JP2017088929A - 耐摩耗性に優れたレール - Google Patents
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Abstract
Description
(2)さらに、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が被検面積1000μm2あたり100〜1000個存在することを特徴とする(1)に記載のレール。
(3)また、上記(1)〜(2)のレールには、質量%で、さらに、a群〜i群の1群または2群以上を選択的に含有させることができる。
a群:Cr:0.10〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
b群:Co:0.01〜1.00%、
c群:B:0.0001〜0.0050%、
d群:Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%の1種または2種、
e群:V:0.01〜0.50%、Nb:0.0010〜0.0500%、Ti:0.0030〜0.0500%の1種または2種以上、
f群:Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%の1種または2種以上、
g群:Zr:0.0001〜0.0200%、
h群:Al:0.0100〜1.00%、
i群:N:0.0050〜0.0200%
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C
合金元素:Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ta、W
合金添加量:1.00%(各元素)
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1200℃、最終圧延温度:1000℃
熱処理条件 恒温保持:圧延後に900〜1000℃で60min保持した後、自然放冷した。
●硬さの測定条件
装置:ビッカース硬度計(荷重0.098N)
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
●炭化物の粒径測定
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●硬さ測定を実施する炭化物:粒径範囲が5.0〜10.0μmの炭化物について硬さ測定した。
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ta、W
合金添加量:0.50%(各元素)
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1250℃、最終圧延温度:1000℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:10℃/sec、開始温度:800℃、停止温度:580℃の条件で冷却。
●炭化物の粒径測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.1〜10.0μm
各鋼における単位面積当たりの炭化物の個数の計測結果:100〜3000個/1000μm2(0.1〜10.0μmの範囲の炭化物を対象とした。)
●摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材4):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材5):パーライト鋼(Hv380)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル6から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
本実施形態のレールにおいて、鋼の化学成分の限定理由について詳細に説明する。
Crは、平衡変態温度を上昇させ、過冷度の増加により、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Cr量が0.10%未満ではその効果は小さく、レール鋼の硬さを向上させる効果が全く見られなくなる。また、Cr量2.00%を超える過剰な添加を行うと、焼入れ性が著しく増加し、レール頭部にベイナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Cr添加量を0.10〜2.00%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐摩耗性を向上させるには、Cr添加量を0.20〜1.00%とすることが望ましい。
Coは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、ころがり面直下のパーライト組織のラメラ組織を微細化し、ころがり面の硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.01%未満では、ラメラ組織の微細化が促進せず、耐摩耗性の向上効果が期待できない。また、Co量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和し、添加量に応じたラメラ組織の微細化が図れない。また、合金添加コストの増大により経済性が低下する。このため、Co添加量を0.01〜1.00%に限定した。
Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB)6)を形成し、パーライト変態の促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、頭表面から内部までより均一な硬度分布をレールに付与し、レールを高寿命化する元素であるが、B量が0.0001%未満では、その効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布に改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、脆性破壊を冗長し、レールの靭性が低下する。このため、B添加量を0.0001〜0.0050%に限定した。
Cuは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、固溶強化により硬さを向上させ、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、0.01%未満ではその効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。このため、Cu添加量を0.01〜1.00%に限定した。
Vは、熱間圧延後の冷却過程で生成するVの炭・窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬さ(強度)を高め、頭部内部において耐疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、V量が0.01%未満では、パーライト組織のフェライト相中に析出する微細な炭・窒化物の個数が少なく、頭部内部の硬さの向上が認められない。また、V量が0.50%を超えると、微細なVの炭・窒化物の数が過剰となり、パーライト組織が脆化し、耐疲労損傷性が低下する。このため、V添加量を0.01〜0.50%に限定した。
