JP2017035081A - 動物細胞毒性又は抗酸化能の試験方法 - Google Patents

動物細胞毒性又は抗酸化能の試験方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能の評価に関して、的確且つ効果的な試験方法及びキットを提供する。
【解決手段】
本発明は、被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を含む培地で動物細胞を培養する工程、並びに培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験する方法を提供する。また、本発明は、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸、並びに動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験するためのキットを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価する試験方法及びキットに関し、より詳細には、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を用いて被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価する試験方法及びキットに関する。
食品の安全性の確保は人の生命及び健康を維持する上で極めて重要であり、その開発では新規成分のみならず既存の食経験のある成分に関しても毒性評価が重要視されている。特に近年では健康に対する関心の高まりから健康食品が注目を浴びており、体の健康に良いとされる食品素材の安全性評価が多方面で実施されている。毒性評価の中では、特に、肝臓や小腸での代謝反応の関係上in vitroで肝臓毒性や小腸上皮細胞毒性を調べることが容易ではなく、不正確な評価結果が商品化を妨げることがある。医薬品の分野でも、その創薬過程における膨大な開発費用と期間とを削減するために、簡便で的確な肝臓毒性及び小腸上皮細胞毒性の評価方法が強く望まれている。
肝臓毒性のin vitro試験法としては、一般に、肝細胞含有培地に被験物質を直接添加して肝細胞の状態を調べる方法が利用されている。例えば、非特許文献1には、HepG2細胞を播種したプレートに化学物質を暴露し、その毒性を複数のエンドポイント(細胞増殖性、細胞膜状態及びミトコンドリア機能)で評価する方法が開示されている。
しかしながら、化学物質の種類によってはこの従来の試験法が適切でない場合がある。例えば、植物由来化学物質は、フェノール水酸基を有し反応性が高く、生体に対して様々な有効作用を有しているが、このフェノール水酸基により強い抗酸化活性も合わせて見られる。この強力な抗酸化活性のために、従来のin vitro試験法では毒性を示すという結果が得られる傾向がある。ところが、このような活性の高い官能基を有する化学物質は、消化管内にて抱合反応を受けることで生体内に吸収されない、或いは抱合体となって生体に吸収され、更なる代謝反応を受けて体外に排泄されることが知られている。そのため、このような化学物質は、本来は肝臓毒性がないと評価されるべきであり、従来のin vitro試験法は生体での影響を反映しないと言われている。
生体での影響を考慮した試験法として非特許文献2に開示された方法がこれまでに報告されている。非特許文献2では、上述した化学物質とは逆に主に薬物代謝の第一相反応によって親化合物が活性化され、強力な毒性を有する反応性代謝物が生成されるという背景から、第一相反応を活性化する条件を付与した試験方法が示されている。具体的には、ラット肝臓抽出物であるラット肝S9を従来の試験法で使用する培地に添加し、第一相反応での影響を考慮した毒性評価が行われている。しかしながら、実際に得られている結果としては、判定における特異度は低く、生体内の代謝反応を十分に反映しているとは言い難い。なお、第一相反応は肝臓のみならず小腸でも見られており、例えば、非特許文献3ではラット小腸粘膜由来のS9が用いられた試験が報告されている。ただし、ここではラット小腸S9による特定化合物の反応物の評価が行われているのみであり、多種多様な被験物質の小腸に対する毒性試験が行われているわけではない。
一方、薬物代謝の第二相反応として、グルクロン酸抱合反応及び硫酸抱合反応があり、UDPGA及びPAPSがそれぞれの反応の補酵素として用いられることが知られている。例えば、非特許文献4には、これらの補酵素を利用して被験物質の代謝物を産生する方法が開示されている。しかしながら、これらの補酵素は単に代謝産物を得るために用いられるものであって、これまで肝臓毒性や小腸上皮細胞毒性の評価試験には利用されていなかった。また、より多くの代謝産物を得ることを目的とするために、従来開示されている前記補酵素の使用量は飽和状態であり、適切な使用量の検討も特にこれまで行われていない。第一相反応と第二相反応とを組み合わせた試験系は非特許文献5に開示されているが、これは遺伝毒性試験であって肝臓や小腸の毒性試験とは根本的に異なり、肝臓毒性や小腸上皮細胞毒性の評価に対する有用性は明らかでない。また非特許文献5では、使用される補酵素の種類の重要性が単に調べられているのみである。
J Biomol Screen. 2008, 13(6), 527-537 Toxicology in Vitro 28 (2014) 171-181 Drug Metab Dispos. 2006, 34(3), 398-404 Chem. Res. Toxicol. 2004, 17, 1520-1530 J. Pharmacobio-Dyn., 9, 1036-39, 1981
本発明の課題は、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能の評価に関して、的確且つ効果的な試験方法及びキットを提供することにある。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、薬物代謝の第一相反応の条件と第二相反応の条件とを毒性評価の試験において組み合わせることに着目し、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を用いて動物細胞を培養することによって、従来のin vitro試験法ではなし得なかった化学物質の的確な評価結果を得ることに成功した。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を含む培地で動物細胞を培養する工程、並びに
培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程、
を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験する方法。
(2)動物細胞を培養する前に前記培地をインキュベートする工程をさらに含む、(1)に記載の方法。
(3)被験物質が植物由来化学物質である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)植物由来化学物質がフェニルプロパノイド又はポリフェノールを含む、(3)に記載の方法。
(5)臓器抽出物が消化器系臓器抽出物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)消化器系臓器抽出物が肝臓抽出物又は小腸抽出物である、(5)に記載の方法。
(7)臓器抽出物がS9である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(8)S9が肝S9又は小腸S9である、(7)に記載の方法。
(9)培養する動物細胞がヒト由来動物細胞である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)培養する動物細胞が肝細胞又は小腸上皮細胞である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(11)肝細胞がヒト由来肝細胞である、(10)に記載の方法。
(12)小腸上皮細胞がヒト由来小腸上皮様細胞である、(11)に記載の方法。
(13)培地中の臓器抽出物の含有量が、タンパク質濃度として1.5mg/mL未満である、(1)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)培地中のウリジン二リン酸グルクロン酸の濃度が0.4〜100mMである、(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)培地中の3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸の濃度が0.01〜10mMである、(1)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)動物細胞の培養時間が1〜72時間である、(1)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17)動物細胞を培養する前に培地をインキュベートする温度が36〜38℃である、(2)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18)動物細胞を培養する前に培地をインキュベートする時間が5〜90分間である、(2)〜(17)のいずれかに記載の方法。
(19)培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程が、細胞数の変化、細胞内DNAの損傷、還元型グルタチオン(GSH)の量の変化、活性酸素(ROS)の量の変化、及びミトコンドリア膜電位(MMP)の変化からなる群から選択される少なくとも1つの指標を調べることを含む、(1)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸、並びに
動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物、
を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験するためのキット。
(21)動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物が、細胞数の変化、細胞内DNAの損傷、還元型グルタチオン(GSH)の量の変化、活性酸素(ROS)の量の変化、及びミトコンドリア膜電位(MMP)の変化からなる群から選択される少なくとも1つの指標を調べる手段を含む、(20)に記載のキット。
本発明の方法及びキットを用いることにより、従来のin vitro試験法よりも的確且つ効果的に被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能の評価を行うことができる。特にこれまでは肝臓等での代謝反応を考慮してin vivo試験での毒性評価が中心とされていたが、本発明の試験方法及びキットで得られる結果は当該in vivo試験での結果と相関性を有しており、本発明の方法及びキットはin vitroで簡便に、且つ正確に被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価することができる。
また、本発明の方法及びキットを利用すれば、食品又は医薬品等の開発プロセスの早期段階において的確に被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価することができ、その結果として、商品開発のコストを削減し、その開発期間を短縮し、そして候補物質のヒット率向上に資することができる。
