本実施の形態は、血液に関する検査および分析を行うための検体分析装置に本発明を適用したものである。以下、本実施の形態に係る検体分析装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る検体分析装置1の外観を示す図である。
検体分析装置1は、本体2と、タッチパネル式のディスプレイである表示入力部3と、を備えている。本体2は、筐体2aに覆われており、筐体2aの前面には、検体分析装置1の電源を操作するための電源ボタン11と、開始ボタン12と、中断ボタン13と、2つのパネル21と、2つのランプ22と、が設けられている。2つのパネル21の後方側には、それぞれ、引き出し30(図2参照)が接続されている。2つのランプ22は、それぞれ対応する引き出し30の状態を示す。筐体2aの右側面の前方には、開閉可能な扉23が設けられている。
オペレータは、複数の検体を連続的に分析する処理(以下、「サンプラ処理」という)を行う場合、パネル21を前方に引っ張ることにより、引き出し30を前方に引き出し、検体容器を保持させたラックを引き出し30にセットして、開始ボタン12を押す。また、オペレータは、1つの検体を優先的に分析する処理(以下、「マニュアル処理」という)を行う場合、扉23を開けて、筐体2aの内部にある容器セット部71(図2参照)に検体容器をセットし、筐体2aの内部にある開始ボタン83(図2参照)を押す。
図2は、筐体2aの内部を上側から見た場合の模式図である。
本体2は、ラックR1〜R6(図3(a)参照)をセットするための2つの引き出し30と、2つの引き出し30が閉じられて筐体2a内にセットされたかをそれぞれ検出する透過型のセンサ41と、2つの引き出し30をそれぞれ固定するための穴42と、検体容器T1〜T3(図3(b)参照)を移送するための容器移送部50と、検体容器T1〜T3を転倒させて検体を攪拌するための攪拌機構60と、検体容器T1〜T3を前後方向に移動させるための前後搬送部70と、前後搬送部70にある検体容器の有無を検出する透過型のセンサ81と、バーコードリーダ82と、開始ボタン83と、検体容器T1〜T3内の検体を吸引する検体吸引部210と、試料調製部220と、検出部230と、測定試料と、を含んでいる。
ここで、ラックR1〜R6と、検体容器T1〜T3と、引き出し30について、図3(a)〜図5(c)を参照して説明する。
図3(a)は、ラックR1〜R6を上側から見た場合の斜視図である。なお、図3(a)には、ラックR1〜R6が引き出し30に設置されるときの図2に示す座標軸が併せて示されている。
本実施の形態では、後述するように、検体容器の種類に応じて6種類のラックR1〜R6が用いられる。図3(a)に示すように、上側から見た場合のラックR1〜R6の形状は全く同じであるが、下側から見た場合の形状は異なっている。ラックR1〜R6を下側から見た場合の形状については、追って図4(a)〜(f)を参照して説明する。
ラックR1〜R6には、10本の検体容器T1〜T3を垂直に保持することが可能となるよう10個の保持部Raが形成されている。10個の保持部Raは、5つの保持部Raがそれぞれ前後に2列並ぶように形成されている。以下、10個の保持部Raの位置を、図3(a)に示すように、便宜上、保持位置n1〜n10と称する。また、ラックR1〜R6の上面は、X−Y平面に平行であり、保持位置n1〜n5の保持部Raの列と、保持位置n6〜n10の保持部Raの列との間には、中央部Rbが形成されている。また、ラックR1〜R6の下端の後方側(Y軸正側)には、周囲よりも内側に凹んだ凹部Rcが形成されている。
図3(b)は、検体容器T1〜T3の外観を示す図である。
検体容器T1〜T3は、胴部Taと、蓋部Tbと、バーコードラベルTcと、を備えている。胴部Taは、透光性を有するガラスまたは合成樹脂により構成された管状容器であり、上端には開口が形成されている。胴部Taは、検体を収容しており、上端の開口は蓋部Tbにより密封されている。蓋部Tbは、ピアサ211(図2参照)が貫通可能となるよう構成されている。バーコードラベルTcには、検体IDを含むバーコードが印刷されている。バーコードラベルTcは、胴部Taの側面に貼付されている。
図3(c)〜(e)は、それぞれ、検体容器T1〜T3の断面図である。検体容器T1〜T3は、たとえば、採血管として用いられるものである。
胴部Taの内部の下端には、底面Tdが形成されており、検体容器T1〜T3の順に底面Tdの位置が高くなっている。これにより、検体容器T1〜T3が収容可能な検体の容量は、検体容器T1〜T3の順に小さくなる。
図4(a)〜(f)は、それぞれ、ラックR1〜R6を下側(Z軸負側)から見た場合の斜視図である。
ラックR1〜R6下端には、図3(a)に示した凹部Rcに加えて、凹部Rcの反対側(ラックR1〜R6の下端のY軸負側)には、周囲よりも外側に突出した凸部Rdが形成されている。
また、ラックR1〜R6の下面側には、突起部Reが形成されている。突起部Reの下端は、ラックR1〜R6の下端よりも上側に位置付けられている。突起部Reが形成される位置は3箇所あり、そのうち少なくとも1つの位置に突起部Reが形成されている。具体的には、ラックR1では、3つの位置に突起部Reが形成されており、ラックR2では、中央とX軸正側の位置に突起部Reが形成されており、ラックR3では、X軸正側とX軸負側の位置に突起部Reが形成されている。また、ラックR4では、中央とX軸負側の位置に突起部Reが形成されており、ラックR5では、中央の位置に突起部Reが形成されており、ラックR6では、X軸負側の位置に突起部Reが形成されている。
ここで、本実施の形態の検体には、特に分析を急がない通常の検体(以下、「通常検体」と称する)と、通常検体に優先して分析を行う必要のある検体(以下、「優先検体」と称する)とがある。また、検体容器として、上述した検体容器T1〜T3の3種類が用いられ、検体容器T1〜T3には、それぞれ、通常検体と優先検体の何れかが収容される。したがって、本実施の形態では、通常検体を収容する検体容器T1〜T3と、優先検体を収容する検体容器T1〜T3があり、結果、組合せとして、検体容器の種類は6つとなる。
