JP2017081778A - 屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラス - Google Patents

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【課題】ガラス自体や設備の劣化を抑制しつつ、所望の屈折率勾配が形成された高性能の光学素子を得ることが可能な、リチウム含有珪酸塩ガラスの提供。【解決手段】本発明のリチウム含有珪酸塩ガラスは、屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスであり、SiO2:50〜70モル%、B2O3:3〜15モル%、Al2O3:5〜15モル%、Li2O:3〜25モル%、Na2O:0〜22モル%、を含み、ただし、Li2O及びNa2Oの合計が15〜25モル%であり、アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb2O5を含まず、SiO2及びAl2O3の合計のモル%をXとし、B2O3のモル%をYとし、Li2O及びNa2Oの合計のモル%をZとしたときに、以下の式:(Y+2×Z)/X > 0.5を満足することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、細径の内視鏡や微小光学系において収差の少ない像の伝送や結像に用いられる光学素子の作製に適したガラスであって、具体的には、屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスに関するものである。
近年、光学技術と電子工学技術とがますます進歩し、非常に高性能な撮像装置が得られるようになった。それに伴い、撮像装置の応用分野が広がっている。例えば、医療や工業用途に使用される内視鏡として、その直径が1mmよりも小さい細径の内視鏡が開発されており、これまで観察できなかった狭く入り組んだ生体や、部品内部の画像を得ることが出来るようになった。このような内視鏡には、微小ながら、性能の良い光学素子が欠かせない。しかし、その製造には、高い技術力が要求される。かかる要求としては、例えば、球面を基本とし、その収差を複数のレンズで補正するような光学系を直径1mmよりも小さく作り込み、精度の狂いなく実装することが挙げられるが、これを達成することは非常に困難であり、また、その普及のためには、製造コストの大幅な削減が必要である。
実装し易く、且つ微小な光学素子を作製する方法の一例として、ガラスにイオン交換法で屈折率勾配を与える方法が知られている。この方法では、例えば、丸棒に対し、硝酸ナトリウム熔融塩等の熔融塩を用いてその外周から中心軸方向へ特定のイオンの濃度勾配を与えることで、屈折率勾配を生じさせる。そして、その丸棒を中心軸に対して垂直に切断することで、画像の伝送や結像効果を示す光学素子が得られる。
上記の特定のイオンとしては、ガラス中を移動しやすくガラスの屈折率を高めることに寄与する一価の陽イオンである、タリウムイオン、銀イオン、セシウムイオン、リチウムイオンが挙げられる。これらのイオンを、イオン半径が似通っていて、ガラス中に含まれても比較的屈折率への寄与が小さな他の一価の陽イオンと交換する。
例えば、タリウムイオンを含むガラスは、特許文献1に開示されており、銀イオンを含むガラスは、特許文献2に開示されている。これらのガラスについてイオン交換を行った場合には、屈折率勾配の比較的大きな光学素子を得ることができる。しかし、これらのガラスには、タリウムイオン及び銀イオンに起因する着色を起こしやすく、特に短波長の光の透過率が悪いという問題があった。また、元々ガラスの光の波長に対する分散が大きいだけでなく、イオン交換で屈折率勾配とともに生じる分散勾配も大きいため、色収差の大きな光学素子となってしまうという問題もあった。これらの問題は、特に10cm以上の長さで画像を伝送するような光学素子を作製するときには、無視することができない。
一方、特許文献3には、セシウムイオンとリチウムイオンとを含むガラスが開示されている。かかるガラスは、タリウムイオンを含むガラスや銀イオンを含むガラスに比べて、短波長の光の透過率が良い。しかし、セシウムイオンは、イオン半径が大きいため、リチウムイオンに比べてイオン交換が進みにくい。
