本発明は、一般に、準備及び製造プロセス、より具体的には、医薬又は治療薬を生産するための製薬産業における製造で使用されるプロセスに適した装置及びプロセスに関する。
従来の装置と対照的に、出願人は、吸着媒体を線形拡張可能で自立式の構成で支持する方法を発見した。本発明の実施形態は、平面方向一体性媒体を利用する。例えばMacro−IPN媒体のような吸着媒体のウェブは、平面方向一体性である。この媒体は、引張力によって引き離されたときでもその形状を維持する。また、モノリスは、ベッドよりかなり厚い場合以外、平面方向一体性である。平面方向一体性媒体の一体化平面は、吸着装置の平面に平行に向けられる。一体化平面に沿った媒体の一体性が、後述するような吸着媒体ブロックの製造を可能にする。
吸着媒体、クロマトグラフィー媒体及び媒体という用語は、本明細書において、吸着装置の固定相を指すために交換可能に使用され、媒体は、単一タイプの媒体を指すこともできる。本明細書で使用されるとき、密接とは、一般に、隣接層の間に残ったボイド空間の大きさを指し、そのようなボイド空間が、ベッド内で移動相によって占有された間隙空間の規模とほぼ同じであることを意味する。溶剤と移動相という用語は、本明細書で固定相を指すために交換可能に使用される。横方向流という用語は、一体化平面に沿った媒体内の流体流を指し、例えば、ウェブ型吸着媒体では、横方向流は、ウェブの平面に垂直な流れと対比して、ウェブの平面に沿った流れを意味する。吸着ブロック、吸着装置及びカセットという用語は、本明細書で開示された装置内で使用される吸着媒体の平面方向一体性ベッドを指すために交換可能に使用される。等方性という用語は、流体が通って流れる多孔性媒体が、流れ方向に垂直な均質多孔性構造を有し、それにより、固有の流れ抵抗が、流れ方向に垂直な平面での媒体内の位置に依存しないことを意味し、等方性媒体の重要性については後で詳しく述べる。実質的には記述される特性の値の変動は十分に小さいので、吸着装置を想定通りに動作させることができる。
図1A〜図1Bを参照すると、吸着装置10は、平面方向一体性で実質的に等方性の吸着媒体21を有する少なくとも1個のブロック20を含み、このブロックは、第1端12、第2端16、第1の実質的平面表面22、第2の実質的平面表面23、第1と第2の平面表面22,23に実質的に垂直な少なくとも1個の側壁26を有する。ブロックは、更に、少なくとも1個のブロック20内に配置され、第1端12に隣接し第1と第2の平面表面22及び23に実質的に垂直な第1の複数の分配路14a〜14n(集合的に分配路14と呼ばれる)と、少なくとも1個のブロック20内に配置され、第2端に隣接し第1と第2の平面表面22及び23に実質的に垂直な第2の複数の分配路18a〜18n(集合的に分配路18と呼ばれる)と、平面表面部分24を有する少なくとも1個の側壁26を密閉する周辺シール28とを有する。
分配路14及び18の互いに対する整合と位置、並びに第1と第2の平面表面22及び23の幾何学形状(フットプリントとも呼ばれる)は、ブロック20内の第1端12から第2端16への流体の実質的に均一な横方向流を生じるように設計されている。ブロック20は、様々なフットプリント、例えば角形、円形、台形等を有しもよい。フットプリントの形状は、分配路14及び18の位置と共に、所望の均一な流れを発生させる役割をする設計因子である。
ブロック20は、長さ32、高さ30及び幅34によって特徴付けられた三次元装置である。流体流の方向は、長さ座標と合わされ、平面表面22及び23の幅は、幅34を定義し、ブロック20の高さ30は、平面表面22及び23に垂直な寸法である。
動作において、流体が、分配路14に導入され分配され、分配路18から収集され除去される。吸着装置10は、平面表面22及び23に平行な、平面方向一体性で実質的に等方性の吸着媒体21の一体化平面によって規定された側壁26の封入によって「自立」される。吸着装置10のブロック20は、使用中に生じる液圧を閉じ込めるために追加の支持構造を必要とせず、ブロック20を、図2Aと関連して後で示すエンドプレートの間に容易に脱着することができる。この性質は、更に、エンドプレートの交換なしにブロック20の積み重ねを可能にし、拡張が極めて容易となる。
吸着装置10内に、分配路14と18の間に多数の経路(即ち、流線)があることが分かる。各流線の流体は、第1端12から第2端16まで軌跡を完了するのに特定長さの時間がかかり、この時間は、典型的には滞留時間と呼ばれる。高性能吸着装置は、全ての流線の滞留時間の変動ができるだけ小さいことを必要とする。この性能特性を達成するために、吸着ブロックは、長さが実質的に均一な流線を有することに加えて、流れの方向に垂直な平面に沿って実質的に等方性の吸着媒体を有していなければならない。流れ均一性は、この特性の組み合わせの最終的な結果である。
一実施形態では、吸着媒体の層は、ウェブ型吸着媒体(例えば、ウェブ形状で作成されブロック20に適合するよう切断されたマクロ多孔性IPN媒体)から形成される。マクロ多孔性IPN媒体は、2010年2月19日に出願され、参照によりその全体が援用される「POROUS INTERPENETRATING POLYMER NETWORKS WITH IMPROVED PROPERTIES」と題するPCT出願PCT/US2010/024804に記載されている。他の実施形態では、吸着媒体層は、Emporeディスク(ミネソタ州セントポールの3M Corp.)とワットマンクロマトグラフィー紙(マサチューセッツ州ウェストボローのGE Life Sciences)を含むことができる。
図2Aは、ブロック20の第1端の分配路14の拡大断面図(図1Aの断面2A−2Aを通る図)を示す。図2Aは、4個のウェブ層29を有するブロック20の断面を示す。図2Bは、より多くのウェブ層29を有し、従って図1Aに示されたブロック20より高さが高いブロック20’を示す。ブロック20は、平面方向一体性で実質的に等方性の吸着媒体21の複数のウェブ層29a〜29n(集合的にウェブ層29と呼ばれる)を有してもよい。
供給流(図示せず)は、マニホールド120(図3Bに関連して以下に示されている)によってブロック20の幅方向に沿って分配されて、供給液副流として幾つかの流路14a〜14nのそれぞれに入り、更に分配され、方向転換されて、各ウェブ層29内に横方向流が生じる。濾過装置と対照的に、横方向流8は、ウェブ層29を規定する平面に沿って流れる(即ち、これらの流れは、ウェブ層29の平面に垂直ではなく横方向に流れる)。
図2Bは、図2Aの吸着装置10と比較して追加のウェブ層29を有する吸着装置10’を示す。
次に図3A〜図3Cを参照すると、流体を処理するための吸着装置100は、1対のエンドプレート102a及び102b(エンドプレート102とも呼ばれる)を有する。各エンドプレート102は、供給端105と溶離端107とを有する。1対のエンドプレート102の少なくとも一方は、供給端105に配置された供給液入口106を有し、1対のエンドプレート102の少なくとも一方は、溶離端107に配置された溶離液出口108を有する。吸着装置100は、更に、積み重ね構成の複数のカセット200(この図では、図3、図4及び図5に関連して後述される積み重ね構成の単一カセット200として示されている)を有する。
各カセット200は、図1Aのブロック20と類似している。前述のように、カセット200の幾何学形状と流路の位置は、ブロック内で供給端105から溶離端107までの実質的に均一な横方向流を発生させ、均一な横方向流は、第1と第2のと実質的に平面表面に平行である。ここで、1対のエンドプレートの一方102aは、カセット200の第1表面22に隣接し、1対のエンドプレートの他方102bは、カセット200の第2面23に隣接している。
図3A〜図3Cを更に参照すると、カセット200は、更に、シーラントを使用してウェブ形状の不浸透性シール29(「シール」及び「周辺シール」とも呼ばれる)を形成する周辺シール28を有する。シールを形成するために、一実施形態では熱硬化性樹脂が使用され、別の実施形態では熱可塑性樹脂が使用される。当該技術分野で既知の他のシーラントも使用することができる。周辺シール28は、ウェブ29に付着されて、カセット内にある高圧力を閉じ込める構造境界を形成する。カセット200は、更に、供給端と溶離端の両方でその幅方向に沿って分配された通路14及び18を有し、流路14及び18は、カセット200の幅の方向に供給流を導入し溶離流を収集するために使用される。流路14(分配路とも呼ばれる)は、カセット200をその高さ方向に沿って上から下に貫通し、高さHに沿った流体の分配を可能にする。
図3Bは、エンドプレート102a内に配置されたマニホールド120aの断面側面図を示す。マニホールド120aは、供給流130aを導入するために使用され、一方、エンドプレート102aの反対端に配置されたマニホールド120bは、図3Cに示されたように、溶離流130bを回収するために使用される。マニホールド120a内の流れ通路124aは、供給流をカセット200内の分配路14に分配するために使用される。マニホールド120b内の流路124bは、溶離流をカセット200内の分配路18から収集するために使用される。エンドプレート102a及び102b内のマニホールド120a及び120bの幾つかの異なる動作構成があることを理解されたい。
特定の実施形態では、カセット210a〜210nは、図4に示されたように液体流が並列になるように積み重ねられる(以下では、「並列構成」と呼ばれる)。この場合、カセット210は、各カセット210の高さの合計と等しい高さを有する複合カセット250を構成する。マニホールド120a及び120b(図3A)は、積み重ねカセット210を支持構造(図示せず)によって支持するために使用され、供給流をカセット210の供給端で分配路に分配し、溶離流をカセット210の溶離端から収集する流路(図示せず)を有する。支持構造は、連結棒又は何らかの外部プレスによって作ることができる。マニホールド120は、カセット210の供給端及び溶離端と一致する供給端及び溶離端を有する。
供給液及び溶離液分配路14及び18は、エンドプレート内の幾つかの位置に構成されうる。両方の分配路は、上側マニホールド内だけにあってもよく、下側マニホールド内だけにあってもよい。或いは、上エンドプレートに供給液分配路だけが配置され下エンドプレートに溶離液分配路だけが配置されてもよく、エンドプレート内に配置された上側又は下側マニホールドのいずれかに少なくとも1組の供給液分配路と1組の溶離液分配路がある限り、これらの任意の組み合わせでよい。隣接するカセット210の間及びカセット210とマニホールドと間を確実に封止するために、ガスケット110が使用されてもよい。ガスケット110は、各カセット210に組み込まれ(また接着され)てもよく、カセット210のスタックの一部として追加されてブロックを構成する別個の構成要素でもよい。カセット210を、図4に示したように積み重ねることができるようにするため、これらのカセットは、ほぼ同じ長さと幅のものでなければならず、分配路は、整列し流体連通するように同様に配置されなければならない。しかしながら、図4は、同じ高さのカセット210を示すが、カセットは異なる高さのものでよいことを理解されたい。
