JP2017062944A - 固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法 - Google Patents

固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法 Download PDF

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克公 松本
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孝 飯島
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Abstract

【解決課題】触媒粒子に含まれる白金粒子の高い触媒活性を損なうことなく、燃料電池の運転条件下での凝集や粗大化を防止して触媒粒子の耐久性を高め、白金原子の使用量を低減できる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、触媒、及び触媒粒子の製造方法を提供する。【解決手段】コアを構成する金属Mの金属酸化物粒子と、シェルを構成する白金粒子と、これら金属酸化物粒子と白金粒子との間に存在する結合層とを有し、結合層が金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含むMXN含有化合物の結晶相で、この結晶相の窒素Nと白金粒子の白金Ptとの間にPt-N静電的相互作用が存在する固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、この触媒粒子を用いた触媒、及び触媒粒子の製造方法である。【選択図】なし

Description

この発明は、固体高分子形燃料電池用の触媒粒子、及びこの触媒粒子を用いて調製された固体高分子形燃料電池用の触媒、並びに前記触媒粒子の製造方法に関するものであり、特に触媒粒子に含まれる白金粒子の高い触媒活性を損なうことなく、白金粒子の凝集や粗大化を防止して触媒粒子の耐久性を高め、白金の使用量を低減することができる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法に関する。
一般的な固体高分子形燃料電池は、プロトン伝導性電解質膜を挟んでアノードとなる触媒層とカソードとなる触媒層とが配置され、更にこれらを挟んで触媒層の外側にガス拡散層が配置され、更にこれらを挟んでガス拡散層の外側にセパレーターが配置された基本構造を有し、通常は、必要な出力を達成するために、上記の基本構造を単位セルとし、必要な数の単位セルをスタックして電池を構成している。
このような基本構造の固体高分子形燃料電池から電流を取り出すためには、アノードとカソードの両極に配されたセパレーターのガス流路からガス拡散層を介して、カソード側には酸素あるいは空気等の酸化性ガスを、また、アノード側には水素等の還元性ガスをそれぞれ触媒層まで供給し、各触媒層で起こる還元性ガス及び酸化性ガスの化学反応を利用して電流を取り出す。例えば、還元性ガスが水素ガスであって酸化性ガスが酸素ガスである場合には、アノード側触媒層の触媒粒子上で起こる下記の化学反応(1)と、カソード側触媒層の触媒粒子上で起こる下記の化学反応(2)との間のエネルギー差(電位差)を利用し、電流を取り出している。
→ 2H+2e(E=0V)……(1)
+4H+4e→ 2HO(E=1.23V)……(2)
そして、上記の化学反応(1)及び(2)に利用されるアノード側及び/又はカソード側の触媒層には、これら必要な化学反応(1)及び(2)を促進する機能を有する触媒金属、具体的には白金、パラジウム、金、タングステン、コバルト、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、モリブデン等の純金属や、炭化物、窒化物等の金属化合物が使用可能ではあるが、純金属としてはPtが最も高い反応活性を有することから、一般的には白金(Pt)若しくはPtを主成分とするPt合金が使用されている。ここで、Ptと共に使用される金属元素としては、触媒金属としての活性向上を目的としてCo、Ni、Fe、Pd、Au、Ru、Rh、Ir等があるが、これら金属元素の添加量は、このPt以外の金属元素の添加量が50at%を超えると、触媒金属の粒子表面におけるPt以外の金属元素の存在割合が多くなり、燃料電池の作動下で溶解して発電性能が低下する場合があることから、通常、Ptに対する原子組成百分率として50at%以下である。
また、固体高分子形燃料電池において、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置されるプロトン伝導性電解質膜としては、一般に、高分子電解質材料であるパーフルオロスルホン酸ポリマーが使用されており、このポリマーの側鎖にはスルホン酸基が存在するので、これら触媒層に存在する触媒金属は強い酸性条件下に晒されており、しかも、燃料電池の連続運転時には電位の変動が生じるだけでなく、酸化性を有する酸素ガスが供給される。このため、他の触媒金属に比べて優れた耐酸性、耐酸化性、電位変動下で溶解し難い等の性質を有する白金を触媒金属として用いた場合であっても、次第に白金粒子の凝集や溶解が発生し、発電反応に関与する白金粒子の表面積が小さくなり、燃料電池の性能低下が生じるのは避けられない。
加えて、白金(Pt)については、その資源埋蔵量に制約があり、高価であることから、国の産業上の方針として白金触媒の使用量を削減することが挙げられている(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発ロードマップ2010)。
従って、固体高分子形燃料電池の低コスト化を達成して普及を図るためには、燃料電池の運転条件である強酸性条件下、高電位条件下、及び連続運転時の電位変動の下においても、触媒粒子の凝集や溶解を抑制することができ、長期間に亘って安定した発電性能を発現させることができるという触媒粒子の耐久性を維持しつつ、白金原子の触媒活性を可及的に高めることができ、これによって白金原子の使用量を可及的に低減することができる触媒粒子の開発が必要不可欠である。
そこで、従来においても、固体高分子形燃料電池において、白金使用量を低減し、また、使用する触媒粒子の耐久性の向上を図るための試みがなされている。