このような事情等を踏まえれば、性能が良く、実装しやすく、微小な光学素子をイオン交換法で容易に作製するには、主たる特定のイオンとしてリチウムイオンを含むガラスが適していると考えることができる。また、細くて長い光学素子は、物理的な衝撃で破損しやすいため、リチウムイオンを含ませるガラスとしては、物理的な強度が高いことが一般的に知られている珪酸塩ガラスが挙げられる。
ここで、リチウムイオンを含む珪酸塩ガラスは、例えば特許文献4〜6に開示されている。具体的には、特許文献4及び特許文献5には、Li2Oと、Na2O、TiO2、及びMgOなどとを含む珪酸塩ガラスが開示されており、特許文献6には、Li2Oと、Na2O、SrOを含むアルカリ土類金属酸化物、及びNb25などとを含む珪酸塩ガラスが開示されている。
特開昭57−120901号公報 特許第4939306号公報 特開昭58−181740号公報 特公昭59−41934号公報 特公平7−88234号公報 特公平4−24298号公報
しかしながら、リチウムイオンを含む珪酸塩ガラスをイオン交換して光学素子を作製するにあたり、上述した従来の珪酸塩ガラスには、下記の問題があった。
まず、珪酸塩ガラスは、網目状の骨格構造が他のガラス系に比べて強固であり、一般に、珪酸塩ガラス中のイオンの移動には、他のガラス系に比べて大きなエネルギーを要する。特に、特許文献4〜6に記載のガラスの製造においては、珪酸塩ガラス中のリチウムイオンと、当該ガラス外のナトリウムイオンとを交換するために、450〜539℃もの高い温度まで加熱している。
しかしながら、このような温度では、ガラス外のナトリウムイオン源として用いられる硝酸ナトリウム熔解塩が激しく分解してしまい、発生した硝酸ガスによってガラス自体や設備に対する腐食が進んでしまう。そのため、ガラス自体や設備の劣化を回避すべく、硝酸ナトリウム熔融塩が分解しないほどの低い温度、具体的には430℃以下で、効率的にイオン交換を行えることが求められている。
加えて、本発明者らが検討したところ、上述した従来の珪酸塩ガラスには、低分散性が十分ではなく、これを用いて得られる光学素子の色収差が大きくなり、性能が不十分となる傾向にあることも分かった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、ガラス自体や設備の劣化を抑制しつつ、所望の屈折率勾配が形成された高性能の光学素子を得ることが可能な、リチウム含有珪酸塩ガラスを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、本発明は、
SiO2:50〜70モル%、
23:3〜15モル%、
Al23:5〜15モル%、
Li2O:3〜25モル%、
Na2O:0〜22モル%、
を含み、
ただし、Li2O及びNa2Oの合計が15〜25モル%であり、
アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を含まず、
SiO2及びAl23の合計のモル%をXとし、B23のモル%をYとし、Li2O及びNa2Oの合計のモル%をZとしたときに、以下の式:
(Y+2×Z)/X > 0.5
を満足することを特徴とする、屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスである。
また、本発明の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスは、アッベ数(νd)が58以上であることが好ましい。
さらに、本発明の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスは、その屈伏点(At)より20℃低い温度で10分間保持した後に急冷して得られるガラスの熱膨張曲線において、ベースラインの延長線と、昇温時に最初に現れる変曲点の接線との交点における温度(TR)が430℃以下であることが好ましい。
本発明によれば、ガラス自体や設備の劣化を抑制しつつ、所望の屈折率勾配が形成された高性能の光学素子を得ることが可能な、リチウム含有珪酸塩ガラスを得ることができる。
