ナノスケール・イオン貯蔵材料は、より大きなスケールのイオン貯蔵材料とは明確に測定可能に異なる独特な性質を示す。たとえば、上述の従来のナノスケール・イオン貯蔵材料は、電気伝導度の増大、電気機械的安定性の改善、インターカレーション(間に入れること)の速度の増大および固溶体の範囲の拡大を示すことがある。
発明の1つの観点で、リン酸リチウム遷移金属材料は、イオン貯蔵材料としての使用のために提供される。このリン酸リチウム遷移金属材料は、少なくとも2つの共存相(リチウムに富むリン酸遷移金属相とリチウムが少ないリン酸遷移金属相)を含む。この2つの相の間のモル体積の差は約6.5%より小さい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属材料の上記2つの相の間のモル体積差は、約6.40%より小さく、または、約6.25%より小さく、または、約5.75%より小さく、または、約5.5%より小さい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属材料の上記少なくとも2つの共存相は、結晶性であり、各主軸について結晶パラメータを持つ単位格子により定義される。ここで、単位格子の少なくとも2つの主軸についての格子パラメータの差は3%より小さい。
1以上の実施形態において、上記単位格子のすべての主軸についての格子パラメータの差は4.7%より小さい。または、上記単位格子のすべての主軸についての格子パラメータの差は4.5%より小さい。または、上記単位格子のすべての主軸についての格子パラメータの差は4.0%より小さい。または、上記単位格子のすべての主軸についての格子パラメータの差は3.5%より小さい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最小の積にけるちがいは1.6%より小さい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータにおける最小の積の違いは1.55%より小さい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最小の積の違いは1.5%より小さい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最小の積の違いは1.35%より小さい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最小の積の違いは1.2%より小さい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最小の積の違いは1.0%より小さい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最大の積における違いは4.7%より大きい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最大の積における違いは4.8%より大きい。または、リン酸リチウム遷移金属材料のいずれか2つの主軸についての格子パラメータの最大の積における違いは4.85%より大きい。
1つの実施形態において、上記ナノスケール材料は、結晶のいずれかの主軸により形成される面を持ち、上記面にそって面積の変化として測定される歪みは、約1.6%より小さく、または、約1.5%より小さく、または、約1.4%より小さい。他の実施形態では、結晶のいずれかの主軸により形成されるいずれの面も、8%または7.5%または6%を越えるそのような歪みをもたない。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、少なくとも約20m2/g、または、少なくとも約35m2/g、または、少なくとも約50m2/gの比表面積をもつ。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、秩序構造または部分的無秩序構造のかんらん石(AxMPO4)、ナシコン(AX(M',M")2(PO4)3, VOPO4, LiVPO4F, LiFe(P2O7)またはFe4(P2O7)3の結晶構造からなるグループから選択される。ここで、Aは、アルカリイオンであり、M,M’,M”は金属である。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、Li1-xMPO4の全体の組成を持つ。ここで、Mは、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Niからなるグループから選択される少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは、0から1までの範囲にある。MはFeを含む。上記リン酸リチウム遷移金属材料は、0<x<0.3の組成範囲で固溶体であることがある。または、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、0から少なくとも約0.15の間のxの組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。または、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、0から少なくとも約0.07の間のxの組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。または、上記材料は、室温(22−25℃)で0と少なくとも約0.05の間のxの組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。または、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、低いリチウム量(たとえば0.8<x<1または0.9<x<1または0.95<x<1)で安定な固溶体を示すことがある。
1以上の実施形態において、リチウムが多いリン酸遷移金属相はLiyMPO4の組成を持ち、リチウムが少ないリン酸遷移金属相はLi1-xMPO4の組成を持つ。ここで、室温(22−25℃)で0.02<y<0.2および0.02<x<0.3である。1以上の実施形態において、このリン酸リチウム遷移金属材料は、0<x<0.15および0.02<y<0.10の組成範囲で固溶体を示すことがある。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料の固溶体は、y+xとして定義されたリチウムの組成範囲の一部を占める。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、Li1-x-zM1-zPO4の全体の組成を持つ。ここで、Mは、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Niからなるグループから選択される少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは、0から1までの範囲にあり、zは、正または負である。MはFeを含み、zは約0.15と−0.15の間にある。上記リン酸リチウム遷移金属材料は、0<x<0.15の組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。また、上記材料は、0から少なくとも約0.05の間のxの組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。また、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、室温(22−25℃)で0と少なくとも約0.07の間のxの組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。また、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、リチウムの少ない場合(たとえばx≧0.8、x≧0.9、またはx≧0.95)で固溶体を示すことがある。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、粒子、凝集された粒子、繊維または被覆からなるグループから選択された1つの形態をとる。
1以上の実施形態において、上記形態の平均最小断面次元は、約75nm以下、または、約60nm以下、または、約45nm以下である。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属材料は、分散又は凝集された粒子の形態であり、X線回折により決定された平均結晶寸法は、約800nmより小さく、または、約600nmより小さく、または、約500nmより小さく、または、約300nmより小さい。
1以上の実施形態において、上記形態は、実質的にリチウムを貯蔵しない伝導相を3wt%より少なく含む。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属材料は結晶または非晶質である。
1以上の実施形態において、カソードは、リン酸リチウム遷移金属材料を含む。たとえば、リン酸リチウム遷移金属材料は、Li1-xMPO4の全体の組成を持つ。ここで、Mは、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Niからなるグループから選択される少なくとも1つの第1列遷移金属であり、使用されるxは、0から1までの範囲にある。上記材料は、0<x<0.3または0<x<0.15の組成範囲で安定な固溶体を示すことがある。また、この電極を含む電気化学電池も提供される。
発明の他の観点では、脱リチウム化またはリチウム化の際に無秩序状態になったナノスケール結晶リン酸リチウム遷移金属が提供され、少なくとも約25m2/gの比面積をもつ。ある実施形態では、リチウムが不足したリン酸リチウム遷移金属が形成される。
発明の他の観点では、150℃より低い温度で脱リチウム化において形成された、リチウムが不足したリン酸リチウム遷移金属が提供され、少なくとも約25m2/gの比面積をもつ。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属は、秩序状態のかんらん石構造であり、不足分は、秩序状態のかんらん石のリチウム位置すなわちM1位置で生じ、すなわち、無秩序は、秩序状態のかんらん石のリチウム位置すなわちM1位置で生じる。
発明の他の観点において、提供されるリン酸リチウム遷移金属は、リチウムに不十分な固溶体を持つ無秩序状態のかんらん石に第1回の充電で転移し、そのような固溶体を150℃より低い温度で、または、100℃より低い温度で、または、50℃より低い温度で保持することである。
さらに他の観点において、高出力貯蔵バッテリーが提供される。この高出力貯蔵バッテリーは、カソード(陰極)、アノード(陽極)、それらと接触しそれらを分離する電解液、および、カソードと電気的に接続されるカソード電流コレクタ(集電器)を含む。この高出力貯蔵バッテリーは、少なくとも約100Wh/kg(205Wh/L)の比エネルギーの少なくとも約500W/kg(1000W/L)の比電力を示し、ある場合には、少なくとも約90Wh/kg(180Wh/L)の比エネルギーの少なくとも約1300W/kg(2500W/L)の比電力を示す。ある実施形態では、バッテリーのカソードは、少なくとも約25m2/gの比表面積をもつナノスケール・リン酸アルカリ遷移金属を含む。ある実施形態では、バッテリーのカソードは、約75nm以下の平均最小断面サイズをもつナノスケール・リン酸アルカリ遷移金属の粒子、繊維または被覆を含む。ある実施形態では、カソードは、化学式Li1-xMPO4の組成を含む。ここに、Mは1以上の遷移金属である。この組成は、少なくとも約25m2/gの比表面積をもち、0と少なくとも約0.03の間のxの組成範囲で、またある実施形態では、約0.15まで、安定な固溶体である。ある実施形態では、カソードは、化学式Li1-xMPO4(ここでMは1以上の遷移金属)の組成の粒子、繊維または被覆を含む。この粒子、繊維または被覆は、約75nm以下の平均最小断面寸法をもち、上記組成は、室温(22−25℃)で0と少なくとも約0.03の間のxの組成範囲で、または、ある実施形態では0.15まで、安定な固溶体である。
1つの観点において、提供されるリン酸リチウム遷移金属粉末は、少なくとも15m2/gの比表面積をもち、リン酸リチウム遷移金属のリチウム量より室温(23℃)で少なくとも2モル%少ないリチウム量、そうでなければ、約10m2/gの比表面積のバルク形状または粉末として作成される同じ組成をもつ。理解されるように、この粉末は、いずれの温度でも使用できるが、しかし、リチウム量の違いは室温に比べて決定される。
