JP2017093613A - 気管チューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性を向上可能な気管チューブを提供する。
【解決手段】チューブ本体2と、チューブ本体2に装着され、胴部が収縮及び拡張可能なカフ3と、を備え、胴部が気管内で拡張した状態において気管の気管内壁を被覆する被覆領域30が、胴部の周方向に亘って連続して気管内壁と接触する密閉部31と、被覆領域30をチューブ本体2の中心軸線に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部32とを有する、気管チューブ1。
【選択図】図5

Description

本発明は、気管チューブに関する。
従来、自発呼吸が困難な患者に対し、体外と気管内とを直接つなぎ、呼吸を行い易くする気管チューブとして気管切開チューブが知られている。気管切開チューブには、チューブ本体の外周面上に、収縮及び拡張可能なカフが取り付けられている。カフを収縮させた状態で気管切開チューブを患者の気管内に挿入した後、カフを拡張することにより、カフと気管内壁とが接触し、気管切開チューブが気管内に留置される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許第5271898号公報 特開2000−167060号公報
ところで、患者の気管内でカフを拡張させて気管チューブを使用すると、気管上流側(顎側)に痰、唾液、血液及び誤嚥物などの異物が貯留する。貯留した異物は、例えば気管チューブに設けられたルーメンから吸引することにより除去することができる。しかしながら、カフを気管内で拡張させた際にカフの外面にしわができ、カフの外面と患者の気管内壁との間に、しわによる隙間が生じる場合がある。しわによる隙間が生じると、異物がこの隙間から気管下流側に流れて肺に流入する可能性が生じる。こうして肺に流入した異物によって、患者が肺炎を発症するリスクが高まる。
また、カフが気管内で拡張された状態において、カフが気管内壁と接触している位置によっては、気管内壁にカフからの過度の圧力がかかり、患者への負担となることがある。また、場合によっては、接触している箇所が炎症を起こす可能性がある。
本発明の目的は、上記問題に鑑み、安全性を向上可能な気管チューブを提供することである。
本発明の第1の態様としての気管チューブは、チューブ本体と、前記チューブ本体に装着され、胴部が収縮及び拡張可能なカフと、を備え、前記胴部が気管内で拡張した状態において前記気管の気管内壁を被覆する被覆領域が、前記胴部の周方向に亘って連続して前記気管内壁と接触する密閉部と、前記被覆領域を前記チューブ本体の中心軸線に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部とを有する、ことを特徴とする。
本発明の1つの実施形態として、前記胴部の膜厚は、0.15mm未満であることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記胴部は、0.34MPa以下のヤング率を有する材質により構成されることが好ましい。
本発明の1つの実施形態として、前記胴部は、前記拡張した状態において、所定の軸について回転対称であり、前記所定の軸の一端側から他端側に向かって該所定の軸を中心として径が広がったテーパ部を有することが好ましい。
本発明によれば、安全性を向上可能な気管チューブを提供できる。
本発明の一実施形態に係る気管チューブを気管内に留置した状態を示す図である。 図1に示す気管チューブ1におけるチューブ本体2を単体で示す斜視図である。 図1に示す気管チューブ1が備えるカフ3の概略を示す側面図である。 図3に示すカフ3を備える気管チューブ1を使用した実験により得た、ラミネートフィルムに記録された被覆領域の一例を示す図である。 被覆領域におけるしわ部と切れ目のない密閉部との関係を模式的に示す図である。 気管チューブ1が備えるカフ3の形状の2つの変形例を示す図である。 先端側接続部14aがテーパ部16よりも先端側に広がって融着され、基端側接続部14bがテーパ部16側に折り込まれて融着された状態の断面の一例を示す図である。 気管チューブ1に対するカフ3の装着方法の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る気管チューブの一実施形態について、図を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