例えば、特許文献1には、金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に触媒金属を結合させることにより、金属酸化物表面に触媒金属粒子を高密度で強固に固定し、触媒金属粒子の動きや凝集・粗大化を防止して耐久性に優れた触媒材料、特に燃料電池用として有用な触媒材料が開示されており、また、このような触媒材料を製造する方法としては、前記の官能基を有する化合物としてアミノ基を有する3-ブロモプロピルアミン、アミノ基を有するシランカップリング剤、チオール基を有するシランカップリング剤等を用いて前記金属酸化物の表面に窒素(N)や硫黄(S)を含む修飾基を導入し(実施例においては、チオール基を有するシランカップリング剤を用いた実施例1と、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いた実施例2とが記載されている。)、得られた表面修飾金属酸化物に白金錯体化合物を反応させ、この白金錯体化合物を還元させる方法が開示されている。
しかしながら、この特許文献1に記載された触媒材料は、金属酸化物の表面に窒素(N)や硫黄(S)を含む修飾基を導入する工程と、得られた表面修飾金属酸化物に白金錯体化合物を反応させる工程と、金属酸化物表面に結合した白金錯体化合物を還元させる工程とを経て製造されるものであることから、特にシランカップリング剤を用いて製造した場合には金属酸化物との間にシリコンが介在することになることから、触媒材料全体の平均粒子径が大きくなり、結果として表面積が小さくなるほか、固体高分子形燃料電池用の触媒として使用した際における耐久性が低下することが懸念される。しかも、一般的に、シランカップリング剤は炭化水素系の直鎖や側鎖を含むことから、その除去を目的に熱処理をしても、炭化水素に由来する成分がPt表面や近傍に残留し、触媒反応を阻害することも懸念される。更に、炭化水素成分を除去することを目的に熱処理すると、触媒微粒子は凝集し易くなり、燃料電池用触媒として使用した際に、触媒単位重量当りの表面積が低下し、燃料電池の電池性能が低くなる虞がある。
更に、非特許文献1には、金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応とハロゲンイオン捕捉剤を用いた加水分解駆動反応とからなる液相析出法が記載されている。しかしながら、この非特許文献1には、加水分解駆動反応により加水分解平衡反応を酸化物側にシフトさせて得られる金属酸化物に関して、金属酸化物粒子を形成させると共に、その表面に金属、ハロゲン、及び窒素を含む金属・ハロゲン・窒素含有化合物(MXN含有化合物)からなる結晶相を形成させることについては記載されていない。
特開2010-188,243号公報
出来成人、青井芳史「液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition)による機能性薄膜材料の合成」表面技術、第49巻(1998年)、第30〜34頁
そこで、本発明者らは、上述した固体高分子形燃料電池用の触媒粒子に関する技術的背景の下に、触媒粒子の耐久性を維持しつつ、白金原子の触媒活性を可及的に高めることができ、白金原子の使用量を可及的に低減することができる触媒粒子を開発すべく鋭意検討を進めた。
そして、このような検討を進める中で、金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応とハロゲンイオン捕捉剤を用いた加水分解駆動反応とからなる液相析出法において、金属ハロゲノ錯体として金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む化合物を使用し、しかも、この液相析出法における加水分解駆動反応を制御することにより、触媒粒子のコアを構成する金属Mの金属酸化物粒子と触媒粒子のシェルを構成する白金粒子との間に、金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相を形成させることができ、また、得られた金属酸化物粒子の表面に白金粒子を析出させた際に、前記MXN含有化合物からなる結晶相の窒素Nと白金粒子の白金Ptとの間にPt-N静電的相互作用が発現し、このPt-N静電的相互作用によって前記MXN含有化合物の結晶相が形成される触媒粒子において金属Mの金属酸化物粒子と白金粒子との間を固着する結合層として機能することを知見した。また、このようにして形成されるMXN含有化合物の結晶相を金属Mの金属酸化物粒子と白金粒子との間の結合層とすることにより、形成される触媒粒子の粒子径を可及的に小さくすることができることを知見した。
そして、このようにして得られた触媒粒子を固体高分子形燃料電池用の触媒として用いることにより、燃料電池の運転条件である強酸性条件下、高電位条件下、及び連続運転時の電位変動の下において、触媒粒子の凝集や溶解を抑制することができ、長期間に亘って安定した発電性能を発現させることができ、触媒粒子の耐久性を維持しつつ白金原子の触媒活性を可及的に高め、白金原子の使用量を可及的に低減することができることを知見した。
従って、本発明の目的は、触媒粒子に含まれる白金粒子の高い触媒活性を損なうことなく、燃料電池の運転条件(強酸性条件、高電位条件、及び連続運転時の電位変動)下での凝集や粗大化を防止して触媒粒子の耐久性を高め、白金原子の使用量を低減することができる固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このように白金原子の使用量の低減が可能であり、燃料電池の運転条件下での発電性能に優れた触媒粒子を用いた固体高分子形燃料電池用の触媒を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、上述した新たな触媒粒子の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 触媒粒子のコアを構成する金属Mの金属酸化物粒子と、触媒粒子のシェルを構成する白金粒子と、これら金属酸化物粒子と白金粒子との間に存在する結合層とを有する触媒粒子であり、
前記結合層が前記金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相であると共に、前記MXN含有化合物からなる結晶相の窒素Nと前記白金粒子の白金Ptとの間にPt-N静電的相互作用としてPt-N結合が存在し、かつ、前記結合層を形成する結晶相は、X線光電子分光法(XPS)で測定される窒素原子(N)とハロゲン原子(X)とのN/X比率が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(2) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする前記(1)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(3) 前記触媒粒子は、平均粒子径が3〜10nmであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子が炭素担体に担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒。