本発明の一実施形態に係るガラスについて、屈伏点(At)より20℃低い温度で10分間保持した後に急冷して得られるガラスの熱膨張曲線を示す図である。 本発明の一実施形態に係るガラスをイオン交換して得られたレンズの屈折率勾配を示す図である。 本発明の一実施形態に係るガラスをイオン交換して得られたレンズによって得られる像を模式的に示す図である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラス(以下、単に「本発明のガラス」と称することがある。)は、
SiO2:50〜70モル%、
23:3〜15モル%、
Al23:5〜15モル%、
Li2O:3〜25モル%、
Na2O:0〜22モル%、
を含み、
ただし、Li2O及びNa2Oの合計が15〜25モル%であり、
アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を含まず、
SiO2及びAl23の合計のモル%をXとし、B23のモル%をYとし、Li2O及びNa2Oの合計のモル%をZとしたときに、以下の式:
(Y+2×Z)/X > 0.5
を満足することを特徴とする。
まず、本発明のガラスにおいて、各成分の含有量を上記の範囲に限定した理由について説明する。
前記成分の組成及びその限定理由について説明する。なお、成分の含有量の単位は何れも「モル%」であるが、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
<SiO2:50〜70%>
本発明のガラスにおいて、SiO2は、ガラスの主成分である。SiO2の含有量が50%よりも少ないと、ガラス形成が難しくなり、70%を超えると、ガラス転移点及び熔解温度が著しく高くなる上、ガラス融液の粘度が高くなりすぎて泡や脈理などの欠陥が取り除けなくなる。そのため、SiO2の含有量を50〜70%とする。同様の観点から、SiO2の含有量は、好ましくは55〜68%であり、より好ましくは58〜66%である。
<B23:3〜15%>
本発明のガラスにおいて、B23は、SiO2と同じくガラスの網目状の骨格構造を形成する酸化物であり、ガラス転移点、熔解温度及びガラス融液の粘度を下げる成分である。B23の含有量が3%よりも少ないと、ガラス転移点、熔解温度及びガラス融液の粘度が十分に下がらず、15%を超えると、化学的な耐久性と物理的な強度が低下し、熔解中の揮発が多くなる。そのため、B23の含有量を3〜15%とする。同様の観点から、B23の含有量は、好ましくは4〜13%であり、より好ましくは5〜10%である。
<Al23:5〜15%>
本発明のガラスにおいて、Al23は、化学的な耐久性と物理的な強度を改善し、一価の陽イオンを多量にガラスに含ませるために必要な成分である。Al23の含有量が5%よりも少ないと、ガラス形成が難しくなり、15%を超えると、ガラス転移点及び熔解温度が著しく高くなる上、ガラス融液の粘度が高くなりすぎて泡や脈理などの欠陥が取り除けなくなる。そのため、Al23の含有量を5〜15%とする。同様の観点から、Al23の含有量は、好ましくは5.5〜13%であり、より好ましくは6〜10%である。
<Li2O:3〜25%>
本発明のガラスにおいて、Li2Oは、ガラス転移点と熔解温度及びガラス融液の粘度を下げて、ガラスの屈折率を高める成分であり、この酸化物によって供給されるリチウムイオンをガラス外のナトリウムイオン等のイオンと交換することで、ガラス中に屈折率勾配を形成することができる。Li2Oの含有量が3%よりも少ないと、屈折率差が十分に得られず、25%を超えると、ガラス形成が難しくなる。そのため、Li2Oの含有量を3〜25%とする。同様の観点から、Li2Oの含有量は、好ましくは5〜20%であり、より好ましくは8〜15%である。
<Na2O:0〜22%>
本発明のガラスにおいて、Na2Oは、ガラス転移点と熔解温度及びガラス融液の粘度を下げる成分である。また、Li2Oと共に含ませることで、混合アルカリ効果を生んでガラス形成をし易くし、化学的な耐久性を改善することができる。この酸化物によって供給されるナトリウムイオンは、イオン交換によってガラス外から侵入するナトリウムイオンのガラス中での拡散を妨げないばかりでなく、他の一価の陽イオンと比べてそのイオン半径がリチウムイオンに近いため、リチウムイオンのガラス中での拡散も妨げにくい。Na2Oの含有量が22%を超えると、ガラス形成が難しくなる。そのため、Na2Oの含有量を0〜22%とする。同様の観点から、Na2Oの含有量は、好ましくは3〜18%であり、より好ましくは8〜15%である。