1以上の実施形態において、上記粉末は少なくとも20m2/g、または、少なくとも25m2/g、または、少なくとも30m2/gの比面積をもつ。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属はかんらん石構造を持つ。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属はLi1-xMPO4の組成であり、ここで、Mは、少なくとも1つの第1列遷移金属であり、たとえば少なくともFeである。
1つの観点において、室温で単一のかんらん石構造の結晶相を形成し、Li1-xFePO4(xは0.01より大きい)の固溶体組成をもつリン酸リチウム遷移金属が提供される。
1以上の実施形態において、xは、0.02より大きく、または、0.03より大きく、または、0.04より大きく、または、0.05より大きく、または、0.06より大きく、または、0.07より大きく、または、0.08より大きく、または、0.09より大きく、または、0.10より大きい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム鉄は、15m2/gより大きい比面積、または、20m2/gより大きい比面積、または、25m2/gより大きい比面積、または、30m2/gより大きい比面積をもつ。
1つの観点において、室温で単一のかんらん石構造の結晶相を形成し、LiyFePO4(yは0.01より大きい)の固溶体組成をもつ部分的にリチウム化されたリン酸鉄化合物が提供される。
1以上の実施形態において、yは、0.02より大きく、または、0.03より大きく、または、0.04より大きく、または、0.05より大きく、または、0.07より大きく、または、0.08より大きく、または、0.09より大きく、または、0.10より大きい。
1以上の実施形態において、リン酸リチウム遷移金属は、15m2/gより大きい比面積、または、20m2/gより大きい比面積、または、25m2/gより大きい比面積、または、30m2/gより大きい比面積をもつ。
1つの観点において、提供されるリン酸リチウム遷移金属化合物の特徴は、対向電極がリチウム金属である標準的な電気化学電池におけるリチウム貯蔵電極として用いられるとき、50%の充電状態に充電し少なくとも12時間保持した後に測定された電気化学電池の開路電圧より高い50mVの一定の過ポテンシャルでの定電圧間欠性滴定法(PITT)において、充電するときに充電電流が連続的に低下することである。
1以上の実施形態において、開路電圧は、50%充電状態に充電し25℃で少なくとも12時間保持した後に測定される。
1以上の実施形態において、開路電圧は、50%充電状態に充電し約−20℃から約55℃までの温度範囲で(たとえば、55℃、45℃、35℃、15℃、5℃、0℃、−10℃または−20℃で)少なくとも12時間保持した後に測定される。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属化合物はリン酸リチウム遷移金属Li1-xMPO4であり、ここで、Mは、少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは、0から1までの値である。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属はかんらん石構造を持つ。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属化合物はLi1-xFePO4であり、Mは、少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは、0から1までの値である。
他の観点では、提供されるリン酸リチウム遷移金属化合物の特徴は、対向電極がリチウム金属である標準的な電気化学電池におけるリチウム貯蔵電極として用いられるとき、50%の充電状態に充電し少なくとも12時間保持された後に測定された電気化学電池の開路電圧より高い50mVの一定の過ポテンシャルでの定電圧間欠性滴定法(PITT)において、放電するときに放電電流が連続的に低下することである。
1以上の実施形態において、上記開路電圧は、50%充電状態に充電し25℃で少なくとも12時間保持した後に測定される。
1以上の実施形態において、上記開路電圧は、50%充電状態に充電し約−20℃から約55℃までの温度範囲で(たとえば、55℃、45℃、35℃、15℃、5℃、0℃、−10℃または−20℃)で少なくとも12時間保持した後に測定される。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属化合物はLi1-xMPO4であり、Mは少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは0から1までの値である。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属はかんらん石構造を持つ。
1以上の実施形態において、上記リン酸リチウム遷移金属化合物はLi1-xFePO4であり、Mは少なくとも1つの第1列遷移金属であり、xは0から1までの値である。
上記リン酸リチウム遷移金属化合物は、リチウムイオン貯蔵装置たとえばバッテリーにおいて使用できる。
電気エネルギーを貯蔵する方法は、1以上の実施形態に記載されたリチウム貯蔵バッテリーの充電を含む。ここで、Cレートは、少なくも2Cであり、このCレートは、少なくとも5秒の期間にわたって印加された電流についての平均Cレートである。
1以上の実施形態において、上記方法は、1以上の実施形態に記載されたリチウム貯蔵バッテリーの充電を含む。ここで、Cレートは、少なくも5Cであり、または、少なくとも10Cであり、または、少なくとも15Cであり、または、少なくとも20Cであり、または、少なくとも31Cであり、または、少なくとも40Cであり、または、少なくとも50Cである。
1以上の実施形態において、Cレートは、少なくとも10秒、または少なくとも20秒、または少なくとも30秒の期間にわたって印加される電流についての平均Cレートである。
電気エネルギーを貯蔵し放出する方法は、1以上の実施形態に記載されたようなリチウム貯蔵バッテリーを少なくとも2CのCレートで充電し、少なくとも2Cのレートで放電することを含む。
1以上の実施形態において、上記方法は、少なくとも5Cから少なくとも50Cまでの範囲のCレートで充電することを含む。
1以上の実施形態において、上記方法は、少なくとも5Cから少なくとも50Cまでの範囲のレートで放電することを含む。
以下、添付の図面を参照して発明の実施の形態を説明する。これらの図面は説明の目的のためにのみ提示され、発明を限定するものではない。
ナノスケールLi1-xFePO4イオン貯蔵材料およびこの材料を用いる装置、たとえば、貯蔵バッテリー、が提供される。予期されずに発見されたことであるが、十分に小さな寸法をもちしたがって高い表面積対体積の比または比表面積をもつイオン貯蔵材料は、通常の粗い粒子の材料に比べて基本的に異なる物理的性質を提供する。特に、製造や使用において、結晶構造の型や基本的な原子配置などの全体的な構造的な類似性をもっているにもかかわらず、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、粗い粒子の材料に比べて、組成や構造について性質が異なり、また、異なりかつ改善された電気化学的な有用性と性能をもつ。関連する物理的性質のちがいが生じるのは、ナノスケール材料が、少なくとも1つの次元(たとえば、等軸粒子の直径、ナノ棒(rod)の直径または薄膜の厚さ)または2次元またや3次元で十分に小さいため、異なった化学的、熱力学的および力学的な欠陥の性質をもつためである。1以上の実施形態におけるナノスケール・イオン貯蔵材料は、ここで説明されるように、1次または2次の貯蔵バッテリーにおける使用のために顕著な電気化学的性能を示す。
特に、ナノスケールイオン貯蔵材料は、非常に高いレート性能を提供する一方、材料の固有充電容量とエネルギー密度の大きな部分を提供する。上述の異なる性質は、たとえば、製造されたままの状態において、(たとえば加熱により)熱平衡または部分的熱平衡であるとき、または、気相または凝縮相の媒体と平衡に達するとき、または、2極の電気化学的装置として組み立てられ使用される(繰り返しの充電放電サイクルを経験することを含む)ときに、あらわれることがある。
ナノスケール・イオン貯蔵材料は、結晶性(すなわちナノ結晶性)でも無定形でもありうる。ここで議論する独特な性質は、自由表面または内部表面により生成される応力または表面の近くにおける固体の挙動から生じると考えられ、したがって、関連するナノスケールの寸法は、材料の中の自由表面または内部表面の間の分離である。たとえば、1つの微結晶または無定形である粒子について、自由表面は、ナノスケール効果を決定する断面の大きさを定める。複数の微結晶からなる粒子についても、自由表面は、断面の大きさを定める。もしこれらの大きさが、後で説明する適当な寸法より小さければ、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、ナノスケールの性質を示す。全体の粒子または凝集体の大きさがこれらの断面積の大きさを超えていても、凝集体の中の1つの微結晶がもつ、凝集体の内部表面(たとえば粒界)と外部表面の間隔により定める断面の寸法が、ナノスケールの性質を提供するのに十分なほど小さいことがある。そのような材料は、電気化学的装置における使用に適していて、その装置の中で、その微結晶はナノスケールの性質を持ち、微結晶の少なくとも一部は、ナノスケール材料がその装置の中で使用されるとき電界質相に接近可能な外部表面をもつ。
ここで説明される熱力学的、力学的および電気化学的に独特な性質は、バッテリー材料の分野において前に認識されていた単純なまたは「つまらない」寸法スケーリング効果と反対に、より大きな寸法の材料に比べてナノスケール材料の性質における基本的な違いを反映する。たとえば、電極材料のレート性能は、少なくとも部分的に、貯蔵化合物におけるイオンの固相拡散により制限される。そのような状況において、レート性能の増大は、より小さな粒子またはより薄い膜の使用(薄膜バッテリーの場合)から予期される。なぜなら、拡散時間は、より短く、充電/放電レートはしたがって所定の輸送係数または拡散係数についてより速いからである。粒子の大きさのこの単純な効果は、バッテリーの分野では周知である(たとえば、電極活性材料としてのLiFePO4についての米国特許第5,910,392号、LiMn2O4に関連するZhang et al.著のSolid State Ionics 171 :25-31 (2004))。しかし、この周知の効果は、寸法を減少した材料の他の物理的性質がある寸法スケールで根本的に変わることを決して示唆してない。
別の例として、電気化学系における輸送は、表面での反応速度により制限されることがある。より微細な粒子寸法したがってより広い表面積をもつ材料は、当然に、表面反応のために利用できるより広い面積をもつ。この単純な関係は、ある寸法スケールで起る物理的性質の根本的な変化を示唆しない。しかし、小さなスケールの材料の表面または内部表面の化学は、その寸法により変わることがあり、利用可能な表面における単純な変化とは別にレート性能のためになる表面反応速度における根本的な改善を生じる(たとえば、周知のサイズスケーリング法則に基づく予期された違いとは反対に、ナノスケール材料の粗い粒子の材料の間の予期しない違いについての議論に関して、たとえば、Chiang, "Introduction and Overview: Physical Properties of Nano structured Materials," J. Electroceramics, 1 :205 (1997)参照。
後でより詳細に説明されるように、われわれは、リン酸アルカリ金属遷移金属に基づいたイオン貯蔵材料について、ナノスケールで独特な挙動や相組成を発見した。例は、かんらん石(AxMPO4)、ナシコン(AX(M',M")2(PO4)3)、VOPO4、LiVPO4F、LiFe(P2O7)またはFe4(P2O7)3の構造型のナノスケールの秩序構造または部分的に無秩序の構造を含む。ここで、Aはアルカリ金属であり、M,M',M"は金属である。多くのそのような化合物は、通常のように製造されたとき、比較的低い電子伝導度とアルカリイオン伝導度をもつので、電気化学的用途では、ナノスケール状態であることから生じる独特な性質から利益を得る。
