しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、基準時刻を提供するPTPマスタ装置と、当該PTPマスタ装置が提供する時刻に従属し同期するPTPスレイブ装置との上下伝送遅延が同じであることを前提として動作する。そのため、伝送遅延が上下非対称であるPONシステムにIEEE1588v2を適用した場合、時刻同期精度が劣化してしまう。
また、特許文献1に記載されている技術では、上りおよび下りの伝送遅延が非対称であることを考慮して、OLTでPTPパケットを識別し、下りPTPパケットに遅延を付加することによって、上りおよび下りの伝送遅延を対称化している。しかし、この方式では、OLTが、PTPパケットを識別する機能と、遅延を付加する機能といった新たな機能を備える必要があるため、既存のシステムに適用することは不可能である。
また、既存OLT側に変更を加えない方法として、PTPパケット伝送用に、ONUに上り固定タイムスロットを割り当てることで遅延の一定化を図り、PTPマスタ装置とPTPスレイブ装置間のPTPパケット伝送において、伝送遅延の小さい伝送方向に対して意図的にONUの送信タイミングを遅らせることにより、PTPパケット伝送の上り、下り伝送遅延の対称化を図ることが考えられる。
しかし、ONUに固定タイムスロットを割り当てる際に、PTPマスタ装置からマスタONU(PTPマスタ装置からPTPパケットを受信するONU)に到達するPTPパケット間隔と、マスタONUの固定タイムスロット間隔が一致しない場合、PTPパケットにジッタが発生してしまい、時刻同期が困難になってしまう。また、PTPマスタ装置とPTPスレイブ装置間の伝送で、伝送遅延の小さい伝送方向に対して意図的に遅延を加える際に、RTT(Round Trip Time)1として、マスタONUからOLTを経由してONUにPTPパケットが到着する際の遅延時間を調整すると、RTT2として、ONUからOLTを経由してマスタONUにPTPパケットが到着する際の遅延も変化してしまうため、時刻同期が困難になってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マスタONUで上りのPTPパケットを受信し、時刻情報をOLT側に提供して、OLTを介して他の全ONUに配信するPONシステムにおいて、PON区間(OLTとONUとの区間)のバッファリングやパケットの送信タイミングを調整することによって、上下伝送遅延の対称化を図り、時刻同期の高い精度を維持することができるPONシステムおよび伝送方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のPONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)との間で1対多(Point to Multi Point)接続の光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、GPS(Global Positioning System)信号から取得された時刻情報としてのPPS(Pulse per Second)およびToD(Time of Day)、またはGPS信号から取得された時刻情報に基づいて生成されたPTPパケットを受信するマスタONUと、前記マスタONUから取得した時刻情報に基づいて、同期を確立させる少なくとも一つのスレイブONUと、光分岐器を介して、前記マスタONUおよび前記スレイブONUと接続し、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対して時分割多重方式により動的に上り帯域を割り当てるOLT(Optical Line Terminal)と、を備え、前記OLTから前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUへパケットを送信するタイミング、または前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUから前記OLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の対称化を図ることを特徴とする。
このように、前記OLTから前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUへパケットを送信するタイミング、または前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUから前記OLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の対称化を図るので、時刻同期の精度を高く維持することが可能となる。
(2)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当て、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延、並びに、前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の差分を計算し、前記計算した差分が解消するように、前記マスタONUの上り送信タイミング若しくはいずれかの前記スレイブONUの上り送信タイミングまたは前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUに送信すべきパケットの送信タイミングを調整することを特徴とする。
このように、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当てるので、伝送遅延を常に一定に保つことが可能となる。また、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延、並びに、前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の差分を計算し、前記計算した差分が解消するように、前記マスタONUの上り送信タイミング若しくはいずれかの前記スレイブONUの上り送信タイミングまたは前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUに送信すべきパケットの送信タイミングを調整することによって、上下伝送遅延の対称化を図るので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(3)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記第1の遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくすることを特徴とする。