図1は、本発明の一実施形態に係る気管チューブを気管内に留置した状態を示す図である。また、図2は、図1に示す気管チューブ1におけるチューブ本体2を単体で示す斜視図である。また、図3は、図1に示す気管チューブ1が備えるカフ3の概略を示す側面図である。また、図4は、図3に示すカフ3を備える気管チューブ1を使用した実験により得た、ラミネートフィルムに記録された被覆領域の一例を示す図である。
図1に示すように、気管チューブ1は、チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面上に取り付けられた収縮及び拡張可能なカフ3と、チューブ本体2の一方の端部に装着されたフランジ部材4と、を備える。
チューブ本体2は、チューブ本体2の外周面の中心軸線O1の延在方向(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)において先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画しており、気管チューブ1が外方から気管内に挿入されて留置されている状態では、この中空部7により気道が確保される。なお、チューブ本体2の先端5とは、チューブ本体2の遠位端であり、気管チューブ1が気管内に留置されている状態において、気管分岐部側に位置する一端である。また、基端6とは、チューブ本体2の近位端であり、気管チューブ1が気管内に留置されている状態において顎側に位置する他端である。
チューブ本体2は、先端5を含む先端部8と、中心軸線方向Aにおいて先端部8の基端6側で連続し、外周面上にカフ3が取り付けられるカフ装着部9と、このカフ装着部9の基端6側で連続する湾曲部10と、この湾曲部10の基端6側で連続し、基端6を含む基端部11と、を備える。換言すれば、チューブ本体2の先端部8は、カフ装着部9及び湾曲部10を介して、基端部11と繋がっている。なお、フランジ部材4は、基端部11に装着される。
チューブ本体2の外周面とチューブ本体2の中空部7を区画する内周面との間であるチューブ本体2の壁内には、中心軸線O1に沿って延在する2つの中空部が区画されている。具体的には、チューブ本体2は、壁内に形成され、基端面に区画された第1基端開口12a及び第2基端開口13aから中心軸線O1に沿って延在する第1ルーメン及び第2ルーメンを備える。なお、壁内に区画された小径の第1ルーメン及び第2ルーメンも中空部であるが、説明の便宜上、気道を確保するための大径の中空部7と区別するため、ここでは「ルーメン」と称する。
第1ルーメンは、基端面の第1基端開口12aから、カフ3及びカフ装着部9よりも基端部11側の所定の位置まで延在しており、その所定の位置に形成されたチューブ本体2の外周面まで貫通する吸引口部12bを通じてチューブ本体2の外方と連通している。なお、本実施形態の吸引口部12bは吸引口であり、カフ3及びカフ装着部9よりも基端部11側の位置として、湾曲部10に形成されている。第1ルーメンは、気管内に留置されている状態のカフ3よりも気管上流側(顎側)に貯留する痰、唾液、血液及び誤嚥物などの異物Xを吸引して除去する。
第2ルーメンは、基端面の第2基端開口13aから、カフ3及びカフ装着部9の位置まで延在しており、その位置に形成されたチューブ本体2の外周面まで貫通する流路13bを通じて外方と連通している。従って、例えばシリンジ等を用いて、第2ルーメンの第2基端開口13aから流路13bを通じて、カフ装着部9の外周面とカフ3の内面とで区画される空間(環状空間)内へ空気等の流体を供給することにより、カフ3を、この供給された流体により拡張させることができる。また、拡張した状態のカフ3に対しては、環状空間から、第2ルーメンの流路13b及び第2基端開口13aを通じて流体を吸引すれば、カフ3を収縮させることができる。このように、第2ルーメンは、カフ3を収縮及び拡張させるために用いられるルーメンであり、以下、「カフ用ルーメン」と称する。