ここで、前記のLi2O及びNa2Oの合計は、15〜25%である。Li2O及びNa2Oの合計が15%よりも少ないと、ガラス転移点と熔解温度は十分に低下せず、ガラス融液の粘度が高くなりすぎて泡や脈理などの欠陥が取り除けなくなる。また、Li2O及びNa2Oの合計が25%を超えると、ガラス形成が難しくなる。同様の観点から、Li2O及びNa2Oの合計は、好ましくは18〜24.5%であり、より好ましくは20〜24%である。
<アルカリ土類金属酸化物>
本発明のガラスは、アルカリ土類金属酸化物を含まないことを特徴の一つとして有する。本発明者らは、従来のリチウムイオンを含む珪酸塩ガラスに含まれ得るMgOやSrO等のアルカリ土類金属酸化物に係る二価の陽イオンが、一価の陽イオンの理想的な拡散を阻害するため、実際に所望の屈折率勾配を得ることが困難となることを見出した。従って、本発明のガラスにおいては、アルカリ土類金属酸化物を含まないこととした。
<TiO2及びNb25
また、本発明のガラスは、TiO2及びNb25を含まないことを特徴の一つとして有する。本発明者らは、従来のリチウムイオンを含む珪酸塩ガラスに含まれ得るTiO2及びNb25が、ガラスの分散性を高め、これを用いて得られる光学素子の色収差が大きくなる原因となり得ることを見出した。従って、本発明のガラスにおいては、TiO2及びNb25を含まないこととした。
<その他の成分>
なお、本発明のガラスは、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、上述した成分(アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を除く)以外の任意の成分を含んでいてもよい。ただし、所望の性能を得る観点から、本発明のガラスにおける上述した成分(アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を除く)以外の任意の成分の含有量が、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、実質的に0%であることがさらに好ましい。
そして、本発明のガラスは、SiO2及びAl23の合計のモル%をXとし、B23のモル%をYとし、Li2O及びNa2Oの合計のモル%をZとしたときに、以下の式を満たすことを特徴の一つとして有する。
(Y+2×Z)/X > 0.5
上述の成分のうち、SiO2及びAl23の合計の量が多すぎると、ガラス転移点及び熔解温度を上げ、ガラス融液の粘度が高くなってしまい、ガラス中の泡や脈理などの欠陥を取り除くことが難しくなる。また、ガラスの熱加工時に必要な温度も高くなってしまい、延伸してファイバ状の光学素子を作製することも難しくなる。これに対して、B23と、Li2O及びNa2Oとを含ませると、ガラス転移点、熔解温度及びガラス融液の粘度を下げることができる。なお、Li2O及びNa2Oを含ませた場合には、ガラスの網目状の骨格構造が切断されるため、ガラス転移点、熔解温度及びガラス融液の粘度をより一層下げる効果を得ることができる。本発明のガラスは、上式を満たすので、従来の技術よりも確実にガラス転移点、熔解温度及びガラス融液の粘度が最適化されており、屈折率勾配を有する光学素子を製造するにあたり、ガラス自体や設備の劣化を抑制することができる。
<リチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスの製造方法>
次に、本発明のガラスを製造するための方法について説明する。
ここで、本発明のガラスは、各成分の含有量が上述した範囲を満足し、アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を含まず、且つ上式を満たしていれさえすればよく、その製造方法については特に限定されることなく、従来の製造方法に従って製造することができる。