図1は、S9の処理時間を検討した結果を示す図である。グラフの縦軸は細胞生存率(%)を示し、グラフの横軸はS9の処理時間(時間)を示す。 図2は、S9の用量を検討した結果を示す図である。グラフの縦軸は細胞生存率(%)を示し、グラフの横軸はS9の量(μL)を示す。 図3は、UDPGA及びPAPSの用量を検討した結果を示す図である。左のグラフはUDPGAについての結果を示し、右のグラフはPAPSについての結果を示す。それぞれ、グラフの縦軸は細胞生存率(%)を示し、グラフの横軸はUDPGA又はPAPSの濃度(mM)を示す。 図4は、S9の用量を検討した結果を示す図である。グラフの縦軸は細胞生存率(%)を示し、グラフの横軸はS9の量(mg/mL)を示す。
本発明は、被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を含む培地で動物細胞を培養する工程、並びに培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験する方法を提供する。
本発明の方法では、動物細胞の培養のために、被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を使用する。そのため、本発明の方法は、一つの工程として、被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を準備する工程を含むことができる。
本発明の方法で用いられる被験物質は、動物細胞毒性又は抗酸化能を調べる上で必要な物質である限り特に限定されない。本発明では特に、代謝反応を反映していなかった従来のin vitro試験法では的確に評価することのできない、或いは正確な評価が困難な被験物質を用いることが好ましい。そのような被験物質としては、フェノール水酸基を多数(例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上又は8個以上)有する化学物質、例えば植物由来化学物質、が好ましい。これは、フェノール水酸基を有する化学物質がその強い抗酸化活性のために単純にそれ自体を動物細胞に接触させた場合には細胞毒性を示すからである。本明細書において「植物由来化学物質」とは、植物から採取可能な化学物質を意味する。なお、植物由来化学物質は植物性化学物質と称することもある。
植物由来化学物質としては、その種類は特に限定されないが、フェニルプロパノイド又はポリフェノールであることが好ましい。そのため、本発明における植物由来化学物質は、好ましくはフェニルプロパノイド又はポリフェノールを含む植物由来化学物質である。
本明細書において「フェニルプロパノイド」とは、1−フェニルプロパン(C)が複数縮合した形の化合物及びその化合物の誘導体の総称を意味する。フェニルプロパノイドには、モノフェニルプロパノイド、ジフェニルプロパノイド及びポリフェニルプロパノイドが含まれる。フェニルプロパノイドの具体例としては、ヒドロキシチロソール、オレアセイン、レスベラトロール、オイゲノール、アネトール、セサミン、リグニン等が挙げられる。
本明細書において「ポリフェノール」とは、複数のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物及びその化合物の反応物(誘導体を含む)の総称を意味する。ポリフェノールの中には一部フェニルプロパノイドに属する化合物も存在し得るが、本発明ではそのような化合物はフェニルプロパノイド及びポリフェノールのいずれか一方に含まれるものと限定して解釈されることはなく、フェニルプロパノイド及びポリフェノールの両方の概念に含まれるものとしてよい。ポリフェノールには、フラボノイド(イソフラボン類、フラボノール類、カテキン類等)、ジベンゾフラン、アントラキノン類等が含まれる。ポリフェノールの具体例としては、ゲニステイン、ケルセチン、エピガロカテキンガレート、ウスニン酸、アロエエモジン等が挙げられる。
本発明で用いられる臓器抽出物は、動物の臓器を破砕して得られる抽出物である。対象とする動物は、好ましくは哺乳動物であり、その具体例としては、ヒト、ラット、モルモット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、又はヒト以外の霊長類(サル等)などが挙げられる。本発明では、ヒト又はラットの臓器抽出物が好ましく、ラットの臓器抽出物がより好ましい。
本発明における臓器抽出物は、例えば、消化器系臓器、循環器系臓器、呼吸器系臓器、泌尿器系臓器、生殖器系臓器、内分泌器系臓器、感覚器系臓器、神経系臓器、運動器系臓器等の抽出物が用いられるが、特にこれらに限定されない。本発明では、好ましくは消化器系臓器抽出物が用いられる。消化器系臓器抽出物としては、例えば、肝臓抽出物、小腸抽出物(十二指腸抽出物、空腸抽出物、回腸抽出物等を含む)、大腸抽出物(盲腸抽出物、結腸抽出物、直腸抽出物等を含む)、膵臓抽出物、胃抽出物、胆嚢抽出物等が挙げられる。本発明では、好ましくは肝臓抽出物又は小腸抽出物が用いられる。なお、本発明における臓器抽出物には、試験対象とする動物細胞(即ち、被験物質の存在下で培養される動物細胞)が由来する臓器と同種の臓器の抽出物が使用可能である。
臓器より得られる抽出物(臓器抽出物)の種類は特に限定されず、S9、ミクロソーム、サイトゾル等が使用可能である。これらの抽出物は、例えば臓器標本をホモジナイザー等で破砕して、所定の回転速度及び時間で遠心分離することにより画分として調製することができる。そのため、自ら調製した臓器抽出物を本発明の方法に用いてもよいが、好適には市販されている臓器抽出物が用いられる。本発明では、被験物質の代謝反応(特に第一相反応)をよりよく反映する上で、臓器抽出物の種類としてS9が最も好ましい。S9、ミクロソーム、サイトゾル等は臓器の種類に応じてそれらの名称を設定することができ、例えば肝臓抽出物である場合は、肝S9(肝臓S9)、肝ミクロソーム(肝臓ミクロソーム)、肝サイトゾル(肝臓サイトゾル)等とそれぞれ称することができ、また小腸抽出物である場合は、小腸S9、小腸ミクロソーム、小腸サイトゾル等とそれぞれ称することができる。本発明では、使用するS9として肝S9(肝臓S9)又は小腸S9が好ましい。
また、臓器抽出物による反応(例えば、第一相反応)を行う上では、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を用いることが好ましい。そのため、本発明における培地はNADPHをさらに含有することが好ましい。NADPHは、特に限定されないが、好ましくは市販品を用いることができる。また、NADPHは、NADPHそれ自体を用いてもよいし、或いは、酸化型であるNADP+及びその水素供給体(例えば、グルコース−6−リン酸等)の混合物と脱水素酵素(例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等)とを用いてNADPHを合成させてもよい。
本発明におけるウリジン二リン酸グルクロン酸は、UDP−グルクロン酸(UDP−α−グルクロン酸)、UDP−GA又はUDPGAとも称され、そのCAS登録番号は2616−64−0である。ウリジン二リン酸グルクロン酸は、UDP−グルクロン酸転移酵素によって被験物質(特に被験物質のフェノール水酸基)にそのグルクロン酸が転移され、生体内でのグルクロン酸抱合反応を本発明の方法において反映することができる。このように本発明では、ウリジン二リン酸グルクロン酸は、薬物代謝の第二相反応であるグルクロン酸抱合反応における補酵素として利用することができる。以下、本明細書ではウリジン二リン酸グルクロン酸を「UDPGA」と記載する。
本発明における3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸は、PAPSとも称され、そのCAS登録番号は482−67−7である。3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸は、スルホトランスフェラーゼによって被験物質(特に被験物質のフェノール水酸基)にそのスルホ基が転移され、生体内での硫酸抱合反応を本発明の方法において反映することができる。このように本発明では、3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸は、薬物代謝の第二相反応である硫酸抱合反応における補酵素として利用することができる。以下、本明細書では3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を「PAPS」と記載する。
上述の通り本発明における培地は、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを含有し、そして場合によりNADPHをさらに含有する。これにより、本発明の方法では薬物代謝の第一相反応と第二相反応とを行うことができる。通常、生体内では第一相反応に次いで第二相反応と順次段階的に反応が行われるが、本発明ではこれらの反応を一度に行うことができる。そのため、本発明の方法では簡便に被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価することができ、時間の短縮化や手間の削減等を通じて作業コストの低減等に資することができる。
本発明の方法では、培養の対象として動物細胞が用いられる。動物細胞は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、又は魚類等の動物から採取される細胞を用いることができ、哺乳動物の細胞としては、特に限定されないが、ヒト、ラット、モルモット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、又はヒト以外の霊長類(サル等)などに由来する細胞を利用することができる。本発明では、好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。本発明において動物細胞は、動物細胞毒性又は抗酸化能を評価する上で使用可能な細胞であれば任意の細胞又はその細胞集団が使用可能である。その種類としては、例えば、肝細胞(肝臓細胞)、腎細胞(腎臓細胞)、肺細胞、膵細胞(膵臓細胞)、線維芽細胞、筋肉細胞、皮膚細胞、上皮細胞(小腸上皮細胞など)、内皮細胞、血液細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球等)等の既に分化した細胞(体細胞)、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、脂肪由来幹細胞等の体性幹細胞、各種前駆細胞、又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の未分化細胞若しくはそれを分化誘導した細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、培養する動物細胞として、好ましくは肝細胞(肝臓細胞)又は小腸上皮細胞が用いられる。これらの動物細胞は、自体公知の方法により自ら調製したものを用いてもよく、或いは市販品を用いてもよい。