チューブ本体2の構成材料としては、例えば、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等の各種樹脂を用いることができる。その中でも、成形が容易であるという点で、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)等の樹脂を用いることが好ましい。
フランジ部材4は、図1に示すようにチューブ本体2の基端部11(図2等参照)に装着されており、チューブ本体2を体外から気管内に挿入して気管チューブ1を留置した際に、皮膚に当接することで、先端部8を気管内の適切な位置に固定する。フランジ部材4には、チューブ本体2の基端部11が内挿される。フランジ部材4は、チューブ本体2と嵌合することでチューブ本体2に対して装着される円筒状の筒部17と、この筒部17の外壁から径方向外側に向かって突出し、気管チューブ1を留置した状態で皮膚に当接する板状のフランジ部18と、を備える。
第1ルーメンは、筒部17に形成された対応する連通孔を通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。誤嚥物等の異物Xの吸引は、体外に露出している筒部17の連通孔に一端が嵌合した吸引用チューブ19の他端に、シリンジまたは吸引ポンプ等を接続して吸引することにより行う。
また、カフ用ルーメンは、筒部17に形成された対応する連通孔を通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔に一端が嵌合したカフ用チューブの他端に、シリンジ等を接続すれば、体外にあるシリンジ等の操作により、カフ3の環状空間への流体の供給や吸引を行うことができ、それによりカフ3の拡張及び収縮を操作することができる。
フランジ部材4は、例えば、チューブ本体2と同様の材料で形成することができる。
カフ3は、チューブ本体2のカフ装着部9の外周面上に取り付けられており、上述したチューブ本体2のカフ用ルーメンを通じて、カフ装着部9の外周面とカフ3の内面とで区画される環状空間に供給される流体の圧力により、拡張させることができる。従って、気管チューブ1を外方から気管内へと挿入し、所定の位置で気管チューブ1を留置しようとする際に、チューブ本体2のカフ用ルーメンを通じて環状空間に流体を供給し、カフ3を拡張させる。これにより、拡張したカフ3の外面が気管内壁と密着し、カフ3の外面と気管内壁との摩擦力等によって、カフ3が気管内周壁面に挟持されると共に、カフ3がチューブ本体2の周囲で気管を閉塞する。そのため、気管内でのカフ3の位置が固定され、気管チューブ1を上述した所定の位置で留置させることができる。
また、気管チューブ1を気管内から外方へ抜去する際や、気管チューブ1の留置する位置を調整する際などは、カフ用ルーメンを用いて環状空間の流体を吸引し、カフ3を収縮させる。これにより、気管チューブ1のチューブ本体2を気管内で気管に沿って移動させることができる。
カフ3は、中心軸線方向Aにおける基端6側の端縁部(後述する基端側接続部14bに対応)及び先端5側の端縁部(後述する先端側接続部14aに対応)それぞれが、チューブ本体2の周方向B(図2参照)の全域において、カフ装着部9の外周面上に溶着や高周波融着等により接合されている。これにより、カフ3の内面とカフ装着部9の外周面とにより上述した環状空間が形成される。
カフ3について、図3を参照しながらさらに詳細に説明する。図3では、カフ3と、カフ3が取り付けられたチューブ本体2におけるカフ3の近傍の一部のみを示しており、カフ3が一定の圧力(例えば16〜25mmHg)で拡張された状態を示している。つまり、カフ3を、気管に挿入することなく拡張すると、図3に示す状態となる。
カフ3は、先端5側及び基端6側に、チューブ本体2に融着された先端側接続部14a及び基端側接続部14bを有する。また、カフ3は、拡張及び収縮可能な胴部を有する。本実施形態において、胴部は、テーパ部16と、連結部とを有する。連結部は、テーパ部16と、先端側接続部14a又は基端側接続部14bとを連結する。テーパ部16と先端側接続部14aとを連結する連結部を、特に先端側連結部15aと称し、テーパ部16と基端側接続部14bとを連結する連結部を、特に基端側連結部15bと称する。先端側連結部15aは、カフ3の側面視において変曲点20aを含む緩やかな曲面を有する。同様に、基端側連結部15bは、カフ3の側面視において変曲点20bを含む緩やかな曲面を有する。
