JP2017088929A - 耐摩耗性に優れたレール - Google Patents

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Abstract

【課題】レール鋼の合金成分、組織、頭部の硬さを制御し、さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御することにより、海外の貨物鉄道で使用される場合のレールの飛躍的に耐摩耗性を向上させ、使用寿命を大きく向上させることが可能となる。【解決手段】質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P≦0.0250%、S≦0.0250%を含有し、さらに、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計で0.01〜1.00%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、頭部外郭表面を起点として深さ20mmまでの範囲の95%以上がパーライト組織であり、かつ、前記範囲の硬さがHv300〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性に優れたレール。【選択図】図1

Description

本発明は、耐摩耗性を向上させることを目的としたレールに関するものである。
経済発展に伴い石炭などの天然資源の新たな開発が進められている。具体的にはこれまで未開であった自然環境の厳しい地域での天然資源の採掘が進められている。これに伴い、資源を輸送する海外の貨物鉄道では軌道環境が著しく厳しくなっている。レールに対しては、これまで以上の耐摩耗性が求められるようになってきた。このような背景から、耐摩耗性を向上させたレールの開発が求められるようになってきた。
レール鋼の耐摩耗性を改善するため、特許文献1〜2に示すような高強度レールが開発されている。これらのレールの主な特徴は、耐摩耗性を向上させるため、熱処理によりパーライトラメラ間隔を微細化し、鋼の硬さを増加させるか、または、鋼の炭素量を増加し、パーライトラメラ中のセメンタイト相の体積比率を増加させている。
特許文献1の開示技術では、圧延終了後あるいは、再加熱したレール頭部をオーステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/秒で加速冷却し、耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。
特許文献2の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラ中のセメンタイト体積比率を増加させ、耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。
特許文献1、2の開示技術では、パーライト組織中のラメラ間隔の微細化による高硬度化や、パーライト組織ラメラ中のセメンタイト相の体積比率を増加させることにより、一定範囲の耐摩耗性の向上が図れる。しかし、海外の貨物鉄道では、近年、鉄道輸送のさらなる過密化が進み、レール頭部の摩耗が急速に進み、摩耗が進行した頭部内部における耐摩耗性の向上が求められるようになってきた。
そこで、頭部内部の耐摩耗性を向上させた高強度レールの開発が求められるようになってきた。この問題を解決するため、特許文献3〜4に示すような高強度レールが開発された。これらのレールの主な特徴は、頭部内部の耐摩耗性を向上させるため、微量な合金を添加しパーライト変態を制御するか、または、微量な合金をパーライト組織中に析出させることにより、頭部内部の硬さを向上させている。
特許文献3の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にBを添加することにより、頭部内部のパーライトの変態温度を制御し、頭部内部の硬さを向上させている。
特許文献4の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にV、Nを添加して、パーライト組織中にVの炭窒化物を析出させることにより、頭部内部の硬さを向上させている。
特許文献3、4の開示技術では、パーライト組織ラメラ中のセメンタイト相の体積比率を増加させることにより、耐摩耗性の向上を図ると同時に、頭部内部のパーライト変態温度の制御やパーライト組織の析出強化により、頭部内部の硬さを向上させ、摩耗が進行した頭部内部における耐摩耗性の向上を図るものである。しかし、頭部内部の硬さの向上は使用寿命の若干の向上は図れるものの、抜本的な使用寿命の改善には至らず、耐摩耗性を飛躍的に向上させる技術開発が課題となっていた。
特開昭57−198216号公報 特開平8−144016号公報 国際公開第96/028581号 特開2000−345296号公報 特開2002−226915号公報
本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、耐摩耗性を飛躍的に向上したレールを提供することを課題とする。
(1)質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P≦0.0250%、S≦0.0250%を含有し、さらに、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計で0.01〜1.00%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、頭部外郭表面を起点として深さ20mmまでの範囲の95%以上がパーライト組織であり、かつ、前記範囲の硬さがHv300〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性に優れたレール。
(2)さらに、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が被検面積1000μmあたり100〜1000個存在することを特徴とする(1)に記載のレール。
(3)また、上記(1)〜(2)のレールには、質量%で、さらに、a群〜i群の1群または2群以上を選択的に含有させることができる。
a群:Cr:0.10〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
b群:Co:0.01〜1.00%、
c群:B:0.0001〜0.0050%、
d群:Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%の1種または2種、
e群:V:0.01〜0.50%、Nb:0.0010〜0.0500%、Ti:0.0030〜0.0500%の1種または2種以上、
f群:Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%の1種または2種以上、
g群:Zr:0.0001〜0.0200%、
h群:Al:0.0100〜1.00%、
i群:N:0.0050〜0.0200%
本発明によれば、本実施形態に係るレールは、レール鋼の合金成分、組織、頭部の硬さを制御することで、レールの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、使用寿命を大きく向上させることが可能となる。特に本発明に係るレールは、海外の貨物鉄道で使用されるレールとして好適である。
炭化物を形成可能な合金元素と摩耗量の関係を示した図。 炭化物の粒径範囲と摩耗量の関係を示した図。 粒径0.5〜4.0μmの炭化物の個数(個/1000μm)と摩耗量との関係を示した図。 本発明の耐摩耗性に優れたレールの頭部断面表面位置での呼称および、パーライト組織を含む組織が必要な領域を示した図。 摩耗試験の概要を示した図。 摩耗試験片採取位置を示した図。 本発明例のレールと比較例のレールについて、鋼の炭素量と摩耗量との関係を示した図。 本発明例のレールにおいて炭化物を制御した発明例のレールと炭化物を制御していない発明例のレールの鋼の炭素量と摩耗量の関係を示した図。 本発明例のレールの粒径0.5〜4.0μmの炭化物の個数(個/1000μm)と摩耗量との関係を示した図。
以下に本発明を実施する形態として、耐摩耗性に優れたレールにつき、詳細に説明する。以下、組成における質量%は、単に%と記載する。
まず、本発明者らは、パーライト組織を主体とするレールの耐摩耗性を確保するために最低限必要な硬さを検討した。過共析鋼(1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S)を用いて、レールを熱間圧延、熱処理を行い、レール頭部の硬さを変化させたレールを試作し、レール頭部の硬さと耐摩耗性の関係を調査した。具体的には、レール頭部から採取した試験片による摩耗試験を行った。その結果、レール頭部において、耐摩耗性を確保するには、頭部外郭表面を起点として深さ20mmまでの範囲にあるパーライト組織を主体とする金属組織の硬さをHv300〜500の範囲に制御する必要があることを確認した。