或いは、他の実施形態では、カセットは、図5に示されたように液体流が直列になるように積み重ねられる。この場合、カセット310a〜310nは、複合カセット350を構成し、その液体流の長さは、分流器プレート320のおかげで各カセット310の長さの合計と等しい。マニホールド(図示せず)は、積み重ねカセット310を支持構造物(図示せず)によって支持するために使用され、供給流を供給端の分配路314に分配し、溶離流をカセット310の溶離端から収集する分配路を含む。エンドプレートは、カセット310の供給端及び溶離端と一致する供給端及び溶離端を有する。図4に示された並列構成と対照的に、供給流路と溶離流路は、別個のマニホールド内になければならない。隣接するカセット310の間、カセット310と分流器プレート320との間、及びカセット310とエンドプレートとの間を確実な封止するためにガスケット110が使用されてもよい。ガスケット110は、各カセット310に組み込まれ(また接着され)てもよく、カセットのスタックの一部として追加されてブロックを構成する別個の構成要素でもよい。カセット310を図5に示されたように積み重ねることができるように、これらのカセットは、ほぼ同じ長さと幅のものでなければならず、分配路は、整列し流体連通するように同様に配置されなければならない。しかしながら、図5は、同じ高さのカセット310を示すが、カセットが、異なる高さのものでもよく、更に、複数のカセットが直列に配置されてもよいことを理解されたい。
分流器プレート320をカセット310のスタック内の所望の位置に導入することによって、図4と図5に示されたような並列構成と直列構成の組み合わせを利用した複合カセットを作成できることを理解されたい。
図6Aは、ブロック20の供給端の分配路14fの拡大断面図(図1Bの断面2Aを通る断面図)を示し、各ウェブ21a〜21n内の供給流の流れプロファイルを示す。供給流(図示せず)は、マニホールド(図示せず)によってブロックの幅方向に沿って分配されて、供給液副流17として幾つかの分配路14のそれぞれに入り、更に分配され方向転換されて、各ウェブ層内の横方向流25a〜25nとなる。濾過装置と対照的に、横方向流25a〜25nは、ウェブ21を規定する平面に沿って流れる(即ち、これらの横方向流は、ウェブ21の平面に対して垂直にではなく横方向に流れる)。図6Bは、ウェブ21上の流線21a〜21nを平面図で示し、供給端から溶離端に向けて移動する流体を示す。図6Cは、ブロック20の溶離端の分配路18fの拡大断面図(図1Bで断面2Aを通る断面図)を示し、更に、各ウェブ層21内の横方向流33a〜33nがどのように収集されて分配路18f内で溶離液副流39となるかを示す。マニホールド(図示せず)によってカセットの幅方向に沿って収集されてブロック20からの完全な溶離流(図示せず)となる複数の溶離液副流39がある。
図7は、カセットが、図1Aに示されたような角形の代わりに円形に構成された別の実施形態を示す。円形ウェブ412が、分配路404a〜404nと共に周辺シール410を有する。この場合、供給液分配路404は、ウェブ412の周囲に配置され、一方、溶離液分配路402は、ウェブ412の中心の単一チャネルでよい(円形ウェブの中心の分配路402が、複数の分配路402を含んでもよいことを理解されたい)。
或いは、中心の流路402が供給液分配器であり、周囲近くの流路404が溶離液分配器である。この場合、流体流れ通路は半径方向であり、通路の長さは、円形ウェブ412の半径とほぼ等しくなる。
図8は、リブ408a〜408nを有する円形カセットの別の実施形態を示し、リブ408a〜408nは、流体を螺旋通路に流して図7に示された実施形態の通路よりも長い通路を形成する。
図9は、ほぼ「パイスライス」又は台形の形状のウェブ452を有するカセット440の別の実施形態を示す。ウェブ452が平坦で、周辺シール448と分配路444及び446を有する限り、任意の形状が可能であり、最も有益な形状は用途によって決まる。また、一般に、円形や角形等の任意の形状のリブ(図示せず)を利用して、ウェブ452内で流体が移動する自然な通路と異なる通路で流体を流すことができることを理解されたい。
図10は、複数のウェブ層の代わりにモノリス(単一体)522の形態の吸着媒体によって作成され本明細書に開示された一実施形態装置によるカセット500を示し、重要な違いは、モノリス522がウェブよりはるかに厚く、その結果、単一モノリスがかなりの高さになることである(ウェブを使用するときは複数層による場合のみ可能)。この実施形態によれば、モノリス522は、周辺シール506と分配路508を有し、図10Bは、図10Cに示されたものより薄いモノリスで作成されたカセットを示す。図1〜図7で述べたように、平らな上面と下面を有し、使用中に生じた流体力に対応するのに十分な引張及び圧縮強度を有する限り、同じ形状と機能のカセットをモノリス522で作成することができる。モノリスでは、使用中に生じた流体力を抑制できるシールを平らな上面と下面に追加する選択肢ができる。この場合、上側及び下側プレートは、カセットが自立するので必須ではなく、更に、エンドプレートは、カセット500内の供給液分配器と溶離液分配器に取り付けるだけでよい。
図11Aは、カセットが「両側型」である角形カセットの別の実施形態の平面図を示す。この実施形態では、カセットは、カセット500の2端にある1組の分配路504及び508に加えて、ウェブ512の長さ寸法の中央点に別の組の分配路516を有する。図11Aを参照すると、カセット550は、周辺シール513を有するウェブ512を有し、ウェブ512は、ウェブ512の長さ寸法の中央点に1組の中央分配路516と、ウェブ512の2端に2組の分配路504及び508とを有する。この特定の実施形態では、中央流路516が供給流を分配し、端流路504及び508が溶離流を収集する。この実施形態の流れプロファイルを図11Bに示す。両側型カセット(図示せず)の代替実施形態では、分配路504及び508が供給流を分配し、中央流路506が溶離流を収集する。
図12A〜図12Eは、図1Aに示されたカセットを製造する例示的プロセスを概略的に表わす。複数のウェブ600が、図12Aに示されたように所望の寸法に切断され、図12Bに示されたように積み重ねられる。周辺シール606は、当業者に知られた多くの方法のうちの一方法によって、図12Cに示されたように作成される(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は当業者に知られた他の密封材を使用することができる)。硬化後、ウェブ600のスタックが、(ドリル加工、打抜き、レーザー切断、又は当業者に知られた他の方法によって)穿孔されて、図12Dに示されたように高さ方向に実質的に真っ直ぐな分配路604及び608が形成され、その結果、図12Eのカセット620が完成する。
この製造方法には多くの変形物がある。例えば、分配路は、積み重ねられる前にそれぞれ個々のウェブ650上で穿孔されてもよい。この方法によって、各ウェブ650内に同一に配置されない分配路を形成することができ、この同一さは、図13Aと図13Bに示されたように、隣接ウェブ650及び660が積み重ねられたときに分配路654及び658がある程度重なって流体連通する限り許容可能である。図13Aを参照すると、ウェブ650には長楕円形分配路658が穿孔されているが、この長楕円形分配路658は、幅寸法の中央に位置しておらず、ウェブ650の他方の縁に比べ一方の縁により近い位置に設けられている。図13Bに示されたウェブ660にも長楕円形分配路658が穿孔されるているが、この長楕円形分配路658も、(オフセット655により)中央に位置しておらず、ウェブ660の反対側の縁の方にずらされている。隣接ウェブ650及びウェブ660が積み重ねられたとき、分配路654及び658は、上下に完全には整列しないが、重なり合って流体連通する分配器を作成する。ウェブを積み重ねる前にウェブ650に分配器通路654を穿孔することにより、分配器の形成において大きなフレキシビリティーが提供され、これが、幾つかの用途では利点となることを理解されたい。同様に、ウエブを積み重ねる前に周辺シール662を各ウェブに個々に追加すると有利であろう。
分配器は、バンドスプレッディング(クロマトグラフィー分離の有効性を劣化させる現象)を増加させ、劣化は、分離媒体の容積に対して分配器のホールドアップ容積が大きくなるほど増加する。従って、分配器は、容積が最小になるように設計されなければならない。しかしながら、この容積は、分配器によって生じる圧力降下と釣り合わなければならず、この圧力降下は、分配路の直径が小さいほど大きくなる。多くの場合、分配器容積は、吸着媒体の残りの部分より小さく維持することができ、その場合、分配器内の供給流と溶離流の正確な分配パターンは、装置の分離性能にほとんど影響を及ぼさない。そのような場合、流体がカセットに入って出る場所はあまり重要ではない。
分配器によって生じた劣化を少なくする別の手法は、分配器容積が小さくないときでもバンドが歪まないように分配器を設計することである。これは、流路分離装置(エンドプレート内に含まれる通路/分配器を含む分離媒体と分配器)内の全ての流線が、同じ滞留時間を有することを必要とする。供給流が点状供給源から来て溶離流が点状供給源に戻る本明細書に開示された装置の場合には、供給流と溶離流がそれぞれ出入りする位置が、重要なことがあり、分配器設計に好ましい実施形態をもたらす。本明細書に開示された角形装置の場合(例えば、図1〜図4に示したような)、分配器に大きなホールドアップ容積がある状態で全ての流線の滞留時間をできるだけ均一に維持するには次の設計原理に従わなければならない。即ち、何れかの方向でカセットを二分する平面に沿って供給流と溶離流がカセットに出入りするとき、供給流と溶離流の流れパターンが鏡像対称でなければならない。具体的には、これは、第1に、供給流と溶離流が、対向するエンドプレート内に位置していなければならないことと、第2に、供給流が上側(又は下側)エンドプレートに入る側は、溶離流が反対側のエンドプレートから出る側と反対側でなければならないことを意味する。
図14A、図14B及び図14Cは、本明細書に開示された一様相によるカセット組立体を有する装置700を示し、装置700は、前節で述べた設計原理に従って設計されたエンドプレートを有する。図14Aは、上エンドプレート706a、第1のガスケット705a、カセット702、第2のガスケット705b及び下エンドプレート706bを有するカセット組立体700の断面側面図を示す。この概略図では、上エンドプレート706aは、供給流を導入するために使用され、下エンドプレート706bは、溶離流を回収するために使用される。上エンドプレート706a内の通路716aは、供給流をカセット702内の分配器通路704aに分配するために使用される。下エンドプレート706b内の通路716bは、溶離流をカセット702内の分配器通路704bから回収するために使用される。図14Bは、図14Aの断面14Bに沿うカセット組立体700の正面図である。図14Bを参照すると、供給流707は、供給液口717からエンドプレート706aに入り、次に流路716aを利用して装置の幅方向に沿って更に分配される。次に図14Cを参照すると、溶離流709は、通路716bを利用して装置の幅方向に沿って収集された後で、溶離液口719からエンドプレート706bを出る。図14A、図14B及び図14Cは、エンドプレート706a及び706b内の供給液通路と溶離液通路が、前節で述べたように互いに鏡像対称であることを明示し、本明細書に開示された装置内の分配器通路704a及び704bの容積によって分離性能が低下するときの好ましい実施形態を表わす。更に、この実施形態では、供給流と溶離流の流れ方向が、カセット組立体702内の全ての点で同じであることに注意されたい。