カフ3において、先端側接続部14aと基端側接続部14bとの間に形成されたテーパ部16の外形は、先端側接続部14aを上底側、基端側接続部14bを下底側、中心軸線O1を中心軸とする略円錐台形状となっている。すなわち、テーパ部16は、中心軸線O1について回転対称であり、側面視において、先端5側から基端6側に向かって中心軸線O1を中心として外面の径が広がったテーパ形状になっている。図3に示す例では、先端側接続部14a及び基端側接続部14bは、それぞれテーパ部16よりも先端側及び基端側に広がるようにしてチューブ本体2に融着されている。カフ3の側面視におけるテーパ部16が、中心軸線O1となす角(テーパ角)θは、12°である。
テーパ部16において、中心軸線O1に沿った長さ(円錐台の高さに相当)、すなわち連結部同士の間隔(カフ幅)は、適宜決定することができ、本実施形態では26mmである。また、中心軸線O1に直交する面においてテーパ部16の外面が形成する円の最大径(カフ径)は、例えば患者の気管の大きさに合わせて適宜決定することができ、本実施形態では例えば26mmである。この最大径は、カフ3を拡張した際に、カフ3の外面から患者の気管内壁に所定の適切な圧力がかかることにより、気管チューブ1が気管内に留置される程度の大きさであることが好ましい。
本実施形態におけるカフ3の外面を構成する膜の材質は、軟質ポリ塩化ビニルであり、0.34MPaのヤング率を有する。なお、カフ3の外面を構成する膜の材質は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、またはこれらのうち任意の材料を混合した、可撓性を有する材料を用いてもよい。また、本実施形態におけるカフ3の外面を構成する膜は、厚さが0.06mmの膜厚を有する。
次に、本実施形態に係る気管チューブ1を使用して発明者が行った実験について説明する。発明者は、本実施形態に係る気管チューブ1を被検者の気管に使用し、使用状態におけるカフ3と被検者の気管との接触の状態に関する実験を行った。
具体的には、発明者は、まず、被検者の気管内であって気管チューブ1の使用時に拡張させたカフ3が接触する位置に、ラミネートフィルムを筒状にして挿入することにより、ラミネートフィルムを気管内面に貼り付けた。ラミネートフィルムは、株式会社アスカ製のラミネーター専用フィルム(厚さ0.1mm)を使用した。次に、外面に塗料を塗布したカフ3を収縮させた状態で、被検者の気管内に気管チューブ1を挿入し、一定の圧力(例えば16〜25mmHg)でカフ3を拡張させた。このとき、気管内面に貼り付けたラミネートフィルムのうち、カフ3の胴部の外面と接触している部分には、カフ3の外面に塗布した塗料が付着する。一方、カフ3の胴部の外面においてしわが生じている部分は、ラミネートフィルムと接触しないため、塗料が付着しない。そして、カフ3を収縮させて気管チューブ1を気管から抜去した後、被検者の気管からラミネートフィルムをはがす。
図4は、上述の実験により得た、ラミネートフィルムに記録された被覆領域の一例を示す図である。図4は、被検者の気管から抜去したラミネートフィルムを、中心軸線方向Aに沿って切断し、広げて示したものである。ここで、被覆領域30とは、カフ3の胴部が被検者の気管内で拡張した状態において、気管内壁を被覆する領域である。被覆領域30は、胴部のうち気管内壁と接触する部分である密閉部31と、気管内壁を被覆しているが接触していないしわ部32とを含む。
密閉部31は、胴部のうち気管内壁と接触する部分であるため、図4に示すラミネートフィルムでは、塗料が付着した領域として表れている。密閉部31は、胴部と気管内壁との間で密着した領域であるため、誤嚥物等の異物は、密閉部31には流れ込まない。
しわ部32は、気管内壁と接触していないしわにより構成される領域であるため、図4に示すラミネートフィルムでは、塗料が付着していない領域として表れている。しわ部32は、胴部の外面が拡張しきらずに、胴部の外面にしわができることによって形成される。従って、しわ部32は、胴部と気管内壁との間に空間を有する。そのため、しわ部32には、誤嚥物等の異物が流れ込む可能性がある。