なお、レール頭部とは、図4の符号3で示すように、レールを断面視したときに、レールの高さ方向中央に括れた部分よりも上側の部分をいう。また、頭部外郭表面とは、レール頭部3のうち、レールを正立させたときに上側を向く頭頂部1の表面と、頭部コーナー部2の表面とを合わせた面をいう。頭頂部1と頭部コーナー部2の位置関係は、頭頂部1がレール頭部の幅方向ほぼ中央に位置し、頭部コーナー部2が頭頂部1の両側に位置する関係にある。
次に、本発明者らは、パーライト組織を主体とするレールの耐摩耗性を飛躍的に向上させる方法を検討した。耐摩耗性を向上させるため、炭化物の適用を検討した。炭化物を形成する合金元素としては、微細な炭化物を生成し易いと考えられるTi、V、Zr、Nb、Hf、Ta、Wの合金元素を選択し、これら合金元素を含む鋼を溶解して鋳造し、熱間圧延を行い、恒温保持をする熱処理により、粗大な炭化物を生成させて、炭化物の硬さを調査した。なお、試験条件は下記に示すとおりである。
[炭化物硬さ試験]
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C
合金元素:Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ta、W
合金添加量:1.00%(各元素)
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1200℃、最終圧延温度:1000℃
熱処理条件 恒温保持:圧延後に900〜1000℃で60min保持した後、自然放冷した。
●硬さの測定条件
装置:ビッカース硬度計(荷重0.098N)
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
●炭化物の粒径測定
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●硬さ測定を実施する炭化物:粒径範囲が5.0〜10.0μmの炭化物について硬さ測定した。
その結果、添加する合金元素の種類によって炭化物の硬さに差異があることが判明した。具体的には、TiC:Hv3200、VC:Hv2900、ZrC:Hv2600、NbC:Hv2600、HfC:Hv2300、TaC:Hv2300、WC:Hv2000であった。
次に、本発明者らは、これらの炭化物を含むパーライト組織の耐摩耗性を評価した。過共析鋼(1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S)をベースに、炭化物を形成する合金元素(Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ta、W)をそれぞれ0.50%添加した鋼を溶解し、熱間圧延、熱処理を行い、炭化物を含むパーライト組織の鋼を製造し、耐摩耗性を評価した。
[炭化物を含むパーライト組織の摩耗試験]
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ta、W
合金添加量:0.50%(各元素)
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1250℃、最終圧延温度:1000℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:10℃/sec、開始温度:800℃、停止温度:580℃の条件で冷却。
●炭化物の粒径測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.1〜10.0μm
各鋼における単位面積当たりの炭化物の個数の計測結果:100〜3000個/1000μm(0.1〜10.0μmの範囲の炭化物を対象とした。)
●摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材4):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材5):パーライト鋼(Hv380)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル6から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
なお、本摩耗試験は実軌道を再現した評価試験である。これまでに炭素量1.0%のパーライト鋼の摩耗試験結果と実軌道の摩耗の相関を解明した結果、本試験の摩耗量が0.85gf以上が一般のパーライト鋼軌条の摩耗量であった。さらに、本試験で摩耗量が10%程度減少すると、実軌道で耐摩耗性の向上が確認されている。従って本摩耗試験では、摩耗量が10%以上減少(基準摩耗量:0.85gf)する0.75gfを評価基準として、耐摩耗性の向上の有無を判断した。
図1に摩耗試験の結果を示す。横軸は炭化物を形成した合金元素、縦軸は摩耗量で整理をした。その結果、合金の種類によって耐摩耗性が大きく変化することが確認された。具体的には炭化物の硬さが中程度のHf、Taの炭化物が分散しているパーライト鋼の耐摩耗性が最も優れていた。摩耗機構を解明した結果、炭化物の硬さが高い場合は、基地のパーライト組織との強度差が著しく大きくなり、基地と炭化物の界面にクラック等が生成し、摩耗を促進することが確認された。また、炭化物の硬さが低い場合は、炭化物自体の耐摩耗性が低く、摩耗抑制効果が少ないことが確認された。なお、単位面積当たりの炭化物の個数は、各鋼毎に100〜3000個/1000μmの範囲でばらついているが、この範囲内であれば、摩耗量へのばらつきの影響は少ない。
さらに、Hf、Taと同時に添加した場合に形成されるHfとTaの複合炭化物の耐摩耗性を調査したところ、HfとTaの複合炭化物は、Hf、Taを単独添加した場合と同等の効果があることが認められた。
このように、レールの摩耗量を低減するには、HfまたはTaの何れか一方又は両方を添加して炭化物として析出させることが有効であることが判明した。
次に、本実施形態のレールの限定理由について詳細に説明する。以下、鋼組成における質量%は、単に%と記載する。
(1)鋼の化学成分の限定理由
本実施形態のレールにおいて、鋼の化学成分の限定理由について詳細に説明する。
Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.75%未満になると、本成分系では、パーライト組織を主体とするレールに要求される最低限の強度や耐摩耗性が維持できない。また、初析フェライト組織が生成し、耐摩耗性が大幅に低下する。また、C量が1.20%を超えると、初析セメンタイト組織が生成し易くなり、パーライト組織の耐摩耗性が低下する。このため、C添加量を0.75〜1.20%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化するには、C添加量を0.80〜1.10%とすることが望ましい。
Siは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、レール頭部の硬さを上昇させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Si量が0.10%未満では、これらの効果が十分に期待できない。また、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成する。さらに、焼入性が著しく増加し、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Si添加量を0.10〜2.00%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐摩耗性を向上させるには、Si添加量を0.20〜1.50%とすることが望ましい。
Mnは、焼き入れ性を高め、パーライト変態を安定化すると同時に、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬さを確保し、耐摩耗性をより一層向上させる元素である。しかし、Mn量が0.10%未満では、その効果が小さく、軟質な初析フェライト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。また、Mn量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、レール頭部にベイナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Mn添加量を0.10〜2.00%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐摩耗性を向上させるには、Mn添加量を0.20〜1.50%とすることが望ましい。
