JP2017030175A - 高分子化合物膜で被覆された基材、その用途及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の分子の鋳型をもつ分子鋳型をもつ高分子化合物膜を基材上に簡便な装置で製造し得る方法を提示すること、その用途として特定の分子の高選択性の分析用センサの提供。【解決手段】高分子化合物及び前記高分子化合物に包接され得る極性分子化合物を溶媒に溶解させて溶液を調製し、前記溶液を基材上に塗布し、塗布後の溶液から溶媒を蒸発させて基材上に高分子化合物と極性分子化合物とを含む膜を形成せしめ、前記高分子化合物を溶出し得る化合物を含む溶出液で前記膜から高分子化合物を除去する、ことを含む高分子化合物膜の製造方法。このように製造された高分子化合物膜で被覆された基材は上記極性分子化合物用のセンサとして有用である。【選択図】図1

Description

本発明は、基材上に高分子化合物膜を製造する方法、その方法により得られる高分子化合物膜で被覆された基材、ならびに、そのように被覆された基材のセンサとしての用途に関する。
従来の分子鋳型高分子材料の作製技術は以下のように概括することができる。
1)塊状重合、懸濁重合による合成
主な作製法として、鋳型を作製する目的分子に、高分子の基本骨格を作るモノマー、架橋剤、重合開始剤を加えてラジカル重合を行って得られる高分子材料で、得られる材料の形状のタイプにより、塊状で得られる塊状重合、溶液中に分散させて微細粒子状で回収する懸濁重合などが広く行われている。一例として、カフェインの鋳型高分子の合成法の例を図7に示す。
2)段階重合法、相転換重合法による合成
段階重合法は、懸濁重合と同様な手法を用いて、シリカ粒子や有機性高分子粒子などの基材となる微粒子(十数μm)の表面に、複数回に分けてモノマーと架橋剤の混合物中で重合を繰り返していき、表面層に鋳型となる分子を加えたモノマーと架橋剤で重合して、外表面に鋳型サイトを持つ高分子材料を得る製造法である。また相転換重合法は、シリカ粒子基材に、鋳型を作製する分子、モノマー、架橋剤、重合開始剤を混合し、シリカ細孔内で重合物を形成させ、その後、アルカリ溶液でシリカ基剤を溶解して、高分子材料を得る方法である。現在、研究段階の一つである。
従来の流れ分析用QCMセンサの特徴及び使用例は以下のように概括することができる。
1)QCMセンサを用いた既存の流れ分析の概略
QCMセンサを用いた既存の一般的な流れ分析を図8に示す。この分析では、液体ポンプ111、試料注入部112(インジェクター)、シリンジ113、QCMセンサ114を装着したフローセル115、廃液溜116を備える測定系で行われる。QCMセンサ114からの測定情報は周波数カウンター(図示せず)に送られる。
2)従来のQCMセンサの一般的な使用例
従来のQCMセンサの一般的な使用例を図9に示す。QCM121上の金電極表面122に分析目的物質123に抗原抗体反応を示す抗体124を固定化したもので、残っている金電極表面121は、目的物質と反応しない小さな分子125でキャッピングし、目的物質123が直接表面吸着しないようになっている。送液されてきた移動相中の目的物質123である分析種(抗原相当)は抗体124に捕捉される。このとき、抗原の重みに相当する荷重がQCM121上に加わるため、QCM121の振動数が重み量に比例して減少する。この周波数減少量を測定し、濃度換算することで目的物質123の量または濃度が計測できる。
従来技術の構成・動作は以下のように概括することができる。
(I)既存の分子鋳型高分子材料の作製技術
下記の各重合法は、いずれも粒子状鋳型高分子材料の合成法として知られており、これらは目的物質に対する選択的な回収を目的にした吸着剤材料として、また液体クロマトグラフ分析時におけるカラムに充填した分離カラムへの利用目的が背景にある。
既存の合成法の一例を下記1)、2)に示す。
1)塊状重合、懸濁重合による合成
メタクリル酸やメタクリルアミド、あるいは4−ビニルピリジンなどをモノマーとして、架橋剤にエチレングリコールジメタクリレートを用いて、重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリルにより還元下で重合する手法である。得られる分子鋳型高分子材料は塊状または粒子状である。