図15Aと図15Bは、本明細書に開示された別の実施形態を示し、この実施形態によれば、複数のカセット810a〜819nが、単一の多重カセット800に一体化される。ブロック822は、周辺シール823を有し、更にカセット間シール825によって多重カセット810a〜810nに分割される。分配路824は、図15Aに示されたようにブロック822の両端でブロック822の高さ方向に沿って穿孔される。この実施形態では、多重カセット800のブロック822は、複数ウェブ層のスタック(図示せず)から構成される。周辺シール823とカセット間シール825は、使用中にカセット810a〜810n内に生じる内圧を維持できるようにウェブに接着される。別の実施形態では、吸着ブロック822を構成するために使用される媒体は、ウェブの代わりにモノリス(図示せず)の形態でもよい。
図16Aは、多重カセット組立体900を構成するエンドプレート926a及び926bと組み合わせた多重カセット800の正面図である。図16Bは、多重カセット組立体900の概略流れ図である。エンドプレート926aは、複数の供給流930a〜930nを導入するための複数の流路934aと、各供給流をカセット810a〜810nのそれぞれのマニホールド924aに分流するための弁935a〜935nのアレイとを有する。エンドプレート926bは、カセット810a〜810nのそれぞれから複数の溶離流934bを収集するための複数の流路と、各溶離流を溶離液分配器924bから生成液流931、廃液流932に分流し、又は場合によって、供給流933a〜933nをカセット810a〜810nのうちの別のものに分流するための弁935bのアレイとを有する。流路と弁は、エンドプレート内に含まれ、それにより、ユーザは、個々のカセット810a〜810nに個別接続を行わなくてもよい。プロセス設計は、弁を開閉する制御システム(図示せず)によってどの弁が開閉されるかを決定する。幾つかの実施形態では、エンドプレート926a及び926bは、再利用可能である。他の実施形態では、エンドプレート926a及び926bが、カセットと一体化されて完全に使い捨て組立体900を構成してもよく、その場合、弁935a及び935bは、空気圧で動作されてもよく、空気圧流は、当業者に知られた簡単な接続手段によって使い捨てカセット組立体900に接続された再利用可能な弁アレイ(図示せず)によって動作される。この実施形態は、バッチ間の相互汚染を許容できない用途、洗浄及び洗浄サイクルを確認することがコスト面又は時間的にできない用途、操作者の安全のために流体流の暴露がないことが必要な用途に適する。
他の実施形態では、図17A〜図23と関連して後述されるような液体流を受け取るように設計された吸着ベッドは、平面方向一体性吸着ブロックを形成するために使用されてもよく、クロマトグラフィーカラム内で使用されてもよい。そのような実施形態では、複合吸着ベッドは、開放セル(ボイド空間とも呼ばれる)を有するスカフォールドと、スカフォールドによって作られたボイド空間を埋める吸着ビーズとを含む。スカフォールドは、平面吸着装置によって必要とされる平面方向一体性を提供し、吸着ビーズは、所望の吸着特性を提供する。クロマトグラフィーカラムを利用する実施形態では、スカフォールドは、ビーズが粉砕されるのを防ぐための構造支持を提供し、吸着ビーズは、所望の吸着特性を提供する。図17A〜図22Bは、後述するような、平面吸着装置とクロマトグラフィーカラムの両方のためのスカフォールドに適した平面方向一体性セパレータシートの例を示す。
次に図17Aを参照すると、平面方向一体性セパレータシート1000は、複数の開放セル1014を規定するように配置された複数の剛構造部材1010a〜1010n(全体的に部材1010と呼ばれる)と剛構造部材1012a〜1012m(全体的に部材1012と呼ばれる)とを有する。平面方向一体性セパレータシート1000は、積み重ねられたとき、図23Aと図23Bに示されたように、スカフォールドの、応力を吸収する実質剛構造を構成する。平面方向一体性セパレータシート1000は、図26に示されたように、クロマトグラフィーカラム内に積み重ねられてもよい。一実施形態では、平面方向一体性セパレータシート1000は、バイプラナープラスチック網1000を含む。バイプラナー網1000は、互いに平行で単一平面内に第1の直線部材アレイを構成するように配列された部材1010と、互いに平行で単一平面内に第2の直線部材アレイを構成するように配列された部材1012とから構成され、第1と第2のアレイは、図17Aに示されたように互いに垂直である。ここで、剛構造部材は、高分子モノフィラメントである。
図17Bは、平面方向一体性セパレータシート1000の断面図を示す。一実施形態では、部材1010と部材1012は、高分子モノフィラメントであり、例えばフィラメントを接点1015で溶融させることによって接点で融着される。部材1010と部材1012の構成(ここでは融着された高分子モノフィラメント)が、吸着ビーズの充填を可能にする開放セル1014を作成する。平面方向一体性セパレータシート1000は、圧縮応力と引張応力に耐えることができる、応力を吸収する実質剛構造を作成するために使用され、この両方の応力は、流体が圧送されてクロマトグラフィーカラム内の平面方向一体性吸着ベッド又は複合吸着ベッド内への液体流が生じたときに存在する。
本明細書で使用される実質剛性とは、一般に、用途において生じた応力負荷による剛構造部材とスカフォールド全体の変形が、吸着ベッドの性能において気付かないほど十分に小さいことを意味する。機能的には、これは、一般に、吸着ベッドが、加わった応力で移動せず、従って、ビーズの破砕によるボイドやチャネルの生成がなく流体力学的抵抗が増大しないことを意味する。実質剛構造部材及びその対応するスカフォールドは、ベッドに流れる液体によって作成された圧力勾配によって複合吸着ベッド内に生じた応力を吸収し、それにより、そのような応力が、積み重ね平面吸着装置内の周辺シールを破壊したり、従来のクロマトグラフィーカラム内のビーズを破砕したりするのを防ぐ。以下で、構造部材、セパレータシート又はスカフォールドを参照するとき、「剛性」は、「応力を吸収する実質剛性」を意味する。
次に図18Aを参照すると、図17Aの平面方向一体性セパレータシート1000と類似の平面方向一体性セパレータシート1100は、複数の開放セル1114を規定するように複数の剛構造部材1110a〜1110n(全体的に部材1010と呼ばれる)と複数の剛構造部材1112a〜1112m(全体的に部材1012と呼ばれる)が編まれた織布スクリーン1104を有する。ここで、織布スクリーン1104は、並列高分子モノフィラメントの2個のアレイによって構成され、各アレイのフィラメントは、他方のアレイのフィラメントと直行する方向に延びており、互いに織り込まれている。
図18Bは、平面方向一体性セパレータシート1100の断面図を示す。平面方向一体性セパレータシート1000と対照的に、部材1110及び1112は、互いに織り込まれてられており融着されていない。他の実施形態では、部材1110と部材1112の選択的融着を使用してセパレータシート1100の剛性を高めることができる。
次に図19Aを参照すると、平面方向一体性セパレータシート1200(ここでは成形プレート1200)は、下平面1220、上平面(図示せず)、縁シール1206(周辺シールとも呼ばれる)、及びスペーサ1210a〜1210m(全体的にスペーサ1210と呼ばれる)を有する。成形プレート1200は、また、複合平面方向一体性吸着ベッドに供給された液体を導入し収集する供給液分配路1202a〜1202nと溶離液分配路1204a〜1204mと、複合吸着ベッドに晒された後の液体を収集する溶離液分配路1204a〜1204fとを有する。
図19Bと図19Cは、成形プレート1200の断面図であり、平坦底部1220、縁シール1206及びスペーサ1210を含む剛構造によって構成された開放セルに充填されたビーズ1214を示す。スペーサ1210は、積み重ねられて剛構造を構成するときに成形プレート1200と隣接成形プレート(図示せず)の間隔を維持する。成形された平面方向一体性セパレータシート1200の開放セルは、供給液通路1202から導入された液体が、複合吸着ベッドを通って溶離液通路1204によって収集されることを可能にする。
次に図20Aを参照すると、平面方向一体性セパレータシート1300(ここでは押出シート1300)は、平坦底部1312とスペーサ1310a〜1310m(全体的にスペーサ1310と呼ばれる)とを有する。図20Bは、押出シート1300の断面図であり、押出シート1300の平坦底部1312とスペーサ1310の剛構造によって構成された開放セルに充填されたビーズ1314を示す。スペーサ1310は、積み重ねられて剛構造を構成するときの押出シート1300と隣接押出シート(図示せず)との間隔を維持する。吸着ビーズ1314は、押出シート1300の開放セルを満たす。
次に、図21Aを参照すると、平面方向一体性セパレータシート1400(ここでは穿孔プレート1400)は、平坦底部1420と、スペーサ1410a〜1410m(全体的にスペーサ1410と呼ばれる)とを有する。スペーサ1410a〜1410mは、薄板を穿孔することによって作成され、穿孔時に除去された材料は、穿孔プレートの平坦底部1420に取り付けられたままとなっているが、穿孔プレートの平面に対して曲がっている。図21Bは、穿孔プレート1400の断面側面図であり、穿孔プレート1400の平坦下面1420とスペーサ1410との剛構造によって構成された開放セルに充填された吸着ビーズ1414を示す。スペーサ1410は、積み重ねられて剛構造を形成するときに、穿孔プレート1400と隣接穿孔プレート(図示せず)との間隔を維持する。穿孔プレート1400の開放セルは、穿孔プレート1400を通っての液体の流れを可能にする。図21Cは、図21Bに示された側面図に垂直な方向の穿孔プレート1400の断面側面図であり、それにより、スペーサ1410を構成する穿孔が、その平坦方向(flat dimension)に沿って見られる。穿孔によって作成されたスペーサ1410は、整列されてもよく、この例に示されたように流れ均一性を改善するために互い違いにされてもよい。
次に図22Aを参照すると、平面方向一体性セパレータシート1500(ここでは多孔性不織布ウェブ1500)は、接合により剛構造とされた、不規則に充填された繊維1510a〜1510nを含む。不織布ウェブ1500の剛構造は、複合平面方向一体性吸着ベッドを構成する吸着ビーズ1514で満たされた複数の開放セルを有する。図22Bは、不織布ウェブ1500の拡大断面図であり、ビーズの動きを制限する剛構造によって構成された開放セルに充填されたビーズ1514を示す。不織布ウェブ1500は、長さLと厚さHを有する。不織布ウェブ1500の厚さHが、極めて大きい場合(例えば、1cmを超え、更に5cmを超える)、不織布ウェブ1500は、複数のセパレータシート1500を積み重ねる必要なしに吸着ベッドを提供する多孔性モノリスとなる。
他の実施形態では、平面方向一体性セパレータシートは、接合により平面方向一体性シート(図示せず)とされた、不規則に充填された充填片によって形成される。適切な充填片は、開放セルの形のボイド空間を有する剛性スカフォールドを形成する限り、任意の形状とサイズを有することができる。適切な充填片の例には、充填式蒸留及び抽出カラム内で使用される充填片(例えば、ラシヒリング(Rashig ring);スプラインリング(Splined Ring);ポールリング(Pall Ring);バールサドル(Berl Saddle);ガラスショット;ヘリックス(Helices);ナッターリング(Nutter Rings);スーパープラスチック球(Super Plastic Sphere))、蒸留及び抽出の業者に既知の任意の他の充填片があるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、蒸留及び抽出カラム内で使用される同じ充填片は、本明細書に開示されたスカフォールドに適した充填片となり、充填片を必要とする他の実施形態では、類似の形状であるがもっと小さい寸法の充填片が使用される。