Pは、鋼中に不可避的に含有される元素である。転炉での精錬を行うことによりその含有量を制御することが可能である。P含有量が0.0250%を超えると、パーライト組織が脆化し、塑性変形領域の延性が低下し、摩耗面に剥離が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、P含有量を0.0250%以下に限定した。なお、P添加量の下限は限定していないが、精錬工程での脱燐能力を考慮すると、P含有量は0.0020%程度が実際に製造する際の限界になると考えられる。
Sは、鋼中に不可避的に含有される元素である。溶銑鍋での脱硫を行うことによりその含有量を制御することが可能である。S含有量が0.0250%を超えると、粗大なMnS系硫化物の介在物が生成し易くなり、接触による塑性変形領域において応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、摩耗面に剥離が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、S含有量を0.0250%以下に限定した。なお、S添加量の下限は限定していなが、精錬工程での脱硫能力を考慮すると、S含有量は0.0020%程度が実際に製造する際の限界になると考えられる。
Hf、Taは、共に炭化物を形成し、パーライト組織を主体とする基地中に微細に分散析出し、耐摩耗性をより一層向上させる元素である。しかし、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計の量が0.01%未満では、炭化物の粒径や生成量を維持することが困難となり、耐摩耗性の向上が困難となる。また、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計の量が1.00%を超えると、炭化物自体が粗大化し、接触による塑性変形領域において応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しなくなる。また、塑性変形領域の延性が低下し、摩耗面に剥離が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計の添加量を0.01〜1.00%に限定した。なお、炭化物の粒径や生成量を安定的に確保するには、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計の添加量を0.20〜0.70%とすることが望ましい。
さらに、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織の硬さの増加による耐摩耗性および耐内部疲労損傷性の向上、靭性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、a群のCr、Mo、b群のCo、c群のB、d群のCu、Ni、e群のV、Nb、Ti、f群のMg、Ca、REM、g群のZr、h群のAl、i群のNの元素を必要に応じて1群または2群以上を添加してもよい。
a群のCr、Moは、平衡変態点を上昇させ、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、硬さを向上させる。b群のCoは、摩耗面のラメラ組織を微細化し、摩耗面の硬さを高める。c群のBは、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。d群のCu、Niは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、硬さを高め、パーライト組織の靭性を向上させる。e群のV、Nb、Tiは、熱間圧延やその後の冷却過程で生成した炭化物や窒化物の析出硬化により、パーライト組織の疲労強度を向上させる。また、再加熱時に炭化物や窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。f群のMg、Ca、REMは、MnS系硫化物を微細分散し、介在物から生成する内部疲労損傷を低減する。g群のZrは、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、初析セメンタイト組織やマルテンサイト組織の生成を抑制する。h群のAlは、共析変態温度を高温側へ移動させ、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、パーライト組織の耐摩耗性を向上させる。i群のNは、オーステナイト粒界に偏析することによりパーライト変態を促進させ、靭性を向上させることや熱間圧延後のその後の冷却課程でVの炭化物や窒化物の析出を促進させ、パーライト組織の耐疲労性を向上させることが主な添加目的である。
<a群>
Crは、平衡変態温度を上昇させ、過冷度の増加により、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Cr量が0.10%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬さを向上させる効果が全く見られなくなる。また、Cr量2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が著しく増加し、レール頭部にベイナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Cr添加量を0.10〜2.00%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐摩耗性を向上させるには、Cr添加量を0.20〜1.00%とすることが望ましい。
Moは、平衡変態温度を上昇させ、過冷度の増加により、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Mo量が0.01%未満ではその効果が小さく、レール鋼の硬さを向上させる効果が全く見られなくなる。また、Mo量が0.50%を超える過剰な添加を行うと、変態速度が著しく低下し、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Mo添加量を0.01〜0.50%に限定した。
<b群>
Coは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、ころがり面直下のパーライト組織のラメラ組織を微細化し、ころがり面の硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.01%未満では、ラメラ組織の微細化が促進せず、耐摩耗性の向上効果が期待できない。また、Co量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和し、添加量に応じたラメラ組織の微細化が図れない。また、合金添加コストの増大により経済性が低下する。このため、Co添加量を0.01〜1.00%に限定した。
<c群>
Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB))を形成し、パーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレールに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、B量が0.0001%未満では、その効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布に改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、脆性破壊を冗長し、レールの靭性が低下する。このため、B添加量を0.0001〜0.0050%に限定した。
<d群>
Cuは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、固溶強化により硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Cu添加量を0.01〜1.00%に限定した。
Niは、パーライト組織の靭性を向上させ、同時に、固溶強化により硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複合でNiTiの金属間化合物が微細に析出し、析出強化により軟化を抑制する元素である。また、Cu添加鋼において粒界の脆化を抑制する元素である。しかし、Ni量が0.01%未満では、これらの効果が著しく小さく、また、Ni量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Ni添加量を0.01〜1.00%に限定した。
<e群>
