JP2017077685A - 繊維強化樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マイクロ波による加熱を均一化しうる繊維強化樹脂成形体の製造方法の提供。
【解決手段】繊維強化樹脂成形体の製造方法は、
(1)硬化前の繊維強化樹脂を高熱伝導性部材に固定する第1工程
及び
(2)マイクロ波を照射して上記繊維強化樹脂を加熱及び硬化させる第2工程
を含む。好ましくは、上記高熱伝導性部材の熱伝導率が10W/(m・k)以上である。好ましくは、上記高熱伝導性部材が金属部材である。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化樹脂成形体の製造方法に関する。詳細には、マイクロ波を用いて繊維強化樹脂を加熱及び硬化させる繊維強化樹脂成形体の製造方法に関する。
繊維強化樹脂を加熱する方法として、マイクロ波を用いる方法が提案されている。特開平3−231816号公報、特開平2−182438号公報及び特開平2−6107号公報では、マイクロ波で発熱する材質で構成した型枠内に繊維強化樹脂を配置し、マイクロ波で当該型枠を発熱させて繊維強化樹脂を加熱硬化する方法が開示されている。
特開平3−231816号公報 特開平2−182438号公報 特開平2−6107号公報
マイクロ波の性質に起因して、マイクロ波の照射による繊維強化樹脂の加熱硬化方法では、均一な加熱が難しい。このため、ムラ焼けが生じやすい。ターンテーブル等を用いて均一な照射を試みても、この問題の解決は難しい。また、繊維強化樹脂に含まれる繊維が導電性を有する場合、マイクロ波の照射時に、この繊維に電流が流れる。この電流により異常発熱が生じ、スパーク(火花)が生じうる。
上記特許文献に記載の技術では、型枠で覆われていない部分でムラ焼け及びスパークが生じうるため、繊維強化樹脂の全体を型枠で覆う必要がある。
マイクロ波を用いる利点の一つは、マイクロ波が加熱対象物(繊維強化樹脂)を直接的に加熱できることにある。この直接的な加熱により、加熱対象物の内部を充分に硬化させることができ、エネルギー効率も高まる。しかし、上記特許文献に記載の技術では、型枠がマイクロ波を吸収するため、上述の利点が減衰される。
本発明の目的は、マイクロ波による加熱を均一化しうる繊維強化樹脂成形体の製造方法の提供にある。
本発明に係る好ましい繊維強化樹脂成形体の製造方法は、次の工程を含む。
(1)硬化前の繊維強化樹脂を高熱伝導性部材に固定する第1工程。
(2)マイクロ波を照射して上記繊維強化樹脂を加熱及び硬化させる第2工程。
好ましくは上記高熱伝導性部材の熱伝導率が10W/(m・k)以上である。
好ましくは、上記高熱伝導性部材が金属部材である。
好ましくは、硬化前の上記繊維強化樹脂の厚みが10mm以下である。
好ましくは、硬化前の上記繊維強化樹脂の厚みが1mm以下である。
好ましくは、上記第1工程における上記高熱伝導性部材がマンドレルである。好ましくは、上記第1工程において上記繊維強化樹脂が上記マンドレルに巻き付けられる。
繊維強化樹脂成形体に係る本発明は、上述したいずれかの製造方法により製造された繊維強化樹脂成形体である。
パイプ状成形体に係る本発明は、上述したいずれかの製造方法により製造されたパイプ状成形体である。
本発明に係る繊維強化樹脂成形体の製造方法では、マイクロ波による加熱が均一化されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造方法の手順を示す説明図である。 図2は、FRP巻回体の断面図である。 図3は、実施例においてマイクロ波を照射したときの状態を示す斜視図である。 図4は、実施例1の、照射時間と計測温度との関係を示すグラフである。 図5は、実施例2の、照射時間と計測温度との関係を示すグラフである。 図6は、比較例の、照射時間と計測温度との関係を示すグラフである。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の好ましい製造方法を説明するための図である。図2は、マンドレル100に巻き付けられたプリプレグ200の断面図である。この好ましい製造方法では、マンドレル100と、プリプレグ200とが用いられる。
マンドレル100の材質は、金属である。マンドレル100の材質は、炭素鋼である。マンドレル100は、丸棒である。マンドレル100の断面形状は、円形である。マンドレル100の直径は一定である。マンドレル100が、その直径が徐々に変化するテーパー部を有していても良い。このテーパー部は、硬化工程後のマンドレル100の抜き取りを容易とする。マンドレル100は、高熱伝導性部材である。マンドレル100の熱伝導率は、10W/(m・k)以上である。
