JP2017056564A - セキュリティ部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマス由来の材料であるセルロースナノファイバーを用い、偽造や改ざんが困難で、容易に真贋判定でき、かつ環境への負荷の小さい、セキュリティ部材を提供する。【解決手段】基材1上に塗工膜2を形成したセキュリティ部材10であって、塗工2膜が、酸化セルロースを分散処理して得られたセルロースナノファイバー3を含有し、さらには、セルロースナノファイバー3がカルボキシ基を有し、カルボキシ基の対イオンとして1から3価の金属イオンを有するセキュリティ部材10。【選択図】図1

Description

本発明はセルロースナノファイバーを用いたセキュリティ部材に関する。
紙幣、株券、商品券、宝くじ、クレジットカード等の有価証券類の他、商品に使用する封印シールやタグ類には、偽造・複製による不正使用を防止するため様々な偽造防止機能が付与されてきた。
偽造防止機能の付与方法として、例えば、従来からの手法として用紙への抄き入れや特殊物質の混抄、精巧な印刷による微細な図柄構成がある。また、紫外線を照射することで可視光にて発光する蛍光インキや赤外線領域に吸収を持つ赤外線吸吸収インキ、磁性インキなどの特殊なインキを用いて図柄を印刷し、検知器にて読み取り、真贋判定を行う方法等が挙げられる(特許文献1、2)。
しかしながら、近年は、高性能なカラーコピー、パソコンやプリンタの普及により、印刷を精巧に模したものが出回るようになり、目視による真贋判別が困難になってきている。
また、検知器による読み取りで真贋判定する場合においても、蛍光発光する機器や赤外線カメラが容易に入手可能になり、特殊インキにより印刷したパターンを読み取られてしまい、偽造や改ざんを行うことが可能になってしまう。
また、これらの特殊インキには、重金属などの環境負荷の大きな化学物質が含まれていることが多く、使用後の廃棄には問題がある。このような状況下において、偽造や改ざんが困難で、かつ環境への負荷の小さい、新たな偽造・改ざん防止技術が望まれている。
一方、近年、天然由来の環境配慮型バイオマス材料として、注目されているものにセルロースがある。セルロースは植物の細胞壁や微生物の体外分泌物、ホヤの外套膜などに含まれており、地球上でもっとも多く存在する多糖類である。そして、生分解性を有し、結晶性が高く、安定性や安全性に優れており、そのため、様々な分野へ応用展開が期待されている。
なかでも、木材パルプなどのセルロース材料に機械的解繊処理を施し、フィブリル状あるいはミクロフィブリル状にまで微細化したセルロースナノファイバーは、高強度、高耐熱性等の特徴を有し、樹脂への添加剤や各種機能性基材として盛んに研究されている。
また、セルロースを2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl(TEMPO)触媒系によって酸化反応を行うと、水系、常温、常圧などの温和な条件下で結晶表面のセルロースの持つ3つの水酸基のうち、C6位のアルコール性一級炭素のみ選択的に酸化することができ、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで変換することができる。
こうして得られた酸化セルロースは、カルボキシ基を、カルボン酸型から対イオンを有する塩型とした後、水に懸濁させ軽微な機械的処理を加えることで、カルボキシ基の電気的反発作用により容易に水分散させることができ、幅3〜4nmのミクロフィブリル単位に分散した均一なセルロースナノファイバーが得られることが知られている。
特に、TEMPO酸化セルロースナノファイバーは高い透明性を有し、高強度で、表面に高密度にカルボキシ基を有していることから多くの分野への応用が期待されている(特許文献3)。
特開平8−34946号公報 特許第5037272号公報 特開2013−251236号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、バイオマス由来の材料であるセルロースナノファイバーを用い、偽造や改ざんが困難で、容易に真贋判定でき、かつ環境への負荷の小さい、セキュリティ部材を提供することにある。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に塗工膜を形成したセキュリティ部材であって、
前記塗工膜が、酸化セルロースを分散処理して得られたセルロースナノファイバーを含有していることを特徴とするセキュリティ部材である。
また、請求項2に記載の発明は、前記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を有し、カルボキシ基の対イオンとして1から3価の金属イオンを有していることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ部材である。
また、請求項3に記載の発明は、セルロースナノファイバーが、ニトロキシラジカル誘導体および酸化剤を含む水溶媒中で酸化された反応生成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のセキュリティ部材である。