これらの実施形態では、ボイド空間の開放セルは、ビーズがこれらのボイド空間に流れ込めるようにし、それらを密に詰め込むことを可能にするのに十分な大きさでなければならない。開放セルのサイズは、開放セル内に内接されうる最大球の直径によって特徴付けられる。ボイド空間によって作り出された複数の開放セルの全てが同一とは限らないので、開放セルの総数は、それらの平均径によって特徴付けられる(以下では、特徴径と呼ばれる)。本明細書で開示された複合吸着ベッドの開放セルは、ボイド空間の開放セルの均一で効果的な充填を可能にするために、吸着ビーズの平均直径の少なくとも約10倍の大きさの代表粒子径(characteristic diameter)を有していなければならない。
図18〜図22で前述したようなビーズに適した平面吸着装置の特定の実施形態は、構造的スカフォールドのボイド空間内にビーズを保持する充填リテーナを含んでいる。充填リテーナは、一般に、ビーズの充填層と溶離液コレクタとの間の吸着ベッドの流出端に配置される。幾つかの実施形態では、供給液分配器と溶離液コレクタとの間の供給端と溶離端の両方に充填リテーナがある。このように、吸着ビーズが保持されて固定ベッドが形成される。
一実施形態では、充填リテーナは、吸着ビーズのサイズより小さい孔サイズを有するロッド、ディスク又はシート状に形成された焼結セラミック又はガラス多孔性媒体で作成される。他の実施形態では、多孔性媒体は、プラスチック(例えば、ジョージア州アトランタのPorex Corporationによって作成された多孔性高分子材料)、金属(例えば、コネチカット州ファーミントンのMott Corporationによって作成された多孔性金属)、又は微多孔性(microporous)膜(例えば、マサチューセッツ州ビルリカのMillipore Corporation)である。
充填リテーナは、別々に製造されて装置に挿入されてもよく、その場で装置内に形成されてもよく、重要な様相は、ビーズ使用装置で充填リテーナを使用することである。
他の実施形態では、充填リテーナは、プラスチック部品内に細いチャネルを成形することによって形成され、細いチャネルは、吸着ビーズのサイズより小さい寸法を有する。これは、詳細には、図19Aに示されたような成形プレートを使用して平面方向一体性スカフォールドを形成する実施形態に有効である。更に別の実施形態では、充填リテーナは、細いチャネルと、吸着ビーズより大きい補助ビーズ又は粒子の組み合わせによって形成される。細いチャネルは、(大きい)補助ビーズを保持し、このビーズは更に小さい吸着ビーズを保持する。例えば、細い成形チャネルは、約100μmのチャネル深さを有し、補助ビーズは、約150μmの直径を有し、吸着ビーズは、約30μmの直径を有する。より大きい補助ビーズのベッドの孔サイズは、約20μmであり、吸着ビーズを効果的に保持する。より大きい補助ビーズは、プラスチック、金属、セラミック又はガラスで作成されてもよい。細いチャネルとより大きい補助ビーズの組み合わせは、より小さい吸着ビーズを保持しながらより大きいチャネルの成形を可能にする。別の実施形態では、充填リテーナは、平面方向一体性ウェブの各層の間に挿入されるか各層に成形される。他の実施形態では、充填リテーナは、後で図36、図37、図40及び図41でより詳しく述べるように、周辺シール及び供給端と溶離端の分配路及び収集路を有する完成した構造スカフォールドに挿入又は成形される。
図23Aと図23Bは、図17に示されたタイプのセパレータシートを積み重ねることによって形成された剛性スカフォールドと、スカフォールドの剛構造によって作成された開放セルに充填された吸着ビーズを有する複合ベッドの概略図である。ここで図23Aを参照すると、吸着ベッド1600は、第1表面1604を有するハウジング1602と、第1表面1604に接してハウジング内に配置されたスカフォールド1606とを有する。スカフォールド1606は、応力を吸収する実質剛構造1608と、剛構造1608内に配置された複数の開放セル1614a〜1614n(集合的に開放セル1614と呼ばれる)とを有する。吸着ベッド1600は、更に、複数の開放セル1614を満たして複数の吸着ビーズから成る充填ベッドを構成する複数の吸着ビーズ1616を含む。
ここで、応力を吸収する実質剛構造1608は、複数の積み重ね平面方向一体性セパレータシート1000a〜1000n(集合的にセパレータシート1000と呼ばれる)を含み、複数の積み重ね平面方向一体性セパレータシート1000はそれぞれ、複数の積み重ね平面方向一体性セパレータシート1000の内の隣接するものと密接しており、複数の積み重ね平面方向一体性セパレータシート1000はそれぞれ、複数の開放セル1614を規定するように配置された複数の剛構造部材を含む。
一実施形態では、セパレータシート1000は、スカフォールド1600の剛構造を構成する部材が整列するように積み重ねられる。スカフォールド1600は、ベッドに充填された吸着ビーズによって満たされた開放セルの形態のボイド空間を有する。図23Bは、本明細書に開示されたスカフォールドの別の実施形態の概略である。スカフォールド1700は、図17に示されたタイプのセパレータシートを積み重ねることによって構成される。セパレータシート1000は、スカフォールド1600の剛構造を構成するフィラメントが互い違いになるように積み重ねられる。スカフォールド1700は、ベッドに充填された吸着ビーズによって満たされた開放セルの形態のボイド空間を有する。図23Aと同じように開放セルが実質的に整合されるようにセパレータシートが積み重ねられてもよく、或いは、図23Bに示されたように開放セルが繰り返し順序で互い違いになるか、又は開放セルが種々のずれ方向で互い違いになるようにセパレータシートが積み重ねられてもよいことを理解されたい。積み重ねの重要な様相は、作成されたスカフォールドが実質的に剛性であり、スカフォールドの剛構造のボイド空間が複数の開放セルを作成することである。
動作において、吸着ベッド1600が液体流を受け取り、スカフォールド1606が、複数の吸着ビーズ1614の運動を制限し、液体流の方向の液圧勾配によって生じた圧縮応力を吸収し、生じた圧縮応力の一部分をハウジング1602の第1表面1604に伝達する。
図17A〜図23Bで述べた平面方向一体性スカフォールドとセパレータシートは、積み重ね可能な平面吸着装置(平面方向一体性吸着媒体を必要とする)に適した複合吸着ベッドを作成するために使用することができ、或いはクロマトグラフィーカラムに適した複合吸着ベッドを作成するために使用することができる。クロマトグラフィーカラムに使用されるとき、本明細書に開示された複合吸着ベッドは、従来のクロマトグラフィーカラムに充填され、従来の操作での圧力より実質的により高い圧力で操作されるソフトビーズの使用を可能にする。例えば100psiを超える高い圧力での動作は、剛性スカフォールドによって提供される構造的支持がないと不可能である。そのような実施形態では、複合吸着ベッドの剛性スカフォールドは、液体流によって発生された圧縮応力を吸収し、剛構造のボイド空間に充填された比較的柔軟な吸着ビーズは、分離のための吸着媒体を提供する。剛性スカフォールドがない場合、高圧時には大きいサイズのソフトビーズ(例えば、アガロースビーズとセファロースビーズ(sepharaose bead))を使用できず、カラムの
長さ及び/又はクロマトグラフィー分離で使用される移動相の速度、及び/又は使用できる吸着ビーズのサイズが制限される。一実施形態では、吸着ベッドは、150cm/時間を超える液体流速度に対応する。
平坦な積み重ね式装置では、吸着媒体は、装置内の流体圧並びに液体流によって作られた圧力勾配に耐える平面方向一体性を持たなければならない。液体流によって作られた全ての応力は装置を破壊するため、引張応力に耐える平面方向一体性の吸着媒体が必要になる。これと対照的に、従来のクロマトグラフィーカラムは、圧力に耐えることができる剛性ハウジングを有するが、液体流によって生じた圧力勾配は、吸着ベッドが耐えなければならない圧縮応力を作り出す。
図24Aは、複数の不規則に充填された充填片1710a〜1710n(集合的に充填片1710と呼ばれる)を含む剛構造を有するスカフォールド1702を有する複合ベッド1700の一部分を示す。複数の不規則に充填された充填片1710はそれぞれ、剛構造材から作成され、複数の不規則に充填された充填片1710は、充填片1710によって構成された複数の開放セル1712a〜1712m(集合的に開放セル1712と呼ばれる)を規定するように配列される。ここで、充填片1710は、ラシヒリングである。充填片1710には、レッシグリング、スプラインリング、ポールリング、ベルルサドル、ガラスショット、ヘリックス、ナッターリング及びスーパープラスチック球が挙げられるが、これらに限定されない。様々なタイプの充填片1710を混合できることを理解されたい。一実施形態では、複数の不規則に充填された充填片1710は、クロマトグラフィーカラム内に積み重ねられて不規則に充填され、ビーズ1714が、スカフォールドの剛構造によって構成された開放セル1712のボイド空間に充填される。クロマトグラフィーカラム内の充填片は、カラム底部1706とカラム側壁1702によって支持された剛構造を構成する。剛性スカフォールドは、ビーズの動きを制限し、液体流によって生じた圧縮応力を吸収してビーズが破砕されるのを防ぐ。
図24Bは、スカフォールドとビーズ1814を含む複合ベッド1800を示す。スカフォールドは、クロマトグラフィーカラム内に積み重ねられて不規則に充填された充填片1810a〜1810n(全体的に充填片1810と呼ばれる)(本実施形態ではフィラメント)によって構成されており、ビーズ1814は、スカフォールドの剛構造によって構成されたボイド空間に充填されている。クロマトグラフィーカラム内の充填片は、カラム底部1806とカラム側壁1802とによって支持された剛構造を構成する。剛性スカフォールドは、ビーズの動きを制限し、液体流により生じる圧縮応力を吸収してビーズが破砕されるのを防ぐ。幾つかの実施形態では、複合吸着ベッド1700又は1800の充填片1710及び1810は、吸着ビーズ(図示せず)を開放セルに充填する前に、融着、接合、又は焼結されてもよい。
ビーズは、当業者に知られた乾燥充填法又はスラリ充填法によってボイド空間に導入することができる。幾つかの実施形態では、ビーズは、セパレータシートが積み重ねられるときにスカフォールドに徐々に導入される。他の実施形態では、ビーズは、スカフォールド全体が平面方向に一体化された装置に製造されるかクロマトグラフィーカラム内に配置された後で導入される。更に別の実施形態では、吸着ビーズを個別のセパレータシートに導入してもよい。