また、本実施の形態では、上記6種類の検体容器ごとに、用いられるラックが決められている。具体的には、通常検体を収容する検体容器T1〜T3は、それぞれラックR1〜R3にのみセットされ、優先検体を収容する検体容器T1〜T3は、それぞれラックR4〜R6にのみセットされる。以下、ラックR1〜R3を、合わせて「通常ラック」と称し、ラックR4〜R6を、合わせて「優先ラック」と称する。こうして、予め上記ルールに従って検体容器T1〜T3がセットされたラックR1〜R6は、オペレータにより前方に引き出された引き出し30にセットされる。
図5(a)は、引き出し30の前後移動を示す模式図である。
パネル21は、引き出し30の前端(Y軸負側の端部)に接続されており、オペレータによりパネル21が前後に移動されると、パネル21に伴って前後に移動する。また、引き出し30には、ラックR1〜R6を設置するためのラックセット部300が形成されている。引き出し30が前後に移動することにより、ラックセット部300は、ラックが筐体2a内に取り込まれた状態となる装着位置と、ラックが筐体2a外に引き出された状態となる引出位置との間で移動する。
引き出し30が引き出されて、ラックセット部300が引出位置に位置付けられると、オペレータは、ラックセット部300にラックをセットすることができ、ラックセット部300にセットされたラックを取り出すことができる。また、ラックセット部300が装着位置に位置付けられると、筐体2a内の各機構により、ラックセット部300にセットされたラックに保持された検体容器に対して処理が行われる。
図5(b)は、引き出し30の構成を示す図である。なお、図5(b)では、後述する鍔部31と棒部材32(図2参照)の図示が、便宜上、省略されている。
ラックセット部300は、引き出し30の中央付近に形成されており、ラックセット部300の底面は、引き出し30の上面よりも一段低くなっている。ラックセット部300の前端と後端には、ラックセット部300にセットされたラックの凸部Rdと凹部Rcに、それぞれ係合する凹部310と凸部320が形成されている。凹部310の左右にある凸部311の上面は、引き出し30の上面よりも低く、凸部320の上面は、引き出し30の上面よりも高い。また、ラックセット部300の中央には、凸部330が形成されている。凸部330には、ラックセット部300にセットされたラックの3つの位置の突起部Reに対応する隙間331〜333が形成されている。
図5(c)は、図5(b)のC1−C2で切断したラックセット部300を、前方から(Y軸正方向に)見た場合の図である。
凸部330には、隙間331〜333を挟むように、それぞれ透過型のセンサ341〜343が設置されている。ラックセット部300に、たとえばラックR1がセットされると、ラックR1に形成された3つの突起部Reは、隙間331〜333に位置付けられる。したがって、センサ341〜343の検出信号により、隙間331〜333の少なくとも1つに突起部Reが位置付けられたことが検出されると、ラックセット部300にラックがセットされたことが分かる。また、本体2のハードディスク270(図9参照)には、図4(a)〜(f)に示すラックR1〜R6の突起部Reの構成が記憶されている。これにより、ラックセット部300にセットされたラックが、ラックR1〜R6の何れであるかが分かる。
また、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれると、凸部Rdと凹部Rcを含むラックの下面が、凸部311、320に当たるため、ラックが前後方向に傾くことになる。これにより、オペレータは、ラックの設置方向が誤っていることに気付くことができる。なお、本実施の形態では、ラックセット部300に前後方向が逆となるようラックが置かれても、突起部Reが凸部330に当たらないように、突起部Reとラックセット部300が構成されている。
図2に戻り、引き出し30にラックがセットされ、引き出し30が後方まで押し込まれると、引き出し30の後方に設けられた鍔部31が、筐体2a内に設置された透過型のセンサ41の隙間に位置付けられる。したがって、センサ41の検出信号により、引き出し30が引き出されたことと、引き出し30が閉じられたことが検知される。引き出し30にラックがセットされ、この引き出し30が閉じられた後、容器移送部50により、この引き出し30にセットされたラックに対する検体容器の移送が開始されると、このラックが誤って前方に引き出されないよう、この引き出し30にロックがかけられる。具体的には、引き出し30に設けられた棒部材32が、図示しない駆動部によりY軸方向に駆動され、筐体2a内に設置された穴42に挿入されることにより、引き出し30を前方に引き出すことが規制される。また、棒部材32が、ロック時とは反対方向に駆動されることにより、引き出し30を前方に引き出すことができるようロックが解除される。
図7(a)は、引き出し30に対するロック処理を示すフローチャートである。この処理は、後述するCPU201によって行われる。
容器移送部50の把持部541、542(図2参照)が、本体2内の左側後方の初期位置から移動を開始することにより、引き出し30にセットされたラックに対する検体容器の移送動作が開始されると(S101:YES)、この引き出し30にロックがかけられる(S102)。
続いて、ラックに保持されている検体容器が、容器移送部50によりラックから順に取り出され、移送される。そして、後述するように、取り出された検体容器に収容された検体に対して、攪拌処理と吸引処理が行われる。検体に対するこれらの処理が終了すると、検体容器は元のラックの元の保持位置に戻される。こうして、ラック上の全検体の処理が終了すると(S103:YES)、容器移送部50の把持部541、542が、前方に引き出される引き出し30と接触しない位置に退避するまで処理が待機される(S104)。把持部541、542が退避すると(S104:YES)、この引き出し30のロックが解除される(S105)。こうして、引き出し30のロック処理が終了する。