また、請求項4に記載の発明は、前記ニトロキシラジカル誘導体が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルまたは4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルであることを特徴とする請求項3に記載のセキュリティ部材である。
また、請求項5に記載の発明は、前記酸化剤が、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、または亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウム混合物のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のセキュリティ部材である。
本発明によれば、偽造や改ざんが困難で容易に真贋判定でき、かつ環境への負荷の小さい、セキュリティ部材を提供することができる。
本発明のセキュリティ部材の構成を示した断面概念図である。
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のセキュリティ部材10の構成を示しており、基材1上に、セルロースナノファイバー3を含む塗工膜2が形成されている。
<セルロースナノファイバー3>
本発明に用いるセルロースナノファイバー3は以下のような調製方法により得ることができる。セルロースナノファイバーとは、セルロースまたはその誘導体のミクロフィブリルまたはミクロフィブリル集合体のことを指し、公知の製造方法により製造できる。
製造方法としては、たとえば、セルロースナノファイバー前駆体を分散媒(たとえば水)中で解繊処理を施してナノファイバー分散液とする方法が挙げられる。ここで、セルロースナノファイバー前駆体は、解繊処理が施されていないセルロース類であり、ミクロフィブリルの集合体から構成される。
セルロースナノファイバー前駆体としては、酸化セルロースからなるものが好ましい。天然のセルロース原料(パルプ等)に含まれるセルロースは、ミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)により多束化しているが、酸化セルロースは、カルボキシ基の電気的反発作用によって凝集力が弱くなり、ナノファイバー化しやすくなる。
すなわち、セルロースあるいは他のセルロース誘導体を用いる場合に比べて、少ないエネルギーでナノファイバー化することができ、環境負荷が小さい。
セルロース原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されず、セルロースIの結晶構造を有する天然由来のセルロースを用いることができ、例えば各種木材パルプ、非木材パルプ、バクテリアセルロース、古紙パルプ、コットン、バロニアセルロース、ホヤセルロース等が挙げられる。また、市販されている各種セルロース材料や微結晶セルロース粉末を使用できる。
セルロースの酸化処理としては、一般的に知られている水酸基からアルデヒド基を経てカルボキシ基へと酸化する方法から適宜選択することができるが、触媒として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)等のN−オキシル化合物を用いた酸化処理(TEMPO酸化処理)が好適である。
TEMPO酸化処理を行うと、結晶表面のセルロース分子の水酸基を持つ3つの炭素のうち、C6位のアルコール性一級炭素のみ選択的に酸化することができ、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで変換することができる。
TEMPO酸化処理によれば、カルボキシ基を、酸化処理の程度に応じて均一かつ効率よく導入できる。また、TEMPO酸化処理は、他の酸化処理に比べて、セルロースの結晶性を損ないにくい。そのため、TEMPO酸化処理により得られる酸化セルロースのミクロフィブリルは、天然のセルロースが有する高い結晶構造(I型結晶構造)を保持しており、機械的強度、耐食性に優れる。
セルロースに導入するカルボキシ基量(セルロースナノファイバー1g中に含まれるカルボキシ基のモル量)は、0.1〜3.5mmol/gが好ましく、0.5〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。
カルボキシ基量が上記範囲の下限値以上であると、解繊処理の際、ナノファイバー化しやすくなり、均一なセルロースナノファイバー分散液が得られる。また、カルボキシ基量が上記範囲の上限値以下であると、該セルロースナノファイバーを用いて形成される膜の耐水性や耐熱性が向上する。カルボキシ基量は酸化の際の反応条件(温度、時間、試薬量)により制御できる。
カルボキシ基の測定方法としては、改質処理したセルロースの乾燥質量換算0.2gをビーカーにとり、イオン交換水80mlを添加する。そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加え、攪拌させながら0.1M塩酸を加えて全体がpH2.8となるように調整した。