2)段階重合法、相転換重合法による合成
段階重合法は、シリカ微粒子や高分子微粒子を基材として、目的分子を含む上記のようなモノマー、架橋剤により、粒子の外表面に高分子層を数回にわたって重合して被覆する手法である。
相転換重合法は、シリカ微粒子の細孔内に上記のように目的分子、モノマー、架橋剤を浸透させて重合し、その後、強アルカリ下でシリカ基剤を溶解し、シリカ粒子形状に由来する多孔性鋳型高分子粒子を得る手法である。
(II)既存の流れ分析用QCMセンサの特徴とその例
QCM単体では分析物質に対する選択性は無いため、一般的には、分析目的物質(抗原)に親和性のある物質(抗体)を用いて、QCMの金電極上に抗体分子を固定化し、分析する分子に対して抗原抗体反応により取り込む機能を持たせている。液体ポンプにより移動相(緩衝溶液など)溶液を送液し、試料注入部(インジェクター)より分析試料溶液を数十〜数百μL注入し、分析分子をフローセル内の抗体を固定化したQCMに送る。分析分子はQCM上の抗体に捕捉され、その重み荷重の大きさに比例した周波数の減少が生じる。あらかじめ、分析分子の量または濃度と周波数(Hz)の減少量を測定しておいた検量線を用いて、目的分子の量は、または濃度が求められる。測定後は、新しいQCMセンサに取り替えか、または追加的に目的分子により親和性の高い抗体を注入したり、異なるpH溶液を導入して分析種をQCM上から脱離させるなどの操作を行う。
しかしながら、従来技術には以下の問題があることを本発明者は見出した。
(I)従来の分子鋳型高分子材料の作製技術
上記の各重合法は、いずれも粒子状鋳型高分子材料としての利用を目的に開発されたもので、これらの手法では原理的に薄膜化は不可能である。そのため、従来の方法にとらわれない新規な作製法が必要となる。なお、以下述べるように従来の技術では薄膜化が不可能であるため、水晶振動子の電極の感応部に被覆したセンサを作製するようなことは原理的に実現できない。
1)塊状重合、懸濁重合による合成
得られる分子鋳型高分子材料は塊状または粒子状であり、この重合法では薄膜化は達成できない。
2)段階重合法、相転換重合法による合成
本来、球形粒子を得る目的で開発された重合法であり、他の材料表面に被覆するような発展的展開は不可能である。
(II)従来の流れ分析用QCMセンサの特徴のその例
従来のQCMセンサを用いた分析技術には大きな問題点がある。
1)QCM単体でも分子の吸着による重み荷重によって周波数の減少の応答により測定は可能であるが、分析種への選択性を有しないため、抗原抗体反応などの手法が広く利用される。使用する抗体は、動物や微生物などの生物種の生理機能を利用して抗原物質を基に作り出したもので、産業的に安定供給することが難しい、保存性が悪い、高価である、社会的に動物保護の観点からも問題視されている。
2)抗体を用いたQCMセンシングにおいて、抗原抗体反応は不可逆的な場合が多く、分析のたびにQCMを交換する、ディスポーザブル的な利用が一般的である。QCM1個あたりで未処理の場合でも数千円もする。また、繰り返しの利用も可能な条件を見出して利用する研究例もあるが、別途新たな抗体や脱離剤による後処理操作が必要となる煩雑さがあり、分析時間やランニングコストの面でも課題が残っている。
これらのことを考慮し、本発明は、特定の分子の鋳型をもつ高分子化合物膜を基材上に簡便な器具で製造し得る方法を提示すること、その用途として特定の分子の高選択性の分析用センサの提供を課題とする。
本発明者が鋭意検討した結果、以下のような本発明を完成した。
本発明は高分子化合物膜の製造方法を提供する。本発明の製造方法では、まず溶液を調製する。この溶液には、溶媒とその溶媒に溶解している高分子化合物及び極性分子化合物を含む。ここで、極性分子化合物は高分子化合物に包接され得る化合物である。この溶液を基材上に塗布し、塗布後の溶液から溶媒を揮発させて基材上に高分子化合物と極性分子化合物とを含む膜を形成せしめる。次いで、この膜から極性分子化合物を溶出液を用いて除去する。溶出液は、極性分子化合物を溶出し得るものを用いる。これによって、基材上に、高分子化合物膜が得られる。