このように、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記第1の遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくするので、PON区間において、OLTからマスタONUおよびスレイブONUへの方向の伝送遅延およびマスタONUおよびスレイブONUからOLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の対称化を図り、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(4)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記第1の遅延にさらに遅延を加えることによって、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの伝送遅延が前記第2の伝送遅延よりも大きくなるようにし、前記第2の伝送遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくすることを特徴とする。
このように、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記第1の遅延にさらに遅延を加えることによって、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの伝送遅延が前記第2の伝送遅延よりも大きくなるようにし、前記第2の伝送遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくするので、PON区間において、OLTからマスタONUおよびスレイブONUへの方向の伝送遅延およびマスタONUおよびスレイブONUからOLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の対称化を図り、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(5)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記スレイブONUの上りタイムスロットとPTPパケットの到着タイミングとを一致させながら、前記第1の伝送遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくすることを特徴とする。
このように、前記OLTは、前記マスタONUから前記スレイブONUまでの第1の伝送遅延と、前記スレイブONUから前記マスタONUまでの第2の伝送遅延とを比較し、前記第1の伝送遅延が小さい場合は、前記スレイブONUの上りタイムスロットとPTPパケットの到着タイミングとを一致させながら、前記第1の伝送遅延にさらに遅延を加えることによって、前記第1の伝送遅延と第2の伝送遅延とを等しくするので、PON区間において、OLTからマスタONUおよびスレイブONUへの方向の伝送遅延およびマスタONUおよびスレイブONUからOLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の対称化を図り、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(6)また、本発明のPONシステムにおいて、前記マスタONUは、PTP(Precision Time Protocol)パケットが到着してから所定時間後に送信する次のPTPパケットの送信タイミングを前記OLTに通知し、またはPTPパケットの到着時間および送信時間を前記OLTに通知し、前記OLTは、前記マスタONUからの通知に基づいて、前記マスタONUにPTPパケットが到着してから所定時間後に前記マスタONUが次のPTPパケットを送信するための上り帯域を割り当てると共に、前記スレイブONUに対してPTPパケットの下り伝送をする際に、前記スレイブONUにPTPパケットが到着してから所定時間経過後に前記スレイブONUの配下のPTPスレイブ装置から折り返されるPTPパケットを上り伝送するための帯域を前記スレイブONUに割り当てることを特徴とする。
このように、PTP(Precision Time Protocol)パケットが到着してから所定時間後に送信する次のPTPパケットの送信タイミングを前記OLTに通知し、またはPTPパケットの到着時間および送信時間を前記OLTに通知し、前記OLTは、前記マスタONUからの通知に基づいて、前記マスタONUにPTPパケットが到着してから所定時間後に前記マスタONUが次のPTPパケットを送信するための上り帯域を割り当てると共に、前記スレイブONUに対してPTPパケットの下り伝送をする際に、前記スレイブONUにPTPパケットが到着してから所定時間経過後に前記スレイブONUの配下のPTPスレイブ装置から折り返されるPTPパケットを上り伝送するための帯域を前記スレイブONUに割り当てるので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。また、PTP送信用の固定タイムスロットを割り当てないため、マスタONUおよびスレイブONU内での上り遅延を最小化すると共に、遅延差分も最小化し、マスタONUとスレイブONU間の伝送遅延差分精度も向上する。さらに、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに伝送する方向の遅延が小さい時の問題を無視することが可能となる。
(7)また、本発明のPONシステムにおいて、PON区間で同期システムを適用して時刻同期を取ると共に、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当て、または、前記マスタONUは、PTPパケットが到着してから所定時間後に送信する次のPTPパケットの送信タイミングを前記OLTに通知し、若しくはPTPパケットの到着時間および送信時間を前記OLTに通知し、前記OLTは、前記マスタONUからの通知に基づいて、前記マスタONUにPTPパケットが到着してから所定時間後に前記マスタONUが次のPTPパケットを送信するための上り帯域を割り当てると共に、前記スレイブONUに対してPTPパケットの下り伝送をする際に、前記スレイブONUにPTPパケットが到着してから所定時間経過後に前記スレイブONUの配下のPTPスレイブ装置から折り返されるPTPパケットを上り伝送するための帯域を前記スレイブONUに割り当て、前記OLT、前記マスタONUおよび前記スレイブONUは、PTPパケットが自装置に到着した時刻を示す時刻情報をPTPパケットの送信先に送信する一方、時刻情報を受信したときに、その時刻情報の送信元との伝送遅延を算出し、前記マスタONUまたは前記スレイブONUは、前記算出した伝送遅延を前記OLTに送信すると共に、その送信時刻を送信することを特徴とする。