ここに、自動滴定装置:AUT−701(東亜ディーケーケー社製)を用いて0.1M水酸化ナトリウム水溶液を0.05ml/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。得られた電導度曲線から水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基含有量を算出した。
TEMPO酸化処理による酸化セルロースの製造は、たとえば、パルプ等のセルロース原料を、水中にて、N−オキシル化合物の存在下で酸化処理することにより実施できる。このとき、N−オキシル化合物とともに、次亜ハロゲン酸塩や亜ハロゲン酸塩などを酸化剤として用いる手法が好ましい。
酸化剤を用いる場合、反応系内においては、順次、N−オキシル化合物が酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩を生成し、該オキソアンモニウム塩により、セルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。
また、N−オキシル化合物および酸化剤とともに、さらに、N−オキシル化合物以外の他の触媒として、臭化物およびヨウ化物から選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。
N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、0.1〜10質量%の範囲内であり、0.5〜5質量%が好ましい。
酸化剤としては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。酸化剤の使用量は、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、1〜100質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
臭化物としては、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属塩が挙げられ、ヨウ化物としては、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化アルカリ金属塩が挙げられ、臭化物およびヨウ化物から選ばれる触媒の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択することができ、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して、0〜100質量%の範囲内であり、5〜50質量%が好ましい。
TEMPO酸化の反応条件(温度、時間、pH等)は、特に限定されず、得ようとする酸化セルロースの所望のカルボキシ基量、平均繊維幅、平均繊維長、透過率、粘度等を考慮して適宜設定できる。
反応温度は、一級炭素への酸化の選択性の向上、副反応の抑制等の点から、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。反応温度の下限は、特に限定されないが、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましい。
反応時間は、処理温度によっても異なるが、通常、0.5〜6時間の範囲内であり、反応中、反応系内のpHを、4〜11の範囲内に保つことが好ましい。特に酸化剤に次亜塩素酸塩を使用する場合、該pHは、8〜11がより好ましく、9〜11がさらに好ましく
、9.5〜10.5が特に好ましい。該pHが11超であるとセルロースが分解してしまい低分子化する恐れがあり、酸性領域であると次亜塩素酸が分解し、塩素が発生する恐れがある。
ここで、本明細書において、pHは、20℃におけるpHであり、pHは、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加することにより調節できる。
反応は、反応液内にエタノール等のアルコールを添加することにより停止させることができる。酸化処理後、必要に応じて、反応液に酸を添加して中和処理を行ってもよい。上記酸化処理後の反応液中に含まれる酸化セルロースはカルボキシ基が塩型となっているが、中和処理を行うことにより酸型とすることができる。酸型とすると繊維が凝集し濾水性が向上するため、回収が容易になる。
また、後述するカルボキシ基の対イオン変換にも、酸型とすることで解繊処理に加えるアルカリの種類を変更することで対応でき好適である。中和に用いる酸としては、酸化セルロース中の塩型のカルボキシ基を酸型とし得るものであればよく、たとえば塩酸、硫酸等が挙げられるが安全性や入手のしやすさから塩酸が好ましい。
反応後の酸化セルロースは、ろ過等により反応液より回収できる。酸化セルロースは反応液中の触媒、不純物を除去するために洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理は、例えば、ろ過により酸化セルロースを回収した後、水等の洗浄液で洗浄し、ろ別を繰り返すことにより実施できる。洗浄液としては、水系のものが好ましく用いられ、たとえば水、塩酸等が挙げられる。