高分子化合物は好ましくはポリアミド、ポリエステル又はポリエーテルである。極性分子化合物は、好ましくはカテキン又はその誘導体である。
上述のようにして製造された、高分子化合物膜が被覆された基材もまた本発明の一実施形態である。ここで、好ましくは、このように高分子化合物膜が被覆された基材は上述の極性分子化合物用のセンサである。
本発明の製造方法では、鋳型をもつ高分子化合物膜の形成時に重合・縮合反応が起こらないので、製膜が容易かつ低コストで実現できる。本発明により得られる高分子化合物膜が形成された基材は、鋳型の極性分子化合物の選択的なセンサとして特に有用である。
本発明における、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン6の形成概念図である。 本発明における、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン6被覆水晶振動子センサを用いた分析システムの概念図である。 15mg/Lの(+)−カテキンについての分析における検出結果である。 50mg/Lの(+)−カテキンについての分析における検出結果である。 本発明における、(+)−カテキン濃度とQCMセンサへの吸着量との関係を示す。 本発明における、QCMセンサについての(+)−カテキン及び他の分子との検出選択性について評価結果を示す。 従来技術における、カフェインの鋳型高分子の合成スキームを示す。 従来技術における、QCMセンサを用いた既存の一般的な流れ分析の説明図である。 従来技術における、QCMセンサの一般的な使用例の説明図である。
本発明は高分子化合物膜を基材上に製造する方法を提供する。
本発明の製造方法では、まず溶液を調製する。この溶液には、溶媒とその溶媒に溶解している高分子化合物及び極性分子化合物を含む。
本発明では高分子化合物を溶液に溶解する。換言すると、目的とする高分子化合物のモノマー、オリゴマーの溶液から重合反応や縮合反応によって高分子化合物を得るのではなく、高分子化合物そのものを溶液に溶解する。つまり、溶液中では重合反応や縮合反応は基本的には生じない。
したがって、高分子化合物と溶媒との組合せについては、高分子化合物を溶解し得る溶媒が選択される。高分子化合物については、後述の極性分子化合物を包接し得るものが選択される。高分子化合物は、水酸基、エーテル基、エステル基、カルボン酸基、アミド基、カルボミル基などの極性基を一種または複数種含むことが好ましく、ポリアミド、ポリエステル又はポリエーテルが特に好ましく、とりわけ、脂肪族骨格を含むポリアミド(ナイロン)が好ましい。
前記溶液には極性分子化合物も溶解している。この溶液に含まれる極性分子化合物と高分子化合物とは、高分子化合物が極性分子化合物を包接し得るような組合せが選ばれる。上述のように高分子化合物は好適には極性基をもつので、多くの極性分子化合物と包接体を形成し得る。好ましくは、極性分子化合物はアルカノイド化合物、特にカテキン又はその誘導体であり、別途好ましくは例えばビスフェノールAである。極性分子化合物と高分子化合物とは水素結合により包接構造を形成し得ることが好ましい。
後述するように、本発明では、特定の物質のセンサとして高分子化合物膜が被覆された基材を用いることも考慮している。その場合の設計指針としては、まず、最終的に得られるセンサで検知対象とする物質を極性分子化合物として選定し、その極性分子化合物を包接し得る高分子化合物を選定し、それら極性分子化合物及び高分子化合物を溶解し得る溶媒を選定する。
溶媒は上述の高分子化合物と極性分子化合物とを両方とも溶解し得るのであれば特に限定は無く、例えば、ギ酸、塩化メチレン、塩化メチル、クロロ酢酸、塩化チオニルなどから選択してもよい。
溶液中の高分子化合物と極性分子化合物との含有比率は、それぞれの化合物の大きさや包接の形態などに応じて適宜設定することができる。高分子化合物と極性分子化合物との合計重量100%に対する極性分子化合物の含有率(重量割合)は4〜10%程度が一般的である。なお、極性分子化合物の分子径が小さい場合は含有率が高く、極性分子化合物の分子径が大きい場合は含有率が低いことが望ましく、例えば、極性分子化合物が(+)−カテキンである場合には、前記含有率は6〜8%が特に好ましい。