本発明では、培養する動物細胞として肝細胞を用いる場合、当該肝細胞は、特に限定されないが、好ましくはヒト由来肝細胞であり、より好ましくはヒト由来株化肝細胞であり、特に好ましくはHepG2細胞である。本発明における前記肝細胞(特に、HepG2細胞)は好適には市販品が用いられる。また、本発明では、培養する動物細胞として小腸上皮細胞を用いる場合、当該小腸上皮細胞は、特に限定されないが、好ましくはヒト由来小腸上皮様細胞であり、より好ましくはヒト由来株化小腸上皮様細胞であり、特に好ましくはCaco−2細胞である。ここで、本明細書において小腸上皮様細胞は、実際には小腸上皮に由来する細胞ではないものの、小腸上皮細胞と同様の挙動(例えば、同様の細胞分化)を示す、小腸のモデル細胞である。本発明における前記小腸上皮細胞及び小腸上皮様細胞(特に、Caco−2細胞)は好適には市販品が用いられる。
本発明において、動物細胞は、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを含む培地(動物細胞培養培地)で培養される。当該培地については、特に限定されないが、例えば、動物細胞の培養用の基本培地を用いることができる。そのような基本培地としては、特に限定されないが、イーグル培地(BM、MEM、DMEM等)、McCoy培地(McCoy5A、McCoy7A等)、Ham培地(F10、F12等)、199培地、RPMI1640培地、NCTC培地(NCTC109、NCTC135等)等を用いることができる。また、各種基本培地は必要に応じて混合して使用することもできる。
上記の基本培地には、血清(ウシ胎児血清、ヒト血清等)、血清代替物(KSR等)、アミノ酸(アラニン、アルギニン、シスチン、ヒスチジン等)、ビタミン(ビタミンB7、ビタミンB12等)、抗生物質(ストレプトマイシン、アンホテリシンB、カナマイシン等)、接着因子(コラーゲンI型、ゼラチン、フィブロネクチン等)、増殖因子(EGF、bFGF、PDGF、LIF、TGF−α等)、サイトカイン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6等)、ホルモン(インスリン、グルカゴン、プロゲステロン等)、脂肪酸(オレイン酸、アラキドン酸、リノレン酸等)、アデニン、グアノシン、ヒポキサンチン、チミジン、コレステロール等の添加物を必要に応じて加えることもできる。
本発明における培地は、当業者に公知の方法を用いて作製することができ、その作製方法は特に限定されない。例えば、培地に要求される成分を添加、混合し、必要に応じてオートクレーブ等の滅菌処理をして培地を作製することができる。抗生物質等の滅菌処理により不活化、変性するような成分等は滅菌処理後に添加してもよい。また、本発明における培地は、例えば、上述した基本培地に各種試薬を添加して作製することができる。そのため、本発明の方法は、一つの工程として、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPS(並びに、場合によりNADPH)を培地に添加する工程を含むこともできる。各種物質を培地に添加する順序、方法及び時間間隔は特に限定されない。また、本発明の方法は、一つの工程として、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPS(並びに、場合によりNADPH)を含有する培地を作製する工程を含むこともできる。
培地における臓器抽出物の含有量は、そのタンパク質濃度で表すことができる。当該タンパク質濃度(即ち、培地中の臓器抽出物の含有量)は、特に限定されないが、1.5mg/mL未満であり、その上限値として好ましくは、1.4mg/mL以下、1.3mg/mL以下、1.2mg/mL以下、1.1mg/mL以下、1.0mg/mL以下、0.9mg/mL以下、0.8mg/mL以下、0.7mg/mL以下、0.6mg/mL以下、0.58mg/mL以下、0.56mg/mL以下、又は0.54mg/mL以下である。また、当該タンパク質濃度の下限値としては、例えば、0.05mg/mL以上、好ましくは、0.06mg/mL以上、0.07mg/mL以上、0.08mg/mL以上、0.09mg/mL以上、0.1mg/mL以上、0.2mg/mL以上、0.3mg/mL以上、0.4mg/mL以上、又は0.42mg/mL以上である。典型的には、臓器抽出物の培地中のタンパク質濃度は、例えば0.05mg/mL以上1.5mg/mL未満、好ましくは、0.05〜1.4mg/mL、0.05〜1.3mg/mL、0.05〜1.2mg/mL、0.06〜1.1mg/mL、0.07〜1.0mg/mL、0.08〜0.9mg/mL、0.09〜0.8mg/mL、0.1〜0.7mg/mL、0.2〜0.6mg/mL、0.3〜0.58mg/mL、0.4〜0.56mg/mL、又は0.42〜0.54mg/mLである。臓器抽出物のタンパク質量は、自ら臓器抽出物を調製した場合は自体公知の方法(例えば、ローリー法、ブラッドフォード法、BCA法等)を用いて定量することができ、市販品の臓器抽出物を用いた場合は当該市販品に提示されたタンパク質量を利用することができる。
本発明においてNADPHを用いる場合、培地におけるその含有量は臓器抽出物による反応が行われる限りにおいて特に限定されない。例えば、NADPHの含有量は、上限値として10mM以下、好ましくは8mM以下、より好ましくは6mM以下、さらに好ましくは5mM以下である。また、当該含有量の下限値として、例えば、0.1mM以上、好ましくは0.5mM以上、より好ましくは1mM以上である。典型的には、NADPHの培地中の含有量(濃度)は、例えば0.1〜10mM、好ましくは0.1〜8mM、より好ましくは0.5〜6mM、さらに好ましくは1〜5mMである。NADPHが塩又は水和物等の形態を構成している場合は、これをNADPHの遊離体(フリー体)に換算した上で上記含有量を算出するものとする。
UDPGAの培地中の含有量は、特に限定されないが、そのモル濃度で表すことができ、例えば、含有量の上限値として100mM以下、好ましくは、80mM以下、60mM以下、40mM以下、20mM以下、15mM以下、12mM以下、10mM以下、8mM以下、6mM以下、5mM以下、4mM以下、3.8mM以下、又は3.6mM以下である。また、当該含有量の下限値として、例えば、0.4mM以上、好ましくは、0.6mM以上、0.8mM以上、0.9mM以上、1mM以上、1.5mM以上、2mM以上、2.5mM以上、3mM以上、3.2mM以上、又は3.4mM以上である。典型的には、UDPGAの培地中の含有量(濃度)は、例えば0.4〜100mM、好ましくは、0.4〜80mM、0.4〜60mM、0.4〜40mM、0.6〜20mM、0.8〜15mM、0.9〜12mM、1〜10mM、1.5〜8mM、2〜6mM、2.5〜5mM、3〜4mM、3.2〜3.8mM、又は3.4〜3.6mMである。UDPGAが塩又は水和物等の形態を構成している場合は、これをUDPGAの遊離体(フリー体)に換算した上で上記含有量を算出するものとする。
PAPSの培地中の含有量は、特に限定されないが、そのモル濃度で表すことができ、例えば、含有量の上限値として10mM以下、好ましくは8mM以下、6mM以下、4mM以下、2mM以下、1mM以下、0.8mM以下、0.6mM以下、0.4mM以下、0.2mM以下、0.18mM以下、0.16mM以下、0.14mM以下、又は0.12mM以下である。また、当該含有量の下限値として、例えば、0.01mM以上、好ましくは、0.02mM以上、0.025mM以上、0.03mM以上、0.04mM以上、0.05mM以上、0.06mM以上、0.07mM以上、0.08mM以上、又は0.09mM以上である。典型的には、PAPSの培地中の含有量(濃度)は、例えば0.01〜10mM、好ましくは、0.01〜8mM、0.01〜6mM、0.01〜4mM、0.01〜2mM、0.02〜1mM、0.025〜0.8mM、0.03〜0.6mM、0.04〜0.4mM、0.05〜0.2mM、0.06〜0.18mM、0.07〜0.16mM、0.08〜0.14mM、又は0.09〜0.12mMである。PAPSが塩又は水和物等の形態を構成している場合は、これをPAPSの遊離体(フリー体)に換算した上で上記含有量を算出するものとする。
UDPGA及びPAPSは、上述したように両者とも薬物代謝の第二相反応における補酵素として利用され得る。これらの培地中の含有量の比(UDPGA:PAPS)は、モル濃度の比(モル比)として、例えば、100:1〜1:1であり、好ましくは50:1〜10:1であり、より好ましくは40:1〜20:1である。両化合物について、これらが塩又は水和物等の形態を構成している場合は、それぞれ遊離体(フリー体)に換算した上で上記の比を算出するものとする。
また、本発明では、第一相反応と第二相反応とを同時に行う観点から、臓器抽出物とUDPGA又はPAPSとの培地中の含有量の比も重要となり得る。臓器抽出物とUDPGAとの比(臓器抽出物:UDPGA)は、臓器抽出物のタンパク質量(mg/mL)とUDPGAのモル濃度(mM)とを対比させたうえで、例えば1:1〜1:10であり、好ましくは1:3〜1:9であり、より好ましくは1:6〜1:8である。また、臓器抽出物とPAPSとの比(臓器抽出物:PAPS)は、臓器抽出物のタンパク質量(mg/mL)とPAPSのモル濃度(mM)とを対比させたうえで、例えば10:1〜1:1であり、好ましくは8:1〜2:1であり、より好ましくは6:1〜4:1である。UDPGA及びPAPSに関して、これらが塩又は水和物等の形態を構成している場合は、それぞれ遊離体(フリー体)に換算した上で上記の比を算出するものとする。
本発明では、培地を作製した後、即ち、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを培地に添加した後に、動物細胞を当該培地に添加(播種)することができる。このことから、本発明の方法は、一つの工程として、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを含有する培地に動物細胞を添加(播種)する工程を含むことができる。
動物細胞の培地への添加量は、被験物質の種類や試験目的等に応じて適宜設定することができる。当該添加量は、例えば、培地中の細胞濃度として、1×10〜2×10cells/mL、好ましくは5×10〜1×10cells/mL、より好ましくは1×10〜3×10cells/mLである。動物細胞の添加量が少なすぎると被験物質の毒性評価が困難となる傾向にあり、逆に当該添加量が多すぎると、動物細胞の培養操作が煩雑となる傾向がある。
本発明において、動物細胞の培養条件は、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能が判定できる限りにおいて特に限定されない。その培養温度は、上限値として、例えば38℃以下、好ましくは、37.8℃以下、37.6℃以下、37.4℃以下、又は37.2℃以下であり、下限値として、例えば36℃以上、好ましくは、36.2℃以上、36.4℃以上、36.6℃以上、又は36.8℃以上である。典型的には、動物細胞の培養温度は、例えば36〜38℃、好ましくは、36.2〜37.8℃、36.4〜37.6℃、36.6〜37.4℃、又は36.8〜37.2℃である。
