参照情報取得部120から入力される捻髪音に関する参照情報、呼吸相取得部130から入力される呼吸相情報、及び断続性ラ音判定部220から入力される判定結果に基づいて、生体音に含まれる音が捻髪音にどの程度近いものであるかを示す捻髪音傾向FCを算出する。なお、捻髪音傾向FCの算出方法については、後の動作説明において詳述する。
水泡音傾向算出部240は、時間周波数解析部210から入力される時間周波数解析された呼吸音信号、参照情報取得部120から入力される水泡音に関する参照情報、呼吸相取得部130から入力される呼吸相情報、及び断続性ラ音判定部220から入力される判定結果に基づいて、生体音に含まれる音が水泡音にどの程度近いものであるかを示す水泡音傾向CCを算出する。なお、水泡音傾向CCの算出方法については、後の動作説明において詳述する。
捻髪音判定部250は、捻髪音傾向算出部230で算出された捻髪音傾向FCに基づいて、生体音に捻髪音が含まれているか否かを判定する。具体的には、捻髪音判定部250は、捻髪音傾向FCが所定の閾値を超えているか否かによって、生体音に捻髪音が含まれているか否かを判定する。捻髪音判定部250の判定結果は、結果表示部300に出力される構成となっている。
水泡音判定部260は、水泡音傾向算出部240で算出された水泡音傾向CCに基づいて、生体音に水泡音が含まれているか否かを判定する。具体的には、水泡音判定部260は、水泡音傾向CCが所定の閾値を超えているか否かによって、生体音に水泡音が含まれているか否かを判定する。水泡音判定部260の判定結果は、結果表示部300に出力される構成となっている。
以上のように、処理部200は、呼吸音取得部110で取得された呼吸音情報、参照情報取得部120で取得された参照情報、呼吸相取得部130で取得された呼吸相情報に基づいて、生体音に捻髪音又は水泡音が含まれているか否かを判定することが可能とされている。また、処理部200は、生体音に捻髪音又は水泡音が含まれているか否かだけでなく、捻髪音及び水泡音の強度等を出力可能に構成されてもよい。処理部200は、「出力手段」の一具体例である。
結果表示部400は、例えば液晶モニタ等のディスプレイとして構成されており、処理部200から出力される各種情報を画像データとして表示する。
<捻髪音と水泡音の特性>
次に、本実施例に係る生体音解析装置において判別される捻髪音及び水泡音の特性について、図2から図5を参照して詳細に説明する。ここに図2は、捻髪音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図であり、図3は、解析処理後の捻髪音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。また図4は、水泡音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図であり、図5は、解析処理後の水泡音を含む生体音の一例を示すスペクトログラム図である。
なお、図3に示すスペクトログラムは、図2に示すスペクトログラムに対してCMN(Cepstral Mean Normalization)処理と、リフタリング処理(具体的には、ケプストラムの高次ケフレンシ―成分のカットとを実行したものである。同様に、図4に示すスペクトログラムは、図3に示すスペクトログラムに対してCMN処理と、リフタリング処理とを実行したものである。CMN処理及びリフタリング処理を実行することで、捻髪音及び水泡音の特徴が強調され、その特性がより明確に判別できるようになる。なお、CMN処理及びリフタリング処理については既存の技術であるため、ここでのより詳細な説明は省略する。
図2及び図3を見ると、捻髪音は、吸気相において強く検出され、呼気相においては殆ど検出されないことが分かる。また、捻髪音は、比較的高い周波数帯で発生していることも分かる。よって、捻髪音は、吸気相において比較的高めの周波数帯に現れる特性を有していると言える。
一方、図4及び図5を見ると、水泡音は、吸気相及び呼気相の両方において検出されていることが分かる。また、水泡音は、比較的低い周波数帯で発生していることも分かる。よって、水泡音は、吸気相及び呼気相の両方において比較的低めの周波数帯に現れる特性を有していると言える。
以上のように、捻髪音及び水泡音を含む生体音には、呼吸相における発生時期と周波数特性において明確な違いが存在している。よって、この違いを利用すれば、捻髪音及び水泡音の存在を個別に判定することが可能である。本実施形態に係る生体音解析装置は、以下に詳述する処理を実行することにより、生体音に含まれる捻髪音及び水泡音を判別する。
<動作説明>
次に、本実施例に係る生体音解析装置の動作について、図6を参照して説明する。ここに図6は、本実施例に係る生体音解析装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図6において、本実施例に係る生体音解析装置の動作時には、先ず呼吸音取得部110において、生体の呼吸音を示す呼吸音信号が取得される(ステップS101)。呼吸音信号が取得されると、断続性ラ音判定部220において、生体音に断続性ラ音が含まれているか否かの判定が行われる(ステップS102)。判定の結果、生体音に断続性ラ音が含まれていないと判定された場合(ステップS103:YES)、断続性ラ音判定部220からは、生体音には捻髪音及び水泡音が含まれないという判定結果が出力される(ステップS104)。一方、生体音に断続性ラ音が含まれていると判定された場合(ステップS103:YES)、生体音に含まれる断続性ラ音が捻髪音であるのか、或いは水泡音であるのかを判別するための処理(即ち、ステップS105以降の処理)が実行される。