1以上の実施形態では、ナノスケールイオン貯蔵材料は、化学式LiMPO4をもつ。ここで、Mは1以上の遷移金属である。ある実施形態では、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、秩序状態のかんらん石(Li1-xMXO4)であり、ここで、Mは、V,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiの中の1以上の元素であり、xは、リチウム挿入・脱出反応のあいだで0〜1の範囲で変わりうる。生成されたままの状態では、xは典型的には約1である。ある実施形態では、ナノスケール・イオン貯蔵材料の特別な性質は、金属、陰イオンなどの外部のイオンでドープすることにより増加される。そのような材料は、ナノスケールでLi1-xMXO4についてここで示されるのと同様な挙動を示すことが、そのような挙動の基礎をなす科学的原理に基づいて期待される。しかし、ドーピングは、材料がナノスケールで特別な性質を示すために必要ではない。
他の実施形態では、MサイトへのLiの置換がある。1つの実施形態では、Feサイトへの約5〜10%のLiの置換がある。リン酸リチウム遷移金属材料は、Li1-x-zM1-zPO4の全体の組成をもつ。ここで、Mは、V,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiのグループから選択される少なくとも1つの第1列遷移元素であり、xは、0〜1の範囲であり、zは、正または負でありうる。Mは、Feを含み、zは約0.15と−0.15の間である。この材料は、0<x<0.15の組成範囲において固溶体を示しうる。
図1は、ナノスケール・リン酸リチウム鉄イオン貯蔵材料の透過電子顕微鏡画像であり、粒子の大きさをそれらのスケールで示す。図2Aと図2Bは、それぞれ、凝集されたナノスケール・リン酸リチウム鉄材料の明視野と暗視野での透過電子顕微鏡画像を示す。図2C〜図2Fは、図2Aにおける試料についてのFe,P,O,C元素のマップを示し、これらの元素の分布が一様であること、すなわち、これらの主要組成元素の1つまたは他の元素に富んでいる識別可能な複数の相または粒子を示さない。
これらのナノ結晶形状の組成は、より大きなスケールの比較物に比べて、ここに説明されるような測定可能に独特な性質をもつ。たとえば、ナノスケール材料は、固溶体の非化学量論のより広い範囲をもち、すなわち、粗い粒子の材料よりも高い欠陥量をもつ。そのような性質は、当業者にとって周知な電気化学的方法や結晶学的方法により測定可能である。実際の用途、たとえば貯蔵バッテリーや他の電気化学的装置、のための電極において用いられるとき、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、ナノスケールでない比較可能な材料より、より高い充電レートまたは放電レートでより高い充電容量を提供する。
ここで説明された長所を実現するナノスケールの大きさは、いくつかの方法で特徴づけられる。以下の例で説明されている結果に基づいて、ナノスケールLiFePO4および他のイオン貯蔵化合物の非化学量論や関連する長所の性質は、粒子寸法が小さくなるにつれて増加する。これらの性質は、約20m2/gのBET比表面積に対応する粒子寸法より小さい粒子寸法で、著しく、測定可能であり、かつ、有益である。いくつかの実施形態では、少なくとも約25m2/g、たとえば、少なくとも約30m2/g、少なくとも約35m2/g、少なくとも約40m2/g、少なくとも約45m2/gまたは少なくとも約50m2/g、のBET比表面積をもつ材料が用いられる。ここで用いられている「BET法」は、粉末の特性記述の技術の当業者にとって周知であるブルナー、エメットおよびテラーの方法をいう。この方法では、気相分子(N2など)は1つの温度(たとえば77K)で材料の表面に凝縮されるが、ここで単位面積あたりの凝縮気体の被覆率は周知である。試料の上に凝縮した気体の全体の量は、次に加熱により遊離されているときに測定される。
BET比表面積のある与えられた値について、材料の比重がわかっていると、対応する「等価球状粒子寸法」も計算できる。これは、材料が同じ寸法の球状粒子の形状であったと仮定した場合に、測定された表面積を生じる粒子径であり、粒子の形状が等軸であれば数で平均した寸法すなわち平均粒子寸法のよい近似である。後で説明するいくつかの例で説明されるナノ材料の粒子形態はほぼ球状であり、BET比表面積から計算される等価球状粒子寸法は、電子顕微鏡による直接に観察される平均粒子径に非常に近い。さらに、微結晶または1次粒子の寸法は、本発明の材料が結晶性であるとき、当業者に周知であるX線回折線半値幅増大法により決められる。こうして、ある実施形態では、ここで説明されているナノ材料は、約100nm以下の平均直径をもつ。いくつかの実施形態では、平均直径は、約75nm以下、たとえば、約70nm以下、約60nm以下、約50nm以下、約45nm以下、約40nm以下または約35nm以下である。
ナノ材料の独特な性質は、最小の断面の大きさに依存することがある。断面の大きさは、ここでは、分離されたまたは分離可能な対象物の重心をとおる直線のグループであると理解される。球状形態を仮定することにより、等価球状粒子寸法は、微粒子材料の最大の平均断面寸法を与える。他方、非常に薄いが連続的な膜、または、非常に薄いが連続的な繊維は、膜の面にまたは繊維の軸において寸法はナノスケールよりはるかに大きいけれども、ナノスケール効果を示す。しかし、いくつかの実施形態では、異方的な粒子、たとえばナノ棒、ナノ小板、ナノ繊維または連続的薄膜について、比表面積と等価球状粒子寸法は、ナノ材料が特別な性質を示す境界である特性寸法を十分には決定できないことがある。すなわち、非常に異方的な粒子形状について、いくつかの例ではBET表面積は上述の値より大きいことがあるが、なお、その材料は、ここで説明したナノスケール性質を示すのに十分に小さい最小の特徴的な大きさを示す。
もし粒子形態が周知であり試料の中の粒子の間で一様である(たとえばナノ棒またはナノ小板の平均寸法と縦横比が既知であり、または、そのようなパラメータの分布が既知である)ならば、ナノスケール挙動がそれ以上で観察される境界値である比表面積は、与えられた粒子形状について計算できる。しかし、単純化すると、少なくともいくつかの実施形態では、粉末の基本粒子が約100nm(平均値を得るために数で平均することに基づいて)以下の最小断面寸法を示すならば、ナノスケール挙動が観測される。いくつかの例では、最小断面寸法は約75nm以下であり、たとえば、約70nm以下、約60nm以下、約50nm以下、約45nm以下、約40nm以下または約35nm以下である。これらの寸法は、種々の方法(透過型または2次電子型の電子顕微鏡または原子間力顕微鏡を用いた直接測定を含む)を用いて測定できる。ここで、1つの基本的な粒子寸法は、BET表面積測定により材料の露出された表面に気体を吸着することにより求められ特徴的な空間寸法であると考えられる。実質的に十分に凝縮した多結晶の凝集体の場合、基本粒子寸法は、凝集体の大きさである。十分に分散された個々の微結晶の場合、基本粒子寸法は、微結晶の大きさである。焼成された網または粒子の多孔性集合体に結合された粒子の場合、基本粒子寸法は、網の分岐の断面厚さまたは集合体の外に開いている孔の間隔である。凝集された粉末の場合、塊状体は、約800nm以下、または約600nm以下、または約500nm以下、または約300nm以下の平均微結晶寸法をもつ。いくつかの実施形態では、ナノスケール材料は、薄膜または被覆(任意の寸法の粒子の上の被覆を含む)である。ここで、この薄膜または被覆は、約100nm以下の平均厚さをもち、いくつかの実施形態では、約75nm以下の平均粒子径、たとえば、約70nm以下、60nm以下、50nm以下、45nm以下、40nm以下または35nm以下、の平均粒子径をもつ。膜または被覆の厚さは、種々の方法(膜または被覆を断面でみることができる透過電子顕微鏡または他の顕微鏡法)で測定できる。
ある実施形態では、ここで説明されたナノスケール・イオン貯蔵材料は、通常の材料から、粒子の寸法を所望範囲に減少する寸法減少プロセス(たとえば粉砕)により作成される。しかし、これは非常にエネルギーを使うプロセスであることがある。そこで、後で例において説明されるように、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、ナノスケール状態に合成することもできる。ここで、金属塩の間の固相反応、共沈などの湿式化学的方法、スプレー熱分解、機械化学的反応またはそれらの組み合わせなどの方法が用いられるが、これらに限定されない。所望の粒子寸法と比表面積をもつナノスケール材料を得るために、均一な反応体を用い、反応温度または結晶化温度を(粒子が粗くなるのを避けるために)最小にし、生成物が非常に溶解する液相の生成(これも粒子を粗くする)を避ける。特定の処理条件は、典型的には、与えられたプロセスに対して、当業者による不適当な実験なしに、確立されうる。
いくつかの実施形態では、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、非平衡の、適度な温度の技法により、たとえば、湿式化学反応または低温固体反応または熱化学法により作成される。こうして作成された材料は、非化学量論性や無秩序の増大、ドーパントの固溶性の増大などの性質を取得する。なぜなら、これらの材料は準安定状態で合成されるからであり、または、最終製品への機構的経路が、通常の高温プロセスとは異なるからである。ナノスケール形態におけるそのような無秩序は、また、電気化学的使用の条件のもとでも実質的に保たれ、ここで説明された利益を提供する。
この実験結果が得られるまで、ナノスケール・イオン貯蔵材料が、粗い粒子のイオン貯蔵材料に比べて根本的に異なる物理的性質を示すかどうかは知られていず、また、測定可能な物理的性質が異なることも知られていず、これらの違いを実現する寸法スケールも知られていなかった。いくつかの実施形態によるナノスケール・イオン貯蔵材料の使用可能で有用な効果は、以下の事項を含むが、それには限定されない。
ナノスケール・イオン貯蔵材料は、固溶体における混合原子価の遷移金属イオンのより高い濃度での共や、より高い電荷移動度を提供する複数の原子軌道の間のより狭い分離に関連される電子構造の変化、または、両方により、増大された電子伝導度をもちうる。典型的には、この増大された電子伝導度は約10−8S/cmより大きな値をもつ。
ナノスケール・イオン貯蔵材料は、貯蔵電極として使用される間に相転移を抑圧しまたは遅延することにより、増大された電気力学的な安定性、たとえば耐破砕性の向上をもつ。これは、材料およびその材料を用いる電気化学電池のより高いエネルギー、より高いレート性能、および、より長い寿命を可能にする。電気化学的サイクリングが相転移を生じるとき、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、また、複数の相の間のより少ないモル体積の差を示し、これは、リチウムの挿入と脱着の際の相転移をより容易にするのに役立つ。
イオン拡散が次元性(たとえば、結晶構造において(チャンネルにそって)1次元または(面にそって)2次元である)を減少する化合物において、ナノスケール材料は、拡散経路においてブロックする不動のイオンがあるとき、粒子からの複数の経路が存在することにより、インターカレーション速度を増大できる。拡散係数は、構造、無秩序などの他の変化がないかぎり、材料の性質であって、寸法には依存しない。この現象は、以下に説明される。空間の大きさにおいて100単位格子の幅の粒子は、各単位格子がその化合物の1化学式の単位を含むと仮定すると、1%の無秩序をもつことがあり、平均して、与えられた拡散経路をブロックする1つの無秩序原子のみをもつ。これは、拡散経路は両端から接近されるので、粒子の内側や外側への拡散についてほとんど影響を与えない。対照的に、同じ程度の無秩序をもつより大きな粒子について、ブロックするイオンは、その拡散経路の大部分への接近を妨げる。輸送されるイオン(たとえばリチウムバッテリーにおけるLi)の化学的拡散係数の特定の値は、ナノスケール材料の追加の無秩序により、典型的には、約10−16cm2/secより大きな値へ、改良される。
これらの観察された性質は、より高い充電レートと放電レートでのより高い充電貯蔵が可能なイオン貯蔵材料を提供する。