マンドレル100の表面に、離型剤が塗布されてもよい。この離型剤は、硬化した繊維強化樹脂成形体からのマンドレル100を抜き取りを容易とする。更に、この離型剤層の上にタッキングレジンが塗布されてもよい。このタッキングレジンは、粘着性を有する樹脂であり、マンドレル100へのプリプレグ200の巻き付けを容易とする。
プリプレグ200は、繊維に樹脂が含浸されてなる。プリプレグ200は、シートである。本実施形態では、この繊維が炭素繊維である。繊維に含浸されている樹脂は、マトリクス樹脂とも称される。プリプレグ200において、マトリクス樹脂は、半硬化の状態にある。プリプレグ200は、硬化前の繊維強化樹脂の一例である。
本実施形態は、次の工程を含む。なお、第2工程は、硬化工程とも称される。
(1)硬化前の繊維強化樹脂を高熱伝導性部材に固定する工程(第1工程)。
(2)マイクロ波を照射して上記繊維強化樹脂を加熱及び硬化させる工程(第2工程)。
好ましくは、上記高熱伝導性部材の熱伝導率が10W/(m・k)以上である。好ましくは、上記高熱伝導性部材が金属部材である。
本実施形態における第1工程では、マンドレル100にプリプレグ200が巻き付けられる(図1参照)。この第1工程の結果、プリプレグ200はマンドレル100に固定される。プリプレグ200はマンドレル100に接触した状態で固定される。プリプレグ200がマンドレル100に巻きつけられている部材が、FRP巻回体300とも称される。
図2が示すように、マンドレル100に巻き付けられたプリプレグ200は、1以上の層を形成している。この1以上の層は、マンドレル100の周囲に巻回されている。最も内側の層s1が、プリプレグ200に接している。本実施形態では、プリプレグ200は、3つの層s1,s2、s3を形成している。層s3は、最外層である。図示されないが、好ましくは、最外層s3の外側にラッピングテープが巻かれる。
なお、マンドレル100に固定されたプリプレグ200が、ラッピングされてもよい。例えば、ラッピングテープが巻き付けられても良い。このラッピングテープは、マンドレル100を加圧する。この加圧により、気泡が除去されうる。
本実施形態の第2工程では、マンドレル100に巻き付けられたプリプレグ200(FRP巻回体300)が、マイクロ波加熱装置に入れられる。このマイクロ波加熱機は、プリプレグ200にマイクロ波を照射する。このマイクロ波により、プリプレグ200が加熱される。この加熱により、マトリクス樹脂が硬化する。
第2工程により、プリプレグ200は硬化し、繊維強化樹脂成形体が得られる。この繊維強化樹脂成形体は、パイプ状成形体である。なお、言うまでも無いが、第2工程の後、マンドレル100は引き抜かれる。好ましい繊維強化樹脂成形体の製造方法は、次の工程を含む。
(1)硬化前の繊維強化樹脂を高熱伝導性部材に固定する工程(第1工程)。
(2)マイクロ波を照射して上記繊維強化樹脂を加熱及び硬化する工程(第2工程)。
(3)上記高熱伝導性部材を硬化した繊維強化樹脂から分離する工程(第3工程)。
気泡を除去する観点から、好ましくは、上記第2工程において、加圧された状態の繊維強化樹脂にマイクロ波が照射される。この加圧は、上述のようなラッピングによって達成されてもよい。ラッピングが採用された場合、好ましい製造方法は、上記第2工程の後に、このラッピングを除去する工程を含む。また例えば、マイクロ波加熱装置が当該装置内の気圧を高める加圧機能を有しており、このマイクロ波加熱装置を用いて繊維強化樹脂を加圧しながら当該繊維強化樹脂にマイクロ波を照射してもよい。
繊維強化樹脂のマトリクス樹脂は、典型的には、熱硬化性樹脂である。この熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂が例示される。プリプレグ200のマトリクス樹脂は、エポキシ樹脂である。
繊維強化樹脂に含まれる繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。炭素繊維として、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が例示される。
繊維強化樹脂における繊維の形態は限定されず、例えば長繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。長繊維の場合、繊維は1方向に配向していてもよいし、2以上の方向に配向していてもよい。繊維は、織られていてもよい。本実施形態のプリプレグ200は、繊維が1方向に配向している。このようなプリプレグ200は、UDプリプレグとも称される。UDとは、ユニディレクションの略である。複数の層が形成される場合において、層によって繊維の方向が相違していてもよい。