この溶液を基材上に塗布し、次いで、乾燥して溶媒を揮発させることにより製膜を行う。基材は、製膜における土台になり得る程度の剛性を有していればよく、無機、有機又はそれらが複合した固形材料からなるものを選択することができる。本発明では、基材として分析装置における汎用センサを用い、このセンサ上に製膜することによって特定の物質に対する選択性を付与したセンサを得ることが好ましい。センサ上への製膜についての技術的意義等は後述する。
基材上への塗布方法や、塗布後の乾燥方法などについては特に限定は無く、製膜分野における先行技術を適宜参照することができる。製膜によって、基材上に高分子化合物と極性分子化合物とを含む膜が形成される。製膜中に重合反応や縮合反応は実質的には生じないことが本発明の特徴の一つである。これによって、簡便且つ低コストにて薄膜を形成することができる。この段階では、好ましくは極性分子化合物は高分子化合物によって包接された形態で膜内に存在する。
次いで、この膜に溶出液を作用させる。溶出液は極性分子化合物を溶出し得る化合物を含む。好ましくは、溶出液には、高分子化合物が溶解しないか、あるいは、極性分子化合物よりも高分子化合物が溶解しにくいことが好ましい。溶出液は高分子化合物と極性分子化合物との組合せに応じて適宜選択することができ、例えば、アルコールと水との混合物などが挙げられる。膜への溶出液の作用のさせ方については特に限定は無く、例えば、膜が形成された基材を溶出液に浸漬したり、溶出液を膜上で流動させたりすることが挙げられる。
このようにして、基材上に高分子化合物膜を被覆させることができる。得られた高分子化合物膜は製膜時に包接していた極性分子化合物が溶出液の作用により抜け落ちた格好になることが想定され、あたかも当該極性分子化合物の鋳型のようなものであると評価することも可能である。この場合、得られた高分子化合物膜で被覆された基材には、当該極性分子化合物が選択的に結合し得ることが期待される。したがって、このように高分子化合物膜が被覆された基材は、後述するように極性分子化合物のセンサとしての応用があり得るほか、複雑な系からの極性分子化合物の吸着剤や回収剤、分離分析における分離基剤への応用も考えられる。
本発明の一実施形態は、上述のようにして得られた高分子化合物膜が被覆された基材であり、当該基材は好ましくはセンサとして用いられる。ここで、センサは、特定の物質の存在を検知したり、特定の物質の量・濃度を数値データに変換し得る部材である。本発明では、高分子化合物膜の製造の際に用いた極性分子化合物がセンサの対象であることが好ましい。
高分子化合物膜が被覆された基材をセンサとして用いる場合、高分子化合物膜にセンサの検知対象である極性分子化合物が付着したときに、その付着の事実あるいは付着した量を数値化し得るデバイスが前記基材を兼ねることが好ましい。以下、そのような基材の非限定的な例として、水晶振動子重みセンサ(QCM)について説明する。
図2(B)は高分子化合物膜が被覆されたQCMの模式断面図である。水晶振動子21の上に金電極22を介して高分子化合物膜23が形成されている。この図の形態では、水晶振動子21及び金電極22の積層構造体を基材であるとみなすことができる。ここで、高分子化合物膜を製造する際には極性分子化合物の包接構造を経ているので、基材上で鋳型構造を有していると考えられる。このように高分子化合物膜23をQCMの金電極表面に被覆したセンサチップをフローセルに組み込み、既存の液体ポンプ、試料注入器、周波数カウンターを構築することで、流れ分析システムを作製することができる。すなわち、本発明によれば、分析したい分子を上述の極性分子化合物として用いて、その分子の形状を反映した鋳型空隙を持つ高分子化合物膜(例:ナイロン薄膜)をQCM上に簡単に作製することができる。