前記TEMPO酸化処理により得られた酸化セルロース等のセルロースナノファイバー前駆体を分散媒に加え懸濁液とし、必要に応じてpH調節を行い、解繊処理(ナノファイバー化処理)することによりセルロースナノファイバーの分散液を調製できる。分散媒としては分散性や環境負荷の観点からの水が好ましいが、水と有機溶剤との混合液も可能である。
有機溶剤としては、水と均一に混和可能なものであればよく、たとえばエタノール等のアルコール、エーテル類、ケトン類等が挙げられる。有機溶剤を混合することで、基材への濡れ性、消泡性、乾燥速度向上に効果がある。
懸濁液の解繊処理前のpHは、特に限定されないが、前記の酸化セルロースをセルロースナノファイバー前駆体として用いる場合には、pH4〜12で解繊処理を行うのが好ましく、特に、pHをpH7以上pH12以下のアルカリ性とし、カルボン酸塩を形成するのが好ましい。これにより、カルボキシ基同士の電気的反発が起こりやすくなるため、分散性が向上しセルロースナノファイバーを得やすくなる。
ここで、pH4未満でも解繊処理によりナノファイバー化することは可能であるが、解繊処理により長時間・高エネルギーを要し、分散液の透明性も劣る。一方、pH12を超えると解繊処理中に酸化セルロースのβ脱離反応による低分子量化が促進されるため、製膜後の膜強度が劣るため好ましくない。
ここで、pHの調整にアルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど陽イオンとして一価のイオンを有する水酸化物の水溶液を用いると、セルロースナノファイバー中のカルボキシ基が酸型から塩型に変換されアルカリの陽イオンが対イオンとして導入される。
マグネシウムやカルシウムなどの多価のイオンを導入すると、ナノファイバー間でカルボキシ基同士が架橋構造をとりゲル化し易くなるため、分散や塗工が困難になる。
多価金属イオンは、例えば、ナトリウムイオンからのイオン交換により導入することが可能である。まず、カルボキシ基の対イオンをナトリウムイオンとして調製したセルロースナノファイバーを、後述するような手法で基材上に塗工・乾燥し、セルロースナノファイバーからなる膜を形成する。
続いて、塩化カルシウム水溶液や、塩化マグネシウム水溶液に浸漬し後、純水にて洗浄すると、対イオンがナトリウムイオンからカルシウムイオンや、マグネシウムイオンに変換されたセルロースナノファイバー膜を得ることができる。
対イオンを多価イオンとすると、イオンを介してセルロースナノファイバー繊維間の架橋構造が形成され耐水性が向上した膜を得ることができる。この方法で、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムなどの金属イオンを導入できる。
解繊処理は、特に限定されず、超音波ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、対向衝突型ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、遊星ミル、高速回転ミキサー、グラインダー磨砕等を用いた機械的処理により実施できる。
本発明のセルロースナノファイバーは、繊維の平均径が2nm以上50nm以下の範囲にある。平均繊維径が50nmを超えると、塗工膜の透明性が低下し、カード類、有価証券等、対象物のデザインに影響を及ぼしたり、セキュリティ機能部の秘匿性が損なわれることがある。
平均繊維径が2nmより小さいセルロースナノファイバーは結晶性が低下しており、耐熱性や耐溶剤性が低下する。これらの繊維径の測定は、AFMやSEMなどの装置を用いて形状観察を行い、任意の多数のサンプルの繊維幅を測定してその平均をとる手法、あるいは塗液の粒度分布計などを用いた粒径測定結果から計測することが可能である。なお、本発明では前者の観察からの計測値を用いた。
ナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。該固形分濃度が5質量%以下、特に3質量%以下であると、分散性、透明性が良好である。5質量%を超えると、粘度が高くなり分散処理が行い難くなる。該固形分濃度の下限は特に限定されず、0質量%超であればよいが、1質量%以上が好ましい。
該固形分濃度が小さすぎると、塗工時に十分な乾燥後膜厚を確保することが困難になる、乾燥工程での負荷が大きくなる、紙など吸水性の基材に塗布した場合に基材が膨潤し寸法変動が大きくなる、などの問題を起こしやすくなる。この濃度範囲で分散処理を行うことにより、均一なセルロースナノファイバー分散液を得ることができ、後述する塗工の際にハジキや膜厚ムラを生じにくくなる。
<基材>
本発明のセキュリティ部材10は、セルロースナノファイバー3を含む塗液を塗布しセルロースナノファイバー3を含む塗膜2を基材1上に形成したものであり、塗布する基材1の材料は特に限定されず、目的に応じて適宜選ぶことができる。例えば、ガラス基材、プラスチック基材、紙基材、金属材料等が挙げられる。
基材1の形状も特に限定されず、例えば、板状、フィルム状、多孔質状等が挙げられる
。また、基材として、偽造・改ざん防止機能が求められる対象物に直接塗布してもよく、粘着層を有するラベル基材上に塗布してラベル化した後、対象物に貼付してもよい。