マイクロ波は、繊維強化樹脂を加熱できるものであればよい。典型的には、加熱に利用されるマイクロ波の周波数として、非通信用のISMバンドが利用される。例えば、マイクロ波の周波数は2.45GHzである。915MHz帯など、他の周波数のマイクロ波であってもよい。
マイクロ波による加熱では、誘電加熱及び/又は誘導加熱が生じる。マイクロ波による加熱では、繊維強化樹脂の内部で発熱が生じる。また、本実施形態の繊維強化樹脂は炭素繊維を含むので、このマイクロ波による加熱は誘導加熱を含むと考えられる。この誘導加熱では、繊維自体が発熱する。このように、マイクロ波による加熱では、加熱対象物(繊維強化樹脂)がマイクロ波によって直接的に加熱される。繊維強化樹脂自体が発熱するため、繊維強化樹脂の内部における硬化が促進される。
マイクロ波による加熱では、加熱温度が不均一となりやすい。特に、プリプレグ200の端部が高温となりやすい。この端部の過剰な熱がマンドレル100に伝わるため、当該端部における急速な温度上昇が防止される。よって、均等な加熱が可能となる。
図2において両矢印T1で示されているのは、硬化前の繊維強化樹脂の厚みである。過剰な熱を逃げやすくして加熱温度を均一化する観点から、 厚みT1は10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下がより好ましい。
以上に説明の通り、本実施形態では、高熱伝導性部材がマンドレル100である。もちろん、高熱伝導性部材は、マンドレル100に限定されない。高熱伝導性部材の形状は限定されない。また、高熱伝導性部材と繊維強化樹脂との接触の態様は限定されない。例えば、上述の実施形態では、高熱伝導性部材の外面に繊維強化樹脂が接触している。上述の実施形態では、高熱伝導性部材の外面のみに繊維強化樹脂が接触している。これ以外の態様であってもよい。
過剰な熱を逃げやすくする観点から、繊維強化樹脂と高熱伝導性部材との間の接触面積は、繊維強化樹脂の体積に対して大きいのが好ましい。硬化前の繊維強化樹脂の体積がV(mm)とされ、第1工程における繊維強化樹脂と高熱伝導性部材との接触面積がS(mm)とされるとき、S/Vは、0.15以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、2以上が更に好ましい。エネルギー効率を考慮すると、S/Vは、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。
[高熱伝導性部材]
高熱伝導性部材とは、固定されている(接触している)繊維強化樹脂よりも熱伝導率が高い部材を意味する。好ましくは、高熱伝導性部材は、金属部材である。金属部材とは、材質が金属の部材を意味する。
金属部材の材質である金属は限定されない。この金属として、例えば、鉄系金属、チタン系金属、アルミニウム系金属、銅系金属、ニッケル系金属、銀系金属及び金系金属が挙げられる。なお、鉄系金属とは鉄を50質量%以上含む金属(合金を含む)を意味し、この点は他の金属も同様である。
鉄系金属として、例えば、鋼及び鋳鉄が挙げられる。鋼としては、例えば、炭素鋼、高張力鋼、工具鋼、炭素工具鋼、金属工具鋼、高速度鋼、刃物鋼、鋳鋼、ステンレス鋼、電磁鋼、ケイ素鋼、KS鋼、MK鋼、マルエージング鋼、クルップ鋼、クロム鋼、ニッケルクロム鋼、バナジウム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼、マンガンモリブデン鋼及び安来鋼が挙げられる。炭素鋼として、低炭素鋼、中炭素鋼及び高炭素鋼が挙げられ、具体的には、例えばS53C(中炭素鋼)及びS25C(低炭素鋼)が挙げられる。ステンレス鋼として、例えばSUS304及びSUS430が挙げられる。
チタン系金属として、αチタン、αβチタン及びβチタンが 挙げられる。αチタンとして、例えば、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−8Al−1V−1Moが挙げられる。αβチタンとして、例えば、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo及びTi−6Al−6V−2Sn及びTi−4.5Al−3V−2Fe−2Moが挙げられる。βチタンとして、例えばTi−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−20V−4Al−1Sn、Ti−22V−4Al、Ti−15Mo−2.7Nb−3Al−0.2Si及びTi−16V−4Sn−3Al−3Nbが挙げられる。