動物細胞の培養時間は、上限値として、例えば72時間以下、好ましくは、60時間以下、48時間以下、36時間以下、33時間以下、30時間以下、又は27時間以下であり、下限値として、例えば1時間以上、好ましくは、2時間以上、4時間以上、6時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、又は22時間以上である。典型的には、動物細胞の培養温度は、例えば1〜72時間、好ましくは、2〜72時間、4〜72時間、6〜72時間、8〜72時間、10〜72時間、12〜60時間、14〜48時間、16〜36時間、18〜33時間、20〜30時間、又は22〜27時間である。培養時間は、被験物質の種類や試験目的等に応じて適宜設定することができる。例えばスクリーニング等の目的で汎用的に試験を行う場合であれば、その培養時間は短い方が好ましく(例えば、1〜6時間)、本発明の構成ではそのような時間条件でも試験することは可能である。他方、数多くの被験物質を同一の条件下で平均的且つ効果的に試験する場合には、適度に長い時間(例えば、6〜24時間)で培養時間を設定することが好ましい。なお、72時間を超えて培養を行う場合には、培養後72時間を経過した時点で、動物細胞の培地を新鮮な状態の培地に交換することが好ましい。
また、動物細胞の培養条件では、通常の動物細胞での条件と同様にCO濃度は調整されていることが好ましい。そのCO濃度は、例えば1〜10%、好ましくは2〜5%である。
動物細胞の培養は、温度管理又は温度調節が可能な市販のインキュベーターを用いて行うことができる。また、シャーレ、マルチウェルプレート、フラスコ、試験管、遠心管、ピペット、マイクロピペット等の自体公知の器具を用いて動物細胞を培養することができる。
本発明の方法はまた、前記培地を動物細胞の培養前にインキュベート(即ち、プレインキュベート)することを含むものであってもよい。そのため、本発明の方法は、一つの工程として、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを含む培地を動物細胞の培養前にインキュベート(プレインキュベート)する工程を含むことができる。
本明細書において「動物細胞の培養前」とは、動物細胞を培地に添加して(又は接触させて)培養する前の状態、即ち、動物細胞を培地に添加する(又は接触させる)前の状態であることを意味する。当該培地を動物細胞の培養前にインキュベートすることによって、被験物質を動物細胞と接触させるよりも前に、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSによる被験物質の反応を行うことができ、生体内での代謝反応をより反映させた試験結果を得ることができる。なお、本明細書において「プレインキュベート」は「プレインキュベーション」と読み替えてもよい。本発明において当該インキュベート(プレインキュベート)を行う場合は、特に限定されないが、インキュベート(プレインキュベート)後の反応停止処理、反応物の抽出(単離及び精製を含む)処理、又は反応物の分析処理等は必要とされない(即ち、これらの処理は本発明の方法には含まれなくてもよい)。
本発明では、動物細胞の培養前にインキュベート(プレインキュベート)することによって被験物質の構造やその他の組成が変化したとしても、当該インキュベート(プレインキュベート)後の培地は、本発明における被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPS(並びに、場合によりNADPH)を含む培地に対応するよう解釈することができる。即ち、本発明における培地には、概念として、動物細胞の培養前にインキュベート(プレインキュベート)することによって組成が変化する培地も包含され得る。動物細胞の培養前にインキュベート(プレインキュベート)を行った場合は、当該インキュベート(プレインキュベート)後の培地で動物細胞は培養される。また、当該インキュベート(プレインキュベート)を行った場合は、本発明における被験物質は、被験物質の反応物(臓器抽出物、UDPGA及びPAPS(場合により、さらにNADPHが含まれる)による反応物)として取り扱うことができ、本発明における培地は、被験物質の反応物、臓器抽出物、UDPGA及びPAPS(並びに、場合によりNADPH)を含む培地とすることができる。
動物細胞培養前の培地のインキュベート(プレインキュベート)条件は、被験物質の反応が進む限りにおいて特に限定されない。その温度は、上限値として、例えば38℃以下、好ましくは37℃以下であり、下限値として、例えば36℃以上である。典型的には、当該培地をインキュベートする温度は、例えば36〜38℃、好ましくは36〜37℃である。
また、動物細胞培養前の培地をインキュベート(プレインキュベート)する時間は、上限値として、例えば90分以下、好ましくは、80分以下、70分以下、60分以下、50分以下、45分以下、40分以下、又は35分以下であり、下限値として、例えば5分以上、好ましくは、10分以上、15分以上、20分以上、又は25分以上である。典型的には、当該培地をインキュベートする時間は、例えば5〜90分、好ましくは、5〜80分、5〜70分、5〜60分、10〜50分、15〜45分、20〜40分、又は25〜35分である。
本発明では、動物細胞の培養を行った後で、培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断することができる。具体的には、培養後の動物細胞の状態が、培養前の動物細胞の状態から変化している場合に被験物質は動物細胞毒性又は抗酸化能を有すると判断することができるが、その変化の程度は特に限定されない。なお、本明細書において「判断」及び「判定」の用語は相互に読み替え可能である。
本発明において判断及び試験する動物細胞毒性は、通常、使用する動物細胞に関連する毒性である。使用する動物細胞(即ち、培養する動物細胞)は上述した通りであり、例えば、肝細胞(肝臓細胞)を使用する場合は、それに関連する毒性は肝臓毒性(肝毒性)であり、腎細胞(腎臓細胞)を使用する場合は、それに関連する毒性は腎臓毒性(腎毒性)である。また、小腸上皮細胞を使用する場合は、それに関連する毒性は小腸上皮細胞毒性である。本発明において判断及び試験する動物細胞毒性は、好ましくは肝臓毒性(肝毒性)及び小腸上皮細胞毒性である。本発明において判断及び試験する抗酸化能は、活性酸素による酸化ストレスに対抗する能力又は作用を意味し、特に限定されないが、それが強い(即ち、強力な抗酸化能である)場合には毒性(例えば、動物細胞毒性等)が認められ得る。
動物細胞の状態は、特に限定されないが、例えば当該動物細胞の傷害の程度とすることができ、目視による観察や適宜設定された指標を測定すること等によって調べることができる。
目視による観察では、例えば、培養後の動物細胞の形態や大きさ等を観察することができる。培養後の動物細胞が、培養前のもの、或いは通常の動物細胞と比べて、例えば、形態が変化して異常な形態を示していたり、細胞膜の破砕等が見られたりするような場合は、培養後の動物細胞が傷害を受けていると判断することができる。また、動物細胞の大きさの観点では、培養後の動物細胞が、培養前のもの、或いは通常の動物細胞と比べて、大きさの違いの程度は特に限定されないが、例えば小さくなっていたり、或いは逆に大きくなっていたりするような場合は、培養後の動物細胞が傷害を受けていると判断することができる。そして、培養後の動物細胞が傷害を受けていると判断できれば、被験物質は動物細胞毒性を有する、又は抗酸化能を有すると判断することができる。
培養後の動物細胞の状態を測定する指標は、培養後の動物細胞の状態を調べることができる限り特に限定されない。その指標の具体例としては、(i)細胞数の変化(減少)、(ii)細胞内DNAの損傷、(iii)還元型グルタチオン(GSH)の量(濃度)の変化(減少)、(iv)活性酸素(ROS)の量(濃度)の変化(増加)、(v)ミトコンドリア膜電位(MMP)の変化(脱分極)等が挙げられる。これらのうち、特に(iii)還元型グルタチオン(GSH)の量、及び(iv)活性酸素(ROS)の量(濃度)は、被験物質の抗酸化能の評価に使用可能である。
(i)細胞数の変化に関しては、培養後の動物細胞の細胞数が陰性対照の細胞数よりも減少した場合に動物細胞に対して傷害を与えた、即ち、動物細胞毒性を有すると判断することができる。陰性対照としては、特に限定されないが、例えば、被験物質を含まない試料等を使用することができる。通常、培養後の細胞数が陰性対照の細胞数に対して70%未満、好ましくは65%以下である場合に、細胞数は減少すると判断することができる。一方、培養後の細胞数が、陰性対照の細胞数に対して、例えば70%以上、好ましくは、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上である場合には、細胞数は減少しない、即ち、動物細胞毒性は有さないと判断することができる。
(ii)細胞内DNAの損傷に関しては、例えば、核染色試薬(例えば、Hoechst33342)を用いて、培養後の動物細胞における染色の程度が陰性対照の染色の程度より変動した場合に動物細胞に対して傷害を与えた、即ち、動物細胞毒性を有すると判断することができる。陰性対照としては、特に限定されないが、例えば、被験物質を含まない試料等を使用することができる。通常、培養後の動物細胞における染色の測定値が、陰性対照の染色の測定値を100%としたときに、これに対して40%以上、好ましくは、45%以上、50%以上、又は55%以上の変動が見られる場合に、染色の程度は変動すると判断することができる。一方、培養後の動物細胞における染色の測定値が、陰性対照の染色の測定値(100%)に対して、例えば40%未満、好ましくは30%以下、20%以下、又は10%以下の変動しか見られない場合には、染色の程度は変動しない、即ち、動物細胞毒性は有さないと判断することができる。
(iii)還元型グルタチオン(GSH)の量の変化に関しては、例えば、GSH検出用蛍光試薬(例えば、Monochlorobimane(mBCl))を用いて、培養後の動物細胞における蛍光(発光)の程度が、陰性対照の程度よりも変動した場合に動物細胞に対して傷害を与えた、即ち、動物細胞毒性を有する、又は抗酸化能を有すると判断することができる。陰性対照としては、特に限定されないが、例えば、被験物質を含まない試料等を使用することができる。通常、培養後の動物細胞における蛍光の測定値と陰性対照の蛍光の測定値とを比較して、2.5倍以上、好ましくは3倍以上又は4倍以上の相違が見られる場合に、蛍光(発光)の程度は変動すると判断することができる。一方、培養後の動物細胞における蛍光の測定値と培養前の蛍光の測定値とを比較して、例えば2.5倍未満、好ましくは2倍以下又は1.5倍以下の相違しか見られない場合には、蛍光(発光)の程度は変動しない、即ち、動物細胞毒性は有さない、又は抗酸化能を有さないと判断することができる。
(iv)活性酸素(ROS)の量の変化に関しては、例えば、ROS検出用蛍光試薬(例えば、Hydroxyphenyl Fluorescein(HPF)及び/又はAminophenyl Fluorescein(APF))を用いて、培養後の動物細胞における蛍光(発光)の程度が陰性対照の程度よりも増加した場合に動物細胞に対して傷害を与えた、即ち、動物細胞毒性を有する、又は抗酸化能を有すると判断することができる。陰性対照としては、特に限定されないが、例えば、被験物質を含まない試料等を使用することができる。通常、培養後の動物細胞における蛍光の測定値が陰性対照の蛍光の測定値に対して2.5倍以上、好ましくは3倍以上又は4倍以上である場合に、蛍光(発光)の程度は増加すると判断することができる。一方、培養後の動物細胞における蛍光の測定値が、陰性対照の蛍光の測定値に対して、例えば2.5倍未満、好ましくは2倍以下又は1.5倍以下である場合には、蛍光(発光)の程度は増加しない、即ち、動物細胞毒性は有さない、又は抗酸化能を有さないと判断することができる。