セルロースナノファイバー3を含む塗液の塗布の手法としては、公知の方法を用いることができる。セルロースナノファイバーは基材全面に塗布してもよく、基材上の一部にパターン形成して塗布しても良い。具体的には、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、スピンコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、スプレーコーター、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等を用いた塗布方法を、適宜選択することができる。
ウェット成膜方法を用いることにより、基材1の表面に均一に塗膜を形成することができる。また、塗液の溶媒についても特に限定されるものではなく、セルロースナノファイバーが分散性よく分散するものであればよく、水・アルコールをはじめとした各種液体を1種類または複数種用いることができるが、環境への配慮の問題から水系が好ましい。

基材1に対しては、塗工性や塗膜2の基材1への密着性改善のため、適宜、表面改質処理を行ってもよい。前処理としては、例えば、コロナ処理、UV処理、プラズマ処理、アンカー層の形成等が挙げられる。
セルロースナノファイバー3の塗工量は、基材や使用条件に応じて適宜設定することができるが、0.1〜10g/mが好ましい。少なすぎると、基材表面を十分に覆うことができず塗工部にピンホールが生じ真贋判定に不具合を生じる可能性が高まる。逆に、必要以上に厚く形成すると、材料コストが増大するとともに、塗膜形成時の乾燥負荷が大きくなる。
さらに本発明のセルロースナノファイバーを含む塗液には、必要に応じて塗工性改良のための界面活性剤、消泡剤、分散剤、防腐剤など各種添加剤を本発明の効果を阻害しない範囲で配合することもできる。
塗工により形成した塗膜2は、カルボキシ基に対イオンとして金属イオンを有する。金属イオンを、例えば蛍光X線法など公知の分析手法により検出することにより真贋判定ができる。カルボキシ基に対オンとして導入する金属イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられ、これらの金属を使い分けることでより複雑な偽造防止機能も提供できる。
また、別の真贋判別方法として、トルイジンブルーによる染色が挙げられる。セルロースナノファイバーはトルイジンブルー液により赤紫色に染色される。基材1がPETなどのプラスチック基材1の場合、基材は塗膜2のみが染色されるため、容易に判別可能である。また、紙基材上に形成した場合、紙も染色されるが、セルロースナノファイバー3とは明確に識別することが可能である。
セルロースナノファイバー2からなる塗膜2は、非常に透明性が高く目視では視認することが不可能であり、対象物のデザイン性を損なうことなくセキュリティ機能部を付与することができる。また、セルロースナノファイバー3は、関係者以外の者が入手することは困難であるため、偽造、複製は難易度が高い。
さらに、セルロースナノファイバー3はその高い結晶性から、硬く脆い膜質であり、例えば、別の部材のセキュリティ機能部を剥がして使い回そうとすると、塗膜2が破壊され、使い回すことは困難である。
また、セルロースナノファイバー3からなる塗膜2は、親水性が高く、水により膨潤させ拭き取ることで除去も可能である。廃棄の際にも、分別回収の必要がなく、廃棄性にも優れたセキュリティ部材10を提供することができる。
また、セルロースナノファイバー3からなる膜は、親水性が高く、水により膨潤させ拭き取ることで除去も可能である。廃棄の際にも、分別回収の必要がなく、廃棄性にも優れたセキュリティ部材を提供することができる。
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明する。
<セルロースナノファイバー3分散液>
セルロースナノファイバー分散液の作製は、針葉樹クラフトパルプ30gを水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーにあらかじめ水200gに溶解させたTEMPOを0.3g、NaBrを3g添加し、さらに水で希釈し全体を1400mLとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるよう次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり滴下した。
滴下開始からpHは低下をはじめるが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下し、系のpHを10に保った。4時間後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が2.8mmol/gになったところでエタノールを30g添加し、反応を停止させた。反応系に0.5N塩酸を添加し、pH2まで低下させた。酸化パルプをろ過し、0.01N塩酸または水で繰返し洗浄した後、酸化パルプを得た。
自動滴定装置:AUT−701(東亜ディーケーケー社製)を用いて0.1N水酸化ナトリウム水溶液により電導度滴定を行ったところ、カルボキシ基量が1.6mmol/gと算出された。