図2に戻り、容器移送部50は、モータ51、52と、ベルト53、54と、移動体500と、を含んでいる。
移動体500は、左右移動部510と、前後移動部520と、上下移動部530と、保持部540と、を含んでいる。左右移動部510は、筐体2a内に設けられた左右に延びるガイド(図示せず)に支持されながら左右方向に移動可能となっており、前後移動部520は、左右移動部510に設けられた前後に延びるガイド(図示せず)に支持されながら前後方向に移動可能となっている。上下移動部530は、前後移動部520に設けられたシリンダ(図示せず)により、前後移動部520に対して上下方向に移動される。保持部540は、検体容器T1〜T3を前後方向から挟み込むことが可能に構成されており、且つ、Y軸を回転軸として回転可能となるよう、上下移動部530に支持されている。
モータ51は、筐体2a内の左右に配置されたプーリに掛けられたベルト53を左右方向に駆動させる。ベルト53には、左右移動部510の取付ステー511が固定されている。これにより、左右移動部510は、ベルト53に合わせて左右方向に移動可能となる。モータ52は、筐体2a内の左右に配置されたプーリに掛けられたベルト54を、左右方向に駆動させる。ベルト54の一部は、左右移動部510に設けられたプーリ512により前方に折り返され、左右移動部510の前方に設けられたプーリ513に掛けられている。プーリ512、513の間のベルト54には、前後移動部520の取付ステー521が固定されている。これにより、前後移動部520は、ベルト54に合わせて前後方向に移動可能となる。よって、保持部540は、筐体2a内においてX、Y、Z方向において自在に移動可能となる。
攪拌機構60は、モータ61と、モータ61に接続されY軸方向に延びた軸62と、軸62に固定された当接部材63と、を含んでいる。把持部541、542により把持され位置P1に位置付けられた検体容器は、当接部材63により押されることで転倒され、検体容器内の検体が攪拌される。
図6(a)、(b)は、上下移動部530と、保持部540と、攪拌機構60をX軸負方向に見た場合の模式図である。
上下移動部530は、基板531と、基板531に固定された軸532と、基板531に固定されたシリンダ533と、シリンダ533のロッド533aのY軸負側の端部に設置された板部材534と、板部材534の上端に設けられた鍔部534aと、鍔部534aのY軸正側の基板531に設置された透過型のセンサ535と、を含んでいる。
保持部540は、軸532を回転軸として回転可能となるよう軸532に設置された把持部541、542と、把持部541、542の間に掛けられたバネ543と、を含んでいる。把持部541は、Y軸方向へ移動しないよう軸532に設置されており、把持部542の上端は、板部材534のY軸負側に位置付けられている。
ロッド533aにY軸負方向の力が加えられていない場合、バネ543による収縮力により、把持部542はY軸正方向に引っ張られ、把持部541、542の下端が互いに当接する。このとき、板部材534が把持部542の上端によりY軸正方向に押され、鍔部534aがセンサ535の隙間に位置付けられる。これにより、把持部541、542の下端が互いに当接していること、すなわち、保持部540により検体容器が把持されていないことが検知される。
シリンダ533によりロッド533aがY軸負方向に押し出されると、図6(a)に示すように、板部材534がY軸負方向に移動する。このとき、バネ543の収縮力に抗して、把持部542の上端が板部材534によりY軸負方向に押され、鍔部534aがセンサ535のY軸負側に移動する。
把持部541、542により検体容器T1〜T3が把持される場合、まず、図6(a)に示すように、把持部541、542が開かれた状態で、把持部541、542が把持対象となる検体容器の位置(ラックの保持位置)まで移動され、所定の高さ位置まで下降される。そして、シリンダ533によるロッド533aを押し出す力が弱められると、把持部542がY軸正方向に移動し、図6(b)に示すように、バネ543による収縮力により把持部541、542により検体容器の胴部Taが把持される。このとき、把持部541、542の間に検体容器があるため、把持部542は所定の位置で止まり、鍔部534aがセンサ535の隙間に位置付けられることがない。これにより、保持部540により検体容器が把持されていることが検知される。
したがって、把持部541、542により、ラックの各保持位置に対して把持動作が行われたとき、鍔部534aがセンサ535の隙間に位置づけられると、この保持位置に検体容器が保持されていないことが分かり、鍔部534aがセンサ535の隙間に位置付けられていないと、この保持位置に検体容器が保持されていることが分かる。そして、把持動作が行われたときに検体容器が保持されていないことが検知されると、この保持位置に対する検体容器の移送動作は中止される。
図7(b)は、検体容器に対する移送処理を示すフローチャートである。この処理は、後述するCPU201によって行われる。
容器移送部50の移送動作が開始されると、容器移送部50の把持部541、542が、対象となる保持位置に移動され(S201)、この保持位置に対して把持動作が実行される(S202)。このとき、上述したように、この保持位置に対する検体容器の有無が検知される。この保持位置に検体容器があると(S203:YES)、容器移送部50の把持部541、542により、検体容器に対する移送動作が実行される(S204)。他方、この保持位置に検体容器がないと(S204:NO)、移送動作は行われない。
こうして、ラック上の全検体の処理が終了するまで、S201〜S205の処理が繰り返し行われる(S205)。ラック上の全検体の処理が終了すると(S205:YES)、容器移送部50の把持部541、542が初期位置に戻され(S206)、移送処理が終了する。