純チタンとして、工業用純チタンが例示される。この工業用純チタンとして、日本工業規格で規定される1種純チタン、2種純チタン、3種純チタン及び4種純チタンが例示される。
アルミニウム系金属として、例えば、国際アルミニウム金属名における4桁の数字で、2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台、7000番台及び8000番台が挙げられる。なお1000番台は、純アルミニウムである。このうち2000番台は、Al−Cu系金属であり、ジュラルミン(2017)及び超ジュラルミン(2024)を含む。3000番台はAl−Mn系金属である。4000番台はAl−Si系金属である。5000番台はAl−Mg系金属である。6000番台はAl−Mg−Si系金属である。7000番台はAl−Zn−Mg系金属及びAl−Zn−Mg−Cu系金属あり、強度に優れる。7000番台は、超々ジュラルミン(7075)及び7N01を含む。
銅系金属として、例えば、黄銅、青銅、白銅、赤銅、洋白、丹銅、クロム銅、ベリリウム銅、アルミニウム青銅及びリン青銅が挙げられる。
[熱伝導率]
熱伝導率は、熱伝導において、媒質中に温度勾配がある場合にその勾配に沿って運ばれる熱流束の大きさを規定する物理量である。本願における熱伝導率の単位は、W/(m・k)である。
熱伝導率は、次の方法によって測定されうる。炭素鋼及びステンレス鋼については、レーザフラッシュ法が用いられる。金属については、このレーザフラッシュ法が好ましく用いられる。PTFEについては、JIS A 1412−2:1999に記載のHFM法が用いられる。樹脂については、このHFM法が好ましく用いられる。熱伝導率の測定では、物質ごとに最適な測定方法が選択されうる。最適な測定方法とは、熱伝導率が測定可能であり、かつ測定値のばらつきが最も少ない方法を意味する。例えば、レーザフラッシュ法、GHP法(JIS A 1412−1:1999)、HFM法(JIS A 1412−2:1999)、円筒法(JIS A 1412−3:1999)等の中から、最適な測定方法が選択されうる。なお、本願における熱伝導率は、25℃における熱伝導率とされうる。
なお、上述のレーザフラッシュ法の手順として、以下が例示される。
(1)試料の表面(照射面)及び裏面に黒化材(カーボンスプレー)を塗布する。
(2)パルスレーザー光を試料の表面(照射面)に照射し、時間と試料温度との関係を示す温度履歴曲線を得る。
(3)温度上昇量θmの逆数から比熱Cpを求める。比熱Cpは次式により算出される。なお、Qは試料に加えられた熱量(パルス光エネルギー)であり、Mは試料の質量である。
Cp = Q/(M・θm)
(4)パルス状のレーザーの照射によって加熱された試料の裏面(照射面とは反対側の面)における温度応答を、ハーフタイム法で解析することにより、熱拡散率αを求める。
(5)次式により、熱伝導率λを算出する。熱伝導率λは、比熱Cp、熱拡散率α及び試料の密度ρの積で算出される
λ = α・Cp・ρ
過剰な熱を逃げやすくして加熱温度を均一化する観点から、高熱伝導性部材の熱伝導率は、1W/(m・k)以上が好ましく、2W/(m・k)以上がより好ましく、5W/(m・k)以上がより好ましく、10W/(m・k)以上がより好ましく、15W/(m・k)以上がより好ましく、20W/(m・k)以上がより好ましく、30W/(m・k)以上がより好ましく、50W/(m・k)以上がより好ましい。熱伝導率の好ましい上限値は特に無いが、入手可能な材質を考慮すると、例えば、10000W/(m・k)以下、更には5000W/(m・k)以下とされうる。
金属等の高熱伝導性部材は、マイクロ波を通さない傾向にある。このため、本発明者は当初、高熱伝導性部材の使用は、マイクロ波の均一な照射を阻害し、加熱を不均一としうると考えていた。このため本発明者は、金属製のマンドレルよりも、樹脂製のマンドレルのほうが、加熱の均一性が高いと考えていた。ところが実際には、金属製のマンドレルのほうが、加熱の均一性に優れていた。この点は、後述の実施例によって示される。
製造される繊維強化樹脂成形体は限定されない。この繊維強化樹脂成形体の形状には、平板状部材、棒状部材、パイプ状部材、箱状部材等、あらゆる形状が含まれる。パイプ状部材の例として、ゴルフクラブのシャフト及び釣竿が挙げられる。また例えば、繊維強化樹脂成形体は、航空機部品であってもよい。例えば、繊維強化樹脂成形体は、ゴルフクラブヘッドであってもよい。高熱伝導性部材は、金型等の型部材であってもよい。上述のマンドレル100も、プリプレグ200をパイプ状に成形する型部材である。