生体音に断続性ラ音が含まれている場合には、先ず時間周波数解析部220において、呼吸音信号の時間周波数解析処理が行われる(ステップS105)。また、参照情報取得部120において、捻髪音及び水泡音に関する参照情報が取得される(ステップS106)。更に、呼吸相取得部130において、生体音の呼吸相情報が取得される(ステップS107)。
上述した各情報が取得されると、捻髪音傾向算出部230において、捻髪音傾向FCが算出される(ステップS108)。算出された捻髪音傾向FCは、捻髪音判定部250において閾値Aよりも大きいか否かが判定される(ステップS109)。そして、捻髪音傾向FCが閾値Aよりも大きいと判定された場合(ステップS109:YES)、生体音には捻髪音が含まれていると判定される(ステップS110)。一方、捻髪音傾向FCが閾値Aよりも大きくないと判定された場合(ステップS109:NO)、生体音には捻髪音が含まれていないと判定される(ステップS111)。
同様に、水泡音傾向算出部240においては、水泡音傾向CCが算出される(ステップS112)。算出された水泡音傾向CCは、水泡音判定部260において閾値Bよりも大きいか否かが判定される(ステップS113)。そして、水泡音傾向CCが閾値Bよりも大きいと判定された場合(ステップS113:YES)、生体音には水泡音が含まれていると判定される(ステップS114)。一方、水泡音傾向CCが閾値Bよりも大きくないと判定された場合(ステップS113:NO)、生体音には水泡音が含まれていないと判定される(ステップS115)。
以上説明した、ステップS104、S114及びS115の判定結果は、結果表示部300に出力される(ステップS116)。これにより、結果表示部300では、呼吸音に捻髪音及び水泡音が含まれているか否かが画像データとして表示される。
<傾向算出方法>
次に、上述した捻髪音傾向FC及び水泡音傾向CCの算出方法について、図7から図11を参照して具体的に説明する。ここに図7は、捻髪音の2次元分布を示すモデル図であり、図8は、水泡音の2次元分布を示すモデル図である。また図9は、捻髪音のパワーの確率分布を示すモデル図であり、図10は、水泡音のパワーの確率分布を示すモデル図である。図11は、呼吸音情報のパワー分布比率を区画ごとに示す図表である。
図7において、捻髪音は吸気相において比較的高めの周波数帯に現れる特性を有しているため、この特性を呼吸相における発生時期及び周波数特性の2軸上で表すと、図のような2次元モデルが得られる。捻髪音傾向FCは、このような2次元モデルを参照情報として用いることで算出することができる。
図8において、水泡音は吸気相及び呼気相の両方において比較的低めの周波数帯に現れる特性を有しているため、この特性を呼吸相における発生時期及び周波数特性の2軸上で表すと、図のような2次元モデルが得られる。水泡音傾向CCは、このような2次元モデルを参照情報として用いることで算出することができる。
図9において、捻髪音傾向FCの算出時には、先ず捻髪音に対応する2次元モデル(図7参照)のパワー分布を区画ごとに数値化する。具体的には、図に示すように、高周波数帯(750Hz〜4kHZ)の吸気相数値QFC(1)が「0.7」となり、呼気相の数値QFC(2)が「0.1」となる。また、低周波数帯(0Hz〜750Hz)の吸気相の数値QFC(3)が「0.1」となり、呼気相の数値QFC(4)が「0.1」となる。
捻髪音傾向FCは、上記QFC(i)を利用して、下記の数式(1)から算出することができる。
なお、P(i)は、実際に計測された呼吸音信号の区画ごとのパワーを示す数値である。
このようにして算出される捻髪音傾向FCは、対数尤度であり、負の値として算出される。このため、捻髪音傾向FCが大きいほど(即ち、0に近い値であるほど)、生体音がモデルに近い(即ち、捻髪音に近い)と判定できる。
一方、図10において、水泡音傾向CCの算出時には、先ず水泡音に対応する2次元モデル(図8参照)のパワー分布を区画ごとに数値化する。具体的には、図に示すように、高周波数帯(750Hz〜4kHZ)の吸気相の数値QCC(1)が「0.1」となり、呼気相の数値QCC(2)が「0.1」となる。また、低周波数帯(0Hz〜750Hz)の吸気相の数値QCC(3)が「0.4」となり、呼気相の数値QCC(4)が「0.4」となる。
水泡音傾向CCは、上記QCC(i)を利用して、下記の数式(2)から算出することができる。
このようにして算出される水泡音傾向CCは、捻髪音傾向FCと同様に対数尤度であり、負の値として算出される。このため、水泡音傾向CCの絶対値が大きいほど(即ち、0に近い値であるほど)、呼吸音がモデルに近い(即ち、捻髪音に近い)と判定できる。
以下では、上述した算出処理及びその算出結果を用いた判定処理について、具体例を挙げて説明する。
図11において、例えば図に示すような比率でパワーが分布する呼吸音信号が得られたとする。この呼吸音信号について、上述した数式(1)を利用して捻髪音傾向FCを算出すると、その結果は以下のようになる。
FC=0.82×log10(0.7)+0.00×log10(0.1)+0.16×log10(0.1)+×0.02log10(0.1)
=−0.30702
この時、捻髪音傾向FCに対する閾値Aが−0.5であったとすると、FC>閾値Aの関係が成立する。よって、この場合の呼吸音信号には、捻髪音が含まれると判定されることになる。
<実施例の効果>
最後に、本実施例に係る生体音解析装置によって得られる技術的効果について詳細に説明する。