Vは、熱間圧延後の冷却過程で生成するVの炭・窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬さ(強度)を高め、頭部内部において耐疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、V量が0.01%未満では、パーライト組織のフェライト相中に析出する微細な炭・窒化物の個数が少なく、頭部内部の硬さの向上が認められない。また、V量が0.50%を超えると、微細なVの炭・窒化物の数が過剰となり、パーライト組織が脆化し、耐疲労損傷性が低下する。このため、V添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Nbは、熱間圧延後の冷却過程で生成したNb炭化物、Nb窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬さを高め、頭部内部において耐疲労損傷性を向上させる元素である。また、Ac点以下の温度域に再加熱された熱影響部において、低温度域から高温度域までNbの炭化物やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、Nb量が0.0010%未満では、これらの効果が期待できず、パーライト組織の硬さの向上は認められない。また、Nb量が0.0500%を超えると、Nbの炭化物や窒化物の析出硬化が過剰となり、パーライト組織自体が脆化し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Nb添加量を0.0010〜0.0500%に限定した。
Tiは、熱間圧延後の冷却過程で生成したTi炭化物、Ti窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬さを高め、頭部内部において耐疲労損傷性を向上させる元素である。また、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物、Tiの窒化物が溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0030%未満ではこれらの効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、Tiの窒化物が生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Ti添加量を0.0030〜0.0500%に限定した。
<f群>
Mgは、Sと結合して微細な硫化物を形成し、MgSがMnSを微細に分散させ、応力集中を緩和し、耐疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成し、さらに、CaSがMnSを微細に分散させ、応力集中を緩和し、耐疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物が生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Ca量を0.0005〜0.0200%に限定した。
REMは、脱酸・脱硫元素であり、添加によりREMのオキシサルファイド(REMS)を生成し、Mn硫化物系介在物の生成核となる。また、この核であるオキシサルファイド(REMS)の融点が高いため、圧延後のMn硫化物系介在物の延伸を抑制する。この結果、MnSを微細に分散させ、応力集中を緩和し、耐疲労損傷性を向上させる。しかし、REM量が0.0005%未満では、その効果が小さく、MnS系硫化物の生成核としては不十分となる。また、REM量が0.0500%を超えると、硬質なREMのオキシサルファイド(REMS)が生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、REM添加量を0.0005〜0.0500%に限定した。
なお、REMとはCe、La、PrまたはNd等の希土類金属である。上記添加量はこれらの全REMの添加量を限定したものである。全添加量の総和が上記範囲内であれば、単独、複合(2種類以上)のいずれの形態であっても同様な効果が得られる。
<g群>
Zrは、ZrO介在物とγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成するマルテンサイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%未満では、ZrO系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部にマルテンサイト組織が生成し易くなり、レールの耐疲労損傷性の向上が期待できない。また、Zr量が0.0200%を超えると、粗大なZr系介在物が多量に生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Zr添加量を0.0001〜0.0200%に限定した。
<h群>
Alは、脱酸材として機能する成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、パーライト組織の耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Al量が0.0100%未満では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成し、この粗大な析出物から疲労き裂が発生し、耐疲労損傷性が低下する。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下する。このため、Al添加量を0.0100〜1.00%に限定した。
<i群>
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、靭性を向上させるのに有効な元素である。また、NをVと同時に添加すると、熱間圧延後の冷却課程でVの炭窒化物の析出を促進させ、パーライト組織の硬さを高め、耐疲労性を向上させる。しかし、N量が0.0050%未満では、これらの効果が弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、疲労損傷が発生し易くなる。このため、N添加量を0.0050〜0.0200%に限定した。
上記のような成分組成で構成されるレール鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、次に、熱間圧延を経てレールとして製造される。さらに、必要に応じてレール頭部の金属組織や硬さ、炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御する目的から熱処理を行う。
(2)金属組織およびパーライト組織の必要範囲の限定理由
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として少なくとも20mm深さの範囲の95%(面積率)以上がパーライト組織に限定する理由について詳細に説明する。
まず、パーライト組織に限定した理由について説明する。
車輪と接触するレール頭部では耐摩耗性の確保が最も重要である。金属組織と耐摩耗性の関係を調査した結果、パーライト組織が最もよいことが確認された。また、パーライト組織は低合金で硬さが得られ易い。そこで、耐摩耗性を向上させる目的からパーライト組織に限定した。
次に、パーライト組織が面積率で95%以上の割合で含まれる金属組織(パーライト組織を含む組織)の必要範囲を、頭部外郭表面を起点として少なくとも20mm深さまでの範囲に限定した理由について説明する。
前記パーライト組織を含む組織の必要範囲が頭部外郭表面を起点として20mm未満では、レール頭部に要求される耐摩耗性の必要領域としては小さすぎて、十分なレール使用寿命の確保が困難となる。また、耐摩耗性をさらに向上させるには、頭部外郭表面を起点として深さ30mm程度までをパーライト組織を含む組織とすることが望ましい。
ここで、図4に本実施形態の耐摩耗性に優れたレールの頭部断面表面位置での呼称、および、パーライト組織を含む組織が必要な領域を示す。レール頭部3は、頭頂部1と、前記頭頂部1の両端に位置する頭部コーナー部2を有する。頭部コーナー部2の一方は、車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。
頭部コーナー部2および頭頂部1の表面を起点として深さ20mmまでの範囲を頭表部(3a、斜線部)と呼ぶ。図4に示すように、頭部コーナー部2及び頭頂部1の表面を起点として深さ20mmまでの頭表部3aに所定の硬さのパーライト組織を含む組織が配置されていれば、レールの耐摩耗性の確保が図れる。
したがって、パーライト組織を含む組織は、車輪とレールが主に接し、耐摩耗性が要求される頭表部3aに配置することが望ましく、これらの特性が必要とされないそれ以外の部分はパーライト組織以外の金属組織であってもよい。