図25Aは、ワイヤーフレーム形式の先行技術のクロマトグラフィーカラムの斜視図である。クロマトグラフィーカラム2000は、側壁2008、底部平坦表面2004及び上面2002を有する。クロマトグラフィーカラム2000は、吸着ビーズ(図示せず)が充填されて高さHの吸着ベッドが構成される。図25Bは、カラム2000の断面図であり、側壁2008によって支持された吸着ビーズ2014を示す。動作において、カラム2000は、上面2002で分配器(図示せず)に液体が供給される。吸着ビーズ2014の充填によって形成された吸着ベッドの液圧抵抗により、流体は、圧力下で圧送されなければならず、これにより、カラム2000内に静圧と圧力勾配が生じる。静圧によって生じた力は、側壁2008、上面2002及び下面2004によってそれぞれ制限される。充填ベッド内に各ビーズ層によって生じた圧力勾配は、充填ベッド上に液体の流れ方向に沿って大きくなる圧縮応力を作成する。その結果、底面2004に隣接した充填ベッドの底部のビーズは、上面から下面への液圧勾配(以下では圧力降下と呼ばれる)によって圧縮される。生体分子精製に一般に使用される柔軟なアガロースビーズとセファロースビーズは、約25〜50psiの圧縮力に晒されたときに変形し始める。この理由のため、そのようなタイプのソフトビーズが充填されたクロマトグラフィーカラムは、50psi、好ましくは30psiを超える圧力降下をカラム内で生成する流量では動作できない。ソフトビーズの圧縮応力に対しての制限は、そのようなクロマトグラフィーカラムが動作できる条件を著しく制限する。より具体的には、そのようなカラムは、比較的短くなければならず(例えば、典型的には50cm未満)、比較的低い流速で作動されなければならず(例えば、典型的には150cm/時間未満)、比較的大きいビーズを利用しなければならない(例えば、典型的には直径が少なくとも90〜100μm)。その結果、クロマトグラフィーカラムは拡張が困難となり、このプロセスは、生産性が低く、カラムが大きくなりかつ/又は処理時間が長くなる。
次に図26Aを参照すると、クロマトグラフィーシステム2100は、この実施形態ではハウジングとして働くクロマトグラフィーカラム2103に充填されたスカフォールド2101を含む吸着ベッド2105を有する。クロマトグラフィーシステム2100は、更に、高速循環コントローラ2160、少なくとも1個のポンプ2150及び少なくとも1個の弁2130aを有し、液体供給流を制御する。高速循環コントローラ2160は、制御線2152を介してポンプ2150に結合され、制御線2140aを介して弁2130aに結合されて、液体供給流を制御する。対応する制御線2140a〜2140nを有する複数のポンプと弁2130a〜2130nを使用してシステムを制御できることを理解されたい。
クロマトグラフィーカラム2103は、側壁2108、底面2104及び上面2102を有する。カラム2103には複合吸着ベッド2105が充填されている。この複合吸着ベッド2105は、図17〜図24に記載された実施形態に示されたように、開放セル形状のボイド空間を有する剛性スカフォールド2101と、開放セルに充填された吸着ビーズ(図示せず)とを含む。クロマトグラフィーカラムハウジング2103内に配置されたスカフォールド2101は、底面2104(第1表面とも呼ばれる)と接する。スカフォールド2101は、吸着ベッド上に液体流の方向(「H」と示された両矢印の方向)に生じた圧縮応力を吸収する剛構造として働く。スカフォールド2101は、複数の吸着ビーズの動きを制限し、液体流の方向の液圧勾配によって生じた圧縮応力を吸収し、応力の一部分をハウジングの第1表面(ここでは、クロマトグラフィーカラムハウジング2103の底面2104)に伝達する。
一実施形態では、剛性スカフォールド2101は、クロマトグラフィーカラムの内径と同じ形状(即ち、直径)に切断されたセパレータシート2106a〜2106n(集合的にセパレータシート2106と呼ばれる)のスタックを有する。セパレータシート2106のスタックは、クロマトグラフィーカラムの内部を満たして高さHの剛性スカフォールドを作り、開放セル形状のボイド空間は吸着ビーズ(図示せず)が充填されている。図26Bは、カラム2103の断面図であり、側壁2108と複合吸着ベッド2110とを示し、複合吸着ベッド2110は、セパレータシート2106によって作られた開放セルを含む剛性スカフォールドと、開放セルに充填された吸着ビーズ(図示せず)とを含む。他の実施形態では、スカフォールド2101は、図24Aと図24Bに示されたスカフォールドと類似している。
先行技術のクロマトグラフィーカラムとは対照的に、剛性スカフォールドは、吸着ビーズの動きを制限し、吸着ベッドによって作られた圧力勾配によって生成された圧縮応力を吸収し、100psiを超える圧力降下を有するカラム内でソフトビーズの利用を可能にする。そのような圧力は、100μm未満のビーズが、50cmより長いカラム内に充填されかつ/又は150cm/時間を超える移動相速度で操作されたときに生成される。幾つかの実施形態では、300psiを超える圧力降下が生成され、これは、直径が50μm未満のソフトビーズを利用するときに必要であろう。更に他の実施形態では、300psiを超える圧力降下が生成され、これは、直径が25μm未満のソフトビーズを利用するときに必要であろう。
動作において、クロマトグラフィーシステム2100は、ポンプ2150を使用してクロマトグラフィーカラム2103に供給する。一実施形態では、ポンプ150が、100psiを超える圧力を生成することができる。高速循環コントローラ2160は、制御線2140a〜2140m(集合的に制御線2140と呼ばれる)によってポンプ2150と弁2130a〜2130m(集合的に弁アレイ2130と呼ばれる)を制御する。弁アレイ2130は、マルチステップクロマトグラフィー法を実施するために、必要に応じて幾つかの供給流2120a〜2120m(集合的に供給流2120と呼ばれる)のうちの1個を選択する。マルチステップクロマトグラフィー法は、典型的には、少なくとも4個の供給流2120を利用し、これらの供給流は、連続供給されて少なくとも4個のステップ、即ち装填、洗浄、溶離、再生に影響を及ぼす。これらの流れは、高速循環コントローラ2160によって選択された条件に従う様々な移動相速度と異なる時間で供給される。一実施形態では、精製プロセスは、吸着ベッドに標的溶質を吸着し、吸着されなかった溶質を洗浄し、精製された標的溶質を放出し、次の精製サイクルのために吸着ベッドを調整することを有する。一実施形態では、高速循環精製プロセスは、約10分未満の高速精製プロセス循環時間を有し、別の実施形態では、約20分未満の高速精製プロセス循環時間を有し、別の実施形態では、約30分未満の精製プロセス循環時間を有する。
そのようなマルチステップクロマトグラフィー法における一連のステップは、所望の精製溶質を得るために必要とされ、従って、精製溶質を得るために複数ステップシーケンスが少なくとも1回実施されなければならない。全てのバッチを1ステップで吸着できないクロマトグラフィーカラムを利用してより大量の供給流を処理するために、所定の生産バッチのためにマルチステップシーケンスを2回以上実行することができる。そのようにして、より小さいクロマトグラフィーカラムを使用して、より大きいカラムを必要とする量を処理することができる。そのようなマルチサイクルクロマトグラフィー法はますます一般的になっており、典型的には2〜5回繰り返される。サイクル数が多いほどカラムが小さくなり、コストが減少するので、クロマトグラフィーカラムを単一生産バッチで数十回、更に有利にはカラムを100回以上繰り返すことが特に有利である。そのような高速循環プロセスは、クロマトグラフィーのカラムのコスト、特に吸着媒体のコストを削減するのに明らかに有利であるが、高速循環は、より小さい直径のビーズが高い移動相速度で操作される場合のみ可能である。前述のような剛構造を有するスカフォールドを有する吸着ベッドは、吸着ビーズの動きを制限し吸着ビーズを支持して、ソフトビーズを利用する高速循環クロマトグラフィー法を可能にする。
用語「ビーズ」は、一般に、小さい球形の粒子を指すが、本発明において使用される吸着ビーズという用語は、球状であってもなくてもよい吸着性粒子を指す。スカフォールドを構成する材料は、プラスチック、金属又はセラミックス材料を含むが、これらに限定されない。
図26Aを再び参照すると、幾つかの実施形態では、ポンプ2150が、300psiを超える圧力で液体を圧送することができ、また吸着ベッドは、約50μmの直径を有する吸着ビーズを含むことができる。更に他の実施形態では、ポンプ2150は、500psiを超える圧力で液体を圧送することができ、吸着ベッドは、約25μmの直径を有する吸着ビーズを含むことができる。幾つかの実施形態では、セパレータシート2106は、底面2104から上面2102まで積み重ねられて剛性スカフォールドを作成してもよい。スカフォールドが十分な剛性を有するように、セパレータシート2106のスタックは、カラム2103が動作されるときの予想圧力降下を超える圧縮応力に事前に圧縮されてもよく、その後で上面2102がカラム側壁2108に取り付けられる。当業者に知られた方法を利用して吸着ビーズのスラリをカラム2103を通して圧送することによって、剛性スカフォールドによって作成された開放セルに吸着ビーズを充填してもよい。そのようなスラリ充填プロセスでは、複合吸着ベッドが完全に満たされるまでスラリがカラムを通して圧送されるので、ビーズは、底面2104から上面2102まで層内のボイド空間を徐々に満たす。
吸着装置(本明細書ではChromassette−S又はChromassette−Shallowベッドと呼ばれる)の他の代替実施形態は、吸着媒体内の流体流の方向(即ち、流線)が、平面方向一体性媒体の平面表面に(平行ではなく)垂直である点が前述の実施形態と異なる。そのような実施形態は、前述のChromassetteの実施形態と極めて類似しており、即ち、Chromassette−S吸着装置は、Chromassette吸着装置のように、積み重ね可能で線形拡張可能なように平らなカセットの形態と形状を有し、更に、ちょうどChromassette吸着装置のようにウェブ型又はビーズ型吸着媒体と共に使用されうる。Chromassette吸着装置とChromassette−S吸着装置には2つの明確な違いがあり、その違いは、Chromassette−S吸着装置は、本発明の吸着装置の平面表面を横切って流体を分配し、平面表面から流体を収集する追加の第1と第2の平面分配器をそれぞれ有することと、吸着媒体を通る流れの向きが、平面方向一体性吸着媒体の平面方向に垂直であることである。Chromassette−S実施形態は、特に、吸着ベッドの深さを制限する低い液体透過率を有する吸着媒体に適する。これらの装置は、本明細書では、浅いベッド構成を有する実施形態と呼ばれる。
後述する吸着装置は、平面方向一体性吸着媒体(又は単に、平面方向一体性媒体)の使用を必要し、この媒体は、その平面方向の方向に著しい引張強さを有し、従って、媒体は、吸着装置内で処理される流体によって生成される液圧に対応することができる。本発明の吸着装置は、更に、平面方向一体性媒体の周縁又は周囲に付着され、吸着装置内の液圧によって生成された力に耐えることができる縁シール(以下は、周辺シール)を有する。従って、これらの装置の一特徴は、使用中に吸着装置内の液圧力に耐えるのに十分な引張強さを有する平面方向一体性媒体と、周辺シールが吸着媒体から剥がれるのを防ぐのに十分な接着力を有する吸着媒体の周囲に接着された周辺シールとの組み合わせを含むことである。平面方向一体性媒体の平面方向一体性の程度と、平面方向一体性媒体の周囲に対する周辺シールの接着の程度は、装置が動作する液圧によって決定される。
一般に、平面吸着媒体の一体性の程度と、吸着媒体に対する周辺シールのその境界における接着の程度は、その引張強さによって特徴付けることができ、引張強さは、力/単位断面積の単位、又は英国単位ではポンド/平方インチ(又は、psi)で測定することができる。そのような要素の引張強さは、引張強さ試験装置(例えば、Instron Corporationによって作成された試験装置)に吸着媒体の角形試験片を入れることによって容易に測定することができる。これらの試験では、試験片は、クランプによってその両端が保持され、2個のクランプ間の距離と試験片によって生じる抑制力とを測定しながら、試験片をクランプによってゆっくり引きちぎる。更に、材料の固有引張強さは、単位歪当たりの引張り強さと等しいヤング率又は引張り係数(又は、弾性係数)によって最もよく特徴付けられる(ヤング率は、材料がフックの法則に従って挙動し、即ち応力・歪み曲線が線形となる範囲内の応力と歪み応答の勾配として定義される)。本発明の装置の平面方向一体性媒体は、500psi、好ましくは1,500psi、最も好ましくは5,000psiを超えるヤング率を有していなければならず、本発明の周辺シールは、50psi、好ましくは150psi、最も好ましくは500psiを超える接着強さを有していなければならない(接着強さは、吸着ベッドと周辺シールの界面の引張強さとして定義される)。
