JP2017031678A - 重力式防波堤 - Google Patents
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Abstract
Description
また、鋼管などの支持構造体を地盤に鉛直に埋め込んだ構造の重力式防波堤の場合も、捨石マウンド内を流れる水流が支持構造体で遮られるため、堤体に作用する揚圧力が増大する問題があり、さらに、石材を設置する場合と比較して材料コストが高くなる問題もある。
[1]水底に構築された捨石マウンド(1)と、該捨石マウンド(1)上に設置された堤体(2)と、該堤体(2)の背面側に設けられる補強用支持部(3)を備えた重力式防波堤であって、補強用支持部(3)は、水中における単位体積質量が10kN/m3以上で且つ28日養生後の粘着力が10kN/m2以上の補強土で構成され、堤体(2)の背面と捨石マウンド(1)に接するようにして設けられる補強土層(4)と、該補強土層(4)の背面と捨石マウンド(1)に接するようにして設けられる石材層(5)を備えることを特徴とする重力式防波堤。
[3]上記[1]又は[2]の重力式防波堤において、捨石マウンド(1)上での補強土層(4)の高さは、堤体(2)の高さの1/3以上であることを特徴とする重力式防波堤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの重力式防波堤において、捨石マウンド(1)の天端面に接する補強土層(4)の下端幅が2m以上であることを特徴とする重力式防波堤。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの重力式防波堤において、補強用支持部(3)の上面が被覆ブロック(6)で被覆されることを特徴とする重力式防波堤。
本実施形態の重力式防波堤は、水底(地盤7)に構築された捨石マウンド1と、この捨石マウンド1上に設置された堤体2(堤本体)と、この堤体2の背面側(波をうける側を前面側とした場合、その反対側)に設けられる補強用支持部3を備えている。
重力式防波堤の設置場所が港湾の場合には、堤体2の前面側が港外側、背面側が港内側となる。捨石マウンド1は防波堤の設置場所の全長にわたり構築され、その上にケーソンなどの重量構造物を複数並べて堤体2が構成される。
補強土層4は、その前面が堤体2の背面と接するとともに、下端部41が捨石マウンド1の天端面の一部と接するようにして設けられている。後述するように補強用支持部3を構築するに当たっては、先に堤体2と離れた位置に石材層5を形成し、次いで、この石材層5と堤体2との間に補強土層4を形成するため、補強土層4の背面42は、石材層5の前面側の法面52に接する下向き傾斜面になる。
この補強土の条件は、以下のようにして求められたものである。
滑動抵抗体(本発明では補強用支持部3)の抵抗力は、その質量と抵抗体の強度(ここでは粘着力)によって決まる。そのため、補強土の質量については石材と同等かそれ以上のものが望ましい。このため水中における補強土の単位体積質量は10kN/m3以上とする。また、補強土の水中単位体積質量が大きいほど補強用支持部3の滑動抵抗力も高まるので、この観点からは補強土の水中単位体積質量はより大きいこと(例えば、13kN/m3以上)が好ましいが、補強土の製造における改質材の混合割合(粒状体の場合は7割程度が上限となる)などの制約から17kN/m3程度が実質的な上限となる。
以上の理由から補強土の28日養生後の粘着力を10kN/m2以上とする。また、この補強土の粘着力が大きいほど補強用支持部3の滑動抵抗力も高まるので、この観点からは補強土の粘着力はより大きいこと(例えば、好ましくは30kN/m2以上、より好ましくは50kN/m2以上)が好ましいが、通常、補強土層4の高さは堤体2の高さの1/3以上とすることから、100kN/m2程度を実質的な上限とすればよい。
浚渫土は、事前に乾燥処理(例えば、天日乾燥など)や脱水処理(薬剤を添加して凝集させた後に脱水・減容化する方法)を施したものであってもよい。土砂は建設残土などでもよい。改質材としては、水和反応を生じさせるものであれば特に種類を問わないが、例えば、セメント、石灰、製鋼スラグなどの鉄鋼スラグ、コンクリート廃材などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
これら改質材の種類と混合量を選択することで、補強土の一軸圧縮強さを調整することができる。
石材層5を構成する石材の大きさは任意であるが、通常10〜200kg程度のものが用いられる。
補強土層4については、図1に示すように、補強土層4の下端部41(下端面)が、堤体2の背面側の捨石マウンド部分10の天端面の一部と接するように設けること、すなわち補強土層4は捨石マウンド部分10の天端面に対して面で接することが好ましい。津波などの波力による補強用支持部3の破壊は、堤体2の下端縁と捨石マウンド1の天端面とが接する点pを起点として生じるため、補強土層4が捨石マウンド部分10に対して面で接していないと(例えば、補強土層4が捨石マウンド部分10に接しておらず、或いは点で接していると)、補強土層4が破壊に対する抵抗にならず、波力により補強用支持部3が破壊されやすくなる。この観点から、補強土層4の下端部41の幅w1(下端幅)は2m以上とすることが好ましい。
