JP2017051439A - 磁気共鳴装置およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】CESTの情報を取得するのに適したスペクトルを得るとともに、CESTの影響を反映した係数を計算するための技術を提供する。【解決手段】MR装置は、Zスペクトル作成手段91と、ZスペクトルをCPEスペクトルに変換するスペクトル変換手段92と、CPEスペクトルFCPE(Δωa)とFCPE(Δωa)の近似式との誤差が最小になるようにフィッティングを行い、誤差が最小になるときのFCPE(Δωa)の近似式のCEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の値を計算する第1のフィッティング手段95と、係数a1、a2、Δωc、B1、および(M0b/M0a/R1a)の関係式を用いて、係数(M0b/M0a/R1a)の値を計算する係数値計算手段105とを有する。【選択図】図2

Description

本発明は、Zスペクトルを得る磁気共鳴装置、およびその磁気共鳴装置に適用されるプログラムに関する。
近年、低濃度の化合物を観測する方法として、化学交換により生じる信号減衰を利用したCEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)イメージング法が注目されている(特許文献1参照)。
特表2012−513239号公報
CESTイメージングでは、RFパルスの周波数を変更しながらシーケンスを実行し、シーケンスにより得られたデータに基づいて、Zスペクトルを作成する。Zスペクトルの信号値は、CEST効果が現れる周波数の付近において減衰する。したがって、Zスペクトルから、どの周波数において信号が減衰しているかを特定することにより、化合物の濃度や磁化交換速度に依存したCESTの情報を取得することが可能となる。
しかし、Zスペクトルは、水の共鳴周波数の付近において、自由水のローレンツ分布を表す下向きのピークが支配的である。このピークのピーク幅は送信磁場強度B1に比例しており、ピークの値は0近くにまで低下する。したがって、CESTにより生じる信号の低下が、自由水のローレンツ分布を表す下向きのピークに埋もれてしまい、Zスペクトルから、CESTの影響を反映した情報を取り出すことが難しいという問題がある。
また、被検体の撮影部位の中でCESTが生じている部位を特定することは、画像診断能を高める上でも重要である。そこで、CESTの影響を反映した様々な係数の値を計算する研究も行われている。しかし、上記のように、Zスペクトルから、CESTの影響を反映した情報を取り出すことは難しいので、CESTの影響を反映した係数の値を計算することも難しいという問題もある。
したがって、CESTの情報を取得するのに適したスペクトルを得るとともに、CESTの影響を反映した係数の値を計算するための技術が望まれている。
本発明の第1の観点は、CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
前記スキャンにおいて、RFパルスを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段であって、前記RFパルスの周波数が前記シーケンスごとに異なるように設定されているスキャン手段と、
前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成手段と、
水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数を変数として含む偶関数であって、オフセット周波数の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換手段により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング手段と、
前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング手段により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段と、
を有する、磁気共鳴装置である。
本発明の第2の観点は、CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
前記スキャンにおいて、複数のRFパルスを含むパルスセットを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段であって、前記複数のRFパルスのうちのp番目のRFパルスの位相とp+1番目のRFパルスの位相との位相差が前記シーケンスごとに異なるように、前記複数のRFパルスの位相をサイクルさせているスキャン手段と、
前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成手段と、
RFパルスの位相差を変数として含む偶関数であって、前記位相差の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換手段により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング手段と、
前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング手段により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段と、
を有する磁気共鳴装置である。
本発明の第3の観点は、CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、前記スキャンにおいて、RFパルスを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段を有し、前記RFパルスの周波数が前記シーケンスごとに異なるように設定されている磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成処理と、
水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数を変数として含む偶関数であって、オフセット周波数の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換処理と、
CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換処理により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング処理と、
前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング処理により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
本発明の第4の観点は、CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、前記スキャンにおいて、複数のRFパルスを含むパルスセットを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段を有し、前記複数のRFパルスのうちのp番目のRFパルスの位相とp+1番目のRFパルスの位相との位相差が前記シーケンスごとに異なるように、前記複数のRFパルスの位相をサイクルさせている磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成処理と、
RFパルスの位相差を変数として含む偶関数であって、前記位相差の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換処理と、
CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換処理により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング処理と、
前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング処理により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
偶関数を用いることにより、Zスペクトルを、CESTの情報の取得に適した第1のスペクトルに変換することができる。また、第1のスペクトルに基づいて、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数の値が計算される。したがって、CESTの影響を反映した係数の値を求めることもできる。
本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。 第1の形態において処理装置9が実現する手段の説明図である。 第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。 第1の形態におけるシーケンスSEを具体的に示す図である。 Zスペクトルの説明図である。 ZスペクトルとCPEスペクトルとの違いを説明するための図である。 係数(M0 b/M0 a/R1a)を求めるためのフローを示す図である。 Zスペクトルを概略的に示す図である。 CPEスペクトルFCPE(Δωa)を概略的に示す図である。 フィッティングにより計算された各係数の値を示す図である。 フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す図である。 計算された係数(c0,cMT)の値を示す図である。 スペクトルFCPE_1(Δωa)を概略的に示す図である。 CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する方法の説明図である。 フィッティングにより計算された各係数の値を示す図である。 i=2において、フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す図である。 計算された係数(c0,cMT)の値を示す図である。 スペクトルFCPE_2(Δωa)を概略的に示す図である。 CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する方法の説明図である。 差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1を超えた例を示す図である。 i=jにおいて計算された係数の値を示す図である。 i=jにおいて、フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す図である。 計算された係数(c0,cMT)の値を示す図である。 スペクトルFCPE_i(Δωa)を概略的に示す図である。 ステップST15のフローを示す図である。 ステップST15の再計算により得られたCPEスペクトルFCPE(Δωa)の各係数の値を示す図である。 記憶部に保存された係数の値を概略的に示す図である。 係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算するためのフローを示す図である。 アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の計算方法の説明図である。 NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の計算方法の説明図である。 第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。 第2の形態における処理装置9の説明図である。 係数の値を計算するためのフローを示す図である。 M0aマップおよびR1aマップを概略的に示す図である。 アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値の計算方法の説明図である。 第3の形態で使用されるシーケンスSEを具体的に示す図である。 、第4の形態において処理装置9が実現する手段の説明図である。 第4の形態で使用されるシーケンスSEを具体的に示す図である。
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)1は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、「受信コイル」と呼ぶ)4などを有している。
マグネット2は、被検体13が収容される収容空間21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、RFコイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、RFコイル24はRFパルスを印加する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
テーブル3は、被検体13を搬送するためのクレードル3aを有している。クレードル3aによって、被検体13は収容空間21に搬送される。
受信コイル4は、被検体13の頭部に取り付けられており、被検体13からの磁気共鳴信号を受信する。
MR装置1は、更に、制御部5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、処理装置9、記憶部10、操作部11、および表示部12などを有している。
制御部5は、処理装置9から、シーケンスで使用されるRFパルスおよび勾配パルスの波形情報や印加タイミングなどを含むデータを受け取る。そして、制御部5は、RFパルスのデータに基づいて送信器6を制御し、勾配パルスのデータに基づいて勾配磁場電源7を制御する。また、制御部5は、クレードル3aの移動の制御なども行う。尚、図1では、制御部5が、送信器6、勾配磁場電源7、クレードル3aなどの制御を行っているが、送信器6、勾配磁場電源7、クレードル3aなどの制御を複数の制御部で行ってもよい。例えば、送信器6および勾配磁場電源7を制御する制御部と、クレードル3aを制御する制御部とを別々に設けてもよい。
送信器6は、制御部5から受け取ったデータに基づいて、RFコイル24に電流を供給する。
勾配磁場電源7は、制御部5から受け取ったデータに基づいて、勾配コイル23に電流を供給する。
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号に対して、検波などの処理を行い、処理装置9に出力する。尚、マグネット2、受信コイル4、制御部5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8を合わせたものが、スキャン手段に相当する。
記憶部10には、制御部5により実行されるプログラムなどが記憶されている。尚、記憶部10は、ハードディスク、CD−ROMなどの非一過性の記憶媒体であってもよい。処理装置9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行するプロセッサとして動作する。処理装置9は、プログラムに記述されている処理を実行することにより、種々の手段を実現する。図2は、処理装置9が実現する手段の説明図である。
画像作成手段90は、後述するシーケンスSE〜SE(図4参照)により得られたデータに基づいて画像を作成する。
Zスペクトル作成手段91は、画像作成手段90により得られた画像に基づいて、Zスペクトルを作成する。
スペクトル変換手段92は、Zスペクトルを、後述するCPEスペクトルFCPE(Δωa)(例えば、図9参照)に変換する。CPEスペクトルFCPE(Δωa)は第1のスペクトルに相当する。
検出手段93は、CPEスペクトルに基づいて、CESTの影響を受けた信号成分の波形のピークが現れるオフセット周波数を検出する。
i値設定手段94は、CEST項の数を表すiの値を設定する。
第1のフィッティング手段95は、後述する式(16)を用いてフィッティングを行い、CEST項に含まれる係数の値を計算する。CEST項については後述する。尚、第1のフィッティング手段95は、第1の係数の値を求めるフィッティング手段に相当する。
CRZスペクトル作成手段96は、ZスペクトルからCEST波形が除去されたスペクトル(後述するCRZスペクトル)を作成する。
第2のフィッティング手段97は、後述する式(23)を用いてフィッティングを行い、式(23)に含まれる係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。
(c0,cMT)計算手段98は、第2のフィッティング手段97により計算された係数の値に基づいて、ベースライン項に含まれる係数(c0,cMT)の値を計算する。、ベースライン項に含まれる係数(c0,cMT)については後述する。