このように、PON区間で同期システム(802.1AS等)を適用して時刻同期を取ると共に、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当てるので、伝送遅延を常に一定に保つことが可能となる。また、前記マスタONUは、PTPパケットが到着してから所定時間後に送信する次のPTPパケットの送信タイミングを前記OLTに通知し、若しくはPTPパケットの到着時間および送信時間を前記OLTに通知し、前記OLTは、前記マスタONUからの通知に基づいて、前記マスタONUにPTPパケットが到着してから所定時間後に前記マスタONUが次のPTPパケットを送信するための上り帯域を割り当てると共に、前記スレイブONUに対してPTPパケットの下り伝送をする際に、前記スレイブONUにPTPパケットが到着してから所定時間経過後に前記スレイブONUの配下のPTPスレイブ装置から折り返されるPTPパケットを上り伝送するための帯域を前記スレイブONUに割り当てるので、PON区間で同期システムを適用することが可能となる。また、OLT、マスタONUおよびスレイブONUは、PTPパケットが自装置に到着した時刻を示す時刻情報をPTPパケットの送信先に送信する一方、時刻情報を受信したときに、その時刻情報の送信元との伝送遅延を算出し、マスタONUまたはスレイブONUは、算出した伝送遅延をOLTに送信すると共に、その送信時刻を送信するので、マスタONUからOLT、OLTからスレイブONU、スレイブONUからOLT、OLTからマスタONUにおける遅延を求めることが可能となる。その結果、精度の高い時刻同期を行うことが可能となる。
(8)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延を一定の固定値に固定すると共に、実際の上下伝送遅延を測定し、下りのPTPパケットを受信した場合、前記固定値および前記実際の上下伝送遅延に基づいて、いずれかの前記スレイブONUに送信すべきパケットの送信タイミングを調整する一方、いずれかの前記スレイブONUから、上りのPTPパケットを受信してから上りデータの有無を示す通知をするまでの時間が通知された場合は、前記固定値および前記実際の上下伝送遅延に基づいて、前記スレイブONUのPTPパケットの送信タイミングを調整することを特徴とする。
このように、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延を一定の固定値に固定するので、上下伝送遅延がばらばらになることが無くなる。また、実際の上下伝送遅延を測定し、下りのPTPパケットを受信した場合、前記固定値および前記実際の上下伝送遅延に基づいて、いずれかの前記スレイブONUに送信すべきパケットの送信タイミングを調整する一方、いずれかの前記スレイブONUから、上りのPTPパケットを受信してから上りデータの有無を示す通知をするまでの時間が通知された場合は、前記固定値および前記実際の上下伝送遅延に基づいて、前記スレイブONUのPTPパケットの送信タイミングを調整するので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(9)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当て、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の差分を計算し、PTPパケットの到着時間と送信時間とから算出される機器内遅延情報に基づいて、前記マスタONUおよび前記スレイブONUにおける遅延が一致するように、前記マスタONUおよび前記スレイブONUの固定タイムスロットのタイミングを調整することを特徴とする。
このように、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当てるので、伝送遅延を常に一定に保つことが可能となる。また、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の差分を計算し、PTPパケットの到着時間と送信時間とから算出される機器内遅延情報に基づいて、前記マスタONUおよび前記スレイブONUにおける遅延が一致するように、前記マスタONUおよび前記スレイブONUの固定タイムスロットのタイミングを調整するので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(10)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当て、PON区間において、前記OLTから前記マスタONUおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延および前記マスタONUおよび前記スレイブONUから前記OLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の差分を計算し、前記マスタONUおよび前記スレイブONUから取得したPTPパケットの到着時間と送信時間とから算出される機器内遅延情報に基づいて、前記OLTから前記マスタONUへの伝送に前記マスタONU内での遅延と同一の遅延を付加すると共に、前記OLTから前記スレイブONUへの伝送に、前記スレイブONU内での遅延と同一の遅延を付加することを特徴とする。