例えば、まず、本発明のガラスに含まれ得る各成分の原料を所定の割合で秤量し、十分混合したものをガラス調合原料とする。次いで、この調合原料を、ガラス原料等と反応性のない耐熱容器(例えば、白金坩堝等)に投入して、電気炉にて1000〜1500℃に加熱して熔融しながら適時撹拌する。次いで、電気炉で清澄、均質化してから、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、任意に電気炉内で徐冷することで、本発明のリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスを製造することができる。なお、ガラスの着色改善や脱泡のため、ごく少量(例えば、ガラス中において0.5%以下となるような量)のSb23など、工業上周知の成分を加えることができる。
<リチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスのTR
ここで、上述のようにして製造されるような本発明のガラスは、例えばナトリウムイオンを用いてイオン交換を行う場合には、リチウムイオンとナトリウムイオンとのイオン半径差が原因で、応力が残留していることが多い。そして、この応力は、例えば強化ガラスにとっては有用となり得るものの、光学素子にとっては、構造を歪ませ、その箇所に複屈折が生じることで、所望の屈折率勾配が得にくくなるため、除去されることが望ましい。かかる事情を踏まえ、本発明のガラスは、その屈伏点(At)より20℃低い温度で10分間保持した後に急冷して得られるガラスの熱膨張曲線(図1を参照。横軸:温度、縦軸:伸び)において、ベースラインの延長線と、昇温時に最初に現れる変曲点(図1におけるP)の接線との交点における温度(本明細書において、この温度を「TR」とする。)が、430℃以下であることが好ましい。本発明のガラスのTRが430℃以下であることにより、ガラス自体や設備を腐食させない(ガラス外のナトリウムイオン源として用いられる硝酸ナトリウム熔解塩を激しく分解させない)上、イオン交換によって生じ得る応力を緩和しながら効率的に所望の屈折率勾配を形成することができる。
なお、ガラスの屈伏点(At)は、十分に歪の除かれたガラスの熱膨張曲線において見かけ上ガラスの膨張が停止する温度である。また、図1に示す通り、屈伏点(At)より20℃低い温度で10分間保持した後に急冷して得られるガラスの熱膨張曲線における「ベースライン」とは、低温側からみて、一時的に伸び率が減少する前の略一定の傾きを有する線部分を指し、「変曲点」とは、低温側からみて、一時的に伸び率が減少した後の、上に凸の曲線が下に凸の曲線に変化する点を指す。
<リチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスのアッベ数>
また、本発明のリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスは、アッベ数(νd)が58以上であることが好ましい。アッベ数(νd)が58以上であれば、リチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスの低分散性を十分に高め、当該ガラスを用いて製造される屈折率勾配を有する光学素子の色収差を低減することができる。
同様の観点から、本発明のリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスのアッベ数(νd)は、59以上であることがより好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜12)
表1に示す含有量の割合となるよう出発原料を所定の量に調合し、その調合原料を白金坩堝に投入して1400℃に加熱して熔解し、白金製の攪拌棒で適時攪拌して均質化を図った。次いで、2時間清澄化してから適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、徐冷して、それぞれのガラスを得た。すべてのガラスが無色透明であり、結晶物の析出や大きな泡はなかった。
(比較例1〜11)
実施例1〜12と同様に、表2に示す含有量の割合となるよう出発原料を所定の重量に調合し、その調合原料を白金坩堝に投入して1400℃に加熱して熔解し、白金製の攪拌棒で適時攪拌して均質化を図った。次いで、2時間清澄化した。ここで、全比較例のうち、均質で透明なガラス融液となったのが、比較例1、比較例4及び比較例11のみであり、これらのガラス融液を、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、徐冷して、それぞれのガラスを得た。なお、比較例2,3,6,10では、泡や脈理が発生し、清澄時間を4時間まで延ばしたとしてもそれらを除去することができず、また、比較例5,7,8では、清澄時間を4時間まで延ばしたとしても透明なガラス融液を得ることができず、また、比較例9では、熔解温度を1450℃まで上げたとしても原料が熔けなかった。