スペクトル計算手段99は、後述するスペクトルFCPE_i(Δωa)(式24参照)を計算する。
判断手段100は、スペクトル変換手段92により得られたCPEスペクトルFCPE(Δωa)に、CESTの影響を受けた他の信号成分の波形が含まれているか否かを判断する。
スペクトル推定手段101は、ベースライン項とCEST項との和で表されるZスペクトル(理想的なZスペクトル)を推定する。
スペクトル比較手段102は、スペクトル推定手段101により推定された理想的なZスペクトルと、Zスペクトル作成手段91により作成されたZスペクトルとを比較し、理想的なZスペクトルによってZスペクトルが再現されているか否かを判断する。
カウント手段103は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれているCEST波形の総数TNをカウントする。
CEST項判断手段104は、後述するアミドプロトンのCEST項およびNOE(Nuclear Overhauser Enhancement)のCEST項が得られているか否かを判断する。
係数値計算手段105は、後述する係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する。
MR装置1は、処理装置9を含むコンピュータを備えている。処理装置9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、画像作成手段90〜係数値計算手段105などを実現する。尚、処理装置9は、一つのプロセッサで画像作成手段90〜係数値計算手段105を実現してもよいし、2つ以上のプロセッサで、画像作成手段90〜係数値計算手段105を実現してもよい。また、画像作成手段90〜係数値計算手段105のうちの一部の手段を、制御部5で実行できるようにしてもよい。また、処理装置9が実行するプログラムは、一つの記憶部に記憶させておいてもよいし、複数の記憶部に分けて記憶させておいてもよい。
図1に戻って説明を続ける。
操作部11は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置1は、上記のように構成されている。
図3は第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
図3の上側には、スキャンが実行されるスライスSLの位置が示されている。図3において、x軸、y軸、およびz軸は、それぞれ、被検体のRL方向(左右方向)、AP方向(前後方向)、およびSI方向(頭尾方向)に対応している。第1の形態では、スライスSLは、被検体の脳を横切るように設定されている。尚、第1の形態では、説明の便宜上、スライスSLは1枚のみが設定されるとする。図3では、スライスSLはアキシャル面であるが、アキシャル面に限定されることはなく、コロナル面、サジタル面、又はオブリーク面であってもよい。
図3の下側には、スライスSLからデータを収集ために実行されるスキャンSCが示されている。スキャンSCでは、スライスSLの画像Dを取得するためのシーケンスSE(k=1〜r)が実行される。第1の形態では、シーケンスSEはr回実行されるので、スキャンSCを実行することにより、r個の画像D〜Dを取得することができる。
図4は、第1の形態におけるシーケンスSEを具体的に示す図である。
k回目のシーケンスSEは、連続波のRFパルスCWと、横磁化を消失させるためのキラー勾配パルスGcと、シングルショット法によりデータを収集するためのデータ収集セグメントDAQとを含んでいる。本形態では、RFパルスCWの周波数f[Hz]は、f=fkに設定されている。連続波のRFパルスCWを印加した後、キラー勾配パルスGcが印加され、キラー勾配パルスGcを印加した後にデータ収集セグメントDAQが実行される。脂肪抑制をする場合、データ収集セグメントは、水を選択的に励起するRFパルスを使用することができる。
k回目のシーケンスSEは、上記のように構成されている。シーケンスSE、SE、・・・SEのRFパルスCWの周波数を、それぞれf1、f2、・・・frで表すと、これらの周波数f1、f2、・・・frは、互いに異なる値に設定されている。
第1の形態では、シーケンスSE〜SEを実行することにより、画像D〜Dを取得し、これらの画像D〜Dに基づいて、Zスペクトルを作成する。
図5は、Zスペクトルの説明図である。
図5(a1)は、Zスペクトルの波形を概略的に示す図である。Zスペクトルの横軸は、水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数Δωである。Δωは、Δω=2π(f−f)[rad/sec]で計算される。ここで、fは、水の共鳴周波数である。
図5(a1)に示すように、Zスペクトルでは、或るオフセット周波数Δωにおいて、CESTによる信号減衰が現れる。したがって、Zスペクトルから、CESTの影響を受けた信号成分の波形を分離することによって、CESTを定量的に評価することが可能となる。
図5(a2)は、Zスペクトルを、CESTの影響を受けた信号成分の波形(以下、「CEST波形」と呼ぶことがある)P1と、CESTの影響を受けていない信号成分の波形(以下、「ベースライン波形」と呼ぶことがる)P2とに分けて示した図である。尚、CEST波形P1は、実際には周波数Δωcにおいて下向きのピークを有しているが、図5(a2)では、説明の便宜上、CEST波形P1のピークを上向きに反転させて示してある。
Zスペクトルから、CEST波形P1を分離することにより、CESTを定量的に評価することが可能となる。しかし、Zスペクトルは、CESTの影響を受けた信号成分(CEST波形)P1の他に、CESTの影響を受けていない信号成分(ベースライン波形)P2を含んでいる。一般的に、CEST波形P1およびベースライン波形P2は、ローレンツ関数で近似できる。しかし、ベースライン波形P2は、CEST波形P1よりも大きなピークを持つので、オフセット周波数Δωの近傍において、CEST波形P1とベースライン波形P2との比R(=P1/P2)は小さい値になる。したがって、CEST波形P1のピークがベースライン波形P2に埋もれてしまい、ZスペクトルからCEST波形P1を分離することが難しい場合がある。そこで、第1の形態では、Zスペクトルを、CEST波形の抽出に適したスペクトルに変換する。以下に、Zスペクトルを、CEST波形の抽出に適したスペクトルに変換する方法について説明する。
Zスペクトルは以下の式(1)で表すことができる。
Δωa:水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数
Mza:シーケンスSEのデータ収集セグメントDAQ(図4参照)の直前における自由水プールに含まれるプロトンの縦磁化の大きさ
M0 a:RFパルスWCおよびキラー勾配パルスGcを印加せずにデータ収集セグメントDAQを実行する場合において、データ収集セグメントDAQの直前における自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさである。
尚、文字の添え字「a」は、自由水(free water)に起因することを表している。
また、Zスペクトルは、Zaiss等により以下の式(2)で近似できることが示されている(Zaiss M, et al. NMR Biomed 2013;26:507-18.)。
式(2)のR1ρは、RFパルス印加中のT1回復の時定数であり、Trott等により以下の式(3)で近似できることが示されている(Trott O, et al. J Magn Reson 2002;154:157-60)。
ここで、R1 a:水のT1(縦緩和時間)の逆数
式(3)のcos2θ、sin2θ、およびRexは以下の式で表される。
Δωc:CESTの影響を受けた信号成分(CEST波形)のピークが現れるオフセット周波数[radian/sec]
:自由水プールからCESTプールへの磁化移動(Magnetization Transfer)の時定数[Hz]
k:CESTプールから自由水プールへの磁化移動の時定数[Hz]
γ:磁気回転比
B1:送信磁場強度
ここで、Δωa 2を表す以下の関数F(Δωa)について考える。
式(4)のF(Δωa)は偶関数であり、Δωa=0の場合、F(Δωa)=0となる。式(4)を、式(3a)、(3b)、および(3c)に代入すると、以下の式が得られる。
次に、式(1)で表されるスペクトルZの逆数のスペクトル1/Zについて考える。式(1)、(2)、(3)、および(5c)から、1/Zは、以下の式で表すことができる。
式(6)を整理すると、以下の式(7)が得られる。
ここで、Δωaがω1に比べて十分に小さい場合、即ち、以下の関係が成り立つ場合について考える。
式(8)が成り立つ場合、式(5a)は、以下の式に近似できる。
したがって、式(9a)から、cosθは、以下の式に近似できる。
また、式(8)が成り立つ場合、式(5b)は、以下の式に近似できる。
式(9a−1)および(9b)を用いて式(7)を整理すると以下の近似式が得られる。
Δωa≫ω1が成り立つ場合(式8参照)、式(10)の近似式を得ることができる。右辺第1項R2 aω1 2/R1 aは、自由水プールにおける緩和時間を表す項である。また、右辺第2項は、CEST波形(CESTの影響を受けた信号成分)を表す項であり、以下では、この項を、「CEST項」と呼ぶことにする。CEST項により表されるCEST波形は、係数a1、a2、およびΔωcを用いたローレンツ関数で表されている。a1/a2はCEST波形のピークの高さを表し、2√a2はCEST波形のピークの半値幅を表し、ΔωcはCEST波形のピークが現れる周波数を表している。したがって、係数a1、a2、およびΔωcを用いることにより、CEST波形の特性値として、3つの特性値a1/a2(ピークの高さ)、2√a2(ピークの半値幅)、およびΔωc(ピークが現れる周波数)を表すことができる。尚、式(10)から、CEST波形のピークを、ローレンツ関数で表されるピークとして抽出できることがわかる。そこで、第1の形態では、式(10)で表されるスペクトルをCPE(CEST Peak Extraction)スペクトルと呼ぶことにする。
CPEスペクトルを、FCPE(Δωa)とすると、FCPE(Δωa)は以下の式で表すことができる。
また、式(10)および(11)から、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、以下の式で近似することができる。
尚、上記の説明で使用された式(3)は、Trott等のモデルを仮定している。Trott等のモデルは、2つのプール(例えば、自由水およびNH)の間で生じるCESTを考慮したTwo Poolモデルである。しかし、実際の生体組織では、結合水と自由水との間で生じる磁化移動(MT:Magnetization Transfer)も考慮する必要がある。ここで、結合水と自由水との間で生じるMT(磁化移動)の影響を表すスペクトルをZMTとし、スペクトルZMTは、定数からローレンツ関数を引いた式で表現できると仮定する。この場合、スペクトルZMTは以下の式で表すことができる。
式(13)において、Δω0は、周波数の誤差を表している。式(13)の右辺第1項(b0)は定数項であり、右辺第2項はローレンツ関数の項である。ここで、式(11)の右辺のZをZMTで置き換え、更に、式(13)のΔω0が十分に小さくΔω0=0で表せると仮定する。この場合、ZをZMTで置き換えた後の式(11)と、Δω0=0と仮定された後の式(13)とを用いて、以下の式が得られる。
式(14)の右辺第3項は十分に小さいので無視できる。したがって、式(14)は、以下の式で近似できる。
式(15)の右辺第2項は、自由水と結合水との間で生じるMTの影響を受けた信号成分を表す項(以下、「MT項」と呼ぶ)である。
また、Two poolモデルでは、CESTピークは1つしか考えていないが、CESTピークが複数現れる場合もある。そこで、n個のCEST項を考え、各CEST項とMT項との間に一次結合が成り立つと仮定すると、式(12)および式(15)に基づいて、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、以下の近似式で表すことができる。
ただし、Δωa≫ω1である。式(16)の右辺第1項および右辺第2項の和は、CESTの影響を受けていない信号成分の波形(ベースライン波形)を表す項である。以下では、この項を、ベースライン項と呼ぶことにする。また、式(16)の右辺第3項のFL,i(Δωa)は、第iのCEST項を表している。第iのCEST項により表されるCEST波形は、係数a1,i、a2,i、およびΔωc,iを用いたローレンツ関数で表されている。a1,i/a2,iはCEST波形のピークの高さを表し、2√a2,iはCEST波形のピークの半値幅を表し、Δωc,iはCEST波形のピークが現れる周波数を表している。したがって、式(16)から、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、ベースライン項とn個のCEST項とを含む関数で近似できることが分かる。
式(16)のベースライン項は、定数項c0と、MT項cMTF(Δωa)の和で表されている。MT項のF(Δωa)は、ローレンツ関数ではなく、式(4)で定義される偶関数である。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれるベースライン項の波形(ベースライン波形)は、偶関数で近似できることが分かる。
図6は、ZスペクトルとCPEスペクトルとの違いを説明するための図である。
図6(a1)はZスペクトルの波形の概略図、図6(a2)はZスペクトルをCEST波形P1とベースライン波形P2とに分けて示した図である。
図5を参照しながら説明したように、Zスペクトルのベースライン波形P2は、大きなピークを持つローレンツ関数で近似される。したがって、周波数Δωcの近傍において、CEST波形P1とベースライン波形P2との比R(=P1/P2)は小さい値になるので、CEST波形P1のピークがベースライン波形P2に埋もれてしまい、ZスペクトルからCESTの影響を受けた信号成分P1を分離することが難しい場合がある。
一方、図6(b1)はCPEスペクトルの波形の概略図、図6(b2)はCPEスペクトルをCEST波形Q1とベースライン波形Q2とに分けて示した図である。
式(16)の説明で言及したように、CPEスペクトルのベースライン波形は、偶関数で近似することができる。したがって、CPEスペクトルのベースライン波形Q2はローレンツ関数による大きなピークを持たないので、周波数Δωcの近傍において、CEST波形Q1とベースライン波形Q2との比R(=Q1/Q2)を大きくすることができる。このため、CPEスペクトルは、Zスペクトルよりも、大きな比Rが得られるので、CPEスペクトルから、CEST波形Q1を分離し易くすることができる。
尚、図6では、説明を簡単にするため、Zスペクトルには、CEST波形が一つしか含まれていない例が示されているが、Zスペクトルに複数のCEST波形が含まれている場合もある。しかし、Zスペクトルに複数のCEST波形が含まれている場合であっても、ZスペクトルをCPEスペクトルに変換することによりベースライン波形の影響を軽減することができる。したがって、Zスペクトルに複数のCEST波形が含まれている場合であっても、ZスペクトルをCPEスペクトルに変換することにより、CPEスペクトルから複数のCEST波形の各々を分離し易くすることができる。
ここで、式(3c)に含まれている時定数kaについて考える。時定数kaは、以下の式で表すことができる。
M0 b:CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさ
したがって、式(17)を式(10a)に代入し、式(10b)および式(3d)を用いて整理すると、以下の関係式が得られる。
式(18)の係数a1、Δωc、a2は、CPEスペクトルを用いて計算することができる。また、係数B1は、RFパルスにより発生する送信磁場強度である。B1はRFパルスによって定まる値であり、既知の値である。また、2πγは定数であり、既知の値である。したがって、a1、Δωc、a2、およびB1の値を式(18)に代入することより、M0 b、M0 a、およびR1aを含む係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求めることができる。尚、式(18)において、係数a1、a2、Δωcの各々は第1の係数に相当し、B1は第2の係数に相当し、(M0 b/M0 a/R1a)は第3の係数に相当する。