ここで説明されるナノスケール・イオン貯蔵材料は、安定に存在する組成範囲におけるより大きなスケールの材料とは異なる。少なくともいくつかの実施形態では、ナノスケール材料は、同じ温度では、粗い粒子の化合物に比べて拡張された固溶体の状態で存在できる。固溶体の非化学量論性の存在は、多数のイオン・インターカレーション化合物において示されているように、イオンと電子の輸送を改良するために重要である。
本発明の1つの観点では、名目上同じ組成の、2以上の相に分離する前の結晶相のバルクの結晶または粗い粉末よりも、与えられた温度で、はるかに広い範囲で固溶体または欠陥成分をもつナノ結晶組成が提供される。これらの特徴は、Li1-xFePO4について詳細に説明されるが、しかし、当業者にとって明らかであるが、この原理の他のイオン貯蔵材料への適用は同様な結果を提供する。
限定されない試料として、通常の化合物Li1-xFePO4は、室温で、無視できる固溶体の非化学量論性xをもつことが知られていて、xは、いくつかの文献(Delacourt et al., "Two-phase vs. one-phase Li+ extraction/insertion mechanisms in olivine-type materials," Abstract 200, 207th Meeting of The Electrochemical Society, Quebec City, CA, May 15-20, 2005; Delacourt et al., "The existence of a temperature-driven solid solution in LixFePO4 for 0 ≦x ≦1," Nature Materials, 4:254-260 (2005))によると約0.002であり、他の文献(V. Srinivasan and J. Newman, Journal of the Electrochemical Society, 151:A1517-A1529 (2004))では0.0475であり、他の文献((A. Yamada, H. Koizumi, N. Sonoyama and R. Kanno, Electrochemical and Solid State Letters, 8:A409-A413 (2005))では、0.038である。脱リチウム化されたLiyFePO4(Li1-xFePO4と共存する)において許容されるリチウム濃度は、さらに少ない。これらの特徴は、図3Aに示されるLiFePO4-FePO4についての成分・温度の相図に示される。種々のレベルのリチウムをもつリン酸鉄についての相組成は、温度とともに変わり、高い温度、たとえば150℃より上では、固溶体は広い範囲のリチウム濃度で存在する。温度が上がることは、多くのイオン貯蔵の用途で実用的でなく、実用的な用途は、室温よりわずかに高い温度に抑えられる。ほかに言及しない限り、以下では、組成とは、約100℃より低い温度、典型的には室温(22−25℃)での組成をいう。
図3Aに示される相図は、この温度範囲で、固溶体の範囲が極端に制限されていることを示す。イオン貯蔵材料について室温での電圧対組成の図は、図3Bに示され、電圧曲線が大部分の組成範囲で平らであることを示し、これは、ほとんど全部のリチウム組成範囲で2相系の存在を示す。通常の粗い粒子の形態のLi1-xFePO4において、固溶体の非化学量論性の欠如は、リチウム不足組成物が2つの非常に化学量論的な化合物(相図の端のグループの組成LiFePO4とFePO4に近い化学組成をもつ)へ分解することにより明らかである。これらの2つの化合物は、いずれも、低い電子伝導度をもち、これは、それぞれ、少なくとも部分的に、個々の微結晶におけるほとんど1つの原子価状態、Fe2+とFe3+、の存在による。ほとんど化学量論的なLiFePO4において、リチウムの拡散係数も、Liの輸送を容易にする空格子点の欠如により、非常に低い。
対照的に、約20m2/gより大きい(ある例では約30m2/gより大きい)、BET法により測定された比表面積をもつナノ結晶のLi1-xFePO4とLiyFePO4では、x(およびy)は、室温でも通常の化合物におけるよりも数倍(severalfold)大きいことがわかった。実際に、室温で、Li1-xFePO4では、xは、0.05、0.07、0.10、0.15、0.3またはそれより大きく、yは、0.05、0.1または0.2であり得る。図4Aに示されるように、破線は、Li1-xFePO4とLiyFePO4について、約50℃より低い温度でかなりの固溶体の存在を示す。図4Bは、イオン貯蔵材料の室温での電圧対組成の図を示す。曲線は、明らかにより小さな平らな領域をもち、これは、2相系の組成範囲が限られていることを示す。平らな領域につづく2つの傾いている領域は、固溶体の存在を示す。ナノスケール材料において共存している、相図の両端にある2つの相について固溶体の端の限界は、通常の材料における限界より大きい。たとえば、LiFePO4において、これは、リチウムに富むLi1-xFePO4の相におけるリチウム不足分xが大きいことや、リチウムが不足しているLiyFePO4の相におけるリチウム余剰分yが大きいことを意味し、2つの共存する相の理想的な限界組成はそれぞれLiFePO4とFePO4である。こうして、電気化学的なサイクルの間に、共存する相は大きな程度の非化学量論性を含む。この大きな程度の非化学量論性は、2相領域の中のすべての点でより多い数のFe2+とFe3+の両方が存在していることを示し、これは、材料についてより高い電子伝導度を提供する。さらに、ナノ・リン酸塩の傾いている電圧曲線は、平らな2相放電電圧プロファイルを示す材料では不可能であるか、より難しくて実行費用が高かった充電状態の監視を可能にするという機能的長所を可能にする。
改良された電子輸送速度とイオン輸送速度は、バッテリー技術において使用されるイオン貯蔵材料のレート性能を改良することは周知である。ここで説明されたあるリン酸リチウム遷移金属化合物において、電子輸送速度とイオン輸送速度は、ともに、いくつかの前に用いられた材料(たとえばLiCoO2またはLiMn2O4)における値に比べて低いが、当業者は、その輸送を改良できる方法を捜している。ナノスケール・リン酸リチウム遷移金属化合物は、種々の充電状態(リチウム濃度)で固溶体の保持を示し、得られた材料は、これらの化合物で前に得られたのよりは高いレート性能と高いエネルギーを示す。
ここで扱っている材料における非アルカリ元素の非化学量論性は、ナノ結晶の形態で変わりうる。この根本的に異なる相の挙動は、異なる程度であるけれども、組成系の各々の成分に適用する。原子レベルの無秩序の他の観点は、ナノスケールの大きさで影響される。たとえば、Li1-xFePO4において、秩序状態のかんらん石構造の、理想状態ではLiとFeによってのみ占められているM1サイトとM2サイトでのサイト占有率は、ナノスケール材料において変わりうる。2つのサイトの間でのLiイオンとFeイオンの無秩序または混合が起こり、空格子点欠陥が1つまたは2つのサイトで現れうる。また、溶質陽イオン(ドーパント)は、ナノ結晶材料においてより溶けやすくなり、または、通常の材料においてナノ結晶状態で行うように、異なるサイトを占めることがあり、結晶構造の酸素副格子での非化学量論性も起こりうる。外部イオン、たとえばイオウやハロゲン、の溶解度は、同様に増加する。ある実施形態では、個々の説明されたナノスケール・イオン貯蔵材料は、欠陥や固溶体の挙動におけるこれらの変化のうちの1以上を示す。しかし、ここで提示される実験結果に示されるように、外部の金属または陰イオンの存在は、ナノ結晶状態の特殊な性質を生成または決定するのに必要ではない。
発明の1以上の実施形態によるナノスケール材料により示される物理的性質の、通常の粗い粒子の材料に比べての違いは、標準の熱的技術(カロリメトリ)や電気化学的技術(サイクリック・ボルタンメトリ、定電流(ガルバノスタット)間欠性滴定法(GITT)または定電圧(ポテンショスタット)間欠性滴定法(PITT))により直ちに測定可能である。イオン貯蔵の用途におけるナノスケール材料の改良された性能も、ナノスケール材料を電極被覆に処方すること、非水電気化学電池を構成すること、および、種々の電流レートで充電・放電の試験をすることにより、直ちに測定可能である。
ナノスケール材料における拡大された固溶体の状態は、電気化学的方法を用いて確認できる。たとえば、ナノ結晶Li1-xFePO4の化合物は、非水電気化学電池において試験できる。ナノ結晶Li1-xFePO4は、リチウム箔などのナノ結晶電極のリチウム貯蔵容量よりずっと大きい全体のリチウム量をもつリチウム源に対して、正電極として動作する。この電気化学電池の構成は、リチウムイオン・バッテリーの分野において当業者によりしばしばリチウム半電池といわれる。そのような電池において、ナノスケール・イオン貯蔵材料は、典型的には炭素などの伝導性添加剤と高分子バインダーを用いて、電極に作成される。このナノスケール・イオン貯蔵材料電極は、リチウム金属対向電極から、典型的には微孔のある高分子セパレータにより、離されている。電池は次に、リチウムを伝導する非水液体電解質に浸される。電極の充電レートと放電レートは十分に速く、ナノスケール材料の電気化学的挙動が試験できる。
固溶体におけるリチウム不足の存在は、電池をはじめて充電するときナノ結晶電極から抽出されるリチウム量が、電池を放電するとき電極の中に再挿入可能なリチウム量より小さいことにより検出可能である。第1回の放電容量またはその後の放電容量に比べて第1回の充電容量が異なることは、運用する電池に組み立てられたとき、作成されたままの状態でのナノ結晶材料におけるリチウム不足の存在を明らかにする。抽出可能なリチウムは、同じ電極が飽和でとるリチウム量より少ない。図5は、組成Li0.99FePO4(例2)をもつナノスケール・リン酸リチウム鉄についてのこの挙動を示す。初めのデータは、第1回の充電容量を記録し、それにつづくデータは、異なるCレートでの放電容量を記録する。なお、C/5レートでの第1回の放電は初めの容量より11%大きい。また、90%より大きい放電容量は10Cまで維持され、これは、高い放電レートでの著しく高い容量を示している。試験は、充電と放電の両方について十分に遅いレートで同様な電圧範囲で行われ、観察された結果は、電池の構成による分極の制限または機構的制限よりは、貯蔵材料自体の性能を表す。そのような状況を保証する方法は当業者に周知である。
ナノ結晶リン酸リチウム鉄について観察されたこの挙動は、通常のすなわち粗いLiFePO4や、本当にたいていの挿入電極材料の挙動とは大きく異なる。そのような材料は、典型的には、同じ電池構成を用いたとき第1回およびそれにつづく回の放電容量より大きい第1回の充電容量を示す。1つの比較例からの結果は図6に示される。この通常の材料を図5におけるナノスケール材料と比較すると、大きな違いが明らかになる。第1に、C/5での放電容量は、第1回の充電容量から10%より大きく減り、放電容量は、放電レートの増大につれ着実に減る。
本発明の1以上の実施形態によるナノスケール材料により分け与えられる効果は、直感に反する。なぜなら、高いはじめての充電容量は、典型的には、より大きな抽出可能なリチウム量に関連されるからである。一般的にリチウム化電極材料がより高いはじめの抽出可能なリチウム量をもつことが望ましいのに対し、この例では、リチウム不足固溶体を支えるナノスケール材料の性能は、ここで説明するような種々の効果を与え、これは、わずかに少ないリチウム受容力を持つという欠点を越えることができる。
さらに、後で説明するように、本発明のナノスケール材料は、共存する相における非化学量論性x、yを支えることができ、この非化学量論性x、yは、作成された状態での材料に存在する非化学量論性以上でありうる。こうして、はじめての非化学量論的状態での作成は、ここに説明した効果を得るために、本発明の材料について要求されず、また、必要でもない。