このように、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当てるので、伝送遅延を常に一定に保つことが可能となる。また、PON区間において、前記OLTから前記マスタONUおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延および前記マスタONUおよび前記スレイブONUから前記OLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の差分を計算し、前記マスタONUおよび前記スレイブONUから取得したPTPパケットの到着時間と送信時間とから算出される機器内遅延情報に基づいて、前記OLTから前記マスタONUへの伝送に前記マスタONU内での遅延と同一の遅延を付加すると共に、前記OLTから前記スレイブONUへの伝送に、前記スレイブONU内での遅延と同一の遅延を付加するので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(11)また、本発明のPONシステムにおいて、前記OLTは、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当て、前記マスタONUおよび前記スレイブONUは、PTPパケットが到着してから送信するまでの装置内遅延情報を保持し、PTPパケットを前記OLTへ送信した後、前記OLTから受信したPTPパケットに前記装置内遅延と同等の遅延を付加し、前記マスタONUは、PTPマスタ装置または配下のPTPスレイブ装置にPTPパケットを送信する一方、前記スレイブONUは、配下のPTPスレイブ装置にPTPパケットを送信することを特徴とする。
このように、前記マスタONUおよび前記スレイブONUが上り伝送を行うために、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対し、PTP(Precision Time Protocol)パケットの送信間隔と一致する間隔を有するPTP送信用の固定タイムスロットを割り当てるので、伝送遅延を常に一定に保つことが可能となる。また、前記マスタONUおよび前記スレイブONUは、PTPパケットが到着してから送信するまでの装置内遅延情報を保持し、PTPパケットを前記OLTへ送信した後、前記OLTから受信したPTPパケットに前記装置内遅延と同等の遅延を付加し、前記マスタONUは、PTPマスタ装置または配下のPTPスレイブ装置にPTPパケットを送信する一方、前記スレイブONUは、配下のPTPスレイブ装置にPTPパケットを送信するので、時刻同期の高い精度を維持することが可能となる。
(12)また、本発明の伝送方法は、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)との間で1対多(Point to Multi Point)接続の光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムの伝送方法であって、マスタONU(Optical Network Unit)において、GPS(Global Positioning System)信号から取得された時刻情報としてのPPS(Pulse per Second)およびToD(Time of Day)、またはGPS信号から取得された時刻情報に基づいて生成されたPTPパケットを受信するステップと、少なくとも一つのスレイブONUにおいて、前記マスタONUから取得した時刻情報に基づいて、同期を確立させるステップと、OLT(Optical Line Terminal)において、光分岐器を介して、前記マスタONUおよび前記スレイブONUと接続し、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対して時分割多重方式により動的に上り帯域を割り当てるステップと、を含み、前記OLTから前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUへパケットを送信するタイミング、または前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUから前記OLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の対称化を図ることを特徴とする。
このように、前記OLTから前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUへパケットを送信するタイミングまたは前記マスタONU若しくはいずれかの前記スレイブONUから前記OLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、PON区間において、前記マスタONU、前記OLTおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延並びに前記スレイブONU、前記OLTおよび前記マスタONUへの方向の伝送遅延の対称化を図るので、時刻同期の精度を高く維持することが可能となる。
本発明によれば、OLTからいずれかのONUへパケットを送信するタイミングまたはいずれかのONUからOLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、上下伝送遅延の対称化を図るので、時刻同期の精度を高く維持することが可能となる。
本発明者らは、ONU側で取得したGPS信号の時刻情報をOLTに提供し、その時刻情報を、OLTを介して各ONUに配信するというループバック方式を実現しようとする場合、時刻同期精度を高める必要があること、マスタおよびスレイブONUからOLTへのPTPパケット伝送のために上り固定タイムスロットを割り当てる場合、マスタONUに到着するPTPパケットの間隔とONUに割り当てられる上り固定タイムスロットの間隔がばらばらであると、PTPパケットにジッタが発生して時刻同期が困難になること、そして、一つのRTT(パケットがマスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達するまでの遅延)の遅延時間を調整すると、他のRTT(パケットがスレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達するまでの遅延)も変化してしまい時刻同期が困難になることに着目し、OLTからいずれかのONUへパケットを送信するタイミングまたはいずれかのONUからOLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、上下伝送遅延の対称化を実現できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のPONシステムは、OLT(Optical Line Terminal)と複数のONU(Optical Network Unit)との間で1対多(Point to Multi Point)接続の光ファイバ伝送を実現するPON(Passive Optical Network)システムであって、GPS(Global Positioning System)信号から時刻情報を取得し、またはGPS信号から取得された時刻情報に基づいて生成されたPPS(Pulse per Second)およびToD(Time of Day))、またはPTPパケットを受信するマスタONUと、前記マスタONUから取得した時刻情報に基づいて、同期を確立させる少なくとも一つのスレイブONUと、光分岐器を介して、前記マスタONUおよび前記スレイブONUと接続し、前記マスタONUおよび前記スレイブONUに対して時分割多重方式により動的に上り帯域を割り当てるOLT(Optical Line Terminal)と、を備え、前記OLTからいずれかの前記スレイブONUへパケットを送信するタイミングまたはいずれかの前記スレイブONUから前記OLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、PON区間において、前記OLTから前記マスタONUおよび前記スレイブONUへの方向の伝送遅延および前記マスタONUおよび前記スレイブONUから前記OLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の対称化を図ることを特徴とする。