係数(M0 b/M0 a/R1a)は、M0 bの値に比例する係数である。したがって、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求めることにより、スライス内の各位置(各ピクセル)において、M0 bに比例する係数の値を知ることができる。M0 bは、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさを表しているので、係数(M0 b/M0 a/R1a)を求めることにより、スライス内において、CEST効果が顕著に表れている領域の範囲を知ることが可能となる。また、係数(M0 b/M0 a/R1a)は、M0 b/M0 aを含んでいる。M0 b/M0 aは、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさと自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさとの比を表している。したがって、係数(M0 b/M0 a/R1a)を求めることにより、スライス内において、プロトンの磁化の大きさの比が大きい領域(又は、比が小さい領域)の範囲を知ることも可能となる。
第1の形態では、ZスペクトルをCPEスペクトルに変換し、CPEスペクトルを用いて式(18)の係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求める。以下に、CPEスペクトルを用いて係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求める方法について具体的に説明する。
図7は、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求めるためのフローを示す図である。
ステップST1では、スキャンSC(図4参照)が実行される。スキャンSCでは、シーケンスSE〜SEが実行される。制御部5(図1参照)は、各シーケンスに含まれているRFパルスのデータを送信器6に送り、各シーケンスに含まれている勾配パルスのデータを勾配磁場電源7に送る。送信器6は、制御部5から受け取ったデータに基づいてRFコイル24に電流を供給し、勾配磁場電源7は、制御部5から受け取ったデータに基づいて勾配コイル23に電流を供給する。したがって、RFコイル24はRFパルスを印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加する。シーケンスSE〜SEの各々が実行されるたびに、スライスSL(図6参照)からMR信号が発生する。このMR信号は受信コイル4(図1参照)で受信される。受信コイル4は、MR信号を受信し、MR信号の情報を含むアナログ信号を出力する。受信器8は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を行い、信号処理により得られたデータを処理装置9に出力する。
処理装置9では、画像作成手段90(図2参照)が、受信器8から受け取ったデータに基づいて、スライスSLの画像D〜D(図3参照)を作成する。シーケンスSE〜SEのRFパルスCWの周波数は互いに異なる値に設定されているので、シーケンスSE〜SEを実行することにより、RFパルスの周波数をr通りに変化させたときの画像D〜Dを得ることができる。シーケンスSE〜SEを実行した後、ステップST2に進む。
ステップST2では、Zスペクトル作成手段91(図2参照)がZスペクトルを作成する。図8に、Zスペクトルを概略的に示す。Zスペクトル作成手段91は、画像D〜Dから同じ座標(x、y)に位置するピクセルのデータを抽出し、水の共鳴周波数からの周波数のずれを表すオフセット周波数Δωと信号値との関係を表すZスペクトルを作成する。図8では、Zスペクトル作成手段91が、画像D〜Dの同じ座標(x,y)=(x1,y1)に位置するピクセルg1のデータを抽出し、この出出したデータに基づいてZスペクトルを作成する様子が示されている。以下同様に、Zスペクトル作成手段91は、スライスSLの各座標(x,y)に位置するピクセルのデータを抽出し、各座標(x,y)におけるZスペクトルを作成する。
Zスペクトルを作成した後、ステップST3に進む。
ステップST3では、スペクトル変換手段92(図2参照)が、式(11)を用いて、ZスペクトルをCPEスペクトルFCPE(Δωa)に変換する。図9に、CPEスペクトルFCPE(Δωa)を概略的に示す。ここでは、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、オフセット周波数Δωc,1およびΔωc,2においてCEST波形のピークを含んでいるとする。尚、オフセット周波数の単位は[rad/sec]であるが、オフセット周波数の単位は、[rad/sec]から[ppm]に変換することができる。ここでは、オフセット周波数の単位は[ppm]に変換されているとする。ただし、説明の便宜上、オフセット周波数の単位を[rad/sec]から[ppm]に変換した後も、オフセット周波数は符号「Δωa」で表してある。ZスペクトルをCPEスペクトルFCPE(Δωa)に変換した後、ステップST4に進む。
ステップST4では、検出手段93(図2参照)が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の中から、CEST波形のピークが現れるオフセット周波数を検出する。以下に、CEST波形のピークが現れるオフセット周波数の検出方法の一例について説明する。
式(16)のベースライン項に含まれるF(Δωa)は、Δωaの二次関数で表されるので(式(4)参照)、CPEスペクトルFCPE(Δωa)のベースライン波形は二次関数で近似できることが分かる。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と二次関数とを比較し、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と二次関数とのずれが大きくなるときのオフセット周波数を求めることにより、CEST波形のピークが現れるオフセット周波数を検出することができる。ここでは、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、オフセット周波数Δωc,1において、二次関数から最もずれているとする。したがって、検出手段93は、CEST波形のピークが現れるオフセット周波数として、オフセット周波数Δωc,1を検出する。ここでは、Δωc,1の検出値はΔωa1であるとする。したがって、Δωc,1の検出値は、以下の式で表される。
オフセット周波数Δωc,1=Δωa1を検出した後、ステップST5に進む。
ステップST5では、i値設定手段94(図2参照)が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式(16)に含まれるCEST項の数を表すiを初期値1に設定する。i=1に設定された場合、式(16)は、以下の式で表される。
式(20)のベースライン項の係数(c0,cMT)、および式(20c)のCEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、未知の係数である。i=1に設定した後、ステップST6に進む。
ステップST6では、第1のフィッティング手段95(図2参照)が、式(11)により求められたCPEスペクトルFCPE(Δωa)と式(20)との誤差が最小になるようにフィッティングを行い、誤差が最小になるときの式(20)のCEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の値と、ベースライン項の係数(c0,cMT)の値を計算する。フィッティングを行う場合、第1のフィッティング手段95は、先ず、係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の初期値と、係数(c0,cMT)の初期値を設定する。例えば、係数Δωc,1の初期値は、ステップST4で検出したオフセット周波数Δωc,1の値、即ち、Δωc,1=Δωa1(式19参照)に設定される。また、他の係数a1,1、a2,1、c0、cMTの初期値は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の波形情報(CPEスペクトルの最大値、最小値など)を用いて計算することができる。係数の初期値を設定した後、第1のフィッティング手段95は、初期値を基準にして各係数の値を変更し、式(11)により求められたCPEスペクトルFCPE(Δωa)と式(20)との誤差が最小になるときの係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の値、および係数(c0,cMT)の値を計算する。図10に、フィッティングにより計算された各係数の値を示す。図10では、(c0,cMT)=(c0(1),cMT(1))、(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))で示されている。
尚、フィッティングにより、CEST項FL,1(Δωa)の係数の値の他に、ベースライン項の係数(c0,cMT)の値も計算することができる。ただし、CPEスペクトルFCPE(Δωa)は、Zスペクトルよりも、ベースライン波形が抑制されている(図6参照)。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)を近似式(20)でフィッティングすることによりベースライン項の係数(c0,cMT)を求めた場合、係数(c0,cMT)の推定誤差が大きくなる可能性がある。そこで、第1の形態では、係数(c0,cMT)の推定誤差が小さくなるように、係数(c0,cMT)を計算し直す。係数(c0,cMT)を計算し直すために、ステップST7に進む。
ステップST7は、2つのステップST71およびST72を有している。以下、各ステップST71およびST72について説明する。
ステップST71では、CRZスペクトル作成手段96(図2参照)が、ZスペクトルからCEST波形が除去されたスペクトルを作成する。以下では、ZスペクトルからCEST波形が除去されたスペクトルをCRZスペクトル(CEST Removed Z-spectrum)と呼ぶことにする。CRZスペクトルを、「ZCRZ」で表すと、CRZスペクトルZCRZは、Zスペクトルを用いて、以下の式で表すことができる。
尚、δ(Δωa)は、Δωa=0において式(21)の右辺第2項の分母がゼロにならないようにするために導入された関数である。ここでは、i=1であるので、式(21)は、以下の式で表される。
式(22)のZは、ステップST2で求められている。また、式(22a)のFL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、図10に示すように、ステップST6で(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))と計算されている。したがって、式(22)から、CESTの影響を受けた信号成分(CEST波形)が除去されたCRZスペクトルZCRZを作成することができる。CRZスペクトルZCRZを作成した後、ステップST72に進む。
ステップST72では、ステップST71で作成したCRZスペクトルZCRZに基づいて、式(20)のベースライン項の係数(c0,cMT)の値を計算する。以下に、係数(c0,cMT)の値の求め方について説明する。
CRZスペクトルZCRZは、ZスペクトルからCEST波形が除去されたスペクトルを表している。したがって、CRZスペクトルZCRZは、CESTの影響を受けた信号成分ではなく、自由水と結合水との間で生じるMTの影響を受けた信号成分を主に表していると考えることができる。自由水と結合水との間で生じるMTの影響を受けた信号成分を表すスペクトルは、式(13)のスペクトルZMTで表されている。したがって、CRZスペクトルZCRZは、スペクトルZMTを用いて、以下の式で近似することができる。
式(23)から、CRZスペクトルZCRZは、定数項b0とローレンツ関数の項との和で表される関数で近似できることが分かる。
第2のフィッティング手段97(図2参照)は、CRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるようにフィッティングを行い、誤差が最小になるときの式(23)の係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。フィッティングを行う場合、第2のフィッティング手段97は、先ず、係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を計算する。係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値は、例えば、ステップST6で計算したベースライン項の値(c0,cMT)=(c0(1),cMT(1))に基づいて計算することができる。係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を計算した後、第2のフィッティング手段97は、初期値を基準にして係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を変更し、CRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるときの係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。図11に、フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す。図11では、計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値は、(b0,b1,b2,Δω0)=(b0(1),b1(1),b2(1),Δω0(1))で示されている。
これらの係数の値を求めた後、(c0,cMT)計算手段98(図2参照)は、(b0,b1)=(b0(1),b1(1))を式(20a)に代入し、c0を計算する。また、(c0,cMT)計算手段98は、b0=b0(1)を式(20b)に代入し、cMTを計算する。したがって、式(20)のベースライン項の係数(c0,cMT)の値を計算することができる。図12に、計算された係数(c0,cMT)の値を示す。図12では、(c0,cMT)=(c0(1)’,cMT(1)’)で示されている。これらの値を求めた後、ステップST8に進む。
ステップST8では、スペクトル計算手段99(図2参照)が、ベースライン項c0+cMTF(Δωa)とCEST項ΣiFL,i(Δωa)との和で表されるスペクトルFCPE_i(Δωa)を計算する。このスペクトルFCPE_i(Δωa)は、以下の式で定義することができる。
尚、ステップST5において、i=1に設定されているので、式(24)は、以下の式で表される。
式(25)のベースライン項の係数(c0,cMT)は、ステップST72において(c0,cMT)=(c0(1)’,cMT(1)’)と計算されている(図12参照)。また、式(25c)のCEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、ステップST6において(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))と求められている(図12参照)。したがって、式(25)および(25c)に、これらの係数の値を代入することにより、スペクトルFCPE_1(Δωa)を計算することができる。図13に、スペクトルFCPE_1(Δωa)を概略的に示す。尚、図13では、比較のため、スペクトルFCPE_1(Δωa)の他に、CPEスペクトルFCPE(Δωa)も示してある。スペクトルFCPE_1(Δωa)は、オフセット周波数Δωc,1の付近において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に十分に近い波形を有していることが分かる。スペクトルFCPE_1(Δωa)を計算した後、ステップST9に進む。
ステップST9では、判断手段100(図2参照)が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に、CEST項FL,1(Δωa)(式20c参照)で表されるCEST波形とは異なる他のCEST波形が含まれているか否かを判断する。
図14は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する方法の説明図である。
図14の上側には、CPEスペクトルFCPE(Δωa)およびスペクトルFCPE_1(Δωa)が示されており、図14の下側には、CPEスペクトルFCPE(Δωa)とスペクトルFCPE_1(Δωa)との差分スペクトルD(Δωa)が示されている。
先ず、判断手段100は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)から、スペクトルFCPE_1(Δωa)を差分し、差分スペクトルD(Δωa)を求める。