前に説明したように、このナノスケール/イオン貯蔵材料の1つの観点は、バルクの形状では非常に限られた範囲でリチウム化形態または脱リチウム化形態でリチウム固溶体を示すかんらん石化合物が、ナノスケールの形態で製造されるとき、固溶体の範囲が拡大されるという性質である。図5と図19に示されるように、これは、材料の第1回の充電容量が第1回およびそれにつづく回の放電容量より小さいことより証明される。これらの例では、リチウム不足固溶体は、作成された状態での材料にも熱処理の後で明らかに存在し、拡大された固溶体の範囲をもつと前に説明した電気化学的にサイクルされる材料だけで存在するのではない。こうして、発明の1つの観点は、寸法に依存する非化学量論性の現象により、リン酸リチウム金属材料が、合成されたままの状態で(電気化学的に使用する前に)拡大されたリチウム非化学量論性の範囲をもつことである。リチウム非化学量論性とは、理想組成に比べてリチウム化化合物のリチウムが不足している大きさを意味し、たとえば、理想組成がLiFePO4であるときLi1-xFePO4におけるxであり、または、理想組成にくらべて、作成されたままの状態の脱リチウム化化合物の余分のリチウムの大きさを意味し、たとえば、理想組成がFePO4であるときLiyFePO4におけるyである。そのような化合物は、かんらん石構造または他の結晶構造をもち、または、非晶質または部分的に非晶質である。そのような材料の比表面積は、少なくとも15m2/gであり、より好ましくは少なくとも20m2/gであり、より好ましくは少なくとも25m2/gであり、より好ましくは少なくとも30m2/gである。リチウム非化学量論性x、yは、同じ組成であるが、より小さい比表面積の形態(たとえば約10m2/gより小さい)をもつ、製造された状態での材料のリチウム非化学量論性x、yより大きい範囲は、少なくとも2モル%、より好ましくは少なくとも4モル%、より好ましくは少なくとも6モル%でありうる。リチウム非化学量論性の大きさは、当業者に周知の方法(電気化学的滴定測定、非化学量論性の存在による格子の膨張または収縮のX線回折または中性子線回折の測定または化学分析)により測定できる。出発材料におけるリチウム非化学量論性の存在は、電子伝導、材料の相転移速度およびリチウム貯蔵バッテリーにおける性能に役立つ。
また、粗い材料より大きな非化学量論的状態すなわち欠陥のある状態で存在するという、ここで説明したナノ結晶材料の性質は、電気化学的平衡を可能にする電気化学電池における標準電極または基準電極に相対的な、ナノスケール材料の平衡または準平衡電気ポテンシャルを測定することにより示すことができる。当業者にとって周知であるが、適当な基準に対するポテンシャルをもつそのような電池の平衡電気ポテンシャルは、他の試験電極における電気的活性な種の化学ポテンシャルを決定するために使用できる。
図7は、リチウム金属対向電極が使用され適当な基準として使われている電池について正電極の活性材料の電池電圧対比容量を示す。全体の組成がLiFePO4とLio.95FeP04である2つのナノスケール・燐酸リチウム鉄材料は、通常の市販の炭素で被覆されたリン酸リチウム鉄に対して比べられる。全部で3つの電池が、観測されるべき準平衡電池電圧を可能にする遅いC/50のレートで試験される。ナノスケール材料は、さらに、別の試験から、通常の試料で起こるより平衡ポテンシャルへのずっと速い緩和を示すことが知られている。ナノスケール材料は、実質的な充電容量を示し、電圧が、比較的一定の電圧プラトー(電圧が変化しない状態)に達する前に、充電容量の上で連続的に変わることが分かる。対照的に、通常の材料についての電池電圧は、そのような変化を示さず、小さな電圧行き過ぎの後でただちにその電圧プラトーに達する。
図8は、同じ3つの試料についてのC/50充電曲線を示す。ここで、2つのナノスケール材料は、放電のはじめに、連続的に変わる電圧の容量変化を示し、これは固溶体の存在を示すが、これは通常の材料では本質的に存在しない。また、2つのナノスケール材料は、放電の終わりで、固溶体を示す、連続的に変化する電圧の広い容量変化を示す。これらの例は、ナノスケール燐酸リチウム鉄材料と通常の燐酸リチウム鉄材料についてそれぞれ図3Bと図4Bに示されている効果を示す。
本発明のナノスケール材料が拡大された固溶体のレジームをもつことを示すために使用できる他の認められる電気化学的方法は、GITTとPITTを含む。GITTでは、電気化学電池が平衡に近づいた後で測定される開路電圧(OCV)は、通常の形態とナノ結晶の形態の間で測定可能に異なる(すなわち充電状態または充電容量の関数としての)組成依存性を示す。ナノスケール材料における固溶体の範囲の拡大は、一定の開路電圧にある範囲よりはむしろ、開路電圧が組成とともに連続的に変わる組成xの領域により示される。これは、多相の平衡に対応して、xの変化にもかかわらず、リチウムについて化学ポテンシャルが一定であることを示す。そのような測定は、典型的には、当業者により±0.002V以上の精度で行え、1相の固溶体と多相の固溶体が存在する境界でのxの値を決定して、異なる材料の比較を可能にする。ナノスケール材料について、単独相の固溶体が存在できる組成xのより広い範囲がある。ナノスケール形態におけるこのより広い固溶体の範囲は、化合物により示される1以上の個々の相(ここで説明されたリチウム化の限界内で形成される中間の相を含む)について達成できる。
また、PITT法は、電極の活性化合物の電気化学的な酸化と還元が起こる電池電圧を決定するためだけでなく、そのような反応の速度と機構についての情報を提供するために有用である。PITTにおいて、電池電圧は、段階的に高くまたは低く変えられ、電池が自発的に充電または放電するときに電流が監視される。図9は、通常の炭素被覆リン酸リチウム鉄試料のPITT測定における充電の際に、電圧および電流の記録を示す。電圧が10mVのステップで増加されるごとに、電池が充電されるときに電流が観察される。ここで注意されるべきことは、電圧プラトーに達するまで容量が事実上は記録されないことである。また、電圧プラトーでの充電の間、電流は数時間のあいだにゆっくり増加し、そして減少することであり、これは、充電の間における相転移についてのゆるい速度を示す。図10は、PITT充電実験の間に各電圧ステップで電池について測定された容量を示す。ここでわかるように、プラトー電圧で大きな容量が観察されるまで、電圧を上昇しても事実上容量は記録されない。図11は、PITT放電実験の間での同じ電池についての結果を示す。ここで、第1の電圧ステップは3.8Vの充電電圧から電池の開路電圧のうえの5mVの電圧までであり、50%の充電状態で測定される。この実験において、PITT電圧が開路電圧(OCV)より約20mV低くなるまで、電池の放電は事実上みられない。
本発明のナノスケール・イオン貯蔵材料は、著しく異なってふるまう。図12は、ナノスケールLio.95FePO4材料についての充電PITT実験を示す。ここで、充電を示す実質的な電流が、2相プラトー電圧に達する前にもみられる。さらに、各々の電圧上昇ステップで、電流の極大が、図9に示されるように電流減少プロセスに入って数時間後というのではなく、ただちに観察される。これは、脱リチウム化LiyFePO4相を形成する相転移がナノスケール材料においてより容易であることを示す。図13は、PITT充電実験の間に各々の電圧ステップで電池について測定された容量を示す。ここでわかるように、プラトー電圧より下で実質的な充電が行われている。なお、充電は印加電圧が平衡電圧以上である場合にのみ起こるので、この結果は、2相プラトーの組成より下に平衡電圧をもつ組成が存在することを示す。すなわち、これは、リチウム不足固溶体Li1-xFePO4の存在を示す。図14は同じ電池についてPITT放電実験の間での結果を示す。ここで、第1の電圧ステップは、3.8Vの充電電圧から電池の開路電圧より5mV高い電圧へであり、50%の充電状態で測定される。ここで、約8mAh/gの大きな容量が、PITT電圧がなお開路電圧(OCV)より5mV高いときに測定される。放電のとき、印加電圧が平衡電圧以上になるまで駆動力が存在しないので、この結果は、プラトー電圧より上の電圧でリチウム余剰固溶体LiyFePO4の存在を示す。
ナノスケールLi1-xFePO4/LiyFePO4と通常の材料との違いは、X線回折によっても定量化できる。ナノスケールLi1-xFePO4における組成的に明瞭な非化学量論性の存在は、一意の格子定数(斜方晶単位格子内のa,b,c)と一意の単位格子体積(a×b×cの積により与えられる)とにより示される。通常の結晶のかんらん石LiFePO4は、結晶FePO4に比べて、より大きな格子定数a,bとより小さな格子定数cをもつ。したがって、LiFePO4とFePO4の間の連続的な固溶体は、リチウム濃度が0と1の間で変わるとき、格子定数の限界値の間で連続的な変化を示す。発明の1以上の実施形態による材料の格子定数は、共存する相の対応する非化学量論性を決めるために用いられる。これは、リチウム化の異なる複数の状態(異なる充電状態、SOC)、対象となる材料の注意深いX線回折測定を行うことにより達成され、この測定から、格子定数と他の結晶学的情報が、リートベルト精密化法、すなわち、バッテリー材料の合成と特性記載の技術の当業者に周知である回折データの解析法、を用いて得られる。
図15は、通常の炭素被覆リン酸リチウム鉄材料(Aldrich Chemical社)から50%SOC(充電状態)で得られた粉末X線回折パターンを示す。X線ピーク位置の内部基準を与えるために、この試料にシリコン粉末が添加される。ここでわかるように、LiFePO4かんらん石についてのピークは、この相について予想されたピーク位置と、粉末回折標準に関する合同委員会(the Joint Committee on Powder Diffraction Standards,JCPDS)からの基準01-081-1173におけるデータに基づいてよく一致する。FePO4のかんらん石形態についてのピークは、図15にも示され、JCPDSにより挙げられているいくらか異なる組成についての位置から多少ずれている。
図16は、本発明によるナノスケールLiFePO4試料から得られた、67%充電状態(SOC)での粉末X線回折パターンを示す。"LiFePO4"相と"FePO4"相の両方について、多くのピークは図15における対応する位置から変位されている。これらの材料における格子定数の正確な決定は、リートベルト精密化法を用いて、15度から135度までの広い回折角範囲(当業者において「2θ」範囲として知られている)で注意深く得られた粉末X線回折スペクトルについて行われた。ここでわかるように、発明の1以上の実施形態によるナノスケール材料は、上述の2つのかんらん石相が共存するような充電状態にあるとき、通常の材料とは明らかに異なる格子定数値をもつ。格子定数と単位格子体積は表1に示される。ここで、ナノスケール・リン酸リチウム鉄は、文献(A. S. Andersson and J. O. Thomas, J. Power Sources, 97-98: 498 (2001))で報告された通常のLiFePO4/FePO4についての同様な実験に比べて、67%の充電状態で測定された。たとえば、相図のリチウムに富む側で、ナノスケールLi1-xFePO4は、通常のLiFePO4より小さな格子定数a,bとより大きな格子定数cをもつ。リチウム不足固溶体は、通常のFePO4より大きな格子定数a,bと小さな格子定数cをもつLiyFePO4と共存する。これらの実験は、これらの材料においてより小さな非化学量論性が同様に存在するにもかかわらず、xとyが、本当に、通常のLiFePO4/FePO4における値よりも大きいことを示す。ナノスケール材料についてのリートベルト洗練化法から、約28nmの微結晶寸法が決定された。これは、計算された等価球状粒子径38.1nmに近く、試料の広い表面積が、リン酸リチウム鉄のナノスケール結晶性によるものであり、高い表面積の不純物や追加の相によるものでないことを示す。
表1 LiFePO4、FePO4、Li1-xPO4およびLiyFePO4についての格子定数と単位格子の体積
したがって、発明の材料の共存する相におけるより大きな非化学量論性の存在は、回折法を用いて直ちに測定される。xとyの値は、材料における2+と3+の遷移金属原子価の比(鉄の場合はFe2+/Fe3+)を決定し、より大きな値は、少数派の原子価状態のより高い濃度に対応する。これは、各々の相の電子伝導度を、より低いxまたはyの通常の状態における同じ相に比べて増加するという効果があり、これにより、バッテリーの電気化学的性能を向上する。さらに、Li1-xFePO4相(または、リチウムに富む側の端の相の他のいずれかの組成)の格子定数の減少は、多価遷移金属イオンを構造内で近づけるという効果をもち、これは、また、軌道の重複度を増加して、これによりバンドギャップを減らし、または、電荷移動度を増加するようにして材料の電子状態を変え、これにより電子伝導度を増加する。
リチウム不足Li1-xFePO4についての格子定数a、bは、LiFePO4についての格子定数より小さく、リチウムに富むLiyFePO4についての格子定数a、bは、FePO4についての格子定数より大きい。したがって、格子定数と単位格子体積の不整合は、本発明のナノスケール材料において減少され、これは、材料の電気化学的性能に、特に高い充電/放電レートで、深い影響をもちうる。なぜなら、電気化学電池の充電と放電の際に、1つの相が他方の相から形成される容易さは、格子定数の不整合(結晶性ならば)と2つの共存する相の相対的体積に依存するからである。