図27は、Chromassette−S吸着装置の斜視図である。吸着装置3000は、吸着装置3000の第1端3015にある第1の分配路3005a〜3005n(集合的に分配路3005)と、吸着装置3000の第2の端3017にある第2の分配路3007a〜3007n(集合的に分配路3007)と周辺シール3004とを有する。吸着ブロック(図示せず)は、吸着装置3000の上平面表面に配置された(又は、積層された)第1の平面分配器3001と、吸着装置3000の下平面表面に配置された(又は、積層された)第2の平面分配器との間に挟まれる。第1の平面分配器3001は、第1の分配路3005と流体連通しているが、第2の分配路3007とは流体連通していない。
次に図28Aと図28Bを参照すると、吸着装置3000は、吸着ブロック3010、第1と第2の平面分配器3001及び3003、並びに周辺シール3004を有する。
吸着ブロック3010は、互いに積み重ねられた複数の平面方向一体性吸着媒体3002a〜3002n(集合的に吸着媒体3002)を有し、この場合、吸着ブロック3010は、5個の平面方向一体性媒体層を有する。吸着ブロック3010は、更に、吸着ブロック3010の上面に隣接した第1の平面分配器3001と、吸着ブロック3010の下面に隣接した第2の平面分配器3003とによって上下の境界が定められる。平面分配器3001及び3003は、吸着ブロック3010と密接している。周辺シール3004は、より詳しく後述するように、吸着ブロックの周囲並びに第1と第2の平面分配器3001及び3003の周囲を密閉する。吸着装置3000は、更に、それぞれ第1と第2の平面表面3011及び3013と、それぞれ第1と第2の端3015及び3017を有することにより特徴付けられる。
吸着装置3000は、更に、第1のマニホールドを構成する第1組の分配路3005(例えば、互いに積み重ねられた多数の吸着装置3000を横切って供給流を分配するため)と、第2のマニホールドを構成する第2組の分配路3007(例えば、互いに積み重ねられた多数の吸着装置3000からの排出液流を収集するため)を有する。分配路3005及び3007は、吸着装置3000の平面表面に実質的に垂直である。図28Bは、吸着ブロック3010’がより厚いこと以外の全ての点において図28Aの吸着装置3000と同一で、5層ではなく10層の平面方向一体性媒体3002を有する吸着装置3000’を示す。
用語「上」及び「下」は、本明細書で使用されるとき、純粋に記述的なものであり、明細書全体に亘って発明の記述を単純化するために使用され、重要な様相は、吸着装置3000と吸着ブロック3010が、2個の平面表面(第1の平面表面及び第2の平面表面)を有することと、これらの2個の平面表面が吸着ブロックの両側にあることである。2個の平面表面は、図28Aに示されたように水平に向けられてもよく、この場合、一方の平面表面が吸着ブロック3010の上側にあり他方が下側にあり、他の実施形態では、第1と第2の平面表面が垂直に向けられてもよく、その場合、一方の平面表面が吸着ブロック3010の左側にあり他方が右側にあり、他の実施形態では、2個の平面表面は、重力の方向に合っていない他の任意の向きでよい。更に、この説明は、第1の平面表面3011が上側にあるという取り決めを採用し、その場合、第2の平面表面3013が下側にあるが、平面表面及びそれに対応する平面分配器が反対位置にあることを理解されたい。
周辺シール3004は、吸着装置3000の外側を完全に密閉する。図28Aと図28Bに示されたように、周辺シール3004のシール領域3004’は、吸着ブロック3010と第2の平面分配器3003を第1の分配路3005から分離する。同様に、周辺シール3004のシール領域3004”は、第2の分配路3007から吸着ブロック3010と第1の平面分配器3001を分離する。これと対照的に、第1の平面分配器3001は、境界3006において第1の分配路3005と流体連通しており、この流体連通は、周辺シール3004による境界3006のシーリングを選択的に妨げることによって達成される。同様に、第2の平面分配器3003は、境界3008において第2の分配路3007と流体連通しており、この流体連通は、周辺シール3004による境界3008のシーリングを選択的に妨げることによって達成される。図29A〜図29Dにおいて、このシーリング構成が、本発明の吸着装置に望ましいフローパターンを作成することを理解されたい。後述するように、周辺シール3004は、次に記載するもの内の何れかである:
吸着装置3000用の単一連続密閉媒体を含むモノリシック;
ペリキュラ(pellicular)(個別の層又は薄膜にあるような)(吸着ブロック3010を構成する複数の平面方向一体性媒体3001の個別の層又はウェブと2個の平面分配器がそれぞれ、自体の周辺シールを有し、その結果、これらの層が積み重ねられ各隣接層と密接したときに、複数の個別周辺シールが周辺シール3004を構成する); 及び
平面方向一体性媒体3001の2つ以上の層が最初に一緒にシールされ、各平面分配器が個々にシールされ、その結果、これらの層(自体の周辺シールを有する)が積み重ねられ各隣接層と密接したときに、複数の個別周辺シールが周辺シール3004を構成する。
一実施形態では、吸着装置3000及び3000’は、第1と第2の平面表面3011及び3013をそれぞれ有しており、同じフットプリントを有し(即ち、長方形フットプリントを有する吸着装置の場合は、図29Bに示されたような長さLと幅Wによって特徴付けられる同じ平面寸法を有する)、分配路3005及び3007の位置が同じ他の吸着装置の上に吸着装置3000及び3000’を積み重ねることを可能にする。吸着装置3000は、同一の吸着装置又は異なる厚さか高さ(図28BのH)を有する吸着装置と積み重ねられてもよいが、良好な吸着のためには、図31に示されたように同一の吸着装置3000だけが積み重ねられなければならない。
図29Aと図29Bは、吸着装置3000の第1端3015と第2端3017の拡大図をそれぞれ示し、矢印は、吸着装置3000に供給され吸着装置3000から回収される流体の流れを表わす。主供給流3020は、上エンドプレート(図示せず)によって第1の分配路3005の入口内に分配される。主供給流3020の一部分(副供給流3022)は、第1の平面分配器3001が第1の分配路3005と流体連通しているため、第1の平面分配器3001内に分流され90°方向転換される。供給流3022は、更に、第1の平面分配器3001によって、吸着ブロック3026a〜3026n(集合的に流体流3026)の上で複数の流体流に分割され、分配され、90°方向転換され、流体流は、吸着ブロック3010に侵入し、更に、吸着ブロック3010を構成する平面方向一体性媒体層の平面に実質的に垂直方向に流線3028a〜3028n(集合的に流線3028)を作成する。流線3028は、吸着ブロック3010の上平面表面から流れて吸着ブロック3010の深さDを横切り、90°方向転換され、吸着ブロック3010の底部平面表面の下で第2の平面分配器3003によって収集され、副排出液流3023a〜3023n(集合的に副排出液流3023)となる。この副排出液流3023が組み合わされて排出液流3025となる。排出液流3025は、更に、吸着装置3010(図示せず)の上の積み重ねられた吸着装置から出る主排出液流3021と合流して主排出液流3029となり、主排出液流3029は、更に、後の吸着装置(図示せず)に導かれる。第1の平面分配器3001におけるポイント3018は、第1の平面分配器3001と第2の分配路3007の間の流体連通を妨げる周辺シール3004”によって作られる供給流3026のよどみ点である。同様に、第2の平面分配器3003におけるポイント3019は、第2の平面分配器3003と第1の分配路3005の間の流体連通を妨げる周辺シール3004’によって作られる排出液流3025のよどみ点である。
図30Aと図30Bはそれぞれ、第1と第2の平面分配器3001及び3003の上面図と下面図であり、矢印は、平面分配器内の流体流の方向と大きさを表わす。図30Aを参照すると、第1の平面分配器3001は、分配器内の加圧流体を密閉する周辺シール3004を有する。第1の分配路3005a〜3005n(集合的に分配路3005)は、吸着装置の第1端3015で第1の平面分配器3001と流体連通しており、供給流3022が第1の平面分配器3001を入ることを可能にし、供給流3022は、分配路3005に流れる主供給流(図示せず)の一部分である。供給流3022は、吸着ブロック3010(図示せず)との密接によって第1の平面分配器3001内において吸着装置の第1端3015から吸着装置の第2の端3017に横切るときに大きさが徐々に減少し、吸着ブロック3010に流れ込む複数の流れ(図29A及び図29Bの流線3028)となる。供給流3026は、第1の平面分配器3001の端に近づくときまでに、矢印3026nによって表わされたように極めて小さくなり、よどみ点3018に達するまでには完全に消費される。図30Bを参照すると、第2の平面分配器3003は、分配器内で加圧流体を密閉する周辺シール3004を有する。第2の分配路3007a〜3007n(集合的に分配路3007)は、吸着装置の第2の端3017で第2の平面分配器3003と流体連通し、排出液流3025が、第2の平面分配器3003から出ることを可能にする。排出液流3025は、吸着ブロック3010(図示せず)との密接によって第2の平面分配器3003内において吸着装置の第1端3015から吸着装置の第2の端3017の方に横切るときに徐々に大きさが増大し、吸着ブロック3010から流れ出る複数の流れ(図29Aと図29Bの流線3028)が集められる。同様に、第2の平面分配器3003の第1端にあるよどみ点3019では流れがない。
図31は、上エンドプレート3202、下エンドプレート3204及び吸着装置3000a〜3000n(集合的に吸着装置3000)のスタックを有する吸着装置組立体3200の断面側面図である。吸着装置3000は、上エンドプレート3202と下エンドプレート3204それぞれによって適所に保持され、上エンドプレート3202と下エンドプレート3204は、連結棒(図示せず)、又は当業者に周知の吸着装置3000内に生成された液圧に対応する何らかの他の手段(例えば、液圧シリンダ、クランプ(図示せず))によって互いに接続される。ガスケット3210は、上エンドプレート3202と第1の吸着装置3000aの上平面表面との間の境界を密閉し、ガスケット3211は、下エンドプレート3204と最後の吸着装置3000nの下平面表面との間の境界を密閉し、ガスケット3212a〜3212n(集合的に、ガスケット3212)は、吸着装置組立体3200内で積み重ねられた隣接する吸着装置3000の上平面表面と下平面表面との間の境界を密閉する。ガスケット3210は、第1の分配路3005と整列された開口を吸着装置3015の第1端に有し、吸着装置の第2端3017には開口がなく、一方、ガスケット3211は、第2の分配路3007と整列された開口を吸着装置3017の第2端に有し、吸着装置3015の第1端には開口がなく、この実施形態では、これらのガスケットは、同一であるが対称的でなく、互いに180°回転させて取り付けられなければならない。これと対照的に、ガスケット3212は、吸着装置3015及び3017の第1端と第2端の両方に第1と第2の分配路3005及び3007とそれぞれ整列された開口をそれぞれ有し、この実施形態では、これらのガスケットは対称的であり、従って、取り付けられ方は重要でない。上エンドプレート3202は、主供給流を第1の分配路3005の各流路に分配する内部分配器3205を有し、同様に、下エンドプレート3204は、第2の分配路3007の各流路からの主排出液流を収集する内部分配器3205を有する。第1の分配路の下部の死容積をなくすために、吸着装置3000nの第1の分配路にオプションの充填材3206が挿入されてもよく、同様に、第2の分配路の上部の死容積をなくすために、吸着装置3000aの第2の分配路に任意選択の充填剤3208が挿入されてもよい。他の実施形態では、ガスケット3212は、積み重ねに都合のよいように各吸着装置3000に組み込まれてもよく、或いはこの実施形態に示されたように積み重ねの際に追加される別個の個別部品でもよい。