(5) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法であって、
前記金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面に金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、
次いで、前記液相析出法の反応系内に白金前駆体物質を添加し、液相析出法の反応系内で得られた前記金属酸化物粒子の結晶相の表面に白金粒子を析出させることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(6) 前記金属ハロゲノ錯体が、金属Mにアンモニア又は有機アミンが配位したアンミン錯塩であることを特徴とする前記(5)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(7) 前記金属Mの金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対する前記ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲であることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
(8) 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子は、そのコアを構成する金属Mの金属酸化物粒子とシェルを構成する白金粒子との間に、金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相からなる結合層が形成されており、この結合層により金属酸化物粒子と白金粒子との間にPt-N静電的相互作用が発現し、これによって平均粒子径が小さいにもかかわらず、金属酸化物粒子の表面に白金粒子が強固に固着し、白金粒子の凝集が防止され、固体高分子形燃料電池用の触媒として使用した際に発電性能に優れているだけでなく、耐久性の低下をも抑制することができ、また、白金原子の使用量を低減することができる。
また、本発明の触媒粒子を用いて調製される固体高分子形燃料電池用の触媒は、白金原子の使用量の低減が可能であるばかりでなく、燃料電池の運転条件下(強酸性条件、高電位条件、及び連続運転時の電位変動)での発電性能や耐久性に優れている。
更に、本発明の触媒粒子の製造方法によれば、平均粒子径が小さいにもかかわらず、上述した金属酸化物粒子の表面に白金粒子が強固に固着し、白金粒子の凝集が防止されて耐久性に優れた触媒粒子を製造することができる。
以下、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子は、触媒粒子のコアを構成する金属Mの金属酸化物粒子と、触媒粒子のシェルを構成する白金粒子と、これら金属酸化物粒子と白金粒子との間に存在する結合層とを有するものであり、前記結合層は前記金属Mの金属酸化物粒子の表面に形成された金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相であって、このMXN含有化合物からなる結晶相の窒素Nと前記白金粒子の白金Ptとの間にPt-N静電的相互作用に基づく引力、好ましくはPt-N結合が存在するものである。ここで、Pt-N静電的相互作用とは、イオン性分子や分極した分子間に働くクーロン相互作用、分子を構成する原子の電気陰性度の差に基づく分子の分極と双極子モーメント、イオンと双極子間の相互作用、双極子間の相互作用等に起因して発生する「引力」の場合をいう。
そして、この触媒粒子の粒子径については、特に限定されるものではないが、その平均粒子径が好ましくは3nm以上10nm以下、より好ましくは3nm以上5nm以下 であるのがよく、また、前記金属酸化物粒子の表面に結合層を介して担持された白金粒子の平均粒子径が好ましくは0.3nm以上3nm以下であるのがよく、この白金粒子が金属酸化物粒子の表面に結合層を介して均一に分散した状態で担持されていることが望ましい。ここで、平均粒子径が3nmより小さい触媒粒子は、金属酸化物粒子の結晶成長が進んでいない未熟な状態であってその製造が困難であり、反対に、触媒粒子の平均粒子径が10nmより大きくなると、幾何学的表面積が小さくなって電池性能が低くなり、所望の電池性能を発現させることが難しくなる虞がある。また、前記白金粒子の平均粒子径は、約0.3nmが物理的な下限値であり、反対に、白金粒子の平均粒子径が3nmを超えて大きくなると、酸化性ガスに暴露される最表面に位置する白金粒子と金属酸化物粒子の接合層を形成するMXN含有化合物の結晶相との間において、白金粒子の白金Ptがこの結晶相の窒素Nから享受するPt-N静電的相互作用の効果、すなわち引力が小さくなり、触媒粒子としての所望の性能が得られなくなる虞がある。
本発明において、触媒粒子を構成する金属Mの金属酸化物粒子において、金属Mとしては、燃料電池の作動条件下において耐溶解性に優れた金属である必要があり、また、比較的良好な電子伝導性を示す金属であることが好ましく、更に、液相析出法により金属酸化物粒子をより形成し易いという観点から、Ti、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であり、更に、燃料電池作動下で溶解し難いという耐溶解性の観点から、また、電子伝導性の観点から、最適には金属酸化物が半導体としての性質を有するTi及び/又はSnである。
ここで、触媒粒子の金属酸化物粒子の表面に結合層として形成される結晶相のMXN含有化合物〔但し、MはTi、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属原子であり、Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン原子である。〕で表される金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む化合物は、前記金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応と、ハロゲンイオン捕捉剤を添加して金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法において、言わば前記加水分解駆動反応を中途半端に進行させて生成物中にハロゲンX及び窒素Nが残留するように制御して得られる化合物である。