共存する相Li1-xFePO4とLiyFePO4の間の格子定数と単位格子体積は表1に報告される。これらの値から、Li1-xFePO4相からLiyFePO4相への転移(リン酸リチウム鉄を正電極として用いる電池の充電に対応する)について、また、LiyFePO4相からLi1-xFePO4相への転移(放電に対応する)について、格子定数と単位格子体積の差を、百分率の根拠で計算できる。充電のときの百分率変化は、放電のときの百分率変化に比べて、わずかに小さいことが見出された。これは、いずれの材料の中でも充電の固有のレートと放電の固有のレートの間の違いを生じることがある。しかし、ナノスケール材料と通常の材料の比較を容易にするため、格子定数または単位格子体積の違いを、表2でしたように、2つの値の差の平均値として計算してもよい。すなわち、格子定数の百分率の違いは、任意の2つの材料の間のaをこれらの2つの試料の数学的平均値で除算したものである。ここで、別に記載されていなければ、百分率の差はこのように計算される。ナノスケールLiyFePO4/Li1-xFePO4について、格子定数の違いはΔa=4.36%、Δb=3.07%およびΔc=-1.75%であり、単位格子体積の違いはΔV = 5.69%である。これと比べると、相図の端にある物質について、通常のLiFePO4/FePO4では、対応する数値は、Δa=5.11%、Δb=3.68%、Δc=-1.93%およびΔV=6.87%である。また、50%充電状態でとられた通常の材料(Aldrich Chemical社)も測定した。ここで、共存する組成は、非化学量論性の小さな許容範囲をもつ。ここで、違いはΔa=4.91%、Δb=3.64%、Δc=-2.03%およびΔV=6.52%である。これらの格子定数と単位格子体積の違いは、表2にまとめられる。
表2には示されていないけれども、2つの極限の化合物LiyFePO4とLi1-xFePO4を分ける面の不整合歪もすぐに計算できる。電気化学サイクルリングの間において1つの相を他の相から形成することは必然的に2つの材料の間の界面(これは2次元的特徴である)を導入するので、これは重要である。表1の結果をみると、主軸a,bにより形成される面(ab面またはミラー指数で表すと{110}面)はLiyFePO4とLi1-xFePO4の間で最大の面積の差をもつ。ac面(すなわち{101}面)は、次の大きな違いをもち、bc面(すなわち{011}面)は、最も小さい違いをもつ。これは、bc面が、1つの相が他の相の上に(または他の相が1つの相の上に)軸方向に(topotaxially)に成長するのにもっとも好ましい方位であることを示す。表1においてナノスケール材料と通常の材料を比べると、これらの違いは、ナノスケール材料についてそれぞれ7.43%、2.62%および1.32%であり、通常の材料についてそれぞれ8.79%、3.19%および1.76%である。50%SOCで測定されたAldrich社の材料において、これらの違いは、それぞれ8.55%、2.88%および1.62%である。こうして、1つの実施形態では、発明のナノスケール材料は、結晶のいずれかの主軸(この主軸にそって、面積の変化として測定される歪みは約1.6%より、または約1.5%より、または約1.4%より小さい)により形成される面ともつことにより定義される。(この主軸にそって面積の変化として測定される歪みは、約1.6%より小さく、または約1.5%より小さく、または約1.4%より小さい。)
他の実施形態によると、結晶のいずれかの主軸により形成される面は、いずれも、8%または7.5%または6%を越えるような歪みをもつことはない。
表2 格子定数と単位格子のデータ
ナノスケール材料と通常の材料の間のこれらの違いは、これらの無機化合物の弾性定数が非常に高く、たとえば、100GPaのオーダーであるという事実により、著しい。格子定数と単位格子体積の小さな百分率の違いは、もしこれらの非常に固い固体が破壊されることなく歪みを適応させるようにするならば、大きな弾性エネルギーを生じる。本発明のナノスケール材料を、共存する相が格子定数の小さい差や小さな単位格子体積の差をもつように設計することにより、1つの相を他方の相に転移するのに要するエネルギーが減少され、力学的破壊の容易さやサイクルの間の欠陥生成(いわゆる「電気化学的研磨」)が最小にされ、本発明の材料についての例外的に長いサイクル寿命に導く。
また、本発明の材料においてみられる利益が実現できなくなる限界粒子寸法がある一方、当業者に知られている合成法により得ることができる粒子寸法の小さい側の限界が事実上ないことが認識される。本発明のナノスケール材料の粒子寸法が減少するにつれ、与えられた合成法または試験条件での非化学量論性x、yの大きさが増加し、共存する相の間の格子定数と単位格子体積の違いが同様に減少する。すなわち、図4を参照して、2相領域の境界は、組成において内側に動き、温度において下側に動く。十分に小さい粒子寸法について、完全な固溶体は、室温で達成可能である。
再充電可能なバッテリーのサイクル寿命は、典型的には、特定の電圧範囲にわたる特定の電流レートでの充電/放電サイクルの数として定義される。それを越えると、バッテリーの容量は、初期値のある百分率に減少する。LiFePO4かんらん石とその組成誘導体を含む、通常のカソード活性材料と、これらの材料を含む再充電可能なバッテリーは、典型的には、約2Vから3.8Vの電圧範囲にわたって、約1Cの電流レートで、容量がその初期値の80%に減少する前に1000サイクルより少ないサイクル寿命を示す。対照的に、本発明の材料と装置は、この量だけ容量が減少するまえに、1000を超えるサイクルを耐え、2000を超えることもあり、ある例では5000を超える。より高い充電/放電レート、たとえば、同じ電圧範囲で5Cの充電/放電レートでは、通常の材料は、典型的には、容量がその初期値の80%に減少する前に約500サイクルより少ないサイクル寿命を示す。対照的に、本発明の材料と装置は、この量だけ容量が減少するまえに、1000を超える十分な充電/放電サイクルを示す。
高出力バッテリーの多くの用途(ハイブリッド電気自動車を含むがこれに限定されない)は、十分なサイクリングよりは、より狭い電圧または容量の範囲にわたって高レートの充電/放電のパルスを必要とする。そのような条件のもとで、本発明の材料と装置のサイクル寿命は、異常に長くなりうる。周知のパルス試験プロトコルは、米国のUnited States Advanced Battery Consortium (USABC)により規定された「HPPC」試験である。本発明の材料は、USABCにより規定された特定のエネルギーと特定の出力の要求に適うバッテリーにおいて使用されるとき、バッテリーの性能が規定されて使用限界以下に落ちる前に150,000を越えるサイクル寿命を示すことができる。
理解されるように、リチウムのインターカレーションとデインターカレーションの間に、格子定数の違いにより生じる応力は、上述の単位格子のパラメータと、対応する共存相の組成x、yとを、安定な値から一時的にずらさせる。しかし、材料の中での応力緩和と局所的平衡のための時間があると、ナノスケール材料と通常の材料との間の上述の違いがみられ、これにより、2種の材料を互いに明らかに区別する。リチウムの非化学量論性を含む材料の性質は、初めに材料を作成し電気化学的装置を組み立てたときは、まだ安定状態になっていない。再充電可能なバッテリーなどの可逆的電気化学的装置としての使用において、第1回のサイクルの間での材料の挙動は、それにつづくサイクルの間での材料の挙動に比べて重要でないことがある。したがって、単位格子パラメータとリチウム濃度の違いは、望ましくは、装置の動作電圧限界の間での少なくとも1サイクルの十分なインターカレーションとデインターカレーションの後で、かつ、材料が少なくとも12時間その充電状態におかれた後に、測定される。本発明の1以上の実施形態において、各々の相図の端での化合物における固溶体の広がりは、電気化学的サイクリングとともに増加して、1つの相から他の相への転移をバッテリーの使用につれてより容易にすることがある。これは、他の挙動のなかで、充電/放電のサイクリングとともにバッテリーのインピーダンスの減少として明らかになる。
発明の1以上の実施形態による材料において、電気化学的サイクルにおける1つの相から他の相への生成(およびその逆)は、材料がナノスケールであるということにより、また、2つの共存する相の間で格子定数と単位格子のずれをより小さくしているため、従来の材料に比べて、ずっと容易になる。容易な相転移と高い充電レートと放電レートを可能にするために不整合応力を最小にする効果は、バッテリー材料の分野では前には認識されていなかった。
また、通常の理解は、いくつかの理由により、バッテリー電極における表面高活性材料の使用を、特に正電極の側で、教示しない。その理由は、不十分な安全性、過剰な自己放電、時間とともに速いインピーダンスの変化、高温でのサイクル寿命の短縮、または作成されたバッテリーにおける望ましくないほど低いエネルギー密度を生じる低いタップ(tap)密度およびパック密度である。たとえば、周知のように、カソード活性材料LiCoO2およびLiNiO2(それらの固溶体と誘導体を含む)は、遷移金属が高く酸化された4+原子価状態で存在することにより高く荷電された状態における危険な状態をつくることがある。これらのカソード材料を用いる過充電または過熱されたリチウムイオン電池は、通常の形態でも、火災または爆発を生じる熱暴走を示すことがあり、そのような危険がより高い表面活性材料に使用により激化される場合があると一般的に考えられている。また、高温で、および、長い動作時間で、これらのカソード材料を用いるリチウムイオン電池は、面間反応によるインピーダンス上昇を示し、これは、電力性能を低下する。こうして、一般的に、ナノ結晶状態におけるこれらの材料は、安全および寿命の理由から賢明でないと考えられる。他の例として、カソード活性材料LiMn2O4は、高電力リチウムイオン・バッテリーで用いられてきたが、電界質内でのマンガンの溶解および/またはそのような電池に使用される液体電解質における残留酸による活性材料粒子の表面の陽子付加(protonation)に関連して、使用または貯蔵の後でしばしば永久的な容量損失を示す。これらの影響は、高い表面積の材料において激化されるので、常識はナノ結晶LiMn2O4の使用を教示しない。これらの観察は、ナノスケール粒子寸法は、いくつかの性質に関しては望ましくないことを示唆する。しかし、ここで説明されたナノスケール・イオン貯蔵材料を用いると、エネルギー密度と電力密度の効果を保持しつつ、そのような困難を克服できる。
本発明のナノスケール材料の、通常の材料に比べて驚くほど広い固溶体の範囲は、2つの応力によるものである。この2つの応力は、材料の表面張力と結合される大きく曲がった自由表面により働く応力と、2つの相が共存し、各々の相の1つの領域が他の相の1つの領域に応力を及ぼすときに誘起される応力である。さらに、いずれかの解釈に束縛されないが、ここに説明したナノスケール・イオン貯蔵材料の性質の、通常のより大きなスケールの材料に比べたときのちがいは、材料の全体の欠陥の熱力学的状態を変える表面近くの欠陥層(複数)の生成によるものであるとも思われる。ナノスケール結晶状態と通常の結晶状態の間の物理的性質の違いは、異なった材料と考えられるほどに明らかに異なる熱力学的性質、構造的性質および物理的性質をもつ1つの組成の結晶形態と無定形形態の間の違いになぞらえられうる。