図4に示すように、密閉部31は、ラミネートフィルムの周方向(気管チューブ1におけるチューブ本体2の周方向Bと同じ方向)全体に亘って広がっている。本実施形態では、被覆領域30は、特に、胴部の周方向(気管チューブ1におけるチューブ本体2の周方向Bと同じ方向)に亘って切れ目のない密閉部31を有する。図4において、切れ目のない密閉部31の一例を、太線により示している。被覆領域30に形成される切れ目のない密閉部31は、図4の太線で示したものに限られず、被覆領域30に形成された密閉部31のうち、周方向Bにおいて連続して切れ目なく形成されたものを含む。すなわち、切れ目のない密閉部31は、密閉部31のうち周方向Bに亘って一筆書きが可能な箇所を指す。
このように、被覆領域30が切れ目のない密閉部31を有することにより、異物が流れ込まない密閉部31が周方向Bに亘って連続して切れ目なく形成されるため、カフ3の基端側から先端側に異物が流れ込まなくなる。そのため、異物が肺に流入する危険性が低減し、患者が肺炎を発症するリスクが低減される。このようにして、気管チューブ1の安全性が高まる。
本実施形態では、しわ部32は、ラミネートフィルム(被覆領域30)をチューブ本体2の中心軸線O1に直交する任意の面で切断した断面に表れる。チューブ本体2の中心軸線O1に直交する任意の面で切断とは、図4においては、周方向Bに平行な方向に切断することを意味する。しわ部32が、被覆領域30をチューブ本体2の中心軸線O1に直交する任意の面で切断した断面に表れるということは、すなわち、切れ目のない密閉部31が、周方向Bの全域に亘って、チューブ本体2の中心軸線O1に直交する方向に一続きに延在しないということを意味する。本実施形態におけるしわ部32と、切れ目のない密閉部31との関係について、図5を参照して、さらに説明する。
図5は、被覆領域における、しわ部と、切れ目のない密閉部との関係を模式的に示す図である。図5(a)に示す被覆領域40は、被覆領域40の先端側周縁部43aから基端側周縁部43bの方向に延びる第1のしわ42aと、基端側周縁部43bから先端側周縁部43aの方向に延びる第2のしわ42bとを有する。第1のしわ42aは基端側周縁部43bに達しておらず、第2のしわ42bは先端側周縁部43aに達していない。つまり、第1のしわ42a及び第2のしわ42bは、先端側周縁部43aと基端側周縁部43bとの間で連通していない。また、第1のしわ42aの基端6側の端部44aは、第2のしわ42bの先端5側の端部44bよりも基端6側に位置する。第1のしわ42aと第2のしわ42bとが、図5(a)のように配置されることにより、被覆領域40を中心軸線O1に直交する任意の面で切断した場合に、第1のしわ42a及び第2のしわ42bの少なくともいずれかが断面に表れる。
図5(a)の被覆領域40に示す太線は、切れ目のない密閉部41の一例である。第1のしわ42aと第2のしわ42bとが、図5(a)のように配置されている場合、切れ目のない密閉部41は、周方向Bに平行な線を形成せず、中心軸線方向Aに波打ったような線、すなわち蛇行した線を形成することとなる。
図5(b)に示す被覆領域50は、被覆領域50の先端側周縁部53aから基端側周縁部53bの方向に延びる第1のしわ52aと、基端側周縁部53bから先端側周縁部53aの方向に延びる第2のしわ52bと、先端側周縁部53aも基端側周縁部53bも含まない第3のしわ55と、を有する。第1のしわ52aは基端側周縁部53bに達しておらず、第2のしわ52bは先端側周縁部53aに達していない。つまり、第1のしわ52a、第2のしわ52b及び第3のしわ55は、いずれも先端側周縁部53aと基端側周縁部53bとの間で連通していない。図5(b)に示す例では、図5(a)に示した例と異なり、第1のしわ52aの基端6側の端部54aは、第2のしわ52bの先端5側の端部54bよりも先端5側に位置する。そして、第3のしわ55の先端5側の端部55aは、第1のしわ52aの基端6側の端部54aよりも先端5側に位置する。また、第3のしわ55の基端6側の端部55bは、第2のしわ52bの先端5側の端部54bよりも基端6側に位置する。第1のしわ52aと第2のしわ52bと第3のしわ55とが、図5(b)のように配置されることにより、被覆領域50を中心軸線O1に直交する任意の面で切断した場合に、第1のしわ52a、第2のしわ52b及び第3のしわ55の少なくともいずれかが断面に表れる。