また、本実施形態のレールの頭表部3aの金属組織は、上記限定のようなパーライト組織を含む組織であることが望ましい。しかし、レールの成分系や熱処理製造方法によっては、これらの組織中に、パーライト組織以外に、面積率で5%以下の微量な初析フェライト相、初析セメンタイト相、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入することがある。しかし、これらの組織が混入しても、頭部表面の耐摩耗性には大きな悪影響を及ぼさないため、本実施形態のレールの組織としては、5%以下の微量な初析フェライト相、初析セメンタイト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の混在も含んでいる。言い換えれば、本実施形態のレールのレール頭部の金属組織は、面積率で95%以上がパーライト組織であればよく、耐摩耗性を十分に確保するには、レール頭部の金属組織の98%以上をパーライト組織とすることが望ましい。
なお、前述した、頭部外郭表面を起点として少なくとも20mm深さの範囲の観察において、200倍の光学顕微鏡の視野で金属組織を観察し、前記各金属組織の面積を決定してパーライト組織の面積率を決定できる。また、光学顕微鏡の視野として10視野(10箇所)以上を用い、面積率の平均値を観察部位の面積率として用いることができる。
(3)パーライト組織を含む組織の硬さの限定理由
次に、本実施形態において、パーライト組織を含む組織の硬さをHv300〜500の範囲に限定した理由について説明する。パーライト組織を含む組織の硬さがHv300未満では、摩耗が進行し、レール頭部に要求される耐摩耗性の確保が困難となる。また、パーライト組織の硬さがHv500を超えると、パーライト組織を含む組織の脆化により、頭部表面において、車輪と接触する頭部表面で微小なき裂が発生し、耐表面損傷性の確保が困難となる。このため、パーライト組織を含む組織の硬さをHv300〜500の範囲に限定した。
なお、パーライト組織を含む組織の硬さの測定は、測定場所(例えば、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置)において、10点(10箇所)以上測定して平均値を硬さ値として採用することが望ましい。本発明ではパーライト組織が面積率で95%以上を占めるが、5%以下の範囲でその他組織(初析セメンタイト相、初析フェライト相、マルテンサイト組織、ベイナイト組織等)が存在するため、1点の測定ではパーライト組織を含む組織の硬さが代表できない場合がありえるためである。
(4)Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲の限定理由
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、耐摩耗性に寄与するTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径を0.5〜4.0μmの範囲に限定した理由について説明する。
本発明者らは、Hf、Taの炭化物、HfとTaの複合炭化物が分散しているパーライト鋼の耐摩耗性をさらに向上させる方法を検討した。過共析鋼(1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S)をベースに、Hf、Taをそれぞれ0.50%添加した鋼、HfとTaを合わせて0.50%添加した鋼を溶解し、熱間圧延、熱処理条件を調整し、炭化物の粒径範囲を変化させたパーライト鋼を製造し、耐摩耗性を評価した。
[炭化物の摩耗試験]
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Hf、Ta
合金添加量:0.50%
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1100〜1350℃、最終圧延温度:800〜1100℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:2〜20℃/sec、開始温度:700〜900℃、停止温度:550〜650℃の条件で冷却。
●炭化物粒径の測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.1〜10.0μm
●摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材1):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材2):パーライト鋼(Hv380)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル3から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
本摩耗試験は実軌道を再現した評価試験である。これまでに炭素量1.0%のパーライト鋼の摩耗試験結果と実軌道の摩耗の相関を解明した結果、本試験の摩耗量が0.85gf以上が一般のパーライト鋼軌条の摩耗量であった。本試験で摩耗量が15%程度減少すると、実軌道で耐摩耗性が大幅に向上することが確認されている。本摩耗試験では、摩耗量が15%以上減少(基準摩耗量:0.85gf)する0.70gfを評価基準として、複合炭化物の粒径範囲を制御した際のさらなる耐摩耗性の向上の有無を判断した。
図2に摩耗試験の結果を示す。横軸は炭化物の粒径範囲、縦軸は摩耗量で整理をした。その結果、Hf、Taの炭化物、HfとTaの複合炭化物共に、炭化物の粒径範囲によって耐摩耗性が大きく変化することが確認された。
具体的には、炭化物の粒径範囲に好適な範囲が存在することが明らかとなった。また、炭化物の粒径範囲が好適な範囲よりも小さい場合や炭化物の粒径範囲が好適な範囲よりも大きい場合には耐摩耗性がやや低下することが明らかになった。
摩耗機構を解明した結果、粒径が0.5μm以上になると、車輪接触による塑性変形が抑制され、摩耗面の炭化物が基地のパーライト組織に埋まることがなく、耐摩耗性が向上することが明らかとなった。一方、粒径が4.0μm以下になると、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成しにくくなり、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ちず、耐摩耗性が向上することが明らかとなった。このため、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径は、好ましくは0.5〜4.0μmの範囲に限定するとよい。
好適な粒径範囲は、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の種類に関係なく、0.5〜4.0μmに制御することにより、耐摩耗性をより一層向上させることが可能になる。
(5)粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数の限定理由
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、耐摩耗性に寄与するTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を被検面積1000μmあたり100〜1000個に限定した理由について説明する。
本発明者らは、Hf、Taの炭化物、HfとTaの複合炭化物が分散しているパーライト鋼の耐摩耗性を安定的に向上させる方法を検討した。過共析鋼(1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S)をベースに、Hf、Taをそれぞれ0.50%添加した鋼、HfとTaを合わせて0.50%添加した鋼を溶解し、熱間圧延、熱処理条件を調整し、炭化物(粒径範囲0.5〜4.0μm)の単位面積当たりの個数を変化させたパーライト鋼を製造し、上記(4)と同一の方法にて耐摩耗性を評価した。
[炭化物の摩耗試験]
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Hf、Ta
合金添加量:0.50%
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1100〜1350℃、最終圧延温度:800〜1100℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:2〜20℃/sec、開始温度:700〜900℃、停止温度:550〜650℃の条件で冷却。
●炭化物粒径の測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.5〜4.0μm
各鋼における単位面積当たりの炭化物の個数の計測結果:30〜1300個/1000μm(0.5〜4.0μmの範囲の炭化物を対象とした。)
本摩耗試験は実軌道を再現した評価試験である。これまでに炭素量1.0%のパーライト鋼の摩耗試験結果と実軌道の摩耗の相関を解明した結果、本試験の摩耗量が0.85gf以上が一般のパーライト鋼軌条の摩耗量であった。本試験で摩耗量が15%程度減少すると、実軌道で耐摩耗性が大幅に向上することが確認されている。本試験では、摩耗量が15%以上減少(基準摩耗量:0.85gf)する0.70gfを評価基準として、複合炭化物の単位面積当たりの個数を制御した際のさらなる耐摩耗性の向上の有無を判断した。