いずれの動作のモードまたは理論にも限定されないが、以下の機構は、本発明の1以上の実施形態によるナノスケール材料の独特な性質への基礎を提供するかもしれない。格子欠陥の生成の自由エネルギーの差による、自由表面、粒界などの格子不連続性をもつイオン・共有化合物において、表面では、1以上の原子種が他の原子種に比べて多いことがある。これは、過剰な表面電荷と、固体の中へ短い距離侵入する補償空間電荷層とを生じる。後者は、荷電された欠陥からなる。空間電荷欠陥が空格子点であるなら、バルクの結晶は、全体として過剰の空格子点、すなわち、表面または界面がない場合の理想的な結晶に比べて変化された非化学量論性をもつ。この空間電荷現象は、イオン結晶において、多くの理論的及ぶ実験的研究(たとえば、Y.- M. Chiang, D. P. Birnie, III, and W.D. Kingery, Physical Ceramics: Principles for Ceramic Science and Engineering, Chapter 3, John Wiley & Sons (1997); Chiang et al., "Characterization of Grain Boundary Segregation in MgO," J. Am. Ceram. Soc, 64:383-89 (1981); Ikeda et al., "Space Charge Segregation at Grain Boundaries in Titanium Dioxide: Part I, Relationship Between Lattice Defect Chemistry and Space Charge Potential," J. Am. Ceram. Soc, 76:2437-2446 (1993); Ikeda et al, "Space Charge Segregation at Grain Boundaries in Titanium Dioxide: Part II, Model Experiments," J. Am. Ceram. Soc, 76:2447-2459 (1993))により十分に確立されている。われわれは、これらの材料においてナノ結晶の空間電荷に影響された挙動と矛盾しない非化学量論性と拡大された固溶体の挙動とを実験的に観察した。したがって、いずれの特定の理論に限定されないが、我々はこの挙動の可能な原因を扱う。
化学量論的なLiFePO4かんらん石化合物を出発点として、その自由表面をその周囲と平衡にさせていると考える。自由表面は、最低の欠陥生成エネルギーおよび/または表面に優先的に移動されるのに十分な移動度をもつイオンに富む傾向がある。LiFePO4において、このイオンは、エネルギー的にまた機構的にもっともリチウムでありそうである。リチウムに富む表面の生成は、内部をリチウム不足にし、ここで、組成におけるリチウム不足分はリチウム空格子点の存在に対応する。空間電気挙動を示す他の化合物について、リチウム不足分は、内部に一様に分布されそうではない。その代わり、リチウム空格子点は、好ましくは、空間電荷層の中で表面近くに集まり得る。この層の空間的広がりは、熱平衡で欠陥濃度、材料の誘電定数および温度に依存する。もしこの系が平衡でなければ、空間電荷層の広がりは、イオンと欠陥の輸送機構にも同様に依存する。
図17に欠陥の空間的分布が図式的に示される。空間電荷層の空間的広がりは、1ナノメートルから数ナノメートルのオーダーでありうる。空格子点または他の欠陥の表面付近での濃度は、バルク結晶において固溶体として(すなわち析出または相分離なしに)許容されるであろう濃度より数倍大きくなりうる。こうして、十分に小さいナノ粒子、ナノ棒、ナノ繊維または薄膜について、粒子の内部は、通常の粒子よりは多い測定可能なリチウム不足分をもつ。全体的に見て、粒子はいま、特に、表面でのLi+のファラデイ挙動がバルクの粒子と異なるならば、非化学量論的にふるまう。X線回折測定と電気化学的試験は、通常の材料と比べたこれらの違いを検出できる。さらに、表面のリチウムイオンは、隣の媒体たとえば液体電解質との表面反応により容易に反応され、加熱や気体との反応において酸化リチウム種や炭酸リチウム種として容易に蒸発される。そのような場合、ナノ粒子は、通常の粒子または結晶に比べて、よりリチウム不足の状態になるが、非化学量論性に寄与するこの欠陥は、通常の材料におけるようにナノ粒子に新しい相または分離される相を生じさせるよりは、むしろ固溶体として残る。また、リチウム空格子点が表面近傍で富む場合には、Fe3+/Fe2+比は、表面からの距離とともに空間的に変わり、粒子により大きな電子伝導度を全体として提供するとともに、内部におけるより表面で、より大きい電子伝導度を提供する。
また、予期せずに発見されたことであるが、高い充電レート性能を提供する材料は、高い放電レート性能を提供する材料と特性が異なる。特に、定性的に異なる相転移機構がそれ以下で生じる臨界比表面積またはそれ以上で生じる臨界粒子寸法は、充電過程(リチウム抽出)と放電過程(リチウム挿入)で異なる。一般的に、より高い比表面積またはより微細な粒子寸法が、与えられた高い放電Cレートに比べて、与えられたより高い放電Cレートを得るために要求される。例5は、そのような挙動の詳細な例が説明される。
図4Aに示されるように、ここで扱っている材料において固溶体の広がりが温度依存性をもつことが認識される。したがって、高い充電レートと高い放電レートの性能をもつための基準は、必然的に使用温度を含む。実際の使用では、貯蔵バッテリーの温度は、広く変わり、たとえば、抵抗加熱により上昇し、外部の加熱と冷却により変わる。しかし、当業者により容易に理解され実行される標準試験を用いて、固定した外部温度での性能により適当な材料を決定することもできる。1つのそのような試験は、定電圧間欠性滴定試験(PITT)である。この試験は、電気化学とバッテリー材料の技術における当業者により広く用いられていて、電圧の小さな増分と減分(<0.1V)が電気化学的電池に印加され、電流が、各々の電圧ステップについて測定される。前に示したように、ある与えられた電圧での全体の電流は、リチウム非化学量論性の大きさの尺度として使用でき、相図が確定されるのを可能にする一方、電流のレートは、材料のレート性能の尺度として使用できる。こうして、例5に説明されるように、材料の固有のレート性能はPITT測定を用いて決定できる。
本発明の材料の充電レートおよび放電レートの性能が大きく異なるという事実は、多くの用途に対して重要である。たとえば、ハイブリッド電気自動車(HEV)の用途において、バッテリーパックの放電の間に電気エネルギーを急速に送ることだけが必要なのではなく、回生用ブレーキエネルギーの最大量をとらえるために高い充電レート性能を持つことも必要である。このため、高い放電レートをもつが高い充電レートをもたないバッテリーは、ハイブリッド電気自動車についての有用性が制限される。他の例として、携帯電話またはラップトップコンピュータは、短い充電時間(速い充電レート)から利益を得る。しかし、数時間から数日の期間にわたってバッテリー電力で動作するので、放電レートは典型的にはずっと遅い。この場合、高い放電レート性能をもつが高い充電レート性能をもたないバッテリーは、その有用性が制限される。
少なくともいくつかの実施形態では、ここで説明されるナノスケール・イオン貯蔵材料は、典型的には、約5重量%より少なく、または約5重量%より少ないいずれかの追加の相を含む。この追加の相は、実質的にイオンを貯蔵しないが、追加の電気伝導度を提供することもある。そのような追加の相は、たとえば、炭素、金属、金属間化合物(リン化金属、炭化金属、窒化金属など)または混合金属間化合物(炭化窒化金属、炭化リン化金属など)を含む。ある実施形態では、貯蔵電極としての使用のため、ナノスケール材料は、典型的には、標準の方法(数重量%の高分子バインダーと、炭素などの約10重量%より少ない伝導性の追加物を追加することを含む)で電極に作成される。少なくともいくつかの実施形態では、電極は、典型的には、金属箔の一方または両方の側に被覆され、オプションとして約30マイクロメートルから約200マイクロメートルの間の被覆厚さで圧縮されて、約0.25mAh/cm2と約2mAh/cm2の間の充電貯蔵容量を提供する。そのような電極は、貯蔵バッテリーにおいて正電極または負電極として使用できる。性能は、たとえば、コイン電池またはスウェージロック(Swagelok)電池型の実験室電池を用いて、評価できる。ここで、単一層の電極が、対向電極(ナノスケール材料がリチウム貯蔵材料であるときは典型的にはリチウム金属)に対して、ガルバノスタット(定電流)試験またはポテンショスタット(定電圧)試験またはそれらの組み合わせを用いて試験される。ガルバノスタット条件では、電流レートは「Cレート」として記載でき、ここで、電流レートはC/nであり、nは、選択された電圧の上限と下限の間で電池の実質的に完全な充電または放電のために必要な時間の数である。
ある実施形態では、リチウムバッテリーにおける正電極として使用されるとき、電極は、典型的には、リチウム金属またはアノード活性リチウム貯蔵電極を負電極として用いて、巻回されたまたは積層された構成の複数の多層積層電池に組み立てられる。適当な負電極材料の発明を限定しない例は、リチウム金属、炭素、金属間化合物、または、(Al、Ag、B、Bi、Cd、Ga、Ge、In、Pb、Sb、Si、SnまたはZnなどのリチウム活性元素などを含む)金属、亜金属または金属合金を含む。負電極材料は、高レート性能のために選択又は設計できる。こうして組み立てられた貯蔵バッテリーは、正電極材料と負電極材料の間に多孔性の電子絶縁セパレータと、液体、ゲルまたは固体ポリマーの電解質とを使用できる。貯蔵バッテリーは、低い電池インピーダンスを提供するために当業者により周知の方法を用いて発展された電極処方と物理的設計および構造をもつので、ナノスケール・イオン貯蔵材料の高レート性能が利用できる。
ここで説明されたナノスケール・イオン貯蔵材料は、そのような実験室電池または貯蔵バッテリーの中で試験されるとき、粗い粒子のイオン貯蔵材料に比べて高い充電レートおよび放電レートで、大きく改善された性能を示す。典型的には、C/5以下の低いレートで電池により示される平均電圧の約120%の上限と約50%の下限からなる電圧範囲において、C/5で測定された放電容量に比べて5Cで測定された放電容量(すなわち容量保持)は、約80%以上であり、ある場合には約90%以上であり、または95%以上である。10Cのレートでは、容量保持は、約75%以上であり、ある場合には約85%以上であり、または90%以上または93%以上である。20Cのレートでは、容量保持は、約60%以上であり、ある場合には約70%以上であり、または80%以上または85%以上である。35Cのレートでは、容量保持は、約50%以上であり、ある場合には約60%以上であり、または75%以上または80%以上である。50Cのレートでは、容量保持は、約30%以上であり、ある場合には約40%以上であり、または50%以上または60%以上である。
いくつかの実施形態では、C/5以下の放電レートで少なくとも5Whのエネルギーをもつ1つの完全な巻回または積層された多層の電池の中で使用されるとき、ここで説明されたナノスケール材料は、十分な充電状態(すなわち100%の深さの放電)からの実質的に完全に放電された状態について下記のレベルの特定の電力(電力密度)と特定のエネルギー(エネルギー密度)をもつ電池を提供する。この電池は、たとえば、少なくとも約100Wh/kg(205Wh/L)の特定エネルギーで少なくとも約500W/kg(1000W/L)の特定電力を、少なくとも約95Wh/kg(190Wh/L)の特定エネルギーで少なくとも約950W/kg(2000W/L)の特定電力を、少なくとも約90Wh/kg(180Wh/L)の特定エネルギーで少なくとも約1300W/kg(2500W/L)の特定電力を、および、少なくとも約85Wh/kg(175Wh/L)の特定エネルギーで少なくとも約1600W/kg(3200W/L)の特定電力を提供できる。理解されるように、特定電力と電力密度は、より浅い深さの放電について上述の値に比べてかなり大きくなりうる。
発明を限定するものでない以下の例は、さらにいくつかの実施形態を説明する。
例1
全体の組成LiFePO4のリン酸リチウム鉄は、以下の割合の出発材料を用いて作成された。
Li2CO3 (Alfa-Aesar, 99.999%) 0.739g、
蓚酸鉄(II) (Alfa-Aesar, 99.999%) 3.598g、
リン酸アンモニウム (Aldrich, 99.998%) 2.301g
これらの基本的成分は、通常のLiFePO4の合成のための出発材料として知られているが、一方、溶媒としての高純度アセトン(reagent grade, J. T. Baker)の使用と、気体を放出する機械化学反応を出発物質に経験させる延長された混合を用いて、低炭素、非常に高い比表面積のナノスケール・リン酸塩を焼成により生じる前駆体が得られる。乾いた成分は、秤量され、十分な量の高純度アセトンと混ぜられて、自由に流れる懸濁液が得られる。この混合物は、ジルコニア製粉媒体を用いる密封ポリプロピレン・ジャーの中で24時間、ローラーで粉にされ、均一で、細かく分割された前駆体の懸濁液が得られる。次に、前駆体は、完全に乾燥され、アルゴン気体(等級5.0)が流れる管状の炉の中で、まず10時間、350℃で、次に、20時間、600℃で加熱される。熱処理の後で、比表面積がBET法で測定され、38.6m2/gであった。これについて、等価球状粒子径が計算され、5.6g/cm3の結晶密度を仮定すると43.2nmであった。炭素量は燃焼法により分析され、3重量%より低かった。したがって、測定された表面積は、ナノスケール・リン酸塩相に主に帰されうる。この手順で作成された粉末について、図1、図2のような透過電子顕微鏡撮影は、観測された平均粒子径がBET比表面積から計算される等価球状粒子径に近いことを示した。