そして、この結合層を形成する前記MXN含有化合物の結晶相については、X線光電子分光法(XPS)で測定される窒素原子(N)とハロゲン原子(X)とのN/X比率〔原子百分率(at%)で表された各原子の存在量の比率〕が0.5以上2.0以下、好ましくは0.5以上1.0以下の範囲であるのがよい。このN/X比率は、Pt−N間の窒素Nによる白金Ptの固定化効果を反映しており、0.5未満であると、所望の固定化効果が発現しない虞があり、反対に、2.0を超えて高くなると、触媒粒子調製時の溶液析出法における加水分解駆動反応が必要以上に抑制され、金属酸化物の結晶の成長が十分に進まなくなり、燃料電池の作動下において金属酸化物粒子が溶解し易くなり、所望の耐久性能を発現できなくなる虞がある。
更に、本発明の触媒粒子において、金属酸化物粒子の表面に形成されて接合層として機能するMXN含有化合物の結晶相と白金粒子との間におけるPt−N間のPt-N静電的相互作用(Pt-N結合)については、Pt−N間のPt-N結合を含むPt-N静電的相互作用の存在は、XPSにより算出される結合エネルギー(eV)により確認される。具体的には、Pt4f7/2軌道の結合エネルギー位置が、通常のPt金属のPt4f7/2軌道の結合エネルギー値(72.0eV)よりも約0.3eV程度高結合エネルギー側にシフトしたこと、また、N1s軌道の結合エネルギー位置が、金属酸化物粒子の表面に残留したMXN含有化合物の結晶相の窒素源に由来するN1sの結合エネルギー値(399.5eV)よりも約0.3eV程度低結合エネルギー側にシフトしたことを確認することによって行う。
そして、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法については、この触媒粒子を構成する金属酸化物粒子の表面にMXN含有化合物の結晶相からなる結合層を形成し、更にこの結合層の上に白金粒子を生成させて白金粒子の白金Ptと結合層を形成する結晶相のMXN含有化合物の窒素Nとの間に、Pt-N静電的相互作用(Pt-N結合)が存在する触媒粒子を形成することができる方法であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面に金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、次いで、得られた前記金属酸化物粒子の結晶相の表面に白金粒子を析出させる方法であるのがよい。
ここで、上記の液相析出法で使用する金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体としては、金属MがTi、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属原子であり、また、ハロゲンXがフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン原子である金属のフッ化物錯体、塩化物錯体、臭化物錯体、又はヨウ化物錯体であり、好ましくは金属酸化物が半導体としての性質を有するTi及び/又はSnのフッ化物錯体であり、更に、窒素Nが配位子として存在する錯体であるが、好ましくは窒素Nがアンモニア又は有機アミンからなる配位子として存在するアンミン錯塩であり、より好ましくは窒素Nがアンモニア又は有機アミンからなる配位子として存在するアンミン錯塩であるのがよい。具体的には、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化スズ酸アンモニウム、フッ化ニオブ酸アンモニウム、フッ化ハフニウム酸アンモニウム、フッ化鉄酸アンモニウム、フッ化ガリウム酸アンモニウム、等を始めとして、いずれも従来公知のものを使用することができ、また、上記金属Mの金属ハロゲノ錯体については、金属Mの酸化物をフッ化水素(HF)及び/又はフッ化アンモニウム(NH4F)の水溶液中に溶解して調製された金属M酸化物/HF水溶液、金属M酸化物/NH4F、又は金属M酸化物/HF・NH4F水溶液として使用することもできる。
また、前記液相析出法により表面に結合層としてMXN含有化合物の結晶相を有する金属酸化物粒子を製造する際に使用するハロゲンイオン捕捉剤についても、ホウ酸、塩化アルミニウム、金属アルミニウム等を始めとして従来公知のものを使用することができ、また、有機溶媒についても、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパノール等を始めとして従来公知の親水基を有するものを使用することができる。
ここで、一般的な液相析出法については、例えば出来成人、青井芳史「液相析出法(LPD法:Liquid Phase Deposition)による機能性薄膜材料の合成」表面技術、第49巻(1998年)、第30〜34頁等に記載されている。
しかしながら、本発明の製造方法において、液相析出法により表面に結合層となるMXN含有化合物の結晶相を有する金属酸化物粒子を形成させるためには、金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含むMXN含有化合物と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体を用い、この金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応と、ハロゲンイオン捕捉剤を添加して金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法において、加水分解駆動反応を中途半端に進行させて生成物中にハロゲンX及び窒素Nを残留させる必要があることから、液相析出法においてその加水分解駆動反応を制御するために、ハロゲンイオン捕捉剤の使用量を制御する必要がある。
この液相析出法におけるハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量については、用いる金属ハロゲノ錯体(MXC)やハロゲンイオン捕捉剤の種類によっても異なるが、金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の比率〔X捕捉剤使用比率(XIC/MXC)〕は、XICとMXCの物質量の比率に基づいて、通常0.1以上0.5以下、好ましくは0.3以上0.5以下であるのがよい。このハロゲンイオン捕捉剤の使用量のX捕捉剤使用比率(XIC/MXC)が0.1より少ないと液相析出法における加水分解駆動反応が抑制され過ぎてハロゲンX及び窒素Nが残留するMXN含有化合物の結晶相が得られない虞があり、反対に、0.5より多くなると液相析出法における加水分解駆動反応が進行し過ぎてこの場合にも所望のMXN含有化合物の結晶相が得られない虞がある。