(v)ミトコンドリア膜電位(MMP)の変化に関しては、例えば、MMP検出用蛍光試薬(例えば、JC−1)を用いて、ミトコンドリアの脱分極に応じて生じる蛍光(発光)の程度が陰性対照よりも培養後の方が増加した場合に動物細胞に対して傷害を与えた、即ち、動物細胞毒性を有すると判断することができる。陰性対照としては、特に限定されないが、例えば、被験物質を含まない試料等を使用することができる。通常、そのような蛍光の測定値が陰性対照の蛍光の測定値に対して4倍以上、好ましくは、5倍以上、6倍以上、7倍以上、又は8倍以上である場合に、蛍光(発光)の程度は増加すると判断することができる。一方、培養後の動物細胞における当該蛍光の測定値が、陰性対照の蛍光の測定値に対して、例えば4倍未満、好ましくは3.5倍以下、3倍以下、2.5倍以下、2倍以下、又は1.5倍以下である場合には、蛍光(発光)の程度は増加しない、即ち、動物細胞毒性は有さないと判断することができる。
本発明では、上記に例示した指標等を用いて被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価することができるが、動物細胞毒性又は抗酸化能を評価する指標は、上記に例示した方法のみならず、当業者に公知の方法を用いて調べてもよく、或いは市販の分析装置を用いて調べてもよい。分析装置を用いる場合は、当該装置に添付の指示書又は説明書に従って各種指標の判定を行うことができる。
また、本発明は、臓器抽出物、UDPGA及びPAPS、並びに動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験するためのキットを提供する。本発明のキットにおいて考慮されるべき材料及び用語等は、いずれも上記の説明及び定義等に準じて解釈される。
本発明のキットにおける臓器抽出物、UDPGA及びPAPSは、被験物質の反応物(代謝物に限定されない)を産生するための手段(ツール)として使用することができる。本発明のキットには、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSの他、被験物質の反応物産生に寄与する任意の物質(例えば、NADPH等)が含まれていてもよい。本発明のキットにおける臓器抽出物、UDPGA及びPAPS等の物質は、試薬であってもよいし、或いは調製物であってもよく、その形態は特に限定されない。
キットに含まれる臓器抽出物、UDPGA及びPAPS等の各種物質の量、濃度、純度等は特に限定されず、キットの使用状況等に応じて適宜設定することができる。また、前記各種物質は、シングルユースとして一回当たりの使用量が個別に包装されていてもよいし、複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、10回、又はそれ以上)の使用量を含んだ形態で包装されていてもよい。使用される容器も特に限定されず、物質の種類や量等に応じて適宜設定することができる。
本発明のキットにおける、動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物には、当該判断に用いられるための試薬、調製物、装置(測定機器、分析機器等を含む)、その他任意の必要な物質が含まれていてもよい。また、当該指示物は、指示書であってもよく、その形態は特に限定されない。当該指示物での判断対象となる動物細胞は、好ましくは培養後の動物細胞であり、特に好ましくは、本発明のキットに含まれる臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを用いて培養した後の動物細胞である。
本発明のキットにおいて、動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指標としては、特に限定されないが、例えば、(i)細胞数の変化(減少)、(ii)細胞内DNAの損傷、(iii)還元型グルタチオン(GSH)の量(濃度)の変化(減少)、(iv)活性酸素(ROS)の量(濃度)の変化(増加)、(v)ミトコンドリア膜電位(MMP)の変化(脱分極)等が挙げられる。これらのうち、特に(iii)還元型グルタチオン(GSH)の量、及び(iv)活性酸素(ROS)の量(濃度)は、被験物質の抗酸化能の評価に使用可能である。これらの指標を調べる、確認する、測定する、或いは判断(判定)する方法は上記に説明した通りである。また、これらの指標を調べる手段には、当該指標の判断に必要とされる任意の物質が含まれていてもよい。本発明のキットにおける指示物には、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断するための前記の指標が含まれ得る。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
1.S9処理時間設定試験
被験物質の肝臓毒性を試験するにあたり、ラット肝臓S9は細胞毒性を有することが知られている。そのため、細胞毒性を示さない処理時間を検証することを目的として、S9処理時間の条件設定試験を実施した。
(1)材料
試験用の肝細胞として、HepG2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
(2)細胞培養及びサンプル処理
(2)−1.培地の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液(×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
(2)−2.プレインキュベーション
24 wellプレートのwellにS9(ラット肝臓凍結S-9(家田貿易(キッコーマン))を11.3μL(0.5mg/mL protein)、注射用水100μL、培地353.7μL及びDMSO 5μLを加え、総量470μLとした。陰性対照としては、S9の代わりに注射用水11.3μL加えたものを用いた。各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate 66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-well プレート (Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−4.サンプル処理
試験前日にHepG2細胞を播種した96 wellプレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて6、24又は48時間インキュベーションした。
(3)測定(WST-8 assay (BioTek SynergyHTを使用した肝細胞毒性評価法))
サンプル処理の終了後、プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。その後、WST-8 Assay Kit (Cell Counting Kit-8) (Dojindo)に含まれる試薬を各wellに10μLずつ添加し、90分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、マルチプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を求めた。なお、細胞生存率の算出は以下の方法で行った。
細胞生存率(%)=[(検体の吸光度−ブランク吸光度)/(陰性対照の吸光度−ブランク吸光度)]×100
(4)結果
S9がHepG2細胞に対して細胞傷害性を示さない処理時間を検討するため、6、24あるいは48時間のS9処理における細胞生存率を評価した結果、いずれの処理時間においても明らかな細胞毒性は認められなかった。その結果を図1に示す。
以上の結果から、被験物質の肝臓毒性試験におけるS9の処理時間は、反応物と肝細胞とを十分に接触させることが可能であり、且つ肝臓毒性の評価に求められる時間として妥当な範囲である24時間を採用した。
2.肝臓毒性評価におけるS9用量設定試験
上記のS9処理時間設定試験と同様に、細胞毒性を示さないS9の培地含有量を検証するため、S9の用量の条件設定試験を実施した。
(1)材料
試験用の肝細胞として、HepG2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
(2)細胞培養及びサンプル処理
(2)−1.培地の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液(×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
(2)−2.プレインキュベーション
下表の通り、S9(ラット肝臓凍結S-9(家田貿易(キッコーマン))、注射用水、培地及びDMSOを24 wellプレートのwellに加え、総量470μLの反応液を調製した。陰性対照としては、S9の代わりに注射用水を加えたものを用いた。
各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-well プレート (Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−4.サンプル処理
試験前日にHepG2細胞を播種した96 well プレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−5.培地交換
S9処理を24時間行った後、96 wellプレートの培地を除去した。次いで、PBS(-)をwellに100μL添加して10秒間振とうさせ、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新鮮な培地を100μL/wellで添加した。すべてのwellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(3)測定(WST-8 assay (BioTek SynergyHTを使用した肝細胞毒性評価法))
プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。その後、WST-8 Assay Kit (Cell Counting Kit-8) (Dojindo)に含まれる試薬を各wellに10μLずつ添加し、90分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、マルチプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を求めた。なお、細胞生存率の算出は以下の方法で行った。
細胞生存率(%)=[(検体の吸光度−ブランク吸光度)/(陰性対照の吸光度−ブランク吸光度)]×100
(4)結果
S9がHepG2細胞に対して細胞傷害性を示さない用量を検討するため、S9のタンパク質濃度として0.06〜4.5mg/mLの範囲で用量設定試験を行った結果、33.8μL(タンパク質濃度として1.5mg/mL)以上において強い細胞毒性が認められることが分かった。その結果を図2に示す。
以上の結果から、被験物質の肝臓毒性試験におけるS9の培地中の含有量は、タンパク質濃度として1.5mg/mL未満である必要があり、0.5mg/mLが望ましいと判断した。
3.UDPGA及びPAPSの用量設定試験
第二相反応の補酵素であるUDPGA及びPAPSについて、これらが細胞毒性を示さない濃度を検証するため、これらの容量の条件設定試験を実施した。
(1)材料
試験用の肝細胞として、HepG2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
(2)細胞培養及びサンプル処理