これにより、本発明者らは、時刻同期の精度を高く維持することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。図1に示すように、このPONシステムは、OLT10の配下に、光スプリッタ(光分岐器)30を介して合計n台(nは任意の整数)のONU40−1〜40−nが接続されている。マスタONU40−1には、PTPマスタ装置50が接続されており、PTPマスタ装置50は、GPSアンテナ51を有する。また、スレイブONU40−2〜40−nには、それぞれPTPスレイブ装置52−1〜52−(n−1)が接続されている。PTPマスタ装置50、PTPスレイブ装置52−1〜52−(n−1)には、それぞれ、基地局装置60−1〜60−nが接続されている。
GPSアンテナ51で受信した時刻情報は、PTPマスタ装置50、マスタONU40−1、OLT10を介して他のスレイブONU40−2〜40−nに配信される。なお、この時刻情報は、マスタOLT10を介して、ONU40−1に配信されても良い。
図2は、IEEE1588v2のPTPマスタ装置−PTPスレイブ装置間の時刻同期シーケンスを示す図である。マスタONUが時刻t1でスレイブONUに対して「Sync(t1)」を送信し、スレイブONUに時刻t2に到着したとする。スレイブONUは、時刻t3でマスタONUに対して「Delay_Req」を送信し、これがマスタONUに時刻t4に到着したとする。また、マスタONUは、時刻t4で「Delay_Resp(t4)」を送信したとする。この場合、スレイブONUは、以下の式からマスタONUとの時刻差分を算出し、自装置の時刻を補正することが可能となる。
(delay)={(t2−t1)+(t4−t3)}/2
実施例1では、マスタONUおよびスレイブONUに対する固定タイムスロットの割り当て方法を変更し、PTPパケットに遅延方法を追加する態様について説明する。
(1)まず、ONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットを伝送するために、常に固定タイムスロットを割り当てる。図3は、マスタONUまたはスレイブONUの上り伝送用の固定タイムスロットの様子と、PTPパケットのマスタONUまたはスレイブONUへの到着間隔を示す図である。図3に示すように、マスタONUへのPTPパケットの到着間隔と固定タイムスロットの間隔とを一致させることによって、常に伝送遅延を一定に保つことが可能となる。また、マスタONU以外のスレイブONUからOLTへの通信においても、上記と同様に、PTPパケットの到着間隔と固定タイムスロットの間隔とを一致させることによって、伝送遅延を一定に保つ。
(2)次に、GPSアンテナを設置したマスタONUとスレイブONU間のPON区間において、OLTからマスタONUおよびスレイブONUへの方向の伝送遅延およびマスタONUおよびスレイブONUからOLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の差分をOLTで計測する。OLTは、この計測をする際に、単に、RTTの測定だけでなく、上り伝送待機時間を考慮した遅延の計測を行う。なお、ここで、マスタおよびスレイブONUとOLTの機器伝送遅延は一定と仮定し、オフセット処理をする。図4は、OLTの伝送遅延テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、OLTは、ONUを特定する番号と上りおよび下りの遅延を把握する。
(3)次に、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到着するまでのPTPパケット通信で、伝送遅延の小さい伝送方向に対して、マスタONUの上り送信タイミングを上記のように計算した遅延差分を付加し、遅らせる。図5は、マスタONUにおいてPTPパケットの送信タイミングを遅らせる例を示す図である。ここでは、マスタONUからOLTにPTPパケットを送信する際に、待ち時間を設けることによって、PTPパケットの送信タイミングを遅らせている。これにより、上下伝送遅延を対称化させることが可能となる。
(3’)また、伝送遅延の小さい方の伝送において、上記伝送遅延差分に相当する期間、OLTにおいて、受信したパケットをバッファで蓄えてから下り送信をするようにしても良い。図6は、OLTにおいて、伝送遅延差分に相当する期間、OLTにおいて、受信したパケットをバッファで蓄えてから下り送信をする例を示す図である。ここでは、OLTからスレイブONUにPTPパケットを送信する際に、待ち時間を設けることによって、PTPパケットの送信タイミングを遅らせている。これにより、上下伝送遅延を対称化させることが可能となる。
(4)また、上記の(3)または(3’)において、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達するまでの伝送遅延が小さい時には、スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送において、スレイブONU内での上り遅延(PTPパケットの到着時間と送信時間の差を算出)も考慮して、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達するまでの伝送に遅延を加えても良い。
(4’)また、上記の(3)または(3’)において、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延が小さい時には、意図的にその伝送の遅延が大きくなるように調整した後に、スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送に遅延を加えるようにしても良い。