図32は、動作中の吸着装置組立体3200の断面側面図であり、矢印は、供給流と排出液流の流れの向きと大きさを概略的に表わす。主供給流3220a〜3220n(集合的に主供給流3220)は、上エンドプレート3202から下エンドプレート3204に移動するときに大きさが徐々に減少し、同様に、主排出液流3221a〜3221n(集合的に主排出液流3221)が、上エンドプレート3202から下エンドプレート3204に移動するときに大きさが徐々に増大する。主供給流3220は、上エンドプレート3202の供給液分配器3205によって吸着装置3000のスタックに送られる。供給流3220は、各吸着装置の第1の平面分配器に入って供給流3222を各吸着装置の第1の分配路に送り、各吸着装置の流線3228を作成し、流線3228は、各吸着装置の第2の平面分配器によって集められて各吸着装置の排出液流3223となり、排出液流3223は、各吸着装置の第2の分配路に流れ込んで主排出液流3221になる。排出液流3221nは、下エンドプレート3204の排出液コレクタ3207によって収集される。
2種類の平面分配器
一般に、実施形態は、2つの型の平面分配器を含む。第1の型(I型平面分配器と呼ばれる)は、厚さ、液体透過率、及び気孔率が均一な多孔性シートと、複数の相互接続された通路とを有する。図30Aと図30Bは、I型平面分配器の例である。流体は、分配器の多孔性構造に浸透し、流体を分配するための第1の平面分配器として使用されるときは流速が徐々に連続的に減少し(例えば、図29〜図31の実施形態に示されたように)、これと反対に、流れを集めるための第2の平面分配器として使用されるときには流速が徐々に連続的に増大する(例えば、図29〜図31の実施形態に示されたように)。I型平面分配器は、不織布ウェブ、織布ウェブ、穿孔又はエンボス加工されたプラスチックシート又は金属シート/フィルム、焼結プラスチック又は金属粒子から製作されてもよく、重要な様相は、平面方向に沿って均一な流れ特性と適度な液体透過率を有することである。適度な液体透過率とは、一般に、平面分配器内の流体流によって生じた圧力降下が十分に小さくなるような十分に低い透過率である。
第2の型の平面分配器(II型分配器と呼ばれる)は、相互接続されたチャネル即ち流路のアレイを有し、このチャネルが、チャネルの寸法及びアレイのトポロジーに従った規定の方式で流体の向きを変え分配する。
図33Aは、周辺シール3304、第1の分配路3305a〜3305n(集合的に第1の分配路3305)、第2の分配路3307a〜3307n(集合的に第2の分配路3307)、及びチャネルアレイ3302a〜3302n(集合的にチャネルアレイ3302)を有するII型平面分配器3310を示す。
図33Bは、図33Aの平面分配器3310よりそれぞれ少ない第1と第2の分配路3315及び3317と、小数であるがより手の込んだチャネルアレイ3312を有する、II型平面分配器3310’の代替実施形態を示す。平面分配器3301及び3310は、比較的薄く、吸着ブロック(図示せず。)の上面又は底面と密接している。II型平面分配器は、当業者に知られた多くの方法のうちの1つによって、例えば、プラスチック成形法、金属板又はプラスチックフィルムの穿孔、金属フィルムのエッチング等によって作成されうる。重要な様相は、平面分配器が実質的に均一の厚さのものであることと、流体が均一に吸着ブロックに分配されそこから収集されることである。
特殊なクラスのII型平面分配器は、チャネルアレイによって構成された全ての通路が同じ長さを有するので均一な分配を促進する。そのような分配器は、米国特許出願公開2012/0097591号に詳細に述べられており、平面等流速分配器と呼ばれるものとする。
図34は、例示的な平面等流速分配器の平面図である。平面分配器3401は、周辺シール3404、第1の分配路3405a〜3405n(集合的に第1の分配路3405)、第2の分配路3407a〜3407n(集合的に第2の分配路3407)、及びチャネルアレイ3402a〜3402n(集合的にチャネルアレイ3402)を有する。チャネルアレイ3402内の全ての流路は、分岐構造を有し、チャネルアレイ3402の全ての流路における流れ経路の長さは同じ長さを有する。これは、各支路を2個の同一の副支路に分岐(この例では、合計5個の分岐)することによって達成され、合計32個の分配又は収集点ができる。この実施形態では、チャネルアレイは、正方形のフットプリントを有し、他の実施形態では、長方形のフットプリントを有してもよく、更に別の実施形態では、円形のフットプリントを有してもよい。等流速チャネルアレイの重要な様相は、これらのチャネルアレイが、分岐され、各支路が2個の副支路に分岐し、全ての分岐レベルで、各副支路が他の副支路と互いに実質的に同一であることである。
一般に、良好なクロマトグラフィーを実施するには、平面分配器のホールドアップ容積が、流体を分配又は収集する吸着ブロックの容積より小さくなければならない。
その他の実施形態
良好な吸着及びクロマトグラフィーを実施するには、吸着ベッドの分散を減らすために全ての流線が同じ長さと滞留時間を有することを必要とし、これは、等流速条件と呼ばれことがある。図28A〜図31に示された実施形態において供給流と排出液流との間に存在する幾何学的対称性は、同じ長さの流線を生成する条件に資する。具体的には、第1と第2の分配路は、吸着装置の両端にあり、第1と第2の平面分配器内の流体流は同じ方向であり、第1と第2の分配路内の流体流は同じ方向である。そのような幾何学的及び流れ構成は、通路、平面分配器及び吸着ブロック全ての均一な液体特性と共に、吸着装置内の全ての流線が同じ長さと滞留時間を有することを保証する。
他の実施形態では、上エンドプレート又は下エンドプレート内で全ての流れを供給し収集し、接続をより単純でより好都合にすることが有利なことがある。更に別の実施形態では、吸着装置の隣接端(両端ではなく)と場合によっては同一端に第1と第2の分配路を有することが好都合なことがある。これらの状況は、等流速条件を作り出す対称性と適合せず、従って、クロマトグラフィー分散には最適でないことがある。しかしながら、分散に対するこれらの非最適構成の好ましくない影響は、分配器の合計流体体積(即ち、平面分配器の流体体積と分配路の流体体積を合わせたもの)は、吸着ブロックの合計流体体積より小さく、幾つかの実施形態では、分配器の合計流体体積が、吸着ブロックの流体体積の10%未満であり、他の実施形態では、分配器の合計流体体積は、吸着ブロックの流体体積の5%未満である。従って、そのような実施形態も有用であろう。
図11Aと図11Bに示されたように、吸着ブロック内で垂直流を生成するために平面分配器を有する吸着装置は、両面構成で製造されてもよく、その場合、第1の分配路が、吸着装置の中心にあって吸着ベッドの両側(この場合は、左側と右側)に流体を供給し、第2の分配路は、両端にあって流体を収集する。当然ながら、図11Aと図11Bは、この実施形態に必要な、第1の平面分配器内に分配路を密閉する周辺シールを示していない。
図15Aと図15Bに示されたような多重吸着装置は、前の図の幾つかに示されたような非角形フットプリントと同様に可能である。
図35A〜図35Cは、周辺シールの接着及び密封性能が改善された装置を示す。図35Aは、カレンダ加工縁3514を有する平面方向一体性媒体3502の平面図を示し、このカレンダ加工縁3514では、加熱下又非加熱下でカレンダ加工縁3514を機械的にプレスすることによって媒体3502の気孔率が実質的に減少させられている。図35Bは、吸着媒体3512に取り付けられたままのカレンダ加工縁3514の拡大断面を示し、カレンダ加工縁の厚さが実質的に減少したことを示す。図35Cは、カレンダ加工縁3414に接着された周辺シール3504の断面図を示し、周辺シール3504は、当業者に知られた適切な方法によって適所に成形することができる。周辺シール3504とカレンダ加工縁3514との間の領域の表面積が増加しているため、周辺シール3504の接着及び密閉特性が改善される。カレンダ加工縁3514と吸着媒体3512の間に作成された段は、更に、周辺シールが貼り付けられる領域を制限するための明確な境界を作成する。この実施形態では、周辺シールが、各平面方向一体性層に貼り付けられ、続いて平面方向一体性層が、積み重ねられて吸着ブロックが構成される。他の実施形態では、カレンダ加工縁をそれぞれ有する複数の平面方向一体性媒体層3502が積み重ねられ、周辺シール3504が、全ての層に同時に貼り付けられ、その結果、モノリシックな周辺シールを有する吸着ブロックが得られる。
図27〜図35は、Chromassette−S吸着装置について述べ、具体的には一体性ウェブ媒体を利用する実施形態について述べたが、ビーズ型吸着媒体を利用する実施形態も可能である。ビーズ型媒体を利用するChromassette−S実施形態では、図17〜図23による平面方向一体性ウェブから成る構造的スカフォールドは、ボイド空間にビーズが充填された状態で使用される。そのようなビーズ型Chromassette−S吸着装置は、平面方向一体性ウェブから成る構造的スカフォールドが、周辺シール(又は、周辺シールの前身)と共に製造された後でビーズが充填されて吸着ブロックが構成され、その後で第1と第2の平面分配器が適用されることを必要とする。前述したように、本明細書に開示されたビーズ型装置は、好ましくは装置の供給液端と溶離端の両方で充填リテーナを利用してビーズのベッドを固定又は静止する。これと対照的に、ウェブ型Chromassette−S吸着装置は、その周辺シールを一度に(即ち、吸着ブロックと第1と第2の平面分配器に一度に)付着させることによって製造されてもよい。
ビーズ型吸着媒体に適した装置の他の実施形態は、モノリシックなスカフォールドを利用する。モノリシックなスカフォールドは、3つの次元方向の全てで相互接続された平面方向一体性スカフォールドであり、構造要素(即ち、支柱)を有する三次元相互接続格子(以下では、「相互接続格子」)を構成し、相互接続されたボイド空間を構成する。換言すると、2つの次元は、平面方向一体性媒体の一体化平面(「xy平面」と呼ばれる)を定義し、第3の次元はz座標であり、モノリシックなスカフォールドは、一体化平面が全てz座標方向で相互接続されたものである。
モノリシックなスカフォールドを用いて製造された実施形態は、平面方向一体性ウェブで構成されたスカフォールドを用いて製造された装置を上回る幾つかの利点を有する。モノリシックなスカフォールドは、吸着装置がホルダに取り付けられる前に吸着ビーズがz方向に移動しないようにする。また、モノリシックなスカフォールドを用いて製造された吸着装置は、それを支持するエンドプレートを有するホルダなしにそのような装置を動作させることを可能にする。更に、モノリシックなスカフォールドは、例えば、他の要素(例えば、周辺シール、分配路、充填リテーナ)の一体化を可能にする方法を使用して製造されてもよく、それにより、例えば三次元プリンティング法を使用することで、ビーズ型吸着装置の製造が単純化される。