また、本発明の製造方法において、液相析出法により金属酸化物粒子を形成する際の反応条件については、従来の液相析出法の場合と同様の反応条件でよく、例えば、反応温度0℃以上100℃以下、好ましくは15℃以上60℃以下、及び反応時間1時間以上48時間以下、好ましくは5時間以上24時間以下の条件で、反応混合物溶液が薄白色に着色する程度となって反応が終了するまで反応させる。
本発明においては、次に、前記液相析出法の反応系内に白金前駆体物質を添加し、液相析出法の反応系内で調製された金属酸化物粒子を含む反応混合物溶液中に白金(Pt)前駆体物質を添加し、金属酸化物粒子の表面に接合層として形成されたMXN含有化合物の結晶相の上に前記白金前駆体物質を結合させ、次いで、金属酸化物粒子の結晶相の表面に結合した白金前駆体物質を金属状態の白金(Pt)に還元し、金属酸化物粒子表面の接合層(MXN含有化合物の結晶相)の上に白金粒子を担持させ、触媒粒子を調製する。ここで、白金前駆体物質としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、比較的還元され易く、白金前駆体物質の還元反応に格別な還元剤の使用を必要としない白金前駆体物質、例えばジニトロアンミン白金硝酸塩、H2PtCl6、K2PtCl6、K2PtCl4等を用いることが好ましい。
ここで、この金属酸化物粒子の結晶相の表面に白金前駆体物質を結合させる際の反応条件については、従来の金属酸化物粒子の表面に白金前駆体物質を結合させる際の反応条件と同様の反応条件でよく、例えば、反応温度15℃以上120℃以下、好ましくは25℃以上80℃以下、及び反応時間1時間以上48時間以下、好ましくは1時間以上24時間以下の条件で、反応混合物溶液が薄黄色から薄灰色となって反応が終了するまで反応させる。また、金属酸化物粒子の結晶相の表面に結合した白金前駆体物質を金属状態の白金(Pt)に還元する際の反応条件についても、従来の金属酸化物粒子の表面に結合した白金前駆体物質を金属状態の白金(Pt)に還元する際の反応条件と同様の反応条件でよく、例えば、反応温度15℃以上120℃以下、好ましくは25℃以上80℃以下、及び反応時間1時間以上48時間以下、好ましくは1時間以上24時間以下の条件で、反応混合物溶液が薄黄色から薄灰色となって反応が終了するまで反応させる。なお、上記の金属酸化物粒子の結晶相の表面に白金前駆体物質を結合させる反応と、金属酸化物粒子の結晶相の表面に結合した白金前駆体物質を金属状態の白金(Pt)に還元する反応とは、実際の反応工程では同一の反応系で進行させることができ、具体的には、MXN含有化合物の結晶相を有する金属酸化物粒子を含む溶液中に白金前駆体物質の溶液を滴下すると、結晶相の窒素Nと白金粒子の白金Ptとの間にPt-N結合等の静電的相互作用が発生し、次いで、金属酸化物粒子の表面に析出したPt原子に対して、反応系内の白金前駆体物質から白金源が供給され、数個〜10個程度の白金原子が集約したクラスターとなり、金属酸化物粒子の表面にPt粒子が析出すると考えられる。
このようにして調製された触媒粒子を炭素担体に担持させて固体高分子形燃料電池用の触媒を調製する方法についても、特に制限されるものではなく、従来公知の触媒活性粒子を担持させる各種の方法を適用することができるが、触媒粒子が平均粒子径3nm以上10nm以下の複合粒子であって凝集し易い性質を有するので、好ましくは、上で調製された触媒粒子を含む反応混合物溶液中に、所定の炭素担体を添加し、室温(10℃)以上120℃以下、好ましくは50℃以上80℃以下の温度で保持し、次いで洗浄し、分離し、乾燥して炭素担体に触媒粒子が担持された触媒を調製する方法等を例示することができる。この触媒調製の際に用いられる炭素担体は、特に制限されるものではなく、燃料電池の技術において従来公知のものを使用することができる。この炭素担体に触媒粒子を担持させる際の反応温度が室温(10℃)より低いと、炭素担体上に触媒粒子が担持されない虞があり、反対に、120℃を超えると、触媒粒子が凝集し易くなり、得られた触媒の表面積が低下して耐久試験後の電池性能が低下する虞がある。
なお、このようにして得られた固体高分子形燃料電池用の触媒についても、従来から知られている方法と同様の方法で、固体高分子形燃料電池用の触媒層を形成し、また、この触媒層を用いて固体高分子形燃料電池を製造することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子及び触媒、並びに触媒粒子の製造方法をより具体的に説明する。
1.触媒粒子及び触媒の調製
本発明の触媒粒子、及びこの触媒粒子が炭素担体に担持された本発明の触媒を調製する以下の実施例及び比較例において、使用する各種ガラス器具やプラスチックビーカー等については、傷等がなく、充分に清浄化したものを使用し、また、白金(Pt)前駆体化合物としては、ジニトロアンミン白金硝酸塩溶液を濃度0.05mol/Lとなるように蒸留水で希釈した0.05mol/L-ジニトロアンミン白金硝酸塩水溶液(Pt前駆体溶液)又はテトラクロロ白金酸カリウム(比較例2)を使用し、また、ハロゲンイオン捕捉剤として用いるホウ酸については、ホウ酸を0.05mol/Lとなるように蒸留水で希釈した濃度0.05mol/Lのホウ酸(フッ素捕捉剤)を使用し、更に、有機溶媒としては、ポリエチレングリコール200又はポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton X-100)を使用した。
〔実施例1〜6:金属酸化物粒子の金属酸化物がTi元素を含む場合〕
約200mL容量のプラスチック製ビーカー中に、金属ハロゲノ錯体(MXC)としてTi元素濃度0.05mol/Lの(NH4)2TiF6水溶液0.8gと、有機溶媒として1.9gのポリエチレングリコール200と、ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)として前記フッ素捕捉剤とを、前記金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲内となるように添加し、25℃で15時間保持して酸化チタン粒子表面にMXN含有化合物としてTi、F、及びNを含むTi-F-N含有化合物の結晶相を有する酸化チタン粒子の薄白色反応混合物溶液を得た。