(屈折率、アッベ数の評価)
実施例1〜12のガラスの屈折率(nd)を測定し、アッベ数(νd)を算出した。なお、屈折率の測定は、株式会社島津デバイス製「KPR−2000」を用いて行った。その結果、表1に示すように、屈折率はいずれも1.51118〜1.52677の範囲内であり、アッベ数はいずれも58以上であった。
また、均質で透明なガラス融液が得られた比較例1,4及び11のガラスについても、実施例1〜12と同様に、屈折率を測定し、アッベ数を算出した。その結果、表2に示すように、少なくとも比較例1においては、アッベ数が56.6であり、低分散性に劣っていた。
(ガラス転移点及び屈伏点の評価)
実施例1〜12のガラスの熱機械分析として、株式会社マック・サイエンス製「TMA4000S」を用いて熱膨張曲線を得、この熱膨張曲線から、ガラス転移点(Tg)及び屈伏点(At)を求めた。その結果、表1に示すように、実施例1〜12のガラスは、ガラス転移点がいずれも465〜512℃の範囲内であり、屈伏点がいずれも504〜567℃の範囲内であった。
また、均質で透明なガラス融液が得られた比較例1,4及び11のガラスについても、実施例1〜12と同様に、ガラス転移点及び屈伏点を求めた。結果を表2に示す。
(TRの評価)
次に、実施例1〜12の各ガラスを、それぞれの屈伏点より20℃低い温度で10分間保持してから急冷し、応力の残留したガラス(応力残留ガラス)を得た。そして、この応力残留ガラスの熱機械分析により熱膨張曲線を得たところ、いずれの熱膨張曲線も、図1に示すように、一時的に伸び率の減少する範囲を持っていた。なお、図1は、実施例5に係る応力残留ガラスの熱膨張曲線を示すものである。この一時的な伸び率の減少は、ガラスに残留する応力が熱の影響によって解消されるために起こる現象である。そして、応力残留ガラスの熱膨張曲線におけるベースラインの延長線と、昇温時に最初に現れる変曲点Pの接線との交点における温度(TR)を求めた。その結果、表1に示すように、実施例1〜12のガラスは、TRがいずれも382〜430℃の範囲内であり、即ち、硝酸ナトリウムが十分に熔解し、また激しく分解しない温度であった。
また、均質で透明なガラス融液が得られた比較例1,4及び11のガラスについても、実施例1〜12と同様に、TRを求めた。その結果、表2に示すように、少なくとも比較例11においては、475℃と高かった。
(歪の評価)
ここで、実施例5に係る上述の応力残留ガラスについて、折原製作所製の歪検査器「SVP−100」を用い、回転円板歪標準器法に従い、残留した応力によって生じる歪を測定した。その結果、実施例5に係る応力残留ガラスの当該歪は、130nm/cmであった。
また、この130nm/cmの歪を有する実施例5に係る応力残留ガラス(4×4×1cm)を、TRの温度(即ち、401℃)の電気炉内で12時間保持し、その後301℃まで100時間かけて冷却して、さらに電気炉内で室温まで自然冷却した。このガラスについて上述と同様の方法により歪を測定したところ、21nm/cmまで減少した。
(イオン交換距離の評価)
実施例1〜12のガラスを直径約350μmの丸棒に加工し、それぞれの実施例の温度TRに保持した電気炉内で、ステンレス容器中の硝酸ナトリウム熔解塩に2時間浸漬して、ガラス中のリチウムイオンと熔解塩中のナトリウムイオンとの交換を行った。次いで、硝酸ナトリウム熔解塩から取り出した丸棒を蒸留水で洗浄した後、中心軸に対して垂直に切断した。そして、日立ハイテク製の電子顕微鏡「S−3400N」及びオックスフォード・インストゥルメンツ製のエネルギー分散型X線分析装置「INCA Energy 250」を用い、切断面の中心点を通る直線に沿ってナトリウムイオン濃度の勾配を測定した。ナトリウムイオン濃度の勾配が確認された長さを、丸棒表面からのイオン交換距離として求めた。その結果、表1に示すように、実施例1〜12のガラスは、温度TRにおける2時間のイオン交換距離がいずれも69μm以上であり、特に実施例3及び実施例4については、切断面の中心点までナトリウムイオンの濃度勾配が確認された。