焼成された粉末は、以下の組成
ナノスケール・リン酸リチウム鉄粉末 3.95g、
スーパーP炭素 0.50g、
Kynar 2801バインダー 0.55g、
γ-ブチロラクトン(溶媒) 28.5g
を持つ電極に作成される。これらは、混合されて、自由に流れる懸濁液を生成し、アルミニウム箔の上に一様な層として型に取られる。この被覆は、真空中で100−110℃で乾燥され、その後、約100マイクロメートルの厚さを持つと測定された。次に、Swagelok電池またはコイン電池に合うのに適した1〜2cmの円板にパンチされた。この電極の被覆は、微小孔の高分子セパレータと、負極としてのリチウム箔(正電極の理論的貯蔵容量より少なくとも10倍大きな全体のリチウム含有量)と、リチウム塩としてLiPF6を含む通常の非水リチウムイオン・バッテリー電解質とを用いて、Swagelok電池またはコイン形電池のハードウェアを用いるリチウム半電池に組み立てられた。高い充電レートまたは放電レートで高い容量を出すナノスケール材料の能力はめだっている。ここで、充電容量の保持は、図16に示されるように、同じ電圧範囲でC/5のレートで観察される容量に比べて、2.0−3.8Vの電圧範囲にわたって、あるCレートで測定される容量の百分率として記載するために用いられる。容量保持は、1.8Cのレートで、95.9%であり、4.4Cのレートで、92.1%であり、9Cのレートで、88.1%であり、18Cのレートで、82.6%であり、31Cのレートで、75.6%であり、44Cのレートで、69.1%であった。バッテリー分野の当業者が認識するように、これらは通常のイオン貯蔵材料に比べて異常に高い容量保持である。この試料について第1回の充電サイクルの間に測定される容量は、第1回の放電サイクルの間に測定される容量より約6.6%小さく、これは、製造された状態での材料の非化学量論性xが約6.6%であることを示した。
例2
全体の組成Li0.99FePO4をもつナノスケール・イオン貯蔵材料は、より大きなバッチ寸法が作成され、出発物質の異なる供給源が用いられたことを除いて、例1で説明された手順に従って合成され試験された。この組成は、以下の割合の出発材料を用いて作成された。
Li2CO3 (SQM社) 7.4337g、
蓚酸鉄(II) (Elementis社) 36.2696g、
リン酸アンモニウム (Heico社) 22.5541g
より大きな密閉されたポリプロピレン容器と鉄鋼製粉媒体は、出発材料を72時間製粉するために使用された。乾燥された粉末の焼成は、99.999%の純度の窒素の中で行われ、最終の焼成条件は700℃、5時間であった。この粉末は、BET法で測定され、比表面積は、36.7nmの等価球状粒子径に対応して、45.4m2/gであった。燃焼分析は、約3重量%の残留炭素濃度をもつことを示した。図5は、例1におけるようなSwagelockハードウェアを用いて構成された電極とリチウム半電池からの試験結果を示す。図から分かるように、約C/5のレートで測定されたとき、第1回の充電容量は、第1回の放電容量より11.5%だけ小さく、これは、試料の初めの非化学量論性は、約11.5%であることを示す。より高いCレートで、目立った容量保持が観察された。試験された3つの電池について、5Cのレートで、充電保持は約95%であり、10Cのレートで、充電保持は約90%であり、20Cのレートで、充電保持は約66−72%の範囲内であった。
例3
LiFePO4とLio 95FePO4の全体の組成をもつナノスケール・イオン貯蔵材料が、例2において説明された手順に従って、合成され、試験された。ここで、炭酸リチウムの質量は、特定された全体の組成を達成するように調節されている。LiFePO4とLi0 95FePO4の粉末は、BET法で測定され、それぞれ、39.78m2/gと46.2m2/gの比表面積をもち、41.9nmと36.1nmの等価球状粒子径に対応する。燃焼分析は、2つの粉末がそれぞれ2.3wt%と3wt%の残留炭素濃度をもつことを示した。図7と図8は、それぞれ、これらの2つの試料のC/50のレートでの充電曲線と放電曲線を、数マイクロメートルの平均粒子寸法と著しく劣るレート性能とをもつAldrich Chemical社からの市販の炭素被覆LiFePO4に比べて、示す。これらの材料の非常に高いレート性能(図19参照)により、これらの低レートの充電/放電曲線は電池の準平衡電圧を示す。これらの曲線から分かるように、連続的な充電と放電の間に、少なくとも約15%のリチウム非化学量論性と少なくとも10%のリチウム非化学量論性yが得られた。図12〜図14は、前に説明したように、ナノスケールLi0.95FePO4試料のPITT測定を示す。開路電圧(OCV)より5mV高い単独ステップの放電の間、160mAh/のC/50のレートで測定された全放電容量の10.5%が測定され(3.8Vから2Vへ)、約4.5%より大きい非化学量論性yが動的な放電条件の間に存在することを示した。開路電圧より5mV低い単独ステップの充電の間、全充電容量の10.5%が測定され(2.9Vから3.8Vへ)、約10.5%より大きい非化学量論性xが動的な充電条件の間に存在することを示した。比較のため、Aldrich Chemical社からの比較試料について開路電圧より上と下へ5mVでの容量から測定されたy値とx値がそれぞれ0.7%と1.2%である。図16と表1、表2は、前に説明したナノスケールLi1-xFePO4試料のX線粉末回折測定を示す。この試料のリートベルト精密化処理から、約28nmの結晶寸法が決定され、これは、計算された等価球面粒子径に近く、試料の高い表面積がリン酸リチウム鉄のナノスケール微結晶によるものであり、高い表面不純物または追加の相によるものでないことを示す。図19は、例2におけるように、Swagelokハードウェアを用いて構成された3つのリチウム半電池からの試験結果を示す。
例4
この予言的な例において、たとえば例1、例3に示されたような、ナノスケール・イオン貯蔵材料を用いる正電極(広い範囲のCレートでの電気化学的性能でよく特徴づけられる)は、巻回される円筒状リチウムイオン電池を構成するために使用される。数マイクロメートルの平均粒子径の石墨化メソ炭素微粒子(MCMB,大阪ガス社)などの高レート石墨アノードが用いられる。そのような電池の性能(種々のCレートでの充電容量とエネルギーを含む)は、この場合のように、プロトタイプ電池におけるこの電極の密度、厚さおよび性能が既知であれば、電池の構成部品の体積と質量からモデル化できる。3.8Vでの十分充電された状態から出発して、2.0Vの電圧下限すなわち100%の深さの放電へ放電して、このモデルは、そのような電池が、少なくとも約100Wh/kg(205Wh/L)の比エネルギーで少なくとも約500W/kg(1000W/L)の電力を、少なくとも約95Wh/kg(190Wh/L)の比エネルギーで少なくとも約950W/kg(2000W/L)の電力を、少なくとも約90Wh/kg(180Wh/L)の比エネルギーで少なくとも約1300W/kg(2500W/L)の電力を、少なくとも約85Wh/kg(175Wh/L)の比エネルギーで少なくとも約1600W/kg(3200W/L)の電力を提供する。理解されるように、より浅い深さの放電について、比電力と電力密度はこれらの値より大きく高くなりうる。
例5
例3に説明されたLiFePO4の組成の、39.8m2/gの比表面積をもつナノスケール・イオン貯蔵材料が用いられた。さらに、48.8m2/gの比表面積をもつ試料が、最終の焼成が600℃で行われたことを除いて、例2に説明されたのと同じ方法により作成された。比較のため、Aldrich Chemical社からの市販の炭素被覆LiFePO4が使用され、この試料は、例3で説明された14.8m2/gの比表面積をもつ。全部で3つの試料は、電極に作成され、例1の手順を用いてSwagelok電池で試験された。開路電圧(OCV)測定は、関心のある測定温度で、50%の充電状態で、少なくとも12時間待った後で、行われた。PITT測定は、十分に放電または充電した状態から初めて、5mVまたは10mVの電圧ステップを用いて、前に説明したように行われた。
まず図9を参照するとわかるように、Aldrich社の試料は、室温(23℃)で開路電圧(OCV)に比べて50mV高い過ポテンシャルでの充電において、特徴的な挙動を示す。この挙動において、充電電流は時間とともにゆっくり増加し、約4時間でピークに達し、ふたたび減少する。図20において、室温(23℃)での放電挙動が、5mVの電圧減分について示される。同様な挙動がみられ、一定電圧と過ポテンシャル(ここで、放電過程について「過ポテンシャル」は印加電圧がOCVより低い量をいう)において電流の絶対値はゆっくり増加し、ふたたび数時間の期間で減少する。図6に示されるように、この材料のCレートに対する放電容量は、本発明のナノスケール・イオン貯蔵材料に比べて明らかに劣っている。したがって、これは、図9と図20における電流の大きさと、この特徴的なPITT挙動が充電と放電の両方における低レート性能を生じるという図6における結果とから明らかである。
図21〜図24は、それぞれ、39.8m2/gと48.8m2/gのナノスケールLiFePO4についての対応するPITTデータを示す。図21と図22は、39.8 m2/gの試料についての23℃での充電と放電の結果を示す。図21では、最大の全体量の電流が流れる電圧ステップについて、PITT測定の下側の電流限界に達するまで電流は本質的に単調に減少し、電圧はふたたび上げられる。しかし、図22では、放電の間に、電流は時間とともに急速に減少し、また、一般的に大きな絶対値をもつ。この放電曲線の挙動は、高レートでの高い放電容量に対応し、図5と図19における挙動とは同じでないが非常に似ている。Cレートに対する充電性能は、Aldrich社の試料の場合に比べてなおかなり高いが、同等なCレートでの放電性能と同じほどは高くない。こうして、明らかに示されるように、高い充電レート挙動を得るための材料の必要条件は、高い放電レート挙動を得るための材料の必要条件と異なる。図23と図24は、48.8m2/gの比表面積をもつ試料についての同様な結果を示し、同じ結論が引き出される。
図3Aと図4Aにおける相図は、温度の変化につれて固溶体の広がりが変わること、また、それとともに材料のレート性能が変わることを意味する。このため、PITT挙動は、温度とともに変わることが予想できる。図25〜図28において、Aldrich社の試料とナノスケール試料(48.8 m2/g)について45℃でのPITT結果が示される。図25において、この上昇された温度において、Aldrich社の試料は、約4時間を超えて電流の特徴的なゆるい増加を示し、これは、不十分な充電レートの性能に対応する。図26は、45℃での放電レート挙動を示す。ここで、電流の絶対値の単調な減少が各々の電圧ステップでみられ、これは、改善された放電レート性能に対応する。したがって、この試料では、45℃で、高い放電レートで得られるエネルギー量は、室温に比べて大きく改善できるが、高レート充電で貯蔵可能なエネルギー量は実質的には改善されていない。図27と図28において、48.8m2/gの比表面積のナノスケールLiFePO4についてのPITTの結果が、充電と放電についてそれぞれ示される。比較すると、この材料は、すぐれた充電および放電の性能に対応するPITT特性を示す。同じことが、39.8m2/gの比表面積の試料についてもみられる。
こうして、この例が示すのは、第1に、与えられた材料について、一定温度で、等価Cレートでの充電容量と放電容量が異なることである。第2に、一般に、充電容量は、同じCレートでより低いことであり、これは、高い放電レート性能のみを必要とする基準にくらべて、高い充電レートのバッテリーの設計について1組の異なる選択基準を必要とする。
この開示を読むことから当業者に明らかであるが、本発明は、以上に説明された実施形態とは異なる形態で具体化できる。したがって、ここで説明された実施形態は、説明のためであって、発明を限定するものと解釈されるべきでない。発明の範囲は、添付の特許性球の範囲に記載されており、この明細書に含まれる例に限定されない。