図6(a)、(b)に戻り、ラックから取り出された検体容器は、容器移送部50により図2に示す位置P1に移送され、この位置P1において、攪拌機構60により検体容器が転倒される。具体的には、モータ61により軸62が回転させられると、当接部材63の前端は、X−Z平面内において、軸62を中心とする円弧に沿って移動する。これにより、検体容器の胴部Taが、当接部材63によりX軸負側から押される。検体容器を垂直状態に戻す場合は、モータ61により軸62が逆方向に回転させられ、当接部材63が検体容器から離される。これにより、検体容器を把持している把持部541、542が自重により垂直状態に戻される。
ここで、当接部材63はX軸負側から検体容器を押すため、容器移送部50は、検体容器を当接部材63のX軸正側に位置付ける必要がある。また、攪拌処理では、検体容器がX軸方向に転倒されるため、X軸方向に広がった空間が必要となる。このため、本実施の形態では、攪拌機構60と位置P1は、2つの引き出し30が閉じられたときに、2つの引き出し30にセットされたラックの左側後方に設けられている。
図2に戻り、位置P1において攪拌機構60による攪拌処理が終了すると、この検体容器は、容器移送部50により、位置P2に位置付けられた前後搬送部70の容器セット部71にセットされる。前後搬送部70は、検体容器を保持可能な容器セット部71と、容器セット部71を前後方向に動かすためのモータ72と、を含んでいる。
位置P2において容器セット部71にセットされた検体容器は、容器セット部71により位置P3まで搬送される。検体容器が位置P3に位置付けられると、位置P3の近傍に設置されたバーコードリーダ82により、検体容器に貼付されたバーコードラベルTcから検体IDが読み取られる。そして、検体容器は、容器セット部71により位置P4まで搬送される。検体容器が位置P4に位置付けられると、検体吸引部210によりピアサ211を介して検体容器から所定量の検体が吸引される。検体吸引部210は、検体容器内の検体を吸引するためのピアサ211と、ピアサ211を上下方向に駆動するためのステッピングモータからなるモータ212と、を含んでいる。
検体の吸引が終了すると、この検体容器は、容器セット部71により前方に搬送され、位置P2に位置付けられる。そして、この検体容器は、容器移送部50により元のラックの保持位置に戻される。こうして、ラックに保持されている検体容器が、順次取り出されて、検体吸引部210により検体が吸引される。
ピアサ211を介して吸引された検体は、試料調製部220に吐出される。試料調製部220は、検体と試薬とを混合し、混合液を加温して、測定試料を調製し、調製した測定試料を検出部230に供給する。検出部230は、測定試料にレーザ光を照射して各種信号を取得する。取得された測定結果はCPU201(図9参照)により分析され、分析結果が表示入力部3に表示される。
なお、1つの検体の分析を優先的に行う場合(マニュアル処理の場合)、オペレータは、検体容器内の検体を予め攪拌しておく。そして、オペレータは、扉23を開けて、この検体容器を、位置P5(図2参照)に位置付けられた容器セット部71にセットし、開始ボタン83を押す。この検体容器は、容器セット部71により後方へ搬送され、バーコードリーダ82による検体IDの読み取りと、検体の吸引が行われる。しかる後、この検体容器は容器セット部71により位置P5に位置付けられ、オペレータは扉23を開けてこの検体容器を筐体2a内から取り出す。
なお、容器セット部71は、2つのラックに対する処理が行われていない場合に、位置P5に位置付けられ、2つのラックの何れかに対する処理が行われている場合は、位置P2に位置付けられる。したがって、マニュアル処理は、2つのラックの何れに対しても処理が行われていない場合に、実行可能である。何れか一方のラックに対して処理が行われている際にマニュアル処理を行う場合、オペレータは、ラックに対する処理を中断する操作を行った後に、扉23を開けて、優先検体を収容した検体容器を、位置P5に位置付けられた容器セット部71にセットし、開始ボタン83を押す。
ここで、ピアサ211は消耗品であるため、サービスマンにより定期的に交換される必要がある。サービスマンは、交換の際に本体2の右側面からピアサ211の交換を行う。また、容器セット部71は、オペレータにより直接検体容器がセットされる位置P5と、ピアサ211による吸引が行われる位置P4との間を前後方向に移動する。このため、本実施の形態では、オペレータとサービスマンの利便性を考慮して、容器セット部71は、本体2内の右端に設けられている。また、容器移送部50により検体容器がセットされる位置P2は、位置P1からの距離が最短となるよう位置P1の右方向、且つ、2つの引き出し30が閉じられたときに2つの引き出し30にセットされたラックの右側後方に設けられている。
図8(a)は、攪拌機構60による攪拌処理を示す図であり、図8(b)〜(d)は、検体吸引部210による吸引処理を示す図である。図8(e)は、本体2のハードディスク270(図9参照)に記憶されている設定テーブルの構成を示す概念図である。
図8(a)を参照して、検体容器が垂直状態から転倒状態を経て垂直状態に戻される転倒動作を1回とカウントすると、検体容器T1〜T3の転倒回数は、図8(e)の設定テーブルに示すように、それぞれ、fn1、fn1、fn2に設定されている。ここで、fn1<fn2である。これにより、検体容器T1、T2に比べて収容量が小さい検体容器T3についても、十分に検体を攪拌することができる。
図8(b)〜(d)を参照して、検体容器に対してピアサ211を下降させるとき、ピアサ211の下端が原点位置に合わせられた後、モータ212に所定のパルス数が与えられてピアサ211が下降される。このとき、モータ212に与えられるパルス数は、下降量が適切になるよう、図8(e)の設定テーブルに示すように、検体容器T1〜T3ごとに、それぞれ、pn1、pn2、pn3に設定されている。ここで、pn1>pn2>pn3である。これにより、検体容器T1〜T3の底面Tdの高さに応じて、適切にピアサ211を下降させることができる。