上記実施形態では、高熱伝導性部材(マンドレル100)は、プリプレグ200が硬化された後、この硬化成形体から分離される。しかし、高熱伝導性部材が硬化成形体から分離されない形態も可能である。例えば、ゴルフクラブヘッドにおいて、金属製のヘッド本体と、繊維強化樹脂製の部材とが接合されたヘッドが考えられる。このヘッドにおけるヘッド本体は、高熱伝導性部材である。このヘッドの製造では、ヘッド本体(高熱伝導性部材)に繊維強化樹脂部材が配置され、この状態でマイクロ波が照射される。マイクロ波により繊維強化樹脂部材が硬化すると共に、ヘッド本体(高熱伝導性部材)と繊維強化樹脂部材とが接合される。このヘッド本体(高熱伝導性部材)は、分離されることなく、このままヘッドの一部として利用される。
前述のFRP巻回体300が示すように、上記実施形態において、繊維強化樹脂(プリプレグ200)は、高熱伝導性部材(マンドレル100)を覆っている。逆に言えば、高熱伝導性部材は、繊維強化樹脂を覆っていない。高熱伝導性部材は、繊維強化樹脂の内側に位置する。高熱伝導性部材は、繊維強化樹脂の内面に接している。高熱伝導性部材は、繊維強化樹脂の外面に接していない。高熱伝導性部材の材質はマイクロ波を通さないが、高熱伝導性部材は繊維強化樹脂を覆っていないので、マイクロ波は繊維強化樹脂に直接到達しうる。マイクロ波は繊維強化樹脂を直接的に加熱する。よって、効率のよい加熱が可能である。
上述の通り、本発明は、繊維強化樹脂成形体の製造方法である。また、本発明は、上述した製造方法で製造された繊維強化樹脂成形体であってもよい。繊維強化樹脂成形体に係る本発明は、製造方法の要件を用いて特定されうる。即ち、この発明は、プロダクトバイプロセス発明である。第1のプロダクトバイプロセス発明は、上述されたいずれかの製造方法により製造された繊維強化樹脂成形体である。第2のプロダクトバイプロセス発明は、上述されたいずれかの製造方法により製造されたパイプ状成形体である。
上述の通り、本発明によって加熱の均一化が達成されるが、それによって得られる繊維強化樹脂成形体の構成を特定するのは困難である。上述の通り、マイクロ波による加熱は誘導加熱及び誘電加熱を含みうるものであり、繊維自体の発熱も起こりうると考えられる。したがって例えば、繊維自体の発熱により硬化された界面付近のマトリクス樹脂は、従来の電気炉での加熱により硬化されたマトリクス樹脂とは異なる状態にあることが考えられる。しかしながら、この繊維の発熱の状況は個々の実施形態によって異なる。また、上述の誘導加熱及び誘電加熱の状況も、個々の実施形態によって異なる。更に、マイクロ波の照射の状況も、個々の実施形態によって異なる。更に、マトリクス樹脂における硬化状態の分布(部位による分子構造の相違)を解析することは実際上困難である。したがって、本発明に係る物の発明を物自体の構成として特定するのは不可能である。よって、このプロダクトバイプロセス発明は明確である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示すようなマンドレル100とプリプレグ200とを用意した。マンドレル100の外径は13.2mmであった。マンドレル100の材質は、炭素鋼であった。この炭素鋼の熱伝導率は、50W/(m・k)であった。プリプレグ200として、三菱レイヨン社製の「TR350C−100S」及び東レ社製の「P805S−3」が用いられた。プリプレグ200は、これらの市販のプリプレグを所定の寸法にカットすることにより得た。「TR350C−100S」及び「P805S−3」を所定の寸法にカットした後、これらを貼り合わせた。
マンドレル100に離型剤及びタッキングレジンを塗布した後、貼り合わせ後のプリプレグ200をこのマンドレル100に巻き付け、FRP巻回体300を得た。繊維強化樹脂の厚みT1は、1mmであった。
図3に示すように、このFRP巻回体300を、その軸方向が鉛直方向となるように立てた。土台400にFRP巻回体300を立てて固定した。この状態のFRP巻回体300を、マイクロ波加熱装置に入れて、マイクロ波を照射した。富士電波工機社製のマイクロ波加熱装置が用いられた。マイクロ波は、上方から照射された。マイクロ波の周波数は2.45GHzであった。
放射温度計を用いて、所定の時刻に繊維強化樹脂の表面温度を測定した。表面温度の測定点は、上端位置P1、中央位置P2及び下端位置P3とされた(図3参照)。繊維強化樹脂の上端から下端までの距離は、400mmであった。上端位置P1は、繊維強化樹脂の上端からの距離が30mmの地点であった。下端位置P3は、繊維強化樹脂の下端からの距離が30mmの地点であった。中央位置P2は、位置P1と位置P2との間を2等分する位置であった。実施例1におけるマイクロ波の照射時間と表面温度との関係を示すグラフが図4に示される。