このようにして、極性分子化合物を選択することによって、種々の分析物質に対応したQCMセンサチップを作ることができる。そのため、測定したい物質のQCMセンサチップを取り付けるだけで、目的分子を高選択的に簡易に分析することが実現できる。具体的な作製の例としては、溶媒(適量30mL)に高分子化合物としてのナイロン6(最適量0.05g)を加えて溶解し、このナイロン6溶液に極性分子化合物としての(+)−カテキン(最適量0.0035g)を加えて撹拌して溶解する。溶剤には種々のものが利用できるが、ナイロンに関してはギ酸が最適である。この(+)−カテキンのナイロン溶液を基材としてのセンサ材料の応答面に滴下して乾燥し、ギ酸を揮発させることにより、(+)−カテキン分子を鋳型とする薄膜を金電極に容易に被覆することができる。水晶振動子金電極には、種々の既存のものが利用できるが、一例として、ATカット水晶振動子30MHzの水晶振動子金電極面に被覆したものが挙げられる。
このセンサを液体クロマトグラフ分析システム系の検出部に組み込むと、注入された分析試料中の(+)−カテキン分子がセンサ表面に特異的に高選択的に捕捉され、吸着した際のその重みに基づいて、水晶振動子の周波数の減少が生じる。その周波数の減少量(Hz)と(+)−カテキン分子の濃度が比例関係にあることから濃度が測定できる。なお、後述の実施例で実証するように、(+)−カテキン以外の分子の応答はほとんど見られない。この時、移動相溶液に極性溶媒を添加した水(上述の溶出液)を用いることで、吸着した分析種は分子鋳型薄膜表面より脱離する。そのため、一つのセンサで交換すること無く多検体試料を連続的に分析することができる。
さらに、様々な目的物質に対応したセンサチップを作製しておくことにより、ユーザーは、分析したい物質専用のセンサチップを入手するだけで高選択的に好感度に分析することが可能となる。このセンサにより、従来必要であった高価な分離カラムなどは不要となる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に記載された態様に限定されるわけではない。
図1は(+)−カテキン分子鋳型ナイロン6の形成概念図である。図2(A)は、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン6被覆水晶振動子センサを用いた分析システムの概念図である。
1)(+)−カテキン分子鋳型ナイロン6薄膜の作製
図1を参照しながら、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン薄膜QCMセンサの作製法の例を示す。
ギ酸30mLにナイロン6を0.05g、(+)−カテキン0.0035gを混合して溶解して溶液を得た。この溶液0.6μl(金電極面積8.75mm)をシリンジを用いて基材としてのQCMセンサの金電極面に滴下して塗布した。塗布後、静置して乾燥することで(+)−カテキンを含むナイロン6の薄膜を金電極面上に形成させた。QCMセンサはATカットの市販のものをそのまま使い、デュアルタイプQCMセンサでは1チャンネル側に被覆した。QCMセンサの周波数はいずれのものも使用できる。中でもより周波数の高い30MHzのQCMセンサを用いることで分析種を高感度に検出ができる。
図2(A)を参照しながら、QCMセンサを利用する流れ分析を説明する。上述のように作製したQCMセンサ14をフローセル15に装着し、測定試料を流す前に、移動相溶液として、10%メタノール水溶液を液体ポンプ11から試料注入部12(インジェクター)を経て流速3ml/hで通液した。これによって、ナイロン6薄膜中の(+)−カテキンが脱着され、(+)−カテキンの分子形状の空隙(鋳型)を持ったナイロン6薄膜が得られた。すなわち、この実施例では極性分子化合物である(+)−カテキンを溶かし出す溶出液は10%メタノール水溶液である。その後、シリンジ13から分析試料溶液200μlを注入し、QCMセンサ14における周波数の減少量(Hz)を測定した。あらかじめ作成した検量線(分析物質の濃度または量と周波数の減少量との関係を示したもの)を用いて、分析種の濃度または量を算出した。
ここで、図2(B)はナイロン膜が被覆されたQCMセンサの模式断面図である。水晶振動子21上に金電極22を介して(+)−カテキンの鋳型をもつナイロン6膜23が形成されている。