(2)−1.培地・試薬の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液(×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
UDPGA (Uridine 5’-diphosphoglucuronic acid trisodium salt, 98-100% (sigma))は、培地中の最終濃度が目的の濃度(0.875、1.75、3.5、7.0、14.0mM)になるように注射用水を用いて調製した。また、PAPS (Adenosine 3’-phosphate 5’-phosphosulfate lithium salt hydrate, >=60% (sigma))は、培地中の最終濃度が目的の濃度(0.025、0.05、0.10、0.20、0.40mM)になるように注射用水を用いて調製した。
(2)−2.プレインキュベーション
下表に示すようにUDPGA又はPAPSを培地に添加し、24 wellプレートのwell中に総量470μLの反応液を調製した。溶媒としては、UDPGA及びPAPSの代わりに注射用水を加えたものを用いた。
各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-wellプレート(Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−4.サンプル処理
試験前日にHepG2細胞を播種した96 wellプレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−5.培地交換
UDPGA又はPAPSでの処理を24時間行った後、96 wellプレートの培地を除去した。次いで、PBS(-)をwellに添加して10秒間振とうさせ、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新鮮な培地を100μL/wellで添加した。すべてのwellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(3)測定(WST-8 assay (BioTek SynergyHTを使用した肝細胞毒性評価法))
プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。その後、WST-8 Assay Kit (Cell Counting Kit-8) (Dojindo)に含まれる試薬を各wellに10μLずつ添加し、90分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、マルチプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を求めた。なお、細胞生存率の算出は以下の方法で行った。
細胞生存率(%)=[(検体の吸光度−ブランク吸光度)/(陰性対照の吸光度−ブランク吸光度)]×100
(4)結果
UDPGA及びPAPSがHepG2細胞に対して細胞傷害性を示さない用量を検討するため、各補酵素について用量設定試験を行った結果、試験を実施した範囲内(UDPGA; 0.875〜14mM, PAPS; 0.025〜0.4mM)において細胞毒性は認められなかった。その結果を図3に示す。
以上の結果から、被験物質の肝臓毒性試験における培地中のUDPGA及びPAPSの含有量はそれぞれ3.5mM及び0.1mMとした。
4.代謝活性化条件の有無による肝細胞毒性試験
被験物質の肝臓毒性を調べるため、代謝活性化条件の検討を含めて肝細胞毒性試験を行った。
(1)材料
試験用の肝細胞として、HepG2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。また、被験物質は下記の化合物を使用した。なお、oleaceinは、常法により植物(オリーブ)より単離したものを用いた。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
quercetin (sigma, CAS No. 117-39-5)
coumarin (sigma, CAS No. 91-64-5)
epigallocatechin gallate(EGCG)(sigma, CAS No. 989-51-5)
oleacein (CAS No. 149183-75-5)
hydroxytyrosol (sigma, CAS No. 10597-60-1)
resveratrol (sigma, CAS No. 501-36-0)
Aloe-emodin (sigma, CAS No. 481-72-1)
Usnic acid (sigma, CAS No. 125-46-2)
Genistein (sigma, CAS No. 446-72-0)
Luteolin(sigma, CAS No. 491-70-3)
kaempferol(sigma, CAS No. 520-18-3)
catechin(sigma, CAS No. 154-23-4)
myricetin(sigma, CAS No. 529-44-2)
epigallocatechin(EGC)(sigma, CAS No. 970-74-1)
epicatechin gallate(ECG)(sigma, CAS No. 1257-08-5)
delphinidin(長良サイエンス株式会社, CAS No. 528-53-0)
theaflavin(sigma, CAS No. 4670-05-7)
Procyanidin B2(EXTRASYNTHESE S.A., CAS No. 29106-49-8)
(2)細胞培養及び被験物質処理
(2)−1.培地・試薬の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液 (×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
UDPGA (Uridine 5’-diphosphoglucuronic acid trisodium salt, 98-100% (sigma))は、培地中の最終濃度が3.5mMになるように注射用水を用いて調製した。また、PAPS (Adenosine 3’-phosphate 5’-phosphosulfate lithium salt hydrate, >=60% (sigma))は、培地中の最終濃度が0.1mMになるように注射用水を用いて調製した。
(2)−2.被験物質の調製及びプレインキュベーション
DMSOを用いて各種被験物質の試験溶液を調製した。下表に示すように被験物質及び酵素反応に必要な試薬(UDPGA、PAPS、S9(ラット肝臓凍結S-9(家田貿易(キッコーマン)))を24 wellプレートを用いて混合し、被験物質反応液を調製した(単位:μL)。なお、S9は上記1及び2の試験と同一のものを使用した。下表に示される通り、「Pre S9」はUDPGA、PAPS及びS9の全てが含まれる構成、「S9+」はS9のみ含まれる構成、そして「S9-」は上記試薬がいずれも含まれない構成を示す。
すべての反応液を添加した後、各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate 66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-wellプレート (Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−4.被験物質処理
試験前日にHepG2細胞を播種した96 wellプレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った被験物質反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−5.培地交換
被験物質処理24時間終了後、96 wellプレートの培地を除去した。次いで、PBS(-)をwellに添加して10秒間振とうさせ、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新鮮な培地を100μL/wellで添加した。すべてのwellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(3)測定(DILI assay (Thermo CellInsightを使用した肝細胞毒性評価法))
ToxInsight(登録商標)Drug-Induced Liver Injury (DILI) Assay (Thermo Scientific)に含まれる染色液を下記の通り調製した。
・Monochlorobimane (mBCl) stock solution:GSH検出試薬
DMSO 220μLで溶解して10μLずつ分注し、-20℃で保存した(数ヶ月は安定)。
・ROS dye Stock Solution:活性酸素検出試薬
DMSO 20μLで溶解して5μLずつ分注し、-20℃で保存した(2週間安定)。
・Mito dye solution:ミトコンドリア傷害検出試薬
DMSO 50μLに溶解して4μLずつ分注し、-20℃で保存した(数ヶ月は安定)。
・Hoechst 33342:核(DNA)染色試薬
溶液であるため各1μLずつ分注した。
上記のstock solutionにそれぞれ、37℃に温めた新鮮な培地を500μLずつ加えた。上記4種の染色液(total 2mL)に新鮮培地8mLを加え、総量を10mLとした。
被験物質の肝細胞への暴露終了後(肝細胞培養後)、プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。観察終了後、培地を除去し、HBSS(HBSS, 10X, no Calcium, no Magnesium, no Phenol Red(gibco)を、注射用水を用いて10倍希釈したもの)を用いてwellを一回洗浄した。次いで、上記の通り調製した染色液を各wellに100μLずつ添加し、45分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、培地を除去し、HBSSを添加し、10秒間振とうさせた後、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新たなHBSSを100μL添加し、測定サンプルとした。
測定サンプルをCellInsight(Thermo Fisher Scientific)にセットし、DILI測定メソッドを用いて各種指標の測定を行った。測定は、1wellあたり8点の画像データを撮影して行うこととした。得られた画像データを元に各蛍光基質の強度を数値化し、毒性の有無を評価した。データの解析は、Thermo adminのDILI解析ソフトを用いて行った。
(4)結果
(4)−1.測定結果
各種被験物資の結果を下記の表に示す。
(4)−2.代謝活性化条件なし(「S9-」の条件)との比較