次に、判断手段100は、差分スペクトルD(Δωa)に基づいて、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する。以下に、この判断方法について説明する。
スペクトルFCPE_1(Δωa)を求めるための式(25)は、オフセット周波数Δωc,1に対応したCEST項FL,1(Δωa)を含んでいる。したがって、オフセット周波数Δωc,1の付近では、スペクトルFCPE_1(Δωa)は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に十分に近い値を有している。このため、差分スペクトルD(Δωa)の信号値は、オフセット周波数Δωc,1の付近ではゼロに近い値になる。
しかし、FCPE_1(Δωa)の式(25)は、オフセット周波数Δωc,2に対応したCEST項を含んでいない。したがって、オフセット周波数Δωc,2の付近では、スペクトルFCPE_1(Δωa)と、CPEスペクトルFCPE(Δωa)との間に、ある程度の信号値の差が生じる。このため、差分スペクトルD(Δωa)には、オフセット周波数Δωc,2の付近に、他のCEST波形のピークP2が現れる。
したがって、差分スペクトルD(Δωa)にピークP2が現れているかを判断することにより、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断することができる。第1の形態では、差分スペクトルD(Δωa)にピークP2が現れているかを判断するために、2つの閾値TH1およびTH2が用いられる。判断手段100は、2つの閾値TH1およびTH2と、差分スペクトルD(Δωa)とを比較し、差分スペクトルD(Δωa)が、閾値TH1又は閾値TH2を横切っているか否かを判断する。差分スペクトルD(Δωa)が、閾値TH1又は閾値TH2を横切っている場合、判断手段100は、差分スペクトルD(Δωa)にピークP2が現れていると判断する。一方、差分スペクトルD(Δωa)が、閾値TH1又は閾値TH2を横切っていない場合、判断手段100は、差分スペクトルにピークP2が現れていないと判断する。
図14を参照すると、差分スペクトルD(Δωa)は、オフセット周波数Δωc,2の付近において、閾値TH1を超えるピークP2を含んでいる。したがって、判断手段100は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断する。CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断された場合、ステップST10に進む。
ステップST10では、検出手段93が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の他のCEST波形のピークが現れるオフセット周波数Δωc,2を検出する。ここでは、Δωc,2の検出値はΔωa2であるとする。したがって、Δωc,2の検出値は、以下の式で表される。
オフセット周波数Δωc,2=Δωa2を検出した後、ステップST11に進む。
ステップST11では、i値設定手段94が、CEST項の数を表すiをインクリメントする。したがって、iは、i=1からi=2に設定される。i=2に設定された場合、CPEスペクトルの近似式(16)は、以下の式で表される。
i=2に設定した後、ステップST6に戻る。
ステップST6では、第1のフィッティング手段95が、フィッティングにより、式(26c_2)のCEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の値を計算する。以下に、係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の求め方について説明する。
第1の形態では、既に、CEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))と計算されており、ベースライン項の係数(c0,cMT)は、(c0(1)’,cMT(1)’)と計算されている(図12参照)。したがって、これらの値を式(26)および式(26c_1)に代入すると、式(26c_2)で表されるCEST項FL,2(Δωa)の3つの係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)のみが、未知の係数となる。この場合、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と、3つの未知の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)を含む近似式(26)との誤差が最小になるように、CPEスペクトルFCPE(Δωa)をフィッティングすることにより、3つの係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の値を求めることができる。
しかし、ベースライン項の係数(c0,cMT)=(c0(1)’,cMT(1)’)は、CEST項が1項(FL,1(Δωa))しか含まれていない近似式(20)に基づいて求められた値である。一方、近似式(26)は、CEST項FL,1(Δωa)の他に、新たなCEST項FL,2(Δωa)が追加されている。したがって、ベースライン項の係数(c0,cMT)を(c0(1)’,cMT(1)’)に固定してフィッティングを行うと、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の推定誤差が大きくなる恐れがある。そこで、第1の形態では、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の推定誤差を小さくするために、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)だけでなく、ベースライン項の係数(c0,cMT)も未知の係数として、フィッティングを行う。したがって、5つの係数が未知の係数となる。第1のフィッティング手段95は、5つの未知の係数を含む近似式(26)を用いて、CPEスペクトルFCPE(Δωa)のフィッティングを行う。フィッティングを行う場合、第1のフィッティング手段95は、先ず、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の初期値と、ベースライン項の係数(c0,cMT)の初期値とを設定する。係数Δωc,2の初期値は、ステップST10で検出したオフセット周波数Δωc,2の値、即ち、Δωc,2=Δωa2(式25d参照)に設定される。また、係数(a1,2,a2,2)の初期値は、差分スペクトルD(Δωa)のピークP2(図14参照)の高さおよび半値幅に基づいて計算することができる。一方、ベースライン項の係数(c0,cMT)の初期値は、i=1のときに求めた値(c0,cMT)=(c0(1)’,cMT(1)’)(図12参照)に設定することができる。初期値を設定した後、第1のフィッティング手段95は、初期値を基準にして係数の値を変更し、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と式(26)との誤差が最小になるときの係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)および係数(c0,cMT)の値を計算する。図15に、フィッティングにより計算された各係数の値を示す。図15では、(c0,cMT)=(c0(2),cMT(2))、(a1,2,a2,2,Δωc,2)=(a1,2(2),a2,2(2),Δωc,2(2))で示されている。
尚、フィッティングにより、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)の他に、ベースライン項の係数(c0,cMT)も計算される。ただし、先に説明したように、ステップST6で計算されたベースライン項の係数(c0,cMT)の値は、推定誤差が大きい可能性がある。そこで、ベースライン項の係数(c0,cMT)を計算し直すために、ステップST7に進む。
ステップST7では、2つのステップST71およびST72が順に実行される。
ステップST71では、CRZスペクトル作成手段96が、式(21)を用いて、ZスペクトルからCEST波形が除去されたCRZスペクトルZCRZを作成する。ただし、i=2に設定されているので、式(21)は、以下の式で表される。
CRZスペクトル作成手段96は、式(27)を用いて、ZスペクトルからCEST波形が除去されたCRZスペクトルZCRZを作成する。CRZスペクトルZCRZを作成した後、ステップST72に進む。
ステップST72では、第2のフィッティング手段97が、式(27)を用いて作成されたCRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるようにフィッティングを行い、誤差が最小になるときの式(23)の係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。フィッティングを行う場合、第2のフィッティング手段97は、先ず、係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を設定する。ここでは、第2のフィッティング手段97は、i=1において計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)=(b0(1),b1(1),b2(1),Δω0(1))(図12参照)を、i=2における係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値として設定する。i=2における係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を設定した後、第2のフィッティング手段97は、初期値を基準にして係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を変更し、式(27)を用いて作成されたCRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるときの係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。図16に、i=2において、フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す。図16では、計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値は、(b0,b1,b2,Δω0)=(b0(2),b1(2),b2(2),Δω0(2))で示されている。
これらの係数の値を求めた後、(c0,cMT)計算手段98は、(b0,b1)=(b0(2),b1(2))を式(26a)に代入し、c0を計算する。また、(c0,cMT)計算手段98は、b0=b0(2)を式(26b)に代入し、cMTを計算する。したがって、式(26)のベースライン項の係数(c0,cMT)の値を計算することができる。図17に、計算された係数(c0,cMT)の値を示す。図17は、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)で示されている。これらの値を求めた後、ステップST8に進む。
ステップST8では、スペクトル計算手段99が、式(24)を用いてスペクトルFCPE_i(Δωa)を計算する。ただし、i=2に設定されているので、式(24)は、以下の式で表される。
図17に示すように、係数(c0,cMT)は、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)と計算されており、係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)は、(a1,2,a2,2,Δωc,2)=(a1,2(2),a2,2(2),Δωc,2(2))と計算されている。また、図12に示すように、係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))と計算されている。したがって、式(28)、(28c_1)、および(28c_2)に、これらの係数の値を代入することにより、スペクトルFCPE_2(Δωa)を計算することができる。図18に、スペクトルFCPE_2(Δωa)を概略的に示す。尚、図18では、比較のため、スペクトルFCPE_2(Δωa)の他に、CPEスペクトルFCPE(Δωa)も示してある。スペクトルFCPE_2(Δωa)は、オフセット周波数Δωc,1およびΔωc,2の付近において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に十分に近い波形を有していることが分かる。スペクトルFCPE_2(Δωa)を計算した後、ステップST9に進む。
ステップST9では、判断手段100が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に、CEST項FL,1(Δωa)およびFL,2(Δωa)で表されるCEST波形(式26c_1および26c_2参照)とは異なる他のCEST波形が含まれているか否かを判断する。
図19は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する方法の説明図である。
判断手段100は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)から、スペクトルFCPE_2(Δωa)を差分し、差分スペクトルD(Δωa)を求め、差分スペクトルD(Δωa)と閾値TH1およびTH2とを比較する。
差分スペクトルD(Δωa)は、閾値TH1およびTH2を超えていないので、スペクトルFCPE_2(Δωa)は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に十分に近い波形を有していると考えることができる。この場合、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれるCEST波形は、スペクトルFCPE_2(Δωa)の式(28)に含まれている2つのCEST項FL,1(Δωa)およびFL,2(Δωa)で十分に表すことができたと考えられる。したがって、差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1およびTH2を超えていない場合、判断手段100は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形は含まれていないと判断する。他のCEST波形が含まれていないと判断された場合、ステップST12に進む。
尚、図19では、差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1およびTH2を超えていない例が示されている。しかし、差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1又はTH2を超える場合もある。以下に、差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1又はTH2を超える場合について説明する。
図20は、差分スペクトルD(Δωa)が閾値TH1を超えた例を示す図である。
図20では、差分スペクトルD(Δωa)には、オフセット周波数Δωc,3の付近に、閾値TH1を超えたピークP3が現れている。したがって、判断手段100は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断する。CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断された場合、ステップST10に進み、他のCEST波形のピークが現れるオフセット周波数Δωc,3を検出する。オフセット周波数Δωc,3を検出した後、ステップST11に進み、iがインクリメントされ、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式(26)に新たなCEST項FL,3(Δωa)が追加される。そして、ステップST6〜ST9が実行される。したがって、ステップST9において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断されるたびに、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式に新たなCEST項が追加され、ステップST6〜ST9が実行される。例えば、ステップST9において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)にj個目のCEST波形が含まれていると判断された場合について考えてみる。この場合、ステップST11においてi=jに設定されるので、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式は、以下の式で表される。