図3に摩耗試験の結果を示す。横軸は炭化物の単位面積当たりの個数(個/1000μm)、縦軸は摩耗量で整理をした。その結果、Hf、Taの炭化物、HfとTaの複合炭化物共に、炭化物の単位面積当たりの個数によって耐摩耗性が大きく変化することが確認された。
具体的には、炭化物の単位面積当たりの個数が小さい場合、炭化物の単位面積当たりの個数が大きい場合には耐摩耗性が低下し、耐摩耗性をより一層向上させるには、炭化物の単位面積当たりの個数に最適な範囲が存在することが明らかとなった。
摩耗機構を解明した結果、炭化物の生成量が被検面積1000μmあたり100個以上になると、炭化物の存在量が高まり、耐摩耗性がより一層向上した。また、炭化物の生成量が被検面積1000μmあたり1000個以下になると、車輪接触による塑性変形領域の延性が向上し、摩耗面に剥離が起こらず、耐摩耗性が向上した。このように、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を被検面積1000μmあたり100〜1000個にすることで、耐摩耗性をより一層向上できることが判明した。
炭化物の好適な個数密度範囲は、Hf、Taの炭化物、HfとTaの複合炭化物共に、炭化物の種類に関係なく、100〜1000個/1000μmに制御することにより、耐摩耗性をより一層向上させることが可能になる。
以上説明したように、パーライト組織のレールの耐摩耗性を向上させるには、Hf、Taを添加し、パーライト組織中にHfの炭化物、Taの炭化物、TaとHfの複合炭化物を分散させることが好適であり、さらに耐摩耗性を向上させるには、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御することが好適である。
すなわち、本実施形態に係るレールは、レール鋼の合金成分、組織、頭部の硬さを制御し、さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御することにより、海外の貨物鉄道で使用される場合のレールの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、使用寿命を大きく向上させることが可能となる。
粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を被検面積1000μmあたり100〜1000個にすることで、耐摩耗性をより一層向上できる。炭化物の生成量が被検面積1000μmあたり100個以上にすることで、炭化物自体の存在量が充分になり、耐摩耗性を大幅に向上できる。また、炭化物の生成量が被検面積1000μmあたり1000個以下にすることで、車輪接触による塑性変形領域の延性が向上し、摩耗面に剥離が防止され、耐摩耗性が向上する。
耐摩耗性を更に確実に向上させるには、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を被検面積1000μmあたり400〜800個に制御することが望ましい。
上記の限定は、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の種類に関係なく、炭化物の単位面積当たりの個数を最適な範囲に制御することにより、耐摩耗性がより一層向上する。
なお、粒径および個数の算定は下記の方法を用いればよい。
[炭化物の粒径および個数の算定方法]
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
測定位置:頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの任意の点。
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定。
個数の算定:20視野の観察を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物数をカウントし、1000μmあたりの数に換算し、その平均値を求める。
最終分析:粒径の測定、個数の算定の結果から、炭化物の粒径範囲と個数の分析を行い、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を算定する。
(6)本実施形態のレールの製造方法
本実施形態のレールは、成分調整後の溶鋼を鋳造してブルームとし、ブルームを熱間圧延してレール形状に成形する。さらに、必要に応じて、レール頭部の金属組織の制御、硬さの制御、さらには、炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御する目的から熱間圧延後に熱処理を行う。
(6−1)熱間圧延条件および熱処理条件
熱間圧延条件、熱処理条件については、パーライト組織を維持し、レール頭部の硬さを制御するため、必要に応じて、下記に示す軌条製造の一般的な条件範囲で行うことが望ましい。
まず、熱間圧延条件について説明する。
まず、ブルーム再加熱温度について説明する。ブルーム再加熱温度が1000℃未満では、レール圧延において熱間での造形性が確保できす、圧延疵が発生し、レール製造が困難となる。また、再加熱温度が1400℃を超えると、鋼の炭素量や合金量によっては、融点が低下し、鋼が溶融し、レール製造が困難となるため、ブルーム再加熱温度は、1000〜1400℃の範囲が好ましい。
次に、最終圧延温度について説明する。
最終圧延温度が750℃未満では、圧延直後にパーライト変態が開始し、その後の熱処理において高硬度化が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、最終圧延温度が1100℃を超えると、圧延後のオーステナイト粒が粗大化し、焼入れ性が大幅に増加し、レール頭部に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。また、レールに必要な最低限の延性が確保できないため、最終圧延温度は750〜1100℃の範囲が好ましい。
次に、熱処理条件について説明する。
まず、冷却速度について説明する。
冷却速度が1℃/sec未満では、パーライト変態温度が上昇し、その後の熱処理において高硬度化が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、冷却速度が20℃/secを超えると、本成分系では、レール頭部において、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下するため、1〜20℃/secの範囲が好ましい。
次に、冷却開始温度について説明する。
冷却開始温度が700℃未満では、本成分系では、加速冷却前の高温度域でパーライト組織が生成し、高硬度化が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、炭素量が比較的多い鋼では、初析セメンタイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。また、開始温度が900℃を超えると、焼入れ性が大幅に増加し、レール頭部に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が生成し、耐摩耗性が低下するため700〜900℃の範囲が好ましい。
次に、冷却停止温度について説明する。
冷却停止温度が650℃を超えると、本成分系では、冷却直後の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成する。その結果、頭部の硬さが確保できず、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。また、500℃未満まで加速冷却を行うと、本成分系では、冷却直後に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が多く生成する。その結果、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となるため、500〜650℃の範囲が好ましい。
(6−2)Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御する熱間圧延条件
さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御するには、Ta、Hfの添加量に応じて上記の熱間圧延、熱処理条件を下記の範囲に変更することが望ましい。
まず、熱間圧延条件について説明する。
まず、ブルーム再加熱温度について説明する。