図9は、検体分析装置1の構成を示すブロック図である。
本体2は、上述した容器移送部50と、バーコードリーダ82と、検体吸引部210と、試料調製部220と、検出部230のほか、基板200と、機構部240と、センサ部250と、ランプ部260と、ハードディスク270と、読出装置280と、を備えている。基板200は、CPU201と、メモリ202と、インターフェース203と、を含んでいる。
CPU201は、メモリ202に記憶されているコンピュータプログラムと、メモリ202にロードされたコンピュータプログラムと、図7(a)、(b)に示した処理と、を実行する。CPU201は、インターフェース203を介して、本体2の各部と表示入力部3とを制御すると共に、本体2の各部と表示入力部3から信号を受信する。
機構部240は、本体2の各部を駆動するための機構を含んでいる。センサ部250は、上述した2つのセンサ41、81、341〜343、535のほか、扉23が閉じられていることを検出するセンサと、電源ボタン11と、開始ボタン12、83と、中断ボタン13が押されたことを検出するセンサと、を含んでいる。ランプ部260は、2つのランプ22を含んでいる。
ハードディスク270は、オペレーティングシステムと、CPU201に実行させるためのコンピュータプログラムと、ラックR1〜R6の突起部Reの構成と、図8(e)の設定テーブルと、を記憶している。読出装置280は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムとデータを読み出すことができる。
図10(a)は、2つの引き出し30の近傍を上側から見た場合の模式図である。
本実施の形態では、上述したように、位置P1、P2は、それぞれ、2つの引き出し30にセットされたラックの左側後方と右側後方に設けられている。また、右側の引き出し30にセットされたラックの後方に、空間S1が設けられ、左側の引き出し30にセットされたラックの後方に、空間S2が設けられるよう、本体2内の各部が構成されている。また、ラックに設けられた中央部Rb(図3(a)参照)により、保持位置n1〜n5の列と保持位置n6〜n10の列の間に、空間S3が形成されている。中央部Rbの前後方向の幅は、検体容器の胴部Taの直径よりも僅かに大きくなるよう設定されている。また、左右の引き出し30にセットされたラックの間には、空間S4が形成されている。なお、空間S1、S2、S4は、図10(a)に示す平面図の破線の領域において、引き出し30の上側に広がる空間であり、容器移送部50による検体容器の移送が可能となる程度に小さく構成される。空間S3は、図10(a)に示す平面図の破線の領域において、中央部Rbの上側に広がる空間である。
なお、右側の引き出し30と左側の引き出し30は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「第1の引き出し」と「第2の引き出し」に相当する。
図11(a)、(b)は、右側のラックの保持位置n1に保持されている検体容器が、容器移送部50により移送される経路を示す図である。
図11(a)を参照して、右側のラックの保持位置n1に保持されている検体は、把持部541、542により把持されてラックから抜き出されると、僅かに後方へ移送されて空間S3内に位置付けられる。続いて、この検体容器は、空間S3において左へ移送されて空間S4内に位置付けられ、空間S4において後方へ移送されて空間S1、S2に跨る位置に位置付けられる。続いて、この検体容器は、空間S2において左へ移送され位置P1に位置付けられる。位置P1で攪拌処理が行われた後、この検体容器は、空間S2と空間S1において右へ移送され、位置P2に位置付けられた容器セット部71にセットされる。
図11(b)を参照して、容器セット部71により後方から搬送され位置P2に位置付けられた検体容器は、把持部541、542により把持されて容器セット部71から抜き出されると、右側のラックの右側の空間と、空間S3を通って、元の保持位置n1へ戻される。同様に、右側のラックの保持位置n2〜n5に保持されている検体容器も、図11(a)、(b)に示すように移送される。
なお、右側のラックの後方の列(保持位置n6〜n10)に保持されている検体容器は、図11(c)、(d)に示すように、空間S1、S2において左右に移送される。
図12(a)、(b)は、左側のラックの保持位置n1に保持されている検体容器が、容器移送部50により移送される経路を示す図である。
図12(a)を参照して、左側のラックの保持位置n1に保持されている検体は、把持部541、542により把持されてラックから抜き出されると、まず、僅かに後方へ移送されて空間S3内に位置付けられ、空間S3において左へ移送されて左側のラックの左側の空間内に位置付けられる。続いて、この検体容器は、左側のラックの左側の空間を通って、位置P1に位置付けられる。位置P1で攪拌処理が行われた後、この検体容器は、空間S2と空間S1において右へ移送され、位置P2に位置付けられた容器セット部71にセットされる。
図12(b)を参照して、容器セット部71により後方から搬送され位置P2に位置付けられた検体容器は、把持部541、542により把持されて容器セット部71から抜き出されると、空間S1において左へ移送され、空間S4内に位置付けられる。そして、この検体容器は、空間S3において左へ移送され、元の保持位置n1へ戻される。同様に、左側のラックの保持位置n2〜n5に保持されている検体容器も、図12(a)、(b)に示すように移送される。
なお、左側のラックの後方の列(保持位置n6〜n10)に保持されている検体容器は、図12(c)、(d)に示すように、空間S1、S2において左右に移送される。
図10(b)、(c)は、それぞれ、ラックの前方の列(保持位置n1〜n5)と後方の列(保持位置n6〜n10)に保持されている検体容器が、容器移送部50により移送される経路をX軸負方向に見た場合の図である。なお、太線の矢印は、検体容器の下端の経路を示している。