Mgは、Sと結合して微細な硫化物を形成し、MgSがMnSを微細に分散させ、応力集中を緩和し、耐疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、0.0005%未満ではその効果は弱く、0.0200%を超えて添加すると、Mgの粗大酸化物が生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定した。
Zrは、ZrO2介在物とγ−Feとの格子整合性が良いため、γ−Feが凝固初晶である高炭素レール鋼の凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成するマルテンサイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%未満では、ZrO2系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部にマルテンサイト組織が生成し易くなり、レールの耐疲労損傷性の向上が期待できない。また、Zr量が0.0200%を超えると、粗大なZr系介在物が多量に生成し、応力集中により、疲労き裂が生成し、耐疲労損傷性が低下する。このため、Zr添加量を0.0001〜0.0200%に限定した。
Alは、脱酸材として機能する成分である。また、共析変態温度を高温側へ移動させる元素であり、初析セメンタイト組織の生成を抑制し、パーライト組織の耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Al量が0.0100%未満では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成し、この粗大な析出物から疲労き裂が発生し、耐疲労損傷性が低下する。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下する。このため、Al添加量を0.0100〜1.00%に限定した。
Nは、オーステナイト粒界に偏析することにより、オーステナイト粒界からのパーライト変態を促進させ、主に、パーライトブロックサイズを微細化することにより、靭性を向上させるのに有効な元素である。また、NをVと同時に添加すると、熱間圧延後の冷却課程でVの炭窒化物の析出を促進させ、パーライト組織の硬さを高め、耐疲労性を向上させる。しかし、N量が0.0050%未満では、これらの効果が弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、疲労損傷が発生し易くなる。このため、N添加量を0.0050〜0.0200%に限定した。
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として少なくとも20mm深さの範囲の95%(面積率)以上がパーライト組織に限定する理由について詳細に説明する。
まず、パーライト組織に限定した理由について説明する。
車輪と接触するレール頭部では耐摩耗性の確保が最も重要である。金属組織と耐摩耗性の関係を調査した結果、パーライト組織が最もよいことが確認された。また、パーライト組織は低合金で硬さが得られ易い。そこで、耐摩耗性を向上させる目的からパーライト組織に限定した。
次に、本実施形態において、パーライト組織を含む組織の硬さをHv300〜500の範囲に限定した理由について説明する。パーライト組織を含む組織の硬さがHv300未満では、摩耗が進行し、レール頭部に要求される耐摩耗性の確保が困難となる。また、パーライト組織の硬さがHv500を超えると、パーライト組織を含む組織の脆化により、頭部表面において、車輪と接触する頭部表面で微小なき裂が発生し、耐表面損傷性の確保が困難となる。このため、パーライト組織を含む組織の硬さをHv300〜500の範囲に限定した。
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、耐摩耗性に寄与するTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径を0.5〜4.0μmの範囲に限定した理由について説明する。
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Hf、Ta
合金添加量:0.50%
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1100〜1350℃、最終圧延温度:800〜1100℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:2〜20℃/sec、開始温度:700〜900℃、停止温度:550〜650℃の条件で冷却。
●炭化物粒径の測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.1〜10.0μm
●摩耗試験
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材1):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材2):パーライト鋼(Hv380)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル3から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
次に、本実施形態において、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、耐摩耗性に寄与するTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を被検面積1000μm2あたり100〜1000個に限定した理由について説明する。
●溶解実験
ベース鋼成分:1.00%C−0.50%Si−0.70%Mn−0.0150%P−0.0120%S
合金元素:Hf、Ta
合金添加量:0.50%
●熱間圧延・熱処理条件
熱間圧延条件 再加熱温度:1100〜1350℃、最終圧延温度:800〜1100℃
熱処理条件 熱間圧延後、冷却速度:2〜20℃/sec、開始温度:700〜900℃、停止温度:550〜650℃の条件で冷却。
●炭化物粒径の測定
事前処理:断面をダイヤモンド研磨後、ナイタールエッチングして炭化物を現出させた。
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
粒径測定:観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定した。
●炭化物粒径
測定対象の粒径範囲:0.5〜4.0μm
各鋼における単位面積当たりの炭化物の個数の計測結果:30〜1300個/1000μm2(0.5〜4.0μmの範囲の炭化物を対象とした。)
すなわち、本実施形態に係るレールは、レール鋼の合金成分、組織、頭部の硬さを制御し、さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御することにより、海外の貨物鉄道で使用される場合のレールの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、使用寿命を大きく向上させることが可能となる。