次に、得られた薄白色反応混合物溶液中に前記Pt前駆体溶液10gを添加し、撹拌下に12時間反応させて金属酸化物粒子表面の結晶相の上にPt前駆体を結合させこのPt前駆体を還元して、酸化チタン粒子表面の結晶相の上にPt粒子を析出させ、前記MXN含有化合物の結晶相を接合層として酸化チタン粒子の表面にPt粒子が担持された実施例1〜6の触媒粒子を含む反応混合物溶液を得た。
このようにして得られた触媒粒子の反応混合物溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.22gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、更にこの反応混合物溶液を60分間撹拌し、引き続いて、表1に示す反応温度(触媒粒子調製時の反応温度)の60〜80℃に昇温させ、その後に蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された実施例1〜6の触媒を得た。
〔実施例7〜10:金属酸化物粒子の金属酸化物がSn元素を含む場合〕
約200mL容量のプラスチックビーカー中に、0.05mol/L濃度の(NH4)2SnF6水溶液0.8gと、有機溶媒として1.9gのポリエチレングリコール200と、ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)として前記フッ素捕捉剤とを、前記金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲内となるように添加し、25℃にて15時間保持して酸化スズ粒子表面にMXN含有化合物としてSn、F、及びNを含むSn-F-N含有化合物の結晶相を有する酸化スズ粒子の薄白色反応混合物溶液を得た。
次に、得られた薄白色反応混合物溶液中に前記Pt前駆体溶液10gを添加し、撹拌下に12時間反応させて金属酸化物粒子表面の結晶相の上にPt前駆体を結合させこのPt前駆体を還元して、酸化スズ粒子表面の結晶相の上にPt粒子を析出させ、前記MXN含有化合物の結晶相を接合層として酸化スズ粒子の表面にPt粒子が担持された実施例7〜10の触媒粒子を含む反応混合物溶液を得た。
このようにして得られた触媒粒子の反応混合物溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.22gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、更にこの反応混合物溶液を60分間撹拌し、引き続いて、表1に示す反応温度(触媒粒子調製時の反応温度)の60℃に昇温させ、その後に蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された実施例7〜10の触媒を得た。
〔実施例11〜14:金属酸化物粒子の金属酸化物がNb元素を含む場合〕
約200mL容量のプラスチックビーカー中に、0.05mol/L濃度の(NH4)NbF6水溶液0.8gと、有機溶媒として1.9gのTritonX-100と、ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)として前記フッ素捕捉剤とを、前記金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲内となるように添加し、25℃にて15時間保持して酸化ニオブ粒子表面にMXN含有化合物としてNb、F、及びNを含むNb-F-N含有化合物の結晶相を有する酸化ニオブ粒子の薄白色反応混合物溶液を得た。
次に、得られた薄白色反応混合物溶液中に前記Pt前駆体溶液10gを添加し、撹拌下に12時間反応させて金属酸化物粒子表面の結晶相の上にPt前駆体を結合させこのPt前駆体を還元して、酸化ニオブ粒子表面の結晶相の上にPt粒子を析出させ、前記MXN含有化合物の結晶相を接合層として酸化ニオブ粒子の表面にPt粒子が担持された実施例11〜14の触媒粒子を含む反応混合物溶液を得た。
このようにして得られた触媒粒子の反応混合物溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.22gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、更にこの反応混合物溶液を60分間撹拌し、引き続いて、表1に示す反応温度(触媒粒子調製時の反応温度)の60℃に昇温させ、その後に蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された実施例11〜14の触媒を得た。
〔実施例15〜18:金属酸化物粒子の金属酸化物がHf元素を含む場合〕
約200mL容量のプラスチックビーカー中に、0.05mol/L濃度の(NH4)2HfF6水溶液0.8gと、有機溶媒として1.9gのポリエチレングリコール200と、ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)として前記フッ素捕捉剤とを、前記金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲内となるように添加し、25℃にて15時間保持して酸化ハフニウム粒子表面にMXN含有化合物としてHf、F、及びNを含むHf-F-N含有化合物の結晶相を有する酸化ハフニウム粒子の薄白色反応混合物溶液を得た。
次に、得られた薄白色反応混合物溶液中に前記Pt前駆体溶液10gを添加し、撹拌下に12時間反応させて金属酸化物粒子表面の結晶相の上にPt前駆体を結合させこのPt前駆体を還元して、酸化ハフニウム粒子表面の結晶相の上にPt粒子を析出させ、前記MXN含有化合物の結晶相を接合層として酸化ハフニウム粒子の表面にPt粒子が担持された実施例15〜18の触媒粒子を含む反応混合物溶液を得た。
このようにして得られた触媒粒子の反応混合物溶液中に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕0.22gを添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、更にこの反応混合物溶液を60分間撹拌し、引き続いて、表1に示す反応温度(触媒粒子調製時の反応温度)の60℃に昇温させ、その後に蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された実施例15〜18の触媒を得た。
〔比較例1〕
金属酸化物粒子として市販のTiO2粒子(石原産業(株)製ST-21)を用い、約200mL容量のプラスチックビーカー中に、0.04mMのTiO2と、0.05mol/LのジニトロジアンミンPt硝酸水溶液10gとを仕込み、12時間撹拌した後、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕を0.22g添加し、超音波にて10分間十分に分散させ、引き続き反応溶液を60分間撹拌した。その後、100℃に昇温した後に、蒸留水を用いてろ過、洗浄を行い、炭素担体に触媒粒子が担持された比較例1の触媒を得た。