上記の近似式(29)では、FL,j(Δωa)が、新たに追加されたCEST項を表している。CPEスペクトルが近似式(29)で表される場合、式(29c_1)〜式(29c_j−1)のCEST項の係数は、既に計算されている。したがって、係数(c0,cMT)および係数(a1,j,a2,j,Δωc,j)の5つの係数が未知の係数となる。ステップST11においてi=jに設定されたら、ステップST6に戻る。ステップST6では、第1のフィッティング手段95が、近似式(29)を用いて5つの係数(c0,cMT)および(a1,j,a2,j,Δωc,j)の値を計算する。図21に、i=jにおいて計算された係数の値を示す。
CEST項の係数の値を計算した後、ステップST71に進む。ステップST71では、CRZスペクトル作成手段96が、式(21)を用いて、ZスペクトルからCEST波形が除去されたCRZスペクトルZCRZを作成する。尚、i=jであるので、式(21)は、以下の式で表される。
CRZスペクトルZCRZを求めた後、ステップST72に進む。
ステップST72では、第2のフィッティング手段97が、式(30)により作成されたCRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるようにフィッティングを行い、誤差が最小になるときの式(23)の係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。フィッティングを行う場合、第2のフィッティング手段97は、先ず、係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を設定する。ここでは、第2のフィッティング手段97は、i=j−1のときに計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値(図示せず)を、i=jにおける係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値として設定する。i=jにおける係数(b0,b1,b2,Δω0)の初期値を設定した後、第2のフィッティング手段97は、初期値を基準にして係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を変更し、式(30)を用いて作成されたCRZスペクトルZCRZと式(23)との誤差が最小になるときの係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を計算する。図22に、i=jにおいて、フィッティングにより計算された係数(b0,b1,b2,Δω0)の値を示す。図22では、(b0,b1,b2,Δω0)=(b0(j),b1(j),b2(j),Δω0(j))で示されている。
これらの係数の値を求めた後、(c0,cMT)計算手段98は、(b0,b1)=(b0(j),b1(j))を式(29a)に代入し、c0を計算する。また、(c0,cMT)計算手段98は、b0=b0(j)を式(29b)に代入し、cMTを計算する。したがって、式(29)のベースライン項の係数(c0,cMT)の値を計算することができる。図23に、計算された係数(c0,cMT)の値を示す。図23では、(c0,cMT)=(c0(j)’,cMT(j)’)で示されている。これらの値を計算した後、ステップST8に進む。
ステップST8では、スペクトル計算手段99が、式(24)を用いてスペクトルFCPE_i(Δωa)を計算する。ただし、i=jであるので、式(24)は、以下の式で表される。
式(31)の各係数は既に求められているので、これらの係数の値を代入することにより、スペクトルFCPE_ j(Δωa)を計算することができる。図24に、スペクトルFCPE_ j(Δωa)を概略的に示す。尚、図24では、比較のため、スペクトルFCPE_ j(Δωa)の他に、CPEスペクトルFCPE(Δωa)も示してある。スペクトルFCPE_ j(Δωa)を計算した後、ステップST9に進む。
ステップST9では、判断手段100が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれているか否かを判断する。したがって、ステップST9において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていないと判断されるまでは、ステップST10、ステップST11、ステップST6、ステップST7、ステップST8、およびステップST9のループが繰り返し実行される。そして、ステップST9において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていないと判断されると、ステップST12に進む。
ステップST12では、スペクトル推定手段101(図2参照)が、ベースライン項とCEST項との和で表されるZスペクトル(以下、「理想的なZスペクトル」と呼ぶ)Zidealを推定する。理想的なZスペクトルZidealは、式(11)および式(16)を用いて、以下の式で表すことができる。
スペクトル推定手段101は、式(32)を用いて、理想的なZスペクトルZidealを推定する。理想的なZスペクトルZidealを求めた後、ステップST13に進む。
ステップST13では、スペクトル比較手段102(図2参照)が、理想的なZスペクトルZidealとステップST2で作成されたZスペクトルとを比較し、理想的なZスペクトルZidealによってZスペクトルが再現されているか否かを判断する。この判断は、以下のように行う。
先ず、スペクトル比較手段102は、理想的なZスペクトルZidealと、ステップST2で作成されたZスペクトルとを比較し、オフセット周波数ごとに、理想的なZスペクトルZidealの信号値と、Zスペクトルの信号値との差を求める。次に、スペクトル比較手段102は、差の平方和が十分に小さいか否かを判断する。差の平方和が大きいか否かの判断は、例えば、差の平方和が大きいか小さいかを判断するための閾値を予め決定しておき、差の平方和と閾値とを比較することにより、行うことができる。スペクトル比較手段102は、差の平方和が閾値以下の場合、差の平方和が小さく、閾値よりも大きい場合、差の平方和は大きいと判断することができる。
差の平方和が小さい場合、スペクトル比較手段102は、理想的なZスペクトルZidealによってZスペクトルが再現されていると判断する。この場合、ステップST13からステップST14に進む。
一方、差の平方和が大きい場合、スペクトル比較手段102は、理想的なZスペクトルZidealによってZスペクトルが再現されていないと判断する。この場合、ステップST7に戻り、ベースライン項が再計算される。したがって、ステップST13において、理想的なZスペクトルZidealによりZスペクトルが再現されていると判断されるまで、ベースライン項の係数が再計算される。ステップST13において、理想的なZスペクトルZidealによりZスペクトルが再現されていると判断されたら、ステップST14に進む。
ステップST14では、カウント手段103(図2参照)が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれているCEST波形の総数TNをカウントする。第1の形態では、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断されるたびにiがインクリメントされるので(ステップST11参照)、iの値が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれるCEST波形の総数TNを表している。つまり、CEST波形の総数TNは、TN=iとなる。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれているCEST波形の総数TNをカウントすることができる。ここでは、説明の便宜上、i=2であるとする。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれているCEST波形の総数TNは、TN=2とカウントされる。TN=2とカウントした後、ステップST15に進む。
ステップST15では、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式(16)で用いられるベースライン項の係数(c0,cMT)を、最終的に得られたベースライン項の係数の値に固定し、CEST項の係数を再計算する。ここでは、i=2であるとしているので、最終的に得られたベースライン項の係数の値は、近似式(26)を用いて求められた値(c0(2)’,cMT(2)’)である(図17参照)。したがって、ベースライン項の係数の値は、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)に固定され、CEST項の係数が再計算される。以下に、ステップST15について、説明する。
図25は、ステップST15のフローを示す図である。
ステップST151では、i値設定手段94が、CEST項の数を表すiを、初期値(i=1)に設定する。i=1に設定した後、ステップST152に進む。
ステップST152では、第1のフィッティング手段95が、CPEスペクトルの近似式(20)のCEST項FL,1(Δωa)に含まれる3つの係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の値を計算する。係数の値を計算する場合、第1のフィッティング手段95は、先ず、式(20)のベースライン項の係数(c0,cMT)を、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)に固定する。したがって、近似式(20)では、CEST項FL,1(Δωa)の3つの係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)のみが未知の係数となる。第1のフィッティング手段95は、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と3つの未知の係数を含む近似式(20)との誤差が最小になるように、フィッティングする。フィッティングを行う場合、第1のフィッティング手段95は、先ず、CEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の初期値を設定する。CEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の初期値は、ステップST6で計算されたCEST項の係数の値を使用することができる。初期値を設定した後、第1のフィッティング手段は、初期値を基準にして係数の値を変更し、CPEスペクトルFCPE(Δωa)と式(20)との誤差が最小になるときのCEST項FL,1(Δωa)の3つの係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)の値を計算する。これらの係数の値を計算した後、ステップST153に進む。
ステップST153では、スペクトル計算手段99が、式(25)および式(25c)を用いて、スペクトルFCPE_1(Δωa)を計算する。
式(25)のベースライン項の係数(c0,cMT)の値は、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)に固定されている(図17参照)。また、式(25c)のCEST項の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、ステップST152において計算されている。したがって、式(25)および(25c)に、これらの係数の値を代入することにより、スペクトルFCPE_1(Δωa)を計算することができる。スペクトルFCPE_1(Δωa)を計算した後、ステップST154に進む。
ステップST154では、判断手段100が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に、CEST項FL,1(Δωa)(式20c参照)で表されるCEST波形とは異なる他のCEST波形が含まれているか否かを判断する。他のCEST波形が含まれていないと判断された場合は、ステップST157に進む。一方、他のCEST波形が含まれていると判断された場合はステップST155に進む。
ステップST155では、検出手段93が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の他のCEST波形のピークが現れるオフセット周波数を検出する。オフセット周波数を検出した後、ステップST156に進む。
ステップST156では、i値設定手段94が、iを、i=1からi=2にインクリメントする。i=2に設定された場合、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式は、式(26)で表される。iをインクリメントした後、ステップST152に戻る。
したがって、ステップST154において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていると判断されるたびに、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式にCEST項が追加され、追加されたCEST項に含まれる係数の値が計算される。したがって、ベースライン項の係数(c0,cMT)を、(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)に固定した場合のCEST項の係数の値を計算することができる。そして、ステップST154において、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に他のCEST波形が含まれていないと判断されたら、ステップST157に進む。
ステップST157では、カウント手段103が、CPEスペクトルFCPE(Δωa)に含まれているCEST波形の総数TNをカウントする。CEST波形の総数TNをカウントした後、ステップST158に進む。
ステップST158では、カウント手段103が、ステップST157でカウントされたCEST波形の総数TNが、ステップST14でカウントされたCEST波形の総数TN(=2)に等しいか否かを判断する。CEST波形の総数TNが異なっていると判断された場合、CEST項の係数又はベースライン項の係数の推定誤差が大きいと考えられる。そこで、CEST波形の総数TNが異なっていると判断された場合、ステップST5(図7参照)に戻る。そして、ステップST158においてCEST波形の総数が等しいと判断されるまで、ステップST5〜ST15が繰り返し実行される。したがって、ステップST3で求めたCPEスペクトルFCPE(Δωa)に基づいて、推定誤差の小さいベースライン項の係数の値およびCEST項の係数の値を求めることができる。図26に、ステップST15の再計算により得られたCPEスペクトルFCPE(Δωa)の各係数の値を示す。図26では、CPEスペクトルFCPE(Δωa)のベースライン項の係数の値は(c0,cMT)=(c0(2)’,cMT(2)’)で示されている。また、CPEスペクトルFCPE(Δωa)のCEST項FL,1(Δωa)の係数の値は(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))で示されており、CPEスペクトルFCPE(Δωa)のCEST項FL,2(Δωa)の係数の値は(a1,2,a2,2,Δωc,2)=(a1,2(2),a2,2(2),Δωc,2(2))で示されている。
尚、図26では、座標(x1,y1)において得られたCPEスペクトルFCPE(Δωa)の係数のみが示されている。しかし、他の座標において得られたCPEスペクトルFCPE(Δωa)についても、同様に、ベースライン項およびCEST項の係数の値が求められる。したがって、スライスSL内の座標ごとに、ベースライン項およびCEST項の係数の値が求められる。スライスSL内の座標ごとに得られたベースライン項およびCEST項の係数の値は、スライスSL内の各座標に対応付けて記憶部に保存される。図27に、記憶部に保存された係数の値を概略的に示す。図27では、説明の便宜上、スライスSLに含まれる複数の座標のうちの座標(x1,y1)に対応付けられた係数の値が示されているが、他の座標にも係数の値が対応付けられている。