上記の限定は、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の種類に関係なく、炭化物の単位面積当たりの個数を最適な範囲に制御することにより、耐摩耗性がより一層向上する。
[炭化物の粒径および個数の算定方法]
測定装置:走査型電子顕微鏡 倍率:1000〜2000倍
測定位置:頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの任意の点。
粒径測定:走査型顕微鏡観察により個々の炭化物の分析を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物のみ選択し、その面積を求め、面積に相当する円の直径で粒径を算定。
個数の算定:20視野の観察を行い、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物数をカウントし、1000μm2あたりの数に換算し、その平均値を求める。
最終分析:粒径の測定、個数の算定の結果から、炭化物の粒径範囲と個数の分析を行い、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の単位面積当たりの個数を算定する。
本実施形態のレールは、成分調整後の溶鋼を鋳造してブルームとし、ブルームを熱間圧延してレール形状に成形する。さらに、必要に応じて、レール頭部の金属組織の制御、硬さの制御、さらには、炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御する目的から熱間圧延後に熱処理を行う。
熱間圧延条件、熱処理条件については、パーライト組織を維持し、レール頭部の硬さを制御するため、必要に応じて、下記に示す軌条製造の一般的な条件範囲で行うことが望ましい。
まず、ブルーム再加熱温度について説明する。ブルーム再加熱温度が1000℃未満では、レール圧延において熱間での造形性が確保できす、圧延疵が発生し、レール製造が困難となる。また、再加熱温度が1400℃を超えると、鋼の炭素量や合金量によっては、融点が低下し、鋼が溶融し、レール製造が困難となるため、ブルーム再加熱温度は、1000〜1400℃の範囲が好ましい。
最終圧延温度が750℃未満では、圧延直後にパーライト変態が開始し、その後の熱処理において高硬度化が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、最終圧延温度が1100℃を超えると、圧延後のオーステナイト粒が粗大化し、焼入れ性が大幅に増加し、レール頭部に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が生成し、耐摩耗性が低下する。また、レールに必要な最低限の延性が確保できないため、最終圧延温度は750〜1100℃の範囲が好ましい。
まず、冷却速度について説明する。
冷却速度が1℃/sec未満では、パーライト変態温度が上昇し、その後の熱処理において高硬度化が図れず、耐摩耗性を確保できない。また、冷却速度が20℃/secを超えると、本成分系では、レール頭部において、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下するため、1〜20℃/secの範囲が好ましい。
次に、冷却開始温度について説明する。
冷却停止温度が650℃を超えると、本成分系では、冷却直後の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成する。その結果、頭部の硬さが確保できず、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。また、500℃未満まで加速冷却を行うと、本成分系では、冷却直後に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が多く生成する。その結果、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となるため、500〜650℃の範囲が好ましい。
さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御するには、Ta、Hfの添加量に応じて上記の熱間圧延、熱処理条件を下記の範囲に変更することが望ましい。
まず、ブルーム再加熱温度について説明する。
ブルーム再加熱温度が1200℃未満では、Ta、Hfのオーステナイト中の固溶量が確保できす、その後の圧延中において、炭化物の生成量が低下し、パーライト組織中のTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成量を確保することが困難となる。その結果、耐摩耗性が向上しない。また、再加熱温度が1300℃を超えると、Ta、Hfのオーステナイト中の固溶量が過剰となり、その後の圧延中において、炭化物の生成量が増加し、さらに、炭化物の粒径も粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において剥離や応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、耐摩耗性が向上しないため、1200〜1300℃の範囲が好ましい。
最終圧延温度が850℃未満では、圧延直後にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成が促進され、炭化物の生成量が増加する。その結果、車輪接触による塑性変形領域の延性が低下し、剥離が生成し、耐摩耗性が向上しない。また、最終圧延温度が1000℃を超えると、圧延後にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径が粗大化し、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しないため、850〜1000℃の範囲が好ましい。
まず、冷却速度について説明する。
冷却速度が3℃/sec未満では、冷却中にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が促進され、炭化物の粒径が粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しない。また、冷却速度が15℃/secを超えると、冷却中にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が不十分となる。その結果、炭化物の粒径が微細化し、車輪接触による塑性変形により、摩耗面の炭化物が基地のパーライト組織に埋まり、耐摩耗性に寄与しないため、3〜15℃/secの範囲が好ましい。
冷却開始温度が750℃未満では、冷却開始前にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の成長が促進され、炭化物の粒径が粗大化する。その結果、車輪接触による塑性変形領域において、炭化物の周囲に応力集中に伴う粗大なボイドが生成し、炭化物が基地パーライト組織から抜け落ち、耐摩耗性に寄与しない。また、開始温度が850℃を超えると、冷却開始前にTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成が不十分となる。その結果、炭化物の量が不足し、耐摩耗性に寄与しないため、750〜850℃の範囲が好ましい。