次に図36Aを参照すると、例示的なモノリシックなスカフォールド3600は、周辺シール3601、相互接続格子3603(図36B)、上プレート3605、及び上プレートの反対側の下プレート(図示せず)を有する。モノリシックなスカフォールド3600は、更に、供給流の分配と溶離流の収集をそれぞれ提供する流路3602a〜3602n(集合的に流路3602)と流路3606a〜3606n(集合的に流路3606)、及び供給端と溶離端の充填リテーナ(図示せず)の挿入をそれぞれ提供する通路3604a〜3604n(集合的に通路3604)と通路3608a〜3608n(集合的に通路3608)を有する。この実施形態では、充填リテーナは、通路3604及び3608の直径とほぼ等しい直径と通路の深さと等しい長さとを有し、通路に挿入される円筒状多孔性ロッドであり、充填リテーナは、プラスチック、金属、セラミック又はガラスで製造することができる。挿入された後、充填リテーナは、通路の内径と多孔性ロッドの外径の間のわずかな干渉によって適所に留まる。充填リテーナが適所に配置された後で、上プレート3605上の通路3609を使用して、スラリ充填又は吸着ベッドを充填する技術分野で知られた他の方法によって相互接続格子内のボイド空間に吸着ビーズが挿入されてもよい。或いは、分配路3602が、ビーズを挿入するために使用され、流路3604が開いたまま、相互接続格子内のボイド空間に吸着ビーズが完全に充填された後で円筒状多孔性ロッドが挿入される。
図36Bに示されたように、流路3602は、流路3604と流体連通しており、通路3604は、相互接続格子3603とも流体連通している。使用の準備として、通路3604は、相互接続格子3603のボイド空間(吸着ビーズが充填された)と分配路3602との間に配置されるため、充填リテーナを構成する円筒状多孔性ロッド(図示せず)を受け入れる。多孔性ロッドが一旦挿入されると、吸着ビーズが保持され、ボイド空間内に充填された吸着ベッドは動くことができず、固定吸着相が提供される。図37Aは、相互接続格子3603と周辺シール3601の相対的配置を含むモノリシックなスカフォールド3600の更なる詳細を示す。ここで、モノリシックなスカフォールド3600は、全長Lと全幅Wを有する。
図37Bを参照すると、モノリシックなスカフォールド3600は、上プレート3505と下プレート3507をそれぞれ有し、周辺シール3601と共に、相互接続格子3603を収容する。動作において、流路3602は、供給流の分配に使用され、流路3604は、溶離流の収集に使用される。流路3604及び3608は、モノリシックなスカフォールド3600の供給端と溶離端の両方に充填リテーナを構成する多孔性円筒状ロッド(図示せず)をそれぞれ受け入れる。
図37Cを参照すると、相互接続格子3603は、モノリシックなスカフォールドの長さ方向、即ちx座標に沿ったフィラメント又は支柱の形態の構造要素3611a〜3611n(集合的に支柱3611)と、モノリシックなスカフォールド3600の幅方向、即ちy座標に沿ったフィラメント又は支柱の形態の構造要素3613a〜3613m(集合的に支柱3613)とを有する。一実施形態では、支柱3611及び3613が互いに結合され、平面方向一体性スカフォールドが作成され、更に、z座標方向の一体性をスカフォールドに付与し、それによりモノリシックなスカフォールドが作成される。この実施形態では、支柱3611及び3613は、角形断面を有するが、例えば円形、楕円、又はそれを組み合わせた他の断面が可能である。更に、相互接続格子3603は、規則的な「正方形」パターンを有し、支柱1361は、互いに対して同じ垂直位置に積み重ねられる。しかしながら、支柱が規則的パターンで配置されない他のパターンが可能であることを理解されたい。
図38を参照すると、代替の相互接続された格子3603’は、y方向の支柱3613を有し、この支柱3613は層間で互い違いにされて、「互い違い」構造を構成する。同様に、x方向の支柱3611が互い違いにされてもよい(図示せず)。相互接続格子3603’は、また、格子3603と類似の規則的パターンを有する。
相互接続格子3603のための様々なパターンを使用することができ、重要な特徴は、相互接続格子3603が、吸着ビーズを受け入れる相互接続されたボイド空間を有することと、支柱3611及び3613のサイズと密度が、動作中の液体力に耐えるのに十分な強度をモノリシックなスカフォールド3600に提供できるように十分に大きいものでなければならないことであることを理解されたい。例示的なモノリシックなスカフォールドは、25%を超え、好ましくは50%を超え、最も好ましくは65%を超える空隙率を有し、同時に、xy平面において500psiを超え、好ましくは1,500psiを超え、最も好ましくは5,000psiを超えるヤング率を有する。更に、充填リテーナは、装置の幅方向(z座標方向ではなくy座標方向)に挿入されてもよく、この場合、充填リテーナを受け入れる流路3604及び3608は、上下方向ではなく左右方向に穴開けされる。
ビーズ型媒体に適したモノリシックなスカフォールドは、押し出し成形法によって作成されてもよい。図39を参照すると、モノリシックなスカフォールド3900は、押し出し成形法によって作成され、押し出し成形軸(この場合はx軸)方向に向けられたチャネル3910a〜3910nのアレイ(集合的にチャネル3910)を収容する構造的外殻3903を有する。チャネル3910のアレイは、(垂直)xz平面3915a〜3915m(集合的にプレート3913)と交差する(水平)xy平面3913a〜3913n(集合的にプレート3913)のプレートを有する構造格子を構成する。シェル3903、プレート3913、及びプレート3915は、押し出し成型法によってモノリシックなスカフォールドとして共に融着された相互接続格子を構成する。この実施形態では、チャネル3910は、正方形断面を有し、チャネルアレイは、規則的に積み重ねられた配置を有する。他の規則的又は不規則的断面(例えば、円形、三角形、長方形、六角形)、並びに他の配置(例えば、互い違い及び不規則配置)も可能であることを理解されたい。押し出し成形したチャネル3900は、ビーズ型吸着媒体が充填されるボイド空間を構成する。また、図39に示されたモノリシックなスカフォールドは、三次元プリンティング法によって製造することもできるが、押し出し成型法は、速度、コスト及び拡張性の利点を提供し、また多くのプラスチック、金属及びセラミックス材料を含む多くの他の材料の選択を提供することを理解されたい。
図40Aを参照すると、図39に示された押し出し成形モノリシックなスカフォールドによって製造された吸着装置4000は、外殻4003、チャネル4010、xy平面に沿ったプレート4013、xz平面に沿ったプレート(図示せず)、装置の供給端と溶離端のそれぞれに設けられた充填リテーナ4004及び4008、供給液の分配と溶離液の収集のための流路4002及び4006、供給端と溶離端にそれぞれ設けられた周辺シール4001及び4009を有する。吸着装置4000を製造する一方法は、図39に示されたような押し出し成形モノリシックなスカフォールドを所望の長さに切断する段階から始まり、その後、以下のステップが順番に行われる。即ち、充填リテーナ4008を装置4000の溶離端に挿する;周辺シール4009を装置4000の溶離端に付着させて、充填リテーナ4008と装置4000の溶離端の間においてチャネル4010を埋める;当業者に知られた方法によって所望の吸着ビーズ(図示せず)をチャネル4010に充填する;充填リテーナ4004を装置4000の供給端に挿する;周辺シール4001を装置4000の供給端に付着させ、充填リテーナ4002と装置4000の供給端の間においてチャネル4010を充填する。最後に、図40Bに示されたように、流路4002及び4006が装置4000の上から下に穴開けてされて供給液分配器と溶離液コレクタが作成される。
ビーズを保持する手段の変形例も可能である。例えば、図41Aと図41Bは、代替実施形態4100を示し、この形態では、充填リテーナは中空管である。この中空管は、充填リテーナと分配/収集路の両方を含む多孔性壁4114及び4118を有している。この実施形態では、装置の端の周辺シール4101と4109が、中空管4114及び4118を挿入する前にに付着され、その後で中空管4114及び4118を受け入れるのに十分な大きさの通路が穴開けされてもよく、或いは、最初に中空管4114及び4118を受け入れる通路が穴開けされ、その後で中空管4114及び4118が挿入され、次に中空管と装置の端部の間においてチャネルを埋めるために周辺シールが付着される。
更に別の実施形態では、モノリシックなスカフォールドは、図19A〜図19Cに例証されたような成形プレートによって製造される。図19A〜図19Cを再び参照すると、充填リテーナ(図示せず)を挿入し吸着ビーズ1214を追加した後で、プレートが積み重ねられ互いに接合される。モノリシックなスカフォールドを得るために、各プレート上の周辺シール1206が、その上に積み重ねられたプレート上の周辺シール1206に接合され、スペーサ1214が、その上に積み重ねられたプレートの平坦底部1220に接合される。
本発明の装置の製造方法の変形例も可能である。例えば、ビーズが、溶離端から充填されてもよく、その場合、供給端の密閉が、溶離端の密閉前に行われ、或いは、吸着ビーズを充填する前に吸着装置4000及び4100の両端が密閉されてもよく、その場合、ビーズを導入するためにチャネルの真中に新しい通路が作成される。モノリシックなスカフォールドを有する装置の要素には、動作圧に耐えるのに十分なxy平面における平面方向一体性、ビーズが充填されたチャネル、装置の供給端と溶離端の両方における充填リテーナと周辺シール、及び供給流を分配し溶離流を収集するための装置の両端の流路が含まれる。
本明細書で述べた実施形態は、特に生体分子の用途に関するが、本明細書で述べた原理、実施及び設計が、ワクチンと生物医薬品の製造を含む他の用途でも役立つことが理解される。特許、特許出願、物品、書籍、論文、学位論文及びウェブページを含む本出願で引用された全ての文献及び類似資料は、そのような文献及び類似資料の形式にかかわらず、参照により全体が明確に援用される。援用される文献及び類似資料の一以上が、定義された用語、用語使用法、記述した技術等を含め本出願と異なるか又は本出願と矛盾する場合は、本出願が規定する。
本明細書で使用される節見出しは、単に編成のためであり、記載された内容をいかなる形でも限定するように解釈されるべきでない。本発明は、様々な実施形態及び例と関連して述べられたが、この教示がそのような実施形態又は例に限定されるものではない。それどころか、当業者によって理解されるように、本発明は、様々な代替物、変形例及び等価物を含む。特定の例示的実施形態を参照して教示を特定的に示し記述したが、形態と詳細の様々な変更が、教示の精神と範囲から逸脱することなく行なわれうることを理解されたい。従って、教示の範囲と精神に含まれる全ての実施形態とその均等物が請求される。この教示の方法の説明と図は、その旨が記載されていない限り、要素の記述された順序に限定されるように読解されるべきでない。
特許請求の範囲は、その旨が記載されていない限り、記述された順序又は要素に限定されるように読解されるべきでない。添付の請求項の範囲から逸脱することなく形態と細部の様々な変更が可能であることを理解されたい。従って、以下の請求項の範囲と精神に含まれる全ての実施形態及びその均等物が請求される。