[実施例2]
マンドレルの材質をステンレス鋼に変更した他は実施例1と同様にして、実施例2における各地点の温度を測定した。このステンレス鋼の熱伝導率は、20W/(m・k)であった。実施例2におけるマイクロ波の照射時間と表面温度との関係を示すグラフが図5に示される。
[比較例]
マンドレルの材質をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に変更した他は実施例1と同様にして、比較例における各地点の温度を測定した。このPTFEの熱伝導率は、0.2W/(m・k)であった。比較例におけるマイクロ波の照射時間と表面温度との関係を示すグラフが図6に示される。
実施例1では、マイクロ波の出力が3.5kWとされた。図4が示すように、端部P1、P3と中央位置P2とがほぼ同じ速度で昇温していることが確認された。
実施例2でも、端部P1、P3と中央位置P2とがほぼ同じ速度で昇温していることが確認された。ただし、実施例1に比べると温度のバラツキが大きかった。なお実施例2では、マイクロ波の出力が3.0kWとされた。
比較例では、中央位置P2の昇温速度が遅く、端部P1、P3の昇温速度が速かった。このため、温度のバラツキが大きかった。なお、比較例では、マイクロ波の出力が1.5kWの状態で、加熱開始から9分後に、端部から煙が発生した。このため、マイクロ波の出力を1.5kWよりも大きくすることができなかった。この結果、中央位置P2の温度が非常に低く、中央位置P2を適切に硬化させることが困難であった。
本発明者は当初、PTFEのマンドレルのほうが加熱効率が高く好ましいと考えていた。PTFE分子は非共有電子対を有さず無極性であるため、マイクロ波によってほとんど加熱されない。よって、PTFEを用いることで、エネルギー損失が抑制され、加熱効率が高まると考えた。加えて、PTFEはマイクロ波を透過させるため、加熱の均一性にも有利と考えた。一方、マンドレルが金属である場合、マイクロ波が金属を透過できないので、加熱が不均一になりやすいと考えた。加えて、金属であるマンドレルには、マイクロ波によって電流が流れ、スパーク(火花)が生じるおそれがあると考えた。ところが実際に実験してみると、上述のように、PTFE製のマンドレルでは加熱が不均一となり、端部において煙が発生した。一方、金属製のマンドレルでは加熱が均一となり、良好に繊維強化樹脂を硬化させることができた。このように、予想に反した結果が得られた。
以上に示されるように、実施例の製造方法は、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された方法は、あらゆる繊維強化樹脂に適用されうる。
100・・・マンドレル
200・・・プリプレグ
300・・・FRP巻回体

Claims (8)

  1. 硬化前の繊維強化樹脂を高熱伝導性部材に固定する第1工程と、
    マイクロ波を照射して上記繊維強化樹脂を加熱及び硬化させる第2工程と、
    を含む繊維強化樹脂成形体の製造方法。
  2. 上記高熱伝導性部材の熱伝導率が10W/(m・k)以上である請求項1に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
  3. 上記高熱伝導性部材が金属部材である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記高熱伝導性部材に固定された硬化前の上記繊維強化樹脂の厚みが10mm以下である請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 上記高熱伝導性部材に固定された硬化前の上記繊維強化樹脂の厚みが1mm以下である請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 上記高熱伝導性部材が、マンドレルであり、
    上記第1工程において、上記繊維強化樹脂が上記マンドレルに巻き付けられる請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれかの製造方法により製造された繊維強化樹脂成形体。
  8. 請求項1から6のいずれかの製造方法により製造されたパイプ状成形体。
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