上記のように、ステップST15を実行することにより、推定誤差の小さい各係数を計算することができる。ステップST158において、CEST波形の総数TNは等しいと判断されたら、ステップST15を抜け出し、ステップST16に進む。
ステップST16では、係数値計算手段105(図2参照)が、ステップST1〜ST15により得られた係数の値(図27参照)に基づいて、式18の係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する。以下に、係数(M0 b/M0 a/R1a)の計算方法について説明する。
第1の形態では、撮影部位は脳である。脳では、CEST項のピークとして、主に、アミドプロトンのピークと、NOE(Nuclear Overhauser Enhancement)のピークが現れることが分かっている。そこで、ここでは、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値と、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値とを計算する。以下に、これらの係数の値の計算方法について説明する。
係数値計算手段105は、スライスSL内の座標ごとに、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値と、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値とを計算する。尚、どの座標であっても、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の計算方法は同じである。そこで、以下では、スライスSLに含まれる複数の座標のうちの座標(x1,y1)を取り上げて、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する方法について説明する。
図28は、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算するためのフローを示す図である。
ステップST161では、CEST項判断手段104(図2参照)が、座標(x1,y1)において、アミドプロトンのCEST項が得られているか否かを判断する。この判断は、例えば、以下のようにして行うことができる。
CEST項判断手段104は、先ず、CEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)に含まれるオフセット周波数Δωc,1がアミドプロトンのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。ここでは、Δωc,1=Δωc,1(1)であるので(図27参照)、CEST項判断手段104は、Δωc,1=Δωc,1(1)がアミドプロトンのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。
アミドプロトンのピークは3.5ppmの近傍に現れることが分かっている。そこで、CEST項判断手段104は、Δωc,1(1)が3.5ppmに十分に近い値であるか否かを判断し、Δωc,1(1)の値が3.5ppmに十分に近い場合、Δωc,1(1)はアミドプロトンのピークが現れる周波数であると判断する。ここでは、Δωc,1(1)が以下の式(33)を満たす場合、Δωc,1(1)は3.5ppmに十分に近い値であると判断する。
ここで、αは、Δωc,1(1)が3.5ppmに十分に近い値であるか否かを判断するための定数である。αは、例えば、α=0.2ppmに設定することができる。
CEST項判断手段104は、式(33)が成り立つ場合、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,1(Δωa)は、アミドプロトンのCEST項であると判断し、一方、式(33)が成り立たない場合、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,1(Δωa)は、アミドプロトンのCEST項ではないと判断する。
CEST項FL,1(Δωa)がアミドプロトンのCEST項であると判断された場合、ステップST162に進む。
一方、CEST項FL,1(Δωa)がアミドプロトンのCEST項ではないと判断された場合、CEST項判断手段104は、もう一方のCEST項FL,2(Δωa)が、アミドプロトンのCEST項であるか否かを判断する。もう一方のCEST項FL,2(Δωa)が、アミドプロトンのCEST項であるか否かを判断する場合、CEST項判断手段104は、先ず、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)に含まれるオフセット周波数Δωc,2がアミドプロトンのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。ここでは、Δωc,2=Δωc,2(2)であるので(図27参照)、CEST項判断手段104は、Δωc,2=Δωc,2(2)がアミドプロトンのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。この判断は、以下の式(34)を用いて行われる。
CEST項判断手段104は、式(34)が成り立つ場合、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,2(Δωa)は、アミドプロトンのCEST項であると判断し、一方、式(34)が成り立たない場合、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,2(Δωa)は、アミドプロトンのCEST項ではないと判断する。
CEST項FL,2(Δωa)がアミドプロトンのCEST項であると判断された場合、ステップST162に進む。
一方、式(33)および式(34)のいずれも成り立たない場合、CEST項FL,1(Δωa)およびFL,2(Δωa)は、いずれもアミドプロトンのCEST項ではないと判断される。この場合、座標(x1,y1)にはアミドプロトンのCEST項は存在していないと判断されるので、ステップST163に進む。ステップST163では、係数値計算手段105は、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値をゼロに設定する。そして、ステップST164に進む。
ここでは、式(33)が成り立つとして説明を続ける。したがって、CEST項判断手段104は、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,1(Δωa)がアミドプロトンのCEST項であると判断する。この場合、座標(x1,y1)にはアミドプロトンのCEST項が存在していると判断されるので、ステップST162に進む。
ステップST162では、係数値計算手段105が、式(18)を用いて、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する。以下に、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の計算方法について、図29を参照しながら説明する。
式18の右辺の係数a1、a2、Δωcは、アミドプロトンのCEST項FL,1(Δωa)の係数(a1,1,a2,1,Δωc,1)に対応する。(a1,1,a2,1,Δωc,1)は、(a1,1,a2,1,Δωc,1)=(a1,1(1),a2,1(1),Δωc,1(1))であり、既知の値である。また、式18の右辺のB1はRFパルスにより決まる送信磁場強度であるので、既知の値である。したがって、式18の右辺のa1、a2、Δωc、およびB1は既知であるので、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算することができる。アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算した後、ステップST164に進む。
ステップST164では、CEST項判断手段104が、座標(x1,y1)において、NOEのCEST項が得られているか否かを判断する。以下に、この判断方法について説明する。尚、第1の形態では、ステップST161において、CEST項FL,1(Δωa)はアミドプロトンのCEST項と判断されているので、CEST項FL,1(Δωa)はNOEのCEST項ではない。したがって、CEST項判断手段104は、CEST項FL,1(Δωa)がNOEのCEST項であるか否かの判断は行わず、もう一方のCEST項FL,2(Δωa)がNOEのCEST項であるか否かを判断する。
CEST項FL,2(Δωa)がNOEのCEST項であるか否かを判断する場合、CEST項判断手段104は、先ず、CEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)に含まれるオフセット周波数Δωc,2がNOEのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。ここでは、Δωc,2=Δωc,2(2)であるので(図27参照)、CEST項判断手段104は、Δωc,2=Δωc,2(2)がNOEのピークが現れる周波数であるか否かを判断する。
NOEのピークは−3.5ppmの近傍に現れることが分かっている。そこで、CEST項判断手段104は、Δωc,2(2)が−3.5ppmに十分に近い値であるか否かを判断し、Δωc,1(2)の値が−3.5ppmに十分に近い場合、Δωc,2(2)はNOEのピークが現れる周波数であると判断する。ここでは、Δωc,2(2)が以下の式(35)を満たす場合、Δωc,2(2)は−3.5ppmに十分に近い値であると判断する。
αは、例えば、α=0.2ppmに設定することができる。式(35)が成り立つ場合、CEST項判断手段104は、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,2(Δωa)は、NOEのCEST項であると判断する。この場合、ステップST165に進む。
一方、式(35)が成り立たない場合、CEST項判断手段104は、CEST項FL,2(Δωa)はNOEのCEST項ではないと判断する。この場合、座標(x1,y1)にはNOEのCEST項は存在していないと判断されるので、ステップST166に進む。ステップST166では、係数値計算手段105は、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値をゼロに設定する。そして、フローが終了する。
ここでは、式(35)が成り立つとする。したがって、CEST項判断手段104は、座標(x1,y1)において得られたCEST項FL,2(Δωa)がNOEのCEST項であると判断する。この場合、座標(x1,y1)にはNOEのCEST項は存在していると判断されるので、ステップST165に進む。
ステップST165では、係数値計算手段105が、式(18)を用いて、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する。以下に、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の計算方法について、図30を参照しながら説明する。
式18の右辺の係数a1、a2、Δωcは、NOEのCEST項FL,2(Δωa)の係数(a1,2,a2,2,Δωc,2)に対応する。(a1,2,a2,2,Δωc,2)は、(a1,2,a2,2,Δωc,2)=(a1,2(2),a2,2(2),Δωc,2(2))であり、既知の値である。また、式18の右辺のB1はRFパルスにより決まる送信磁場強度であるので、既知の値である。したがって、式18の右辺のa1、a2、Δωc、およびB1は既知であるので、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算することができる。
以下同様に、スライスSL内の座標(x1,y1)以外の他の座標においても、図28に示すフローが実行される。そして、アミドプロトンのCEST項が含まれている場合は、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値が計算され、NOEのCEST項が含まれている場合は、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)の値が計算される。したがって、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)のマップ(図29参照)と、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)のマップ(図30参照)とを得ることができる。
係数(M0 b/M0 a/R1a)のマップを得たら、ステップST16が終了する。このようにして、図7のフローが実行される。
第1の形態では、ZスペクトルをCPEスペクトルFCPE(Δωa)に変換する。CPEスペクトルFCPE(Δωa)のベースライン波形(CESTの影響を受けていない信号成分)は、偶関数で近似することができるので、ローレンツ関数による大きなピークを持たない。したがって、ZスペクトルをCPEスペクトルFCPE(Δωa)に変換することにより、CEST波形を分離し易くすることができるので、CEST項に含まれる係数の値の推定誤差を小さくすることができる。
また、第1の形態では、ステップST13において、理想的なZスペクトルZidealとZスペクトルとの差を求め、差の平方和が閾値を超えている場合は、ステップST7に戻ってベースライン項の係数を再計算する。したがって、ベースライン項の係数の推定誤差を更に小さくすることができる。
また、第1の形態では、ステップST15において、ベースライン項の係数の値を固定して、CEST項の係数の再計算している。したがって、CEST項の係数の推定誤差を更に小さくすることができる。
また、ステップST158では、CEST波形の総数TNが異なっていると判断した場合、ステップST5に戻り、CEST項の係数およびベースライン項の係数の値を再計算する。したがって、ベースライン項およびCEST項の係数の推定誤差を更に小さくすることができる。
また、第1の形態では、CRZスペクトルZCRZの近似式(23)は、定数項b0とローレンツ関数の項との和で表されている。ローレンツ関数の項は3つの係数(b1,b2,Δω0)を含んでいるので、CRZスペクトルZCRZの近似式(23)は、合計4つの係数(b0,b1,b2,Δω0)を含んでいる。一方、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式(16)で使用されるベースライン項は、定数項c0と、MT項cMTF(Δωa)の和で表されている。MT項のF(Δωa)は、ローレンツ関数ではなくΔωaの二次関数(式(4)参照)であるので、MT項に含まれる係数は1個(cMT)で済む。したがって、CPEスペクトルFCPE(Δωa)の近似式(16)では、ベースライン項に含まれる係数の合計は2個(c0,cMT)で済む。このため、ZスペクトルをCPEスペクトルFCPE(Δωa)に変換した場合、2つの係数(c0,cMT)の値を求めるだけで、CESTの影響を受けていない信号成分(ベースライン波形)を特定することができるので、フィッティングの精度を高めることができる。
また、第1の形態では、式(18)により、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算することができる。係数(M0 b/M0 a/R1a)は、M0 bの値に比例する係数である。M0 bは、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさを表しているので、係数(M0 b/M0 a/R1a)を求めることにより、スライス内において、CEST効果が顕著に表れている領域の範囲を知ることが可能となる。また、係数(M0 b/M0 a/R1a)は、M0 b/M0 aを含んでいる。M0 b/M0 aは、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさと自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさとの比を表している。したがって、係数(M0 b/M0 a/R1a)を求めることにより、スライス内において、プロトンの磁化の大きさの比が大きい領域(又は、比が小さい領域)の範囲を知ることも可能となる。
第1の形態では、係数a1、a2、およびΔωcを用いることにより、CEST波形の特性値として、3つの特性値a1/a2(ピークの高さ)、2√a2(ピークの半値幅)、およびΔωc(ピークが現れる周波数)を表すことができる。しかし、CEST波形を求めることができるのであれば、CEST項に、これらの3つの特性値とは別の特性値を表すための係数が含まれるようにしてもよい。