ブルーム再加熱温度が1200℃未満では、Ta、Hfのオーステナイト中の固溶量が確保できす、その後の圧延中において、炭化物の生成量が低下し、パーライト組織中のTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成量を確保することが困難となる。その結果、耐摩耗性が向上しない。また、再加熱温度が1300℃を超えると、Ta、Hfのオーステナイト中の固溶量が過剰となり、その後の圧延中において、炭化物の生成量が増加し、さらに、炭化物の粒径も粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において剥離や応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、耐摩耗性が向上しないため、1200〜1300℃の範囲が好ましい。
次に、最終圧延温度について説明する。
最終圧延温度が850℃未満では、圧延直後にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成が促進され、炭化物の生成量が増加する。その結果、車輪接触による塑性変形領域の延性が低下し、剥離が生成し、耐摩耗性が向上しない。また、最終圧延温度が1000℃を超えると、圧延後にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径が粗大化し、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しないため、850〜1000℃の範囲が好ましい。
次に、熱処理条件について説明する。
まず、冷却速度について説明する。
冷却速度が3℃/sec未満では、冷却中にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が促進され、炭化物の粒径が粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しない。また、冷却速度が15℃/secを超えると、冷却中にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が不十分となる。その結果、炭化物の粒径が微細化し、車輪接触による塑性変形により、摩耗面の炭化物が基地のパーライト組織に埋まり、耐摩耗性に寄与しないため、3〜15℃/secの範囲が好ましい。
次に、冷却開始温度について説明する。
冷却開始温度が750℃未満では、冷却開始前にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が促進され、炭化物の粒径が粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しない。また、開始温度が850℃を超えると、冷却開始前にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成が不十分となる。その結果、炭化物の量が不足し、耐摩耗性に寄与しないため、750〜850℃の範囲が好ましい。
次に、冷却停止温度について説明する。
冷却停止温度が650℃を超えると、本成分系では、冷却直後の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成する。その結果、頭部の硬さが確保できず、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。また、500℃未満まで加速冷却を行うと、本成分系では、冷却直後に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が多く生成する。その結果、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となるため、500〜650℃の範囲が好ましい。
レールの圧延条件については特に限定しない。レール頭部の硬さを確保するためには、通常のレールの孔型圧延で最終圧延温度を制御することで十分である。なお、圧延方法は例えば、特許文献5等に記載されている方法を参考にして、主としてパーライト組織が得られるようにすればよい。すなわち、鋼片を粗圧延した後、リバース圧延機による中間圧延を複数パスに渡って行い、続いて連続圧延機による仕上げ圧延を2パス以上行う。仕上げ圧延の最終圧延時に上記の温度範囲に制御すればよい。
また、レールの熱処理冷媒については特に限定しない。耐摩耗性を付与するため、硬さを制御するには、空気噴射冷却、ミスト冷却、水及び空気の混合噴射冷却、あるいはこれらの組み合わせにより、熱処理時のレールの冷却速度を制御することが望ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。
表1A〜表1Dに本発明レールの化学成分と諸特性を示す。表1A〜表1Dには、化学成分値、頭部のミクロ組織、頭部の硬さ、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態を示す。さらに、図5に示す方法で行った摩耗試験結果も併記した。尚、頭部のミクロ組織は、パーライト組織の場合、面積率で5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入しているものも含んでいる。
表2A〜表2Bに比較レールの化学成分と諸特性を示す。表2A〜表2Bには、化学成分値、頭部のミクロ組織、頭部の硬さ、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態を示す。さらに、図5に示す方法で行った摩耗試験結果も併記した。尚、頭部のミクロ組織は、パーライト組織の場合、面積率で5%以下の微量な初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入しているものも含んでいる。
表1A〜表1D、表2A〜表2Bに示した本発明例および比較例の製造工程および製造条件の概略は下記に示すとおりである。
●全体工程
溶鋼→成分調整→鋳造(ブルーム)→再加熱→熱間圧延→熱処理。
また、本発明例及び比較例の製造条件の概略は下記に示すとおりである。
●熱間圧延条件
再加熱温度:1000〜1400℃、最終圧延温度:750〜1100℃
●熱処理条件:熱間圧延→冷却
冷却速度:1〜20℃/sec、冷却開始温度:700〜900℃、冷却停止温度:500〜650℃
さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御するには、上記の熱間圧延、熱処理を下記の条件で行った。
●熱間圧延条件
再加熱温度:1200〜1300℃、最終圧延温度:750〜1100℃
●熱処理条件:熱間圧延→冷却
冷却速度:3〜15℃/sec、冷却開始温度:750〜850℃、冷却停止温度:500〜650℃
なお、表3A及び表3Bには本発明レール(表1A〜表1D)の製造条件の一部を記載している。製造条件の最適化により表1A〜表1Dに記載した特性のレールを製造することが可能である。また、製造条件をさらに最適化することにより、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御することが可能となり、さらなる耐摩耗性の改善が可能ある。
表1A〜表1D及び表2A〜表2Bに示した本発明例のレールおよび比較例のレールの詳細は下記に示すとおりである。
(1)本発明レール(60本)
発明例A1〜A13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35,37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59:化学成分、頭部のミクロ組織、頭部の硬さが本願発明範囲内にあることが確認されたレール。
上記以外の発明例:化学成分、頭部のミクロ組織、頭部の硬さ、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態が本願発明範囲内にあることが確認されたレール。
(2)比較レール(22本)
比較例B1〜B8(8本):C、Si、Mn、P、Sの添加値が本願発明範囲外のレール。一部のレールは頭部のミクロ組織または頭部の硬さが本願発明範囲外であった。
比較例B9〜B22(14本):Hf、Taのいずれか1種または2種の合計の添加量が本願発明範囲外のレール。
なお、表1A〜表1D及び表2A〜表2B並びに表3A〜表3Bにおいて、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態の欄において、「△」と記載されているものは、耐摩耗性の向上に基本的に必要なTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が好適な範囲内「粒径範囲:0.1〜10.0μm、単位面積当たりの個数:100〜3000個/1000μm」であるが、さらに好ましい範囲内「粒径:0.5〜4.0μm、単位面積当たりの個数:100〜1000個/1000μm」は満たさないことを意味する。
また、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態の欄において、「○」と記載されているものは、耐摩耗性のさらなる向上に必要なTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の複合炭化物が好適な範囲内「粒径:0.5〜4.0μm、単位面積当たりの個数:100〜1000個/1000μm」にあることを意味し、単位面積当たりの個数を併記した。