本実施例に係る生体音解析装置によれば、図7から図11で説明したように、呼吸相における発生時期及び周波数特性の2軸上で表された2次元モデル(即ち、参照情報取得部120から取得される参照情報)を利用して、断続性ラ音である捻髪音及び水泡音が判定される。
ここで仮に、周波数特性のみで捻髪音及び水泡音を判定しようとすると、周波数が高いか低いかでしか判定できないため、呼気相で発生している高周波数帯の成分を捻髪音として判定してしまうおそれがある。また、吸気相でしか発生していない低周波数帯の成分を水泡音と判定してしまうおそれがある。このように、周波数特性だけを利用する場合には、捻髪音及び水泡音を正確に判別できないおそれがある。特に、周囲の環境音等の影響を受けてしまうと、判別精度は大きく低下してしまう。
これに対し、本実施例では、呼吸相のどこで発生しているのかを考慮して、捻髪音であるのか、或いは水泡音であるのかを判定することができる。従って、周波数特性のみを利用して判定する場合と比べると、極めて正確に捻髪音及び水泡音を判定することができる。また、捻髪音傾向FC及び水泡音傾向CCを別々に算出して判定しているため、呼吸音に捻髪音のみが含まれている場合、水泡音のみが含まれている場合、或いは捻髪音及び水泡音の両方が含まれている場合を、それぞれ好適に判別することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体音解析装置及び生体音解析方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
110 呼吸音取得部
120 参照情報取得部
130 呼吸相取得部
200 処理部
210 時間周波数解析部
220 断続性ラ音判定部
230 捻髪音傾向算出部
240 水泡音傾向算出部
250 捻髪音判定部
260 水泡音判定部
300 結果表示部
FC 捻髪音傾向
CC 水泡音傾向

Claims (10)

  1. 生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得手段と、
    前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得手段と、
    前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力手段と
    を備えることを特徴とする生体音解析装置。
  2. 前記生体音情報に基づいて、前記生体音に断続性ラ音が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、
    前記出力手段は、前記断続性ラ音が含まれていると判定された前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する
    ことを特徴とする請求項1に記載の生体音解析装置。
  3. 前記生体音情報を前記所定期間に対応づける時間軸情報を取得する第3取得手段を更に備え、
    前記出力手段は、前記所定期間に対応づけられた前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体音解析装置。
  4. 前記所定期間は、1呼吸周期に対応する期間であり、
    前記第3取得手段は、吸気相及び呼気相を含む呼吸相を前記時間軸情報として取得する
    ことを特徴とする請求項3に記載の生体音解析装置。
  5. 前記第2取得手段は、前記発生時期が前記吸気相であること、前記周波数特性が第1周波数よりも高いことを、捻髪音に対応する前記参照情報として取得することを特徴とする請求項4に記載の生体音解析装置。
  6. 前記第2取得手段は、前記発生時期が前記吸気相及び呼吸相の両方に及ぶこと、前記周波数特性が第2周波数よりも低いことを、水泡音に対応する前記参照情報として取得することを特徴とする請求項4又は5に記載の生体音解析装置。
  7. 前記参照情報は、前記発生時期及び前記周波数特性の2軸上で表された前記雑音情報の分布情報を含み、
    前記出力手段は、前記分布情報及び前記生体音情報の一致度合いに基づいて、前記雑音情報を出力する
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の生体音解析装置。
  8. 生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、
    前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、
    前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程と
    を備えることを特徴とする生体音解析方法。
  9. 生体音の経時的な変化を示す生体音情報を取得する第1取得工程と、
    前記生体音に含まれ得る雑音の所定期間内における発生時期及び周波数特性を含む参照情報を取得する第2取得工程と、
    前記生体音情報及び前記参照情報に基づいて、前記生体音に含まれる前記雑音を示す雑音情報を出力する出力工程と
    をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  10. 請求項9に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
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