〔比較例2〕
この比較例2においては、実質的に特許文献1の実施例2を追試した。
すなわち、金属酸化物としてTiO2粒子(石原産業(株)製ST-31)を用い、また、3-アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、Pt前駆体としてテトラクロロ白金酸カリウムを用い、更に、炭素担体として高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕を使用し、炭素担体に触媒粒子が担持された比較例2の触媒を得た。
〔比較例3〜5〕
比較例3においては、金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)を0.07としたこと以外は、実施例1と同様にして炭素担体に触媒粒子が担持された比較例3の触媒を得た。
また、比較例4においては、触媒粒子調製時の反応温度を125℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして炭素担体に触媒粒子が担持された比較例4の触媒を得た。
更に、比較例5においては、金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対するハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)を3とし、MXN含有化合物が形成されないようにして、MXN含有化合物に由来する窒素Nが残留しないように液相析出法における加水分解駆動反応を完全に進行させたこと以外は、実施例1と同様にして炭素担体に触媒粒子が担持された比較例5の触媒を得た。
〔比較例6〕
比較例6においては、液相析出法を実施することなく、0.05mol/L濃度のジニトロジアンミンPt硝酸水溶液を用いて、炭素担体の高導電性カーボンブラック〔ライオン(株)製EC600JD〕にPt粒子を担持させたこと以外は、前記実施例1〜6と同様に実施し、比較例6の触媒粒子とこの触媒粒子を用いた触媒とを調製した。
2.触媒粒子の物性評価
(1) 触媒粒子の粒径の算出方法
触媒粒子の粒径については、透過型電子顕微鏡(FEI社製Tecnai)により観察されたHAADF−STEM像を用いて算出した。
すなわち、上で得られた各実施例及び比較例の触媒粒子が炭素担体に担持担持された触媒を約1mgを測り採り、10mLのエタノールで希釈し、超音波で1分間分散させて銅メッシュグリッドに滴下した。これを1晩真空乾燥させた後、サンプルホルダーにセットし、加速電圧200kVで、大きさ70nm×70nmの任意の視野を測定した。
この粒径の測定方法において、白金粒子は輝点として観察され、また、この輝点の次に明るい約3〜5nm程度の領域が金属酸化物粒子の領域として観察され、白金粒子は、金属酸化物粒子の表面に存在していることが判明した。前記白金粒子に由来する輝点と、金属酸化物粒子に由来する輝点の存在領域の縦方向と横方向の大きさを算出し、その縦方向の大きさと横方向の大きさとの平均値を1個の触媒粒子の粒径とし、この測定を70nm×70nmの任意の視野中において、それぞれ独立した触媒粒子を20個算出し、同様の操作を異なる70nm×70nmの視野で、合計10回繰り返し、200個の触媒粒子の平均粒径を算出した。
なお、触媒粒子の粒径については、以下の方法で求めてもよい。
すなわち、上で得られた各実施例及び比較例の触媒1mgを1cm×2cm程度のプラスチック製の容器に測り採り、ここにエポキシ樹脂を流し込んで1晩硬化させて硬化物を調製する。次いでこの硬化物について、ミクロトームを使用し、ダイヤモンドカッターで厚さ20〜60nmの範囲内で所定の厚さにスライスし、切り出された測定試料を銅メッシュグリッド上に担持させ、上記と同様に、透過型電子顕微鏡(FEI社製Tecnai)により観察されるHAADF−STEM像を用いて算出してもよい。
(2) X線光電子分光法(XPS)による〔N/F〕の算出方法
XPS測定は、JPS-9100〔日本電子(株)製〕を使用し、線源をAlとして15kVの条件で測定した。試料は、担体炭素に触媒粒子が担持された各実施例及び比較例の触媒を約2mmφのペレット状に成形し、当該試料の平滑面をXPSにより測定した。なお、この際に、チャージアップ補正を行うために、In金属を使用し、In3d5/2軌道の結合エネルギー(443.8eV)により補正を行った。このXPS測定により400eV付近に検出されるN1sピークと、685eV付近のF1sピークに対して、ローレンチアンにてフィッティングして波形分離を行い、N1sのピーク面積をF1sのピーク面積で除すことによって、N/F比を算出した。
(3) MXN含有化合物の結晶相の確認
各実施例及び比較例の触媒粒子におけるMXN含有化合物の結晶相の確認は、透過電子顕微鏡(TEM;FEI社製Tecnai)を用い、特性X線についてはPtの場合にMα線を、N、F、O、及びTiの場合にKα線を、また、Sn、Nb、及びHfの場合にLα線をそれぞれ使用し、加速電圧を200kVとして観察し、Ptシェル層と金属酸化物粒子との間に存在する結合層の結晶格子像が観察される領域についてEDS線分析を行い、また、解析ソフトウェア(日本電子社製アナリシス ステーション)を用いて解析した。この際に、EDS線分析により検出される各元素のうち、最大の元素の強度が20となるように積算時間を調整し、最大強度に対して10%以上の強度(すなわち、元素の強度が2以上)あるものを粒子内に含有されている元素として判定し、MXN含有化合物の結晶相にX(Ti、Sn、Nb、又はHf)、F、Nの各元素が検出されることで確認した。
なお、別の確認方法としては、電子線回折像やX線回折法により、例えば、Ti、F、Nを含む結晶相の一例として、NH4TiOF3に帰属される回折像が得られることで確認してもよい。
3.触媒層、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)の調製
上記各実施例及び比較例で調製した固体高分子形燃料電池用の触媒を用い、また、アイオノマー溶液として5質量%-ナフィオン溶液(デュポン製DE521)を用い、アルゴン気流中で触媒の質量に対してナフィオン固形分の質量が1.2倍になるようにアイオノマー溶液を加え、軽く撹拌した後、超音波で触媒を粉砕し、次いで撹拌下に触媒とナフィオンとを合わせた固形分濃度が2質量%となるように酢酸ブチルを添加し、触媒層を調製するための触媒層スラリーを作製した。