尚、第1の形態では、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求めるための式(18)において、T1の逆数を表すR1aが使用されている。しかし、R1aの代わりに、T1を用いてもよい。
第1の形態では、アミドプロトンの係数(M0 b/M0 a/R1a)の値およびNOEの係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算している。しかし、本発明は、CESTの原因となる他のプロトンの係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する場合にも適用することができる。
(2)第2の形態
第1の形態では、式(18)を用いて係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を求めたが、第2の形態では、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値の他に、更に別の係数の値を求める例について説明する。
先ず、式(18)の左辺のR1aを右辺に移動することを考える。R1aを右辺に移動すると、以下の式(36)が得られる。
式(36)は、M0 bとM0 aとを含む係数(M0 b/M0 a)の値を求めるための式である。尚、式(36)において、係数(M0 b/M0 a)は第3の係数に相当し、係数R1aは第4の係数に相当する。
次に、式(18)の左辺のM0 aを右辺に移動することを考える。M0 aを右辺に移動すると、以下の式(37)が得られる。
式(37)は、M0 bとR1aとを含む係数(M0 b/R1a)の値を求めるための式である。尚、式(37)において、係数(M0 b/R1a)は第3の係数に相当し、係数M0 aは第5の係数に相当する。
更に、式(18)の左辺のM0 aおよびR1aを右辺に移動することを考える。M0 aおよびR1aを右辺に移動すると、以下の式(38)が得られる。
式(38)は、係数M0 bの値を求めるための式である。尚、式(38)において、係数M0 bは第3の係数に相当し、係数R1aは第4の係数に相当し、係数M0 aは第5の係数に相当する。
第2の形態では、係数(M0 b/M0 a/R1a)の他に、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値が計算される。ただし、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算するためには、a1、a2、Δωc、およびB1の値の他に、M0 aおよびR1aの値も求める必要がある。a1、a2、Δωcは、スキャンSCにより得られたデータから求められ、B1は、シーケンスで使用されるRFパルスによって求められるが、M0 aおよびR1aの値は求めることができない。そこで、第2の形態では、M0 aおよびR1aを求めるためのスキャンを実行している。次に、第2の形態で実行されるスキャンについて説明する。
図31は、第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第2の形態では、スキャンSCおよびSC1が実行される。スキャンSCは第1の形態で実行されたスキャンSCと同じであるので、説明は省略する。
スキャンSC1は、M0 aおよびR1aの値を求めるためのスキャンである。スキャンSC1では、SE法などを用いたシーケンスのTRを変更しながら、シーケンスが繰り返し実行される。TRを変更しながらシーケンスを実行することにより、TRの各値における縦磁化の大きさMzを測定することができる。一方、TRおよびMzと、M0 aおよびR1aとの間には、以下の関係が成り立つ。
上記のように、スキャンSC1を実行することにより、TRの各値におけるMzが測定される。したがって、測定されたMzの値を式(39)でフィッティングすることにより、式(39)に含まれるM0 aおよびR1aの値を計算することができる。したがって、計算したM0 aの値を式(37)および式(38)に代入するとともに、計算したR1aの値を式(36)および式(38)に代入することにより、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算することができる。
次に、第2の形態のMR装置について説明する。尚、第2の形態のMR装置は、第1の形態のMR装置と比較すると、処理装置9が異なっているが、その他の構成は同じである。したがって、第2の形態のMR装置については、処理装置9について主に説明する。
図32は、第2の形態における処理装置9の説明図である。
第2の形態における処理装置9は、第1の形態における処理装置9(図2参照)と比較すると、係数値計算手段105が異なっているが、その他の手段は同じである。したがって、第2の形態における処理装置9については、画像作成手段90〜CEST項判断手段104の説明は省略し、係数値計算手段105について説明する。
第2の形態では、係数値計算手段105は、第1の係数値計算部105aと第2の係数値計算部105bとを有している。第1の係数値計算部105aは、スキャンSC1により得られたデータに基づいて、係数M0aの値と係数R1aの値とを計算する。第2の係数値計算部105bは、係数(M0 b/M0 a/R1a)の他に、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算する。
係数値計算手段105は上記のように構成されている。
第2の形態では、スキャンSCおよびSC1を実行し、スキャンSCおよびSC1により得られたデータに基づいて、係数(M0 b/M0 a/R1a)の他に、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を求める。以下に、これらの係数の値を計算するためのフローについて説明する。
図33は、係数の値を計算するためのフローを示す図である。
ステップST1では、スキャンSCおよびSC1(図31参照)を実行する。スキャンSCおよびSC1を実行した後、ステップST2に進む。
ステップST2〜ステップST16は、第1の形態と同じであるので説明は省略する。ステップST16において、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)のマップ(図29参照)と、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a/R1a)のマップ(図30参照)とを得ることができる。尚、第2の形態では、第2の係数値計算部105bが、係数(M0 b/M0 a/R1a)の値を計算する。これらのマップを得た後、ステップST17に進む。
ステップST17では、第1の係数値計算部105aが、スキャンSC1により得られたデータに基づいて、スライスSL内の座標ごとに、係数M0aの値と、係数R1aの値とを計算し、M0aマップおよびR1aマップを求める。図34はM0aマップおよびR1aマップを概略的に示す図である。上記のように、スキャンSC1を実行することにより、TRの各値におけるMzが測定される。第1の係数値計算部105aは、測定されたMzの値を式(39)でフィッティングすることにより、M0 aおよびR1aの値を計算する。したがって、スライスSL内の座標ごとに、係数M0aの値と、係数R1aの値とを計算することができる。尚、図34では、説明の便宜上、スライスSLに含まれる複数の座標のうちの座標(x1,y1)におけるM0 aの値(M0 a=M0 a_1)およびR1aの値(R1a=R1a_1)のみが示されているが、他の座標においても、M0 aおよびR1aの値が計算される。したがって、M0 aマップおよびR1aマップが得られる。M0 aおよびR1aの値は、各座標に対応付けて記憶部に記憶される。M0 aマップおよびR1aマップを得た後、ステップST18に進む。
ステップST18では、第2の係数値計算部105bが、スライスSL内の座標ごとに、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算する。以下、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値の計算方法について説明する。
尚、どの座標であっても、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値の計算方法は同じである。そこで、以下では、スライスSLに含まれる複数の座標のうちの座標(x1,y1)を取り上げて、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値の計算方法について説明する。
図35は、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値の計算方法の説明図である。
第2の係数値計算部105bは、式(36)、式(37)、および式(38)のa1、a2、およびΔωcには、CEST項FL,1(Δωa)の係数の値(図29参照)を代入し、B1には、RFパルスにより発生する送信磁場強度の値を代入する。また、第2の係数値計算部105bは、式(37)および式(38)のM0 aに、M0 a=M0 a_1を代入し、式(36)および式(38)のR1aに、R1a=R1a_1を代入する。したがって、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算することができる。
以下同様に、スライスSL内の座標(x1,y1)以外の他の座標においても、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値が計算される。したがって、アミドプロトンのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bのマップを求めることができる。
アミドプロトンのCEST効果によるマップを作成した後、ステップST19に進む。
ステップST19では、第2の係数値計算部105bが、スライスSL内の座標ごとに、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算する。
NOEのCEST効果による係数の値を計算する場合、図35において、FL,1(Δωa)の係数の値の代わりに、FL,2(Δωa)の係数の値を、a1、a2、およびΔωcに代入すればよい。したがって、NOEのCEST効果による係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bのマップを求めることができる。
これらのマップを求めたら、フローを終了する。
第2の形態では、スキャンSC1を実行することにより得られたデータに基づいて、M0 aおよびR1aの値が求められる。したがって、係数(M0 b/M0 a/R1a)の他に、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算することができるので、CEST効果が顕著に表れている領域の範囲を、更に具体的に特定することが可能となる。
(3)第3の形態
第1および第2の形態では、連続波のRFパルスを有するシーケンスを用いた例について説明したが、第3の形態では、複数のプリパレーションパルスを有するシーケンスを用いた例について説明する。
尚、第3の形態のMR装置は、第1又は第2の形態のMR装置と同じである。
図36は、第3の形態におけるシーケンスSEを具体的に示す図である。
k回目のシーケンスSEは、m個のプリパレーションパルスと、データ収集セグメントDAQとを有している。各プリパレーションパルスは、RFパルスXと、縦磁化を定常状態にするためのキラー勾配パルスGcとを含んでいる。RFパルスXの周波数fは、f=fkに設定されている。プリパレーションパルスを繰り返し実行し、第mのプリパレーションパルスが実行された後に、シングルショット法によりデータを収集するためのデータ収集セグメントDAQが実行される。
図36に示すシーケンスを用いた場合でも、連続波のRFを用いたシーケンス(図4参照)と同様に、係数(M0 b/M0 a/R1a)、係数(M0 b/M0 a)、係数(M0 b/R1a)、および係数M0 bの値を計算することができる。したがって、第3の形態でも、第1又は第2の形態と同様の効果を得ることができる。
(4)第4の形態
第4の形態では、RFパルスの位相をサイクルさせるフェーズサイクリング法によりデータを収集するシーケンスを用いた例について説明する。
尚、第4の形態のMR装置は、第1の形態のMR装置1と比較すると、処理装置9が実現する手段に違いがあるが、ハードウェアの構成は、第1の形態のMR装置1と同じである。したがって、第4の形態のMR装置の説明に当たっては、ハードウェア構成の説明は省略し、処理装置9について主に説明する。
図37は、第4の形態において処理装置9が実現する手段の説明図である。
第4の形態における処理装置9は、第1の形態における処理装置9と比較すると、以下の点(1)および(2)が異なっている。
(1)Zスペクトル作成手段91はZスペクトルを作成する。ただし、第1の形態では、Zスペクトルの横軸はオフセット周波数であるが、第4の形態では、Zスペクトルの横軸は後述する位相差である。
(2)第4の形態では、処理装置9は周波数変換手段106を有している。周波数変換手段106は、位相差を周波数に変換する。
尚、その他の点については、第4の形態における処理装置9は、第1の形態における処理装置9と同じであるので、説明は省略する。処理装置9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行するための手段90〜106を実現する。
次に、第4の形態で使用されるシーケンスについて説明する。
図38は、第4の形態で使用されるシーケンスSEを具体的に示す図である。
k回目のシーケンスSEは、第1〜第mのパルスセットSet1〜Setm、キラー勾配パルスGc、およびデータ収集セグメントDAQを有している。以下では、先ず、第1〜第mのパルスセットSet1〜Setmについて説明する。尚、第1〜第mのパルスセットSet1〜Setmは同じ構成であるので、第1〜第mのパルスセットSet1〜Setmの説明に当たっては、代表して第1のパルスセットSet1を取り上げて説明する。
図38には、第1のパルスセットSet1が拡大して示されている。
第1のパルスセットSet1は、r個のRFパルスX1〜Xrを有している。RFパルスX1〜Xrは、正のRFパルスと負のRFパルスが交互に現れるように構成されている。RFパルスX1〜Xrは、時間間隔T_iterで印加される。符号「X1」〜「Xr」の下に記載されている「φ1」〜「φr」は、RFパルスの位相を表している。
次に、r個のRFパルスX1〜Xrの位相φ1〜φrについて説明する。先ず、r個のRFパルスX1〜Xrの中で、p番目のRFパルスXpと、p+1番目のRFパルスXp+1について考える(尚、pは、1≦p≦r−1である)。p番目のRFパルスXpの位相を「φp」で表し、p+1番目のRFパルスXp+1の位相を「φp+1」で表すと、k回目のシーケンスSEにおけるRFパルスの位相差Δφ(k)=φp+1−φpは、以下の式を満たすように設定されている。
式(40)から、位相差Δφ(k)は、kの値に応じて変化するように設定されていることが分かる。
図38では、第1のパルスセットSet1について示されているが、第2〜第mのパルスセットSet2〜Setmも、第1のパルスセットSet1と同じ構成である。したがって、どのパルスセットも、r個のRFパルスX1〜Xrを有しており、RFパルスの位相差Δφ(k)は式(40)を満たすように設定されている。
第1〜第mのパルスセットSet1〜Setmを印加した後、横磁化を消失させるためのキラー勾配パルスGcを印加する。そして、キラー勾配パルスGcを印加した後、データを収集するためのデータ収集セグメントDAQが実行される。ここでは、データ収集セグメントDAQは、シングルショット法でデータを収集するとする。
k回目のシーケンスSEは、上記のように構成されている。第4の形態では、シーケンスSEがr回実行される。尚、実行されるシーケンスの回数rが多いほど、周波数分解能の高いZスペクトルが得られるので、rはある程度大きい値であることが望ましい。一般的には、r=16〜32に設定することが考えられる。
ここで、フェーズサイクリング法のシーケンスを使用する場合のF(Δωa)(式(4)参照)について考察する。
RFパルスの時間間隔をT_iterで表し、RFパルスの位相差をΔφaで表すと、Δωaは、Miyoshi等により、以下の周期関数で置き換えられることが示されている(Miyoshi M, et al., Proceedings of ISMRM2014, #3299)。
そこで、式(4)において、Δωa 2を2(1−cosΔφa)/Titer 2に置き換えると、以下の式が得られる。