以上の通り、quercetin、oleacein、hydroxytyrosol、Luteolin、kaempferol及びepicatechin gallateは、代謝活性を反映していない従来のin vitro試験法(「S9-」の条件)では毒性ありとの結果となったが、本発明の試験方法(「Pre S9」の条件)では毒性なしとの判定結果が得られた。また、resveratrol及びgenisteinでは、GSHの指標のみ「+」であったものの、その他の指標において従来のin vitro試験法(「S9-」の条件)では毒性ありとなったところが本発明の試験方法(「Pre S9」の条件)では全て毒性なしとの判定結果となった。「+」の結果を陽性とした場合、本発明の方法は偽陽性の割合を低減できることが明らかとなった。一方、coumarinに関しては、従来のin vitro試験法(「S9-」の条件)では全ての指標が「−」であったが、本発明の方法では「+」の指標が見られた。「+」の結果を陽性とすれば、この結果は、本発明の方法は偽陰性の割合も低減できる可能性があることを示唆している。
(4)−3.S9のみの代謝活性化条件(「S9+」の条件)との比較
quercetin及びLuteolinでは、「S9+」の条件だと3つの指標において「+」と判定されたが、本発明の方法であれば全ての指標において「−」の結果となった。kaempferol及びmyricetinでは、「S9+」の条件だと2つの指標において「+」と判定されたが、本発明の方法であれば全ての指標において「−」の結果となった。epigallocatechinでは、「S9+」の条件だとGSHの指標において「+」と判定されたが、本発明の方法であれば全ての指標において「−」の結果となった。また、genisteinでは、GSHの指標のみ「+」であったものの、「S9+」の条件ではその他4つの指標のうち3つが「+」となったところが本発明の方法では全て「−」の結果となった。これらの結果から、S9のみの代謝活性化条件では毒性を評価する上で十分とは言えず、本発明の方法の通りUDPGA、PAP及びS9の全てが必要とされることが示唆された。
(4)−4.in vivo試験との相関性
上記の結果に関し、本発明の方法でのquercetinやcoumarinの判定結果は、過去に報告されたin vivoでの毒性試験の結果と一致している。上記の通り、quercetinは本試験において、非代謝活性化及び第一相反応のみを活性化した条件では肝細胞に対して毒性を示したが、第一相反応及び第二相反応を活性化した条件では毒性を示さなかった。これについて、Jpn. J. Food Chem., vol. 8(3), 2001ではラットに13週間quercetinを混餌投与した毒性試験が報告されており、その結果では肝臓毒性を疑う変化は認められていない。即ち、当該文献での結果は、代謝活性化条件を反映した本発明の試験方法の結果と相関している。また、coumarinに関しては、本試験において非代謝活性化の条件では肝細胞に対して毒性を示さず、第一相反応のみを活性化した条件並びに第一相反応及び第二相反応を活性化した条件で毒性を示した。これについて、coumarinに関する過去の知見では、coumarinはラットの生体内にてCYP2E1及び1Aによって代謝され、産生された反応性代謝物が肝臓に対して毒性を示すことが報告されている。また、その機序としてミトコンドリア毒性が関与することが報告されている。即ち、既に報告されているcoumarinのin vivo毒性試験の結果は、本発明の試験方法の結果と相関している。また、本発明の方法で毒性を示さない陰性の結果が得られた化合物に関しては、in vivoの試験で既に陰性の結果報告がなされているものや、従来の健康食品で摂取され続け、安全である(即ち、肝障害を誘発しない)と既に判断されているものがあり、これらの結果や知見とも一致している。このように、本発明の方法により得られる結果は、代謝反応が実際に行われるin vivoの試験結果と相関性が高く、被験物質の毒性評価を行う上で極めて有効である。
5.小腸上皮細胞毒性評価におけるS9用量設定試験
細胞毒性を示さないS9の培地含有量を検証するため、S9の用量の条件設定試験を実施した。
(1)材料
試験用の小腸上皮細胞として、Caco-2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
(2)細胞培養及びサンプル処理
(2)−1.培地の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液(×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
(2)−2.プレインキュベーション
下表の通り、S9(ラット小腸凍結S-9(家田貿易(キッコーマン))、注射用水、培地及びDMSOを24 wellプレートのwellに加え、総量470μLの反応液を調製した。
各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate 66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-well プレート (Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−4.サンプル処理
試験前日にCaco-2細胞を播種した96 well プレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−5.培地交換
S9処理を24時間行った後、96 wellプレートの培地を除去した。次いで、PBS(-)をwellに添加して10秒間振とうさせ、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新鮮な培地を100μL/wellで添加した。すべてのwellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(3)測定(WST-8 assay (BioTek SynergyHTを使用した小腸上皮細胞毒性評価法))
プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。その後、WST-8 Assay Kit (Cell Counting Kit-8) (Dojindo)に含まれる試薬を各wellに10μLずつ添加し、90分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、マルチプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定し、細胞生存率を求めた。なお、細胞生存率の算出は以下の方法で行った。
細胞生存率(%)=[(検体の吸光度−ブランク吸光度)/(陰性対照の吸光度−ブランク吸光度)]×100
(4)結果
S9がCaco-2細胞に対して細胞傷害性を示さない用量を検討するため、S9のタンパク質濃度として0.0〜1.5mg/mLの範囲で用量設定試験を行った結果、1.5mg/mL以上において強い細胞毒性が認められることが分かった。その結果を図4に示す。
以上の結果から、被験物質の小腸上皮細胞毒性試験におけるS9の培地中の含有量は、タンパク質濃度として1.5mg/mL未満である必要があり、0.5mg/mLが望ましいと判断した。
6.代謝活性化条件の有無による小腸上皮細胞毒性試験
被験物質の小腸上皮細胞毒性を調べるため、代謝活性化条件の検討を含めて小腸上皮細胞毒性試験を行った。
(1)材料
試験用の小腸上皮細胞として、Caco-2細胞(住商ファーマインターナショナル株式会社)を使用した。また、被験物質は下記の化合物を使用した。その他、培地及び試薬等に関しては、下記の説明の中で記載する。
quercetin (sigma, CAS No. 117-39-5)
coumarin (sigma, CAS No. 91-64-5)
resveratrol (sigma, CAS No. 501-36-0)
Usnic acid (sigma, CAS No. 125-46-2)
Indomethacin(sigma, CAS No. 53-86-1)
(2)細胞培養及び被験物質処理
(2)−1.培地・試薬の調製
RPMI1640培地(gibco)500mLにPenicillin-Streptomycin (10,000 U/mL) (Invitrogen)を5mL、200mmol/l L-アラニル-L-グルタミン溶液(×100) (wako)及び100mmol/lピルビン酸ナトリウム溶液 (×100) (wako)をそれぞれ10mL添加して培地を調製した。また、培地の使用前にFBS (Cartified Foetal Bovine Serum (biological industry))の解凍及び非働化処理を行い、10% (v/v)となるようにFBSを培地に添加して培地を使用した。
UDPGA (Uridine 5’-diphosphoglucuronic acid trisodium salt, 98-100% (sigma))は、培地中の最終濃度が3.5mMになるように注射用水を用いて調製した。また、PAPS (Adenosine 3’-phosphate 5’-phosphosulfate lithium salt hydrate, >=60% (sigma))は、培地中の最終濃度が0.1mMになるように注射用水を用いて調製した。
(2)−2.被験物質の調製及びプレインキュベーション
DMSOを用いて各種被験物質の試験溶液を調製した。下表に示すように被験物質及び酵素反応に必要な試薬(UDPGA、PAPS、S9(ラット小腸凍結S-9(家田貿易(キッコーマン)))を24 wellプレートを用いて混合し、被験物質反応液を調製した(単位:μL)。なお、S9は上記1及び2の試験と同一のものを使用した。下表に示される通り、「Pre S9」はUDPGA、PAPS及びS9の全てが含まれる構成、「S9+」はS9のみ含まれる構成、そして「S9-」は上記試薬がいずれも含まれない構成を示す。
すべての反応液を添加した後、各wellにNADPH regeneration system solution A (NADP+; 26mM、Glucose-6-phosphate 66mM、MgCl2; 66mM in H2O) (Corning)を25μL、NADPH regeneration system solution B (Glucose-6-phosphate dehydrogenase; 40U/mL in 5mM sodium citrate) (Corning)を5μL添加し、反応をスタートし、37℃、5%CO2条件下にて30分間プレインキュベーションした。
(2)−3.細胞の播種
BioCoat Collagen I 96-wellプレート (Corning)を準備し、細胞濃度を2×105 cells/mLに調製した細胞液を1 wellあたり100μL播種した。すべてのwellに細胞を播種した後、細胞の沈降を待つため、15分程度静置した(これにより、細胞が中心に凝集することを防ぐ)。静置後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて4時間インキュベーションした。インキュベーション後、すべてのwellに5μL/mL(10mg/mL, final: 0.05mg/mL)の37℃に温めたマトリゲル(Corning)を添加した。添加後、プレートを静かにインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて20時間インキュベーションした。
(2)−4.被験物質処理
試験前日にCaco-2細胞を播種した96 wellプレートの培地を除去し、プレインキュベーションを行った被験物質反応液を所定のwellに100μL添加した。なお、反応はN=4で実施した。wellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(2)−5.培地交換