また、均質で透明なガラス融液が得られた比較例1,4及び11のガラスについても、実施例1〜12と同様に、ガラス中のリチウムイオンと熔解塩中のナトリウムイオンとの交換を行い、イオン交換距離を求めた。このとき、少なくとも比較例4においては、イオン交換の操作時に丸棒にヒビが入ってしまった。また、少なくとも比較例11においては、硝酸ナトリウム熔解塩が激しく分解してしまい、発生した硝酸ガスによってステンレス容器及び電気炉内の耐火物が損傷してしまった。
(屈折率勾配を有するレンズの製造)
実施例5のガラスを直径約350μmの丸棒に加工し、401℃で保持した硝酸ナトリウム熔解塩に6時間浸漬して、ガラス中のリチウムイオンと融液中のナトリウムイオンとの交換を行った。次いで、硝酸ナトリウム熔解塩から取り出した丸棒を蒸留水で洗浄した後、中心軸に対して垂直に切断し、その切断面の中心点を通る直線に沿ってナトリウムイオン濃度の勾配を測定した。ここで、ガラス中のリチウムイオンはナトリウムイオンと交換されたと考えてリチウムイオン濃度を求め、切断面の中心点を通る直線上の各点と同じリチウムイオンとナトリウムイオンの濃度を持つガラスを作製し、その屈折率から各点における屈折率を求めた。その結果を図2に示す。丸棒の外周と中心軸上の屈折率差は、図2に示すように約0.003であり、屈折率勾配型レンズとしての視野角は約11°であった。このイオン交換された丸棒を約13mm長に加工し、その中心軸に垂直な両端面をそれぞれ光学研磨して、屈折率勾配を有するレンズ(屈折率勾配型レンズ)を作製した。この屈折率勾配型レンズによって得られる像を、模式的に図3に示す。このレンズの像は、USAFコントラストチャートによると、90LP/mm以上の解像力を持っていることが分かった。すなわち、本発明に従う実施例1〜12のガラスによれば、細径の丸棒について、そのTRの温度にて、製造コストに悪影響を及ぼさない程度に短い時間でイオン交換することができ、残留した応力を原因とする複屈折の影響を受けることのない屈折率勾配を有する光学素子が得られることが分かる。
本発明によれば、速やかにイオン交換が可能な温度で、ガラス外のナトリウムイオン源として用いられる硝酸ナトリウム熔解塩が激しく分解せず、またその温度でガラス中に生じる応力が十分に緩和できるという特長を持ち、光の分散が十分に小さな、屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスを得ることができる。そして、本発明により得られる屈折率勾配を有する光学素子は、微小かつ性能が良好でありながら、その製造と実装が容易であることから、直径が1mm以下の内視鏡など精密な撮像装置のレンズなどとして使用することができる。

Claims (3)

  1. SiO2:50〜70モル%、
    23:3〜15モル%、
    Al23:5〜15モル%、
    Li2O:3〜25モル%、
    Na2O:0〜22モル%、
    を含み、
    ただし、Li2O及びNa2Oの合計が15〜25モル%であり、
    アルカリ土類金属酸化物、TiO2及びNb25を含まず、
    SiO2及びAl23の合計のモル%をXとし、B23のモル%をYとし、Li2O及びNa2Oの合計のモル%をZとしたときに、以下の式:
    (Y+2×Z)/X > 0.5
    を満足することを特徴とする、屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラス。
  2. アッベ数(νd)が58以上である、請求項1に記載の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラス。
  3. 請求項1又は2に記載の屈折率勾配を有する光学素子の製造に用いられるリチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラスであって、その屈伏点(At)より20℃低い温度で10分間保持した後に急冷して得られるガラスの熱膨張曲線において、ベースラインの延長線と、昇温時に最初に現れる変曲点の接線との交点における温度(TR)が430℃以下である、リチウム含有アルミノホウ珪酸塩ガラス。
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