補強土層4の天端部40の幅w2(天端幅)は、補強土層4による補強効果を確保する一方で、補強土層4の断面が大きくなって造成コストが増大するのを抑えるという観点から、10〜20m程度とすることが好ましい。
石材層5の天端部50の幅w3(天端幅)は、石材層5の安定性を確保する一方で、石材層5の断面が大きくなって造成コストが増大するのを抑えるという観点から、2〜5m程度とすることが好ましい。
なお、堤体2やこれを支持する捨石マウンド1の大きさは、設置する海域の水深や想定される波高などによっても異なるので一概には言えないが、一般には、堤体2は幅(前面−背面間の幅)が約10〜20m、高さが約15〜25m、捨石マウンド1は幅(前面−背面間の幅)が約40〜60m、厚さが3〜10m程度である場合が多い。
本発明の重力式防波堤は、捨石マウンド1内を流れる水流がそのまま石材層5を通って防波堤の背面側に流れることができるため、台風時の波浪や津波などが作用した時でも堤体2に大きな揚圧力が作用することが抑えられ、堤体2の高い安定性が得られる。しかも、補強用支持部3が、石材層5と、上述したような水中単位体積質量が石材と同等以上で且つ所定値以上の粘着力(強度)を有する補強土からなる補強土層4の複合構造であることにより、図2に示すような石材のみからなる補強用支持部に較べて、高い滑動抵抗力を得ることができる。すなわち、水中単位体積質量が石材と同等以上で且つ粘着力10kN/m2以上の補強土からなる補強土層4は、石材のみからなる補強層に較べて滑動抵抗力が高く、したがって、補強用支持部3が、補強土層4と石材層5との複合構造であることにより、高い滑動抵抗力を得ることができる。また、通常、補強用支持部3の外側は被覆ブロック6で被覆されるが、津波などが防波堤天端を越流して被覆ブロック6が流出した場合でも、補強土層4が強度を有しているため、洗掘が生じにくい利点もある。
図2に示す従来の重力式防波堤のように石材(水中単位体積質量10.0kN/m3,内部摩擦角φ=40°)のみからなる補強用支持部(石材層)を設けた場合について計算したところ、補強用支持部の設置高さを6.5mとした場合、滑動抵抗力の上限は971.52kN/mとなり、補強用支持部の幅を広げても安全率1.2を満たすために必要な滑動抵抗力が得られないという結果になった。一方、本発明の重力式防波堤の場合には、補強土層4と石材層5との複合構造により、補強用支持部3の断面をより小さくしても、必要な滑動抵抗力を確保できると考えられる。
2 堤体
3 補強用支持部
4 補強土層
5 石材層
6 被覆ブロック
7 地盤
8 水底部分
10 捨石マウンド部分
40 天端部
41 下端部
42 背面
50 天端部
51,52 法面
Claims (6)
- 水底に構築された捨石マウンド(1)と、該捨石マウンド(1)上に設置された堤体(2)と、該堤体(2)の背面側に設けられる補強用支持部(3)を備えた重力式防波堤であって、
補強用支持部(3)は、水中における単位体積質量が10kN/m3以上で且つ28日養生後の粘着力が10kN/m2以上の補強土で構成され、堤体(2)の背面と捨石マウンド(1)に接するようにして設けられる補強土層(4)と、該補強土層(4)の背面と捨石マウンド(1)に接するようにして設けられる石材層(5)を備えることを特徴とする重力式防波堤。 - 補強土層(4)を構成する補強土は、浚渫土又は/及び土砂に水和反応を生じさせる改質材を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の重力式防波堤。
- 捨石マウンド(1)上での補強土層(4)の高さは、堤体(2)の高さの1/3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重力式防波堤。
- 捨石マウンド(1)の天端面に接する補強土層(4)の下端幅が2m以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重力式防波堤。
- 補強用支持部(3)の上面が被覆ブロック(6)で被覆されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の重力式防波堤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の重力式防波堤の造成方法であって、
水底の地盤に構築された捨石マウンド(1)の上に堤体(2)を設置した後、堤体(2)の背面側において、堤体(2)から離れた位置に石材を積み上げて石材層(5)を形成し、次いで、石材層(5)と堤体(2)との間に補強土を投入・敷設して補強土層(4)を形成することにより、補強土層(4)と石材層(5)を備えた補強用支持部(3)を構築することを特徴とする重力式防波堤の造成方法。
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