図5(b)の被覆領域50に示す太線は、切れ目のない密閉部51の一例である。第1のしわ52aと第2のしわ52bと第3のしわ55とが、図5(b)のように配置されている場合にも、切れ目のない密閉部51は、図5(a)に示した例の場合と同様に、周方向Bに平行な線を形成せず、蛇行した線を形成することとなる。
このように、被覆領域がチューブ本体2の中心軸線O1に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部を有することにより、切れ目のない密閉部が蛇行した線を形成する。そのため、胴部から気管内壁にかかる圧力が、被覆領域の中心軸線方向Aに亘って分散されやすくなり、気管内壁への負担が軽減されやすくなる。従って、患者への負担を低減しやすくなる。
なお、図5(a)に記載した例において、第1のしわ42aの基端6側の端部44aが基端側周縁部43bに近く、かつ第2のしわ42bの先端5側の端部44bが先端側周縁部43aに近いほど、切れ目のない密閉部41は、より大きく蛇行した線を形成する。そのため、胴部から気管内壁にかかる圧力が、被覆領域においてさらに広く中心軸線方向Aに亘って分散されやすくなり、気管内壁への負担がさらに軽減されやすくなる。
再び図4を参照すると、本実施形態では、切れ目のない密閉部31において、幅は少なくとも一部が1mm未満である。ここで、幅は少なくとも一部が1mm未満であるとは、しわ同士、又はしわと被覆領域30の基端側周縁部33b若しくは先端側周縁部33aとの間に形成された密閉部31の最短幅が1mm未満であることを意味する。図4に示した例では、一筆書きの線の接線方向に垂直な方向(法線方向)において、しわ同士、又はしわと被覆領域30の基端側周縁部33b若しくは先端側周縁部33aとの間に形成された密閉部31の距離のうち、少なくとも一部が1mm未満になっている。図4に、切れ目のない密閉部31のうち幅が1mm未満の箇所を、矢印で示す。
このように、幅が1mm未満の密閉部31においては、気管内壁と接触する面積も小さくなる。そのため、カフからの圧力がかかる領域も小さくなり、気管内壁において炎症を起こす可能性が低減される。このようにして、気管チューブ1の安全性が高まる。なお、気管内壁において炎症を起こす可能性を低減するために、切れ目のない密閉部31は、幅の全体が1mm未満であること、すなわち最大幅が1mm未満であることが好ましい。
なお、切れ目のない密閉部31において、幅が1mm未満の箇所を形成しやすくするためには、胴部が軟らかい材質により構成されている方がよい。胴部の材質が軟らかいほど、胴部が変形しやすくなり、密閉部31において、より幅が狭い領域を形成しやすいためである。従って、上記実施形態では、胴部の膜が、0.34MPaのヤング率を有する材質により構成される場合について説明したが、胴部の膜は、0.34MPa以下のヤング率を有する材質により構成されることが好ましい。
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
例えば、上記実施形態では、カフ3がテーパ形状の胴部を有する場合について説明したが、胴部の形状は、テーパ形状に限られない。カフ3は、本願発明の効果を生じることが可能な任意の形状の胴部を有することができる。
図6は、気管チューブ1が備えるカフ3の形状の2つの変形例を示す図である。第1の変形例は、図6(a)に示すように、外径(カフ径)がチューブ本体の径よりも大きい略円柱形状であり、以下、この類型をタイヤ型と称する。タイヤ型のカフは、カフの胴部に、側面視においてチューブ本体に平行な直線部分を有する。第2の変形例は、図6(b)に示すように、外形が略球形状であり、以下、この類型を球面型と称する。球面型のカフは、カフの胴部が、側面視において曲面になっている。
胴部の形状がタイヤ型及び球面型の場合にも、被覆領域30が、切れ目のない密閉部31と、被覆領域30をチューブ本体2の中心軸線O1に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部とを有する場合には、テーパ形状の胴部を例に説明した上記実施形態の気管チューブ1と同様の効果を有する。