図10(b)を参照して、前方の列に保持されている検体容器は、下端がラックの上面よりも僅かに上方に位置するよう抜き出される。続いて、この検体容器は、Y軸正方向へ僅かに移送された後、前方の列と後方の列との間の空間S3(図10(a)参照)を通ってX軸方向に移送され、空間S4または左側のラックの左側の空間を通って後方へ移送される。図10(c)を参照して、後方の列に保持されている検体容器も、同様に、下端がラックの上面よりも僅かに上方に位置するように抜き出される。続いて、この検体容器は、Y軸正方向へ僅かに移送される。このように、検体容器は、下端がラックの上面よりも僅かに上方に位置する状態で、すなわち、検体容器の下端がラックの上面に近接する高さで移送され、これよりも上方に持ち上げられることはない。すなわち、移送経路を上記のように設定することにより、検体容器を大きく持ち上げずとも、検体容器の移送を円滑に行うことができる。
また、本実施の形態では、引き出し30にラックがセットされていないとき、この引き出し30の上方にあるランプ22は緑色に点灯され、この引き出し30のロックは解除されている。また、引き出し30にラックがセットされているものの、このラックの処理が開始されていないときも、この引き出し30の上方にあるランプ22は緑色に点灯され、この引き出し30のロックは解除されている。また、引き出し30にセットされているラックの処理が開始されることにより、このラックに対する検体容器の移送が開始されると、この引き出し30の上方にあるランプ22は緑色に点滅され、この引き出し30にロックがかけられる。また、引き出し30にセットされている全てのラックの処理が終了すると、この引き出し30の上方にあるランプ22は消灯され、この引き出し30のロックが解除される。
なお、ランプ22の点灯処理は、図7(c)に示すように、CPU201によって制御される。この点灯処理は、引き出し30の状態が、図7(c)の左列に示す状態のときに、ランプ22が図7(c)の右列に示す状態となるように行われる。
このように、本実施の形態では、ランプ22が緑色に点灯している場合と消灯している場合に、対応する引き出し30を前方に引き出して、この引き出し30にラックをセットでき、ランプ22が緑色に点滅している場合に、対応する引き出し30を前方に引き出すことができず、この引き出し30にラックをセットできないことになる。したがって、オペレータは、ランプ22の状態を見ることで、対応する引き出し30にラックをセットすることが可能であるかが分かる。
以上、本実施の形態によれば、図12(a)〜(d)に示すように、左側のラックに保持された検体容器は、位置P2に位置付けられるとき、右側のラックの前方を通ることなく、右側のラックの後方の空間S1を通って移送される。これにより、左側のラックから位置P2に検体容器を移送中であっても、右側のラックを本体2の前方に引き出すことができる。よって、検体容器の交換を効率良く行うことができる。
また、左側のラックから位置P2に移送される検体容器は、下端がラックの上面よりも僅かに上方に位置付けられる。すなわち、検体容器は、下端がラックの上面に近接する高さで移送され、これよりも上方に持ち上げられることはない。このため、左側のラックから移送される検体容器は、右側のラックが引き出される際に右側のラックと検体容器に接触しないように、右側のラックに保持された検体容器の上端よりも高い位置まで持ち上げられる必要がない。これにより、検体分析装置1の外形が高さ方向に大きくなることを回避できる。
本実施の形態で用いられる検体容器T1〜T3は、上記のように、たとえば採血管として用いられ、図3(c)〜(e)に示すように、細くて長い形状を有する。このため、検体容器をラックから引き抜いて移送する際に、移送される検体容器の下部が他の検体容器の上部に干渉することが起こり得る。この問題は、移送される検体容器の下部が他の検体容器の上部よりも高くなるように、検体容器を大きく持ち上げることにより解消され得る。しかし、こうすると、検体分析装置1の内部に検体容器を持ち上げるためのストロークを大きくとる必要があり、検体分析装置1の外形が高さ方向に大きくなってしまう。このため、上記問題を解消しつつ、検体分析装置1の高さを抑えるためには、検体容器の移送経路を工夫する必要がある。本実施の形態では、検体容器の移送経路を上記のように設定することにより、検体分析装置1の外形が高さ方向に大きくなることを回避しつつ、円滑に、検体容器を移送することができる。
また、本実施の形態によれば、図11(a)〜(d)に示すように、右側のラックに保持された検体容器は、攪拌機構60による攪拌位置である位置P1に位置付けられるときに、左側のラックの前方を通ることなく、左側のラックの後方の空間S2を通って移送される。これにより、右側のラックから位置P1に検体容器を移送中であっても、左側のラックを本体2の前方に引き出すことができる。よって、検体容器の交換を効率良く行うことができる。また、右側のラックから位置P1への移送中に、検体容器を、左側のラックに保持された検体容器の上端よりも高い位置まで持ち上げる必要がないため、検体分析装置1の外形が高さ方向に大きくなることを回避できる。
また、本実施の形態によれば、左右の引き出し30には、それぞれ、ラックセット部300が設けられており、ラックは、ラックセット部300に対して着脱可能に構成されている。これにより、一度に複数の検体容器を交換することができる。よって、検体容器の交換をさらに効率良く行うことができる。