[摩耗試験]
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材4):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材5):パーライト鋼(Hv380)
試験片採取位置:頭部外郭表面下2mmに相当する位置(頭部表面、図6参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル6から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
[レール頭部の断面硬さの測定方法]
測定装置:ビッカース硬度計(荷重98N)
測定用試験片採取:レール頭部の横断面からサンプル切り出し
事前処理:横断面を粒径1μmのダイヤモンド砥粒で研磨
測定方法:JIS Z 2244に準じて測定
硬さの算定:
頭表面下2mm:図4に示す部位の表面(表面下2mm)の任意断面において20点の測定を行い、その平均値を当該部位の硬さとした。
頭表面下20mm:図4に示す部位の表面(表面下20mm)の任意断面において20点の測定を行い、その平均値を当該部位の硬さとした。
表1A〜表1D及び表2A〜表2Bに示すように、本発明例のレール(A1〜A60)は、比較例のレール(B1〜B8)と比べて、鋼のC、Si、Mn、P、Sの添加量を限定範囲内に収めることにより、初析フェライト相、初析セメンタイト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の生成を抑制し、頭部をパーライト組織とした。さらに、本発明例のレール(A1〜A60)は、比較例のレール(B9〜B22)と比べて、鋼のHf、Taのいずれか1種または2種の合計の添加量を限定範囲内に収めることにより、耐摩耗性が向上した。レールB9〜B22は、Hf、Taの合計量が好適な範囲(粒径範囲:0.1〜10.0μm、単位面積当たりの個数:100〜3000個/1000μm)から外れたため、耐摩耗性に有効な炭化物の粒径や生成量を維持することが困難となり、耐摩耗性が低下した。
表2A〜表2B中の「炭化物粗大化」とは、添加量の増加により、炭化物が粗大化し、その結果、Hf、Taの合計量が好適な範囲から外れ、車輪接触による塑性変形領域において応力集中に伴う粗大なボイドが生成したため、耐摩耗性が低下したものである。また、「炭化物微細・少量化」とは、添加量の低下により、炭化物が微細化、さらには少量化し、その結果、Hf、Taの合計量が好適な範囲から外れ、耐摩耗性に有効な炭化物を維持できず、耐摩耗性が低下したものである。
また、表2A〜表2B中のTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態の欄において、「×」と記載されているものは、耐摩耗性の向上に基本的に必要なTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が好適な範囲「粒径範囲:0.1〜10.0μm、単位面積当たりの個数:100〜3000個/1000μm」から外れたことを意味する。
図7に、本発明例のレール(A1〜A60)は、比較例のレール(B1〜B22)の摩耗試験結果を鋼の炭素量との関係で整理して示す。なお、図7の中には、本試験における一般のパーライト鋼軌条の摩耗試験結果をベースに、炭素量と摩耗量の関係において、その下限値を併記した。
同一炭素量で比較すると、本発明例のレールは比較例のレールと比較して摩耗量が少なく、耐摩耗性が向上していることがわかる。
一般の炭素量0.75〜1.20%のパーライト鋼軌条(基準)と比較して、10%以上の耐摩耗性の改善効果を有していることがわかる。
さらに、図8に、本発明例のレール(A13〜60)において炭化物を制御した発明例のレールと炭化物を制御していない発明例のレールの鋼の炭素量と摩耗量の関係を示す。
炭化物を制御した発明例のレール(A14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36,38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60)は、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲やその単位面積当たりの個数を制御することにより、炭化物を制御していない発明例のレール(A13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35,37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59)と比較して、耐摩耗性をより向上させることができることがわかる。
図9に、本発明例のレール(A38、40、42、44、46、48、50)の粒径0.5〜4.0μmの炭化物の個数と摩耗量の関係を示す。Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の個数を被検面積1000μmあたり400〜800個に制御することで、耐摩耗性をより一層向上させることができることがわかる。
なお、本摩耗試験は実軌道を再現した評価試験である。これまでに炭素量1.0%のパーライト鋼の摩耗試験結果と実軌道の摩耗の相関を解明した結果、本試験の摩耗量が0.85gf以上が一般のパーライト鋼軌条の摩耗量であった。ここでは、摩耗量が25%以上減少(基準摩耗量:0.85gf)する0.62gfを評価基準として、複合炭化物の個数を厳密に制御した際のさらなる耐摩耗性の向上の有無を判断した。
また、表3A〜表3Bに示すように、頭部の熱間圧延、熱処理をある一定の条件で行い、初析セメンタイト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織の生成を抑制し、パーライト組織の硬さを確保することにより、耐摩耗性を向上させることができることがわかる。さらに、熱間圧延、熱処理の条件を制御することにより、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲やその単位面積当たりの個数を制御し、耐摩耗性をより一層向上できることがわかる。
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1:頭頂部、2:頭部コーナー部、3:レール頭部、3a:頭表部(頭部コーナー部および頭頂部の表面を起点として深さ20mmまでの範囲、斜線部)、4:レール材、5:車輪材、6:冷却用エアーノズル。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P≦0.0250%、S≦0.0250%を含有し、さらに、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計で0.01〜1.00%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、頭部外郭表面を起点として深さ20mmまでの範囲の95%以上がパーライト組織であり、かつ、前記範囲の硬さがHv300〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性に優れたレール。
  2. さらに、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が被検面積1000μmあたり100〜1000個存在することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性に優れたレール。
  3. 質量%で、さらに、
    a群:Cr:0.10〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
    b群:Co:0.01〜1.00%、
    c群:B:0.0001〜0.0050%、
    d群:Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%の1種または2種、
    e群:V:0.01〜0.50%、Nb:0.0010〜0.0500%、Ti:0.0030〜0.0500%の1種または2種以上、
    f群:Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%の1種または2種以上、
    g群:Zr:0.0001〜0.0200%、
    h群:Al:0.0100〜1.00%、
    i群:N:0.0050〜0.0200%
    の1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れたレール。
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