また、上記実施形態において、先端側接続部14a及び基端側接続部14bは、それぞれテーパ部16よりも先端側及び基端側に広がるようにしてチューブ本体2に融着されていると説明したが、先端側接続部14a及び基端側接続部14bの融着の態様は、これに限られない。例えば、先端側接続部14a及び基端側接続部14bをテーパ部16側に折り込んで、胴部内で先端側接続部14a及び基端側接続部14bをチューブ本体2に融着することにより、カフ3とチューブ本体2とを融着してもよい。また、先端側接続部14a及び基端側接続部14bのいずれか一方のみがテーパ部16側に折り込まれていてもよい。
図7は、先端側接続部14aがテーパ部16よりも先端側に広がって融着され、基端側接続部14bがテーパ部16側に折り込まれて融着された状態の断面の一例を示す図である。図7に示すカフ3の装着方法について、図8を参照して説明する。
図8に示すように、カフ3の装着方法は、環状のカフ材を裏返す工程S1と、裏返したカフ材内にチューブ材を挿入し、裏返したカフ材をチューブ材に外嵌する工程S2と、環状のカフ材の一端側をチューブ材の外壁に固定する工程S3と、固定されたカフ材の一端側を起点として、カフ材の他端側を再び裏返す工程S4と、カフ材の他端側をチューブ材の外壁に固定する工程S5と、を含む。なお、チューブ材とは、完成したチューブ本体2又はチューブ本体2の基となるものを意味するものである。また、環状のカフ材とは、チューブ材に対して装着されることにより気管チューブ1のカフ3を構成するものであり、カフ3の基となるものを意味する。また、環状のカフ材は、胴部となる大径部と、この大径部の両側に連続する、大径部よりも径が小さい端縁部と、を備えている。以下、各工程について詳細に説明する。
工程S1では、大径部のうち胴部の内壁となる面が外部に露出すように、環状のカフ材を裏返す。但し、環状のカフ材にこのような裏表の区別が存在しない場合や、既に裏返されている場合には、工程S1は省略することができる。
工程S2では、裏返した環状のカフ材を、チューブ材の一端側(例えば、チューブ本体2の基端6となる一端側)から外嵌する。なお、裏返した環状のカフ材を、チューブ材の他端側(例えば、チューブ本体2の先端5となる一端側)から外嵌するようにしてもよい。
工程S3では、チューブ材に外嵌された環状のカフ材の一端側の端縁部である、基端側接続部14bとなる端縁部を、チューブ材の外壁に対して融着等によって固定する。なお、カフ材の一端側の端縁部がチューブ材の外壁に対して固定される際、カフ材の一端側の端縁部は、チューブ材の中心軸線方向(チューブ本体2の中心軸線方向Aと同じ方向)において大径部の外側に延在した状態になっている。また、チューブ材に固定される一端側の端縁部は基端側接続部14bとなる端縁部であるが、この一端側の端縁部がチューブ材の外壁に固定される際にカフ材は裏返された状態であるため、大径部よりもチューブ材の先端側、つまりチューブ本体2の先端5側となる方向に位置している。
工程S4では、固定されたカフ材の一端側の端縁部を起点として、カフ材の他端側を再び裏返す。つまり、大径部のうち胴部の外壁となる面が外部に露出すように裏返す。より具体的には、基端側接続部14bを起点として、環状のカフ材の他端側の端縁部である、先端側接続部14aとなる端縁部と、胴部となる大径部とを裏返す。これにより、基端側接続部14bは、チューブ材の中心軸線方向において、胴部となる大径部側に折り込まれた状態となる。一方で、先端側接続部14aとなる端縁部は、チューブ材の中心軸線方向において、胴部となる大径部の外側、具体的には大径部よりもチューブ材の先端側に延在した状態となる。
工程S5では、カフ材の他端側の端縁部である、先端側接続部14aとなる端縁部を、チューブ材の外壁に対して融着等によって固定する。これにより、カフ材のチューブ材に対する固定が完了する。
以上のようにして、チューブ材に対してカフ3を装着することができる。なお、ここでは図8を参照してカフ3の装着方法を説明したが、図3に示すカフ3の場合には、カフ3となる環状のカフ材を裏返すことなくチューブ材に外嵌し、環状のカフ材の一端側をチューブ材の外壁に固定する工程と、カフ材の他端側をチューブ材の外壁に固定する工程と、を実行すればよい。より具体的には、チューブ材に外嵌した環状のカフ材のうち、チューブ材の中心軸線O1方向において胴部となる大径部の外側に延在する両方の端縁部を融着等によってチューブ材の外壁に固定し、先端側接続部14a及び基端側接続部14bを形成する。