検出された周波数応答挙動は、QCM上の鋳型サイトに分析種が吸着するとともに周波数が低下し、その後、移動相中に存在するメタノールにより鋳型サイト中の分析種は脱離し、周波数応答は初期状態に復帰した。多検体の場合は、連続して同様な分析操作を行うことで測定できる。QCMセンサは同一のものを装着したまま繰り返し使うことができた。図3及び図4は、それぞれ、15mg/L及び50mg/Lの(+)−カテキンについて分析した際に得られた検出結果である。未応答のベースラインに比べて、(+)−カテキンを検出すると、周波数の応答が減少し、その後ベースラインまで復帰している。
次に、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン薄膜QCMセンサによる(+)−カテキン応答能を調査した。
図5は、(+)−カテキン濃度(mg/L)とQCMセンサへの吸着量(ng)との関係を示す。(+)−カテキン濃度の増加と共に定量的にQCMセンサに吸着し検出されていることがわかる。50mg/Lまでは比例的に変化し、その濃度以上ではやや頭打ちの傾向を示している。この要因は濃度が高いために分子鋳型薄膜上の鋳型サイト数が不足している結果である。より高濃度を測定する場合は、ナイロン6に対する(+)−カテキンの混合比を増加することで対応できる。
さらに、(+)−カテキン分子鋳型ナイロン薄膜QCMセンサの選択性評価を調べた。
図6は、(+)−カテキン分子鋳型薄膜QCMセンサについての(+)−カテキン及び他の分子との検出選択性について評価結果を示す。(+)−カテキンと分子構造が異なる分子としてL−フェニルアラニン、(+)−カテキンの分子構造が類似している分子として、フェノール、カテコール、ダイゼイン、緑茶飲料に含まれる物質としてカフェイン、L−アスコルビン酸、エピガロカテキンガレートについて測定を行った結果、(+)−カテキン以外は検出限界以下であり、高い選択性を有していることがわかる。またアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンも応答しないことを別途確認した。すなわち、分子形状の異なる分子は、物理的にも化学的にも鋳型サイトに吸着しにくい。そのため、(+)−カテキンの分析では分析前の前処理操作は予備的な作業となり、分離カラムは必要としない。高価な抗体も不要となる。ルーチン分析では、移動相として有機溶媒のメタノール以外は不要であることから、ランニングコストも低く、シンプルな分析法で扱いやすい手法となりうる。また、産業的に種々の分析種を対象とした分子鋳型薄膜QCMセンサを作製して市販することにより、簡易にQCMセンサチップを交換するだけで幅広い分析種に対応できる分析技術となることが期待できる。
これまでの高感度なQCMセンサは抗原抗体反応を利用したものであり、高価で耐久性及び保存性、取扱い性など多くの問題があった。本発明によれば、産業上一般的に使用することができ、安価なナイロン6等を主体としており選択性が高く、繰り返し測定が可能で、数ng程度の極微量のカテキン化合物を定量分析できるため、お茶飲料及びお茶(抹茶等)を含む食品製造及びお茶生産農家の品質管理など多くの応用が期待できる。
11:液体ポンプ 12:試料注入部 13:シリンジ
14:QCMセンサ 15:フローセル

Claims (4)

  1. 高分子化合物及び前記高分子化合物に包接され得る極性分子化合物を溶媒に溶解させて溶液を調製し、前記溶液を基材上に塗布し、塗布後の溶液から溶媒を揮発させて基材上に高分子化合物と極性分子化合物とを含む膜を形成せしめ、前記極性分子化合物を溶出し得る化合物を含む溶出液で前記膜から極性分子化合物を除去する、ことを含む高分子化合物膜の製造方法。
  2. 上記高分子化合物がポリアミド、ポリエステル又はポリエーテルであり、上記極性分子化合物がカテキン又はその誘導体である、請求項1記載の製造方法。
  3. 基材と前記基材上に形成された高分子化合物膜とを有し、高分子化合物膜は請求項1又は2記載の製造方法により形成されたものである、高分子化合物膜で被覆された基材。
  4. 上記極性分子化合物用のセンサであって、請求項3記載の高分子化合物膜で被覆された基材を有するセンサ。
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