冷却停止温度が650℃を超えると、本成分系では、冷却直後の高温度域でパーライト変態が開始し、硬さの低いパーライト組織が多く生成する。その結果、頭部の硬さが確保できず、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となる。また、500℃未満まで加速冷却を行うと、本成分系では、冷却直後に耐摩耗性に有害なベイナイト組織が多く生成する。その結果、レールとして必要な耐摩耗性を確保することが困難となるため、500〜650℃の範囲が好ましい。
表1A〜表1Dに本発明レールの化学成分と諸特性を示す。表1A〜表1Dには、化学成分値、頭部のミクロ組織、頭部の硬さ、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態を示す。さらに、図5に示す方法で行った摩耗試験結果も併記した。尚、頭部のミクロ組織は、パーライト組織の場合、面積率で5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織やマルテンサイト組織が混入しているものも含んでいる。
溶鋼→成分調整→鋳造(ブルーム)→再加熱→熱間圧延→熱処理。
また、本発明例及び比較例の製造条件の概略は下記に示すとおりである。
●熱間圧延条件
再加熱温度:1000〜1400℃、最終圧延温度:750〜1100℃
●熱処理条件:熱間圧延→冷却
冷却速度:1〜20℃/sec、冷却開始温度:700〜900℃、冷却停止温度:500〜650℃
さらに、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲や単位面積当たりの個数を制御するには、上記の熱間圧延、熱処理を下記の条件で行った。
●熱間圧延条件
再加熱温度:1200〜1300℃、最終圧延温度:750〜1100℃
●熱処理条件:熱間圧延→冷却
冷却速度:3〜15℃/sec、冷却開始温度:750〜850℃、冷却停止温度:500〜650℃
発明例A1〜A13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35,37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59:化学成分、頭部のミクロ組織、頭部の硬さが本願発明範囲内にあることが確認されたレール。
上記以外の発明例:化学成分、頭部のミクロ組織、頭部の硬さ、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態が本願発明範囲内にあることが確認されたレール。
比較例B1〜B8(8本):C、Si、Mn、P、Sの添加値が本願発明範囲外のレール。一部のレールは頭部のミクロ組織または頭部の硬さが本願発明範囲外であった。
比較例B9〜B22(14本):Hf、Taのいずれか1種または2種の合計の添加量が本願発明範囲外のレール。
また、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の生成状態の欄において、「○」と記載されているものは、耐摩耗性のさらなる向上に必要なTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の複合炭化物が好適な範囲内「粒径:0.5〜4.0μm、単位面積当たりの個数:100〜1000個/1000μm2」にあることを意味し、単位面積当たりの個数を併記した。
試験機:西原式摩耗試験機(図5参照)
試験片形状(レール材4):円盤状試験片(外径:30mm、厚さ:8mm)
相手材(車輪材5):パーライト鋼(Hv380)
試験片採取位置:頭部外郭表面下2mmに相当する位置(頭部表面、図6参照)
試験荷重:686N(接触面圧640MPa)
すべり率:20%
雰囲気:大気中
冷却:冷却用エアーノズル6から圧搾空気噴射による強制冷却(流量:100Nl/min)
繰返し回数:70万回
測定装置:ビッカース硬度計(荷重98N)
測定用試験片採取:レール頭部の横断面からサンプル切り出し
事前処理:横断面を粒径1μmのダイヤモンド砥粒で研磨
測定方法:JIS Z 2244に準じて測定
硬さの算定:
頭表面下2mm:図4に示す部位の表面(表面下2mm)の任意断面において20点の測定を行い、その平均値を当該部位の硬さとした。
頭表面下20mm:図4に示す部位の表面(表面下20mm)の任意断面において20点の測定を行い、その平均値を当該部位の硬さとした。
一般の炭素量0.75〜1.20%のパーライト鋼軌条(基準)と比較して、10%以上の耐摩耗性の改善効果を有していることがわかる。
炭化物を制御した発明例のレール(A14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36,38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60)は、Ta炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物の粒径範囲やその単位面積当たりの個数を制御することにより、炭化物を制御していない発明例のレール(A13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35,37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59)と比較して、耐摩耗性をより向上させることができることがわかる。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P≦0.0250%、S≦0.0250%を含有し、さらに、Ta、Hfのいずれか1種または2種の合計で0.01〜1.00%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼レールにおいて、頭部外郭表面を起点として深さ20mmまでの範囲の95%以上がパーライト組織であり、かつ、前記範囲の硬さがHv300〜500の範囲であることを特徴とする耐摩耗性に優れたレール。
- さらに、頭部外郭表面を起点として深さ2〜20mmの位置における横断面において、粒径0.5〜4.0μmのTa炭化物、Hf炭化物、TaとHfの複合炭化物が被検面積1000μm2あたり100〜1000個存在することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性に優れたレール。
- 質量%で、さらに、
a群:Cr:0.10〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%の1種または2種、
b群:Co:0.01〜1.00%、
c群:B:0.0001〜0.0050%、
d群:Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%の1種または2種、
e群:V:0.01〜0.50%、Nb:0.0010〜0.0500%、Ti:0.0030〜0.0500%の1種または2種以上、
f群:Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%の1種または2種以上、
g群:Zr:0.0001〜0.0200%、
h群:Al:0.0100〜1.00%、
i群:N:0.0050〜0.0200%
の1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れたレール。
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