また、上記実施形態において、胴部の膜厚は0.06mmであると説明したが、膜厚はこれに限られない。胴部の膜厚は、例えば、0mmより大きく0.15mm未満であればよい。なお、カフ3の膜厚は、0mmより大きく0.10mm以下であることが好ましく、0mmより大きく0.08mm以下であることがさらに好ましい。
なお、切れ目のない密閉部31において、幅が1mm未満の箇所を形成しやすくするためには、胴部の膜厚が薄い方が好ましい。胴部の膜厚が薄いほど、胴部が変形しやすくなり、密閉部31において、より幅が狭い領域を形成しやすいためである。
また、上記実施形態において、テーパ型のカフ3のテーパ角θは12°であると説明したが、テーパ型のカフのテーパ角θは12°に限られない。テーパ型のカフのテーパ角θは、被覆領域30において胴部の周方向に亘って切れ目のない密閉部31を形成することが可能な任意の角度とすることができ、例えば、40°以下とすることができる。なお、被覆領域30において胴部の周方向に亘って切れ目のない密閉部31を形成させるためには、テーパ角θは、25°以下とすることが好ましく、10°以上12°以下とすることがさらに好ましい。
以上のように、例えば、胴部の膜厚を0mmより大きく0.15mm未満の範囲、かつ、膜の材質をヤング率が0.34MPa以下の範囲、かつ、テーパ角θを40°以下の範囲、で適宜設定することにより、被覆領域が、胴部の周方向に亘って連続して気管内壁と接触する密閉部と、被覆領域をチューブ本体の中心軸線に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部と、を有する構成を実現することができる。
本発明は、気管チューブに関する。
1:気管チューブ
2:チューブ本体
3:カフ
4:フランジ部材
5:チューブ本体の先端
6:チューブ本体の基端
7:中空部
8:チューブ本体の先端部
9:チューブ本体のカフ装着部
10:チューブ本体の湾曲部
11:チューブ本体の基端部
12a:第1基端開口
12b:吸引口部(吸引口)
13a:第2基端開口
13b:流路
14a:先端側接続部
14b:基端側接続部
15a:先端側連結部
15b:基端側連結部
16:テーパ部
17:筒部
18:フランジ部
19:吸引用チューブ
20a、20b:変曲点
30、40、50:被覆領域
31、41、51:密閉部
32:しわ部
33a、43a、53a:先端側周縁部
33b、43b、53b:基端側周縁部
42a、52a:第1のしわ
42b、52b:第2のしわ
44a、44b、54a、54b、55a、55b:端部
55:第3のしわ
A:チューブ本体の外周面の中心軸線の方向
B:チューブ本体の周方向
O1:チューブ本体の外周面の中心軸線
θ:カフの側面視におけるテーパ部が中心軸線となす角(テーパ角)

Claims (4)

  1. チューブ本体と、
    前記チューブ本体に装着され、胴部が収縮及び拡張可能なカフと、を備え、
    前記胴部が気管内で拡張した状態において前記気管の気管内壁を被覆する被覆領域が、前記胴部の周方向に亘って連続して前記気管内壁と接触する密閉部と、前記被覆領域を前記チューブ本体の中心軸線に直交する任意の面で切断した断面に表れるしわ部とを有する、
    気管チューブ。
  2. 前記胴部の膜厚は、0.15mm未満である、請求項1に記載の気管チューブ。
  3. 前記胴部は、0.34MPa以下のヤング率を有する材質により構成される、請求項1又は請求項2に記載の気管チューブ。
  4. 前記胴部は、前記拡張した状態において、所定の軸について回転対称であり、前記所定の軸の一端側から他端側に向かって該所定の軸を中心として径が広がったテーパ部を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の気管チューブ。
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