(4’’)また、上記の(3)または(3’)において、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延が小さい時には、スレイブONUの上りタイムスロットとPTPパケット到着タイミングを一致させるようにしても良い。これは、OLTで、スレイブONUの上り帯域を割り当てる際に、スレイブONUからPTPスレイブ装置で折り返してスレイブONUに到達する伝送の遅延を想定することによって実現する。その後、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送方向に遅延を加えるようにしても良い。
これにより、上下伝送遅延の対称化を図り、時刻同期の精度を高く維持することが可能となる。
実施例2では、マスタおよびスレイブONUへのタイムスロットの割り当て方法およびPTPパケットの遅延方法の変更について説明する。図7および図8は、実施例2に係るPONシステムの概略構成を示す図である。図9は、マスタONUおよびスレイブONUとOLTのシーケンスチャートであり、図9(a)に一般的な上りのDBAプロセスを示し、図9(b)に実施例2に係るDBAのプロセスを示している。図10は、マスタONUまたはスレイブONUの上り伝送のタイムスロットのと、マスタONUまたはスレイブONUの上りのPTPパケットの到着時間との関係を示す図である。
図7において、マスタONUでは、PTPパケット到着後、x秒後に、次のPTPパケットを伝送するための帯域を確保するために、OLTにその情報を通知する機能を有する。すなわち、OLTへの蓄積データ量通知時に送信タイミング情報も通知する。OLTは、マスタONUから通知されたPTPパケットの送信タイミング情報と帯域を認識する機能を有する。スレイブONU1〜Nは、OLTからPTPパケットが到着した後、y秒後に次のPTPパケットを伝送するための帯域を確保するために、OLTにその情報を通知する。すなわち、OLTへの蓄積データ量通知時に送信タイミング情報も通知する。なお、図7では、マスタONUの配下にGM(PTP Grand Master)を配置した例を示したが、マスタONUの配下にPTPスレイブ装置が設置される場合もある。
また、図8に示すように、マスタONUで、PTPパケットの到着時間および送信時間(またはONU内遅延)をOLTに通知し、OLTが、PTPパケット到着後のx秒後の上り帯域割当およびOLTからスレイブONUに送信したPTPパケットがスレイブONUに到着する時間からy秒後の上り帯域割当をする機能を有するようにしても良い。すなわち、図8に示すように、OLTは、マスタONUへのPTPパケット到着時間後、x秒後に次のPTPパケット伝送用の帯域を割り当てる。また、OLTは、スレイブONUにPTPパケットが到着する想定時間からy秒後に上り帯域を割り当てる。
なお、上記で、x秒後はPTPパケット間隔、y秒後はPTPスレイブ装置での処理時間を考慮して算出したり、スレイブONUからPTPスレイブ装置を折り返してスレイブONUに到達する伝送で戻ってきたPTPパケットの到着時間から算出することが可能である。
(1)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットがマスタONUに届いたx秒後(PTPパケット間隔)に、次のPTPパケットを伝送するための上り帯域を予約する。同様に、OLTからスレイブONUへPTPパケットを下り伝送する際に、スレイブONUに届いたy秒後にPTPスレイブ装置からの折り返しPTPパケットを送信するための上り帯域を予約する。図9(b)に示すように、マスタONUは、PTPパケット到着後に、次の送信タイミングをOLTに通知する機能を有し、OLTは、マスタONUから通知された送信タイミングを検知する機能を有する。
(2)GPSアンテナを設置したマスタONUとスレイブONU間のPON区間において、OLTからマスタONUおよびスレイブONUへの方向の伝送遅延およびマスタONUおよびスレイブONUからOLTへの方向の伝送遅延である上下伝送遅延の差分をOLTで計測する。図4に示すように、OLTは、スレイブONUを特定する番号と上りおよび下りの遅延を把握する。
(3)次に、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送のPTPパケット通信で、伝送遅延の小さい伝送方向に対して、スレイブONUの上り送信タイミングを上記遅延差分だけ遅らせる。図5は、マスタONUにおいてPTPパケットの送信タイミングを遅らせる例を示す図である。これにより、上下伝送遅延を対称化させることが可能となる。
(3’)一方、遅延が小さい方の伝送において、上記伝送遅延差分に相当する期間、OLTでは受信したパケットをバッファで蓄えてから下り送信するようにしても良い。図6は、OLTにおいて、伝送遅延差分に相当する期間、OLTにおいて、受信したパケットをバッファで蓄えてから下り送信をする例を示す図である。これにより、上下伝送遅延を対称化させることが可能となる。
図10に示すように、実施例2では、固定タイムスロットを用いないことから、マスタONUおよびスレイブONU内での上り遅延を最小化し(遅延差分も最小化)、マスタONUとスレイブONU間の伝送遅延差分精度を向上させることが可能となる。また、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延が小さい時の問題を無視することが可能となる。
実施例3では、PON区間の同期機能を利用したPTPパケットの基本シーケンスについて説明する。図11は、PTPパケットが、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の概要を示す図である。GMからマスタONUにPTPパケットが時刻t1に到着すると、マスタONUは、その時刻t1をOLTに通知する。OLTは、PTPパケットが時刻t2に到着したことを確認すると、t2−t1から、マスタONUからOLT間の遅延を計算する。そして、t2を配下のONU(マスタONUおよびスレイブONUを含む)に通知する。マスタおよびスレイブONUは、OLTからPTPパケットが時刻t3で到着したことを確認すると、t3−t2から、OLTからONU間の遅延を計算し、これをOLTに通知する。なお、図11では、マスタONUの配下にGM(PTP Grand Master)を配置した例を示したが、マスタONUの配下にPTPスレイブ装置が設置される場合もある。また、図11において、逆方向での動作も同様であるが、スレイブONU1〜Nの送信時刻t4をOLTに送信する。