被験物質処理24時間終了後、96 wellプレートの培地を除去した。次いで、PBS(-)をwellに添加して10秒間振とうさせ、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新鮮な培地を100μL/wellで添加した。すべてのwellへの添加が終了した後、プレートをインキュベーターに入れ、37℃、5%CO2条件下にて24時間インキュベーションした。
(3)測定(DILI assay (Thermo CellInsightを使用した小腸上皮細胞毒性評価法))
ToxInsight(登録商標)Drug-Induced Liver Injury (DILI) Assay (Thermo Scientific)に含まれる染色液を下記の通り調製した。
・Monochlorobimane (mBCl) stock solution:GSH検出試薬
DMSO 220μLで溶解して10μLずつ分注し、-20℃で保存した(数ヶ月は安定)。
・ROS dye Stock Solution:活性酸素検出試薬
DMSO 20μLで溶解して5μLずつ分注し、-20℃で保存した(2週間安定)。
・Mito dye solution:ミトコンドリア傷害検出試薬
DMSO 50μLに溶解して4μLずつ分注し、-20℃で保存した(数ヶ月は安定)。
・Hoechst 33342:核(DNA)染色試薬
溶液であるため各1μLずつ分注した。
上記のstock solutionにそれぞれ、37℃に温めた新鮮な培地を500μLずつ加えた。上記4種の染色液(total 2mL)に新鮮培地8mLを加え、総量を10mLとした。
被験物質の小腸上皮細胞への暴露終了後(小腸上皮細胞培養後)、プレートをインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で細胞の形態等を確認した。観察終了後、培地を除去し、HBSS(HBSS, 10X, no Calcium, no Magnesium, no Phenol Red(gibco))を用いてwellを一回洗浄した。次いで、上記の通り調製した染色液を各wellに100μLずつ添加し、45分間37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした。インキュベーション終了後、培地を除去し、HBSSを添加し、10秒間振とうさせた後、上清を除去した。この作業を3回繰り返し、新たなHBSSを100μL添加し、測定サンプルとした。
測定サンプルをCellInsight(Thermo Fisher Scientific)にセットし、DILI測定メソッドを用いて各種指標の測定を行った。測定は、1 wellあたり8点の画像データを撮影して行うこととした。得られた画像データを元に各蛍光基質の強度を数値化し、毒性の有無を評価した。データの解析は、Thermo adminのDILI解析ソフトを用いて行った。
(4)結果
(4)−1.測定結果
各種被験物質の結果を下記の表に示す。
(4)−2.代謝活性化条件なし(「S9-」の条件)との比較
以上の通り、indomethacinは、代謝活性を反映していない従来のin vitro試験法(「S9-」の条件)では毒性なしとの結果となったが、本発明の試験方法(「Pre S9」の条件)では毒性ありとの判定結果が得られた。「+」の結果を陽性とすれば、この結果は、本発明の方法は偽陰性の割合も低減できる可能性があることを示唆している。一方、resveratrol及びquercetinでは、代謝活性を反映していない従来のin vitro試験法(「S9-」の条件)では毒性ありとの結果となったが、本発明の試験方法(「Pre S9」の条件)では毒性なしとの判定結果が得られた。「+」の結果を陽性とした場合、本発明の方法は偽陽性の割合を低減できることが明らかとなった。
(4)−3.S9のみの代謝活性化条件(「S9+」の条件)との比較
quercetin及びresveratrolでは、「S9+」の条件だと3つの指標において「+」と判定されたが、本発明の方法であれば全ての指標において「−」の結果となった。これらの結果から、S9のみの代謝活性化条件では毒性を評価する上で十分とは言えず、本発明の方法の通りUDPGA、PAP及びS9の全てが必要とされることが示唆された。
(4)−4.in vivo試験との相関性
上記の結果に関し、本発明の方法でのquercetinやindomethacinの判定結果は、過去に報告されたin vivoでの毒性試験の結果と一致している。上記の通り、quercetinは本試験において、非代謝活性化及び第一相反応のみを活性化した条件では小腸上皮細胞に対して毒性を示したが、第一相反応及び第二相反応を活性化した条件では毒性を示さなかった。これについて、Jpn. J. Food Chem., vol. 8(3), 2001ではラットに13週間quercetinを混餌投与した毒性試験が報告されており、その結果では消化管障害を疑う変化は認められていない。即ち、当該文献での結果は、代謝活性化条件を反映した本発明の試験方法の結果と相関している。また、indomethacinに関しては、本試験において非代謝活性化の条件では小腸上皮細胞に対して毒性を示さず、第一相反応のみを活性化した条件並びに第一相反応及び第二相反応を活性化した条件で毒性を示した。これについて、indomethacinに関する過去の知見では、indomethacinは生体内にて消化管上皮細胞に対して毒性を示すことが複数報告されている。また、その機序としてChemico-Biological Interactions 195 (2012) 199-205ではミトコンドリア毒性及びROSの産生が関与することが報告されている。即ち、既に報告されているindomethacinのin vivo毒性試験の結果は、本発明の試験方法の結果と相関している。このように、本発明の方法により得られる結果は、代謝反応が実際に行われるin vivoの試験結果と相関性が高く、被験物質の毒性評価を行う上で極めて有効である。
本発明は、被験物質、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを含む培地で動物細胞を培養する工程を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験する方法、並びに、臓器抽出物、UDPGA及びPAPSを利用したキットを提供するものである。本発明は、食品又は医薬品等の開発において的確に被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を評価する新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。

Claims (21)

  1. 被験物質、臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を含む培地で動物細胞を培養する工程、並びに
    培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程、
    を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験する方法。
  2. 動物細胞を培養する前に前記培地をインキュベートする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 被験物質が植物由来化学物質である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 植物由来化学物質がフェニルプロパノイド又はポリフェノールを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 臓器抽出物が消化器系臓器抽出物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 消化器系臓器抽出物が肝臓抽出物又は小腸抽出物である、請求項5に記載の方法。
  7. 臓器抽出物がS9である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  8. S9が肝S9又は小腸S9である、請求項7に記載の方法。
  9. 培養する動物細胞がヒト由来動物細胞である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 培養する動物細胞が肝細胞又は小腸上皮細胞である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  11. 肝細胞がヒト由来肝細胞である、請求項10に記載の方法。
  12. 小腸上皮細胞がヒト由来小腸上皮様細胞である、請求項10に記載の方法。
  13. 培地中の臓器抽出物の含有量が、タンパク質濃度として1.5mg/mL未満である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 培地中のウリジン二リン酸グルクロン酸の濃度が0.4〜100mMである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 培地中の3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸の濃度が0.01〜10mMである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 動物細胞の培養時間が1〜72時間である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 動物細胞を培養する前に培地をインキュベートする温度が36〜38℃である、請求項2〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 動物細胞を培養する前に培地をインキュベートする時間が5〜90分間である、請求項2〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 培養後の動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する工程が、細胞数の変化、細胞内DNAの損傷、還元型グルタチオン(GSH)の量の変化、活性酸素(ROS)の量の変化、及びミトコンドリア膜電位(MMP)の変化からなる群から選択される少なくとも1つの指標を調べることを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 臓器抽出物、ウリジン二リン酸グルクロン酸及び3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸、並びに
    動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物、
    を含む、被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を試験するためのキット。
  21. 動物細胞の状態から被験物質の動物細胞毒性又は抗酸化能を判断する指示物が、細胞数の変化、細胞内DNAの損傷、還元型グルタチオン(GSH)の量の変化、活性酸素(ROS)の量の変化、及びミトコンドリア膜電位(MMP)の変化からなる群から選択される少なくとも1つの指標を含む、請求項20に記載のキット。
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