また、本実施の形態によれば、ラックは、5個の保持部Raが2列に並ぶ構成であるため、平面視においてラックをコンパクトな形状とすることができ、結果、検体分析装置1の形状をコンパクトにすることができる。また、保持位置n1〜n5の保持部Raの列と、保持位置n6〜n10の保持部Raの列との間には、中央部Rbが形成されており、中央部Rbにより形成される空間S3が、検体容器の移送スペースに用いられる。これにより、円滑な移送動作を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、左右の引き出し30にセットされているラックの間に形成される空間S4が、検体容器の移送スペースに用いられる。これにより、円滑な移送動作を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、引き出し30にセットされているラックの処理が開始されることにより、このラックに対する検体容器の移送が開始されると、この引き出し30にロックがかけられる。これにより、検体容器の移送が開始されたラックが誤って引き出されて、容器移送部50による検体容器の移送が阻害されることを防ぐことができる。
また、本実施の形態によれば、把持部541、542により保持位置に対して把持動作が行われたときに、この保持位置における検体容器の有無が検知され、検体容器が保持されていない場合、この保持位置に対する検体容器の移送動作は中止される。これにより、容器移送部50による無駄な移送動作を回避することができ、検体容器の移送を効率的に進めることができる。
また、本実施の形態によれば、ランプ22が緑色に点灯している場合と消灯している場合に、対応する引き出し30を前方に引き出して、この引き出し30にラックをセットでき、ランプ22が緑色に点滅している場合に、対応する引き出し30を前方に引き出すことができず、この引き出し30にラックをセットできない。よって、オペレータは、ランプ22の状態を見ることで、対応する引き出し30にラックをセットすることが可能であるかを直感的に知ることができるため、検体容器の交換を円滑に進めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、本発明を適用する装置は、血液を分析する検体分析装置1とされたが、これに限定されるものではない。免疫分析装置、遺伝子増幅測定装置、生化学分析装置、尿定性分析装置、尿中有形成分分析装置、または血液塗抹標本作成装置等の検体を処理する検体処理装置に本発明を適用してもよい。
また、検体容器の移送経路は、上記実施の形態に示されたものに限られず、適宜変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、ラックの前列から取り出された検体容器は、僅かに後方に移送された後、空間S3において左へ移送された。しかしながら、これに限らず、取り出された検体容器は、図13(a)、(c)に示すように、僅かに前方に移送された後、ラックの前方の空間において左へ搬送されても良い。なお、この場合、位置P2からラックの元の保持位置に戻される検体容器は、図13(b)、(d)に示すように移送される。
このように、検体容器の移送が行われると、空間S3が移送に用いられなくなるため、ラックの前列と後列との間の隙間は、上記実施の形態のように設けられる必要はない。したがって、図13(a)〜(d)に示すように、ラックの前後方向の幅を小さくすることができるため、ラックの小型化が実現できる。なお、前列と後列との間の隙間が小さくなるようラックが構成されると、ラックが前後方向に傾きやすくなる。よって、ラックを安定して自立させるためには、上記実施の形態のように空間S3が設けられるのが望ましい。また、図13(a)〜(d)の場合、検体容器をラックの前側に回り込ませるため、上記実施の形態に比べて移送距離が長くなる。よって、移送時間を短縮させるためには、上記実施の形態のように空間S3を設けて、空間S3を搬送経路に用いるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、右側のラックの前列から取り出された検体容器は、空間S3において左へ移送され、空間S4において後方へ移送された。また、位置P2から左側のラックの前列に戻される検体容器は、空間S4において前方へ移送され、空間S3において左へ移送された。しかしながら、これに限らず、右側のラックの前列から取り出された検体容器は、図14(a)に示すように、空間S3において右へ移送され、右側のラックの右側の空間において後方へ移送されても良い。また、位置P2から左側のラックの前列に戻される検体容器は、図14(d)に示すように、左側のラックの左側の空間において前方へ移送され、空間S3において右へ移送されても良い。なお、この場合、位置P2から右側のラックの前列に戻される検体容器と、左側のラックの前列から取り出された検体容器は、上記実施の形態と同様、それぞれ、図14(b)、(c)に示すように移送される。
このように、検体容器の移送が行われると、空間S4が移送に用いられなくなるため、左右のラックの間の隙間は、上記実施の形態のように設けられる必要がない。したがって、図14(a)〜(d)に示すように、左右のラックの間の隙間を小さくすることができるため、検体分析装置1の小型化が実現できる。ただし、この移送経路では、図14(a)のように検体容器を右側のラックの右側に回り込ませ、また、図14(d)のように検体容器を左側のラックの左側に回り込ませるため、上記実施の形態に比べて移送距離が長くなる。よって、移送時間を短縮させるためには、上記実施の形態のように空間S4を設けて、空間S4を搬送経路に用いるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、位置P2から右側のラックの前列に戻される検体容器は、右側のラックの右側の空間において前方へ移送され、空間S3において左へ移送された。また、左側のラックの前列から取り出された検体容器は、空間S3において左へ移送され、左側のラックの左側の空間において後方へ移送された。しかしながら、これに限らず、位置P2から右側のラックの前列に戻される検体容器は、図15(b)に示すように、空間S4において前方へ移送され、空間S3において右へ移送されても良い。また、左側のラックの前列から取り出された検体容器は、図15(c)に示すように、空間S3において右へ移送され、空間S4において後方へ移送されても良い。なお、この場合、右側のラックの前列から取り出された検体容器と、位置P2から左側のラックの前列に戻される検体容器は、上記実施の形態と同様、それぞれ、図15(a)、(d)に示すように移送される。