(1)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットを送信するために常に固定タイムスロットを割り当てる。マスタONUへのPTPパケットの間隔と固定タイムスロットの間隔を一致させることによって、常に伝送遅延を一定に保つことが可能となる。マスタONU以外のスレイブONUからOLTへの通信においても、上記と同様に、PTPパケット間隔と固定タイムスロット間隔を一致させることによって、伝送遅延を一定に保つ。
(1’)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットがマスタONUに届いたx秒後(PTPパケット間隔)に、次のPTPパケットを伝送するための上り帯域を予約する。また、OLTからスレイブONUへPTPパケットを下り伝送する際に、スレイブONUに届いたy秒後に、PTPスレイブ装置から折り返されたPTPパケットを送信するための上り帯域を予約する。
ここで、スレイブONUは、PTPパケットが到着した後に、次の送信タイミングをOLTに通知する機能を有する。また、OLTは、スレイブONUから通知された送信タイミングを検知する機能を有する。または、マスタONUで、PTPパケットの到着時間および送信時間(またはONU内遅延)をOLT側に通知し、OLTは、PTPパケットが到着してからx秒後の上り帯域の割り当て、スレイブONUにPTPパケットが到着する時間からy秒後の上り帯域を割り当てる機能を有する。
なお、上記において、x秒をPTPパケット間隔、y秒をPTPスレイブ装置での処理時間を考慮して算出したり、スレイブONUからPTPスレイブ装置で折り返されてスレイブONUに到達する伝送で戻ってきたPTPパケットの到着時間から算出することも可能である。
(2)OLTと全ONUのPON区間で、例えば、同期システムとして802.1AS等を使って高精度に時刻同期を取る。
(3)次に、マスタONUからOLT、OLTからスレイブONU、スレイブONUからOLT、OLTからマスタONUへの遅延を、それぞれPTPパケットが到着した時刻情報を受け手側に伝送することで求める。なお、RTTについては、ファイバ伝送のみを考慮するが、本実施例3では、機器内遅延も含んでいる。
マスタONU側から、その遅延情報をOLT側に送信し、また、スレイブONUからOLTの伝送遅延については、スレイブONUから送信時刻情報をOLTに送信することによって把握する。
(4)マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延と、その逆のスレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送の遅延の差分を、OLTが求める。ここでは、各区間での遅延も含む。図12は、OLTの伝送遅延テーブルの一例を示す図である。図12に示すように、上りの遅延と下りの遅延をそれぞれ把握すると共に、区間の順方向における遅延と逆方向における遅延を把握する。
(5)実施例3では、上りと下りの遅延を同じにするため、遅延の小さい伝送に対して、意図的にマスタまたはスレイブONU送信タイミングに遅延を加える。ただし、上記(1)の手法を利用する場合、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延の方が小さい場合は、(a)スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送のスレイブONU内での上り遅延をも考慮して遅延を加える。また、(b)スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送の方の遅延を、意図的に大きくなる様にした後、スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送に遅延を加える。または、(c)スレイブONUの上りタイムスロットとPTPパケット到着タイミングを一致させるようにしても良い。
(5’)また、上りと下り遅延を同じにするため、遅延の小さい伝送に対して、OLTで意図的に遅延を加えるようにしても良い。ただし、上記(1)の手法を利用する場合、マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送の遅延の方が小さい場合は、(a)スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送のスレイブONU内での上り遅延をも考慮して遅延を加える。また、(b)スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送の方の遅延を、意図的に大きくなる様にした後、スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送に遅延を加える。または、(c)スレイブONUの上りタイムスロットとPTPパケット到着タイミングを一致させるようにしても良い。
(5’’)各伝送区間において、上りと下りの遅延が同じになる様に、遅延の小さい伝送方向、すなわち、通常は下り(OLT〜マスタまたはスレイブONU方向)で伝送遅延分の遅延を意図的に加える。ただし、(1)の手法を利用する場合、マスタまたはスレイブONUからOLT方向の伝送のマスタまたはスレイブONU内での上り遅延を考慮して、伝送遅延を加えても良い。この場合、遅延を、マスタまたはスレイブONUへのPTPパケット到着時間、送信時間から算出する。または、マスタまたはスレイブONU到着時間、OLT到着時間の差にRTTから得られるファイバ伝送時間を引いて算出しても良い。実施例3に係る対称化技術は、GMをOLT側に設置した場合にも適用可能である。
図13(a)は、通常のTDM−PONのシーケンスを示す図であり、図13(b)は、実施例3に係るTDM−PONのシーケンスを示す図である。マスタONUからOLTへの上りの伝送遅延は、遅延を一定とし、かつ最小化方式を採ることにより、OLTからスレイブONUへの下りの遅延時間によらず、一定とすることが可能である。固定タイムスロットを割り当てる場合には、下り遅延に依存して、変化してしまう。このため、マスタONUで、上りPTPパケットの到着時間に加えて送信時間もOLT側に通知することによって、マスタONU内での遅延時間も考慮したPTP待ち時間を設定することが可能である。