このようにして調製された触媒層スラリーをスプレー法でテフロン(登録商標)シートの片面に塗布し、80℃のアルゴン気流中10分間、続いて120℃のアルゴン気流中1時間乾燥し、固体高分子形燃料電池用の触媒層シートを得た。なお、それぞれの触媒層シートの調製時にはPtの使用量が0.10mg/cm2となるようにスプレー等の条件を設定し、このPtの使用量は、スプレー塗布前後のテフロン(登録商標)シートの乾燥質量を測定し、その差から計算して求めた。
次に、各実施例及び比較例の触媒を用いて調製した触媒層シートから2.5cm角の大きさの触媒層を2枚づつ切り出し、各触媒層が電解質膜(ナフィオン112)と接触するように2枚の触媒層の間に電解質膜を挟み込み、130℃、90kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行った。室温まで冷却した後、テフロン(登録商標)シートのみを注意深く剥がし、アノード及びカソードの触媒層を電解質膜に定着させた。更に、市販のカーボンクロス(ElectroChem社製EC-CC1-060)から2.5cm角の大きさのカーボンクロス2枚を切り出し、電解質膜に定着させたアノード及びカソードの触媒層を挟み込むように配置し、130℃、50kg/cm2の条件で10分間ホットプレスを行い、MEAを作製した。
4.固体高分子形燃料電池用触媒の性能評価
〔耐久試験〕
以上のようにして作製した各実施例及び比較例のMEAについて、セルに組み込んで燃料電池測定装置にセットし、次の手順で燃料電池の電池性能を評価した。
カソード側に空気を、また、アノード側に純水素を、1000mA/cm2の発電に必要なガス量を100%として、利用率がそれぞれ40%と70%となるように供給した。ガス圧は0.1MPaとし、また、セル温度は80℃とした。
先ず、供給する空気と純水素を、各々80℃に保温された蒸留水中でバブリングし加湿した。次に、電圧を0.6Vにして4秒間保持した後に0.9Vにして4秒保持するサイクルを1000回繰り返す耐久試験を実施し、電流密度200mA/cm2の条件のセル電圧を耐久試験後のセル電圧とした。
従って、この耐久試験後のセル電圧が高いほど、触媒、すなわち触媒粒子の耐久性が高く、電池性能に優れている。
金属酸化物粒子の種類、X補足剤使用比率(XIC/MXC)、N原子とF原子のN/F比率、触媒粒子の平均粒径(nm)、MXN含有化合物の結晶相の有無、及び触媒粒子調製時の反応温度(℃)と共に、得られた耐久試験後のセル電圧の結果を表1に示す。
実施例1〜18においては、セル電圧が0.650V以上で、顕著な耐久性を示した。
Figure 2017062944

Claims (8)

  1. 触媒粒子のコアを構成する金属Mの金属酸化物粒子と、触媒粒子のシェルを構成する白金粒子と、これら金属酸化物粒子と白金粒子との間に存在する結合層とを有する触媒粒子であり、
    前記結合層が前記金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相であると共に、前記MXN含有化合物からなる結晶相の窒素Nと前記白金粒子の白金Ptとの間にPt-N静電的相互作用としてPt-N結合が存在し、かつ、前記結合層を形成する結晶相は、X線光電子分光法(XPS)で測定される窒素原子(N)とハロゲン原子(X)とのN/X比率が0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  2. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  3. 前記触媒粒子は、平均粒子径が3〜10nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子が炭素担体に担持されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒。
  5. 前記請求項1〜3のいずれかに記載された固体高分子形燃料電池用の触媒粒子を製造するための方法であって、
    前記金属酸化物粒子を形成する金属と同じ金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応と、前記金属ハロゲノ錯体よりもより安定な金属ハロゲノ錯体を形成するハロゲンイオン捕捉剤を添加して前記金属ハロゲノ錯体の加水分解平衡反応を金属酸化物側にシフトさせる加水分解駆動反応とを利用する液相析出法により、表面に金属M、ハロゲンX、及び窒素Nを含む金属M・ハロゲンX・窒素N含有化合物(MXN含有化合物)の結晶相を有する金属酸化物粒子を形成し、
    次いで、前記液相析出法の反応系内に白金前駆体物質を添加し、液相析出法の反応系内で得られた前記金属酸化物粒子の結晶相の表面に白金粒子を析出させることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  6. 前記金属ハロゲノ錯体が、金属Mにアンモニア又は有機アミンが配位したアンミン錯塩であることを特徴とする請求項5に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  7. 前記金属Mの金属ハロゲノ錯体(MXC)の使用量に対する前記ハロゲンイオン捕捉剤(XIC)の使用量の物質量比率(XIC/MXC)が0.1〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項5又は6に記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
  8. 前記金属酸化物粒子の金属Mが、Ti、Nb、Sn、及びHfからなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用の触媒粒子の製造方法。
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CN109713330A (zh) * 2018-11-13 2019-05-03 厦门大学 燃料电池阳极催化剂及其制备方法
CN114373948A (zh) * 2022-01-17 2022-04-19 中国人民解放军国防科技大学 炭气凝胶负载铂合金氧还原电催化剂及其制备方法、应用

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109713330B (zh) * 2018-11-13 2020-07-24 厦门大学 燃料电池阳极催化剂及其制备方法
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