このように、検体容器の移送が行われると、右側のラックの右側の空間と、左側のラックの左側の空間とが移送に用いられなくなるため、これら空間に、検体分析装置1内の機構を配することができるようになる。したがって、検体分析装置1の小型化が実現できる。ただし、この移送経路では、図15(b)のように検体容器を右側のラックの左側に回り込ませ、また、図15(c)のように検体容器を左側のラックの右側に回り込ませるため、上記実施の形態に比べて移送距離が長くなる。よって、移送時間を短縮させるためには、上記実施の形態のように、右側のラックの右側の空間と、左側のラックの左側の空間を搬送経路に用いるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、左右のラックの後列から取り出された検体容器は、図11(c)と図12(c)に示すように移送され、位置P2から左右のラックの後列に戻される検体容器は、図11(d)と図12(d)に示すように移送された。しかしながら、これに限らず、左右のラックの後列から取り出された検体容器は、僅かに前方に移送された後、空間S3を通って移送されても良い。また、位置P2から左右のラックの後列に戻される検体容器は、空間S3を通って移送された後、元の保持位置に戻されても良い。ただし、これらの経路の場合も、上記実施の形態に比べて検体容器の移送距離が長くなるため、移送時間の短縮のためには、上記実施の形態の移送経路を用いるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、本体2の前面から引き出し可能な引き出し30が、横方向に2つ配されたが、これに限らず、横方向に3つ以上配されても良い。この場合も、横方向に並ぶ複数の引き出し30の左側後方と右側後方に、それぞれ位置P1、P2が設けられ、検体容器は、他のラックの後方を通る経路で移送される。
また、上記実施の形態では、位置P1において検体容器の攪拌処理が行われたが、これに限らず、位置P1において他の処理が行われるようにしても良い。たとえば、検体容器の攪拌が、前後搬送部70による搬送経路において行われる場合、位置P1では検体容器のバーコードラベルTcの読み取りが行われるようにしても良い。
また、上記実施の形態では、ラックは引き出し30に対して着脱可能に構成されたが、必ずしも、ラックは引き出し30に対して着脱可能に構成されなくても良い。上記実施の形態では、ラックの形状により検体容器の種類が特定されたが、たとえば、検体容器の種類が手入力されるような場合には、着脱可能なラックを用いる必要はなく、ラックが引き出し30と一体化されていても良い。ただし、検体容器の種類を手入力するような場合も、着脱可能なラックを用いた方が、複数の検体容器を一度に交換できるため、作業性および利便性の向上が図られ得る。
また、上記実施の形態では、ラックは、5個の保持部Raが2列に並ぶ構成であったが、これに限らず、複数の保持部Raが並ぶ列がラックに3つ以上設けられても良く、あるいは、複数の保持部Raが並ぶ列が一つだけラックに設けられても良い。
また、上記実施の形態では、ラックは、左右方向に並ぶ5個の保持部Raが、前後方向に2列並ぶように引き出し30にセットされたが、これに限らず、前後方向(引き出し30を引き出す方向)に並ぶ5個の保持部Raが、左右方向に2列並ぶように引き出し30にセットされても良い。すなわち、引き出し30の移動方向と保持部Raの列が平行であっても良い。この場合、引き出し30のラックセット部300は、X−Y平面内において90度回転された構成とされ、把持部541、542は、X−Y平面内において90度回転された構成とされる。
また、上記実施の形態では、ラックの中央部Rbの前後方向の幅は、検体容器の胴部Taの直径よりも僅かに大きくなるよう設定されたが、これに限らず、容器移送部50により移送される検体容器が、中央部Rbにより形成される空間S3内を左右方向に移送可能であれば良い。ただし、中央部Rbの前後方向の幅を大きくすると、ラックが大型化してしまうため、中央部Rbは、上記実施の形態のように出来るだけ小さく構成されるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、空間S1、S2、S4は、容器移送部50による検体容器の移送が可能となる程度に小さく構成されたが、これに限らず、空間S1、S2、S4は、上記実施の形態よりも大きく構成されても良い。ただし、空間S1、S2、S4を大きくすると、検体分析装置1が大型化してしまうため、空間S1、S2、S4は、上記実施の形態のように出来るだけ小さく構成されるのが望ましい。
また、上記実施の形態では、引き出し30にセットされたラックに対する検体容器の移送動作が開始されると、この引き出し30にロックがかけられたが、これに限らず、検体容器の移送動作が開始された後の所定のタイミングで、この引き出し30のロックがかけられても良い。たとえば、ラックに対する検体容器の移送動作が開始された後、且つ、ラックの上側の領域に把持部541、542が到達する前に、この引き出し30のロックがかけられても良い。少なくとも、引き出し30が引き出されると、把持部541、542または把持部541、542に把持された検体容器とラックに保持された検体容器とが干渉する期間は、引き出し30がロックされることが望ましい。
また、上記実施の形態では、引き出し30の状態は、ランプ22の表示によって示されたが、表示入力部3に常時表示されるようにしても良い。
また、上記実施の形態では、2つの引き出し30の上側に、検体容器が通る空間S1、S2が設けられたが、空間S1、S2を設ける方法はこれに限られるものではない。たとえば、2つの引き出し30が閉じられた状態において、これら引き出し30の奥側の端からさらに奥側に空間S1、S2が設けられても良い。