式(42)で定義されたF(Δφa)は、式(4)で定義されたF(Δωa)と同様に偶関数である。したがって、式(4)の代わりに式(42)を用いても、CEST波形の分離に適したCPEスペクトルを求めることができる。
フェーズサイクルを用いた場合、第iのCEST項は、以下の式で表すことができる。
第iのCEST項により表されるCEST波形は、係数a1,i、a2,i、およびΔφc,iを用いたローレンツ関数で表されている。a1,i/a2,iはCEST波形のピークの高さを表し、2√a2,iはCEST波形のピークの半値幅を表し、Δφc,iはCEST波形のピークが現れる位相差を表している。
尚、第1の形態では、周波数ΔωaおよびΔωc,iを変数として含む式を用いて、各種スペクトルが求められている。しかし、第4の形態では、周波数の代わりに位相差を用いているので、周波数を位相差に置き換えた式を用いて各スペクトル(CPEスペクトルなど)を求める必要がある。具体的には、周波数ΔωaおよびΔωc,iは、それぞれ、以下の位相差ΔφaおよびΔφc,iに置き換えればよい。
位相差ΔφaおよびΔφc,iは、以下の式で表される。
第4の形態のMR装置では、処理装置9は、位相差を周波数に変換する周波数変換手段106(図37参照)を備えている。周波数変換手段106は、式(44)および(45)に基づいて、位相差を周波数に変換することができる。したがって、フェーズサイクル法を用いる場合であっても、各スペクトルの位相差を周波数に変換できることが分かる。
1 MR装置
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 制御部
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 処理装置
10 記憶部
11 操作部
12 表示部
13 被検体
21 収容空間
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 RFコイル
21 収容空間
90 画像作成手段
91 Zスペクトル作成手段
92 スペクトル変換手段
93 検出手段
94 i値設定手段
95 第1のフィッティング手段
96 CRZスペクトル作成手段
97 第2のフィッティング手段
98 (c0,cMT)計算手段
99 スペクトル計算手段
100 判断手段
101 スペクトル推定手段
102 スペクトル比較手段
103 カウント手段
104 CEST項判断手段
105 係数値計算手段
106 周波数変換手段

Claims (22)

  1. CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
    前記スキャンにおいて、RFパルスを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段であって、前記RFパルスの周波数が前記シーケンスごとに異なるように設定されているスキャン手段と、
    前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成手段と、
    水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数を変数として含む偶関数であって、オフセット周波数の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
    CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換手段により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング手段と、
    前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング手段により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段と、
    を有する、磁気共鳴装置。
  2. 前記オフセット周波数をΔωaで表し、前記偶関数をF(Δωa)で表すと、
    前記CEST項は、前記偶関数F(Δωa)を用いて表される、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
  3. 前記第1の波形の特性値には、前記第1の波形のピークの高さ、前記ピークの半値幅、および前記ピークが現れる周波数が含まれる、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
  4. 前記近似式はn個のCEST項を有し、
    前記n個のCEST項のうちの第iのCEST項は、前記第1の係数として3つの係数a1,i、a2,i、およびΔωc,iを含んでおり、
    a1,i/a2,iは前記ピークの高さを表し、2√a2,iは前記ピークの半値幅を表し、Δωc,iは前記ピークが現れる周波数を表す、請求項3に記載の磁気共鳴装置。
  5. 前記第iのCEST項は、前記3つの係数a1,i、a2,i、Δωc,iおよび前記偶関数F(Δωa)を用いて、以下の式で表される、請求項4に記載の磁気共鳴装置。
    ここで、 FL,i(Δωa):前記第iのCEST項
    F(Δωa−Δωc,i):前記偶関数F(Δωa)のΔωaをΔωa−Δωc,iに置き換えることにより得られる関数
  6. CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
    前記スキャンにおいて、複数のRFパルスを含むパルスセットを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段であって、前記複数のRFパルスのうちのp番目のRFパルスの位相とp+1番目のRFパルスの位相との位相差が前記シーケンスごとに異なるように、前記複数のRFパルスの位相をサイクルさせているスキャン手段と、
    前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成手段と、
    RFパルスの位相差を変数として含む偶関数であって、前記位相差の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換手段と、
    CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換手段により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング手段と、
    前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング手段により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算手段と、
    を有する磁気共鳴装置。
  7. 前記位相差をΔφaで表し、前記偶関数をF(Δφa)で表すと、
    前記CEST項は、前記偶関数F(Δφa)を用いた式で表される、請求項6に記載の磁気共鳴装置。
  8. 前記第1の波形の特性値には、前記第1の波形のピークの高さ、前記ピークの半値幅、および前記ピークが現れる位相差が含まれる、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
  9. 前記近似式はn個のCEST項を有し、
    前記n個のCEST項のうちの第iのCEST項は、前記第1の係数として3つの係数a1,i、a2,i、およびΔφc,iを含み、
    a1,i/a2,iは前記ピークの高さを表し、2√a2,iは前記ピークの半値幅を表し、Δφc,iは前記ピークが現れる位相差を表す、請求項8に記載の磁気共鳴装置。
  10. 前記第iのCEST項は、前記3つの係数a1,i、a2,i、Δφc,iおよび前記偶関数F(Δφa)を用いて、以下の式で表される、請求項9に記載の磁気共鳴装置。
    ここで、 FL,i(Δφa):前記第iのCEST項
    F(Δφa−Δφc,i):前記偶関数F(Δφa)のΔφaをΔφa−Δφc,iに置き換えることにより得られる関数
  11. 前記第3の係数は、
    CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさと、自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさと、水の縦緩和時間又は水の縦緩和時間の逆数とを含む係数である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  12. 前記第3の係数は、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさと、自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさとを含む係数であり、
    前記関係式は、水の縦緩和時間又は水の縦緩和時間の逆数を表す第4の係数を含んでおり、
    前記スキャン手段は、前記第4の係数の値を求めるための他のスキャンを実行し、
    前記係数値計算手段は、前記他のスキャンにより得られたデータに基づいて前記第4の係数の値を計算する第1の係数値計算部を有する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  13. 前記係数値計算手段は、前記関係式に基づいて前記第3の係数の値を計算する第2の係数値計算部を有し、
    前記第2の係数値計算部は、前記関係式の前記第4の係数に、前記第1の係数値計算部により計算された前記第4の係数の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する、請求項12に記載の磁気共鳴装置。
  14. 前記第3の係数は、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさと、水の縦緩和時間又は水の縦緩和時間の逆数とを含む係数であり、
    前記関係式は、自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさを表す第5の係数を含んでおり、
    前記スキャン手段は、前記第5の係数の値を求めるための他のスキャンを実行し、
    前記係数値計算手段は、前記他のスキャンにより得られたデータに基づいて前記第5の係数の値を計算する第1の係数値計算部を有する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  15. 前記係数値計算手段は、前記関係式に基づいて前記第3の係数の値を計算する第2の係数値計算部を有し、
    前記第2の係数値計算部は、前記関係式の前記第5の係数に、前記第1の係数値計算部により計算された前記第5の係数の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する、請求項14に記載の磁気共鳴装置。
  16. 前記第3の係数は、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさを表す係数であり、
    前記関係式は、水の縦緩和時間又は水の縦緩和時間の逆数を表す第4の係数と、自由水プールに含まれるプロトンの磁化の大きさを表す第5の係数とを含んでおり、
    前記スキャン手段は、前記第4の係数の値および前記第5の係数の値を求めるための他のスキャンを実行し、
    前記係数値計算手段は、前記他のスキャンにより得られたデータに基づいて前記第4の係数の値および前記第5の係数の値を計算する第1の係数値計算部を有する、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  17. 前記係数値計算手段は、前記関係式に基づいて前記第3の係数の値を計算する第2の係数値計算部を有し、
    前記第2の係数値計算部は、前記関係式の前記第4の係数に、前記第1の係数値計算部により計算された前記第4の係数の値を代入するとともに、前記関係式の前記第5の係数に、前記第1の係数値計算部により計算された前記第5の係数の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する、請求項16に記載の磁気共鳴装置。
  18. 前記位相差を周波数に変換する周波数変換手段を有する、請求項6〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  19. 前記RFパルスは、連続波のRFパルスである、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  20. 前記シーケンスは、複数のプリパレーションパルスを有しており、
    前記複数のプリパレーションパルスの各々は、前記RFパルスと、縦磁化を定常状態にするためのキラー勾配パルスとを含む、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  21. CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、前記スキャンにおいて、RFパルスを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段を有し、前記RFパルスの周波数が前記シーケンスごとに異なるように設定されている磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
    前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成処理と、
    水の共鳴周波数からのずれを表すオフセット周波数を変数として含む偶関数であって、オフセット周波数の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換処理と、
    CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換処理により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング処理と、
    前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング処理により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理と、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  22. CEST(化学交換飽和移動)により生じる磁化の移動を反映した情報を取得するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、前記スキャンにおいて、複数のRFパルスを含むパルスセットを有する複数のシーケンスを実行するスキャン手段を有し、前記複数のRFパルスのうちのp番目のRFパルスの位相とp+1番目のRFパルスの位相との位相差が前記シーケンスごとに異なるように、前記複数のRFパルスの位相をサイクルさせている磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
    前記複数のシーケンスにより得られたデータに基づいてZスペクトルを作成するZスペクトル作成処理と、
    RFパルスの位相差を変数として含む偶関数であって、前記位相差の値がゼロにおいて当該偶関数の値がゼロになるように設定された偶関数に基づいて、前記Zスペクトルを第1のスペクトルに変換するスペクトル変換処理と、
    CESTの影響を受けた信号成分の第1の波形を表すCEST項であって、前記第1の波形の特性値を表すための第1の係数を含むCEST項と、CESTの影響を受けていない信号成分の第2の波形を表すベースライン項とを含む近似式を用いて、前記スペクトル変換処理により得られた前記第1のスペクトルをフィッティングし、前記第1の係数の値を求めるフィッティング処理と、
    前記第1の係数と、送信磁場強度を表す第2の係数と、CESTプールに含まれるプロトンの磁化の大きさの情報を含む第3の係数との関係を表す関係式に基づいて、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理であって、前記関係式の前記第1の係数に、前記フィッティング処理により計算された値を代入するとともに、前記第2の係数に、前記シーケンスで使用されるRFパルスの送信磁場強度の値を代入し、前記第3の係数の値を計算する係数値計算処理と、
    をコンピュータに実行させるためのプログラム。

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