得られた酸化パルプを水で希釈し0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9に調整し酸化パルプ1.5%懸濁液とした。この懸濁液を2時間高速攪拌機で分散処理し、セルロースナノファイバーの分散液を得た。
得られたセルロースナノファイバーの平均繊維径を測定した。各分散液を0.01%濃度まで希釈し、マイカ上に塗布しAFMにて繊維形態を観察した。1本ずつ存在している任意の繊維10点の、繊維幅の平均を求めた。なお、平均の繊維径としては、4nmであった。
コロナ処理した厚さ100μmのPETフィルム:ルミラーT60(東レ社製)からなる基材上の一部に、得られた平均の繊維径4nmのセルロースナノファイバー分散液を、ワイヤーバー#70を用いコーティングを行い、120℃で10分間加熱乾燥し、膜厚約1μmの塗工膜を持つ実施例1のセキュリティ部材を得た。
<セルロースナノファイバー分散液>
実施例1で得られた酸化パルプを水で希釈し0.5N水酸化カリウム水溶液を用いてpH9に調整し酸化パルプ1.5%懸濁液とした。この懸濁液を2時間高速攪拌機で分散処理し、平均の繊維径が、5nmのセルロースナノファイバーの分散液を得た。
得られた平均の繊維径が5nmのセルロースナノファイバーの分散液を用いた以外は、
実施例1と同じ条件で、膜厚約1μmの塗工膜を持つ実施例2のセキュリティ部材を得た。
実施例1と同じ条件で、形成した塗工膜2を有するPET基材1を、10%塩化カルシウム水溶液に10分間浸漬した後、純水中で5回洗浄し、セルロースナノファイバー中のカルボキシ基の対イオンをカルシウムイオンに変換し、実施例3のセキュリティ部材を得た。
基材として、PETフィルム代わりにユトリロ上質紙:坪量64g(大王製紙社製)を用いた以外、実施例1と同一にて、実施例2のセキュリティ部材を得た。
<比較例1>
基材として、実施例4と同じユトリロ上質紙:坪量64g(大王製紙社製)を用い、セルロースナノファイバーの分散液からなる塗工膜を設けない比較例1のセキュリティ部材とした。
<目視評価>実施例1〜3のPET基材は、いずれも透明で目視ではセルロースナノファイバー塗工部を視認できず、実施例1〜3のセキュリティ部材を判別することは不可能であり、実施例4と比較例1のセキュリティ部材もまた判別することは不可能であった。
<蛍光X線評価>
蛍光X線分析にて実施例1〜3のセキュリティ部材を分析すると、それぞれナトリウム、カリウム、カルシウムが検出され、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3のセキュリティ部材であることが判別できた。
<呈色評価>
実施例4と比較例1のセキュリティ部材に1%トルイジンブルー水溶液を適下したところ、実施例4のセキュリティ部材は赤紫色に染色されたのに対し、比較例1のセキュリティ部材は青紫色に染色され、実施例4のセキュリティ部材と比較例1のセキュリティ部材とを判別することができた。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2017056564
以上の結果より、本発明のセキュリティ部材は、設けた塗工膜の存在を、目視にて検出することができないが、蛍光X線や呈色評価にて検出でき、容易に真贋判定でき、セルロースナノファイバーを用いているため偽造や改ざんが困難であり、かつ環境への負荷の小さいと言える。
1・・・基材
2・・・塗工膜
3・・・セルロースナノファイバー
10・・・セキュリティ部材

Claims (5)

  1. 基材上に塗工膜を形成したセキュリティ部材であって、
    前記塗工膜が、酸化セルロースを分散処理して得られたセルロースナノファイバーを含有していることを特徴とするセキュリティ部材。
  2. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を有し、カルボキシ基の対イオンとして1から3価の金属イオンを有していることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ部材。
  3. セルロースナノファイバーが、ニトロキシラジカル誘導体および酸化剤を含む水溶媒中で酸化された反応生成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のセキュリティ部材。
  4. 前記ニトロキシラジカル誘導体が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルまたは4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカルであることを特徴とする請求項3に記載のセキュリティ部材。
  5. 前記酸化剤が、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、または亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウム混合物のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のセキュリティ部材。
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