実施例4では、PON区間の上下遅延を、十分大きな値(PollingRateの2倍以上)のある値に固定する。図14は、PTP GMおよびPTPスレイブ装置の設置パターンを示す図である。図14(a)は、マスタONUにGMが接続されている例を示し、図14(b)は、OLTにGMが接続されている例を示す。OLTは、予めRTTに基づいて、上りと下りの伝送遅延を測定する。測定した伝送遅延は、例えば、図4に示すようなテーブルで管理することができる。なお、図14(a)および(b)に示したように、マスタONUの配下にPTPスレイブが接続される場合もあり、本発明を適用することによって、上下伝送遅延の対称化を図ることが可能である。
図15(a)下り伝送におけるOLTとマスタONUまたはスレイブONUのシーケンスチャートであり、(b)は、上り伝送におけるOLTとマスタONUまたはスレイブONUのシーケンスチャートである。図15(a)に示すように、OLTに、下りのPTPパケットが到着した場合、バッファに、(指定遅延値)−(下りの伝送遅延値)の時間留保してからマスタONUに送信する。
一方、図15(b)に示すように、上りPTPパケットがマスタONUに到着した場合、マスタONUがPTPパケットを受信してから上りデータの有無をOLT通知するまでの時間(PTP上り留保時間)を、上りデータ有無の通知に含めて、OLTに通知する。OLTは、上りデータ有りの通知を受領すると、マスタONUの送信タイミング通知を、(指定遅延値)−(PTP上り留保時間)−(上り伝送遅延)−(上りデータ有りの通知受領から送信タイミング通知送信までの時間)−(下り伝送遅延)−(上り伝送遅延)を算出し、送信タイミングとしてマスタONUに通知する。マスタONUは、受領した送信タイミングに合わせてPTPパケットを送信する。
以上説明したように、実施例4によれば、マスタONUからOLTと、OLTからマスタONUとの遅延を、OLT内またはONUの送信タイミングを調整する。これにより、上下伝送遅延の対称化を図ることが可能となる。
実施例5では、マスタおよびスレイブONUに対する固定タイムスロットの割り当て方法の変更およびPTPパケットの遅延方法の変更について説明する。
(1)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットを送信するために、常に固定タイムスロットを割り当てる。ここで、マスタONUへのPTPパケットの間隔と固定タイムスロットの間隔を一致させることによって、常に伝送遅延を一定に保つことが可能となる。また、マスタ以外のスレイブONUからOLTへの通信においても、上記と同様に、PTPパケット間隔と固定タイムスロット間隔を一致させることによって、伝送遅延を一定に保つ。
(2)GPSアンテナを設置したマスタONUやスレイブONUとOLT間の上下伝送遅延をOLTで計測する(RTT測定)。
(3)マスタONU内でのPTPパケットの遅延、すなわち、PTPパケットの到着と送信までの時間差と、スレイブONUでのPTPパケットの遅延情報をOLT側に通知する。OLTから(マスタ)ONU方向への遅延は、遅延差が十分小さいと想定する。
(4)上記(3)遅延値情報に基づいて、OLTで、マスタONUとスレイブONUの機器遅延が一致する様に、両者の固定タイムスロットのタイミングを調整する。ここで、遅延は、両遅延中間値とする。これにより、上下伝送遅延の対称化を図ることが可能となる。
実施例6では、マスタおよびスレイブONUに対する固定タイムスロットの割り当て方法の変更およびPTPパケットの遅延方法の変更について説明する。
(1)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットを送信するために、常に固定タイムスロットを割り当てる。ここで、マスタONUへのPTPパケットの間隔と固定タイムスロットの間隔を一致させることによって、常に伝送遅延を一定に保つことが可能となる。また、マスタ以外のスレイブONUからOLTへの通信においても、上記と同様に、PTPパケット間隔と固定タイムスロット間隔を一致させることによって、伝送遅延を一定に保つ。
(2)GPSアンテナを設置したマスタONUやスレイブONUとOLT間の上下伝送遅延をOLTで計測する(RTT測定)。
(3)マスタONU内でのPTPパケットの遅延、すなわち、PTPパケットの到着と送信までの時間差と、スレイブONUでのPTPパケットの遅延情報をOLT側に通知する。OLTから(マスタ)ONU方向への遅延は、遅延差が十分小さいと想定する。
(4)マスタONUからOLTへの伝送と、OLTからマスタONUへの伝送遅延を同じにするため、上記(3)の情報に基づいて、OLTからマスタONU伝送で、OLTにマスタONU内での遅延と同一の遅延を加える。また、OLTからスレイブONUへの伝送とスレイブONUからOLTへの伝送遅延を同じとするため、上記(3)の情報に基づいて、OLT内での遅延時間とスレイブONU内での遅延時間が一致するように調整する。これにより、上下伝送遅延の対称化を図ることが可能となる。
実施例7では、PTPパケットの遅延方法の変更について説明する。
(1)マスタONUからOLTへの上り伝送において、PTPパケットの送信のために、常に固定タイムスロットを割り当てる。ここで、マスタONUへのPTPパケットの間隔と固定タイムスロットの間隔を一致させることによって、常に伝送遅延を一定に保つことが可能となる。また、マスタ以外のスレイブONUからOLTへの通信においても、上記と同様に、PTPパケット間隔と固定タイムスロット間隔を一致させることによって、伝送遅延を一定に保つ。
(2)マスタONU内でのPTPパケットの遅延、すなわち、PTPパケットの到着と送信までの時間差(遅延量)を機器内に保持しておく。マスタONUからOLTを経由してスレイブONUに到達する伝送、および、スレイブONUからOLTを経由してマスタONUに到達する伝送により戻ってきたPTPパケットに対して、保持していた遅延量と同じ遅延を加えて、PTPスレイブ装置側に送信する。ここでは、スレイブONUはバッファを有し、下り方向の送信時にバッファを用いて遅延させる機能を有する。
(3)同様に、スレイブONUでも機器内での上位(OLT)側への伝送と下位(PTPスレイブ装置)側への伝送時間が同一となる様に遅延を調整する。一度、スレイブONUからOLTへの伝送におけるスレイブONU内遅延、すなわち、PTPパケット到着と送信までの時間差を算出し、スレイブONUからPTPスレイブ装置への伝送において、スレイブONU内で遅延を加えて調整する。これにより、上下伝送遅延の対称化を図ることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態によれば、OLTからいずれかのONUへパケットを送信するタイミングまたはいずれかのONUからOLTへパケットを送信するタイミングを調整することによって、上下伝送遅延の対称化を図るので、IEEE1588v2を用いてTDM−PONを経由した時刻同期が可能となる。